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  • 特許-チューブ容器およびその製造方法 図1
  • 特許-チューブ容器およびその製造方法 図2
  • 特許-チューブ容器およびその製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-26
(45)【発行日】2025-09-03
(54)【発明の名称】チューブ容器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 35/10 20060101AFI20250827BHJP
【FI】
B65D35/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019082268
(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2020179866
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-23
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 征記
【合議体】
【審判長】田口 傑
【審判官】武市 匡紘
【審判官】八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】実公昭45-21267(JP,Y1)
【文献】特開2013-82484(JP,A)
【文献】実開昭54-77741(JP,U)
【文献】特開2006-44768(JP,A)
【文献】特開2013-18515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が閉塞され内容物を収容することができる、樹脂材料を含むフィルム材で形成された筒状の胴部と、
前記胴部の他端に取り付けられた前記胴部の前記他端を閉塞可能な注出口部とを含むチューブ容器であって、
前記フィルム材は、
厚みが30μm以上250μm以下であり、
前記胴部は、
前記一端に、前記胴部の幅方向にわたる領域が接着されて閉塞された底部を備え、
前記底部の前記幅方向における端部と前記他端との間に、前記胴部の長さ方向に延伸する罫線を有し、
前記罫線前記フィルム材をプレスすることにより形成され、前記胴部の前記底部と前記他端とに接している、
チューブ容器。
【請求項2】
請求項1に記載のチューブ容器の製造方法であって、
胴部を、前記胴部を形成するフィルム材の融点以下の温度で加熱プレスすることにより前記胴部に罫線を形成する工程を含む、
チューブ容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ容器およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品、化粧品、食品等を充填して包装することができるチューブ容器が知られている。例えば、特許文献1には、注出口部と、肩部と、胴部とからなるチューブ容器が開示されている。特許文献1に開示されたチューブ容器では、樹脂を材料とした、200μm~400μm程度の厚みの比較的弾性率が高い(コシが強い)フィルム材を用いて剛性の高い胴部が形成される。これにより、内容物を絞り出した後に胴部が元の形状へ戻ることにより胴部の内方へ空気が流入する「エアバック」と呼ばれる現象が発生する。このため、チューブ容器では、エアバック性を重視してコシが強いフィルム材が積極的に用いられて入り。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-199280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなチューブ容器ではフィルム材のコシの強さから、内容物を絞り出す際に胴部の幅方向の両端に隙間に内容物がわずかに残留するという課題があった。図3に、内容物を絞り出す際の胴部を、長さ方向に直交する面で切断した断面図を示す。図3に示すように、フィルム材のコシの強さから、内容物を絞り出す際に胴部を押しつぶしても、幅方向の両端、すなわち、フィルム材の屈曲部周辺において押しつぶしきれない隙間が発生し、この隙間に内容物がわずかに残留することで内容物を最後まで使いきれないという課題があった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、胴部の幅方向端部において内容物が残留することを抑制できるチューブ容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一局面は、一端が閉塞され内容物を収容することができる、樹脂材料を含むフィルム材で形成された筒状の胴部と、胴部の他端に取り付けられた胴部の他端を閉塞可能な注出口部とを含むチューブ容器であって、フィルム材は、厚みが30μm以上250μm以下であり、胴部は、一端に、胴部の幅方向にわたる領域が接着されて閉塞された底部を備え、底部の幅方向における端部と他端との間に、胴部の長さ方向に延伸する罫線を有し、罫線フィルム材をプレスすることにより形成され、胴部の底部と他端とに接している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、胴部の幅方向端部において内容物が残留することを抑制できるチューブ容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るチューブ容器の正面図
図2】本発明の一実施形態に係るチューブ容器の断面図
図3】従来技術に係るチューブ容器の断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係るチューブ容器について、図を参照して説明する。本発明の一実施形態に係るチューブ容器100は、一端が閉塞された胴部10と、胴部10の他端に取り付けられた注出口部20とを含む。図1は、チューブ容器100の正面図である。図2は、内容物を絞り出す際の胴部10を、長さ方向に直交する面で切断した断面図である。
【0010】
注出口部20は、胴部10の他端に取り付けられ、胴部10の他端を閉塞可能とする部材である。注出口部20は、一例として、胴部10の他端から離れるにしたがって外径が小さくなる中空の肩部21と、肩部21の胴部10とは反対側から延出する筒状部22とを含む。筒状部22に、図示しないキャップ等を取り付けることにより胴部10の他端を閉塞することができる。
【0011】
胴部10は、一端が閉塞され内容物を収容することができる筒状の部材であって、樹脂材料を含むフィルム材を用いて形成されている。胴部10は、一端に、胴部10の幅方向にわたる領域が接着されて閉塞された底部11を備える。また、胴部10は、底部11の幅方向における両端部の少なくともいずれかと他端との間に、胴部10の長さ方向に延伸する罫線14を有する。さらに、胴部10は、一例として、幅方向の中央部に、胴部10の幅方向における端部どうしを張り合わせて形成された張り合わせ部13を備える。張り合わせ部13におけるフィルム材の張り合わせ方法としては、図2に示した、フィルム材の内面どうしを張り合わせる合掌貼りや、フィルム材の内面と外面とを張り合わせる封筒貼り等の周知の方法を用いることができる。なお、罫線14は、後述する隙間の発生を抑制するために、図1に示すように、底部11と他端とに接していることが好ましが、胴部10の長さ方向に延伸するように形成されていれば接していなくてもよい。
【0012】
罫線14を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、張り合わせ部13を形成する工程において、胴部10を、胴部10を形成するフィルム材を構成する材料の融点以下の温度で加熱プレスすることにより形成することができる。
【0013】
胴部10に用いられるフィルム材は、厚みが30μm以上250μm以下である。フィルム材の厚みが250μm以下であれば、折り曲げた際の屈曲部の曲率半径を小さくできるため、フィルム材に確実に罫線14を形成することができる。
【0014】
チューブ容器100の胴部10は、罫線14備えることにより、内容物を絞り出す際に、胴部10の幅方向端部を、罫線14を屈曲部として折り曲げることができる。図2に示すように、胴部10は、端部までむらなく押しつぶされる。この結果、胴部10の幅方向の両端において押しつぶしきれない隙間が発生することを抑制することができ、この隙間に内容物が残留することを抑制することができる。
【0015】
また、フィルム材を30μm以上250μm以下の比較的薄い厚みとすることで、フィルム材の形成に使用する材料は少なくて済みフィルム材の層構成がシンプルになるため、製造コストを抑制することができる。
【0016】
また、フィルム材が薄く弾性が低いため、比較的高価なチュービングマシンを用いることなく、袋状の包装容器を製造することができる製袋機を用いてチューブ容器100を製造でき、製造コストを抑制することができる。
【0017】
胴部10を形成するためのフィルム材は、上述の厚みであり罫線14を形成することができれば、単層フィルムであってもよいし、ラミネートや押し出しにより成形される多層フィルムであってもよい。フィルム材に含まれる樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(NY)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)等を用いることができる。また、フィルム部材は、胴部10に求められる機能に応じて、周知の機能性フィルムを含んでもよく、例えば、ガスバリア性を付与するためにアルミニウム箔やEVOH樹脂等を含んだフィルムを積層してもよい。
【実施例
【0018】
実施例1、2、および比較例1~5に係るチューブ容器を用いて、胴部10を押しつぶした際に幅方向端部に発生した隙間の大きさについて評価を行った。
【0019】
(実施例1)
実施例1として、図1に示したチューブ容器を製造した。胴部のフィルム材には、胴部の外層から順にPET(12μm)/NY(15μm)/LLDPE(100μm)を積層した多層フィルムを用いた。
【0020】
(実施例2)
実施例2と実施例1との相違点は、フィルム材の層構成である。フィルム材には、胴部の外層から順にPET(12μm)/NY(15μm)/LLDPE(50μm)を積層した多層フィルムを用いた。
【0021】
(比較例1~5)
比較例1~4として、ラミネート成形された多層フィルムをフィルム材に用いた市販のチューブ容器を用いた。また、比較例5として、ブロー成型された、単層フィルムをフィルム材に用いた市販のチューブ容器を用いた。比較例1~3および5に係るチューブ容器は、フィルム材の厚みが250μm以上であるため罫線を形成することができなかった。比較例4に係るチューブ容器は、フィルム材の厚みが250μm以下であるが罫線を設けなかった。
【0022】
内容物を充填しない実施例1、2、および比較例1~5に係るチューブ容器をそれぞれ9個準備して底部から胴部内に感圧紙を挿入した。その後、3人の成人男性により各水準のチューブ容器について3個ずつ、親指と人差し指により胴部をつまんで押しつぶして、感圧紙が発色しなかった領域を測定して胴部の幅方向端部に発生した隙間幅Wとした。隙間幅Wは、図2図3に示すように、胴部の幅方向端部に発生した隙間の、胴部の幅方向における長さである。表1に、各チューブ容器に用いたフィルム材の厚み、および測定した隙間幅Wを示す。なお、隙間幅Wの値は、9個のチューブ容器から得られた隙間幅Wの値の平均値である。
【0023】
【表1】
【0024】
表1に示すように、フィルム材の厚みが30μm以上250μm以下であり、罫線14を備える実施例1、2に係るチューブ容器では、隙間幅Wの値は0.83mm以下の小さい値であった。一方、罫線14を備えない比較例1~5に係るチューブ容器では、隙間幅Wの値は2.10mm以下の大きい値であった。この結果から、フィルム材の厚みを30μm以上250μm以下として、胴部10に罫線14を設けることにより胴部10の幅方向端部における隙間を少なくして、胴部に内容物が残留することを抑制できることが確認された。なお、罫線を設ける前の実施例1、実施例2のチューブ容器の隙間幅Wは、それぞれ1.60mm、0.90mmであった。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、医薬品、化粧品、食品等を充填できる包装容器に用いることができる。
【符号の説明】
【0026】
10 胴部
11 底部
13 張り合わせ部
14 罫線
20 注出口部
30 肩部
100 チューブ容器
図1
図2
図3