(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-30
(45)【発行日】2025-08-07
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/174 20170101AFI20250731BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20250731BHJP
G06Q 50/02 20240101ALI20250731BHJP
【FI】
G06T7/174
G01N21/27 A
G06Q50/02
(21)【出願番号】P 2022046523
(22)【出願日】2022-03-23
【審査請求日】2024-12-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】森下 瑞貴
(72)【発明者】
【氏名】石塚 直樹
【審査官】▲広▼島 明芳
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-089613(JP,A)
【文献】特開2014-041425(JP,A)
【文献】特表2011-513868(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0307073(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0047633(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 - 7/90
G01N 21/27
G06Q 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが地面を上空から撮像することで得られる複数種類の画像を取得する画像取得部と、
前記画像における画素または画素群について、前記画像の種類に応じた次数のベクトル情報を設定し、前記ベクトル情報に基づいて、前記画像における画素または画素群に対する教師無し分類処理を行う分類処理部と、
前記教師無し分類処理の結果である分類結果画像に対して、近隣画素内における分類結果のバラつきを小さくするスムージング処理を行うスムージング処理部と、
前記スムージング処理の結果であるスムージング画像に基づいて、分類結果が同じ領域内から一以上の代表点を選定する代表点選定部と、を備
え、
画像の種類と分類数を変えながら、前記分類処理部、および前記スムージング処理部が繰り返し処理を行った結果である前記スムージング画像を評価する評価部を更に備える、
情報処理装置。
【請求項2】
それぞれが地面を上空から撮像することで得られる複数種類の画像を取得する画像取得部と、
前記画像における画素または画素群について、前記画像の種類に応じた次数のベクトル情報を設定し、前記ベクトル情報に基づいて、前記画像における画素または画素群に対する教師無し分類処理を行う分類処理部と、
前記教師無し分類処理の結果である分類結果画像に対して、近隣画素内における分類結果のバラつきを小さくするスムージング処理を行うスムージング処理部と、
前記スムージング処理の結果であるスムージング画像に基づいて、分類結果が同じ領域内から一以上の代表点を選定する代表点選定部と、を備
え、
画像の種類と分類数を変えながら、前記分類処理部、および前記スムージング処理部が繰り返し処理を行った結果である前記スムージング画像を利用者に提示し、利用者による前記スムージング画像の選択を受け付けるインターフェース部を更に備え、
前記代表点選定部は、前記利用者が選択した前記スムージング画像に基づいて前記代表点を選定する、
情報処理装置。
【請求項3】
前記代表点選定部は、土壌調査を行う調査対象となる地点を前記代表点として選定する、
請求項1
または2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記分類処理部は、分類数を指定して前記教師無し分類処理を行う、
請求項1
から3のうちいずれか1項記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記画像取得部は、熱画像またはDSM画像を少なくとも含む複数種類の画像を取得する、
請求項1から
4のうちいずれか1項記載の情報処理装置。
【請求項6】
画像の種類と分類数を変えながら、前記分類処理部、および前記スムージング処理部が繰り返し処理を行った結果である前記スムージング画像を評価する評価部を更に備え、
前記インターフェース部は、前記評価部が「無効」と評価した前記スムージング画像を除外して前記利用者に提示する、
請求項
2記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記スムージング処理部は、前記分類結果画像における画素または画素群に対して、近隣する画素または画素群の最頻値で塗り替える処理を行い、最頻値の頻度が第1閾値以下であった画素または画素群にエラーラベルを付与し、
前記評価部は、エラーラベルが付与された画素または画素群の割合が第2閾値以上である場合、前記スムージング画像を「無効」と評価する、
請求項
1または
6記載の情報処理装置。
【請求項8】
情報処理装置が、
それぞれが地面を上空から撮像することで得られる複数種類の画像を取得し、
前記画像における画素または画素群について、前記画像の種類に応じた次数のベクトル情報を設定し、
前記ベクトル情報に基づいて、前記画像における画素または画素群に対する教師無し分類処理を行い、
前記教師無し分類処理の結果である分類結果画像に対して、近隣画素内における分類結果のバラつきを小さくするスムージング処理を行い、
前記スムージング処理の結果であるスムージング画像に基づいて、分類結果が同じ領域内から一以上の代表点を選定
し、
画像の種類と分類数を変えながら、前記分類処理、および前記スムージング処理が繰り返し処理を行った結果である前記スムージング画像を評価する、
情報処理方法。
【請求項9】
情報処理装置が、
それぞれが地面を上空から撮像することで得られる複数種類の画像を取得し、
前記画像における画素または画素群について、前記画像の種類に応じた次数のベクトル情報を設定し、
前記ベクトル情報に基づいて、前記画像における画素または画素群に対する教師無し分類処理を行い、
前記教師無し分類処理の結果である分類結果画像に対して、近隣画素内における分類結果のバラつきを小さくするスムージング処理を行い、
前記スムージング処理の結果であるスムージング画像に基づいて、分類結果が同じ領域内から一以上の代表点を選定
し、
画像の種類と分類数を変えながら、前記分類処理、および前記スムージング処理が繰り返し処理を行った結果である前記スムージング画像を利用者に提示し、利用者による前記スムージング画像の選択を受け付け、
前記利用者が選択した前記スムージング画像に基づいて前記代表点を選定する、
情報処理方法。
【請求項10】
情報処理装置に、
それぞれが地面を上空から撮像することで得られる複数種類の画像を取得させ、
前記画像における画素または画素群について、前記画像の種類に応じた次数のベクトル情報を設定させ、
前記ベクトル情報に基づいて、前記画像における画素または画素群に対する教師無し分類処理を行わせ、
前記教師無し分類処理の結果である分類結果画像に対して、近隣画素内における分類結果のバラつきを小さくするスムージング処理を行わせ、
前記スムージング処理の結果であるスムージング画像に基づいて、分類結果が同じ領域内から一以上の代表点を選定さ
せ、
画像の種類と分類数を変えながら、前記分類処理、および前記スムージング処理が繰り返し処理を行った結果である前記スムージング画像を評価させる、
プログラム。
【請求項11】
情報処理装置に、
それぞれが地面を上空から撮像することで得られる複数種類の画像を取得させ、
前記画像における画素または画素群について、前記画像の種類に応じた次数のベクトル情報を設定させ、
前記ベクトル情報に基づいて、前記画像における画素または画素群に対する教師無し分類処理を行わせ、
前記教師無し分類処理の結果である分類結果画像に対して、近隣画素内における分類結果のバラつきを小さくするスムージング処理を行わせ、
前記スムージング処理の結果であるスムージング画像に基づいて、分類結果が同じ領域内から一以上の代表点を選定さ
せ、
画像の種類と分類数を変えながら、前記分類処理、および前記スムージング処理が繰り返し処理を行った結果である前記スムージング画像を利用者に提示させ、利用者による前記スムージング画像の選択を受け付けさせ、
前記利用者が選択した前記スムージング画像に基づいて前記代表点を選定させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
農業において、圃場管理や適正施肥等の観点から、圃場の土壌特性を把握することの必要性が高い。農林水産省が掲げる食料・農業・農村基本計画においても「データに基づく土づくり」が推進されている。農業現場では、圃場内数点の土壌を採取して混合したものを代表的な土壌試料として理化学性の分析を行う「土壌診断」が広く行われており、多数の事業者が土壌診断サービスを提供している。
【0003】
これに関連し、空撮用ヘリコプタで、圃場の雨直後と乾燥時の可視画像を撮影し、圃場内の数地点で土壌を採取し、体積水分率と気相率を分析し、画像における土壌採取地点の赤,緑,青の色分解値データを光量補正して得た光量補正済色分解値データの差を算出し、圃場の雨直後と乾燥時の画像間の差分データと、体積水分率や気相率とのマップを作成して回帰式を得ることで、圃場全体についての乾湿マップを得る技術が開示されている(特許文献1)。
【0004】
また、土壌から放出されるγ線量を測定して対象地域のγ線量分布図を作成することにより、基盤岩石に由来する土壌構成基本型の分布を把握し、土壌構成基本型の分布を指標として、必要かつ無駄のない土壌サンプルの採取地点及びサンプル数を決定し、決定に基づいて採取した土壌サンプルの分析によって各土壌構成基本型における土壌構成の実際の内容又は特性を分析し、その分析結果をγ線量分布図にあてはめることにより、実際の土壌構成分布を把握しあるいはその分布図を作成する技術が開示されている(特許文献2)。
【0005】
また、圃場の空撮画像である高解像度カラー赤外線(CIR)画像を用いて、教師無し学習により圃場環境の分類を行う方法が開示されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-150068号公報
【文献】特開2004-12160号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】”In-field variability detection and spatial yield modeling for corn using digital aerial imaging”, Gopalapillai and Tian (1999), Transaction of ASAS 42: 1911-1920
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
土壌診断技術において、圃場全体をくまなく調査するのは現実的で無いため、調査地点を選定することが望まれる。例えば、対角線法やランダム法といった方法が知られている。しかしながら、従来の技術では、何らかの土壌特性に起因した根拠に基づいて調査地点を選定している訳では無いため、調査対象とする代表地点の選定根拠が乏しく、診断結果が圃場の環境を的確に捉えられないことが懸念される。非特許文献1に記載の技術は、圃場環境の分類を行うものであるが、一種類の画像を用いて分類を行っているため、精度が十分でないことが懸念される。また、代表地点を選定しようとするものでは無い。また、特許文献2に記載の技術は、岩盤岩石に由来するガンマ線量に基づいて処理を行うものであり、広域な地域が対象となる。このため、圃場レベルの広さの土壌の分析には適していない。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、地上における調査対象とする代表地点を、より適切に選定することができる情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様である情報処理装置は、それぞれが地面を上空から撮像することで得られる複数種類の画像を取得する画像取得部と、前記画像における画素または画素群について、前記画像の種類に応じた次数のベクトル情報を設定し、前記ベクトル情報に基づいて、前記画像における画素または画素群に対する教師無し分類処理を行う分類処理部と、前記教師無し分類処理の結果である分類結果画像に対して、近隣画素内における分類結果のバラつきを小さくするスムージング処理を行うスムージング処理部と、前記スムージング処理の結果であるスムージング画像に基づいて、分類結果が同じ領域内から一以上の代表点を選定する代表点選定部と、を備えるものである。
【0011】
上記本発明の態様において、前記代表点選定部は、土壌調査を行う調査対象となる地点を前記代表点として選定してもよい。
【0012】
上記本発明の態様において、前記分類処理部は、分類数を指定して前記教師無し分類処理を行ってもよい。
【0013】
上記本発明の態様において、前記画像取得部は、熱画像またはDSM画像を少なくとも含む複数種類の画像を取得してもよい。
【0014】
上記本発明の態様において、画像の種類と分類数を変えながら、前記分類処理部、および前記スムージング処理部が繰り返し処理を行った結果である前記スムージング画像を評価する評価部を更に備えてもよい。
【0015】
上記本発明の態様において、画像の種類と分類数を変えながら、前記分類処理部、および前記スムージング処理部が繰り返し処理を行った結果である前記スムージング画像を利用者に提示し、利用者による前記スムージング画像の選択を受け付けるインターフェース部を更に備え、前記代表点選定部は、前記利用者が選択した前記スムージング画像に基づいて前記代表点を選定してもよい。
【0016】
上記本発明の態様において、画像の種類と分類数を変えながら、前記分類処理部、および前記スムージング処理部が繰り返し処理を行った結果である前記スムージング画像を評価する評価部を更に備え、前記インターフェース部は、前記評価部が無効と評価した前記スムージング画像を除外して前記利用者に提示してもよい。
【0017】
上記本発明の態様において、前記スムージング処理部は、前記分類結果画像における画素または画素群に対して、近隣する画素または画素群の最頻値で塗り替える処理を行い、最頻値の頻度が第1閾値以下であった画素または画素群にエラーラベルを付与し、前記評価部は、エラーラベルが付与された画素または画素群の割合が第2閾値以上である場合、前記スムージング画像を「無効」と評価してもよい。
【0018】
本発明の他の態様に係る情報処理方法は、情報処理装置が、それぞれが地面を上空から撮像することで得られる複数種類の画像を取得し、前記画像における画素または画素群について、前記画像の種類に応じた次数のベクトル情報を設定し、前記ベクトル情報に基づいて、前記画像における画素または画素群に対する教師無し分類処理を行い、前記教師無し分類処理の結果である分類結果画像に対して、近隣画素内における分類結果のバラつきを小さくするスムージング処理を行い、前記スムージング処理の結果であるスムージング画像に基づいて、分類結果が同じ領域内から一以上の代表点を選定するものである。
【0019】
本発明の他の態様に係るプログラムは、情報処理装置に、それぞれが地面を上空から撮像することで得られる複数種類の画像を取得させ、前記画像における画素または画素群について、前記画像の種類に応じた次数のベクトル情報を設定させ、前記ベクトル情報に基づいて、前記画像における画素または画素群に対する教師無し分類処理を行わせ、前記教師無し分類処理の結果である分類結果画像に対して、近隣画素内における分類結果のバラつきを小さくするスムージング処理を行わせ、前記スムージング処理の結果であるスムージング画像に基づいて、分類結果が同じ領域内から一以上の代表点を選定させるものである。
【発明の効果】
【0020】
上記各態様によれば、地上における調査対象とする代表地点を、より適切に選定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】情報処理装置100の使用環境および構成の一例を示す図である。
【
図2】k=5を指定して分類処理が行われた結果である分類結果画像の一例を示す図である。
【
図4】代表点選定部150により選定される代表点の一例を示す図である。
【
図5】土壌特性の傾向を画像分類結果ごとに示した図である。
【
図6】第2実施形態に係る情報処理装置100Aの使用環境および構成の一例を示す図である。
【
図7】第2実施形態のスムージング処理部130によってエラーラベルが付与されたスムージング画像の一例を示す図である。
【
図8】次数とクラス数を変えながら生成されたスムージング画像と、各クラスの分布域から取得した土壌試料の分析値を示した図である。
【
図9】次数とクラス数を変えながら生成されたスムージング画像と、各クラスの分布域から取得した土壌試料の分析値を示した図である。
【
図10】次数とクラス数を変えながら生成されたスムージング画像と、各クラスの分布域から取得した土壌試料の分析値を示した図である。
【
図11】次数とクラス数を変えながら生成されたスムージング画像と、各クラスの分布域から取得した土壌試料の分析値を示した図である。
【
図12】次数とクラス数を変えながら生成されたスムージング画像と、各クラスの分布域から取得した土壌試料の分析値を示した図である。
【
図13】次数とクラス数を変えながら生成されたスムージング画像と、各クラスの分布域から取得した土壌試料の分析値を示した図である。
【
図14】次数とクラス数を変えながら生成されたスムージング画像と、各クラスの分布域から取得した土壌試料の分析値を示した図である。
【
図15】次数とクラス数を変えながら生成されたスムージング画像と、各クラスの分布域から取得した土壌試料の分析値を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0023】
<第1実施形態>
図1は、情報処理装置100の使用環境および構成の一例を示す図である。情報処理装置100は、例えば、飛行体10から中継装置20を介して、地面(例えば農地)Fを上空から撮像した(空撮した)画像を取得し、端末装置30に情報提供を行う。なお画像の取得方法はこれに限らず、記憶媒体に格納された画像が情報処理装置100のドライブ装置に装着されることで画像が取得されてもよい。また、画像は情報処理装置100に渡される前に前処理が行われたものであってもよい。
【0024】
飛行体10は、各種の撮像装置が取り付けられたドローン(無人航空機)である。撮像装置には、可視光カメラ、測距カメラ、マルチスペクトルカメラ、熱赤外線カメラなどが使用される。飛行体10は、これらの全てを搭載してもよいし、複数の飛行体10がそれぞれ異なる撮像装置を搭載して順に空撮を行ってもよい。飛行体10は、撮像装置12によって撮像された複数の空撮画像を、当該空撮画像のカメラパラメータおよびGPSなどの位置情報と合わせて、飛行体10に搭載されるメモリカードに保存するかまたは中継装置20に送信する。
【0025】
中継装置20は、飛行体10を操作するとともに、飛行体10から送信された空撮画像を受信および表示するためのアプリケーションを搭載したタブレット端末などの端末装置である。中継装置20は、空撮画像をRGB画像として表示したり、受信した空撮画像を、ネットワークNWを介して情報処理装置100に送信したりする。ネットワークNWは、例えば、LAN、WAN、インターネット回線などの任意のネットワークであり、有線でも無線でもよい。
【0026】
端末装置30は、例えば、パーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット端末などのコンピュータ装置である。端末装置30は、情報処理装置100とネットワークNWを介して通信し、後述する情報処理装置100のインターフェース部160から受信した情報を表示する。端末装置30は、情報処理装置100に付随するものであってもよい。
【0027】
情報処理装置100は、例えば、ウェブサーバの機能を有する。情報処理装置100は、中継装置20等から複数種類の画像を取得し、後述する方法を用いて、分類処理、スムージング処理、代表点選定処理などを行い、処理結果を端末装置30に出力する。
【0028】
情報処理装置100は、例えば、画像取得部110と、分類処理部120と、スムージング処理部130と、代表点選定部150と、インターフェース部160とを備える。これらの構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。
【0029】
画像取得部110は、それぞれが農地を上空から撮像することで得られる複数種類の画像を取得する。複数種類の画像は、例えば、可視光画像、DSM(Digital Surface Model)、マルチスペクトルカメラによる周波数帯ごとの画像、熱画像、近赤外線画像などのうち一部または全部を含む。DSMとは、Sfm(Structure from motion)によって生成される高さ画像の一例である。以下の説明では、レッドエッジ画像、レッド画像、近赤外線画像、グリーン画像、DSM、熱画像の6種類の画像が取得されるものとする。レッドエッジ画像とは、一般的な赤色の波長よりもやや長い波長(例えば735[nm]前後)の反射率を取得した画像である。レッド画像とは、赤色に属する波長の反射率を取得した画像である。グリーン画像とは、緑色に属する波長の反射率を取得した画像である。近赤外線画像とは、近赤外線(790[nm]前後)の反射率を取得した画像である。Sfmやエッジ抽出のような前処理は、情報処理装置100によって行われてもよいし、他の装置によって行われてもよい。また、各種の画像は、複数フレームの画像が接合されたオルソ画像であると好適である。1フレームの画像を用いる場合、画像の歪みによって精度が低下してしまう懸念があるからである。
【0030】
分類処理部120は、上記各種の画像における画素または画素群について、画像の種類に応じた次数のベクトル情報(n次元ベクトル)を設定し、n次元ベクトルに基づいて、画像における画素または画素群に対する教師無し分類処理を行う。ここでは、6種類の画像が処理対象となるため、n=6であるものとする。「画素または画素群について」とは、画像における画素を処理対象としてもよいし、互いに近隣する幾つかの画素群を処理対象としてもよいという意味である。以下の説明では、画素を処理対象とするものとして説明する。分類処理部120は、各種の画像における画素値や高度値などをベクトルの要素値として6次元ベクトルを生成する。この際に、要素値に対する正規化処理が行われてもよい。
【0031】
分類処理部120は、例えば、クラス数kを指定して行われるk-means++法によって、画素の位置を考慮せずに、各画素をクラス1~kのいずれかに分類する。
図2は、k=5を指定して分類処理が行われた結果である分類結果画像の一例を示す図である。図中、fは、農地Fの中で着目する圃場を示している。分類結果画像は、高周波な変動成分が多く、これだけをもって特性が近い農地を分類するのは適切でない可能性が高い。
【0032】
スムージング処理部130は、分類結果画像に対して、近隣画素内における分類結果のバラつきを小さくするスムージング処理を行う。例えば、スムージング処理部130は、大多数フィルターと称される処理を行う。すなわち、スムージング処理部130は、分類結果画像に対して、近隣する画素(例えば半径30ピクセル以内の画素)の最頻値で塗り替える処理を行う。スムージング処理部130は、情報処理装置100とは別体の装置にスムージング処理を依頼することでスムージング画像を取得するものであってもよい。
図3は、スムージング処理の結果であるスムージング画像の一例を示す図である。図示するように、スムージング画像では、圃場fにおける特性が類似する地点が、大まかな領域に集合化されていることが分かる。
【0033】
代表点選定部150は、スムージング画像に基づいて、分類結果が同じ領域内から(同じクラスに属する領域内から)、それぞれ一以上の代表点を選定する。以下、同じクラスに属する領域のことをクラス領域と称する。代表点は、土壌調査を行う調査対象となる地点を表す画像上の点となる。代表点選定部150は、例えば、あるクラス領域について、隣接する他のクラス領域との境界線から最も遠い一つの点を代表点として選定する。
図4は、代表点選定部150により選定される代表点の一例を示す図である。
【0034】
インターフェース部160は、代表点選定部150により選定された代表点の情報を、例えば現実の位置情報(緯度、経度)と共に端末装置30に提供する。これを見た利用者は、クラス領域ごとの施肥量を決定したり、耕作機器の動作スケジュールを決定したりする。
【0035】
ここで、発明の有効性について述べる。本発明の発明者は、ある圃場fについて数十点の土壌調査および分析を行い、第1実施形態に係る処理を行って示された分類結果画像に応じて土壌特性を比較した。
図5は、各クラスおよび圃場全体における土壌特性値の傾向を示した図である。クラス5についてはクラス領域が狭小であるため図示を省略する。
図5の左上図は全炭素量[g/kg]、右上図は全窒素量[g/kg]、左中図は粘土含有率[%]、右中図は電気伝導度[mS/cm]、左下図は含水率[%]、右下図はpH(H
2O)というふうに各種指標値を表している。また、各図の横軸はクラス1~4、または圃場f全体を示している。箱ひげ図において、O1は四分位範囲および中央値を、O2は最大値から最小値までの範囲を、O3は各クラスにおける土壌特性の分析値をプロットした点を、それぞれ表している。図示するように、いずれの指標値に関してもクラス間で傾向が有意に表れており、分類処理が適切であることが分かる。
【0036】
以上説明した第1実施形態によれば、それぞれが農地を上空から撮像することで得られる複数種類の画像を取得する画像取得部110と、画像における画素または画素群について、画像の種類に応じた次数nのベクトル情報を設定し、ベクトル情報に基づいて、画像における画素または画素群に対する教師無し分類処理を行う分類処理部120と、教師無し分類処理の結果である分類結果画像に対して、近隣画素内における分類結果のバラつきを小さくするスムージング処理を行うスムージング処理部130と、スムージング処理の結果であるスムージング画像に基づいて、分類結果が同じ領域内から一以上の代表点を選定する代表点選定部150と、を備えることにより、地上(例えば農地、圃場)における調査対象とする代表地点を、より適切に選定することができる。
【0037】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、次数nとクラス数kはそれぞれ固定値であるものとして説明したが、第2実施形態では、次数(画像の種類)nとクラス数(分類数)kを変えながら、分類処理部120、およびスムージング処理部130が繰り返し処理を行い、その結果であるスムージング画像を評価する評価部140を更に備える。
図6は、第2実施形態に係る情報処理装置100Aの使用環境および構成の一例を示す図である。
【0038】
第2実施形態において、分類処理部120は、前述した複数種類の画像(例えば、レッドエッジ画像、レッド画像、近赤外線画像、グリーン画像、DSM、熱画像)のうち任意の二つ以上を選択し、選択した数をnとしてn次元ベクトルを設定する。また、分類処理部120は、クラス数kを例えば3~5の間で任意に設定する。このようにして、分類処理部120、およびスムージング処理部130は、n次元ベクトルの種類とクラス数kを変えながら繰り返し上記の処理を行い、複数のスムージング画像を生成する。
【0039】
評価部140は、複数のスムージング画像のそれぞれを評価する。例えば、第2実施形態のスムージング処理部130は、第1実施形態で説明した処理において、最頻値の頻度が第1閾値Th1以下であった画素にエラーラベルを付与する。そして、評価部140は、スムージング画像全体の画素に対してエラーラベルが付与された画素の割合が第2閾値Th2以上である場合、そのスムージング画像を「無効」と評価する。
図7は、第2実施形態のスムージング処理部130によってエラーラベルが付与されたスムージング画像の一例を示す図である。エラーラベルが付与された画素の割合が多いということは、画素の近隣領域に様々なクラスの画素が存在するという傾向があることを示しており、分類処理部120の分類結果が有効でないと考えられる現象だからである。
【0040】
第2実施形態のインターフェース部160は、例えば、評価部140によって「無効」であると評価されたスムージング画像を除外して、端末装置30に表示させる。これによって、インターフェース部160は、スムージング画像を利用者に提示する。そして、インターフェース部160は、利用者による一以上のスムージング画像の選択操作を受け付け、選択操作の結果を代表点選定部150に渡す。代表点選定部150は、インターフェース部160から渡されたスムージング画像に基づいて代表点を選定し、端末装置30に出力する。
【0041】
第2実施形態において、評価部140を省略し、全てのスムージング画像を利用者に提示し、選択させてもよい。また、利用者にスムージング画像を選択させるのではなく、「無効」と評価されたスムージング画像の除外した残りのスムージング画像の中から何らかの指標に基づいて一以上のスムージング画像を自動的に選択し、選択したスムージング画像に基づいて代表点選定部150に代表点を選定させてもよい。
【0042】
本発明の発明者は、ある圃場fについて第2実施形態に係る処理を行って選定された代表点に相当する地点について、実際に土壌調査を行い、土壌特性の測定を行った。
図8~15は、次数(画像の種類)nとクラス数(分類数)kを変えながら生成されたスムージング画像と、各クラスの分布域から取得した土壌試料の分析値を示した図である。土壌試料の分析値において、左上図は含水率[%]、中上図は粗砂画分率[%]、右上図は細砂画率[%]、左中図はシルト画分率[%]、中中図は粘土画分率[%]、右中図はpH(H
2O)、左下図は電気伝導度[mS/cm]、中下図は全炭素量[g/kg]、右下図は全窒素量[g/kg]というふうに各種指標値を表している。
【0043】
図8は、DSM、および熱画像を対象とし、クラス数5で生成したスムージング画像と、各クラスの分布域から取得した土壌試料の分析値を表している。
図9は、近赤外線画像、DSM、および熱画像を対象とし、クラス数5で生成したスムージング画像と、各クラスの分布域から取得した土壌試料の分析値を表している。
図10は、周波数帯の異なる4つの可視光画像を対象とし、クラス数3で生成したスムージング画像と、各クラスの分布域から取得した土壌試料の分析値を表している。
図11は、周波数帯の異なる4つの可視光画像を対象とし、クラス数4で生成したスムージング画像と、各クラスの分布域から取得した土壌試料の分析値を表している。
図12は、周波数帯の異なる4つの可視光画像を対象とし、クラス数5で生成したスムージング画像と、各クラスの分布域から取得した土壌試料の分析値を表している。
図13~15は、第1実施形態と同じ6種類の画像を対象とし、クラス数3~5でそれぞれ生成したスムージング画像と、各クラスの分布域から取得した土壌試料の分析値を表している。
【0044】
このように、スムージング画像におけるクラス領域の分布は、対象とする画像の種類やクラス数によって異なるものとなる。第2実施形態によれば、利用者にスムージング画像を提示して選択させることで、利用者が持っている圃場の土壌分布のイメージに合致する代表点を選定することができる。
【0045】
上記では、専ら土壌調査のための代表点を求めることについて説明したが、本発明は、他の用途にも適用することができる。例えば、作物が植えられた圃場を上空から撮像した複数種類の画像に基づいて、作物の生育具合を調査する地点である代表点を選定するのに適用することができる。用途が異なる場合、上記列挙した種類の画像だけでなく、他の種類の画像が用いられてもよい。
【0046】
以上説明した各実施形態によれば、地上における調査対象とする代表地点を、より適切に選定することができる。
【0047】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0048】
100 情報処理装置
110 画像取得部
120 分類処理部
130 スムージング処理部
140 評価部
150 代表点選定部
160 インターフェース部
200 表示装置