(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-21
(45)【発行日】2025-08-29
(54)【発明の名称】キャッチ装置
(51)【国際特許分類】
E05C 19/06 20060101AFI20250822BHJP
D06F 58/02 20060101ALI20250822BHJP
D06F 37/10 20060101ALN20250822BHJP
【FI】
E05C19/06 C
D06F58/02 R
D06F37/10
(21)【出願番号】P 2022040919
(22)【出願日】2022-03-16
【審査請求日】2024-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】片岡 邦夫
【審査官】杉田 翠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-180470(JP,A)
【文献】特開平11-172990(JP,A)
【文献】特開2017-176296(JP,A)
【文献】特表2011-513696(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0107598(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0040625(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102021108809(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 19/02
E05C 19/06
D06F 58/02
D06F 37/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の何れか一端が本体に軸支された開閉扉を閉状態で保持するために用いられ、前記本体または前記開閉扉の何れか一方に基部が取り付けられて前記基部から突出したストライカと、前記ストライカが取り付けられていない前記本体または前記開閉扉の何れか他方に取り付けられて、前記開閉扉が前記閉状態になると前記ストライカを両側から挟持する一対の挟持部が搭載されたキャッチ本体とを備えるキャッチ装置において、
前記ストライカは、
前記ストライカの先端に形成されて、前記一対の挟持部によって両側から挟持される方向である厚さ方向の寸法が、前記先端から前記ストライカの基端の方向に向かって次第に増加した後に減少する部分であるストライカ頭部と、
前記ストライカ頭部に対して前記基端側に隣接する位置に形成されて、前記一対の挟持部が前記厚さ方向の両側から嵌合すると共に、前記厚さ方向および前記ストライカの突出方向に対して直交する方向である幅方向の寸法が、前記挟持部の前記幅方向の寸法よりも大きな寸法に形成された嵌合部と、
前記嵌合部の前記幅方向の少なくとも片側に形成されて、少なくとも前記片側から前記ストライカ頭部を支持する支持部と
を備えており、
前記キャッチ本体は、
前記ストライカと面する側に形成されたキャッチ凹部と、
前記キャッチ凹部の中央に設定された前記ストライカの被挿入領域に対して、前記厚さ方向の両側に搭載された前記一対の挟持部を、前記被挿入領域の方向に付勢する一対の付勢バネと
を備え、
前記一対の挟持部は、前記挟持部の先端部分が前記被挿入領域の内側に突出した状態で、前記キャッチ本体に搭載されており、
前記キャッチ凹部内には、前記被挿入領域に対して前記厚さ方向の両側の位置に、前記ストライカ頭部を前記厚さ方向から前記挟持部に向けてガイドする厚さ方向ガイド斜面が形成されている
ことを特徴とするキャッチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のキャッチ装置において、
前記ストライカの前記支持部は、前記幅方向の少なくとも片側から前記ストライカ頭部を支持しており、
前記支持部の先端には、前記ストライカを前記キャッチ本体の前記被挿入領域に挿入する際に、前記ストライカを前記被挿入領域に向かって前記幅方向にガイドする幅方向ガイド斜面が形成されている
ことを特徴とするキャッチ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のキャッチ装置において、
前記ストライカ頭部には、
前記ストライカを前記キャッチ本体の前記被挿入領域に挿入する際に、前記被挿入領域内に突出した前記挟持部の先端部分と摺動する挿入側摺動面と、
前記ストライカを前記キャッチ本体の前記被挿入領域から抜き出す際に、前記被挿入領域内に突出した前記挟持部の先端部分と摺動する抜出側摺動面と
が形成されており、
前記挟持部の先端部分には、
前記ストライカが前記被挿入領域に挿入される際に、前記ストライカ頭部の前記挿入側摺動面と摺動する被挿入側摺動面と、
前記ストライカが前記被挿入領域から抜き出される際に、前記ストライカ頭部の前記抜出側摺動面と摺動する被抜出側摺動面と
が形成されており、
前記ストライカの挿入方向に対する前記挿入側摺動面および前記被挿入側摺動面の傾斜角度は、前記ストライカの抜き出し方向に対する前記抜出側摺動面および前記被抜出側摺動面の傾斜角度よりも小さな角度に設定されている
ことを特徴とするキャッチ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のキャッチ装置において、
前記キャッチ凹部内に形成された前記厚さ方向ガイド斜面と、前記挟持部の前記被挿入側摺動面とは、前記幅方向から見て連続した斜面を形成している
ことを特徴とするキャッチ装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載のキャッチ装置において、
前記厚さ方向ガイド斜面は、
前記被挿入領域に対して前記厚さ方向の両側で、且つ、前記一対の挟持部に対しては前記幅方向にずれている位置には、前記幅方向の両側に形成されているが、
前記被挿入領域に対して前記厚さ方向の両側で、且つ、前記一対の挟持部に対しても前記厚さ方向の両側となる位置には形成されていない
ことを特徴とするキャッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右の何れか一端が本体に軸支された開閉扉を閉状態で保持するために用いられるキャッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家電製品の中には、本体の内部に収容室が形成されており、収容室の入口を開き戸式の開閉扉で開閉するものが多く存在する。例えば、衣類乾燥機では、本体の内部に衣類を乾燥させるための収容室が形成されており、開き戸式の開閉扉を開いて収容室内に衣類を投入した後、開閉扉を閉じて衣類を乾燥するようになっている。また、オーブン調理器やグリル調理器などでは、本体の内部に調理物を加熱するための収容室が形成されており、開き戸式の開閉扉を開いて収容室内に調理物を入れた後、開閉扉を閉じて加熱を開始するようになっている。
【0003】
このような開閉扉には、扉の下端部が軸支されて上下方向に開く方式のものと、扉の左右何れかの端部が軸支されて左右方向に開く方式のものとが存在する。上下方向に開く開閉扉の場合は、扉が自重で勝手に開くことがないように、バネによって開閉扉が閉方向に付勢されることが多いが、左右方向に開く開閉扉の場合は、開閉扉が勝手に開かないようにするためにキャッチ装置が用いられることが多い。
【0004】
キャッチ装置は、家電製品などの本体に取り付けられるキャッチ本体と、開閉扉に取り付けられるストライカとを備えている。キャッチ本体の内部には、ストライカを挟持するための一対の挟持部が搭載されており、これらの挟持部は、バネの力で互いが近付く方向に付勢されている。また、ストライカは、開閉扉から突出した形状となっており、開閉扉を閉じると先端が一対の挟持部の間に来るような位置に取り付けられている。更に、ストライカの両側面には一対の凹部が形成されている。そして、開閉扉を閉じると、ストライカがバネの力に抗して一対の挟持部の間に進入して、ストライカの両側面に形成された凹部に一対の挟持部が嵌まり込む。その結果、開閉扉に取り付けられたストライカが、本体側のキャッチ本体で挟持された状態となって、開閉扉を閉状態で保持することが可能となる。また、開閉扉を開く場合は、バネの力に抗して一対の挟持部の間からストライカを抜き出すことによって、開閉扉を開くことが可能となる。
【0005】
このようなキャッチ装置では、ストライカの先端から小さな凸部を突出させると共に、キャッチ本体にも凸部が嵌合する嵌合穴を設けておき、キャッチ本体の挟持部でストライカを挟持すると、ストライカの先端の凸部がキャッチ本体の嵌合穴に嵌合するようにしたキャッチ装置も提案されている(特許文献1)。このようなキャッチ装置を開閉扉に用いれば、ストライカの先端の凸部がキャッチ本体の嵌合穴に嵌合するので、本体に対して開閉扉がガタつく事態を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、提案されている従来のキャッチ装置では、左右方向に開閉する開閉扉を閉じる際の操作感が悪化する場合があるという問題があった。この理由は、次のようなものである。先ず、左右方向に開閉する開閉扉では、開閉扉の全重量が開閉扉の軸支部分に掛かるので、軸支部分が変形し易くなっている。加えて、開閉扉にストライカが取り付けられる位置は、開閉扉が軸支される側に対して反対側となるから、開閉扉の軸支部分からストライカまでの距離が大きくなる。このため、軸支部分が僅かに変形しただけでもストライカの位置が大きく変化して、開閉扉を閉じた時に、ストライカの位置が、キャッチ本体の一対の挟持部の間からずれてしまう。その結果、ストライカがキャッチ本体の一対の挟持部の間に滑らかに入らなくなって、操作感が損なわれる場合があるためである。
【0008】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、左右方向に開閉する開閉扉を、良好な操作感で閉じることが可能なキャッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明のキャッチ装置は次の構成を採用した。すなわち、
左右の何れか一端が本体に軸支された開閉扉を閉状態で保持するために用いられ、前記本体または前記開閉扉の何れか一方に基部が取り付けられて前記基部から突出したストライカと、前記ストライカが取り付けられていない前記本体または前記開閉扉の何れか他方に取り付けられて、前記開閉扉が前記閉状態になると前記ストライカを両側から挟持する一対の挟持部が搭載されたキャッチ本体とを備えるキャッチ装置において、
前記ストライカは、
前記ストライカの先端に形成されて、前記一対の挟持部によって両側から挟持される方向である厚さ方向の寸法が、前記先端から前記ストライカの基端の方向に向かって次第に増加した後に減少する部分であるストライカ頭部と、
前記ストライカ頭部に対して前記基端側に隣接する位置に形成されて、前記一対の挟持部が前記厚さ方向の両側から嵌合すると共に、前記厚さ方向および前記ストライカの突出方向に対して直交する方向である幅方向の寸法が、前記挟持部の前記幅方向の寸法よりも大きな寸法に形成された嵌合部と、
前記嵌合部の前記幅方向の少なくとも片側に形成されて、少なくとも前記片側から前記ストライカ頭部を支持する支持部と
を備えており、
前記キャッチ本体は、
前記ストライカと面する側に形成されたキャッチ凹部と、
前記キャッチ凹部の中央に設定された前記ストライカの被挿入領域に対して、前記厚さ方向の両側に搭載された前記一対の挟持部を、前記被挿入領域の方向に付勢する一対の付勢バネと
を備え、
前記一対の挟持部は、前記挟持部の先端部分が前記被挿入領域の内側に突出した状態で、前記キャッチ本体に搭載されており、
前記キャッチ凹部内には、前記被挿入領域に対して前記厚さ方向の両側の位置に、前記ストライカ頭部を前記厚さ方向から前記挟持部に向けてガイドする厚さ方向ガイド斜面が形成されている
ことを特徴とする。
【0010】
上述した本発明のキャッチ装置では、本体または開閉扉の何れか一方にストライカを取り付けておき、本体には、ストライカを両側から挟持する一対の挟持部を内蔵したキャッチ本体を取り付けておく。ストライカには、先端のストライカ頭部に隣接する位置に、挟持部の先端部分が嵌合する嵌合部を形成し、嵌合部に対して幅方向の少なくとも片側には、ストライカ頭部を支持する支持部を形成しておく。また、キャッチ本体には、ストライカと面する側に形成されたキャッチ凹部の中央に、ストライカが挿入される被挿入領域が設定されており、一対の挟持部は、先端部分が被挿入領域内に突出した状態で搭載されている。そして、被挿入領域の厚さ方向の両側の位置には、ストライカ頭部を厚さ方向から挟持部に向けてガイドする厚さ方向ガイド斜面が形成されている。
【0011】
こうすれば、開閉扉を閉じる際に、ストライカの位置がキャッチ本体に対してストライカの厚さ方向にずれていた場合でも、キャッチ本体側に設けられた厚さ方向ガイド斜面によって、ストライカを一対の挟持部の間に、滑らかに導くことができ、その結果、操作感が悪化する事態を防止することができる。
【0012】
また、上述した本発明のキャッチ装置においては、ストライカ頭部の幅方向の少なくとも片側に設けた支持部でストライカ頭部を支持するようにして、その支持部の先端には、ストライカをキャッチ本体の被挿入領域に挿入する際に、被挿入領域に向かって幅方向にガイドする幅方向ガイド斜面を形成してもよい。
【0013】
こうすれば、ストライカの位置がキャッチ本体に対して幅方向にずれていた場合でも、開閉扉を閉じる際には、幅方向ガイド斜面でストライカを被挿入領域に向かって導くことができるので、操作感が悪化する事態を防止することができる。
【0014】
また、上述した本発明のキャッチ装置においては、ストライカ頭部の形状と、挟持部の先端部分(被挿入領域内に突出した部分の挟持部)の形状とを、それぞれ次のような形状としてもよい。先ず、ストライカ頭部には、ストライカをキャッチ本体の被挿入領域に挿入する際に、挟持部の先端部分と摺動する挿入側摺動面と、ストライカを被挿入領域から抜き出す際に、挟持部の先端部分と摺動する抜出側摺動面とを形成する。また、挟持部の先端部分には、ストライカが被挿入領域に挿入される際に、ストライカ頭部の挿入側摺動面と摺動する被挿入側摺動面と、ストライカが被挿入領域から抜き出される際に、ストライカ頭部の抜出側摺動面と摺動する被抜出側摺動面とを形成する。そして、ストライカの挿入方向に対する挿入側摺動面および被挿入側摺動面の傾斜角度は、ストライカの抜き出し方向に対する抜出側摺動面および被抜出側摺動面の傾斜角度よりも小さな角度としておいてもよい。
【0015】
こうすれば、ストライカを一対の挟持部の間に挿入するために要する力よりも、ストライカを一対の挟持部の間から抜き出すために要する力の方が大きくなる。このため、開閉扉を閉じる際には、軽い力でストライカを挿入して開閉扉を閉状態で保持することができ、それでいながら開閉扉を開く際には、ある程度の力が必要となるので、誤って開閉扉を開いてしまう事態を防止することが可能となる。
【0016】
また、上述した本発明のキャッチ装置においては、キャッチ凹部内に形成された厚さ方向ガイド斜面と、挟持部の被挿入側摺動面とが、幅方向から見て連続した斜面を形成するようにしてもよい。
【0017】
こうすれば、開閉扉を閉じる際に、厚さ方向ガイド斜面でガイドされたストライカが挟持部の被挿入側摺動面に滑らかに移動することができる。このため、開閉扉を閉じる際の操作感を、段付き感や引っ掛り感のない良好な操作感とすることが可能となる。
【0018】
また、上述した本発明のキャッチ装置においては、被挿入領域に対して厚さ方向の両側で、且つ、一対の挟持部に対しては幅方向にずれている位置には、幅方向の両側に厚さ方向ガイド斜面を形成するが、被挿入領域に対して厚さ方向の両側で、且つ、一対の挟持部に対しても厚さ方向の両側となる位置には、厚さ方向ガイド斜面を形成しないこととしてもよい。
【0019】
こうすれば、ストライカと厚さ方向ガイド斜面との接触面積が小さくなる。このため、ストライカを滑らかに被挿入領域にガイドすることができ、開閉扉を閉じる際の操作感を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施例のキャッチ装置10を搭載した衣類乾燥機1の外観形状を示した斜視図である。
【
図2】衣類乾燥機1の開閉扉3に取り付けられた本実施例のストライカ20についての説明図である。
【
図3】衣類乾燥機1の本体2に取り付けられた本実施例のキャッチ本体30の詳細な形状を示した分解組立図である。
【
図4】本実施例のキャッチ本体30の内部に搭載されている一対の挟持部33の詳細な形状を示した説明図である。
【
図5】ストライカ20が挿入されるキャッチ本体30のキャッチ凹部32cの形状を示した説明図である。
【
図6】キャッチ凹部32cに形成されたガイド斜面32fとストライカ20に形成された貫通穴22や支持部24との位置関係を示した説明図である。
【
図7】本実施例のキャッチ装置10の動作を示した説明図である。
【
図8】ストライカ20の位置が厚さ方向(上下方向)にズレた場合でも、開閉扉3を滑らかに閉じることが可能な理由を示した説明図である。
【
図9】ストライカ20の位置が幅方向(左右方向)にズレた場合でも、開閉扉3を滑らかに閉じることが可能な理由を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本実施例のキャッチ装置10を搭載した衣類乾燥機1についての説明図である。衣類乾燥機1は、前面に大きな投入口2aが開口した立方体形状の本体2と、投入口2aを開閉する開閉扉3とを備えている。開閉扉3は、前方から見て左側が本体2に軸支されることによって左右方向に開閉する開き戸式の開閉扉となっている。開閉扉3の右側面には取手3aが形成されており、取手3aを手前に引くと左側の軸支位置を中心として開閉扉3が回動して、投入口2aから衣類を投入可能となる。
【0022】
本体2には、前方から見て投入口2aの右隣りの位置に、本実施例のキャッチ装置10を構成するキャッチ本体30が搭載されている。また、詳細には後述するが、キャッチ本体30の中央には、凹形状のキャッチ凹部32cが形成されおり、キャッチ凹部32cの奥には、上下方向に向かい合わせの位置に一対の挟持部33が搭載されている。
【0023】
開閉扉3の裏面(本体2に向く面)の右側には、本実施例のキャッチ装置10を構成するストライカ20と呼ばれる部品が突設されている。ストライカ20の詳細な形状については後述するが、ストライカ20は、開閉扉3を閉じるとキャッチ本体30のキャッチ凹部32cに挿入される位置に取り付けられている。そして、キャッチ凹部32cに挿入されたストライカ20が、一対のキャッチ本体30で挟持されることによって、開閉扉3が閉状態で保持されるようになっている。
【0024】
図2は、開閉扉3の裏面に取り付けられたストライカ20についての説明図である。
図2(a)には、
図1中に矢印Aで示した方向から見て、開閉扉3に取り付けられたストライカ20が示されている。図示されるように、ストライカ20は、大まかにいうと、板状の基部20aから台形形状の板状部材が立設された形状となっており、開閉扉3に形成された取手3aの裏側の位置に、基部20aが取付ネジ3bによって取り付けられている。尚、以下では、基部20aから台形形状の板状部材が突出する方向を、ストライカ20の「突出方向」と称し、台形形状の板状部材の厚みの方向を、ストライカ20の「厚さ方向」と称し、台形形状の上辺または下辺の方向を、ストライカ20の「幅方向」と称することにする。
【0025】
図2(b)には、
図2(a)中に矢印Bで示した方向から見たストライカ20の形状が示されている。
図2(b)に示されるように、ストライカ20の先端側には、幅方向(
図2(b)の紙面上では左右方向)に長い矩形形状の貫通穴22が形成されている。このためストライカ20は、貫通穴22よりも先端側のストライカ頭部21と、貫通穴22よりも基端側(基部20a側)のストライカ本体部23とが、貫通穴22の左右(幅方向の両側)に形成された柱状の部分(以下、支持部24)によって支持された形状となっている。支持部24は、ストライカ頭部21を幅方向の両側から支持した状態となっており、支持部24の先端部分は幅方向に先細りとなる斜面形状に形成されることによって幅方向ガイド斜面24aが形成されている。
【0026】
尚、貫通穴22は、後述するキャッチ本体30に内蔵された一対の挟持部33が嵌合する部分である。従って、本実施例では、貫通穴22が本発明における「嵌合部」に対応する。また、貫通穴22は、一対の挟持部33が嵌合できれば十分であり、必ずしもストライカ20を貫通している必要はない。従って、ストライカ20の上面および下面から互いに突き合わせるように凹部を形成してもよい。
【0027】
図2(c)には、
図2(b)中の断面C-Cの位置で切断したときの断面図が示されている。図示されるように、ストライカ頭部21は、先端側および基端側のそれぞれに斜面が形成されている。詳細には後述するが、先端側に形成された斜面(挿入側摺動面21a)は、ストライカ20をキャッチ本体30のキャッチ凹部32c(
図1参照)に挿入する際に、挟持部33に当接して摺動する面となる。また、ストライカ頭部21の基端側に形成された斜面(抜出側摺動面21b)は、ストライカ20をキャッチ本体30のキャッチ凹部32cから抜き出す際に、挟持部33に当接して摺動する面となる。本実施例のストライカ20では、挿入側摺動面21aの間の角度の方が、抜出側摺動面21bの間の角度よりも、小さな角度に設定されている。
【0028】
図3は、本実施例のキャッチ本体30の詳細な形状を示した分解組立図である。図示されるように、本実施例のキャッチ本体30は、キャッチ本体30を本体2に取り付けるための取付板31と、キャッチ凹部32cが形成されると共に後述する一対の挟持部33が摺動可能に収納される収納部32と、収納部32の内部に摺動可能な状態で組付けられる一対の挟持部33と、一対の挟持部33を付勢する一対のコイルバネ34と、収納部32内に組付けられた一対の挟持部33やコイルバネ34が脱落しないように保持する保持カバー35とを備えている。
【0029】
取付板31は、中央に矩形形状の貫通窓31aが形成された板状部材であり、貫通窓31aの上下方向両側には、キャッチ本体30を本体2に取り付けるための取付穴31bが形成されている。
【0030】
収納部32は、板状の基板32aの上下方向両側に取付穴32bが形成されており、基板32aの中央に矩形形状のキャッチ凹部32cが形成された部材である。キャッチ凹部32cの周囲は枠壁32dによって矩形形状に囲われている。収納部32は、枠壁32dを取付板31の貫通窓31aに嵌め込むことによって取付板31に位置合わせした状態で、取付穴31bおよび取付穴32bに図示しない取付ボルトを挿通することによって、取付板31と一緒に本体2に共締めされる。
【0031】
また、
図3中にキャッチ凹部32cを拡大して示したように、キャッチ凹部32cの中央の奥側には、左右方向(ストライカ20の幅方向)に長い矩形形状の凹部が形成されている。この凹部からキャッチ凹部32cの入口にかけての空間が、ストライカ20が挿入される空間(被挿入領域32e)となる。
図3では、被挿入領域32eが斜線を付して表示されている。被挿入領域32eに対して上下方向(ストライカ20の厚さ方向)の両側には、奥方向に向かって先細り形状となるガイド斜面32fが形成されている。更に、ガイド斜面32fには、中央の位置に、後述する挟持部33が摺動可能に収納される摺動通路32gが開口している。また、被挿入領域32eに対して左右方向(ストライカ20の幅方向)の両側で、キャッチ凹部32cの入口部分にも、奥方向に向かって先細り形状となるガイド斜面32hが形成されている。
【0032】
尚、キャッチ凹部32c内の形状は、ストライカ20の形状に合わせた形状となっている。そこで、キャッチ凹部32c内での方向については、ストライカ20の方向に合わせて、左右方向を幅方向と称し、上下方向を厚さ方向と称することにする。また、被挿入領域32eに対して厚さ方向の両側に形成された本実施例のガイド斜面32fは、本発明における「厚さ方向ガイド斜面」に対応する。
【0033】
挟持部33は、大まかには、直方体の長手方向の先端を楔形状に突出させたような形状の部材であり、楔形状に突出した側を互いに向かい合わせた状態で、収納部32の摺動通路32gに収納されている。挟持部33の詳細な形状については後述する。また、それぞれの挟持部33は、背面側からコイルバネ34によって、互いが近付く方向に付勢されている。尚、本実施例のコイルバネ34は本発明における「付勢バネ」に対応する。更に、挟持部33のキャッチ凹部32cの奥側に取り付けられた一対の挟持部33およびコイルバネ34を保持しておくために、挟持部33には裏側から保持カバー35が取り付けられる。
【0034】
図4は、一対の挟持部33の詳細な形状を示した説明図である。
図4(a)には、
図3中で矢印Dの方向から見た詳細形状が示されており、
図4(b)には、
図3中で矢印Eの方向から見た詳細形状が示されている。
図4(a)に示されるように、挟持部33の先端部分には、「33a」と付番した傾斜面が形成されている。この傾斜面は、前述したストライカ20が一対の挟持部33の間に挿入される際に、ストライカ20の先端の挿入側摺動面21a(
図2(c)参照)が摺動する傾斜面となる。そこで以下では、この傾斜面を、被挿入側摺動面33aと称することにする。
【0035】
また、
図4(b)に示されるように、挟持部33の先端部分には、被挿入側摺動面33aと反対側にも、「33b」と付番した傾斜面が形成されている。この傾斜面は、一対の挟持部33の間に挿入されて挟持されているストライカ20を引き抜く際に、ストライカ20の先端の抜出側摺動面21b(
図2(c)参照)が摺動する傾斜面となる。そこで以下では、この傾斜面を、被抜出側摺動面33bと称することにする。更に、挟持部33には、背面側からコイルバネ34が挿入される円柱形の取付孔33cが形成されている。
【0036】
図5は、挟持部33やコイルバネ34が取り付けられた状態でのキャッチ凹部32cの内部の状態を、拡大して示した説明図である。図示されるように、一対の挟持部33は、キャッチ凹部32cの中央に形成された被挿入領域32eに、上下方向の両側から先端側が突出するような状態で取り付けられている。また、それぞれの挟持部33の両側にはガイド斜面32fが形成されているが、両側のガイド斜面32fの間に架空のガイド斜面を想定すると、挟持部33は、挟持部33の被挿入側摺動面33aが架空のガイド斜面と連続した斜面を形成するような位置となっている。
【0037】
図6は、
図5中の断面F-Fの位置で収納部32のキャッチ凹部32cを切断して得られる断面図が示されている。
図6には、参考として、キャッチ凹部32c内に挿入されるストライカ20も破線で表示されている。図示されるように、被挿入領域32eに先端が突出した挟持部33の幅方向(
図6中では左右方向)の寸法W2は、ストライカ20に形成された貫通穴22の幅方向の寸法W1よりも小さくなっている。このため、ストライカ20を被挿入領域32e内に挿入していくと、挟持部33の先端をストライカ20の貫通穴22内に嵌合させることが可能となる。尚、キャッチ凹部32c内に形成されたガイド斜面32fや、キャッチ凹部32cの入口部分に形成されたガイド斜面32hや、ストライカ20の先端の両側に形成された幅方向ガイド斜面24aの役割については、後ほど説明する。また、
図5および
図6に示されるように、ガイド斜面32fは挟持部33に対して幅方向の両側には形成されているが、挟持部33と幅方向に重なる位置にはガイド斜面32fが形成されていない。この理由についても、後ほど説明する。
【0038】
図7は、上述した本実施例のキャッチ本体30がストライカ20を保持する動作を示した断面図である。
図7(a)には、
図1に示した開閉扉3を閉じる前の状態を表している。
図7(a)に示されるように、この状態では、ストライカ20の先端のストライカ頭部21は、一対の挟持部33の間に未だ挿入されていない。開閉扉3を閉じて行くと、
図7(a)中に矢印で示したように、一対の挟持部33の間に向かってストライカ20が近づいて行き、ストライカ頭部21の先端に形成された挿入側摺動面21aが、挟持部33の先端に形成された被挿入側摺動面33aに当接する。そして、その状態から、開閉扉3を閉じる方向に力を加えると、
図7(b)に示したように、ストライカ頭部21の挿入側摺動面21aが、コイルバネ34の付勢力に抗して2つの挟持部33の間を押し広げるに従って、ストライカ頭部21が2つの挟持部33の間に挿入されて行く。
【0039】
ここで、前述したように、挟持部33の幅方向の寸法W2は、ストライカ20に形成された貫通穴22の幅方向の寸法W1よりも小さくなっている。このため、更にストライカ20を挿入していくと、
図7(c)に示すように、挟持部33の先端部分が、ストライカ20の貫通穴22に嵌まり込む。挟持部33は後側からコイルバネ34で付勢されているので、ストライカ20は挟持部33で両側から保持された状態となり、このため開閉扉3も閉状態で保持された状態となる。
【0040】
また、開閉扉3を開く場合は、開閉扉3を引くと、ストライカ20のストライカ頭部21の抜出側摺動面21bが、挟持部33の被抜出側摺動面33bに当接する。そして、更に力を加えて開閉扉3を引くと、
図7(d)に示すように、ストライカ頭部21の抜出側摺動面21bが、コイルバネ34の付勢力に抗して2つの挟持部33の間を押し広げ、押し広げるに従って、ストライカ頭部21が2つの挟持部33の間から抜き出されて行く。その結果、最終的には、
図7(a)に示す状態に戻って、開閉扉3が開いた状態となる。
【0041】
図7(b)と
図7(d)とを比較すれば明らかなように、開閉扉3を閉じる際に当接する挿入側摺動面21aおよび被挿入側摺動面33aは、開閉扉3を開く際に当接する抜出側摺動面21bおよび被抜出側摺動面33bに比べて、ストライカ20の移動方向に対する角度が小さくなっている。このため、ストライカ20のストライカ頭部21が2つの挟持部33の間を押し広げるために要する力は、開閉扉3を閉じる際の方が、開閉扉3を開く際よりも小さくなる。その結果、開閉扉3を閉じる際には軽い力で閉じることができ、開閉扉3を開く際には、ある程度の大きな力が必要となるので、うっかりと開いてしまう心配がないという優れた操作感を実現することができる。
【0042】
ここで、
図1を用いて前述したように、開閉扉3はストライカ20が取り付けられた側と反対側で軸支されているから、開閉扉3の取り付けに誤差が含まれていた場合や、開閉扉3に大きな力が掛かった場合は、ストライカ20の位置がズレてしまう。このため、開閉扉3を閉じた時に、ストライカ20の先端を、2つの挟持部33の間に滑らかに挿入させることができなくなる。
【0043】
しかし、本実施例では、
図6に示したように、挟持部33の幅方向の両側にガイド斜面32fが形成されている。更に、ストライカ20の貫通穴22は、幅方向の寸法W1が、挟持部33の幅方向の寸法W2よりも広く形成されており、しかも、貫通穴22の幅方向の両側には支持部24が形成されている。このため、
図8に例示したように、ストライカ20の位置が厚さ方向(
図8では上下方向)にズレた場合には、ストライカ20のストライカ頭部21の両側に形成された支持部24がガイド斜面32fに当接する。そして、ストライカ20は、
図8中に黒い矢印で示したように、ガイド斜面32fに沿って挟持部33の方向に導かれていく。
【0044】
また、
図5および
図6を用いて前述したように、ガイド斜面32fは、挟持部33に対して幅方向に異なる位置には、挟持部33の両側に形成されているが、挟持部33と幅方向に重なる位置にはガイド斜面32fが形成されていない。このため、ストライカ20がガイド斜面32fで導かれていく際に、ストライカ20とガイド斜面32fとの接触面積が少なくなって、ストライカ20が滑らかに導かれるようになっている。こうして、ストライカ20が導かれていくと、今度はストライカ頭部21が、挟持部33の被挿入側摺動面33aに当接するようになる。その後は、ストライカ20が挿入されるに従って、挟持部33を押し広げつつ、同時に被挿入側摺動面33aに沿って摺動することによって、最終的には、
図7(c)に示したように、挟持部33の先端がストライカ20の貫通穴22に嵌合する。
【0045】
このように、本実施例では、ストライカ20の位置が厚さ方向にズレた場合でも、ストライカ20を2つの挟持部33の間に導くことができるので、開閉扉3を閉じる際の操作感を損なうことを抑制できる。また、
図8に示したように、ガイド斜面32fと被挿入側摺動面33aとは滑らかに繋がっているので、ストライカ20がガイド斜面32fの上を摺動している状態から、被挿入側摺動面33aの上を摺動する状態に滑らかに切り替わる。このため、開閉扉3を閉じる際に、操作者が段付き感を感じる虞も生じない。
【0046】
図9は、開閉扉3を閉じる際に、ストライカ20の位置が幅方向(
図9では左右方向)にズレていた場合を例示した説明図である。図示されるように、ストライカ20の位置が幅方向(
図9では左右方向)にズレていた場合は、ストライカ20をキャッチ凹部32c内に挿入すると、ストライカ20の先端の両側に形成された幅方向ガイド斜面24aが、キャッチ凹部32cの幅方向両側の入口付近に形成されたガイド斜面32hに当接する。その結果、ストライカ20は、
図9中に黒い矢印で示したように、ガイド斜面32hに沿って挟持部33の方向に導かれていく。このため、ストライカ20の位置が幅方向にズレた場合でも、ストライカ20を2つの挟持部33の間に導くことができるので、開閉扉3を閉じる際の操作感を損なうことを抑制できる。
【0047】
以上、本実施例のキャッチ装置10について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0048】
例えば、上述した本実施例のキャッチ装置10は、開閉扉3にストライカ20が取り付けられており、本体2にキャッチ本体30が取り付けられているが、開閉扉3にキャッチ本体30を取り付けて、本体2にストライカ20を取り付けても構わない。
【符号の説明】
【0049】
1…衣類乾燥機、 2…本体、 2a…投入口、 3…開閉扉、
3a…取手、 3b…取付ネジ、 10…キャッチ装置、
20…ストライカ、 20a…基部、 21…ストライカ頭部、
21a…挿入側摺動面、 21b…抜出側摺動面、 22…貫通穴、
23…ストライカ本体部、 24…支持部、 24a…幅方向ガイド斜面、
30…キャッチ本体、 31…取付板、 31a…貫通窓、
31b…取付穴、 32…収納部、 32a…基板、 32b…取付穴、
32c…キャッチ凹部、 32d…枠壁、 32e…被挿入領域、
32f…ガイド斜面、 32g…摺動通路、 32h…ガイド斜面、
33…挟持部、 33a…被挿入側摺動面、 33b…被抜出側摺動面、
33c…取付孔、 34…コイルバネ、 35…保持カバー。