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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-08
(45)【発行日】2025-07-16
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/08 20200101AFI20250709BHJP
   B60T 7/02 20060101ALI20250709BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20250709BHJP
   F16H 59/10 20060101ALI20250709BHJP
   F16H 63/40 20060101ALI20250709BHJP
【FI】
B60W50/08
B60T7/02 A
B60T7/12 A
F16H59/10
F16H63/40
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022105878
(22)【出願日】2022-06-30
(65)【公開番号】P2024005614
(43)【公開日】2024-01-17
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄真
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-199889(JP,A)
【文献】特開2016-107769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 50/08
B60T 7/02
B60T 7/12
F16H 59/10
F16H 63/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を停止状態に保持する保持状態と、該保持状態を解除する解除状態とに作動可能な停止保持装置の制御装置であって、
操作者により入力操作が可能に構成されており、前記停止保持装置を前記保持状態又は前記解除状態の何れに作動させるかを入力可能な操作部の入力状態を取得する取得部と、
前記取得部により取得される前記入力状態に基づき、前記停止保持装置の作動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記取得部が、前記車両に搭載されたブレーキ装置によるブレーキホールド制御の実行中に、前記操作部に前記停止保持装置を前記解除状態に作動させる入力が所定時間以上継続する特定解除入力状態を取得する場合には、該特定解除入力状態に基づくことなく前記停止保持装置を前記保持状態に作動させるバックアップ制御を実行する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記制御部は、前記取得部が前記特定解除入力状態を取得する場合には、前記操作部の状態を前記車両の乗員に報知するための報知処理を実行する
制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記停止保持装置は、前記車両に搭載された電動パーキングブレーキ装置であり、
前記電動パーキングブレーキ装置は、前記操作部として、少なくとも解除位置から中立位置に自動復帰する操作スイッチを備えており、
前記特定解除入力状態は、前記操作スイッチが所定時間以上継続して前記解除位置に維持されている状態である
制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記停止保持装置は、前記車両に搭載されたシフトバイワイヤ方式の自動変速機に設けられたパーキングロック装置であり、
前記自動変速機は、前記操作部として、シフトレバーを有するシフト操作装置を備えており、
前記シフト操作装置には、前記シフトレバーが自動復帰するホームレンジが設けられており、
前記特定解除入力状態は、前記シフトレバーが所定時間以上継続して前記ホームレンジ以外のレンジに維持されている状態である
制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記車両は、前記車両が停止し、且つ、第1のスイッチがオンの場合に、前記ブレーキ装置により前記車両の停止状態を保持する前記ブレーキホールド制御を実行可能に構成されており、
前記操作部は、前記停止保持装置を前記保持状態又は前記解除状態の何れに作動させるかを入力するための第2のスイッチであって、前記第1のスイッチとは別体のスイッチであり、
前記特定解除入力状態は、前記ブレーキホールド制御の実行中に、前記第2のスイッチに前記停止保持装置を前記解除状態に作動させる入力が所定時間以上継続する入力状態である
制御装置。
【請求項6】
車両を停止状態に保持する保持状態と、該保持状態を解除する解除状態とに作動可能な停止保持装置の制御装置であって、
前記車両は、前記車両が停止すると、ブレーキ装置により前記車両の停止状態を継続して保持するブレーキホールド制御を実行するとともに、前記ブレーキホールド制御の実行中に所定条件が成立すると、前記停止保持装置により前記車両を停車状態に保持するバックアップ制御を実行可能に構成されており、
操作者により入力操作が可能に構成されており、前記停止保持装置を前記保持状態又は前記解除状態の何れに作動させるかを入力可能な操作部の入力状態を取得する取得部と、
前記取得部により取得される前記入力状態に基づき、前記停止保持装置の作動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記取得部が、前記ブレーキホールド制御の実行中に前記操作部に前記停止保持装置を前記解除状態に作動させる入力が所定時間以上継続する特定解除入力状態を取得する場合には、前記所定条件が成立するものとして、前記特定解除入力状態に基づくことなく前記停止保持装置を前記保持状態に作動させる前記バックアップ制御を実行する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項7】
車両を停止状態に保持する保持状態と、該保持状態を解除する解除状態とに作動可能な停止保持装置の制御方法であって、
操作者により入力操作が可能に構成されており、前記停止保持装置を前記保持状態又は前記解除状態の何れに作動させるかを入力可能な操作部の入力状態を取得し、
取得した前記入力状態に基づき、前記停止保持装置の作動を制御し、
前記車両に搭載されたブレーキ装置によるブレーキホールド制御の実行中に、前記操作部に前記停止保持装置を前記解除状態に作動させる入力が所定時間以上継続する特定解除入力状態を取得する場合には、該特定解除入力状態に基づくことなく前記停止保持装置を前記保持状態に作動させるバックアップ制御を実行する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項8】
車両を停止状態に保持する保持状態と、該保持状態を解除する解除状態とに作動可能な停止保持装置のコンピュータに、
操作者により入力操作が可能に構成されており、前記停止保持装置を前記保持状態又は前記解除状態の何れに作動させるかを入力可能な操作部の入力状態を取得し、
取得した前記入力状態に基づき、前記停止保持装置の作動を制御し、
前記車両に搭載されたブレーキ装置によるブレーキホールド制御の実行中に、前記操作部に前記停止保持装置を前記解除状態に作動させる入力が所定時間以上継続する特定解除入力状態を取得する場合には、該特定解除入力状態に基づくことなく前記停止保持装置を前記保持状態に作動させるバックアップ制御を実行する処理を実行させる
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、制御方法及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、車両を停止状態に保持するための電動パーキングブレーキ装置やパーキングロック装置(以下、これらを単に「停止保持装置」とも称する)が搭載される場合がある。例えば、特許文献1には、液圧ブレーキ装置によるブレーキホールドの実行時間が閾値時間に達すると、停止保持装置をバックアップとして作動させる車両システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5332491号
【発明の概要】
【0004】
一般に、車両システムは、ドライバ操作を優先する。このため、停止保持装置によるバックアップの実行条件が満たされても、停止保持装置の操作部が解除位置に操作されている場合には、車両システムは停止保持装置をバックアップとして作動させない。しかしながら、システム側では、操作部の解除が、ドライバ操作によるものか、或は、ドライバ操作以外の外的要因によるものかを判別することができない。
【0005】
具体的には、電動パーキングブレーキ装置の操作スイッチが、乗員の私物等の挟み込みやドライバ以外の乗員(例えば、子供)による悪戯によって解除位置に維持されている場合、操作スイッチが外的要因によって解除されているにもかかわらず、システム側ではドライバ操作に基づくものと誤解釈してしまう。また、シフト操作装置のシフトレバーに荷物等が吊り下げられ、シフトレバーが継続的にホームレンジから他のレンジに移動しているような場合、シフトレバーが外的要因によって移動しているにもかかわらず、システム側ではドライバ操作に基づくものと誤解釈してしまう。このような誤解釈に基づき、停止保持装置によるバックアップを非作動にしてしまうと、車両がドライバの意図に反してクリープ走行により発進してしまう可能性がある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものである。即ち、本開示の目的の一つは、停止保持装置の作動の最適化を図ることにある。
【0007】
本開示の制御装置(1,10)は、
車両(SV)を停止状態に保持する保持状態と、該保持状態を解除する解除状態とに作動可能な停止保持装置(55,70)の制御装置(1,10)であって、
操作者により入力操作が可能に構成されており、前記停止保持装置(55,70)を前記保持状態又は前記解除状態の何れに作動させるかを入力可能な操作部(52,72)の入力状態を取得する取得部(120)と、
前記取得部(120)により取得される前記入力状態に基づき、前記停止保持装置(55,70)の作動を制御する制御部(130)と、を備え、
前記制御部(130)は、前記取得部(120)が、前記操作部(52,72)に前記停止保持装置(55,70)を作動させる入力が所定時間以上継続する特定入力状態を取得する場合には、該特定入力状態に基づくことなく前記停止保持装置(55,70)の作動を制御することを特徴とする。
【0008】
本開示の制御方法は、
車両(SV)を停止状態に保持する保持状態と、該保持状態を解除する解除状態とに作動可能な停止保持装置(55,70)の制御方法であって、
操作者により入力操作が可能に構成されており、前記停止保持装置(55,70)を前記保持状態又は前記解除状態の何れに作動させるかを入力可能な操作部(52,72)の入力状態を取得し、
取得した前記入力状態に基づき、前記停止保持装置(55,70)の作動を制御し、
前記操作部(52,72)に前記停止保持装置(55,70)を作動させる入力が所定時間以上継続する特定入力状態を取得する場合には、該特定入力状態に基づくことなく前記停止保持装置(55,70)の作動を制御することを特徴とする。
【0009】
本開示のプログラムは、
車両(SV)を停止状態に保持する保持状態と、該保持状態を解除する解除状態とに作動可能な停止保持装置(55,70)のコンピュータに、
操作者により入力操作が可能に構成されており、前記停止保持装置(55,70)を前記保持状態又は前記解除状態の何れに作動させるかを入力可能な操作部(52,72)の入力状態を取得し、
取得した前記入力状態に基づき、前記停止保持装置(55,70)の作動を制御し、
前記操作部(52,72)に前記停止保持装置(55,70)を作動させる入力が所定時間以上継続する特定入力状態を取得する場合には、該特定入力状態に基づくことなく前記停止保持装置(55,70)の作動を制御する処理を実行させることを特徴とする。
【0010】
以上の構成によれば、制御装置(1,10)は、操作部(52,72)に停止保持装置(55,70)を作動させる入力が所定時間以上継続する特定入力状態を取得する場合には、操作部(52,72)の入力状態に基づくことなく、停止保持装置(55,70)の作動を制御する。これにより、制御装置(1,10)が操作部(52,72)に対するドライバ操作を正しく解釈できないような状況においても、停止保持装置(55,70)の作動の最適化を図ることが可能になる。
【0011】
上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成要件に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、発明の各構成要件は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る制御装置のハードウェア構成を示す模式図である。
図2】本実施形態に係る制御装置のソフトウェア構成を示す模式図である。
図3】本実施形態に係るブレーキホールド制御及び、バックアップ制御の処理のルーチンを説明するフローチャートである。
図4】変形例に係るブレーキホールド制御及び、バックアップ制御の処理のルーチンを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本実施形態に係る制御装置、制御方法及び、プログラムを説明する。
【0014】
[ハードウェア構成]
図1は、本実施形態に係る制御装置1のハードウェア構成を示す模式図である。制御装置1は、車両SVに搭載されている。以下では、車両SVは、他車両等と区別する必要がある場合、自車両と称する場合もある。
【0015】
制御装置1は、ECU10を有する。ECUは、Electronic Control Unitの略である。ECU10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13及びインターフェース装置14等を備えている。CPU11は、ROM12に格納されている各種プログラムを実行する。ROM12は、不揮発性メモリであって、CPU11が各種プログラムを実行するために必要なデータ等を記憶する。RAM13は、揮発性メモリであって、各種プログラムがCPU11によって実行される際に展開される作業領域を提供する。インターフェース装置14は、外部装置と通信するための通信デバイスである。
【0016】
ECU10は、車両SVの各種制御を行う中枢となる装置である。このため、ECU10には、車両状態取得装置20、周囲認識装置30、駆動装置40、自動変速機50、パーキングロック装置55、液圧ブレーキ装置60、電動パーキングブレーキ装置70、ACC(Adaptive Cruise Control)操作部80等が通信可能に接続されている。
【0017】
車両状態取得装置20は、車両SVの状態を取得するセンサ類である。具体的には、車両状態取得装置20は、車速センサ21、アクセルセンサ22、ブレーキセンサ23等を備えている。
【0018】
車速センサ21は、車両SVの走行速度(車速V)を検出し、検出した車速VをECU10に送信する。車速センサ21は、車輪速センサであってもよい。アクセルセンサ22は、ドライバによる不図示のアクセルペダルの操作量を検出し、検出したアクセル操作量をECU10に送信する。ブレーキセンサ23は、ドライバによる不図示のブレーキペダルの操作量を検出し、検出したブレーキ操作量をECU10に送信する。
【0019】
周囲認識装置30は、車両SVの周囲の物標に関する物標情報を認識するセンサ類である。具体的には、周囲認識装置30は、レーダセンサ31、カメラセンサ32等を備えている。ここで、物標情報としては、例えば、周辺車両、信号機、道路の白線、標識、落下物等が挙げられる。周囲認識装置30によって取得される車両SVの周囲の物標情報はECU10に送信される。
【0020】
レーダセンサ31は、例えば、車両SVの前部に設けられており、車両SVの前方領域に存在する物標を検知する。レーダセンサ31には、ミリ波レーダ及び、又はライダが含まれる。ミリ波レーダは、ミリ波帯の電波(ミリ波)を放射し、放射範囲内に存在する物標によって反射されたミリ波(反射波)を受信する。ミリ波レーダは、送信したミリ波と受信した反射波との位相差、反射波の減衰レベル及び、ミリ波を送信してから反射波を受信するまでの時間等に基づいて、車両SVと物標との相対距離Dr、車両SVと物標との相対速度Vr等を取得する。ライダは、ミリ波よりも短波長のパルス状のレーザ光を複数の方向に向けて順次走査し、物標により反射される反射光を受光することにより、車両SVの前方に検知された物標の形状、車両SVと物標との相対距離Dr、車両SVと物標との相対速度Vr等を取得する。
【0021】
カメラセンサ32は、例えば、ステレオカメラや単眼カメラであり、CMOSやCCD等の撮像素子を有するデジタルカメラを用いることができる。カメラセンサ32は、例えば、車両SVのフロントウインドシールドガラスの上部に配設されている。カメラセンサ32は、車両SVの前方を撮像し、撮像した画像データを処理することにより、車両SVの前方の物標情報を取得する。物標情報は車両SVの前方に検知された物標の種類、車両SVと物標との相対距離Dr、車両SVと物標との相対速度Vr等を表す情報である。物標の種類は、例えば、パターンマッチング等の機械学習によって認識すればよい。
【0022】
周囲認識装置30は、取得した物標情報をECU10に所定の時間が経過する毎に繰り返し送信する。ECU10は、レーダセンサ31によって得られた車両SVと物標との相対関係と、カメラセンサ32によって得られた車両SVと物標との相対関係とを合成することにより、車両SVと物標との相対関係を決定する。なお、周囲認識装置30は、必ずしも、レーダセンサ31及びカメラセンサ32の両方を備える必要はなく、例えば、レーダセンサ31のみ、又は、カメラセンサ32のみを含んでいてもよい。
【0023】
駆動装置40は、車両SVの駆動輪に伝達する駆動力を発生させる。駆動装置40としては、例えば、エンジン、電動機が挙げられる。本実施装置において、車両SVは、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCEV)、電気自動車(BEV)、エンジン車の何れであってもよい。
【0024】
自動変速機50は、駆動装置40と駆動輪との間の動力伝達経路に配されており、駆動装置40から出力される駆動力を所定の減速比で減速し、駆動輪に伝達する。自動変速機50は、例えば、シフトバイワイヤ方式の自動変速機であって、シフト操作装置51、シフトセンサ53等を備えている。
【0025】
シフト操作装置51は、車両SVの運転室内(例えば、センタコンソール)に設けられており、ドライバにより操作されるシフトレバー52を備えている。ドライバは、シフトレバー52を操作することにより、所望のシフトレンジを選択することができる。シフト操作装置51のシフトレンジとしては、例えば、パーキングレンジP、リバースレンジR、ニュートラルレンジN、ドライブレンジD、ホームレンジH等が設定されている。
【0026】
本実施形態において、シフト操作装置51は、シフトレバー52がホームレンジHに自動復帰するモーメンタリ式のシフト操作装置である。具体的には、シフトレバー52は、非操作状態ではホームレンジHに位置している。ドライバがシフトレバー52をホームレンジHから他のレンジに操作すると、シフトセンサ53は選択されたレンジを示すレンジ信号をECU10に送信する。ドライバがシフトレバー52の操作を解放すると、シフトレバー52は、ホームレンジHに自動的に復帰するようになっている。なお、パーキングレンジPについては、シフトレバー52によって選択する構成に限定されず、ドライバがパーキングスイッチ(不図示)を押圧することにより選択する構成であってもよい。
【0027】
パーキングロック装置55は、本開示の停止保持装置の一例であって、自動変速機50の出力側に設けられている。パーキングロック装置55は、動力伝達軸(例えば、自動変速機50の出力軸)に設けられたパーキングギア、パーキングギアと係合可能なパーキングポール、パーキングポールを作動させるパーキングアクチュエータ56等を備えている。
【0028】
パーキングアクチュエータ56の作動は、ECU10からの指令に応じて制御される。具体的には、ECU10は、シフトセンサ53からパーキングレンジPを示すレンジ信号を受信すると、パーキングポールがパーキングギアと係合するようにパーキングアクチュエータ56の作動を制御する。パーキングポールがパーキングギアと係合すると、動力伝達軸が固定され、駆動輪の回転をロックするパーキングロック(本開示の保持状態)が確立される。一方、ECU10は、パーキングロックが確立された状態で、シフトレバー52がパーキングレンジPから他のレンジに操作された場合、すなわち、シフトセンサ53からパーキングレンジP以外のレンジを示すレンジ信号を受信すると、パーキングポールとパーキングギアとの係合を解除するようにパーキングアクチュエータ56の作動を制御する。リバースレンジR、ニュートラルレンジN及び、ドライブレンジDは、本開示の解除位置の一例である。
【0029】
液圧ブレーキ装置60は、例えば、ディスク式ブレーキ装置であって、車両SVの車輪に制動力を付与する。液圧ブレーキ装置60は、ブレーキアクチュエータ61、各車輪に設けられたブレーキ機構62等を備えている。ブレーキアクチュエータ61は、ブレーキペダルの踏力によって作動油を加圧するマスタシリンダ(図示略)と、ブレーキ機構62との間の油圧回路に設けられる。ブレーキ機構62は、車輪に固定されるブレーキディスク63と、車体に固定されるブレーキキャリパ64とを備えている。ブレーキアクチュエータ61は、ECU10からの指示に応じてブレーキキャリパ64に内蔵されたホイールシリンダに供給する油圧を調整し、その油圧によりホイールシリンダを作動させる。これにより、ブレーキアクチュエータ61は、ブレーキパッドをブレーキディスク63に押し付けて摩擦制動力を発生させる。なお、液圧ブレーキ装置60は、図示例のディスク式ブレーキ装置に限定されず、ドラム式ブレーキ装置等であってもよい。
【0030】
電動パーキングブレーキ装置70は、本開示の停止保持装置の一例であって、電動アクチュエータ71、電動パーキングスイッチ72等を備えている。電動アクチュエータ71及び、電動パーキングスイッチ72は、ECU10に接続されている。電動パーキングスイッチ72は、操作部が自動復帰するモーメンタリ式のスイッチであって、車両SVの運転室(例えば、センタコンソール)に設けられている。電動パーキングスイッチ72には、非操作時に操作部が位置する中立位置、操作部が中立位置から引き上げられるON位置、操作部が中立位置から押し下げられるOFF位置が設定されている。OFF位置は、本開示の解除位置の一例である。
【0031】
電動パーキングスイッチ72は、操作部が中立位置からON位置に引き上げられると、ECU10にON信号を送信する。ECU10は、電動パーキングスイッチ72からON信号を受信すると、ブレーキパッドをブレーキディスク63に押し付けるように、電動アクチュエータ71の作動を制御する。これにより、車両SVの後輪に制動力を付与して、車両SVを停止状態に維持する電動パーキングブレーキ(本開示の保持状態)が確立される。一方、電動パーキングスイッチ72は、電動パーキングブレーキが確立された状態で、操作部が中立位置からOFF位置に押し下げられると、ECU10にOFF信号を送信する。ECU10は、電動パーキングスイッチ72からOFF信号を受信するか、或いは、アクセルセンサ22からアクセルペダルが踏み込まれたことを示す信号(アクセルON信号)を受信すると、ブレーキパッドによるブレーキディスク63の押し付けを解放するように、電動アクチュエータ71の作動を制御する。これにより、電動パーキングブレーキが解除される。
【0032】
オートホールドスイッチ75は、モーメンタリ式のON/OFFスイッチであって、車両SVの運転室(例えば、センタコンソール)に設けられている。オートホールドスイッチ75がONの状態で車両SVが停止、或いは、車両SVが停止した状態でオートホールドスイッチ75がONされると、液圧ブレーキ装置60のホイールシリンダの油圧を保持するブレーキホールド制御が開始される。これにより、ドライバは、ブレーキペダルを踏み込むことなく、車両SVの停止状態を継続して維持することができる。ブレーキホールド制御は、ドライバがオートホールドスイッチ75をOFF、又は、アクセルペダルを踏み込むと解除される。ブレーキホールド制御の詳細は後述する。
【0033】
ACC操作部80は、運転席の近傍(例えば、ステアリングホイール、ステアリングコラム等)に設けられており、ドライバにより操作されるスイッチ類である。ACC操作部80は、起動スイッチ81、設定スイッチ82、キャンセルスイッチ83、レジュームスイッチ84等を備えている。
【0034】
起動スイッチ81は、ドライバがACCを起動するか終了するかを選択するためのON/OFFスイッチである。設定スイッチ82は、ACCの目標車速Vtag及び、目標車間距離Dtag(又は、目標車間時間)を所定範囲で任意に設定又は変更するためのスイッチである。ここで、目標車速Vtagは、後述する定速走行制御を実行する場合に車両SVが維持する車速である。目標車速Vtagには、設定できる最低速度として下限速度が設けられている。目標車間距離Dtagは、後述する追従走行制御を実行する場合に目標車速Vtag以下の車速Vで先行車両との間に設ける車間距離である。
【0035】
キャンセルスイッチ83は、実行中のACCを一時的に解除状態とするためのON/OFFスイッチである。ACCの実行中にドライバがキャンセルスイッチ83をONすると、ACCは解除状態とされる。レジュームスイッチ84は、解除状態のACCを復帰又は、待機状態のACCを再開(開始)させるためのON/OFFスイッチである。
【0036】
[ソフトウェア構成]
図2は、本実施形態に係る制御装置1のソフトウェア構成を示す模式図である。
【0037】
図2に示すように、ECU10は、ACC制御部100、ブレーキホールド制御部110、入力状態取得部120及び、バックアップ制御部130を機能要素として備える。これら各機能要素100~130は、ECU10のCPU11がROM12に格納されているプログラムをRAM13に読み出して実行することにより実現される。なお、各機能要素100~130は、本実施形態では一体のハードウェアであるECU10に含まれるものとして説明するが、これらの何れか一部をECU10とは別体の他のECUに設けることもできる。また、ECU10の各機能要素100~130の全部又は一部は、車両SVと通信可能な施設(例えば、管理センタ等)の情報処理装置に設けることもできる。
【0038】
ACC制御部100は、目標車速Vtag及び、目標車間距離Dtagに基づいてACCを実行する。ACC自体は周知である(例えば、特開2014-148293号公報、特開2006-315491号公報、特許第4172434号明細書、及び、特許第4929777号明細書等を参照)。したがって、以下、簡単に説明する。ACCは、定速走行制御と追従走行制御の2種類の制御を含む。定速走行制御は、ドライバのアクセル操作及びブレーキ操作を要することなく、車両SVを目標車速Vtagに従って定速走行させる制御である。追従走行制御は、ドライバのアクセル操作及びブレーキ操作を要することなく、先行車両と自車両SVとの車間距離を目標車間距離Dtagに維持しながら先行車両に対して自車両SVを追従させる制御である。先行車両は、自車両SVの前方領域であって自車両SVの直前を走行している車両である。
【0039】
ACC制御部100は、ACC操作部80の起動スイッチ81がONされると、車両周辺情報に含まれる物標情報に基づいて追従対象の先行車両が存在しているか否かを判定する。ACC制御部100は、先行車両が存在しないと判定した場合、定速走行制御を実行する。この場合、ACC制御部100は、車速Vが目標車速Vtagに一致するように、駆動装置40の駆動を制御するとともに、必要に応じて液圧ブレーキ装置60(61)の作動を制御する。一方、ACC制御部100は、先行車両が存在すると判定した場合、先行車追従制御を実行する。この場合、ACC制御部100は、自車両SVと先行車両との間の車間距離が目標車間距離Dtagに一致するように、駆動装置40の駆動を制御するとともに、必要に応じて液圧ブレーキ装置60(61)の作動を制御する。
【0040】
ACC制御部100は、以下の何れかの解除条件(1),(2)が成立すると、ACCを一時的に解除状態とする。ここで、解除状態とは、目標車速Vtag及び、目標車間距離Dtagの設定を保存した状態で、ACCを中断することをいう。
解除条件(1): ACCの実行中にドライバがキャンセルスイッチ83をONした場合。
解除条件(2):ACCの実行中にドライバがブレーキペダルを踏み込んだ場合。
【0041】
解除条件(1)又は(2)の成立によりACCが解除されると、走行モードは、定速走行制御又は追従走行制御を実行する運転支援モードから、運転操作をドライバに委ねる通常走行モードに遷移する。ACC制御部100は、解除条件(1)又は(2)の成立によりACCを解除した後、車両SVが停止するよりも前に、ドライバがレジュームスイッチ84をONすると、ACCを復帰させる。
【0042】
ACC制御部100は、以下の何れかの待機条件(1)~(3)が成立すると、ACCを待機状態とする。ここで待機状態とは、車両SVが停止した状態で、目標車速Vtag及び、目標車間距離Dtag(待機条件(3)の場合は、最低速度及び、デフォルトの目標車間距離)の設定を保存しつつ、ACCの実行を保留することをいう。
待機条件(1):追従走行制御の実行中に先行車両の停止に伴い自車両SVが追従停止した場合。
待機条件(2):解除条件(1)又は(2)の成立によりACCが一時的に解除された後、ドライバが車両SVを停止させた状態で、レジュームスイッチ84をONした場合。
待機条件(3):起動スイッチ81がOFF、且つ、車両SVが停止した状態で、ドライバが起動スイッチ81をONした場合。
【0043】
待機条件(1)については、オートホールドスイッチ75はON又はOFFの何れであってもよい。待機条件(2),(3)については、電動パーキングスイッチ72がONの場合、又は、シフトセンサ53がパーキングレンジPを取得する場合、ドライバがレジュームスイッチ84や起動スイッチ81をONしてもACCは無効とされる。すなわち、ACCは待機状態とならず、停止保持が優先される。ACC制御部100は、待機条件(1)~(3)の成立によりACCを待機状態とした後、ドライバがレジュームスイッチ84をON、又は、アクセルペダルを踏み込むと、ACCを再開(待機条件(3)の場合は開始)する。
【0044】
ブレーキホールド制御部110は、以下の何れかの実行条件(1),(2)が成立すると、液圧ブレーキ装置60のホイールシリンダの油圧を保持し、車両SVの停止状態を継続して保持するブレーキホールド制御を実行する。
実行条件(1):車両SVが停止し、且つ、オートホールドスイッチ75がONの場合。
実行条件(2):待機条件(1)~(3)の何れかの成立により、ACCが待機状態となった場合。
なお、実行条件(1),(2)は、ブレーキホールド中にドライバが降車することを防止するために、運転席ドアの閉、及び、ドライバのシートベルト着用を前提条件とすることが望ましい。
【0045】
ブレーキホールド制御部110は、以下の何れかの終了条件(1)~(3)が成立すると、ブレーキホールド制御を終了、すなわち、液圧ブレーキ装置60の油圧保持を解除する。
終了条件(1):実行条件(1)の成立によりブレーキホールド制御を開始した後、ドライバがブレーキペダルを踏み込んだ状態でオートホールドスイッチ75をOFF、又は、アクセルペダルを踏み込む解除操作を行った場合。
終了条件(2):実行条件(2)の成立によりブレーキホールド制御を開始した後、ドライバがレジュームスイッチ84をON、又は、アクセルペダルを踏み込む解除操作(すなわち、ACCの再開又は開始操作)を行った場合。
終了条件(3):実行条件(1)又は(2)の成立によりブレーキホールド制御を開始した後、ドライバが解除操作を行うことなく、ブレーキホールド制御の実行時間が所定の閾値時間Tに達した場合。
終了条件(3)の閾値時間Tは、特に制限されず、車両SVや液圧ブレーキ装置60の具体的な仕様、性能等に応じて適宜に設定すればよい。
【0046】
入力状態取得部120は、電動パーキングスイッチ72から送信されるON/OFF信号に基づき、電動パーキングスイッチ72の入力状態(操作部の位置)を取得する。また、操作状態取得部120は、シフトセンサ53から送信されるレンジ信号に基づき、シフト操作装置51の入力状態(シフトレバー52の位置)を取得する。入力状態取得部120は、これら取得した入力状態を所定周期でバックアップ制御部130に送信する。
【0047】
バックアップ制御部130は、ブレーキホールド制御の実行時間が所定の閾値時間Tに達すると、電動パーキングブレーキ装置70及び、パーキングロック装置55の何れか一方又は両方を作動させて、車両SVを停止状態に保持するバックアップ制御を実行する。これにより、ブレーキホールド制御の終了後も、車両SVを停止状態に確実に保持するバックアップが実現される。ブレーキホールド制御を終了するタイミングは、バックアップ制御による停止保持の確立から所定時間後でもよく、或いは、バックアップ制御による停止保持の確立と同時であってもよい。バックアップ制御部130は、バックアップ制御を実行する場合、ドライバに対してバックアップが作動する旨を通知する報知処理を実行する。報知処理は、表示装置(例えば、マルチインフォメーションディスプレイ)及び、又はスピーカを用いて行えばよい。
【0048】
ここで、バックアップ制御部130がバックアップ制御を実行するか否かは、基本的にはドライバ操作を優先して決定することになる。具体的には、ブレーキホールド制御中に、電動パーキングスイッチ72の操作部が中立位置に維持されている場合、すなわち、操作状態取得部120が電動パーキングスイッチ72からON信号及びOFF信号の何れをも取得しない場合、ドライバは電動パーキングブレーキ装置70を意図的に作動させないようにする操作を行っていない。また、ブレーキホールド制御中に、シフト操作装置51のシフトレバー52がホームレンジHに維持されている場合、すなわち、操作状態取得部120がシフトセンサ53からホームレンジHを示すレンジ信号を取得する場合、ドライバはパーキングロック装置55を意図的に作動させないようにする操作を行っていない。バックアップ制御部130は、操作状態取得部120がこのような入力状態を取得する場合には、ブレーキホールド制御の実行時間が閾値時間Tに達すると、電動パーキングブレーキ装置70やパーキングロック装置55を作動させるバックアップ制御を実行する。
【0049】
一方、ブレーキホールド制御中に、電動パーキングスイッチ72の操作部がOFF位置に維持されている場合、或は、シフト操作装置51のシフトレバー52がホームレンジHやパーキングレンジP以外のレンジ(例えば、ドライブレンジD)に維持されている場合、ドライバは電動パーキングブレーキ装置70やパーキングロック装置55を意図的に非作動にする操作を行っているとも考えられる。しかしながら、これらの操作状態が、必ずしもドライバの意図した操作入力に基づかない場合も想定される。
【0050】
具体的には、電動パーキングスイッチ72の操作部が、乗員の私物等の挟み込みやドライバ以外の乗員(例えば、子供)の悪戯により、ドライバの意図に反して継続的にOFF位置に押し下げられている場合が考えられる。また、乗員がシフトレバー52に荷物を吊り下げたり、或は、ドライバ以外の乗員がシフトレバー52を悪戯したりする等、シフトレバー52がドライバの意図に反して継続的にホームレンジHから他のレンジに移動している場合が考えられる。このような状態を、装置側がドライバの操作入力に基づくものと誤解釈し、バックアップ制御を実行しないようにすると、車両SVがドライバの意図に反してクリープ走行により発進してしまう可能性がある。
【0051】
そこで、本実施形態のバックアップ制御部130は、ブレーキホールド制御中に、入力状態取得部120が、以下の特定入力状態(1),(2)を取得す場合には、ドライバ操作を正しく解釈できる状況にないものとし、バックアップ制御を強制的に実行するようにした。
特定入力状態(1):入力状態取得部120が、電動パーキングスイッチ72から所定時間以上継続してOFF信号を受信する場合、すなわち、電動パーキングスイッチ72の操作部が所定時間以上継続してOFF位置に維持されている場合。
特定入力状態(2):入力状態取得部120が、シフトセンサ53から所定時間以上継続してホームレンジH以外のレンジを示すレンジ信号を受信する場合、すなわち、シフト操作装置51のシフトレバー52が所定時間以上継続してホームレンジHから他のレンジに移動している場合。
【0052】
バックアップ制御部130は、ブレーキホールド制御中に、入力状態取得部120が特定入力状態(1)を取得する場合には、電動パーキングスイッチ72の操作部がOFF位置に維持されていても、電動パーキングブレーキ装置70を強制的に作動させるバックアップ制御を実行する。また、バックアップ制御部130は、ブレーキホールド制御中に、入力状態取得部120が特定入力状態(2)を取得する場合には、シフトレバー52がホームレンジHから他のレンジ(例えば、ドライブレンジD)に移動していても、パーキングロック装置55を強制的に作動させるバックアップ制御を実行する。これにより、ドライバ操作を正しく解釈できる状況にない場合であっても、バックアップ制御が確実に実行されるようになり、ドライバの意図しない車両SVの発進を効果的に防止することが可能になる。
【0053】
次に、図3に示すフローチャートに基づいて、ECU10によるブレーキホールド制御及び、バックアップ制御の処理のルーチンを説明する。
【0054】
ステップS100では、ECU10は、車速センサ21の検出結果に基づき、車両SVが停止したか否かを判定する。車両SVが停止した場合(Yes)、ECU10は、ステップS105の処理に進む。一方、車両SVが停止していない場合(No)、ECU10は、ステップS100の判定を繰り返す。
【0055】
ステップS105では、ECU10は、ブレーキホールド制御の実行条件(1)又は(2)の何れかが成立するか否かを判定する。ここで、実行条件(1)は、車両SVが停止し、且つ、オートホールドスイッチ75がONの場合に成立する。また、実行条件(2)は、待機条件(1)~(3)の何れかの成立によりACCが待機状態となった場合に成立する。ECU10は、実行条件(1)又は(2)の何れかが成立する場合(Yes)、ステップS110の処理に進む。一方、ECU10は、実行条件(1)及び(2)の何れもが成立しない場合(No)、ステップS100の判定に戻る。
【0056】
ステップS110では、ECU10は、液圧ブレーキ装置60のホイールシリンダの油圧を保持し、車両SVの停止状態を継続して保持するブレーキホールド制御を実行する。
【0057】
次いで、ステップS120では、ECU10は、ドライバがブレーキホールドを解除する解除操作を行ったか否か、具体的には、ブレーキホールド制御の終了条件(1)又は(2)の何れかが成立するか否かを判定する。ここで、終了条件(1)は、実行条件(1)の成立に伴いブレーキホールド制御を開始した後、ドライバがブレーキペダルを踏み込んだ状態でオートホールドスイッチ75をOFF、又は、アクセルペダルを踏み込む解除操作を行うと成立する。また、終了条件(2)は、実行条件(2)の成立に伴いブレーキホールド制御を開始した後、ドライバがレジュームスイッチ84をON、又は、アクセルペダルを踏み込む解除操作(ACC開始、再開操作)を行うと成立する。ドライバが解除操作を行った場合(Yes)、ECU10は、ステップS170の処理に進み、液圧ブレーキ装置60の油圧保持を解除することにより、ブレーキホールド制御を終了する。一方、ドライバが解除操作を行っていない場合(No)、ECU10は、ステップS130の処理に進む。
【0058】
ステップS130では、ECU10は、ドライバ操作を正しく解釈できる状況にあるか否か、具体的には、入力状態取得部120が、特定入力状態(1)及び(2)の少なくとも一方を取得するか否かを判定する。ここで、特定入力状態(1)は、入力状態取得部120が、電動パーキングスイッチ72から所定時間以上継続してOFF信号を受信する入力状態である。また、特定入力状態(2)は、入力状態取得部120が、シフトセンサ53から所定時間以上継続してホームレンジH以外のレンジを示すレンジ信号を受信する入力状態である。ECU10は、入力状態取得部120が特定入力状態(1)及び(2)の何れをも取得しない場合(No)、すなわち、ドライバ操作を正しく解釈できる状況にある場合は、ステップS140の処理に進む。
【0059】
ステップS140では、ECU10は、ステップS110から開始したブレーキホールド制御の実行時間が閾値時間Tに達したか否かを判定する。実行時間が閾値時間Tに達していない場合(No)、ECU10はステップS110の処理に戻り、ブレーキホールド制御を継続する。一方、実行時間が閾値時間Tに達した場合(Yes)、ECU10はステップS145の処理に進む。
【0060】
ステップS145では、ECU10は、ドライバに対してバックアップが作動する旨を通知する報知処理を実行する。次いで、ステップS150では、ECU10は、ドライバが意図して電動パーキングブレーキ装置70やパーキングロック装置55を解除しようとする停止保持解除操作を行ったか否かを判定する。ここで、停止保持解除操作としては、以下の解除操作(1)~(3)が挙げられる。
解除操作(1):ドライバがブレーキペダルを踏みながら、電動パーキングスイッチ72の操作部をOFF位置に操作した場合。
解除操作(2):ドライバがブレーキペダルを踏みながら、シフトレバー52をホームレンジHからパーキングレンジP以外の他のレンジ(例えば、ドライブレンジD)に移動させた場合。
解除操作(3):ドライバがシートベルトを着用した状態で、アクセルペダルを踏み込むことにより、電動パーキングブレーキ装置70の解除を意図した操作を行った場合。
ECU10は、ドライバが解除操作(1)~(3)の何れかを行った場合(Yes)、ステップS170の処理に進み、ブレーキホールド制御を終了する。一方、ドライバが解除操作(1)~(3)の何れをも行っていない場合(No)、ECU10は、ステップS160の処理に進み、電動パーキングブレーキ装置70及び、又はパーキングロック装置55を作動させるバックアップ制御を実行する。
【0061】
ステップS130の判定が肯定(Yes)の場合、すなわち、入力状態取得部120が、特定入力状態(1)及び(2)の少なくとも一方を取得する場合、ECU10は、ドライバ操作を正しく解釈できる状況にないものとし、ステップS160の処理に進む。
【0062】
ステップS160では、ECU10は、電動パーキングブレーキ装置70及び、又はパーキングロック装置55を作動させるバックアップ制御を実行する。すなわち、ドライバ操作を正しく解釈できる状況にない場合には、ブレーキホールド制御の実行時間が閾値時間Tに達していなくても、バックアップ制御を強制的に実行する。これにより、電動パーキングスイッチ72やシフトレバー52にドライバの意図しない入力がなされているような状況においても、電動パーキングブレーキ装置70やパーキングロック装置55をバックアップとして確実に作動させることができ、安全性の向上を図ることが可能になる。
【0063】
ECU10は、ステップS160にてバックアップ制御を実行すると、ステップS170の処理に進む。この際、ECU10は、ACCが待機状態となっている場合には、ACCを終了する。ステップS170では、ECU10は、ブレーキホールド制御を終了する。ステップS170にてブレーキホールド制御を終了したならば、ECU10は、本ルーチンを一旦終了(リターン)する。なお、ステップS160にて開始したバックアップ制御は、ドライバがシートベルトを着用した状態でアクセルペダルを踏み込むか、或いは、ブレーキペダルを踏みながら、電動パーキングスイッチ72やシフトレバー52を解除操作すると終了する。
【0064】
以上詳述した本実施形態によれば、液圧ブレーキ装置60によるブレーキホールド制御中に、入力状態取得部120が、電動パーキングスイッチ72から所定時間以上継続してOFF信号を受信する特定入力状態(1)を取得する場合、又は、シフトセンサ53から所定時間以上継続してホームレンジH以外のレンジを示すレンジ信号を受信する特定入力状態(2)を取得する場合、バックアップ制御部130は、これらの入力状態に基づくことなく、電動パーキングブレーキ装置70やパーキングロック装置55を作動させるバックアップ制御を実行する。これにより、電動パーキングスイッチ72やシフトレバー52にドライバの意図しない入力がなされている等、ドライバ操作を正しく解釈できない状況であっても、電動パーキングブレーキ装置70やパーキングロック装置55をバックアップとして確実に作動させることができ、ドライバの意図しない車両SVの発進を効果的に防止することが可能になる。
【0065】
以上、本実施形態に係る制御装置、制御方法及び、プログラムについて説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
【0066】
[変形例]
例えば、図3に示すフローチャートでは、ECU10は、ステップS130にて特定入力状態(1),(2)を取得するか否かを判定し、ステップS140にてブレーキホールド制御の実行時間が閾値時間Tに達したか否かを判定するものとしたが、図4に示すように、これらステップS130及び、ステップS140の処理順序を入れ替えることも可能である。
【0067】
以下、図4に示す変形例の処理を説明する。なお、ステップS130及び、S140以外の処理については、図3に示すフローチャートと同様の処理となるため、それらの説明は省略する。
【0068】
図4に示すように、ステップS130では、ECU10は、ブレーキホールド制御の実行時間が閾値時間Tに達したか否かを判定する。実行時間が閾値時間Tに達した場合(Yes)、ECU10は、ステップS140の処理に進む。一方、実行時間が閾値時間Tに達していない場合(No)、ECU10は、ステップS110の処理に戻り、ブレーキホールド制御を継続する。ステップS140では、ECU10は、入力状態取得部120が、特定入力状態(1)及び(2)の少なくとも一方を取得するか否かを判定する。入力状態取得部120が特定入力状態(1)及び(2)の何れをも取得しない場合(No)、ECU10は、ステップS145の処理に進む。一方、入力状態取得部120が特定入力状態(1)及び(2)の少なくとも一方を取得する場合(Yes)、ECU10は、ステップS160の処理に進み、電動パーキングブレーキ装置70及び、又はパーキングロック装置55を作動させるバックアップ制御を実行する。
【0069】
図4に示す変形例においても、ブレーキホールド制御の実行時間が閾値時間Tに達した際に、ドライバ操作を正しく解釈できない状況にあれば、電動パーキングブレーキ装置70やパーキングロック装置55を作動させるバックアップ制御が強制的に実行される。これにより、上記実施形態と同様、ドライバの意図しない車両SVの発進を効果的に防止することが可能になる。
【0070】
[その他]
上記実施形態において、ECU10は、入力状態取得部120が特定入力状態(1),(2)を取得した場合に、ドライバに対して操作状態を報知する報知処理を実行してもよい。報知処理は、表示装置への表示又は、スピーカによる音声の何れか一方又は両方を用いて行えばよい。報知処理を行えば、ドライバに対して、電動パーキングスイッチ71やシフトレバー52がドライバの意図しない操作状態にあることを適宜に知らせることが可能になる。
【0071】
また、上記実施形態のバックアップ制御は、車両SVを自動運転により赤信号の交差点等で自動停止させる自動停止制御等、液圧ブレーキ装置60による他の停止保持制御のバックアップにも広く適用することが可能である。
【0072】
また、ECU10は、電動パーキングスイッチ71の操作部が所定時間継続してON位置に維持されている状況において、ドライバが車両SVの発進操作を行った場合には、自車両SVの周囲の状況に応じて電動パーキングブレーキ装置70を解除するように制御してもよい。この場合も、電動パーキングブレーキ装置70の作動の最適化を図ることが可能になる。
【符号の説明】
【0073】
1…制御装置,10…ECU,50…自動変速機,51…シフト操作装置,52…シフトレバー,53…シフトセンサ,55…パーキングロック装置,56…パーキングアクチュエータ,60…液圧ブレーキ装置,61…ブレーキアクチュエータ,70…電動パーキングブレーキ装置,71…電動アクチュエータ,72…電動パーキングスイッチ,75…オートホールドスイッチ,100…ACC制御部,110…ブレーキホールド制御部,120…入力状態取得部,130…バックアップ制御部
図1
図2
図3
図4