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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-09
(45)【発行日】2025-07-17
(54)【発明の名称】ペプチド化合物の合成法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/02 20060101AFI20250710BHJP
   C07D 211/00 20060101ALN20250710BHJP
   C07D 233/00 20060101ALN20250710BHJP
【FI】
C07K1/02 ZNA
C07D211/00
C07D233/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021567656
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048651
(87)【国際公開番号】W WO2021132545
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2019238793
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 泰博
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】小宮 志央
(72)【発明者】
【氏名】侯 増▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】村形 政利
【審査官】西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/099656(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/225851(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/117274(WO,A1)
【文献】米国特許第05670647(US,A)
【文献】国際公開第2019/198833(WO,A1)
【文献】SHIINA, I. et al.,4-(Dimethylamino)pyridine N-oxide (DMAPO): An Effective Nucleophilic Catalyst in the Peptide Coupling Reaction with 2-Methyl-6-nitrobenzoic Anhydride,Chem. Asian J.,2008年,Vol. 3,pp.454-461
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00- 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド化合物を製造する方法であって、
工程A:溶媒中で酸成分のC末端活性体をアミン成分と縮合させて得られるペプチド化合物を含む、反応混合液を得る工程、および
工程B:前記反応混合液と三級アミンと水またはアルカリ水溶液とを混合し、該C末端活性体を除去する工程
を含み、
前記三級アミンが、下記式(B)または(C)で表される、前記方法。
【化1】

[式中、Xは、NまたはOであり、
およびRは、それぞれ独立して、C-Cアルキル、もしくはCヒドロキシアルキルであるか、またはそれらが結合している窒素原子と一緒になって5~6員非芳香族複素環を形成し、但し、XがOである場合、Rは存在せず、
およびRは、それぞれ独立して、H、C-Cアルキル、またはメトキシであり、
およびRは、それぞれ独立して、H、C-Cアルキル、もしくはCヒドロキシアルキルであるか、またはRが結合している窒素原子およびRが結合している炭素原子と一緒になって5~6員非芳香族複素環を形成する。]
【請求項2】
前記三級アミンが、NMIまたはDMAPである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペプチド化合物が、1つまたは複数の非天然アミノ酸を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記三級アミンを前記C末端活性体と作用させる際の温度が、25℃~60℃である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アミン成分に対して、前記三級アミンを0.5当量以上加える、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記C末端活性体を、前記三級アミンと作用させて加水分解し、除去する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程Bにおいて、前記反応混合液を有機層と水層に分層し、次いで該有機層を洗浄することをさらに含み、該洗浄後のC末端活性体の残存量が1.0%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程Aにおける溶媒が、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル、もしくはシクロペンチルメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミドまたはその混合溶媒である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程Bにおいて、前記アルカリ水溶液が炭酸カリウム水溶液または炭酸ナトリウム水溶液である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
酸成分が、アミノ基が保護基で保護された第1のアミノ酸であり、該第1のアミノ酸の側鎖が、1個以上の炭素原子を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記側鎖が、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアルコキシアルキル、置換されていてもよいシクロアルキルアルキル、置換されていてもよいアラルキル、または置換されていてもよいヘテロアリールアルキルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記三級アミンを前記C末端活性体と作用させる際の時間が、2時間以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記C末端活性体が縮合剤の存在下で形成され、該縮合剤がT3P、HATU、BEP、DMT-MM、EDCとPfpOHの組み合わせ、EDCとHOOBtの組み合わせ、またはEDCとHOBtの組み合わせを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド化合物の合成過程で生じる不要なC末端活性体を効率的に除去して、目的のペプチド化合物を効率的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチド合成は、その一形態として、アミノ酸、ペプチドなどのアミン類と反応してアミド結合形成を可能とするように、アミノ酸またはペプチドのC末端カルボキシル基を活性化した化合物を用いて行われる。この場合、反応終了後の反応溶液にカルボキシル基が活性化された化合物が残存すると、生成したペプチドの品質低下という問題を引き起こす。
【0003】
このようなC末端が活性化された化合物とは、ペプチド合成反応に用いたカルボキシル基が活性化された化合物のみならず、それが反応中で、例えば、アズラクトン、NCA(N-カルボキシ無水物(N-carboxyanhydride))などに変化して活性化状態を有することでアミン類と反応し得る化合物も含む(以後、これら化合物を「C末端活性体」と称する場合がある)。また、ペプチド合成反応に用いるC末端活性体は、例えば、非特許文献1または非特許文献2に記されているようなペプチド縮合剤を用いて合成される活性エステル、混合酸無水物およびアシルイソウレアなどに限られるものではなく、アミン類と反応しうるように活性化されていれば、任意の化合物が含まれる。
生成したペプチドの品質低下の例としては、C末端活性体の残存に起因して、不純物ペプチドの副生を招くことや、挿入配列のペプチドが最終産物の不純物として混入することが知られている(特許文献1、2)。
【0004】
このような残存C末端活性体の問題を解消する方法として、アルカリ水で処理して活性エステルを加水分解し、対応するアミノ酸のアルカリ水溶液として除去する方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、この方法では、アルカリ水での加水分解処理を複数回行う必要があり、操作が煩雑である。加えて、アルカリ水での処理回数が増え、その処理時間が長くなると、生成物のエピメリ化(異性化)などの副反応を引き起こすことが推測され、堅牢性を損ない得る。
【0005】
また、残存C末端活性体をN,N-ジメチルプロパン-1,3-ジアミンなどの1級アミノ基を有するポリアミンで捕捉し、塩基性化合物へと変換した後、酸性水溶液による水性洗浄で残存C末端活性体由来のアミド化合物を水層へ移行させて除去する方法が知られている (特許文献3、非特許文献3)。しかしながら、求核性が高い1級アミン類を用いると、目的ペプチドの求電子性が高い部位と1級アミンが反応し、共有結合を形成した不純物を生じることが推定されるため、高純度ペプチドの合成には不向きである。
【0006】
また残存C末端活性体を、保護基を有する潜在アニオンを含むアミンである捕捉剤と反応させて、アミド化合物に変換して除去する方法が知られている(特許文献2)。しかしながら、この方法では、アミド化合物を形成させた後に、水性抽出段階を経て、水素化分解を行った後に、さらに再度の水性抽出段階を経る必要があるため、操作が煩雑である。
【0007】
また、C末端活性体が残存していると、生成したペプチドのN末端の保護基を脱保護する際に、該C末端活性体のN末端の保護基の脱保護も同時に起こることがある。残存C末端活性体の脱保護体は不純物であるが、吸光係数が小さい場合には汎用的なHPLCで検出することが困難なため、品質管理上好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5171613号公報
【文献】特許第4142907号公報
【文献】特許第5212371号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Chem. Rev., 2011, 111, 6557.
【文献】Organic Process Research & Development, 2016, 20, 140.
【文献】Tetrahedron Lett., 1974, 15, 1785.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、一局面において、ペプチド化合物の合成において、残存するC末端活性体を効率的に除去することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、酸成分のC末端活性体とアミン成分とを縮合させることを含むペプチド化合物の合成において、反応混合液中の残存C末端活性体を、三級アミンと作用させることを通じて、除去できる手法を見出した。
【0012】
本発明は、非限定の具体的な一態様において以下を包含する。
〔1〕ペプチド化合物を製造する方法であって、
工程A:溶媒中で酸成分のC末端活性体をアミン成分と縮合させて得られるペプチド化合物を含む、反応混合液を得る工程、および
工程B:前記反応混合液と三級アミンと水または水溶液とを混合し、該C末端活性体を除去する工程
を含む、前記方法。
〔2〕ペプチド化合物を製造する方法であって、
工程A:溶媒中で酸成分のC末端活性体をアミン成分と縮合させて得られるペプチド化合物を含む、反応混合液を得る工程、および
工程B:前記反応混合液と三級アミンと水または水溶液とを混合し、該三級アミンを未反応のC末端活性体と作用させることを通じて該C末端活性体を除去する工程
を含む、前記方法。
〔3〕酸成分が、アミノ基が保護基で保護された第1のアミノ酸、またはN末端のアミノ基が保護基で保護された第1のペプチドである、〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔4〕アミン成分が、カルボキシル基が保護基で保護された第2のアミノ酸、またはC末端のカルボキシル基が保護基で保護された第2のペプチドである、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕工程Aが縮合剤の存在下で行われる、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔6〕前記三級アミンが、前記C末端活性体に対して求核反応性を有する、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕前記三級アミンが、窒素近傍の立体障害が小さいアミンである、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の方法。
〔8〕前記三級アミンが、下記式(A)、(B)、または(C)で表され:
式中、
~Rは、(i)RおよびRがそれらが結合している窒素原子と一緒になって5~6員非芳香族複素環を形成し、かつRがC-CアルキルまたはCヒドロキシアルキルであるか、または (ii) それぞれ独立して、C-Cアルキル、もしくはCヒドロキシアルキルであり、
Xは、NまたはOであり、
およびRは、それぞれ独立して、C-Cアルキル、もしくはCヒドロキシアルキルであるか、またはそれらが結合している窒素原子と一緒になって5~6員非芳香族複素環を形成し、但し、XがOである場合、Rは存在せず、
およびRは、それぞれ独立して、H、C-Cアルキル、またはメトキシであり、
およびRは、それぞれ独立して、H、C-Cアルキル、もしくはCヒドロキシアルキルであるか、またはRが結合している窒素原子およびRが結合している炭素原子と一緒になって5~6員非芳香族複素環を形成する、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕R~Rが、それぞれ独立して、C-Cアルキルである、〔8〕に記載の方法。
〔10〕XがNであり、RおよびRが、それぞれ独立して、C-Cアルキルであり、RおよびRがHである、〔8〕に記載の方法。
〔11〕RおよびRが、それぞれ独立して、HまたはC-Cアルキルである、〔8〕に記載の方法。
〔12〕前記三級アミンが、NMI、DMAP、またはトリメチルアミンである、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の方法。
〔13〕前記ペプチド化合物が、1つまたは複数の非天然アミノ酸を含む、〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の方法。
〔14〕前記三級アミンを前記C末端活性体と作用させる際の温度が、25℃~60℃である、〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の方法。
〔15〕前記アミン成分に対して、前記三級アミンを0.5当量以上加える、〔1〕~〔14〕のいずれかに記載の方法。
〔16〕C末端活性体の残存率が3%以下である、〔1〕~〔15〕のいずれかに記載の方法。
〔17〕工程Bにおいて、前記反応混合液を有機層と水層に分層し、次いで該有機層を洗浄することをさらに含み、該洗浄後のC末端活性体の残存量が1.0%以下である、〔1〕~〔16〕のいずれかに記載の方法。
〔18〕前記工程Aにおける溶媒が、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、もしくはN,N-ジメチルホルムアミド、またはその混合溶媒である、〔1〕~〔17〕のいずれかに記載の方法。
〔19〕前記工程Bにおいて、前記水溶液がアルカリ水溶液である、〔1〕~〔18〕のいずれかに記載の方法。
〔20〕第1のアミノ酸の側鎖が、1個以上の炭素原子を含む、〔1〕~〔19〕のいずれかに記載の方法。
〔21〕前記側鎖が、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアルコキシアルキル、置換されていてもよいシクロアルキルアルキル、置換されていてもよいアラルキル、または置換されていてもよいヘテロアリールアルキルである、〔20〕に記載の方法。
〔22〕前記三級アミンを前記C末端活性体と作用させる際の時間が、2時間以下である、〔1〕~〔21〕のいずれかに記載の方法。
〔23〕前記三級アミンを前記C末端活性体と作用させる際の時間が、2分~2時間である、〔1〕~〔22〕のいずれかに記載の方法。
〔24〕前記三級アミンを前記C末端活性体と作用させる際の時間が、5分~60分である、〔1〕~〔23〕のいずれかに記載の方法。
〔25〕前記三級アミンを前記C末端活性体と作用させる際の時間が、5分~50分である、〔1〕~〔24〕のいずれかに記載の方法。
〔26〕前記C末端活性体が縮合剤の存在下で形成され、該縮合剤がT3P、HATU、BEP、DMT-MM、EDCとPfpOHの組み合わせ、EDCとHOOBtの組み合わせ、またはEDCとHOBtの組み合わせを含む、〔1〕~〔25〕のいずれかに記載の方法。
〔27〕工程C:前記ペプチド化合物のN末端の保護基を脱保護する工程をさらに含む、〔1〕~〔26〕のいずれかに記載の方法。
〔28〕前記C末端活性体を、前記三級アミンと作用させて加水分解し、除去する、〔1〕~〔27〕に記載の方法。
〔29〕残存C末端活性体を含む溶液に三級アミンと水または水溶液を追加して、該C末端活性体を三級アミンと作用させる工程を含む、該C末端活性体の加水分解を促進する方法。
〔30〕残存C末端活性体の加水分解体を含む溶液を水性洗浄する工程を含む、該加水分解体を除去する方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法を用いることで、縮合反応後に残存しているC末端活性体を、1回の加水分解処理とそれに続く水性洗浄により、簡便にかつ短時間で効率的に除去できるため、カラム精製することなく、ペプチド化合物を純度よく合成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】C末端活性体の残存量相対値を示す図である。
図2】C末端活性体の残存量相対値を示す図である。
図3】C末端活性体の残存量相対値を示す図である。
図4】C末端活性体の残存率の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本開示の好ましい非限定的な実施態様を説明する。
【0016】
後述する本実施例に記載されるあらゆる要素(element)は、本特許出願の権利化を意図する国における、実施例に記載の内容を限定的に解釈しようとし得るいかなる特許実務、慣習、法令等の制限に縛られることなく、本「発明を実施するための形態」においても同等に記載されていると当然にみなされることを意図して記載される。
【0017】
本開示におけるいずれかに記載の一又は複数の要素(element)の一部又は全部を任意に組み合わせたものも、当業者の技術常識に基づいて技術的に矛盾しない限り、本開示に含まれることが意図され、かつ、当業者には当然に理解されるものとして記載される。
【0018】
(略語)
本明細書において使用される略語を以下に記す。
アミノ酸の略語
Aib:α-メチルアラニン
Ala:アラニン
Arg:アルギニン
Asn:アスパラギン
Asp:アスパラギン酸
Asp(tBu):O-t-ブチルアスパラギン酸
Aze:アゼチジン-2-カルボン酸
Cys:システイン
Glu:グルタミン酸
Gln:グルタミン
Gly:グリシン
His:ヒスチジン
Hph:ホモフェニルアラニン
Ile:イソロイシン
Leu:ロイシン
Lys:リシン
MeAla:N-メチルアラニン
MeAsp(tBu):N-メチルO-t-ブチルアスパラギン酸
MeGly:N-メチルグリシン
MeIle:N-メチルイソロイシン
MeLeu:N-メチルロイシン
MePhe:N-メチルフェニルアラニン
MeVal:N-メチルバリン
Met:メチオニン
Phe:フェニルアラニン
Phe-OtBu:O-t-ブチルフェニルアラニン
Phe(3-F):3-フルオロフェニルアラニン
Pro:プロリン
Ser:セリン
Ser(tBu):O-t-ブチルセリン
Thr:スレオニン
Thr(tBu):O-t-ブチル-スレオニン
Trp:トリプトファン
Tyr:チロシン
Val:バリン
【0019】
試薬/溶媒の略語
BEP:テトラフルオロほう酸2-ブロモ-1-エチルピリジニウム
DABCO:1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン
DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン
DCM:ジクロロメタン
DIPEA:ジイソプロピルジエチルアミン
DMAP:ジメチルアミノピリジン
DMT-MM:4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド
EDC:1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド
HATU:O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩
HOAt:1-アザヒドロキシベンゾトリアゾール
HOBt:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
HOOBt:3,4-ジヒドロ-3-ヒドロキシ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン
HOSu:N-ヒドロキシスクシンイミド
MTBE:メチル-t-ブチルエーテル
NMI:N-メチルイミダゾール
NMM:N-メチルモルホリン
T3P:プロピルホスホン酸無水物(環状トリマー)
TBAF:テトラブチルアンモニウムフルオリド
TsOH:p-トルエンスルホン酸
【0020】
官能基の略語
Bn:ベンジル
Boc:t-ブトキシカルボニル
Cbz:ベンジルオキシカルボニル
Pfp:ペンタフルオロフェニル
Teoc:2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル
【0021】
(官能基等の定義)
本明細書における「ハロゲン原子」としては、F、Cl、BrまたはIが例示される。
【0022】
本明細書において「アルキル」とは、脂肪族炭化水素から任意の水素原子を1個除いて誘導される1価の基であり、骨格中にヘテロ原子(炭素及び水素原子以外の原子をいう。)または不飽和の炭素-炭素結合を含有せず、水素及び炭素原子を含有するヒドロカルビルまたは炭化水素基構造の部分集合を有する。アルキルは直鎖状のものだけでなく、分枝鎖状のものも含む。アルキルとして具体的には、炭素原子数1~20(C-C20、以下「C-C」とは炭素原子数がp~q個であることを意味する)のアルキルであり、好ましくはC-C10アルキル、より好ましくはC-Cアルキル、さらに好ましくはC-Cアルキルが挙げられる。アルキルとして、具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、イソブチル(2-メチルプロピル)、n-ペンチル、s-ペンチル(1-メチルブチル)、t-ペンチル(1,1-ジメチルプロピル)、ネオペンチル(2,2-ジメチルプロピル)、イソペンチル(3-メチルブチル)、3-ペンチル(1-エチルプロピル)、1,2-ジメチルプロピル、2-メチルブチル、n-ヘキシル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1,1,2,2-テトラメチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル等が挙げられる。
【0023】
本明細書において「アルケニル」とは、少なくとも1個の二重結合(2個の隣接SP炭素原子)を有する1価の基である。二重結合および置換分(存在する場合)の配置によって、二重結合の幾何学的形態は、エントゲーゲン(E)またはツザンメン(Z)、シスまたはトランス配置をとることができる。アルケニルは、直鎖状のものだけでなく、分枝鎖状ものも含む。アルケニルとして好ましくはC-C10アルケニル、より好ましくはC-Cアルケニルが挙げられ、具体的には、たとえば、ビニル、アリル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル(シス、トランスを含む)、3-ブテニル、ペンテニル、3-メチル-2-ブテニル、ヘキセニルなどが挙げられる。
【0024】
本明細書において「アルキニル」とは、少なくとも1個の三重結合(2個の隣接SP炭素原子)を有する、1価の基である。アルキニルは、直鎖状のものだけでなく、分枝鎖状のものも含む。アルキニルとして好ましくはC-C10アルキニル、より好ましくはC-Cアルキニルが挙げられ、具体的には、たとえば、エチニル、1-プロピニル、プロパルギル、3-ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、3-フェニル-2-プロピニル、3-(2'-フルオロフェニル)-2-プロピニル、2-ヒドロキシ-2-プロピニル、3-(3-フルオロフェニル)-2-プロピニル、3-メチル-(5-フェニル)-4-ペンチニルなどが挙げられる。
【0025】
本明細書において「シクロアルキル」とは、飽和または部分的に飽和した環状の1価の脂肪族炭化水素基を意味し、単環、ビシクロ環、スピロ環を含む。シクロアルキルとして好ましくはC-Cシクロアルキルが挙げられ、具体的には、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、スピロ[3.3]ヘプチルなどが挙げられる。
【0026】
本明細書において「アリール」とは、1価の芳香族炭化水素環を意味し、好ましくはC-C10アリールが挙げられる。アリールとして具体的には、たとえば、フェニル、ナフチル(たとえば、1-ナフチル、2-ナフチル)などが挙げられる。
【0027】
本明細書において「ヘテロシクリル」とは、炭素原子に加えて1~5個のヘテロ原子を含有する、非芳香族の環状の1価の基を意味する。ヘテロシクリルは、環中に二重およびまたは三重結合を有していてもよく、環中の炭素原子は酸化されてカルボニルを形成してもよく、単環でも縮合環でもよい。環を構成する原子の数は好ましくは4~10であり(4~10員ヘテロシクリル)、より好ましくは4~7である(4~7員ヘテロシクリル)。ヘテロシクリルとしては具体的には、たとえば、アゼチジニル、オキシラニル、オキセタニル、アゼチジニル、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジル、テトラヒドロピリミジル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、1,2-チアジナン、チアジアゾリジニル、アゼチジニル、オキサゾリドン、ベンゾジオキサニル、ベンゾオキサゾリル、ジオキソラニル、ジオキサニル、テトラヒドロピロロ[1,2-c]イミダゾール、チエタニル、3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタニル、2,5-ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、3-オキサ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタニル、スルタム、2-オキサスピロ[3.3]ヘプチルなどが挙げられる。
【0028】
本明細書において「ヘテロアリール」とは、炭素原子に加えて1~5個のヘテロ原子を含有する、芳香族性の環状の1価の基を意味する。環は単環でも、他の環との縮合環でもよく、部分的に飽和されていてもよい。環を構成する原子の数は好ましくは5~10(5~10員ヘテロアリール)であり、より好ましくは5~7(5~7員ヘテロアリール)である。ヘテロアリールとして具体的には、たとえば、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ベンゾジオキソリル、インドリジニル、イミダゾピリジルなどが挙げられる。
【0029】
本明細書において「アルコキシ」とは、前記定義の「アルキル」が結合したオキシ基を意味し、好ましくはC-Cアルコキシが挙げられる。アルコキシとして具体的には、たとえば、メトキシ、エトキシ、1-プロポキシ、2-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、ペンチルオキシ、3-メチルブトキシなどが挙げられる。
【0030】
本明細書において「アルケニルオキシ」とは、前記定義の「アルケニル」が結合したオキシ基を意味し、好ましくはC-Cアルケニルオキシが挙げられる。アルケニルオキシとして具体的には、たとえば、ビニルオキシ、アリルオキシ、1-プロペニルオキシ、2-プロペニルオキシ、1-ブテニルオキシ、2-ブテニルオキシ(シス、トランスを含む)、3-ブテニルオキシ、ペンテニルオキシ、ヘキセニルオキシなどが挙げられる。
【0031】
本明細書において「シクロアルコキシ」とは、前記定義の「シクロアルキル」が結合したオキシ基を意味し、好ましくはC-Cシクロアルコキシが挙げられる。シクロアルコキシとして具体的には、たとえば、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、シクロペンチルオキシなどが挙げられる。
【0032】
本明細書において「アリールオキシ」とは、前記定義の「アリール」が結合したオキシ基を意味し、好ましくはC-C10アリールオキシが挙げられる。アリールオキシとして具体的には、たとえば、フェノキシ、1-ナフチルオキシ、2-ナフチルオキシなどが挙げられる。
【0033】
本明細書において「アミノ」とは、狭義には-NHを意味し、広義には-NRR’を意味し、ここでRおよびR’は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールから選択されるか、あるいはRおよびR’はそれらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成する。アミノとして好ましくは、-NH、モノC-Cアルキルアミノ、ジC-Cアルキルアミノ、4~8員環状アミノなどが挙げられる。
【0034】
本明細書において「モノアルキルアミノ」とは、前記定義の「アミノ」のうち、Rが水素であり、かつR’が前記定義の「アルキル」である基を意味し、好ましくは、モノC-Cアルキルアミノが挙げられる。モノアルキルアミノとして具体的には、たとえば、メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、i-プロピルアミノ、n-ブチルアミノ、s-ブチルアミノ、t-ブチルアミノなどが挙げられる。
【0035】
本明細書において「ジアルキルアミノ」とは、前記定義の「アミノ」のうち、RおよびR’が独立して前記定義の「アルキル」である基を意味し、好ましくは、ジC-Cアルキルアミノが挙げられる。ジアルキルアミノとして具体的には、たとえば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノなどが挙げられる。
【0036】
本明細書において「環状アミノ」とは、前記定義の「アミノ」のうち、RおよびR’はそれらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成する基を意味し、好ましくは、4~8員環状アミノが挙げられる。環状アミノとして具体的には、たとえば、1-アゼチジル、1-ピロリジル、1-ピペリジル、1-ピペラジル、4-モルホリニル、3-オキサゾリジル、1,1-ジオキシドチオモルホリニル-4-イル、3-オキサ-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イルなどが挙げられる。
【0037】
本明細書における「ヒドロキシアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つ、または複数の水素が水酸基で置換された基を意味し、C-Cヒドロキシアルキルが好ましく、Cヒドロキシアルキルがより好ましい。ヒドロキシアルキルとして具体的には、たとえば、ヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル、5-ヒドロキシペンチルなどが挙げられる。
【0038】
本明細書における「ハロアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素がハロゲンで置換された基を意味し、C-Cハロアルキルが好ましく、C-Cフルオロアルキルがより好ましい。ハロアルキルとして具体的には、たとえば、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3,3-ジフルオロプロピル、4,4-ジフルオロブチル、5,5-ジフルオロペンチルなどが挙げられる。
【0039】
本明細書における「シアノアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素がシアノで置換された基を意味し、C-Cシアノアルキルが好ましい。シアノアルキルとして具体的には、たとえば、シアノメチル、2-シアノエチルなどが挙げられる。
【0040】
本明細書における「アミノアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「アミノ」で置換された基を意味し、C-Cアミノアルキルが好ましい。アミノアルキルとして具体的には、たとえば、1-ピリジルメチル、2-(1-ピペリジル)エチル、3-(1-ピペリジル)プロピル、4-アミノブチルなどが挙げられる。
【0041】
本明細書における「カルボキシアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素がカルボキシで置換された基を意味し、C-Cカルボキシアルキルが好ましい。カルボキシアルキルとして具体的には、たとえば、カルボキシメチルなどが挙げられる。
【0042】
本明細書における「アルケニルオキシカルボニルアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「アルケニルオキシカルボニル」で置換された基を意味し、C-CアルケニルオキシカルボニルC-Cアルキルが好ましく、C-CアルケニルオキシカルボニルC-Cアルキルがより好ましい。アルケニルオキシカルボニルアルキルとして具体的には、たとえば、アリルオキシカルボニルメチル、2-(アリルオキシカルボニル)エチルなどが挙げられる。
【0043】
本明細書における「アルコキシアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「アルコキシ」で置換された基を意味し、C-CアルコキシC-Cアルキルが好ましく、C-CアルコキシC-Cアルキルがより好ましい。アルコキシアルキルとして具体的には、たとえば、メトキシメチル、エトキシメチル、1-プロポキシメチル、2-プロポキシメチル、n-ブトキシメチル、i-ブトキシメチル、s-ブトキシメチル、t-ブトキシメチル、ペンチルオキシメチル、3-メチルブトキシメチル、1-メトキシエチル、2-メトキシエチル、2-エトキシエチルなどが挙げられる。
【0044】
本明細書における「シクロアルキルアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「シクロアルキル」で置換された基を意味し、C-CシクロアルキルC-Cアルキルが好ましく、C-CシクロアルキルC-Cアルキルがより好ましい。シクロアルキルアルキルとして具体的には、たとえば、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチルなどが挙げられる。
【0045】
本明細書における「シクロアルコキシアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「シクロアルコキシ」で置換された基を意味し、C-CシクロアルコキシC-Cアルキルが好ましく、C-CシクロアルコキシC-Cアルキルがより好ましい。シクロアルコキシアルキルとして具体的には、たとえば、シクロプロポキシメチル、シクロブトキシメチルなどが挙げられる。
【0046】
本明細書における「ヘテロシクリルアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「ヘテロシクリル」で置換された基を意味し、4~7員ヘテロシクリルC-Cアルキルが好ましく、4~7員ヘテロシクリルC-Cアルキルがより好ましい。ヘテロシクリルアルキルとして具体的には、たとえば、2-(テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)エチル、2-(アゼチジン-3-イル)エチルなどが挙げられる。
【0047】
本明細書における「アルキルスルホニルアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「アルキルスルホニル」で置換された基を意味し、C-CアルキルスルホニルC-Cアルキルが好ましく、C-CアルキルスルホニルC-Cアルキルがより好ましい。アルキルスルホニルアルキルとして具体的には、たとえば、メチルスルホニルメチル、2-(メチルスルホニル)エチルなどが挙げられる。
【0048】
本明細書における「アミノカルボニルアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「アミノカルボニル」で置換された基を意味し、アミノカルボニルC-Cアルキルが好ましく、アミノカルボニルC-Cアルキルがより好ましい。アミノカルボニルアルキルとして具体的には、たとえば、メチルアミノカルボニルメチル、ジメチルアミノカルボニルメチル、t-ブチルアミノカルボニルメチル、1-アゼチジニルカルボニルメチル、1-ピロリジニルカルボニルメチル、1-ピペリジ二ルカルボニルメチル、4-モルホリニルカルボニルメチル、2-(メチルアミノカルボニル)エチル、2-(ジメチルアミノカルボニル)エチル、2-(1-アゼチジニルカルボニル)エチル、2-(1-ピロリジニルカルボニル)エチル、2-(4-モルホリニルカルボニル)エチル、3-(ジメチルアミノカルボニル)プロピル、4-(ジメチルアミノカルボニル)ブチルなどが挙げられる。
【0049】
本明細書における「アリールオキシアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の1つまたは複数の水素が前記定義の「アリールオキシ」で置換された基を意味し、C-C10アリールオキシC-Cアルキルが好ましく、C-C10アリールオキシC-Cアルキルがより好ましい。アリールオキシアルキルとして具体的には、たとえば、フェノキシメチル、2-フェノキシエチルなどが挙げられる。
【0050】
本明細書において「アラルキル(アリールアルキル)」とは、前記定義の「アルキル」の少なくとも一つの水素原子が前記定義の「アリール」で置換された基を意味し、C-C14アラルキルが好ましく、C-C10アラルキルがより好ましい。アラルキルとして具体的には、たとえば、ベンジル、フェネチル、3-フェニルプロピルなどが挙げられる。
【0051】
本明細書において「ヘテロアリールアルキル」とは、前記定義の「アルキル」の少なくとも一つの水素原子が前記定義の「ヘテロアリール」で置換された基を意味し、5~10員ヘテロアリールC-Cアルキルが好ましく、5~10員ヘテロアリールC-Cアルキルがより好ましい。ヘテロアリールアルキルとして具体的には、たとえば、3-チエニルメチル、4-チアゾリルメチル、2-ピリジルメチル、3-ピリジルメチル、4-ピリジルメチル、2-(2-ピリジル)エチル、2-(3-ピリジル)エチル、2-(4-ピリジル)エチル、2-(6-キノリル)エチル、2-(7-キノリル)エチル、2-(6-インドリル)エチル、2-(5-インドリル)エチル、2-(5-ベンゾフラニル)エチルなどが挙げられる。
【0052】
本明細書における「非芳香族複素環」とは、環を構成する原子中に1~5個のヘテロ原子を含有する、非芳香族性の複素環を意味する。非芳香族複素環は、環中に二重およびまたは三重結合を有していてもよく、環中の炭素原子は酸化されてカルボニルを形成してもよい。また非芳香族複素環は、単環でも、縮合環でも、スピロ環でもよい。環を構成する原子の数は限定されないが、好ましくは5~6である(5~6員非芳香族複素環)。非芳香族複素環として具体的には、たとえば、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ピロリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、オキサゾリジン、イソキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、ジオキソラン、ジチオラン、ピペリジン、テトラヒドロピラン、チアン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキサン、ジチアン、アゼパン、オキセパン、チエパン、ジアゼパンなどが挙げられる。
【0053】
本明細書において、「ペプチド鎖」とは、1、2、3、4、またはそれ以上の天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸がアミド結合および/またはエステル結合により連結されているペプチド鎖をいう。
【0054】
本明細書において「置換されていてもよい」とは、ある基が任意の置換基によって置換されていてもよいことを意味する。
【0055】
本明細書において「1つまたは複数の」とは、1つまたは2つ以上の数を意味する。「1つまたは複数の」が、ある基の置換基に関連する文脈で用いられる場合、この用語は、1つからその基が許容する置換基の最大数までの数を意味する。「1つまたは複数の」として具体的には、たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、および/またはそれより大きい数が挙げられる。
【0056】
本明細書において「C末端活性体」とは、ペプチド合成反応に用いられるカルボキシル基が活性化された化合物(例えば、目的ペプチド化合物の製造につながる活性エステル)のみならず、それが反応中で、例えば、アズラクトン、NCA(N-カルボキシ無水物(N-carboxyanhydride))などに変化して活性化状態を有することでアミン類(例えば、アミン成分)と反応して、目的ペプチド化合物を与え得る化合物も含む。また、ペプチド合成反応に用いるカルボキシル基が活性化された化合物であるC末端活性体は、例えば、Chem. Rev., 2011, 111, 6557.またはOrganic Process Research & Development, 2016, 20 (2), 140. に記されているようなペプチド縮合剤を用いて合成される活性エステル、混合酸無水物およびアシルイソウレアなどに限られるものではなく、アミン類と反応しうるように活性化されている、任意の化合物が含まれる。
【0057】
本明細書において「活性エステル」とは、アミノ基と反応してアミド結合を形成するカルボニル基を含む化合物であって、該カルボニル基に、たとえばOBt、OAt、OSu、OPfpなどが結合した化合物であり、アミンとの反応が促進される化合物である。
【0058】
本明細書における「アミノ酸」には、天然アミノ酸、及び非天然アミノ酸が含まれる。本明細書における「天然アミノ酸」とは、Gly、Ala、Ser、Thr、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、His、Glu、Asp、Gln、Asn、Cys、Met、Lys、Arg、Proを指す。非天然アミノ酸は特に限定されないが、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、D型アミノ酸、N置換アミノ酸、α,α-二置換アミノ酸、側鎖が天然と異なるアミノ酸、ヒドロキシカルボン酸などが例示される。本明細書におけるアミノ酸としては、任意の立体配置が許容される。アミノ酸の側鎖の選択は特に制限を設けないが、水素原子の他にも例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、シクロアルキル基から自由に選択され、これらの基の中の隣接しない1又は2個のメチレン基は酸素原子、カルボニル基(-CO-)、又はスルホニル基(-SO-)、ホスホリル基、ホスホニル基で置換されていてもよい。それぞれには置換基が付与されていてもよく、それら置換基も制限されず、例えば、ハロゲン原子、O原子、S原子、N原子、B原子、Si原子、又はP原子を含む任意の置換基の中から独立して1つ又は2つ以上自由に選択されてよい。すなわち、置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、シクロアルキル基などが例示される。非限定の一態様において、本明細書におけるアミノ酸は、同一分子内にカルボキシ基とアミノ基を有する化合物であってよい。
【0059】
アミノ酸の主鎖アミノ基は、非置換(NH基)でもよく、置換されていてもよい(即ち、-NHR基:Rは置換基を有していてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、シクロアルキルを示し、これらの基の中の隣接しない1又は2個のメチレン基は酸素原子、カルボニル基(-CO-)、又はスルホニル基(-SO-)で置換されていてもよく、またプロリンのようにN原子に結合した炭素鎖とα位の炭素原子とが環を形成していてもよい。このような主鎖アミノ基が置換されているアミノ酸を、本明細書において「N置換アミノ酸」と称する。本明細書における「N置換アミノ酸」としては、好ましくはN-アルキルアミノ酸、N-C-Cアルキルアミノ酸、N-C-Cアルキルアミノ酸、N-メチルアミノ酸が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
本明細書におけるペプチド化合物を構成する「アミノ酸」にはそれぞれに対応する全ての同位体を含む。「アミノ酸」の同位体は、少なくとも1つの原子が、原子番号(陽子数)が同じで、質量数(陽子と中性子の数の和)が異なる原子で置換されたものである。本発明のペプチド化合物を構成する「アミノ酸」に含まれる同位体の例としては、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、フッ素原子、塩素原子などがあり、それぞれ、H、H、13C、14C、15N、17O、18O、31P、32P、35S、18F、36Cl等が含まれる。
【0061】
本明細書におけるハロゲン原子を含む置換基としては、ハロゲンを置換基に有するアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルなどが例示され、より具体的には、フルオロアルキル、ジフルオロアルキル、トリフルオロアルキルなどが例示される。
【0062】
O原子を含む置換基としては、ヒドロキシ(-OH)、オキシ(-OR)、カルボニル(-C(=O)-R)、カルボキシ(-COH)、オキシカルボニル(-C(=O)-OR)、カルボニルオキシ(-O-C(=O)-R)、チオカルボニル(-C(=O)-SR)、カルボニルチオ(-S-C(=O)-R)、アミノカルボニル(-C(=O)-NHR)、カルボニルアミノ(-NH-C(=O)-R)、オキシカルボニルアミノ(-NH-C(=O)-OR)、スルホニルアミノ(-NH-SO-R)、アミノスルホニル(-SO-NHR)、スルファモイルアミノ(-NH-SO-NHR)、チオカルボキシル(-C(=O)-SH)、カルボキシルカルボニル(-C(=O)-COH)などの基が挙げられる。
【0063】
オキシ(-OR)の例としては、アルコキシ、シクロアルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシなどが挙げられる。アルコキシとしては、C-Cアルコキシ、C-Cアルコキシが好ましく、なかでもメトキシ、又はエトキシが好ましい。
【0064】
カルボニル(-C(=O)-R)の例としては、ホルミル(-C(=O)-H)、アルキルカルボニル、シクロアルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アラルキルカルボニルなどが挙げられる。
【0065】
オキシカルボニル(-C(=O)-OR)の例としては、アルキルオキシカルボニル、シクロアルキルオキシカルボニル、アルケニルオキシカルボニル、アルキニルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ヘテロアリールオキシカルボニル、アラルキルオキシカルボニルなどが挙げられる。
【0066】
カルボニルオキシ(-O-C(=O)-R)の例としては、アルキルカルボニルオキシ、シクロアルキルカルボニルオキシ、アルケニルカルボニルオキシ、アルキニルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、ヘテロアリールカルボニルオキシ、アラルキルカルボニルオキシなどが挙げられる。
【0067】
チオカルボニル(-C(=O)-SR)の例としては、アルキルチオカルボニル、シクロアルキルチオカルボニル、アルケニルチオカルボニル、アルキニルチオカルボニル、アリールチオカルボニル、ヘテロアリールチオカルボニル、アラルキルチオカルボニルなどが挙げられる。
【0068】
カルボニルチオ(-S-C(=O)-R)の例としては、アルキルカルボニルチオ、シクロアルキルカルボニルチオ、アルケニルカルボニルチオ、アルキニルカルボニルチオ、アリールカルボニルチオ、ヘテロアリールカルボニルチオ、アラルキルカルボニルチオなどが挙げられる。
【0069】
アミノカルボニル(-C(=O)-NHR)の例としては、アルキルアミノカルボニル(例えば、C-C又はC-Cアルキルアミノカルボニル、なかでもエチルアミノカルボニル、メチルアミノカルボニルなどが例示される。)、シクロアルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキニルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、ヘテロアリールアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニルなどが挙げられる。これらに加えて、-C(=O)-NHR中のN原子と結合したH原子が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0070】
カルボニルアミノ(-NH-C(=O)-R)の例としては、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、アルケニルカルボニルアミノ、アルキニルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノなどが挙げられる。これらに加えて-NH-C(=O)-R中のN原子と結合したH原子が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0071】
オキシカルボニルアミノ(-NH-C(=O)-OR)の例としては、アルコキシカルボニルアミノ、シクロアルコキシカルボニルアミノ、アルケニルオキシカルボニルアミノ、アルキニルオキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、ヘテロアリールオキシカルボニルアミノ、アラルキルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。これらに加えて、-NH-C(=O)-OR中のN原子と結合したH原子がアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0072】
スルホニルアミノ(-NH-SO-R)の例としては、アルキルスルホニルアミノ、シクロアルキルスルホニルアミノ、アルケニルスルホニルアミノ、アルキニルスルホニルアミノ、アリールスルホニルアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、アラルキルスルホニルアミノなどが挙げられる。これらに加えて、-NH-SO-R中のN原子と結合したH原子がアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0073】
アミノスルホニル(-SO-NHR)の例としては、アルキルアミノスルホニル、シクロアルキルアミノスルホニル、アルケニルアミノスルホニル、アルキニルアミノスルホニル、アリールアミノスルホニル、ヘテロアリールアミノスルホニル、アラルキルアミノスルホニルなどが挙げられる。これらに加えて、-SO-NHR中のN原子と結合したH原子がアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルでさらに置換された基が挙げられる。
【0074】
スルファモイルアミノ(-NH-SO-NHR)の例としては、アルキルスルファモイルアミノ、シクロアルキルスルファモイルアミノ、アルケニルスルファモイルアミノ、アルキニルスルファモイルアミノ、アリールスルファモイルアミノ、ヘテロアリールスルファモイルアミノ、アラルキルスルファモイルアミノなどが挙げられる。さらに、-NH-SO-NHR中のN原子と結合した2つのH原子はアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、およびアラルキルからなる群より独立して選択される置換基で置換されていてもよく、またこれらの2つの置換基は環を形成しても良い。
【0075】
S原子を含む置換基としては、チオール(-SH)、チオ(-S-R)、スルフィニル(-S(=O)-R)、スルホニル(-SO-R)、スルホ(-SOH)などの基が挙げられる。
【0076】
チオ(-S-R)の例としては、アルキルチオ、シクロアルキルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオなどの中から選択される。
【0077】
スルホニル(-SO-R)の例としては、アルキルスルホニル、シクロアルキルスルホニル、アルケニルスルホニル、アルキニルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アラルキルスルホニルなどが挙げられる。
【0078】
N原子を含む置換基として、アジド(-N、「アジド基」ともいう)、シアノ(-CN)、1級アミノ(-NH)、2級アミノ(-NH-R;モノ置換アミノともいう。)、三級アミノ(-NR(R');ジ置換アミノともいう。)、アミジノ(-C(=NH)-NH)、置換アミジノ(-C(=NR)-NR'R")、グアニジノ(-NH-C(=NH)-NH)、置換グアニジノ(-NR-C(=NR''')-NR'R")、アミノカルボニルアミノ(-NR-CO-NR'R")、ピリジル、ピペリジノ、モルホリノ、アゼチジニルなどの基が挙げられる。
【0079】
2級アミノ(-NH-R;モノ置換アミノ)の例としては、アルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アラルキルアミノなどが挙げられる。
【0080】
三級アミノ(-NR(R');ジ置換アミノ)の例としては、例えばアルキル(アラルキル)アミノなど、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルなどの中からそれぞれ独立して選択される、任意の2つの置換基を有するアミノ基が挙げられ、これらの任意の2つの置換基は環を形成しても良い。具体的には、ジアルキルアミノ、なかでもC-Cジアルキルアミノ、C-Cジアルキルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノなどが例示される。本明細書において「C-Cジアルキルアミノ基」とは、アミノ基にC-Cアルキル基が2個置換された基をいい、両C-Cアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。
【0081】
置換アミジノ(-C(=NR)-NR'R")の例としては、N原子上の3つの置換基R、R'、およびR"が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルの中からそれぞれ独立して選択された基、例えばアルキル(アラルキル)(アリール)アミジノなどが挙げられる。
【0082】
置換グアニジノ(-NR-C(=NR''')-NR'R")の例としては、R,R'、R"、およびR'''が、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルの中からそれぞれ独立して選択された基、あるいはこれらが環を形成した基などが挙げられる。
【0083】
アミノカルボニルアミノ(-NR-CO-NR'R")の例としては、R、R'、およびR"が、水素原子、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルの中からそれぞれ独立して選択された基、あるいはこれらは環を形成した基などが挙げられる。
【0084】
本明細書においてペプチド化合物を構成する「アミノ酸残基」を単に「アミノ酸」ということがある。
【0085】
(ペプチド化合物の製造方法)
ある態様において、本発明はペプチド化合物を製造する方法に関し、該方法は以下の工程を含む。
工程A:溶媒中で酸成分のC末端活性体をアミン成分と縮合させて得られるペプチド化合物を含む、反応混合液を得る工程、および
工程B:前記反応混合液と三級アミンと水または水溶液とを混合し、該C末端活性体を除去する工程。
【0086】
工程Aは、溶媒中、酸成分とアミン成分とを縮合剤を用いて反応させて、ペプチド化合物を含む反応混合液を得る工程である。特定の理論に拘束されないが、工程Aでは酸成分と縮合剤が反応して、酸成分のC末端活性体が形成され、次いで該C末端活性体にアミン成分が求核攻撃することにより反応が進行し、ペプチド化合物が生成する。
【0087】
酸成分としては、アミノ基が保護基で保護されたアミノ酸、またはN末端のアミノ基が保護基で保護されたペプチドを用いることができる。本明細書においては、酸成分として用いるアミノ酸を「第1のアミノ酸」、酸成分として用いるペプチドを「第1のペプチド」と称することがある。
【0088】
第1のアミノ酸は、特に限定されず、任意の天然アミノ酸または非天然アミノ酸を用いることができる。また第1のペプチドも、特に限定されず、2以上の任意の天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸が連結したものを用いることができる。
【0089】
第1のアミノ酸として好ましくは、その側鎖に1個以上の炭素原子を含むものが挙げられる。このようなアミノ酸として、具体的には、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアルコキシアルキル、置換されていてもよいシクロアルキルアルキル、置換されていてもよいアラルキル、置換されていてもよいヘテロアリールアルキルなどを側鎖に有するものが例示される。また、前記側鎖がアミノ基、カルボキシル基、水酸基などのペプチド結合の形成反応に影響し得る官能基を有する場合には、これらの基を適切な保護基で保護することが好ましい。特定の理論によって拘束されるものではないが、アミノ酸がその側鎖に嵩高い基を有する場合には、その立体障害により、該アミノ酸の残存C末端活性体の加水分解が従来の方法では十分に進行しないことがある。このような場合にあっても本発明の方法を用いることにより、迅速かつ効率的に残存C末端活性体を加水分解することができる。
【0090】
第1のペプチドに含まれるC末端のアミノ酸の側鎖も、前記第1のアミノ酸と同様の側鎖を有するものであることができる。
【0091】
第1のアミノ酸のアミノ基の保護基、および第1のペプチドのN末端のアミノ基が保護基としては、本技術分野において一般的なアミノ基の保護基を用いることができる。このような保護基として、具体的には、たとえば、Cbz、Boc、Teoc、Fmoc、Tfa、Alloc、ノシル、ジニトロノシル、t-Bu、トリチル、およびクミルなどが挙げられる。
【0092】
ある態様において、酸成分は、少なくともアミン成分と同じ当量、好ましくはアミン成分に対して過剰量で用いることが好ましい。具体的には、例えば、アミン成分に対して1~1.1当量、1~1.2当量、1~1.3当量、1~1.4当量、1~1.5当量、1~2.0当量、1~3.0当量の酸成分を用いることができる。
【0093】
ある態様において、本発明における酸成分のC末端活性体は、溶媒中、酸成分を縮合剤と作用させることによって形成することができる。縮合剤としては、酸成分のカルボニル炭素の求電子性を高めるべく、該酸成分のカルボキシル基のヒドロキシ部分に脱離能を有する基を導入できるものであれば特に限定されないが、具体的には、たとえば、T3P、HATU、BEP、カルボジイミド類(DIC、EDC等)、カルボジイミド類と添加剤(oxyma、HOOBt、HOBt等)の組み合わせ、DMT-MM、CDIなどが挙げられる。
【0094】
C末端活性体をアミン成分と縮合させてペプチド化合物を得る工程(工程A)は、-20℃~溶媒の沸点付近の温度、好ましくは0℃~60℃の温度で、反応混合液を1分~48時間、好ましくは15分~4時間時間、攪拌することで行うことができる。
【0095】
工程Aにおいて、酸成分とアミン成分の縮合反応は定量的に進行し得る。
【0096】
アミン成分としては、カルボキシル基が保護基で保護されたアミノ酸、またはC末端のカルボキシル基が保護基で保護されたペプチドを用いることができる。本明細書においては、アミン成分として用いるアミノ酸を「第2のアミノ酸」、アミン成分として用いるペプチドを「第2のペプチド」と称することがある。
【0097】
第2のアミノ酸は、特に限定されず、任意の天然アミノ酸または任意の非天然アミノ酸を用いることができる。また第2のペプチドも、特に限定されず、2以上の任意の天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸が連結したものを用いることができる。
【0098】
第2のアミノ酸のカルボキシル基の保護基、および第2のペプチドのC末端のカルボキシル基の保護基としては、本技術分野において一般的なカルボキシル基の保護基を用いることができる。このような保護基として、具体的には、たとえば、メチル、アリル、t-ブチル、トリチル、クミル、ベンジル、メトキシトリチル、1-ピペリジニルなどが挙げられる。
【0099】
ある態様において、本発明における溶媒としては、縮合反応が進行し、ペプチド化合物を得ることができるものであれば任意のものを用いることができる。このような溶媒として具体的には、たとえば、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミドや、これらから選択される2種以上の溶媒を混合した溶媒などが挙げられる。
【0100】
ある態様において、本発明における、酸成分のC末端活性体をアミン成分と縮合させて得られる「ペプチド化合物」には、2以上のアミノ酸が連結された、直鎖状または環状のペプチド化合物が含まれる。なお、環状ペプチド化合物は、「環状部を有するペプチド化合物」と同意義である。
【0101】
本発明における「直鎖状のペプチド化合物」は、天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸がアミド結合あるいはエステル結合で連結されることにより形成されたものであり、環状部を有しない化合物である限り、特に限定されない。直鎖状のペプチド化合物を構成する天然アミノ酸あるいは非天然アミノ酸の総数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30個であることができ、好ましい範囲は6~20個、7~19個、7~18個、7~17個、7~16個、7~15個、8~14個、9~13個である。
【0102】
本発明における「環状ペプチド化合物」は、天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸がアミド結合あるいはエステル結合で連結されることにより形成されたものであり、環状部を有する化合物である限り、特に限定されない。環状ペプチド化合物は、1以上の直鎖部を有していてもよい。環状のペプチド化合物を構成する天然アミノ酸あるいは非天然アミノ酸の総数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30個であることができ、好ましい範囲は6~20個、7~19個、7~18個、7~17個、7~16個、7~15個、8~14個、9~13個である。
【0103】
環状ペプチド化合物の環状部を構成するアミノ酸の数は限定されないが、例えば、4以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、20以下、18以下、16以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、7、8、9、10、11、12、13、14、15、及び16が挙げられる。前記環状部を構成するアミノ酸の数は、5~15が好ましく、5~14、7~14、又は8~14がより好ましく、8~13、9~13、8~12、8~11、又は9~12がさらに好ましく、9~11が特に好ましい。
【0104】
環状ペプチドの直鎖部のアミノ酸の数は0~8であることが好ましく、0~5がより好ましく、0~3がより好ましい。
【0105】
ペプチド化合物は、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、又は6つ以上の非天然アミノ酸を含むことができる。また、ペプチド化合物は、20以下、15以下、14以下、13以下、12以下、10以下、9以下の非天然アミノ酸を含むことができる。ペプチド化合物に非天然アミノ酸が含まれる場合、非天然アミノ酸数の割合としては、ペプチド化合物を構成する総アミノ酸数の30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上が例示される。
【0106】
ペプチド化合物は、上述の天然アミノ酸及び非天然アミノ酸の総数の条件に加えて、又は単独で、N置換アミノ酸を少なくとも2つ(好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30個、特に好ましくは5、6または7個、好ましい範囲は2~30個、3~30個、6~20個、7~19個、7~18個、7~17個、7~16個、7~15個、8~14個、9~13個)含み、N置換されていないアミノ酸を少なくとも1つ含む、直鎖または環状ペプチドであることができる。「N置換」としてはN原子に結合した水素原子のメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基への置換などが挙げられるがこれに限定されない。N置換アミノ酸として、好ましくは天然アミノ酸に含まれるアミノ基がN-メチル化、N-エチル化、N-プロピル化、N-ブチル化、N-ペンチル化されたアミノ酸が挙げられ、これらを、N-メチルアミノ酸、N-エチルアミノ酸、N-プロピルアミノ酸、N-ブチルアミノ酸、N-ペンチルアミノ酸という。N未置換アミノ酸をN置換アミノ酸に変換することをN置換化するといい、N-アルキル化、N-メチル化、またはN-エチル化ということがある。本発明におけるペプチド化合物に含まれるN置換アミノ酸数の割合としては、ペプチド化合物を構成する総アミノ酸数の30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上が例示される。
【0107】
ペプチド化合物には、その塩、またはこれらの溶媒和物が含まれてもよい。
【0108】
本明細書において「側鎖」とは、アミノ酸の側鎖、又は環状ペプチド化合物の環状部の側鎖などの文脈で使用され、それぞれの主鎖構造に含まれない部分を意味する。
【0109】
本明細書において「アミノ酸の数」とは、ペプチド化合物を構成するアミノ酸残基の数のことであり、アミノ酸を連結しているアミド結合、エステル結合、及び環化部の結合を切断した際に生じるアミノ酸ユニットの数を意味する。
【0110】
工程Bは、工程Aで得られた反応混合液中に含まれる、未反応のC末端活性体を除去する工程である。ある態様において、未反応のC末端活性体の除去は、未反応のC末端活性体を三級アミンと作用させることを通じて行われる。本明細書では、未反応のC末端活性体、具体的には、たとえば、縮合過程でアミン成分と反応せずに残存した反応混合液中のC末端活性体を「残存C末端活性体」ということがある。工程Bでは、工程Aで得られた反応混合液と三級アミンと水または水溶液とを混合する。工程Aにおいてアミン成分に対して過剰量の酸成分が用いられた場合、もしくは工程Aにて十分に縮合反応が進行しなかった場合、アミン成分と反応せずに残存した酸成分のC末端活性体が反応溶媒中に不純物として残存する。この残存したC末端活性体が、十分に分解されずに系中に存在していると、後続のペプチド化合物の脱保護工程や、さらなるペプチド鎖の伸長反応に悪影響を及ぼすため、確実に除去することが重要である。従来の液相合成法では、アルカリ水溶液を用いて残存活性エステルを加水分解する方法などが知られていたが、とりわけその側鎖に嵩高い官能基を有するアミノ酸の残存C末端活性体の場合、あるいは残存C末端活性体の脱離基の脱離能が容易に水と反応するほどには高くない場合には、その分解が不十分な場合があることが本発明者らによって確認された。これに対し、未反応のC末端活性体を含む反応混合液を、三級アミンおよび水または水溶液と混合することを通じて、乃至は残存C末端活性体を三級アミンと接触させることを通じて、C末端活性体を加水分解する本発明の方法を用いることで、かかる課題を解決することができる。
【0111】
三級アミンとしては、酸成分の残存C末端活性体に対して求核反応性を有するものを好ましく用いることができる。このような三級アミンとしては、窒素近傍の立体障害が小さいアミンが好ましい。このような三級アミンとして、例えば、下記式(A)、(B)、または(C)で表される三級アミンがあげられる。
【0112】
ある態様において、式(A)中、R~Rは、RおよびRがそれらが結合している窒素原子と一緒になって5~6員非芳香族複素環を形成し、かつRがC-Cアルキル(すなわち、メチル、またはエチル)またはCヒドロキシアルキルである。5~6員非芳香族複素環として好ましくは、ピロリジン、ピペリジン、またはモルホリンであり、Cヒドロキシアルキルとして好ましくは、2-ヒドロキシエチルである。
【0113】
別の態様において、式(A)中、R~Rは、それぞれ独立して、C-Cアルキル、またはCヒドロキシアルキルである。Cヒドロキシアルキルとして好ましくは、2-ヒドロキシエチルである。
【0114】
式(A)で表される三級アミンとして好ましくは、R~Rが、それぞれ独立して、C-Cアルキルであるものが挙げられる。
【0115】
式(A)で表される三級アミンとして、具体的には、トリメチルアミン、N、N-ジメチルエチルアミン、N,N-ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられ、これらのうちではトリメチルアミンが特に好ましい。
【0116】
ある態様において、式(B)中、Xは、NまたはOである。XがNである場合、RおよびRは、それぞれ独立して、C-Cアルキル、もしくはCヒドロキシアルキルであるか、またはそれらが結合している窒素原子と一緒になって5~6員非芳香族複素環を形成する。XがOである場合、Rは、C-Cアルキル、またはCヒドロキシアルキルであり、Rは存在しない。5~6員非芳香族複素環として好ましくは、ピロリジン、ピペリジン、またはモルホリンであり、Cヒドロキシアルキルとして好ましくは、2-ヒドロキシエチルである。また、式(B)中、RおよびRは、それぞれ独立して、H、C-Cアルキル、またはメトキシである。
【0117】
式(B)で表される三級アミンとして好ましくは、XがNであり、RおよびRが、それぞれ独立して、C-Cアルキルであり、かつRおよびRがHであるものが挙げられる。
【0118】
式(B)で表される三級アミンとして、具体的には、DMAP、4-ピペリジノピリジン、4-モルホリノピリジンなどが挙げられ、これらのうちでは、DMAPが特に好ましい。
【0119】
ある態様において、式(C)中、RおよびRは、それぞれ独立して、H、C-Cアルキル、もしくはCヒドロキシアルキルであるか、またはRが結合している窒素原子およびRが結合している炭素原子と一緒になって5~6員非芳香族複素環を形成する。5~6員非芳香族複素環として好ましくは、ピロリジン、ピペリジン、またはモルホリンであり、Cヒドロキシアルキルとして好ましくは、2-ヒドロキシエチルである。
【0120】
式(C)で表される三級アミンとして好ましくは、RおよびRが、それぞれ独立して、HまたはC-Cアルキルであるものが挙げられ、RがC-Cアルキルであり、かつRがHであるものがより好ましい。
【0121】
式(C)で表される三級アミンとして、具体的には、NMI、イミダゾール-1-エタノール、5,6,7,8-テトラヒドロイミダゾ[1,5-α]ピリジンなどが挙げられ、これらのうちでは、NMIが特に好ましい。
【0122】
特定の理論によって拘束されるものではないが、本発明の三級アミンは、残存C末端活性体に対して求核攻撃を行うことによって、残存C末端活性体の加水分解を促進することができる。DIPEAのような三級アミンは嵩高い置換基を有するため、求核性が低く、望ましくない。残存C末端活性体の加水分解物は、水層に移動させて除去できるため、カラム精製などの別個の精製工程を経ることなく、生成したペプチド化合物を次の縮合反応に供することができる。本発明の方法を用いることによって迅速(例えば、5分以内)に、かつ少ない回数(例えば、1回のみ)の加水分解処理で効率的に残存C末端活性体を除去することができ、ある態様では、残存C末端活性体の90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%以上を除去することができる。言い換えると、本発明によれば、C末端活性体の残存率を10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下にすることができる。
【0123】
三級アミンは、アミン成分に対して触媒量を用いてもよく、化学量論量以上の量を用いてもよい。具体的には、たとえば、アミン成分に対して0.1当量~10当量の三級アミンを反応混合液に添加することができ、0.5当量~3当量の三級アミンを添加することが好ましい。
【0124】
三級アミンを残存C末端活性体と作用させる際は、-20℃~溶媒の沸点付近の温度、好ましくは25℃~60℃の温度で反応混合液を1分~48時間、好ましくは2時間以下、例えば、2分~2時間、5分~60分、5分~50分、または5~30分、攪拌することができる。
【0125】
ある態様において、残存C末端活性体を三級アミンで処理する工程には、水または水溶液を加えることができ、水溶液としてはアルカリ水溶液を好ましく用いることができる。このようなアルカリ水溶液は特に限定されないが、具体的には、たとえば、炭酸カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、または炭酸セシウム水溶液などが挙げられる。これらのうちでは、穏和な塩基性を有する炭酸カリウム水溶液または炭酸ナトリウム水溶液が好ましい。
【0126】
ある態様において、本発明は、三級アミンを残存C末端活性体と作用させた後に、反応混合液を有機層と水層に分層して有機層を取り、次いで該有機層を洗浄する工程をさらに含む。一例として、酸性水溶液と塩基性水溶液による有機層の洗浄を含む。ある態様では、この工程を経た場合、残存C末端活性体の残存量を1.0%以下、0.5%以下、好ましくは0.1%以下にすることができる。
【0127】
ある態様において、本発明は、前記ペプチド化合物のN末端の保護基を脱保護する工程(工程C)をさらに含む。保護基の脱保護は、例えば、「Greene’s,“Protective Groups in Organic Synthesis″(第5版,John Wiley & Sons 2014)」に記載の常法により行うことができる。従来法では、残存したC末端活性体に起因して脱保護反応が十分に進行しないことがあるが、本発明の方法を用いることで、生成したペプチド化合物の脱保護体を高収率で得ることができる。
【0128】
ある態様において、本発明は、工程Aと工程Bを複数回繰り返すことを含む。また、ある態様において、本発明は、工程A、工程Bおよび工程Cを複数回繰り返すことを含む。このような繰り返しにより、ペプチド鎖を伸長し、ペプチド化合物を得ることができる。
【0129】
ある態様において、本発明は、残存C末端活性体を含む溶液に三級アミンと水または水溶液を追加して、該C末端活性体を三級アミンと作用させる工程を含む、残存C末端活性体の加水分解を促進する方法に関する。この態様において、残存C末端活性体および/または三級アミンは前述のものを用いることができる。残存C末端活性体を含む溶液に水溶液を添加する場合、該水溶液としては前記アルカリ水が好ましい。
【0130】
ある態様において、本発明は、残存C末端活性体の加水分解体を含む溶液を水性洗浄する工程を含む、該加水分解体を除去する方法に関する。この態様において、水性洗浄として、水の他に、アルカリ性水溶液による洗浄を実施することができる。アルカリ性水溶液は、特に限定されないが、炭酸カリウム水溶液もしくは炭酸ナトリウム水溶液が好ましい。また、別の態様において、使用した塩基が加水分解体と塩を形成して水層に移行しにくくなっている場合には、その塩基を酸性水溶液で洗浄して除去した後に、アルカリ水溶液で洗浄することもできる。酸性水溶液は特に限定されないが、硫酸水素カリウム水溶液もしくは硫酸水素ナトリウム水溶液が好ましい。アルカリ性水溶液は、炭酸カリウム水溶液もしくは炭酸ナトリウム水溶液が好ましい。
【0131】
なお、本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例
【0132】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示されるが、下記の実施例に限定されるものではない。
【0133】
ペプチド化合物(ペプチド合成での目的物)の純度、C末端活性体残存量は、QDA, PDA検出器を備えたLCMS(カラム:Ascentis Express C18、5 cm x 4.6 mm、2.7μm、移動相:0.5%トリフルオロ酢酸水溶液/0.5%トリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液=95/5-0/100、1.0 mL/min、検出器:UV210nm)を用いて測定した。
C末端活性体の残存量の評価は、残存C末端活性体が分析条件(LCMS)で加水分解を受ける可能性があるため、残存C末端活性体をプロピルアミドに変換して行った。
ペプチド化合物(ペプチド合成での目的物)の純度は、LCMSのピーク面積パーセントとして記した。C末端活性体残存率およびC末端活性体残存量相対値は各実施例に記載の計算式により算出した。尚、総ピーク面積は、ブランクピーク、溶媒ピークの面積値を差し引いて補正した。
表中のndは、not detectedの意味を表す。
【0134】
(実施例1)残存C末端活性体の加水分解における添加アミン効果
(混合酸無水物の調整)
Cbz-Ile-OH 463 mg (1.7 mmol)、ペンタメチルベンゼン 31 mg (内部標準物質:0.21 mmol) を2-メチルテトラヒドロフラン3.0 mLに溶解した。室温でジイソプロピルエチルアミン 1.1 mL (6.2 mmol)、T3P/THF 50%溶液 1.9 mL (3.2 mmol) を加え、40 ℃で1時間撹拌して混合酸無水物(C末端活性体)溶液を調製した。調製した混合酸無水物溶液から5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)と反応させた後、メタノール0.9 mLで希釈して、混合酸無水物への反応変換率をLC/MSのピーク面積より求めた(変換率:97%)。Cbz-Ile-NHPr/MS(ESI):m/z 307.1 [M+H]+。
変換率 (%) = {Cbz-Ile-NHPr (面積%)/[Cbz-Ile-OH (面積%)+ Cbz-Ile-NHPr (面積%)]}×100
【0135】
(加水分解処理-アミン非添加)
調製した混合酸無水物溶液の全量 (6 mL) から1.0 mLをとり、アルカリ水(5%水酸化リチウム水溶液、5%炭酸ナトリウム水溶液、5%炭酸カリウム水溶液、5%水酸化カリウム水溶液、または5%炭酸セシウム水溶液)0.5 mLを加え、25 ℃で、撹拌子にて撹拌(1200 rpm)を行った。撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させた。有機層5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、ピーク面積比[プロピルアミド:ペンタメチルベンゼン (内部標準物質)]を計算した。
【0136】
(加水分解処理-アミン添加)
調製した混合酸無水物溶液全量 (6 mL) から1.0 mLをとり、アミン添加剤 (0.19 mmol)、及び5%炭酸カリウム水溶液 0.5 mLを加え、25 ℃で、撹拌子にて撹拌(1200 rpm)を行った。撹拌を停止、静置し、有機層と水層を分層させた。有機層5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、ピーク面積比[プロピルアミド:ペンタメチルベンゼン (内部標準物質)]を計算した。
【0137】
(C末端活性体の残存量評価)
LC/MSのピーク面積比[プロピルアミド/ペンタメチルベンゼン (内部標準物質)]を用いた。下記表のC末端活性体残存量相対値は、アミン添加剤を加えず5%炭酸カリウム水溶液で5分間処理したときのピーク面積比[プロピルアミド/ペンタメチルベンゼン]の値3.5を100(entry 1の5minのカラム)としたとき相対値である。
C末端活性体残存量相対値(%) = {[プロピルアミド(面積%)/ペンタメチルベンゼン(面積%)]/ 3.5(entry 1、5 min での[プロピルアミド(面積%)/ペンタメチルベンゼン(面積%)])}x100
【0138】
【表1】
1) Not applicable.
【0139】
表1のC末端活性体残存量相対値は、値が小さいほど残存C末端活性体が加水分解されていることを示している。アルカリ水単独を使用した場合、アルカリの対カチオンを変えても加水分解速度にほとんど変化はなく、アミン添加した場合より加水分解は遅かった。また、添加したアミンの中でも、DMAP、NMIの添加が残存C末端活性体加水分解を劇的に促進することを見出した。
【0140】
(実施例2)残存C末端活性体の加水分解における添加アミン効果
(活性エステルの調整)
Cbz-Ile-OH 701 mg (2.64 mmol)、ペンタメチルベンゼン 46 mg (0.31 mmol) を2-メチルテトラヒドロフラン7.0 mLに溶解した。室温でHATU 1.0 g (2.64 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン 1.5 mL (8.79 mmol)を加え、60 ℃で4時間撹拌して活性エステル(C末端活性体)溶液を調製した。調製した活性エステル溶液から5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)と反応させた 後、メタノール0.9 mLで希釈して、活性エステルへの反応変換率をLC/MSのピーク面積より求めた(変換率:94%)。Cbz-Ile-NHPr/MS(ESI):m/z 307.1 [M+H]+。
変換率 (%) = {Cbz-Ile-NHPr(面積%)/[Cbz-Ile-OH(面積%)+Cbz-Ile-NHPr(面積%)]}×100
【0141】
(アルカリ水単独での加水分解処理)
調製した活性エステル溶液の全量 (9 mL) から1.5 mLをとり、アルカリ水(5%炭酸カリウム水溶液)0.75 mLを加え、25 ℃で、撹拌子にて撹拌(1200 rpm)を行った。撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させた。有機層5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol) に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、ピーク面積比[プロピルアミド:ペンタメチルベンゼン (内部標準物質)]を計算した。
【0142】
(アミン添加した加水分解処理)
調製した活性エステル溶液全量 (9 mL) から1.5 mLをとり、アミン添加剤 (0.44 mmol)、及び5%炭酸カリウム水溶液 0.75 mLを加え、25 ℃で、撹拌子にて撹拌(1200 rpm)を行った。撹拌を停止、静置し、有機層と水層を分層させ、有機層5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol) に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、ピーク面積比[プロピルアミド:ペンタメチルベンゼン (内部標準物質)]を計算した。
【0143】
(C末端活性体の残存量評価)
LC/MSのピーク面積比[プロピルアミド/ペンタメチルベンゼン (内部標準物質)]を用いた。下記表のC末端活性体残存量相対値は、アミン添加剤を加えず5%炭酸カリウム水溶液で5分間処理したときのピーク面積比[プロピルアミド/ペンタメチルベンゼン]の値3.0を100(entry 1の5minのカラム)としたとき相対値である。
C末端活性体残存量相対値(%) = {[プロピルアミド(面積%)/ペンタメチルベンゼン(面積%)]/ 3.0(entry 1、5 minでの[プロピルアミド(面積%)/ペンタメチルベンゼン(面積%)])}x100
【0144】
【表2】
【0145】
表2のC末端活性体残存量相対値は、値が小さいほど残存C末端活性体が加水分解されていることを示している。アルカリ水のみを使用した場合よりもアミンを添加した方が、残存C末端活性体加水分解を促進することを見出した。すなわち、DBU、MeN、NMI、DMAPの添加に効果があることが認められ、特にNMIとDMAPの添加に劇的な効果があることを見出した。
【0146】
(実施例3)残存C末端活性体の加水分解における添加アミン効果
Cbz-MeAla-OH 617 mg (2.6 mmol)、ペンタメチルベンゼン 46 mg (0.31 mmol) を2-メチルテトラヒドロフラン4.5 mLからなる溶液に室温でジイソプロピルエチルアミン1.5 mL (8.6 mmol)、T3P/THF 50%溶液 2.6 mL (4.4 mmol) を加え、40 ℃で1時間撹拌して混合酸無水物溶液(C末端活性体)を調製した。調製した混合酸無水物溶液から5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)と反応させた後、メタノール0.9 mLで希釈して、混合酸無水物への反応変換率をLC/MSのピーク面積より求めた(変換率:90%)。Cbz-MeAla-NHPr/MS (ESI): m/z 279.1 [M+H]+。
変換率 (%) = {Cbz-MeAla-NHPr(面積%)/[Cbz-MeAla-OH(面積%)+Cbz-MeAla-NHPr(面積%)]}×100
【0147】
(アルカリ水単独での加水分解処理)
調製した混合酸無水物溶液の全量 (9 mL) から1.5 mLをとり、アルカリ水(5%炭酸ナトリウム水溶液、または5%炭酸カリウム水溶液)0.75 mLを加え、25 ℃で、撹拌子にて撹拌(1200 rpm)を行った。撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させた。有機層5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol) に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、ピーク面積比[プロピルアミド:ペンタメチルベンゼン (内部標準物質)]を計算した。
【0148】
(アミン添加した加水分解処理)
調製した混合酸無水物溶液全量 (9 mL) から1.5 mLをとり、アミン添加剤 (0.43 mmol、0.67当量)、及び5%炭酸カリウム水溶液 0.75 mLを加え、25 ℃で、撹拌子にて撹拌(1200 rpm)を行った。撹拌を停止、静置し、有機層と水層を分層させ、有機層5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol) に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、ピーク面積比[プロピルアミド:ペンタメチルベンゼン (内部標準物質)]を計算した。
【0149】
(C末端活性体の残存量評価)
LC/MSのピーク面積比[プロピルアミド/ペンタメチルベンゼン (内部標準物質)]を用いた。下記表のC末端活性体残存量相対値は、アミン添加剤を加えず5%炭酸ナトリウム水溶液で5分間処理したときのピーク面積比[プロピルアミド/ペンタメチルベンゼン]の値1.1を100(entry 1の5minのカラム)としたとき相対値である。
C末端活性体残存量相対値(%) = {[プロピルアミド(面積%)/ペンタメチルベンゼン(面積%)]/ 1.1(entry 1、5 min での[プロピルアミド(面積%)/ペンタメチルベンゼン(面積%)]}x100
【0150】
【表3】
【0151】
表3のC末端活性体残存量相対値は、値が小さいほど残存C末端活性体が加水分解されていることを示している。アルカリ水単独を使用した場合、アルカリの対カチオンを変えても加水分解速度にほとんど変化はなかった。また、DMAP、NMIを添加すると、アルカリ水単独を使用した場合よりも、残存C末端活性体の加水分解が促進されることを見出した。DMAP、NMIの添加は5分以内でも十分効果があり、特に、DMAP添加においては、完全に残存C末端活性体を加水分解することを見出した。
【0152】
(実施例4)Cbz-Ile-Phe-OtBuの合成
(縮合反応)
H-Phe-OtBu塩酸塩 458 mg (1.8 mmol)、Cbz-Ile-OH 699 mg (2.7 mmol)、及び2-メチルテトラヒドロフラン4.5 mLからなる溶液に室温でジイソプロピルエチルアミン1.6 mL (8.9 mmol)、T3P/THF 50%溶液 2.6 mL (4.4 mmol) を加え、40 ℃で1時間撹拌してペプチド結合形成反応を行った。反応溶液から5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)と反応させた後、メタノール0.9 mLで希釈して、反応変換率をLC/MSのピーク面積より求めた(変換率:100%)。
変換率(%)={Cbz-Ile-Phe-OtBu(面積%)/[H-Phe-OtBu(面積%)+Cbz-Ile-Phe-OtBu(面積%)]}×100
【0153】
(アルカリ水単独での加水分解処理)
上記調製したジペプチド溶液全量 (9 mL) から1.5 mLをとり、5%炭酸カリウム水溶液 0.75 mLを加え、25 ℃で、撹拌子にて撹拌(1200 rpm)を行った。撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させた。有機層5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈して、LC/MS分析に付し、プロピルアミドと目的とするペプチドのピーク面積値を求めて、C末端活性体残存率 (%)を算出した。残った反応液の水層を除去し、有機層を5%硫酸水素カリウム水溶液0.5 mLと5%炭酸カリウム水溶液 0.5 mLで順次洗浄した。有機層5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、目的とするペプチドと残存C末端活性体(プロピルアミドへの変換体)のピーク面積値を求めた。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0154】
(アミン添加した加水分解処理)
調製したジペプチド溶液全量 (9 mL) から1.5 mLをとり、アミン(0.15 mmol 0.5当量、0.30 mmol 1.0当量、または0.89 mmol 3当量:当量はH-Phe-OtBu塩酸塩に対してのもの)、及び5%炭酸カリウム水溶液 0.75 mLを加え、25 ℃で、撹拌子にて撹拌(1200 rpm)を行った。撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させた。有機層5 μLをとり、プロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈して、LC/MS分析に付し、プロピルアミドと目的とするペプチドのピーク面積値を求めて、C末端活性体残存率 (%)を算出した。残った反応液の水層を除去し、有機層を5%硫酸水素カリウム水溶液0.75 mLと5%炭酸カリウム水溶液 0.75 mLで順次洗浄した。有機層5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、目的とするペプチドと残存C末端活性体(プロピルアミドへの変換体)のピーク面積値を求めた。MS(ESI):m/z 413.3 [M-tBu+H]+, 469.3 [M+H]+, 491.3 [M+Na]+。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0155】
【表4】
1) N末アミノ酸誘導体(H-Phe-OtBu塩酸塩)に対しての当量
2) LCMSのピーク面積比率
【0156】
添加アミンNMIは、N末端のアミノ酸誘導体に対して0.5~3.0当量を使用することで、アルカリ水単独処理での加水分解よりも加水分解を優位に促進することを見出した。また、添加アミンDMAPは、N末アミノ酸誘導体に対して0.5~3.0当量を使用することで、アルカリ水単独処理での加水分解よりも加水分解を優位に促進することを見出した。
アミンを添加して加水分解処理を1回行った後、有機層を5%KHSO、5%KCOで洗浄することにより、有機層中の残存C末端活性体を完全に除去できることを見出した。このとき、目的物であるペプチドは、高純度で得られた。一方、アルカリ水での単独処理では、C末端活性体が残存し、ジペプチドの純度も低かった。
【0157】
(実施例5)Cbz-Ile-Phe-OtBuの合成
(縮合反応)
H-Phe-OtBu塩酸塩 452 mg (1.8 mmol)、Cbz-Ile-OH 702 mg (2.6 mmol)、及び2-メチルテトラヒドロフラン4.5 mLからなる溶液に室温でジイソプロピルエチルアミン 1.5 mL (8.8 mmol)、T3P/THF 50%溶液 2.6 mL (4.4 mmol) を加え、40 ℃で1時間撹拌してペプチド結合形成反応を行った。反応溶液から5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)と反応させた後、メタノール0.9 mLで希釈して、反応変換率をLC/MSのピーク面積より求めた(変換率:100%)。
変換率(%)={Cbz-Ile-Phe-OtBu(面積%)/[H-Phe-OtBu(面積%)+Cbz-Ile-Phe-OtBu(面積%)]}×100
【0158】
(アルカリ水単独での加水分解処理)
上記調製したジペプチド溶液全量 (9 mL) から1.5 mLをとり、5%炭酸カリウム水溶液 0.75 mLを加えて、60 ℃で、撹拌子にて撹拌(1200 rpm)を行った。撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させた。有機層5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈して、LC/MS分析に付し、プロピルアミドと目的とするペプチドのピーク面積値を求めて、C末端活性体残存率 (%)を算出した。残った反応液の水層を除去し、有機層を5%硫酸水素カリウム水溶液0.75 mLと5%炭酸カリウム水溶液 0.75 mLで順次洗浄した。有機層5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、目的とするペプチドと残存C末端活性体(プロピルアミドへの変換体)のピーク面積値を求めた。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0159】
(アミン添加した加水分解処理)
調製したジペプチド溶液全量 (9 mL) から1.5 mLをとり、アミン(0.29 mmol)、及び5%炭酸カリウム水溶液 0.75 mLを加え、60 ℃で、撹拌子にて撹拌(1200 rpm)を行った。撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させた。有機層5 μLをとり、プロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈して、LC/MS分析に付し、プロピルアミドと目的とするペプチドのピーク面積値を求めて、C末端活性体残存率 (%)を算出した。残った反応液の水層を除去し、有機層を5%硫酸水素カリウム水溶液0.75 mLと5%炭酸カリウム水溶液 0.75 mLで順次洗浄した。有機層5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、目的とするペプチドと残存C末端活性体(プロピルアミドへの変換体)のピーク面積値を求めた。MS(ESI):m/z 413.3 [M-tBu+H]+, 469.3 [M+H]+, 491.3 [M+Na]+。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0160】
【表5】
1) LCMSのピーク面積比率
【0161】
残存C末端活性体の加水分解を、アミンを添加して60℃で行っても、目的とするペプチドが25℃で行ったときと同等の高い純度で得られた。特に、添加したアミンがDMAPおよびNMIの場合には、アルカリ水単独の場合よりも加水分解が早く進行した。また、添加したアミンがDMAPおよびNMIの場合には、1回の加水分解処理で、加水分解が5分以内に効果的に進行し、続く分液操作(5% KHSO、5% KCO洗浄)で有機層から残存C末端活性体を完全に除去できることを見出した。
【0162】
(実施例6)Cbz-MeIle-MePhe-OMeの合成
(縮合反応)
MePhe-OMe塩酸塩 300 mg (1.3 mmol)、Cbz-MeIle-OH 442 mg (1.6 mmol) をアセトニトリル3.0 mLに懸濁し、ジイソプロピルエチルアミン 683 μL (3.9 mmol)を加えた。次いで25 ℃でHATU 594 mg (1.6 mmol) を加えて、25 ℃下30分撹拌した後40 ℃で3時間撹拌し、さらに60 ℃で3時間撹拌してペプチド結合形成反応を行った。反応液5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から変換率を求めた(変換率:>99%)。
変換率(%)={Cbz-MeIle-MePhe-OMe(面積%)/[MePhe-OMe(面積%)+Cbz-MeIle-MePhe-OMe (面積%)]}×100
【0163】
(加水分解処理)
(1)アミン非添加の場合
上記調製したペプチドを含む反応溶液にMTBE 3.0 mLと5%炭酸カリウム水溶液3.0 mLを加え、25 ℃で、撹拌子にて30分間撹拌を行った。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。LC/MSのピーク面積値から、以下の計算式に従ってC末端活性体残存率を計算した。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0164】
(2)アミン添加の場合
上記調製したペプチドを含む反応溶液にMTBE 3.0 mL、N-メチルイミダゾール 103 μL (1.3 mmol)と5%炭酸カリウム水溶液3.0 mLを加え、25 ℃で、撹拌子にて30分間撹拌を行った。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。LC/MSのピーク面積値から、以下の計算式に従ってC末端活性体残存率を計算した。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0165】
(後処理)
撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させ、水層を除去した。次いで有機層を10%硫酸水素カリウム水溶液3 mL×2、5%炭酸カリウム水溶液3 mL、常水1 mL×5で順次洗浄した。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈して、LC/MS分析に付し、目的とするペプチドと残存C末端活性体(プロピルアミドへの変換体)のピーク面積値を求めた。残った有機層を濃縮し、ペプチドを得た。アミン非添加加水分解により得られた濃縮物(ペプチド)は671.8 mgであった(収率113%:濃縮物には不純物(残存C末端活性体)を含むが、ペプチドのみを含むものとして計算した)。アミン添加での加水分解により得られた濃縮物は563.7 mgであった (収率95%)。MS(ESI):m/z 455.2 [M+H]+, 477.2 [M+Na]+。
【0166】
【表6】
1)LCMSのピーク面積比率
【0167】
アルカリ水単独処理での加水分解では、残存C末端活性体が完全に加水分解されず、続く水性洗浄でも残存C末端活性体を除去できなかったが、NMIを添加して加水分解を行うと、残存C末端活性体の加水分解が完全に達成されて、残存C末端活性体の除去も完全にできることを見出した。しかもこのとき、目的のジペプチドが100%の純度で得られた(収率95%)。
【0168】
(実施例7)Cbz-MeVal-MeAsp(tBu)-piperidineの合成
(縮合反応)
MeAsp(tBu)-piperidine 303 mg (1.1 mmol)、Cbz-MeVal-OH 448 mg (1.7 mmol) をアセトニトリル0.6 mL、シクロペンチルメチルエーテル2.4 mL混合溶媒に懸濁し、ジイソプロピルエチルアミン 586 μL (3.4 mmol)を加えた。次いで25 ℃でHATU 642 mg (1.7 mmol) を加え、25 ℃で6.5時間撹拌しペプチド結合形成反応を行った。反応液5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から変換率を求めた (変換率:100%)。
変換率(%)={Cbz-MeVal-MeAsp(tBu)-piperidine(面積%)/[MeAsp(tBu)-piperidine(面積%)+Cbz-MeVal-MeAsp(tBu)-piperidine(面積%)]}×100
【0169】
(加水分解処理)
(1)アミン非添加の場合
上記調製したペプチドを含む反応溶液に5%炭酸カリウム水溶液3.0 mLを加え、25 ℃で、撹拌子にて5分間撹拌を行った。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。LC/MSのピーク面積値から、以下の計算式に従ってC末端活性体残存率を計算した。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0170】
(2)アミン添加の場合
上記調製したペプチドを含む反応溶液にDMAP 136 mg (1.1 mmol)と5%炭酸カリウム水溶液3.0 mLを加え、25 ℃で、撹拌子にて5分間撹拌を行った。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。LC/MSのピーク面積値から、以下の計算式に従ってC末端活性体残存率を計算した。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0171】
(後処理)
撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させ、水層を除去した。次いで有機層を10%硫酸水素カリウム水溶液3 mL×2、5%炭酸カリウム水溶液3 mL x 2、常水1 .5 mL×3で順次洗浄した。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈して、LC/MS分析に付し、目的とするペプチドと残存C末端活性体(プロピルアミドへの変換体)のピーク面積値を求めた。残った有機層を濃縮し、ペプチドを得た。アミン非添加加水分解により得られた濃縮物(ペプチド)は782.0 mgであった (収率136%:濃縮物には不純物(残存C末端活性体)を含むが、ペプチドのみを含むものとして計算した)。アミン添加での加水分解により得られた濃縮物は530.6 mgであった (収率92%)。MS(ESI):m/z 518.4 [M+H]+, 540.4 [M+Na]+。
【0172】
【表7】
1)LCMSのピーク面積比率
【0173】
アルカリ水単独処理での加水分解では、残存C末端活性体が完全に加水分解されず、続く水性洗浄でも残存C末端活性体を除去できなかったが、DMAPを添加して加水分解を行うと、残存C末端活性体の加水分解が完全に達成されて、残存C末端活性体の除去も完全にできることを見出した。しかもこのとき、目的のジペプチドが100%の純度で得られた(収率92%)。
【0174】
(実施例8)Cbz-MeVal-MeAsp(tBu)-piperidineの合成
(縮合反応)
MeAsp(tBu)-piperidine 299 mg (1.1 mmol)、Cbz-MeVal-OH 458 mg (1.7 mmol) を2-MeTHF 4.5 mL溶媒に懸濁し、ジイソプロピルエチルアミン 775 μL (4.4 mmol)を加えた。次いで25 ℃で50%T3P/THF溶液1.6 mL (2.8 mmol) を加え、25 ℃で15時間撹拌しペプチド結合形成反応を行った。反応液5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から変換率を求めた (変換率:100%)。
変換率(%)={Cbz-MeVal-MeAsp(tBu)-piperidine(面積%)/[MeAsp(tBu)-piperidine(面積%)+Cbz-MeVal-MeAsp(tBu)-piperidine(面積%)]}×100
【0175】
(加水分解処理)
(1)アミン非添加の場合
上記調製したペプチドを含む反応溶液に5%炭酸カリウム水溶液3.0 mLを加え、25 ℃で、撹拌子にて5分間撹拌を行った。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。LC/MSのピーク面積値から、以下の計算式に従ってC末端活性体残存率を計算した。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0176】
(2)アミン添加の場合
上記調製したペプチドを含む反応溶液にDMAP 141 mg (1.1 mmol)と5%炭酸カリウム水溶液3.0 mLを加え、25 ℃で、撹拌子にて5分間撹拌を行った。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。LC/MSのピーク面積値から、以下の計算式に従ってC末端活性体残存率を計算した。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0177】
(後処理)
撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させ、水層を除去した。次いで有機層を10%硫酸水素カリウム水溶液3 mL、5%炭酸カリウム水溶液3 mLで順次洗浄した。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈して、LC/MS分析に付し、目的とするペプチドと残存C末端活性体(プロピルアミドへの変換体)のピーク面積値を求めた。残った有機層を濃縮し、ペプチドを得た。アミン非添加加水分解により得られた濃縮物(ペプチド)は561.6 mgであった (収率98%:濃縮物には不純物(残存C末端活性体)を含むが、ペプチドのみを含むものとして計算した)。アミン添加での加水分解により得られた濃縮物は501.1 mgであった (収率87%)。MS(ESI):m/z 518.4 [M+H]+, 540.4 [M+Na]+。
【0178】
【表8】
1) LCMSのピーク面積比率
【0179】
アルカリ水単独処理での加水分解では、残存C末端活性体が完全に加水分解されず、続く水性洗浄でも残存C末端活性体を除去できなかったが、DMAPを添加して加水分解を行うと、残存C末端活性体の加水分解が完全に達成されて、残存C末端活性体の除去も完全にできることを見出した。しかもこのとき、目的のジペプチドが100%の純度で得られた(収率87%)。
【0180】
(実施例9)Cbz-Ile-MeVal-MeAsp(tBu)-piperidineの合成
(アミン非添加で加水分解処理して得られたジペプチドを使用したCbz脱保護反応)
実施例7でのアミン非添加条件で合成したCbz-MeVal-MeAsp(tBu)-piperidine 782 mg (残存C末端活性体17.6面積%含む)をシクロペンチルメチルエーテル4.2 mLに溶解させた。5%Pd/C (50%wet) 115 mg と水素ガスにて加水素分解反応に付した。反応がほとんど進行しなかったため、フィルターを用いてPd/Cをろ去した後、濃縮乾固し、再度シクロペンチルメチルエーテル4.2 mLに溶解させて、5%Pd/C (50%wet) 105 mgを加え、再度、加水素分解反応に付した。しかし、合計3時間反応させても、反応は殆ど進行しなかった(反応変換率:1.6%)。反応変換率は、応液5 μLをとり、アセトニトリル1.0 mLで希釈した後、フィルターでろ過した溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={MeVal-MeAsp(tBu)-piperidine(面積%)/[MeVal-MeAsp(tBu)-piperidine(面積%)+Cbz-MeVal-MeAsp(tBu)-piperidine(面積%)]}×100
【0181】
(アミン添加で加水分解処理して得られたジペプチドを使用したCbz脱保護反応)
実施例7でのアミン添加条件で合成したCbz-MeVal-MeAsp(tBu)-piperidine 543 mg (1.0 mmol)をシクロペンチルメチルエーテル4.3 mLに溶解させた。5%Pd/C (50%wet) 124 mg と水素ガスにて加水素分解反応に付した。室温で2時間撹拌し、脱Cbz体であるMeVal-MeAsp(tBu)-piperidineを得た (変換率100%)。反応変換率は、反応液5 μLをとり、アセトニトリル1.0 mLで希釈した後、フィルターでろ過した溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。MS(ESI): m/z 384.3 [M+H]+。
変換率(%)={MeVal-MeAsp(tBu)-piperidine(面積%)/[MeVal-MeAsp(tBu)-piperidine(面積%)+Cbz-MeVal-MeAsp(tBu)-piperidine(面積%)]}×100
【0182】
(縮合反応)
反応液をフィルターでろ過し、Pd/Cをろ去した後、濃縮乾固した。2-メチルテトラヒドロフラン4.3 mLに乾固物を溶解させ、Cbz-Ile-OH 362 mg (1.3 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン 715 μL (4.1 mmol)を加えた。次いで25 ℃で50%T3P/THF溶液 1.4 mL (2.4 mmol) を加え、40 ℃で7時間、さらに室温で14時間撹拌しペプチド結合形成反応を行った (変換率:100%)。調製した反応溶液にN-メチルイミダゾール 81 μL (1.0 mmol)、20%炭酸カリウム水溶液2.6 mLを加え、25 ℃で、撹拌子にて45分間撹拌を行った。撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させ、水層を除去した。次いで有機層を10%硫酸水素カリウム水溶液5.2 mL、5%炭酸カリウム水溶液5.2 mLx2で順次洗浄した。得られた有機層5 μLをノルマルプロピルアミン100 μLに加えて、メタノール0.9 mLで希釈した。この溶液をLC/MS分析に付して、目的とするペプチドと残存C末端活性体のピーク面積パーセントを求めた。目的とするペプチドCbz-Ile-MeVal-MeAsp(tBu)-piperidineは95.1%であり、残存C末端活性体由来のCbz-Ile-NHPrは検出されなかった。残った有機層を濃縮し、濃縮物542.7 mgを得た(収率82%)。MS(ESI): m/z 631.5 [M+H]+、653.4 [M+Na]+
【0183】
アルカリ水単独で処理した、C末端活性体が残存しているペプチド溶液を用いると、Cbz脱保護反応がほとんど進行しないことが判明した。一方、DMAPを添加して処理して得られた、残存C末端活性体が完全に除去されたペプチド溶液を用いれば、Cbz脱保護反応がスムーズに進行し、続くペプチド合成反応が可能となることを見出した。すなわち、本発明の方法を用いることにより、生成したペプチド化合物のN末端の保護基の還元的除去反応を、停滞させずに進行させることができることが判った。これにより、所望のアミノ酸配列を有する高純度のペプチド化合物を効率的に製造することができた。
【0184】
(実施例10)Cbz-Phe(3-F)-Phe-OtBuの合成
Phe-OtBu塩酸塩 200 mg (0.8 mmol)、Cbz-Phe(3-F)-OH 297 mg (0.9 mmol) をトルエン3.0 mL懸濁し、ジイソプロピルエチルアミン 407 μL (2.3 mmol)を加えた。次いで25 ℃で50%T3P/THF溶液 0.9 mL (1.6 mmol) を加え、室温下30分撹拌しペプチド結合形成反応を行った (変換率:100%)。反応変換率は、反応液5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μLに加えて、メタノール0.9 mLで希釈した溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={Cbz-Phe(3-F)-Phe-OtBu(面積%)/[Phe-OtBu(面積%)+Cbz-Phe(3-F)-Phe-OtBu(面積%)]}×100
【0185】
上記の反応溶液にDMAP 95 mg (0.8 mmol)、5%炭酸カリウム水溶液2.0 mLを加え、25 ℃で、撹拌子にて5分間撹拌を行った。撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させて、水層を除去した。次いで有機層を10%硫酸水素カリウム水溶液1 mL、5%炭酸カリウム水溶液1 mL、常水1 mLで順次洗浄した。得られた有機層5 μLをノルマルプロピルアミン100 μLに加え、メタノール0.9 mLで希釈した。この溶液をLC/MS分析に付して、目的とするペプチドと残存C末端活性体のピーク面積パーセントを求めた。目的とするペプチドCbz-Phe(3-F)-Phe-OtBuは純度100%であり、残存C末端活性体由来のCbz-Phe(3-F)-NHPrは検出されなかった。残った有機層を濃縮し、濃縮物387.2 mgを得た(収率96%)。MS(ESI):m/z 465.2 [M-tBu+H]+, 521.1 [M+H]+, 543.2 [M+Na]+。
【0186】
DMAPを添加して加水分解を行うと、残存C末端活性体の除去が完全に達成されて、目的のジペプチドを100%の純度で得ることが出来た(収率96%)。
【0187】
(実施例11)Cbz-Ser(OtBu)-Phe-OtBuの合成
Phe-OtBu塩酸塩 300 mg (1.2 mmol)、Cbz-Ser(OtBu)-OH 450 mg (1.5 mmol) を2-メチルテトラヒドロフラン3.6 mL懸濁し、ジイソプロピルエチルアミン 610 μL (3.5 mmol)を加えた。次いで25 ℃で50%T3P/THF溶液 1.4 mL (2.3 mmol) を加え、室温下1時間撹拌しペプチド結合形成反応を行った (変換率:100%)。反応変換率は、反応液5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μLに加えて、メタノール0.9 mLで希釈した溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={Cbz-Ser(tBu)-Phe-OtBu(面積%)/[Phe-OtBu(面積%)+Cbz-Ser(tBu)-Phe-OtBu(面積%)]}×100
【0188】
上記反応溶液にDMAP 143 mg (1.2 mmol)、20%炭酸カリウム水溶液1.5 mLを加え、25 ℃で、撹拌子にて5分間撹拌を行った。撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させて、水層を除去した。次いで有機層を10%硫酸水素カリウム水溶液3.0 mLx2、5%炭酸カリウム水溶液3.0 mL、常水3.0 mLで順次洗浄した。得られた有機層5 μLをノルマルプロピルアミン100 μLに加え、メタノール0.9 mLで希釈した。この溶液をLC/MS分析に付して、目的とするペプチドと残存C末端活性体のピーク面積パーセントを求めた。目的とするペプチドCbz-Ser(OtBu)-Phe-OtBuは純度100%であり、残存C末端活性体由来のCbz-Ser(OtBu)-NHPrは検出されなかった。残った有機層を濃縮し、濃縮物556.4 mgを得た(収率96%)。MS(ESI):m/z 387.1 [M-2tBu+H]+, 499.3 [M+H]+, 521.2 [M+Na]+。
【0189】
DMAPを添加して加水分解を行うと、残存C末端活性体の除去が完全に達成されて、目的のジペプチドが100%の純度で得ることが出来た(収率96%)。
【0190】
(実施例12)Boc-MeVal-Phe-piperidineの合成
(Boc脱保護反応)
Boc-Phe-piperidine 471 mg (1.4 mmol)をジクロロメタン4.7 mL溶解し、メタンスルホン酸180 μL (2.8 mmol)を加えた。35 ℃で2時間撹拌し、脱Boc反応を行った (変換率100%)。反応変換率は、反応液5 μLをとり、アセトニトリル1.0 mLで希釈した溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率 (%)={Phe-piperidine(面積%)/[Boc-Phe-piperidine(面積%)+Phe-piperidine(面積%)]}×100
【0191】
(縮合反応)
上記反応溶液に、ジイソプロピルエチルアミン 742 μL (4.3 mmol)を加えた後、溶媒を留去した。次いでアセトニトリル1.4 mL、2-メチルテトラヒドロフラン3.3 mL、ジイソプロピルエチルアミン742 μL (4.3 mmol)、Boc-MeVal-OH 492 mg (2.1 mmol)を加えた。25 ℃でHATU 804 mg (2.2 mmol) を加えて、室温で1時間撹拌しペプチド結合形成反応を行った (変換率:100%)。反応変換率は、反応液5 μLをとり、ノルマルプロピルアミン100 μLに加えて、メタノール0.9 mLで希釈した溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={Boc-MeVal-Phe-piperidine(面積%)/[Phe-piperidine(面積%)+Boc-MeVal-Phe-piperidine (面積%)]}×100
【0192】
上記調製した反応溶液にDMAP 168mg (1.4 mmol)、5%炭酸カリウム水溶液4.6 mLを加え、25 ℃で、撹拌子にて5分間撹拌を行った。撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させて、水層を除去した。次いで有機層を10%硫酸水素カリウム水溶液4.6 mL、5%炭酸カリウム水溶液4.6 mL、常水1.5mL x 6で順次洗浄した。得られた有機層5 μLをノルマルプロピルアミン100 μLに加え、メタノール0.9 mLで希釈した。この溶液をLC/MS分析に付して、目的とするペプチドと残存C末端活性体のピーク面積パーセントを求めた。目的とするペプチドBoc-MeVal-Phe-OtBuは純度99.7%であり、残存C末端活性体由来のBoc-MeVal-NHPrは検出されなかった。残った有機層を濃縮し、濃縮物542.3mgを得た(収率86%)。MS(ESI):m/z 346.2 [M-Boc+H]+, 446.3 [M+H]+, 468.3 [M+Na]+。
【0193】
DMAPを添加して加水分解を行うと、残存C末端活性体の除去が完全に達成されて、N末端の保護基がBocでも、目的のジペプチドを99.7%の純度で得ることが出来た(収率86%)。
【0194】
(実施例13)Cbz-Ile-MeAla-Aze-MePhe-MeGly-OtBu/配列番号:1(5 mer)の合成例
(Cbz-MePhe-MeGly-OtBuの合成)
(縮合反応)
MeGly-OtBu塩酸塩 2.0 g (11.0 mmol) を酢酸イソプロピル16 mL、アセトニトリル 4 mLに縣濁させて、ジイソプロピルジエチルアミン7.7 mL (44.0 mmol)、Cbz-MePhe-OH 3.6 g (11.5 mmol)を加えた。反応液を0℃に冷却し、T3P/酢酸エチル溶液 9.7 mL (16.5 mmol)を加えた後、室温で30分間撹拌し、ペプチド結合形成反応を行った (変換率:100%)。反応変換率は反応液3μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0195】
次いで、NMI 1.7 mL (22.0 mmol)、5%炭酸ナトリウム水溶液 20 mLを加えて、50℃で5分間撹拌した。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。水層を除去し、残った有機層を5%硫酸カリウム水溶液、5%炭酸カリウム水溶液×2で洗浄した後、得られた有機層を濃縮し、濃縮物5.0 gを得た(収率quant.)。本濃縮物をLC/MS分析に付し、目的とするCbz-MePhe-MeGly-OtBuのピーク面積パーセントを求めた(100面積%)。MS(ESI):m/z 441.2 [M+H]+, 463.2 [M+Na]+
【0196】
(Cbz-Aze-MePhe-MeGly-OtBuの合成)
(Cbz脱保護反応)
上記方法で得たCbz-MePhe-MeGly-OtBu全量を酢酸イソプロピル75 mLに溶解し、10%Pd/C (3% wet) 0.98 gと水素ガスにて加水素分解反応に付した。室温で2時間撹拌し、脱Cbz化体を得た(変換率:100%)。反応変換率は反応液3μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0197】
(縮合反応)
反応液をフィルターでろ過し、トルエンを加えて共沸脱水を行った。濃縮物に酢酸イソプロピル39 mL、アセトニトリル 9.7 mLに溶解させて、0℃に冷却した。Cbz-Aze-OH 2.6 g (11.0 mmol)、50%T3P/酢酸エチル溶液 13.0 mL (22.0 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン7.7 mL (44.0 mmol) を加えた後、室温で30分間撹拌し、ペプチド結合形成反応を行った (変換率:>99%)。反応変換率は反応液3μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0198】
次いで、NMI 1.7 mL (22.0 mmol)、5%炭酸ナトリウム水溶液 34 mLを加えて、50℃で5分間撹拌した。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。水層を除去し、残った有機層を5%硫酸カリウム水溶液 34 mL、5%炭酸カリウム水溶液 34 mLで洗浄した後、得られた有機層を濃縮し、濃縮物5.5 gを得た(収率96%)。本濃縮物をLC/MS分析に付し、目的とするCbz-Aze-MePhe-MeGly-OtBuのピーク面積パーセントを求めた(99.8面積%)。MS(ESI):m/z 546.2 [M+Na]+
【0199】
(Cbz-MeAla-Aze-MePhe-MeGly-OtBu/配列番号:2の合成)
(Cbz脱保護反応)
上記方法で得たCbz-Aze-MePhe-MeGly-OtBu 5.5 g (10.6 mmol) を酢酸イソプロピル75 mLに溶解し、10%Pd/C (3% wet) 0.95 gと水素ガスにて加水素分解反応に付した。50℃で2時間撹拌し、脱Cbz化体を得た(変換率:100%)。反応変換率は反応液3μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0200】
(縮合反応)
反応液をフィルターでろ過し、トルエンを加えて2回共沸脱水を行った。濃縮物に酢酸イソプロピル32.8 mL、アセトニトリル 8.2 mLに溶解させた。Cbz-MeAla-OH 2.7 g (11.1 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン7.4 mL (42.3 mmol) を加えた後、50%T3P/酢酸エチル溶液12.5 mL (21.1 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン7.4 mL (42.3 mmol) を加えた。室温で2時間撹拌した後、Cbz-MeAla-OH 0.39 g (1.7 mmol)、T3P/酢酸エチル溶液 1.9 mL (3.2 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン1.1 mL (6.3 mmol) を追加し、さらに室温で2時間撹拌し、ペプチド結合形成反応を行った (変換率:97%)。反応変換率は反応液3μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0201】
次いで、NMI 1.7 mL (21.1 mmol)、5%炭酸ナトリウム水溶液 41 mLを加えて、50℃で5分間撹拌した。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。水層を除去し、残った有機層を5%硫酸カリウム水溶液 41 mL、5%炭酸カリウム水溶液 41 mLで洗浄した後、得られた有機層を濃縮し、濃縮物5.8 gを得た(収率91%)本濃縮物をLC/MS分析に付し、目的とするCbz-MeAla-Aze-MePhe-MeGly-OtBu(配列番号:2)のピーク面積パーセントを求めた(99.5面積%)。MS(ESI):m/z 609.3 [M+H]+ 631.3 [M+Na]+
【0202】
(Cbz-Ile-MeAla-Aze-MePhe-MeGly-OtBu/配列番号:1の合成)
(Cbz脱保護反応)
上記方法で得たCbz-MeAla-Aze-MePhe-MeGly-OtBu(配列番号:2) 5.8 g (9.6 mmol) を酢酸イソプロピル88 mLに溶解し、10%Pd/C (3% wet) 0.93 gと水素ガスにて加水素分解反応に付した。室温で5時間撹拌した後、反応液をフィルターでろ過した(変換率:100%)。反応変換率は反応液3μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0203】
ろ液を濃縮し、濃縮物4.4 gを得た(収率97%)。本濃縮物をLC/MS分析に付し、目的とするMeAla-Aze-MePhe-MeGly-OtBu(配列番号:3)のピーク面積パーセントを求めた(99.7面積%)。MS(ESI):m/z 475.3 [M+H]+
【0204】
(縮合反応)
上記濃縮物 1.5 g (3.2 mmol)とCbz-Ile-OH 1.3 g (4.7 mmol)を酢酸イソプロピル18 mL、アセトニトリル 4.5 mLに溶解させた。ジイソプロピルエチルアミン2.2 mL (12.6 mmol)、HATU 2.4 g (6.3 mmol)を加えて、室温で30分間撹拌し、ペプチド結合形成反応を行った (変換率:>99%)。反応変換率は反応液3μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0205】
次いで、NMI 0.75 mL (9.5 mmol)、5%炭酸ナトリウム水溶液 22.5 mLを加えて、50℃で20分間撹拌した。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。水層を除去し、残った有機層を5%硫酸カリウム水溶液 22.5 mL×2、5%炭酸カリウム水溶液 22.5 mL×3で洗浄した後、得られた有機層を濃縮し、濃縮物2.4 gを得た(収率quant.)。本濃縮物をLC/MS分析に付し、目的とするCbz-Ile-MeAla-Aze-MePhe-MeGly-OtBu(配列番号:1)のピーク面積パーセントを求めた(99.1面積%)。MS(ESI):m/z 744.3 [M+Na]+
【0206】
NMIを添加して加水分解を1回行い、続いて水性洗浄することにより、残存C末端活性体の完全な除去が達成されて、目的のペンタペプチドが99.1%の純度で得られた。その収率は、初めのアミノ酸からの通算で87%であった。本結果は、連続的な液相ペプチド合成において、アミン添加剤を用いて残存C末端活性体を完全に除去することで、高純度のペンタペプチド合成を高収率で達成したことを示すものである。
【0207】
(実施例14)
Cbz-MeAla-MePhe-Leu-MeLeu-Val-MeGly-MeIle-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine/配列番号:4 (11 mer)の合成
(Cbz-MeVal-Asp(tBu)-piperidineの合成)
(縮合反応)
Asp(tBu)-piperidine 8.6 g (33.5 mmol) をシクロペンチルメチルエーテル 108 mLに溶解させた。Cbz-MeVal-OH 9.79 g (36.9 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン17.6 mL (101 mmol)を加えた。BEP 13.8 g (50.3 mmol)をアセトニトリル 21.5 mLに溶解した後、反応液に加えて、室温で3分間撹拌し、ペプチド結合形成反応を行った (変換率:>99%)。反応変換率は反応液5μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0208】
反応液を10%硫酸水素カリウム水溶液 150 mLで洗浄した後、5%炭酸カリウム水溶液 150 mLとトリメチルアミン塩酸塩 9.52 g (101 mmol)を加えて、40℃で90分間撹拌した。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。水層を除去し、残った有機層を5%炭酸カリウム水溶液 150 mLで洗浄した後、得られた有機層を濃縮し、濃縮物17 gを得た(収率:quant.)。本濃縮物をLC/MS分析に付し、目的とするCbz-MeVal-Asp(tBu)-piperidineのピーク面積パーセントを求めた(99.7面積%)。
【0209】
(Cbz-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidineの合成)
(Cbz脱保護反応)
上記方法にて得たCbz-MeVal-Asp(tBu)-piperidine 9.5 g (9.6 mmol) をシクロペンチルメチルエーテル50 mLに溶解し、10%Pd/C (3% wet) 1.9 gと水素ガスにて加水素分解反応に付し、35℃で2時間撹拌した (変換率:100%)。反応変換率は反応液5μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0210】
同様の操作を再度行い、合わせた反応液をフィルターでろ過した。ろ液を濃縮し、濃縮物14.0 gを得た(収率:quant.)。本濃縮物をLC/MS分析に付し、目的とするMeVal-Asp(tBu)-piperidineのピーク面積パーセントを求めた(99.5面積%)。
【0211】
(縮合反応)
上記濃縮物をクロペンチルメチルエーテル 126 mL、アセトニトリル14 mLに溶解させた。Cbz-MePhe-OH 13.0 g (41.7 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン52.9 mL (303 mmol)を加えた。50%T3P/酢酸エチル溶液 67.0 mL (114 mmol)を加えて、室温で1時間撹拌し、ペプチド結合形成反応を行った(変換率:>99%)。反応変換率は反応液5μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0212】
反応液を5%硫酸水素カリウム水溶液 140 mLで洗浄した後、5%炭酸カリウム水溶液 140 mLとトリメチルアミン塩酸塩 10.9 g (114 mmol)を加えて、室温で30分間撹拌した。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。水層を除去し、残った有機層を5%炭酸カリウム水溶液 140 mLで洗浄した後、得られた有機層を濃縮し、濃縮物24.1 gを得た(収率96%)。本濃縮物をLC/MS分析に付し、目的とするCbz-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidineのピーク面積パーセントを求めた(99.6面積%)。
【0213】
(Cbz-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine/配列番号:5の合成)
(Cbz脱保護反応)
上記方法で得たCbz-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine 11.5 g (9.6 mmol) をシクロペンチルメチルエーテル58 mLに溶解し、10%Pd/C 2.3 gと水素ガスにて加水素分解反応に付し、35℃で2時間撹拌した(変換率:100%)。反応変換率は反応液5μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0214】
同様の操作を再度行い、合わせた反応液をフィルターでろ過した。ろ液を濃縮し、濃縮物18.1 gを得た(収率99%)。
【0215】
(縮合反応)
上記濃縮物17.3 g (32.6 mmol)をクロペンチルメチルエーテル 153 mL、アセトニトリル17mLに溶解させた。Cbz-Ser(tBu)-OH 10.6 g (35.9 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン45.5 mL (261 mmol)を加えた。50%T3P/酢酸エチル溶液 57.6 mL (98.0 mmol)を加えて、室温で15分間撹拌し、ペプチド結合形成反応を行った (変換率:>99%)。反応変換率は反応液5μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0216】
反応液を5%硫酸水素カリウム水溶液 170 mLで洗浄した後、5%炭酸カリウム水溶液 170 mLとトリメチルアミン塩酸塩 9.4 g (98.0 mmol)を加えて、室温で2時間撹拌した。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。水層を除去し、残った有機層を5%炭酸カリウム水溶液 170 mLで洗浄した後、得られた有機層を濃縮し、濃縮物26.5 gを得た(収率:quant.)。本濃縮物をLC/MS分析に付し、目的とするCbz-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine(配列番号:5)のピーク面積パーセントを求めた(98.9面積%)。MS (ESI) : 830.4 [M+Na]+
【0217】
(Cbz-MeIle-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine/配列番号:6の合成)
(Cbz脱保護反応)
Cbz-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine(配列番号:5) 12.0 g (14.9 mmol) をシクロペンチルメチルエーテル60 mLに溶解し、10%Pd/C 2.4 gと水素ガスにて加水素分解反応に付し、35℃で2時間撹拌した (変換率:>98%)。反応変換率は反応液5μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0218】
同様の操作を再度行い、合わせた反応液をフィルターでろ過した。ろ液を濃縮し、濃縮物19.5 gを得た(収率97%)。
【0219】
(縮合反応)
上記濃縮物16.0 g (23.7 mmol) をシクロペンチルメチルエーテル 200 mLに溶解させた。Cbz-MeIle-OH 7.3 g (26.1 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン12.4 mL (71.2 mmol)を加えた。BEP 9.8 g (35.6 mmol)をアセトニトリル 40 mLに溶解した後、反応液に加えて、室温で5分間撹拌し、ペプチド結合形成反応を行った (変換率:>99%)。反応変換率は反応液5μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%) = {目的化合物 (面積%)/[原料 (面積%)+目的化合物 (面積%)]}×100
【0220】
反応液を10%硫酸水素ナトリウム水溶液 240 mLで洗浄した後、5%炭酸カリウム水溶液 240 mLとトリメチルアミン塩酸塩 6.7 g (71.2 mmol)を加えて、40℃で1.5時間撹拌した。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。水層を除去し、残った有機層を5%炭酸カリウム水溶液 240 mLで洗浄した後、得られた有機層を濃縮し、濃縮物22.2 gを得た(収率:quant.)。本濃縮物をLC/MS分析に付し、目的とするCbz-MeIle-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine(配列番号:6)のピーク面積パーセントを求めた(99.4面積%)。
【0221】
(Cbz-MeGly-MeIle-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine/配列番号:7の合成)
(Cbz脱保護反応)
Cbz-MeIle-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine(配列番号:6) 9.5 g (10.2 mmol) をシクロペンチルメチルエーテル48 mLに溶解し、10%Pd/C 1.9 gと水素ガスにて加水素分解反応に付し、35℃で2時間撹拌した。同様の操作を再度行い、合わせた反応液をフィルターでろ過した。ろ液を濃縮し、濃縮物15.6 gを得た(収率96%)。
【0222】
(縮合反応)
上記濃縮物15.3 g (19.1 mmol) をシクロペンチルメチルエーテル 138 mL、アセトニトリル15 mLに溶解させた。Cbz-MeGly-OH 4.7 g (21.0 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン26.7 mL (153 mmol)を加えた。50%T3P/酢酸エチル溶液 33.8 mL (57.3 mmol)を加えて、室温で15分間撹拌し、ペプチド結合形成反応を行った (変換率:>99%)。反応変換率は反応液5μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0223】
反応液を5%硫酸水素カリウム水溶液 153 mLで洗浄した後、5%炭酸カリウム水溶液 153 mLを加えて、室温で5分間撹拌した。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させて、水層を除去した後、5%炭酸カリウム水溶液 153 mLを加えて、室温で1時間撹拌した。水層を除去した後、得られた有機層を濃縮し、濃縮物19.5 gを得た(収率:quant.)。本濃縮物をLC/MS分析に付し、目的とするCbz-MeGly-MeIle-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine(配列番号:7)のピーク面積パーセントを求めた(99.6面積%)。
【0224】
(Cbz-Val-MeGly-MeIle-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine/配列番号:8の合成)
(Cbz脱保護反応)
Cbz-MeGly-MeIle-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine(配列番号:7) 9.5 g (10.2 mmol) をシクロペンチルメチルエーテル48 mLに溶解し、10%Pd/C 1.9 gと水素ガスにて加水素分解反応に付し、35℃で3時間撹拌した (変換率:100%)。反応変換率は反応液5μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0225】
同様の操作を再度行い、合わせた反応液をフィルターでろ過した。ろ液を濃縮し、濃縮物16.3 gを得た(収率99%)。
【0226】
(縮合反応)
上記濃縮物16.0 g (18.4 mmol) をシクロペンチルメチルエーテル 144 mL、アセトニトリル16 mLに溶解させた。Cbz-Val-OH 5.1 g (20.2 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン25.6 mL (147 mmol)を加えた。50%T3P/酢酸エチル溶液 32.4 mL (55.0 mmol)を加えて、室温で30分間撹拌し、ペプチド結合形成反応を行った(変換率:>99%)。反応変換率は反応液5μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0227】
反応液を5%硫酸水素カリウム水溶液 160 mLで洗浄した後、5%炭酸カリウム水溶液 153 mL、トリメチルアミン塩酸塩 5.3 g (55.0 mmol) を加えて、60℃で1時間撹拌した。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させて、水層を除去した後、得られた有機層を5%炭酸カリウム水溶液 160 mL洗浄、濃縮し、濃縮物20.0 gを得た(収率99%)。本濃縮物をLC/MS分析に付し、目的とするCbz-Val-MeGly-MeIle-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine(配列番号:8)のピーク面積パーセントを求めた(99.6面積%)。
【0228】
(Cbz-MeLeu-Val-MeGly-MeIle-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine/配列番号:9の合成)
(Cbz脱保護反応)
Cbz-Val-MeGly-MeIle-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine(配列番号:8) 9.2 g (8.3 mmol) をシクロペンチルメチルエーテル46 mLに溶解し、10%Pd/C 1.8 gと水素ガスにて加水素分解反応に付し、35℃で6時間、さらに45℃で4時間撹拌した (変換率:100%)。反応変換率は反応液5μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0229】
同様の操作を再度行い、合わせた反応液をフィルターでろ過した。ろ液を濃縮し、濃縮物15.9 gを得た(収率98%)。本濃縮物をLC/MS分析に付し、目的とするVal-MeGly-MeIle-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine(配列番号:10)のピーク面積パーセントを求めた(97.9面積%)。
【0230】
(縮合反応)
上記濃縮物14.5 g (14.9 mmol) をシクロペンチルメチルエーテル 181 mLに溶解させた。Cbz-MeLeu-OH 4.6 g (16.4 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン7.8 mL (44.8 mmol)を加えた。BEP 4.9 g (17.9 mmol)をアセトニトリル36 mLに溶解させた後、得られたBEP溶液を反応液に加えて、40℃で1分間撹拌し、ペプチド結合形成反応を行った(変換率:>99%)。反応変換率は反応液5μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0231】
反応液を10%硫酸水素ナトリウム水溶液 128 mLで洗浄した後、5%炭酸カリウム水溶液 128 mL、トリメチルアミン塩酸塩 4.2 g (44.8 mmol) を加えて、40℃で30分間撹拌した。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させて、水層を除去した後、得られた有機層を5%炭酸カリウム水溶液 128 mL洗浄、濃縮し、濃縮物18.0 gを得た(収率98%)。本濃縮物をLC/MS分析に付し、目的とするCbz-MeLeu-Val-MeGly-MeIle-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine(配列番号:9)のピーク面積パーセントを求めた(96.0面積%)。
【0232】
(Cbz-Leu-MeLeu-Val-MeGly-MeIle-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine/配列番号:11の合成)
(Cbz脱保護反応)
Cbz-MeLeu-Val-MeGly-MeIle-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine(配列番号:9) 8.0 g (6.5 mmol) をシクロペンチルメチルエーテル40 mLに溶解し、10%Pd/C 1.6 gと水素ガスにて加水素分解反応に付し、45℃で4時間撹拌した (変換率:100%)。反応変換率は反応液5μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0233】
同様の操作を再度行い、合わせた反応液をフィルターでろ過した。ろ液を濃縮し、濃縮物14.3 gを得た(収率quant.)。本濃縮物をLC/MS分析に付し、目的とするMeLeu-Val-MeGly-MeIle-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine(配列番号:12)のピーク面積パーセントを求めた(95.8面積%)。MS (ESI) : m/z 1098.6 [M+H]+
【0234】
(縮合反応)
上記濃縮物13.0 g (11.8 mmol) をシクロペンチルメチルエーテル 117 mL、アセトニトリル13 mLに溶解させた。Cbz-Leu-OH 3.5 g (13.0 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン16.5 mL (95.0 mmol)を加えた。50%T3P/酢酸エチル溶液 20.9 mL (35.5 mmol)を反応液に加えて、室温で30分間撹拌し、ペプチド結合形成反応を行った (変換率:>99%)。反応変換率は反応液5μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0235】
反応液を5%硫酸水素カリウム水溶液 130 mLで洗浄した後、5%炭酸カリウム水溶液 130 mL、トリメチルアミン塩酸塩 3.4 g (35.5 mmol) を加えて、60℃で45分間撹拌した。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させて、水層を除去した後、得られた有機層を5%炭酸カリウム水溶液 130 mL洗浄、濃縮し、濃縮物15.6 gを得た(収率98%)。本濃縮物をLC/MS分析に付し、目的とするCbz-Leu-MeLeu-Val-MeGly-MeIle-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine(配列番号:11)のピーク面積パーセントを求めた(97.2面積%)。
【0236】
(Cbz-MePhe-Leu-MeLeu-Val-MeGly-MeIle-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine/配列番号:12の合成)
(Cbz脱保護反応)
Cbz-Leu-MeLeu-Val-MeGly-MeIle-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine(配列番号:11) 10.0 g (7.4 mmol) をシクロペンチルメチルエーテル50 mLに溶解し、10%Pd/C 2.0 gと水素ガスにて加水素分解反応に付し、45℃で4時間撹拌した (変換率:100%)。反応液をフィルターでろ過した後、ろ液を濃縮し、濃縮物8.9 gを得た(収率99%)。反応変換率は反応液5μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。MS (ESI) : m/z 1211.7 [M+H]+、1233.7 [M+Na]+
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0237】
(縮合反応)
上記濃縮物7.0 g (5.8 mmol) をシクロペンチルメチルエーテル 87.5 mLに溶解させた。Cbz-MePhe-OH 2.0 g (6.4 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン3.0 mL (17.3 mmol)を加えた。BEP 1.9 g (17.9 mmol)をアセトニトリル17.5 mLに溶解させた後、得られたBEP溶液を反応液に加えて、室温で3分間撹拌し、ペプチド結合形成反応を行った (変換率:>99%)。反応変換率は反応液5μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%) = {目的化合物 (面積%)/[原料 (面積%)+目的化合物 (面積%)]}×100
【0238】
反応液を10%硫酸水素ナトリウム水溶液 105 mLで洗浄した後、5%炭酸カリウム水溶液 105 mL、トリメチルアミン塩酸塩 1.7 g (17.3 mmol) を加えて、40℃で30分間撹拌した。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させて、水層を除去した後、得られた有機層を5%炭酸カリウム水溶液 105 mL洗浄、濃縮し、濃縮物8.6 gを得た(収率99%)。本濃縮物をLC/MS分析に付し、目的とするCbz-MePhe-Leu-MeLeu-Val-MeGly-MeIle-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine(配列番号:12)のピーク面積パーセントを求めた(97.0面積%)。
【0239】
(Cbz-MeAla-MePhe-Leu-MeLeu-Val-MeGly-MeIle-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine/配列番号:4の合成)
(Cbz脱保護反応)
Cbz-MePhe-Leu-MeLeu-Val-MeGly-MeIe-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine(配列番号:12) 7.6 g (5.0 mmol) をシクロペンチルメチルエーテル38 mLに溶解し、10%Pd/C 2.0 gと水素ガスにて加水素分解反応に付し、45℃で4時間撹拌した (変換率:100%)。反応液をフィルターでろ過した後、ろ液を濃縮し、濃縮物6.8 gを得た(収率98%)。反応変換率は反応液5μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0240】
(縮合反応)
上記濃縮物500 mg (0.4 mmol) をシクロペンチルメチルエーテル 4.5 mL、アセトニトリル0.5 mLに溶解させた。Cbz-MeAla-OH 95.0 mg (0.4 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン509 μL (2.9 mmol)を加えた。50%T3P/酢酸エチル溶液 644 μL (1.1 mmol) を加えて、室温で2時間撹拌し、ペプチド結合形成反応を行った (変換率:>99%)。反応変換率は反応液5μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={目的化合物(面積%)/[原料(面積%)+目的化合物(面積%)]}×100
【0241】
反応液を10%硫酸水素ナトリウム水溶液 5.0 mLで洗浄した後、5%炭酸カリウム水溶液 5.0 mL、トリメチルアミン塩酸塩 104 mg (1.1 mmol) を加えて、室温で1時間撹拌した。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させて、水層を除去した後、得られた有機層を5%炭酸カリウム水溶液 5.0 mL洗浄、濃縮し、濃縮物555 mgを得た(収率96%、Cbz-MeAla-MePhe-Leu-MeLeu-Val-MeGly-MeIle-Ser(tBu)-MePhe-MeVal-Asp(tBu)-piperidine(配列番号:4)は95.3面積%)。MS(ESI):m/z 1591.9 [M+H]+, 1613.9 [M+Na]+
【0242】
トリメチルアミンを添加して加水分解を1回行い、続いて水性洗浄することにより、残存C末端活性体の完全な除去が達成されて、11個のアミノ酸からなるペプチドを高純度95.3%で得ることができた。その収率は、初めのアミノ酸からの通算で75.3%であった。本結果は、連続的な液相ペプチド合成において、アミン添加剤を用いて残存C末端活性体を除去することで、高純度のポリペプチド合成を達成できることを示すものである。
【0243】
(実施例15)Teoc-MeLeu-Phe-OtBuの合成
(Teoc-MeLeu-Opfpの合成)
MeLeu-OH 2.35 g (16.2 mmol) を1,4-ジオキサン23.5 mLに溶解させて、Teoc-OSu 4.61 g (17.8 mmol)、水23.5 mL、トリエチルアミン 4.5 mL (32.4 mmol)を加えた。室温で1時間撹拌し、Teoc化反応を行った。5%硫酸水素カリウム水溶液を加えて、反応溶液を酸性にした後、酢酸エチル50 mLで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。得られた有機層を濃縮乾固し、濃縮物をジクロロメタン30 mLに溶解させた。Pfp-OH 3.10 g (16.2 mmol)、EDC塩酸塩 4.53 g (24.3 mmol)を加えて、室温で30分間撹拌し、Pfp化反応を行った。反応溶液を飽和食塩水で洗浄した後、水層を酢酸エチル50 mLで抽出した。合わせた有機層を濃縮し、得られた濃縮物をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン)で精製し、Teoc-MeLeu-OPfp 6.63gを得た(収率:90%)。
【0244】
(縮合反応)
Phe-OtBu塩酸塩 201 mg (0.8 mmol)、Teoc-MeLeu-OPfp 536 mg (1.2 mmol)を酢酸イソプロピル3.0 mLに懸濁し、4-メチルモルホリン 257 μL (2.3 mmol) を加えて、25 ℃で3時間撹拌しペプチド結合形成反応を行った。反応液5μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol) に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から変換率を求めた (変換率:100%)。
変換率(%)={Teoc-MeLeu-Phe-OtBu(面積%)/[Phe-OtBu(面積%)+Teoc-MeLeu-Phe-OtBu(面積%)]}×100
【0245】
(加水分解処理)
(1)アミン非添加の場合
上記調製したペプチドを含む反応溶液に5%炭酸ナトリウム水溶液2.0 mLを加えて、25 ℃で撹拌子にて20分間撹拌を行った。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol) に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。LC/MSのピーク面積値から、以下の計算式に従ってC末端活性体残存率を計算した。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0246】
(2)アミン添加の場合
上記調製したペプチドを含む反応溶液にDMAP 95 mg (0.8 mmol)、5%炭酸ナトリウム水溶液2.0 mLを加えて、25 ℃で撹拌子にて20分間撹拌を行った。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol) に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。LC/MSのピーク面積値から、以下の計算式に従ってC末端活性体残存率を計算した。
C末端活性体残存率 (%) ={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0247】
(後処理)
撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させて、水層を除去した。次いで有機層を10%硫酸水素カリウム水溶液2 mL×2、5%炭酸ナトリウム水溶液 2 mLで順次洗浄した。さらに5%炭酸カリウム水溶液 1 mL、常水1 mL×2での洗浄を3回繰り返した。得られた有機層5μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol) に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈して、LC/MS分析に付し、目的とするペプチドと残存C末端活性体(プロピルアミドへの変換体)のピーク面積を求めた。アミン非添加加水分解により得られた濃縮物(ペプチド)は576.6 mgであった (収率150%:濃縮物には不純物(残存C末端活性体)を含むが、ペプチドのみを含むものとして計算した)。アミン添加での加水分解により得られた濃縮物は、369.6 mg (収率96%)であった。MS(ESI):m/z 437.3 [M-tBu+H]+, 493.3 [M+H]+, 515.3 [M+Na]+。
【0248】
【表9】
1)LCMSのピーク面積比率
【0249】
保護基をTeoc、C末端活性体部位をPfpとした残存C末端活性体のアルカリ水単独処理での加水分解では、残存C末端活性体が完全に加水分解されず、続く水性洗浄でも残存C末端活性体を除去できなかった。一方、DMAPを添加して加水分解を行うと、残存C末端活性体の加水分解が完全に達成されて、残存C末端活性体の除去も完全にできることを見出した。目的のジペプチドは96.3%の純度で得られた(収率96%)。
【0250】
(実施例16) Cbz-Aib-MeLeu-Phe-OtBuの合成
(アミン非添加で加水分解処理して得られたジペプチドを使用したTeoc脱保護反応)
実施例15でのアミン非添加条件で合成したTeoc-MeLeu-Phe-OtBu 576.6 mg (残存C末端活性体8.9面積%を含む) を2-メチルテトラヒドロフラン2.0 mLに溶解させた。TBAFの8.4%含水テトラヒドロフラン溶液 1.5 mL (1.5 mmol) を加えた後、50℃で2.5時間撹拌した。反応が完結しなかったため、TBAFの8.4%含水テトラヒドロフラン溶液 0.75 mL (0.75 mmol) を加えて、2.5時間撹拌した。さらにTBAFの8.4%含水テトラヒドロフラン溶液 0.75 mL (0.75 mmol) を加えて30分間撹拌し、脱Teoc体であるMeLeu-Phe-OtBuを得た (変換率100%)。反応変換率は、反応液5μLをとり、アセトニトリル1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={MeLeu-Phe-OtBu(面積%)/[Teoc-MeLeu-Phe-OtBu(面積%)+MeLeu-Phe-OtBu(面積%)]}×100
【0251】
(縮合反応)
内容量が約1 mLになるまで濃縮した後、2-メチルテトラヒドロフランを2 mLを加えた。本操作をさらに2回繰り返し、得られた2-メチルテトラヒドロフラン溶液にアセトニトリル0.5 mL、Cbz-Aib-OH 276 mg (1.1 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン 0.66 mL (3.8 mmol)を加えた。次いで25℃でHATU 441 mg (1.1 mmol)を加えて、室温で14時間撹拌した。HATU 579 mg (1.5 mmol)を加えて、40℃で1時間撹拌した後、HATU 684 mg (1.8 mmol)を加えて60℃に昇温し、4.5時間撹拌した。さらにHATU 455 mg (1.1 mmol)を加えて、60℃で2時間、室温で12時間、60℃で2時間撹拌したが、縮合反応の進行は観察されなかった(変換率0%)。反応変換率は、反応液5μLをプロピルアミン100 μLに加えて、メタノール0.9 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={Cbz-Aib-MeLeu-Phe-OtBu(面積%)/[MeLeu-Phe-OtBu(面積%)+Cbz-Aib-MeLeu-Phe-OtBu(面積%)]}×100
【0252】
(アミン添加で加水分解処理して得られたジペプチドを使用したTeoc脱保護反応)
実施例15でのアミン添加条件で合成したTeoc-MeLeu-Phe-OtBu 369.6 mg (0.75 mmol) を2-メチルテトラヒドロフラン2.0 mLに溶解させた。TBAFの8.4%含水テトラヒドロフラン溶液 1.5 mL (1.5 mmol) を加えた後、50℃で2.5時間撹拌し、脱Teoc体であるMeLeu-Phe-OtBuを得た (変換率100%)。反応変換率は、反応液5μLをとり、アセトニトリル1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={MeLeu-Phe-OtBu(面積%)/[Teoc-MeLeu-Phe-OtBu(面積%)+MeLeu-Phe-OtBu(面積%)]}×100
【0253】
(縮合反応)
内容量が約1 mLになるまで濃縮した後、2-メチルテトラヒドロフランを2 mLを加えた。本操作をさらに2回繰り返し、得られた2-メチルテトラヒドロフラン溶液にアセトニトリル0.5 mL、Cbz-Aib-OH 273 mg (1.1 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン 0.66 mL (3.8 mmol)を加えた。次いで25℃でHATU 439 mg (1.1 mmol)を加えて、室温で14時間撹拌した。HATU 576 mg (1.5 mmol)を加えて、40℃で5.5時間撹拌した。さらにHATU 452 mg (1.1 mmol)を加えて、60℃で2時間、室温で12時間、60℃で2時間撹拌した(変換率86%)。反応変換率は、反応液5μLをプロピルアミン100 μLに加えて、メタノール0.9 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。変換率(%)={Cbz-Aib-MeLeu-Phe-OtBu(面積%)/[MeLeu-Phe-OtBu(面積%)+Cbz-Aib-MeLeu-Phe-OtBu(面積%)]}×100
【0254】
調製した反応液にDMAP 92 mg (0.75 mmol)、10%炭酸カリウム水溶液4.0 mLを加えて、25℃で撹拌子にて1時間撹拌を行った。撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させて、水層を除去した。得られた有機層5 μLをプロピルアミン100 μLに加えて、メタノール0.9 mLで希釈した。この溶液をLC/MS分析に付して、目的とするペプチドと残存C末端活性体のピーク面積パーセントを求めた。目的とするペプチドCbz-Aib-MeLeu-Phe-OtBuは86.7%、原料のMeLeu-Phe-OtBuは13.3%、残存C末端活性体由来のCbz-Aib-NHPrは検出されなかった。残った有機層を濃縮し、上記組成の濃縮物295.6 mgを得た。MS(ESI):m/z 568.4 [M+H]+, 590.4 [M+Na]+。
【0255】
N末端が保護されたペプチドの溶液にC末端活性体が残存していると、ペプチドのN末端の保護基(Teoc)を含水フッ素試薬で脱保護する際に、大過剰の試薬が必要なことが判明した。脱保護試薬が残存C末端活性体とも反応するからであると推定される。
また、脱保護に続く、次工程での別のC末端活性体との縮合反応(ペプチド結合形成反応)が、全く進行しないことが明らかになった。おそらく、前行程(N末端の脱保護)で使用した過剰の試薬がC末端活性体を分解したと推定される。このように、C末端活性体が残存するとN末端の脱保護の際に、大過剰の試薬が必要となり、そのことが、続く縮合反応の進行を妨げることにつながることを見出した。一方、残存C末端活性体が完全に除去されたペプチド溶液を原料として用いれば、適量の脱保護試薬で脱保護反応が完結し、次工程の縮合反応も実施可能であることを見出した。
【0256】
(実施例17) Cbz-MeAla-Phe-OtBuの合成
(縮合反応)
Phe-OtBu塩酸塩 302 mg (1.2 mmol)、Cbz-MeAla-OH 417 mg (1.7 mmol)、HOOBt 290 mg (1.8 mmol) をアセトニトリル0.9 mL、MTBE 3.6 mLに懸濁し、ジイソプロピルエチルアミン1.0 mL (5.8 mmol) を加えた。次いで、EDC塩酸塩 443 mg (2.3 mmol) を加えて、25 ℃で30分間撹拌しペプチド結合形成反応を行った。反応液5μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol) に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から変換率を求めた (変換率:100%)。
変換率(%)={Cbz-MeAla-Phe-OtBu(面積%)/[Phe-OtBu(面積%)+Cbz-MeALa-Phe-OtBu(面積%)]}×100
【0257】
(加水分解処理)
(1)アミン非添加の場合
上記調製したペプチドを含む反応溶液に5%炭酸ナトリウム水溶液3.0 mLを加えて、25 ℃で撹拌子にて5分間撹拌を行った。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol) に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。LC/MSのピーク面積値から、以下の計算式に従ってC末端活性体残存率を計算した。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0258】
(2)アミン添加の場合
上記調製したペプチドを含む反応溶液にDMAP 147 mg (1.1 mmol)、5%炭酸ナトリウム水溶液3.0 mLを加えて、25 ℃で撹拌子にて5分間撹拌を行った。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol) に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。LC/MSのピーク面積値から、以下の計算式に従ってC末端活性体残存率を計算した。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0259】
(後処理)
撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させて、水層を除去した。次いで有機層を10%硫酸水素ナトリウム水溶液3 mL×2、5%炭酸ナトリウム水溶液 3 mLで順次洗浄した。得られた有機層5 μLをプロピルアミン100 μLに加えて、メタノール0.9 mLで希釈した。この溶液をLC/MS分析に付して、目的とするペプチドと残存C末端活性体のピーク面積パーセントを求めた。MS(ESI):m/z 385.2 [M-tBu+H]+, 441.3 [M+H]+, 463.2 [M+Na]+。
【0260】
【表10】
1)LCMSのピーク面積比率
【0261】
置換基の小さなアミノ酸であるアラニンでも、アルカリ水単独処理での加水分解では、残存C末端活性体が完全に加水分解されず、続く分液操作(水性洗浄)でも残存C末端活性体を十分に除去できなかった。一方、DMAPを添加して加水分解を行うと、残存C末端活性体の加水分解が完全に達成されて、残存C末端活性体の除去も完全にできることを見出した。しかもこのとき、目的のジペプチドが98.4%の純度で得られた。
【0262】
(実施例18)Cbz-Hph-MeAla-Phe-OtBuの合成
(アミン非添加で加水分解処理して得られたジペプチドを使用したCbz脱保護反応)
実施例17でのアミン非添加条件で合成したCbz-MeAla-Phe-OtBuのMTBE溶液を2-メチルテトラヒドロフランに置換濃縮した。5%Pd/C (50%wet) 101 mgと水素ガスにて加水素分解反応に付した。25 ℃で6時間撹拌したが、反応は完結しなかった (変換率35%)。反応変換率は、反応液5μLをとり、アセトニトリル1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={MeAla-Phe-OtBu(面積%)/[Cbz-MeAla-Phe-OtBu(面積%)+MeALa-Phe-OtBu(面積%)]}×100
【0263】
(アミン添加で加水分解処理して得られたジペプチドを使用したCbz脱保護反応)
実施例17でのアミン添加条件で合成したCbz-MeAla-Phe-OtBuのMTBE溶液を2-メチルテトラヒドロフランに置換濃縮した。5%Pd/C (50%wet) 102 mgと水素ガスにて加水素分解反応に付した。25 ℃で3時間撹拌し、脱Cbz化体であるMeAla-Phe-OtBuを得た (変換率100%)。反応変換率は、反応液5μLをとり、アセトニトリル1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。MS(ESI):m/z 307.2 [M+H]+。
変換率(%)={MeAla-Phe-OtBu(面積%)/[Cbz-MeAla-Phe-OtBu(面積%)+MeALa-Phe-OtBu(面積%)]}×100
【0264】
(縮合反応)
アミン添加で加水分解処理して得られたジペプチドのCbz脱保護体反応液を、フィルターでろ過し、Pd/Cをろ去した後、濃縮乾固した。2-メチルテトラヒドロフラン2.5 mLに乾固物を溶解させ、Cbz-Hph-OH 474 mg (1.5 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン 610 μL (3.5 mmol)を加えた。次いでT3P/2-メチルテトラヒドロフラン溶液 1.37 mL (2.33 mmol)を加えて25℃で1.5時間撹拌し、ペプチド結合形成反応を行った(変換率:100%)。反応変換率は、反応液5μLをプロピルアミン100 μLに加えて、メタノール0.9 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={Cbz-Hph-MeAla-Phe-OtBu(面積%)/[MeAla-Phe-OtBu(面積%)+Cbz-Hph-MeAla-Phe-OtBu (面積%)]}×100
【0265】
調製した反応液にDMAP 74 mg (0.6 mmol)、5%炭酸ナトリウム水溶液3.0 mLを加えて、25℃で15分間撹拌を行った。撹拌を停止し、静置した後、有機層と水層を分層させ、水層を除去した。次いで有機層を10%硫酸水素ナトリウム水溶液 3 mL、5%炭酸ナトリウム水溶液 3 mL、常水3 mLで順次洗浄した。得られた有機層5 μuLをプロピルアミン100 μLに加えて、メタノール0.9 mLで希釈した。この溶液をLC/MS分析に付して、目的とするペプチドと残存C末端活性体のピーク面積パーセントを求めた。目的とするペプチドCbz-Hph-MeAla-Phe-OtBuは99.0%であり、残存C末端活性体由来のCbz-Hph-NHPrは検出されなかった。残った有機層を濃縮し、濃縮物618.4 mgを得た(実施例17のPhe-OtBuから収率88%)。MS(ESI):m/z 602.4 [M+H]+, 624.4 [M+Na]+。
【0266】
EDCおよびHOOBt由来のC末端活性体が残存していると、ペプチド伸長後のCbz脱保護反応がほとんど進行しないことが明らかになった。一方、残存C末端活性体が完全に除去されたペプチド溶液を原料として用いれば、Cbz脱保護反応がスムーズに進行し、ペプチド合成反応が可能となることを見出した。すなわち、実施例9の場合と同様に、本発明の方法を用いることにより、生成したペプチド化合物のN末端の保護基の還元的除去反応を、停滞させずに進行させることができることが判った。
【0267】
(実施例19) Cbz-Aib-D-Val-OBnの合成
(縮合反応)
D-Val-OBn TsOH塩 502 mg (1.3 mmol)、Cbz-Aib-OH 478 mg (2.0 mmol) を2-MeTHF 6.0 mLに縣濁し、ジイソプロピルエチルアミン 1.2 mL (6.9 mmol)を加えた。次いで25℃で50%T3P/2-メチルテトラヒドロフラン溶液 1.9 mL (3.3 mmol)を加えて、25℃で15時間撹拌しペプチド結合形成反応を行った。反応液5μLをとり、プロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積から変換率を求めた (変換率:100%)。
変換率(%)={Cbz-Aib-D-Val-OBn(面積%)/[D-Val-OBn(面積%)+Cbz-Aib-D-Val-OBn(面積%)]}×100
【0268】
(加水分解処理)
(1)アミン非添加の場合
上記調製したペプチドを含む反応溶液に5%炭酸カリウム水溶液 5.0 mLを加えて25℃で撹拌子にて30分間撹拌を行った。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。LC/MSのピーク面積値から、以下の計算式に従ってC末端活性体残存率を計算した。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0269】
(2)アミン添加の場合
上記調製したペプチドを含む反応溶液にDMAP 484 mg (4.0 mmol)と5%炭酸カリウム水溶液 5.0 mLを加えて25℃で撹拌子にて30分間撹拌を行った。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。LC/MSのピーク面積値から、以下の計算式に従ってC末端活性体残存率を計算した。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0270】
(後処理)
撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させて、水層を除去した。次いで有機層を10%硫酸水素カリウム水溶液 5 mLと5%炭酸カリウム水溶液2.5 mLで順次洗浄した。有機層5 μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈してLC/MS分析に付し、目的とするペプチドと残存C末端活性体(プロピルアミドへの変換体)のピーク面積値を求めた。残った有機層を濃縮し、ペプチドを得た。アミン非添加での加水分解により得られた濃縮物(ペプチド)は653.8 mgであった (収率116%:濃縮物には不純物(残存C末端活性体)を含むが、ペプチドのみを含むものとして計算した)。アミン添加での加水分解により得られた濃縮物は549.4 mgであった (収率97%)。MS(ESI):m/z 427.3 [M+H]+, 449.2 [M+Na]+
【0271】
【表11】
1)LCMSのピーク面積比率
【0272】
アルカリ水単独処理での加水分解では、残存C末端活性体が完全に加水分解されず、続く水性洗浄でも残存C末端活性体を十分に除去できなかったが、DMAPを添加して加水分解を行うと、残存C末端活性体の加水分解が完全に達成されて、残存C末端活性体を完全に除去できることを見出した。このとき、目的のジペプチドは純度98.6%で得られた(収率97%)。
【0273】
(実施例20) Cbz-Thr(tBu)-Phe-OtBuの合成
(縮合反応)
Phe-OtBu塩酸塩 300 mg (1.2 mmol)、Cbz-Thr(tBu)-OHジシクロヘキシルアミン塩 855 mg (1.7 mmol) 、HOBt 237 mg (1.8 mmol)を2-MeTHF 4.2 mL、アセトニトリル 0.9 mLに縣濁し、ジイソプロピルエチルアミン 813 μL (4.6 mmol)を加えた。次いで25℃でEDC 塩酸塩447 mg (2.3 mmol)を加えて、25℃で3時間撹拌しペプチド結合形成反応を行った。反応液5μLをとり、プロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積から変換率を求めた (変換率:100%)。
変換率(%)={Cbz-Thr(tBu)-Phe-OtBu(面積%)/[Phe-OtBu(面積%)+Cbz-Thr(tBu)-Phe-OtBu(面積%)]}×100
【0274】
(加水分解処理)
(1)アミン非添加の場合
上記調製したペプチドを含む反応溶液に5%炭酸カリウム水溶液 3.0 mLを加えて25℃で撹拌子にて5分間撹拌を行った。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。LC/MSのピーク面積値から、以下の計算式に従ってC末端活性体残存率を計算した。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0275】
(2)アミン添加の場合
上記調製したペプチドを含む反応溶液にDMAP 142 mg (1.2 mmol)と5%炭酸カリウム水溶液 3.0 mLを加えて25℃で撹拌子にて5分間撹拌を行った。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。LC/MSのピーク面積値から、以下の計算式に従ってC末端活性体残存率を計算した。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0276】
(後処理)
撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させて、水層を除去した。次いで有機層を10%硫酸水素カリウム水溶液 3 mL、5%炭酸カリウム水溶液3 mL、水1.5 mLで順次洗浄した。有機層5 μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈してLC/MS分析に付し、目的とするペプチドと残存C末端活性体(プロピルアミドへの変換体)のピーク面積値を求めた。残った有機層を濃縮し、ペプチドを得た。MS(ESI):m/z 401.2 [M-2tBu+H]+、457.2 [M-tBu+H]+、513.3 [M+H]+、535.3 [M+Na]+
【0277】
【表12】
1)LCMSのピーク面積比率
【0278】
アルカリ水単独処理での加水分解では、残存C末端活性体が完全に加水分解されず、続く水性洗浄でも残存C末端活性体を十分に除去できなかったが、DMAPを添加して加水分解を行うと、残存C末端活性体の加水分解が完全に達成されて、残存C末端活性体を完全に除去できることを見出した。このとき、目的のジペプチドは純度98.4%で得られた。
【0279】
(実施例21)Cbz-Leu-Thr(tBu)-Phe-OtBuの合成
(アミン非添加で加水分解処理して得られたジペプチドを使用したCbz脱保護反応)
実施例20でのアミン非添加条件で合成したCbz-Thr(tBu)-Phe-OtBuのMTBE/2-MeTHF溶液を2-メチルテトラヒドロフランに置換濃縮した。5%Pd/C (50%wet) 99 mgと水素ガスにて加水素分解反応に付した。25 ℃で1時間撹拌したが、反応は完結しなかった (変換率53%)。反応変換率は、反応液5μLをとり、アセトニトリル1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={Thr(tBu)-Phe-OtBu(面積%)/[Cbz-Thr(tBu)-Phe-OtBu(面積%)+Thr(tBu)-Phe-OtBu(面積%)]}×100
【0280】
(アミン添加で加水分解処理して得られたジペプチドを使用したCbz脱保護反応)
実施例20でのアミン添加条件で合成したCbz-Thr(tBu)-Phe-OtBuのMTBE/2-MeTHF溶液を2-メチルテトラヒドロフランに置換濃縮した。5%Pd/C (50%wet) 104 mgと水素ガスにて加水素分解反応に付した。25 ℃で1時間撹拌し、脱Cbz化体であるThr(tBu)-Phe-OtBuを得た (変換率100%)。反応変換率は、反応液5μLをとり、アセトニトリル1.0 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={Thr(tBu)-Phe-OtBu(面積%)/[Cbz-Thr(tBu)-Phe-OtBu(面積%)+Thr(tBu)-Phe-OtBu(面積%)]}×100
【0281】
(縮合反応)
アミン添加で加水分解処理して得られたジペプチドのCbz脱保護体反応液を、フィルターでろ過し、Pd/Cをろ去した後、濃縮乾固した。2-メチルテトラヒドロフラン5.0 mLに乾固物を溶解させ、Cbz-Leu-OH 382 mg (1.4 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン 814 μL (4.7 mmol)を加えた。次いで50%T3P/2-メチルテトラヒドロフラン溶液 1.37 mL (2.3 mmol)を加えて25℃で30分間撹拌し、ペプチド結合形成反応を行った(変換率:100%)。反応変換率は、反応液5μLをプロピルアミン100 μLに加えて、メタノール0.9 mLで希釈した後、LC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={Cbz-Leu-Thr(tBu)-Phe-OtBu(面積%)/[Thr(tBu)-Phe-OtBu(面積%)+Cbz-Leu-Thr(tBu)-Phe-OtBu(面積%)]}×100
【0282】
調製した反応液にDMAP 139 mg (1.1 mmol)、10%炭酸ナトリウム水溶液3.0 mLを加えて、25℃で5分間撹拌を行った。撹拌を停止し、静置した後、有機層と水層を分層させ、水層を除去した。次いで有機層を10%硫酸水素ナトリウム水溶液 3 mL×2、5%炭酸ナトリウム水溶液 3 mL、常水3 mLで順次洗浄した。得られた有機層5 μLをプロピルアミン100 μLに加えて、メタノール0.9 mLで希釈した。この溶液をLC/MS分析に付して、目的とするペプチドと残存C末端活性体のピーク面積パーセントを求めた。目的とするペプチドCbz-Leu-Thr(tBu)-Phe-OtBuは98.3%であり、残存C末端活性体由来のCbz-Leu-NHPrは検出されなかった。残った有機層を濃縮し、濃縮物638.0 mgを得た(実施例20のPhe-OtBuから収率88%)。MS (ESI):m/z 514.3 [M-2tBu+H]+、570.3 [M-tBu+H]+, 626.5 [M+H]+, 648.4 [M+Na]+
【0283】
EDCおよびHOBt由来のC末端活性体が残存していると、残存C末端活性体を完全に除去した場合に比べてCbz脱保護反応進行が遅いことが分かった。残存C末端活性体が完全に除去されたペプチド溶液を原料として用いれば、Cbz脱保護反応がスムーズに進行し、ペプチド合成反応が可能となることを見出した。すなわち、本発明の方法を用いることにより、実施例9、実施例18の場合と同様に、生成したペプチド化合物のN末端の保護基の還元的除去反応を、停滞させずに進行させることができることが判った。これにより、所望のアミノ酸配列を有する高純度のペプチド化合物を効率的に製造することができた。
【0284】
(実施例22) Cbz-Ile-Phe-OtBuの合成
(縮合反応)
Phe-OtBu塩酸塩 301 mg (1.2 mmol)、Cbz-Ile-OH 465 mg (1.8 mmol)をMTBE 3.6 mL、アセトニトリル 0.9 mLに縣濁し、ジイソプロピルエチルアミン 610 μL (3.5 mmol)を加えた。次いで25℃でBEP 479 mg (1.8 mmol)を加えて、25℃で45分間撹拌しペプチド結合形成反応を行った。反応液5μLをとり、プロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積から変換率を求めた (変換率:100%)。
変換率(%)={Cbz-Ile-Phe-OtBu(面積%)/[Phe-OtBu(面積%)+Cbz-Ile-Phe-OtBu(面積%)]}×100
【0285】
(加水分解処理)
(1)アミン非添加の場合
上記調製したペプチドを含む反応溶液に5%炭酸カリウム水溶液 3.0 mLを加えて25℃で撹拌子にて3分間撹拌を行った。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。LC/MSのピーク面積値から、以下の計算式に従ってC末端活性体残存率を計算した。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0286】
(2)アミン添加の場合
上記調製したペプチドを含む反応溶液にDMAP 139 mg (1.1 mmol)と5%炭酸カリウム水溶液 3.0 mLを加えて25℃で撹拌子にて3分間撹拌を行った。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。LC/MSのピーク面積値から、以下の計算式に従ってC末端活性体残存率を計算した。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0287】
(後処理)
撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させて、水層を除去した。次いで有機層を10%硫酸水素カリウム水溶液 3 mL、5%炭酸カリウム水溶液3 mLで順次洗浄した。2-MeTHF 2 mLを加えた後、水1.5 mLで洗浄した。有機層5 μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈してLC/MS分析に付し、目的とするペプチドと残存C末端活性体(プロピルアミドへの変換体)のピーク面積値を求めた。残った有機層を濃縮し、ペプチドを得た。MS (ESI):m/z 413.3 [M-tBu+H]+, 469.3 [M+H]+, 491.3 [M+Na]+
【0288】
【表13】
1)LCMSのピーク面積比率
【0289】
アルカリ水単独処理での加水分解では、残存C末端活性体が完全に加水分解されず、続く水性洗浄でも残存C末端活性体を十分に除去できなかったが、DMAPを添加して加水分解を行うと、残存C末端活性体の加水分解が完全に達成されて、残存C末端活性体を完全に除去できることを見出した。このとき、目的のジペプチドは純度96.3%で得られた。
【0290】
(実施例23) Cbz-Phe-MeGly-Phe-piperidine
(Boc脱保護反応)
Boc-Phe-piperidine1 334 mg (1.0 mmol) をジクロロメタン3.4 mLに溶解し、メタンスルホン酸 131μL (2.0 mmol) を加えた。35 ℃で3時間撹拌し、脱Boc反応を行った (変換率:100%)。反応変換率は反応液5 μLをとり、アセトニトリル1.0 mLで希釈した溶液をLCMS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から求めた。
変換率(%)={Phe-piperidine(面積%)/[Boc-Phe-piperidine(面積%)+Phe-piperidine(面積%)]}×100
【0291】
(縮合反応)
上記反応溶液に、ジイソプロピルエチルアミン 528 μL (3.0 mmol) を加えた後、溶媒を留去した。次いでアセトニトリル 1.0 mL、2-メチルテトラヒドロフラン3.4 mL、ジイソプロピルエチルアミン 528 μL (3.0 mmol)、Cbz-Phe-MeGly-OH2 505 mg (1.5 mmol)、HOOBt 256 mg (1.6 mmol) を加えた。25℃でEDC塩酸塩 388 mg (2.0 mmol)を加えて、25℃で1時間撹拌しペプチド結合形成反応を行った。反応液5μLをとり、プロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積から変換率を求めた (変換率:100%)
変換率(%)={Cbz-Phe-MeGly-Phe-piperidine(面積%)/[Phe-piperidine(面積%)+Cbz-Phe-MeGly-Phe-piperidine(面積%)]}×100
【0292】
上記調製した反応溶液にDMAP 128 mg (1.0 mmol)、5%炭酸カリウム水溶液3.5 mLを加え、25 ℃で撹拌子にて3分間撹拌を行った。撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させて水層を除去した。次いで有機層を10%硫酸カリウム水溶液3.5 mL×2、5%炭酸カリウム水溶液3.5 mLで希釈した。この溶液をLC/MS分析に付して、目的とするペプチドと残存C末端活性体のピーク面積パーセントを求めた。目的とするペプチドCbz-Phe-MeGly-Phe-piperidineは純度94.6%であり、残存C末端活性体由来のCbz-Phe-MeGly-NHPrは検出されなかった。残った有機層を濃縮し、濃縮物520.4 mgを得た (収率94%)。
【0293】
DMAPを添加して加水分解を行うと、ペプチドフラグメント由来の残存C末端活性体の分解・除去が完全に達成されて、目的のトリペプチドを94.6%の純度で得ることができた。(収率94%)
【0294】
1) J. Org. Chem., 2003, 68, 7505-7508.
2) Bull. Chem. Soc. Jpn., 2004, 77, 1187-1193.
【0295】
(実施例24) Cbz-Val-Phe-OtBuの合成
(縮合反応)
Phe-OtBu塩酸塩 200 mg (0.8 mmol)、Cbz-Val-OH 294 mg (1.2 mmol) を2-メチルテトラヒドロフラン2.4 mL、アセトニトリル0.6 mLに縣濁し、N-エチルモルホリン294 μL (2.3 mmol) を加えた。次いで、25℃でHATU 447 mg (1.2 mmol) を加えて、25℃下で2.5時間撹拌し、ペプチド結合形成反応を行った。反応液5 μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol) に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積から変換率を求めた(変換率:100%)。MS (ESI):m/z 399.3 [M-tBu+H]+、455.3 [M+H]+
変換率(%)={Cbz-Val-Phe-OtBu(面積%)/[Phe-OtBu(面積%)+Cbz-Val-Phe-OtBu(面積%)]}×100
【0296】
(加水分解処理)
(1)アミン非添加の場合
上記調製したペプチドを含む反応溶液に5%炭酸カリウム水溶液2.0 mLを加えて、25℃で撹拌子にて撹拌を行った。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol) に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から、以下の計算式に従ってC末端活性体残存率を計算した(下表)。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0297】
(2)アミン添加の場合
上記調製したペプチドを含む反応溶液に下表に示すアミン添加剤 (0.8 mmol) と5%炭酸カリウム水溶液2.0 mLを加えて、25℃で撹拌子にて撹拌を行った。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol) に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から、以下の計算式に従ってC末端活性体残存率を計算した(下表)。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド面積%)]}×100
【0298】
【表14】
【0299】
DIPEAの添加は、アミンを添加しないアルカリ水単独の場合よりもわずかに残存C末端活性体の加水分解を促したが、大きな効果は見られなかった。一方、DMAPおよびNMIの添加はDIPEAの添加よりも顕著に残存C末端活性体の加水分解を促進し、特にDMAP使用時は5分以内で残存C末端活性体が完全に加水分解されることが判明した。これにより、DIPEAのような窒素近傍に立体障害があるアミンと比較して、DMAPのような窒素近傍の立体障害が小さいアミンの方がより残存C末端活性体の加水分解を促進することが判明した。
【0300】
(実施例25) Cbz-Ile-Val-OBnの合成
(縮合反応)
Val-OBn 塩酸塩 300 mg (1.2 mmol)、Cbz-Ile-OH 495 mg (1.9 mmol) をシクロペンチルメチルエーテル 3.0 mL、アセトニトリル0.9 mLに縣濁し、ジイソプロピルエチルアミン 859 μL (4.9 mmol)を加えた。次いで25℃でHATU 705 mg (1.9 mmol)を加えて、25℃で1時間撹拌しペプチド結合形成反応を行った。反応液5μLをとり、プロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積から変換率を求めた (変換率:100%)。
変換率(%)={Cbz-Ile-Val-OBn(面積%)/[Val-OBn(面積%)+Cbz-Ile-Val-OBn(面積%)]}×100
【0301】
(加水分解処理)
(1)アミン非添加の場合
上記調製したペプチドを含む反応溶液に中性水3.0 mLを加えて25℃で撹拌子にて5分間撹拌を行った。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。LC/MSのピーク面積値から、以下の計算式に従ってC末端活性体残存率を計算した。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0302】
(2)アミン添加の場合
上記調製したペプチドを含む反応溶液にDMAP 91 mg (0.7 mmol)と中性水3.0 mLを加えて25℃で撹拌子にて5分間撹拌を行った。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。LC/MSのピーク面積値から、以下の計算式に従ってC末端活性体残存率を計算した。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0303】
(後処理)
撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させて、水層を除去した。次いで有機層を10%硫酸水素ナトリウム水溶液 3 mLと5%炭酸ナトリウム水溶液3 mL×2、常水1.5 mL×3で順次洗浄した。有機層5 μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈してLC/MS分析に付し、目的とするペプチドと残存C末端活性体(プロピルアミドへの変換体)のピーク面積値を求めた。残った有機層を濃縮し、ペプチドを得た。アミン非添加での加水分解により得られた濃縮物(ペプチド)は744 mgであった (収率132%:濃縮物には不純物(残存C末端活性体)を含むが、ペプチドのみを含むものとして計算した)。アミン添加での加水分解により得られた濃縮物は528 mgであった (収率94%)。MS(ESI):m/z 455.3 [M+H]+, 477.3 [M+Na]+
【0304】
【表15】
1)LCMSのピーク面積比率
【0305】
中性水単独処理での加水分解では、残存C末端活性体が完全に加水分解されず、続く水性洗浄でも残存C末端活性体を除去できなかったが、DMAPを添加して加水分解を行うと、残存C末端活性体の加水分解が完全に達成されて、残存C末端活性体の除去も完全にできることを見出した。このとき、目的のジペプチドが99.5%の純度で得られた(収率94%)。
【0306】
(実施例26) Cbz-MeAla-Phe-OtBuの合成
(縮合反応)
Phe-OtBu 塩酸塩 200 mg (0.8 mmol)、Cbz-MeAla-OH 260 mg (1.2 mmol) を2-メチルテトラヒドロフラン2.4 mL、アセトニトリル0.6 mLに縣濁し、ジイソプロピルエチルアミン 271 μL (1.6 mmol)を加えた。次いで25℃でDMT-MM-n水和物 (4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドn水和物) 265 mg (0.8 mmol, 13w%含水)を加えて、25℃で1時間撹拌した後、DMT-MM-n水和物119 mg (0.4 mmol, 13w%含水)を加えて、25℃で1時間撹拌し、ペプチド結合形成反応を行った。反応液5μLをとり、プロピルアミン100 μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。本溶液をLC/MS分析に付し、LC/MSのピーク面積から変換率を求めた (変換率:100%)。
変換率(%)={Cbz-MeAla-Phe-OtBu(面積%)/[Phe-OtBu(面積%)+Cbz-MeAla-Phe-OtBu(面積%)]}×100
【0307】
(加水分解処理)
(1)アミン非添加の場合
上記調製したペプチドを含む反応溶液に5%炭酸カリウム水溶液2.0 mLを加えて25℃で撹拌子にて10分間撹拌を行った。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。LC/MSのピーク面積値から、以下の計算式に従ってC末端活性体残存率を計算した。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0308】
(2)アミン添加の場合
上記調製したペプチドを含む反応溶液にDMAP 96 mg (0.8 mmol)と5%炭酸カリウム水溶液2.0 mLを加えて25℃で撹拌子にて10分間撹拌を行った。撹拌を停止し、有機層と水層を分層させた。有機層5μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈した。LC/MSのピーク面積値から、以下の計算式に従ってC末端活性体残存率を計算した。
C末端活性体残存率(%)={プロピルアミド(面積%)/[プロピルアミド(面積%)+ジペプチド(面積%)]}×100
【0309】
(後処理)
撹拌を停止した後、静置し、有機層と水層を分層させて、水層を除去した。次いで有機層を10%硫酸水素カリウム水溶液 2 mLと5%炭酸カリウム水溶液2 mL、常水1 mL×2で順次洗浄した。有機層5 μLをとり、プロピルアミン100μL (1.2 mmol)に加えて、残存するC末端活性体をプロピルアミドへ変換させた後、メタノール0.9 mLで希釈してLC/MS分析に付し、目的とするペプチドと残存C末端活性体(プロピルアミドへの変換体)のピーク面積値を求めた。残った有機層を濃縮し、ペプチドを得た。アミン非添加での加水分解により得られた濃縮物(ペプチド)は387 mgであった (収率114%:濃縮物には不純物(残存C末端活性体)を含むが、ペプチドのみを含むものとして計算した)。アミン添加での加水分解により得られた濃縮物は336 mgであった (収率98%)。MS(ESI):m/z 385.2 [M-tBu+H]+, 441.3 [M+H]+, 463.3 [M+Na]+
【0310】
【表16】
1)LCMSのピーク面積比率
【0311】
縮合剤としてDMT-MMを用いた場合、アルカリ水単独処理での加水分解では、残存C末端活性体が完全に加水分解されず、続く水性洗浄でも残存C末端活性体を除去できなかったが、DMAPを添加して加水分解を行うと、残存C末端活性体の加水分解が完全に達成されて、残存C末端活性体の除去も完全にできることを見出した。このとき、目的のジペプチドが98.6%の純度で得られた(収率98%)。含水溶媒中でも使用可能な縮合剤であるDMT-MMから生成するC末端活性体は、比較的加水分解を受けにくいことが知られている。しかし、アミン添加剤を使用すれば、DMT-MMを用いて調製された残存C末端活性体であっても、短時間かつ一度の処理で完全に加水分解し、続く水性洗浄で完全に除去できることを見出した。
【0312】
参考例1: MeAsp(tBu)-piperidineの合成法
(縮合反応)
Cbz-MeAsp(tBu)-OHジシクロへキシルアミン塩 10.2 g (19.6 mmol)を酢酸エチル100 mLに縣濁し、ジイソプロピルエチルアミン 20.6 mL (118 mmol)、ピペリジン 9.7 mL (98.0 mmol)を加えた。3~10℃で50%T3P/酢酸エチル溶液 35.0 mL (58.9 mmol)を45分かけて滴下した。滴下終了後、反応液5 μLをとり、メタノール1.0 mLで希釈した溶液をLCMS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から反応変換率を求めた (変換率:100%)。
変換率(%)={Cbz-MeAsp(tBu)-piperidine(面積%)/[Cbz-MeAsp(tBu)-OH(面積%)+Cbz-MeAsp(tBu)-piperidine (面積%)]}×100
【0313】
反応液を10%硫酸水素カリウム水溶液 100 mL、10%炭酸カリウム 100 mLで洗浄した後、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過、濃縮した。MS (ESI) m/z 349.1 [M-tBu+H]+、405.2 [M+H]+、427.3 [M+Na]+
【0314】
(Cbz脱保護反応)
上記濃縮液をシクロペンチルメチルエーテル100 mLに溶解し、5%Pd/C (50% wet) 2.0 gと水素ガスにて加水素分解反応に付した。室温で5時間撹拌子、目的物であるMeAsp(tBu)-piperidineを得た(変換率100%)。反応変換率は反応液5 μLをとり、アセトニトリル1.0 mLで希釈した溶液をLCMS分析に付し、LC/MSのピーク面積値から反応変換率を求めた。
変換率(%)={MeAsp(tBu)-piperidine(面積%)/[Cbz-MeAsp(tBu)-piperidine(面積%)+MeAsp(tBu)-piperidine(面積%)]}×100
【0315】
反応液をフィルターでろ過した後、ろ液を濃縮し濃縮物5.69 gを得た(収率 quant.)。本濃縮物をLC/MS分析に付し、目的とするMeAsp(tBu)-piperidineのピーク面積パーセントを求めた(99.2面積%)。MS (ESI):m/z 215.1 [M-tBu+H]+、271.1 [M+H]+
【産業上の利用可能性】
【0316】
本発明は、ペプチド化合物を製造するに際し、縮合反応後に残存したC末端活性体を効率的に除去することによって、カラム精製することなく、高純度のペプチド化合物を製造することができる。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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