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特許7742072画像表示装置およびヘッドマウントディスプレイ
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  • 特許-画像表示装置およびヘッドマウントディスプレイ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-10
(45)【発行日】2025-09-19
(54)【発明の名称】画像表示装置およびヘッドマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/46 20060101AFI20250911BHJP
   G02B 30/00 20200101ALI20250911BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20250911BHJP
   G02F 1/1347 20060101ALI20250911BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20250911BHJP
【FI】
G09F9/46 A
G09F9/46 Z
G02B30/00
G02B27/02 Z
G02F1/1347
H04N5/64 511A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021112780
(22)【出願日】2021-07-07
(65)【公開番号】P2023009467
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2024-06-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)オンライン発表日 令和2年7月9日 オンライン会議名:3次元画像コンファレンス2020 主催者アドレス http://www.3d-conf.org/ (2)公開日 令和2年7月8日 刊行物名:3次元画像コンファレンス2020 論文集 (3)オンライン発表日 令和3年1月19日 オンライン会議名:IS&T International Symposium on Electronic Imaging 2021 主催者アドレス https://www.imaging.org/site/IST/IST/Conferences/EI/EI_2021/EI2021.aspx (4)オンライン公開日 令和3年1月18日 刊行物名:IS&T International Symposium on Electronic Imaging 2021 論文 公開URL https://www.ingentaconnect.com/contentone/ist/ei/2021/00002021/00000002/art00004#
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】森本 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】米山 茂信
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊彰
(72)【発明者】
【氏名】高橋 桂太
(72)【発明者】
【氏名】松浦 孝太朗
【審査官】小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-033819(JP,A)
【文献】特表2020-513595(JP,A)
【文献】特表2021-503615(JP,A)
【文献】国際公開第2021/024600(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0063077(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110967831(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00-9/46
G02F 1/13-1/141
1/15-1/19
H05B 33/00-33/28
44/00
45/60
H10K 50/00-99/00
G02B 27/00-30/60
H04N 5/64-5/655
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚以上のディスプレイが媒質層を挟んで積層されたライトフィールド方式の画像表示装置であって、
前記ディスプレイのうち1枚のみがカラー表示を行うディスプレイであり、
最も正面に近い前記ディスプレイはモノクロ表示を行うディスプレイであり、
前記モノクロ表示を行うディスプレイのすべての画素が、前記カラー表示を行うディスプレイから入射する光線を透過可能に構成されており、
前記媒質層の厚さが、前記モノクロ表示を行うディスプレイの一つの画素に前記カラー表示を行うディスプレイの複数の画素から光線が入射し、かつ入射した複数の光線が回折限界を生じない値に設定されている、
画像表示装置。
【請求項2】
最も正面から遠い前記ディスプレイが発光機能を有する、
請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一項に記載の画像表示装置と、
接眼レンズと、
を備える、
ヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置、より詳しくは、ライトフィールド技術を用いた画像表示装置に関する。この画像表示装置を備えたヘッドマウントディスプレイについても言及する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示ディスプレイから出射されユーザーの目へ入射する光線を制御するライトフィールド技術が注目されている。人間は、各種物体で反射された光線が瞳に入ることによりその物体を見ることができる。ライトフィールド技術はこの反射光線を人工的に画像表示ディスプレイで再現したものであり、結果として人が自然界で見るような奥行き感を提供することができる。
【0003】
ライトフィールド技術を用いる画像表示装置としていくつかの態様が知られているが、代表的なものとして、マイクロレンズアレイ方式と積層方式を挙げることができる。
マイクロレンズアレイ方式では、直径がマイクロメートルオーダーのレンズを有するアレイがディスプレイパネルの表面に取り付けられている。マイクロレンズアレイ方式では、ディスプレイから出射された光をマイクロレンズアレイが特定の方向の光線の束に分解して見る者の目に導く。
【0004】
もう一方の積層方式では、特許文献1に記載のように、2枚のディスプレイパネルが媒質層を挟んで重ねられた構造を有する。見る者から遠い側に位置する第一のディスプレイパネルは、バックライト等を備え、光を出射する機能を有する。見る者に近い側に位置する第二のディスプレイパネルは光を出射する機能を有さず、第一のディスプレイから出射された光により照明される。
積層方式では、第一のディスプレイパネルのある画素から発せられた光線は、第二のディスプレイパネルのある画素を通って見る者の目に入射しており、光線が通過する画素の組み合わせにより光線を制御している。
【0005】
マイクロレンズアレイ方式では、1個のマイクロレンズが複数の画素を覆うため、原理的に表示解像度の低下が避けられない。
一方、積層方式では、第一のディスプレイパネルと第二のディスプレイパネルとを十分位置合わせする必要があるものの、解像度を上げることはそれほど困難ではない点で優れている。最新のディスプレイでは、1インチあたり900以上の画素を有するものも報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2020-521174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者らは、積層方式において画素サイズを小さくしていくと、光学的な表示解像度の限界が発生することを見出した。発明者は、これを解決して本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、積層方式のライトフィールド画像表示装置において、さらに高解像度を実現しやすくする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様は、2枚以上のディスプレイが媒質層を挟んで積層されたライトフィールド方式の画像表示装置である。
この画像表示装置は、ディスプレイのうち1枚のみがカラー表示を行うディスプレイであり、最も正面に近いディスプレイはモノクロ表示を行うディスプレイである。
この画像表示装置は、モノクロ表示を行うディスプレイのすべての画素が、前記カラー表示を行うディスプレイから入射する光線を透過可能に構成されている。
媒質層の厚さは、モノクロ表示を行うディスプレイの一つの画素にカラー表示を行うディスプレイの複数の画素から光線が入射し、かつ入射した複数の光線が回折限界を生じない値に設定されている。
この画像表示装置においては、最も正面から遠いディスプレイが発光機能を有してもよい。
【0010】
本発明の第二の態様は、第一の態様に係る画像表示装置と、接眼レンズとを備えるヘッドマウントディスプレイである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、積層方式のライトフィールド画像表示装置のさらなる解像度の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施形態に係る画像表示装置を示す模式断面図である。
図2】従来の画像表示装置を示す模式断面図である。
図3】第一実施形態に係る画像表示装置における光線経路を示す図である。
図4】本発明の第二実施形態に係る画像表示装置を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第一実施形態について、図1から図3を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る画像表示装置1を模式的に示す図である。画像表示装置1は、ライトフィールド方式の画像表示装置であり、第一ディスプレイ10と第二ディスプレイ20との2枚の液晶ディスプレイを備えている。
画像表示装置は、第二ディスプレイ20側が正面であり、使用者は正面側から表示される画像を見る。
【0014】
第一ディスプレイ10には、バックライト11と、液晶層12と、カラーフィルタ13とが順に配置されており、公知のカラー液晶ディスプレイと概ね同様の構造を有する。本実施形態において、第一ディスプレイ10の画素15は、カラーフィルタ13の赤フィルタRが配置された第一サブ画素15aと、カラーフィルタ13の緑フィルタGが配置された第二サブ画素15bと、カラーフィルタ13の青フィルタBが配置された第三サブ画素15cとを含む。
【0015】
第二ディスプレイ20は、液晶層22のみを備えており、バックライトとカラーフィルタを備えない。すなわち、第二ディスプレイ20は、第一ディスプレイ10からバックライトとカラーフィルタを外した構造である。ここで、第二ディスプレイ20はカラーフィルタを備えていないが、説明の便宜上、第二ディスプレイ20の25a、25b、25c等をサブ画素と称して説明する。第二ディスプレイ20において、サブ画素25a、25b、25c等の各サブ画素は、第一ディスプレイ10の各サブ画素と同一の開口サイズを有する。
図1には模式断面図を示しているが、本実施形態において、第一ディスプレイ10と第二ディスプレイ20の正面視形状は、同一寸法の長方形あるいは正方形である。第一ディスプレイ10と第二ディスプレイ20とは、第二ディスプレイ20側から見た画像表示装置1の正面視において、互いの四辺が一致するように配置されている。
【0016】
第一ディスプレイ10と第二ディスプレイ20とは、間に媒質層30をはさんで配置されている。媒質層の典型例は空気層であるが、空気(屈折率1.0002926)とほぼ同様の屈折率を有する、アルゴン(屈折率1.000281)、二酸化炭素(屈折率1.000449)、ヘリウム(屈折率1.000036)、水素(屈折率1.000140)、窒素(屈折率1.000297)、酸素(屈折率1.000276)等からなる層や、これらの混合物からなる層も使用できる。さらに、真空層(屈折率1.0000)も使用でき、本発明における媒質層に含まれる。
【0017】
画像表示装置1における光線の経路について説明する。
まず、第一ディスプレイ10のバックライト11から光線が出射される。出射された光線は、液晶層12およびカラーフィルタ13、さらに媒質層30を通って第二ディスプレイ20に向かう。
【0018】
図2に、従来の画像表示装置100を示す。画像表示装置100は、画像表示装置1と同様、積層方式のライトフィールドディスプレイであるが、2枚のディスプレイ110、120の両方がカラーフィルタ13を備えている。
画像表示装置100においては、ディスプレイ110からの光線は、同色のカラーフィルタが配置されたサブ画素を通過する。例えば、緑フィルタGを通ってディスプレイ110から出た光線は、図2に示すように、ディスプレイ120のサブ画素のうち、緑フィルタGが配置されたサブ画素を通過して見る者の目に入射し、緑として視認される。
【0019】
積層方式のライトフィールドディスプレイにおいて表示解像度を向上させるには、2枚のディスプレイにおける画素サイズを小さくすればよい。例えば、各画素を構成するサブ画素の開口サイズを1/3にすると、表示解像度は理論上3倍になる。
【0020】
しかし、発明者らの検討により、このような解像度の向上には、光学的な限界があることが明らかになった。これは、見る者に近い側のディスプレイ120において、となり合うサブ画素に入射する光が干渉を生じることに起因する。すなわち、光の干渉による回折限界によって画像のボケを生じ、結果として画像品質が劣化する現象が発生することが分かった。
【0021】
回折限界について、円形開口の例で単純化しつつ、以下に説明する。直径Dの2つの円形開口がお互いの円の中心からある距離だけ離れて位置するとする。この2つの開口を非可干渉な光で照明したとき、開口における回折像は2つの開口を通過する光の重ね合わせ(干渉)で表現できる。ここで2つの開口による回折像が干渉している場合、2つの像が2点として判別できる限界の距離分解能が回折限界である。回折限界の定義は様々あるが、特に有名なのがレイリーの回折限界で、下記式1で表される。
【0022】
【数1】
【0023】
式1において、λは光の波長で、主に人の目の感度がよい550nmが使われる。また、Lは開口からの後方側距離である。開口の形状が円形開口の場合における係数は1.22だが、矩形開口の場合は係数が1になるため、矩形開口の回折限界δは、下記式2で表される。
【0024】
【数2】
【0025】
回折像間の距離がδ以上であれば2つの開口による回折像が分離して識別できることになる。逆にδより小さければ2つの開口による回折像が一つの点に見えてしまうため、劣化した画像品質となる。後方側距離Lにおける回折像のエアリーディスクの直径sは下記式3で表される。
【0026】
【数3】
【0027】
発明者らは、この現象に着目し、第一ディスプレイ10から出射された光線が入射する第二ディスプレイ20において、カラーフィルタを設けない構成とした。これにより、図3に示すように、第二サブ画素15bを通って第二ディスプレイ20に入射する光線は、緑フィルタGに対応する位置にあるサブ画素25bだけでなく、サブ画素25aやサブ画素25c等に対応する位置のサブ画素も通過することができる。
【0028】
これにより、第一ディスプレイ10の第二サブ画素15bを通って第二ディスプレイ20に入射し、第二ディスプレイ20のサブ画素を通過する光線の量は、図2に示した従来の画像表示装置100の3倍となる。すなわち、第一ディスプレイ10のサブ画素の開口サイズと第二ディスプレイ20のサブ画素の開口サイズが同一である場合、画像表示装置1の表示解像度は、原理的に画像表示装置100の3倍となる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態に係る画像表示装置1は、回折限界による画像表示品質の劣化を抑えつつ、解像度を向上しやすいという利点がある。
画像表示装置1において、第二ディスプレイ20にはモノクロの画像が表示されるが、その後方にある第一ディスプレイ10から色のついた光が入射するため、見る者にはカラー画像が視認される。
【0030】
本発明の第二実施形態について、図4を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0031】
図4は、本実施形態に係る画像表示装置200を示す模式断面図である。
画像表示装置200は、第一ディスプレイ210と、第二ディスプレイ20との間に第三ディスプレイ230を備えた3層積層型のライトフィールドディスプレイである。
第一ディスプレイ210は、第一実施形態と同様にバックライト11を備えるが、カラーフィルタを有さない。第三ディスプレイ230は、液晶層232と、カラーフィルタ233とを備えている。すなわち、第一ディスプレイ210は第三ディスプレイ230からカラーフィルタを外しかつバックライトを取り付けた構造であり、第二ディスプレイ20は第三ディスプレイ230からカラーフィルタを外した構造である。第一実施形態と同様に、第一ディスプレイ210と第二ディスプレイ20はカラーフィルタを備えていないが、説明の便宜上、サブ画素と称して説明する。
【0032】
画像表示装置200においては、第三ディスプレイ230の各サブ画素に対して、第一ディスプレイ210からの光線が入射する。さらに、第三ディスプレイ230の各サブ画素を通過した光線は、第二ディスプレイ20の各サブ画素に入射する。
図4に示す通り、第一実施形態と同様に、第三ディスプレイ230から出射された光線は第二ディスプレイ20をその3倍の数量で通過できることから、回折限界を抑制しつつ、表示解像度を向上しやすい構成となっている。さらに、第三ディスプレイ230を備えることにより、第一実施形態よりも奥行きのある画像表示が可能となっている。
【0033】
本実施形態において、カラーフィルタを備えるディスプレイは、見る者に最も近いディスプレイでさえなければよい。したがって、カラーフィルタを備えるディスプレイは、上述した第三ディスプレイ230に限られず、第一ディスプレイ210であってもよい。
また、カラーフィルタを備えるディスプレイが1つのみであり、かつ見る者に最も近くなければ、4つ以上のディスプレイを備えてもよい。
【0034】
本発明に係る画像表示装置について、実施例および比較例を用いてさらに説明する。本発明の技術的範囲は、実施例の具体的内容のみを根拠として限定されることはない。
【0035】
(実施例1)
実施例1は、第一実施形態に対応する実施例である。
正面視長方形の同一サイズのIPS(In-Plane Switching)方式の液晶ディスプレイパネルを2枚準備した。一方のディスプレイにバックライトおよびカラーフィルタを取り付けて第一ディスプレイとし、もう一方はそのまま第二ディスプレイとした。
表示解像度は、いずれも1インチあたり480画素(480ppi)であり、画素の開口サイズは52.9μmである。
【0036】
第一ディスプレイと第二ディスプレイとを7mmの間隔を空けて正面視で完全に重ね、この状態を固定することにより、実施例1に係る画像表示装置を得た。この画像表示装置は、媒質層として、厚さ7mmの空気層を有する。
【0037】
実施例1に係る画像表示装置に接眼レンズを取り付け、実施例1に係るヘッドマウントディスプレイ(HMD)を作製した。
【0038】
実施例1に係る画像表示品質について、HMDを用いて、目視による表示ボケの有無を評価した。
【0039】
実施例1において、第二ディスプレイの位置におけるエアリーディスクの直径は、上述した式3より145.5μmである。第一ディスプレイから出射された光線は第二ディスプレイを3倍の数量で通過できることから、このときの画素の開口サイズは52.9μm×3=158.7μmに相当するため、実施例1のHMDでは回折限界を回避できることが理論上示されている。
実施例1に係るHMDの目視において表示のボケは認められず、良好であった。
【0040】
(実施例2)
実施例2は、第二実施形態に対応する実施例である。
実施例1と同様のIPS方式の液晶ディスプレイパネルを3枚準備した。うち1枚にバックライトを取り付けて第一ディスプレイとし、他の1枚にカラーフィルタを取り付けて第三ディスプレイとした。残る1枚は、そのまま第二ディスプレイとした。
第一ディスプレイ、第三ディスプレイ、および第二ディスプレイをそれぞれ7mmの間隔を空けて正面視で完全に重ね、この状態を固定することにより、実施例2に係る画像表示装置を得た。この画像表示装置は、媒質層として、厚さ7mmの空気層を有する。
【0041】
実施例1と同様に、実施例2に係るHMDを作製し、画像表示品質を評価した。
実施例2において、第二ディスプレイの位置におけるエアリーディスクの直径は、実施例1と同様、145.5μmである。第二ディスプレイの画素の開口サイズも、実施例1同様、158.7μmに相当するため、実施例2のHMDでも回折限界を回避できることが理論上示されている。
実施例2に係るHMDの目視において表示のボケは認められず、良好であった。さらに、実施例1よりも奥行きのある画像表示が可能であった。
【0042】
(比較例1)
第二ディスプレイにカラーフィルタを取り付けた点を除き、実施例1と同様の手順で比較例1に係る画像表示装置およびHMDを作製した。
比較例1において、第二ディスプレイの位置におけるエアリーディスクの直径は、実施例1と同様、145.5μmである。一方、第二ディスプレイの画素の開口サイズは、カラーフィルタを備えるために52.9μmのままであるため、比較例1のHMDでは回折限界を回避できないことが理論上示されている。
実際に、目視による画像品質の評価では、表示のボケが認められ、良好ではなかった。
【0043】
(比較例2)
第一ディスプレイおよび第二ディスプレイにカラーフィルタを取り付けた点を除き、実施例2と同様の手順で比較例2に係る画像表示装置およびHMDを作製した。
比較例2において、第二ディスプレイの位置におけるエアリーディスクの直径は、実施例2と同様、145.5μmである。一方、第二ディスプレイの画素の開口サイズは、カラーフィルタを備えるために52.9μmのままであるため、比較例2のHMDでは回折限界を回避できないことが理論上示されている。
実際に、目視による画像品質の評価では、表示のボケが認められ、良好ではなかった。
【0044】
以上、本発明の各実施形態および実施例について説明したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。
【0045】
例えば、本発明において、第一ディスプレイが発光するメカニズムは、上述したバックライトには限られない。すなわち、第一ディスプレイとして自発光ディスプレイを用いる場合は、有機EL(OLED)ディスプレイや、ミニLED、マイクロLED等を備えてサブ画素自体が発光するものなど、公知の各種構造のものを採用できる。
【0046】
また、第一ディスプレイをカラー表示する構成とする場合、例えば赤色、緑色、青色のミニLEDやマイクロLED等を備えることにより、カラーフィルタを備えない構成としてもよい。
【0047】
さらに、画像表示装置自体が発光機能を有さず、後方に別途光源が配置されることにより画像表示可能な構成であってもよい。
【0048】
本発明に係る画像表示装置においては、モノクロ表示される第二ディスプレイのサブ画素の開口サイズが小さすぎると、回折限界が生じる可能性がある。実施例に示されたように、エアリーディスクの直径を算出し、これに基づいて第二ディスプレイのサブ画素の開口サイズを決定することで、そのような事態の発生を防止できる。
【符号の説明】
【0049】
1、200 画像表示装置
10、210 第一ディスプレイ
20 第二ディスプレイ
30 媒質層
230 第三ディスプレイ
図1
図2
図3
図4