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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-28
(45)【発行日】2025-09-05
(54)【発明の名称】ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20250829BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20250829BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250829BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20250829BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20250829BHJP
【FI】
C08L9/00
B60C1/00 A
C08K3/013
C08K3/36
C08L15/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022573704
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 FR2021051006
(87)【国際公開番号】W WO2021245358
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】2005857
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】アラウホ ダ シルヴァ ホセ-カルロス
(72)【発明者】
【氏名】プラ マクシム
(72)【発明者】
【氏名】セレド ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】ペリオ アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】デュリエ シモン
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/163773(WO,A1)
【文献】特開2018-188598(JP,A)
【文献】特開2015-196759(JP,A)
【文献】特開2019-199538(JP,A)
【文献】特開2015-086307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 9/00
B60C 1/00
C08K 3/013
C08K 3/36
C08L 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度TgE1を有する少なくとも1種の官能化されていない第1ジエンエラストマーE1、ガラス転移温度TgE2を有する1種の官能化された第2ジエンエラストマーE2、官能化されたジエンエラストマーE2と相互作用できる補強用充填剤、及び架橋系をベースとするゴム組成物であって、
-第2ジエンエラストマーE2が、アミノアルコキシシラン官能化スチレンブタジエンコポリマーであり、
-補強用充填剤が、少なくとも1種のシリカを主に含み、
-ガラス転移温度TgE1が、-50℃以上であり、
-ガラス転移温度TgE2が、数学的関係TgE2≦TgE1-23℃を満たし、
-ガラス転移温度TgE2が、数学的関係TgE2≧TgE1-65℃を満たし、
-官能化されていないジエンエラストマーE1の含有量が、50phr~70phrである、前記ゴム組成物。
【請求項2】
ガラス転移温度TgE2が、数学的関係TgE2≦TgE1-28℃を満たす、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
ガラス転移温度TgE2が、数学的関係TgE2≧TgE1-50℃を満たす、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
ガラス転移温度TgE2が、-110℃~-23℃の範囲内である、請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
ガラス転移温度TgE1が、-50℃~0℃の範囲内である、請求項1~のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
ジエンエラストマーE1の含有量が、55phr~70phrの範囲内である、請求項1~のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
官能化されていないジエンエラストマーE1が、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、ブタジエン/イソプレンコポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー、及びブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーからなる群より選ばれる、請求項1~のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
官能化されていないジエンエラストマーE1が、ポリブタジエン及びスチレン/ブタジエンコポリマーから選ばれる、請求項1~のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項9】
補強用充填剤の含有量が、20~100phrの範囲内である、請求項1~のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項10】
官能化されたジエンエラストマーE2の含有量が、30phr~50phrの範囲内である、請求項1~のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の少なくとも1種の組成物を含む、トレッド。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の少なくとも1種の組成物又は請求項11に記載のトレッドを含む、空気式又は非空気式タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、補強用充填剤で補強されたゴム組成物、特に、空気式又は非空気式の車両タイヤの製造に使用され、より具体的にはトレッドの製造のために使用される前記ゴム組成物の分野である。
【背景技術】
【0002】
空気式又は非空気式タイヤ用のトレッドは、既知の方法で、低い転がり抵抗、高い耐摩耗性、及び湿った地面上での高いグリップ力(adherence)を含む、相反することが多い多くの技術的要件を満たすことが必要である。
特に転がり抵抗及び耐摩耗性の観点から、この性質の妥協点は、特に乗用車用に意図されている省エネルギーの「グリーンタイヤ」に関して、特に、新規な低ヒステリシスのゴム組成物をトレッドとして使用することにより、近年、改善することができた。該ゴム組成物は、主に特定の無機充填剤(補強用充填剤として記載される)により、特に高分散性シリカ(HDS)により補強される特性を有し、補強力の観点から、従来のタイヤグレードのカーボンブラックに匹敵できる。しかしながら、かかるゴム組成物中の高いシリカ含有量の存在は、タイヤのウェットグリップ性能に対して最適ではなく、このグリップ力は、充填が不十分な組成物より低い。
濡れた地面上での空気式タイヤのグリップ力は、走行する地面に対するトレッドの接触面積を増加させることにより、特にトレッドに変形可能な材料を使用することにより(この場合、変形可能なゴム組成物)得られることが知られている。より変形しやすいゴム組成物を製造する1つの方法は、大量の可塑剤を該ゴム組成物に添加することである。しかしながら、非常に変形しやすいゴム組成物は、ヒステリシスの可能性が広いという欠点を有する。しかし、転がり抵抗の改善は、ヒステリシスロスを下げる必要がある。
そのため、トレッドのゴム組成物は、2つの相反する要件、すなわち、グリップの要件を満たすために最大限のヒステリシス可能性を有すること、及び転がり抵抗の要件を満たすためにできるだけ低いヒステリシスを有することを満たさなければならない。
【発明の概要】
【0003】
したがって、本発明の1つの目的は、新規なゴム組成物、特にトレッド用のゴム組成物であって、特に上述した欠点を解決し、そのウェットグリップ性能を維持又はさらに改善すると同時に、特に改善したヒステリシス性質も示すゴム組成物を提案することである。
出願人は、驚くべきことに、ガラス転移温度の明らかな差を有する、ゴム化合物を含むジエンエラストマーの特定の組み合わせにより、上述した欠点を解決できることを見出したことで、この目的を達成した。具体的には、ゴム組成物が、-50℃以上のガラス転移温度TgE1を有する少なくとも1種の官能化されていないジエンエラストマーE1(このエラストマーE1は、50phr以上の含有量で存在する)と、
を満たすガラス転移温度TgE2を有する、少なくとも1種の官能化された第2ジエンエラストマーE2とを含む場合、この組成物は、濡れた地面上での良好なグリップ力を保つと同時に、優れた転がり抵抗も提供する。
【0004】
したがって、本発明の第1の主題は、ガラス転移温度TgE1を有する少なくとも1種の官能化されていない第1ジエンエラストマーE1、ガラス転移温度TgE2を有する少なくとも1種の官能化された第2ジエンエラストマーE2、官能化されたジエンエラストマーE2と相互作用できる補強用充填剤、及び架橋系をベースとするゴム組成物であって、
-ガラス転移温度TgE1が、-50℃以上であり、
-官能化されていないジエンエラストマーE1の含有量が、50phr以上である、前記ゴム組成物に関する。
有利には、ガラス転移温度TgE2は、
を満たし得る。
有利には、ガラス転移温度TgE2は、
を満たし得る。
有利には、ガラス転移温度TgE1は、-50℃~0℃の範囲内、より優先的には-40℃~0℃の範囲内、より優先的には-30℃~0℃の範囲内であり得る。
有利には、ガラス転移温度TgE2は、-110℃~-23℃の範囲内、好ましくは-100℃~-28℃の範囲内、より優先的には-95℃~-30℃の範囲内であり得る。
有利には、官能化されていないジエンエラストマーE1の含有量は、50phr~70phrの範囲内、好ましくは55phr~70phrの範囲内、より優先的には55phr~65phrの範囲内であり得る。
【0005】
有利には、補強用充填剤の含有量は、20~100phrの範囲内、好ましくは30~90phrの範囲内、さらにより優先的には40~90phrの範囲内であり得る。
有利には、補強用充填剤は、少なくとも1種の無機補強用充填剤を主に含み得、さらにより優先的には、少なくとも1種のシリカを主に含み得る。優先的には、無機補強用充填剤、好ましくはシリカは、ゴム組成物中の補強用充填剤の全質量の50質量%超、好ましくは55質量%超を表す。さらにより優先的には、補強用充填剤は、少なくとも1種のシリカを主に含み得、及び少なくとも1種のカーボンブラックも少量含み得る。優先的には、ゴム組成物は、補強用充填剤をジエンエラストマーとカップリングするための剤を更に含み得る。優先的には、このカップリング剤は、オルガノシランポリスルフィドであり得る。
有利には、官能化されていないジエンエラストマーE1は、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、ブタジエン/イソプレンコポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー、及びブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーからなる群より選ばれてもよい。優先的には、官能化されていないジエンエラストマーE1は、ポリブタジエン及びスチレン/ブタジエンコポリマーから選ばれる。さらにより優先的には、官能化されていないジエンエラストマーE1は、スチレン/ブタジエンコポリマーである。
有利には、官能化されたジエンエラストマーE2は、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、ブタジエン/イソプレンコポリマー、イソブテン/イソプレンコポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー、及びブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーからなる群より選ばれてもよい。優先的には、官能化されたジエンエラストマーE2は、ポリブタジエン及びチレン/ブタジエンコポリマーから選ばれる。さらにより優先的には、官能化されたジエンエラストマーE2は、スチレン/ブタジエンコポリマーである。
【0006】
有利には、官能化されたジエンエラストマーE2は、補強用充填剤と相互作用できる少なくとも1つの化学官能基を含み得、化学官能基は、窒素、イオウ、酸素、リン、スズ及びケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を含む。
有利には、補強用充填剤は、補強用無機充填剤、優先的にはシリカを主に含み、官能化されたジエンエラストマーE2は、補強用無機充填剤と相互作用できる少なくとも1つの化学官能基を含み得、化学官能基は、窒素、イオウ、酸素及びリンからなる群より選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を含む。
有利には、補強用充填剤と相互作用できる化学官能基は、少なくとも1つの酸素原子を含む極性官能基であり得る。
有利には、極性官能基は、シラノール、アミン基を有していてもよいアルコキシシラン、エポキシド、エーテル、エステル、カルボン酸及びヒドロキシルからなる群より選ばれてもよい。
【0007】
有利には、官能化されたジエンエラストマーE2は、シラノールである極性官能基を含み得る。優先的には、シラノールは、官能化されたジエンエラストマーの主鎖の鎖末端又は鎖の中間に存在してもよく、より優先的には、シラノールは、官能化されたジエンエラストマーの主鎖の鎖末端に存在する。
有利には、官能化されたジエンエラストマーE2は、アミン基を有していてもよいアルコキシシランである極性官能基を含み得る。優先的には、アミン基を有していてもよいアルコキシシランは、官能化されたジエンエラストマーE2の主鎖の鎖末端又は鎖の中間に存在してもよく、より優先的には、アミン基を有していてもよいアルコキシシラン基は、官能化されたジエンエラストマーE2の主鎖の鎖の中間に存在する。優先的には、アミン基は、3級アミンであり得る。
有利には、本発明の組成物中の官能化されたジエンエラストマーE2の含有量は、40phr以下、より優先的には30phr~50phrの範囲内、好ましくは30phr~45phrの範囲内、より優先的には35phr~45phrの範囲内である。
有利には、本発明の組成物中の官能化されていないジエンエラストマーE1の含有量は、50phr~70phrの範囲内であり、本発明の組成物中の官能化されたジエンエラストマーE2の含有量は、30phr~50phrの範囲内である。有利には、本発明の組成物中の官能化されていないジエンエラストマーE1の含有量は、55phr~70phrの範囲内であり、本発明の組成物中の官能化されたジエンエラストマーE2の含有量は、30phr~45phrの範囲内である。
有利には、上記で定義されるゴム組成物は、少なくとも1種の可塑剤を更に含む。
【0008】
有利には、上記で定義されるゴム組成物及びその好ましい態様は、以下の工程を含む製造プロセスに従って得ることができる:
-上述したガラス転移温度TgE1を有する官能化されていないジエンエラストマーE1、及び必要に応じて、可塑剤などの他の成分をインターナルミキサーに導入し、最大温度200℃まで熱機械操作を行って、第1マスターバッチを得る工程と、
-上述したガラス転移温度TgE2を有する官能化されたジエンエラストマーE2、補強用充填剤、並びに必要に応じて、カップリング剤及び他の成分、例えば、可塑剤をインターナルミキサーに導入し、最大温度200℃まで熱機械操作を行って、第2マスターバッチを得る工程と、
-上記工程で得られた第1及び第2マスターバッチをインターナルミキサーに導入し、最大温度180℃まで熱機械操作を行って、混合物を得る工程と、
-混合物を上記工程から回収し、該混合物を110℃以下の温度に冷却する工程と、
-架橋系を冷却した混合物に含ませて、最大温度110℃未満、優先的には80℃未満まで混練し、ゴム組成物を回収する工程。
【0009】
本発明の別の主題は、少なくとも1種の上記で定義される組成物を含むトレッドに関する。
本発明の別の主題は、少なくとも1種の上記で定義される組成物を含むタイヤ、又は少なくとも1種の上記で定義されるトレッドを含むタイヤに関する。
本発明の第1の主題は、ガラス転移温度TgE1を有する少なくとも1種の官能化されていない第1ジエンエラストマーE1、ガラス転移温度TgE2を有する1種の官能化された第2ジエンエラストマーE2、官能化されたジエンエラストマーE2と相互作用できる補強用充填剤、及び架橋系をベースとするゴム組成物であって、
-ガラス転移温度TgE1が、-50℃以上であり、
-官能化されていないジエンエラストマーE1の含有量が、50phr以上である、前記ゴム組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
「をベースとするゴム組成物」という表現は、使用した様々な成分の混合物及び/又はin situ反応の生成物を含む組成物であって、これらの成分のいくつかは、前記組成物の製造の様々な段階中に、少なくとも部分的に、互いに反応でき、及び/又は互いに反応することが意図されている、前記組成物を意味し、したがって、該組成物は、完全に若しくは部分的に架橋した状態、又は架橋しなかった状態となる可能性があると理解されるべきである。
本発明の目的のために、「エラストマー100質量部当たりの質量部」(又はphr)という表現は、組成物のエラストマーの100質量部当たりの質量部を意味すると理解されるべきである。
本明細書において、特に明確に示されていない限り、すべてのパーセント(%)は、質量パーセント(%)を示す。
さらに、「aとbの間」という表現で示される値の区間はすべて、aを超えた値からb未満の値の範囲(すなわち、端点a及びbを除く)を表すのに対し、「a~b」という表現で示される値の区間はすべて、a値からb値までの範囲(すなわち、厳密な端点a及びbを含む)を意味する。
【0011】
「主な」化合物に言及する場合、これは、本発明の目的のために、この化合物が、ゴム組成物中の同じタイプの化合物の中で主であることを意味し、すなわち、同じタイプの化合物の中で最大の質量を表すものであると理解される。したがって、例えば、主なエラストマーは、組成物中のエラストマーの全質量に対して最大の質量を表すエラストマーである。同様に、「主な」充填剤は、組成物の充填剤の中で最大の質量を表す充填剤である。例として、1つのエラストマーしか含まない系において、本発明の意義の範囲内で該エラストマーが主であり、2つのエラストマーを含む系において、主なエラストマーは、エラストマーの質量の半分を超えることを表す。対照的には、「少数の、少量の」化合物は、同じタイプの化合物の中で最大の質量部を表さない化合物である。好ましくは、「主な」という用語は、50%超、好ましくは60%超、70%超、80%超、90%超で存在することを意味し、より優先的には「主な」化合物は、100%を表すと理解される。
本明細書で言及する炭素を含む化合物は、化石由来であってもよく、又はバイオベースであってもよい。後者の場合、炭素を含む化合物は、部分的に若しくは完全にバイオマスに由来するか、又はバイオマスに由来する再生可能な出発物質から得ることができる。特に、ポリマー、可塑剤、充填剤等が関係している。
【0012】
「ジエン」エラストマー(又は区別なく、ゴム)は、天然又は合成にかかわらず、既知のように、少なくとも一部(すなわち、ホモポリマー又はコポリマー)が、ジエンモノマー単位(2つの共役又は非共役炭素-炭素二重結合を有するモノマー)で構成されるエラストマー化合物を意味すると理解されるべきである。
「エラストマーマトリックス」は、本発明のゴム組成物を形成するすべてのエラストマーを意味すると理解される。
ジエンエラストマーは、2つのカテゴリー:「本質的に不飽和」又は「本質的に飽和」に分類することができる。「本質的に不飽和」という用語は、一般的には、少なくとも一部が、15%(モル%)超のジエン由来(共役ジエン)の単位の含有量を有する共役ジエンモノマーに由来する、ジエンエラストマーを意味すると理解される。したがって、ブチルゴム、又はジエンとEPDMタイプのα-オレフィンとのコポリマーなどのジエンエラストマーは、上記の定義に含まれず、特に「本質的に飽和の」ジエンエラストマー(低い又は非常に低い含有量(常に15モル%未満)のジエン由来の単位)と表現することができる。
本発明の組成物に使用することができるジエンエラストマーは、より具体的に意味することが意図されている:
-4~18個の炭素原子を有する共役又は非共役ジエンモノマーの任意のホモポリマー、
-4~18個の炭素原子を有する共役又は非共役ジエンと少なくとも1の他のモノマーとの任意のコポリマー。
【0013】
他のモノマーは、オレフィン又は共役若しくは非共役ジエンであり得る。
適切な共役ジエンとしては、4~12個の炭素原子を含む共役ジエン、具体的には1,3-ジエン、特に、例えば、1,3-ブタジエン及びイソプレンが挙げられる。
適切な非共役ジエンとしては、6~12個の炭素原子を含む非共役ジエン、例えば、1,4-ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン、又はジシクロペンタジエンが挙げられる。
適切なオレフィンとしては、8~20個の炭素原子を含むビニル芳香族化合物、及び3~12個の炭素原子を含む脂肪族α-モノオレフィンが挙げられる。
適切なビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、オルト-、メタ-若しくはパラ-メチルスチレン、「ビニルトルエン」の商業的な混合物、又はパラ-(tert-ブチル)スチレンが挙げられる。
より具体的には、ジエンエラストマーは、
-共役ジエンモノマーの任意のホモポリマー、特に、4~12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合により得られた任意のホモポリマー、
-1以上の共役ジエンと、8~20個の炭素原子を有する別の共役ジエン又は1以上のビニル芳香族化合物との共重合により得られた任意のコポリマー、
-イソブテンとイソプレン(ブチルゴム)とのコポリマー、及びこのタイプのコポリマーのハロゲン化コポリマー、特に塩素化又はブロム化コポリマーである。
【0014】
本発明のゴム組成物は、-50℃以上のガラス転移温度TgE1を有する少なくとも1種の官能化されていない第1ジエンエラストマーE1、及び
を満たすガラス転移温度TgE2を有する少なくとも1種の官能化された第2ジエンエラストマーE2を含み、該官能化されていないジエンエラストマーE1は、50phr以上の含有量で存在する。驚くべきことに、この組み合わせにより、著しいウエットグリップ性質を有すると同時に、優れたヒステリシス性質(したがって転がり抵抗が減少する)も有するゴム組成物を得ることができる。
ガラス転移温度TgE1及びTgE2は、規格ASTM D3418:2008に準拠して測定される。
本発明の目的のために、「官能化されたジエンエラストマー」は、補強用充填剤と相互作用できる化学官能基を有するジエンエラストマー(天然又は合成にかかわらない)を意味すると理解される。補強用充填剤と相互作用できる化学官能基は、特に、ヘテロ原子、又は窒素、イオウ、酸素、リン、スズ及びケイ素から選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を含む基であってもよい。
本発明の目的のために、「官能化されていないジエンエラストマー」は、補強用充填剤と相互作用できる化学官能基を有しないジエンエラストマー(天然又は合成にかかわらない)を意味すると理解される。優先的には、官能化されていないジエンエラストマーは、炭素原子及び水素原子から本質的になり得る。官能化されていないジエンエラストマーは、ヘテロ原子を含まないか、又は不純物の量及び該ジエンエラストマーの合成方法に起因する量のヘテロ原子を含む場合もある。
【0015】
ジエンエラストマーE1
ジエンエラストマーE1は、官能化されておらず、-50℃以上のガラス転移温度TgE1を有する。より優先的には、ガラス転移温度TgE1は、-50℃~0℃の範囲内、より優先的には-40℃~0℃の範囲内、より優先的には-30℃~0℃の範囲内である。
官能化されていないジエンエラストマーE1は、そのガラス転移温度TgE1が-50℃以上である限り、あらゆる上述したジエンエラストマーであってもよい。
優先的には、官能化されていないジエンエラストマーE1は、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、ブタジエン/イソプレンコポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー、及びブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーからなる群より選ばれる。優先的には、官能化されていないジエンエラストマーE1は、ポリブタジエン及びスチレン/ブタジエンコポリマーから選ばれる。有利には、官能化されていないジエンエラストマーE1は、スチレン/ブタジエンコポリマーである。
【0016】
適切な官能化されていないジエンエラストマーE1としては、特に、-50℃~0℃の範囲内のTg、コポリマーの質量に対して1質量%~30質量%の範囲内のスチレン含有量、コポリマーの質量に対して14質量%~93質量%の範囲内のビニル-1,2ブタジエン含有量、コポリマーの質量に対して2質量%~22質量%の範囲内のシス-1,4ブタジエン含有量、及びコポリマーの質量に対して3質量%~33質量%の範囲内のトランス-1,4ブタジエン含有量を有する、ブタジエン/スチレンコポリマーである。
適切な官能化されていないジエンエラストマーE1としては、特に、-50℃~0℃の範囲内のTg、コポリマーの質量に対して52質量%~95質量%の範囲内のビニル-1,2ブタジエン含有量、コポリマーの質量に対して0質量%~38質量%の範囲内のシス-1,4ブタジエン含有量、及びコポリマーの質量に対して0質量%~48質量%の範囲内のトランス-1,4ブタジエン含有量を有する、ポリブタジエンである。
優先的には、本発明の組成物中の官能化されていないジエンエラストマーE1の含有量は、50phr~70phrの範囲内、好ましくは55phr~70phrの範囲内、より優先的には55phr~65phrの範囲内である。
かかる非官能性ジエンエラストマーは、供給元、例えば、日本ゼオン、JSR、バイエル等から商業的に入手可能である。
【0017】
ジエンエラストマーE2
上記のとおり、ゴム組成物は、少なくとも1種のジエンエラストマーE2を含み、このエラストマーは、官能化され、
を満たすガラス転移温度TgE2を有する。
優先的には、官能化されたジエンエラストマーE2のガラス転移温度TgE2は、
を満たす。
有利には、官能化されたジエンエラストマーE2のガラス転移温度TgE2は、
を満たす。
さらにより有利には、官能化されたジエンエラストマーE2のガラス転移温度TgE2は、-110℃~-23℃の範囲内、好ましくは-100℃~-28℃の範囲内、より優先的には-95℃~-30℃の範囲内である。
官能化されたジエンエラストマーE2は、官能化されたものであり、かつそのガラス転移温度が上述した数学的関係を満たす限り、あらゆる上述したジエンエラストマーであってもよい。
【0018】
優先的には、官能化されたジエンエラストマーE2は、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、ブタジエン/イソプレンコポリマー、イソブテン/イソプレンコポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー、及びブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーからなる群より選ばれてもよい。優先的には、官能化されたジエンエラストマーE2は、ポリブタジエン及びスチレン/ブタジエンコポリマーから選ばれる。さらにより優先的には、官能化されたジエンエラストマーE2は、スチレン/ブタジエンコポリマーである。
適切な官能化されたジエンエラストマーE2としては、特に、-100℃~-28℃の範囲内のTg、コポリマーの質量に対して1質量%~30質量%の範囲内のスチレン含有量、コポリマーの質量に対して0質量%~74質量%の範囲内のビニル-1,2ブタジエン含有量、コポリマーの質量に対して10質量%~40質量%の範囲内のシス-1,4ブタジエン含有量、及びコポリマーの質量に対して15質量%~59質量%の範囲内のトランス-1,4ブタジエン含有量を有する、ブタジエン/スチレンコポリマーである。
適切な官能化されたジエンエラストマーE2としては、特に、-110℃~-23℃の範囲内のTg、コポリマーの質量に対して0質量%~82質量%の範囲内のビニル-1,2ブタジエン含有量、コポリマーの質量に対して0質量%~100質量%の範囲内のシス-1,4ブタジエン含有量、及びコポリマーの質量に対して0質量%~100質量%の範囲内のトランス-1,4ブタジエン含有量を有する、ポリブタジエンである。
【0019】
ジエンエラストマーE2の官能化が知られている。ジエンエラストマーE2の官能化は、ジエンエラストマーの合成中又はその合成後に、化学官能基をジエンエラストマーのモノマーにグラフトすることにより行うことができる。
官能化されたジエンエラストマーE2は、補強用充填剤と相互作用できる少なくとも1つの化学官能基を含み、該化学官能基は、窒素、イオウ、酸素、リン、スズ及びケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を含む。例としては、これらの官能基の中で、環状若しくは非環状の1級アミン、2級アミン又は3級アミン、イソシアネート、イミン、シアノ、チオール、カルボキシレート、エポキシド、或いは1級ホスフィン、2級ホスフィン、又は3級ホスフィンを挙げることができる。官能化されたジエンエラストマーE2と補強用充填剤との相互作用は、例えば、ジエンエラストマーの官能基と補強用充填剤の表面上に存在する化学官能基との間の共有結合、水素結合、イオン結合及び/又は静電結合により確立することができる。
優先的には、補強用充填剤が、補強用無機充填剤、優先的にはシリカを主に含む場合、官能化されたジエンエラストマーE2は、補強用充填剤と相互作用できる少なくとも1つの化学官能基を含み得、該化学官能基は、窒素、イオウ、酸素及びリンからなる群より選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を含む。
【0020】
優先的には、ジエンエラストマーE2の補強用充填剤と相互作用できる化学官能基は、少なくとも1つの酸素原子を含む極性官能基である。
優先的には、極性官能基は、シラノール、アルコキシシラン、アミン基を有するアルコキシシラン、エポキシド、エーテル、エステル、カルボン酸、及びヒドロキシルからなる群より選ばれてもよい。このような官能化されたエラストマーは、それ自体が知られており、特に以下の文献に記載されている:FR2740778、US6013718、WO2008/141702、FR2765882、WO01/92402、WO2004/09686、EP1127909、US6503973、WO2009/000750及びWO2009/000752。
官能化されたジエンエラストマーは、好ましくはシラノールである極性官能基を含むジエンエラストマーである。
優先的には、シラノールは、官能化されたジエンエラストマーの主鎖の鎖末端又は鎖の中間に存在する。
優先的には、官能化されたジエンエラストマーは、シラノール官能基が鎖末端に存在するジエンエラストマー(特に、SBR)であり得る。当該官能化されたジエンエラストマーは、その主鎖の一末端において、シラノール官能基又は式-(SiR12-O-)mHのシラノール末端を有するポリシロキサン基を含み、式中、mは、3~8の整数、好ましくは3を表し、R1及びR2は、同一であるか又は異なってもよく、1~10個の炭素原子のアルキル基、好ましくは1~4個の炭素原子を含むアルキル基を表す。
【0021】
このタイプのエラストマーは、文献EP0778311に記載のプロセスに従って、より具体的にはアニオン重合の工程の後に、環状ポリシロキサンタイプの官能化剤でリビングエラストマーを官能化させるプロセスに従って得ることができる。環状ポリシロキサンとしては、式(V)に対応するものが挙げられる:
【化1】
式中、mは、3~8の整数、好ましくは3を表し、R1及びR2は、同一であるか又は異なってもよく、1~10個の炭素原子のアルキル基、好ましくは1~4個の炭素原子を含むアルキル基を表す。これらの化合物の中で、ヘキサメチルシクロトリシロキサンが挙げられる。
【0022】
官能化されたジエンエラストマーE2は、極性官能基を含むジエンエラストマー(特にSBR)であり得、該極性官能基は、別の官能基、特にアミン官能基を有していてもよいアルコキシシランである。優先的には、別の官能基を有していてもよい(好ましくはアミン基を有する)アルコキシシランは、官能化されたジエンエラストマーの主鎖の鎖末端又は鎖の中間に存在し、より優先的には、アミン基を有していてもよいアルコキシシラン基は、官能化されたジエンエラストマーの主鎖の鎖の中間に存在する。
したがって、官能化されたジエンエラストマーE2は、その構造内に、少なくとも1つのアルコキシシラン基と少なくとも1つの他の官能基とを含み得、該アルコキシシラン基のケイ素原子は、エラストマー鎖に結合し、該アルコキシシラン基は、シラノールに部分的又は完全に加水分解してもよい。
【0023】
いくつかの変形によれば、アルコキシシラン基は、エラストマーの主鎖の一末端に主に存在する。
他の変形によれば、アルコキシシラン基は、主要なエラストマー鎖に主に存在し、ジエンエラストマーは、「鎖末端」の位置とは対照的に、鎖の中間に結合又は官能化されていると言われるが、該基の位置は、厳密にはエラストマー鎖の中間ではない。この官能基のケイ素原子は、ジエンエラストマーの主鎖の2つの分枝と連結する。
アルコキシシラン基は、ヒドロキシルに部分的又は完全に加水分解してもよいC1-C10アルコキシ基、又はさらにC1-C8、好ましくはC1-C4アルコキシ基を含み、より優先的にはメトキシ及びエトキシである。
他の官能基は、好ましくはアルコキシシラン基のケイ素が直接、又は原子又は原子団と定義されるスペーサ基を介して有する。優先的には、スペーサ基は、飽和若しくは不飽和、環状若しくは非環状、線状若しくは分枝状の二価のC1-C18脂肪族炭化水素に基づく基、又は二価のC6-C18芳香族炭化水素に基づく基である。
他の官能基は、好ましくはN、S、O又はPから選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を含む官能基である。例としては、これらの官能基の中で、環状若しくは非環状の1級アミン、2級アミン又は3級アミン、イソシアネート、イミン、シアノ、チオール、カルボキシレート、エポキシド、或いは1級ホスフィン、2級ホスフィン、又は3級ホスフィンが挙げられる。
【0024】
2級又は3級アミン官能基としては、C1-C10アルキル、好ましくはC1-C4アルキル基、より優先的にはメチル若しくはエチル基で置換されたアミン、又は窒素原子及び少なくとも1つの炭素原子(好ましくは2~6個の炭素原子)を含むヘテロ環を形成する環状アミンが挙げられる。例えば、メチルアミノ-、ジメチルアミノ-、エチルアミノ-、ジエチルアミノ-、プロピルアミノ-、ジプロピルアミノ-、ブチルアミノ-、ジブチルアミノ-、ペンチルアミノ-、ジペンチルアミノ-、ヘキシルアミノ-、ジヘキシルアミノ-又はヘキサメチレンアミノ-基、好ましくはジエチルアミノ-及びジメチルアミノ-基が適切である。イミン官能基としては、ケチミンが挙げられる。例えば、(1,3-ジメチルブチリデン)アミノ-、(エチリデン)アミノ-、(1-メチルプロピリデン)アミノ-、(4-N,N-ジメチルアミノベンジリデン)アミノ-、(シクロヘキシリデン)アミノ-、ジヒドロイミダゾール及びイミダゾール基が適切である。カルボキシレート官能基としては、アクリレート又はメタクリレートが挙げられる。かかる官能基は、好ましくはメタクリレートである。エポキシド官能基としては、エポキシ基又はグリシジルオキシ基が挙げられる。2級又は3級ホスフィン官能基としては、C1-C10アルキル、好ましくはC1-C4アルキル基、より優先的にはメチル若しくはエチル基で置換されたホスフィン、又はジフェニルホスフィンが挙げられる。例えば、メチルホスフィノ-、ジメチルホスフィノ-、エチルホスフィノ-、ジエチルホスフィノ、エチルメチルホスフィノ-及びジフェニルホスフィノ-基が適切である。
他の官能基は、好ましくは3級アミン、より優先的にはジエチルアミノ-又はジメチルアミノ-基である。
【0025】
アルコキシシラン基は、式:
*-)aSi(OR’)bc
で表すことができ、
式中、
*-は、エラストマー鎖への結合を表し、
R基は、置換若しくは無置換のC1-C10、又はさらにC1-C8アルキル基、好ましくはC1-C4アルキル基、より優先的にはメチル及びエチルを表し、
ヒドロキシルに部分的又は完全に加水分解してもよい式-OR’のアルコキシル基において、R’は、置換若しくは無置換のC1-C10、又はさらにC1-C8アルキル基、好ましくはC1-C4アルキル基、より優先的にはメチル及びエチルを表し、
Xは、他の官能基を含む基を表し、
aは1又は2であり、bは1又は2であり、cは0又は1であり、ただし、a+b+c=3である。
【0026】
このタイプのエラストマーは、アニオン重合から得られるリビングエラストマーを、アルコキシシラン基、特にトリアルコキシシラン及びジアルコキシアルキルシラン化合物から選ばれるアルコキシシラン基を含む化合物で官能化することにより主に得られ、該アルコキシシラン基は、ケイ素原子に直接結合しているか又はスペーサ基を介してケイ素原子に結合している別の官能基を含む基で置換されており、該官能基及び該スペーサ基は、上記で定義されるとおりである。エラストマーが官能化剤とアニオン重合の工程から得られたリビングエラストマーとの反応により修飾されると、このエラストマーの修飾された物質の混合物が得られ、その組成が、修飾反応の条件、特にリビングエラストマー鎖の数に対する官能化剤の反応部位の比に依存することを当業者が知っていることを明記しなければならない。この混合物は、鎖末端が官能化されたもの、結合したもの、星状分枝したもの及び/又は官能化されていないものを含む。
【0027】
優先的には、本発明の組成物中の官能化されたジエンエラストマーE2の含有量は、40phr以下、より優先的には30phr~50phrの範囲内、好ましくは30phr~45phrの範囲内、より優先的には35phr~45phrの範囲内である。
これらの非官能性ジエンエラストマーは、供給元、例えば、日本ゼオン、JSR、バイエル等から商業的に入手可能であるか、又は既知のプロセスに従い合成することができる。
【0028】
補強用充填剤
本発明のゴム組成物は、ジエンエラストマーE2と相互作用できる1種以上の補強用充填剤を含み得る。
特に空気式タイヤの製造に使用することができるゴム組成物を補強する能力について、知られている任意のタイプの「補強用」充填剤を使用することができる。例えば、カーボンブラックなどの有機充填剤、シリカなどの無機充填剤、又はこの2つのタイプの充填剤の混合物を使用することができる。
「官能化されたジエンエラストマーと相互作用できる補強用充填剤」という表現は、任意の補強用充填剤(特に、シリカなどの無機充填剤)、例えば、ゴム組成物内に、官能化されたジエンエラストマーによって物理的又は化学的な結合を形成することができる補強用充填剤を意味すると理解される。この相互作用は、例えば、前記官能化されたエラストマーと補強用充填剤の表面上に存在する官能基との間の共有結合、水素結合、イオン結合及び/又は静電結合により確立することができる。
すべてのカーボンブラック、特に、空気式タイヤ若しくは非空気式タイヤ又はそれらのトレッドに従来から用いられるカーボンブラックは、カーボンブラックとして適している。より具体的には、後者の中で、例えば、N234ブラックなどの200シリーズの補強用カーボンブラックが挙げられる。これらのカーボンブラックは、市販されている単体の状態で、又は他の任意の形態で、例えば、使用されるいくつかのゴム添加剤用の支持体として、使用することができる。カーボンブラックは、例えば、ジエンエラストマー中に既に含まれている場合がある(例えば、出願WO97/36724-A2及びWO99/16600-A1を参照されたい)。
【0029】
カーボンブラック以外の有機充填剤の例としては、出願WO2006/069792-A1、WO2006/069793-A1、WO2008/003434-A1及びWO2008/003435-A1に記載の官能化されたポリビニル有機充填剤が挙げられる。
優先的には、ジエンエラストマーE2と相互作用できる補強用充填剤は、少なくとも1種の補強用無機充填剤を主に含み、さらにより優先的には少なくとも1種のシリカを主に含む。
「補強用無機充填剤」という用語は、本明細書において、その色やその由来(天然又は合成)を問わず、任意の無機又は鉱物充填剤を意味すると理解されるべきであり、カーボンブラックとは対照的に、「白色・ホワイト」充填剤、「透明・クリア」充填剤又は「非黒色・ノンブラック」充填剤とも呼ばれ、補強用無機充填剤によれば、中間カップリング剤以外の手段なしで、単独で、空気式又は非空気式タイヤの製造を目的とするゴム組成物を補強することができる。既知のように、いくつかの補強用無機充填剤は、特にその表面に存在するヒドロキシル(-OH)基の存在により特徴付けることができる。
ケイ質タイプの鉱物充填剤(優先的にはシリカ(SiO2))、又はアルミナ質タイプの鉱物充填剤(特にアルミナ(Al23)は、補強用無機充填剤として特に適している。
【0030】
使用されるシリカは、当業者に知られている任意の補強用シリカ、特にBET比表面積及びCTAB比表面積の両方が450m2/g未満、好ましくは30~400m2/gの範囲内、特に60~300m2/gの範囲内であることを示す、任意の沈降シリカ又はフュームドシリカであり得る。任意のタイプの沈降シリカ、特に高分散性の沈降シリカ(「高分散性」又は「高分散性シリカ」のために、「HDS」と呼ばれる)を使用することができる。これらの沈降シリカは、高分散性であってもなくてもよくる場合又はそうではない場合の当業者によく知られている。例えば、出願WO03/016215-A1及びWO03/016387-A1に記載のシリカが挙げられる。市販のHDSシリカの中で、エボニック(Evonik)製のウルトラシル(登録商標)5000GR及びウルトラシル(登録商標)7000GRシリカ、又はソルベイ(Solvay)製のゼオシル(登録商標)1085GR、ゼオシル(登録商標)1115MP、ゼオシル(登録商標)1165MP、ゼオシル(登録商標)プレミアム200MP及びゼオシル(登録商標)HRS1200MPシリカを、特に使用することができる。非HDSシリカとしては、以下の市販のシリカを使用することができる:エボニック製のウルトラシル(登録商標)VN2GR及びウルトラシル(登録商標)VN3GRシリカ、ソルベイ製のゼオシル(登録商標)175GRシリカ、又はPPG製のHi-Sil EZ120G(-D)、Hi-Sil EZ160G(-D)、Hi-Sil EZ200G(-D)、Hi-Sil 243LD、Hi-Sil210及びHi-Sil HDP320Gシリカ。
【0031】
補強用無機充填剤が提供される物理的な状態は重要ではなく、粉末、ミクロパール、顆粒、若しくはビーズの形態、又はその他の適切な緻密化した形態であるか否かは重要ではない。もちろん、補強用無機充填剤はまた、異なる補強用無機充填剤、特に上述したシリカの混合物を意味すると理解される。
本発明の好ましい形態によれば、補強用充填剤は、主に無機補強用充填剤(好ましくはシリカ)であり、すなわち、補強用充填剤の全質量に対して50質量%超(>50質量%)のシリカなどの無機補強用充填剤を含む。場合により、この実施形態によれば、補強用充填剤はまた、カーボンブラックを含み得る。この選択肢によれば、カーボンブラックは、ゴム組成物中の20phr以下、より優先的には10phr以下の含有量で使用される(例えば、カーボンブラックの含有量は、0.5~20phrの範囲内、特に1~10phrの範囲内であり得る)。示されている区間内で、カーボンブラックの着色性(黒色顔料(agent de pigmentation noire))及びUV安定性は有益であり、さらに、補強用無機充填剤によってもたらされる典型的な性能品質に悪影響を与えることがない。
【0032】
当業者は、上述した補強用無機充填剤の代替品として、別の性質を有する補強用充填剤を使用してもよいが、この別の性質を有する補強用充填剤が、無機層、例えば、シリカで覆われるか、又はこの補強用充填剤とジエンエラストマーとの間の結合を確立するためにカップリング剤を使用する必要がある該補強用充填剤の表面に官能性部位、特にヒドロキシル部位を含むことを理解するであろう。
当業者は、問題の用途に応じて、特に、問題の空気式タイヤのタイプ、例えば、乗用車用、又はバン若しくは大型車両などの多目的車用に応じて、補強用充填剤の全含有量を調整する方法を知っているであろう。
好ましくは、ゴム組成物中の補強用充填剤の含有量は、20~100phrの範囲内、より優先的には30~90phrの範囲内、さらにより優先的には40~90phrの範囲内であり、最適なのは、既知のように、目標とされる特定の用途に応じて異なる。
【0033】
本明細書において、BET比表面積は、「The Journal of the American Chemical Society」(vol. 60, page 309, February 1938)に記載のブルナウアー-エメット-テラー(Brunauer-Emmett-Teller)法を使用する気体吸着により、より具体的には、規格NF ISO 5794-1、付録E(2010年6月)[マルチポイント(5ポイント)容量法-ガス:窒素-真空下で脱気:160℃において1時間-相対圧力p/po範囲:0.05~0.17]から導かれる方法に準拠して決定する。シリカなどの無機充填剤について、例えば、CTAB比表面積の値は、規格NF ISO 5794-1、付録G(2010年6月)に準拠して決定する。この方法は、補強用充填剤の「外」表面上のCTAB(N-ヘキサデシル-N,N,N-トリメチルアンモニウムブロミド)の吸着に基づくものである。カーボンブラックについて、STSA比表面積は、規格ASTM D6556-2016に準拠して決定する。
【0034】
無機補強用充填剤用カップリング剤
上記のように、補強用充填剤自体が、官能化されたジエンエラストマーE2と相互作用できる。
しかしながら、補強用充填剤が、例えば、シリカなどの無機充填剤である場合、補強用無機充填剤をジエンエラストマーに結合させることを可能にするカップリング剤を使用することにより、この充填剤の補強力を高めることが有利であり得る。
よく知られている方法で、無機充填剤(その粒子の表面)とジエンエラストマーとの間の化学的及び/又は物理的な性質の十分な結合を与えることを目的とする、任意の少なくとも二官能性のカップリング剤(又は結合剤)を使用し得る。特に、少なくとも二官能性のオルガノシラン又はポリオルガノシロキサンを使用する。「二官能性」という用語は、無機充填剤と相互作用できる第1の官能基、及びジエンエラストマーと相互作用できる第2の官能基を有する化合物を意味すると理解される。例えば、このような二官能性化合物は、ケイ素原子を含み、かつ無機充填剤のヒドロキシル基と相互作用できる第1の官能基と、イオウ原子を含み、かつジエンエラストマーと相互作用できる第2の官能基とを含むことができる。
【0035】
優先的には、オルガノシランは、(対称又は非対称な)オルガノシランポリスルフィド、例えば、エボニックがSi69の商品名で販売しているビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPTと略される)、又はエボニックがSi75の商品名で販売しているビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(TESPDと略される)、ポリオルガノシロキサン、メルカプトシラン、ブロック化メルカプトシラン、例えば、NXTシランの商品名でモメンティブが販売しているオクタンチオ酸S-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)からなる群より選ばれる。より優先的には、オルガノシランは、オルガノシランポリスルフィドである。
もちろん、上述したカップリング剤の混合物も使用し得る。
本発明のゴム組成物中のカップリング剤の含有量は、有利には20phr以下であり、一般的には、できるだけ少ないカップリング剤を使用することが望ましいと理解される。典型的には、カップリング剤の含有量は、補強用無機充填剤の量に対して0.5質量%~15質量%を表す。カップリング剤の含有量は、優先的には0.5~20phrの範囲内である。この含有量は、本発明の組成物中に使用される補強用無機充填剤の含有量に基づいて、当業者によって容易に調整される。
【0036】
被覆剤
ゴム組成物はまた、補強用無機充填剤を使用する場合、補強用無機充填剤を被覆するための剤を含んでもよく、未硬化状態でのゴム組成物の加工性を改善できる。これらの被覆剤がよく知られている(例えば、特許出願WO2006/125533-A1、WO2007/017060-A1及びWO2007/003408-A1を参照されたい)。例えば、ヒドロキシシランなどの加水分解性シラン(例えば、WO2009/062733-A2を参照されたい)、アルキルアルコキシシラン、ポリオール(例えば、ジオール又はトリオール)、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール)、1級、2級又は3級アミン、ヒドロキシル化したポリオルガノシロキサン又は加水分解性ポリオルガノシロキサン(例えば、α,ω-ジヒドロキシポリオルガノシラン(例えば、EP0784072-A1を参照されたい)が挙げられるであろう。
【0037】
架橋系
本発明のゴム組成物は、少なくとも1種の架橋系を含む。架橋系は、空気式又は非空気式タイヤ用のゴム組成物の分野における当業者に知られている任意のタイプの系であり得る。特に、硫黄及び/又は過酸化物及び/又はビスマレイミドをベースとする架橋系であってもよい。
優先的には、架橋系は、硫黄をベースとし、加硫系と呼ばれる。硫黄は、任意の形態で、特に、分子状硫黄又は硫黄供与剤の形態で提供することができる。また、少なくとも1種の加硫促進剤が優先的に存在し、また優先的には様々な既知の加硫活性剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸若しくは同等の化合物(例えば、ステアリン酸塩)、及び遷移金属の塩、グアニジン誘導体(特に、ジフェニルグアニジン)、又は他の既知の加硫遅延剤を使用してもよい。
硫黄は、0.5~12phrの範囲内、より優先的には0.7~10phrの範囲内である優先的な含有量で使用する。加硫促進剤は、0.5~10phrの範囲内、より優先的には0.5~5.0phrの範囲内である優先的な含有量で使用する。
促進剤としては、硫黄の存在下でジエンエラストマーの加硫促進剤として機能することができる任意の化合物、特に、チアゾール型促進剤及びその誘導体、又はスルフェンアミド型、チウラム型、ジチオカルバメート型、ジチオホスフェート型、チオ尿素型、及びキサンテート型の促進剤を使用し得る。
【0038】
可塑剤
本発明のゴム組成物は、少なくとも1種の可塑剤を含んでもよい。
空気式又は非空気式タイヤ用のゴム組成物の当業者に知られているように、この可塑剤は、好ましくは高ガラス転移温度(Tg)を有する炭化水素樹脂、低Tg炭化水素樹脂、可塑化オイル及びこれらの混合物から選ばれる。好ましくは、可塑剤は、高Tg炭化水素樹脂、可塑化オイル及びこれらの混合物から選ばれる。
既知のように、ゴム組成物中の可塑剤は、ゴム組成物の最適な用途に関して、該ゴム組成物の粘度を変えて、該ゴム組成物のガラス転移温度を調整することができる。
高Tg炭化水素樹脂は、定義によれば、周囲温度及び圧力(20℃、1atm)下で固体であるのに対し、可塑化オイルは、周囲温度及び圧力下で液体であり、低Tg炭化水素樹脂は、周囲温度及び圧力下で粘性がある。
【0039】
炭化水素可塑化樹脂としても知られている炭化水素樹脂は、当業者によく知られているポリマーであり、炭素及び水素を本質的にベースとするが、他のタイプの原子、例えば、酸素を含むことができ、特に可塑化剤として使用することができる。炭化水素樹脂は、本来、その目的としているゴム組成物とともに使用する含量において少なくとも部分的に混和性(すなわち、相溶性)であり、真の希釈剤として作用する炭化水素可塑化樹脂は、例えば、R. Mildenberg、M. Zander及びG. Collinによる「Hydrocarbon resins」と題する本(New York, VCH, 1997, ISBN 3-527-28617-9)に記載されており、第5章が、それらの用途、特に空気式タイヤゴムの分野に費やされている(5.5「Rubber Tires and Mechanical Goods」)。既知のように、これらの炭化水素樹脂は、加熱すると柔らかくなり、したがって成形することができるという意味で、熱可塑性樹脂と称することもできる。炭化水素樹脂の軟化点は、規格ISO 4625(「環球(Ring and Bail)」法)に準拠して測定する。Tgは、規格ASTM D3418(2008)に準拠して測定する。炭化水素樹脂のマクロ構造(Mw、Mn及びPI)は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により決定する(溶媒:テトラヒドロフラン;温度:35℃;濃度:1g/L;流量:1mL/分;注入前に、0.45μmの孔を有するフィルターによりろ過した溶液;ポリスチレン標準物質によるムーア校正(etalonnage de Moore);連続する3つのウォーターズカラムのセット(Styragel HR4E、HR1及びHR0.5);示差屈折計(ウォーターズ2410)及びその関連するオペレーティングソフトウェア(ウォーターズEmpower)による検出)。炭化水素樹脂は、脂肪族若しくは芳香族であるか、又は脂肪族/芳香族型であってもよく、すなわち、脂肪族及び/又は芳香族モノマーをベースとするものである。炭化水素樹脂は、天然又は合成であり得、及び石油系であってもなくてもよい(石油系である場合、炭化水素樹脂はまた、石油樹脂の名前で知られている)。既知のように、高Tg炭化水素樹脂は、熱可塑性炭化水素樹脂であり、そのTgは20℃超である。
【0040】
好ましくは、可塑剤は、炭化水素樹脂を含んでもよく、該炭化水素樹脂は、周囲温度及び圧力下で固体であり、高Tg樹脂と呼ばれる。好ましくは、高Tg炭化水素可塑化樹脂は、少なくとも1つの以下の特性を示す:
- 30℃超のTg;
- 300と2000g/molの間、より優先的には400と1500g/molの間の数平均分子量(Mn);
- 3未満、より優先的には2未満の多分散度(PI)(備考:PI=Mw/Mn、Mw=質量平均分子量)。
より優先的には、この高Tg炭化水素可塑化樹脂は、上記優先的な特性のすべてを示す。
可塑剤は、20℃で粘性がある、「低Tg」樹脂(すなわち、定義によれば、-40℃~20℃の範囲内のTgを有する)と呼ばれる炭化水素樹脂を含んでもよい。
好ましくは、低Tg炭化水素可塑化樹脂は、少なくとも1つの以下の特性を示す:
- -40℃と0℃の間、より優先的には-30℃と0℃の間、及びさらにより優先的には-20℃と0℃の間のTg;
- 800g/mol未満、好ましくは600g/mol未満、及びより優先的には400g/mol未満の数平均分子量(Mn);
- 0℃~50℃の範囲内、優先的には0℃~40℃の範囲内、より優先的には10℃~40℃の範囲内、好ましくは10℃~30℃の範囲内の軟化点;
- 3未満、より優先的には2未満の多分散度(PI)(備考:PI=Mw/Mn、Mw=質量平均分子量)。
より優先的には、この低Tg炭化水素樹脂は、上記優先的な特性のすべてを示す。
【0041】
可塑剤はまた、20℃で液体である、「低Tg」可塑剤(すなわち、定義によれば、-20℃未満、好ましくは-40℃未満のTgを有する)と呼ばれるエクステンダー油(又は可塑化オイル)を含んでもよい。芳香族又は非芳香族の性質を有するかどうかを問わず、エラストマーに関する可塑化性で知られている任意のエクステンダー油を使用することができる。周囲温度(20℃)において、これらの油は、多少の粘性を有するが、液体であり(すなわち、念のために言うと、最終的にその容器の形となる能力を有する物質)、周囲温度において本来は固体である高Tg炭化水素樹脂とは特に異なる。ナフテン系オイル(低粘度又は高粘度、特に水素化された又は水素化されていない)、パラフィン系オイル、MES(中度抽出溶媒和物)オイル、TDAE(処理済蒸留物芳香族抽出物)オイル、RAE(残留芳香族抽出物)オイル、TRAE(処理済残留芳香族抽出物)オイル及びSRAE(安全残留芳香族抽出物)オイル、鉱油、植物油、エーテル系可塑剤、エステル系可塑剤、ホスフェート系可塑剤、スルホネート系可塑剤、並びにこれらの化合物の混合物からなる群より選ばれる可塑化オイルが特に適している。
高Tg炭化水素樹脂、低Tg炭化水素樹脂、及び上記優先的な可塑化オイルが当業者によく知られており、商業的に入手可能である。
【0042】
他の添加剤
本発明のゴム組成物はまた、当業者に知られており、かつ空気式又は非空気式タイヤ用(特に、トレッド用)のゴム組成物に一般的に使用される、通常の添加剤及び加工助剤の全部又は一部を含むことができ、例えば、充填剤(補強用又は非補強用/上述したもの以外のもの)、顔料、保護剤(例えば、抗オゾンワックス、化学的抗オゾン剤若しくは酸化防止剤)、抗疲労剤又は補強用樹脂(例えば、出願WO02/10269に記載されているものなど)等が挙げられる。
【0043】
本発明のゴム組成物の入手
ゴム組成物は、ゴム組成物を製造するための慣用的なプロセス、例えば、様々な成分を乾燥混合することにより得ることができる。
1実施態様によれば、本発明のゴム組成物は、当業者によく知られている2つの連続的な調製段階を用いて、適切なミキサーで製造される。
-熱機械的に加工又は混練する第1段階(「非生産」段階)は、単一の熱機械的工程で実施することができ、その間、以下の順番で、ガラス転移温度TgE2を有する官能化されたジエンエラストマーE2、補強用充填剤、及び補強用充填剤用の任意のカップリング剤を、標準的なインターナルミキサー(例えば、「バンバリー」型)などの適切なミキサーに導入する。熱機械的な混練の後、これらの成分を140℃~200℃の範囲内の温度において1~2分間維持する間に、ガラス転移温度TgE1を有する官能化されていないジエンエラストマーE1と、架橋系を除く必須成分のすべてとを該インターナルミキサーに導入する。110℃~200℃の範囲内、好ましくは130℃~185℃の範囲内の最大温度(「滴下温度」と呼ばれる)まで、これらの成分を2~10分間、熱機械的に混練する。
-機械的に加工する第2段階(「生産」段階)は、非生産の第1段階中に得られた混合物を、より低い温度、典型的には120℃未満(例えば、40℃~100℃の範囲内)の温度まで冷却した後、オープンミルなどのエクスターナルミキサーで実施する。本発明のゴム組成物を得るために、次に、5~15分間混合することにより架橋系を混ぜ込む。
【0044】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、本発明のゴム組成物は、2つのマスターバッチの形態で調製し、本発明のゴム組成物を得るように、次に該マスターバッチを混合する。
より具体的には、この実施態様によれば、第1のマスターバッチを、前記官能化されていないジエンエラストマーE1と、加硫系を除く他の任意成分(例えば、可塑剤、抗オゾン剤等)とを、標準的なインターナルミキサー(例えば、「バンバリー」型)などの適切なミキサー内で混合することにより調製する。熱機械加工を、110℃~200℃の範囲内、好ましくは130℃~185℃の範囲内の最大温度(「滴下温度」と呼ばれる)まで、2~10分間行う。このようにして、少なくとも官能化されていないジエンエラストマーE1を含む第1のマスターバッチを回収する。
【0045】
次に、第2のマスターバッチを、前記官能化されたジエンエラストマーE2と、補強用充填剤と、加硫系を除く他の任意成分(例えば、補強用充填剤及び/又は可塑剤用カップリング剤、抗オゾン剤等)を標準的なインターナルミキサー(例えば、「バンバリー」型)などの適切なミキサー内で混合することにより調製する。熱機械加工を、140℃~200℃の範囲内、好ましくは140℃~185℃の範囲内の最大温度(「滴下温度」と呼ばれる)まで、2~10分間行う。このようにして、少なくとも官能化されたジエンエラストマーE2及び該官能化されたジエンエラストマーE2と相互作用できる補強用充填剤を含む第2のマスターバッチを回収する。
前記の工程からの2つのマスターバッチを標準的なインターナルミキサー(例えば、「バンバリー」型)に導入する。熱機械加工を、110℃~180℃の範囲内、好ましくは130℃~180℃の範囲内の最大温度(「滴下温度」と呼ばれる)まで、2~10分間行う。
次に、オープンミルなどのエクスターナルミキサー上で、前記工程からの混合物を110℃以下の温度まで冷却する。その後、5~15分間混合することにより架橋系を混ぜ込み、ゴム組成物を回収する。
【0046】
ゴム組成物を調製する方法にかかわらず、このようにして得られた最終組成物は、その後、特に、実験室での特性評価のために、例えば、シート状若しくはスラブ状にカレンダー加工するか、又は例えば、空気式又は非空気式タイヤ(特に乗用車用)におけるトレッドとして使用できるゴム製の半完成品(又は輪郭を有する要素)の形状に押し出す。
組成物は、未硬化状態(架橋前若しくは加硫前)又は硬化状態(架橋後若しくは加硫後)のいずれかであってもよく、空気式又は非空気式タイヤに使用できる半完成品であってもよい。
ゴム組成物の架橋は、当業者に知られている方法、例えば、130℃~200℃の範囲内の温度において、圧力下で実施することができる。
【0047】
本発明の他の主題
本発明の別の主題は、上記に記載の少なくとも1種の組成物を含むトレッドに関する。本発明のゴム組成物は、トレッド全体又はトレッドの一部を構成することができる。
本発明の別の主題は、上記に記載の少なくとも1種の組成物又は上記に記載のトレッドを含む空気式又は非空気式タイヤに関する。
「空気式タイヤ」は、支持要素、例えば、リムと協働することにより空洞を形成することを目的とするタイヤであって、該空洞が、大気圧力よりも高い圧力に加圧することができる前記タイヤを意味すると理解される。一方、「非空気式タイヤ」は、加圧することができない。したがって、非空気式タイヤは、少なくとも1種のポリマー材料で構成される円環体であって、タイヤ空気圧(pression de gonflage)をかけることなく、タイヤとして機能することを目的とする前記円環体である。非空気式タイヤは、中実又は中空であってもよい。中空の非空気式タイヤは、大気圧下で、空気を含んでもよく、すなわち、該タイヤは、大気圧よりも高い圧力の膨張ガスにより提供される空気圧の硬さを有しない。
【0048】
本発明の空気式タイヤは、任意のタイプの乗り物、例えば、乗用車、二輪車、大型車両、農業用車両、建設用プラント車両又は航空機、或いはより一般的には、回転装置に取り付けられることを目的としている。非空気式タイヤは、特に乗用車又は二輪車に取り付けられることを目的としている。好ましくは、本発明の空気式タイヤは、乗用車に取り付けられることを目的としている。
優先的には、空気式又は非空気式タイヤは、上記に記載の少なくとも1種のゴム組成物を含む少なくとも1つのトレッドを含む。
【0049】
測定方法
エラストマーのガラス転移温度の決定
エラストマーのガラス転移温度(Tg)は、使用前に、示差走査熱量計を使用し、規格ASTM D3418:2008に準拠して決定した。
動摩擦係数μmaxの決定
動摩擦係数の測定は、L. Busse, A. Le GalとM. KuppelによるModelling of Dry and Wet Friction of Silica Filled Elastomers on Self-Affine Road Surfaces, Elastomer Friction, 2010, 51, p. 8に記載の方法と同一の方法に従って実施した。試験片は、厚さ6mmの正方形のゴム製支持体(50mm×50mm)を成形し、作製した。鋳型を閉めた後、該鋳型を、150℃の温度で加熱されたプラテンを備えるプレス機に入れ、16バールの圧力で材料の架橋に必要な時間(典型的には、数十分)おいた。これらの測定の実施に使用した表面は、BBTM[非常に薄い瀝青コンクリート]タイプの瀝青コンクリートで構成される実際の路面から抜き取られたコアであった(規格NF P98-137)。ディウェッティング(demouillage)現象及び地面と材料の間の二次的なグリップ力の出現を防ぐために、地面+試験片システムを界面活性剤(Sinnozon-CAS番号:25155-30-0)の5%水溶液に浸した。恒温槽を使用することにより、水溶液の温度を調節した。試験片を、地面と平行に移動する滑り運動に供した。滑り速度SVを1.2m/sに設定した。適用した法線応力σnは、400kPa(すなわち、4バール)であった。以下、これらの条件は、「濡れた地面の条件」と記載されている。地面上の試験片の運動に反対する接線応力σtを連続的に測定した。法線応力σnに対する接線応力σtの比率により、動摩擦係数μが得られる。動摩擦係数の値は、水溶液の温度を3℃~44℃で掃引して測定し、接線応力σtの値の安定化後の定常状態において得られる。
【0050】
例において、この掃引中に測定された動摩擦係数の最大値(μmaxで示される)を示す。
特に明確に示されていない限り、結果は、100を基準として示す。様々な試験試料の最大動摩擦係数を計算し、比較するために、任意の値に100を比較組成物に割り当てた。試験試料の基準100の値は、演算:(試験試料のμmax値/比較組成物のμmax値)×100に従って計算された。この方法で、100未満の結果は、最大動摩擦係数が減少しており、したがってウェットグリップ性能が低下していることを表すことになる。逆に、100超の結果は、最大動摩擦係数が増加しており、したがってウェットグリップ性能が向上していることを表すことになる。
【0051】
硬化後の動的性質の測定
規格ASTM D5992-96に準拠して、粘度分析計(メトラビブVA4000(Metravib VA4000))で動的性質tan(δ)maxを測定した。加硫組成物の試料(厚さ2mm及び断面78.5mm2の2つの円筒形試験片)に、周波数10Hz、温度40℃で単純交互正弦せん断応力をかけたときの応答を記録した。1%~100%(フォワードサイクル)の後に100%~1%(リターンサイクル)で、ピークとピークの間のひずみ振幅掃引を実施した。利用される結果は、損失係数tan(δ)であった。リターンサイクルについて、tan(δ)40℃におけるmaxで示される、観察されたtan(δ)の最大値(tan(δ)max)を示す。
結果は、基準100とする性能で表され、すなわち、様々な試験ゴム組成物のtan(δ)40℃におけるmaxを計算し、比較するために、値100を比較組成物に任意に指定した。基準を100とする値は、演算:(比較組成物のtan(δ)40℃におけるmaxの値/試料のtan(δ)40℃におけるmaxの値)*100に従って計算された。この方法で、より低い値は、ヒステリシス性質が低下していることを表す一方、より高い値は、ヒステリシス性質が改善されたことを表す。
【実施例
【0052】
1.成分:
例に使用される成分は、以下のとおりである。
エラストマー(1A):規格ASTM D3418:2008に準拠して測定された-28℃のTgを有する官能化されていないスチレン/ブタジエンコポリマー(コポリマーの全質量に対して41質量%のスチレン含有量、コポリマーの全質量に対して14質量%のビニル-1,2ブタジエン含有量、コポリマーの全質量に対して27質量%のトランス-1,4ブタジエン含有量)
エラストマー(1B):エラストマー鎖の末端にシラノール官能基を有し、かつ規格ASTM D3418:2008に準拠して測定された-24℃のTgを有するスチレン/ブタジエンコポリマー(コポリマーの全質量に対して25質量%のスチレン含有量、コポリマーの全質量に対して43質量%のビニル-1,2ブタジエン含有量、コポリマーの全質量に対して16質量%のトランス-1,4ブタジエン含有量)
エラストマー(1C):規格ASTM D3418:2008に準拠して測定された-65℃のTgを有するスチレン/ブタジエンコポリマー(コポリマーの全質量に対して16質量%のスチレン含有量、コポリマーの全質量に対して20質量%のビニル-1,2ブタジエン含有量、コポリマーの全質量に対して39質量%のトランス-1,4ブタジエン含有量)
【0053】
エラストマー(1D):鎖の中間にアミノアルコキシシラン官能基を有し、かつ規格ASTM D3418:2008に準拠して測定された-65℃のTgを有するスチレン/ブタジエンコポリマー(コポリマーの全質量に対して16質量%のスチレン含有量、コポリマーの全質量に対して20質量%のビニル-1,2ブタジエン含有量、コポリマーの全質量に対して39質量%のトランス-1,4ブタジエン含有量)
エラストマー(1F):鎖の中間にアミノアルコキシシラン官能基を有し、かつ規格ASTM D3418:2008に準拠して測定された-48℃のTgを有するスチレン/ブタジエンコポリマー(コポリマーの全質量に対して27質量%のスチレン含有量、コポリマーの全質量に対して17.5質量%のビニル-1,2ブタジエン含有量、コポリマーの全質量に対して33.5質量%のトランス-1,4ブタジエン含有量)
エラストマー(1G):規格ASTM D3418:2008に準拠して測定された-48℃のTgを有する官能化されていないスチレン/ブタジエンコポリマー(コポリマーの全質量に対して27質量%のスチレン含有量、コポリマーの全質量に対して17.5質量%のビニル-1,2ブタジエン含有量、コポリマーの全質量に対して33.5質量%の1,4-ブタジエン含有量)
【0054】
カーボンブラック(2):キャボットコーポレーション(Cabot Corporation)により販売されているASTMグレードN234カーボンブラック
シリカ(3):ソルベイにより販売されているゼオシル1165MPシリカ
シラン(4):参照番号Si69で、エボニックにより販売されているビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド(TESPT)シラン
DPG(5):ジフェニルグアニジン、フレクシス(Flexsys)製のPerkacit DPG
可塑剤(6):参照番号PR-383で、エクソンモービルにより販売されている、100℃の軟化点、51℃のガラス転移温度を有するDCPD樹脂
抗オゾンワックス(7):サソールワックス製のVarazon 4959抗オゾンワックス
抗酸化剤(8):参照番号Santoflex 6-PPDで、フレクシスにより販売されているN-(1,3-ジメチルブチル)-N-フェニル-パラ-フェニレンジアミン
ZnO(9):ユミコア(Umicore)により販売されている酸化亜鉛(工業グレード)
ステアリン酸(10):ユニケマ(Uniquema)により販売されているPristerene 4031stearin
【0055】
2.試験1:ゴム組成物中の補強用充填剤の位置の影響
表1に表される例は、本発明のゴム組成物CI1の様々なゴム性質を、一連の比較ゴム組成物CC1及びCC2と比較することを意図している。
表1は、これらのゴム組成物の配合を表し、比率は、phr(すなわち、組成物のエラストマー100質量部当たりの質量部)で示される。
【表1】
【0056】
比較ゴム組成物CC1は、以下のプロセスに従って乾燥混合することにより得られた、2つのマスターバッチである、マスターバッチ1及びマスターバッチ2から得られた。
1段階又は複数段階で、表2からの成分のすべてを、414cm3のPolylabインターナルミキサーに導入して、70体積%まで充填した。容器の初期温度は、90℃であった。165℃の最大滴下温度に達するまで、熱機械操作を6分間実施した。このように得られた混合物(マスターバッチ1と称する)を回収した。
1段階又は複数段階で、表3からの成分のすべてを、別の414cm3のPolylabインターナルミキサーに導入して、70体積%まで充填した。容器の初期温度は、90℃であった。165℃の最大滴下温度に達するまで、熱機械操作を6分間実施した。このように得られた混合物(マスターバッチ2と称する)を回収した。
【0057】
次に、前に得られたマスターバッチ1及びマスターバッチ2を414cm3のPolylabインターナルミキサーに導入して、70体積%まで充填した。150℃の最大滴下温度に達するまで、熱機械操作を6分間実施した。
次に、前の工程により得られた混合物を40℃の温度に冷却するように、この混合物を、オープンミルなどのエクスターナルミキサーに導入した。その後、架橋系(1.8phrの硫黄及び2.2phrのCBS(参照番号Santocure CBSで、フレクシスにより販売されているN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド)を混ぜ込んで、20分間混合した。その後、このように得られたゴム組成物の物理的又は機械的性質の測定を実施するために、このゴム組成物をスラブ状にカレンダー加工した。特に明確に示されていない限り、170℃で2分間硬化した後、該ゴム組成物のゴム性質を測定した。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
比較ゴム組成物CC2及び本発明のゴム組成物CI1は、それぞれ、ゴム組成物CC1について記載されているプロセスに従って、比較組成物CC2について表4及び5からのマスターバッチ1及び2、並びに本発明のゴム組成物CI1について表6及び7からのマスターバッチ1及び2で調製した。
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【0064】
【表7】
【0065】
硬化後に測定された、ゴム組成物CC1、CC2及びCI1のゴム性質を表8に表す。
【表8】
【0066】
同量の補強用充填剤(58.80phr)を含むにもかかわらず、本発明のゴム組成物CI1は、補強用充填剤、特にシリカが、最も低いガラス転移温度を有するエラストマーと相互作用する(すなわち、ガラス転移温度TgE2を有するエラストマーと相互作用する)点で、比較ゴム組成物CC1及びCC2と異なる。官能化されたエラストマーを含まないゴム組成物CC1は、異なるガラス転移温度の2種のエラストマーの間で補強用充填剤が均一に分布している。ゴム組成物CC2において、補強用充填剤は、最も高いガラス転移温度を有する官能化されたエラストマーと相互作用する(すなわち、ガラス転移温度TgE1を有するエラストマーと相互作用する)。
エラストマーマトリックス中で補強用充填剤が均一に分布している比較ゴム組成物CC1と比較して、ゴム組成物CC2は、同等のヒステリシス性質(tan(δ)40℃におけるmax)について、係数μmaxが著しく低下しており、したがってウェットグリップ性能が低下している。よって、補強用充填剤が、最も高いガラス転移温度(この場合、ゴム組成物CC2のTgE1)を有するエラストマーと相互作用すると、比較ゴム組成物CC1と同等のヒステリシス性質について、ウェットグリップ性能の低下が観察される。
驚くべきことに、補強用充填剤が、最も低いTgを有するエラストマー(この場合、ガラス転移温度TgE2を有する官能化されたエラストマー、本発明のゴム組成物CI1を参照されたい)と相互作用すると、比較ゴム組成物CC1と比較して、著しく改善されたヒステリシス性質及び係数μmaxの増大、したがって改善されたウェットグリップ性能が観察される。この結果は驚くべきであり、なぜならヒステリシス性質の改善が、ウェットグリップ性能を犠牲にして達成されたわけではないからである。
【0067】
3.試験2:ゴム組成物を形成するエラストマーのガラス転移温度の差異の影響
表9に表される例は、本発明のゴム組成物CI1の様々なゴム性質を、2つの比較ゴム組成物CC3及びCC4と比較することを意図している。
表9は、試験ゴム組成物の配合を表し、比率は、phr(すなわち、組成物のエラストマー100質量部当たりの質量部)で示される。
【表9】
【0068】
比較ゴム組成物CC3及び比較組成物CC4を、それぞれ試験1のプロセスに従って、比較組成物CC3について表6(マスターバッチ1-CI1)及び表10(マスターバッチ2-CC3)のマスターバッチ、並びに比較組成物CC4について表11(マスターバッチ1-CC4)及び表7(マスターバッチ2-CC1)のマスターバッチで調製した。
【0069】
【表10】
【0070】
【表11】
【0071】
硬化後に測定された、これらの組成物のゴム性質を表12及び13に示す。
【表12】
本発明のゴム組成物CI1は、より低いガラス転移温度のエラストマー(すなわち、ガラス転移温度TgE2を有するエラストマー)という点で、比較ゴム組成物CC3と異なる。
比較組成物CC3の配合をエラストマーのガラス転移温度の差が23℃以上になるように変更して、本発明のゴム組成物CI1を得ると、比較組成物CC3と比較して、本発明のゴム組成物CI1のヒステリシス性質が著しく改善されることが分かった。
驚くべきことに、本発明のゴム組成物CI1のヒステリシス性質の改善は、係数μmaxとウェットグリップ性能を犠牲にして達成されたものではない。
【0072】
【表13】
本発明のゴム組成物CI1は、より高いガラス転移温度のエラストマー(すなわち、ガラス転移温度TgE1を有するエラストマー)という点で、比較ゴム組成物CC4と異なる。
比較組成物CC4の配合をエラストマーのガラス転移温度の差が23℃以上になるように変更して、本発明のゴム組成物CI1を得ると、比較組成物CC4と比較して、本発明のゴム組成物CI1の係数μmaxが著しく改善されたることが分かった。したがって、本発明のゴム組成物は、比較組成物CC4よりも優れたウェットグリップ性能を有する。驚くべきことに、ウェットグリップ性能の改善は、ヒステリシス性質を犠牲にして達成されたものではなく、ヒステリシス性質は、比較ゴム組成物CC4と同等であった。
【0073】
4.試験3:先行技術との比較
表14に表される例は、本発明のゴム組成物CI1の様々なゴム性質を、文献EP3372638A1の実施例4を表す比較ゴム組成物CC5と比較することを意図している。
ゴム組成物CC5の配合を表14に表し、比率をphrで示す。
【表14】
【0074】
ゴム組成物CC5を試験1のプロセスに従って、表15及び16のそれぞれからのマスターバッチで調製した。
【表15】
【0075】
【表16】
【0076】
硬化後に測定されたゴム組成物のゴム性質を表17に示す。
【表17】
【0077】
先行技術を表すゴム組成物CC5と比較して、本発明のゴム組成物CI1は、著しく改善された係数μmaxを有することが観察された。この結果は、本発明のゴム組成物CI1のウェットグリップが、ゴム組成物CC5のウェットグリップよりも著しく優れたことを示している。驚くべきことに、係数μmaxの著しい改善は、ヒステリシス性質を犠牲にして達成すされたものではなく、なぜならこの2つのゴム組成物は同じδ40℃におけるmax値を有するからである。
上記試験のすべては、本発明のゴム組成物CI1が、比較ゴム組成物と比較して、非常に良好なウェットグリップ性能を維持すると同時に、著しく改善されたヒステリシス性質、したがって低下された転がり抵抗を有することを示す。