(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-16
(45)【発行日】2025-09-25
(54)【発明の名称】気液分離装置
(51)【国際特許分類】
B04C 5/24 20060101AFI20250917BHJP
B04C 5/04 20060101ALI20250917BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20250917BHJP
B24B 55/12 20060101ALI20250917BHJP
【FI】
B04C5/24
B04C5/04
B23Q11/00 Z
B24B55/12
(21)【出願番号】P 2022005431
(22)【出願日】2022-01-18
【審査請求日】2024-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】大頭 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】井脇 茂宏
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-081137(JP,A)
【文献】特開2018-069217(JP,A)
【文献】特表2008-541815(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0193772(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109909080(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04C 1/00 - 11/00
B23Q 11/00
B24B 55/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気を気体と液体とに分離する気液分離装置であって、
該排気を供給する供給口が側壁に形成され、下部に底壁を備えると共に上部で開口する開口部を備える外容器と、
該外容器の内側に第1の隙間及び第2の隙間を形成すると共に該底壁に接触しないように該外容器に収容される第1の筒体と、
該第1の筒体の内側に第3の隙間を形成すると共に該底壁に接触しないように該外容器に収容される第2の筒体と、
該第2の筒体の内側で垂下する漏斗状の第1のノズルと、
該第1のノズルの上方に設けられ、該第3の隙間から該第2の筒体の内側に連通する連通路と、
該第2の筒体の内側に第4の隙間を形成すると共に該連通路と対向するように該第2の筒体に挿入される第3の筒体を備え、該開口部の上部と、該第1の筒体の上部と、該第2の筒体の上部とを覆う第1の蓋体と、
該第1の蓋体の外周部から垂下して該第2の隙間に挿入される複数の漏斗状の第2のノズルと、
該第1の蓋体の内側に第5の隙間を形成すると共に複数の該第2のノズルに連結される複数の第4の筒体を備え、該第1の蓋体に積層される第2の蓋体と、
該第2のノズルの下側に設けられ、該第1の隙間と該第2の隙間とを区画する環状の区画リングと、
該第2の隙間から該第3の隙間を横切って該第2の筒体の内側に至る流路と、を含み、
該外容器の底部にはドレンホースが連結されるドレンが設けられ、該第2の蓋体の上側には吸引ユニットが配設されることを特徴とする気液分離装置。
【請求項2】
該流路は、該第2の隙間から該第2の筒体の内側に向かって下向きに傾斜するように形成され、所定の間隔で3個以上配設されることを特徴とする請求項1記載の気液分離装置。
【請求項3】
該吸引ユニットは、ファンであることを特徴とする請求項1又は2記載の気液分離装置。
【請求項4】
該吸引ユニットを作動させると、
該排気は、該供給口から該第1の隙間に進入して、第1の廃液と第1の排気とに分離され、
該第1の廃液は、該外容器の底部に至り該ドレンホースを介して排出され、
該第1の排気は、該第1の隙間から該連通路を介して該第1のノズルに進入し、第2の廃液と第2の排気とに分離され、
該第2の廃液は、該外容器の底部に至り該ドレンホースを介して排出され、
該第2の排気は、該第3の筒体から該第5の隙間を介して複数の該第2のノズルに進入し、第3の廃液と第3の排気とに分離され、
該第3の廃液は、該流路及び該第2の筒体の内側を介して該外容器の底に至り該ドレンホースを介して排出され、
該第3の排気は、該第4の筒体に進入して該吸引ユニットに至ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の気液分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置等から排出された排気を気体と液体とに分離する気液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ、樹脂パッケージ基板等の被加工物の加工には、切削装置、研削装置、マシニングセンタ、NC(Numerical Control)旋盤等の各種の加工装置が用いられる。加工装置で被加工物を加工する際には、加工の目的に応じて純水、オイル等の液体(加工液)が被加工物に供給される。そのため、加工装置で被加工物を加工すると、被加工物の加工が行われる処理室内ではミスト状の加工液が飛散する。
【0003】
ミスト状の加工液が加工装置の内部に付着したまま放置されると、加工装置を構成する部品の錆や電子機器の故障等が発生する原因となる。そのため、処理室内で発生したミスト状の加工液は、処理室内の気体とともに排気ダクト等を介して加工装置の外部に排出される。
【0004】
加工装置から排出された排気は、気液分離装置によって気体と液体とに分離された後、廃棄される。例えば特許文献1には、工作機械で被加工物を加工する際に発生するオイルミストを旋回流(サイクロン)によって気体から分離するサイクロン式の気液分離装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなサイクロン式の気液分離装置は、旋回流を発生させて排気に含まれる液体に遠心力を作用させることにより、加工装置等から排出される排気を気体と液体とに分離する。しかしながら、排気に含まれる液体(ミスト)の種類、粒子径等にはばらつきがあり、排気を旋回流にのせても、排気から液体を離脱させるために十分な遠心力が液体に作用しないことがある。この場合、排気中にミスト状の液体の一部が残留し、気体と液体との分離が不十分になる。
【0007】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、加工装置等から排出された排気を気体と液体とに確実に分離することが可能な気液分離装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、排気を気体と液体とに分離する気液分離装置であって、該排気を供給する供給口が側壁に形成され、下部に底壁を備えると共に上部で開口する開口部を備える外容器と、該外容器の内側に第1の隙間及び第2の隙間を形成すると共に該底壁に接触しないように該外容器に収容される第1の筒体と、該第1の筒体の内側に第3の隙間を形成すると共に該底壁に接触しないように該外容器に収容される第2の筒体と、該第2の筒体の内側で垂下する漏斗状の第1のノズルと、該第1のノズルの上方に設けられ、該第3の隙間から該第2の筒体の内側に連通する連通路と、該第2の筒体の内側に第4の隙間を形成すると共に該連通路と対向するように該第2の筒体に挿入される第3の筒体を備え、該開口部の上部と、該第1の筒体の上部と、該第2の筒体の上部とを覆う第1の蓋体と、該第1の蓋体の外周部から垂下して該第2の隙間に挿入される複数の漏斗状の第2のノズルと、該第1の蓋体の内側に第5の隙間を形成すると共に複数の該第2のノズルに連結される複数の第4の筒体を備え、該第1の蓋体に積層される第2の蓋体と、該第2のノズルの下側に設けられ、該第1の隙間と該第2の隙間とを区画する環状の区画リングと、該第2の隙間から該第3の隙間を横切って該第2の筒体の内側に至る流路と、を含み、該外容器の底部にはドレンホースが連結されるドレンが設けられ、該第2の蓋体の上側には吸引ユニットが配設される気液分離装置が提供される。
【0009】
なお、好ましくは、該流路は、該第2の隙間から該第2の筒体の内側に向かって下向きに傾斜するように形成され、所定の間隔で3個以上配設される。また、好ましくは、該吸引ユニットは、ファンである。
【0010】
また、好ましくは、該吸引ユニットを作動させると、該排気は、該供給口から該第1の隙間に進入して、第1の廃液と第1の排気とに分離され、該第1の廃液は、該外容器の底部に至り該ドレンホースを介して排出され、該第1の排気は、該第1の隙間から該連通路を介して該第1のノズルに進入し、第2の廃液と第2の排気とに分離され、該第2の廃液は、該外容器の底部に至り該ドレンホースを介して排出され、該第2の排気は、該第3の筒体から該第5の隙間を介して複数の該第2のノズルに進入し、第3の廃液と第3の排気とに分離され、該第3の廃液は、該流路及び該第2の筒体の内側を介して該外容器の底に至り該ドレンホースを介して排出され、該第3の排気は、該第4の筒体に進入して該吸引ユニットに至る。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様に係る気液分離装置は、外容器の内側で3種類の旋回流を発生させ、これらの旋回流によって加工装置等から排出された排気の気液分離を行うことができる。これにより、種類、粒子径等が異なる様々な液体を排気から離脱させることが可能となり、排気が気体と液体とに確実に分離される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】旋回流生成ユニット、第1の蓋体及び第2の蓋体を示す斜視図である。
【
図5】
図5(A)は第1の蓋体の上面側を示す斜視図であり、
図5(B)は第1の蓋体の下面側を示す斜視図である。
【
図6】
図6(A)は第2の蓋体の上面側を示す斜視図であり、
図6(B)は第2の蓋体の下面側を示す斜視図である。
【
図9】第1の旋回流によって気液分離を行う気液分離装置を示す断面図である。
【
図10】第2の旋回流によって気液分離を行う気液分離装置を示す断面図である。
【
図11】第3の旋回流によって気液分離を行う気液分離装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の一態様に係る実施形態を説明する。まず、本実施形態に係る気液分離装置の構成例について説明する。
図1は、気液分離装置2を示す分解斜視図である。なお、
図1において、X軸方向(第1水平方向)とY軸方向(第2水平方向)とは、互いに垂直な方向である。また、Z軸方向(鉛直方向、上下方向、高さ方向)は、X軸方向及びY軸方向と垂直な方向である。
【0014】
気液分離装置2は、気液分離装置2を構成する各構成要素を収容する外容器4を備える。外容器4は、樹脂、金属等でなり、ボウル状のケース6と、中空の円柱状のカバー8とを含む。ケース6の上端側にカバー8の下端側を固定することにより、外容器4が構成される。また、ケース6の側部には、加工装置等から排出された排気が供給される排気路10が設けられている。
【0015】
図2は、外容器4を示す断面図である。ケース6は、円柱状の側壁6aと、側壁6aの下端部に接続された円錐台状の底壁6bとを含む。底壁6bの中央部には、ケース6の内部から外部に連通する円柱状のドレン(連通孔)6cが設けられている。また、カバー8は、円柱状の側壁8aと、側壁8aの下端部からカバー8の中心側に突出する環状の区画リング(突起部、凸部)8bとを含む。
【0016】
カバー8の下端部がケース6の側壁6aの上端部に接合されることにより、ケース6とカバー8とが一体化される。そして、ケース6の側壁6aとカバー8の側壁8aとによって、外容器4の側壁が構成される。また、ケース6の内部の空間とカバー8の内部の空間とが連結され、外容器4の開口部4aが構成される。開口部4aは、外容器4の上部で開口している。
【0017】
排気路10は、ケース6の側壁6aに接続されている。排気路10の先端は、側壁6aの内周面で開口しており、外容器4の内部に排気を供給する円形状の供給口10aを構成している。なお、排気路10の中心線は、水平面(XY平面)においてケース6の径方向に対して傾斜しており、供給口10aはケース6の中心と側壁6aとの間の空間に向かって開口している。加工装置等から排出された排気が排気路10に供給されると、供給口10aから外容器4の内部に排気が流入する。
【0018】
図1に示すように、外容器4には、筒状の旋回流生成ユニット12が収容、固定される。旋回流生成ユニット12は、ケース6及びカバー8と同心円状に配置されるように、外容器4に挿入される。
【0019】
図3は、旋回流生成ユニット12を示す断面図である。旋回流生成ユニット12は、樹脂、金属等でなり、第1の筒体14と、第1の筒体14の内側に設けられた第2の筒体16とを備える。第1の筒体14は、中空の円柱状に形成され、環状の外周面14a及び内周面14bを含む。また、第2の筒体16は、第1の筒体14よりも径が小さい中空の円柱状に形成され、環状の外周面16a及び内周面16bを含む。第1の筒体14の下端14cと第2の筒体16の下端16cとはそれぞれ、下方に向かって開口している。
【0020】
第1の筒体14と第2の筒体16とは、Z軸方向に沿って同心円状に配置されている。なお、第1の筒体14の高さは第2の筒体16の高さよりも低く、第1の筒体14の上端部と第2の筒体16の上端部とは環状の連結部12aを介して連結されている。そのため、第1の筒体14の下端14cは、第2の筒体16の下端16cよりも上方に位置付けられている。
【0021】
第2の筒体16の内側には、漏斗状の第1のノズル18が設けられている。第1のノズル18は、中空の円錐台状に形成され、環状の外周面18a及び内周面18bを含む。第1のノズル18の上端部は第2の筒体16の内周面16bに接続されており、第1のノズル18は上端から下端に向かって径が小さくなるように第2の筒体16の内側で垂下している。また、第1のノズル18の下端18cは、第2の筒体16の下端16cに向かって開口している。
【0022】
第2の筒体16の上部及び第1のノズル18によって囲まれた空間は、旋回流生成ユニット12の開口部12bを構成している。開口部12bは、第2の筒体16の上部で開口している。
【0023】
第2の筒体16の上部には、外周面16aから内周面16bに至る円形状の連通路20が設けられている。連通路20は、第1のノズル18の上方に形成され、第2の筒体16の外部から内部に連通している。なお、連通路20の中心線は、水平面(XY平面)において第2の筒体16の径方向に対して傾斜しており、連通路20は第2の筒体16の中心と内周面16bとの間の空間に向かって開口している。
【0024】
また、旋回流生成ユニット12は、第1の筒体14の外側と第2の筒体16の内側とを接続する複数の流路(液路)22を備える。流路22は、第1の筒体14と第2の筒体16との隙間を横切るように、第1の筒体14及び第2の筒体16に接続されている。流路22の一端は第1の筒体14の外周面14aで開口し、流路22の他端は第2の筒体16の内周面16bで開口している。
【0025】
例えば流路22は、第1の筒体14及び第2の筒体16の周方向に沿って所定の間隔で3個以上配設される。そして、流路22はそれぞれ、第1の筒体14の外周面14aから第2の筒体16の内周面16bに向かって下向きに傾斜するように形成される。
【0026】
図4は、旋回流生成ユニット12、第1の蓋体24及び第2の蓋体32を示す斜視図である。旋回流生成ユニット12上には、樹脂、金属等でなる第1の蓋体24及び第2の蓋体32が順に積層される。
【0027】
図5(A)は第1の蓋体24の上面側を示す斜視図であり、
図5(B)は第1の蓋体24の下面側を示す斜視図である。第1の蓋体24は、第1の筒体14(
図4参照)よりも径が大きい円盤状の基台26を備える。基台26は、互いに概ね平行な上面26a及び下面26bを含む。
【0028】
図5(A)に示すように、基台26の外周部には、複数の貫通孔26cが設けられている。複数の貫通孔26cは、上面26aから下面26bに至るように形成され、基台26を厚さ方向に貫通している。また、複数の貫通孔26cは、基台26の周方向に沿って概ね等間隔に配列されている。
【0029】
基台26の中央部の上面26a側には、略円柱状の凹部26dが設けられている。また、複数の貫通孔26cと凹部26dとの間には、貫通孔26cと凹部26dとを連結させる複数のスリット状の溝26eが設けられている。溝26eの一端は貫通孔26cに接続され、溝26eの他端は凹部26dに接続されている。なお、複数の溝26eは、基台26の径方向に対して同じ方向に傾斜するように形成されている。さらに、第1の蓋体24の中央部には、凹部26dの底から基台26の下面26bに至る円形の貫通孔26fが設けられている。
【0030】
図5(B)に示すように、基台26の中央部の下面26b側には、中空の円柱状に形成された第3の筒体28が設けられている。第3の筒体28は、基台26の下面26bから下方に突出するように設けられており、基台26の貫通孔26fに連結されている。なお、第3の筒体28の径は第2の筒体16の内周面16b(
図3参照)の径よりも小さく、第3の筒体28は第2の筒体16の内側に挿入可能となっている。
【0031】
さらに、第1の蓋体24の外周部には、複数の漏斗状の第2のノズル30が設けられている。複数の第2のノズル30は、中空の円錐状に形成され、複数の貫通孔26c(
図5(A)参照)と同数設けられる。
【0032】
第2のノズル30の上端部は基台26の下面26bで貫通孔26cに連結されており、第2のノズル30は上端から下端に向かって径が小さくなるように基台26から垂下している。なお、第2のノズル30の上端の径は第1のノズル18(
図3参照)の上端の径よりも小さく、第2のノズル30の下端の径は第1のノズル18の下端の径よりも小さい。また、第2のノズル30の下端30aは下方に向かって開口している。
【0033】
図6(A)は第2の蓋体32の上面側を示す斜視図であり、
図6(B)は第2の蓋体32の下面側を示す斜視図である。第2の蓋体32は、第1の蓋体24の基台26(
図5(A)及び
図5(B)参照)と概ね同形の円盤状の基台34を備える。基台34は、互いに概ね平行な上面34a及び下面34bを含む。
【0034】
図6(A)に示すように、基台34の外周部には、複数の貫通孔34cが設けられている。複数の貫通孔34cは、上面34aから下面34bに至るように形成され、基台34を厚さ方向に貫通している。なお、貫通孔34cは、第1の蓋体24の貫通孔26c(
図5(A)参照)と同数設けられ、複数の貫通孔34cは貫通孔26cと概ね同一の間隔で基台34の外周縁に沿って配列されている。
【0035】
また、第2の蓋体32の外周部には、中空の円柱状に形成された複数の第4の筒体36が設けられている。第4の筒体36は、基台34の下面34bから下方に突出するように形成され、貫通孔34cに連結されている。なお、第4の筒体36の径は第1の蓋体24の貫通孔26c(
図5(A)参照)の径よりも小さく、第4の筒体36は貫通孔26cの内側に挿入可能となっている。
【0036】
図4に示すように、第1の蓋体24は、第3の筒体28が第2の筒体(開口部12b)に挿入されるように旋回流生成ユニット12上に配置される。これにより、旋回流生成ユニット12の上部が第1の蓋体24によって覆われる。また、第2の蓋体32は、複数の第4の筒体36がそれぞれ複数の貫通孔26cに挿入されるように、第1の蓋体24上に積層される。
【0037】
図1に示すように、第2の蓋体32の上側には、カバー38が配置される。例えばカバー38は、樹脂、金属等でなるボウル状の部材であり、第2の蓋体32の上面側を覆うように外容器4の上端部に固定される。なお、カバー38の上端側の中央部には、カバー38の外部から内部に連通する円形の開口部38aが設けられている。
【0038】
また、第2の蓋体32の上側には、吸引ユニット40が配設される。吸引ユニット40は、排気路10から外容器4の内部に供給された気体を吸引することにより、外容器4の内部に吸引ユニット40に向かう気流を発生させる。例えば吸引ユニット40は、ファンによって構成され、カバー38上に固定される。ただし、吸引ユニット40に向かう気流を外容器4の内部に発生させることが可能であれば、吸引ユニット40の種類に制限はない。例えば、吸引ユニット40としてエジェクタ等の吸引源を用いることもできる。
【0039】
上記のように、外容器4に旋回流生成ユニット12が収容され、外容器4及び旋回流生成ユニット12の上に第1の蓋体24及び第2の蓋体32が載置される。また、第1の蓋体24及び第2の蓋体32がカバー38によって覆われ、カバー38に吸引ユニット40が装着される。これにより、加工装置等から排出された排気を気体と液体とに分離する気液分離装置2が構成される。
図7は、気液分離装置2を示す斜視図である。
【0040】
気液分離装置2は、切削装置、研削装置、研磨装置、レーザー加工装置等の加工装置に接続される。また、加工装置は、マシニングセンタ、NC(Numerical Control)旋盤等であってもよい。そして、加工装置から排出された排気が気液分離装置2に供給される。
【0041】
なお、加工装置で被加工物を加工する際には、加工の目的に応じて純水、オイル等の液体(加工液)が被加工物に供給される。そのため、加工装置で被加工物を加工すると、被加工物の加工が行われる処理室内でミスト状の液体が飛散し、ミスト状の液体を含む排気が加工装置から排出される。そして、気液分離装置2は、加工装置から排出された排気を気体と液体とに分離する。
【0042】
図8は、気液分離装置2を示す断面図である。外容器4に旋回流生成ユニット12が収容されると、第1の筒体14は、外容器4の内側に第1の隙間50a及び第2の隙間50bを形成する。第1の隙間50aは、ケース6と第1の筒体14の外周面14aとの間に形成される環状の隙間に相当する。また、第2の隙間50bは、カバー8と第1の筒体14の外周面14aとの間に形成される環状の隙間に相当する。
【0043】
また、第2の筒体16は、第1の筒体14の内側に第3の隙間50cを形成する。第3の隙間50cは、第1の筒体14の内周面14bと第2の筒体16の外周面16aとの間に形成される環状の隙間に相当する。
【0044】
例えば旋回流生成ユニット12は、カバー8の区画リング8bに接合され、支持される。これにより、外容器4と旋回流生成ユニット12とが一体化されると共に、第1の隙間50aと第2の隙間50bとが区画リング8bによって区画、分離される。また、複数の流路22が、第2の隙間50bから第3の隙間50cを横切って第2の筒体16の内側に至るように配置される。流路22は、第2の隙間50bから第2の筒体16の内側に向かって下向きに傾斜している。
【0045】
なお、第1の筒体14及び第2の筒体16は、外容器4の底壁6bに接触しないように、外容器4に収容される。そのため、第1の筒体14の下端14c及び第2の筒体16の下端16cは、外容器4の内部で露出している。
【0046】
第1の蓋体24は、旋回流生成ユニット12の開口部12bの上部と、第1の筒体14の上部と、第2の筒体16の上部とを覆うように配置される。このとき、第3の筒体28が第2の筒体16(開口部12b)に挿入される。これにより、第3の筒体28は、第2の筒体16の内側に第4の隙間50dを形成する。第4の隙間50dは、第2の筒体16の内周面16bと第3の筒体28との間に形成される環状の隙間に相当する。
【0047】
なお、連通路20は、第3の隙間50cの上部から第2の筒体16の内側に連通している。そして、第3の筒体28の下端は連通路20の下端よりも下方に位置付けられる。そのため、第2の筒体16に挿入された第3の筒体28は、連通路20と対向する。
【0048】
第1の蓋体24の外周部から垂下する複数の第2のノズル30は、第2の隙間50bに挿入される。なお、区画リング8bは第2のノズル30の下側に設けられており、第2のノズル30は区画リング8bに接触しない。そのため、第2のノズル30の下端30aは第2の隙間50bで露出している。
【0049】
第2の蓋体32は、第4の筒体36がそれぞれ第1の蓋体24の貫通孔26cに挿入されるように、第1の蓋体24に積層される。これにより、第4の筒体36がそれぞれ第2のノズル30に連結される。また、第4の筒体36は、第1の蓋体24の内側に第5の隙間50eを形成する。第5の隙間50eは、貫通孔26cの内壁と第4の筒体36の側面(外周面)との間に形成される環状の隙間に相当する。
【0050】
外容器4の底部には、ドレンホース(チューブ)42が連結される。ドレンホース42の一端側(固定端側)は、ドレン6cに接続される。また、ドレンホース42の他端側(自由端側)は、例えば液溜め(容器)に貯留された水等の液体に浸漬され、液体によって封止される(液封止)。後述の通り、気液分離装置2によって排気を気体と液体とに分離すると、排気から分離された液体(廃液)が外容器4の底部に溜まる。そして、廃液はドレン6c及びドレンホース42を介して外容器4の外部に排出され、液溜めに貯留された液体によって捕獲、回収される。
【0051】
次に、気液分離装置2による気液分離の詳細について説明する。例えば、加工装置の排気が排出される排気ダクト(不図示)が排気路10に接続される。そして、加工装置が排出した排気が排気路10を介して外容器4の内部に供給される。
【0052】
気液分離を実施する際は、吸引ユニット40(
図1及び
図7参照)を作動させることにより、外容器4の内部の気体を吸引ユニット40によって吸引し、排気路10から吸引ユニット40に向かう気流を発生させる。その結果、外容器4の内部では、第1の旋回流60a(
図9参照)、第2の旋回流60b(
図10参照)、及び、複数の第3の旋回流60c(
図11参照)が発生する。そして、3種類の旋回流の遠心力によって、外容器4の内部に供給された排気から液体(廃液)が分離される。
【0053】
図9は、第1の旋回流60aによって気液分離を行う気液分離装置2を示す断面図である。吸引ユニット40(
図1及び
図7参照)を作動させると、排気路10内の排気が外容器4に引き込まれ、排気が供給口10aから第1の隙間50aに進入する。そして、排気は第1の筒体14の周りを螺旋状に流動する第1の旋回流60aとなり、外容器4の底壁6b側に向かって流動する。
【0054】
第1の旋回流60aが発生すると、排気に含まれる液体に遠心力が作用し、排気から液体が分離される。例えば、粒子径が10μm程度のミスト状の液体が排気から離脱する。これにより、供給口10aから供給された排気の気液分離が行われ、排気が第1の廃液と第1の排気とに分離される。そして、第1の廃液は、ケース6の側壁6a及び底壁6bを伝って外容器4の底部(ドレン6c)に至り、ドレンホース42を介して排出される。
【0055】
図10は、第2の旋回流60bによって気液分離を行う気液分離装置2を示す断面図である。第1の旋回流60aによって生成された第1の排気は、第3の隙間50cで発生する上昇気流によって、第1の隙間50aから第3の隙間50cの上部に運ばれる。そして、第1の排気は、第3の隙間50cから連通路20を介して第2の筒体16の内部に供給され、第1のノズル18に進入する。このとき第1の排気は、第2の筒体16及び第1のノズル18の内側を螺旋状に流動する第2の旋回流60bとなり、第1のノズル18の下端18c側に向かって流動する。
【0056】
第2の旋回流60bが発生すると、第1の排気に含まれる液体に遠心力が作用し、第1の排気から液体が分離される。例えば、粒子径が5μm程度のミスト状の液体が第1の排気から離脱する。これにより、第1の排気の気液分離が行われ、第1排気が第2の廃液と第2の排気とに分離される。そして、第2の廃液は、第1のノズル18の下端18cから流出して外容器4の底部(ドレン6c)に至り、ドレンホース42を介して排出される。
【0057】
なお、第2の旋回流60bの径は、第1の旋回流60a(
図9参照)の径よりも小さい。そのため、第2の旋回流60bは、第1の旋回流60aよりも排気中の液体に強い遠心力を作用させ、より細かい液体を離脱させることができる。これにより、第1の旋回流60aによって除去しきれなかった液体が、第2の旋回流60bによって第1の排気から分離される。
【0058】
図11は、第3の旋回流60cによって気液分離を行う気液分離装置2を示す断面図である。第2の旋回流60bによって生成された第2の排気は、第2の筒体16及び第1のノズル18の内側で発生する上昇気流によって、第3の筒体28に運ばれる。そして、第2の排気は、第3の筒体28から第5の隙間50eを介して複数の第2のノズル30に進入する。
【0059】
具体的には、第3の筒体28に進入した第2の排気は、凹部26dにおいて放射状に分岐し、複数の溝26e及び複数の貫通孔26c(
図5(A)参照)を通過して複数の第2のノズル30に供給される。そして、第2の排気は、第2のノズル30の内側を螺旋状に流動する第3の旋回流60cとなり、第2のノズル30の下端30a側に向かって流動する。
【0060】
第3の旋回流60cが発生すると、第2の排気に含まれる液体に遠心力が作用し、第2の排気から液体が分離される。例えば、粒子径が2μm程度のミスト状の液体が第2の排気から離脱する。これにより、第2の排気の気液分離が行われ、第2排気が第3の廃液と第3の排気とに分離される。そして、第3の廃液は、第2のノズル30の下端30aから流出して複数の流路22を介して外容器4の底部に至り、外容器4の底部(ドレン6c)からドレンホース42を介して排出される。
【0061】
なお、第3の旋回流60cの径は、第2の旋回流60b(
図10参照)の径よりも小さい。そのため、第3の旋回流60cは、第2の旋回流60bよりも排気中の液体に強い遠心力を作用させ、より細かい液体を離脱させることができる。これにより、第2の旋回流60bによって除去しきれなかった液体が、第3の旋回流60cによって第2の排気から分離される。
【0062】
第3の旋回流60cによって生成された第3の排気は、複数の第2のノズル30の内部で発生する上昇気流により、第4の筒体36に進入する。そして、第3の排気は、第4の筒体36からカバー38の開口部38aを介して吸引ユニット40(
図1及び
図7参照)に至り、排出される。
【0063】
以上の通り、本実施形態に係る気液分離装置2は、外容器4の内側で3種類の旋回流(第1の旋回流60a、第2の旋回流60b、第3の旋回流60c)を発生させ、これらの旋回流によって加工装置等から排出された排気の気液分離を行うことができる。これにより、種類、粒子径等が異なる様々な液体を排気から離脱させることが可能となり、排気が気体と液体とに確実に分離される。
【0064】
また、上記の気液分離装置2においては、外容器4の底部にドレンホース42が連結されるドレン6cが設けられているため、気液分離によって生成された廃液を常時気液分離装置2の外部に排出できる。これにより、気液分離装置2の内部における沈殿物の堆積が抑制され、気液分離装置2の分解掃除の頻度が低減される。
【0065】
なお、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0066】
2 気液分離装置
4 外容器
4a 開口部
6 ケース
6a 側壁
6b 底壁
6c ドレン(連通孔)
8 カバー
8a 側壁
8b 区画リング(突起部、凸部)
10 排気路
10a 供給口
12 旋回流生成ユニット
12a 連結部
12b 開口部
14 第1の筒体
14a 外周面
14b 内周面
14c 下端
16 第2の筒体
16a 外周面
16b 内周面
16c 下端
18 第1のノズル
18a 外周面
18b 内周面
18c 下端
20 連通路
22 流路(液路)
24 第1の蓋体
26 基台
26a 上面
26b 下面
26c 貫通孔
26d 凹部
26e 溝
26f 貫通孔
28 第3の筒体
30 第2のノズル
30a 下端
32 第2の蓋体
34 基台
34a 上面
34b 下面
34c 貫通孔
36 第4の筒体
38 カバー
38a 開口部
40 吸引ユニット
42 ドレンホース(チューブ)
50a 第1の隙間
50b 第2の隙間
50c 第3の隙間
50d 第4の隙間
50e 第5の隙間
60a 第1の旋回流
60b 第2の旋回流
60c 第3の旋回流