(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】追従走行支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/165 20200101AFI20250708BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20250708BHJP
【FI】
B60W30/165
B60W50/14
(21)【出願番号】P 2021165623
(22)【出願日】2021-10-07
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高本 聡
【審査官】横山 幸弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-208377(JP,A)
【文献】特開2020-050222(JP,A)
【文献】特開2019-059450(JP,A)
【文献】特開2003-200753(JP,A)
【文献】特開2010-146428(JP,A)
【文献】特開2019-209901(JP,A)
【文献】特開2015-132996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、自車両を先行車両に追従させる追従走行を支援する追従走行支援装置であって、
任意の他車両のうち運転特性が前記自車両とマッチングする前記他車両であるマッチング車両を記憶する記憶部と、
前記追従走行の実行が指示されたときにおいて、前記記憶部に記憶されている前記マッチング車両が前記自車両から所定距離内に存在する場合、前記マッチング車両を前記先行車両の候補である候補車両に設定して前記自車両の運転者に報知する、または、前記マッチング車両を前記先行車両に設定する処理部と、
を備え
、
前記運転特性は、前記追従走行の実行が指示されておらずに且つ前記自車両の前方の前記所定距離内に前記他車両が存在する場合における、前記自車両を加速させる際のアクセル操作量、前記自車両を減速させる際のブレーキ操作量、前記自車両が定速走行する際の車速、前記自車両が定速走行する際の前記自車両と前方の前記他車両との車間距離、を含む、
追従走行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追従走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の追従走行支援装置としては、選択された他車両に追従して走行する追従走行を支援する装置において、コントローラは、自車両の運転操作の特性を取得すると共に、自車両の周辺を走行している他車両の運転特性を取得し、自車両の運転操作の特性と他車両の運転操作の特性とを比較して各特性の近似程度を求め、近似の程度が高い他車両を追従推奨車両として選択し、選択した追従推奨車両を自車両の運転者に報知するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の追従走行支援装置では、自車両や他車両の走行中に、自車両や他車両の運転操作の特性を取得したり、取得した両者を比較して各特性の近似特性を求めたりする必要がある。このため、追従走行の支援を開始する際の処理部(コントローラ)の処理負荷が比較的高くなる可能性がある。
【0005】
本発明の追従走行支援装置は、追従走行の支援を開始する際の処理部の処理負荷が比較的高くなるのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の追従走行支援装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の追従走行支援装置は、
車両に搭載され、自車両を先行車両に追従させる追従走行を支援する追従走行支援装置であって、
任意の他車両のうち運転特性が前記自車両とマッチングする前記他車両であるマッチング車両を記憶する記憶部と、
前記追従走行の実行が指示されたときにおいて、前記記憶部に記憶されている前記マッチング車両が前記自車両から所定距離内に存在する場合、前記マッチング車両を前記先行車両の候補である候補車両に設定して前記自車両の運転者に報知する、または、前記マッチング車両を前記先行車両に設定する処理部と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
本発明の追従走行支援装置では、記憶部と処理部とを備える。記憶部は、任意の他車両のうち運転特性が自車両とマッチングする他車両であるマッチング車両を記憶する。処理部は、追従走行の実行が指示されたときにおいて、記憶部に記憶されているマッチング車両が自車両から所定距離内に存在する場合、マッチング車両を先行車両の候補である候補車両に設定して自車両の運転者に報知する、または、マッチング車両を前記先行車両に設定する。これにより、追従走行の支援を開始する際の処理部の処理負荷が比較的高くなるのを抑制することができる。
【0009】
本発明の追従走行支援装置において、前記運転特性は、前記追従走行の実行が指示されておらずに且つ前記自車両の前方の前記所定距離内に前記他車両が存在する場合における、前記自車両を加速させる際のアクセル操作量、前記自車両を減速させる際のブレーキ操作量、前記自車両が定速走行する際の車速、前記自車両が定速走行する際の前記自車両と前方の前記他車両との車間距離、とのうちの少なくとも1つを含むものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施例としての追従走行支援装置を備える自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【
図2】電子制御ユニット50により実行される処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例としての追従走行支援装置を備える自動車20の構成の概略を示す構成図である。図示するように、実施例の自動車20は、エンジンやモータなどを有する駆動装置62からの動力により走行する自動車として構成されている。
【0013】
実施例の自動車20は、駆動装置62に加えて、イグニッションスイッチ22、GPS(Global Positioning System, Global Positioning Satellite)24、前方カメラ26、室内カメラ28、車速センサ30、加速度センサ32、ミリ波レーダー34、アクセルセンサ36、ブレーキセンサ38、クルーズコントロールスイッチ40、電子制御ユニット50、駆動アクチュエータ60、ブレーキアクチュエータ64、ブレーキ装置66、操舵アクチュエータ68、操舵装置70、ホログラフィック光学装置72、フロントウインドウ74、メーター76、ナビゲーションシステム80、DCM(Data Communication Module)86などを備える。実施例の追従走行支援装置としては、電子制御ユニット50が該当する。
【0014】
GPS24は、複数のGPS衛星から送信される信号に基づいて車両の位置を検出する装置である。前方カメラ26は、乗員室の前方中央の上部に取り付けられてフロントウインドウ74を介して車両前方を撮影するように配置されたカメラである。室内カメラ28は、乗員室の前方中央の上部に取り付けられて乗員室内を撮影するように配置されたカメラである。車速センサ30は、車輪速などに基づいて車両の車速を検出する。加速度センサ32は、例えば、車両の前後方向の加速度を検出したり、車両の左右方向(横方向)の加速度を検出したりする。ミリ波レーダー34は、自車両と前方の車両との車間距離や相対速度を検知したり、自車両と後方の車両との車間距離や相対速度を検知したりする。
【0015】
アクセルセンサ36は、運転者のアクセルペダルの踏み込み量としてのアクセル開度などを検出する。ブレーキセンサ38は、運転者のブレーキペダルの踏み込み量としてのブレーキポジションなどを検出する。クルーズコントロールスイッチ40は、運転席のハンドル近傍に配置され、クルーズコントロールの実行と非実行とを切り替えるためのスイッチである。クルーズコントロールとしては、自車両の車速を略一定に保持しながら走行する車速制御や、自車両と先行車両との車間距離を略一定に保持しながら走行する車間制御を挙げることができる。
【0016】
電子制御ユニット50は、CPU51やROM52、RAM53、フラッシュメモリ54、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。電子制御ユニット50は、クルーズコントロールスイッチ40がオフのときには、アクセルセンサ36からのアクセル開度やブレーキセンサ38からのブレーキポジション、車速センサ30からの車速などに基づいて、駆動装置に要求される要求トルクやブレーキ装置に要求される要求制動力を設定し、設定した要求トルクについては駆動アクチュエータ60に送信し、設定した要求制動力についてはブレーキアクチュエータ64に送信する。
【0017】
電子制御ユニット50は、クルーズコントロールスイッチ40がオンのときには、車速制御の場合には自車両の車速が目標車速となるように要求駆動力や要求制動力を設定し、車間制御の場合には自車両と前方の車両との車間距離が目標車間距離となるように要求駆動力や要求制動力を設定し、設定した要求トルクについては駆動アクチュエータ60に送信し、設定した要求制動力についてはブレーキアクチュエータ64に送信する。
【0018】
駆動アクチュエータ60は、電子制御ユニット50により設定された要求トルクが駆動装置62から駆動軸に出力されるように駆動装置62を駆動制御する。
【0019】
ブレーキアクチュエータ64は、電子制御ユニット50により設定された要求制動力がブレーキ装置66により車両に作用するようにブレーキ装置66を制御する。
【0020】
操舵アクチュエータ68は、操舵装置70における操舵位置が電子制御ユニット50により設定された目標操舵位置となるように操舵装置70を駆動制御する。
【0021】
ホログラフィック光学装置72は、フロントウインドウ74に種々のホログラムを表示するAR(Augmented Reality)装置として構成されており、車両のダッシュボードに組み込まれている。
【0022】
ナビゲーションシステム80は、設定した目的地に自車両を誘導するシステムであり、地図情報データベース82と表示部84とを備える。地図情報データベース82には、地図情報として、各区間における道路の距離情報や幅員情報、種別情報(一般道路、高速道路)、法定速度情報などが記憶されている。表示部84は、地図情報などを表示する。ナビゲーションシステム80は、目的地が設定されると、目的地の情報とGPS24により取得した現在地(現在の自車両の位置)の情報と地図情報データベース82に記憶されている情報とに基づいて走行ルートを設定し、設定した走行ルートを表示部84に表示してルート案内を行なう。
【0023】
DCM86は、電子制御ユニット50やナビゲーションシステム80がクラウドサーバCSなどと通信を行なうための通信装置である。電子制御ユニット50やナビゲーションシステム80からDCM86を介してクラウドサーバCSに送信する自車両の車両情報としては、例えば、自車両の走行履歴(例えば、各時刻の自車両の位置や車速、駆動力、クルーズコントロールスイッチ40のオンオフなど)や駐車履歴(例えば、駐車位置や駐車時間など)などを挙げることができる。
【0024】
クラウドサーバCSは、各車両と無線により通信可能に構成されている。このクラウドサーバCSには、各車両の車両情報や、上述の地図情報データベース82と同様の情報などが記憶されている。クラウドサーバCSは、各車両から対象車両を順に選択し、各車両の車両情報(運転特性)に基づいて、対象車両について、任意の他車両(運転者)のうち運転特性が対象車両(運転者)にマッチングするマッチング車両を設定して対象車両に送信し、対象車両の電子制御ユニット50のCPU51は、対象車両の停車中にマッチング車両をフラッシュメモリ54に記憶させる。各車両の運転特性としては、例えば、クルーズコントロールスイッチ40がオフで且つ自車両の前方の所定距離内に他車両が存在する場合における、自車両を加速させる際のアクセル開度や、自車両を減速させる際のブレーキポジション、自車両が定速走行する際の車速、自車両が定速走行する際の自車両と前方の他車両との車間距離などを挙げることができる。なお、マッチング車両が複数である場合、マッチングの程度に応じて、優先順位を付与するのが好ましい。例えば、複数のマッチング車両のうちクルーズコントロールの車間制御において先行車両に設定した回数が多いほど、自車両との走行時間帯や走行エリアなどが似ていると考えられるため、優先順位を高くすることが考えられる。
【0025】
次に、こうして構成された実施例の自動車20の動作、特に、クルーズコントロールの車間制御のために先行車両を設定する際の動作について説明する。
図2は、電子制御ユニット50により実行される処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、クルーズコントロールの車間制御を実行していないときに繰り返し実行される。
【0026】
図2の処理ルーチンが実行されると、電子制御ユニット50は、最初に、クルーズコントロールスイッチ40がオンであるか否かを判定し(ステップS100)、クルーズコントロールスイッチ40がオフであると判定したときには、本ルーチンを終了する。
【0027】
ステップS100でクルーズコントロールスイッチ40がオンであると判定したときには、フラッシュメモリ54に記憶されているマッチング車両が自車両(自動車20)から所定距離内に存在するか否かを判定する(ステップS110)。
【0028】
ステップS110でマッチング車両が自車両から所定距離内に存在しないと判定したときには、本ルーチンを終了する。この場合、例えば、自車両の前方の所定距離内に他車両が存在するときには、その他車両(他車両が複数存在するときには、例えば、最も近い他車両)を先行車両に設定して車間制御を実行し、自車両の前方の所定距離内に他車両が存在しないときには、車速制御を実行することが考えられる。
【0029】
ステップS110でマッチング車両が自車両から所定距離内に存在すると判定したときには、そのマッチング車両を追従対象の先行車両に設定して(ステップS120)、本ルーチンを終了する。ここで、自車両から所定距離内にマッチング車両が複数存在するときには、優先順位の最も高いものを先行車両に設定すればよい。この場合、例えば、先行車両をマーキングするためのホログラム(画像)をホログラフィック光学装置72によりフロントウインドウ74に表示するなどして、運転者に報知するのが好ましい。こうして先行車両を設定すると、その先行車両に追従するように車間制御を実行する。このようにして、自車両と運転特性のマッチングするマッチング車両を先行車両に設定することにより、マッチング車両以外の他車両を先行車両に設定する場合に比して、車間制御を実行しているときの運転特性を運転者の好みにより近づけることができる。
【0030】
実施例では、フラッシュメモリ54に記憶されているマッチング車両を用いて、そのマッチング車両が自車両から所定距離内に存在するか否かを判定するから、走行中に、自車両から所定距離内の他車両から運転特性を受信して自車両の運転特性とその他車両の運転特性とを比較してその他車両がマッチング車両に該当するか否かを判定するものに比して、マッチング車両を先行車両に設定して車間制御の実行を開始する際の電子制御ユニット50のCPU51の処理負荷が比較的高くなるのを抑制することができる。
【0031】
以上説明した実施例の自動車20に搭載される追従走行支援装置としての電子制御ユニット50では、CPU51は、クルーズコントロールスイッチ40がオンにされたときにおいて、フラッシュメモリ54に記憶されているマッチング車両が自車両(自動車20)から所定距離内に存在するときには、マッチング車両を追従車両の先行車両に設定し、その先行車両に追従するように車間制御を実行する。これにより、マッチング車両を先行車両に設定して車間制御の実行を開始する際の電子制御ユニット50のCPU51の処理負荷が比較的高くなるのを抑制することができる。
【0032】
実施例の電子制御ユニット50では、クルーズコントロールスイッチ40がオンにされたときにおいて、フラッシュメモリ54に記憶されているマッチング車両が自車両(自動車20)から所定距離内に存在するときには、マッチング車両を追従対象の先行車両に設定するものとした。しかし、このときには、マッチング車両を先行車両の候補である候補車両に設定して自車両の運転者に報知して候補車両を先行車両に設定するか否かの判断を運転者に求め、運転者により候補車両を先行車両に設定する旨の指示が行なわれると、候補者両を先行車両に設定するものとしてもよい。候補車両の報知方法としては、例えば、候補車両をマーキングするためのホログラム(画像)をホログラフィック光学装置72によりフロントウインドウ74に表示することが考えられる。
【0033】
実施例では、クラウドサーバCSは、各車両の車両情報(運転特性)に基づいて、各車両についてマッチング車両を設定するものとした。しかし、運転特性に加えて、車のボディタイプや、走行予定時間帯や走行予定エリア(出発予定地や目的予定地、走行ルートなど)なども考慮して、各車両についてのマッチング車両を設定するものとしてもよい。車のボディタイプについては、各車両から取得することができる。また、走行予定時間帯や走行予定エリアについては、各車両のナビゲーションシステム80や、ソーシャルネットワークサービス(SNS)の投稿情報などからデータを取得することできる。
【0034】
実施例では、クラウドサーバCSは、各車両についてマッチング車両を設定して各車両に送信し、各車両の電子制御ユニット50のCPU51は、マッチング車両を対象車両の停車中にフラッシュメモリ54に記憶させるものとした。しかし、クラウドサーバCSがマッチング車両を設定するのに代えて、各車両がそれぞれ停車中にマッチング車両を設定するものとしてもよい。
【0035】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、フラッシュメモリ54が「記憶部」に相当し、CPU51が「処理部」に相当する。
【0036】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0037】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、追従走行支援装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
20 自動車、22 イグニッションスイッチ、24 GPS、26 前方カメラ、28 室内カメラ、30 車速センサ、32 加速度センサ、34 ミリ波レーダー、36 アクセルセンサ、38 ブレーキセンサ、40 クルーズコントロールスイッチ、50 電子制御ユニット、51 CPU、52 ROM、53 RAM、54 フラッシュメモリ、60 駆動アクチュエータ、62 駆動装置、64 ブレーキアクチュエータ、66 ブレーキ装置、68 操舵アクチュエータ、70 操舵装置、72 ホログラフィック光学装置、74 フロントウインドウ、76 メーター、80 ナビゲーションシステム、82 地図情報データベース、84 表示部、86 DCM。