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特許7716754情報処理装置、情報処理方法、プログラムおよび記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-24
(45)【発行日】2025-08-01
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20250725BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20250725BHJP
   G06T 7/62 20170101ALI20250725BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G06T7/60 300A
G06T7/62
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021203485
(22)【出願日】2021-12-15
(65)【公開番号】P2023088635
(43)【公開日】2023-06-27
【審査請求日】2024-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 啓彰
(72)【発明者】
【氏名】長南 友也
(72)【発明者】
【氏名】嘉見 大助
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-216656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 22/05
A01H 1/00
G06T 7/60 - 7/62
G06Q 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の植物が植えられた圃場を撮影した画像を用いて、所定の植物の株の面積を株毎に特定する株面積特定部と、
前記画像を用いて、所定の植物の株に外接する最小外接円の面積を株毎に特定する円面積特定部と、
前記株の面積と前記最小外接円の面積との比を用いて特定の形質を有する株であるかを判定する判定部と、
を含む、
情報処理装置。
【請求項2】
前記画像を用いて、所定の植物の株の輪郭を特定する輪郭特定部を更に含み、
前記株面積特定部は、前記株の輪郭に基づいて前記株の面積を特定し、
前記円面積特定部は、前記株の輪郭に対する最小外接円を特定して、当該最小外接円の面積を特定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記所定の植物は、匍匐生長性植物である、
請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記所定の植物は、カボチャである、
請求項1から3の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記判定部は、短節間性を有する株であるかを判定する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記比と、閾値とを比較して、特定の形質を有する株であるかを判定し、
前記閾値は、可変である、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項7】
所定の植物が植えられた圃場を撮影した画像を用いて、所定の植物の株の面積を株毎に特定する株面積特定ステップと、
前記画像を用いて、所定の植物の株に外接する最小外接円の面積を株毎に特定する円面積特定ステップと、
前記株の面積と前記最小外接円の面積との比を用いて特定の形質を有する株であるかを判定する判定ステップと、
を含む、
情報処理方法。
【請求項8】
請求項1に記載の情報処理装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記株面積特定部、前記円面積特定部および前記判定部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物を含む植物の生長または生長異常等を画像解析により判定する技術が知られている。例えば、非特許文献1には、トマト茎の側面からの画像を用いて、節領域を抽出し、節間距離を推定する技術が記載されている。また、近年では、圃場における植物の生育状況を、ドローン空撮した画像を解析して、判定する技術も開発されている(例えば非特許文献2)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】山本恭輔(2015),画像解析と機械学習によるトマトの自動生育診断および高速フェノタイピングに関する研究,東京大学農学生命科学研究科,博士論文(https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/records/8365#.YWOOCGLP0uU)
【文献】栃原美咲、柴戸靖志,「ドローン空撮画像解析によるキャベツほ場の省力的な生育診断技術」,福岡県農林業総合試験場令和元年成果情報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像解析によって生育状況を判定する技術は、植物の種類によって、あるいは同種の植物であっても判定したい対象によって、判定方法および判定基準が異なるため、実用化に向けて未だ多くの課題を有している。
【0005】
本発明の一態様は、圃場の撮影画像から、所定の植物において特定の形質を有する株を選抜するための技術を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る情報処理装置は、所定の植物が植えられた圃場を撮影した画像を用いて、所定の植物の株の面積を株毎に特定する株面積特定部と、前記画像を用いて、所定の植物の株に外接する最小外接円の面積を株毎に特定する円面積特定部と、前記株の面積と前記最小外接円の面積との比を用いて特定の形質を有する株であるかを判定する判定部と、を含む。
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る情報処理方法は、所定の植物が植えられた圃場を撮影した画像を用いて、所定の植物の株の面積を株毎に特定する株面積特定ステップと、前記画像を用いて、所定の植物の株に外接する最小外接円の面積を株毎に特定する円面積特定ステップと、前記株の面積と前記最小外接円の面積との比を用いて特定の形質を有する株であるかを判定する判定ステップと、を含む。
【0008】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記情報処理装置が備える各部として動作させることにより前記情報処理装置をコンピュータにて実現させるプログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、圃場の撮影画像から、所定の植物において、例えば短節間の形質といった特定の形質を有する株を選抜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理装置を含む情報処理システムの機能ブロック図の一例である。
図2】本発明の一実施形態に係る情報処理方法の流れを示すフローチャートの一例である。
図3】本発明の一実施形態に係る情報処理装置において用いる画像の一例を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る情報処理装置において用いる画像の一例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る情報処理装置において用いる画像の一例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る情報処理装置において用いる画像の一例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る情報処理装置において判定される判定結果を含めて表示部に表示される画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔1.情報処理システムの構成例〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る情報処理システム1の機能ブロック図の一例である。情報処理システム1は、圃場に植えられた植物が、特定の形質を有するかを判定するシステムである。本実施形態において、圃場には、1または複数の畝が形成されており、所定の植物の複数の株が畝に植えられている。圃場に植えられた植物は、一例として、カボチャ、または匍匐生長性植物である。カボチャ以外の匍匐生長性植物としては、例えば、スイカ、トマト等の地上部に農作物がなる植物(ウリ科の植物には限定されない)が好ましいが、サツマイモ等の地下部に農作物がなる植物も含む。
【0012】
特に以下では、短節間性を有するカボチャの株であるか否かを判定するシステムについて一例を示す。カボチャの短節間性は、生育初期~中期は節間が詰まっており、側枝数が少ないという特徴を有する。短節間性を有するカボチャは、摘心、整枝、誘引が不要であり、且つ実が株もと近くに着きやすい収穫が容易であるというメリットがある。すなわち、生育初期から収穫までの間の省力化を実現できる。また、短節間性を有さない普通品種のカボチャに比べ、節間性を有するカボチャ品種は、半分程度の畝幅で栽培が可能であることも報告されており、作付面積の規模拡大を見込める。
【0013】
このような短節間性を有するカボチャの選抜は、圃場で生育しているカボチャ遺伝資源および交雑後代から見つける必要がある。現状では、栽培者が圃場を歩いて回り、目視および各株のつる長を計測して選抜するという方法が採用されている。そのため、多大な時間と労力がかかる上、評価できる個体数も限られてしまうため、育種の効率を下げる要因となっている。
【0014】
本発明者らは、この問題を鑑み、選抜評価にかかる時間と労力を従前に比べ大幅に軽減し、評価する個体数を増加させることが可能なシステムを構築するに至った。
【0015】
本実施形態の情報処理システム1は、図1に示すように、情報処理装置10および飛行体30を備える。情報処理装置10は、圃場に植えられた短節間性を有するカボチャの株を特定(判定)する装置であり、例えばパーソナルコンピュータである。情報処理装置10は、制御部12、記憶部22、入力部24および表示部26を備えている。制御部12は、情報処理装置10全体を統括する制御装置であって、取得部121、輪郭特定部122、株面積特定部123、円面積特定部124、判定部125および出力部126としても機能する。
【0016】
取得部121は、飛行体30が撮影した圃場の空撮画像を、入力部24を介して取得する。入力部24と飛行体30とは、無線で接続されてもよいし、有線で接続されてもよい。
【0017】
輪郭特定部122は、取得部121によって取得された空撮画像(以下、撮像画像と称する場合がある)を解析して、画像中のカボチャ株の認識(識別)を行う。一例として、画像からカボチャの緑色の画素のみを選び出すことによって、画像中のカボチャ株の認識(識別)を行う。なお、カボチャ株の認識(識別)を行う際には、空撮画像の一部分を抽出した画像を用いることができ、反対に、空撮画像を複数枚繋ぎ合わせてなる画像を用いることもできる。
【0018】
また、輪郭特定部122は、識別したカボチャ株の画像領域の輪郭を株毎に特定する。
【0019】
株面積特定部123は、画像を用いて、カボチャの株の面積を株毎に特定する。一例では、株面積特定部123は、輪郭特定部122が特定した輪郭に基づいて株の面積を株毎に特定する。
【0020】
円面積特定部124は、画像を用いて、カボチャの株に外接する最小外接円の面積を株毎に特定する。円面積特定部124は、具体的には、輪郭特定部122が特定した輪郭に対する最小外接円を特定して、当該最小外接円の面積を特定する。輪郭に対する最小外接円の特定は、周知の方法を採用して行うことが可能である。
【0021】
判定部125は、株面積特定部123によって特定されたカボチャ株の面積と、円面積特定部124によって特定された最小外接円の面積との比を用いて、短節間性を有するカボチャの株であるか(特定の形質を有する株であるか)を判定する。
【0022】
ここで、カボチャ株の面積と最小外接円の面積との比は、短節間性を有さない、いわゆる普通品種のカボチャの株よりも、短節間性を有するカボチャの株のほうが大きい。すなわち、短節間性を有する株の場合、広く地這いせず、株が小さくまとまった形態となることから、最小外接円は小さく、その最小外接円に株が密集している。一方、普通品種のカボチャの株では、地這いして株もとから離れたところまでつるを伸ばす。そのため、普通品種では、最小外接円の面積は大きくなる傾向にあり、且つ、最小外接円内において株が密集していない形態となる。これらのことから、短節間性を有するカボチャ株であるか否かは、カボチャ株の面積と最小外接円の面積との比を用いることで特定(判定)することができる。
【0023】
要するに、判定部125は、閾値を有し、この閾値と、カボチャ株の面積と最小外接円の面積との比とを比較することで、短節間性を有するカボチャの株であるかを判定する。なお、閾値は、ユーザーによって設定変更可能である。
【0024】
出力部126は、判定部125の判定結果に関する情報を出力する。判定結果に関する情報は、一例として、画像内での短節間性を有するカボチャ株の箇所を表す画像である。出力部126は、一例として、短節間性を有するカボチャ株の箇所を表す画像を表示部26に表示させる処理を行うことにより、当該情報を出力する。
【0025】
記憶部22は、各種情報を格納する記録装置であって、例えば取得部121が取得した空撮画像、または判定部125が短節間性を有するカボチャ株を特定する場合に参照する情報等を格納する。
【0026】
入力部24は、情報処理装置10に対する操作又は情報の入力を行うためのインターフェースである。例えば、入力部24は、自身に入力された、飛行体30の撮影画像を取得部121に供給する。また、入力部24の一部は、情報処理装置10への操作を受け付けるキーボードやマウス等のデバイスとして実現され得る。
【0027】
表示部26は、制御部12の制御に基づいて、テキスト又は動画像等を表示する表示パネルである。なお、表示部26が、タッチパネルとして入力部24の一部の機能を実現する構成であってもよい。
【0028】
飛行体30は、ドローンやUAV(Unmanned Aerial Vehicle)等として実現される無人の飛行体30である。飛行体30はカメラ(図示略)を備え、圃場の空撮画像を撮影する。以下、飛行体30は、RGB画像を撮影する構成であるものとして説明するが、必ずしも上記構成に限定されない。また、飛行体30は、事前に規定された経路を自律飛行することを要せず、リアルタイムにユーザが操作するものであってもよい。
【0029】
〔2.情報処理システムの処理例〕
図2は、本実施形態に係る情報処理方法の流れを示すフローチャートの一例である。ステップS101において、飛行体30は、圃場の空撮画像となるステレオ写真または複数の写真を撮影する。本処理例において、撮影対象である圃場には、複数の畝が形成されており、各畝に複数のカボチャ株が植えられている。畝と畝の間にはカボチャ株が重なり合わない程度の間隔が設けられている。カボチャ株は生長によりつるが伸びて葉が畝の一部を被覆する。
【0030】
ステップS102において、取得部121は、入力部24を介して飛行体30が撮影した空撮画像を取得する。なお、取得部121が、圃場の一部を撮影した空撮画像を複数取得した場合には、それらの複数の空撮画像を繋ぎ合せた画像を生成してもよい。繋ぎ合わせる場合には、圃場全体の画像(オルソ画像)を形成してもよい。なお、1枚当たりの空撮画像の撮像範囲は、判定部125が撮像範囲に写った株画像から判定を行うことができればよく、特に制限はない。つまり、空撮画像は、カボチャ株が少なくとも1つ撮影されていればよい。ただし、判定部125によって圃場あるいは畝から効率的に短節間性を有するカボチャの株を見つけるためには、1枚の空撮画像内に複数株が写っていることが好ましい。
【0031】
図3は、空撮画像を例示する図である。なお、図3の画像PICは、飛行体30(図1)が撮影した複数の空撮画像を繋ぎ合わせた画像であってもよい。図3の画像PICには、一本の畝300と、畝の長手方向に沿って並んで生育している複数のカボチャの株400とが、写っている。なお、図3の画像PICは、表示部26(図1)に表示可能である。なお、空撮画像は、実際にはカラー画像である。
【0032】
ステップS103~ステップS109において、画像PIC内のカボチャ株400から、短節間性を有するカボチャ株を選別する。具体的には、ステップS103では、ステップS102によって取得された画像を解析して、輪郭特定部122(図1)が、画像中のカボチャ株の認識(識別)を行う。一例として、画像からカボチャの緑色の画素のみを選び出すことによって、画像中のカボチャ株の認識(識別)を行う。更にステップS103では、輪郭特定部122が、識別したカボチャ株の画像領域の輪郭を株毎に特定する。
【0033】
ここで、図4は、図3に示す空撮画像PICから、画像PIC中のカボチャの株を認識した画像PIC1である。図4の画像PIC1は一例として白黒画像であり、図4の画像PIC1内の白色の領域が、カボチャの株である。図4の画像PIC1も、図3の空撮画像PICと同様に、表示部26に表示可能である。
【0034】
なお、カボチャ株の認識(識別)を行う際に用いる画像PICと、識別したカボチャ株の画像領域の輪郭を株毎に特定する際に用いる画像PIC2とは、同一の画像データであってもよく、複製した画像データであってもよい。更には、カボチャ株の認識(識別)を行う際に用いる画像PICの一部分の画像のみを用いて輪郭を特定してもよい。一例として、一部分の画像は、カボチャ株と識別された領域、およびその周辺領域を抽出した(切り取った)画像である。
【0035】
ステップS104(株面積特定ステップ)では、株面積特定部123(図1)が、画像を用いて、カボチャの株の面積を株毎に特定する。具体的には、ステップS104では、株面積特定部123が、輪郭特定部122が特定した輪郭に基づいて株の面積を株毎に特定する。なお、株の面積の特定方法は、輪郭に基づいて算出する方法に限らない。例えば、画像において各画素の緑色の濃淡を表す画素値が所定の範囲に含まれる領域を、株の領域として特定する。一例として、株面積特定部123は、RGB表色系の全体画像をL*a*b表色系に変換し、チャンネルa*の値が所定値(例えば、120)以下の画素の領域を株の領域として特定し、株の領域のそれぞれの画素数をカウントした画素数を(株の)面積として用いることも可能である。
【0036】
ステップS105(円面積特定ステップ)では、円面積特定部124(図1)が、画像を用いて、カボチャの株に外接する最小外接円の面積を株毎に特定する。具体的には、ステップS105では、ステップS104によって特定した輪郭に対する最小外接円を特定して、当該最小外接円の面積を特定する。
【0037】
なお、本例示では、株の面積を特定するステップS104を、最小外接円の面積を特定するステップS105より先に行う態様を説明しているが、これら2つのステップは前後関係を問わない。また、上述のように、ステップS104において、輪郭を用いずに株の面積を特定する場合には、株の面積を特定するステップS104と、輪郭を特定するステップS103とについても、前後関係を問わない。
【0038】
ステップS106(判定ステップ)では、判定部125(図1)が、ステップS104において特定した株の面積と、ステップS105において特定した最小外接円の面積との比を用いて、短節間性を有するカボチャ株であるかを特定(判定)する。
【0039】
図5および図6には、画像中の或る一つのカボチャ株について、株の輪郭を示す画像500Pとともに、その輪郭(画像500P)に外接する最小外接円を示す画像500Cを合成表示した画像PIC2を示す。図5は、短節間性を有するカボチャ株ではない普通品種のカボチャ株について示すものであり、図6は、短節間性を有するカボチャ株について示すものである。図5および図6の画像PIC2は、実際にはカラー画像である。図5および図6のそれぞれには、画像PIC2と併せて、一例として、株の面積と、最小外接円の面積と、これらの比(面積比)とを示している。図5の面積比に比べ、図6の面積比のほうが大きい。すなわち、図5の株に比べ、図6の株のほうが、つるの長さが短く、いわゆる短節間性を有する株であると言える。これは、図5および図6の画像を見ても明らかで、図5の株に比べ図6の株のほうが、つるの長さが短く、いわゆる短節間性を有する株であることがわかる。
【0040】
このように、ステップS106では、株毎に株の面積と最小外接円の面積との面積比を算出し、算出した面積比が閾値よりも大きい場合には、ステップS107に進む。一方で、算出した面積比が、閾値以下である場合は、ステップS108に進む。
【0041】
ステップS107では、判定部125が、判定対象の株が短節間性を有する株であることを示す出力信号を生成する。また、ステップS108では、判定部125が、判定対象の株が短節間性を有する株でないことを示す出力信号を生成する。
【0042】
ステップS109では、ステップS107およびステップS108において生成された出力信号を、出力部126(図1)が取得して、出力部126が、出力信号に応じた情報を出力する。一例として、出力部126は、短節間性を有する株の箇所を表す画像を生成し、生成した画像を表示部26に表示する。
【0043】
図7は、表示部26に表示された画像の一例を示す。図7には、2つの画像を示しており、上の画像と下の画像とは、同じ空撮画像を用いて、閾値を変えたときの、判定結果の違いを示している。図7の各画像は、実際にはカラー画像である。
【0044】
図7の上の画像では、閾値を0.69(69%)として、比(面積比)が0.69(69%)以上の株を、短節間性を有する株として表示し、0.69(69%)未満の株を、短節間性を有する株でない株として表示している。
【0045】
図7の上の画像では、閾値を0.60(60%)として、比(面積比)が0.60(60%)以上の株を、短節間性を有する株として表示し、0.60(60%)未満の株を、短節間性を有する株でない株として表示している。
【0046】
図7の各画像では、短節間性を有する株は、その株の最小外接円が白色で表示され、短節間性を有する株は、その株の最小外接円が黒色で表示される。これにより、ユーザーは、直感的(視覚的)に、短節間性を有する株を見つけることができる。なお、株が短節間性を有する株であるか否かを区別できれば、その表示方法は、最小外接円の色での区別に限らない。他の例としては、短節間性を有する株だけに最小外接円あるいは他の形状の画像が表示される態様があり得る。また、各株に識別番号付されている場合には、短節間性を有する株の識別番号が表示される態様であってもよい。
【0047】
図7のように閾値を変える際には、表示部26に表示されているスライドバー500Sをスライドすることにより容易に閾値を変更すればよい。この場合、閾値を変えるとほぼ同時に表示部26に判定結果が反映されるようになっていればよい。これにより、ユーザーは、表示部26に表示される判定結果を見ながら閾値を検討することも可能である。
【0048】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、圃場の撮影画像から、短節間性を有するカボチャ株を効率よく選抜することができる。
【0049】
〔付記事項〕
〔付記事項1〕
以上の説明では、図3の画像PICに示した一本の畝300を撮像対象としているが、これに限定されず、複数の畝を撮像対象とすることも可能である。これにより、一度に、広範囲の領域を判定部125によって判定することができ、短節間性を有する株を効率的に検索することができる。また、畝が形成された圃場にも限らない。また、複数の株が並んで栽培されている態様でなくてもよいが、株と株とが重ならないよう所定の間隔をあけて作付けされている圃場であればよい。
【0050】
〔付記事項2〕
上述の実施形態に係る情報処理装置10の機能は、単体の装置により実現されてもよく、また、複数の装置が協働するシステムにより実現されてもよい。例えば、取得部121を実装する第1の装置と、輪郭特定部122を実装する第2の装置と、株面積特定部123を実装する第3の装置と、円面積特定部124を実装する第4の装置と、判定部125および出力部126を実装する第5の装置とにより情報処理装置10が実現されてもよい。
【0051】
〔付記事項3〕
上述の実施形態では、飛行体30が撮影した空撮画像を、取得部121が取得する。しかし、これに限らず、一例として、人工衛星に搭載されたセンサの観測データを画像化した衛星画像を、取得部121が取得する態様であってもよい。
【0052】
〔付記事項4〕
上述の実施形態では、株の輪郭に基づいて特定した株面積と最小外接面の面積との比から短節間性を有するカボチャ株を選抜する態様であるが、短節間性を有するカボチャ株に限らず、株の輪郭に基づいて特定した株面積と最小外接面の面積との比から、特定の形質を有する個体を選抜することも可能ある。例えば、生育ステージの進行が早いか遅いかの比較が可能であり、例えば生育ステージが早い株を選抜することが可能である。一例として、株面積と最小外接面の面積との比により、同じカボチャ品種であっても、つるが伸び始めた個体とまだ伸び始めていない個体とを区別することができる。栽培技術に着目した研究においては、同じ品種の個体同士の比較を行う方法として、株面積と最小外接面の面積との比を採用できる。栽培技術による生育の差を見る場合には、対象の個体は、異なる栽培環境において栽培されている個体であってよく、上述の実施形態のように同じ畝に並んで生育している個体でなくてよい。
【0053】
〔付記事項5〕
上述の実施形態では、匍匐生長性植物(カボチャ)を対象としているが、匍匐生長性植物以外の植物であってもよい。例えば、イネやムギなどイネ科の植物であってもよい。イネやムギなどイネ科の植物は、分げつを増やすときに、主茎と分げつが作る角度(分げつ開度)が遺伝資源によって異なる。各遺伝資源の見た目(草型、草姿)を数値化する際に、株面積(被覆面積)とともに最小外接円面積および両者の比を計算することで、同じ株面積(被覆面積)あるいは同じ最小外接円面積を持つ遺伝資源でも土地の被覆率が異なることを示すことができる。
【0054】
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理システム1の制御ブロック(特に取得部121、輪郭特定部122、株面積特定部123、円面積特定部124、判定部125および出力部126)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0055】
後者の場合、情報処理システム1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0056】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 情報処理システム
10 情報処理装置
12 制御部
22 記憶部
24 入力部
26 表示部
30 飛行体
121 取得部
122 輪郭特定部
123 株面積特定部
124 円面積特定部
125 判定部
126 出力部
400 カボチャ株(所定の植物の株)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7