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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-10
(45)【発行日】2025-07-18
(54)【発明の名称】光回路
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/50 20130101AFI20250711BHJP
【FI】
H04B10/50
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023565744
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2021044968
(87)【国際公開番号】W WO2023105642
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2024-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】NTT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】進藤 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】陳 明晨
(72)【発明者】
【氏名】小菅 祥平
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-193535(JP,A)
【文献】特開2019-33380(JP,A)
【文献】KANAZAWA, Shigeru et al.,56-Gbaud 4-PAM (112-Gbit/s) operation of flip-chip interconnection lumped-electrode EADFB laser modu,2016 Optical Fiber Communications Conference and Exhibition (OFC),IEEE,2016年03月20日,pages.1-3
【文献】KANAZAWA, Shigeru et al.,High Output Power SOA Assisted Extended Reach EADFB Laser (AXEL) TOSA for 400-Gbit/s 40-km Fiber-Amp,Journal of Lightwave Technology,IEEE,2020年10月29日,Vol.39, Issue.4,pages.1089-1095
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの高周波電気信号を受ける配線板と、
光変調器を含む光源チップと、
前記配線板および前記光源チップを搭載するサブキャリアと、
第1の面に、前記配線板の信号線および前記光源チップの変調入力端子との間を接続する伝送路を有し、当該伝送路の変調入力側の一端に終端抵抗器を有する、接続基板と
を備え、
前記接続基板に、前記終端抵抗器に直列にグランドへ接続されたキャパシタをさらに備えた光回路。
【請求項2】
前記キャパシタは、高インピーダンス線路を介して、前記終端抵抗器と同一の前記第1の面に搭載されている請求項1に記載の光回路。
【請求項3】
前記キャパシタは、前記終端抵抗器から前記接続基板の側面を経て前記第1の面と反対側の第2の面に延びた高インピーダンス線路を介して接続され、前記第2の面に搭載されている請求項1に記載の光回路。
【請求項4】
前記光源チップはInP基板を用いており、
前記接続基板の材質は窒化アルミであって、厚みが0.15mm以上である請求項1乃至3いずれかに記載の光回路。
【請求項5】
前記光源チップは、電界吸収型光変調器またはマッハツェンダー干渉型光変調器である請求項1乃至4いずれかに記載の光回路。
【請求項6】
前記信号線と前記伝送路との間、および、前記伝送路と前記変調入力端子との間は、それぞれバンプにより接続されている請求項1乃至5いずれかに記載の光回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークで使用される装置に関する。具体的には、高速イーサネット等に利用可能な光回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のモバイル、クラウドサービスの普及に伴う旺盛な帯域需要に対応するため、ネットワークの高速大容量化の検討が活発である。無線通信は5Gの時代を迎え、広く利用されているイーサネットの伝送速度は既に400Gbpsが実用化され、Beyond400Gイーサネットも検討されている。光ファイバ伝送のための光送受信モジュールなどの光回路では、性能向上、小型化およびコストダウンが求められている。
【0003】
イーサネット規格では、小型化されたトランシーバ(光送受信器)が標準化されており、光変調器を含む光回路が重要なデバイスとなっている。光送信器を高速伝送に適合させるため、高速動作に適した実装構造として、光チップおよび高周波信号基板を含むフリップチップ実装が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】S. kanazawa et. al., “Flip-Chip Interconnection Lumped-Electrode EADFB Laser for 100-Gb/s/λ Transmitter,” IEEE Photon. Technol. Lett., vol. 27, no. 16, pp. 1699-1701, 2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術のフリップチップ実装を利用した、光変調器を含む光回路では、バイアス電圧印可のために必要なキャパシタの実装が、光回路の小型化や信頼性の上で問題であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの実施態様は、外部からの高周波電気信号を受ける配線板と、光変調器を含む光源チップと、前記配線板および前記光源チップを搭載するサブキャリアと、第1の面に、前記配線板の信号線および前記光源チップの変調入力端子との間を接続する伝送路を有し、当該伝送路の変調入力側の一端に終端抵抗器を有する、接続基板とを備え、前記接続基板に、前記終端抵抗器に直列にグランドへ接続されたキャパシタをさらに備えた光回路である。
【発明の効果】
【0007】
高速動作に適し、小型化および高信頼性化された光変調器を含む光回路を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】光変調光源チップを含む従来技術のサブアセンブリの構成を示す図である。
図2】光変調光源チップを含む実施例1の光回路の構成を示す図である。
図3】本開示の光回路における接続基板の構成をより詳細に説明する図である。
図4】実施例1と従来技術の光回路で変調周波数特性を比較して示した図である。
図5】異なる基板厚さの接続基板を持つ光回路の変調周波数特性を示す図である。
図6】光変調器チップと別の接続基板を含む実施例2の光回路を示す図である。
図7】実施例2と従来技術の光回路で変調周波数特性を比較して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の光回路は、光変調器を含む光チップ、高周波電気信号を供給する配線板、これら間を接続する接続基板を備えた光回路で、バイアス電圧を遮断するためのキャパシタの新規な実装形態を提供する。以下の説明では、まず従来技術のフリップチップ実装の構造による光回路における、キャパシタの実装上の問題について述べる。次に、本開示の光変調器を含む光回路における、キャパシタ実装のための新規な構成について説明する。
【0010】
図1は、光変調光源チップを含む、従来技術の光回路の構成を示す図である。図1の光回路1は、イーサネットにおいて標準化されているトランシーバに搭載可能なモジュール形態の部品であって、電界吸収型光変調器集積レーザ(EML: Electro-absorption Modulator integrated with DFB Laser)である光変調光源チップ40を含む。サブキャリア10の上に、配線板20および光変調光源チップ40が搭載され、配線板20および光変調光源チップ40は接続基板30によって接続されている。
【0011】
図1では、(a)に光回路1の全体の上面図(x-y面)を、(c)に光回路1をC-C´線で切った断面図(x-z面)を、(b)に光回路1に搭載されている接続基板30の裏面(x-y面)を示した。図1の(a)は、光変調光源チップ40との接続形態を示すため、接続基板30との間にある4つの金バンプおよび接続基板30の外形(2点鎖線)のみ示している。実際の光回路1では、図1の(a)の上面図における接続基板30は、伝送路の形式に応じて、基板面またはグランド面だけが見えていることに注意されたい。
【0012】
光変調光源チップ40は、光半導体に構成された光導波路構造42を利用したレーザ部と、電界吸収型光変調器部を備えている。変調信号である高周波電気信号が、配線板20、接続基板30を経由して、光変調光源チップ40の変調電極41に対して供給される。配線板20は、基板上に構成された信号線21およびその両側のグランド面22a、22bを含み、伝送路を構成する。配線板20は、外部からの高周波電気信号を受け入れ、損失無く伝送する、高周波配線板として機能する。
【0013】
図1の(b)を参照すれば、接続基板30は、金バンプによって接続される側の面(接続面)上に、伝送路31およびその周囲を囲むグランド面35を含む。伝送路としてコプレーナ線路を用いる場合、接続面の反対側、すなわち図1の(a)の上面は、基板材料がそのまま現れた状態となる。伝送路としてグランデッドコプレーナ線路を用いる場合、接続面の反対側は、グランド面となる。
【0014】
伝送路31の一方の端部で、金バンプ32aを介して、配線板20の信号線21に接続される。また、伝送路31の他方の端部で、金バンプ32bを介して、光変調光源チップ40の変調入力電極41に接続される。高周波電気信号である変調信号は、図1の(a)の上方の、光回路1の外部から、配線板20の信号線21および接続基板30の伝送路31を経由して、矢印の向きで、変調入力電極41へ入力される。また、配線板20および接続基板30のグランド面間も、金バンプ32aの両側において、2つの金バンプによって電気的・機構的に接続される。向かい合わせの接続基板30とバンプを利用して、異なる2つの基板間20、40を電気的・構造的に接続するこのような実装形態は、フリップチップ実装として知られている。接続基板30を用いたフリップチップ実装による構造は、配線板20と光変調光源チップ40との間の接続にワイヤを必要としないため、光変調特性の広帯域化に役立つ。
【0015】
しかしながら、図1の光変調光源チップ40を含む従来技術の光回路では、効率的な動作のために本来は必要なバイアス電圧遮断用のキャパシタが省略され、簡素化された回路構成となっていた。図1の(b)を再び参照すれば、接続基板30の伝送路31の変調入力電極41側の端部には、変調入力端子に対して並列回路となるように、グランド面35との間に終端抵抗器34が実装されている。通常、光変調光源チップ40の変調入力端子41にはバイアス電圧を印可する必要がある。光変調光源チップ40にバイアス電圧を印可すると、終端抵抗器34にも同時にバイアス電圧が印可されるため、終端抵抗器34を通って流れる直流電流分だけ、光回路の消費電力は定常的に増えてしまう。
【0016】
通常は、電気回路におけるバイアス電圧による直流電力消費を抑えるためには、直流遮断用のキャパシタによってバイアス経路を直流的に遮断すれば良い。具体的には、サブキャリア10上にキャパシタを搭載して終端抵抗器34とキャパシタをワイヤボンディング等で電気的に接続し、終端抵抗器34に流れる電流を遮断できる。しかしながら、光変調光源チップを含む光回路においては既に非常に小型化が進んでおり、サブキャリア10上での空きスペースは既に限られている。キャパシタを搭載するための場所をサブキャリア上に確保すれば、サブアセンブリとしての光回路のサイズが増えてしまい、光回路の小型化の要請に逆行することになる。また、キャパシタとの接続のために接続基板30に直接ワイヤボンディングを行う工程は、ボンディングツールによる物理的な衝撃によって、接続基板30と金バンプ32a、32bとの接続が破断する問題が生じる。
【0017】
以下に説明する本開示の光回路は、上述の光変調回路における直流消費電力を抑えるとともに、小型化と信頼性の要請も同時に満たす、新規なキャパシタの実装構造を提供する。本開示の光回路では、直流遮断用のキャパシタを接続基板上に搭載する。この構成により、キャパシタおよび終端抵抗器の間をワイヤボンディング等で接続する必要がなく、金バンプを介した電気接続の破損も起こらない。
【0018】
図2は、光変調光源チップを含む本開示の光回路の構成を示す図である。図2の光回路100は、例えばイーサネットのトランシーバ、光送信装置などの基板上に搭載可能なサブアセンブリの形態を持っている。図2では、(a)に光回路100全体の上面図(x-y面)を、(c)に光回路100をC-C´線で切った断面図(x-z面)を、(b)に光回路上に搭載されている接続基板50の裏面(x-y面)を示した。光回路100は、図1に示した従来技術の光回路1と同様に、サブキャリア10の上に、配線板20および光変調光源チップ40が搭載されている。配線板20および光変調光源チップ40が、接続基板50によって接続され、光回路100の外部から高周波電気信号が変調入力電極41へ入力される点も、光回路1と同様である。また配線板20、接続基板50を経由して光源チップ40へ至る伝送路(信号線)およびグランドにおける相互の接続形態も、図1と同じである。
【0019】
図1に示した従来技術構造の光回路1との相違点は、図2の(b)および(c)に示した接続基板50の構成にある。接続基板50は、金バンプ52a、52b、53によって2つの基板20、40と接続される第1の面に、終端抵抗器54を備える。終端抵抗器43の一方の電極は、伝送路51の変調入力電極41側の端部に接続されている。終端抵抗器54の他方の電極は、高インピーダンス線路55aに接続されている。高インピーダンス線路55aは、接続基板50の側面を経て、第1の面の裏面である第2の面上に続いており形成されており、キャパシタ57に接続されている。
【0020】
図3は、本開示の光回路における接続基板の構成をより詳細に説明する図である。図3の(a)は、接続基板50の第2の面の上面図(x-y面)を、(b)は接続基板50の第1の面(接続面)(x-y面)を、(c)は接続基板の短い辺の側面を(y-z面)示している。図3の(b)を参照すれば、伝送路51の変調入力電極41側の端部において終端抵抗器54の一方の電極が接続されている。終端抵抗器54の他方の電極には、伝送路51と比べ両側のグランド面までの距離が大きくなっている高インピーダンス線路55aが接続されている。高インピーダンス線路55aは、(c)に示した側面で高インピーダンス線路55bへ、さらに(b)に示した第2の面の高インピーダンス線路55cへと延びてキャパシタの電極パッドと繋がっている。接続基板50の第2の面上にキャパシタ57が搭載されており、一方の電極パッドはグランドに接続されている。
【0021】
上述の接続基板50において、終端抵抗器54、高インピーダンス線路55a~55c、キャパシタ57は直列に接続されており、電気回路として、この直列回路が変調入力端子とグランドとの間に挿入されている。この構成とすることで、光変調光源チップ40にバイアス電圧を印可した際に、終端抵抗器54に直列なキャパシタ57によって、電流を遮断することが可能となる。終端抵抗器を流れるバイアス電流による直流電力消費を抑えることができる。また、接続基板50上にキャパシタ57を搭載するため、キャパシタ57および終端抵抗器54をワイヤボンディング等で接続する必要が無い。ボインディングツールによる衝撃で、金バンプを介した形成された電気接続部の破損も起こらない。
【0022】
上述の接続基板の構成のさらなる特徴は、終端抵抗器54とキャパシタ57の間に高インピーダンス線路55a~55cが配置されているところである。高インピーダンス線路55a~55cは、グランド面との距離が大きくとられており、伝送路51および光回路100の特性インピーダンスよりも高いインピーダンスを持つ。したがって、インダクティブな線路とキャパシタ57との間で直列共振を生じ、これにより変調周波数応答特性に所望のピーキングを発生させることができる。キャパシタ57および高インピーダンス線路55a~55cは、接続基板50において三次元的に配置が可能となり、光回路の小型化にも寄与できる。
【0023】
したがって本開示の光回路は、外部からの高周波電気信号を受ける配線板と、光変調器を含む光源チップと、前記配線板および前記光源チップを搭載するサブキャリアと、第1の面に、前記配線板の信号線および前記光源チップの変調入力端子との間を接続する伝送路を有し、当該伝送路の変調入力側の一端に終端抵抗器を有する、接続基板とを備え、前記接続基板に、前記終端抵抗器に直列にグランドへ接続されたキャパシタをさらに備えた光回路として実施できる。
【0024】
接続基板50は、一般的に変調光源チップ40で用いられるInP基板の熱膨張係数と同じ値を有する窒化アルミを用いている。このため、環境温度変動によって生じる応力がチップの接続部に掛からない構造となっている。以下、本開示の光回路の実施例1として、具体的な構成例を示す。
【実施例1】
【0025】
図2および図3に示した接続基板の構造に従って、光変調光源チップ(光源チップ)を含む実施例1の光回路を作成した。この光回路100は、図3に詳細を示した接続基板50を有し、例えばイーサネットのトランシーバなどの基板上に搭載可能なサブアセンブリの形態を持っている。光変調光源チップ40は、光導波路構造を含む光半導体変調器を集積した電界吸収型光変調器集積レーザとし、電界吸収型光変調器(EA変調器)の電極長は75μmとした。光変調光源チップ40はInP基板を用いている。接続基板の材質は窒化アルミとし、接続基板30の伝送路31の幅を0.08mmとし、伝送路31の長さ方向に沿った中心線からグラウンド電極35まで距離dを0.08mmとした。接続基板30の厚さTは、伝送路31の特性インピーダンスが50Ωの場合に、特性インピーダンスに影響を与えない様に、0.15mm以上とした。
【0026】
搭載したキャパシタ57の静電容量は100nFとした。変調特性を比較するために、図1に示した従来技術の構成による光回路も作成した。光変調光源チップ40のレーザ部のバイアス電流を80mA、EA変調器のバイアス電圧を-1.4Vとした。作成したすべての光回路において、接続基板50と、配線板20および光変調光源チップ40との間の接続に使用する金バンプ32a、32b、33の構成は、直径を60μm、高さを30μmとした。
【0027】
図4は、実施例1と従来技術の各構成の光回路で変調周波数特性を比較して示した図である。横軸に変調周波数(GHz)を、縦軸に変調出力特性の周波数応答を直流付近でのレベルで規格化してdBで示した。従来技術構成による光回路では、3dB帯域が54GHzであったのに対して、実施例1の構成による光回路でも54GHzの同等の3dB帯域が得られた。加えて、実施例1の構成による変調周波数特性では、従来技術の構成の場合よりもピーキングレベルを最大1dB大きくとれている。従来型の光回路では、EAバイアスの電流値が-39mA、全体消費電力は0.0546Wであったのに対して、実施例1の光回路ではEAバイアス電流が-11mA、全体消費電力は0.0154Wであった。従来技術のキャパシタを省略した場合と比べ、消費電力を1/3以下に減らすことができた。
【0028】
図4の変調周波数特性より、実施例1の構成の光回路は、従来技術の構成とほぼ同程度の帯域幅と、より大きなピーキングを得ることができており、光変調光源の広帯域化に有効であることが確認できた。また、サブキャリア上にキャパシタを搭載しないため光回路の小型化の傾向に合致しており、かつ消費電力を抑制するためにも有用である。次の実施例2では、EA変調器の代わりに、マッハツェンダー光干渉型変調器(MZ変調器)を含む別の光源チップを含む光回路に対して、接続基板上にキャパシタを搭載した別の構成例を示す。
【実施例2】
【0029】
図5は、光変調光源チップを含む本開示の光回路の実施例2の構成を示す図である。実施例2の光回路は、例えばイーサネットのトランシーバ内や光送信装置などのパッケージ上に搭載可能なサブアセンブリ200の形態を持っている。図5では、(a)に光回路200の全体の上面図(x-y面)を、(c)に光回路200をC-C´線で切った断面図(x-z面)を、(b)に光回路200上に搭載されているキャパシタが実装された接続基板60の裏面(x-y面)を示した。実施例2の光回路200は、実施例1の光変調光源チップ40の代わりに、光源を含まずにマッハツェンダー光干渉型変調器(MZ変調器)53のみを含む光変調器チップ(光源チップ)50としている。
【0030】
光変調器チップ50に構成されたMZ変調器53は、図5の(c)の断面図からも分かるように、2本のアーム導波路構造を持っている。一方のアーム導波路上に、高周波電気信号の入力端子である変調入力電極52(P側電極)が、他方のアーム導波路上に、位相調整用のP側電極51が、それぞれ構成されている。
【0031】
サブキャリア10に搭載された配線板20および光変調器チップ50が、接続基板60によって接続され、光回路200の外部から高周波電気信号が変調入力電極52へ入力される。配線板20、接続基板60を経由して光変調器チップ50へ至る伝送路(信号線)およびグランドの基板、チップにおける接続形態は、実施例1と同様である。
【0032】
図3に示したように実施例1の接続基板50では、キャパシタ57は、伝送路が形成された第1の面(接続面)とは反対側の第2の面に搭載されていた。実施例2では実施例1と異なり、接続基板60のキャパシタ66は、金バンプ62a、62b、63によって配線板20および光変調器チップ50と接続される第1の面(接続面)に搭載されている。
【0033】
接続基板60では、終端抵抗器64、高インピーダンス線路65、キャパシタ66は直列に接続されており、電気回路として、この直列回路が変調入力端子とグランドとの間に挿入されている。このような構成とすることで、光変調器チップ50にバイアス電圧を印可した際に、終端抵抗器64に直列なキャパシタ66によって、バイアス電流を遮断することが可能となる。
【0034】
実施例2の光回路の変調周波数特性を従来技術の構成と対比するため、図1に示したようにキャパシタを省略した従来技術構成の光変調器チップを用いた光回路を作成した。図6は、MZ変調器を用いた従来技術構成の光回路の構成を示した図である。図6では、(a)に光回路2の全体の上面図(x-y面)を、(c)に光回路をC-C´線で切った断面図(x-z面)を、(b)に光回路上に搭載されている接続基板30の裏面(x-y面)を示した。図5の実施例2の構成と比較して、接続基板30では終端抵抗器34は、グランド35に直接接続されており、変調入力電極52に印可されるバイアス電圧により終端抵抗器34を経由して電流が定常的に流れる。
【0035】
図5および図6の光変調器チップ50は、マッハツェンダー変調器(MZ変調器)とし、MZ変調器の電極長を100μmとした。光変調器チップ50はInP基板を用いている。図5の実施例2の光回路で搭載したキャパシタ66の容量は10nFとした。図5および図6の光変調器チップ50への入力光パワーを+8dBm、MZ変調器のバイアス電圧を-1.5Vとした。
【0036】
接続基板60の材質は窒化アルミとし、接続基板60の伝送路31の幅を0.08mmとし、伝送路61の長さ方向に沿った中心線からグラウンド電極35まで距離dを0.08mmとした。接続基板60の厚さTは、伝送路61の特性インピーダンスが50Ωの場合として、特性インピーダンスに影響を与えない様に、0.15mm以上とした。
【0037】
図7は、実施例2と従来技術の各構成の光回路で変調周波数特性を比較して示した図である。横軸に変調周波数(GHz)を、縦軸に変調出力特性の周波数応答を直流付近でのレベルで規格化してdBで示した。図6に示した従来技術構成の光回路2では、3dB帯域が57GHzであったのに対して、図5に示した実施例2の構成による光回路200でも、57GHzの同等の3dB帯域が得られた。加えて、実施例2の構成の光回路200による変調周波数特性では、従来技術の構成の場合よりもピーキングレベルを1dB以上大きくとれている。
【0038】
従来技術構成の光回路2では、MZ変調器のバイアスの電流値が-35mA、全体消費電力は0.0525Wであったのに対して、実施例2の光回路200ではMZ変調器のバイアス電流が-5mA、全体消費電力は0.0075Wであった。従来技術のキャパシタを省略した構成の光回路の場合と比べ、バイアス電流による消費電力を1/7に減らすことができた。
【0039】
図7の変調周波数特性より、実施例2の構成の光回路でも、従来技術の構成とほぼ同程度の帯域幅と、より大きなピーキングを得ることができており、光変調光源の広帯域化に有効であることが確認できた。また、サブキャリア上にキャパシタを搭載しないため光回路の小型化の傾向に合致しており、かつ消費電力を抑制することもできる。
【0040】
以上に述べたように本開示の光回路によって、高速動作に適し、小型化および高信頼性化された光変調器を含む光回路を実現する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、光通信のためのネットワーク装置に利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7