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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-19
(45)【発行日】2025-08-27
(54)【発明の名称】ステアリングビーム支持構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20250820BHJP
【FI】
B62D25/08 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021190135
(22)【出願日】2021-11-24
(65)【公開番号】P2023077034
(43)【公開日】2023-06-05
【審査請求日】2024-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】長澤 勇
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2003-0004733(KR,A)
【文献】特開2021-115991(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112477997(CN,A)
【文献】国際公開第2011/155031(WO,A1)
【文献】特開2015-101136(JP,A)
【文献】特開2019-059424(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0241235(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102020134995(DE,A1)
【文献】特開2021-54124(JP,A)
【文献】特開2013-124051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が収容される車室の前部における側部でありかつ前輪の後方側に設けられ上下方向に延在するフロントピラーロワと、
左右の前記フロントピラーロワの間にわたして設けられステアリング装置のステアリングコラムが取り付けられるステアリングビームと
の連結箇所に設けられるステアリングビーム支持構造であって、
前記ステアリングビームの車幅方向における端部が結合され前記フロントピラーロワとの間に間隔を有して配置される第1の面部と、
前記第1の面部における前記ステアリングビームとの接合部よりも車両前方側に設けられ前記第1の面部と前記フロントピラーロワとを連結する第2の面部と、
前記第1の面部における前記ステアリングビームとの接合部よりも車両後方側に設けられ前記第1の面部と前記フロントピラーロワとを連結する第3の面部と、
衝突時における前記フロントピラーロワの変形に応じて、前記第1の面部と前記第2の面部との接合部における前記ステアリングビームよりも下方の領域と、前記第1の面部と前記第3の面部との接合部における前記ステアリングビームよりも下方の領域との少なくとも一方に、局所的な荷重を入力する荷重入力部とを備えること
を特徴とするステアリングビーム支持構造。
【請求項2】
前記第1の面部における前記ステアリングビームが結合された領域は、前記荷重入力部による前記第1の面部と前記第2の面部との接合部と、前記第1の面部と前記第3の面部との接合部の少なくとも一方の稜線の破壊に応じて、前記ステアリングビームの中間部が端部に対して上昇する方向のモーメントを発生すること
を特徴とする請求項1に記載のステアリングビーム支持構造。
【請求項3】
前記フロントピラーロワは、スモールオーバラップオフセット衝突の衝突時に、後部が前部に対して車幅方向外側に相対変位する方向の捩じり変形を示し、
前記荷重入力部は、前記第1の面部と前記第2の面部との接合部と前記フロントピラーロワの前部とを連結する第1部材と、前記第1の面部と前記第3の面部との接合部と前記フロントピラーロワの後部とを連結する第2部材との少なくとも一方を有すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のステアリングビーム支持構造。
【請求項4】
前記第1の面部は、車両前後方向及び上下方向に延在する平面状に形成され、
前記第2の面部及び前記第3の面部は、車幅方向及び上下方向に延在する平面状に形成されること
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のステアリングビーム支持構造。
【請求項5】
前記第1の面部は、車両前後方向から見たときに、車幅方向内側が凸となる方向に湾曲した曲面状に形成されること
を特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のステアリングビーム支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントピラーロワとステアリングビームとの接続部に設けられるステアリングビーム支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、ステアリングホイールが接続されるステアリングシャフトアッパを保持するステアリングコラムを、ステアリングビームによって支持している。
ステアリングビームは、左右のフロントピラーロワの間にわたして設けられる梁状の部材である。
フロントピラーロワは、車室前部の左右に設けられ上下に延在する柱状の部材である。
【0003】
このようなステアリングビーム周辺の車体構造に関する技術として、例えば特許文献1には、車体重量及びコストを抑制し車両衝突時の入力をエプロンメンバからフロントピラーを介して車体後部に伝達する自動車の前部車体構造として、車両衝突時の入力は、サイドメンバの軸芯を通って後方に伝達されるとともに、サイドメンバから結合部材を介してエプロンメンバ、フロントピラーに伝達されることが記載されている。また、フロントピラーに伝達された荷重は、座屈エリアで吸収されつつ、荷重伝達エリアのピラーリインホースからビード15を介してベルトラインリインホースに分散されて伝達されるとともに、ルーフレール及びロッカパネルに分散されて伝達されることが記載されている。
特許文献2には、側面衝突時にBピラーの車室内側方向の倒れや、クロスメンバの折れを抑制する車体下部構造として、Bピラーの下部に側面衝突時の衝突荷重を受ける補強部材を設け、Bピラーに発生する車室内側方向へのモーメントM1を低下させることが記載されている。また、フロアクロスメンバのフランジと、結合凸部の頂部とが車体前後方向にオフセットしており、ロッカに作用する衝突荷重を結合凸部と、補強部材の縦壁部を介してフロアクロスメンバに伝達することが記載されている。
特許文献3には、ステアリングコラムを効率よく支持するステアリングコラム支持構造として、左右のフロントピラーの後壁部に、上下のボルト挿通孔に対応する位置に、円孔で構成された上下一対のボルト挿通孔がされることが記載されている。また、後壁部Aの前面には、ボルト挿通孔と同軸上にウエルドナットが溶着され、取付部をフロントピラーの後壁部に車両後方側から重ね合わせて、上下一対のボルト挿通孔にボルトをウエルドナットに螺合させてインパネリインフォースメントがフロントピラーに締結されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-148745号公報
【文献】特開2010-120525号公報
【文献】国際公開WO2011/155031A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車幅方向における側端部近傍の微小な領域にのみ車両前方側から衝突物が衝突するスモールオーバラップオフセット衝突では、オーバラップが比較的大きいオフセット衝突やフルラップ衝突に対して、衝突エネルギを十分に吸収できない状態で、車室に比較的大きな荷重が伝達され、車室の変形が生じることが懸念される。
特に、車体変形によってステアリング装置を支持するステアリングビームが前席シート側へ接近すると、ステアリング装置による乗員への影響が懸念される。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、衝突時におけるステアリング装置による乗員への加害性を抑制したステアリングビーム支持構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様に係るステアリングビーム支持構造は、乗員が収容される車室の前部における側部でありかつ前輪の後方側に設けられ上下方向に延在するフロントピラーロワと、左右の前記フロントピラーロワの間にわたして設けられステアリング装置のステアリングコラムが取り付けられるステアリングビームとの連結箇所に設けられるステアリングビーム支持構造であって、前記ステアリングビームの車幅方向における端部が結合され前記フロントピラーロワとの間に間隔を有して配置される第1の面部と、前記第1の面部における前記ステアリングビームとの接合部よりも車両前方側に設けられ前記第1の面部と前記フロントピラーロワとを連結する第2の面部と、前記第1の面部における前記ステアリングビームとの接合部よりも車両後方側に設けられ前記第1の面部と前記フロントピラーロワとを連結する第3の面部と、衝突時における前記フロントピラーロワの変形に応じて、前記第1の面部と前記第2の面部との接合部における前記ステアリングビームよりも下方の領域と、前記第1の面部と前記第3の面部との接合部における前記ステアリングビームよりも下方の領域との少なくとも一方に、局所的な荷重を入力する荷重入力部とを備えることを特徴とする。
これによれば、衝突時におけるフロントピラーロワの変形に応じて、第1の面部と第2の面部との稜線(コーナ状の接合線)、第1の面部と第3の面部との稜線の少なくとも一方を崩壊させることにより、第1の面部のステアリングビームが結合された領域を、ステアリングビームを振り上げる方向に変形させることができる。
これにより、衝突時にステアリング装置を上昇させ、ステアリングホイール等が乗員の大腿部や下腹部等に傷害を与えることを抑制できる。
【0007】
本発明において、前記第1の面部における前記ステアリングビームが結合された領域は、前記荷重入力部による前記第1の面部と前記第2の面部との接合部と、前記第1の面部と前記第3の面部との接合部の少なくとも一方の稜線の破壊に応じて、前記ステアリングビームの中間部が端部に対して上昇する方向のモーメントを発生する構成とすることができる。
これによれば、上述した効果を確実に得ることができる。
【0008】
本発明において、前記フロントピラーロワは、スモールオーバラップオフセット衝突の衝突時に、後部が前部に対して車幅方向外側に相対変位する方向の捩じり変形を示し、前記荷重入力部は、前記第1の面部と前記第2の面部との接合部と前記フロントピラーロワの前部とを連結する第1部材と、前記第1の面部と前記第3の面部との接合部と前記フロントピラーロワの後部とを連結する第2部材との少なくとも一方を有する構成とすることができる。
これによれば、スモールオーバラップオフセット衝突の発生時に特有のフロントピラーロワの変形に応じて、第1の面部と第2の面部との稜線、第1の面部と第3の面部との稜線の少なくとも一方を崩壊させることができる。
【0009】
本発明において、前記第1の面部は、車両前後方向及び上下方向に延在する平面状に形成され、前記第2の面部及び前記第3の面部は、車幅方向及び上下方向に延在する平面状に形成される構成とすることができる。
本発明において、前記第1の面部は、車両前後方向から見たときに、車幅方向内側が凸となる方向に湾曲した曲面状に形成される構成とすることができる。
これらの発明によれば、簡単な構成により上述した効果を適切に得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明によれば、衝突時におけるステアリング装置による乗員への加害性を抑制したステアリングビーム支持構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明を適用したステアリングビーム支持構造の第1実施形態を有する車両の車体構造を車両上方から見た状態を示す模式的平面視図である。
図2】第1実施形態のステアリングビーム支持構造を有する車両の車体構造を車幅方向から見た状態を示す模式的側面視図である。
図3】第1実施形態のステアリングビーム支持構造の模式的外観斜視図である。
図4】第1実施形態のステアリングビーム支持構造におけるスモールオーバラップオフセット衝突時の変形を示す図である。
図5】本発明を適用したステアリングビーム支持構造の第2実施形態の模式的外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明を適用したステアリングビーム支持構造の第1実施形態について説明する。
第1実施形態のステアリングビーム支持構造は、車室2の前方側にパワーユニットコンパートメント3が設けられた乗用車等の自動車に設けられるものである。
図1は、第1実施形態のステアリングビーム支持構造を有する車両の車体構造を車両上方から見た状態を示す模式的平面視図である。
図2は、図1の車体構造を車幅方向から見た状態を示す模式的側面視図である。
【0013】
車体構造1は、車室2とパワーユニットコンパートメント3との接合部周辺の構成に特徴を有する。
車室2は、図示しない乗員等を収容する空間部である。
パワーユニットコンパートメント3は、例えば、図示しないエンジン、トランスミッション、モータジェネレータ、及び、その補機類などのパワーユニットを収容する空間部である。
パワーユニットコンパートメント3は、車室2の前端部から車両前方側へ張り出して形成されている。
【0014】
車体構造1は、フロントピラーロワ10、フロントピラーアッパ20、トーボード30、トーボードクロスメンバ40、フロアパネル50、フロントサイドフレーム60、アッパフレーム70、ストラットハウジング80、サスペンションクロスメンバ90等を有して形成されている。
【0015】
フロントピラーロワ10は、車室の前端部かつ左右側部にそれぞれ設けられた柱状の部材である。
フロントピラーロワ10は、上下方向に延在している。
フロントピラーロワ10は、長手方向と直交する平面で切って見た断面形状が閉断面として形成されている。
フロントピラーロワ10は、図示しないフロントウインドウガラス及びフロントドアガラスの下端部よりも下方側(いわゆるグリーンハウスよりも下方側)の領域に設けられている。
【0016】
フロントピラーアッパ20は、フロントピラーロワ10の上端部から上方へ突き出した柱状の部材である。
フロントピラーロワ10、フロントピラーアッパ20は共同して車両のフロントピラー(Aピラー)を構成する。
フロントピラーアッパ20は、上端部が下端部に対して車両後方側となるように、後傾している。
また、フロントピラーアッパ20は、上端部が下端部に対して車幅方向内側となるように、内傾して配置されている。
フロントピラーアッパ20は、長手方向と直交する平面で切って見た断面形状が閉断面として形成されている。
フロントピラーアッパ20は、フロントウインドウガラスの側端部、及び、フロントドアガラスの前端部に沿って配置されている。
フロントピラーアッパ20の後端部は、図示しないルーフの側部に沿って延在する図示しないルーフサイドフレームに、連続的に接続されている。
ルーフサイドフレームには、図示しないセンターピラー(Aピラー)、リアピラー(Cピラー、Dピラー等)の上端部が接続される。
【0017】
トーボード30は、左右のフロントピラーロワ10の間にわたして設けられたパネル状の部材である。
トーボード30は、車室2の下半部における前面部を構成する部分である。
トーボード30の上部31は、車幅方向から見たときに、上下方向に沿って延在している。
トーボード30の下部32は、上部31の下端部から下方へ張り出して形成されている。
下部32は、下端部が上端部(上部31との接続部)に対して車両後方側となるように、前傾して配置されている。
【0018】
トーボードクロスメンバ40は、左右のフロントピラーロワ10の上部の間にわたして配置されている。
トーボードクロスメンバ40は、トーボード30の上部31に対して車両前方側へ張り出して形成されている。
トーボードクロスメンバ40は、フロントウインドウガラスの下端部に沿って延在している。
【0019】
フロアパネル50は、車室2の床面部を構成するパネル状の部材である。
フロアパネル50は、トーボード30の下部32の下端部から、車両後方側へ張り出して形成されている。
フロアパネル50の側端部には、サイドシル51が設けられている。
サイドシル51は、閉断面を有しかつ車両前後方向に延在する構造部材である。
サイドシル51の前端部は、フロントピラーロワ10の下端部に結合されている。
【0020】
フロントサイドフレーム60は、図示しないパワーユニット及びフロントサスペンションの一部を支持する車体の構造部材である。
フロントサイドフレーム60は、車室2の前部からパワーユニットコンパートメント3にかけて、車両前後方向に延在している。
フロントサイドフレーム60は、車両前後方向から見た断面形状が閉断面となるよう構成されている。
【0021】
フロントサイドフレーム60の前部61は、トーボード30における上部31と下部32との接合部付近から、車両前方側へ突出して形成されている。
フロントサイドフレーム60の中間部62は、トーボード30の下部32の前面(下面)に沿って配置されている。
フロントサイドフレーム60の後部63は、フロアパネル50の下面に沿って、車両前後方向に延在している。
中間部62、後部63は、トーボード30、フロアパネル50にそれぞれ溶接等によって固定されている。
【0022】
フロントサイドフレーム60は、フロントピラーロワ10よりも車幅方向内側に配置されている。
フロントサイドフレーム60は、車幅方向に離間して一対設けられている。
左右のフロントサイドフレーム60の間には、パワーユニットの主機等が配置される。
フロントサイドフレーム60の車幅方向外側には、前輪FWと、前輪FWを支持する図示しないサスペンション装置の一部が配置される。
【0023】
アッパフレーム70は、フロントピラーロワ10の前部から車両前方側へ突き出した構造部材である。
アッパフレーム70は、車両前後方向から見たときに、矩形状の閉断面形状を有する。
アッパフレーム70の前端部は、ストラットハウジング80に対して車両前方側へ突出している。
アッパフレーム70の後端部は、フロントピラーロワ10の上端部近傍において、フロントピラーロワ10の前面部に、例えば溶接等により結合されている。
【0024】
ストラットハウジング80は、サスペンション装置の一部を収容する部分である。
ストラットハウジング80は、例えば、下方側が開口したボックス状の構造体として形成することができる。
例えば、サスペンション装置がマクファーソンストラット式である場合には、ストラットハウジング80は、図示しないストラットの上部を収容する。
ストラットは、ショックアブソーバ及びその外径側に巻き回されたコイルスプリングを有する。
ショックアブソーバの下端部は、前輪FWが回転可能に取り付けられる図示しないハブベアリングハウジング(ハブナックル)に締結される。
ストラットハウジング80には、ストラットの上端部が締結される図示しないストラットトップマウント部が形成されている。
【0025】
ストラットハウジング80の下部は、フロントサイドフレーム60の前部61の車幅方向外側の部分に溶接等により結合されている。
ストラットハウジング80とフロントサイドフレーム60との結合箇所は、フロントサイドフレーム60とトーボード30との結合箇所に対して車両前方側に、トーボード30との間に間隔を有して配置されている。
ストラットハウジング80の上部は、アッパフレーム70の車幅方向内側の側面部に、溶接等により結合されている。
【0026】
サスペンションクロスメンバ90は、左右のフロントサイドフレーム60の前部61の間にわたして設けられる梁状の構造部材である。
サスペンションクロスメンバ90は、車両前後方向における位置が、ストラットハウジング80と隣接して配置されている。
サスペンションクロスメンバ90には、例えば、車両のパワーユニットが走行用動力源としてエンジンを有する場合には、エンジン主機を、弾性体を介して支持するエンジンマウントが設けられる。
また、サスペンションクロスメンバ90は、例えばトランスバースリンク(ロワアーム)などのサスペンション装置の構成部品が取り付けられる。
【0027】
第1実施形態において、車両はさらにステアリング装置100を有する。
ステアリング装置100は、前輪FWに舵角を与え車両を操向するものである。
ステアリング装置100は、ステアリングホイール101、ステアリングコラム102、ブラケット103等を有する。
【0028】
ステアリングホイール101は、図示しないドライバが操舵操作を入力する部材である。
ステアリングホイール101は、例えば円環状に形成されている。
ステアリングホイール101の中心軸は、上方から見た平面視においては、車両前後方向に沿って配置されている。
ステアリングホイール101の中心軸は、車幅方向から見た側面視においては、車両後方側が前方側に対して高くなるよう傾斜して配置されている。
【0029】
ステアリングコラム102は、図示しないステアリングシャフトを、中心軸回りに回動可能な状態で収容する部分である。
ステアリングシャフトは、ステアリングホイール101の回転を図示しないステアリングギアボックスに伝達する回転軸である。
ブラケット103は、ステアリングコラム102を、ステアリングビーム110の中間部における下部に固定する部材である。
【0030】
ステアリング装置100のステアリングコラム102は、以下説明するステアリングビーム110を介して車体構造1に取り付けられている。
ステアリングビーム110は、左右のフロントピラーロワ10の間にわたして設けられた梁状の部材である。
ステアリングビーム110の本体部は、例えば鋼製の丸パイプ材によって形成されている。
ステアリングビーム110は、ストレートな丸パイプ材を、その中心軸が車幅方向に沿うように配置して構成されている。
【0031】
図3は、第1実施形態のステアリングビーム支持構造の模式的外観斜視図であって衝突前の状態を示す図である。
ステアリングビーム110の車幅方向における両端部は、左右のフロントピラーロワ10に、以下説明するステアリングビーム固定ボックス120、固定プレート130を介して取り付けられている。
ブラケット120、固定プレート130は、フロントピラーロワ10と協働して、本発明のステアリングビーム支持構造として機能する。
【0032】
ステアリングビーム固定ボックス120は、内側側面部121、外側側面部122、前面部123、後面部124を有して構成されている。
内側側面部121、外側側面部122、前面部123、後面部124は、例えば、鋼やアルミニウム系合金などの弾性変形及び蘇生変形が可能な材料によって形成されている。
【0033】
内側側面部121は、ステアリングビーム110の車幅方向における端部から車両前後方向、上下方向に張り出した平板状の面部(第1の面部)である。
内側側面部121は、車幅方向内側から見た平面形が矩形状に形成されている。
外側側面部122は、内側側面部121の車幅方向外側に配置された平板状の面部である。
【0034】
外側側面部122は、車幅方向から見た平面形が内側側面部121と同様の矩形状に形成されている。
外側側面部122は、内側側面部121との間に車幅方向に間隔を隔てて対向して配置されている。
外側側面部122は、例えばボルト等の機械的締結手段や、溶接等によって、固定プレート130の車幅方向内側の面部に結合されている。
【0035】
前面部123は、内側側面部121の前縁部と、外側側面部122の前縁部とを接続する面部(第2の面部)である。
前面部123は、車両前後方向から見た平面形が矩形となる平板状に形成されている。
後面部124は、内側側面部121の後縁部と、外側側面部122の後縁部とを接続する面部(第3の面部)である。
後面部124は、車両前後方向から見た平面形が矩形となる平板状に形成されている。
上述した構成により、ステアリングビーム固定ボックス120は、長手方向と直交する平面で切って見た横断面形状が矩形状となる角パイプ状に形成されている。
前面部123、後面部124は、車幅方向及び上下方向に沿って延在している。
【0036】
固定プレート130は、ステアリングビーム固定ボックス120をフロントピラーロワ10の車幅方向内側の面部に固定する部材である。
固定プレート130は、車幅方向から見た平面形が矩形となる平板状に形成されている。
固定プレート130の車幅方向外側の面部は、フロントピラーロワ10の車幅方向内側の面部に当接した状態で、例えば溶接やボルト等の機械的締結手段により結合される。
固定プレート130の車幅方向内側の面部には、固定プレート130が結合される。
【0037】
固定プレート130は、突出部131、係合爪部132を有する。
突出部131は、ステアリングビーム固定ボックス120の前面部123に沿って、固定プレート130から車幅方向内側に突出している。
突出部131は、ステアリングビーム固定ボックス120の内側側面部121とステアリングビーム110との結合部よりも下方の領域において、前面部123の車幅方向外側の端縁部近傍に、例えばスポット溶接等により、局所的に接合されている。
【0038】
係合爪部132は、ステアリングビーム固定ボックス120の前面部123に沿って、固定プレート130から車幅方向内側に突出している。
係合爪部132の突端部は、内側側面部121の表面に沿うように屈曲して形成されている。
係合爪部132は、ステアリングビーム固定ボックス120の内側側面部121とステアリングビーム110との結合部よりも下方の領域において、内側側面部121の後縁部を局所的に車幅方向外側に牽引可能に構成されている。
【0039】
以下、第1実施形態のステアリングビーム支持構造を有する車両におけるスモールオーバラップオフセット衝突後の状態について説明する。
主にフロントサイドフレーム60よりも車幅方向外側の領域に、他車両等の物体が衝突するスモールオーバラップオフセット衝突においては、前輪FWがフロントピラーロワ10の前面部に衝突し、フロントピラーロワ10の中間部に局所的な変形を生じさせる。
この局所的な変形は、フロントピラーロワ10を曲げ変形させる起点として機能する。
また、アッパフレーム70への入力が他の衝突態様に対して大きくなり、アッパフレーム70が車室2に対して後退するとともに、ストラットハウジング80が圧壊してアッパフレーム70の前端部が車幅方向内側へ引き込まれる。
このような各部材の挙動により、フロントピラーロワ10の上端部近傍(アッパフレーム70との結合部近傍)は、上端部が車幅方向外側に変位する方向の傾斜変形(倒れ変形・図1の矢印A1方向)を示す。
また、フロントピラーロワ10の上端部近傍は、後部が前部に対して車幅方向外側に振り出される方向の捩じり変形(回動挙動・図1の矢印A2方向)を示す。
【0040】
このような捩じり変形(回転挙動)は、固定プレート130を介して突出部131、係合爪部132に伝達される。
突出部131は、ステアリングビーム固定ボックス120の内側側面部121と前面部123との稜線(コーナ部に設けられた接合部)を、車幅方向内側へ突いて、局所的な荷重F1を入力する。
これにより、内側側面部121と前面部123との稜線には局所的な変形が発生し、稜線が崩壊する。
係合爪部132は、ステアリングビーム固定ボックス120の内側側面部121と後面部124との稜線を、車幅方向外側へ引いて、局所的な荷重F2を入力する。
これにより、内側側面部121と後面部124との稜線には局所的な変形が発生し、稜線が崩壊する。
突出部131、係合爪部132は、本発明の荷重伝達部として機能する。
【0041】
図4は、第1実施形態のステアリングビーム支持構造におけるスモールオーバラップオフセット衝突時の変形を示す図である。
図4は、ステアリングビーム支持構造を、車両後方側(車室2の内部側)から見た状態を模式的に示している。
スモールオーバラップオフセット衝突の発生時にステアリングビーム固定ボックス120の内側側面部121と前面部123との稜線、及び、内側側面部121と後面部124との稜線が、ステアリングビーム110との結合部の下方で崩壊する。
フロントピラーロワ10の傾斜変形により、ステアリングビーム固定ボックス120の内側側面部121は、ステアリングビーム110により車幅方向内側への引張力を受ける。
このような引張力により、内側側面部121は、稜線が崩壊した箇所を変形の起点として、車両前後方向から見たときに、車幅方向内側が凸となる方向に屈曲変形が生ずる。
このような屈曲変形により、ステアリングビーム110の車幅方向外側の端部には、ステアリングビーム110の中間部を上方へ振り上げる方向のモーメントMが発生する。
【0042】
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)衝突時におけるフロントピラーロワ10の変形に応じて、ステアリングビーム固定ボックス120の内側側面部121と前面部123との稜線、内側側面部121と後面部124との稜線の少なくとも一方を崩壊させることにより、内側側面部121のステアリングビーム110が結合された領域を、ステアリングビーム110を振り上げる方向に変形させることができる。
これにより、衝突時にステアリング装置100を上昇させ、ステアリングホイール102等が乗員の大腿部や下腹部等に傷害を与えることを抑制できる。
(2)ステアリングビーム固定ボックス120の内側側面部121におけるステアリングビーム110が結合された領域は、突出部131、係合爪部132による内側側面部121と前面部123との接合部と、内側側面部121と後面部123との接合部の少なくとも一方の稜線の破壊に応じて、ステアリングビーム110の中間部が端部に対して上昇する方向のモーメントMを発生する構成とすることにより、上述した効果を確実に得ることができる。
(3)フロントピラーロワ10がスモールオーバラップオフセット衝突の発生時に捩じり変形を示し、固定プレート130を介して、フロントピラーロワ10とステアリングビーム固定ボックス120の内側側面部121と前面部123、後面部124との各稜線を連結する突出部131、係合爪部132を有することにより、スモールオーバラップオフセット衝突の発生時に、フロントピラーロワ10の捩じり変形に応じて、各稜線を適切に崩壊させることができる。
【0043】
<第2実施形態>
次に、本発明を適用したステアリングビーム支持構造の第2実施形態について説明する。
第2実施形態において、上述した第1実施形態と共通する箇所には同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図5は、第2実施形態のステアリングビーム支持構造の模式的外観斜視図であって衝突前の状態を示す図である。
第2実施形態においては、第1実施形態のステアリングビーム固定ボックス120、突出部131、係合爪部132に代えて、以下説明するステアリングビーム固定ボックス140、圧壊ベルト150を設けている。
【0044】
ステアリングビーム固定ボックス140は、車両前後方向から見た形状がD字状に形成されている。
ステアリングビーム固定ボックス140は、周面部141、前面部142、後面部143を有する。
周面部141は、車両前後方向から見た平面形が、車幅方向内側に凸となる円弧状に形成された凸曲面部である。
周面部141は、前端部から後端部にかけて、連続的に同様の断面形状を有する。
周面部141の前後方向における中間部であって、上下方向における中間部よりも上方の領域には、ステアリングビーム110の端部が溶接等によって結合されている。
前面部142、後面部143は、周面部141の前端部、後端部の開口を閉塞して設けられた平板状の部材である。
前面部142、後面部143は、車幅方向及び上下方向に延在する平面に沿って形成されている。
【0045】
圧壊ベルト150は、ステアリングビーム固定ボックス140の周面部141と前面部142との稜線、及び、周面部141と後面部143との稜線を、ステアリングビーム110よりも下方側で局所的に崩壊させる部材である。
圧壊ベルト150は、例えば鋼などの金属材料によって一体に形成されたベルト部151、突出部152,153を有する。
ベルト部151は、周面部141の下半部に沿って、車両前後方向に伸びた帯状の部材である。
突出部152,153は、固定プレート130からステアリングビーム固定ボックス140の前面部142,143に沿って車幅方向内側に突出している。
突出部152,153の突端部は、ベルト部151の前端部、後端部にそれぞれ連結されている。
ベルト部151は、スモールオーバラップオフセット衝突の発生時に、ステアリングビーム固定ボックス140の周面部141と前面部142との稜線、周面部141と後面部143との稜線を崩壊させる機能を有する。
周面部141は、稜線が崩壊した状態でステアリングビーム110から引張力を負荷された場合に、ステアリングビーム110の中間部を振り上げる方向のモーメントを発生させる。
以上説明した第2実施形態においても、上述した第1実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0046】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)ステアリングビーム支持構造、車体構造は、上述した各実施形態に限らず、適宜変更することができる。
これらを構成する各部材の形状、構造、材質、製法、配置、数量、結合手法などは、実施形態の構成に限らず、適宜変更することができる。
(2)各実施形態における第1乃至第3の面部(ステアリングビーム固定ボックス)の構成や、荷重入力部の構成は一例であって、各面部部の配置、形状や、材質、製法等は適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 車体構造 2 車室
3 パワーユニットコンパートメント
10 フロントピラーロワ 20 フロントピラーアッパ
30 トーボード 31 上部
32 下部 40 トーボードクロスメンバ
50 フロアパネル 51 サイドシル
60 フロントサイドフレーム 61 前部
62 中間部 63 後部
70 アッパフレーム 71 上面部
72 下面部 73 内側側面部
74 外側側面部 80 ストラットハウジング
90 サスペンションクロスメンバ
100 ステアリング装置 101 ステアリングホイール
102 ステアリングコラム 102 ブラケット
110 ステアリングビーム 120 ステアリングビーム固定ボックス
121 内側側面部 122 外側側面部
123 前面部 124 後面部
130 固定プレート 131 突出部
132 係合爪部 FW 前輪
140 ステアリングビーム固定ボックス
141 周面部 142 前面部
143 後面部 150 圧壊ベルト
151 ベルト部 152,153 突出部
図1
図2
図3
図4
図5