(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-08
(45)【発行日】2025-07-16
(54)【発明の名称】成膜装置とその使用方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/365 20060101AFI20250709BHJP
H01L 21/368 20060101ALI20250709BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20250709BHJP
【FI】
H01L21/365
H01L21/368 Z
C23C16/455
(21)【出願番号】P 2021213031
(22)【出願日】2021-12-27
【審査請求日】2024-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永岡 達司
(72)【発明者】
【氏名】西中 浩之
(72)【発明者】
【氏名】吉本 昌広
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-096055(JP,A)
【文献】特開2020-002426(JP,A)
【文献】特開2019-153789(JP,A)
【文献】特開2015-097270(JP,A)
【文献】特開平10-050612(JP,A)
【文献】特開平11-067693(JP,A)
【文献】特開2010-182769(JP,A)
【文献】特開2009-076586(JP,A)
【文献】特開2018-059002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/365
H01L 21/368
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(2)の表面に膜(4)を形成する成膜装置(10、110、210、310)であって、
前記基板が載置されるステージ(14)と、
前記膜を構成する材料が溶解しているとともに、少なくとも水を含む溶液(6)のミスト(7)を生成するミスト発生源(20)と、
前記ミスト発生源で発生した前記ミストを搬送ガスの流れによって前記ステージ上の前記基板まで搬送する供給経路(30)と、
前記供給経路の少なくとも一部を加熱するヒータ(34)と、
を備え、
前記ヒータによって加熱される前記供給経路の区間は、前記供給経路の内面(30a)から前記ミストに向けて赤外線(R1、R2)が照射されるミスト加熱区間(HS)となり、
前記ミスト加熱区間では、前記供給経路の前記内面が、前記ミスト中に存在する元素の酸化物又は水酸化物の少なくとも一方を含む被覆層(40)で覆われて
おり、
前記ミスト加熱区間の前記被覆層は、前記供給経路の前記内面から前記ミストに向けて照射される前記赤外線に対して、50パーセント以上の吸収率を有する、
成膜装置。
【請求項2】
前記被覆層は、前記ミスト中に含まれる元素のみで構成されている、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記供給経路は、前記ステージが配置された成膜室(12)を含み、
前記成膜時における前記基板の温度をT1、前記基板の前記表面に対向する前記成膜室の内面の温度T2としたときに、T1>T2を満たす、請求項1又は2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記基板の前記表面に形成される前記膜は、エピタキシャル膜である、請求項1から
3のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記ミスト加熱区間における前記供給経路の前記内面は、石英で構成されている、請求項1から
4のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記石英は、水酸基(OH基)を含む、請求項
5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記ヒータの温度をT3としたときに、T3≧100℃を満たす、請求項1から
6のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記供給経路は、前記ステージが配置された成膜室を含み、
前記成膜室の内面の温度をT2とし、前記ヒータの温度T3としたときに、T2<T3の関係を満たす、請求項1から
7のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記ミストに照射される前記赤外線の波長λは、λ≦7.8マイクロメートルである、請求項1から
8のいずれか一項に記載の成膜装置。
【請求項10】
基板の表面に膜を形成する成膜装置の使用方法であって、
前記成膜装置は、
前記基板が載置されるステージと、
前記膜を構成する材料が溶解しているとともに、少なくとも水を含む溶液のミストを生成するミスト発生源と、
前記ミスト発生源で発生した前記ミストを搬送ガスの流れによって前記ステージ上の前記基板まで搬送する供給経路と、
前記供給経路の少なくとも一部を加熱するヒータと、
を備え、
前記ヒータによって加熱される前記供給経路の区間は、前記供給経路の内面から前記ミストに向けて赤外線が照射されるミスト加熱区間となり、
前記使用方法は、
前記ヒータを作動させつつ、前記ミスト発生源で発生した前記ミストを前記ミスト加熱区間へ供給して、前記ミスト加熱区間の内面に被覆層を形成する予備工程と、
前記予備工程後に実施されるとともに、前記ヒータを作動させつつ、前記ミスト発生源で発生した前記ミストを前記供給経路を通じて前記ステージ上の前記基板へ供給して、前記基板の前記表面に前記膜を形成する成膜工程と、
を備え
ており、
前記予備工程における前記ミスト加熱区間の前記内面の温度をT4とし、前記成膜工程における前記ヒータの温度をT3としたときに、T3<T4の関係が満たされる、
使用方法。
【請求項11】
基板の表面に膜を形成する成膜装置の使用方法であって、
前記成膜装置は、
前記基板が載置されるステージと、
前記膜を構成する材料が溶解しているとともに、少なくとも水を含む溶液のミストを生成するミスト発生源と、
前記ミスト発生源で発生した前記ミストを搬送ガスの流れによって前記ステージ上の前記基板まで搬送する供給経路と、
前記供給経路の少なくとも一部を加熱するヒータと、
を備え、
前記ヒータによって加熱される前記供給経路の区間は、前記供給経路の内面から前記ミストに向けて赤外線が照射されるミスト加熱区間となり、
前記使用方法は、
前記ヒータを作動させつつ、前記ミスト発生源で発生した前記ミストを前記ミスト加熱区間へ供給して、前記ミスト加熱区間の内面に被覆層を形成する予備工程と、
前記予備工程後に実施されるとともに、前記ヒータを作動させつつ、前記ミスト発生源で発生した前記ミストを前記供給経路を通じて前記ステージ上の前記基板へ供給して、前記基板の前記表面に前記膜を形成する成膜工程と、
を備えており、
前記予備工程における前記ミスト加熱区間の前記内面の温度をT4とし、前記成膜工程における前記基板の温度をT1としたときに、T1<T4の関係が満たされる
、
使用方法。
【請求項12】
前記予備工程における前記ミストは、前記成膜工程における前記ミストと同一である、請求項
10又は11に記載の使用方法。
【請求項13】
前記予備工程と前記成膜工程とが連続して実施される、請求項
10から
12のいずれか一項に記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、成膜装置とその使用方法に関する。
【0002】
特許文献1に、成膜装置が開示されている。この成膜装置は、ミストCVD法によって、基板の表面に膜を形成するように構成されており、ミスト発生源で発生したミストが搬送ガスの流れによって搬送される供給経路と、供給経路の少なくとも一部の区間を加熱するヒータとを備える。
【0003】
上記した製造方法のように、供給経路を加熱することで、供給経路におけるミストの凝縮、凝集を防止することができる。ミストの凝縮、凝集を防止することで、基板に供給されるミストの供給量が増大して、成膜速度の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、供給経路を加熱したとしても、供給経路におけるミストの凝縮、凝集を完全に防止することはできない。その結果、成膜装置の使用が繰り返されると、供給経路の内面には、ミストの凝縮、凝集に由来する堆積物が付着していく。そして、堆積物の付着が進行するにつれて、基板に形成される膜の品質(以下、膜質という)も悪化することが判明した。本明細書は、このような膜質の悪化を抑制し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
供給経路を加熱した場合、供給経路内を搬送されるミストも加熱され、加熱されたミストが基板に供給される。しかしながら、成膜装置の使用が繰り返され、供給経路の内面に堆積物が付着していくと、供給経路の内面からミストに伝わる熱量(特に、赤外線の線量)が減少する。その結果、ミストに生じる温度上昇が小さくなり、基板に供給されるミストの温度が意図せず低下することで、膜質の悪化を招いてしまう。従って、成膜装置の使用が繰り返される過程において、供給経路の内面からミストに伝わる熱量(特に、赤外線の線量)の減少を抑制することができれば、膜質の悪化を抑制することができる。そして、そのためには、供給経路の内面を、ミストに由来する堆積物に相当又は近似する材料で、予め被覆しておくことが考えられる。
【0007】
上記の知見に基づいて、基板(2)の表面に膜(4)を形成する成膜装置(10、110、210、310)が開示される。この成膜装置は、基板が載置されるステージ(12)と、膜を構成する材料が溶解しているとともに、少なくとも水を含む溶液(6)のミスト(7)を生成するミスト発生源(20)と、ミスト発生源で発生したミストを搬送ガスの流れによってステージ上の基板まで搬送する供給経路(30)と、供給経路の少なくとも一部を加熱するヒータ(34)とを備える。ヒータによって加熱される供給経路の区間は、供給経路の内面(30a)からミストに向けて赤外線(R1、R2)が照射されるミスト加熱区間(HS)となる。ミスト加熱区間では、供給経路の内面が、ミスト中に存在する元素の酸化物又は水酸化物の少なくとも一方を含む被覆層(40)で覆われている。
【0008】
上記した成膜装置では、ヒータが供給経路を加熱することで、供給経路中にミスト加熱区間が形成される。ミスト加熱区間では、供給経路の内面からミストに向けて赤外線が照射される。ミスト加熱区間の内面は、ミストに由来する堆積物に相当又は近似する材料で、予め被覆されている。これにより、成膜装置の使用が繰り返される過程において、ミストに由来する堆積物がさらに付着しても、供給経路の内面からミストに伝わる熱量(特に、赤外線量)の減少幅は小さくなる。その結果、基板に供給されるミストの温度低下も抑制され、予め定められた最適な条件下での成膜を、長期に亘って継続することができる。
【0009】
本技術の一実施形態において、被覆層は、ミスト中に含まれる元素のみで構成されていてもよい。このような構成によると、成膜装置によって形成される膜に、不純物が含有されることを避けることができる。
【0010】
本技術の一実施形態において、供給経路は、ステージが配置された成膜室(12)を含んでもよい。この場合、成膜時における基板の温度をT1、基板の表面に対向する成膜室の内面の温度T2としたときに、T1>T2を満たしてもよい。即ち、いわゆるコールドウォール方式であってよい。コールドウォール方式では、成膜室内でミストが加熱されないことから、ミスト加熱区間におけるミストの温度上昇が、基板に供給されるミストの最終温度に大きく影響し、膜質に対しても大きな影響を与え得る。言い換えると、コールドウォール方式では、ミスト加熱区間におけるミストの温度上昇を安定させることで、膜質を効果的に安定させることができ、そのために、本技術を好適に採用することができる。
【0011】
本技術の一実施形態において、ミスト加熱区間の被覆層は、供給経路の内面からミストに向けて照射される赤外線に対して、50パーセント以上の吸収率を有してもよい。このような構成によると、成膜装置が繰り返し使用される過程において、ミストに由来する堆積物がさらに付着したときでも、ミストに照射される赤外線量の減少幅が効果的に抑制される。
【0012】
本技術の一実施形態において、基板の表面に形成される膜は、エピタキシャル膜であってよい。但し、他の実施形態として、基板の表面に形成される膜は、エピタキシャル膜でなくてもよく、結晶構造を有する膜であってもよいし、結晶構造を有さない膜であってもよい。
【0013】
本技術の一実施形態において、ミスト加熱区間における供給経路の内面は、石英で構成されていてもよい。この場合、石英は水酸基(OH基)を含んでもよい。石英は、化学的に安定した物質であり、かつ、耐熱性にも優れている。そのため、供給経路を構成する材料として、石英を採用することができる。その一方で、石英は、水に吸収されやすい赤外線領域の透過率も高ことから、ミストの凝縮、凝集に起因する堆積物が付着した時に、ミストへ照射される赤外線量が大きく変化することになる。このような変化を抑制するためには、予め供給経路の内面に被覆層を形成しておくとよく、この点において、本技術の効果が有意に発揮される。
【0014】
本技術の一実施形態において、ヒータの温度をT3としたときに、T3≧100℃を満たしてもよい。水を含む溶液のミストの凝縮、凝集を抑制するためには、ヒータの温度を100℃以上に設定するとよい。しかしながら、ヒータの温度を100℃以上に設定すると、ミストに含まれる水の蒸発に起因して、供給経路の内面には堆積物が付着しやすくなり、ミストへ照射される赤外線量の変化を招いてしまう。このような変化を抑制するためには、予め供給経路の内面に被覆層を形成しておくとよく、この点において、本技術の効果が有意に発揮される。
【0015】
本技術の一実施形態において、供給経路は、ステージが配置された成膜室を含んでもよい。この場合、成膜室の内面の温度をT2とし、ヒータの温度T3としたときに、T2<T3の関係を満たしてもよい。このような構成によると、成膜室内でミストがあまり加熱されない。そのことから、ミスト加熱区間におけるミストの温度上昇が、基板に供給されるミストの最終温度に大きく影響し、膜質に対しても大きな影響を与え得る。言い換えると、上記したT2<T3の関係が満たされる場合は、ミスト加熱区間におけるミストの温度上昇を安定させることで、膜質を効果的に安定させることができ、そのために、本技術を好適に採用することができる。
【0016】
本技術の一実施形態において、ミストに照射される赤外線の波長λは、λ≦7.8マイクロメートルであってよい。水を含む溶液のミストを用いた成膜では、その水の少なくとも一部が取り除かれることで、基板の表面に膜が形成される。そのことから、通常、ヒータは100℃以上の温度を有するとよく、そのようなヒータからは、ウィーンの変異則に基づいて、7.8マイクロメートル以下の波長を有する赤外線が多く放射される。7.8マイクロメートル以下の波長は、水によって吸収されやすい波長帯域であり、水を含むミストの温度上昇に大きく影響する。従って、膜質を安定させるためには、ミストに照射される赤外線量の変化を抑制することが特に有効であり、そのために、本技術を好適に採用することができる。
【0017】
本技術は、成膜装置の使用方法にも具現化される。成膜装置は、基板の表面に膜を形成する装置であって、基板が載置されるステージと、ステージ上の前記基板を加熱するヒータと、膜を構成する材料が溶解しているとともに、少なくとも水を含む溶液のミストを生成するミスト発生源と、ミスト発生源で発生したミストを搬送ガスの流れによってステージ上の基板まで搬送する供給経路と、供給経路の少なくとも一部を加熱するヒータとを備える。この成膜装置では、ヒータによって加熱される供給経路の区間が、供給経路の内面からミストに向けて赤外線が照射されるミスト加熱区間となる。使用方法は、予備工程と、予備工程後に実施される成膜工程とを有する。予備工程では、ヒータを作動させつつ、ミスト発生源で発生したミストをミスト加熱区間へ供給して、ミスト加熱区間の内面に被覆層を形成する。成膜工程では、ヒータを作動させつつ、ミスト発生源で発生したミストを供給経路を通じてステージ上の基板へ供給して、基板の表面に膜を形成する。
【0018】
上記した使用方法では、予備工程が実施されることによって、ミスト加熱区間の内面を、ミストに由来する堆積物に相当又は近似する材料で、予め被覆することができる。これにより、その後の成膜工程において、供給経路の内面からミストに伝わる熱量(特に、赤外線量)が減少していくことを、効果的に抑制することができる。その結果、基板に供給されるミストの温度が意図せず低下することがなく、予め定められた最適な条件下での成膜を長期に亘って継続することができる。
【0019】
本技術の一実施形態では、予備工程におけるミスト加熱区間の内面の温度をT4とし、成膜工程におけるヒータの温度をT3としたときに、T3<T4の関係が満たされてもよい。このような構成によると、予備工程において、ミスト加熱区間の内面が比較的に高温となることで、被覆層の形成が効果的に促進される。
【0020】
本技術の一実施形態では、予備工程におけるミスト加熱区間の内面の温度をT4とし、成膜工程における基板の温度をT1としたときに、T1<T4の関係が満たされてもよい。このような構成によると、予備工程において、ミスト加熱区間の内面が比較的に高温となることで、被覆層の形成が効果的に促進される。
【0021】
本技術の一実施形態では、予備工程におけるミストが、成膜工程におけるミストと同一であってもよい。この場合、特に限定されないが、予備工程と成膜工程とが、連続して実施されてもよい。但し、他の実施形態として、予備工程におけるミストが、成膜工程におけるミストと異なってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例1の成膜装置10の構成を模式的に示す。
【
図3】実施例1の成膜装置10の使用方法を説明する図であって、特に、予備工程の様子を示す。
【
図4】実施例1の成膜装置10の使用方法を説明する図であって、特に、成膜工程の様子を示す。
【
図5】実施例2の成膜装置110の構成を模式的に示す。
【
図7】実施例2の成膜装置110の使用方法を説明する図であって、特に、予備工程の様子を示す。
【
図8】実施例3の成膜装置210の構成を模式的に示す。
【
図10】実施例3の成膜装置110の使用方法を説明する図であって、特に、予備工程の様子を示す。
【
図11】実施例4の成膜装置310の構成を模式的に示す。
【
図13】実施例4の成膜装置310の使用方法を説明する図であって、特に、予備工程の様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施例1) 図面を参照して、実施例1の成膜装置10について説明する。
図1に示すように、本実施例の成膜装置10は、ミストCVD法を用いて、基板2の表面上に膜4を形成する。特に限定されないが、基板2は、酸化ガリウムの基板であってよく、膜4は、酸化ガリウムのホモエピタキシャル成長膜であってよい。
【0024】
成膜装置10は、基板2が配置される成膜室12と、ミスト7を生成するミスト発生源20と、ミスト発生源20と成膜室12とを互い接続するミスト供給経路30とを備える。成膜室12は、基板2が載置されるステージ14と、ステージ14上の基板2を加熱するステージヒータ16とを有する。成膜時における基板2の温度をT1とし、基板2の表面に対向する成膜室12の内面の温度T2としたときに、T1>T2が満たされる。なお、成膜室12の具体的な構成については、特に限定されない。
【0025】
ミスト発生源20は、原料溶液槽22と、水槽24と、超音波振動子26を有する。原料溶液槽22は、原料溶液6を貯留する容器である。原料溶液6は、膜4を構成する材料が溶解している溶液であるとともに、少なくとも水を含む溶液である。原料溶液槽22は、ミスト供給経路30を介して、成膜室12に接続されている。水槽24は、水を貯留する容器である。水槽24の上部は解放されており、その開放された上部から、原料溶液槽22を受け入れる。原料溶液槽22の底面は、水槽24内の水に浸漬されている。
【0026】
超音波振動子26は、超音波振動を発生する装置である。超音波振動子26は、水槽24の底に配置されており、原料溶液槽22の底面に対向している。超音波振動子26が発生する超音波振動は、水槽24内の水を介して、原料溶液槽22内の原料溶液6に伝えられる。原料溶液6に超音波振動が伝えられると、原料溶液6の表面が振動することによって、原料溶液槽22内に原料溶液6のミスト7が発生する。特に限定されないが、原料溶液槽22の底面は、柔軟な材料で構成された膜であるとよく、それによって原料溶液6に超音波振動が伝わり易くなる。
【0027】
原料溶液槽22には、搬送ガスの供給路28が接続されている。搬送ガスの供給路32は、例えば窒素ガス(N2)といった搬送ガスを、原料溶液槽22内へ供給する。これにより、原料溶液槽22内に発生したミスト7は、窒素ガス(N2)の流れによってミスト供給経路30へ流入し、ミスト供給経路30を通じて成膜室12内へ供給される。ミスト供給経路30には、希釈ガスの供給路32が接続されている。希釈ガスの供給路32は、例えば窒素ガス(N2)といった希釈ガスを、ミスト供給経路30内へ供給する。ミスト7は、これらの搬送ガスや希釈ガスによって、適度な密度や流量で成膜室12内へ供給される。
【0028】
ミスト供給経路30は、管状の部材であって、原料溶液槽22と成膜室12との間を互いに連通している。特に限定されないが、本実施例におけるミスト供給経路30は、石英で構成されている。なお、この石英は、水酸基(OH基)を実質的に含有しない無水石英であってもよいし、水酸基を比較的に多く含有する石英であってもよい。ミスト供給経路30には、ヒータ34が設けられている。ヒータ34は、ミスト供給経路30に沿って設けられており、ミスト供給経路30の少なくとも一部の区間HSを加熱する。ヒータ34の具体的な構成については、特に限定されない。ヒータ34は、ミスト供給経路30を加熱することによって、ミスト供給経路30を通過するミスト7の凝縮、凝集を抑制する。ヒータ34の温度T3は、例えばT3≧100℃であってよい。
【0029】
図2に示すように、ヒータ34が発生する赤外線R1の一部は、ミスト供給経路30を通過してミスト7に照射される。赤外線R1の波長λは、ヒータ34の温度T3に応じて変化する(プランクの法則参照)。例えば、T3=400℃の場合、赤外線R1は、λ=約2.5~15.2マイクロメートルの波長を有し、λ=5.1マイクロメートルにおいて振幅のピークを有する。また、ヒータ34によって加熱されたミスト供給経路30も赤外線R2を発生し、その赤外線R2の一部はミスト7に照射される。このように、ヒータ34によって加熱されるミスト供給経路30の区間HSでは、ミスト供給経路30の内面30aからミスト7に向けて赤外線R1、R2が照射されることで、そこを通過するミスト7も加熱される。従って、ヒータ34によって加熱される区間HSを、以下では、ミスト加熱区間HSと称する。
【0030】
成膜装置10の使用が繰り返されると、ミスト供給経路30の内面30aには、ミスト7の凝縮、凝集に由来する堆積物が付着していく。内面30aに付着した堆積物は、ミスト供給経路30の内面30aからミスト7に照射される赤外線R1、R2を吸収する。従って、堆積物の付着が進行するにつれて、ミスト7に伝わる熱量(赤外線R1、R2の線量)が減少していき、ミスト7に生じる温度上昇も小さくなる。その結果、基板2に供給されるミスト7の温度が意図せず低下することで、膜質の悪化を招いてしまう。言い換えると、成膜装置10の使用が繰り返される過程において、ミスト供給経路30の内面30aからミスト7に伝わる熱量(赤外線R1、R2の線量)の減少を抑制することができれば、膜質の悪化を抑制することができる。そして、そのためには、ミスト供給経路30の内面30aを、ミスト7に由来する堆積物に相当又は近似する材料で、予め被覆しておくことが考えられる。
【0031】
上記の知見に基づいて、本実施例におけるミスト加熱区間HSでは、ミスト供給経路30の内面30aが、被覆層40で覆われている。被覆層40を構成する材料には、ミスト7に存在する元素の酸化物又は水酸化物の少なくとも一方が含まれる。ミスト供給経路30は、透明な石英で構成されているので、その内面30aに被覆層40が形成されていることで、ミスト供給経路30は曇りガラスに類似する外観を有している。ミスト供給経路30の内面30aに、被覆層40が予め形成されていることで、ミスト7に由来する堆積物がさらに付着しても、ミスト供給経路30の内面30aからミスト7に伝わる熱量(赤外線R1、R2の線量)の減少幅は小さくなる。その結果、基板2に供給されるミスト7の温度低下も抑制され、予め定められた最適な条件下での成膜を、長期に亘って継続することができる。
【0032】
被覆層40の具体的な構成、例えば厚みや密度といった指標については、特に限定されない。但し、被覆層40は、ミスト供給経路30の内面30aからミスト7に向けて照射される赤外線R1、R2に対して、50パーセント以上の吸収率を有してもよい。このような構成によると、成膜装置10が繰り返し使用される過程において、ミスト7に起因する堆積物がさらに付着したときでも、ミスト7に照射される赤外線量の減少幅が効果的に抑制される。
【0033】
本実施例の成膜装置10では、ヒータ34の温度をT3としたときに、T3≧100℃を満たしてもよい。この場合、成膜室12の内面の温度をT2としたときに、T2<T3の関係を満たしてもよい。このような構成によると、ミスト7は主にミスト加熱区間HSで加熱され、成膜室12内ではあまり加熱されない。そのことから、ミスト加熱区間HSにおけるミスト7の温度上昇が、基板2に供給されるミスト7の最終温度に大きく影響し、膜質に対しても大きな影響を与え得る。従って、上記したT2<T3の関係が満たされる場合は、ミスト加熱区間HSにおけるミスト7の温度上昇を安定させることで、膜質を効果的に安定させることができる。そのためには、本実施例で説明したように、ミスト供給経路30の内面30aが、予め被覆層40で覆われているとよい。
【0034】
ヒータ34の温度T3がT3≧100℃を満たす場合、ウィーンの変異則に基づいて、ヒータ34からは、7.8マイクロメートル以下の波長を有する赤外線R1、R2が多く放射される。7.8マイクロメートル以下の波長は、水によって吸収されやすい波長帯域であり、水を含むミスト7の温度上昇に大きく影響する。従って、膜質を安定させるためには、ミスト7に照射される赤外線量の変化を抑制することが特に有効であり、そのためには、ミスト供給経路30の内面30aが、予め被覆層40で覆われているとよい。
【0035】
次に、
図3、
図4を参照して、成膜装置10の使用方法について説明する。この使用方法は、予備工程と、予備工程後に実施される成膜工程とを有する。
図3に示すように、予備工程では、ヒータ34を作動させつつ、ミスト発生源20で発生したミスト7をミスト供給経路30に供給する。これにより、ミスト供給経路30の内面30aであって、特に、ミスト加熱区間HSに位置する内面30aに、被覆層40が形成される。なお、予備工程を実施する前の段階において、ミスト供給経路30の内面30aには、被覆層40が予め形成されていてもよいし、形成されていなくてもよい。即ち、被覆層40は、予備工程によって初めて形成されてもよく、この場合、被覆層40は、ミスト7中に含まれる元素のみで構成されることができる。
【0036】
予備工程では、ミスト供給経路30内のミスト7が、成膜室12に供給されることなく、外部へ排気されるとよい。そのことから、ミスト供給経路30には、分岐弁36を介して排気経路38が設けられてもよい。分岐弁36は、ミスト加熱区間HSよりも下流側に位置しており、ミスト加熱区間HSを通過したミスト7を、成膜室12と排気経路38との一方へ選択的に案内するように構成されている。
【0037】
その後、
図4に示すように、成膜工程では、ヒータ34を作動させつつ、ミスト発生源20で発生したミスト7を、ミスト供給経路30を通じて成膜室12へ供給する。成膜室12では、ステージ14上に基板2が載置されており、ステージ14上の基板2は、ステージヒータ16によって温度T1に加熱されている。成膜室12に供給されたミスト7は、ステージ14上の基板2へ供給されることで、基板2の表面に膜4を形成する。ミスト供給経路30の内面30aに、被覆層40が予め形成されていることで、成膜工程では、安定した膜質で成膜を実施することができる。
【0038】
特に限定されないが、予備工程におけるヒータ34の温度T4と、成膜工程における基板2の温度T1との間に、T1<T4の関係が満たされてもよい。このような構成によると、予備工程において、ミスト加熱区間HSの内面30aが比較的に高温となることで、被覆層40の形成が効果的に促進される。なお、予備工程において、ミスト加熱区間HSの内面30aの温度は、ヒータ34の温度T4と実質的に等しくなる。また、予備工程におけるヒータ34の温度T4と、成膜工程におけるヒータ34の温度T3との間に、T3<T4の関係が満たされるとよい。この場合でも、予備工程において、ミスト加熱区間HSの内面30aが比較的に高温となることで、被覆層40の形成が効果的に促進される。
【0039】
特に限定されないが、予備工程におけるミスト7は、成膜工程におけるミスト7と同一であってもよい。この場合、特に限定されないが、予備工程と成膜工程とが、連続して実施されてもよい。但し、他の実施形態として、予備工程におけるミスト7が、成膜工程におけるミスト7と異なってもよい。即ち、予備工程と成膜工程との間で、原料溶液6を互いに相違させてもよい。
【0040】
(実施例2) 図面を参照して、実施例2の成膜装置110について説明する。
図5に示すように、本実施例の成膜装置110は、ミストCVD法を用いて、基板2の表面上に膜4を形成する。実施例2の成膜装置110は、基本構造において、実施例1の成膜装置10と共通している。以下の説明において、実施例1と共通する構成については、同一の符号を付すことにより、重複して説明することは避けることとする。
【0041】
本実施例の成膜装置110では、成膜室12が筒状の構成を有しており、成膜室12の周囲にヒータ34が設けられている。ミスト供給経路30の一部の区間HSは、成膜室12の内部に位置しており、ヒータ34によって取り囲まれている。これにより、ヒータ34は、ステージ14上の基板2を加熱するとともに、ミスト供給経路30を加熱することもできる。
図6に示すように、ヒータ34が発生する赤外線R1の一部は、ミスト供給経路30を通過してミスト7に照射される。加えて、ヒータ34によって加熱されたミスト供給経路30も赤外線R2を発生し、その赤外線R2の一部はミスト7に照射される。このように、ヒータ34によって加熱されるミスト供給経路30の区間HSでは、ミスト供給経路30の内面30aからミスト7に向けて赤外線R1、R2が照射されることで、そこを通過するミスト7も加熱される。従って、ヒータ34によって加熱される区間HSを、ここでもミスト加熱区間HSと称する。
【0042】
本実施例においても、ミスト加熱区間HSでは、ミスト供給経路30の内面30aが、被覆層40で覆われている。被覆層40を構成する材料には、ミスト7に存在する元素の酸化物又は水酸化物の少なくとも一方が含まれる。ミスト供給経路30の内面30aに、被覆層40が予め形成されていることで、ミスト7に由来する堆積物がさらに付着しても、ミスト供給経路30の内面30aからミスト7に伝わる熱量(赤外線R1、R2の線量)の減少幅は小さくなる。その結果、基板2に供給されるミスト7の温度低下も抑制され、予め定められた最適な条件下での成膜を、長期に亘って継続することができる。
【0043】
次に、
図7をさらに参照して、成膜装置110の使用方法について説明する。この使用方法は、予備工程と、予備工程後に実施される成膜工程とを有する。
図7に示すように、予備工程は、ミスト発生源20及びミスト供給経路30を、成膜室12から取り外して行うことができる。この場合、ミスト加熱区間HSには、予備工程用のヒータ134が取り付けられるとよい。予備工程では、ヒータ134を作動させつつ、ミスト発生源20で発生したミスト7をミスト供給経路30に供給する。これにより、ミスト供給経路30の内面30aであって、特に、ミスト加熱区間HSに位置する内面30aに、被覆層40が形成される(
図6参照)。
【0044】
その後、
図5に示すように、成膜工程では、ミスト発生源20及びミスト供給経路30を、成膜室12に取り付ける。そして、ヒータ34を作動させつつ、ミスト発生源20で発生したミスト7を、ミスト供給経路30を通じて成膜室12へ供給する。成膜室12では、ステージ14上に基板2が載置されており、ステージ14上の基板2へ供給されたミスト7が、基板2の表面に膜4を形成する。本実施例においても、ミスト供給経路30の内面30aに、被覆層40が予め形成されていることで、成膜工程では、安定した膜質で成膜を実施することができる。
【0045】
(実施例3) 図面を参照して、実施例3の成膜装置210について説明する。
図8に示すように、本実施例の成膜装置210は、ミストCVD法を用いて、基板2の表面上に膜4を形成する。実施例3の成膜装置210は、基本構造において、実施例1の成膜装置10と共通している。以下の説明において、実施例1と共通する構成については、同一の符号を付すことにより、重複して説明することは避けることとする。
【0046】
本実施例の成膜装置210では、ミスト供給経路30の一部と成膜室12とが、共通の筒状部材で構成されており、その筒状部材の周囲にヒータ34が設けられている。従って、本実施例の成膜装置210では、ミスト供給経路30と成膜室12との境界が特に定められておらず、ミスト供給経路30に成膜室12が含まれるとも解釈できる。
図9に示すように、ヒータ34が発生する赤外線R1の一部は、ミスト供給経路30を通過してミスト7に照射される。加えて、ヒータ34によって加熱されたミスト供給経路30も赤外線R2を発生し、その赤外線R2の一部はミスト7に照射される。このように、ヒータ34によって加熱されるミスト供給経路30の区間HSでは、ミスト供給経路30の内面30aからミスト7に向けて赤外線R1、R2が照射されることで、そこを通過するミスト7も加熱される。従って、ヒータ34によって加熱される区間HSを、ここでもミスト加熱区間HSと称する。また、本実施例におけるヒータ34は、ステージ14上の基板2を加熱するヒータとしても機能する。
【0047】
本実施例においても、ミスト加熱区間HSでは、ミスト供給経路30の内面30aが、被覆層40で覆われている。被覆層40を構成する材料には、ミスト7に存在する元素の酸化物又は水酸化物の少なくとも一方が含まれる。ミスト供給経路30の内面30aに、被覆層40が予め形成されていることで、ミスト7に由来する堆積物がさらに付着しても、ミスト供給経路30の内面30aからミスト7に伝わる熱量(赤外線R1、R2の線量)の減少幅は小さくなる。その結果、基板2に供給されるミスト7の温度低下も抑制され、予め定められた最適な条件下での成膜を、長期に亘って継続することができる。
【0048】
次に、
図10をさらに参照して、成膜装置210の使用方法について説明する。この使用方法は、予備工程と、予備工程後に実施される成膜工程とを有する。
図10に示すように、予備工程では、成膜室12からステージ14を取り外して行うことができる。予備工程では、ヒータ134を作動させつつ、ミスト発生源20で発生したミスト7をミスト供給経路30に供給する。これにより、ミスト供給経路30の内面30aであって、特に、ミスト加熱区間HSに位置する内面30aに、被覆層40が形成される(
図9参照)。
【0049】
その後、
図8に示すように、成膜工程では、基板2を載置したステージ14を成膜室12内に配置する。そして、ヒータ34を作動させつつ、ミスト発生源20で発生したミスト7を、ミスト供給経路30を通じて成膜室12へ供給する。成膜室12では、ステージ14上の基板2へ供給されたミスト7が、基板2の表面に膜4を形成する。本実施例においても、ミスト供給経路30の内面30aに、被覆層40が予め形成されていることで、成膜工程では、安定した膜質で成膜を実施することができる。
【0050】
(実施例4) 図面を参照して、実施例4の成膜装置310について説明する。
図11に示すように、本実施例の成膜装置310は、ミストCVD法を用いて、基板2の表面上に膜4を形成する。実施例4の成膜装置310は、基本構造において、実施例1の成膜装置10と共通している。以下の説明において、実施例1と共通する構成については、同一の符号を付すことにより、重複して説明することは避けることとする。
【0051】
本実施例の成膜装置310では、ステージ14がターンテーブルとなっており、複数の基板2を載置することができる。また、成膜室12には、ミスト供給経路30に接続されたダクト312が設けられており、ミスト供給経路30からのミスト7が、ダクト312を通じてステージ14上の基板2へ供給されるように構成されている。ミスト供給経路30には、実施例1と同じく、分岐弁36を介して排気経路38が設けられている。
【0052】
ミスト供給経路30の一部の区間HSには、ヒータ34が設けられている。
図12に示すように、ヒータ34が発生する赤外線R1の一部は、ミスト供給経路30を通過してミスト7に照射される。加えて、ヒータ34によって加熱されたミスト供給経路30も赤外線R2を発生し、その赤外線R2の一部はミスト7に照射される。このように、ヒータ34によって加熱されるミスト供給経路30の区間HSでは、ミスト供給経路30の内面30aからミスト7に向けて赤外線R1、R2が照射されることで、そこを通過するミスト7も加熱される。従って、ヒータ34によって加熱される区間HSを、ここでもミスト加熱区間HSと称する。
【0053】
本実施例においても、ミスト加熱区間HSでは、ミスト供給経路30の内面30aが、被覆層40で覆われている。被覆層40を構成する材料には、ミスト7に存在する元素の酸化物又は水酸化物の少なくとも一方が含まれる。ミスト供給経路30の内面30aに、被覆層40が予め形成されていることで、ミスト7に由来する堆積物がさらに付着しても、ミスト供給経路30の内面30aからミスト7に伝わる熱量(赤外線R1、R2の線量)の減少幅は小さくなる。その結果、基板2に供給されるミスト7の温度低下も抑制され、予め定められた最適な条件下での成膜を、長期に亘って継続することができる。
【0054】
次に、
図13をさらに参照して、成膜装置310の使用方法について説明する。この使用方法は、予備工程と、予備工程後に実施される成膜工程とを有する。
図13に示すように、予備工程では、ヒータ34を作動させつつ、ミスト発生源20で発生したミスト7をミスト供給経路30に供給する。これにより、ミスト供給経路30の内面30aであって、特に、ミスト加熱区間HSに位置する内面30aに、被覆層40が形成される(
図12参照)。ミスト加熱区間HSを通過したミスト7は、排気経路38から外部へ排出されてもよい。
【0055】
その後、
図11に示すように、成膜工程では、ミスト発生源20及びミスト供給経路30を、成膜室12に取り付ける。そして、ヒータ34を作動させつつ、ミスト発生源20で発生したミスト7を、ミスト供給経路30を通じて成膜室12へ供給する。成膜室12では、ステージ14上に基板2が載置されており、ステージ14上の基板2へ供給されたミスト7が、基板2の表面に膜4を形成する。本実施例においても、ミスト供給経路30の内面30aに、被覆層40が予め形成されていることで、成膜工程では、安定した膜質で成膜を実施することができる。
【0056】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書、又は、図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書又は図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0057】
2:基板、 4:膜、 6:原料溶液、 7:ミスト、 10、110、210、310:成膜装置、 12:成膜室、 14:ステージ、 20:ミスト発生源、 30:ミスト供給経路、 34:ヒータ 被覆層:40 R1、R2:赤外線