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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-08
(45)【発行日】2025-09-17
(54)【発明の名称】保持具およびラック
(51)【国際特許分類】
   B01L 9/06 20060101AFI20250909BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20250909BHJP
   G01N 35/04 20060101ALI20250909BHJP
【FI】
B01L9/06
G01N1/10 N
G01N35/04 G
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2025502406
(86)(22)【出願日】2024-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2024035108
(87)【国際公開番号】W WO2025074999
(87)【国際公開日】2025-04-10
【審査請求日】2025-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2023174663
(32)【優先日】2023-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510087564
【氏名又は名称】積水マテリアルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨永 聡
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-209279(JP,A)
【文献】実開昭48-068598(JP,U)
【文献】特開2000-321118(JP,A)
【文献】中国実用新案第220759316(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 9/00 - 9/06
G01N 1/00 - 1/44
G01N 35/00 - 35/10
C12M 1/00 - 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する板材と、
前記貫通孔に通される対象物を保持する複数の保持部とを備え、
前記保持部は、
前記貫通孔の周辺の前記板材から上下一方側に延びるトーションバーと、
前記トーションバーから前記貫通孔の前記上下一方側の空間に延びるアームとを備え、
前記対象物が前記アームと接触するように前記対象物が前記貫通孔に通されることにより前記トーションバーに生じる、捩りに抗する力により、前記対象物を保持する保持具。
【請求項2】
前記貫通孔の上下方向に沿った平面視において、前記アームは、先端が前記貫通孔の中心に近づくように湾曲している、請求項1に記載の保持具。
【請求項3】
前記アームの先端には、前記上下一方側になるにつれて前記貫通孔の外側へ傾斜する斜面が設けられている、請求項1に記載の保持具。
【請求項4】
複数の前記アームは、前記トーションバーから前記貫通孔の周方向の一方側に延びる、請求項1に記載の保持具。
【請求項5】
前記貫通孔の周囲に厚肉部が設けられている、請求項1に記載の保持具。
【請求項6】
前記トーションバーが前記板材から延びる部分に補強リブが設けられている、請求項1に記載の保持具。
【請求項7】
前記対象物の先端を受ける先端受部が、前記貫通孔の上下他方側の空間に設けられている、請求項1に記載の保持具。
【請求項8】
前記板材および前記保持部は一体成形されている、請求項1に記載の保持具。
【請求項9】
前記トーションバーおよび前記アームは一体成形されている、請求項1に記載の保持具。
【請求項10】
複数の保持部の少なくとも一つが、前記トーションバーおよび前記アームを備える、請求項1に記載の保持具。
【請求項11】
3つ以上の保持部が、前記貫通孔の中心位置から上下方向に延びる直線を軸とする回転対称となるように配置されている、請求項1に記載の保持具。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の保持具を複数備えるラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験管、採血管等の筒状の部材またはシャフト等の棒状の部材を保持するための保持具、および複数の保持具を備えるラックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試験管(実験で使用する試薬や血液、試料等を入れる管)を保持する器具として、下記特許文献1および2に開示するような試験管立て(試験管ラック)が使用されている。従来の一般的な試験管立ては、試験管に対応する形状の孔を有しており、この孔に試験管を嵌め込むことにより試験管を保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-174891号公報
【文献】特開2005-233664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
試験管や採血管は、用途に応じて様々なサイズのものが用いられている。例えば採血管には、直径が約13mm(首下長さ約50mm)~約16.5mm(首下長さ約100mm)のものが用いられている。遺伝子検査や再生医療分野では、直径が例えば約7mm程度の細めのサイズの試験管や採血管も用いられている。特に大学や研究機関では、使用する試験管や採血管のサイズが研究者毎に異なっており、遺伝子検査や再生医療分野が発展するとともに、試験管立てには様々な直径の試験管に対応することが求められている。
【0005】
本発明は、様々な直径を有する部材を対象物として保持する保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明は、例えば以下に示す態様を含む。
【0007】
(項1)
貫通孔を有する板材と、
前記貫通孔に通される対象物を保持する複数の保持部とを備え、
前記保持部は、
前記貫通孔の周辺の前記板材から上下一方側に延びるトーションバーと、
前記トーションバーから前記貫通孔の前記上下一方側の空間に延びるアームとを備え、 前記対象物が前記アームと接触するように前記対象物が前記貫通孔に通されることにより前記トーションバーに生じる、捩りに抗する力により、前記対象物を保持する保持具。
(項2)
平面視において、前記アームは、先端が前記貫通孔の中心に近づくように湾曲している、項1に記載の保持具。
(項3)
前記アームの先端には、前記上下一方側になるにつれて前記貫通孔の外側へ傾斜する斜面が設けられている、項1または2に記載の保持具。
(項4)
複数の前記アームは、前記トーションバーから前記貫通孔の周方向の一方側に延びる、項1から3のいずれか一項に記載の保持具。
(項5)
前記貫通孔の周囲に厚肉部が設けられている、項1から4のいずれか一項に記載の保持具。
(項6)
前記トーションバーが前記板材から延びる部分に補強リブが設けられている、項1から5のいずれか一項に記載の保持具。
(項7)
前記対象物の先端を受ける先端受部が、前記貫通孔の上下他方側の空間に設けられている、項1から6のいずれか一項に記載の保持具。
(項8)
前記板材および前記保持部は一体成形されている、項1から7のいずれか一項に記載の保持具。
(項9)
前記トーションバーおよび前記アームは一体成形されている、項1から8のいずれか一項に記載の保持具。
(項10)
複数の保持部の少なくとも一つが、前記トーションバーおよび前記アームを備える、項1から9のいずれか一項に記載の保持具。
(項11)
3つ以上の保持部が、前記貫通孔の中心位置から上下方向に延びる直線を軸とする回転対称となるように配置されている、項1から10のいずれか一項に記載の保持具。
(項12)
項1から11のいずれか一項に記載の保持具を複数備えるラック。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、様々な直径を有する部材を対象物として保持する保持具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る保持具の斜視図である。
図2】一実施形態に係る保持具の分解斜視図である。
図3】一実施形態に係る保持具の分解斜視図である。
図4】一実施形態に係る保持具の上面図である。
図5】種々の実施形態に係る先端受部の断面図である。
図6】試験管の種々の先端形状を示す側面図である。
図7】一実施形態に係る保持具の使用態様を説明するための図である。
図8】一実施形態に係る保持具の使用態様を説明するための図である。
図9】一実施形態に係る保持具の使用態様を説明するための図である。
図10】一実施形態に係るラックの上面図である。
図11】他の実施形態に係る保持具の斜視図である。
図12】さらに他の実施形態に係る保持具が備える上部構造体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。以下の説明および図面において、同じ符号は同じまたは類似の構成要素を示すこととし、よって、同じまたは類似の構成要素に関する重複した説明を省略する。
【0011】
以下では、本発明に係る保持具の使用時の状況を基準として、「上」及び「下」の用語を記す。また本願特許請求の範囲に記載している「上下一方側」に相当する用語として、「上側」及び「下側」のうち一方の用語を以下に記し、本願特許請求の範囲に記載している「上下他方側」に相当する用語として、「上側」及び「下側」の他方の用語を以下に記す。また以下では、本発明の一実施形態に係る保持具の構成を、直交座標系および円筒座標系を適宜用いて説明する。以下に記すZ軸方向は上下方向に相当し、直交座標系(x,y,z)と円筒座標系(r,θ,z)との間には、x=rcosθ、y=rsinθ、およびz=zの関係が成立する。
【0012】
[保持具の構成]
図1は、一実施形態に係る保持具の斜視図である。図2および図3は、一実施形態に係る保持具の分解斜視図である。図4は、一実施形態に係る保持具の上面図である。
【0013】
一実施形態に係る保持具10は、上部構造体1と、複数の保持部2と、下部構造体3と、先端受部4とを備え、対象物9を保持する。本実施形態では、後述する図7ないし図9に例示するように、保持具10が保持する対象物9は試験管9である。
【0014】
上部構造体1は、概ね板状の構造体(以下、板材1とも呼ぶ)である。上部構造体1には係合部11が設けられている。係合部11が下部構造体3の切欠部31と係合することにより、上部構造体1は下部構造体3と一体化することができる。
【0015】
上部構造体1には、当該上部構造体1を上下方向(Z軸方向)に貫通する貫通孔19が設けられている。上部構造体1の上面1a側の貫通孔19の周辺には、複数の保持部2が設けられている。好ましくは、上部構造体1の下面1b側の、保持部2に対応する貫通孔19の周囲には、厚肉部12が設けられている。好ましくは、上部構造体1の下面1b側の、保持部2のトーションバー21が上部構造体1から延びる部分には、補強リブ13が設けられている。任意の構成として、上部構造体1には、作業者による分注作業時にサンプルチューブ等を仮置きするための穴14が設けられている。
【0016】
保持部2は、貫通孔19に通される試験管9を保持する。保持部2は弾性変形可能な材料を用いて形成されている。保持部2は上部構造体1に設けられている。上部構造体1および保持部2は一体成形することができる。
【0017】
保持部2はトーションバー21と、アーム22とを備える。トーションバー21は、貫通孔19の周辺の上部構造体1から上側(上下一方側)に延びる(より詳細には、トーションバー21は、貫通孔19の軸方向(Z軸方向)の正の方向に延びる)。アーム22は、トーションバー21から貫通孔19の上側(上下一方側)の空間に延びる。
【0018】
アーム22が延びる貫通孔19の上下方向(Z軸方向)の空間について、より詳細に説明する。図4に示す保持具10の上面図でいうと、アーム22は、トーションバー21から貫通孔19の内側の領域に延びる。また、保持具10の側面視でいうと、アーム22が延びる方向は厳密に水平方向(X軸方向またはY軸方向)に限られず、少なくとも水平方向の成分を有していれば、斜め上方または斜め下方に傾いて延びていてもよい。同様に、トーションバー21が延びる方向は、保持具10の側面視において厳密に貫通孔19の上下方向(Z軸方向)に限られず、少なくとも貫通孔19の上下方向(Z軸方向)の成分を有していれば、斜め上方に傾いて延びていてもよい。
【0019】
トーションバー21は、中空または中実の筒状または棒状の部材である。トーションバー21は、一方の端部21aが上部構造体1に固定されることにより、ねじり棒ばねとして機能する。トーションバー21の断面形状は、円形、多角形、および星形等の任意の形状とすることができる。トーションバー21の軸方向(Z軸方向)に沿った形状も、途中で太さが変化しない棒状や、途中で太さが変化する錐状とすることができる。
【0020】
アーム22は、中空または中実の筒状または棒状の部材である。貫通孔19の上下方向(Z軸方向)に沿って見たアーム22の平面形状は、円弧状、直線状、およびトラス構造等の任意の形状とすることができる。アーム22の断面形状も、円形、多角形、および星形等の任意の形状とすることができる。トーションバー21およびアーム22は一体成形することができる。
【0021】
好ましくは、アーム22は、トーションバー21から貫通孔19の周方向(円筒座標系θ方向)の一方側(正の方向または負の方向)に延びる。これにより、複数のアーム22の延びる向きを揃えて配置することが可能となり、貫通孔19の周囲に配置する複数のトーションバー21の位置を、貫通孔19の周方向(θ方向)に概ね均等に分割することができる。またこれにより、複数のアーム22が試験管9を径方向(円筒座標系r方向)の外側から内側に押さえつける力を概ね均等にすることが可能となる。よって、図8および図9に例示するように、直径が異なる試験管9を、その中心位置を貫通孔19の中心位置に合わせて保持することが可能となる。
【0022】
より好ましくは、アーム22は、平面視において先端23が貫通孔19の中心に近づくように湾曲している。これにより、アーム22の先端23が、トーションバー21に生じる捩りに抗する力(反力)を、試験管9の表面の法線方向へ効率的に加えることができる。さらにより好ましくは、アーム22の先端23には、上側(上下一方側)になるにつれて貫通孔19の外側へ傾斜する斜面が設けられている。これにより、試験管9の中心位置を貫通孔19の中心位置に誘導することが容易となる。先端23に設けられている斜面の形状は、試験管9の先端9Aの形状に適合していることが好ましい。
【0023】
下部構造体3は、切欠部31と、複数の連結突部32と、複数の連結切欠33とを備える。切欠部31が上部構造体1の係合部11と係合することにより、下部構造体3は上部構造体1と一体化することができる。連結突部32および連結切欠33は、下部構造体3の対向する側面に配置される。後述する図10に例示するように、連結突部32は、隣り合って配置される別の保持具10の連結切欠33と係合する。これにより、複数の保持具10が連結されてラック100が構成される。
【0024】
先端受部4は、貫通孔19の下側(上下他方側)の空間に設けられており、試験管9の先端9Aを受ける。本実施形態では、先端受部4は、貫通孔19の上下方向(Z軸方向)に沿った、下部構造体3の対応する位置に設けられている。本実施形態では、保持部2は上部構造体1の上面1a側に配置され、先端受部4は上部構造体1の下面1b側に配置されている。図1ないし図3に示すように、貫通孔19に通される試験管9の上方の端部は保持部2により保持されている。よって、先端受部4により試験管9の下方の先端9Aを保持することにより、試験管9の中心軸を垂直かつ定位置に保持することが可能となる。
【0025】
図5は、種々の実施形態に係る先端受部の断面図である。(A)は一実施形態に係る先端受部の断面図である。(B)は他の実施形態に係る先端受部の断面図である。(C)はさらに他の実施形態に係る先端受部の断面図である。図6は、試験管の種々の先端形状を示す側面図である。
【0026】
図5に示すように、先端受部4には貫通孔49が設けられている。試験管9の先端9Aを受ける部分(当接部分)の貫通孔49の形状は、図5(A)に示すように円錐状である。好ましくは、図5(B)および図5(C)に示すように、当接部分に対応する貫通孔49の側壁49B,49Cは、試験管9の先端9Aの形状に応じた形状となっている。
【0027】
図5(A)に示す先端受部4Aでは、当接部分に対応する貫通孔49の側壁49Aは平面である。図5(B)に示す先端受部4Bでは、当接部分に対応する貫通孔49の側壁49Bは、貫通孔49に向かって張り出した凸状の曲面である。先端受部4Bは、図6(B)に示すような先端9Aがエッジ状(平底)の試験管9であっても、試験管9の中心位置を貫通孔19の中心位置に誘導することが可能である。図5(C)に示す先端受部4Cでは、当接部分に対応する貫通孔49の側壁49Cは、窪んだ凹状の曲面である。先端受部4Cは、図6(A)に示すような先端9Aが曲線状(丸底)の試験管9であっても、試験管9の中心位置を貫通孔19の中心位置に誘導することが可能である。
【0028】
保持具10が備える上部構造体1、保持部2、下部構造体3、および先端受部4は、例えば熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、金属、セラミックもしくはこれらの組み合わせを用いて形成される。上記の熱可塑性樹脂は、例えばPP(ポリプロピレン)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、POM(ポリアセタール)、PE(ポリエチレン)、PA(ポリアミド、ナイロン)、PS(ポリスチレン)、PC(ポリカーボネート)、PVC(塩ビ)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PAR(ポリアリレート)、PSF(ポリサルホン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PES(ポリエーテルサルホン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PSU(ポリスルホン)、PAI(ポリアミドイミド)、PEI(ポリエーテルイミド)、m-PPE(変性ポリフェニレンエーテル)、TPU(熱可塑性ウレタン樹脂)、LCP(液晶樹脂)、ノルボルネン樹脂、或いはフッ素樹脂である。上記の熱硬化性樹脂は、例えばエポキシ樹脂、或いはフェノ―ル樹脂である。熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂は、ファイバーや無機フィラー等との複合樹脂であってもよい。
【0029】
[使用態様]
図7ないし図9は、一実施形態に係る保持具の使用態様を説明するための図である。図7は、貫通孔19の上方の空間から試験管9を貫通孔19に挿入するときの状態を示している。図8は、直径が細い試験管9を保持具10が保持する状態を示しており、図9は、直径が太い試験管9を保持具10が保持する状態を示している。図8および図9において、(A)は上面図であり(B)は斜視図である。
【0030】
一実施形態に係る保持具10において、保持部2は、試験管9がアーム22と接触するように試験管9が貫通孔19に通されることによりトーションバー21に生じる、捩りに抗する力により、試験管9を保持する。
【0031】
図7ないし図9に示すように、貫通孔19の上方の空間から試験管9が貫通孔19に挿入されると、試験管9が貫通孔19の径方向(円筒座標系r方向)にアーム22を押しのける。トーションバー21は、一方の端部21aが上部構造体1に固定されており、他方の端部21bからはアーム22が延びている。よって、アーム22が径方向rの正の方向に押しのけられると、トーションバー21には、アーム22を介してトーションバー21の軸周りに周方向θの正の方向に捩りが生じる。トーションバー21は、一方の端部21aが上部構造体1に固定されていることから、トーションバー21には、この捩れに抗う力(反力)が、トーションバー21の軸周りに周方向θの負の方向に生じ、トーションバー21は、この捩れに抗する力により試験管9を保持する。
【0032】
本実施形態では、厚肉部12が、上部構造体1の下面1b側の、保持部2に対応する貫通孔19の周囲に設けられている。また、補強リブ13が、上部構造体1の下面1b側の、トーションバー21が上部構造体1から延びる部分に設けられている。本実施形態では、これら厚肉部12および補強リブ13を配置することにより、上部構造体1に固定されているトーションバー21の一方の端部21aを補強している。これにより、上部構造体1の撓みが低減され、トーションバー21およびアーム22のペアによる保持力や位置決め精度が向上する。
【0033】
図7ないし図9に例示するように、トーションバー21およびアーム22のペア(保持部2)の数は、3つ以上であることが好ましい。このとき、3つ以上の保持部2が、貫通孔19の中心位置から上下方向(Z軸方向)に延びる直線を軸とする回転対称となるように配置されることが好ましい。例えば保持部2の数をn(nは3以上の自然数)とすると、それぞれの保持部2は、貫通孔19の周囲に約360°/nの角度毎に概ね均等に配置される。これにより、直径が異なる試験管9を、その中心位置を貫通孔19の中心位置に容易に合わせることが可能となる。
【0034】
なお、トーションバー21が試験管9を保持する力は、上記説明した捩れに抗する力だけに制限されない。アーム22が径方向rの正の方向に押しのけられることによりトーションバー21に生じる、トーションバー21の他方の端部21bが軸方向(Z軸方向)から逸れる曲げに抗う力(反力)も、トーションバー21が試験管9を保持する力となる。
【0035】
以上、一実施形態に係る保持具10によると、保持部2は、試験管9がアーム22と接触するように試験管9が貫通孔19に通されることによりトーションバー21に生じる、捩りに抗する力により、試験管9を保持する。これにより、保持具10は、様々な直径を有する部材を対象物として保持することが可能となる。保持具10は、直径が例えば約13mmから約16.5mm程度の標準的なサイズのものから、直径が例えば約7mm程度の細めのサイズのものまで、様々な直径を有する試験管や採血管を保持することが可能となる。
【0036】
[ラックの構成]
図10は、一実施形態に係るラックの上面図である。図1ないし図4に例示するように、一実施形態に係る保持具10は、下部構造体3に連結突部32と連結切欠33とを備えている。図10に例示するように、保持具10の連結突部32は、隣り合って配置される別の保持具10の連結切欠33と係合する。これにより、複数の保持具10を連結したラック100を構成する。
【0037】
図10に例示する態様では、図中X軸方向に隣り合う複数の保持具10は、上記した連結突部32および連結切欠33を用いて連結する。図中Y軸方向に隣り合う複数の保持具10は、例えば接着剤や粘着剤によりまたは溶着により連結する。
【0038】
他の実施形態では、複数の保持具10を図10に例示するように並べて、それら複数の保持具10の外周を図示しない枠状の部材で囲むことにより複数の保持具10の配置を固定して、ラック100を構成する。
【0039】
[その他の形態]
以上、本発明を特定の実施形態によって説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
【0040】
図11は、他の実施形態に係る保持具の斜視図である。保持具10は複数の保持部2を備えており、上記した実施形態では、3つの保持部2のそれぞれがトーションバー21およびアーム22のペアを備えているが、複数の保持部2のすべてがトーションバー21およびアーム22のペアを備える必要は無い。他の実施形態では、複数の保持部2のうち少なくとも一つの保持部2が、トーションバー21およびアーム22のペアを備えていればよい。この場合、複数の保持部2のうち残りの保持部2は、例えば図11に例示するような、上面視において貫通孔19の外周に沿って湾曲した、板状の部材24(壁24とも呼ぶ)であってもよい。壁24は保持部2として機能する。壁24は、貫通孔19を挟んで概ねアーム22に対向する位置に設けられ、トーションバー21およびアーム22のペアと協同して、貫通孔19の上方の空間から貫通孔19に挿入される試験管9を保持する。
【0041】
図12は、さらに他の実施形態に係る保持具が備える上部構造体の斜視図である。上記実施形態では、保持部2のトーションバー21は、貫通孔19の上側に延びているが、図12に例示するように、トーションバー21は、貫通孔19の下側(上下一方側)に延びていてもよい(トーションバー21は、軸方向(Z軸方向)の負の方向に延びていてもよい)。すなわちさらに他の実施形態では、図12に例示するように、保持部2は上部構造体1の下面1b側に配置することができる。この場合、アーム22は、トーションバー21から貫通孔19の下側(上下一方側)の空間に延びるものとされる。
【0042】
上記した実施形態では、保持具10は試験管9を保持しているが、保持具10が保持する対象物9は、試験管や採血管等の筒状の部材に制限されない。保持具10が保持する対象物9は、例えばシャフト等の棒状の部材であってもよい。貫通孔19に通される対象物9を、トーションバー21に生じる捩りに抗する力により保持することができる限り、対象物9の形状およびサイズは制限されない。
【符号の説明】
【0043】
1 上部構造体(板材)
2 保持部
3 下部構造体
4 先端受部
9 対象物(試験管)
10 保持具
11 係合部
12 厚肉部
13 補強リブ
14 穴
19 貫通孔
21 トーションバー
22 アーム
23 アームの先端
24 板状の部材(壁)
31 切欠部
32 連結突部
33 連結切欠
49 貫通孔
100 ラック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12