(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-28
(45)【発行日】2025-09-05
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂および高潜在性を有する硬化剤をベースとするゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20250829BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20250829BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20250829BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20250829BHJP
C08K 5/21 20060101ALI20250829BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20250829BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/013
C08L63/00
C08K3/06
C08K5/21
B60C1/00 Z
(21)【出願番号】P 2022554630
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 FR2021050371
(87)【国際公開番号】W WO2021181033
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2024-02-29
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】ビゼー セヴェリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ボネット ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ランドロー エマニュエル
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-060866(JP,A)
【文献】特表2013-507507(JP,A)
【文献】国際公開第2018/002538(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/048676(WO,A1)
【文献】特公昭51-028110(JP,B1)
【文献】特表2023-517609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 59/00-59/72
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のジエンエラストマー、補強フィラー、イオウベースの架橋系、エラストマー100質量部あたり1~30質量部(phr)のエポキシ樹脂、および一般式(R
1R
2)N-CO-(NR
3)-R
7-(NR
4)-CO-N(R
5R
6)(式中、各R
1~R
6基は、独立して水素原子、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、5~24個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~30個の炭素原子を有するアリール基、および7~25個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、一方ではR
2基およびR
3基が、他方ではR
4基およびR
5基が一緒になって環を形成可能であり、R
7基は、6~30個の炭素原子を有する二価アリール基である)の尿素化合物をベースとするゴム組成物。
【請求項2】
各R
1~R
6基が、独立して水素原子、1~3個の炭素原子を有するアルキル基、6~8個の炭素原子を有するアリール基、および7~9個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、前記R
7基が、6~8個の炭素原子を有する二価アリール基である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記R
7基が二価メチルフェニル基である、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記R
1~R
7基が、一緒になって環を形成しない、請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
各R
3およびR
4基が水素原子である、請求項1~4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記R
1、R
2、R
5およびR
6基がメチル基であり、R
3およびR
4が水素原子であり、R
7が二価メチルフェニル基である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項7】
尿素化合物の含量が、1~15phrの範囲内である、請求項1~6のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
ニトリル化合物を含まないか、または10phr未満のニトリル化合物を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のゴム組成物を含む、完成ゴム物品または半完成ゴム物品。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載のゴム組成物を含む、空気入りタイヤまたは非空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、タイヤまたはタイヤ用半製品の製造向けのゴム組成物に関する。本発明の他の主題は、本発明によるゴム組成物を含む完成ゴム物品または半完成ゴム物品、さらには少なくとも1種の本発明による組成物を含む空気入りタイヤまたは非空気入りタイヤである。
【背景技術】
【0002】
国際公開第02/10269号に提示されるように、空気入りタイヤのいくつかの部品では、空気入りタイヤの小ひずみの最中に高剛性を示すゴム組成物を使用することが公知である。小ひずみに対する耐性は、空気入りタイヤがさらされる圧力に反応するために、空気入りタイヤが示す必要のある特性の1つである。
この補剛は、補強フィラーの含量を増加させること、または空気入りタイヤの部品のゴム組成物成分中に特定の強化樹脂を組み込むことにより得られ得る。
組成物の剛性を高めるために従来使用される強化樹脂は、メチレン受容体/供与体系をベースとする強化樹脂である。「メチレン受容体」および「メチレン供与体」という用語は、当業者には周知であり、かつ縮合により、一方の補強フィラー/エラストマーネットワーク、および他方のエラストマー/イオウネットワーク(架橋剤がイオウの場合)で重畳および貫入されることになる三次元強化樹脂を生成するために共に反応できる化合物を示すために広く使用される。従来、メチレン受容体はフェノール樹脂である。フェノールノボラック樹脂はすでに、ゴム組成物中において、特に、空気入りタイヤまたは空気入りタイヤのトレッド向け、グリップまたは補強と同様に種々の用途向けに記載されており、例えば、欧州特許出願公開第0649446号明細書を参照とする。
前記のメチレン受容体は、メチレン受容体を架橋または硬化できる、つまり一般的に「メチレン供与体」として知られる硬化剤と組み合わされる。次いで、ゴムマトリクスの硬化中に、樹脂のフェノール核のオルト位およびパラ位の炭素とメチレン供与体との間でのメチレン架橋の形成により、樹脂の架橋が引き起こされるため、三次元樹脂ネットワークが創生される。従来使用されるメチレン供与体は、ヘキサメチレンテトラミン(略称HMT)またはヘキサメトキシメチルメラミン(略称HMMMもしくはH3M)またはヘキサエトキシメチルメラミンである。
【0003】
しかしながら、メチレン受容体であるフェノール樹脂とメチレン供与体であるHMTまたはH3Mとの組合せは、ゴム組成物の架橋中にホルムアルデヒドを産生する。実際のところ、これらの化合物のその潜在的な環境への影響ゆえ、長期的には、ゴム組成物からホルムアルデヒドを減少させること、しかも除去することさえ望ましい。
その目的に向けて、メチレン受容体であるホルムアルデヒド/フェノール樹脂のペアを、メチレン供与体であるHMTまたはH3M硬化剤と共に含む従来の組成物の代替となる組成物が開発された。例として、国際公開第2011/045342号が、エポキシ樹脂のペアを、アミンを含む硬化剤と共に含む組成物を記載する。それらの組成物は、ホルムアルデヒドの形成から解放されるという利点に加えて、架橋後に、許容可能な転がり抵抗を維持しながら、従来の組成物よりも高い剛性を示す。国際公開第2018/002538号は、エポキシ樹脂、および少なくとも1つの6員芳香環に位置する少なくとも2つの一級アミン官能基を含む、アミンを含む硬化剤を含む、公知の組成物と比べて、加工性、特にスコーチ時間と剛性との間での妥協を改善することを対象とした組成物を記載する。
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、いったん架橋(または「硬化」)したら、空気入りタイヤの動作温度の全体にわたって組成物の補強特性を維持しつつ、使用される添加剤、特に硬化剤の量を減少できることおよび生の(raw)ゴム組成物の加工性を改善できることが常に望ましい。
意外なことに、出願人である本会社は、その調査研究中に、エポキシ樹脂と尿素化合物との組合せが、空気入りタイヤの異なる動作温度における補強特性を維持しつつ、生の組成物の加工性を改善しつつ、ホルムアルデヒドの形成からの解放を可能にすることを発見した。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、次の実施形態の少なくとも1つに関する。
1. 少なくとも1種のジエンエラストマー、補強フィラー、架橋系、エラストマー100質量部あたり1~30質量部(phr)のエポキシ樹脂、および一般式(R1R2)N-CO-(NR3)-R7-(NR4)-CO-N(R5R6)(式中、各R1~R6基は、独立して水素原子、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、5~24個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~30個の炭素原子を有するアリール基、および7~25個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、一方ではR2基およびR3基が、他方ではR4基およびR5基が一緒になって環を形成可能であり、R7基は、6~30個の炭素原子を有する二価アリール基である)の尿素化合物をベースとするゴム組成物。
2. 各R1~R6基が、独立して水素原子、1~3個の炭素原子を有するアルキル基、6~8個の炭素原子を有するアリール基、および7~9個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、前記R7基が、6~8個の炭素原子を有する二価アリール基である、実施形態1に記載のゴム組成物。
3. 前記R7基が二価メチルフェニル基である、実施形態1または2に記載のゴム組成物。
【0006】
4. 前記R1~R7基が、一緒になって環を形成しない、実施形態1~3のいずれか1つに記載のゴム組成物。
5. 各R3およびR4基が水素原子である、実施形態1~4のいずれか1つに記載のゴム組成物。
6. 少なくとも1つのR1、R2、R5またはR6基が、6~8個の炭素原子を有するアリール基、優先的にはフェニル基である、実施形態1~5のいずれか1つに記載のゴム組成物。
7. 前記R1、R2、R5およびR6基が、独立してメチル基およびエチル基から選択される、実施形態1~5のいずれか1つに記載のゴム組成物。
8. 前記R1、R2、R5およびR6基がメチル基であり、R3およびR4が水素原子であり、R7が二価メチルフェニル基である、実施形態1に記載のゴム組成物。
9. 尿素化合物の含量が、1~15phr、好ましくは0.5~10phr、好ましくは0.5~8phr、好ましくは0.5~5phrの範囲内である、実施形態1~8のいずれか1つに記載のゴム組成物。
10. 前記ジエンエラストマーが、ポリブタジエン、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、およびそれらのエラストマーの混合物からなる群から選択され、優先的にはイソプレンエラストマーである、実施形態1~9のいずれか1つに記載のゴム組成物。
【0007】
11. 前記エポキシ樹脂が、芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂および脂肪族エポキシ樹脂から選択される、実施形態1~10のいずれか1つに記載のゴム組成物。
12. エポキシ樹脂の含量が、10~25phrの間、好ましくは10~20phrの間である、実施形態1~11のいずれか1つに記載のゴム組成物。
13. ニトリル化合物を含まないか、または10phr未満、好ましくは5phr未満、好ましくは2phr未満のニトリル化合物を含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載のゴム組成物。
14. 補強フィラーの含量が、20~200phr、好ましくは30~150phrの範囲内である、実施形態1~13のいずれか1つに記載のゴム組成物。
15. 実施形態1~14のいずれか1つに記載のゴム組成物を含む、完成ゴム物品または半完成ゴム物品。
16. 実施形態1~14のいずれか1つに記載のゴム組成物を含む、空気入りタイヤまたは非空気入りタイヤ。
17. 実施形態1~14のいずれか1つに記載のゴム組成物を含む内層を含む、実施形態16に記載のタイヤ。
【0008】
定義
「エラストマー100質量部あたり~質量部」(またはphr)という表現は、本発明の意味の範囲内では、エラストマーまたはゴム100質量部あたり~質量部の意味と理解すべきである。
本文書では、明確に異なる指定がない限り、指定されるすべての百分率(%)は、質量百分率(%)である。
さらに、「a~bの間」という表現で示される、値の任意の間隔は、a超~b未満の値の範囲を表す(つまり、限界aおよびbは除外される)のに対して、「a~b」という表現で示される、値の任意の間隔は、a~bまでの値の範囲を意味する(つまり、厳密な限界aおよびbを含む)。
「をベースとする組成物」という表現は、使用される種々の成分の混合物および/またはin situ反応の生成物を含む組成物の意味と理解すべきであり、それらの成分のいくつかは、組成物の製造の種々の相中、少なくとも部分的に互いに反応可能である、および/または互いに反応すると意図される。したがって、組成物が、完全もしくは部分的な架橋状態または非架橋状態にあることが可能である。
【0009】
「主要な」化合物に言及する場合、本発明の意味の範囲内では、その化合物が、組成物中の同種の化合物の中で主要である、つまり、同種の化合物の中で質量が最も大きい化合物であることを意味すると理解される。したがって、例えば、主要なエラストマーは、組成物中のエラストマーの総質量に対して質量が最も大きいエラストマーである。同様に「主要な」フィラーは、組成物のフィラーの中で質量が最も大きいフィラーである。例として、唯一種のエラストマーを含む系では、それが、本発明の意味の範囲内では主要であり、2種のエラストマーを含む系では、主要なエラストマーは、エラストマーの質量の半分超に相当する。対照的に、「微量」化合物は、同種の化合物の中で、最も大きい質量分率に相当しない化合物である。好ましくは、「主要な」という用語は、50%超、好ましくは60%、70%、80%、90%超で存在することを意味すると理解され、より優先的には「主要な」化合物が100%である。
明細書中で言及する、炭素を含む化合物は、化石由来またはバイオベースであり得る。後者の場合、炭素を含む化合物は、部分的または完全に、バイオマスに由来し得るか、バイオマスに由来する再生可能な出発原料から得られ得る。特に、ポリマー、可塑剤、フィラー等に関する。
【0010】
ジエンエラストマー
本発明による組成物は、少なくとも1種のジエンエラストマーを含む。したがって、組成物は、唯一種のジエンエラストマー、または数種のジエンエラストマーの混合物を含有し得る。
「ジエン」エラストマー(または区別せずにゴム)は、天然であろうと合成であろうと、公知の方法で、少なくとも部分的にジエンモノマー単位(2つの共役または非共役の炭素-炭素二重結合を有するモノマー)からなるエラストマー(すなわち、ホモポリマーまたはコポリマー)の意味と理解すべきである。
それらのジエンエラストマーは、2つのカテゴリー、つまり「本質的に不飽和」または「本質的に飽和」に分類できる。「本質的に不飽和」という用語は、概して、少なくとも部分的に、15%(mol%)超である、ジエン源の単位(共役ジエン)の含量を有する共役ジエンモノマーに由来するジエンエラストマーを意味すると理解される。したがって、ジエンエラストマー、例えば、ブチルゴムまたはジエンとα-オレフィンとのEPDM型のコポリマーは、前記の定義の範囲内に入らず、特に、「本質的に飽和」のジエンエラストマーと記載され得る(低いまたは非常に低い、常に15%未満の、ジエン源の単位の含量)。本発明による組成物中に含まれるジエンエラストマーは、優先的には本質的に不飽和である。
【0011】
本発明に従う組成物中で使用され得るジエンエラストマーは、特に、
(a)4~18個の炭素原子を有する共役または非共役のジエンモノマーの任意のホモポリマー;
(b)4~18個の炭素原子を有する共役または非共役のジエンと少なくとも1種の他のモノマーとの任意のコポリマー
を意味すると理解される。
前記他のモノマーは、エチレン、オレフィン、または共役もしくは非共役のジエンであり得る。
共役ジエンとして適切であるのは、4~12個の炭素原子を有する共役ジエン、特に1,3-ジエン、例えば、特に1,3-ブタジエンおよびイソプレンである。
【0012】
オレフィンとして適切であるのは、8~20個の炭素原子を有するビニル芳香族化合物および3~12個の炭素原子を有する脂肪族α-モノオレフィンである。
ビニル芳香族化合物として適切であるのは、例えば、スチレン、オルトメチルスチレン、メタメチルスチレン、パラメチルスチレン、「ビニルトルエン」市販混合物、またはパラ(tert-ブチル)スチレンである。
脂肪族α-モノオレフィンとして適切であるのは、特に、3~18個の炭素原子を有する非環式脂肪族α-モノオレフィンである。
優先的には、ジエンエラストマーが、ポリブタジエン(BR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、およびそれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される。ブタジエンコポリマーは、特に、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)からなる群から選択される。
好ましくは、ジエンエラストマーがイソプレンエラストマーである。
【0013】
「イソプレンエラストマー」という用語は、公知の方法で、イソプレンのホモポリマーまたはコポリマーを意味する、言い換えると、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、種々のイソプレンコポリマー、およびそれらのエラストマーの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーを意味すると理解される。イソプレンコポリマーの中で、特に、イソブテン/イソプレン(ブチルゴム-IIR)コポリマー、イソプレン/スチレン(SIR)コポリマー、イソプレン/ブタジエン(BIR)コポリマー、またはイソプレン/ブタジエン/スチレン(SBIR)コポリマーに言及する。このイソプレンエラストマーは、好ましくは、天然ゴム、合成cis-1,4-ポリイソプレン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。それらの合成ポリイソプレンの中で、好ましくは90%超、より優先的には98%超の含量(mol%)のcis-1,4-結合を有するポリイソプレンを使用する。好ましくは、かつ本文書の構成のいずれか1つによると、ジエンエラストマーが天然ゴムである。
優先的には、ジエンエラストマーの含量、好ましくはイソプレンエラストマーの含量、好ましくは天然ゴムの含量が、50~100phr、より優先的には60~100phr、より優先的には70~100phr、より優先的にはさらに80~100phr、非常に優先的には90~100phrである。特に、ジエンエラストマーの含量、好ましくはイソプレンエラストマーの含量、より好ましくは天然ゴムの含量が、非常に優先的には100phrである。
唯一種のジエンエラストマーを含有しようと数種のジエンエラストマーの混合物を含有しようと、本発明によるゴム組成物はさらに、少ない方ではあるが、ジエンエラストマー以外の任意の種類の合成エラストマーを含有し得て、しかもエラストマー以外のポリマー、例えば熱可塑性ポリマーさえも含有し得る。好ましくは、本発明によるゴム組成物が、ジエンエラストマー以外の合成エラストマー、もしくはエラストマー以外のポリマーを含有しないか、またはそれらの10phr未満、好ましくは5phr未満を含有する。
【0014】
エポキシ樹脂
本発明において使用され得るエポキシ樹脂は、すべてのポリエポキシド化合物を含む。それらは、例えば、芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、および脂肪族エポキシ樹脂に関し得る。例えば、芳香族エポキシ樹脂は、アミン芳香族エポキシ樹脂であり得る。エポキシ樹脂は、優先的にはエポキシノボラック樹脂、つまり、塩基触媒作用によって得られるレゾール樹脂とは対照的に、酸触媒作用により得られるエポキシ樹脂である。
特に、芳香族エポキシ樹脂の中で、2,2-ビス[4-(グリシジルオキシ)フェニル]プロパン、ポリ[(o-クレシルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド]、ポリ[(フェニルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド]、ポリ[(フェニルグリシジルエーテル)-co-(ヒドロキシベンズアルデヒドグリシジルエーテル)]、芳香族アミンエポキシ樹脂、およびそれらの化合物の混合物からなる群から選択されるエポキシ樹脂が好ましく、ポリ[(o-クレシルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒドおよびポリ[(フェニルグリシジルエーテル)-co-(ヒドロキシベンズアルデヒドグリシジルエーテル)]からなる群から選択されるエポキシ樹脂が好ましい。
再び好ましくは、エポキシ樹脂が、ポリ[(o-クレシルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド]、ポリ[(フェニルグリシジルエーテル)-co-ホルムアルデヒド]、芳香族アミンエポキシ樹脂、およびそれらの化合物の混合物からなる群から選択される。
【0015】
本発明との関連において使用できる市販入手可能なエポキシ樹脂の例として、例えば、Uniqema社のエポキシ樹脂DEN439、Sigma-Aldrich社のエポキシ樹脂トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、Huntsman社のエポキシクレゾールノボラック樹脂Araldite ECN1299、またはHuntsman社のエポキシフェノールノボラック樹脂Araldite EPN1138に言及され得る。
本発明による組成物は、1~30phrの間のエポキシ樹脂を含む。本発明との関連において使用される、アミンを含む硬化剤の点から見て、指定される樹脂の最小含量を下回ると、目指す技術的効果が不十分である一方、指定される最大限度を上回ると、剛性の過度に大幅な上昇、ならびにヒステリシスおよび材料の伸展性特性への過度な損害に関して、リスクが生じる。これらすべての理由から、エポキシ樹脂の含量は、優先的には10~25phrの間である。より好ましくは、本発明による組成物中のエポキシ樹脂の含量は、10~20phrの間である。
【0016】
高潜在性硬化剤
本発明の組成物のエポキシ樹脂は、特定の硬化剤、典型的な例では尿素化合物と組み合わせられ、それが、樹脂の架橋を可能にする。
本発明によると、硬化剤は、一般式(R1R2)N-CO-(NR3)-R7-(NR4)-CO-N(R5R6)(式中、各R1~R6基は、独立して、
・ 水素原子、
・ 1~20個の炭素原子を有するアルキル基、
・ 5~24個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
・ 6~30個の炭素原子を有するアリール基、および
・ 7~25個の炭素原子を有するアラルキル基、
からなる群から選択され、
一方ではR2基およびR3基が、他方ではR4基およびR5基が一緒になって環を形成可能であり、R7基は、6~30個の炭素原子を有する二価アリール基である)
の尿素化合物である。
【0017】
一般式(R1R2)N-CO-(NR3)-R7-(NR4)-CO-N(R5R6)中、CO基は、二重結合を介して酸素原子に結合した炭素原子であり、(R1R2)N(同様にN(R5R6))基は、共有結合を介してR1基およびR2基に結合した窒素原子であり、(NR3)(同様に(NR4))基は、共有結合を介してR3基に結合した窒素原子であり、R7基は、一方ではR3基を有する窒素原子に、他方ではR4基を有する窒素原子に結合した二価基であると理解される。
好ましくは、各R1~R6基が、独立して水素原子、1~3個の炭素原子を有するアルキル基、6~8個の炭素原子を有するアリール基、および7~9個の炭素原子を有するアラルキル基からなる群から選択され、R7基が、6~8個の炭素原子を有する二価アリール基である。
好ましくは、R7基が二価メチルフェニル基である。
好ましくは、R1~R7基が、一緒になって環を形成しない。
好ましくは、各R3およびR4基が水素原子である。
好ましい構成では、少なくとも1つのR1、R2、R5またはR6基が、6~8個の炭素原子を有するアリール基、優先的にはフェニル基である。
【0018】
他の好ましい構成では、R1、R2、R5およびR6基が、独立してメチル基およびエチル基から選択される。
好ましくは、R1、R2、R5およびR6基がメチル基であり、R3およびR4基が水素原子であり、R7基が二価メチルフェニル基である。そのようなジウレア化合物の一例は、Evonik社の、式1,1’-(4-メチル-m-フェニレン)ビス(3,3-ジメチル尿素)の化合物Amicure UR2Tである。
ゴム組成物中の尿素化合物の量は、1~15phrの範囲内にある。指定される最小限度を下回ると、目指す技術的効果が不十分であると判明した一方、指定される最大限度を上回ると、組成物の生状態での加工が不利であるリスクが生じる。優先的には、尿素含量が、0.5~10phr、好ましくは0.5~8phr、好ましくは0.5~5phrの範囲内である。
【0019】
補強フィラー
本発明による組成物は、優先的には補強フィラーを含む。
補強フィラーは、空気入りタイヤの製造に使用され得るゴム組成物を補強する能力で知られる、任意の種類の補強フィラー、例えば、有機フィラー、例えばカーボンブラック、補強無機フィラー、例えばシリカ、またはカーボンブラックと補強無機フィラーとの混合物を含み得る。より優先的には、特に組成物が内層中で使用される場合、補強フィラーが、主に、それどころか排他的にカーボンブラックを含む。特に組成物がトレッド中で使用される場合、補強フィラーはまた、主に補強無機フィラーを含み得る。
そのような補強フィラーは、典型的に粒子からなり、その(質量)平均径は、ミクロメートル未満であり、概して500nm未満、たいていは20~200nmの間、特にかつより優先的には20~150nmの間である。
従来、空気入りタイヤにおいて使用されるあらゆるカーボンブラック、特に、HAF、ISAFまたはSAFの型のブラック(「タイヤグレード」ブラック)が、カーボンブラックとして適切である。後者の中で、特に、100シリーズ、200シリーズまたは300シリーズ(ASTMグレード)の補強性カーボンブラック、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347もしくはN375のブラックに言及し、またはさらには目指す用途に応じて、数の大きいシリーズのブラック(例えば、N660、N683もしくはN772)にも言及する。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形で、イソプレンエラストマー中にすでに組み込まれていてもよい(例えば、国際公開第97/36724号または同第99/16600号を参照)。カーボンブラックのBET比表面積は、規格D6556-10[多点(最低限5点)法-ガス:窒素-相対圧力p/p0の範囲:0.1~0.3]に準拠して測定する。
【0020】
「補強無機フィラー」は、本特許出願での定義により、「白色フィラー」または「透明フィラー」、しかもカーボンブラックと対照的に「非黒色フィラー」としてさえも知られる、中間カップリング剤以外の手段なしに単独で、空気入りタイヤの製造向けのゴム組成物を補強できる、言い換えると、その補強する役割において通常のタイヤグレードカーボンブラックを代替できる任意の無機フィラーまたは鉱物フィラー(その色および由来、天然もしくは合成にかかわらず)を意味すると理解すべきである。そのようなフィラーは、概して、公知の方法で、その表面上のヒドロキシル(-OH)基の存在を特徴とする。
シリカ質型の鉱物フィラー、特にシリカ(SiO2)、またはアルミナ質型の鉱物フィラー、特にアルミナ(Al2O3)が、特に、補強無機フィラーとして適切である。使用されるシリカは、当業者には公知の任意の補強シリカ、特に、BET表面積およびまた、CTAB比表面積がいずれも450m2/g未満、好ましくは30~400m2/gである任意の沈降シリカまたは溶融シリカであり得る。高分散性沈降シリカ(「HDS」)、例えば、Degussa社のシリカ、Ultrasil7000およびUltrasil7005、Rhodia社のシリカ、Zeosil1165MP、1135MPおよび1115MP、PPG社のシリカ、Hi-Sil EZ150G、Huber社のシリカ、Zeopol8715、8745および8755、または国際公開第03/16837号に記載される、高い比表面積を有するシリカに言及する。
【0021】
シリカのBET比表面積は、公知の方法で、「The Journal of the American Chemical Society」、第60巻、309ページ、1938年2月に記載されるBrunauer-Emmett-Teller法を使用してガス吸着により、より具体的には1996年12月のフランス規格NF ISO9277(多点(5点)容積法-ガス:窒素-脱気:160℃で1時間-相対圧力p/p0の範囲:0.05~0.17)に準拠して特定する。シリカのCTAB比表面積は、1987年11月のフランス規格NF T45-007(方法B)に準拠して特定する。
アルミナ質型の鉱物フィラー、特にアルミナ(Al2O3)または水酸化(酸化)アルミニウム、または例えば、米国特許第6610261号明細書および同第6747087号明細書に記載される補強性酸化チタンも同じく、補強無機フィラーとして適切である。
補強無機フィラーが用意される物理状態は、粉末、マイクロビーズ、顆粒、ビーズの形であろうと他の任意の適切な高密度化された形であろうと重要ではない。当然のことながら、「補強無機フィラー」という用語は、異なる補強無機フィラー、特に高分散性のシリカ質フィラーおよび/またはアルミナ質フィラーの混合物を意味するとも理解される。
【0022】
当業者ならば、別の性質の補強フィラー、特に有機性の補強フィラーが、無機層、例えばシリカで覆われている、そうでなければその表面に官能部位、特にヒドロキシル部位を含むことで、被覆剤またはカップリング剤の存在下または不在下にフィラーとエラストマーとの間での結合の確立を可能にするならば、本項に記載される補強無機フィラーと同等のフィラーとして、この補強フィラーを使用し得ると理解する。
補強無機フィラーをジエンエラストマーにカップリングするために、周知の方法で、無機フィラー(その粒子の表面)とジエンエラストマーとの間で、化学的性状および/または物理的性状の十分な結合を与えることを意図した少なくとも二官能カップリング剤(または結合剤)を使用してもよい。特に、少なくとも二官能性であるオルガノシランまたはポリオルガノシロキサンを使用する。「二官能性」は、無機フィラーと相互作用し得る第1の官能基およびジエンエラストマーと相互作用し得る第2の官能基を有する化合物を意味すると理解される。例えば、そのような二官能化合物は、無機フィラーのヒドロキシル基と相互作用可能である、ケイ素原子を含む第1の官能基、およびジエンエラストマーと相互作用可能である、イオウ原子を含む第2の官能基を含み得る。
【0023】
優先的には、オルガノシランが、(対称性または非対称性の)オルガノシランポリスルフィド、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(略称TESPT、Evonik社がSi69の名称で販売)、またはビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(略称TESPD、Evonik社がSi75の名称で販売)、ポリオルガノシロキサン、メルカプトシラン、ブロック化メルカプトシラン、例えばS-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)オクタンチオエート(Momentive社がNXT Silaneの名称で販売)からなる群から選択される。より優先的には、オルガノシランが、オルガノシランポリスルフィドである。
カップリング剤の含量は、優先的には12phr未満であり、概して、できるだけ少量の使用が望ましいと理解される。典型的に、補強無機フィラーが存在する場合、カップリング剤の含量は、無機フィラーの量に対して、0.5質量%~15質量%である。その含量は、優先的には0.5~15phrの範囲内にある。その含量は、当業者によって、組成物中で使用される無機フィラーの含量に従って容易に調整される。
本発明によると、補強フィラーが存在する場合、好ましくは主に、それどころか排他的にカーボンブラックを含む補強フィラーの含量は、20~200phr、好ましくは30~150phr、好ましくは40~100phr、好ましくは50~80phrの範囲内であり得る。
【0024】
架橋系
架橋系は、空気入りタイヤ用のゴム組成物の分野の当業者に公知の任意の種類の系であり得る。架橋系は、特に、イオウおよび/または過酸化物および/またはビスマレイミドをベースとし得る。
優先的には、架橋系はイオウをベースとし、その場合、加硫系と呼ばれる。イオウは、任意の形で用意されてよく、特に、分子状イオウまたはイオウ供与剤の形で用意され得る。少なくとも1種の加硫促進剤がさらに、優先的には存在し、任意に、同じく優先的には、種々の公知の加硫活性剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、もしくは同等の化合物、例えば、ステアリン酸塩、および遷移金属の塩、グアニジン誘導体(特に、ジフェニルグアニジン)、または公知の加硫遅延剤も使用され得る。
イオウは、0.5~12phrの間の優先的な含量、特に1~10phrの間の含量で使用する。加硫促進剤は、0.5~10phrの間の優先的な含量、より優先的には0.5~8.0phrの間の含量で使用する。
【0025】
促進剤として、イオウの存在下にジエンエラストマーの加硫の促進剤として作用できる任意の化合物を使用し得て、特に、チアゾール型の促進剤、同じくその誘導体、またはスルフェンアミド、チウラム、ジチオカルバメート、ジチオホスフェート、チオ尿素およびキサンテートの型の促進剤を使用し得る。そのような促進剤の例として、特に、以下の化合物:2-メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(略称「MBTS」)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「CBS」)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「DCBS」)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(「TBBS」)、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンイミド(「TBSI」)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(「TBZTD」)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(「ZBEC」)、およびそれらの化合物の混合物に言及し得る。
【0026】
種々の添加剤
本発明に従うゴム組成物は、当業者に公知であり、かつ概して空気入りタイヤ用のゴム組成物中で使用される通常の添加剤および加工助剤のすべてまたは一部、例えば、可塑剤(例えば、可塑化オイルおよび/もしくは可塑化樹脂)、顔料、保護剤、例えば、耐オゾンワックス、化学オゾン劣化防止剤または抗酸化剤または抗疲労剤も含み得る。
好ましくは、本発明による組成物が、ニトリル化合物を含まないか、または10phr未満、好ましくは5phr未満、好ましくは2phr未満、非常に好ましくは1phr未満、より優先的には0.5phr未満のニトリル化合物を含む。
組成物は、生状態(架橋もしくは加硫の前)または硬化状態(架橋もしくは加硫の後)であり得る。
【0027】
完成ゴム物品または半完成ゴム物品および空気入りタイヤ
本発明の他の主題は、本発明による組成物を含む完成ゴム物品または半完成ゴム物品である。
本発明の他の主題は、本発明による組成物を含む空気入りタイヤである。
空気入りタイヤ内での3つの種類の領域を定義できる:
・ 空気入りタイヤのトレッドおよび外側サイドウォールを本質的に含む「外層」と呼ばれる層を含む、周囲空気と接触する半径方向外側領域。外側サイドウォールは、クラウンとビードとの間にある、空気入りタイヤの内部空洞に対するカーカス補強の外側に位置するエラストマー層であるため、クラウンからビードに及ぶカーカス補強の領域を完全または部分的に覆うことになる。
・ 概して、膨張ガスに対する気密層からなる、内側気密層またはインナーライナと呼ばれることもある、膨張ガスと接触する半径方向内側領域。
・ 空気入りタイヤの内部領域、つまり、外側領域と内側領域との間にある領域。この領域は、本明細書では空気入りタイヤの内層と呼ばれる層またはプライを含む。それらは、例えば、カーカスプライ、トレッド下層、空気入りタイヤベルトプライ、または周囲空気または空気入りタイヤの膨張ガスと接触しない他の任意の層である。
【0028】
本明細書で定義される組成物は、空気入りタイヤの内層および外層に特によく適しており、特に、外層については、トレッド組成物に適している。
本発明によると、内層は、カーカスプライ、クラウンプライ、ビードワイヤ充填材、クラウンフィート(crown feet)、デカップリング層(decoupling layer)、エッジゴム、パッドゴム、トレッド下層、およびそれらの内層の組合せからなる群から選択され得る。好ましくは、内層が、カーカスプライ、クラウンプライ、ビードワイヤ充填材、クラウンフィート、デカップリング層、およびそれらの内層の組合せからなる群から選択される。
本発明による組成物は、非空気入りタイヤの内層および外層、特に非空気入りタイヤのトレッドにも適切であり得る。非空気入りタイヤは、加圧膨張ガス以外の手段により車両の負荷を支持するタイヤであることに留意すべきである。
【0029】
本発明は、特に、旅客車両、SUV(スポーツ用多目的車)、または二輪車両(特にオートバイ)型、または航空機、またはさらにはバン、大型車、つまり地下鉄、バス、大型道路運送車両(トラック、トラクター、トレーラー)、もしくはオフロード車、例えば、重量農業用車両もしくは建設車両から選択される産業車両、その他の自動車を装備することを意図した空気入りタイヤに関する。
本発明は、本発明によるゴム組成物を含む、生状態(つまり、硬化前)および硬化状態(つまり、架橋後または加硫後)の両方ともの製品に関する。
【0030】
ゴム組成物の調製
本発明に従うゴム組成物は、当業者には周知の2つの連続調製相を使用して、適切なミキサー中で製造され得る:
- その間に、すべての必要な成分、特に、エラストマーマトリクス、フィラー、および架橋系を除く種々の他の任意の添加剤を適切なミキサー、例えば標準密閉式ミキサー(例えば、「Banbury」型)内に導入する、単一の熱機械的工程で行われ得る熱機械加工または熱機械混錬の第1の相(「非生産」相)。フィラーの、エラストマーへの組込みは、熱機械混錬により、1回または複数回のラウンドで行われ得る。例えば、国際公開第97/36724号および同第99/16600号に記載されるように、フィラーがすでに、マスターバッチの形でエラストマー中に全部または部分的に組み込まれている場合、直接に混錬されるのはマスターバッチであり、適切であれば、組成物中に存在する、マスターバッチの形の中には存在しない、他のエラストマーまたはフィラー、さらには架橋系以外の種々の他の任意の添加剤を組み込む。
非生産相は、110℃~190℃の間、好ましくは130℃~180℃の間の最高温度までの高温において、概して2~10分の間の時間にわたり行う。
- 第1の非生産相中に得られた混合物を、より低い温度、典型的に110℃未満、例えば40℃~100℃の間の温度へと冷却してから、外部ミキサー、例えばオープンミル中で行われる、機械加工の第2の相(「生産」相)。次に架橋系を組み込んでから、すべてを数分間、例えば2~15分の間にわたり混合する。
【0031】
そのような組成物を調製するための過程は、例えば以下の工程:
a) 第1の相(「非生産」相)中にジエンエラストマー内に補強フィラーを組み込み、110℃~190℃の間の最高温度に達するまですべてを熱機械的に(例えば、1回または複数回のラウンドで)混錬する工程;
b) 合体させた混合物を、100℃未満の温度へと冷却する工程;
c) 続いて、第2の工程(「生産」相)中に、架橋系を組み込む工程;
d) 110℃未満の最高温度まですべてを混錬する工程
を含む。
1~30phrの間のエポキシ樹脂および1~15phrの間の尿素化合物を互いに独立に、非生産相(a)中または生産相(c)中のいずれか一方で導入し得る。好ましくは、エポキシ樹脂を非生産相(a)中に導入し、高潜在性硬化剤は、生産相(c)中に導入する。
そのように得られた最終組成物は、続いて、特に、実験室特性評価用に、例えば、シートまたはプラークの形にカレンダ加工され得るか、または空気入りタイヤの製造に使用されるゴム半製品(もしくは特定断面形状要素(profiled element))の形へと押出成形され得る。
組成物の架橋は、当業者に公知の方法で、例えば、130℃~200℃の間の温度において加圧下に行われ得る。
【実施例】
【0032】
使用した測定および試験
スコーチ時間
測定は、フランス規格NF T43-005に従って130℃において行う。時間の関数としての稠度測定指数(consistometric index)の変化が、前記の規格に従って、分で表されるパラメータT5(大型ローターの場合)により評価され、かつ稠度測定指数(MUで表す)での、その指数に関して測定された最小値を上回る5単位の上昇を得るために必要とされる時間と定義される、ゴム組成物のスコーチ時間の特定を可能にする。
当業者に周知のように、時間の関数としての稠度測定指数が大きいほど、硬化前の材料の架橋が、より遅れることに留意すべきである。
【0033】
ムーニー塑性
フランス規格NF T43-005(1991)に記載されるように、振動式稠度計を使用する。ムーニー塑性測定は、次の原理に従って行う。つまり生状態(すなわち、硬化前)の組成物を、100℃へと加熱した円筒形チャンバ中で成形する。1分間にわたり予熱した後、ローターが、試験体内を2回転/分で回転し、4分間の回転後に、その動作を維持するための作動トルクを測定する。ムーニー塑性(ML1+4)は、「ムーニー単位」(MU、1MU=0.83ニュートンメートル)で表す。
当業者に周知のように、ムーニー塑性が小さいほど、材料の加工が、より簡単であることに留意すべきである。当然のことながら、特定の値(例えば20MU)を上回ると、特に、内層の製造には、材料が、あまりに流動性で使用に適さなくなる。
【0034】
引張試験
この試験は、1988年9月のフランス規格NF T46-002に従って行った。すべての引張測定は、フランス規格NF T40-101(1979年2月)に準拠して、タイヤ中の組成物の動作温度を代表する温度(100±2℃)において、標準湿度測定条件(50±5%の相対湿度)下に行った。
150℃において60分間硬化させた試料を用い、2番目の伸び時(つまり、順応後)に、試験体の初期断面積に換算することにより算出される名目上の割線モジュラス(または見かけ応力(MPa))を、100%伸びにおいて(MA100と示す)、および300%伸びにおいて(MA300と示す)測定した。
補強を表すMA300/MA100比を、表に示す。
【0035】
組成物の調製
以下の試験は、次のように行う。つまり、ジエンエラストマー、補強フィラー、1~30phrの間のエポキシ樹脂、さらには架橋系を除く種々の他の添加剤を、密閉式ミキサー内へと順々に導入し(最終充填度:およそ70体積%)、その初期容器温度は、およそ60℃である。次いで、熱機械加工(非生産相)を、165℃の最高「低下」温度に達するまで、全体でおよそ3~4分かかる一工程で行う。
そのように得られた混合物を回収し冷却してから、イオウ、スルフェンアミド型の促進剤、および高潜在性硬化剤を、30℃でミキサー(ホモフィニッシャー)に添加し、すべてを、適切な時間(例えば、5~12分の間)にわたり混合する(生産相)。
そのように得られた組成物は、続いて、物理的特性もしくは機械的特性の測定用に、ゴムのプラーク(2~3mmの厚さ)もしくは薄いシートの形のいずれかにカレンダ加工されるか、または特定断面形状要素の形へと押出成形される。
組成物の架橋は、150℃の温度において60分間、加圧下に行う。
【0036】
ゴム組成物を用いた試験
2種のゴム組成物を前記のように調製し、1種は本発明に従い(以降、C-2と示す)、1種は本発明に従わなかった(対照組成物、以降はC-1と示す)。それらの配合組成(phr)およびその特性を以下の表1にまとめた。
対照組成物C-1を除き、この表1中に示す組成物は、硬化中にホルムアルデヒドの形成を引き起こさない。
組成物C-2は、従来の対照組成物C-1中に存在するフェノール/ホルムアルデヒド樹脂-HMT硬化剤のペアの代わりとして、エポキシ樹脂と尿素化合物とを含有する。
すべての結果は、対照組成物C-1を基準として、100を基本に表す。100未満の値は、その値が対照組成物の値を下回ることを意味し、100超の値は、対照組成物の値を上回る値を意味する。
【0037】
【0038】
本発明に従う組成物は、より少量の硬化剤を用いて、スコーチ時間の延長およびムーニー粘度の低下を示す、したがって加工性の改善を示すと同時に、対照組成物と類似の補強効果を得ることを可能にすると指摘する。