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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-02
(45)【発行日】2025-09-10
(54)【発明の名称】リザーブタンク
(51)【国際特許分類】
   B65D 51/16 20060101AFI20250903BHJP
   F01P 11/00 20060101ALI20250903BHJP
   F01P 11/02 20060101ALI20250903BHJP
【FI】
B65D51/16 100
F01P11/00 C
F01P11/02 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019036685
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020138781
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-12-28
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126398
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】谷口 友啓
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 満廣
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 彰彦
【合議体】
【審判長】田口 傑
【審判官】岩谷 一臣
【審判官】藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-246342号公報(JP,A)
【文献】特開2003-237813号公報(JP,A)
【文献】特開平7-91252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D51/16
F01P11/00ー11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク本体に形成された口部にキャップが取り付けられたリザーブタンクであって、
前記キャップは、中央を貫通する接続パイプと、前記タンク本体の内部と外部とを連通するオーバフロー通路を備えており、
前記タンク本体と前記キャップの間にはパッキンが介在され、
前記パッキンには前記接続パイプに嵌合する嵌合孔及びこれに連なる空気孔が形成されており、前記空気孔は前記パッキンの前記オーバフロー通路の開口と対向しない位置に形成され、
前記キャップの前記パッキンと対向する面にパッキンの外周近傍と接する外側環状リブが形成され、当該外側環状リブとタンク本体の口部の先端面の間にパッキンの外周部分が挟み込まれ、
パッキンの内周部分は、内側環状リブとインナホースの間に挟みこまれた状態で支持され、
前記外側環状リブ及び内側環状リブによって囲まれた領域内において、前記パッキンとキャップの間に隙間が形成されるとともに、前記パッキンが当該領域内で変形可能とされ、
前記外側環状リブ及び内側環状リブによって囲まれた領域内において、前記キャップの前記パッキンと対向する面に前記パッキンの変形を抑制する点状の突起が周方向に不連続に形成されていることを特徴とするリザーブタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部と外部とを連通する通路を備えたタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば水冷式内燃機関を有する車両では、ラジエータより溢れ出た冷却水を貯留するリザーブタンクが設置されている。リザーブタンクには、注水口を塞ぐキャップが取り付けられるとともに、リザーブタンク内を大気に開放するためのオーバフロー通路が設けられている。このオーバフロー通路は、前記キャップを貫通する形で形成されるのが一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されるリザーブタンクにおいては、溝状に窪んだオーバフロー通路がキャップの内面より外周縁まで形成されており、オーバーフロー通路の外部への開口部は、キャップを注水口を塞ぐように取り付けた際に、注水口の外側で下向きに開口することになる。したがって、特許文献1記載のリザーブタンクでは、タンク本体よりオーバフロー通路を通って溢れ出た加熱水および蒸気は、地面方向へ排出されることになり、オーバフロー通路から排出された加熱水や蒸気が乗員に降りかかることがなく、安全性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-91252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、リザーブタンクの注水口にキャップを取り付ける際には、間にパッキンを介在させ、気密性を確保する必要がある。前記特許文献1記載のリザーブタンクでも、注水口とキャップの間にゴム製のパッキンを挿入している。
【0006】
この時、オーバフロー通路によりリザーブタンク内を大気に開放するためには、パッキンにも開口部を形成しておく必要があり、特許文献1記載のリザーブタンクでも、オーバーフロー通路の開口に対向してパッキンにも開口部(連通穴)が形成されている。
【0007】
ただし、このようにオーバーフロー通路の開口に対向してパッキンに開口部を形成した場合、いわゆる水ハネした時にタンク内の液体が連通した孔(パッキンの開口部とオーバーフロー通路の開口)を通過して、そのまま外に飛び出してしまうおそれがある。
【0008】
このような不都合を回避するためには、例えばパッキンの開口とオーバーフロー通路の開口とが重ならないようにし、タンク本体内からオーバフロー通路に至るまでの空気の通り道を入り組んだものとすることが考えられる。入り組んだ空気の通り道をパッキンの表裏を利用して設定すれば、部品点数を抑えることもできる。
【0009】
しかしながら、タンクの内圧が急激に上昇した際に、ゴム製のパッキンがキャップに貼り付くように変形し、前記オーバフロー通路の開口等、空気の通り道が塞がれて、大気開放の機能が損なわれるおそれがあり、最悪の場合蓋が外れるおそれがある。
【0010】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、水ハネした時にタンク内の液体が外に飛び出すことがなく、しかもタンクの内圧が急激に上昇した際にも大気開放の機能が損なわれることのないリザーブタンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の目的を達成するために、本発明のタンクは、タンク本体に形成された口部にキャップが取り付けられたリザーブタンクであって、前記キャップは、中央を貫通する接続パイプと、前記タンク本体の内部と外部とを連通するオーバフロー通路を備えており、前記タンク本体と前記キャップの間にはパッキンが介在され、前記パッキンには前記接続パイプに嵌合する嵌合孔及びこれに連なる空気孔が形成されており、前記空気孔は前記パッキンの前記オーバフロー通路の開口と対向しない位置に形成され、前記キャップの前記パッキンと対向する面にパッキンの外周近傍と接する外側環状リブが形成され、当該外側環状リブとタンク本体の口部の先端面の間にパッキンの外周部分が挟み込まれ、パッキンの内周部分は、内側環状リブとインナホースの間に挟みこまれた状態で支持され、前記外側環状リブ及び内側環状リブによって囲まれた領域内において、前記パッキンとキャップの間に隙間が形成されるとともに、前記パッキンが当該領域内で変形可能とされ、前記外側環状リブ及び内側環状リブによって囲まれた領域内において、前記キャップの前記パッキンと対向する面に前記パッキンの変形を抑制する点状の突起が周方向に不連続に形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明のタンク(例えばリザーブタンク)は、キャップに大気開放機能を有する大気開放式のリザーブタンクである。ここで、タンク本体とキャップの間にはパッキンが介在され、パッキンには開口部が形成されている。この開口部は、前記パッキンにおいて、前記通路(オーバーフロー通路)の開口とは対向しない位置に形成されていることから、入り組んだ空気の通り道が形成され、水ハネした時にタンク内の液体が外に飛び出すことがない。
【0013】
また、本発明のタンクでは、キャップのパッキンと対向する面に突起が形成されていることから、タンクの内圧が急激に上昇した際にも、この突起によりパッキンの変形が抑えられ、空気の通り道が確保されて大気開放の機能が維持される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水ハネした時にタンク内の液体が外に飛び出すことがなく、タンクの内圧が急激に上昇した際に大気開放の機能が損なわれることのないタンク(例えばリザーブタンク)を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】リザーブタンクの分解斜視図である。
図2】キャップのタンク本体側の面を示す概略斜視図である。
図3】キャップにパッキンを取り付けた状態を示す概略平面図である。
図4】キャップをタンク本体の注水口に取り付けた状態を示す概略断面図(図3のx-x線方向での断面図)である。
図5】突起によりパッキンの変形が抑えられた状態を示す概略断面図(図3のy-y線方向での断面図)である。
図6】突起のないキャップのタンク本体側の面を示す概略斜視図である。
図7】突起のないキャップを取り付けた際のパッキンの変形の様子を示す概略断面図(図3のy-y線方向での断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用したタンクの実施形態について、リザーブタンクを例に図面を参照して説明する。
【0017】
図1はリザーブタンク1の概略構成を示す分解斜視図である。本実施例のリザーブタンク1は、冷却水を注水するための注水口3を有するタンク本体2、注水口3を塞ぐキャップ4、注水口3とキャップ4との間に介在されるゴム製のパッキン5を備える。
【0018】
タンク本体2は、例えばポリプロピレン樹脂製であり、例えばブロー成形によって成形されている。タンク本体2の材質は、ポリプロピレンに限られるものではなく、他の任意の樹脂材料であってもよい。成形方法もブロー成形に限られるものではなく、射出成形等、任意の成形方法で成形されたものであってよい。
【0019】
注水口3は、円筒形状とされ、タンク本体2の上面中央部に設けられている。注水口3の開口端は、径方向に拡大されて、キャップ4を嵌合するための嵌合部とされている。
【0020】
キャップ4は、タンク本体2と同様、例えばポリプロピレン樹脂製で、注水口3を塞ぐ円板状の蓋体41、この蓋体41の外周縁より下方に延設されて、注水口3の嵌合部に嵌め合わされる環状の外周壁部42、ラジエータより溢れ出た冷却液をタンク本体2内に導入する接続パイプ43、及びタンク本体2を大気開放するオーバフロー通路44(内部と外部とを連通する通路)を有している。
【0021】
接続パイプ43は、オーバフローホースを介してラジエータとタンク本体2とを連通するもので、蓋体41の中央部を貫通する形でキャップ4の外側に外側パイプ43a、内側に内側パイプ43bがそれぞれ形成されている。キャップ4の外側の外側パイプ43aは、キャップ4の外表面より上方へ向かう部分と、途中で水平方向に延設される部分とを有し、この水平方向に延設される部分の先端にオーバフローホースが接続される。キャップ4の内側の内側パイプ43bは、キャップ4から下方へ向かって形成され、タンク本体2内にその先端が挿入され、ここにインナホース6が接続される。
【0022】
オーバフロー通路44は、タンク本体2よりオーバフローした加熱水および蒸気をタンク本体2の外部へ排出するためのもので、前記接続パイプ43の外側パイプ43aとは反対方向に向って延設されている。また、オーバフロー通路44は、キャップ4の内側に延設される部分はなく、したがって、オーバフロー通路44の端部は、蓋体4の内面の開口44aである。このオーバフロー通路44を通じてタンク本体2の内部と外部とが連通されており、タンク本体2はオーバフロー通路44を通じて大気開放されている。
【0023】
パッキン5は、例えばゴム製の円形部材であり、キャップ4の内側(蓋体41の内面)に圧入されてキャップ4と注水口3との間を液密に塞ぐものである。このパッキン5には、接続パイプ43の内側パイプ43bに嵌合する嵌合孔51、これに連なる空気孔52が形成されている。
【0024】
以上が本実施形態のリザーブタンク1の基本的な構成であるが、次に、前記キャップ4の詳細、及びキャップ4のタンク本体2の注水口3への取り付け構造について説明する。
【0025】
図2は、キャップ4をタンク本体側から見た状態を示す図である。キャップ4を構成する蓋体41の内面には、パッキン5の外周側を支持する環状のリブ(外側環状リブ45)と、パッキン5の内周側を支持する環状のリブ(内側環状リブ46)が形成されている。これらのうち、内側環状リブ46は、蓋体41の中央を貫通しタンク本体2側の突出する内側パイプ43bの周囲に段差部として形成されている。
【0026】
また、キャップ4を構成する蓋体41の内面のパッキン5と対向する面には、複数の点状の突起47が形成されている。本例では、外側環状リブ45と内側環状リブ46で囲まれた領域に、蓋体41の周方向において等角度間隔で4箇所形成されている。なお、突起47の数は1以上であればよいが、確実に効果を得るためには、複数(2以上)であることが好ましい。
【0027】
前記突起47の形状は、点状の突起に限られず、任意の形状であってよい。ただし、空気の通路を確保するという目的を考えると、空気の流通を妨げることのない形状の突起であることが好ましい。また、突起47の高さも任意であるが、前記外側環状リブ45や内側環状リブ46の高さと同等か、外側環状リブ45や内側環状リブ46の高さより若干高く設定し、通常状態で突起47の先端がパッキン5に触れる程度の高さとすることが好ましい。
【0028】
図3はキャップ4へのパッキン5の取り付け状態を示す図であり、図4はキャップ4及びパッキン5のタンク本体2の注水口3への取り付け状態を示す図である。なお、図4は、図3のx-x線方向での断面ずである。
【0029】
図3及び図4に示すように、キャップ4は注水口3に嵌合することにより取り付けられ、キャップ4と注水口3の先端面3aの間には、パッキン5が挟み込まれる。この時、パッキン5に形成された嵌合孔51に接続パイプ43の内側パイプ43bが挿入されるとともに、パッキン5の外周部分は、キャップ4の蓋体41の内面に設けられ表面に微小環状リブ45aを有する外側環状リブ45によって注水口3の先端面3aに押し付けられた状態となる。また、パッキン5の内周部分(前記嵌合孔51の周囲の部分)は、内側環状リブ46とインナホース6の間に挟みこまれた状態で支持される。このようなパッキン5の挟み込み状態により、気密状態が維持される。
【0030】
一方、パッキン5の取り付け方向であるが、図3に示すように、空気孔52がオーバフロー通路44の端部(蓋体41の内面の開口44a)と対向しないように取り付けられている。本例の場合、空気孔52が接続パイプ43の内側パイプ43bを挟んで前記開口44aとは180°反対側の位置になるように取り付けられている。
【0031】
空気孔52がオーバフロー通路44の開口44aと対向した状態では、タンク本体2内とオーバフロー通路44とがストレートに連通する形になり、タンク本体2内で水ハネが起こった際に、タンク本体2内の液体が外に飛び出してしまうおそれがある。これに対して、空気孔52が開口44aとは180°反対側に位置するように取り付けた場合、タンク本体2内から見たときに開口44aがパッキン5によって塞がれた形になり、水ハネが起こったとしてもタンク本体2内の液体が外に飛び出すことはない。
【0032】
また、前記の通り、パッキン5は外側環状リブ45や内側環状リブ46により支持されており、パッキン5とキャップ4の蓋体41の内面の間には隙間が形成されている。この隙間を空気の流路として利用することで、空気孔52が開口44aとは180°反対側に位置するようにパッキン5を取り付けた場合にも、大気開放機能が維持される。すなわち、図3及び図4に示すように、タンク本体2内の内圧が上昇した際に、タンク本体2内の空気は、先ず、パッキン5の空気孔52を通ってパッキン5の裏側に回り込む。さらに、パッキン5と蓋体41の間の隙間を通り、オーバフロー通路44の開口44aへと回り込む。その後、開口44aからオーバフロー通路44を通り外部へと放出される。
【0033】
ところで、パッキン5の表裏を利用して入り組んだ空気の通り道を形成した場合、例えばタンク本体2の内圧が急激に上昇すると、ゴム製のパッキン5がキャップ4の蓋体41に貼り付くように変形し、空気の通り道が塞がれて大気開放の機能が損なわれる可能性がある。
【0034】
例えば図6に示すように、蓋体41の内面に突起が形成されていないキャップ4をタンク本体2の注水口3に装着した場合、図7に示すように、タンク本体2の内圧が急激に上昇すると、ゴム製のパッキン5が変形し、空気の通り道(パッキン5と蓋体41の間の隙間)が塞がれる。極端な場合、蓋体41の内面に臨む開口44aがパッキン5によって塞がれる。その結果、大気開放機能が損なわれることになる。
【0035】
これに対して、本実施形態のリザーブタンク1では、キャップ4の蓋体41の内面に突起47が形成されているので、パッキン5の変形が抑えられ、タンク本体2の内圧が急激に上昇しても、大気開放機能が確実に維持される。すなわち、図5に示すように、パッキン5の裏面側(蓋体41と対向する面側)において、前記点状の突起47がパッキン5に当接する形になり、パッキン5の変形が抑えられる。これにより、パッキン5と蓋体1の間の隙間(空気の通り道)が確保され、開口44aがパッキン5によって塞がれることもない。結果として、大気開放機能が維持される。
【0036】
前述の通り、本実施形態のリザーブタンク1では、パッキン4の空気孔52がオーバーフロー通路44の開口44aと対向しない位置に形成されることから、入り組んだ空気の通り道が形成され、水ハネした時にタンク内の液体が外に飛び出すことがない。また、キャップ4(蓋体41)のパッキンと対向する面に突起47が形成されていることから、タンク本体2の内圧が急激に上昇した際にも、この突起47によりパッキン5の変形が抑えられ、空気の通り道が確保されて大気開放の機能が維持される。
【0037】
以上、本発明を適用した実施形態について説明してきたが、本発明がこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0038】
1 リザーブタンク
2 タンク本体
3 注水口
4 キャップ
5 パッキン
6 インナホース
41 蓋体
42 外周壁部
43 接続パイプ
43a 外側パイプ
43b 内側パイプ
44 オーバーフロー通路(通路)
44a 開口
45 外側環状リブ
46 内側環状リブ
47 突起
51 嵌合孔
52 空気孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7