(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-01
(45)【発行日】2025-09-09
(54)【発明の名称】SiC基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 1/00 20060101AFI20250902BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20250902BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20250902BHJP
B24B 37/10 20120101ALI20250902BHJP
B24B 7/00 20060101ALI20250902BHJP
【FI】
B24B1/00 A
H01L21/304 621D
H01L21/304 611W
H01L21/304 631
B24B27/06 D
B24B37/10
B24B7/00 A
(21)【出願番号】P 2021183907
(22)【出願日】2021-11-11
【審査請求日】2024-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】小島 勝義
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-105127(JP,A)
【文献】特開2019-127415(JP,A)
【文献】特開2014-204092(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109623581(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0021919(US,A1)
【文献】特開2017-037994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 1/00 - 39/06
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にSi面を露出させ、かつ、裏面にC面を露出させるように、SiCインゴットからSiC基板を分離する分離工程と、
該分離工程の後に、該SiC基板の該表面側及び該裏面側の双方を研削する研削工程と、
該研削工程の後に、該SiC基板の該裏面側を研磨せずに該表面側のみを研磨する研磨工程と、を備え、
該研削工程は、
該SiC基板の該表面側を研削する第1の研削工程と、
該SiC基板の該裏面側を研削する第2の研削工程と、を含み、
該第2の研削工程では、該裏面の算術平均高さSaが1nm以下になるように該SiC基板の該裏面側を研削
し、
該SiC基板の該裏面側の研削は、該第2の研削工程によって完了する、SiC基板の製造方法。
【請求項2】
該第2の研削工程で用いられる研削砥石に含まれる砥粒の平均粒径は、0.3μm以下である、請求項1に記載のSiC基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiC基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ又はコンバータ等のパワーデバイスには、電流容量が大きく、かつ、耐圧が高いことが求められる。このような要求を満たすため、パワーデバイスは、SiC(炭化シリコン)基板を用いて製造されることが多い。このようなSiC基板は、一般的に、SiCインゴットから製造される。
【0003】
例えば、SiC基板は、表面にSi面を露出させ、かつ、裏面にC面を露出させるように、ワイヤーソー等を用いてSiCインゴットから切り出される。なお、Si面は、Siで終端された面であり、ミラー指数を用いて(0001)面と表現される。また、C面は、Cで終端された面であり、ミラー指数を用いて(000-1)面と表現される。
【0004】
また、SiC基板においては、C面におけるSiC薄膜のエピタキシャル成長よりもSi面におけるSiC薄膜のエピタキシャル成長の方が容易である。そのため、このSiC基板を用いてパワーデバイスを製造する際には、一般的に、Si面が露出する表面側にパワーデバイスが形成される。
【0005】
ただし、SiCインゴットからSiC基板を切り出すと、その表面及び裏面が粗くなりやすい(表面及び裏面に大きな凹凸が形成されやすい)。そして、SiC基板の表面が粗いと、この表面にSiC薄膜をエピタキシャル成長させることが困難である。そのため、SiC基板を用いてパワーデバイスを製造する際には、SiC基板の表面を平坦化(鏡面化)する必要がある。
【0006】
また、SiC基板の表面のみを平坦化すると、表面の粗さと裏面の粗さとの違いに起因してSiC基板の反りが大きくなることがある。そのため、パワーデバイスの製造に用いられるSiC基板は、その表面側及び裏面側の双方が研削されて両面の粗さが緩和された後に、表面側及び裏面側の双方が研磨されて両面を平坦化することによって製造される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
SiC基板のSi面が露出する表面側のみにパワーデバイスが形成される場合、SiC基板のC面が露出する裏面の平坦化は、パワーデバイスの性能に直接的には影響しない。他方、SiC基板の表面側のみならず裏面側に対して研磨を行うと、SiC基板の製造リードタイムが長くなり、また、製造コストも大きくなる。
【0009】
この点に鑑み、本発明の目的は、SiC基板の製造リードタイムを短縮し、かつ、製造コストを低減することが可能なSiC基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、表面にSi面を露出させ、かつ、裏面にC面を露出させるように、SiCインゴットからSiC基板を分離する分離工程と、該分離工程の後に、該SiC基板の該表面側及び該裏面側の双方を研削する研削工程と、該研削工程の後に、該SiC基板の該裏面側を研磨せずに該表面側のみを研磨する研磨工程と、を備え、該研削工程は、該SiC基板の該表面側を研削する第1の研削工程と、該SiC基板の該裏面側を研削する第2の研削工程と、を含み、該第2の研削工程では、該裏面の算術平均高さSaが1nm以下になるように該SiC基板の該裏面側を研削し、該SiC基板の該裏面側の研削は、該第2の研削工程によって完了する、SiC基板の製造方法が提供される。
【0011】
好ましくは、該第2の研削工程で用いられる研削砥石に含まれる砥粒の平均粒径は、0.3μm以下である。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、Si面が露出する表面側を研削するとともにC面が露出する裏面の算術平均高さSaが1nm以下になるように裏面側を研削した後、裏面側を研磨せずに表面側のみを研磨する。このように裏面側が研削される場合、さらにSiC基板の裏面側を研磨しなくてもSiC基板の反りを抑制することができる。そのため、本発明においては、パワーデバイスの製造等に用いられるSiC基板の製造リードタイムを短縮し、かつ、製造コストを低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、SiC基板の製造方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、SiCインゴットから分離されたSiC基板の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、加工装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4(A)は、SiC基板の表面側が研削される様子を模式的に示す側面図であり、
図4(B)は、SiC基板の裏面側が研削される様子を模式的に示す側面図である。
【
図5】
図5は、SiC基板の表面側が研磨される様子を模式的に示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、SiC基板の製造方法の一例を模式的に示すフローチャートである。この方法においては、まず、表面にSi面を露出させ、かつ、裏面にC面を露出させるように、SiCインゴットからSiC基板を分離する(分離工程:S1)。
図2は、SiCインゴットから分離されたSiC基板の一例を模式的に示す斜視図である。
【0015】
図2に示されるSiC基板11は、その表面11aにSi面が露出し、かつ、その裏面11bにC面が露出するように円柱状のSiCインゴットから分離される。この分離工程(S1)は、例えば、ダイヤモンドワイヤーソー等のワイヤーソーを用いてSiCインゴットからSiC基板11を切り出すことによって行われる。
【0016】
あるいは、分離工程(S1)は、SiCを透過する波長(例えば、1064nm)のレーザービームを用いてSiCインゴットからSiC基板11を剥離することによって行われてもよい。この場合には、まず、レーザービームの集光点をSiCインゴットの表面から所定の深さ(剥離されるSiC基板11の厚さに対応する深さ)に位置付けた状態でSiCインゴットにレーザービームを照射する。
【0017】
これにより、SiCインゴットの内部に剥離層が形成される。そして、このSiCインゴットに外力を加える。その結果、この剥離層を分離起点としてSiCインゴットが分離する。すなわち、SiCインゴットからSiC基板11が剥離される。
【0018】
次いで、SiC基板11の表面11a側及び裏面11b側の双方を研削した後(研削工程:S2)、SiC基板11の裏面11b側を研磨せずに表面11a側のみを研磨する(研磨工程:S3)。
図3は、SiC基板11の研削及び研磨が可能な加工装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【0019】
なお、
図3に示されるX軸方向(前後方向)及びY軸方向(左右方向)は、水平面上において互いに垂直な方向であり、また、Z軸方向(上下方向)は、X軸方向及びY軸方向に垂直な方向(鉛直方向)である。
【0020】
図3に示される加工装置2は、各構造を支持する基台4を備える。基台4の上面前側には開口4aが形成されており、この開口4a内にはSiC基板を吸引して保持した状態で搬送する搬送機構6が設けられている。さらに、搬送機構6は、SiC基板11を保持した状態でSiC基板11の上下を反転させることもできる。
【0021】
また、開口4aの前方には、カセットテーブル8a、8bが設けられている。このカセットテーブル8a、8bには、複数のSiC基板11を収容できるカセット10a、10bがそれぞれ載せられている。また、開口4aの斜め後方には、SiC基板11の位置を調整するための位置調整機構12が設けられている。
【0022】
この位置調整機構12は、例えば、SiC基板11の中央の部分を支持できるように構成されたテーブル12aと、テーブル12aよりも外側の領域でこのテーブル12aに対して接近及び離隔できるように構成された複数のピン12bとを備える。このテーブル12aには、例えば、搬送機構6によってカセット10aから搬出されたSiC基板11が搬入される。
【0023】
そして、位置調整機構12においては、テーブル12aに搬入されたSiC基板11の位置合わせが行われる。具体的には、テーブル12aに搬入されたSiC基板11の側面に接触するまで複数のピン12bをテーブル12aに接近させることによって、X軸方向及びY軸方向に平行な面(XY平面)において、SiC基板11の中心の位置が所定の位置に合わせられる。
【0024】
また、位置調整機構12の近傍には、SiC基板11を吸引して保持した状態で旋回して搬送する搬送機構14が設けられている。この搬送機構14は、SiC基板11の上面側を吸引できる吸引パッドを備え、位置調整機構12で位置が調整されたSiC基板11を後方に搬送する。また、搬送機構14の後方には、円盤状のターンテーブル16が設けられている。
【0025】
このターンテーブル16は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、ターンテーブル16の中心を通り、かつ、Z軸方向に平行な直線を回転軸として回転する。また、ターンテーブル16の上面には、複数(例えば、4個)のチャックテーブル18がターンテーブル16の周方向に沿って概ね等間隔に設けられている。
【0026】
そして、搬送機構14は、SiC基板11を位置調整機構12のテーブル12aから搬出して搬送機構14の近傍の搬入搬出位置に配置されたチャックテーブル18へと搬入する。ターンテーブル16は、例えば、
図3に示される矢印の方向に回転し、各チャックテーブル18を、搬入搬出位置、粗研削位置、仕上げ研削位置及び研磨位置の順に移動させる。
【0027】
さらに、チャックテーブル18は、真空ポンプ等の吸引源(不図示)に連結されており、チャックテーブル18の上面に置かれたSiC基板11に吸引力を作用させて保持できる。また、チャックテーブル18は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、この回転駆動源の動力によって、チャックテーブル18の中心を通り、かつ、Z軸方向に平行な直線を回転軸として回転できる。
【0028】
粗研削位置及び仕上げ研削位置のそれぞれの後方(ターンテーブル16の後方)には、柱状の支持構造20が設けられている。また、支持構造20の前面(ターンテーブル16側の面)には、Z軸移動機構22が設けられている。このZ軸移動機構22は、支持構造20の前面に固定され、かつ、Z軸方向に沿って延在する一対のガイドレール24を有する。
【0029】
また、一対のガイドレール24の前面側には、一対のガイドレール24に沿ってスライド可能な態様で移動プレート26が連結されている。また、一対のガイドレール24の間には、Z軸方向に沿って延在するねじ軸28が配置されている。このねじ軸28の上端部には、ねじ軸28を回転させるためのモータ30が連結されている。
【0030】
そして、ねじ軸28の螺旋状の溝が形成された表面には、回転するねじ軸28の表面を転がるボールを収容するナット部(不図示)が設けられ、ボールねじが構成されている。すなわち、ねじ軸28が回転すると、ボールがナット部内を循環して、ナット部がZ軸方向に沿って移動する。
【0031】
また、このナット部は、移動プレート26の後面(裏面)側に固定されている。そのため、モータ30でねじ軸28を回転させれば、ナット部とともに移動プレート26がZ軸方向に沿って移動する。さらに、移動プレート26の表面(前面)には、固定具32が設けられている。
【0032】
この固定具32は、SiC基板11を研削するための研削ユニット34を支持する。研削ユニット34は、固定具32に固定されるスピンドルハウジング36を備える。このスピンドルハウジング36には、Z軸方向に沿って延在するスピンドル38が回転可能な態様で収容されている。
【0033】
そして、スピンドル38の上端部には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、スピンドル38は、この回転駆動源の動力によって、Z軸方向に平行な直線を回転軸として回転できる。また、スピンドル38の下端部は、スピンドルハウジング36の下面から露出し、この下端部には、円盤状のマウント40が固定されている。
【0034】
粗研削位置側の研削ユニット34のマウント40の下面には、粗研削用の研削ホイール42aが装着されている。この粗研削用の研削ホイール42aは、マウント40と概ね同径の円盤状のホイール基台を有する。そして、このホイール基台の下面には、それぞれが直方体状の複数の研削砥石(粗研削用研削砥石)が固定されている。
【0035】
同様に、仕上げ研削位置側の研削ユニット34のマウント40の下面には、仕上げ研削用の研削ホイール42bが装着されている。この仕上げ研削用の研削ホイール42bは、マウント40と概ね同径の円盤状のホイール基台を有する。そして、このホイール基台の下面には、それぞれが直方体状の複数の研削砥石(仕上げ研削用研削砥石)が固定されている。
【0036】
そして、粗研削用研削砥石及び仕上げ研削用研削砥石のそれぞれは、例えば、ダイヤモンド又はcBN(cubic Boron Nitride)等からなる砥粒と、この砥粒を保持する結合材とを含む。また、この結合材としては、例えば、メタルボンド、レジンボンド又はビトリファイドボンド等が用いられる。
【0037】
なお、仕上げ研削用研削砥石に含まれる砥粒の平均粒径は、一般的に、粗研削用研削砥石に含まれる砥粒の平均粒径よりも小さい。例えば、粗研削用研削砥石に含まれる砥粒の平均粒径は、0.5μm以上30μm以下であり、仕上げ研削用研削砥石に含まれる砥粒の平均粒径は、0.5μm未満である。
【0038】
さらに、研削ホイール42a,42bの近傍には、SiC基板11を研削する際の加工点に純水等の液体(研削液)を供給するための液体供給ノズル(不図示)が配置されている。あるいは、このノズルに換えて又は加えて、液体を供給するための開口が研削ホイール42a,42bに設けられ、この開口を介して加工点に研削液が供給されてもよい。
【0039】
また、研磨領域の側方(ターンテーブル16の側方)には、支持構造44が設けられている。そして、支持構造44のターンテーブル16側の側面には、X軸移動機構46が設けられている。このX軸移動機構46は、支持構造44のターンテーブル16側の側面に固定され、かつ、X軸方向に沿って延在する一対のガイドレール48を有する。
【0040】
また、一対のガイドレール48のターンテーブル16側には、一対のガイドレール48に沿ってスライド可能な態様で移動プレート50が連結されている。また、一対のガイドレール48の間には、X軸方向に沿って延在するねじ軸52が配置されている。このねじ軸52の前端部には、ねじ軸52を回転させるためのモータ54が連結されている。
【0041】
そして、ねじ軸52の螺旋状の溝が形成された表面には、回転するねじ軸52の表面を転がるボールを収容するナット部(不図示)が設けられ、ボールねじが構成されている。すなわち、ねじ軸52が回転すると、ボールがナット部内を循環して、ナット部がX軸方向に沿って移動する。
【0042】
また、このナット部は、移動プレート50の支持構造44と対向する面(裏面)側に固定されている。そのため、モータ54でねじ軸52を回転させれば、ナット部とともに移動プレート50がX軸方向に沿って移動する。さらに、移動プレート50のターンテーブル16側の面(表面)には、Z軸移動機構56が設けられている。
【0043】
このZ軸移動機構56は、移動プレート50の表面に固定され、かつ、Z軸方向に沿って延在する一対のガイドレール58を有する。また、一対のガイドレール58のターンテーブル16側には、一対のガイドレール58に沿ってスライド可能な態様で移動プレート60が連結されている。
【0044】
また、一対のガイドレール58の間には、Z軸方向に沿って延在するねじ軸62が配置されている。このねじ軸62の上端部には、ねじ軸62を回転させるためのモータ64が連結されている。そして、ねじ軸62の螺旋状の溝が形成された表面には、回転するねじ軸62の表面を転がるボールを収容するナット部(不図示)が設けられ、ボールねじが構成されている。
【0045】
すなわち、ねじ軸62が回転すると、ボールがナット部内を循環して、ナット部がZ軸方向に沿って移動する。また、このナット部は、移動プレート60の移動プレート50と対向する面(裏面)側に固定されている。そのため、モータ64でねじ軸62を回転させれば、ナット部とともに移動プレート60がZ軸方向に沿って移動する。
【0046】
さらに、移動プレート60のターンテーブル16側の面(表面)には、固定具66が設けられている。この固定具66は、SiC基板11を研磨するための研磨ユニット68を支持する。研磨ユニット68は、固定具66に固定されるスピンドルハウジング70を備える。
【0047】
このスピンドルハウジング70には、Z軸方向に沿って延在するスピンドル72が回転可能な態様で収容されている。そして、スピンドル72の上端部には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、スピンドル72は、この回転駆動源の動力によって回転する。
【0048】
また、スピンドル72の下端部は、スピンドルハウジング70の下面から露出し、この下端部には、円盤状のマウント74が固定されている。マウント74の下面には、円盤状の研磨パッド76が装着されている。この研磨パッド76は、マウント74と概ね同径の円盤状の基台を有する。
【0049】
そして、この基台の下面には、マウント74と概ね同径の円盤状の研磨層が固定されている。この研磨層は、内部に砥粒が分散された固定砥粒層である。例えば、研磨層は、ポリエステル製の不織布に平均粒径が0.4μm~0.6μmの砥粒が分散されたウレタン溶液を含侵させた後、乾燥させることで製造される。
【0050】
なお、研磨層の内部に分散される砥粒は、SiC、cBN、ダイヤモンド又は金属酸化物微粒子等の材料からなる。また、この金属酸化物微粒子としては、SiO2(シリカ)、CeO2(セリア)、ZrO2(ジルコニア)又はAl2O3(アルミナ)等からなる微粒子が用いられる。また、研磨層は、柔軟であり、SiC基板11を研磨する際に加わる圧力に応じて僅かに撓む。
【0051】
さらに、スピンドル72、マウント74並びに研磨パッド76の基台及び研磨層の径方向の中心位置は、概ね一致しており、これらの中心位置を貫通するように、円柱状の貫通孔が形成されている。そして、この貫通孔は、SiC基板11を研磨する際の加工点に純水等の液体(研磨液)を供給する研磨液供給源(不図示)に連通している。
【0052】
この研磨液供給源は、研磨液の貯留槽及び送液ポンプ等を有する。また、研磨液供給源は、スピンドル72等に形成された貫通孔を介して、研磨位置に位置付けられたチャックテーブル18に向けて研磨液を供給する。なお、研磨液には、砥粒が含有されてもよいし、されなくてもよい。
【0053】
また、搬送機構14の側方には、SiC基板11を吸引して保持した状態で旋回して搬送する搬送機構78が設けられている。この搬送機構78は、SiC基板11の上面側を吸引できる吸引パッドを備え、搬入搬出位置に位置付けられたチャックテーブル18に載せられたSiC基板11を前方に搬送する。
【0054】
また、搬送機構78の前方、かつ、開口4aの後方側には、搬送機構78によって搬出されたSiC基板11の上面側を洗浄できるように構成された洗浄機構80が配置されている。また、この洗浄機構80で洗浄されたSiC基板11は、搬送機構6によって搬送され、例えば、カセット10bに収容される。
【0055】
加工装置2においては、例えば、以下の順序で研削工程(S2)及び研磨工程(S3)が行われる。まず、カセット10aに収容されたSiC基板11の表面側を吸引した状態で、搬送機構6がSiC基板11をカセット10aから搬出して表面11aが上になるように位置調整機構12のテーブル12aにSiC基板11を搬入する。次いで、複数のピン12bをSiC基板11に接触させることによってSiC基板11の位置合わせが行われる。
【0056】
次いで、位置合わせが行われたSiC基板11の表面11a側を吸引した状態で、搬送機構14がSiC基板11をテーブル12aから搬出して表面11aが上になるように搬入搬出位置に配置されたチャックテーブル18に搬入する。次いで、SiC基板11が搬入されたチャックテーブル18がSiC基板11の裏面(下面)11b側を吸引して保持する。次いで、
図4(A)に示されるように、SiC基板11の表面11a側が研削される。
【0057】
具体的には、まず、SiC基板11を保持するチャックテーブル18が粗研削位置に位置付けられるように、ターンテーブル16が回転する。次いで、チャックテーブル18と粗研削位置側の研削ユニット34のスピンドル38との双方を回転させながら、研削ホイール42aの研削砥石とSiC基板11の表面(上面)11aとを接触させるように、粗研削位置側の研削ユニット34をZ軸移動機構22が下降させる。
【0058】
これにより、SiC基板11の表面11a側が粗研削される。この時、研削ホイール42aの研削砥石とSiC基板11の表面11aとの接触界面(加工点)には研削液が供給される。また、この時のチャックテーブル18及びスピンドル38のそれぞれの回転速度は、例えば、1000rpm以上5000rpm以下である。また、研削ホイール42aの研削砥石とSiC基板11の表面11aとが接触した状態における研削ユニット34の下降速度は、例えば、1μm/sec以上10μm/sec以下である。
【0059】
次いで、研削ホイール42aの研削砥石とSiC基板11の表面(上面)11aとが離隔するように、粗研削位置側の研削ユニット34をZ軸移動機構22が上昇させる。次いで、チャックテーブル18と粗研削位置側の研削ユニット34のスピンドル38との双方の回転を停止させる。次いで、SiC基板11を保持するチャックテーブル18が仕上げ研削位置に位置付けられるように、ターンテーブル16が回転する。
【0060】
次いで、チャックテーブル18と仕上げ研削位置側の研削ユニット34のスピンドル38との双方を回転させながら、研削ホイール42bの研削砥石とSiC基板11の表面(上面)11aとを接触させるように、仕上げ研削位置側の研削ユニット34をZ軸移動機構22が下降させる。
【0061】
これにより、SiC基板11の表面11a側が仕上げ研削される。この時、研削ホイール42bの研削砥石とSiC基板11の表面11aとの接触界面(加工点)には研削液が供給される。また、この時のチャックテーブル18及びスピンドル38のそれぞれの回転速度は、例えば、1000rpm以上5000rpm以下である。また、研削ホイール42bの研削砥石とSiC基板11の表面11aとが接触した状態における研削ユニット34の下降速度は、例えば、1μm/sec未満である。
【0062】
次いで、研削ホイール42bの研削砥石とSiC基板11の表面(上面)11aとが離隔するように、仕上げ研削位置側の研削ユニット34をZ軸移動機構22が上昇させる。次いで、チャックテーブル18と仕上げ研削位置側の研削ユニット34のスピンドル38との双方の回転を停止させる。以上によって、SiC基板11の表面11a側の研削(第1の研削工程)が完了する。
【0063】
次いで、SiC基板11を保持するチャックテーブル18が研磨位置を通過して搬入搬出位置に位置付けられるように、ターンテーブル16が回転する。次いで、搬入搬出位置に位置付けられたチャックテーブル18がSiC基板11の裏面(下面)11b側の吸引を停止する。
【0064】
次いで、このチャックテーブル18に載せられたSiC基板11の表面(上面)11a側を吸引した状態で、搬送機構78がSiC基板11をチャックテーブル18から搬出して表面が上になるように洗浄機構80に搬入する。次いで、洗浄機構80がSiC基板11の表面11a側を洗浄する。
【0065】
次いで、SiC基板11の裏面11b側を吸引した状態で、搬送機構6がSiC基板11を洗浄機構80から搬出して裏面11bが上になるように位置調整機構12のテーブル12aに搬入する。次いで、複数のピン12bをSiC基板11に接触させることによってSiC基板11の位置合わせが行われる。
【0066】
次いで、位置合わせが行われたSiC基板11の裏面11b側を吸引した状態で、搬送機構14がSiC基板11をテーブル12aから搬出して裏面11bが上になるように搬入搬出位置に配置されたチャックテーブル18に搬入する。次いで、SiC基板11が搬入されたチャックテーブル18がSiC基板11の表面(下面)11a側を吸引して保持する。次いで、
図4(B)に示されるように、SiC基板11の裏面11b側が研削される。
【0067】
具体的には、まず、SiC基板11を保持するチャックテーブル18が粗研削位置に位置付けられるように、ターンテーブル16が回転する。次いで、チャックテーブル18と粗研削位置側の研削ユニット34のスピンドル38との双方を回転させながら、研削ホイール42aの研削砥石とSiC基板11の裏面(上面)11bとを接触させるように、粗研削位置側の研削ユニット34をZ軸移動機構22が下降させる。
【0068】
これにより、SiC基板11の裏面11b側が粗研削される。この時、研削ホイール42aの研削砥石とSiC基板11の裏面11bとの接触界面(加工点)には研削液が供給される。また、この時のチャックテーブル18及びスピンドル38のそれぞれの回転速度は、例えば、1000rpm以上5000rpm以下である。また、研削ホイール42aの研削砥石とSiC基板11の裏面11bとが接触した状態における研削ユニット34の下降速度は、例えば、1μm/sec以上10μm/sec以下である。
【0069】
また、この時の研削ホイール42aは、SiC基板11の表面11a側を粗研削する際に用いられたものと同じであってもよいし、異なるものに取り換えられていてもよい。すなわち、SiC基板11の裏面11b側の粗研削に用いられる研削砥石は、SiC基板11の表面11a側の粗研削に用いられる研削砥石と同じであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0070】
次いで、研削ホイール42aの研削砥石とSiC基板11の裏面(上面)11bとが離隔するように、粗研削位置側の研削ユニット34をZ軸移動機構22が上昇させる。次いで、チャックテーブル18と粗研削位置側の研削ユニット34のスピンドル38との双方の回転を停止させる。次いで、SiC基板11を保持するチャックテーブル18が仕上げ研削位置に位置付けられるように、ターンテーブル16が回転する。
【0071】
次いで、チャックテーブル18と粗研削位置側の研削ユニット34のスピンドル38との双方を回転させながら、研削ホイール42bの研削砥石とSiC基板11の裏面(上面)11bとを接触させるように、仕上げ研削位置側の研削ユニット34をZ軸移動機構22が下降させる。
【0072】
これにより、SiC基板11の裏面11b側が仕上げ研削される。この時、研削ホイール42bの研削砥石とSiC基板11の裏面11bとの接触界面(加工点)には研削液が供給される。また、この時のチャックテーブル18及びスピンドル38のそれぞれの回転速度は、例えば、1000rpm以上5000rpm以下である。また、研削ホイール42bの研削砥石とSiC基板11の裏面11bとが接触した状態における研削ユニット34の下降速度は、例えば、1μm/sec未満である。
【0073】
また、この時の研削ホイール42bは、SiC基板11の表面11a側を仕上げ研削する際に用いられたものと同じであってもよいし、異なるものに取り換えられていてもよい。すなわち、SiC基板11の裏面11b側の仕上げ研削に用いられる研削砥石は、SiC基板11の表面11a側の仕上げ研削に用いられる研削砥石と同じであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0074】
また、SiC基板11の裏面11b側の研削は、仕上げ研削後の裏面の算術平均高さSaが1nm以下になるように行われる。なお、算術平均高さSaは、ISO25178で規定された面粗さを示すパラメータであり、線粗さを示すパラメータである算術平均高さRaを面に拡張したパラメータである。
【0075】
次いで、研削ホイール42bの研削砥石とSiC基板11の裏面(上面)11bとが離隔するように、仕上げ研削位置側の研削ユニット34をZ軸移動機構22が上昇させる。次いで、チャックテーブル18と仕上げ研削位置側の研削ユニット34のスピンドル38との双方の回転を停止させる。以上によって、SiC基板11の裏面11b側の研削(第2の研削工程)が完了する。
【0076】
次いで、SiC基板11を保持するチャックテーブル18が研磨位置を通過して搬入搬出位置に位置付けられるように、ターンテーブル16が回転する。次いで、搬入搬出位置に位置付けられたチャックテーブル18がSiC基板11の表面(下面)11a側の吸引を停止する。
【0077】
次いで、このチャックテーブル18に載せられたSiC基板11の裏面(上面)11b側を吸引した状態で、搬送機構78がSiC基板11をチャックテーブル18から搬出して裏面11bが上になるように洗浄機構80に搬入する。次いで、洗浄機構80がSiC基板11の裏面11b側を洗浄する。
【0078】
次いで、SiC基板11の表面11a側を吸引した状態で、搬送機構6がSiC基板11を洗浄機構80から搬出して表面11aが上になるように位置調整機構12のテーブル12aに搬入する。次いで、複数のピン12bをSiC基板11に接触させることによってSiC基板11の位置合わせが行われる。
【0079】
次いで、位置合わせが行われたSiC基板11の表面11a側を吸引した状態で、搬送機構14がSiC基板11をテーブル12aから搬出して表面11aが上になるように搬入搬出位置に配置されたチャックテーブル18に搬入する。次いで、SiC基板11が搬入されたチャックテーブル18がSiC基板11の裏面(下面)11b側を吸引して保持する。次いで、
図5に示されるように、SiC基板11の表面11a側が研磨される。
【0080】
具体的には、まず、SiC基板11を保持するチャックテーブル18が粗研削位置及び仕上げ研削位置を通過して研磨位置に位置付けられるように、ターンテーブル16が回転する。次いで、チャックテーブル18と研磨ユニット68のスピンドル72との双方を回転させながら、研磨パッド76の研磨層とSiC基板11の表面(上面)11aとを接触させるように、研磨ユニット68をZ軸移動機構56が下降させる。
【0081】
これにより、SiC基板11の表面11aが研磨される。この時、スピンドル72、マウント74並びに研磨パッド76を貫通する貫通孔82を介して研磨液供給源からSiC基板11の表面(上面)11aに研磨液13が供給される。
【0082】
なお、この時のチャックテーブル18の回転速度は、例えば、300rpm以上750rpm以下である。また、この時のスピンドル72の回転速度は、例えば、300rpm以上1000rpm以下である。また、この時にSiC基板11の表面11aに加わる圧力は、例えば、200g/cm2以上750g/cm2以下である。
【0083】
次いで、研磨パッド76の研磨層とSiC基板11の表面(上面)11aとが離隔するように、研磨ユニット68をZ軸移動機構56が上昇させる。次いで、チャックテーブル18とスピンドル72との双方の回転を停止させる。以上によって、SiC基板11の表面11a側の研磨が完了する。
【0084】
次いで、SiC基板11を保持するチャックテーブル18が搬入搬出位置に位置付けられるように、ターンテーブル16が回転する。次いで、搬入搬出位置に位置付けられたチャックテーブル18がSiC基板11の裏面(下面)側の吸引を停止する。
【0085】
次いで、このチャックテーブル18に載せられたSiC基板11の表面(上面)11a側を吸引した状態で、搬送機構78がSiC基板11をチャックテーブル18から搬出して表面11aが上になるように洗浄機構80に搬入する。次いで、洗浄機構80がSiC基板の表面11a側を洗浄する。
【0086】
次いで、SiC基板11の表面側又は裏面側を吸引した状態で、搬送機構6がSiC基板11をカセット10bに搬入する。以上によって、加工装置2における研削工程(S2)及び研磨工程(S3)が完了する。
【0087】
上述したSiC基板の製造方法においては、Si面が露出する表面11a側を研削するとともにC面が露出する裏面11bの算術平均高さSaが1nm以下になるように裏面11b側を研削した後、裏面11b側を研磨せずに表面11a側のみを研磨する。
【0088】
このように裏面11b側が研削される場合、さらにSiC基板11の裏面11b側を研磨しなくてもSiC基板11の反りを抑制することができる。そのため、この方法においては、パワーデバイスの製造等に用いられるSiC基板11の製造リードタイムを短縮し、かつ、製造コストを低減することが可能である。
【0089】
なお、上述した方法は本発明の一態様であって、本発明は上述した方法に限定されない。例えば、上述したSiC基板の製造方法の研削工程(S2)においては、表面11a側が研削された後に裏面11b側が研削されていたが、本発明の研削工程(S2)においては、裏面11b側が研削された後に表面11a側が研削されてもよい。
【0090】
この場合、SiC基板11の表面11a側を研削した後に、チャックテーブル18に保持されるSiC基板11を反転させることなく、SiC基板11の表面11aを研磨することができる。そのため、この場合には、パワーデバイスの製造等に用いられるSiC基板11の製造リードタイムをさらに短縮し、かつ、製造コストをさらに低減することが可能である。
【0091】
その他、上述した実施形態にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【実施例】
【0092】
以下では、本発明のSiC基板の製造方法の実施例について説明する。まず、直径が6インチの円柱状のSiCインゴットを用意した。次いで、表面にSi面を露出し、かつ、裏面にC面を露出させるとともに厚さが500μm~600μmになるように、ダイヤモンドワイヤーソーを用いてSiCインゴットから3つのSiC基板を切り出した。次いで、3つのSiC基板のうちの1つの表面側及び裏面側の双方に対して、同じ条件で粗研削及び仕上げ研削を行った。
【0093】
具体的には、この粗研削は、平均粒径が14μmのダイヤモンドからなる砥粒と砥粒を保持するビトリファイドボンドとを含む研削砥石を有する研削ホイールを用いて行われた。さらに、この粗研削においては、この研削ホイールとSiC基板を保持するチャックテーブルとの双方の回転速度を2000rpmとし、かつ、この研削砥石とSiC基板の表面又は裏面とが接触した状態における研削ユニットの下降速度を3μm/secとした。
【0094】
また、この仕上げ研削は、平均粒径が0.2μmのダイヤモンドからなる砥粒と砥粒を保持するビトリファイドボンドとを含む研削砥石を有する研削ホイールを用いて行った。さらに、この仕上げ研削においては、この研削ホイールとSiC基板を保持するチャックテーブルとの双方の回転速度を3000rpmとし、かつ、この研削砥石とSiC基板11の表面11a又は裏面11bとが接触した状態における研削ユニットの下降速度を0.15μm/secとした。これにより、実施例1のSiC基板を得た。
【0095】
次いで、3つのSiC基板のうちの他の1つの両面側に対して、仕上げ研削に用いられた研削ホイールが有する研削砥石に含まれる砥粒の平均砥粒が異なる点を除いて、実施例1のSiC基板と同じ条件で粗研削及び仕上げ研削を行った。具体的には、この仕上げ研削は、0.3μmのダイヤモンドからなる砥粒と砥粒を保持するビトリファイドボンドとを含む研削砥石を有する研削ホイールを用いて行った。これにより、実施例2のSiC基板を得た。
【0096】
次いで、3つのSiC基板のうちの残りの1つの両面側に対して、仕上げ研削に用いられた研削ホイールが有する研削砥石に含まれる砥粒の平均砥粒が異なる点を除いて、実施例1及び2のSiC基板と同じ条件で粗研削及び仕上げ研削を行った。具体的には、この仕上げ研削は、0.5μmのダイヤモンドからなる砥粒と砥粒を保持するビトリファイドボンドとを含む研削砥石を有する研削ホイールを用いて行った。これにより、比較例のSiC基板を得た。
【0097】
下記の表1は、実施例1及び2並びに比較例のそれぞれのSiC基板の両面側に対して仕上げ研削が行われた後の裏面の算術平均高さSaを示す。
【表1】
【0098】
次いで、実施例1及び2並びに比較例のそれぞれのSiC基板の裏面側に対する研磨を行わずに表面側のみに対する研磨を行った。具体的には、この研磨は、粒径が0.4μm~0.6μmのシリカ(SiO2)からなる砥粒が不織布に分散された研磨層を含む研磨パッドを用いて行った。さらに、この研磨においては、この研磨パッドの回転速度を745rpmとし、かつ、SiC基板を保持するチャックテーブルの回転速度を750rpmとするとともに、SiC基板の表面に加わる圧力を400g/cm2とした。
【0099】
下記の表2は、実施例1及び2並びに比較例のそれぞれのSiC基板の裏面側に対する研磨を行わずに表面側のみに対する研磨を行った後のSiC基板の反り量を示す。
【表2】
【0100】
表1及び表2に示されるように、SiC基板のSi面が露出する表面側を研削するとともにC面が露出する裏面の算術平均高さSaが1nm以下になるように裏面側を研削することによって、SiC基板の裏面側に対する研磨を行わずに表面側のみに対する研磨を行った場合であってもSiC基板の反り量を低減することができることが分かった。
【符号の説明】
【0101】
11 :SiC基板(11a:表面、11b:裏面)
13 :研磨液
2 :加工装置
4 :基台(4a:開口)
6 :搬送機構
8a,8b:カセットテーブル
10a,10b:カセット
12 :位置調整機構(12a:テーブル、12b:ピン)
14 :搬送機構
16 :ターンテーブル
18 :チャックテーブル
20 :支持構造
22 :Z軸移動機構
24 :ガイドレール
26 :移動プレート
28 :ねじ軸
30 :モータ
32 :固定具
34 :研削ユニット
36 :スピンドルハウジング
38 :スピンドル
40 :マウント
42a,42b:研削ホイール
44 :支持構造
46 :X軸移動機構
48 :ガイドレール
50 :移動プレート
52 :ねじ軸
54 :モータ
56 :Z軸移動機構
58 :ガイドレール
60 :移動プレート
62 :ねじ軸
64 :モータ
66 :固定具
68 :研磨ユニット
70 :スピンドルハウジング
72 :スピンドル
74 :マウント
76 :研磨パッド
78 :搬送機構
80 :洗浄機構
82 :貫通孔