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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-10
(45)【発行日】2025-07-18
(54)【発明の名称】埋設管
(51)【国際特許分類】
   H02G 9/06 20060101AFI20250711BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20250711BHJP
   F16L 9/147 20060101ALI20250711BHJP
【FI】
H02G9/06
H02G1/06
F16L9/147
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023542055
(86)(22)【出願日】2021-08-16
(86)【国際出願番号】 JP2021029949
(87)【国際公開番号】W WO2023021566
(87)【国際公開日】2023-02-23
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】NTT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】西山 大策
(72)【発明者】
【氏名】日吉 健至
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 陽
(72)【発明者】
【氏名】板坂 浩二
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-536126(JP,A)
【文献】特開2002-199531(JP,A)
【文献】特開2014-062586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 9/00-9/12
H02G 1/06
F16L 9/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを収容可能な第1の内管と、
前記第1の内管を収容する第2の内管と、
前記第2の内管を収容する外管と、
を備え、
前記第2の内管は、前記第1の内管の中心軸を中心として、前記第1の内管及び前記外管に対し回動可能であ
前記第1の内管と前記第2の内管との間に、前記第2の内管が前記第1の内管に対して回動することを容易にする第1の回動層を更に備える、
埋設管。
【請求項2】
前記第1の回動層には、コーティング材及びベアリングの少なくともいずれかが含まれる、請求項に記載の埋設管。
【請求項3】
ケーブルを収容可能な第1の内管と、
前記第1の内管を収容する第2の内管と、
前記第2の内管を収容する外管と、
を備え、
前記第2の内管は、前記第1の内管の中心軸を中心として、前記第1の内管及び前記外管に対し回動可能であり、
前記第2の内管と前記外管との間に、前記第2の内管が前記外管に対して回動することを容易にする第2の回動層を更に備える、
設管。
【請求項4】
前記第2の回動層には、コーティング材及びベアリングの少なくともいずれかが含まれる、請求項に記載の埋設管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、埋設管に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ及び送電線等の各種ケーブルを地中に埋設する際に、ケーブルを収容する埋設管を用いることが知られている。埋設管を道路の下等の地中に埋設して埋設管路を形成した場合、地表から埋設管までの間に十分な土被りを確保できない浅層区間では、道路工事等によりバックホウ、ブレーカ、又はカッター等の掘削機械等から埋設管路が損傷を受けるリスクが高い。
【0003】
浅層区間における埋設管路の損傷を防ぐために、埋設管が埋まっていることを示す標識シート、又は、重機の侵入を防ぐための鉄板、セラミック板、若しくは、金属板等を地表と埋設管の間に設置することが知られている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-355758号公報
【文献】特開2007-143355号公報
【文献】特開2015-180166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の構成では、埋設管の上方に相応のスペースが必要であるが、地形又は地層等の構造によっては、地表から埋設管までの離隔の確保が困難なため、埋設管路を適切に防護することができない場合がある。
【0006】
本開示の目的は、地表から埋設管までの離隔の確保が困難な場合であっても、埋設管路を適切に防護することが可能な埋設管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る埋設管は、ケーブルを収容可能な第1の内管と、前記第1の内管を収容する第2の内管と、前記第2の内管を収容する外管と、を備え、前記第2の内管は、前記第1の内管の中心軸を中心として、前記第1の内管及び前記外管に対し回動可能であ前記第1の内管と前記第2の内管との間に、前記第2の内管が前記第1の内管に対して回動することを容易にする第1の回動層を更に備える
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、地表から埋設管までの離隔の確保が困難な場合であっても、埋設管路を適切に防護することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る埋設管の構成例を示す断面図である。
図2図1の埋設管の側面図である。
図3図1の埋設管の実施例を示す断面図である。
図4図1の埋設管がカッターからケーブルを防護する様子を模式的に示す図である。
図5図1の埋設管がブレーカからケーブルを防護する様子を模式的に示す図である。
図6】一実施形態に係る埋設管の他の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。各図面中、同一の構成又は機能を有する部分には、同一の符号を付している。本実施形態の説明において、同一の部分については、重複する説明を適宜省略又は簡略化する場合がある。
【0011】
本開示は、埋設管1(1a,1b,1c)内に埋設管路を防護するための構成を備えることで、従来の構成よりも防護スペースを低減し、路面からの離隔(深度)の確保が困難な場合でも埋設管路を防護することを可能にする。図1は、一実施形態に係る埋設管1(1a)の構成例を示す断面図である。図2は、図1の埋設管1aの側面図である。埋設管1aは、地中に埋設される、例えば、光ファイバ及び送電線等の各種のケーブル9を防護する。埋設管1aは、外管10、内管11,12、及び回動層21,22を備える。
【0012】
第1の内管としての内管12は、ケーブル9を収容可能な管状部材である。第2の内管としての内管11は、内管12を収容する管状部材である。内管11,12は、例えば、鋼等の硬質な素材により構成されてもよい。外管10は、内管11,12を収容する管状部材である。外管10は、塩化ビニール樹脂、又は鋼を含む金属等の材料により構成されてもよい。外管10は、継手等の部材により地中において固定されてもよい。図1の例では、内管11,12及び外管10はいずれも共通の中心軸L(図2参照)を有する同心円状の断面を有する。このように、ケーブル9を収容する内管12が内管11及び外管10に収容されるため、埋設管路は、多層的な構造によりバックホウ、ブレーカ、又はカッター等の掘削機械等の侵入による損傷から防護される。
【0013】
内管11は、内管11,12の中心軸Lを中心として(回転軸として)外管10に対して回動可能である。したがって、仮に掘削機械等の刃先が外管10に侵入したとしても、内管11が外管10に対して回動して刃先を逸らすことにより、刃先が内管11及びその内部を切断したり、刃先の衝撃が内管11の内部に直接伝わったりすることを防ぐことができる。このように、埋設管1aは、内管11が外管10に対して回動可能な構成を備えるため、仮に掘削機械等の刃先が外管10に侵入したとしても、埋設管路及び埋設管路に配設されたケーブル9を防護することができる。
【0014】
さらに、内管11は、内管12の中心軸Lを中心として(回転軸として)内管12に対して回動可能である。したがって、掘削機械等の刃先が外管10に侵入して内管11が回動したとしても、それに伴って内管12が回動することを抑制することができる。よって、仮に内管11が回動したとしても、内管11,12の間で回転力を吸収することにより、内管12が回動して内管12に収容されたケーブル9がねじれて破損することを防ぐことが可能である。
【0015】
第2の回動層としての回動層21は、内管11と外管10との間に設けられ、内管11が外管10に対して回動することを容易にする層である。第1の回動層としての回動層22は、内管12と内管11との間に設けられ、内管11が内管12に対して回動することを容易にする層である。回動層21,22は、外管10及び内管11の間、並びに内管11,12の間の摩擦を低減させる任意の層である。例えば、回動層21は、外管10及び内管11の少なくともいずれかの表面に塗布された、フッ素、ワックス、又はシリコン等の滑りやすいコーティング材としてもよい。同様に、回動層22は内管11,12の少なくともいずれかの表面に塗布された、フッ素、ワックス、又はシリコン等の滑りやすいコーティング材としてもよい。あるいは、回動層21,22は、例えば、ボールベアリング(ベアリング)等の機械的な構造を備えることにより、回動を容易にしてもよい。また、回動層21,22を設ける代わりに、外管10、内管11,12を他の部材と接触した場合における摩擦が小さい素材により構成してもよい。
【0016】
図3は、図1の埋設管1の実施例を示す断面図である。図3は、回動層21a,22aがボールベアリングにより構成された埋設管1bの例を示している。埋設管1bの回動層21aは、外輪211、複数の球体212、内輪213、及び保持部214を備える。外輪211は、例えば、外管10の内表面に固定され、球体212が接触して回転可能な溝部を内面側に有する。内輪213は、例えば、内管11の外表面に固定され、球体212が接触して回転可能な溝部を外面側に有する。保持部214は、複数の球体212が回転できるように、各球体212の相対的な位置関係を保持する。内管11に対して、中心軸Lを中心とする外管10を基準とした相対的な回転力が加わった場合、外管10の内表面に固定された外輪211と内管11の外表面に固定された内輪213との間で、球体212が回転して、外管10に対する内管11の回動を案内する。このように、埋設管1bにおいては、外輪211と内輪213との間で、保持部214により相対的な位置関係が保持された複数の球体212が回転するため、内輪213が外輪211に対して回動する際の摩擦が低減される。したがって、埋設管1bは、外管10と内管11との間にボールベアリングにより構成された回動層21aを備えることで、内管11が外管10に対して回動することが容易になる。よって、埋設管1bは、埋設管路及び埋設管路に配設されたケーブル9を効果的に防護することができる。
【0017】
埋設管1bの回動層22aは、外輪221、球体222、内輪223、及び保持部224を備える。外輪221は、例えば、内管11の内表面に固定され、球体222が接触して回転可能な溝部を内面側に有する。内輪223は、例えば、内管12の外表面に固定され、球体222が接触して回転可能な溝部を外面側に有する。保持部224は、複数の球体222が回転できるように、各球体222の相対的な位置関係を保持する。回動層21aと同様に、内管11に対して、中心軸Lを中心とする内管12を基準とした相対的な回転力が加わった場合、球体222の回転により外輪221が内輪223に対して回動する際の摩擦が低減される。したがって、埋設管1bは、内管11,12の間にボールベアリングにより構成された回動層22aを備えることで、内管11が内管12に対して回動することが容易になる。よって、埋設管1bは、仮に外管10が回動したとしても、回動層22aにおいて回転力を吸収することにより、内管12に収容されたケーブル9がねじれて破損することを効果的に防ぐことが可能である。
【0018】
図4は、図1の埋設管1aがカッターCからケーブル9を防護する様子を模式的に示す図である。図4の例では、図面上で時計回りに回転するカッターCが埋設管1aに近接して、外管10に対し回転力D1を加えている。これに伴い、内管11が外管10に対して反時計回りに回動することにより、カッターCの刃先が接触するポイントを逸らして、内管11に侵入することを防ぐ。したがって、埋設管1aによれば、内管11の内部が破損することを防ぐことが可能である。また、埋設管1aは、内管11の内部に内管11に対して中心軸Lを中心に回動可能な、ケーブル9を収容するための内管12を備えるため、仮に内管11が回動したとしても、内管12の回動を抑制することができる。このように、埋設管1aは、互いに回動可能な内管11,12の多重構造を有するため、ケーブル9を収容する内管12が回動してケーブル9がねじれるのを抑制することができる。
【0019】
図5は、図1の埋設管1がブレーカBからケーブル9を防護する様子を模式的に示す図である。図5の例では、図面上でブレーカBの刃先が埋設管1aの右上上部から外管10を突き破り、回動層21の内部にまで侵入して、下方に回転力D1を加えている。これに伴い、回動層21には時計回りの回転力D2が生じ、内管11にも時計回りの回転力D3が生じている。ここで、内管11,12の間には、内管11が内管12に対して回動することを容易にする回動層22が設けられており、回動層22は、回転力D3が内管12へ伝わることを抑制する。図5において、このような回動層22の作用が、回転力D3を相殺する力D4として模式的に示されている。回動層22による抑制の結果、内管12に対して加わる回転力D5は、仮に存在するとしても、極めて小さくなる。したがって、埋設管1aによれば、ケーブル9がねじれるのを抑制することができる。また、外管10内に複数の内管11,12を設けることで、掘削機械等の刃先が埋設管路に至るには、多数の外管10及び内管11,12を通過しなければならなくなる。したがって、埋設管路及び埋設管路に配設されたケーブル9をより効果的に防護することができる。
【0020】
埋設管1a,1bは、外管10の内部に互いに回動可能な2つの内管11,12を備えるが、埋設管1は、3つ以上の互いに回動可能な内管の多層構造を有してもよい。図6は、3つの互いに回動可能な内管11~13を備えた埋設管1cの構成例を示す断面図である。埋設管1cは、埋設管1aの構成に加えて、内管13及び回動層23を更に備える。内管13は、内管11,12と同様に、例えば、鋼等の硬質な素材により構成されてもよい。内管13は、ケーブル9を収容可能である。回動層23は、内管12,13の間に設けられ、内管12が内管13に対して回動することを容易にする層である。回動層23は、回動層21,22と同様に、内管12,13の少なくともいずれかの表面に塗布された滑りやすいコーティング材、又は、ボールベアリング等としてもよい。回動層23を設ける代わりに、内管12,13を他の部材と接触した場合における摩擦が小さい素材により構成してもよい。
【0021】
図6のように、埋設管1cが3つ以上の互いに回動可能な内管11~13の多層構造を有する場合、仮に内管11が回動したとしても、ケーブル9を収容する内管13にまで伝わる回転力を更に低減することができる。回動層21~23を設けることで回転力が吸収され、内管13に収容されたケーブル9がねじれて破損することを更に効果的に防ぐことが可能である。また、掘削機械等の刃先が埋設管路に至るには、外管10及び多数の内管11~13を通過しなければならないため、埋設管路及び埋設管路に配設されたケーブル9を更に効果的に防護することができる。
【0022】
以上のように、本開示に係る埋設管1(1a,1b,1c)は、その内部に埋設管路を防護するための構成を備えるため、従来の構成よりも防護スペースを低減し、路面からの離隔(深度)の確保が困難な場合でも埋設管路を防護することが可能である。
【0023】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【符号の説明】
【0024】
1a,1b,1c 埋設管
9 ケーブル
10 外管
11~13 内管
21~23 回動層
211,221 外輪
212,222 球体
213,223 内輪
214,224 保持部
L 中心軸
B ブレーカ
C カッター
図1
図2
図3
図4
図5
図6