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特許7742030生体磁気測定装置および生体磁気測定装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-10
(45)【発行日】2025-09-19
(54)【発明の名称】生体磁気測定装置および生体磁気測定装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/245 20210101AFI20250911BHJP
   G01R 33/26 20060101ALI20250911BHJP
【FI】
A61B5/245
G01R33/26
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023569124
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 JP2022040420
(87)【国際公開番号】W WO2023119872
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2024-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2021208319
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】品田 恵
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0033686(US,A1)
【文献】米国特許第06293111(US,B1)
【文献】国際公開第2012/120732(WO,A1)
【文献】特開2019-124556(JP,A)
【文献】特開2020-151023(JP,A)
【文献】LABYT, Etienne et al.,Magnetoencephalography With Optically Pumped 4He Magnetometers at Ambient Temperature,IEEE Transactions on Medical Imaging,2019年01月,Vol. 38, No. 1,pp. 90-98,<DOI: 10.1109/TMI.2018.2856367>
【文献】MORALES, S. et al.,Magnetocardiography measurements with 4He vector optically pumped magnetometers at room temperature,Physics in medicine and biology,2017年08月21日,Vol.62, No.18,pp.7267-7279,<DOI: 10.1088/1361-6560/aa6459>
【文献】FOURCAULT, William et al.,Helium-4 magnetometers for room-temperature biomedical imaging: toward collective operation and photon-noise limited sensitivity,Optics express,2021年05月10日,Vol.29, No10,pp.14467-14475,<DOI: 10.1364/OE.420031>
【文献】JENSEN, Kasper et al.,SCIENTIFIC REPORTS,Magnetocardiography on an isolated animal heart with a room-temperature optically pumped magnetometer,2018年11月01日,Vol.8, No.1, Article No.16218,pp.1-9,<DOI: 10.1038/s41598-018-34535-z>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/245
G01R 33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ内部空間を有するセルを有し、該セル内で生じるプラズマによる光ポンピング作用を利用して生体磁気を検出する第1磁気センサ、第2磁気センサと、
前記第1磁気センサ、第2磁気センサが有するセルの各々における内部空間においてプラズマを発生させるための電力を供給するプラズマ生成部と、
前記第1磁気センサにおいて第1開始時刻から第1終了時刻までプラズマを発生させ、かつ、前記第2磁気センサにおいて前記第1開始時刻より後の第2開始時刻から前記第1終了時刻より後の第2終了時刻までプラズマを発生させるように前記プラズマ生成部を制御する電源制御部を備える生体磁気測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体磁気測定装置において、
前記第1磁気センサは、少なくとも前記第1開始時刻から前記第2開始時刻までの所定期間に生体磁気を検出する生体磁気測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の生体磁気測定装置において、
前記第1終了時刻は、前記第2開始時刻と同時刻、または前記第2開始時刻よりも前の時刻である生体磁気測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の生体磁気測定装置において、
前記第1開始時刻から前記2開始時刻までの所定期間に前記第1磁気センサが検出した磁気検出信号と、前記所定期間外に前記第1磁気センサが検出した磁気検出信号との差分をとることにより、前記第1磁気センサの磁気検出信号を補正する補正部を備える生体磁気測定装置。
【請求項5】
請求項1に記載の生体磁気測定装置において、
前記第1磁気センサにとって前記第2磁気センサよりも離れた位置にある第3磁気センサを有し、
前記電源制御部は、前記第1磁気センサと、前記第3磁気センサとでプラズマを発生させている期間が重なるように前記プラズマ生成部を制御する生体磁気測定装置。
【請求項6】
請求項1に記載の生体磁気測定装置において、
前記第1磁気センサの光信号を電気信号に変換する変換部と、
前記第1磁気センサに対する前記変換部の有効化または無効化を行う変換制御部を備え、
前記変換制御部は、前記第1開始時刻から前記第2開始時刻までの所定期間において前記変換部を有効化し、少なくとも前記第1終了時刻以降の期間は前記変換部を無効としている生体磁気測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の生体磁気測定装置において、
前記変換制御部は、前記第1開始時刻の後、前記変換部を有効化し、前記第1終了時刻に先立って、前記変換部を無効化する生体磁気測定装置。
【請求項8】
それぞれプラズマを発生させるセルを有し、光ポンピング作用を利用して生体磁気を検出して光信号として出力する第1磁気センサ、第2磁気センサと、それぞれの前記セルに対してプラズマを発生させる電力を供給するプラズマ生成部と、前記プラズマ生成部を制御する電源制御部を備えた生体磁気測定装置の制御方法において、
前記第1磁気センサが有するセルにプラズマを発生させる第1過程と、
前記第1過程から所定時間が経過した後、前記第2磁気センサが有するセルにプラズマを発生させる第2過程を備える生体磁気測定装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体磁気測定装置および生体磁気測定装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体から発せられる微弱な磁気を検出して磁場の分布を例えば可視化することができる生体磁気測定装置は、複数のセンサを備え、各センサから出力される信号に基づいて被検体における磁場の分布を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第7038450号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、従来の生体磁気測定装置および生体磁気測定装置の制御方法は、センサ同士が磁気測定に悪影響を及ぼし合うことについて十分な考慮がされていない。
【0005】
本発明は、生体磁気をより正確に測定することができる生体磁気測定装置および生体磁気測定装置の制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の生体磁気測定装置は、それぞれ内部空間を有するセルを有し、該セル内で生じるプラズマによる光ポンピング作用を利用して生体磁気を検出する第1磁気センサ、第2磁気センサと、第1磁気センサ、第2磁気センサが有するセルの各々における内部空間においてプラズマを発生させるための電力を供給するプラズマ生成部と、第1磁気センサにおいて第1開始時刻から第1終了時刻までプラズマを発生させ、かつ、第2磁気センサにおいて第1開始時刻より後の第2開始時刻から第1終了時刻より後の第2終了時刻までプラズマを発生させるようにプラズマ生成部を制御する電源制御部を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の生体磁気測定装置は、第1磁気センサ、第2磁気センサについてプラズマを発生させている期間が同一とならないようにプラズマ生成部を制御する電源制御手段を備えている。このように構成することで磁気センサ同士が磁気測定に悪影響を及ぼし合うことがなくなり、生体磁気をより正確に測定することができる生体磁気測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に係る生体磁気測定装置の構成を説明する機能ブロック図である。
図2】実施例1に係るセンサの構成を説明する模式図である。
図3】実施例1に係る生体磁気測定装置の動作に係る説明図である。
図4】実施例1に係る生体磁気測定装置の動作に係る説明図である。
図5】実施例1に係る生体磁気測定装置の動作に係るタイムチャートである。
図6】実施例2に係る生体磁気測定装置の構成を説明する機能ブロック図である。
図7】実施例3に係る生体磁気測定装置の構成を説明する機能ブロック図である。
図8】実施例3に係る生体磁気測定装置の動作に係る説明図である。
図9】実施例3に係る生体磁気測定装置の動作に係るタイムチャートである。
図10】変形例に係る生体磁気測定装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る生体磁気測定装置および生体磁気測定装置の制御方法の構成について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0010】
本例に係る生体磁気測定装置1は、図1に示すように、複数の貫通孔を備えた支持体2と、支持体2に設けられた貫通孔の何れかに挿入されるセンサ3とを備えている。支持体2は、例えば、被検体の頭部を覆うヘルメットで構成される。センサ3は、光ポンピング作用を利用した磁気センサである。センサ3は、微弱な磁気を光信号として出力する構成である。センサ3が出力する光信号は、センサ3の各々に設けられた光を検出する光検出器4によって検出される。光検出器4は、検出した光の強度を示す電気信号を出力する。電気信号は、光検出器4の各々に設けられた検出回路5に入力され、増幅されて画像生成部11に入力する。画像生成部11は、入力された電気信号に基づいて脳磁図などの画像を生成する。モニタ12は、生成された画像を表示する構成である。センサ3は、本発明の磁気センサに相当する。
【0011】
センサ3はセル3aを有している(図2を参照)。センサ3には、センサ3のセル3aにプラズマを発生させるプラズマ生成電源21が接続されている。電源制御部22は、プラズマ生成電源21を制御する構成である。
【0012】
画像生成部11および電源制御部22は、CPU(Central Processing Unit)が各種のプログラムを実行することにより実現される。各部は、単一のCPUによって実現されてもよいし、複数の独立したプロセッサで実現されてもよい。後述の検出回路制御部13、マルチプレクサ制御部14についても単一のCPUによって実現されてもよいし、複数の独立したプロセッサで実現されてもよい。
【0013】
図2は、本例のセンサ3とその周辺の構成について説明している。図2に示す様に、センサ3のセル3aは、各面が長方形(または正方形)である6面体形状を有する。セル3aは、光学的に透明な例えば石英で構成され、セル3aの形状に合わせて内部がくりぬかれているので、セル3aは、6面体形状の内部空間を有している。当該内部空間には、プラズマを発生させるのに好適なガス、例えば希ガス(本例ではヘリウムガス)が充満している。セル3aの材料としては、誘電体が望ましく、石英の他、ガラスとすることもできる。セル3aを構成する6面体形状のうちの2面は、x方向と直交し、2面はy方向と直交し、2面はz方向と直交するものとする。従ってx方向、y方向は直交し、y方向、z方向は直交し、z方向、x方向は直交する。
【0014】
プラズマ生成電極3bは、セル3aが有するy方向に直交する2面のそれぞれを覆うように設けられている。プラズマ生成電極3bは、プラズマ生成電源21に接続され、プラズマ生成電源21によって交流電圧が印加される。プラズマ生成電極3bに交流電圧を印加すると、セル3a内で誘電体バリア放電が発生し、これによりセル3a内のヘリウムがプラズマ化する。
【0015】
ポンピング光レーザ3cは、x方向から円偏光したポンピング光をセル3aに向けて照射する位置に設けられている。セル3aに対してポンピング光が照射されると、光ポンピング作用によりプラズマ化されたヘリウムのエネルギー準位の分布が所定の値に偏る。
【0016】
プローブ光レーザ3dは、ポンピング光レーザとは異なる直線偏光のプローブ光をz方向からセル3aに向けて照射する構成である。プラズマ化したヘリウムは、旋光性を有している。この時の旋光角は、光ポンピング作用により所定の角度となる。この状態で、微弱な磁気がセル外で生じると、単一の値で揃っていたプラズマ化ヘリウムのエネルギー準位の偏りが乱れ、それに伴い旋光角が変化する。
【0017】
このように、センサ3は、入力された磁気信号をプローブ光の旋光という形態として出力する構成である。
【0018】
光検出器4は、セル3aを通過したプローブ光を検出する構成である。光検出器4は、旋光角に応じて検出される光量が変化する構成となっている。光検出器4は、検出したプローブ光の光量を電気信号に変換して、当該電気信号を検出回路5に送出する。検出回路5は、入力された電気信号を増幅して出力する。
【0019】
図3は、電源制御部22の動作について説明している。図3では、4つのセンサ31,32,33,34が描かれており、そのうち2つについてプラズマを生成する交流電圧を印加せず、その他の2つについてプラズマを生成する交流電圧を印加するときの様子を説明している。すなわち、図3においては、左端のセンサ31には交流電圧を印加せず、その右隣のセンサ32には交流電圧を印加する様子が説明されている。同様に、図3においては、右端のセンサ34には交流電圧を印加し、その左隣のセンサ33には交流電圧を印加しない様子が描かれている。したがって、図3は、交流電圧が印加されないセンサ31,33と交流電圧が印加されたセンサ32,34とが交互に配列している様子について説明している。
【0020】
図4は、図3から所定時間が経過した後の電源制御部22の動作について説明している。図4でも、4つのセンサ3が描かれており、そのうち2つについてプラズマを生成する交流電圧を印加し、その他の2つについてプラズマを生成する交流電圧を印加しないときの様子を説明している。すなわち、図4においては、左端のセンサ31には交流電圧を印加し、その右隣のセンサ32には交流電圧を印加しない様子が説明されている。同様に、図4においては、右端のセンサ34には交流電圧を印加せず、その左隣のセンサ33には交流電圧を印加する様子が描かれている。したがって、図4は、交流電圧が印加されたセンサ31,33と交流電圧が印加されないセンサ33,34とが交互に配列している様子について説明している。
【0021】
電源制御部22は、図3の状態と図4の状態とが交互に繰り返されるようにプラズマ生成電源21を制御する。図3の状態のとき、左から2番目のセンサ32および右端のセンサ34のセル3aには、ヘリウムプラズマが発生しており、磁気を検出できる状態となっている。一方、左端のセンサ31および左から3番目のセンサ33のセル3aにはヘリウムプラズマが発生しておらず、磁気を検出できない。従って、図3の状態のときは、左から2番目のセンサ32および右端のセンサ34によって磁気の検出が行われる。
【0022】
一方、図4の状態のとき、左端のセンサ31および左から3番目のセンサ33のセル3aには、ヘリウムプラズマが発生しており、磁気を検出できる状態となっている。一方、左から2番目のセンサ32および右端のセンサ34のセル3aにはヘリウムプラズマが発生しておらず、磁気を検出できない。従って、図4の状態のときは、左端のセンサ31および左から3番目のセンサ33によって磁気の検出が行われる。
【0023】
電源制御部22は、図3の状態と図4の状態を繰り返すようにプラズマ生成電源21を制御することにより、4つのセンサ31,32,33,34についての磁気の検出を行う構成となっている。したがって、センサ3が磁気を検出する際には、両隣のセンサ3のセルにはヘリウムプラズマが発生していない。このように構成することによって、第1のセンサ3に隣り合う第2のセンサ3がヘリウムプラズマを発生させることに由来する第1のセンサ3における磁気検出への悪影響を抑制することができる。
【0024】
図5は、電源制御部22が第1のセンサ3のオンと、第1のセンサ3に隣り合う第2のセンサ3のオフを同期的に実行し、第1のセンサ3のオフと、第2のセンサ3のオンを同期的に実行する様子を説明したタイムチャートである。ここでいうセンサ3のオンとは、センサ3にプラズマ生成用の交流電圧の印加が開始されることを示し、センサ3のオフとは、センサ3に印加されているプラズマ生成用の交流電圧の印加を終了することを示す。
【0025】
すなわち、第1のセンサ3は、ある時刻(第1開始時刻)においてオン状態となり、第1開始時刻後の第1終了時刻においてオフ状態となる。一方、第2のセンサ3は、第1のセンサ3に係る第1開始時刻よりも後の第2開始時刻においてオン状態となり、第1のセンサ3に係る第1終了時刻よりも後の第2終了時刻においてオフ状態となる。本例においては、第1終了時刻と第2開始時刻は同時刻となっているが、第2開始時刻を第1終了時刻よりも前にしてもよいし、後にしてもよい。
【0026】
第3のセンサ3は、第1のセンサ3から相対的に離れた位置にあり、かつ、第2のセンサ3に隣り合う位置にあるセンサである。第3のセンサ3が有するセンサのオン・オフのパターンは、第1のセンサ3が有するセンサのオン・オフのパターンと同じとなっている。このように、本例においては、隣り合っていない2つのセンサ3については、プラズマ発生の制御を一致させて共通のものとすることができる。したがって、本例によれば、第1のセンサ3に係るグループに属するセンサ3が一斉にオンされている間、第2のセンサ3に係るグループに属するセンサ3が一斉にオフされ、第2のセンサ3に係るグループに属するセンサ3が一斉にオンされている間、第1のセンサ3に係るグループに属するセンサ3が一斉にオフされる。そして、同一のグループに属するセンサ3は互いに隣り合わない。
【0027】
図5は、画像生成部11の動作も部分的に説明している。画像生成部11には、第1のセンサ3に係るグループに属するセンサ3または第2のセンサ3に係るグループに属するセンサ3が出力した光信号に基づいた電気信号が入力される。第1のセンサ3に接続された第1の検出回路5は、常に電気信号を画像生成部11に送信し続けている。画像生成部11は、この送信された電気信号の一部を画像生成に用いる構成となっている。すなわち、画像生成部11は、第1のセンサ3がオン状態となっている期間に第1の検出回路5が出力した電気信号を収集して画像生成に用い、第1のセンサ3がオフ状態となっている期間に第1の検出回路5が出力した電気信号を画像生成に用いない。このような動作は、第1のセンサ3に係るグループに属する他のセンサ3についても同様である。
【0028】
また、このような動作は、第2のセンサ3についても同様である。すなわち、画像生成部11は、第2のセンサ3がオン状態となっている期間に第2のセンサに接続された第2の検出回路5が出力した電気信号を収集して画像生成に用い、第2のセンサ3がオフ状態となっている期間に第2の検出回路5が出力した電気信号を画像生成に用いない。このような動作は、第2のセンサ3に係るグループに属する他のセンサ3についても同様である。
【0029】
画像生成部11が画像生成に用いる電気信号の収集期間は、より厳密には、第1のセンサ3,第2のセンサ3がオン・オフされる時点およびその直前、直後は含まない。すなわち、第1のセンサ3がオン状態となってしばらくして電気信号の収集が開始され、第1のセンサ3がオフ状態とされる前に電気信号の収集は終了する。同様に、第2のセンサ3がオン状態となってしばらくして電気信号の収集が開始され、第2のセンサ3がオフ状態とされる前に電気信号の収集は終了する。このようにセンサ3のオン・オフの影響で乱れる電気信号を画像生成に用いないことで、ノイズ成分の少ない脳磁図を生成することができる。
【0030】
本例においては、第1終了時刻と第2開始時刻は同時刻となっているが、第2開始時刻を第1終了時刻よりも前にしている場合、第1のセンサ3(例えばセンサ31)と第2のセンサ3(例えばセンサ32)とが同時にオンになっている期間がある。第1のセンサ3に関する電気信号の収集期間は、少なくとも第1開始時刻の後から第2開始時刻間際までの期間(上述した所定期間よりもわずかに短い期間)において実行される。本例は、第2開始時刻から第1終了時刻までの期間において、第1のセンサ3に係る磁気検出信号を収集するようにしてもよいし、収集しないようにしてもよい。
【実施例2】
【0031】
実施例2に係る装置は、図6に示すように、画像生成部11の上流に補正部10を備えている。実施例1では、センサ3にプラズマ生成用の交流電圧が印加されていないときには、電気信号の収集を行わなかったが、本例では、電気信号の収集を当該期間(第1終了時刻以降の期間)についても行い、磁気検出信号の補正に用いる構成となっている。
【0032】
本例の補正部10には、第1のセンサ3に接続された第1の検出回路5から常に電気信号が送信され続けている。補正部10は、第1のセンサ3がオフとなっているときの電気信号を補正用信号として収集する。補正用信号には、プローブ光レーザ3dの経年劣化、光検出器4の変動、経年劣化、セル3aの材質劣化や汚れによる影響に関する情報を含んでいる。そして、補正部10は、第1のセンサ3がオンとなっているときの電気信号を磁気検出信号として収集する。補正部10による補正用信号、磁気検出信号の収集期間は、より厳密には、第1のセンサ3がオン・オフされる時点およびその直前、直後は含まない。この期間は、センサ3のオン・オフに伴う信号の乱れが電気信号に重畳するからである。
【0033】
本例においては、第1終了時刻と第2開始時刻は同時刻となっているが、第2開始時刻を第1終了時刻よりも前にしている場合、第1のセンサ3(例えばセンサ31)と第2のセンサ3(例えばセンサ32)とが同時にオンになっている期間がある。補正部10は、少なくとも第1開始時刻の後から第2開始時刻間際までの期間(上述した所定期間よりもわずかに短い期間)において第1のセンサ3に関する磁気検出信号を収集する。本例は、第2開始時刻から第1終了時刻までの期間において、第1のセンサ3に係る磁気検出信号を収集するようにしてもよいし、収集しないようにしてもよい。
【0034】
補正部10は、磁気検出信号と補正用信号との差分を算出し、差分信号を生成する。差分信号は、磁気検出信号に含まれるプローブ光レーザ3dの経年劣化等の成分が取り除かれた信号であり、補正前の磁気検出信号よりも外界の磁気を正確に表したものとなっている。差分信号は、画像生成部11に送信され、脳磁図などの画像に変換される。
【実施例3】
【0035】
実施例3に係る装置は、図7に示すように、検出回路5をオン・オフすることが可能な検出回路制御部13を備える。実施例3の構成は、センサ3のオン・オフに合わせて検出回路5をオン・オフすることが特徴的である。検出回路制御部13が検出回路5の制御端子にオン信号を出力すると検出回路5はオンとなる。検出回路制御部13が検出回路5の制御端子にオフ信号を出力すると検出回路5はオフとなる。検出回路5がオンとなると、当該検出回路5に対応するセンサ3の光信号を磁気検出信号に変換する機能が有効化され、検出回路5がオフとなると、当該検出回路5に対応するセンサ3の光信号を磁気検出信号に変換する機能が無効化される。
【0036】
本例の検出回路制御部13は、基本的には、図8に示すように、センサ3がオンされている期間中に当該センサ3に接続されている検出回路5をオン状態とし、センサ3がオフされている期間中に当該センサ3に接続されている検出回路5をオフ状態とする。従って、本例の検出回路制御部13は、電源制御部22に同期して動作する。
【0037】
検出回路制御部13の動作は、厳密には、電源制御部22がセンサ3をオンした後で当該センサ3に接続された検出回路5をオン状態とし、電源制御部22がセンサ3をオフするのに先立って当該センサ3に接続された検出回路5をオフ状態とする構成となっている。すなわち、本例は、検出回路制御部13の動作は、第1開始時刻の後に検出回路5をオンし、第1終了時刻に先だって検出回路をオフする構成である。例えば、図9のタイムチャートに示すように、第1のセンサ3に接続された第1の検出回路5は、第1のセンサ3,第2のセンサ3がオン・オフされる時点およびその直前、直後はオフ状態となっている。この構成は、第2のセンサ3に接続された第2の検出回路5でも同様である。仮に、第1のセンサ3,第2のセンサ3がオン・オフされる時点およびその直前、直後において検出回路5をオン状態とすると、検出回路5はその間にも出力信号を画像生成部11に送信し続けてしまう。このときの出力信号は、センサ3のオン・オフに影響されて乱れたものとなっている。本例によれば、センサ3がオン・オフされている間は、検出回路5をオフとし、磁気検出信号の収集を行わないように構成されているので、このような出力信号に乱れが画像生成部11に送信されることがない
【0038】
本例においては、第1終了時刻と第2開始時刻は同時刻となっているが、第2開始時刻を第1終了時刻よりも前にしている場合、第1のセンサ3(例えばセンサ31)と第2のセンサ3(例えばセンサ32)とが同時にオンになっている期間がある。検出回路制御部13は、少なくとも第1開始時刻の後から第2開始時刻間際までの期間(上述した所定期間よりもわずかに短い期間)第1のセンサ3に接続された検出回路5をオンとする。第2開始時刻から第1終了時刻までの期間においては、第1のセンサ3に係る検出回路5のオン状態を継続してもよいし、第2開始時刻に先立ってオン状態となっている第1のセンサ3に係る検出回路5をオフとするようにしてもよい。
【0039】
<実施形態の構成における効果>
以降、本例における生体磁気測定装置1の構成と、その効果について説明する。
(1)本例の生体磁気測定装置1は、それぞれ内部空間を有するセル3aを有し、該セル3a内で生じるプラズマによる光ポンピング作用を利用して生体磁気を検出するセンサ31,センサ32と、センサ31,センサ32が有するセル3aの各々における内部空間においてプラズマを発生させるための電力を供給するプラズマ生成電源21と、センサ31において第1開始時刻から第1終了時刻までプラズマを発生させ、かつ、センサ32において第1開始時刻より後の第2開始時刻から第1終了時刻より後の第2終了時刻までプラズマを発生させるようにプラズマ生成電源21を制御する電源制御部22を備える。
【0040】
上述のようにセンサ31,センサ32についてプラズマを発生させている期間が互いに異なるようにプラズマ生成電源21を制御するようにすれば、センサ同士が磁気測定に悪影響を及ぼし合うことがなくなり、生体磁気をより正確に測定することができる生体磁気測定装置を提供することができる。
【0041】
(2) (1)に記載の生体磁気測定装置1において、センサ31は、少なくとも第1開始時刻から第2開始時刻までの所定期間に生体磁気を検出する。
【0042】
上述のように、センサ31が、少なくとも第1開始時刻から第2開始時刻までの所定期間に生体磁気を検出するようにすれば、隣のセンサ32のセル3aの影響を受けずにセンサ31が生体磁気を検出できる。従って、上述の構成によれば、生体磁気をより正確に測定することができる生体磁気測定装置を提供することができる。
【0043】
(3) (1)または(2)に記載の生体磁気測定装置1において、第1終了時刻は、第2開始時刻と同時刻、または第2開始時刻よりも前の時刻である。
【0044】
上述のように、第1終了時刻が第2開始時刻と同時刻または第2開始時刻よりも前の時刻であれば、センサ31におけるプラズマの発生期間とセンサ32におけるプラズマの発生期間とが重複することが抑制されるので、センサ31は、第1開始時刻から第1終了時刻までの全期間において隣のセンサ32の影響を受けずに生体磁気を検出することができる。
【0045】
(4) (1)ないし(3)のいずれかに記載の生体磁気測定装置1において、第1開始時刻から2開始時刻までの所定期間にセンサ31が検出した磁気検出信号と、所定期間外にセンサ31が検出した磁気検出信号との差分をとることにより、センサ31の磁気検出信号を補正する補正部10を備える。
【0046】
上述のような補正部10を備えるようにすれば、磁気検出信号に含まれるセル3aの経年劣化等の影響を消去することができる。従って、上述の構成によれば、生体磁気をより正確に測定することができる生体磁気測定装置を提供することができる。
【0047】
(5) (1)ないし(4)のいずれかに記載の生体磁気測定装置1において、センサ31にとってセンサ32よりも離れた位置にあるセンサ33を有し、電源制御部22は、センサ31と、センサ33とでプラズマを発生させている期間が重なるようにプラズマ生成電源21を制御する。
【0048】
上述のような制御を行う電源制御部22を備えるようにすれば、センサ31の制御方式を他のセンサ33の制御に流用することができるので、装置内の制御が簡略化された生体磁気測定装置を提供することができる。
【0049】
(6) (1)ないし(5)のいずれかに記載の生体磁気測定装置1において、センサ31の光信号を電気信号に変換する光検出器4,検出回路5と、センサ31に対する光検出器4,検出回路5の有効化または無効化を行う検出回路制御部13を備え、検出回路制御部13は、第1開始時刻から第2開始時刻までの所定期間において光検出器4,検出回路5を有効化し、少なくとも前記第1終了時刻以降の期間は光検出器4,検出回路5を無効としている。
【0050】
上述のような検出回路制御部13を備えるようにすれば、少なくとも前記第1終了時刻以降の期間では、光検出器4,検出回路5がオフされ信号を出力しないので、磁気を検出した結果を伴わない光検出器4,検出回路5の出力を生じさせないようにすることができる。このように構成すれば、確実に生体磁気の検出が可能な生体磁気測定装置を提供することができる。
【0051】
(7) (6)に記載の生体磁気測定装置1において、検出回路制御部13は、第1開始時刻の後、光検出器4,検出回路5を有効化し、第1終了時刻に先立って、光検出器4,検出回路5を無効化する。
【0052】
上述のような検出回路制御部13を備えれば、センサ31にプラズマの発生を開始させる動作、プラズマを消滅させる動作の間は、光検出器4,検出回路5は、オフとされる。このように構成すれば、センサ31のオン・オフの切り替わりで生じる光検出器4,検出回路5の出力の乱れを収集しないで動作することになるので、生体磁気をより正確に測定することができる生体磁気測定装置を提供することができる。
【0053】
(8) 本例の生体磁気測定装置1の制御方法は、それぞれプラズマを発生させるセル3aを有し、光ポンピング作用を利用して生体磁気を検出して光信号として出力するセンサ31、センサ32と、それぞれのセル3aに対してプラズマを発生させる電力を供給するプラズマ生成電源21と、プラズマ生成電源21を制御する電源制御部22を備えた生体磁気測定装置1の制御方法において、センサ31が有するセル3aにプラズマを発生させる第1過程と、第1過程から所定時間が経過した後、センサ32が有するセルにプラズマを発生させる第2過程を備える。
【0054】
上述のような第1過程、第2過程を備える制御方法によれば、センサ同士が磁気測定に悪影響を及ぼし合うことがなくなり、生体磁気をより正確に測定することができる生体磁気測定装置の制御方法を提供することができる。
【0055】
(9) 本例の生体磁気測定装置1は、一対のプラズマ生成電極3bと、一対のプラズマ生成電極3bに挟まれる位置に設けられた誘電体(石英)とを備え、誘電体バリア放電によりプラズマを発生させるセル3aを有するセンサ3と、セル3aに対してプラズマを発生させる電力を供給するプラズマ生成電源21と、プラズマ生成電源21を制御する電源制御部22を備える。
【0056】
上述のように、誘電体バリア放電を利用してプラズマを発生させる構成によれば、より確実に生体磁気を検出することができる生体磁気測定装置が提供できる。
【0057】
<他の実施例>
なお、今回開示された実施例は、全ての点において例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲、並びに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。例として、本発明は、下記の様に変形実施することができる。
【0058】
(1)上述の実施例においては、1個のセンサ3につき1個の検出回路5を有する構成となっていたが、本発明はこの構成に限られない。図10に示す様にセンサ3と検出回路5との間にマルチプレクサ6を備えるようにすれば、複数のセンサ3に対して検出回路5を共用のものとすることができる。上述の実施例では、実施例2に係る構成を除き、生体磁気測定装置1が有する検出回路5の半分は機能していない。そこで、本例は、複数個のセンサ3に各々接続された光検出器4の出力を順に検出回路5に送出するマルチプレクサ6を備えている。マルチプレクサ6は、第1のセンサ3がオン状態のときは第1の光検出器4の出力を検出回路5に入力させる。同様に、マルチプレクサ6は、第2のセンサ3がオン状態のときは第2の光検出器4の出力を検出回路5に入力させる。以下、同様に、各センサ3を順にオン状態にすると共に、オン状態のセンサ3に対応する光検出器4の出力を検出回路5に入力させる。このようなマルチプレクサ6の制御は、マルチプレクサ制御部14によって実現できる。このような構成とすることで、部品点数が抑制された生体磁気測定装置が提供できる。
【0059】
(2)上述の変形例(1)の生体磁気測定装置では、マルチプレクサ6は検出回路5側に設けられていたが、マルチプレクサ6をプラズマ生成電源21側に設けて、交流電圧の印加に関する制御をマルチプレクサ6によって実現するようにしてもよい。すなわち、本例によれば、複数のセンサ3は、共通のマルチプレクサ6を通じて交流電圧が択一的に印加される。各センサ3への電力供給を択一的に行うことにより、隣り合うセンサ3の間だけでなく、マルチプレクサ6で制御される複数のセンサ3についてプラズマを発生させている期間が重なり合わないようにすることができる。
【0060】
(3)上述の実施例においては、誘電体バリア放電によりプラズマを発生させていたが、本発明はこの構成に限られない。RF(Radio Frequency)放電のような他の方式によってプラズマを発生させるようにしてもよい。
【0061】
(4)上述の実施例では、セル3aにヘリウムガスを充満させる構成だったが、本発明はこの構成に限られず、他の希ガスなどを用いる構成も考えられる。すなわち、本発明は、ヘリウムガスに限らず、電圧を印加するとプラズマが発生して磁気センサとして機能し、電圧の印加を中止するとプラズマが消滅して磁気センサの機能が消失する構成の磁気センサを備えた生体磁気測定装置に適用できる。
【0062】
(5)上述の実施例では、第1のセンサ3と第2のセンサ3とが同時に制御されていたが、本発明はこの構成に限られず、第1のセンサ3がオフされた後に第2のセンサ3がオンされ、第2のセンサ3がオフされた後に第1のセンサ3をオンする、というように、第1のセンサがオンとなっている期間と第2のセンサがオンとなっている期間とを経時的に離間させ、互いの期間の間にいずれのセンサ3もオフとなるような時間を設けるように構成してもよい。
【0063】
(6)上述の実施例では、複数のセンサ3を2つのグループに分けて、センサ3のオン・オフの制御方式を各グループの間で異ならせる構成となっていたが、複数のセンサ3を3つ以上のグループに分けて、センサ3のオン・オフの制御方式を各グループの間で異ならせる構成としてもよい。
【0064】
(7)上述の実施例では、ポンピング光とプローブ光とを2つのレーザ光源によりそれぞれ照射する構成としていたが、本発明はこの構成に限られず、ポンピング光レーザとプローブ光レーザと共通化して、1つのレーザ光源を省略する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0065】
3 センサ(磁気センサ)
21 プラズマ発生電源(プラズマ発生部)
22 電源制御部
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