(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-07
(45)【発行日】2025-07-15
(54)【発明の名称】推定システム、推定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/04 20120101AFI20250708BHJP
【FI】
G06Q30/04
(21)【出願番号】P 2024029743
(22)【出願日】2024-02-29
【審査請求日】2024-02-29
(73)【特許権者】
【識別番号】399037405
【氏名又は名称】楽天グループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青柳 友佳
【審査官】加舎 理紅子
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-080573(JP,A)
【文献】特開2022-050301(JP,A)
【文献】特開2008-269337(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第117010884(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の対象者の各々に対し、所定のタイミングに所定の手段で所定のアクションが行われた場合に得られる効果に関する効果情報を取得する効果情報取得部と、
前記複数の対象者の各々に対し、前記タイミングに前記手段で前記アクションが行われた場合に要するコストに関するコスト情報を取得するコスト情報取得部と、
前記アクションに許容されるコストの制約に関する制約情報を取得する制約情報取得部と、
前記複数の対象者の各々の前記効果情報及び前記コスト情
報に基づいて
、前記アクションが行われる前記対象者と、前記タイミング及び前記手段の少なくとも一方と、の組み合わせ
の候補ごとに、当該対象者から得られる前記効果の効率に関する指標を計算し、前記組み合わせの前記コストの合計値が、前記制約情報が示す制約の範囲であり、かつ、前記組み合わせの前記指標の合計値が他の前記組み合わせに比べて相対的に高くなるように、前記組み合わせを推定する推定部と、
を含む推定システム。
【請求項2】
前記効果情報取得部は、前記複数の対象者の各々に対し、前記タイミングに前記手段で前記アクションが行われた場合に前記効果が得られる確率と、当該対象者から得られる前記効果の程度と、に基づいて、当該対象者の前記効果情報を取得する、
請求項1に記載の推定システム。
【請求項3】
前記コスト情報取得部は、前記複数の対象者の各々に対し、前記タイミングに前記手段で前記アクションが行われた場合の応答の確率を計算し、前記複数の対象者の各々の当該確率に基づいて、前記コスト情報を取得する、
請求項1又は2に記載の推定システム。
【請求項4】
前記コスト情報取得部は、前記複数の対象者の各々に対し、前記タイミングに前記手段で前記アクションが行われた場合に前記効果が得られる確率を計算し、前記複数の対象者の各々の当該確率に基づいて、前記コスト情報を取得する、
請求項1又は2に記載の推定システム。
【請求項5】
前記推定システムは、前記複数の対象者の各々に対し、将来的に前記アクションが必要になるリスクに関する将来リスク情報を取得する将来リスク情報取得部を更に含み、
前記推定部は、前記将来リスク情報に
応じた重み係数に基づいて、前記
候補ごとに前記指標を
計算する、
請求項1又は2に記載の推定システム。
【請求項6】
前記将来リスク情報取得部は、前記複数の対象者の各々に前記リスクが発生する確率と、当該リスクの程度と、に基づいて、前記将来リスク情報を取得する、
請求項
5に記載の推定システム。
【請求項7】
前記複数の対象者の各々は、所定のサービスを利用し、
前記将来リスク情報取得部は、前記複数の対象者の各々による前記サービスの過去の利用状況に基づいて、前記将来リスク情報を取得する、
請求項
5に記載の推定システム。
【請求項8】
前記推定部は、前記効果が相対的に大きい前記対象者に対して優先的に前記アクションが行われるように
定められた重み係数に基づいて、前記
候補ごとに前記指標を
計算する、
請求項1又は2に記載の推定システム。
【請求項9】
前記制約情報取得部は、前記タイミングに応じた前記制約が定められた前記制約情報を取得し、
前記推定部は、前記タイミングに応じた前記制約の範囲内で、前記
合計値が前記他の組み合わせに比べて相対的に高くなるように、前記組み合わせを推定する、
請求項1又は2に記載の推定システム。
【請求項10】
前記制約情報取得部は、前記手段に応じた前記制約が定められた前記制約情報を取得し、
前記推定部は、前記手段に応じた前記制約の範囲内で、前記
合計値が前記他の組み合わせに比べて相対的に高くなるように、前記組み合わせを推定する、
請求項1又は2に記載の推定システム。
【請求項11】
前記推定システムは、訓練用の前記効果情報及び前記コスト情報と、訓練用の前記組み合わせと、の関係が学習された初期値推定モデルを記憶する初期値推定モデル記憶部を更に含み、
前記推定部は、前記複数の対象者の各々の前記効果情報及び前記コスト情報と、前記初期値推定モデルと、に基づいて、前記組み合わせの初期値を取得し、当該初期値
を変更して前記組み合わせを推定する、
請求項1又は2に記載の推定システム。
【請求項12】
前記推定システムは、訓練用の前記対象者の特徴に関する対象者特徴情報と、前記効果が得られる確率と、の関係が学習された確率推定モデルを記憶する確率推定モデル記憶部を更に含み、
前記効果情報取得部は、前記複数の対象者の各々の
特徴に関する対象者特徴情報と、前記確率推定モデルと、に基づいて、当該対象者から前記効果が得られる確率を取得し、前記複数の対象者の各々の当該確率
と、当該対象者から得られる前記効果の程度と、に基づいて、前記効果情報を取得する、
請求項1又は2に記載の推定システム。
【請求項13】
前記複数の対象者の各々は、クレジットカードの支払を滞納した滞納者であり、
前記手段は、前記滞納者に対する督促のための連絡手段であり、
前記アクションは、前記督促であり、
前記コストは、前記督促のためのコストである、
請求項1又は2に記載の推定システム。
【請求項14】
コンピュータが、
複数の対象者の各々に対し、所定のタイミングに所定の手段で所定のアクションが行われた場合に得られる効果に関する効果情報を取得する効果情報取得ステップと、
前記複数の対象者の各々に対し、前記タイミングに前記手段で前記アクションが行われた場合に要するコストに関するコスト情報を取得するコスト情報取得ステップと、
前記アクションに許容されるコストの制約に関する制約情報を取得する制約情報取得ステップと、
前記複数の対象者の各々の前記効果情報及び前記コスト情
報に基づいて
、前記アクションが行われる前記対象者と、前記タイミング及び前記手段の少なくとも一方と、の組み合わせ
の候補ごとに、当該対象者から得られる前記効果の効率に関する指標を計算し、前記組み合わせの前記コストの合計値が、前記制約情報が示す制約の範囲であり、かつ、前記組み合わせの前記指標の合計値が他の前記組み合わせに比べて相対的に高くなるように、前記組み合わせを推定する推定ステップと、
を
実行する推定方法。
【請求項15】
複数の対象者の各々に対し、所定のタイミングに所定の手段で所定のアクションが行われた場合に得られる効果に関する効果情報を取得する効果情報取得部、
前記複数の対象者の各々に対し、前記タイミングに前記手段で前記アクションが行われた場合に要するコストに関するコスト情報を取得するコスト情報取得部、
前記アクションに許容されるコストの制約に関する制約情報を取得する制約情報取得部、
前記複数の対象者の各々の前記効果情報及び前記コスト情
報に基づいて
、前記アクションが行われる前記対象者と、前記タイミング及び前記手段の少なくとも一方と、の組み合わせ
の候補ごとに、当該対象者から得られる前記効果の効率に関する指標を計算し、前記組み合わせの前記コストの合計値が、前記制約情報が示す制約の範囲であり、かつ、前記組み合わせの前記指標の合計値が他の前記組み合わせに比べて相対的に高くなるように、前記組み合わせを推定する推定部、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、推定システム、推定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クレジットカードの支払を滞納した対象者に対する督促等のアクションが行われている。例えば、特許文献1には、機械学習の手法を利用して用意された学習モデルに基づいて、クレジットカードの支払を滞納した複数の対象者のうち、カード会社のオペレータが電話等の督促の効果が高い対象者を推定し、オペレータが当該対象者に対して督促を行うシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術は、クレジットカードの支払を滞納した複数の対象者の各々に対する督促の効果を推定できるが、全体としての督促の効率化に着目した推定を行うことはできなかった、この点は、特許文献1のようなクレジットカードの支払の督促とは異なる他の場面でも同様である。従来の技術では、全体としての効率化を考慮して、対象者に対するアクションの要否を決定することができなかった。
【0005】
本開示の目的の1つは、対象者に対するアクションを効率化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る推定システムは、複数の対象者の各々に対し、所定のタイミングに所定の手段で所定のアクションが行われた場合に得られる効果に関する効果情報を取得する効果情報取得部と、前記複数の対象者の各々に対し、前記タイミングに前記手段で前記アクションが行われた場合に要するコストに関するコスト情報を取得するコスト情報取得部と、前記アクションに許容されるコストの制約に関する制約情報を取得する制約情報取得部と、前記複数の対象者の各々の前記効果情報及び前記コスト情報と、前記制約情報と、に基づいて、前記制約の範囲で全体として効率的に前記効果が得られるように、前記アクションが行われる前記対象者と、前記タイミング及び前記手段の少なくとも一方と、の組み合わせを推定する推定部と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、対象者に対するアクションを効率化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】推定システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図2】推定システムで実現される機能の一例を示す図である。
【
図4】確率推定モデルの入力及び出力の関係の一例を示す図である。
【
図5】効果情報取得部、コスト情報取得部、制約情報取得部、及び推定部の各々の処理の一例を示す図である。
【
図6】推定システムで実行される処理の一例を示す図である。
【
図7】担当者端末に表示される画面の一例を示す図である。
【
図8】変形例で実現される機能の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[1.推定システムのハードウェア構成]
本開示に係る推定システム、推定方法、及びプログラムの実施形態の一例を説明する。
図1は、推定システムのハードウェア構成の一例を示す図である。例えば、推定システム1は、サーバ10、担当者端末20、及び対象者端末30を含む。サーバ10、担当者端末20、及び対象者端末30の各々は、インターネット、LAN、又は公衆電話回線等のネットワークNに接続される。
図1では、サーバ10、担当者端末20、及び対象者端末30の各々が1台ずつ示されているが、サーバ10、担当者端末20、及び対象者端末30の少なくとも1つは、複数台存在してもよい。
【0010】
サーバ10は、サーバコンピュータである。例えば、サーバ10は、制御部11、記憶部12、及び通信部13を含む。制御部11は、少なくとも1つのプロセッサを含む。記憶部12は、RAM等の揮発性メモリと、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリと、の少なくとも一方を含む。通信部13は、有線通信用の通信インタフェースと、無線通信用の通信インタフェースと、の少なくとも一方を含む。
【0011】
担当者端末20は、後述の担当者の端末である。例えば、担当者端末20は、スマートフォン、タブレット、スマートフォンに分類されない携帯電話、固定電話、パーソナルコンピュータ、又はウェアラブル端末である。担当者端末20は、制御部21、記憶部22、通信部23、操作部24、及び表示部25を含む。制御部21、記憶部22、及び通信部23のハードウェア構成は、それぞれ制御部11、記憶部12、及び通信部13と同様であってよい。操作部24は、タッチパネル又はマウス等の入力デバイスである。表示部25は、液晶又は有機EL等のディスプレイである。
【0012】
対象者端末30は、後述の対象者の端末である。例えば、対象者端末30は、スマートフォン、タブレット、スマートフォンに分類されない携帯電話、固定電話、パーソナルコンピュータ、又はウェアラブル端末である。例えば、対象者端末30は、制御部31、記憶部32、通信部33、操作部34、及び表示部35を含む。制御部31、記憶部32、通信部33、操作部34、及び表示部35のハードウェア構成は、それぞれ制御部11、記憶部12、通信部13、操作部24、及び表示部25と同様であってよい。
【0013】
なお、記憶部12,22,32に記憶されるプログラムは、ネットワークNを介して、サーバ10、担当者端末20、又は対象者端末30に供給されてもよい。また、コンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体を読み取る読取部(例えば、メモリカードスロット)と、外部機器とデータの入出力をするための入出力部(例えば、USBポート)と、の少なくとも一方が、サーバ10、担当者端末20、又は対象者端末30に含まれてもよい。例えば、情報記憶媒体に記憶されたプログラムが、読取部及び入出力部の少なくとも一方を介して、サーバ10、担当者端末20、又は対象者端末30に供給されてもよい。
【0014】
また、推定システム1は、少なくとも1つのコンピュータを含めばよい。推定システム1に含まれるコンピュータは、
図1の例に限られない。例えば、推定システム1は、サーバ10及び担当者端末20だけを含んでもよい。この場合、対象者端末30は、推定システム1の外部に存在する。推定システム1は、サーバ10だけを含んでもよい。この場合、担当者端末20及び対象者端末30は、推定システム1の外部に存在する。例えば、推定システム1は、サーバ10と、
図1に示さない他のコンピュータと、を含んでもよい。
【0015】
[2.推定システムの概要]
本実施形態では、複数の対象者の各々に対し、所定のタイミングに所定の手段で所定のアクションが行われる。対象者とは、所定のアクションの対象となる者である。本実施形態では、対象者に対し、所定のアクションが行われないこともあるので、対象者は、所定のアクションが行われる候補の者ということもできる。例えば、対象者は、所定のサービスを利用する者である。所定のサービスは、対象者に対する何らかのアクションが発生する可能性があるサービスである。
【0016】
本実施形態では、クレジットカードサービスが所定のサービスに相当する場合を例に挙げる。このため、クレジットカードサービスについて説明している箇所は、所定のサービスと読み替えることができる。所定のサービスは、任意のサービスであってよい。所定のサービスは、クレジットカードサービスに限られない。例えば、所定のサービスは、電子商取引サービス、決済サービス、旅行予約サービス、通信サービス、金融サービス、オンラインフリーマーケットサービス、又はその他のサービスであってもよい。対象者は、所定のサービスを利用していなくてもよい。対象者は、所定のサービスにおける潜在的な顧客であってもよい。
【0017】
所定のタイミングとは、所定のアクションが行われるタイミングである。所定のタイミングは、あるピンポイントの1時点であってもよいし、ある程度の長さ(例えば、1時間、1日、又は1週間)を有してもよい。本実施形態では、所定のタイミングが日付で示される場合を例に挙げるが、所定のタイミングは、日付だけではなく時刻も含む日時で示されてもよい。所定のタイミングは、日付の情報を含まずに時刻だけで示されてもよい。所定のタイミングは、日付及び時刻以外の他の情報で示されてもよい。所定のタイミングは、時間的な情報で示されるようにすればよい。例えば、所定のタイミングは、曜日、平日、週末、月初、月末、上旬、中旬、下旬、又は他の情報で示されてもよい。1つの所定のタイミングだけが存在してもよいし、複数の所定のタイミングが存在してもよい。
【0018】
所定の手段とは、所定のアクションのために利用される手段である。別の言い方をすれば、所定の手段は、所定のアクションの具体的な方法である。1つの所定の手段だけが存在してもよいし、複数の所定の手段が存在してもよい。例えば、対象者に対する連絡が所定のアクションに相当する場合には、所定の手段は、連絡手段である。連絡手段は、公知の種々の手段であってよい。例えば、連絡手段は、人間による架電である人架電、ロボットによる架電であるロボット架電、SMS(Short Message Service)、電子メール、SNS(Social Networking Service)、メッセージアプリ、チャット、スマホアプリ等のアプリケーションの通知機能、又は他の手段であってもよい。
【0019】
なお、所定の手段は、連絡手段に限られない。所定の手段は、所定のアクションに応じた手段であればよい。例えば、広告の提示が所定のアクションに相当する場合には、所定の手段は、広告として利用される広告媒体である。例えば、広告媒体は、バナー、プッシュ、ポップアップ、電子メール、紙のダイレクトメール、公共放送、デジタルサイネージ、又は他の媒体であってもよい。所定のサービスの営業が所定のアクションに相当する場合には、所定の手段は、営業で利用される営業方法である。例えば、営業方法は、先述した各種連絡手段、直接訪問、イベント会場等への出店、又は他の手段であってもよい。所定のアクションが、連絡、広告の提示、及び営業以外の他の行為である場合には、所定の手段は、他の行為で利用される手段であればよい。
【0020】
所定のアクションとは、対象者に対して行われる行為である。所定のアクションは、任意の目的で行われる行為であってよい。本実施形態では、対象者に対する連絡が所定のアクションに相当する場合を例に挙げる。所定のアクションは、任意の行為であってよい。所定のアクションは、対象者に対する連絡に限られない。例えば、所定のアクションは、広告の提示であってもよいし、営業であってもよい。所定のアクションは、連絡、広告の提示、及び営業以外の他の行為であってもよい。所定のアクションを行う者は、任意の者であってよい。所定のアクションを行う者は、対象者以外の他の者であればよい。例えば、所定のアクションを行う者は、所定のサービスを運営する事業者の従業員、当該事業者に協力する他の事業者の従業員、アルバイト、又は他のものであってもよい。
【0021】
本実施形態では、クレジットカードサービスにおける債権回収の場面に推定システム1が利用される場合を例に挙げる。例えば、複数の対象者の各々は、クレジットカードの支払を滞納した滞納者である。滞納者は、銀行口座の残高不足等によって、期日までにクレジットカードの引き落としができなかった者である。所定の手段は、滞納者に対する督促のための連絡手段である。本実施形態で連絡手段について説明している箇所は、所定の手段と読み替えることができる。督促は、対象者が滞納した支払の催促である。所定の手段は、督促で利用される手段なので、督促手段ということもできる。所定の手段は、債権回収で利用される手段なので、回収手段ということもできる。所定のアクションは、滞納者に対する督促である。本実施形態で督促について説明している箇所は、所定のアクションと読み替えることができる。
【0022】
本実施形態では、クレジットカードを発行したカード会社に勤務する担当者が、対象者に対する督促を行う場合を例に挙げる。更に、担当者が、人架電、ロボット架電、及びSMSといった3つの連絡手段を利用可能である場合を例に挙げる。対象者は、担当者からの連絡に対し、応答することもあるし、応答しないこともある。対象者は、担当者からの連絡に応答したからといって、滞納した支払を行うとは限らない。逆に、対象者は、担当者からの連絡に応答しなかったとしても、滞納した支払を行うこともある。
【0023】
例えば、担当者を管理する管理者は、より多くの債権を回収できるように、どの対象者に対し、どのタイミングで、どの連絡手段で督促を行えばよいかを計画する。一方で、担当者が対象者に督促を行うには、連絡手段に応じたコストがかかる。本実施形態では、コストは、督促のためのコストである。コストは、カード会社に生じる負担である。例えば、コストは、金銭的なコスト、時間的なコスト、督促の回数、ハードウェアのリソースのコスト、ソフトウェアのリソースのコスト、又は他のコストであってもよい。
【0024】
例えば、人架電で督促が行われる場合、コストとして、人件費及び電話代がかかる。ロボット架電で督促が行われる場合、コストとして、電話代がかかる。カード会社が有料のロボット架電サービスを利用する場合には、コストとして、ロボット架電サービスの利用料がかかる。SMSで督促が行われる場合、コストとして、SMSの利用料金がかかる。カード会社に許容されるコストは、予算、人的なリソース、ハードウェアのリソース、ソフトウェアのリソース、又は他の事情によって異なる。担当者は、コストの制約の範囲内で、効率的に債権回収を行う必要がある。
【0025】
しかしながら、管理者が、どの対象者に対し、どのタイミングで、どの連絡手段で督促を行えばよいかを計画しようとしても、これらの組み合わせは、無数に存在する。以降、これらの組み合わせを、督促の組み合わせという。督促の組み合わせは、無数に存在するので、管理者が効率的な計画を立てるのは、非常に困難である。ある特定の対象者からの債権回収が成功したとしても、クレジットカードサービスの全体として債権回収が効率化されなければ、カード会社は、対象者の滞納分を補填するので、損失を被ることになる。
【0026】
そこで、本実施形態の推定システム1は、カード会社に許容されるコストの制約の範囲で、クレジットカードサービスの全体として債権回収が効率化されるように、督促の組み合わせを推定する。担当者は、推定システム1が推定した督促の組み合わせに基づいて、対象者に対する督促を行う。これにより、推定システム1は、対象者に対する督促を効率化することができるようになっている。以降、推定システム1の詳細を説明する。
【0027】
[3.推定システムで実現される機能]
図2は、推定システム1で実現される機能の一例を示す図である。本実施形態では、推定システム1の主な機能がサーバ10で実現される場合を例に挙げる。例えば、サーバ10は、データ記憶部100、確率推定モデル記憶部101、効果情報取得部102、コスト情報取得部103、制約情報取得部104、及び推定部105を含む。データ記憶部100及び確率推定モデル記憶部101の各々は、記憶部12によって実現される。効果情報取得部102、コスト情報取得部103、制約情報取得部104、及び推定部105の各々は、制御部11によって実現される。
【0028】
[データ記憶部]
データ記憶部100は、督促の組み合わせの推定に必要なデータを記憶する。例えば、データ記憶部100は、対象者データベースDBを記憶する。
【0029】
図3は、対象者データベースDBの一例を示す図である。対象者データベースDBは、対象者に関する各種データが格納されたデータベースである。例えば、対象者データベースDBには、対象者ID、クレジットカード番号、個人情報、デモグラフィック情報、滞納情報、及び利用状況情報が格納される。なお、対象者データベースDBには、任意のデータが格納されてよい。対象者データベースDBに格納されるデータは、
図3の例に限られない。例えば、対象者データベースDBには、支払を滞納していないユーザ(即ち、対象者には該当しないユーザ)のデータが格納されていてもよい。
【0030】
対象者IDは、対象者を識別可能な対象者識別情報の一例である。このため、対象者IDと記載した箇所は、対象者識別情報と読み替えることができる。対象者識別情報は、対象者ID以外の他の情報であってもよい。対象者識別情報は、対象者を何らかの形で識別可能な情報であればよい。例えば、対象者識別情報は、対象者のメールアドレス、電話番号、又はその他の情報であってもよい。クレジットカード番号が対象者識別情報として利用されてもよい。なお、対象者IDは、クレジットカードサービスへのログインアカウントとして利用されてもよい。
【0031】
対象者データベースDBに格納される個人情報は、対象者の個人情報である。例えば、個人情報は、対象者の氏名、住所、電話番号、メールアドレス、又はこれらの組み合わせを示す。デモグラフィック情報は、対象者の特徴に関する情報である。個人情報がデモグラフィック情報に相当することもあるし、デモグラフィック情報が個人情報に相当することもある。例えば、デモグラフィック情報は、対象者の性別、年齢若しくは年齢層、職業、年収、家族構成、又はこれらの組み合わせを示す。個人情報及びデモグラフィック情報の各々は、公知の情報であってよい。
【0032】
滞納情報は、対象者が滞納した支払に関する情報である。例えば、滞納情報は、滞納額、対象者が滞納した支払の内訳、対象者が滞納した支払の引き落とし日、又はこれらの組み合わせである。滞納額は、対象者が滞納した支払の総額である。対象者が滞納した支払の内訳は、当該支払が示す決済の詳細である。例えば、対象者が滞納した支払の内訳は、対象者が利用したクレジットカードの決済日、決済額、決済場所(例えば、店舗等)、又はこれらの組み合わせである。ある対象者が支払を滞納すると、サーバ10は、当該対象者の対象者IDに関連付けられた滞納情報を更新する。
【0033】
利用状況情報は、対象者によるクレジットカードの利用状況に関する情報である。利用状況情報は、対象者が滞納しなかった支払に関する情報も含んでもよい。利用状況情報は、クレジットカードの利用明細であってもよい。例えば、利用状況情報は、対象者が利用したクレジットカードの決済日、決済額、決済場所(例えば、店舗等)、又はこれらの組み合わせを示す。利用状況情報は、クレジットカードの分割払い、ボーナス払い、又は他の利用状況を示してもよい。利用状況情報は、各月における対象者の支払額を示してもよい。る対象者がクレジットカードサービスを利用すると、サーバ10は、当該対象者の対象者IDに関連付けられた利用状況情報を更新する。
【0034】
なお、データ記憶部100に記憶されるデータは、対象者データベースDBに限られない。データ記憶部100は、督促の組み合わせの推定に必要なデータを記憶すればよい。例えば、データ記憶部100は、後述の確率推定モデルM1の学習に必要な訓練データベースを記憶してもよい。データ記憶部100は、カード会社の担当者用の管理ツールを記憶してもよい。
【0035】
[確率推定モデル記憶部]
確率推定モデル記憶部101は、訓練用の対象者の特徴に関する対象者特徴情報と、当該訓練用の対象者から効果が得られる確率と、の関係が学習された確率推定モデルM1を記憶する。訓練用の対象者は、実在の対象者であってもよいし、架空の対象者であってもよい。訓練用の対象者は、債権回収が計画されるクレジットカードサービスとは異なる他のクレジットカードサービスの対象者であってもよい。
【0036】
対象者特徴情報は、対象者の特徴に関する情報である。対象者特徴情報は、督促が行われた場合に効果が得られる確率と相関関係のある特徴を示す。確率推定モデルM1には、当該相関関係が学習される。対象者特徴情報は、当該相関関係が特にない情報を含んでもよい。例えば、対象者特徴情報は、対象者のクレジットカード番号、個人情報、デモグラフィック情報、滞納情報、利用状況情報、過去の督促履歴、又はこれらの組み合わせであってもよい。対象者特徴情報は、過去の債権回収の履歴、与信系の情報、又は他の情報を含んでいてもよい。本実施形態では、対象者特徴情報がデモグラフィック情報である場合を例に挙げる。
【0037】
効果は、督促の成功である。別の言い方をすれば、効果は、督促が行われる目的の達成である。例えば、効果は、督促によって債権が回収されることである。効果は、督促によって回収される金額であってもよい。効果は、推定システム1が利用される場面に応じて異なってよい。効果は、債権の回収ではなく、対象者との連絡が取れることであってもよい。例えば、所定のアクションとして、督促以外の目的で連絡(例えば、テレフォンアポイント)が行われる場合には、効果は、対象者と連絡が取れることである。所定のアクションとして、広告が提示される場合には、効果は、対象者が広告を見ること、対象者が広告を選択すること、又は対象者が広告の商品若しくはサービスを購入することである。所定のアクションとして、営業が行われる場合には、効果は、営業が成功することである。例えば、効果は、契約が取れることである。
【0038】
確率推定モデルM1は、効果が得られる確率を推定するモデルである。例えば、確率推定モデルM1は、あるタイミングで、ある手段で、督促が行われた場合に、どの程度の確率で対象者が支払を行うかを推定するモデルである。確率推定モデルM1は、機械学習の手法で作成されたモデルである。機械学習の手法は、公知の種々の手法を利用可能である。機械学習の手法は、教師有り学習、半教師有り学習、又は教師無し学習の何れの手法であってもよい。例えば、確率推定モデルM1は、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、大規模言語モデル、又はその他のモデルであってもよい。機械学習という言葉の意味は、諸説あるが、本実施形態の機械学習は、公知の種々の意味を含む。例えば、本実施形態の機械学習は、AI(Artificial Intelligence)及び深層学習も含む意味である。これらの機械学習の意味は、確率推定モデルM1以外の他のモデル(例えば、後述の初期値推定モデルM2)も同様である。
【0039】
例えば、確率推定モデル記憶部101には、対象者特徴情報と、効果が得られる確率と、の関係が学習された学習済みの確率推定モデルM1が記憶される。本実施形態では、サーバ10が確率推定モデルM1の学習を行う場合を例に挙げるが、サーバ10以外の他のコンピュータが確率推定モデルM1の学習を行ってもよい。例えば、担当者端末20が確率推定モデルM1の学習を行ってもよい。確率推定モデルM1は、埋め込み表現の計算等の一連の処理を行うプログラムと、当該プログラムによって参照されるパラメータと、を含む。学習によって、確率推定モデルM1のパラメータが調整される。確率推定モデルM1のプログラム及びパラメータは、公知のプログラム及びパラメータと同様であってよい。例えば、確率推定モデルM1のプログラムは、データの入力を受け付ける入力層、埋め込み表現の計算等を行う中間層、及び推定結果を出力する出力層といった複数の層を含んでもよい。確率推定モデルM1のパラメータは、重み及びバイアスであってもよい。
【0040】
図4は、確率推定モデルM1の入力及び出力の関係の一例を示す図である。確率推定モデルM1の入力及び出力の各々のデータ形式は、基本的に推定時及び学習時で同様である。
図4の出力の数値は、効果が得られる確率である。本実施形態では、連絡手段ごとに、確率推定モデルM1が用意されている場合を例に挙げる。例えば、人架電、ロボット架電、及びSMSといった3つの連絡手段が用意されていたとすると、
図4のように、人架電用の確率推定モデルM1、ロボット架電用の確率推定モデルM1、及びSMS用の確率推定モデルM1といった3つの確率推定モデルM1が用意されている。
【0041】
例えば、データ記憶部100は、確率推定モデルM1の学習に必要な訓練データが格納された訓練データベースを記憶する。訓練データは、学習時に確率推定モデルM1に入力される入力部分と、学習時に正解となる出力部分と、を含む。訓練データの入力部分は、推定時に確率推定モデルM1に入力される入力データと基本的に同じ形式である。訓練データの出力部分は、推定時に確率推定モデルM1から出力される出力データと基本的に同じ形式である。なお、訓練データの入力部分は、多少であれば、推定時に確率推定モデルM1に入力される入力データと異なる形式であってもよい。同様に、訓練データの出力部分は、多少であれば、推定時に確率推定モデルM1から出力される出力データとは異なる形式であってもよい。
【0042】
例えば、訓練データの入力部分は、訓練用の対象者特徴情報を含む。本実施形態では、訓練データの入力部分は、訓練用の対象者に催促が行われるタイミングも含む。訓練データの出力部分は、訓練データの入力部分である対象者特徴情報が示す特徴の対象者から効果が得られる確率(学習時の正解となる確率)を示す。訓練データは、推定システム1の管理者によって作成されてもよいし、公知のツールで作成されてもよい。サーバ10は、訓練データの入力部分が入力された場合に、訓練データの出力部分が出力されるように、確率推定モデルM1の学習を行う。サーバ10は、訓練データに基づいて、確率推定モデルM1のパラメータを調整することによって、確率推定モデルM1の学習を行う。
【0043】
なお、確率推定モデルM1の学習のためのアルゴリズムは、機械学習の分野で利用されている公知のアルゴリズムであってよい。例えば、サーバ10は、勾配降下法又は誤差逆伝播法といったアルゴルズムに基づいて、確率推定モデルM1に訓練データを学習させてもよい。学習時に利用される損失関数も、公知の損失関数であってよい。サーバ10は、損失関数に基づいて、訓練データの出力部分と、学習時の確率推定モデルM1からの出力と、の誤差である損失を計算する。サーバ10は、損失がある程度小さくなった場合に、学習を完了する。サーバ10は、学習を完了すると、学習済みの確率推定モデルM1を確率推定モデル記憶部101に記録する。
【0044】
図4のように、連絡手段ごとに、確率推定モデルM1が用意されている場合には、ある連絡手段の確率推定モデルM1には、当該連絡手段の対象となる訓練用の対象者の対象者特徴情報と、当該訓練用の対象者から得られる確率と、の関係が学習されている。このため、連絡手段ごとに、当該連絡手段の確率推定モデルM1が学習する訓練データが用意されている。各連絡手段の確率推定モデルM1が学習する訓練データのデータ形式は、他の連絡手段の確率推定モデルM1が学習する訓練データのデータ形式と同様であってよい。本実施形態では、人架電用の確率推定モデルM1、ロボット架電用の確率推定モデルM1、及びSMS用の確率推定モデルM1といった3つの確率推定モデルM1が用意されているので、サーバ10は、これら3つの連絡手段の各々の訓練データに基づいて、当該連絡手段の確率推定モデルM1を学習させる。
【0045】
[効果情報取得部]
効果情報取得部102は、複数の対象者の各々に対し、所定のタイミングに所定の手段で所定のアクションが行われた場合に得られる効果に関する効果情報を取得する。本実施形態では、所定の手段が督促のための連絡手段であり、所定のアクションが督促なので、効果情報取得部102は、複数の対象者の各々に対し、所定のタイミングに所定の連絡手段で督促が行われた場合に得られる効果に関する効果情報を取得する。
【0046】
効果情報は、対象者から得られる効果に何らか関係する情報である。効果情報は、効果の有無を示す2値であってもよいが、本実施形態では、効果情報は、2値ではなく、対象者から期待される効果を3段階以上の数値で示す場合を例に挙げる。例えば、効果情報取得部102は、複数の対象者の各々に対し、所定のタイミングに所定の連絡手段で督促が行われた場合に効果が得られる確率と、当該対象者から得られる効果の程度と、に基づいて、当該対象者の効果情報を取得する。なお、効果情報は、数値ではなく、文字又は記号といった他の形式で表現されてもよい。
【0047】
効果の程度は、効果の大きさである。本実施形態では、滞納額が多い対象者からの債権回収が成功した場合に、債権回収という効果が大きくなるので、滞納額が効果の程度に相当する場合を例に挙げる。効果の程度は、推定システム1が利用される場面に応じて異なってよい。例えば、所定のアクションとして、督促以外の目的で連絡(例えば、テレフォンアポイント)が行われる場合には、効果は、連絡によって対象者から得られる売上又は利益である。所定のアクションとして、広告が提示される場合には、広告は、広告の対象となる商品又はサービスの価格である。所定のアクションとして、営業が行われる場合には、効果は、営業によって得られる売上又は利益である。
【0048】
図5は、効果情報取得部102、コスト情報取得部103、制約情報取得部104、及び推定部105の各々の処理の一例を示す図である。本実施形態では、効果情報取得部102は、複数の対象者の各々の効果情報と、確率推定モデルM1と、に基づいて、当該対象者から効果が得られる確率を取得し、複数の対象者の各々の当該確率に基づいて、効果情報を取得する。例えば、効果情報取得部102は、複数の対象者の各々の対象者特徴情報を取得する。本実施形態では、デモグラフィック情報が対象者特徴情報として利用される場合を例に挙げるので、効果情報取得部102は、対象者データベースDBから、複数の対象者の各々のデモグラフィック情報を、当該対象者の対象者特徴情報として取得する。効果情報取得部102は、対象者データベースDB以外の他のデータベース、サーバ10以外の他のコンピュータ、又は外部情報記憶媒体から、複数の対象者の各々の対象者特徴情報を取得してもよい。
【0049】
本実施形態では、債権回収が計画される計画期間が予め定められているものとする。効果情報取得部102は、計画期間内の複数のタイミングを特定する。
図5の例では、計画期間が2024年2月5日~2024年2月9日であるものとする。このため、効果情報取得部102は、当該計画期間の5日間を複数のタイミングとして特定する。計画期間は、任意の長さであってよい。例えば、計画期間は、数日、1週間、2週間、又は1ヶ月であってもよい。計画期間を示すデータは、データ記憶部100に記憶されているものとする。計画期間は、担当者又は管理者が指定してもよい。
【0050】
例えば、効果情報取得部102は、対象者ごとに、対象者特徴情報と、計画期間内のタイミングと、を含む入力データを、確率推定モデルM1に入力する。
図5の例であれば、5つのタイミングが存在するので、対象者ごとに、5つの入力データが存在する。本実施形態では、連絡手段ごとに確率推定モデルM1が用意されているので、効果情報取得部102は、複数の確率推定モデルM1の各々に対し、入力データを入力する。
図5の例であれば、効果情報取得部102は、対象者ごとに、人架電用の確率推定モデルM1、ロボット架電用の確率推定モデルM1、及びSMS用の確率推定モデルM1の各々に対し、当該対象者の入力データを入力する。
【0051】
例えば、確率推定モデルM1は、入力データが入力されると、学習によって調整されたパラメータに基づいて、入力データの埋め込み表現を計算する。埋め込み表現は、入力データの特徴を示す情報である。埋め込み表現は、特徴量と呼ばれることもある。埋め込み表現は、任意の形式であってよく、例えば、ベクトル形式、配列形式、行列形式、複数の数値、単一の数値、又は他の形式であってもよい。確率推定モデルM1が大規模言語モデルであれば、確率推定モデルM1は、入力データをトークンに分割したうえで、個々のトークンの埋め込み表現を計算する。確率推定モデルM1は、入力データから計算した埋め込み表現に応じた確率を出力する。
【0052】
本実施形態では、連絡手段ごとに確率推定モデルM1が用意されているので、効果情報取得部102は、連絡手段ごとに、当該連絡手段の確率推定モデルM1に基づいて、確率を取得する。個々の確率推定モデルM1が実行する処理は、同様であってよい。個々の確率推定モデルM1のパラメータは、学習によって互いに異なる値になるので、入力データが同じだったとしても、互いに異なる出力データが取得される。
図5の例であれば、効果情報取得部102は、対象者ごとに、人架電用の確率推定モデルM1、ロボット架電用の確率推定モデルM1、及びSMS用の確率推定モデルM1の各々に対し、当該対象者の入力データを入力し、これら3つの確率推定モデルM1の各々から出力された出力データが示す確率を取得する。
【0053】
例えば、効果情報取得部102は、対象者ごとに、当該対象者に複数の連絡手段の各々で督促が行われた場合に効果が得られる確率を計算し、当該効果の程度を示す滞納額に当該確率を乗じた値である期待回収額を計算してもよい。期待回収額は、効果情報の一例である。期待回収額は、効果が期待される程度ということもできる。
図5の例であれば、対象者Aの滞納額は、10万円である。効果情報取得部102は、対象者Aの滞納額である10万円に、3つの連絡手段の各々で督促が行われた場合に効果が得られる確率を乗じることによって、期待回収額を計算する。対象者Bの滞納額は、20万円である。効果情報取得部102は、対象者Bの滞納額である20万円に、3つの連絡手段の各々で督促が行われた場合に効果が得られる確率を乗じることによって、期待回収額を計算する。
【0054】
なお、効果情報取得部102が取得する効果情報は、本実施形態の例に限られない。例えば、効果情報取得部102は、確率推定モデルM1が推定した確率に重み係数を乗じたうえで、滞納額に乗じることによって期待回収額を計算し、効果情報として取得してもよい。効果情報取得部102は、確率推定モデルM1が推定した確率に、重み係数を乗じた滞納額に乗じることによって期待回収額を計算し、効果情報として取得してもよい。効果情報取得部102は、期待回収額ではなく確率を、効果情報として取得してもよい。効果情報取得部102は、期待回収額ではなく滞納額を、効果情報として取得してもよい。この場合、効果情報取得部102は、確率を計算しなくてもよい。サーバ10は、確率推定モデル記憶部101を含まなくてもよい。
【0055】
[コスト情報取得部]
コスト情報取得部103は、複数の対象者の各々に対し、所定のタイミングに所定の連絡手段で督促が行われた場合に要するコストに関するコスト情報を取得する。コスト情報は、コストの程度を示す情報である。コスト情報は、金銭的なコスト、時間的なコスト、ハードウェア若しくはソフトウェアのリソース的なコスト、又は他のコストを示してもよい。例えば、コスト情報は、コストの数値を示す。コスト情報は、数値以外にも、文字又は記号によって表現されてもよい。本実施形態では、コスト情報がデータ記憶部100に記憶されている場合を例に挙げる。このため、コスト情報取得部103は、データ記憶部100から、コスト情報を取得する。コスト情報は、サーバ10以外の他のコンピュータ、又は、外部情報記憶媒体に記憶されていてもよい。この場合、コスト情報取得部103は、他のコンピュータ又は外部情報記憶媒体から、コスト情報を取得してもよい。
【0056】
本実施形態では、連絡手段によってコストが異なるものとする。更に、個々の連絡手段のコストが固定値であるものとする。即ち、連絡手段以外の他の要素によってコストが変わらずに、連絡手段のコストが予め定められている場合を例に挙げる。他の要素によってコストが変わる態様は、後述の変形例で説明する。本実施形態では、データ記憶部100は、複数の連絡手段の各々のコスト情報を記憶する。コスト情報取得部103は、データ記憶部100から、複数の連絡手段の各々のコスト情報を取得する。連絡手段が1つだけの場合には、データ記憶部100は、当該1つの連絡手段のコスト情報を記憶する。コスト情報取得部103は、当該1つの連絡手段のコスト情報を取得すればよい。連絡手段が複数である場合だったとしても、複数の連絡手段でコスト情報が共通であってもよい。
【0057】
図5の例では、人架電、ロボット架電、及びSMSの3つの連絡手段が用意されているので、コスト情報取得部103は、人架電のコスト情報、ロボット架電のコスト情報、及びSMSのコスト情報を取得する。人架電のコスト情報は、人架電が行われた場合のコストを示す。例えば、人架電のコスト情報は、人架電による人件費及び電話代の合計を示す。ロボット架電のコスト情報は、ロボット架電が行われた場合のコストを示す。例えば、ロボット架電のコスト情報は、ロボット架電による電話代を示す。SMSのコスト情報は、SMSが行われた場合のコストを示す。例えば、SMSのコスト情報は、SMSの利用料を示す。コスト情報は、これらの連絡手段が利用された連絡の1回当たりのコストを示してもよいし、複数回の連絡の合計のコストを示してもよい。
【0058】
[制約情報取得部]
制約情報取得部104は、督促に許容されるコストの制約に関する制約情報を取得する。コストの制約は、コストの上限値である。コストの制約は、コストの許容範囲ということもできる。コストの制約は、個々のタイミングにおける制約であってもよいし、債権回収が計画される計画期間全体における制約であってもよい。本実施形態では、制約情報がデータ記憶部100に記憶されている場合を例に挙げる。このため、制約情報取得部104は、データ記憶部100から、制約情報を取得する。制約情報は、サーバ10以外の他のコンピュータ、又は、外部情報記憶媒体に記憶されていてもよい。この場合、制約情報取得部104は、他のコンピュータ又は外部情報記憶媒体から、制約情報を取得してもよい。
【0059】
本実施形態では、連絡手段によって制約が異なるものとする。更に、個々の連絡手段の制約が固定値であるものとする。即ち、連絡手段以外の他の要素によって制約が変わらずに、連絡手段と制約が1対1である場合を例に挙げる。他の要素によって制約が変わる態様は、後述の変形例で説明する。本実施形態では、データ記憶部100は、複数の連絡手段の各々の制約情報を記憶する。制約情報取得部104は、連絡手段に応じた制約が定められた制約情報を取得する。即ち、制約情報取得部104は、データ記憶部100から、複数の連絡手段の各々の制約情報を取得する。連絡手段が1つだけの場合には、データ記憶部100は、当該1つの連絡手段の制約情報を記憶する。制約情報取得部104は、当該1つの連絡手段の制約情報を取得すればよい。連絡手段が複数である場合だったとしても、複数の連絡手段で制約情報が共通であってもよい。
【0060】
図5の例では、人架電、ロボット架電、及びSMSの3つの連絡手段が用意されているので、制約情報取得部104は、人架電の制約情報、ロボット架電の制約情報、及びSMSの制約情報を取得する。人架電の制約情報は、人架電が行われた場合の制約を示す。例えば、人架電の制約情報は、人架電による人件費及び電話代に許容される金額を示す。人架電の制約情報は、人架電に許容される架電数の上限(例えば、人架電で利用されるハードウェア又はソフトウェアのリソース的な上限)を示してもよい。ロボット架電の制約情報は、ロボット架電が行われた場合の制約を示す。例えば、ロボット架電の制約情報は、ロボット架電による電話代に許容される金額を示す。ロボット架電の制約情報は、ロボット架電に許容される架電数の上限(例えば、ロボット架電で利用されるハードウェア又はソフトウェアのリソース的な上限)を示してもよい。SMSの制約情報は、SMSが行われた場合の制約を示す。例えば、SMSの制約情報は、SMSの利用料に許容される金額を示す。SMSの制約情報は、SMSに許容されるメッセージ数の上限を示してもよい。
【0061】
[推定部]
推定部105は、複数の対象者の各々の効果情報及びコスト情報と、制約情報と、に基づいて、制約の範囲で全体として効率的に効果が得られるように、督促が行われる対象者と、所定のタイミング及び所定の連絡手段の少なくとも一方と、の組み合わせを推定する。本実施形態では、推定部105が、対象者、所定のタイミング、及び所定の連絡手段の組み合わせを推定する場合を説明するが、推定部105は、所定の連絡手段を推定せずに、対象者及び所定のタイミングの組み合わせを推定してもよい。推定部105は、所定のタイミングを推定せずに、対象者及び所定の連絡手段の組み合わせを推定してもよい。先述したように、本実施形態では、当該組み合わせは、督促の組み合わせである。
【0062】
制約の範囲とは、制約が示すコスト以下になることである。即ち、制約の範囲とは、制約が示すコストを超えないことである。推定部105が推定した督促の組み合わせに応じたコストの合計が、制約が示すコスト以下になることは、制約の範囲内であることに相当する。全体とは、複数の対象者の全体である。即ち、全体とは、クレジットカードサービスの全体である。効率的に効果が得られるとは、全体的な効果が相対的に高いことである。別の言い方をすれば、督促に要したコストに対する効果が高いことは、効率的に効果が得られることに相当する。即ち、効率的に効果が得られるとは、督促におけるコストパフォーマンスが良いことである。効率的に効果が得られるとは、コスト対効果が高いことである。
【0063】
図5の例では、変数が1であることは、督促が行われることに相当する。変数が0であることは、督促が行われないことに相当する。例えば、対象者、タイミング、及び連絡手段の組み合わせごとに、変数がある。対象者の数をx(xは自然数)とし、タイミングの数をy(yは自然数)とし、連絡手段の数をz(zは自然数)とすると、変数は、x×y×zの数だけ存在する。
図5の例では、タイミングは、2024年2月5日~2024年2月9日の5日間であるものとする。連絡手段は、人架電、ロボット架電、及びSMSの3つである。このため、対象者1人あたり、5×3=15個の変数がある。対象者が1000人であれば、1000×15=15000個の変数がある。
図5の例では、2つの変数が1になっている。例えば、1になっている1つ目の変数は、対象者Aに対し、2024年2月5日に、ロボット架電が行われることを示す。1になっている2つ目の変数は、対象者Bに対し、2024年2月5日に、SMSが行われることを示す。
【0064】
例えば、推定部105は、督促が行われる組み合わせの候補のうち、少なくとも1つの組み合わせを、実際に督促が行われる組み合わせとして決定する。
図5の例であれば、推定部105は、変数の0と1の組み合わせを決定する。先述した例であれば、推定部105は、15000個の変数の0と1の組み合わせを決定する。変数が0の督促の組み合わせは採用されないので、コストが生じないが、変数が1の督促の組み合わせは採用されるので、コストが生じる。推定部105は、変数が1の督促の組み合わせのコストの合計値が制約の範囲であり、かつ、変数が1の督促の組み合わせの期待回収効率の合計値が他の組み合わせに比べて相対的に高くなるように、督促の組み合わせを推定する。
【0065】
例えば、推定部105は、メタヒューリスティックな手法に基づいて、督促が行われる組み合わせを推定する。メタヒューリスティックな手法は、組み合わせ最適化の問題を解く手法ということもできる。組み合わせ最適化は、厳密解が特定されなくてもよく、ある程度の適切な解が特定されるようにすればよい。例えば、メタヒューリスティックな手法は、遺伝的アルゴリズム、粒子群最適化、アントコロニーアルゴリズム、又はシミュレーテッドアニーリングであってもよい。本実施形態では、推定部105が、遺伝的アルゴリズムに基づいて、督促が行われる組み合わせを決定する場合を例に挙げるが、推定部105は、他のメタヒューリスティックな手法に基づいて、督促が行われる組み合わせを推定してもよい。
【0066】
本実施形態では、推定部105は、複数の対象者の各々の効果情報及びコスト情報に基づいて、当該対象者から得られる効果の効率に関する指標を計算し、複数の対象者の各々の指標に基づいて、督促の組み合わせを推定する。
図5の例であれば、推定部105は、対象者ごとに、当該対象者の効果情報の一例である期待回収額と、当該対象者のコスト情報の一例である期待コストと、に基づいて、当該対象者の期待回収効率を計算する。例えば、推定部105は、対象者ごとに、当該対象者の期待回収額を、当該対象者の期待コストで割ることによって、当該対象者の期待回収効率を計算する。推定部105は、督促の組み合わせごとに、期待回収効率を計算する。
【0067】
期待回収効率は、効率に関する指標の一例である。効率に関する指標は、単位コストあたりの効果の程度ということができる。効率に関する指標は、効果情報及びコスト情報を計算式に代入することによって計算される指標であればよい。効率に関する指標は、期待回収効率に限られない。例えば、推定部105は、対象者ごとに、当該対象者の期待回収額を、当該対象者の期待コストで単純に割るのではなく、期待回収額又は期待コストに対象者に応じた係数を乗じたうえで割ってもよい。
【0068】
本実施形態では、連絡手段に応じた制約が定められているので、推定部105は、連絡手段に応じた制約の範囲内で、督促の組み合わせを推定する。例えば、推定部105は、連絡手段ごとに、当該連絡手段に応じた制約の範囲で、全体として効率的に効果が得られるように、アクションが行われる対象者と、タイミング及び連絡手段の少なくとも一方と、の組み合わせを推定すればよい。推定部105は、連絡手段ごとに、変数が1の督促の組み合わせのコストの合計値が当該連絡手段の制約の範囲であり、かつ、変数が1の督促の組み合わせの期待回収効率の合計値が相対的に高くなるように、督促の組み合わせを推定する。この場合も、推定部105は、先述したメタヒューリスティックな手法に基づいて、督促の組み合わせを推定すればよい。
【0069】
なお、推定部105は、ある1人の対象者に対し、変数が1になる督促の組み合わせが1つだけになるように、督促の組み合わせを推定してもよい。推定部105は、全ての対象者又はある一定数の対象者の変数が1である督促の組み合わせのトータルのコストが制約の範囲内であり、かつ、制約の上限まで余裕がある場合には、ある1人の対象者に対し、変数が1になる督促の組み合わせが2つ以上になるように、督促の組み合わせを推定してもよい。推定部105は、メタヒューリスティックな手法以外の他の手法(例えば、機械学習の手法)に基づいて、全体として効率的に効果が得られるような督促の組み合わせを推定してもよい。
【0070】
[4.推定システムで実行される処理]
図6は、推定システム1で実行される処理の一例を示す図である。本実施形態では、推定システム1の主な処理がサーバ10で実行される場合を例に挙げる。制御部11が記憶部12に記憶されたプログラムを実行することによって、
図6の処理が実行される。
図6の処理が実行されるにあたり、確率推定モデルM1の学習が完了しているものとする。
【0071】
図6のように、サーバ10は、対象者データベースDBに基づいて、複数の対象者の各々の対象者特徴情報を取得する(S1)。サーバ10は、対象者ごとに、当該対象者の対象者特徴情報と、複数のタイミングの各々と、複数の連絡手段の各々の確率推定モデルM1と、に基づいて、当該対象者に対し、当該タイミングに当該連絡手段で督促が行われた場合に当該対象者から効果が得られる確率を計算する(S2)。
【0072】
サーバ10は、対象者ごとに、対象者データベースDBに格納された当該対象者の滞納金額が示す滞納金額と、S2で計算した当該対象者の確率と、に基づいて、当該対象者の期待回収額を計算し、当該対象者の効果情報として取得する(S3)。サーバ10は、連絡手段ごとに、記憶部12に記憶された当該連絡手段の期待コストを示すコスト情報を取得する(S4)。サーバ10は、対象者ごとに、S3で取得した当該対象者の効果情報と、S4で取得したコスト情報と、に基づいて、期待回収効率を計算し、効率に関する指標として取得する(S5)。S1~S5の処理により、
図5に示す変数以外の情報の計算が完了する。
【0073】
サーバ10は、連絡手段ごとに、記憶部12に記憶された当該連絡手段の制約条件情報を取得する(S6)。サーバ10は、S5で取得された指標と、S6で取得された制約条件情報と、に基づいて、複数の連絡手段の各々の制約の範囲で全体として効率的に効果が得られるように、督促の組み合わせを推定する(S7)。S7では、サーバ10は、先述したメタヒューリスティックな手法に基づいて、変数が1の督促の組み合わせのコストの合計値が当該連絡手段の制約の範囲であり、かつ、変数が1の督促の組み合わせの期待回収効率の合計値が他の組み合わせよりも相対的に高くなるように、督促の組み合わせを推定する。サーバ10は、担当者端末20に対し、S8で推定した督促の組み合わせを示す督促組み合わせデータを送信し(S8)、本処理は、終了する。
【0074】
図7は、担当者端末20に表示される画面の一例を示す図である。例えば、担当者端末20は、サーバ10がS8で送信した督促組み合わせデータを受信すると、当該督促組み合わせデータに基づいて、
図7の画面SCを表示部25に表示させる。組み合わせデータには、変数が1になった督促の組み合わせだけではなく、督促により得られる期待回収効率の合計値が示されていてもよい。当該合計値は、サーバ10によって計算される。担当者は、画面SCを確認することによって、自身の債権回収の計画を把握する。担当者は、操作部24からの操作によって、画面SCに表示された計画を修正してもよい。
【0075】
[5.実施形態のまとめ]
本実施形態の推定システム1は、複数の対象者の各々の効果情報を取得する。推定システム1は、複数の対象者のコスト情報を取得する。推定システム1は、制約情報を取得する。推定システム1は、複数の対象者の各々の効果情報及びコスト情報と、制約情報と、に基づいて、制約の範囲で全体として効率的に効果が得られるように、督促が行われる対象者と、タイミング及び連絡手段の少なくとも一方と、の組み合わせを推定する。これにより、推定システム1は、コストの制約を満たしつつ、全体として効率的に効果が得られるように、督促の組み合わせを推定できるので、対象者に対する督促を効率化できる。例えば、推定システム1は、ある特定の対象者からの回収だけを成功させるのではなく、全体として、コストパフォーマンス(コスト対効果)の高い督促を実現できる。推定システムは、担当者及び管理者が督促の計画を立てる手間を省くことができるので、担当者及び管理者の利便性を高めることができる。
【0076】
また、推定システム1は、複数の対象者の各々に対し、所定のタイミングに所定の連絡手段で督促が行われた場合に効果が得られる確率と、当該対象者から得られる効果の程度と、に基づいて、当該対象者の効果情報を取得する。これにより、推定システム1は、効果が得られる確率と、効果の程度と、が総合的に考慮された効果情報に基づいて、督促の組み合わせを推定できるので、督促の組み合わせの推定精度を高めることができる。その結果、推定システム1は、対象者に対する督促を、より効率化できる。
【0077】
また、推定システム1は、複数の対象者の各々の効果情報及びコスト情報に基づいて、当該対象者から得られる効果の効率に関する指標を計算し、複数の対象者の各々の指標に基づいて、督促の組み合わせを推定する。これにより、推定システム1は、複数の対象者の各々から得られる効果の効率に関する指標に基づいて、督促の組み合わせを推定できるので、督促の組み合わせの推定精度を高めることができる。例えば、推定システム1は、当該指標によって、メタヒューリスティックな手法を適用しやすくすることができる。その結果、推定システム1は、対象者に対する督促を、より効率化できる。
【0078】
また、推定システム1は、連絡手段に応じた制約が定められた制約情報を取得する。推定システム1は、連絡手段に応じた制約の範囲内で、督促の組み合わせを推定する。これにより、推定システム1は、連絡手段ごとに制約が異なっていたとしても、複数の連絡手段の各々の制約の範囲で、全体として効率的に効果が得られるような組み合わせを推定することによって、実現可能な範囲内で督促の組み合わせを推定できる。担当者は、複数の連絡手段を効率よく組み合わせた督促を行うことができるので、推定システム1は、対象者に対する督促を、より効率化できる。
【0079】
また、推定システム1は、複数の対象者の各々の効果情報と、確率推定モデルM1と、に基づいて、当該対象者から効果が得られる確率を取得し、複数の対象者の各々の当該確率に基づいて、効果情報を取得する。これにより、推定システム1は、確率推定モデルM1を利用して、複数の対象者の各々から効果が得られる確率の推定精度を高めることができる。その結果、督促の組み合わせの推定精度が高まるので、推定システム1は、対象者に対する督促を、より効率化できる。
【0080】
また、複数の対象者の各々は、クレジットカードの支払を滞納した滞納者である。所定の手段は、滞納者に対する督促のための連絡手段である。所定のアクションは、督促である。コストは、督促のためのコストである。推定システム1は、クレジットカードの支払を滞納した滞納者に対する督促を効率化できる。推定システム1は、クレジットカードサービス全体として、効率的な債権回収を実現できる。
【0081】
[6.変形例]
本開示は、以上に説明した実施形態に限定されない。本開示は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更可能である。
【0082】
図8は、変形例で実現される機能の一例を示す図である。例えば、サーバ10は、将来リスク情報取得部106及び初期値推定モデル記憶部107を含む。将来リスク情報取得部106は、制御部11によって実現される。初期値推定モデル記憶部107は、記憶部12によって実現される。
【0083】
[6-1.変形例1]
例えば、連絡手段によっては、対象者による応答の有無によってコストが変わることがある。連絡手段が人架電である場合には、対象者が担当者からの架電に応答すると、担当者が対象者と会話をして時間がかかるので、コストが高くなる。対象者が担当者からの架電に応答しなければ、担当者が対象者と会話せずに時間がかからないので、コストが低くなる。このため、実施形態のようにコストが固定値なのではなく、対象者による応答の確率に基づいて、コストが計算されてもよい。
【0084】
変形例1のコスト情報取得部103は、複数の対象者の各々に対し、所定のタイミングに所定の連絡手段で督促が行われた場合の応答の確率を計算し、複数の対象者の各々の当該確率に基づいて、コスト情報を取得する。変形例1では、確率推定モデルM1によって応答の確率が計算される場合を例に挙げるが、確率推定モデルM1とは別のモデルによって、応答の確率が計算されてもよい。変形例1の確率推定モデルM1からの出力データは、支払が行われる確率ではなく、応答の確率を示すものとする。このため、訓練データの出力部分も、訓練用の対象者が支払を行う確率ではなく、応答の確率を示す。
【0085】
例えば、コスト情報取得部103は、対象者ごとに、当該対象者の対象者特徴情報と、所定のタイミングと、の組み合わせを示す入力データを、確率推定モデルM1に入力する。入力データは、実施形態と同様であってよい。確率推定モデルM1は、入力データの埋め込み表現を計算し、埋め込み表現に応じた応答の確率を示す出力データを出力する。コスト情報取得部103は、出力データを取得することによって、対象者の応答の確率を取得する。出力データが応答の確率を示す点で実施形態とは異なるが、確率推定モデルM1が実行する処理は、実施形態と同様であってもよい。
【0086】
例えば、コスト情報取得部103は、複数の対象者の各々の応答の確率が高いほど、当該対象者に要する最終的なコストが高くなるように、当該対象者のコストを計算し、コスト情報を取得する。コスト情報取得部103は、対象者ごとに、当該対象者の確率と、連絡手段のコストと、を所定の計算式に代入することによって、当該対象者に要する最終的なコストを示すコスト情報を取得する。当該計算式には、確率とコストの関係が定められている。コスト情報取得部103は、対象者ごとに、当該対象者の確率と、連絡手段のコストと、を掛け合わせることによって、当該対象者に要する最終的なコストを示すコスト情報を取得してもよい。コスト情報取得部103は、所定の重み係数に基づいて、これらの掛け合わせを行なってもよい。コスト情報の取得方法が実施形態とは異なるが、他の処理は、実施形態と同様であってもよい。
【0087】
変形例1の推定システム1は、複数の対象者の各々に対し、所定のタイミングに所定の連絡手段で督促が行われた場合の応答の確率を計算し、複数の対象者の各々の当該確率に基づいて、コスト情報を取得する。これにより、推定システム1は、対象者の応答の確率に応じたコスト情報に基づいて、督促の組み合わせを推定できるので、督促の組み合わせの推定精度を高めることができる。その結果、推定システム1は、対象者に対する督促を、より効率化できる。
【0088】
[6-2.変形例2]
例えば、担当者が対象者に連絡をしても、対象者が支払を行わなかった場合には、担当者は、対象者に対し、再度の督促を行うことがある。この場合、担当者は、複数回の督促を行うことになるので、将来的なコストも考慮するとトータルのコストが高くなる。このため、対象者からの効果が得られる確率に基づいて、コストが計算されてもよい。
【0089】
変形例2のコスト情報取得部103は、複数の対象者の各々に対し、所定のタイミングに所定の連絡手段で督促が行われた場合に効果が得られる確率を計算し、複数の対象者の各々の当該確率に基づいて、コスト情報を取得する。例えば、コスト情報取得部103は、実施形態で説明した確率推定モデルM1に基づいて、対象者から効果が得られる確率を計算する。当該確率の計算方法は、実施形態と同様であってよい。
【0090】
例えば、コスト情報取得部103は、複数の対象者の各々から効果が得られる確率が低いほど、当該対象者に要する最終的なコストが高くなるように、当該対象者のコストを計算し、コスト情報を取得する。コスト情報取得部103は、対象者ごとに、当該対象者から効果が得られる確率と、連絡手段のコストと、を所定の計算式に代入することによって、当該対象者に要する最終的なコストを示すコスト情報を取得する。当該計算式には、確率とコストの関係が定められている。コスト情報取得部103は、対象者ごとに、当該対象者から効果が得られる確率を所定の値(例えば、1)から引いた値と、連絡手段のコストと、を掛け合わせることによって、当該対象者に要する最終的なコストを示すコスト情報を取得してもよい。コスト情報取得部103は、所定の重み係数に基づいて、これらの掛け合わせを行なってもよい。コスト情報の取得方法が実施形態とは異なるが、他の処理は、実施形態と同様であってもよい。
【0091】
変形例2の推定システム1は、複数の対象者の各々に対し、所定のタイミングに所定の連絡手段で督促が行われた場合に効果が得られる確率を計算し、複数の対象者の各々の当該確率に基づいて、コスト情報を取得する。これにより、推定システム1は、対象者から効果が得られる確率に応じたコスト情報に基づいて、督促の組み合わせを推定できるので、督促の組み合わせの推定精度を高めることができる。その結果、推定システム1は、対象者に対する督促を、より効率化できる。
【0092】
[6-3.変形例3]
例えば、対象者によっては、過去の支払を滞納しているだけではなく、多額の分割払い又はボーナス払いを申し込んでいることがある。分割払い又はボーナス払いにおける将来の支払は、現時点で滞納は発生していないが、対象者が、分割払い又はボーナス払いにおける将来の支払を滞納する可能性がある。このため、分割払い又はボーナス払いにおける将来の支払は、将来的なリスクということができる。変形例3では、このような将来的なリスクが考慮されて、督促の組み合わせが決定される場合を例に挙げる。
【0093】
変形例3の推定システム1は、将来リスク情報取得部106を含む。将来リスク情報取得部106は、複数の対象者の各々に対し、将来的に督促が必要になるリスクに関する将来リスク情報を取得する。将来リスク情報は、督促の必要性に関連する情報である。将来リスク情報は、リスクを直接的に示す情報であってもよいし、リスクと相関関係のある情報であってもよい。変形例3では、将来リスク情報が数値で示される場合を例に挙げるが、将来リスク情報は、数値以外にも、文字又は記号で示されてもよい。
【0094】
例えば、将来リスク情報は、対象者の分割払い又はボーナス払いの金額を示す。対象者の分割払い又はボーナス払いの金額は、対象者データベースDBに格納された利用状況情報に示されているものとする。このため、将来リスク情報取得部106は、対象者データベースDBから、対象者の利用状況情報を取得することによって、将来リスク情報を取得する。将来リスク情報取得部106は、対象者データベースDB以外の他のデータベース、サーバ10以外の他のコンピュータ、又は外部情報記憶媒体から、将来リスク情報を取得してもよい。
【0095】
なお、将来リスク情報は、対象者の分割払い又はボーナス払いの金額以外にも、対象者による滞納が将来的に発生しうる他の金額を示してもよい。例えば、将来リスク情報は、対象者のキャッシング額を示してもよい。将来リスクの推定のためのモデルが用意される場合には、将来リスク情報は、対象者の対象者特徴情報と、当該モデルと、に基づいて推定されてもよい。将来リスク情報取得部106は、与信モデル等の公知のモデルを利用して、将来リスク情報を取得してもよい。将来リスク情報取得部106は、外部の信用機関が保管する信用情報を、将来リスク情報として利用してもよい。
【0096】
変形例3の推定部105は、将来リスク情報に更に基づいて、督促の組み合わせを推定する。例えば、推定部105は、将来リスク情報に応じた重み係数に基づいて、期待回収効率を乗算する。例えば、将来リスク情報が示す将来的なリスクが高いほど、重み係数が大きくなる。推定部105は、ある対象者の将来的なリスクが高いほど、当該対象者の期待回収効率が大きくなるように、当該対象者の期待回収効率を計算することによって、当該対象者が督促対象として選択されやすくなるようにする。
【0097】
変形例3の推定システム1は、複数の対象者の各々の将来リスク情報を取得する。推定システム1は、将来リスク情報に更に基づいて、督促の組み合わせを推定する。これにより、推定システム1は、対象者の将来的なリスクも考慮して、督促の組み合わせを推定できるので、督促の組み合わせの推定精度を高めることができる。その結果、推定システム1は、対象者に対する督促を、より効率化できる。
【0098】
[6-4.変形例4]
例えば、変形例3において、将来リスク情報取得部106は、複数の対象者の各々にリスクが発生する確率と、当該リスクの程度と、に基づいて、将来リスク情報を取得してもよい。変形例4では、将来リスク情報取得部106は、複数の対象者の各々のデモグラフィック情報に基づいて、リスクが発生する確率を計算する。例えば、将来リスク情報取得部106は、リスクが発生する確率を計算する与信モデルに対し、対象者のデモグラフィック情報を入力し、与信モデルが出力した確率を取得する。確率は、与信モデル以外の他のモデルに基づいて計算されてもよい。確率は、特に機械学習のモデルではなく、確率の計算のためのプログラムによって計算されてもよい。
【0099】
リスクの程度は、リスクの大きさである。例えば、対象者の分割払い又はボーナス払いの金額は、リスクの程度に相当する。リスクの程度は、対象者のキャッシング額であってもよい。リスクの程度は、対象者データベースDBに格納されているものとする。将来リスク情報取得部106は、対象者データベースDBから、対象者のリスクの程度を取得する。将来リスク情報取得部106は、対象者データベースDB以外の他のデータベース、サーバ10以外の他のコンピュータ、又は外部情報記憶媒体から、対象者のリスクの程度を取得してもよい。
【0100】
例えば、将来リスク情報取得部106は、複数の対象者の各々にリスクが発生する確率と、当該対象者の当該リスクの程度と、を掛け合わせた数値を、当該対象者の将来リスク情報を取得してもよい。将来リスク情報取得部106は、リスクが確率する確率と、リスクの程度と、の少なくとも一方に関連付けられた重み係数に基づいて、これらを掛け合わせた数値を、将来リスク情報を取得してもよい。将来リスク情報取得部106は、複数の対象者の各々にリスクが発生する確率と、当該対象者の当該リスクの程度と、を将来リスク情報の推定用のモデルに入力し、当該モデルにより出力された当該対象者の将来リスク情報を取得してもよい。
【0101】
変形例4の推定システム1は、複数の対象者の各々にリスクが発生する確率と、当該リスクの程度と、に基づいて、将来リスク情報を取得する。これにより、推定システム1は、将来リスク情報の推定精度を高めることができる。その結果、推定システム1は、督促の組み合わせの推定精度を高めることができるので、対象者に対する督促を、より効率化できる。
【0102】
[6-5.変形例5]
例えば、将来リスク情報の取得方法は、変形例3,4の例に限られない。例えば、複数の対象者の各々が所定のサービスを利用する場合、将来リスク情報取得部106は、複数の対象者の各々によるサービスの過去の利用状況に基づいて、将来リスク情報を取得してもよい。利用状況は、対象者データベースDBに格納された利用状況情報に示されている。例えば、将来リスク情報取得部106は、複数の対象者の各々の過去の利用状況に基づいて、当該対象者が過去に支払を滞納したか否かを判定する。将来リスク情報取得部106は、複数の対象者の各々の過去の利用状況に基づいて、当該対象者の過去の滞納額を特定してもよい。
【0103】
例えば、将来リスク情報取得部106は、過去に支払を滞納した対象者のリスクが、過去に支払を滞納していない対象者のリスクよりも高くなるように、将来リスク情報を取得する。将来リスク情報の取得に必要な計算式は、データ記憶部100に記憶されているものとする。当該計算式には、滞納の有無と、リスクと、の関係が示されている。将来リスク情報取得部106は、当該計算式に基づいて、滞納の有無に応じたリスクを示す将来リスク情報を取得する。
【0104】
例えば、将来リスク情報取得部106は、ある対象者が過去に支払を滞納した滞納額が多いほど、当該対象者のリスクが高くなるように、将来リスク情報を取得してもよい。この場合、上記計算式には、滞納額と、リスクと、の関係が示されている。将来リスク情報取得部106は、当該計算式に基づいて、滞納額に応じたリスクを示す将来リスク情報を取得する。将来リスク情報取得部106は、対象者による利用状況に基づいて将来リスク情報を推定するモデルに基づいて、将来リスク情報を取得してもよい。
【0105】
変形例5の推定システム1は、複数の対象者の各々によるサービスの過去の利用状況に基づいて、将来リスク情報を取得する。これにより、推定システム1は、将来リスク情報の推定精度を高めることができる。その結果、推定システム1は、督促の組み合わせの推定精度を高めることができるので、対象者に対する督促を、より効率化できる。
【0106】
[6-6.変形例6]
例えば、推定部105は、効果が相対的に大きい対象者に対して優先的に督促が行われるように、督促の組み合わせを推定してもよい。
図5の例であれば、推定部105は、期待回収額が多いほど、期待回収効率の計算で利用される重み係数を大きくする。期待回収額及び重み係数の関係は、データ記憶部100に予め定められているものとする。推定部105は、当該関係に基づいて、期待回収額に応じた重み係数を取得すればよい。推定部105は、期待回収額に重み係数を乗じた値を期待コストで割ることによって、期待回収効率を計算する。推定部105は、実施形態と同様にして期待回収効率を計算した後に、期待回収額の多さに応じた重み係数を乗算してもよい。
【0107】
例えば、推定部105は、対象者の滞納額が大きいほど、期待回収効率の計算で利用される重み係数を大きくしてもよい。滞納額及び重み係数の関係は、データ記憶部100に予め定められているものとする。推定部105は、当該関係に基づいて、滞納額に応じた重み係数を取得すればよい。推定部105は、滞納額に重み係数を乗じたうえで、確率と乗じることによって期待回収額を計算してもよい。推定部105は、このような計算をしても、効果が相対的に大きい対象者に対して優先的に督促が行われるように、督促の組み合わせを推定できる。
【0108】
変形例6の推定システム1は、効果が相対的に大きい対象者に対して優先的にアクションが行われるように、督促の組み合わせを推定する。これにより、推定システム1は、効果が相対的に大きい対象者が選択されやすくなるので、当該対象者に対する督促が成功した場合に得られる効果を大きくすることができる。
【0109】
[6-7.変形例7]
例えば、制約情報取得部104は、所定のタイミングに応じた制約が定められた制約情報を取得してもよい。タイミングと制約の関係は、データ記憶部100に記憶されているものとする。変形例7では、データ記憶部100は、複数のタイミングの各々の制約情報を記憶する。制約情報取得部104は、データ記憶部100から、複数のタイミングの各々の制約情報を取得する。タイミングが1つだけの場合には、データ記憶部100は、当該1つのタイミングの制約情報を記憶する。制約情報取得部104は、当該1つのタイミングのコスト情報を取得すればよい。タイミングが複数である場合だったとしても、複数のタイミングでコスト情報が共通であってもよい。
【0110】
変形例7の推定部105は、タイミングに応じた制約の範囲内で、督促の組み合わせを推定する。例えば、推定部105は、タイミングごとに、当該タイミングに応じた制約の範囲で、全体として効率的に効果が得られるように、アクションが行われる対象者と、タイミング及び連絡手段の少なくとも一方と、の組み合わせを推定すればよい。制約は、コスト以外の条件を含んでいてもよい。例えば、制約は、期待回収効率の合計値が所定値以上になることを条件として含んでいてもよい。この場合、当該条件が満たされることが、制約の範囲内であることに相当する。当該所定値は、タイミングごとに異なってもよい。例えば、当該所定値は、過去の同時期における回収額に応じた値であってもよい。督促の組み合わせの推定時に利用される制約の取得方法が実施形態とは異なるが、督促の組み合わせの推定自体は、実施形態と同様であってよい。
【0111】
変形例7の推定システム1は、所定のタイミングに応じた制約が定められた制約情報を取得する。推定システム1は、所定のタイミングに応じた制約の範囲内で、組み合わせを推定する。これにより、推定システム1は、タイミングごとに制約が異なっていたとしても、複数のタイミングの各々の制約の範囲で、全体として効率的に効果が得られるような組み合わせを推定できる。
【0112】
[6-8.変形例8]
例えば、推定部105による推定は、初期値として利用される組み合わせ次第で、早く終了することもあれば、長時間を要することもある。初期値は、組み合わせの推定を開始するときの組み合わせである。
図5の例であれば、変数の0と1の組み合わせの初期値は、変形例8の初期値に相当する。このため、推定システム1は、推定部105による推定で利用される初期値の精度を高めることができれば、全体として効率的な督促の組み合わせを迅速に推定できるようになる。そこで、変形例8では、初期値の精度を高めるためのモデルが用意されている場合を例に挙げる。
【0113】
変形例8の推定システム1は、初期値推定モデル記憶部107を含む。初期値推定モデル記憶部107は、訓練用の効果情報及びコスト情報と、訓練用の督促の組み合わせと、の関係が学習された初期値推定モデルM2を記憶する。変形例8では、実施形態と同様、サーバ10が初期値推定モデルM2の学習を行う場合を例に挙げるが、サーバ10以外の他のコンピュータが初期値推定モデルM2の学習を行ってもよい。例えば、担当者端末20が初期値推定モデルM2の学習を行ってもよい。初期値推定モデルM2は、埋め込み表現等の計算を行うプログラムと、プログラムによって参照されるパラメータと、を含む。初期値推定モデルM2のうち、学習によってパラメータが調整される。初期値推定モデルM2として利用されるプログラム及びパラメータは、公知のプログラム及びパラメータと同様であってよい。例えば、パラメータは、重み及びバイアスであってもよい。
【0114】
例えば、データ記憶部100は、初期値推定モデルM2の学習に必要な訓練データが格納された訓練データベースを記憶してもよい。訓練データは、学習時に初期値推定モデルM2に入力される入力部分と、学習時に正解となる出力部分と、を含む。訓練データの入力部分は、推定時に初期値推定モデルM2に入力される入力データと基本的に同じ形式である。訓練データの出力部分は、推定時に初期値推定モデルM2から出力される出力データと基本的に同じ形式である。なお、訓練データの入力部分は、多少であれば、推定時に初期値推定モデルM2に入力される入力データと異なる形式であってもよい。同様に、訓練データの出力部分は、多少であれば、推定時に初期値推定モデルM2から出力される出力データとは異なる形式であってもよい。
【0115】
例えば、訓練データの入力部分は、訓練用の効果情報を含む。訓練データの入力部分は、訓練用の対象者に催促が行われるタイミングも含んでもよい。訓練データの入力部分は、訓練用のコスト情報を含んでもよい。これらの情報は、
図5を参照して説明した情報と同様であってもよい。訓練データの出力部分は、ペアとなる入力部分である効果情報等に応じた督促の組み合わせ(学習時の正解となる督促の組み合わせ)である。訓練データは、推定システム1の管理者によって作成されてもよいし、訓練データの作成ツールで作成されてもよい。
【0116】
例えば、ある程度少ない数の訓練データであれば最適解が得られる可能性があるので、訓練データの出力部分は、ある程度少ない数の訓練データから得られた最適解であってもよい。最適解は、先述したメタヒューリスティックな手法によって得られてもよい。訓練データの生成用の制約の範囲内で最適解が特定されてもよい。サーバ10は、訓練データの入力部分が入力された場合に、訓練データの出力部分が出力されるように、初期値推定モデルM2の学習を行う。サーバ10は、訓練データに基づいて、初期値推定モデルM2のパラメータを調整することによって、初期値推定モデルM2の学習を行う。
【0117】
なお、初期値推定モデルM2の学習のためのアルゴリズムは、機械学習分野で利用されている公知のアルゴリズムであってよい。例えば、サーバ10は、勾配降下法又は誤差逆伝播法といったアルゴルズムに基づいて、初期値推定モデルM2に訓練データを学習させる。学習時に利用される損失関数も、公知の損失関数であってよい。サーバ10は、損失関数に基づいて、訓練データの出力部分と、学習時の初期値推定モデルM2からの出力と、の誤差である損失を計算する。サーバ10は、損失がある程度小さくなった場合に、学習を完了する。サーバ10は、学習を完了すると、学習済みの初期値推定モデルM2を初期値推定モデル記憶部107に記録する。
【0118】
変形例8の推定部105は、複数の対象者の各々の効果情報及びコスト情報と、初期値推定モデルM2と、に基づいて、督促の組み合わせの初期値を取得し、当該初期値に基づいて、督促の組み合わせを推定する。例えば、推定部105は、複数の対象者の各々の効果情報及びコスト情報を、初期値推定モデルM2に入力する。初期値推定モデルM2は、複数の対象者の各々の効果情報及びコスト情報の埋め込み表現を計算し、当該埋め込み表現に応じた初期値を出力する。推定部105は、初期値推定モデルM2から出力された初期値を取得する。推定部105は、当該初期値に基づいて、督促の組み合わせを推定する。督促の組み合わせの初期値の取得方法が実施形態とは異なるが、他の点については実施形態で説明した通りである。
【0119】
変形例8の推定システム1は、訓練用の効果情報及びコスト情報と、訓練用の組み合わせと、の関係が学習された初期値推定モデルM2を記憶する。推定システム1は、複数の対象者の各々の効果情報及びコスト情報と、初期値推定モデルM2と、に基づいて、組み合わせの初期値を取得し、当該初期値に基づいて、組み合わせを推定する。これにより、推定システム1は、全体として効率的な督促の組み合わせを、迅速に推定できる。
【0120】
なお、変形例8の推定システム1は、実施形態で説明した機能を含まなくてもよい。推定システム1は、初期値推定モデル記憶部107に記憶された初期値推定モデルM2に基づいて推定された初期値と、に基づいて、所定の推定を行う構成だけを有してもよい。この場合、推定システム1は、効果情報、コスト情報、及び制約情報に基づく督促の組み合わせの推定のための構成を含まずに、初期値推定モデル記憶部107に記憶された初期値推定モデルM2に基づいて推定された初期値と、に基づいて、所定の推定を行う構成だけを有してもよい。このような態様によれば、初期値の精度が高まるので、何らかの組み合わせを推定する際の推定完了を早めることができる。このような態様(例えば、発明が解決しようとする課題の欄に記載した課題を解決せずに、本段落に記載された他の課題を解決する構成)も、本開示の範囲内である。
【0121】
[6-9.その他の変形例]
例えば、上記変形例1~8を組み合わせてもよい。
【0122】
例えば、対象者端末30で実現されるものとして説明した機能は、サーバ10、担当者端末20、又は他のコンピュータで実現されてもよい。対象者端末30で実現されるものとして説明した処理は、複数のコンピュータで分担されてもよい。サーバ10で実現されるものとして説明した処理は、対象者端末30、担当者端末20、又は他のコンピュータで実現されてもよい。推定システム1が有する主要な機能は、複数のコンピュータで分担されてもよい。
【0123】
[7.付記]
例えば、推定システムは、下記のような構成も可能である。
(1)
複数の対象者の各々に対し、所定のタイミングに所定の手段で所定のアクションが行われた場合に得られる効果に関する効果情報を取得する効果情報取得部と、
前記複数の対象者の各々に対し、前記タイミングに前記手段で前記アクションが行われた場合に要するコストに関するコスト情報を取得するコスト情報取得部と、
前記アクションに許容されるコストの制約に関する制約情報を取得する制約情報取得部と、
前記複数の対象者の各々の前記効果情報及び前記コスト情報と、前記制約情報と、に基づいて、前記制約の範囲で全体として効率的に前記効果が得られるように、前記アクションが行われる前記対象者と、前記タイミング及び前記手段の少なくとも一方と、の組み合わせを推定する推定部と、
を含む推定システム。
(2)
前記効果情報取得部は、前記複数の対象者の各々に対し、前記タイミングに前記手段で前記アクションが行われた場合に前記効果が得られる確率と、当該対象者から得られる前記効果の程度と、に基づいて、当該対象者の前記効果情報を取得する、
(1)に記載の推定システム。
(3)
前記推定部は、
前記複数の対象者の各々の前記効果情報及び前記コスト情報に基づいて、当該対象者から得られる前記効果の効率に関する指標を計算し、
前記複数の対象者の各々の前記指標に基づいて、前記組み合わせを推定する、
(1)又は(2)に記載の推定システム。
(4)
前記コスト情報取得部は、前記複数の対象者の各々に対し、前記タイミングに前記手段で前記アクションが行われた場合の応答の確率を計算し、前記複数の対象者の各々の当該確率に基づいて、前記コスト情報を取得する、
(1)~(3)の何れかに記載の推定システム。
(5)
前記コスト情報取得部は、前記複数の対象者の各々に対し、前記タイミングに前記手段で前記アクションが行われた場合に前記効果が得られる確率を計算し、前記複数の対象者の各々の当該確率に基づいて、前記コスト情報を取得する、
(1)~(4)の何れかに記載の推定システム。
(6)
前記推定システムは、前記複数の対象者の各々に対し、将来的に前記アクションが必要になるリスクに関する将来リスク情報を取得する将来リスク情報取得部を更に含み、
前記推定部は、前記将来リスク情報に更に基づいて、前記組み合わせを推定する、
(1)~(5)の何れかに記載の推定システム。
(7)
前記将来リスク情報取得部は、前記複数の対象者の各々に前記リスクが発生する確率と、当該リスクの程度と、に基づいて、前記将来リスク情報を取得する、
(6)に記載の推定システム。
(8)
前記複数の対象者の各々は、所定のサービスを利用し、
前記将来リスク情報取得部は、前記複数の対象者の各々による前記サービスの過去の利用状況に基づいて、前記将来リスク情報を取得する、
(6)又は(7)に記載の推定システム。
(9)
前記推定部は、前記効果が相対的に大きい前記対象者に対して優先的に前記アクションが行われるように、前記組み合わせを推定する、
(1)~(8)の何れかに記載の推定システム。
(10)
前記制約情報取得部は、前記タイミングに応じた前記制約が定められた前記制約情報を取得し、
前記推定部は、前記タイミングに応じた前記制約の範囲内で、前記組み合わせを推定する、
(1)~(9)の何れかに記載の推定システム。
(11)
前記制約情報取得部は、前記手段に応じた前記制約が定められた前記制約情報を取得し、
前記推定部は、前記手段に応じた前記制約の範囲内で、前記組み合わせを推定する、
(1)~(10)の何れかに記載の推定システム。
(12)
前記推定システムは、訓練用の前記効果情報及び前記コスト情報と、訓練用の前記組み合わせと、の関係が学習された初期値推定モデルを記憶する初期値推定モデル記憶部を更に含み、
前記推定部は、前記複数の対象者の各々の前記効果情報及び前記コスト情報と、前記初期値推定モデルと、に基づいて、前記組み合わせの初期値を取得し、当該初期値に基づいて、前記組み合わせを推定する、
(1)~(11)の何れかに記載の推定システム。
(13)
前記推定システムは、訓練用の前記対象者の特徴に関する対象者特徴情報と、前記効果が得られる確率と、の関係が学習された確率推定モデルを記憶する確率推定モデル記憶部を更に含み、
前記効果情報取得部は、前記複数の対象者の各々の前記効果情報と、前記確率推定モデルと、に基づいて、当該対象者から前記効果が得られる確率を取得し、前記複数の対象者の各々の当該確率に基づいて、前記効果情報を取得する、
(1)~(12)の何れかに記載の推定システム。
(14)
前記複数の対象者の各々は、クレジットカードの支払を滞納した滞納者であり、
前記手段は、前記滞納者に対する督促のための連絡手段であり、
前記アクションは、前記督促であり、
前記コストは、前記督促のためのコストである、
(1)~(13)の何れかに記載の推定システム。
【符号の説明】
【0124】
1 推定システム、10 サーバ、11,21,31 制御部、12,22,32 記憶部、13,23,33 通信部、24,34 操作部、25,35 表示部、20 担当者端末、30 対象者端末、DB 対象者データベース、M1 確率推定モデル、M2 初期値推定モデル、N ネットワーク、SC 画面、100 データ記憶部、101 確率推定モデル記憶部、102 効果情報取得部、103 コスト情報取得部、104 制約情報取得部、105 推定部、106 将来リスク情報取得部、107 初期値推定モデル記憶部。
【要約】
【課題】対象者に対するアクションを効率化する。
【解決手段】推定システム(1)の効果情報取得部(102)は、複数の対象者の各々に対し、所定のタイミングに所定の手段で所定のアクションが行われた場合に得られる効果に関する効果情報を取得する。コスト情報取得部(103)は、複数の対象者の各々に対し、タイミングに手段でアクションが行われた場合に要するコストに関するコスト情報を取得する。制約情報取得部(104)は、アクションに許容されるコストの制約に関する制約情報を取得する。推定部(105)は、複数の対象者の各々の効果情報及びコスト情報と、制約情報と、に基づいて、制約の範囲で全体として効率的に効果が得られるように、アクションが行われる前記対象者と、タイミング及び手段の少なくとも一方と、の組み合わせを推定する。
【選択図】
図2