(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-29
(45)【発行日】2025-09-08
(54)【発明の名称】イメージセンサ
(51)【国際特許分類】
H04N 25/78 20230101AFI20250901BHJP
H04N 25/76 20230101ALI20250901BHJP
【FI】
H04N25/78
H04N25/76
(21)【出願番号】P 2021146441
(22)【出願日】2021-09-08
【審査請求日】2024-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】516205214
【氏名又は名称】株式会社テックイデア
(74)【代理人】
【識別番号】110003753
【氏名又は名称】弁理士法人シエル国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173646
【氏名又は名称】大森 桂子
(72)【発明者】
【氏名】松澤 昭
(72)【発明者】
【氏名】野原 正也
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/122542(WO,A1)
【文献】特開2020-120307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/78
H04N 25/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
行方向及び列方向に2次元配置された複数の画素と、
特定行の画素を選択する垂直走査回路と、
前記垂直走査回路により選択された行の各画素からの信号を列並列でアナログ・デジタル変換する複数のアナログ・デジタル変換器と、
前記画素、前記垂直走査回路及びアナログ・デジタル変換器を制御する制御部と、
を有し、
前記画素は、
光信号を電流に変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子で変換された電流を蓄積して信号電圧に変換する容量と、
前記容量を所定の電圧にリセットするリセット部と、
前記容量の電圧を入力とする電圧バッファー部と、
を備え、
前記アナログ・デジタル変換器は、
2つの入力端の差動電圧を増幅させて2つの出力端に生じさせる差動増幅器と、
第1の入力端と第1の出力端間に設けられた第1のスイッチと、
第2の入力端と第2の出力端間に設けられた第2のスイッチと、
第1の信号入力端子と前記第1の入力端の間に設けられた第1の容量と、
第2の信号入力端子と前記第2の入力端の間に設けられた第2の容量と、
を備え、前記第1及び第2の出力端における停止信号発生時の時間情報をアナログ・デジタル変換値とするものであり、
前記制御部は、
前記垂直走査回路によって選択された特定行の各画素において、前記リセット部により前記容量を所定の電圧にリセットした後、該リセットを解除する第1のリセット動作、
前記特定行の各画素の電圧バッファー部により取り出された第1のリセット電圧と前記リセット解除時の電圧との差を、前記アナログ・デジタル変換器によってデジタル値に変換し、その値を基準信号値としてメモリに記憶する動作、
前記リセット解除時から一定の露光時間が経過した後で、第2のリセット動作を行い、前記電圧バッファー部により取り出された第2のリセット動作直前の電圧と前記第2のリセット時の電圧との差を、前記アナログ・デジタル変換器によってデジタル値に変換し、その値を蓄積信号値とする動作、及び、
前記メモリに記憶された基準信号値と前記蓄積信号値との差分値を、画素信号のアナログ・デジタル変換値として出力する動作、
を制御
し、
前記第1の信号入力端子に前記第1のリセット時の共通信号線の電圧が付与され、前記第2の信号入力端子に第1の基準参照電圧が付与され、前記第1及び第2のスイッチが閉じられる第1工程と、
前記第1及び第2のスイッチが解放され、前記第1の信号入力端子に前記第1のリセット解除後の共通信号線の電圧が付与され、前記第2の信号入力端子に時間に比例して電圧が変化する参照電圧が付与され、前記第1及び第2の出力端からの停止信号発生時の時間情報が第1のアナログ・デジタル変換値としてメモリに記憶される第2工程と、
前記第1の信号入力端子に前記第2のリセット直前の共通信号線の電圧が付与され、前記第2の信号入力端子に第2の基準参照電圧が付与され、前記第1及び第2のスイッチが閉じられる第3工程と、
前記第1及び第2のスイッチが解放され、前記第1の信号入力端子に前記第2のリセット時の共通信号線の電圧が付与され、前記第2の信号入力端子に時間に比例して電圧が変化する参照電圧が付与され、前記第1及び第2の出力端からの停止信号発生時の時間情報が第2のアナログ・デジタル変換値とされる第4工程と、
を行い、
前記メモリに記憶された前記第1のアナログ・デジタル変換値と、前記第2のアナログ・デジタル変換値との差分値を、画素信号のアナログ・デジタル変換値とするイメージセンサ。
【請求項2】
行方向及び列方向に2次元配置された複数の画素と、
特定行の画素を選択する垂直走査回路と、
前記垂直走査回路により選択された行の各画素からの信号を列並列でアナログ・デジタル変換する複数のアナログ・デジタル変換器と、
前記画素、前記垂直走査回路及びアナログ・デジタル変換器を制御する制御部と、
を有し、
前記画素は、
光信号を電流に変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子で変換された電流を蓄積して信号電圧に変換する容量と、
前記容量を所定の電圧にリセットするリセット部と、
前記容量の電圧を入力とする電圧バッファー部と、
を備え、
前記アナログ・デジタル変換器は、
2つの入力端の差動電圧を増幅させて2つの出力端に生じさせる差動増幅器と、
第1の入力端と第1の出力端間に設けられた第1のスイッチと、
第2の入力端と第2の出力端間に設けられた第2のスイッチと、
第1の信号入力端子と前記第1の入力端の間に設けられた第1の容量と、
第2の信号入力端子と前記第2の入力端の間に設けられた第2の容量と、
を備え、前記第1及び第2の出力端における停止信号発生時の時間情報をアナログ・デジタル変換値とするものであり、
前記制御部は、
前記垂直走査回路によって選択された特定行の各画素において、前記リセット部により前記容量を所定の電圧にリセットした後、該リセットを解除する第1のリセット動作、
前記特定行の各画素の電圧バッファー部により取り出された第1のリセット電圧と前記リセット解除時の電圧との差を、前記アナログ・デジタル変換器によってデジタル値に変換し、その値を基準信号値としてメモリに記憶する動作、
前記リセット解除時から一定の露光時間が経過した後で、第2のリセット動作を行い、前記電圧バッファー部により取り出された第2のリセット動作直前の電圧と前記第2のリセット時の電圧との差を、前記アナログ・デジタル変換器によってデジタル値に変換し、その値を蓄積信号値とする動作、及び、
前記メモリに記憶された基準信号値と前記蓄積信号値との差分値を、画素信号のアナログ・デジタル変換値として出力する動作、
を制御し、
前記第1の信号入力端子に前記第1のリセット時の共通信号線の電圧が付与され、前記第2の信号入力端子に第1の基準参照電圧が付与され、前記第1及び第2のスイッチが閉じられる第1工程と、
前記第1及び第2のスイッチが解放され、前記第1の信号入力端子に前記第1のリセット時の共通信号線の電圧が付与され、前記第2の信号入力端子に時間に比例して電圧が変化する参照電圧が付与され、前記第1及び第2の出力端からの停止信号発生時の時間情報が第1のアナログ・デジタル変換値としてレジスタに一時的に記憶される第2工程と、
前記第1の信号入力端子に前記第1のリセット解除後の共通信号線の電圧が付与され、前記第2の信号入力端子に時間に比例して電圧が変化する参照電圧が付与され、前記第1及び第2の出力端からの停止信号発生時の時間情報を第2のアナログ・デジタル変換値とし、前記第2工程において前記レジスタに記憶された前記第1のアナログ・デジタル変換値との差分が第3のアナログ・デジタル変換値としてメモリに記憶される第3工程と、
前記第1の信号入力端子に前記第2のリセット直前の共通信号線の電圧が付与され、前記第2の信号入力端子に第2の基準参照信号が付与され、前記第1及び第2のスイッチが閉じられる第4工程と、
前記第1及び第2のスイッチが解放され、前記第1の信号入力端子に前記第2のリセット直前の共通信号線の電圧が付与され、前記第2の信号入力端子に時間に比例して電圧が変化する参照電圧が付与され、前記出力端からの停止信号発生時の時間情報が第4のアナログ・デジタル変換値としてレジスタに一時的に記憶される第5工程と、
前記第1の信号入力端子に前記第2のリセット時の共通信号線の電圧が付与され、前記第2の信号入力端子に時間に比例して電圧が変化する参照電圧が付与され、前記第1及び第2の出力端からの停止信号発生時の時間情報を第5のアナログ・デジタル変換値とし、該第5のアナログ・デジタル変換値と前記第4工程において前記レジスタに記憶された前記第4のアナログ・デジタル変換値との差分値が第6のアナログ・デジタル変換値とされる第6工程と、
を行い、
前記メモリに記憶された前記第3のアナログ・デジタル変換値と、前記第6のアナログ・デジタル変換値との差分値を、画素信号のアナログ・デジタル変換値とす
るイメージセンサ。
【請求項3】
行方向及び列方向に2次元配置された複数の画素と、
特定行の画素を選択する垂直走査回路と、
前記垂直走査回路により選択された行の各画素からの信号を列並列でアナログ・デジタル変換する複数のアナログ・デジタル変換器と、
前記画素、前記垂直走査回路及びアナログ・デジタル変換器を制御する制御部と、
を有し、
前記画素は、
光信号を電流に変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子で変換された電流を蓄積して信号電圧に変換する容量と、
前記容量を所定の電圧にリセットするリセット部と、
前記容量の電圧を入力とする電圧バッファー部と、
を備え、
前記アナログ・デジタル変換器は、
2つの入力端の差動電圧を増幅させて2つの出力端に生じさせる差動増幅器と、
第1の入力端と第1の出力端間に設けられた第1のスイッチと、
第2の入力端と第2の出力端間に設けられた第2のスイッチと、
第1の信号入力端子と前記第1の入力端の間に設けられた第1の容量と、
第2の信号入力端子と前記第2の入力端の間に設けられた第2の容量と、
を備え、前記第1及び第2の出力端における停止信号発生時の時間情報をアナログ・デジタル変換値とするものであり、
前記制御部は、
前記垂直走査回路によって選択された特定行の各画素において、前記リセット部により前記容量を所定の電圧にリセットした後、該リセットを解除する第1のリセット動作、
前記特定行の各画素の電圧バッファー部により取り出された第1のリセット電圧と前記リセット解除時の電圧との差を、前記アナログ・デジタル変換器によってデジタル値に変換し、その値を基準信号値としてメモリに記憶する動作、
前記リセット解除時から一定の露光時間が経過した後で、第2のリセット動作を行い、前記電圧バッファー部により取り出された第2のリセット動作直前の電圧と前記第2のリセット時の電圧との差を、前記アナログ・デジタル変換器によってデジタル値に変換し、その値を蓄積信号値とする動作、及び、
前記メモリに記憶された基準信号値と前記蓄積信号値との差分値を、画素信号のアナログ・デジタル変換値として出力する動作、
を制御し、
前記第1の信号入力端子に前記第1のリセット時の共通信号線の電圧が付与され、前記第2の信号入力端子に第1の基準参照電圧が付与され、前記第1及び第2のスイッチが閉じられる第1工程と、
前記第1及び第2のスイッチが解放され、前記第1の信号入力端子に前記第1のリセット時の共通信号線の電圧が付与され、前記第2の信号入力端子に時間に比例して電圧が変化する参照電圧が付与され、前記第1及び第2の出力端の停止信号発生時の時間情報から第1のアナログ・デジタル変換値を得る第2工程と、
前記第1工程と前記第2工程を交互に複数回行うか、又は、前記第2工程において時間に比例して電圧が変化する参照電圧を複数回変化させることにより複数の第1のアナログ・デジタル変換値を得、それらの値の平均値が最終的な第1のアナログ・デジタル変換値としてレジスタに一時的に記憶される工程と、
前記第1の信号入力端子に前記第1のリセット解除後の共通信号線の電圧が付与され、前記第2の信号入力端子に時間に比例して電圧が変化する参照電圧が複数回付与され、前記第1及び第2の出力端からの停止信号発生時の時間情報から得た複数のアナログ・デジタル変換値を平均化した値を第2のアナログ・デジタル変換値とし、前記第1のアナログ・デジタル変換値との差分値が第3のアナログ・デジタル変換値としてメモリに記憶される第3工程と、
前記第1の信号入力端子に前記第2のリセット直前の共通信号線の電圧が付与され、前記第2の信号入力端子に第2の基準参照信号が付与され、前記第1及び第2のスイッチが閉じられる第4工程と、
前記第1及び第2のスイッチが解放され、前記第1の信号入力端子に前記第2のリセット直前の共通信号線の電圧が付与され、前記第2の信号入力端子に時間に比例して電圧が変化する参照電圧が複数回付与され、前記第1及び第2の出力端からの停止信号発生時の時間情報から得た複数のアナログ・デジタル変換値の平均値が第4のアナログ・デジタル変換値としてレジスタに一時的に記憶される第5工程と、
前記第1の信号入力端子に前記第2のリセット時の共通信号線の電圧が付与され、前記第2の信号入力端子にしきい値電圧が付与され、前記出力端信号により前記第2のリセット直前の共通信号線の電圧が比較される第6工程と、
前記第6工程で得た比較信号が小さい場合は、前記第2の信号入力端子に時間に比例して電圧が変化する参照電圧が複数回付与され、前記第1及び第2の出力端からの停止信号発生時の時間情報から得た複数のアナログ・デジタル変換値の平均値が第5のアナログ・デジタル変換値としてレジスタに一時的に記憶され、又は、前記比較信号が大きい場合は、前記第2の信号入力端子に時間に比例して電圧が変化する参照電圧が付与され、前記第1及び第2の出力端からの停止信号発生時の時間情報から得たアナログ・デジタル変換値が、第5のアナログ・デジタル変換値としてレジスタに一時的に記憶される第7工程と、
を行い、
前記メモリに記憶された前記第3のアナログ・デジタル変換値と、前記第5のアナログ・デジタル変換値との差分値を、画素信号のアナログ・デジタル変換値とす
るイメージセンサ。
【請求項4】
行方向及び列方向に2次元配置された複数の画素と、
特定行の画素を選択する垂直走査回路と、
前記垂直走査回路により選択された行の各画素からの信号を列並列でアナログ・デジタル変換する複数のアナログ・デジタル変換器と、
前記画素、前記垂直走査回路及びアナログ・デジタル変換器を制御する制御部と、
を有し、
前記画素は、
光信号を電流に変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子で変換された電流を蓄積して信号電圧に変換する容量と、
前記容量を所定の電圧にリセットするリセット部と、
前記容量の電圧を入力とする電圧バッファー部と、
を備え、
前記アナログ・デジタル変換器は、
2つの入力端の差動電圧を増幅させて2つの出力端に生じさせる差動増幅器と、
第1の入力端と第1の出力端間に設けられた第1のスイッチと、
第2の入力端と第2の出力端間に設けられた第2のスイッチと、
第1の信号入力端子と前記第1の入力端の間に設けられた第1の容量と、
第2の信号入力端子と前記第2の入力端の間に設けられた第2の容量と、
を備え、前記第1及び第2の出力端における停止信号発生時の時間情報をアナログ・デジタル変換値とするものであり、
前記制御部は、
前記垂直走査回路によって選択された特定行の各画素において、前記リセット部により前記容量を所定の電圧にリセットした後、該リセットを解除する第1のリセット動作、
前記特定行の各画素の電圧バッファー部により取り出された第1のリセット電圧と前記リセット解除時の電圧との差を、前記アナログ・デジタル変換器によってデジタル値に変換し、その値を基準信号値としてメモリに記憶する動作、
前記リセット解除時から一定の露光時間が経過した後で、第2のリセット動作を行い、前記電圧バッファー部により取り出された第2のリセット動作直前の電圧と前記第2のリセット時の電圧との差を、前記アナログ・デジタル変換器によってデジタル値に変換し、その値を蓄積信号値とする動作、及び、
前記メモリに記憶された基準信号値と前記蓄積信号値との差分値を、画素信号のアナログ・デジタル変換値として出力する動作、
を制御し、
前記第1及び第2の信号入力端に前記第1のリセット時の共通信号線の電圧が付与され、前記第1及び第2のスイッチが閉じられる第1工程と、
前記第1及び第2のスイッチが解放され、前記第1の信号入力端子に前記第1のリセット解除後の共通信号線の電圧が付与され、前記第2の信号入力端子に時間に比例して電圧が変化する参照電圧が付与され、前記第1及び第2の出力端の停止信号発生時の時間情報が第1のアナログ・デジタル変換値としてメモリに記憶される第2工程と、
前記第1及び第2の信号入力端に前記第2のリセット直前の共通信号線の電圧が付与され、前記第1及び第2のスイッチが閉じられる第3工程と、
前記第1及び第2のスイッチが解放され、前記第1の信号入力端子にリセット直前の共通信号線の電圧が付与されると共に、前記第2の信号入力端子に時間に比例して電圧が変化する参照電圧が付与され、前記第1及び第2の出力端の停止信号発生時の時間情報が第2のアナログ・デジタル変換値とされる第
4工程と、
前記第1及び第2の信号入力端に前記第2のリセット時の共通信号線の電圧が付与され、前記第1及び第2のスイッチが閉じられる第5工程と、
前記第1及び第2のスイッチが解放され、前記第1の信号入力端子に第2のリセット時の共通信号線の電圧が付与されると共に、前記第2の信号入力端子に時間に比例して電圧が変化する参照電圧が付与され、前記第1及び第2の出力端の停止信号発生時の時間情報を第3のアナログ・デジタル変換値とし、該第3のアナログ・デジタル変換値と前記第2のアナログ・デジタル変換値との差分値が第4のアナログ・デジタル変換値とされる第6工程と、
を行い、
前記メモリに記憶された
前記第1のアナログ・デジタル変換値と、前記第4のアナログ・デジタル変換値との差分値を、画素信号のアナログ・デジタル変換値とす
るイメージセンサ。
【請求項5】
行方向及び列方向に2次元配置された複数の画素と、
特定行の画素を選択する垂直走査回路と、
前記垂直走査回路により選択された行の各画素からの信号を列並列でアナログ・デジタル変換する複数のアナログ・デジタル変換器と、
前記画素、前記垂直走査回路及びアナログ・デジタル変換器を制御する制御部と、
を有し、
前記画素は、
光信号を電流に変換する光電変換素子と、
前記光電変換素子で変換された電流を蓄積して信号電圧に変換する容量と、
前記容量を所定の電圧にリセットするリセット部と、
前記容量の電圧を入力とする電圧バッファー部と、
を備え、
前記アナログ・デジタル変換器は、
2つの入力端の差動電圧を増幅させて2つの出力端に生じさせる差動増幅器と、
第1の入力端と第1の出力端間に設けられた第1のスイッチと、
第2の入力端と第2の出力端間に設けられた第2のスイッチと、
第1の信号入力端子と前記第1の入力端の間に設けられた第1の容量と、
第2の信号入力端子と前記第2の入力端の間に設けられた第2の容量と、
を備え、前記第1及び第2の出力端における停止信号発生時の時間情報をアナログ・デジタル変換値とするものであり、
前記制御部は、
前記垂直走査回路によって選択された特定行の各画素において、前記リセット部により前記容量を所定の電圧にリセットした後、該リセットを解除する第1のリセット動作、
前記特定行の各画素の電圧バッファー部により取り出された第1のリセット電圧と前記リセット解除時の電圧との差を、前記アナログ・デジタル変換器によってデジタル値に変換し、その値を基準信号値としてメモリに記憶する動作、
前記リセット解除時から一定の露光時間が経過した後で、第2のリセット動作を行い、前記電圧バッファー部により取り出された第2のリセット動作直前の電圧と前記第2のリセット時の電圧との差を、前記アナログ・デジタル変換器によってデジタル値に変換し、その値を蓄積信号値とする動作、及び、
前記メモリに記憶された基準信号値と前記蓄積信号値との差分値を、画素信号のアナログ・デジタル変換値として出力する動作、
を制御し、
前記第1の信号入力端に前記第1のリセット時の共通信号線の電圧が付与され、前記第2の信号入力端に第1の基準参照電圧が付与され、前記第1及び第2のスイッチが閉じられる第1工程と、
前記第1及び第2のスイッチが解放され、前記第1の信号入力端子に前記第1のリセット解除後の共通信号線の電圧が付与されると共に、前記第2の信号入力端子に時間に比例して電圧が変化する参照電圧が複数回付与され、前記第1及び第2の出力端からの停止信号発生時の時間情報から得た複数のアナログ・デジタル変換値の平均値が第1のアナログ・デジタル変換値としてメモリに記憶される第2工程と、
前記第1及び第2の信号入力端に前記第2のリセット直前の共通信号線の電圧が付与され、前記第1及び第2のスイッチが閉じられる第3工程と、
前記第1及び第2のスイッチが解放され、前記第1の信号入力端子にリセット直前の共通信号線の電圧が付与されると共に、前記第2の信号入力端にしきい値電圧が付与され、得られた差動増幅器の出力電圧によってリセット直前の共通信号線の電圧の大きさが判定される第4工程と、
前記第4工程で判定されたリセット直前の共通信号線の電圧の大きさがしきい値以下の場合は、前記第2の信号入力端子に時間に比例して電圧が変化する参照電圧が複数回付与され、前記出力端の停止信号発生時の時間情報から得た複数のアナログ・デジタル変換値の平均値が第2のアナログ・デジタル変換値としてレジスタに一時的に記憶され、又は、前記リセット直前の共通信号線の電圧の大きさがしきい値を超える場合は、前記第2の信号入力端子に時間に比例して電圧が変化する参照電圧が付与され、前記第1及び第2の出力端の停止信号発生時の時間情報から得たアナログ・デジタル変換値が第2のアナログ・デジタル変換値としてレジスタに一時的に記憶される第5工程と、
前記第1及び第2の信号入力端に前記第2のリセット時の共通信号線の電圧が付与されると共に、前記第1及び第2のスイッチが閉じられる第6工程と、
前記第1及び第2のスイッチが解放され、前記第1の信号入力端子にリセット時の共通信号線の電圧が付与されると共に、前記第2の信号入力端子に時間に比例して電圧が変化する参照電圧が複数回付与され、前記出力端の停止信号発生時の時間情報から得た複数のアナログ・デジタル変換値の平均値を第3のアナログ・デジタル変換値とし、該第3のアナログ・デジタル変換値と前記第2のアナログ・デジタル変換値との差分値が第4のアナログ・デジタル変換値とされる第7工程と、
を行い、
前記メモリに記憶された前記第1のアナログ・デジタル変換値と、前記第4のアナログ・デジタル変換値との差分値を、画素信号のアナログ・デジタル変換値とす
るイメージセンサ。
【請求項6】
前記リセット部及び前記電圧バッファー部の少なくとも一方はMOSトランジスタで構成されている
請求項1~5のいずれか1項に記載のイメージセンサ。
【請求項7】
前記第1のリセット電圧のアナログ・デジタル変換値、前記第1のリセット解除後の電圧のアナログ・デジタル変換値、前記第2のリセット電圧のアナログ・デジタル変換値及び前記第2のリセット前のアナログ・デジタル変換値のうち1種又は2種以上に基づき、前記参照電圧の電圧範囲及び/又はしきい値電圧が決定される請求項
1~6のいずれか1項に記載のイメージセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイメージセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
イメージセンサは、一般に、光信号を電気信号に変換する光電センサーと電気信号を制御するトランジスタを備える複数の画素が行方向及び列方向に2次元的に配置され、各行及び各列の電気信号をデジタル値に変換するコラムA/D(アナログ・デジタル)変換器、各画素を制御する走査回路などで構成されている。また、光電センサーに有機薄膜、量子ドット薄膜、炭素系薄膜などの光電膜を用いることで、これまで用いられてきたシリコンフォトダイオードでは対応できなかった赤外光などの波長域の光も検出可能となる他、性質の異なる複数の光電薄膜を組み合わせて用いることで、イメージセンサに様々な機能を付与することが可能となる。
【0003】
図16は光電膜を用いた画素の構成を示す回路図である。
図16に示す画素100には、光電膜110を所定の電圧にリセットするリセットトランジスタM
0、光電膜110を流れる光電流を電荷として蓄積する容量C
H、ソースフォロアを構成するトランジスタM
1、画素を選択し、ソースフォロアを介して共通信号線Dに蓄積電荷に比例した電圧を選択的に出力するトランジスタM
2が設けられている。
図16に示すような3つのトランジスタを備える構成は、一般に、3トランジスタ構成と呼ばれている(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。
【0004】
図17は
図16に示す画素100を用いたイメージセンサの構成例を示すブロック図である。
図17に示すイメージセンサでは、画素100が行方向及び列方向に2次元的に配置されており、各画素100は垂直走査回路101によって行毎に制御され、順次信号が取り出される。そして、選択された各行の画素100の信号は、複数のA/D変換器102においてデジタル値に変換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】黒田隆男著、「イメージセンサの本質と基礎」、コロナ社、2012年12月21日、p.96~110
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した従来の3トランジスタ構成の画素には、効果的な相関二重サンプリングを行い難く、ノイズが大きいという課題がある。
【0008】
図18は画素100内においてトランジスタM
1によるソースフォロアでバッファーされる容量C
Hの端子電圧V
Gを示す波形図である。
図18において破線で囲んだ部分は画素信号の読出し期間を示している。
図18に示すように、初めにリセット信号RSTが”H”になり、トランジスタM
0によって容量C
Hの端子電圧V
Gはリセット電圧V
RST(n-m)になる。ここで、nは信号を読み出す行の番号、mは行数で表した露光時間である。このリセット電圧V
RST(n-m)は、トランジスタM
0のしきい値電圧をV
TH0、電源電圧をV
DDとし、下記数式1で表される。
【0009】
【0010】
次に、リセット信号RSTを”L”にしてトランジスタM0をオフにすると、リセットを解除した後の露光の起点となる電圧VSTD(n-m)は、下記数式2で表される。なお、下記数式2に示すVn(n-m)は、容量CHに関するkT/Cノイズとスイッチのフィードスルーに起因するオフセット電圧を含むノイズ電圧である。
【0011】
【0012】
露光が開始されると、読み出し時の端子電圧VSIG(n)は、電圧VSTD(n-m)を起点とし、光により励起された電流をIp、保持容量をCH、1水平期間をTHとして、下記数式3で表される。
【0013】
【0014】
次に、信号を読み出した後、リセット信号RSTを”H”にすると、端子電圧VGは、上記数式1に示す電圧となるため、下記数式4で表される。
【0015】
【0016】
そこで、上記数式3で表される電圧VSIG(n)から、上記数式4で表される電圧VRST(n)を引いて求められる出力電圧VCDS(n)は、下記数式5で表される。
【0017】
【0018】
上記数式5に示すMOSトランジスタM0の電圧VTHは、キャンセルされて得られた信号に現れないので、トランジスタのしきい値電圧バラツキの影響を受けないようにすることができる。同様に、信号線Dの電圧をA/D変換するときには、トランジスタM1で構成されるソースフォロアを介して読み出されるので、そのゲートソース間電圧をVGS1とすると、読出し電圧はこの電圧の影響を受けるが、信号電圧VSIG(n)と信号電圧VRST(n)は読出し時間の差が短いので、この間電圧VGS1は殆ど変化がないものと考えられる。このため、電圧VGS1は相関二重サンプリング(CDS)によりキャンセルされて、影響は殆ど現れない。
【0019】
しかしながら、上記数式5に示すように、従来の3トランジスタ構成の画素では、リセット信号RSTを”L”にしてリセットを解除したときに誘起されるノイズVn(n-m)を除去することはできない。このため、従来の3トランジスタ構成の画素を備えるイメージセンサは、ノイズが多く、特に光が弱い時にSNR(Signal to Noise Ratio)が低下して画質劣化を生じるという大きな課題がある。
【0020】
そこで、本発明は、画素が3トランジスタ構成であっても、低ノイズ及び低電力で動作するイメージセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者は、前述した課題を解決するためにCMOSイメージセンサの信号読出しについて検討を行い、従来のように露光後の蓄積容量の信号電圧とリセット電圧間の電圧差分をとって相関二重サンプリングを行うだけでなく、露光開始前のリセット信号とリセット解除直後の蓄積容量の電圧間の電圧差分をとった相関二重サンプリングを行い、これら2つの相関二重サンプリング信号間の差分を求めることで、ノイズやトランジスタのしきい値ドリフトの影響をキャンセルできることを見出し、本発明に至った。
【0022】
即ち、本発明に係るイメージセンサは、行方向及び列方向に2次元配置された複数の画素と、特定行の画素を選択する垂直走査回路と、前記垂直走査回路により選択された行の各画素からの信号を列並列でアナログ・デジタル変換する複数のアナログ・デジタル変換器と、前記画素、前記垂直走査回路及びアナログ・デジタル変換器を制御する制御部とを有するものであり、
前記画素は、光信号を電流に変換する光電変換素子と、前記光電変換素子で変換された電流を蓄積して信号電圧に変換する容量と、前記容量を所定の電圧にリセットするリセット部と、前記容量の電圧を入力とする電圧バッファー部とを備え、
前記制御部は、(1)前記垂直走査回路によって選択された特定行の各画素において、前記リセット部により前記容量を所定の電圧にリセットした後、該リセットを解除する第1のリセット動作、(2)前記特定行の各画素の電圧バッファー部により取り出された第1のリセット電圧と前記リセット解除時の電圧との差を、前記アナログ・デジタル変換器によってデジタル値に変換し、その値を基準信号値としてメモリに記憶する動作、(3)前記リセット解除時から一定の露光時間が経過した後で、第2のリセット動作を行い、前記電圧バッファー部により取り出された第2のリセット動作直前の電圧と前記第2のリセット時の電圧との差を、前記アナログ・デジタル変換器によってデジタル値に変換し、その値を蓄積信号値とする動作、及び、(4)前記メモリに記憶された基準信号値と前記蓄積信号値との差分値を、画素信号のアナログ・デジタル変換値として出力する動作を制御する。
【0023】
また、本発明に係るイメージセンシング方法は、行方向及び列方向に2次元配置された複数の画素と、特定行の画素を選択する垂直走査回路と、前記垂直走査回路により選択された行の各画素からの信号を列並列でアナログ・デジタル変換する複数のアナログ・デジタル変換器と、前記画素、前記垂直走査回路及びアナログ・デジタル変換器を制御する制御部とを有し、前記画素が、光信号を電流に変換する光電変換素子と、前記光電変換素子で変換された電流を蓄積して信号電圧に変換する容量と、前記容量を所定の電圧にリセットするリセット部と、前記容量の電圧を入力とする電圧バッファー部とを備えるイメージセンサによりイメージセンシングを行う方法であって、
前記垂直走査回路により選択された特定行の画素について、前記リセット部により第1のリセット動作を行い、前記画素の容量を所定の電圧にリセットした後で該セットを解除する工程と、
前記電圧バッファー部により取り出された第1のリセット電圧と前記リセット解除時の電圧との差を前記アナログ・デジタル変換器によってデジタル値に変換し、その値を基準信号値としてメモリに記憶する工程と、
前記リセット解除時から一定の露光時間が経過した後で第2のリセット動作を行い、前記電圧バッファー部により取り出された第2のリセット動作直前の電圧と前記第2のリセット時の電圧との差を、前記アナログ・デジタル変換器によってデジタル値に変換し、その値を蓄積信号値とし、前記メモリに入力された基準信号値と前記蓄積信号値との差分値を画素信号のアナログ・デジタル変換値とする工程と
を行う。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、3トランジスタ構成の画素であっても、リセットノイズやトランジスタのしきい値電圧のドリフトをキャンセルできるため、ノイズの少ない高画質のイメージセンサを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態のイメージセンサの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示すイメージセンサ1の画素10内の信号電圧を示す波形図である。
【
図3】リセット信号RST、選択信号SEL及びアナログ・デジタル変換信号の出力タイミングを示す図である。
【
図4】メモリ13を用いた相関二重サンプリング方法を示す図である。
【
図5】各行の画素10から信号が出力されるタイミングを示す図である。
【
図6】A/D変換器12に用いられる差動増幅器の構成を示す回路図である。
【
図7】
図6に示す差動増幅器20を比較器として用いた時間領域のA/D変換器の構成を示すブロック図である。
【
図8】A~Dは第1のA/D変換方法を示す回路図である。
【
図9】A~Fは第2のA/D変換方法を示す回路図である。
【
図10】A~Fは第3のA/D変換方法を示す回路図である。
【
図11】Aは第3のA/D変換方法を示す回路図であり、BはAの動作時の信号と参照電圧V
R2の関係を示す波形図である。
【
図12】A~Cは第4のA/D変換方法を示す回路図である。
【
図13】A~Cは第4のA/D変換方法を示す回路図である。
【
図14】A~Dは第5のA/D変換方法を示す回路図である。
【
図15】A~Cは第5のA/D変換方法を示す回路図である。
【
図16】光電膜を用いた画素の構成を示す回路図である。
【
図17】
図16に示す画素100を用いたイメージセンサの構成例を示すブロック図である。
【
図18】画素100内においてトランジスタM
1によるソースフォロアでバッファーされる容量C
Hの端子電圧V
Gを示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下,発明を実施するための形態について,添付の図面を用いて詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0027】
図1は本発明の実施形態に係るイメージセンサの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態のイメージセンサ1は、複数の画素10と、特定行の画素を選択する垂直走査回路11と、垂直走査回路11により選択された行の各画素10からの信号を列並列でアナログ・デジタル変換する複数のA/D変換器12と、A/D変換器12からの出力信号を記憶するメモリ13と、画素10、垂直走査回路11及びアナログ・デジタル変換器12を制御する制御部14を備えている。
【0028】
画素10には、光信号を電流に変換する光電変換素子と、光電変換素子で変換された電流を蓄積して信号電圧に変換する容量と、容量を所定の電圧にリセットするリセット部と、容量の電圧を入力とする電圧バッファー部とが設けられている。そして、リセット部及び電圧バッファー部は、例えばMOSトランジスタで構成することができる。なお、リセット部及び電圧バッファー部は、いずれか一方のみMOSトランジスタで構成されていてもよく、また、両方がMOSトランジスタで構成されていてもよい。
【0029】
本実施形態のイメージセンサ1では、複数の画素10が行方向及び列方向に2次元的に配置されており、各画素10は垂直走査回路11によって行毎に制御され、順次信号が取り出される。そして、選択された各行の画素10の信号は、A/D変換器12においてデジタル値に変換され、A/D変換器12からの出力信号は一旦メモリ13に保存され、任意のタイミングのA/D変換器12の出力信号との差分がとられ、変換出力信号として出力される。
【0030】
その際、制御部14によって、以下に示す(1)~(4)の動作が制御される。
(1)垂直走査回路11によって選択された特定行の各画素10において、リセット部により容量を所定の電圧にリセットした後、該リセットを解除する第1のリセット動作。
(2)特定行の各画素10の電圧バッファー部により取り出された第1のリセット電圧とリセット解除時の電圧との差を、A/D変換器12によってデジタル値に変換し、その値を基準信号値としてメモリ13に記憶する動作。
(3)リセット解除時から一定の露光時間が経過した後で、第2のリセット動作を行い、電圧バッファー部により取り出された第2のリセット動作直前の電圧と第2のリセット時の電圧との差を、A/D変換器12によってデジタル値に変換し、その値を蓄積信号値とする動作。
(4)メモリ13に記憶された基準信号値と前述した蓄積信号値との差分値を、画素信号のアナログ・デジタル変換値として出力する動作。
【0031】
[動作]
図2は
図1に示すイメージセンサ1の画素10内の信号電圧を示す波形図である。
図2は、画素10内でトランジスタM
1によるソースフォロアでバッファーされた電荷蓄積容量C
Hの端子電圧V
Gを示しており、破線で示した時間範囲は、トランジスタM
3の制御に用いられる画素10から共通信号線への電圧伝送期間(画素信号選択期間)である。
【0032】
図2に示すように、本実施形態のイメージセンサ1では、先ず、露光を開始するための第1のリセットにおいてリセットパルスRSTが”H”になり、トランジスタM
0により端子電圧V
Gはリセット電圧V
RST(n-m)になる。ここで、nは信号を読み出す行の番号であり、mは行数で表した露光時間である。このリセット電圧V
RST(n-m)は、トランジスタM
0のしきい値電圧V
TH(n-m)、電源電圧V
DDから、下記数式6で表される。
【0033】
【0034】
次に、リセット信号RSTを”L”にしてトランジスタM0をオフし、リセットを解除すると、露光の起点となる電圧VSTD(n-m)は、従来と同様に、スイッチのフィードスルーによるオフセット電圧と容量CHに関するkT/Cノイズを合わせてノイズ電圧Vn(n-m)として、下記数式7で表される。
【0035】
【0036】
本実施形態のイメージセンサ1では、この2つの信号をA/D変換するが、その際、トランジスタM1のゲートソース間電圧VGSだけ電圧がシフトするため、この効果を加味してこれらの電圧は、下記数式8及び下記数式9で表される。
【0037】
【0038】
【0039】
そして、下記数式10に示すように、上記数式8及び数式9で表される2つの信号の差分をとると、ノイズ電圧Vn(n-m)だけが残る。
【0040】
【0041】
本実施形態のイメージセンサ1では、このノイズ電圧Vn(n-m)を表すA/D変換値をメモリ13に保存する。
【0042】
露光時間が経過すると、画素10内の端子電圧VGは、光により励起された電流により徐々に低下する。定められた露光時間が経過した後、画素選択信号SELを”H”にしてトランジスタM2をオンにし、ソースフォロワを介して共通信号線Dに端子電圧VGを出力させる。このときのA/D変換器12の入力電圧VSIG(n)_ADCは、光により励起された電流をIp、1水平期間をTH、ソースフォロワのゲートソース電圧をVGS(n)として、下記数式11で表される。
【0043】
【0044】
次に、露光を終了するための第2のリセットにおいてリセット信号RSTを”H”にすると、A/D変換器12の入力電圧VRST(n)_ADCは、下記数式12で表される。
【0045】
【0046】
そして、上記数式11で表される入力電圧VSIG(n)_ADCから上記数式12で表される入力電圧VRST(n)_ADCを引いた出力電圧VSIG(n)_CDSは、下記数式13で表される。
【0047】
【0048】
ここで、しきい値電圧VTHの変動は殆ど生じないか、又は、しきい値電圧をデプレションにするとしきい値電圧はA/D変換器12の入力電圧に殆ど変動を与えないと考えられるので、上記数式13は、下記数式14で表される。
【0049】
【0050】
その後、メモリ13に保存している電圧VSTD(n-m)_CDSを読出し、その差分を取った電圧をVSIG(n)_DCDSとすると、下記数式15に示すように、ノイズがキャンセルされ、純粋に光による信号だけを取り出すことができる。
【0051】
【0052】
図3はリセット信号RST、選択信号SEL及びアナログ・デジタル変換信号の出力タイミングを示す図である。
図3に示すように、本実施形態のイメージセンサ1の場合、先ず(n-1-m)行の第1のリセット信号RST(n-1-m)が”H”となり、やや遅れて(n-1-m)行の選択信号SEL(n-1-m)が”H”となる。第1のリセット信号RST(n-1-m)が”L”となっても、リセット解除後の信号をA/D変換する必要があるため、しばらくは”H”の状態が継続してから”L”になる。そして、少し間隔を空けて(n-m)行のリセット信号RST(n-m)が”H”となり、やや遅れて(n-m)行の選択信号SEL(n-m)が”H”となることを繰り返し、順次行をシフトさせていく。
【0053】
m行で示される露光時間が経った場合は、初めに選択信号SEL(n-1)が”H”となり、光により励起された電流が蓄積されている信号電圧VSIG(n-1)を取りだし、A/D変換後に第2のリセット信号RST(n-1)が”H”となる。そして、リセット信号VRST(n-1)がA/D変換された後、選択信号SEL(n-1)が”L”になる。次に、少し間隔を空けてn行の選択信号SEL(n)が”H”となり、やや遅れてn行のリセット信号RST(n)が”H”となり、順次行をシフトさせていく。A/D変換信号は、相関二重サンプリング(CDS)が取られた基準信号STD_CDSと、相関二重サンプリング(CDS)が取られた画素信号SIG_CDSを交互に発生させるようになっている。
【0054】
図4はメモリ13を用いた相関二重サンプリング方法を示す図である。
図4に示すように、相関二重サンプリング(CDS)が取られた基準信号STD_
CDSは、メモリ13に記憶され、相関二重サンプリング(CDS)が取られた画素信号SIG_
CDSの発生タイミングで読み出される。そして、画素信号SIG_
CDSと基準信号STD_
CDSとの差分が取られ、最終的な相関二重サンプリング(CDS)が行われることでノイズが除去されて最終変換出力となる。
【0055】
図5は各行の画素10から信号が出力されるタイミングを示す図である。
図5に示すように、本実施形態のイメージセンサ1では、1水平期間の最初の1/4水平期間で第1リセット電圧が共通ラインに出力され、次の1/4水平期間で基準電圧が共通ラインに出力される。
【0056】
その後、露光期間になり、所定の露光期間が終了すると(
図4では2水平期間に設定)、後半の1/4水平期間で容量に蓄積された光電流による信号電圧が共通ラインに出力され、1/4水平期間で第2のリセット電圧が共通ラインに出力される。このように、本実施形態のイメージセンサ1では、各信号が重なりあうことがないよう、1水平期間では、第1リセット電圧、基準電圧、光電流による信号電圧及び第2のリセット電圧の順に、1/4水平期間単位で共通ラインに出力されるようになっている。
【0057】
[A/D変換器12]
次に、前述した動作を実現するためのA/D変換器12について説明する。
図6は
図1に示すA/D変換器12に用いられる差動増幅器の構成を示す回路図である。
図6に示す作動増幅器20において、トランジスタM
1a,M
1bは差動入力電圧を差動電流に変換する差動対であり、トランジスタM
2a,M
2bは差動電流を出力電圧に変換するカレントミラーを構成し、差動入力電圧が増幅されて出力電圧として現れる。
【0058】
トランジスタM0は、差動対のバイアス電流を与えるトランジスタであり、電圧VBはそのバイアス電圧である。差動増幅器20の入出力端間には、それぞれスイッチS1が設けられている。信号入力端INa,INbと差動増幅器20の出力端間には、一対の容量Csが設けられている。
【0059】
図7は
図6に示す差動増幅器20を比較器として用いた時間領域のA/D変換器の構成を示すブロック図である。
図7に示すように、差動増幅器20は、信号入力端IN
a,IN
b間の差動電圧を増幅して出力端にその増幅信号を発生させる。カウンター21は、クロックをカウントして時間情報を更新し、差動増幅器20の出力信号がカウンター21の停止信号となり、停止信号が出現した瞬間の時間情報がカウンター21に記憶される。
【0060】
本実施形態のイメージセンサ1では、カウンター21以外にも、時間的に変化するコードを入力し、停止信号が出現した瞬間のコードをラッチする時間デジタル変換器を用いて時間情報を得てもよい。カウンター21の出力は、そのままA/D変換信号となることが多いが、
図7に示すように累積加算器22を用い、複数の時間情報が累積加算器22に入力されて累積加算され、得られた平均値をA/D変換信号として出力することもできる。
【0061】
図7に示す時間領域のA/D変換器は、差動増幅器20の各スイッチS
1の制御と入力端IN
a,IN
bへの電圧の与え方により、以下に述べるように多くの特徴をもったイメージセンサを実現することができる。
【0062】
<第1のA/D変換方法>
図8A~Dは第1のA/D変換方法を示す回路図である。第1のA/D変換方法では、先ず、リセット時の共通信号線に現れる電圧V
RST1のサンプリングを行う。具体的には、
図8Aに示すように、第1の信号入力端IN
aにリセット時の共通信号線に現れる電圧V
RST1を印加すると共に、第2の信号入力端IN
bに基準となる参照電圧V
R01を印加し、スイッチS
1を閉じる。このとき、容量C
sa,C
sbの端子間電圧は、差動増幅器20の共通入出力電圧をV
cとして、下記数式16で表される。
【0063】
【0064】
次に、リセット解除後の共通信号線に現れる電圧V
STDとリセット時の共通信号線に現れる電圧V
RST1の変換を行う。具体的には、
図8Bに示すように、スイッチS
1を開き、第1の信号入力端IN
aにリセット解除後の共通信号線に現れる電圧V
STDを印加すると共に、第2の信号入力端IN
bに時間に比例して電圧が変化する参照電圧V
R1を印加し、差動増幅器20の2つの入力端に現れる電圧V
aと電圧V
bを比較する。このときの電圧V
a及び電圧V
bは、上記数式16を用いて、下記数式17で表される。
【0065】
【0066】
出力電圧が変化する入力電圧の条件は下記数式18で表されるため、リセット解除後の電圧VSTDは、リセット電圧VRST1との差分が取られ、相関二重サンプリング(CDS)された信号が被変換信号となる。そして、この相関二重サンプリング(CDS)された信号は、A/D変換されてデジタル値となり、メモリ13に記憶される。
【0067】
【0068】
次に、一定の露光時間が経過した後、信号サンプリングを行う。具体的には、
図8Cに示すように、第1の信号入力端IN
aに、ソースフォロアを介して共通信号線に現れる蓄積容量の電圧V
SIGを印加すると共に、第2の信号入力端IN
bに基準となる参照電圧V
R02を印加し、スイッチS
1を閉じる。このとき、容量C
sa,C
sbの端子間電圧は、差動増幅器20の共通入出力電圧をV
cとして、下記数式19で表される。
【0069】
【0070】
次に、ソースフォロアを介して共通信号線に現れる蓄積容量の電圧V
SIGと第2のリセット時に共通信号線に現れる電圧V
RST2の差分の変換を行う。具体的には、
図8Dに示すように、スイッチS
1を開き、第1の信号入力端IN
aに第2のリセット時に共通信号線に現れる電圧V
RST2を印加すると共に、第2の信号入力端IN
bに時間に比例して電圧が変化する参照電圧V
R2を印加し、差動増幅器20の2つの入力端に現れる電圧V
aと電圧V
bを比較する。このときの電圧V
a及び電圧V
bは、上記数式19を用いて、下記数式20で表される。
【0071】
【0072】
出力電圧が変化する入力電圧の条件は下記数式21で表されるため、第2のリセット直前の信号電圧V
SIGは、第2のリセット電圧V
RST2との差分が取られ、相関二重サンプリング(CDS)された信号が被変換信号となる。そして、このCDSされた信号は、A/D変換されてデジタル値となり、
図8Bに示すA/D変換動作時にメモリ13に記憶されたデータを読出し、その差分が取られて最終的な画素信号のA/D変換値となる。
【0073】
【0074】
前述した第1のA/D変換方法は、容量にサンプリングされたアナログ電圧を用いて相関二重サンプリング(CDS)を行うため、A/D変換は2回で済み、しかも
図8Bに示すA/D変換では、第1のリセット電圧とリセット解除の後電圧の差は極めて小さいと考えられるため、A/D変換に要する時間を短くすることができる。よって、この方法は、変換時間の短縮に有効である。
【0075】
<第2のA/D変換方法>
図9A~Fは第2のA/D変換方法を示す回路図である。第2のA/D変換方法では、先ず、リセット時の共通信号線に現れる電圧V
RST1のサンプリングを行う。具体的には、
図9Aに示すように、第1の信号入力端IN
aにリセット時の共通信号線に現れる電圧V
RST1を印加すると共に、第2の信号入力端IN
bに基準となる参照電圧V
R01を印加し、スイッチS
1を閉じる。このときの容量C
sa,C
sbの端子間電圧は、差動増幅器20の共通入出力電圧をV
cとして、前述した数式16で表される。
【0076】
次に、比較器20のオフセットとノイズの変換を行う。具体的には、
図9Bに示すように、スイッチS
1を開き、第1の信号入力端IN
aには電圧V
RST1の印加を継続すると共に、第2の信号入力端IN
bに時間に比例して電圧が変化する参照電圧V
R1を印加し、差動増幅器20の2つの入力端に現れる電圧V
aと電圧V
bを比較する。スイッチS
1を開くと、スイッチパルスのフィードスルーによるオフセット電圧や容量C
sa,C
sbによるkT/Cノイズが発生する。これらの非理想電圧が端子aに現れたと仮定してΔV
1と置くと、電圧V
a及び電圧V
bは下記数式22で表される。
【0077】
【0078】
出力電圧が変化する入力電圧の条件は下記数式23で表されるため、非理想電圧ΔV1をA/D変換することができる。そこで、第2のA/D変換方法では、この変換値をレジスタなどに一時的に記憶しておく。
【0079】
【0080】
次に、リセット解除後の共通信号線に現れる電圧V
STD変換を行う。具体的には、
図9Cに示すように、第1の信号入力端IN
aにリセット解除後の共通信号線に現れる電圧V
STDを印加する。この時の電圧V
a及び電圧V
bは、下記数式24で表される。
【0081】
【0082】
出力電圧が変化する入力電圧の条件は下記数式25で表されるため、リセット解除後の電圧VSTDは、リセット電圧VRST1との差分が取られ、相関二重サンプリング(CDS)された信号を変換している。ただし、この場合、相関二重サンプリング(CDS)後の電圧に非理想電圧ΔV1が印加されている。そこで、本変換方法では、レジスタに一時的に記憶された非理想電圧ΔV1のA/D変換値を読出し、差分を取る。これにより、非理想電圧ΔV1をキャンセルした相関二重サンプリング(CDS)を取ることができる。そして、この差分を取った値をメモリ13に入力する。
【0083】
【0084】
次に、ソースフォロアを介して共通信号線に現れる蓄積容量の電圧V
SIGのサンプリングを行う。具体的には、一定の露光時間が経過した後、
図9Dに示すように、第1の信号入力端IN
aにソースフォロアを介して共通信号線に現れる蓄積容量の電圧V
SIGを印加すると共に、第2の信号入力端IN
bに基準となる参照電圧V
R02を印加し、スイッチS
1を閉じる。このときの容量C
sa,C
sbの端子間電圧は、差動増幅器20の共通入出力電圧をV
cとして、前述した数式19で表される。
【0085】
次に、比較器20のオフセットとノイズの変換を行う。具体的には、
図9Eに示すように、スイッチS
1を開き、第1の信号入力端IN
aに電圧V
SIGを継続して印加すると共に、第2の信号入力端IN
bには時間に比例して電圧が変化する参照電圧V
R2を印加する。この時の電圧V
a及び電圧V
bは、ΔV
2を非理想電圧として、下記数式26で表される。
【0086】
【0087】
出力電圧が変化する入力電圧の条件は、下記数式27で表されるため、非理想電圧ΔV2をA/D変換することができる。そこで、この変換値をレジスタなどに一時的に記憶する。
【0088】
【0089】
次に、信号レベルと第2のリセット電圧V
RST2の相関二重サンプリング(CDS)変換を行う。具体的には、
図9Fに示すように、第1の信号入力端IN
aに第2のリセット時に共通信号線に現れる電圧V
RST2を印加する。このとき、電圧V
a及び電圧V
bは、下記数式28で表される。
【0090】
【0091】
出力電圧が変化する入力電圧の条件は下記数式29で表されるため、第2のリセット直前の信号電圧VSIGは、第2のリセット電圧VRST2との差分が取られ、相関二重サンプリング(CDS)された信号を変換している。ただし、この場合、相関二重サンプリング(CDS)の電圧には、非理想電圧ΔV2が印加されている。そこで、本変換方法では、レジスタに一時的に記憶された非理想電圧ΔV2のA/D変換値を読出し、差分を取る。これにより、非理想電圧ΔV2をキャンセルした相関二重サンプリング(CDS)を取ることができる。
【0092】
【0093】
この相関二重サンプリング(CDS)された電圧は、A/D変換されてデジタル値となり、
図9Cに示すA/D変換動作時にメモリ13に記憶されたデータを読出し、その差分が取られて画素信号のA/D変換値となる。
【0094】
この第2の変換方法は、前述した第1の変換方法に比べると変換時間はやや長くなるが、比較器のスイッチフィードスルーによるオフセット電圧や比較器の容量のkT/Cノイズをキャンセルできるため、非常に高精度なA/D変換が可能となる。
【0095】
<第3のA/D変換方法>
図10A~F及び
図11Aは第3のA/D変換方法を示す回路図であり、
図11Bは
図11Aの動作時における信号と参照電圧V
R2の関係を示す波形図である。第3のA/D変換方法では、先ず、リセット時の共通信号線に現れる電圧V
RST1のサンプリングを行う。具体的には、
図10Aに示すように、第1の信号入力端IN
aにリセット時の共通信号線に現れる電圧V
RST1を印加すると共に、第2の信号入力端IN
bに基準となる参照電圧V
R01を印加し、スイッチS
1を閉じる。このときの容量C
sa,C
sbの端子間電圧は、差動増幅器20の共通入出力電圧をV
cとして、前述した数式16で表される。
【0096】
次に、比較器20のオフセットとノイズの変換(マルチ変換)を行う。具体的には、
図10Bに示すように、スイッチS
1を開き、第1の信号入力端IN
aに電圧V
RST1の印加を継続すると共に、第2の信号入力端IN
bに時間に比例して電圧が変化する参照電圧V
R1を印加し、差動増幅器20の2つの入力端に現れる電圧V
aと電圧V
bを比較する。
【0097】
スイッチS
1を開くと、スイッチパルスのフィードスルーによるオフセット電圧や容量C
sa,C
sbによるkT/Cノイズが発生する。これらの非理想電圧が端子aに現れたと仮定してΔV
1と置くと、前述した数式22及び数式23より、非理想電圧ΔV
1をA/D変換することができるが、第3のA/D変換方法では、
図10Aに示す動作と、
図10Bに示す動作を複数回交互に繰り返し、得られた複数の変換値の平均値を取りレジスタなどに一時的に記憶する。
【0098】
ただし、変換時間短縮のため、
図10Aに示す動作を省略し、
図10Bに示す動作を複数回行い、得られた複数の変換値の平均値を取り、レジスタなどに一時的に記憶してもよい。このようにすることで、ノイズを効果的に低減することができる。なお、理想的には、変換回数をMとすると、下記数式30に示すように、ノイズ電圧V
nはMの平方根に比例して減少する。
【0099】
【0100】
次に、第1の信号入力端にリセット解除後の共通信号線に現れる電圧V
STDの変換(マルチ変換)を行う。具体的には、
図10Cに示すように、第1の信号入力端IN
aにリセット解除後の共通信号線に現れる電圧V
STDを印加する。前述した数式24及び数式25から、リセット解除後の電圧V
STDは、リセット電圧V
RST1との差分が取られ、相関二重サンプリング(CDS)された信号を変換している。
【0101】
本変換方法でも、参照電圧VR1を複数回掃引してA/D変換を行い、得られた複数の変換値の平均値を取ってA/D変換値とする。非理想電圧ΔV1が相関二重サンプリング(CDS)後の電圧に印加されているので、レジスタに一時的に記憶された非理想電圧ΔV1のA/D変換値を読出して差分を取ることにより、非理想電圧ΔV1をキャンセルしたCDSを取ることができる。そして、この値をメモリ13に入力する。
【0102】
次に、ソースフォロアを介して共通信号線に現れる蓄積容量の電圧V
SIGをサンプリングする。具体的には、一定の露光時間が経過した後、
図10Dに示すように、第1の信号入力端IN
aにソースフォロアを介して共通信号線に現れる蓄積容量の電圧V
SIGを印加すると共に、第2の信号入力端IN
bに基準となる参照電圧V
R02を印加し、スイッチS
1を閉じる。このときの容量C
sa,C
sbの端子間電圧は、差動増幅器20の共通入出力電圧をV
cとして、前述した数式19で表される。
【0103】
次に、比較器のオフセットとノイズの変換(マルチ変換)を行う。具体的には、
図10Eに示すように、スイッチS
1を開き、第1の信号入力端IN
aには電圧V
SIGを継続して印加し、第2の信号入力端IN
bに時間に比例して電圧が変化する参照電圧V
R2を印加する。このとき、前述した数式26及び数式27から、非理想電圧ΔV
2をA/D変換することができる。
【0104】
更に、
図10Dに示す動作と
図10Eに示す動作を複数回交互に繰り返し、得られた複数の変換値の平均値を取り、得られた値をA/D変換値とすることにより、効果的にノイズを低減することができる。この場合も変換時間短縮のために、
図10Dに示す動作を省略し、
図10Eに示す動作を複数回行って得られた複数の変換値の平均値を取り、得られた値をA/D変換値としてもよい。
【0105】
次に、
図10Fに示すように、第1の信号入力端IN
aに第2のリセット時に共通信号線に現れる電圧V
RST2を印加すると共に、第2の信号入力端IN
bにA/D変換動作の判断のためにしきい値電圧V
THを印加する。このときの電圧V
aと電圧V
bは、下記数式31で表わされる。
【0106】
【0107】
出力電圧が変化する入力電圧の条件は下記数式32で表されるため、第2のリセット直前の信号電圧VSIGは、第2のリセット電圧VRST2との差分が取られ、その大きさがしきい値電圧VTHと比較される。
【0108】
【0109】
そして、V
RST2-V
SIGがしきい値電圧V
THよりも低く、弱い信号である場合は、
図11Aに示す回路によるマルチ変換に移行する。その際、
図11Bに示すように、参照電圧V
R2は、しきい値電圧V
THよりも若干広く限定された電圧範囲で複数回A/D変換され、得られた複数の変換値の平均値を取った値をA/D変換値とする。これにより、効果的にノイズを低減することができる。一方、V
RST2-V
SIGがしきい値電圧V
THよりも高く、強い信号である場合は、
図11Aに示す回路によるシングル変換に移行し、
図11Bに示すように、参照電圧V
R2はフルスケールの電圧範囲を掃引する。
【0110】
このように、本変換方法では、
図10D~F及び
図11Aに示す動作により、信号V
SIGとリセット信号V
RST2間で相関二重サンプリング(CDS)された信号を変換している。ただし、この場合、非理想電圧ΔV
2が相関二重サンプリング(CDS)後の電圧に印加されている。そこで、本変換方法では、レジスタに一時的に記憶された非理想電圧ΔV
2のA/D変換値を読出し、差分を取る。これにより、非理想電圧ΔV
2をキャンセルした相関二重サンプリング(CDS)を取ることができる。
【0111】
この相関二重サンプリング(CDS)された信号は、A/D変換されてデジタル値となり、
図10Cに示すA/D変換動作時にメモリ13に記憶されたデータを読出し、その差分が取られて画素信号のA/D変換値とされる。
【0112】
この第3の変換方法は、前述した第2の変換方法に比べると変換時間はやや長くなるが、比較器のスイッチフィードスルーによるオフセット電圧や比較器の容量のkT/Cノイズをキャンセルできるだけでなく、複数のA/D変換値の平均値を取るため、前述した第2のA/D変換方法よりも更に回路全体のノイズを低減でき、非常に低ノイズなA/D変換が可能となる。
【0113】
<第4のA/D変換方法>
図12A~C及び
図13A~Cは第4のA/D変換方法を示す回路図である。第4のA/D変換方法では、先ず、リセット時の共通信号線に現れる電圧V
RST1のサンプリングを行う。具体的には、
図12Aに示すように、第1の信号入力端IN
aにリセット時の共通信号線に現れる電圧V
RST1を印加すると共に、第2の信号入力端IN
bに基準となる参照電圧V
R01を印加し、スイッチS
1を閉じる。この動作は
図8Aに示す第1のA/D変換方法の動作と同じである。
【0114】
次に、リセット解除後の共通信号線に現れる電圧V
STDと、リセット時の共通信号線に現れる電圧V
RST1の変換を行う。具体的には、
図12Bに示すように、スイッチS
1を開き、第1の信号入力端IN
aにリセット解除後の共通信号線に現れる電圧V
STDを印加すると共に、第2の信号入力端IN
bに時間に比例して電圧が変化する参照電圧V
R1を印加し、差動増幅器20の2つの入力端に現れる電圧V
aと電圧V
bを比較する。この動作も、
図8Bに示す第1のA/D変換方法の動作と同じである。そして、リセット解除後の電圧V
STDは、リセット電圧V
RST1との差分が取られ、相関二重サンプリング(CDS)された信号を変換している。相関二重サンプリング(CDS)された信号は、A/D変換されてデジタル値となりメモリ13に入力される。
【0115】
次に、信号サンプリングを行う。具体的には、一定の露光時間が経過した後、
図12Cに示すように、第1及び第2の信号入力端に、ソースフォロアを介して共通信号線に現れる蓄積容量の電圧V
SIGを印加して、スイッチS
1を閉じる。このとき、容量C
sa,C
sbの端子間電圧は等しく、差動増幅器20の共通入出力電圧をV
cとして、下記数式33で表される。
【0116】
【0117】
次に、電圧V
SIGの変換を行う。具体的には、
図13Aに示すように、スイッチS
1を開き、第1の信号入力端IN
aには継続して電圧V
SIGを印加すると共に、第2の信号入力端IN
bに時間に比例して電圧が変化する参照電圧V
R2を印加し、差動増幅器20の2つの入力端に現れる電圧V
aと電圧V
bを比較する。このときの電圧V
a及び電圧V
bは、上記数式33を用いて、下記数式34で表される。
【0118】
【0119】
出力電圧が変化する入力電圧の条件は、下記数式35で表されるので、電圧VSIGはA/D変換され、変換値はレジスタに保存される。
【0120】
【0121】
次に、ソースフォロアを介して共通信号線に現れる蓄積容量の電圧V
RST2をサンプリングする。具体的には、
図13Bに示すように、第1及び第2の信号入力端に、ソースフォロアを介して共通信号線に現れる蓄積容量の電圧V
RST2を印加して、スイッチS
1を閉じる。このとき、容量C
sa,C
sbの端子間電圧は等しく、差動増幅器20の共通入出力電圧をV
cとして、下記数式36で表される。
【0122】
【0123】
次に、電圧V
RST2の変換を行う。具体的には、
図13Cに示すように、スイッチS
1を開き、第1の信号入力端には継続して電圧V
RST2を印加すると共に、第2の信号入力端に時間に比例して電圧が変化する参照電圧V
R2を印加し、差動増幅器20の2つの入力端に現れる電圧V
aと電圧V
bを比較する。このときの電圧V
a及び電圧V
bは、上記数式36を用いて、下記数式37で表わされる。
【0124】
【0125】
出力電圧が変化する入力電圧の条件は、下記数式38で表されるので、信号電圧V
RST2はA/D変換される。次に、この変換値とレジスタに記憶されている電圧V
SIGのA/D変換値のデジタル差分が取られ、相関二重サンプリング(CDS)されたデジタル値となるので、最後に
図12Bに示すA/D変換動作時にメモリ13に保存されたデータを読出し、その差分を取って、画素信号のA/D変換値とされる。
【数38】
【0126】
第4のA/D変換方法は、2つの電圧Vaと電圧Vbを比較するとき、差動増幅器の2つの入力端の電圧はコモン電圧Vc近傍になるので、差動増幅器の入力電圧範囲を抑制することが可能となる。その結果、差動増幅器の動作電圧を下げ、A/D変換器を低電力化することができる。
【0127】
<第5のA/D変換方式>
図14A~D及び
図15A~Cは第5のA/D変換方法を示す回路図である。第5のA/D変換方法では、先ず、リセット時の共通信号線に現れる電圧V
RST1をサンプリングする。具体的には、
図14Aに示すように、第1の信号入力端IN
aにリセット時の共通信号線に現れる電圧V
RST1を印加すると共に、第2の信号入力端IN
bに基準となる参照電圧V
R01を印加し、スイッチS
1を閉じる。この動作は、
図12Aに示す第4のA/D変換方法と同じである。
【0128】
次に、リセット解除後の共通信号線に現れる電圧V
STDと、リセット時の共通信号線に現れる電圧V
RST1のマルチ変換を行う。具体的には、
図14Bに示すように、スイッチS
1を開き、第1の信号入力端IN
aにリセット解除後の共通信号線に現れる電圧V
STDを印加すると共に、第2の信号入力端IN
bに時間に比例して電圧が変化する参照電圧V
R1を印加し、差動増幅器20の2つの入力端に現れる電圧V
aと電圧V
bを比較する。
【0129】
そして、参照電圧VR1を限定された電圧範囲で複数回掃引してA/D変換し、得られた複数のA/D変換値の平均値を取り、これをA/D変換値とする。リセット解除後の電圧VSTDは、リセット電圧VRST1との差分が取られ、相関二重サンプリング(CDS)された信号を変換している。この相関二重サンプリング(CDS)された電圧は、A/D変換されてデジタル値となり、メモリ13に入力される。
【0130】
次に、信号サンプリングを行う。具体的には、一定の露光時間が経過した後、
図14Cに示すように、第1及び第2の信号入力端に、ソースフォロアを介して共通信号線に現れる蓄積容量の電圧V
SIGを印加すると共に、スイッチS
1を閉じる。この動作は、前述した第4の変換方式における
図12Cの動作と同様である。
【0131】
次に、電圧V
SIGの大きさを判定する。具体的には、
図14Dに示すように、スイッチS
1を開き、第1の信号入力端に継続して電圧V
SIGを印加すると共に、第2の信号入力端に時間にしきい値電圧V
THを印加し、差動増幅器20の2つの入力端に現れる電圧V
aと電圧V
bを比較して電圧V
SIGとしきい値電圧V
THの大きさを判定する。
【0132】
判定の結果、電圧V
SIGがしきい値電圧V
THよりも低く、弱い信号である場合は、
図15Aに示す回路によるマルチ変換に移行し、
図11Bに示すように、参照電圧V
R2はしきい値電圧V
THよりも若干広い限定された電圧範囲で複数回掃引し、得られた複数の変換値の平均値を取り、A/D変換値とする。これにより、効果的にノイズを低減できる。一方、電圧V
SIGがしきい値電圧V
THよりも高く、強い信号である場合は、
図15Aに示す回路によるシングル変換に移行し、
図11Bに示すように、参照電圧V
R2はフルスケールの電圧範囲を掃引する。いずれの動作においても、電圧V
SIGはA/D変換され、その変換値はレジスタに記憶される。
【0133】
次に、ソースフォロアを介して共通信号線に現れる蓄積容量の電圧V
RST2をサンプリングする。具体的には、
図15Bに示すように第1及び第2の信号入力端にソースフォロアを介して共通信号線に現れる蓄積容量の電圧V
RST2を印加し、スイッチS
1を閉じる。
【0134】
次に、電圧V
RST2をマルチ変換する。具体的には、
図15Cに示すように、スイッチS
1を開き、第1の信号入力端IN
aに継続して電圧V
RST2を印加すると共に、第2の信号入力端IN
bには時間に比例して電圧が変化する参照電圧V
R2を印加する。そして、限定された電圧範囲で複数回掃引し、得られた複数の変換値の平均値を取り、A/D変換値とする。これにより、効果的にノイズを低減できる。この過程で信号電圧V
RST2はA/D変換される。
【0135】
次に、この変換値とレジスタに記憶されている電圧V
SIGのA/D変換値のデジタル差分が取られ、相関二重サンプリング(CDS)されたデジタル値となるため、最後に
図14Bに示すA/D変換動作時にメモリ13に保存されたデータを読出し、その差分が取られて画素信号のA/D変換値とされる。
【0136】
第5のA/D変換方法は、前述した第4のA/D変換方法と同様に、2つの電圧Vaと電圧Vbを比較するとき、差動増幅器の2つの入力端の電圧はコモン電圧Vc近傍になるため、差動増幅器の入力電圧範囲を抑制することが可能となる。その結果、差動増幅器の動作電圧を下げて、A/D変換器を低電力化することができる。さらに、第5のA/D変換方法では、複数回A/D変換し、その平均値を取っているので、読出しノイズの低減を図ることもできる。
【0137】
ところで、参照電圧の掃引範囲やしきい値電圧の合理的な設定のためには、相関二重サンプリング(CDS)された電圧ではなく、第1のリセット電圧、第2のリセット電圧、第1のリセットを解除した直後の電圧、第2のリセット前の信号電圧を計測することが必要である。このため、本実施形態のイメージセンサは、第1のリセット電圧のA/D変換値、第2のリセット電圧のA/D変換値、第1のリセット後の電圧のA/D変換値、第2のリセット前のA/D変換値を記憶し、これを用いて参照電圧の電圧範囲又はしきい値電圧を決定することで、より高精度で高速に動作させることができる。
【0138】
以上詳述したように、本実施形態のイメージセンサは、特定行の各画素の電圧バッファー部により取り出された第1のリセット電圧と、第1のリセット解除時の電圧との差をアナログ・デジタル変換器によってデジタル値に変換し、その値を基準信号値としてメモリに記憶し、リセット解除時から一定の露光時間が経過した後で、第2のリセット動作を行い、前記電圧バッファー部により取り出された第2のリセット動作直前の電圧と前記第2のリセット時の電圧との差を、アナログ・デジタル変換器によってデジタル値に変換し、その値を蓄積信号値とし、及び前記メモリに記憶された基準信号値と前記蓄積信号値との差分値を、画素信号のアナログ・デジタル変換値として出力するため、3トランジスタ構成の画素であっても、リセットノイズやトランジスタのしきい値電圧のドリフトをキャンセルでき、ノイズの少ない高画質の画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0139】
1 イメージセンサ
10、100 画素
11、101 垂直走査回路
12、102 アナログ・デジタル(A/D)変換器
13 メモリ
14 制御部
20 差動増幅器
21 カウンター
22 累積加算器
110 光電膜