(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-21
(45)【発行日】2025-08-29
(54)【発明の名称】基板の分離方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20250822BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20250822BHJP
B28D 5/00 20060101ALI20250822BHJP
B28D 5/04 20060101ALI20250822BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
H01L21/304 631
B23K26/53
B28D5/00 Z
B28D5/04 B
(21)【出願番号】P 2021086991
(22)【出願日】2021-05-24
【審査請求日】2024-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺西 俊輔
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-092314(JP,A)
【文献】特開2014-229702(JP,A)
【文献】特開2021-034704(JP,A)
【文献】特開2020-102520(JP,A)
【文献】特開2020-074468(JP,A)
【文献】特開2019-029382(JP,A)
【文献】特開2010-029927(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0362960(US,A1)
【文献】特開2016-201575(JP,A)
【文献】特開2012-084643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B23K 26/53
B28D 5/00
B28D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、該第1の面と反対側の第2の面とを有する基板を少なくとも2枚に分離する基板の分離方法であって、
該基板に対して透過性を有する波長のレーザービームの集光点を該基板の内部に位置付けるとともに、該集光点と該基板とを第1の方向に沿って相対的に移動させながらレーザービームを照射して分離起点を形成する分離起点形成ステップと、
該第1の方向と直交する第2の方向に該集光点と該基板とを相対的に移動させる割り出し送りステップと、を備え、
該分離起点形成ステップの前に、
該レーザービームの波長に対して透過性を有する押し付け部材を該第1の面側を押し付けるように覆設する押し付け部材覆設ステップを含
み、
該分離起点形成ステップと該割り出し送りステップとを繰り返して、該基板の内部に外力を付加することなく該基板を該第1の面側と該第2の面側とに剥離可能な間隔で該分離起点を形成するとともに、該分離起点形成ステップでは、該基板を該押し付け部材で押さえつけながら該レーザービームを照射し、該分離起点を形成することを特徴とする、
基板の分離方法。
【請求項2】
該押し付け部材覆設ステップでは、外縁部に内径が該基板の外径よりも大径な環状のフレームに貼着したテープの中央を該基板の該第2の面に貼着し、該基板の外径よりも大径でかつ該フレームの内径よりも外径が小径な該押し付け部材である第2テープの中央を該基板の該第1の面に貼着し、該第2テープの外縁部を該テープに貼着することを特徴とする、
請求項1に記載の基板の分離方法。
【請求項3】
該基板は、Siインゴットを含み、
該レーザービームは、該第1の方向と直交する方向に分岐した状態で該Siインゴットに照射されることを特徴とする、
請求項1
又は請求項2に記載の基板の分離方法。
【請求項4】
該押し付け部材は、
該レーザービームの波長に対して透過性を有するテープを含む、請求項1又は請求項
3に記載の基板の分離方法。
【請求項5】
該分離起点形成ステップと該割り出し送りステップとを該基板をチャックテーブルに保持した状態で繰り返して、該基板の内部全体に該分離起点を形成した後に、該基板を該第1の面側の基板と該第2の面側の基板とに分離する分離ステップと、
該分離ステップの後に、該チャックテーブルに保持した該第2の面側の基板の表面を研削する研削ステップと、
を備える請求項1から請求項
4のうちいずれか一項に記載の基板の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスが形成されるウエーハは、一般に、ワイヤーソー等の切断装置によりインゴットからスライスされ、ラッピングやポリッシング等を経て形成される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1に示された方法は、ワイヤーソーによる切り代が大きいため、インゴットの大部分を捨てることになり不経済であるという問題があった。
【0004】
そこで、インゴットに対して透過性を有する波長のレーザービームの集光点をインゴット内部に位置づけて照射し、生成すべきウエーハの厚みに相当する剥離層を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-94221号公報
【文献】特開2016-111143号公報
【文献】特願2020-128469号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、剥離層を起点に剥離することは容易ではなく、水の層を介して超音波を印加する必要があるため、水の使用量が増えてコストがかかるという問題がある。
【0007】
また、デバイスが形成されているウエーハを2枚のウエーハに分割したい場合など、水を使用したくないプロセスにおいて剥離が不可能となるという課題も存在していた。
【0008】
そこで、加工力の強い条件にて加工を行い、剥離力の向上を試みたが、加工中にウエーハの剥離が始まることにより大きな反りが生じ、加工したい位置に加工ができずに割れ等の加工不良が発生してしまうという新たな課題が浮上した。
【0009】
本願発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、加工したい位置に分離起点を形成することができる基板の分離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の基板の分離方法は、第1の面と、該第1の面と反対側の第2の面とを有する基板を少なくとも2枚に分離する基板の分離方法であって、該基板に対して透過性を有する波長のレーザービームの集光点を該基板の内部に位置付けるとともに、該集光点と該基板とを第1の方向に沿って相対的に移動させながらレーザービームを照射して分離起点を形成する分離起点形成ステップと、該第1の方向と直交する第2の方向に該集光点と該基板とを相対的に移動させる割り出し送りステップと、を備え、該分離起点形成ステップの前に、該レーザービームの波長に対して透過性を有する押し付け部材を該第1の面側を押し付けるように覆設する押し付け部材覆設ステップを含み、該分離起点形成ステップと該割り出し送りステップとを繰り返して、該基板の内部に外力を付加することなく該基板を該第1の面側と該第2の面側とに剥離可能な間隔で該分離起点を形成するとともに、該分離起点形成ステップでは、該基板を該押し付け部材で押さえつけながら該レーザービームを照射し、該分離起点を形成することを特徴とする。
前記基板の分離方法において、該押し付け部材覆設ステップでは、外縁部に内径が該基板の外径よりも大径な環状のフレームに貼着したテープの中央を該基板の該第2の面に貼着し、該基板の外径よりも大径でかつ該フレームの内径よりも外径が小径な該押し付け部材である第2テープの中央を該基板の該第1の面に貼着し、該第2テープの外縁部を該テープに貼着してもよい。
【0011】
前記基板の分離方法において、該基板は、Siインゴットを含み、該レーザービームは、該第1の方向と直交する方向に分岐した状態で該Siインゴットに照射されても良い。
【0012】
前記基板の分離方法において、該押し付け部材は、該レーザービームの波長に対して透過性を有するテープを含んでも良い。
【0013】
前記基板の分離方法において、該分離起点形成ステップと該割り出し送りステップとを該基板をチャックテーブルに保持した状態で繰り返して、該基板の内部全体に該分離起点を形成した後に、該基板を該第1の面側の基板と該第2の面側の基板とに分離する分離ステップと、該分離ステップの後に、該チャックテーブルに保持した該第2の面側の基板の表面を研削する研削ステップと、を備えても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、加工したい位置に分離起点を形成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る基板の分離方法の加工対象の基板を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る基板の分離方法の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2に示された基板の分離方法の押し付け部材覆設ステップを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示された基板の分離方法の分離起点形成ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
【
図5】
図5は、
図2に示された基板の分離方法の分離起点形成ステップを模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図2に示された基板の分離方法の1度目の割り出し送りステップ後の分離起点形成ステップを模式的に示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図2に示された基板の分離方法の分離ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
【
図8】
図8は、
図2に示された基板の分離方法の研削ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
【
図9】
図9は、実施形態2に係る基板の分離方法の押し付け部材覆設ステップを示す斜視図である。
【
図10】
図10は、実施形態2に係る基板の分離方法の分離起点形成ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
【
図11】
図11は、実施形態1及び実施形態2の変形例に係る基板の分離方法の加工対象のSiインゴットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0017】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る基板の分離方法を図面に基づいて説明する。実施形態1に係る基板の分離方法は、
図1に示す基板1を加工する方法である。まず、実施形態1に係る分離方法の加工対象の基板1を説明する。
図1は、実施形態1に係る基板の分離方法の加工対象の基板を示す斜視図である。
【0018】
(基板)
実施形態1に係る基板の分離方法の加工対象の基板1は、シリコンで構成されている。基板1は、円形でかつ平坦な第1の面2と、円形でかつ第1の面2の反対側の平坦な第2の面3と、第1の面2と第2の面3とに連なる周面4とを有して、全体として円板状に形成されている。基板1は、第1の面2と第2の面3とが平行である。また、基板1は、周面4に、周面4を切り欠いて結晶方位を示すノッチ5が形成されている。なお、実施形態1では、基板1の厚みは、775μmである。
【0019】
(基板の分離方法)
次に、基板の分離方法を説明する。
図2は、実施形態1に係る基板の分離方法の流れを示すフローチャートである。実施形態1に係る基板の分離方法は、
図1に示す基板1を少なくとも2枚に分離する方法であり、
図2に示すように、押し付け部材覆設ステップ101と、分離起点形成ステップ102と、割り出し送りステップ104と、分離ステップ105と、研削ステップ106とを備える。
【0020】
(押し付け部材覆設ステップ)
図3は、
図2に示された基板の分離方法の押し付け部材覆設ステップを示す斜視図である。押し付け部材覆設ステップ101は、分離起点形成ステップ102の前に、分離起点形成ステップ102において基板1に照射されるレーザービーム31(
図4に示す)の波長に対して透過性を有する押し付け部材であるテープ20を基板1の第1の面2側に押し付けるように敷設するステップである。
【0021】
実施形態1において、押し付け部材覆設ステップ101では、
図3に示すように、基板1の外径よりも外径が大径でかつ外縁部に内径が基板1の外径よりも大径な環状のフレーム21に貼着した円板状のテープ20の中央を基板1の第1の面2に貼着する。なお、実施形態1では、テープ20は、粘着性と可撓性を有する樹脂で構成され、基板1及びフレーム21に貼着される粘着層と、粘着層を積層しかつ非粘着性と可撓性を有する樹脂で構成された基材層とを備える。実施形態1では、テープ20は、基板1の第1の面2側を押しつける押し付け部材である。
【0022】
(分離起点形成ステップ)
図4は、
図2に示された基板の分離方法の分離起点形成ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
図5は、
図2に示された基板の分離方法の分離起点形成ステップを模式的に示す斜視図である。分離起点形成ステップ102は、基板1に対して透過性を有する波長のレーザービーム31の集光点32を基板1の内部に位置付けるとともに、集光点32と基板1とを第1の方向8に沿って相対的に移動させながらレーザービーム31を照射して分離起点である剥離層6を形成するステップである。
【0023】
実施形態1において、分離起点形成ステップ102では、
図4に示す加工装置30が、チャックテーブル33の保持面34に基板1の第2の面3を吸引保持するとともに、チャックテーブル33の周囲の複数のクランプ部35でフレーム21を挟持する。このとき、実施形態1では、テープ20が、基板1よりも上方に位置付けられている。実施形態1において、分離起点形成ステップ102では、
図4に示す加工装置30が、撮像ユニットでチャックテーブル33に保持された基板1を撮像して、レーザービーム31を照射するレーザービーム照射ユニット36と基板1とを位置合わせするアライメントを実行する。
【0024】
なお、実施形態1において、分離起点形成ステップ102では、加工装置30は、レーザービーム照射ユニット36を基板1の外縁部の加工送り方向であるX軸方向の一端部の上方に位置付けるとともに、チャックテーブル33に保持された基板1のノッチ5が形成された位置の接線7(
図1に破線で示す)をX軸方向と平行に位置付ける。なお、加工送り方向とは、加工装置30が、レーザービーム照射ユニット36からレーザービーム31を基板1に照射しながらチャックテーブル33を移動させる方向である。
【0025】
分離起点形成ステップ102では、加工装置30が、
図4に示すように、集光点32を基板1の内部の基板1の分離する第1の面2側の基板1-1の厚みに相当する深さ37に設定して、チャックテーブル33を前述した接線7と平行な第1の方向8に沿って、基板1のX軸方向の他端部がレーザービーム照射ユニット36の下方に向かうように水平方向に移動させながらレーザービーム照射ユニット36からテープ20及び基板1に対して透過性を有する波長のレーザービーム31を照射する。実施形態1において、分離起点形成ステップ102では、加工装置30が、レーザービーム照射ユニットの図示しないビーム分岐ユニットによりレーザー発振器から出射されたレーザービーム31を複数に分岐し、
図5に示すように、複数の集光点32を第1の方向8に直交する第2の方向9に並べて基板1に照射する。なお、
図5は、クランプ部35を省略している。
【0026】
分離起点形成ステップ102では、基板1は、集光点32が内部に設定されて透過性を有する波長のレーザービーム31が照射されると、集光点32の付近に改質部6-1と、改質部6-1から伸長したクラックとを含む剥離層6が内部に形成される。分離起点形成ステップ102では、加工装置30は、基板1の外縁部のX軸方向の一端部と他端部とに亘って剥離層6を形成すると、レーザービーム照射ユニット36からのレーザービーム31の照射を停止する。
【0027】
加工装置30は、図示しない制御ユニット等が基板1の内部の前述した深さ37の全体に剥離層6を形成したか否かを判定する(ステップ103)。なお、基板1の内部の前述した深さ37の全体に剥離層6を形成したことは、外力を付加することなく基板1を第1の面2側と第2の面3側とに剥離可能な間隔で剥離層6の改質部6-1が形成されていることをいう。加工装置30は、図示しない制御ユニット等が基板1の内部の前述した深さ37の全体に剥離層6を形成していないと判定する(ステップ103:No)と、割り出し送りステップ104に進む。
【0028】
(割り出し送りステップ)
図6は、
図2に示された基板の分離方法の1度目の割り出し送りステップ後の分離起点形成ステップを模式的に示す斜視図である。
【0029】
割り出し送りステップ104は、第1の方向8と直交する第2の方向に集光点32と、基板1とを相対的に移動させるステップである。割り出し送りステップ104では、加工装置30は、チャックテーブル33を第2の方向9即ちY軸方向に移動させるとともに、第1の方向8即ちX軸方向に移動させて、レーザービーム照射ユニット36を基板1の既に剥離層6が形成された位置の隣りでかつ基板1の外縁部のX軸方向の一端部の上方の
図6に点線で示す位置に位置付ける。なお、割り出し送りステップ104においても、加工装置30は、チャックテーブル33に保持された基板1のノッチ5が形成された位置の接線7即ち第1の方向8をX軸方向と平行に位置付けて、分離起点形成ステップ102に戻る。
【0030】
戻った分離起点形成ステップ102では、前回の分離起点形成ステップ102と同様に、加工装置30が、
図6に示すように、集光点32を前述した深さ37に設定して、チャックテーブル33を第1の方向8に沿って、基板1のX軸方向の他端部がレーザービーム照射ユニット36の下方に向かうように移動させながらレーザービーム照射ユニット36から分岐したレーザービーム31を照射して、基板1の内部に改質部6-1とクラックとを含む剥離層6を形成する。分離起点形成ステップ102では、加工装置30は、基板1のX軸方向の一端部と他端部とに亘って剥離層6を形成すると、レーザービーム照射ユニット36からのレーザービーム31の照射を停止する。
【0031】
加工装置30は、再び、制御ユニット等が基板1の内部の前述した深さ37の全体に剥離層6を形成したか否かを判定し(ステップ103)、基板1の内部の前述した深さ37の全体に剥離層6を形成していないと判定する(ステップ103:No)と、割り出し送りステップ104に進んで、割り出し送りステップ104を実施した後、再び、分離起点形成ステップ102を実施する。
【0032】
こうして、加工装置30は、基板1の内部の前述した深さ37の全体に剥離層6を形成するまで、割り出し送りステップ104と分離起点形成ステップ102とを繰り返す。なお、実施形態1において、加工装置30の分離起点形成ステップ102及び割り出し送りステップ104の代表的な加工条件は、以下のとおりである。
【0033】
レーザービーム31の波長 :1342nm
レーザービーム31の繰り返し周波数 :60kHz
分岐前のレーザービーム31の平均出力 :2.0W
レーザービーム31の分岐数 :5
加工送り速度 :420mm/s
インデックス量 :50μm
なお、インデックス量とは、割り出し送りステップ104において、レーザービーム照射ユニット36とチャックテーブル33とをY軸方向に相対的に移動させる距離である。
【0034】
加工装置30は、制御ユニット等が基板1の内部の前述した深さ37の全体に剥離層6を形成したと判定する(ステップ103:Yes)と、分離ステップ105に進む。なお、基板1は、内部の前述した深さ37の全体に剥離層6が形成されると、剥離層6が前述した改質部6-1とクラックとを含むので、剥離層6を起点(境界)に、第1の面2側と第2の面3側とに分離が容易になる。
【0035】
また、分離起点形成ステップ102では、テープ20越しにレーザービーム31を照射して、基板1の内部に剥離層6を形成するので、基板1をテープ20でチャックテーブル33の保持面34に押さえつけながらレーザービーム31を照射し、剥離層6を形成する。
【0036】
(分離ステップ)
図7は、
図2に示された基板の分離方法の分離ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。分離ステップ105は、分離起点形成ステップ102と割り出し送りステップ104とを基板1をチャックテーブル33に保持した状態で繰り返して、基板1の内部全体に分離起点である剥離層6を形成した後に、基板1を第1の面2側の基板1-1と第2の面3側の基板1-2とに分離するステップである。
【0037】
実施形態1において、分離ステップ105では、加工装置30が、チャックテーブル33に基板1の第2の面3側を吸引保持した状態で、クランプ部35のフレーム21の挟持を解除し、図示しない搬送ユニットがフレーム21等を保持して、フレーム21及びテープ20をチャックテーブル33の保持面34から離れる方向に上昇させる。すると、基板1は、
図7に示すように、剥離層6を起点にチャックテーブル33に吸引保持された第2の面3側の基板1-2と、テープ20に貼着した第1の面2側の基板1-1とに分離する。
【0038】
(研削ステップ)
図8は、
図2に示された基板の分離方法の研削ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。研削ステップ106は、分離ステップ105の後に、チャックテーブル33に保持した基板1の第2の面3側の基板1-2の第1の面2側の基板1-1から剥離された剥離面である表面3-1を研削するステップである。
【0039】
実施形態1において、研削ステップ106では、加工装置30が、
図8に示すように、スピンドル38により研削ホイール39を軸心回りに回転しかつチャックテーブル33を軸心回りに回転させ、純水等の図示しない研削水を供給しつつ、研削ホイール39の研削砥石40を第2の面3側の基板1-2の表面3-1に当接させてチャックテーブル33に所定の送り速度で近づけて、研削砥石40で研削して、第2の面3側の基板1-2の表面3-1を平坦化する。
【0040】
実施形態1では、分離起点形成ステップ102と割り出し送りステップ104と分離ステップ105とに亘って、加工装置30が同じチャックテーブル33を使用して、吸引保持を解除することなく剥離層6を形成した後、研削する。一般に薄い基板1-2は、吸引保持を解除すると反りが生じるが、剥離後の基板1-2は表面や内部にクラック等が残っているため、反りとともにクラックが伸展するなどして割れてしまうおそれがある。
【0041】
そこで、実施形態1では、分離起点形成ステップ102と割り出し送りステップ104と分離ステップ105とに亘って吸引保持を解除することなく剥離層6を形成した後、基板1-2の表面3-1を研削し平坦化することでクラックの伸展を抑制し、基板1-2の割れを防ぐという効果を奏する。
【0042】
なお、基板1の剥離層6を起点に分離された第1の面2側の基板1-2は、第2の面3側から剥離された剥離面2-1が別途研削装置等により研削されて、平坦化される。
【0043】
以上説明したように、実施形態1に係る基板の分離方法は、基板1をテープ20でチャックテーブル33の保持面34に押さえつけながらレーザービーム31を照射するので、剥離層6が形成された後の特に第1の面2側の基板1-2の反りを抑制し、適切な位置に剥離層6を形成することができる。その結果、実施形態1に係る基板の分離方法は、加工不良の低減を抑制することができ、加工したい位置に分離起点である剥離層6を形成することができるという効果を奏する。
【0044】
また、実施形態1に係る基板の分離方法は、加工力の強い加工条件でも反りの影響を受けることなく適切な剥離層6を形成できるため、水を介在させて超音波振動が基板1に付与されることなく、テープ20を上昇させて基板1から離すだけで、基板1を剥離層6を起点に分離でき、基板1を容易に分離することができるという効果を奏する。
【0045】
〔実施形態2〕
次に、実施形態2に係る基板の分離方法を図面に基づいて説明する。
図9は、実施形態2に係る基板の分離方法の押し付け部材覆設ステップを示す斜視図である。
図10は、実施形態2に係る基板の分離方法の分離起点形成ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。なお、
図9及び
図10は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
実施形態2に係る基板の分離方法は、押し付け部材である第2テープ22を用いること以外、実施形態1に係る基板の分離方法と同じである。
【0047】
実施形態2に係る基板の分離方法は、押し付け部材覆設ステップ101では、
図9に示すように、外縁部にフレーム21に貼着したテープ20の中央を基板1の第2の面3に貼着し、基板1の外径よりも大径でかつフレーム21の内径よりも外径が小径な第2テープ22の中央を基板1の第1の面2に貼着し、第2テープ22の外縁部をテープ20に貼着する。第2テープ22は、基板1の第1の面2側を押しつけることとなる。なお、第2テープ22は、非粘着性と可撓性を有し、レーザービーム31の波長に対して透過性を有する樹脂で構成されていればよい。
【0048】
実施形態2に係る基板の分離方法は、分離起点形成ステップ102では、加工装置30が、
図10に示すように、チャックテーブル33の保持面34に基板1の第2の面3をテープ20を介して吸引保持し、第2テープ22越しに実施形態1と同様にレーザービーム31を照射して、基板1の内部に剥離層6を形成する。このために、実施形態2に係る基板の分離方法は、分離起点形成ステップ102では、基板1を第2テープ22でチャックテーブル33の保持面34に押さえつけながらレーザービーム31を照射する。
【0049】
実施形態2に係る基板の分離方法は、基板1を第2テープ22でチャックテーブル33の保持面34に押さえつけながらレーザービーム31を照射するので、剥離層6が形成された後の特に第1の面2側の反りを抑制し、適切な位置に剥離層6を形成することができ、実施形態1と同様に、加工不良を生じることなく、加工したい位置に分離起点である剥離層6を形成することができるという効果を奏する。
【0050】
また、実施形態2に係る基板の分離方法は、加工力の強い加工条件でも反りの影響を受けることなく適切な剥離層6を形成できるため、水を介在させて超音波振動が基板1に付与されることなく、第2テープ22をテープ20から剥離させ、上昇させて基板1から離すだけで、基板1を剥離層6を起点に分離でき、基板1を容易に分離することができるという効果を奏する。
【0051】
なお、実施形態1及び実施形態2係る基板の分離方法は、ノッチ5が形成された位置の接線7と平行な方向を第1の方向8として、この接線7と平行な方向に沿ってチャックテーブル33を水平方向に移動させながらレーザービーム31を照射して改質部6-1とクラックとを含む剥離層6を基板1の内部に形成している。しかしながら、本発明では、ノッチ5が形成された位置の接線7と平行な方向から45度傾いた方向を第1の方向8として、この接線7と平行な方向から45度傾いた方向に沿ってチャックテーブル33を水平方向に移動させながらレーザービーム31を照射して改質部6-1とクラックとを含む剥離層6を基板1の内部に形成しても良い。この場合、クラックが伸びやすいため、よりインデックス量を広げることができて加工時間を短縮できるという効果を奏する。
【0052】
〔変形例〕
次に、実施形態1及び実施形態2の変形例に係る基板の分離方法を図面に基づいて説明する。
図11は、実施形態1及び実施形態2の変形例に係る基板の分離方法の加工対象のSiインゴットの斜視図である。なお、
図11は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0053】
変形例に係る基板の分離方法は、加工対象が
図11に示すSiインゴット11(基板に相当)であり、Siインゴット11の第1の面12側の一部分をウエーハの基板として分離する方法である。
図11に示すSiインゴット11は、Si(シリコン)からなり、全体として円柱状に形成されている。実施形態1において、Siインゴット11は、円形でかつ平坦な第1の面12と、円形でかつ第1の面12の反対側の平坦な第2の面13と、第1の面12と第2の面13とに連なる周面14とを有し、第1の面12が結晶面{100}である。Siインゴット11は、周面14に、結晶方位を示す平坦な矩形状のオリエンテーションフラット15が形成されている。
【0054】
変形例に係る基板の分離方法は、分離起点形成ステップ102では、Siインゴット11をチャックテーブル33の保持面34に吸引保持し、X軸方向とオリエンテーションフラット10とのなす角度が45°となるように調整する。変形例に係る基板の分離方法は、分離起点形成ステップ102では、チャックテーブル33をX軸方向即ち第1の方向8に移動させながら実施形態1等と同様に、Siインゴット11にレーザービーム31を照射し、Siインゴット11の内部に剥離層6を形成する。
【0055】
変形例に係る基板の分離方法は、分離起点形成ステップ102では、実施形態1又は実施形態2と同様に、Siインゴット11をテープ20又は第2テープ22でチャックテーブル33の保持面34に押さえつけながらレーザービーム31を照射する。
【0056】
変形例に係る基板の分離方法は、Siインゴット11をテープ20又は第2テープ22でチャックテーブル33の保持面34に押さえつけながらレーザービーム31を照射するので、第1の面2側の反りを抑制し、実施形態1等と同様に、加工不良を生じることなく、加工したい位置に分離起点を形成することができるという効果を奏する。
【0057】
変形例に係る基板の分離方法は、分離起点形成ステップ102では、X軸方向とオリエンテーションフラット10とのなす角度が45°となるように調整して、チャックテーブル33をX軸方向即ち第1の方向8に移動させながら実施形態1等と同様に、Siインゴット11にレーザービーム31を照射し、Siインゴット11の内部に剥離層6を形成している。しかしながら、本発明では、Siインゴット11の場合でも基板1の場合でも加工送り方向は実施形態及び変形例に記載された方向に限定されない。また、オリエンテーションフラット15と平行な方向から45度傾いた方向にチャックテーブル33を移動させながら加工するとクラックが伸びやすいため、よりインデックス量を広げることができて加工時間を短縮できる。
【0058】
なお、本発明は、上記実施形態等に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。なお、本発明では、レーザービーム31を照射するレーザービーム照射ユニット36は、押し付け部材であるテープ20,22により生じる収差をキャンセルする位相変調素子(Lcos-SLM:Liquid Crystal On Silicon-Spatial Light Modulator)を備えるのが望ましい。また、本発明では、押し付け部材は、テープ20,22に限定されることなく、例えば、レーザービーム31の波長に対して透過性を有する硬質な基板(ガラス基板)でも良い。
【符号の説明】
【0059】
1 基板
1-1 第1の面側の基板
1-2 第2の面側の基板
2 第1の面
3 第2の面
3-1 表面
6 剥離層(分離起点)
8 第1の方向
9 第2の方向
11 Siインゴット(基板)
12 第1の面
13 第2の面
20 テープ(押し付け部材)
22 第2テープ(押し付け部材)
31 レーザービーム
32 集光点
101 押し付け部材覆設ステップ
102 分離起点形成ステップ
104 割り出し送りステップ
105 分離ステップ
106 研削ステップ