(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-26
(45)【発行日】2025-09-03
(54)【発明の名称】吸水性樹脂粒子
(51)【国際特許分類】
C08J 3/16 20060101AFI20250827BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20250827BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20250827BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20250827BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20250827BHJP
【FI】
C08J3/16 CEY
A61F13/15 310
A61F13/53
B01J20/26 D
B01J20/28 Z
(21)【出願番号】P 2021516063
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 JP2020016760
(87)【国際公開番号】W WO2020218167
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2019082023
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【氏名又は名称】沖田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100221992
【氏名又は名称】篠田 真由美
(72)【発明者】
【氏名】岡澤 志保
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-025917(JP,A)
【文献】特開2005-334616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/12
A61F 13/15
A61F 13/53
B01J 20/26
B01J 20/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(A)、(B)及び(C)をこの順で含む方法により測定されるゲル明度L
*が
43~58であり、生理食塩水保水量が45~50g/gであり、内部架橋剤による内部架橋を有する、吸水性樹脂粒子(ただし、
アゾ系化合物及び過酸化物を用いて重合を行う工程を含む方法により得られたもの、並びに、α,β-不飽和カルボン酸、その誘導体、又はそれらの塩から選ばれた水溶性モノマーの水溶液を、重合分散剤を含む重合分散媒中に分散、懸濁した状態で攪拌下に重合し、吸水性樹脂粉体を製造するにあたり、重合槽内に縦方向に延びる回転軸を配設し、前記回転軸の下部に前記重合槽底部を攪拌するパドルを装着すると共に、前記回転軸の上部に、前記回転軸から水平に延びる水平部材と前記水平部材から直角方向に延びる部材とからなる格子翼を装着し、かつ、前記重合槽の側壁面に、前記回転軸方向に沿う複数本の邪魔板を間隔をおいて配設した重合槽内で、攪拌しつつ重合を行なうことを特徴とする吸水性樹脂粉体の製造方法により得られたものを除く。)。
(A)内径30mmの色差計用無色透明丸型セル内に、吸水性樹脂粒子0.1gを均一に散布する。
(B)イオン交換水5.0gを前記丸型セルに添加し、前記吸水性樹脂粒子に吸水させる。
(C)イオン交換水添加5分後に、得られたゲルの明度L
*を黒色背景で測定する。
【請求項2】
無加圧DW5分値が30ml/g以上である、請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸水性樹脂粒子を含有する、吸収体。
【請求項4】
請求項3に記載の吸収体を備える、吸収性物品。
【請求項5】
おむつである、請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
下記工程(A)、(B)及び(C)をこの順で含む方法により測定されるゲル明度L
*が
43~58であり、かつ生理食塩水保水量が45~50g/gである吸水性樹脂粒子を選別することを含む、内部架橋剤による内部架橋を有する吸水性樹脂粒子の製造方法
(ただし、アゾ系化合物及び過酸化物を用いて重合を行う工程を含むものを除く。)。
(A)内径30mmの色差計用無色透明丸型セル内に、吸水性樹脂粒子0.1gを均一に散布する。
(B)イオン交換水5.0gを前記丸型セルに添加し、前記吸水性樹脂粒子に吸水させる。
(C)イオン交換水添加5分後に、得られたゲルの明度L
*を黒色背景で測定する。
【請求項7】
下記工程(A)、(B)及び(C)をこの順で含む方法により測定される吸水性樹脂粒子のゲル明度L
*を
43~58に調整することを含む、内部架橋剤による内部架橋を有する前記吸水性樹脂粒子
(ただし、アゾ系化合物及び過酸化物を用いて重合を行う工程を含む方法により得られたものを除く。)を含有する吸収体の吸収量を向上させる方法。
(A)内径30mmの色差計用無色透明丸型セル内に、吸水性樹脂粒子0.1gを均一に散布する。
(B)イオン交換水5.0gを前記丸型セルに添加し、吸水性樹脂粒子に吸水させる。
(C)イオン交換水添加5分後に、得られたゲルの明度L
*を黒色背景で測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂は、衛生用品の分野で使用されており、具体的には、おむつ等の吸収性物品に含まれる吸収体の材料として使用されている。吸収体の製造においては、例えば、パルプの性質を調整することにより吸収体の吸収効率を向上させることが試みられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、吸収体の吸収性能向上には改善の余地がある。本発明は、吸収量に優れる吸収体を与える吸水性樹脂粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、吸水性樹脂粒子によって、約50倍程度に膨潤させた際のゲルの明度に差があり、かつゲル明度が所定の範囲内であると吸収体膨潤容量に優れることを初めて見出した。
【0006】
本発明の吸水性樹脂粒子は、下記工程(A)、(B)及び(C)をこの順で含む方法により測定されるゲル明度L*が8~60である。
(A)内径30mmの色差計用無色透明丸型セル内に、吸水性樹脂粒子0.1gを均一に散布する。
(B)イオン交換水5.0gを上記丸型セルに添加し、上記吸水性樹脂粒子に吸水させる。
(C)イオン交換水添加5分後に、得られたゲルの明度L*を黒色背景で測定する。
【0007】
上記吸水性樹脂粒子によって、吸収量に優れる吸収体を得ることができる。
【0008】
上記吸水性樹脂粒子は、生理食塩水保水量が30~60g/gであることが好ましい。
【0009】
上記吸水性樹脂粒子は、無加圧DW5分値が30ml/g以上であることが好ましい。
【0010】
本発明はまた、上記吸水性樹脂粒子を含有する、吸収体を提供する。
【0011】
本発明はまた、上記吸収体を備える吸収性物品を提供する。
【0012】
本発明はまた、おむつである吸収性物品を提供する。
【0013】
本発明はまた、下記工程(A)、(B)及び(C)をこの順で含む方法により測定されるゲル明度L*が8~60である吸水性樹脂粒子を選別することを含む、吸水性樹脂粒子の製造方法を提供する。
(A)内径30mmの色差計用無色透明丸型セル内に、吸水性樹脂粒子0.1gを均一に散布する。
(B)イオン交換水5.0gを上記丸型セルに添加し、上記吸水性樹脂粒子に吸水させる。
(C)イオン交換水添加5分後に、得られたゲルの明度L*を黒色背景で測定する。
【0014】
上記製造方法により得られる吸水性樹脂粒子を用いた吸収体は、高い吸収量を有することができる。
【0015】
本発明はまた、下記工程(A)、(B)及び(C)をこの順で含む方法により測定される吸水性樹脂粒子のゲル明度L*を調整することを含む、上記吸水性樹脂粒子を含有する吸収体の吸収量を向上させる方法を提供する。
(A)内径30mmの色差計用無色透明丸型セル内に、吸水性樹脂粒子0.1gを均一に散布する。
(B)イオン交換水5.0gを上記丸型セルに添加し、上記吸水性樹脂粒子に吸水させる。
(C)イオン交換水添加5分後に、得られたゲルの明度L*を黒色背景で測定する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、吸収量に優れる吸収体を与える吸水性樹脂粒子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】撹拌翼(平板部にスリットを有する平板翼)の概形を示す平面図である。
【
図5】(a)は実施例1、(b)は比較例3のゲルを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0019】
本明細書において、「アクリル」及び「メタクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」と表記する。「アクリレート」及び「メタクリレート」も同様に「(メタ)アクリレート」と表記する。「(ポリ)」とは「ポリ」の接頭語がある場合とない場合の双方を意味するものとする。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「水溶性」とは、25℃において水に5質量%以上の溶解性を示すことをいう。本明細書に例示する材料は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「生理食塩水」とは、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液をいう。
【0020】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、下記工程(A)、(B)及び(C)をこの順で含む方法により測定されるゲル明度L*が、8~60である。
(A)内径30mmの色差計用無色透明丸型セル内に、吸水性樹脂粒子0.1gを均一に散布する。
(B)イオン交換水5.0gを上記丸型セルに添加し、上記吸水性樹脂粒子に吸水させる。
(C)イオン交換水添加5分後に、得られたゲルの明度L*を黒色背景で測定する。
【0021】
本明細書における明度L*とは、L*a*b*表色系におけるものであり、0~100の範囲で示される。ゲル明度L*の更に具体的な測定方法は後述の実施例に示される。
【0022】
本実施形態においてゲル明度は黒色背景を用いて測定されるため、ゲルの光透過性が高いほど、ゲル明度はより低い値となる。ゲル明度L*が8~60の範囲内である吸水性樹脂粒子を吸収体に用いると、該吸収体は高い吸収量を有することができる。このような効果が得られる原因は明らかではないが、本発明者は下記のように推察している。ただし、本発明は下記機構に限定されない。ゲル明度L*が所定範囲内である本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、粒子それぞれがより均一に架橋されており、かつ粒子内の架橋がより均一であるために、約50倍程度に膨潤させた際に、粒子それぞれが均一に吸液し、かつ粒子内でも均一に膨潤することによって、ゲル全体としての明度が60以下になると考えられる。また、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、ゲル明度L*が所定範囲内であることによって、吸収体に用いた際に、粒子それぞれ、及び粒子内で、よりむらなく吸水することができ、吸収体としての吸収量が向上すると考えられる。
【0023】
ゲル明度L*は、吸収体の吸収量をより向上させる観点から、58以下であることが好ましく、55以下であることがより好ましく、50以下であることが更に好ましく、45以下であることがより更に好ましい。ゲル明度L*は、例えば、10以上、20以上、30以上、又は35以上であってもよい。
【0024】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、吸水前の乾燥状態での明度L*が、例えば91以上又は95以上であってよい。なお、乾燥状態での明度L*とは、含水率が10質量%以下である吸水性樹脂粒子の明度L*を指す。
【0025】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の生理食塩水保水量は、吸収体の吸収量を高めやすい観点から、20g/g以上、30g/g以上、35g/g以上、38g/g以上、40g/g以上、42g/g以上、又は45g/g以上が好ましい。吸水性樹脂粒子の生理食塩水保水量は、80g/g以下、75g/g以下、70g/g以下、65g/g以下、60g/g以下、又は55g/g以下であってよい。吸水性樹脂粒子の生理食塩水保水量は、20~80g/gが好ましく、30~55g/gがより好ましい。保水量は、25℃における値であってよい。吸水性樹脂粒子の生理食塩水保水量は、後述する実施例に記載の方法によって測定できる。
【0026】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、無加圧DWの5分値が、例えば30~80ml/gであってよい。無加圧DWの5分値は、吸収体の吸収量を高めやすい観点から、37ml/g以上であることが好ましく、41ml/g以上であることがより好ましく、44ml/g以上であることが更に好ましい。無加圧DWの5分値は、例えば70ml/g以下であってよい。
【0027】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の純水吸水量(イオン交換水吸水量)は、100~1000g/gであってよく、200~800g/g又は300~700g/gであってよい。純水吸水量は、25℃における値であってよい。吸水性樹脂粒子の純水吸水量は、後述の実施例に記載の方法によって測定できる。
【0028】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の形状としては、略球状、破砕状、顆粒状等が挙げられる。また、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、各々が単一の粒子からなる形態のほかに、微細な粒子(一次粒子)が凝集した形態(二次粒子)であってもよい。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子(吸水前の吸水性樹脂粒子)の中位粒子径は、250~850μm、300~700μm、300~600μm、330~500μm、又は350~400μmであってよい。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、後述する製造方法により得られた時点で所望の粒度分布を有していてよいが、篩による分級を用いた粒度調整等の操作を行うことにより粒度分布を調整してもよい。
【0029】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、例えば、重合体粒子として、エチレン性不飽和単量体を含有する単量体を重合させて得られる架橋重合体(エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体)を含むことができる。すなわち、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する重合体を含むことが可能であり、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子を含むことができる。エチレン性不飽和単量体としては、水溶性エチレン性不飽和単量体を用いることができる。重合方法としては、逆相懸濁重合法、水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等が挙げられる。これらのなかでは、得られる吸水性樹脂粒子の良好な吸水特性(保水量等)の確保、及び、重合反応の制御が容易である観点から、逆相懸濁重合法又は水溶液重合法が好ましい。以下においては、エチレン性不飽和単量体を重合させる方法として、逆相懸濁重合法を例にとって説明する。
【0030】
エチレン性不飽和単量体は水溶性であることが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸及びその塩、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。エチレン性不飽和単量体がアミノ基を有する場合、当該アミノ基は4級化されていてもよい。エチレン性不飽和単量体は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。上述の単量体のカルボキシル基、アミノ基等の官能基は、後述する表面架橋工程において架橋が可能な官能基として機能し得る。
【0031】
これらのなかでも、工業的に入手が容易である観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、並びに、N,N-ジメチルアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸及びその塩、並びに、アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことがより好ましい。吸水特性(保水量等)を更に高める観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが更に好ましい。すなわち、吸水性樹脂粒子は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種に由来する構造単位を有することが好ましい。
【0032】
吸水性樹脂粒子を得るための単量体としては、上述のエチレン性不飽和単量体以外の単量体が使用されてもよい。このような単量体は、例えば、上述のエチレン性不飽和単量体を含む水溶液に混合して用いることができる。エチレン性不飽和単量体の使用量は、単量体全量(吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量。例えば、架橋重合体の構造単位を与える単量体の全量。以下同様。)に対して70~100モル%であってよく、80~100モル%、90~100モル%、95~100モル%、又は100モル%であってよい。なかでも、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が単量体全量に対して70~100モル%であってよく、80~100モル%、90~100モル%、95~100モル%、又は100モル%であってよい。「(メタ)アクリル酸及びその塩の割合」は、(メタ)アクリル酸及びその塩の合計量の割合を意味する。
【0033】
本実施形態によれば、吸水性樹脂粒子の一例として、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70~100モル%である、吸水性樹脂粒子を提供することができる。
【0034】
エチレン性不飽和単量体は、通常、水溶液として用いることが好適である。エチレン性不飽和単量体を含む水溶液(以下、単に「単量体水溶液」という)におけるエチレン性不飽和単量体の濃度は、20質量%以上飽和濃度以下が好ましく、25~70質量%がより好ましく、30~55質量%が更に好ましい。水溶液において使用される水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。
【0035】
単量体水溶液は、エチレン性不飽和単量体が酸基を有する場合、その酸基をアルカリ性中和剤によって中和して用いてもよい。エチレン性不飽和単量体における、アルカリ性中和剤による中和度は、得られる吸水性樹脂粒子の浸透圧を高くし、吸水特性(保水量等)を更に高める観点から、エチレン性不飽和単量体中の酸性基の10~100モル%であることが好ましく、50~90モル%であることがより好ましく、60~80モル%であることが更に好ましい。アルカリ性中和剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニアなどが挙げられる。アルカリ性中和剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。アルカリ性中和剤は、中和操作を簡便にするために水溶液の状態で用いられてもよい。エチレン性不飽和単量体の酸基の中和は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を上述の単量体水溶液に滴下して混合することにより行うことができる。
【0036】
逆相懸濁重合法においては、界面活性剤の存在下、炭化水素分散媒中で単量体水溶液を分散し、ラジカル重合開始剤等を用いてエチレン性不飽和単量体の重合を行うことができる。
【0037】
界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルメチルタウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0038】
W/O型逆相懸濁の状態が良好であり、好適な粒子径を有する吸水性樹脂粒子が得られやすく、工業的に入手が容易である観点から、界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。吸水性樹脂粒子の適切な粒度分布が得られやすい観点、並びに、吸水性樹脂粒子の吸水特性(保水量等)及びそれを用いた吸収体及び吸収性物品の性能が向上しやすい観点から、界面活性剤は、ショ糖脂肪酸エステルを含むことが好ましく、ショ糖ステアリン酸エステルがより好ましい。
【0039】
界面活性剤の使用量は、使用量に対する効果が充分に得られる観点、及び、経済的である観点から、単量体水溶液100質量部に対して、0.05~10質量部が好ましく、0.08~5質量部がより好ましく、0.1~3質量部が更に好ましい。
【0040】
逆相懸濁重合では、上述の界面活性剤と共に高分子系分散剤を併せて用いてもよい。高分子系分散剤としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。高分子系分散剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。高分子系分散剤としては、単量体の分散安定性に優れる観点から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、及び酸化型エチレン・プロピレン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0041】
高分子系分散剤の使用量は、使用量に対する効果が充分に得られる観点、及び、経済的である観点から、単量体水溶液100質量部に対して、0.05~10質量部が好ましく、0.08~5質量部がより好ましく、0.1~3質量部が更に好ましい。
【0042】
炭化水素分散媒は、炭素数6~8の鎖状脂肪族炭化水素、及び、炭素数6~8の脂環式炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含んでいてもよい。炭化水素分散媒としては、n-ヘキサン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、n-オクタン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、trans-1,2-ジメチルシクロペンタン、cis-1,3-ジメチルシクロペンタン、trans-1,3-ジメチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。炭化水素分散媒は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0043】
炭化水素分散媒は、工業的に入手が容易であり、かつ、品質が安定している観点から、n-ヘプタン及びシクロヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよい。また、同様の観点から、上述の炭化水素分散媒の混合物としては、例えば、市販されているエクソールヘプタン(エクソンモービル社製:n-ヘプタン及び異性体の炭化水素75~85%含有)を用いてもよい。
【0044】
炭化水素分散媒の使用量は、重合熱を適度に除去し、重合温度を制御しやすい観点から、単量体水溶液100質量部に対して、30~1000質量部が好ましく、40~500質量部がより好ましく、50~400質量部が更に好ましい。炭化水素分散媒の使用量が30質量部以上であることにより、重合温度の制御が容易である傾向がある。炭化水素分散媒の使用量が1000質量部以下であることにより、重合の生産性が向上する傾向があり、経済的である。
【0045】
ラジカル重合開始剤は水溶性であることが好ましく、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート、過酸化水素等の過酸化物;2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-フェニルアミジノ)プロパン]2塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-アリルアミジノ)プロパン]2塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}2塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等のアゾ化合物などが挙げられる。ラジカル重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩酸塩、及び2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}2塩酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましく、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム又は過硫酸ナトリウムがより好ましく、過硫酸ナトリウムが更に好ましい。
【0046】
ラジカル重合開始剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体1モルに対して0.05~10ミリモルであってよい。ラジカル重合開始剤の使用量が0.05ミリモル以上であると、重合反応に長時間を要さず、効率的である。ラジカル重合開始剤の使用量が10ミリモル以下であると、急激な重合反応が起こることを抑制しやすい。
【0047】
上述のラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L-アスコルビン酸等の還元剤と併用して、レドックス重合開始剤として用いることもできる。
【0048】
重合反応の際、重合に用いる単量体水溶液は、連鎖移動剤を含んでいてもよい。連鎖移動剤としては、次亜リン酸塩類、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、アミン類等が挙げられる。
【0049】
吸水性樹脂粒子の粒子径を制御するために、重合に用いる単量体水溶液は、増粘剤を含んでいてもよい。増粘剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。なお、重合時の撹拌速度が同じであれば、単量体水溶液の粘度が高いほど、得られる粒子の中位粒子径は大きくなる傾向にある。
【0050】
重合の際に自己架橋による内部架橋が生じ得るが、内部架橋剤を用いることで架橋を施してもよい。内部架橋剤を用いると、吸水性樹脂粒子の吸水特性(保水量等)を制御しやすい。内部架橋剤は、通常、重合反応の際に反応液に添加される。内部架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類のジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;上述のポリオール類と不飽和酸(マレイン酸、フマール酸等)とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類;N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;ポリイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)と(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類;アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、N,N’,N”-トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等の、重合性不飽和基を2個以上有する化合物;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;イソシアネート化合物(2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)などの、反応性官能基を2個以上有する化合物などが挙げられる。内部架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。内部架橋剤としては、ポリグリシジル化合物が好ましく、ジグリシジルエーテル化合物がより好ましく、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種が更に好ましい。
【0051】
内部架橋剤の使用量は、吸収性物品において優れた吸収体膨潤容量を得やすい観点、及び、得られる重合体が適度に架橋されることにより水溶性の性質が抑制され、充分な吸水量が得られやすい観点から、エチレン性不飽和単量体1モル当たり、30ミリモル以下が好ましく、0.01~10ミリモルがより好ましく、0.012~5ミリモルが更に好ましく、0.015~1ミリモルが特に好ましく、0.02~0.1ミリモルが極めて好ましく、0.025~0.08ミリモルが非常に好ましい。
【0052】
エチレン性不飽和単量体、ラジカル重合開始剤、必要に応じて内部架橋剤を含む水相と、炭化水素分散媒、界面活性剤、必要に応じて高分子系分散剤等を含む油相とを混合した状態において撹拌下で加熱し、油中水系において逆相懸濁重合を行うことができる。
【0053】
逆相懸濁重合を行う際には、界面活性剤(必要に応じて更に高分子系分散剤)の存在下で、エチレン性不飽和単量体を含む単量体水溶液を炭化水素分散媒に分散させる。このとき、重合反応を開始する前であれば、界面活性剤、高分子系分散剤等の添加時期は、単量体水溶液の添加の前後どちらであってもよい。
【0054】
そのなかでも、得られる吸水性樹脂に残存する炭化水素分散媒の量を低減しやすい観点から、高分子系分散剤を分散させた炭化水素分散媒に単量体水溶液を分散させた後に界面活性剤を更に分散させてから重合を行うことが好ましい。
【0055】
逆相懸濁重合は、1段、又は2段以上の多段で行うことができる。逆相懸濁重合は、生産性を高める観点から、2~3段で行うことが好ましい。
【0056】
2段以上の多段で逆相懸濁重合を行う場合には、1段目の逆相懸濁重合を行った後、1段目の重合反応で得られた反応混合物にエチレン性不飽和単量体を添加して混合し、1段目と同様の方法で2段目以降の逆相懸濁重合を行えばよい。2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、エチレン性不飽和単量体の他に、上述のラジカル重合開始剤及び/又は内部架橋剤を、2段目以降の各段における逆相懸濁重合の際に添加するエチレン性不飽和単量体の量を基準として、上述のエチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して逆相懸濁重合を行うことが好ましい。なお、2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、必要に応じて内部架橋剤を用いてもよい。内部架橋剤を用いる場合は、各段に供するエチレン性不飽和単量体の量を基準として、上述のエチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して逆相懸濁重合を行うことが好ましい。
【0057】
重合反応の温度は、使用するラジカル重合開始剤によって異なるが、重合を迅速に進行させ、重合時間を短くすることにより、経済性を高めるとともに、容易に重合熱を除去して円滑に反応を行う観点から、20~150℃が好ましく、40~120℃がより好ましい。反応時間は、通常、0.5~4時間である。重合反応の終了は、例えば、反応系内の温度上昇の停止により確認することができる。これにより、エチレン性不飽和単量体の重合体は、通常、含水ゲルの状態で得られる。
【0058】
重合後、得られた含水ゲル状重合体に重合後架橋剤を添加して加熱することで架橋を施してもよい。重合後に架橋を行うことで含水ゲル状重合体の架橋度を高めて吸水特性(保水量等)を更に向上させることができる。
【0059】
重合後架橋を行うための架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等の、2個以上のエポキシ基を有する化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の、2個以上のイソシアネート基を有する化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物などが挙げられる。これらのなかでも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物が好ましい。架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0060】
重合後架橋剤の量は、好適な吸水特性(保水量等)が得られやすい観点から、エチレン性不飽和単量体1モル当たり、30ミリモル以下、10ミリモル以下、又は0.01~5ミリモルであってよい。
【0061】
重合後架橋剤の添加時期としては、重合に用いられるエチレン性不飽和単量体の重合後であればよく、多段重合の場合は、多段重合後に添加されることが好ましい。なお、重合時及び重合後の発熱、工程遅延による滞留、架橋剤添加時の系の開放、及び架橋剤添加に伴う水の添加等による水分の変動を考慮して、重合後架橋剤は、含水率(後述)の観点から、[重合直後の含水率±3質量%]の領域で添加することが好ましい。
【0062】
引き続き、得られた含水ゲル状重合体から水分を除去するために乾燥を行うことにより重合体粒子(例えば、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する重合体粒子)が得られる。乾燥方法としては、例えば、(a)含水ゲル状重合体が炭化水素分散媒に分散した状態で、外部から加熱することにより共沸蒸留を行い、炭化水素分散媒を還流させて水分を除去する方法、(b)デカンテーションにより含水ゲル状重合体を取り出し、減圧乾燥する方法、(c)フィルターにより含水ゲル状重合体をろ別し、減圧乾燥する方法等が挙げられる。なかでも、製造工程における簡便さから、(a)の方法を用いることが好ましい。
【0063】
重合反応時の撹拌機の回転数を調整することによって、あるいは、重合反応後又は乾燥の初期において凝集剤を系内に添加することによって吸水性樹脂粒子の粒子径を調整することができる。凝集剤を添加することにより、得られる吸水性樹脂粒子の粒子径を大きくすることができる。凝集剤としては、無機凝集剤を用いることができる。無機凝集剤(例えば粉末状無機凝集剤)としては、シリカ、ゼオライト、ベントナイト、酸化アルミニウム、タルク、二酸化チタン、カオリン、クレイ、ハイドロタルサイト等が挙げられる。凝集効果に優れる観点から、凝集剤としては、シリカ、酸化アルミニウム、タルク及びカオリンからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0064】
逆相懸濁重合において、凝集剤を添加する方法としては、重合で用いられるものと同種の炭化水素分散媒又は水に凝集剤を予め分散させてから、撹拌下で、含水ゲル状重合体を含む炭化水素分散媒中に混合する方法が好ましい。
【0065】
凝集剤の添加量は、重合に使用するエチレン性不飽和単量体100質量部に対して、0.001~1質量部が好ましく、0.005~0.5質量部がより好ましく、0.01~0.2質量部が更に好ましい。凝集剤の添加量が上述の範囲内であることによって、目的とする粒度分布を有する吸水性樹脂粒子が得られやすい。
【0066】
吸水性樹脂粒子の製造においては、乾燥工程(水分除去工程)又はそれ以降の工程において、架橋剤を用いて含水ゲル状重合体の表面部分(表面及び表面近傍)の表面架橋が行われることが好ましい。表面架橋を行うことで、吸水性樹脂粒子のゲル明度、吸水特性(保水量等)などを制御しやすい。表面架橋は、含水ゲル状重合体が特定の含水率であるタイミングで行われることが好ましい。表面架橋の時期は、含水ゲル状重合体の含水率が5~50質量%である時点が好ましく、10~40質量%である時点がより好ましく、15~35質量%である時点が更に好ましい。
【0067】
含水ゲル状重合体の含水率(質量%)は、次の式で算出される。
含水率=[Ww/(Ww+Ws)]×100
Ww:全重合工程の重合前の単量体水溶液に含まれる水分量から、乾燥工程により系外部に排出された水分量を差し引いた量に、凝集剤、表面架橋剤等を混合する際に必要に応じて用いられる水分量を加えた含水ゲル状重合体の水分量。
Ws:含水ゲル状重合体を構成するエチレン性不飽和単量体、架橋剤、開始剤等の材料の仕込量から算出される固形分量。
【0068】
表面架橋を行うための架橋剤(表面架橋剤)としては、例えば、反応性官能基を2個以上有する化合物を挙げることができる。表面架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、3-ブチル-3-オキセタンメタノール、3-メチル-3-オキセタンエタノール、3-エチル-3-オキセタンエタノール、3-ブチル-3-オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物などが挙げられる。表面架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。表面架橋剤としては、ポリグリシジル化合物が好ましく、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、及びポリグリセロールポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種がより好ましい。
【0069】
表面架橋剤の使用量は、好適な吸水特性(保水量等)が得られやすい観点から、重合に使用するエチレン性不飽和単量体1モルに対して、0.01~20ミリモルが好ましく、0.05~10ミリモルがより好ましく、0.1~5ミリモルが更に好ましく、0.15~1ミリモルが特に好ましく、0.2~0.5ミリモルが極めて好ましい。
【0070】
表面架橋後において、公知の方法で水及び炭化水素分散媒を留去すること、加熱減圧下で乾燥すること等により、表面架橋された乾燥品である重合体粒子を得ることができる。
【0071】
重合反応は、撹拌翼を有する各種撹拌機を用いて行うことができる。撹拌翼としては、平板翼、格子翼、パドル翼、プロペラ翼、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、リボン翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼等を用いることができる。平板翼は、軸(撹拌軸)と、軸の周囲に配置された平板部(撹拌部)とを有している。平板部は、スリット等を有していてもよい。撹拌翼として平板翼を用いた場合には、重合体粒子における架橋反応を均一に行いやすく、保水量等の吸水特性を維持しながらゲル明度を所望の範囲に調整しやすい。
【0072】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、重合体粒子のみから構成されていてもよいが、例えば、ゲル安定剤、金属キレート剤(エチレンジアミン4酢酸及びその塩、ジエチレントリアミン5酢酸及びその塩、例えばジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム等)、重合体粒子の流動性向上剤(滑剤)等の追加成分を更に含むことができる。追加成分は、重合体粒子の内部、重合体粒子の表面上、又はこれらの両方に配置され得る。
【0073】
吸水性樹脂粒子は、重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子を含んでいてもよい。例えば、重合体粒子と無機粒子とを混合することにより、重合体粒子の表面上に無機粒子を配置することができる。この無機粒子は、非晶質シリカ等のシリカ粒子であってもよい。
【0074】
吸水性樹脂粒子が、重合体粒子の表面上に配置された無機粒子を含む場合、無機粒子の含有量は、重合体粒子の全質量を基準として下記の範囲であってよい。無機粒子の含有量は、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.15質量%以上、又は0.2質量%以上であってよい。無機粒子の含有量は、5.0質量%以下、3.0質量%以下、1.0質量%以下、0.5質量%以下、又は0.3質量%以下であってよい。
【0075】
ここでの無機粒子は、通常、重合体粒子の大きさと比較して微小な大きさを有する。例えば、無機粒子の平均粒子径は、0.1~50μm、0.5~30μm、又は1~20μmであってよい。平均粒子径は、粒子の特性に応じて、細孔電気抵抗法又はレーザー回折・散乱法によって測定できる。
【0076】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、尿、血液等の体液の吸収性に優れており、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、タンポン等の衛生用品、ペットシート、犬又は猫のトイレ配合物等の動物排泄物処理材などの分野に応用することができる。
【0077】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、吸収体に好適に用いることができる。本実施形態に係る吸収体は、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子を含有する。吸収体における吸水性樹脂粒子の含有量は、吸収体が吸収性物品に使用された際に充分な液体吸収性能を得る観点から、吸収体の1平米あたり100~1000g(すなわち100~1000g/m2)であることが好ましく、より好ましくは150~800g/m2、更に好ましくは200~700g/m2である。吸収性物品としての充分な液体吸収性能を発揮させる観点から、上記含有量は100g/m2以上であることが好ましい。ゲルブロッキング現象の発生を抑制する観点から、上記含有量は1000g/m2以下であることが好ましい。
【0078】
吸収体は、吸水性樹脂粒子に加えて、更に、例えば繊維状物を備えていてよい。吸収体は、例えば、吸水性樹脂粒子及び繊維状物を含む混合物であってよい。吸収体における、吸水性樹脂粒子の質量割合は、吸水性樹脂粒子及び繊維状物の合計に対し、2~100質量%であってよく、10~80質量%であることが好ましく、20~70質量%であることがより好ましい。吸収体の構成としては、例えば、吸水性樹脂粒子及び繊維状物が均一混合された形態であってよく、シート状又は層状に形成された繊維状物の間に吸水性樹脂粒子が挟まれた形態であってもよく、その他の形態であってもよい。
【0079】
繊維状物としては、例えば、微粉砕された木材パルプ、コットン、コットンリンター、レーヨン、セルロースアセテート等のセルロース系繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の合成繊維が挙げられる。繊維状物の平均繊維長は、通常、0.1~10mmであり、0.5~5mmであってもよい。また、繊維状物は、上述の繊維の混合物でもよい。
【0080】
吸収体の使用前及び使用中における形態保持性を高めるために、繊維状物に接着性バインダーを添加することによって繊維同士を接着させてもよい。接着性バインダーとしては、例えば、熱融着性合成繊維、ホットメルト接着剤、接着性エマルジョン等が挙げられる。
【0081】
熱融着性合成繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等の全融型バインダー、ポリプロピレンとポリエチレンとのサイドバイサイドや芯鞘構造からなる非全融型バインダーが挙げられる。上述の非全融型バインダーにおいては、ポリエチレン部分のみ熱融着する。ホットメルト接着剤としては、例えば、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー、アモルファスポリプロピレン等のベースポリマーと粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤等との配合物が挙げられる。
【0082】
接着性エマルジョンとしては、例えば、メチルメタクリレート、スチレン、アクリロニトリル、2ーエチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、ブタジエン、エチレン、及び酢酸ビニルからなる群より選択される少なくとも1つ以上の単量体の重合物が挙げられる。これら接着性バインダーは、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0083】
本実施形態に係る吸収体は、無機粉末(例えば非晶質シリカ)、消臭剤、顔料、染料、抗菌剤、香料、粘着剤等の添加剤を更に含んでいてもよい。これらの添加剤により、吸収体に種々の機能を付与することができる。吸水性樹脂粒子が無機粒子を含む場合、吸収体は吸水性樹脂粒子中の無機粒子とは別に無機粉末を含んでいてもよい。無機粉末としては、例えば、二酸化ケイ素、ゼオライト、カオリン、クレイ等が挙げられる。
【0084】
本実施形態に係る吸収体の形状は、特に限定されず、例えばシート状であってよい。吸収体の厚さ(例えば、シート状の吸収体の厚さ)は、例えば0.1~20mm、0.3~15mmであってよい。
【0085】
本実施形態に係る吸収性物品は、吸収体のほかに、例えば、コアラップ、液体透過性トップシート、液体不透過性バックシートを備えていてよい。コアラップは、吸収体を保形するものである。液体透過性トップシートは、吸液対象の液体が浸入する側の最外部に配置されるものである。液体不透過性バックシートは、吸液対象の液体が浸入する側とは反対側の最外部に配置されるものである。
【0086】
吸収性物品としては、おむつ(例えば紙おむつ)、トイレトレーニングパンツ、失禁パッド、衛生用品(生理用ナプキン、タンポン等)、汗取りパッド、ペットシート、簡易トイレ用部材、動物排泄物処理材などが挙げられる。
【0087】
図1は、吸収性物品の一例を示す断面図である。
図1に示す吸収性物品100は、吸収体10と、コアラップ20a,20bと、液体透過性トップシート30と、液体不透過性バックシート40と、を備える。吸収性物品100において、液体不透過性バックシート40、コアラップ20b、吸収体10、コアラップ20a、及び液体透過性トップシート30がこの順に積層している。
図1において、部材間に間隙があるように図示されている部分があるが、当該間隙が存在することなく部材間が密着していてよい。
【0088】
吸収体10は、吸水性樹脂粒子10aと、繊維状物を含む繊維層10bと、を有する。吸水性樹脂粒子10aは、繊維層10b内に分散している。
【0089】
コアラップ20aは、吸収体10に接した状態で吸収体10の一方面側(
図1中、吸収体10の上側)に配置されている。コアラップ20bは、吸収体10に接した状態で吸収体10の他方面側(
図1中、吸収体10の下側)に配置されている。吸収体10は、コアラップ20aとコアラップ20bとの間に配置されている。
【0090】
コアラップ20a及びコアラップ20bは、例えば、吸収体10と同等の大きさの主面を有している。コアラップを用いることにより、吸収体の保形性を維持し、吸収体を構成する吸水性樹脂粒子等の脱落及び流動を防止することができる。コアラップとしては、例えば、不織布、織布、ティッシュ、液体透過孔を有する合成樹脂フィルム、網目を有するネット状シート等が挙げられ、経済性の観点から、粉砕パルプを湿式成形してなるティッシュが好ましく用いられる。
【0091】
液体透過性トップシート30は、吸収対象の液体が浸入する側の最外部に配置されている。液体透過性トップシート30は、コアラップ20aに接した状態でコアラップ20a上に配置されている。液体不透過性バックシート40は、吸収性物品100において液体透過性トップシート30とは反対側の最外部に配置されている。液体不透過性バックシート40は、コアラップ20bに接した状態でコアラップ20bの下側に配置されている。液体透過性トップシート30及び液体不透過性バックシート40は、例えば、吸収体10の主面よりも広い主面を有しており、液体透過性トップシート30及び液体不透過性バックシート40の外縁部は、吸収体10及びコアラップ20a,20bの周囲に延在している。
【0092】
液体透過性トップシート30としては、不織布、多孔質シートなどが挙げられる。不織布としては、例えば、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、レジンボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、ポイントボンド不織布等が挙げられる。なかでも、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド不織布が好ましく用いられる。
【0093】
液体透過性トップシート30の構成素材としては、当該技術分野で公知の樹脂又は繊維を用いることができ、吸収性物品に用いられた際の液体浸透性、柔軟性及び強度の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、レーヨン、その他の合成樹脂又は合成繊維、綿、絹、麻、パルプ(セルロース)繊維などが挙げられる。構成素材としては、液体透過性トップシート30の強度を高める等の観点から、合成繊維が好ましく用いられ、なかでもポリオレフィン、ポリエステルであることが好ましい。これらの素材は、単独で用いられてもよく、2種以上の素材を組み合わせて用いられてもよい。
【0094】
液体透過性トップシート30に用いられる不織布は、吸収性物品の液体吸収性能を向上させる観点から、適度な親水性を有していることが望ましい。当該観点から、国際公開第2011/086843号に記載の「不織布の親水度」(紙パルプ試験方法No.68(2000)に準拠)に従って測定したときの親水度が、5~200のものが好ましく、10~150のものがより好ましい。このような親水性を有する不織布は、上述の不織布のうち、レーヨン繊維のように素材自身が適度な親水度を示すものを用いたものでもよく、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維のような疎水性の化学繊維に、公知の方法で親水化処理し、適度な親水度を付与したものを用いたものであってもよい。
【0095】
化学繊維の親水化処理の方法としては、例えば、スパンボンド不織布において、疎水性の化学繊維に親水化剤を混合したものをスパンボンド法にて不織布を得る方法、疎水性化学繊維でスパンボンド不織布を作製する際に親水化剤を同伴させる方法、又は疎水性化学繊維でスパンボンド不織布を得た後に親水化剤を含浸させる方法等が挙げられる。親水化剤としては、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤、第4級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤、及びポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、ウレタン系の樹脂からなるステイン・リリース剤等が用いられる。
【0096】
液体透過性トップシート30に用いられる不織布は、吸収性物品に良好な液体浸透性、柔軟性、強度及びクッション性を付与すること、並びに吸収性物品の液体浸透速度を速める観点から、適度に嵩高く、目付量が大きいことが好ましい。不織布の目付量は、好ましくは5~200g/m2であり、より好ましくは8~150g/m2であり、更に好ましくは10~100g/m2である。また、不織布の厚さは、20~1400μmであることが好ましく、50~1200μmであることがより好ましく、80~1000μmであることが更に好ましい。
【0097】
液体不透過性バックシート40は、吸収体10に吸収された液体がバックシート40側から外部へ漏れ出すのを防止する。液体不透過性バックシート40には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂を主体とした液不透過性フィルム、通気性の樹脂フィルム、スパンボンド又はスパンレース等の不織布に通気性の樹脂フィルムが接合された複合フィルム、耐水性のメルトブローン不織布を高強度のスパンボンド不織布で挟んだスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SMS)不織布などを用いることができる。吸収性物品の着用感を損なわないよう、柔軟性を確保する観点から、バックシート40は、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を主体とした目付量10~50g/m2の樹脂フィルムを使用することができる。また、通気性素材を用いた場合、装着時のムレが低減されて、着用者に与える不快感を軽減することもできる。
【0098】
吸収体10、コアラップ20a,20b、液体透過性トップシート30、及び液体不透過性バックシート40の大小関係は、特に限定されず、吸収性物品の用途等に応じて適宜調整される。また、コアラップ20a,20bを用いて吸収体10を保形する方法は、特に限定されず、
図1に示すように複数のコアラップにより吸収体が挟持されていてよく、1枚のコアラップにより吸収体が被覆されていてもよい。
【0099】
吸収体10は、液体透過性トップシート30に接着されていてもよい。吸収体10と液体透過性トップシート30とを接着することで、液体がより円滑に吸収体に導かれるため、液体漏れ防止により優れた吸収性物品が得られやすい。吸収体10がコアラップにより挟持又は被覆されている場合、少なくともコアラップと液体透過性トップシート30とが接着されていることが好ましく、更にコアラップと吸収体10とが接着されていることがより好ましい。接着方法としては、例えば、ホットメルト接着剤を液体透過性トップシート30に対してその幅方向へ所定間隔で縦方向ストライプ状、スパイラル状等の形状に塗布して接着する方法、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びその他の水溶性高分子から選ばれる水溶性バインダーを用いて接着する方法等が挙げられる。また、吸収体10が熱融着性合成繊維を含む場合は、その熱融着によって接着する方法を採用してもよい。
【0100】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の製造方法は、上記方法により測定されるゲル明度L*に基づき吸水性樹脂粒子を選別することを含んでいてよい。選別は、具体的には例えば、ゲル明度L*が8~60である吸水性樹脂粒子を選別することであってよい。選別は、例えば、製造工程中のいずれかの段階において、工程途中品を採取し、好適なゲル明度L*を満たす吸水性樹脂粒子を選別することが挙げられる。上記製造方法は、吸水性樹脂粒子のゲル明度L*を測定する工程を含んでいてよい。選別される吸水性樹脂粒子の性質としては、上述した吸水性樹脂粒子の態様(例えば、特定範囲の生理食塩水保水量、特定範囲の無加圧DWの5分値等)を満たすものであってもよい。
【0101】
本実施形態の一側面は、上述の測定方法により測定される吸水性樹脂粒子のゲル明度L*を調整することを含む、吸収体の吸収量を向上させる方法ということもできる。ゲル明度L*の更に具体的な測定方法は後述の実施例に示される。吸収体の吸収量を向上させる方法は、さらに、例えば、吸水性樹脂粒子のゲル明度L*を8~60の範囲に調整すること、吸水性樹脂粒子の生理食塩水保水量を30~60g/gに調整すること、吸水性樹脂粒子の無加圧DWの5分値を30ml/g以上に調整すること等を含んでいてもよい。これら所定の性質を有する吸水性樹脂粒子の具体的な製造方法の例は上述のとおりである。吸水性樹脂粒子のゲル明度L*を8~60の範囲内とするには、例えば、吸水性樹脂粒子の製造条件を、吸水性樹脂粒子の粒子それぞれが均一に架橋され、さらに粒子中の架橋の均一性がより高くなるように選択することによって行うことができる。
【0102】
本実施形態によれば、上述の吸水性樹脂粒子の製造方法により得られた吸水性樹脂粒子を用いた、吸収体の製造方法を提供することができる。本実施形態に係る吸収体の製造方法は、上述の吸水性樹脂粒子の製造方法により吸水性樹脂粒子を得る粒子製造工程を備える。本実施形態に係る吸収体の製造方法は、粒子製造工程の後に、吸水性樹脂粒子と繊維状物とを混合する工程を備えてよい。本実施形態によれば、上述の吸収体の製造方法により得られた吸収体を用いた、吸収性物品の製造方法を提供することができる。本実施形態に係る吸収性物品の製造方法は、上述の吸収体の製造方法により吸収体を得る吸収体製造工程を備える。本実施形態に係る吸収性物品の製造方法は、吸収体製造工程の後に、吸収体と吸収性物品の他の構成部材とを用いて吸収性物品を得る工程を備えてよく、当該工程では、例えば、吸収体と吸収性物品の他の構成部材とを互いに積層することにより吸収性物品を得る。
【実施例】
【0103】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明の内容を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0104】
<吸水性樹脂粒子の製造>
[実施例1]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び撹拌機を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。撹拌機には、
図2に概形を示す撹拌翼(平板翼)200を取り付けた。撹拌翼200は、軸200a及び平板部200bを備えている。平板部200bは、軸200aに溶接されているとともに、湾曲した先端を有している。平板部200bには、軸200aの軸方向に沿って延びる4つのスリットSが形成されている。4つのスリットSは平板部200bの幅方向に配列されており、内側の二つのスリットSの幅は1cmであり、外側二つのスリットSの幅は0.5cmである。平板部200bの長さは約10cmであり、平板部200bの幅は約6cmである。準備したセパラブルフラスコ内で、n-ヘプタン293g、及び分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.736gを混合した。セパラブルフラスコ内の混合物を撹拌機で撹拌しつつ、80℃まで昇温することにより、分散剤をn-ヘプタンに溶解させた。形成された溶液を50℃まで冷却した。
【0105】
一方、内容積300mLのビーカーに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液92.0g(1.03モル)を入れ、外部より冷却しつつ、20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.7gをビーカー内に滴下することにより、75モル%の中和を行った。その後、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社、HEC AW-15F)、水溶性ラジカル重合剤として過硫酸ナトリウム0.0648g(0.272ミリモル)、及び内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.010g(0.057ミリモル)を加えて溶解することにより、第1段目の水性液を調製した。
【0106】
第1段目の水性液を上記セパラブルフラスコに添加して10分間撹拌した。その後、n-ヘプタン6.62gに界面活性剤としてショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、リョートーシュガーエステルS-370、HLB:3)0.736gを加熱溶解して得た界面活性剤溶液を上記セパラブルフラスコに添加して、撹拌機の回転数を425rpmとして撹拌しながら系内を窒素で充分に置換した。その後、上記セパラブルフラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を60分間行うことにより、第1段目の重合スラリー液を得た。
【0107】
別の内容積500mLのビーカーに水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.44モル)を入れ、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下することにより、75モル%の中和を行った。中和後のビーカーに、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸ナトリウム0.0907g(0.381ミリモル)、及び内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0116g(0.067ミリモル)を加えて溶解することにより、第2段目の水性液を調製した。
【0108】
撹拌機の回転数を650rpmとして撹拌しながら、上記のセパラブルフラスコ系内を25℃に冷却した後、上記第2段目の水性液の全量を第1段目の重合スラリー液に添加した。セパラブルフラスコ系内を窒素で30分間置換した後、再度、セパラブルフラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合反応を60分間行って、含水ゲル状重合体を得た。
【0109】
第2段目の重合後の含水ゲル状重合体に、45質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.589gを撹拌下で添加した。その後、125℃に設定した油浴に上記セパラブルフラスコを浸漬し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留により、n-ヘプタンを還流しながら262.7gの水を系外へ抜き出した。その後、上記セパラブルフラスコに表面架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.42g(0.507ミリモル)を添加し、83℃で2時間保持した。
【0110】
その後、n-ヘプタンを125℃にて蒸発させて乾燥させることによって、重合体粒子(乾燥品)を得た。この重合体粒子を目開き850μmの篩に通過させ、重合体粒子の質量に対して0.5質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP-S)を重合体粒子と混合することにより、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子を222.0g得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は372μm、純水吸水量は568g/gであった。
【0111】
[実施例2]
共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を271.0gに変更したこと、及び、重合体粒子と混合する非晶質シリカの量を重合体粒子質量に対して0.2質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして、229.0gの吸水性樹脂粒子を得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は360μm、純水吸水量は684g/gであった。
【0112】
[実施例3]
第1段目の重合スラリー液の調製において窒素置換時の撹拌機回転数を350rpmに変更したこと、共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を257.2gに変更したこと、及び、重合体粒子と混合する非晶質シリカの量を重合体粒子質量に対して0.2質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして、231.2gの吸水性樹脂粒子を得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は359μm、純水吸水量は452g/gであった。
【0113】
[実施例4]
第1段目の水性液の調製において内部架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテルの添加量を0.0156g(0.090ミリモル)に変更したこと、第1段目重合スラリー液の調製において窒素置換時の撹拌機回転数を350rpmに変更したこと、第2段目の水性液の調製において内部架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテルの添加量を0.0129g(0.074ミリモル)に変更したこと、共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を254.5gに変更したこと、及び、重合体粒子と混合する非晶質シリカの量を重合体粒子質量に対して0.2質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして、231.1gの吸水性樹脂粒子を得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は370μm、純水吸水量は334g/gであった。
【0114】
[比較例1]
撹拌翼を翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段で有するものに変更したこと、第1段目の水性液調製において、使用するラジカル重合開始剤を2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)及び過硫酸カリウム0.018g(0.068ミリモル)に変更したこと、内部架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル添加量を0.0046g(0.026ミリモル)に変更したこと、第1段目の重合スラリー液の調製において窒素置換時の撹拌機回転数を550rpmに変更したこと、第2段目の水性液調製において、使用するラジカル重合開始剤を2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)及び過硫酸カリウム0.026g(0.095ミリモル)に変更したこと、第2段目の水性液の調製後に、セパラブルフラスコ系内を25℃に冷却する際の撹拌機回転数を1000rpmに変更したこと、共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を216.7gに変更したこと、並びに、重合体粒子と混合する非晶質シリカの量を重合体粒子質量に対して0.2質量%に変更したこと以外は実施例1と同様にして、229.0gの吸水性樹脂粒子を得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は348μmであった。
【0115】
[比較例2]
第2段目の水性液の調製後、セパラブルフラスコ系内の冷却温度を28℃に変更したこと、共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を204.7gに変更したこと以外は比較例1と同様にして、231.5gの吸水性樹脂粒子を得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は337μmであった。
【0116】
[比較例3]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び撹拌機を備えた、内径110mm、2L容の、4箇所の側壁バッフル付き丸底円筒型セパラブルフラスコ(バッフル幅:7mm)を準備した。撹拌機に、フッ素樹脂で表面処理された翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段有する撹拌翼を装着した。準備したセパラブルフラスコ内でn-ヘプタン660mL、及びソルビタンモノラウレート(商品名:ノニオンLP-20R、HLB値8.6、日油株式会社製)0.984gを混合した。セパラブルフラスコ内の混合物を撹拌機で撹拌しつつ、50℃まで昇温することにより、ソルビタンモノラウレートをn-ヘプタンに溶解させた。形成された溶液を40℃まで冷却した。
【0117】
内容積500mL容の三角フラスコに、80質量%のアクリル酸水溶液92g(アクリル酸:1.02モル)を入れた。外部より氷冷しつつ、フラスコ内のアクリル酸水溶液に対して21質量%水酸化ナトリウム水溶液146gを滴下して、75モル%のアクリル酸を中和した。次いで、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.101g(0.374ミリモル)を加えてこれらを水溶液に溶解し、単量体水溶液を調製した。
【0118】
得られた単量体水溶液を、ソルビタンモノラウレートを含む溶液の入った上記セパラブルフラスコに加え、系内を窒素で充分に置換した。撹拌機の回転数を700rpmとして撹拌しながら、セパラブルフラスコ内の反応液を70℃の温水浴で60分間保持することにより、重合反応を進行させた。
【0119】
非晶質シリカ(エボニックデグサジャパン株式会社製、カープレックス#80)0.092gがn-ヘプタン100gに分散した分散液を用意した。重合反応により生成した含水ゲル状重合体を含む反応液に該分散液を添加して、10分間反応液を撹拌した。セパラブルフラスコを125℃の油浴に浸漬し、共沸蒸留により104gの水を系外へ抜き出した。その後、表面架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液8.28g(エチレングリコールジグリシジルエーテル:0.95ミリモル)を添加し、内温80±2℃で2時間保持することにより、表面架橋反応を進行させた。
【0120】
反応液を125℃に加熱することによってn-ヘプタンを蒸発させて、重合体粒子の乾燥品を得た。この乾燥品を目開き850μmの篩を通過させて、吸水性樹脂粒子90.5gを得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は420μmであった。
【0121】
得られた吸水性樹脂粒子について、以下の方法により、無加圧DW5分値、ゲル明度L*、乾燥粒子明度L*、生理食塩水保水量、中位粒子径、及び吸収体膨潤容量を評価した。なお、本実施例において用いた生理食塩水は0.9質量%NaCl水溶液である。
【0122】
<無加圧DWの測定>
吸水性樹脂の粒子の無加圧DWは、
図4に示す測定装置を用いて測定した。測定は1種類の吸水性樹脂粒子に関して5回実施し、最低値と最高値とを除いた3点の測定値の平均値を求めた。
当該測定装置は、ビュレット部1、導管5、測定台13、ナイロンメッシュシート15、架台11、及びクランプ3を有する。ビュレット部1は、目盛が記載されたビュレット管21と、ビュレット管21の上部の開口を密栓するゴム栓23と、ビュレット管21の下部の先端に連結されたコック22と、ビュレット管21の下部に連結された空気導入管25及びコック24とを有する。ビュレット部1はクランプ3で固定されている。平板状の測定台13は、その中央部に形成された直径2mmの貫通孔13aを有しており、高さが可変の架台11によって支持されている。測定台13の貫通孔13aとビュレット部1のコック22とが導管5によって連結されている。導管5の内径は6mmである。
【0123】
測定は温度25±2℃、湿度50±10%の環境下で行なわれた。まずビュレット部1のコック22とコック24を閉め、25℃に調節された生理食塩水(0.9質量%食塩水)50をビュレット管21上部の開口からビュレット管21に入れた。食塩水の濃度0.9質量%は、食塩水の質量を基準とする濃度である。ゴム栓23でビュレット管21の開口の密栓した後、コック22及びコック24を開けた。気泡が入らないよう導管5内部を生理食塩水50で満たした。貫通孔13a内に到達した生理食塩水の水面の高さが、測定台13の上面の高さと同じになるように、測定台13の高さを調整した。調整後、ビュレット管21内の生理食塩水50の水面の高さをビュレット管21の目盛で読み取り、その位置をゼロ点(0秒時点の読み値)とした。
【0124】
測定台13上の貫通孔13aの近傍にてナイロンメッシュシート15(100mm×100mm、250メッシュ、厚さ約50μm)を敷き、その中央部に、内径30mm、高さ20mmのシリンダーを置いた。このシリンダーに、1.00gの吸水性樹脂粒子10aを均一に散布した。その後、シリンダーを注意深く取り除き、ナイロンメッシュシート15の中央部に吸水性樹脂粒子10aが円状に分散されたサンプルを得た。次いで、吸水性樹脂粒子10aが載置されたナイロンメッシュシート15を、その中心が貫通孔13aの位置になるように、吸水性樹脂粒子10aが散逸しない程度にすばやく移動させて、測定を開始した。空気導入管25からビュレット管21内に気泡が最初に導入された時点を吸水開始(0秒)とした。
【0125】
ビュレット管21内の生理食塩水50の減少量(すなわち、吸水性樹脂粒子10aが吸水した生理食塩水の量)を0.1mL単位で順次読み取り、吸水性樹脂粒子10aの吸水開始から起算して5分後の生理食塩水50の減量分Wa(g)を読み取った。Waから、下記式により無加圧DWの5分値を求めた。無加圧DWは、吸水性樹脂粒子10aの1.00g当たりの吸水量である。
無加圧DW値(mL/g)=Wa/1.00
【0126】
<ゲル明度の評価>
ゲル明度の測定は色差計(ZE6000、日本電色株式会社製)を用いて行った。測定は温度25±2℃、湿度50±10%の環境下で行なわれた。
図3は、ゲル明度測定に用いた器具Xの模式断面図である。まず、筒状器具31の中に、内径30mm、高さ13mmで光学ガラス(パイレックス)製の無色透明である色差計用丸型セル32を入れた。丸型セル32内に、0.1gの吸水性樹脂粒子を均一に散布し、ピペットを用いて速やかにイオン交換水5.0gを添加し、蓋33を閉めた。筒状器具31及び蓋33は黒色である。イオン交換水の添加から5分間静置することにより、吸水性樹脂粒子を膨潤させ、測定用のゲル34を得た。色差計のゼロ校正、及び標準白板による標準校正を行い、ゲル34を含む器具Xを色差計にセットした後、反射測定モードにより明度L
*を3回測定し、平均値を得た。結果を表1に示す。実施例及び比較例のいずれにおいても、添加したイオン交換水の全量が吸水性樹脂粒子に吸水され、吸水性樹脂粒子のダマ(未膨潤の小塊)は発生しなかった。丸型セル32に何も入れない状態で同様に測定したところ、明度L
*は7.7であった。実施例1及び比較例3で得られた吸水性樹脂粒子の明度測定用ゲルの光学写真を、それぞれ
図5(a)、
図5(b)に示す。
図5(a)、(b)の写真はゲル34の入った丸型セル32を黒色背景で下方から撮影したものである。
【0127】
<乾燥粒子明度の評価>
丸型セル32内に2.0gの乾燥状態の吸水性樹脂粒子を均一に散布し、イオン交換水を添加しなかったこと以外は上記ゲル明度の評価と同様にして、乾燥状態の吸水性樹脂粒子の明度L*を測定した。実施例及び比較例の吸水性樹脂粒子の明度L*はいずれも91~96の範囲内であった。
【0128】
<中位粒子径の測定>
吸水性樹脂粒子の上述の中位粒子径は、温度25±2℃、湿度50±10%の環境下において、下記手順により測定した。すなわち、JIS標準篩を上から、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、及び受け皿の順に組み合わせた。組み合わせた最上の篩に、吸水性樹脂粒子50gを入れ、ロータップ式振とう器(株式会社飯田製作所製)を用いてJIS Z 8815(1994)に準じて分級した。分級後、各篩上に残った粒子の質量を全量に対する質量百分率として算出し粒度分布を求めた。この粒度分布に関して粒子径の大きい方から順に篩上を積算することにより、篩の目開きと篩上に残った粒子の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径として得た。
【0129】
<生理食塩水保水量の測定>
吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量(室温、25℃±2℃)を下記手順で測定した。まず、吸水性樹脂粒子2.0gを量り取った綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)を内容積500mLのビーカー内に設置した。吸水性樹脂粒子の入った綿袋内に0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)500gを、ママコができないように一度に注ぎ込んだ後、綿袋の上部を輪ゴムで縛り、30分静置させることで吸水性樹脂粒子を膨潤させた。30分経過後の綿袋を、遠心力が167Gとなるように設定した脱水機(株式会社コクサン製、品番:H-122)を用いて1分間脱水した後、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wb[g]を測定した。吸水性樹脂粒子を添加せずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時の空質量Wc[g]を測定し、下記式から吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量を算出した。結果を表1に示す。
保水量[g/g]=(Wb-Wc)/2.0
【0130】
<純水吸水量の測定>
吸水性樹脂粒子の純水吸水量(室温、25℃±2℃)を下記手順で測定した。2L容のビーカーにイオン交換水1000gを量り取り、吸水性樹脂粒子0.5gを、ママコが発生しないようにスパチュラにて撹拌しつつ添加した。20秒間撹拌を続けた後、静置状態で30分間放置し、吸水性樹脂粒子を十分に膨潤させた。その後、目開き75μmのJIS標準篩を用いて、上記ビーカーの内容物をろ過し、該篩を水平に対して約30度の傾斜角となるように傾けた状態で30分間放置することにより、余剰の水分をろ別した。目開き75μm標準篩単独の質量Wd(g)はあらかじめ測定しておいた。吸水ゲルの入った該篩の質量We(g)を測定し、以下の式により、純水吸水量を求めた。
純水吸水量(g/g)=[We-Wd](g)/吸水性樹脂粒子の質量(g)
【0131】
<吸収体性能の評価>
(評価用物品の作製)
気流型混合装置(有限会社オーテック社製、パッドフォーマー)を用いて、吸水性樹脂粒子10g及び粉砕パルプ10gを空気抄造によって均一混合することにより、40cm×12cmの大きさのシート状の吸収体を作製した。次に、吸収体と同じ大きさを有する坪量16g/m2のコアラップ(ティッシュペーパー)の上に吸収体を配置した後、吸収体の上面に、吸収体と同じ大きさを有する坪量16g/m2のコアラップ(ティッシュペーパー)を配置した。コアラップによって挟まれた吸収体に対して、141kPaの荷重を30秒間加えることにより積層体を得た。32.5cm×45.0cmの大きさのSMMS不織布(坪量13g/m2)を45cm×16.25cmのサイズになるように折り、その後、不織布で上述の積層体を包んだ。積層体を包んだ不織布の開放している三辺をヒートシーラー(富士インパルスシーラー、型番:FI-450-5形、富士インパルス製)で圧着して、積層体を密封した。これにより、評価用物品を得た。
【0132】
(吸収体膨潤容量の測定)
温度25±2℃、湿度50±10%の環境下において、測定を行った。バットに、金網(開き目のサイズ:20mm×20mm、線径3mm)及び20Lの生理食塩水を入れて、液温を25.0±0.2℃に調整した。次いで、評価用物品を金網上に広げて配置し、生理食塩水水溶液中に10分間浸漬させた。その後、評価用物品ごと金網を持ち上げ、5分間水切りを行ってから、評価用物品の質量を測定した。吸収体膨潤容量(単位:g)は、試験前後の評価用物品の質量の差であり、以下の式により算出される。吸収体膨潤容量が大きいほど、吸収体の吸収量が大きいことを示す。
吸収体膨潤容量=試験後の評価用物品の質量(g)-試験前の評価用物品の質量(g)
【0133】
【0134】
ゲル明度L*が60以下である実施例の吸水性樹脂粒子を用いた吸収体は、充分に高い吸収量を示すことが確認された。
【符号の説明】
【0135】
1…ビュレット部、3…クランプ、5…導管、10…吸収体、10a…吸水性樹脂粒子、10b…繊維層、11…架台、13…測定台、13a…貫通孔、15…ナイロンメッシュシート、20a,20b…コアラップ、21…ビュレット管、22…コック、23…ゴム栓、24…コック、25…空気導入管、30…液体透過性トップシート、31…筒状器具、32…丸型セル、33…蓋、34…ゲル、40…液体不透過性バックシート、50…生理食塩水、100…吸収性物品、200…撹拌翼、200a…軸、200b…平板部、S…スリット、X…器具。