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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-17
(45)【発行日】2025-09-26
(54)【発明の名称】自動車の車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20250918BHJP
   B62D 21/15 20060101ALI20250918BHJP
【FI】
B62D25/20 F
B62D21/15 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021165842
(22)【出願日】2021-10-08
(65)【公開番号】P2023056569
(43)【公開日】2023-04-20
【審査請求日】2024-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三日月 豊
(72)【発明者】
【氏名】松林 領汰
(72)【発明者】
【氏名】山崎 由光
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 泰則
(72)【発明者】
【氏名】テュイテルト、イェット
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー、グレゴール
(72)【発明者】
【氏名】ヒンツ、ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンツェル、ヘンリク
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-192939(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0114978(US,A1)
【文献】特開2018-188106(JP,A)
【文献】特開2021-094926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B62D 21/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体構造であって、
外壁と、車幅方向において前記外壁よりも内側に配置され、前記外壁と前記車幅方向に対向する内壁とを含み、車長方向に延びる筒状のサイドシルと、
前記サイドシル内に配置されるとともに前記サイドシルに固定されており、前記車幅方向に延在する角部を含むエネルギー吸収部材と、
前記車幅方向に延び、前記車幅方向において内側から前記内壁を支持可能なように前記サイドシルに接続される複数のフロアクロスメンバと、
前記複数のフロアクロスメンバが上面に配置されたフロアパネルと、
前記フロアパネルの下面に接続され、前記複数のフロアクロスメンバにわたって前記車長方向に延び、前記車幅方向において内側から前記内壁を支持可能なように前記サイドシルに接続されるアンダーメンバと、
前記車幅方向において前記サイドシルの内側、且つ前記フロアパネルの下方に配置されたバッテリボックスと、
前記バッテリボックスに接続されるとともに、前記サイドシルの下部を支持する複数のバッテリボックスブラケットと、
前記バッテリボックス内に収容され、前記車幅方向に延びる複数のバッテリボックスクロスメンバと、
を備え
前記フロアパネルにおいて、前記フロアクロスメンバが配置されている部分の強度は、他の部分の強度よりも高い、車体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車体構造であって、
前記バッテリボックスブラケットのうちの少なくとも1つは、前記バッテリボックスクロスメンバのいずれかと前記車幅方向に並ぶように配置されている、車体構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車体構造であって、さらに、
前記フロアパネルの前記上面に配置され、前記車長方向に延びて前記フロアクロスメンバのうちの2つ以上を接続するとともに、前記車幅方向において内側から前記内壁を支持可能なように前記サイドシルに接続される接続部材、
を備える、車体構造。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載の車体構造であって、
前記アンダーメンバは、前記フロアパネル側の部分が前記サイドシル側の部分よりも上方に配置される板部を含む、車体構造。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載の車体構造であって、さらに、
前記サイドシル、前記フロアパネル、及び前記アンダーメンバの間の空間内において前記車長方向に配列された複数の隔壁部材、
を備える、車体構造。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載の車体構造であって、
前記フロアクロスメンバのうちの少なくとも1つにおいて、前記車幅方向の外側の端部は、板厚及び強度の少なくとも一方で他の部分と異なる、車体構造。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載の車体構造であって、
前記バッテリボックスブラケットの各々は、凹部又は孔部を上面に有する、車体構造。
【請求項8】
請求項1からのいずれか1項に記載の車体構造であって、
前記バッテリボックスクロスメンバは、接着剤、溶接、及び機械接合の少なくとも1つによって前記バッテリボックスに接合されている、車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車は、バッテリを収容したバッテリボックスを備えている。バッテリボックスは、例えば特許文献1に開示されているように、車幅方向においてサイドシルの内側、且つフロアパネルの下方に配置される。電気自動車では、衝突時の荷重及びエネルギーを車体構造やバッテリボックス自身によって吸収し、衝突荷重からバッテリを保護することが必要である。
【0003】
例えば、特許文献2には、左右一対のサイドシルと、左右のサイドシル間を繋ぐフロアクロスメンバとを含む車体構造が開示されている。特許文献2の車体構造は、さらに、荷重吸収部材と、荷重支持部と、複数のバッテリパッククロスメンバとを含んでいる。特許文献2の車体構造において、荷重吸収部材は、サイドシルの上部内に配置され、複数のハット断面形状部と、複数の波形断面形状部とを含んでいる。荷重支持部は、サイドシルの下部に設けられている。各バッテリパッククロスメンバは、バッテリの間に配置され、車幅方向に延在する。特許文献2には、車体構造に側突荷重が入力されたとき、荷重吸収部材、荷重支持部、及びバッテリパッククロスメンバにより、3つの経路を介して車幅方向に沿って均等に荷重を伝達し、衝撃を吸収することができると記載されている。
【0004】
特許文献2と同様に、特許文献3及び4に開示された車体構造も、側突時の衝撃を吸収するための部材をサイドシル内に有している。特許文献3の車体構造において、サイドシル内の部材は、多角形状の断面を有する筒状体である。特許文献4の車体構造において、サイドシル内の部材は、例えば波形状の板であるウェブと、ウェブの両側に配置され、サイドシルに固定されるフランジとを含む。各フランジは、略C字状の断面を有し、車長方向に延びるウェブを上下から挟んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019/198753号
【文献】特開2021-88264号公報
【文献】特許第6566176号公報
【文献】国際公開第2021/157651号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2~4の車体構造において、サイドシル内に配置された部材は、車幅方向に延びる角部を含んでいる。このような部材は、側突時の衝突荷重に対する強度が高く、圧潰したときに優れたエネルギー吸収性能を発揮するが、その強度の高さ故に圧潰しにくい。そのため、衝突荷重が入力されたときにサイドシル内の部材が圧潰しやすくなるように、車体構造を工夫することが好ましい。
【0007】
本開示は、サイドシル内のエネルギー吸収部材を圧潰させやすくして、衝突エネルギーを良好に吸収することができる車体構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る自動車の車体構造は、サイドシルと、エネルギー吸収部材と、複数のフロアクロスメンバと、フロアパネルと、アンダーメンバと、バッテリボックスと、複数のバッテリボックスブラケットと、複数のバッテリボックスクロスメンバとを備える。サイドシルは、外壁と、内壁とを含む。内壁は、車幅方向において外壁よりも内側に配置され、外壁と車幅方向に対向する。サイドシルは、車長方向に延びる筒状を有する。エネルギー吸収部材は、サイドシル内に配置されるとともに、サイドシルに固定されている。エネルギー吸収部材は、車幅方向に延在する角部を含む。フロアクロスメンバは、車幅方向に延びている。フロアクロスメンバは、車幅方向において内側から内壁を支持可能なようにサイドシルに接続されている。フロアクロスメンバは、フロアパネルの上面に配置されている。アンダーメンバは、フロアパネルの下面に接続されている。アンダーメンバは、複数のフロアクロスメンバにわたって車長方向に延びている。アンダーメンバは、車幅方向において内側から内壁を支持可能なようにサイドシルに接続されている。バッテリボックスは、車幅方向においてサイドシルの内側に配置されている。バッテリボックスは、フロアパネルの下方に配置されている。バッテリボックスブラケットは、バッテリボックスに接続されるとともに、サイドシルの下部を支持している。バッテリボックスクロスメンバは、バッテリボックス内に収容されている。バッテリボックスクロスメンバは、車幅方向に延びている。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る車体構造によれば、サイドシル内のエネルギー吸収部材を圧潰させやすくして、衝突エネルギーを良好に吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る車体構造を上方から見た斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る車体構造を下方から見た斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る車体構造を下方から見た、別の斜視図である。
図4図4は、図1に示す車体構造の横断面図である。
図5図5は、図1に示す車体構造の別の横断面図である。
図6図6は、図1に示す車体構造に含まれるエネルギー吸収部材の縦断面図である。
図7図7は、図6に示すエネルギー吸収部材とは別のエネルギー吸収部材の縦断面図である。
図8図8は、図6及び図7に示すエネルギー吸収部材とは別のエネルギー吸収部材を適用した車体構造の部分横断面図である。
図9図9は、図8に示す車体構造に含まれるエネルギー吸収部材の縦断面図である。
図10図10は、図9に示すエネルギー吸収部材とは別のエネルギー吸収部材の縦断面図である。
図11図11は、図4又は図5の部分拡大図である。
図12図12は、図1に示す車体構造のさらに別の横断面図である。
図13図13は、上記実施形態に係る車体構造に含まれるバッテリボックスブラケットの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態に係る自動車の車体構造は、サイドシルと、エネルギー吸収部材と、複数のフロアクロスメンバと、フロアパネルと、アンダーメンバと、バッテリボックスと、複数のバッテリボックスブラケットと、複数のバッテリボックスクロスメンバとを備える。サイドシルは、外壁と、内壁とを含む。内壁は、車幅方向において外壁よりも内側に配置され、外壁と車幅方向に対向する。サイドシルは、車長方向に延びる筒状を有する。エネルギー吸収部材は、サイドシル内に配置されるとともに、サイドシルに固定されている。エネルギー吸収部材は、車幅方向に延在する角部を含む。フロアクロスメンバは、車幅方向に延びている。フロアクロスメンバは、車幅方向において内側から内壁を支持可能なようにサイドシルに接続されている。フロアクロスメンバは、フロアパネルの上面に配置されている。アンダーメンバは、フロアパネルの下面に接続されている。アンダーメンバは、複数のフロアクロスメンバにわたって車長方向に延びている。アンダーメンバは、車幅方向において内側から内壁を支持可能なようにサイドシルに接続されている。バッテリボックスは、車幅方向においてサイドシルの内側に配置されている。バッテリボックスは、フロアパネルの下方に配置されている。バッテリボックスブラケットは、バッテリボックスに接続されるとともに、サイドシルの下部を支持している。バッテリボックスクロスメンバは、バッテリボックス内に収容されている。バッテリボックスクロスメンバは、車幅方向に延びている(第1の構成)。
【0012】
第1の構成では、サイドシルの内壁を車幅方向の内側から支持可能なように、複数のフロアクロスメンバがサイドシルに接続されている。これに加えて、アンダーメンバも、サイドシルの内壁を車幅方向の内側から支持可能なようにサイドシルに接続されている。そのため、自動車の側面衝突により、サイドシルに対して外壁側から衝突荷重が入力されたとき、フロアクロスメンバ及びアンダーメンバによって衝突荷重が受け止められ、サイドシルの移動を規制することができる。また、第1の構成では、サイドシルの下部、すなわちサイドシルの中心部から離れた部分が複数のバッテリボックスブラケットによって支持されている。そのため、サイドシルに対して外壁側から衝突荷重が入力されたとき、各バッテリボックスブラケットによってサイドシルの回転が規制され、サイドシルのねじれ変形が抑制される。このように、フロアクロスメンバ、アンダーメンバ、及びバッテリボックスブラケットによってサイドシルが強固に安定して支持されていることにより、車幅方向の外側からサイドシルに衝突荷重が入力されたとき、サイドシル内のエネルギー吸収部材を車幅方向に圧潰させやすくなる。そして、エネルギー吸収部材の圧潰により、衝突エネルギーを良好に吸収することができる。よって、車幅方向においてサイドシルの内側に配置されたバッテリボックス、及びこのバッテリボックス内のバッテリを保護することができる。
【0013】
上記バッテリボックスブラケットのうちの少なくとも1つは、バッテリボックスクロスメンバのいずれかと車幅方向に並ぶように配置されていてもよい(第2の構成)。
【0014】
第2の構成では、少なくとも1つのバッテリボックスブラケットがバッテリボックスクロスメンバのいずれかと車幅方向に並んでいる。これにより、バッテリボックスの自重によるたわみを低減することができる。
【0015】
フロアパネルにおいて、フロアクロスメンバが配置されている部分の強度は、他の部分の強度よりも高くてもよい(第3の構成)。
【0016】
第3の構成では、フロアパネルのうち、フロアクロスメンバが配置された部分の強度が比較的高くなっている。これにより、フロアパネル上のフロアクロスメンバがサイドシルをより強固に支持することができる。よって、車幅方向の外側からサイドシルに衝突荷重が入力されたとき、エネルギー吸収部材がより圧潰しやすくなる。
【0017】
車体構造は、さらに、接続部材を備えることができる。接続部材は、フロアパネルの上面に配置される。接続部材は、車長方向に延びて上記フロアクロスメンバのうちの2つ以上を接続する。接続部材は、車幅方向において内側から内壁を支持可能なようにサイドシルに接続される(第4の構成)。
【0018】
第4の構成において、接続部材は、車幅方向の内側からサイドシルの内壁を支持可能であり、且つ2つ以上のフロアクロスメンバを接続する。そのため、サイドシルに入力された衝突荷重は、接続部材を介して2つ以上のフロアクロスメンバに分散される。これにより、フロアクロスメンバによるサイドシルの支持強度を向上させることができる。よって、車幅方向の外側からサイドシルに衝突荷重が入力されたとき、エネルギー吸収部材がより圧潰しやすくなる。
【0019】
アンダーメンバは、板部を含むことができる。この板部において、フロアパネル側の部分は、サイドシル側の部分よりも上方に配置されることが好ましい(第5の構成)。
【0020】
第5の構成では、アンダーメンバに含まれる板部のうち、フロアパネル側の部分がより上方に位置している。この場合、サイドシルに入力された衝突荷重は、サイドシル内のエネルギー吸収部材を圧潰させた後、アンダーメンバの板部を介してフロアパネルに伝達され、フロアパネルを持ち上げるように作用する。これにより、フロアパネルは、バッテリボックスから離れるように上方に変形する。そのため、変形したフロアパネルがバッテリボックスに接触するのを防止することができ、バッテリボックス内のバッテリを保護することができる。
【0021】
車体構造は、さらに、複数の隔壁部材を備えていてもよい。隔壁部材は、サイドシル、フロアパネル、及びアンダーメンバの間の空間内において車長方向に配列される(第6の構成)。
【0022】
第6の構成では、サイドシル、フロアパネル、及びアンダーメンバの間の空間内に複数の隔壁部材が設けられている。これらの隔壁部材は、衝突荷重によるアンダーメンバの変形を抑制することができる。そのため、アンダーメンバによるサイドシルの支持強度を向上させることができる。よって、車幅方向の外側からサイドシルに衝突荷重が入力されたとき、エネルギー吸収部材がより圧潰しやすくなる。
【0023】
上記フロアクロスメンバのうちの少なくとも1つにおいて、車幅方向の外側の端部は、板厚及び強度の少なくとも一方で他の部分と異なっていてもよい(第7の構成)。
【0024】
第7の構成では、少なくとも1つのフロアクロスメンバにおいて、車幅方向の外側の端部の板厚及び/又は強度が他の部分と異なる。例えば、フロアクロスメンバの端部の板厚又は強度が比較的小さい場合、フロアクロスメンバが衝突荷重を受けたとき、フロアクロスメンバの端部が変形しやすくなる。一方、フロアクロスメンバの端部の板厚又は強度が比較的大きい場合、フロアクロスメンバが衝突荷重を受けたとき、フロアクロスメンバの端部が変形しにくくなる。フロアクロスメンバの変形態様は、フロアパネルの変形態様に影響を与える。よって、フロアクロスメンバの端部の板厚及び/又は強度を調整することにより、例えばフロアパネルがバッテリボックスに接触しないように、フロアパネルの変形態様を制御することができる。
【0025】
バッテリボックスブラケットの各々は、凹部又は孔部を上面に有していてもよい(第8の構成)。
【0026】
第8の構成では、各バッテリボックスブラケットの上面に凹部又は孔部が設けられている。この場合、衝突荷重によってサイドシル内のエネルギー吸収部材が潰れた後、バッテリボックスブラケットは衝突荷重に抵抗せず、凹部又は孔部を起点に破壊される。よって、バッテリボックスブラケットがバッテリボックスを損傷させるのを防止することができ、バッテリボックス内のバッテリを保護することができる。
【0027】
バッテリボックスクロスメンバは、接着剤、溶接、及び機械接合の少なくとも1つによってバッテリボックスに接合されていてもよい(第9の構成)。
【0028】
第9の構成では、バッテリボックスクロスメンバは、接着剤、溶接、及び機械接合の少なくとも1つによってバッテリボックスに強固に接合されている。これにより、バッテリボックスブラケットを介して入力される衝突荷重をバッテリボックス及びバッテリボックスクロスメンバが受け止めやすくなり、バッテリボックス及びバッテリボックスクロスメンバの荷重伝達性を向上させることができる。また、バッテリボックスクロスメンバがバッテリボックスに強固に接合されることにより、バッテリボックスの自重によるたわみを低減することができ、バッテリボックス内のバッテリを保護することができる。さらに、バッテリボックスが対地接触したときのバッテリの保護にも有効である。
【0029】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。各図において同一又は相当の構成については同一符号を付し、同じ説明を繰り返さない。
【0030】
[車体構造]
図1は、本実施形態に係る車体構造100を上方から見たときの斜視図である。図2及び図3は、車体構造100を下方から見たときの斜視図である。車体構造100は、例えば電気自動車等、バッテリをエネルギー源として走行する自動車に適用される。
【0031】
図1図3に示すように、車体構造100は、サイドシル10と、エネルギー吸収部材20と、フロアパネル30と、複数のフロアクロスメンバ40A,40Bと、アンダーメンバ50と、バッテリボックス60と、複数のバッテリボックスクロスメンバ70と、複数のバッテリボックスブラケット80とを備える。車体構造100は、さらに、接続部材90を備えている。
【0032】
(サイドシル)
図1及び図2を参照して、サイドシル10は、自動車の左右それぞれに設けられる。サイドシル10の各々は、車長方向に延びている。各サイドシル10は、実質的に筒状を有する。各サイドシル10は、外側部材11と、内側部材12とを含んでいる。
【0033】
図4は、車体構造100をフロアクロスメンバ40Aの位置で車長方向に対して垂直に切断したときの断面図(横断面図)である。図5は、車体構造100をフロアクロスメンバ40Bの位置で車長方向に対して垂直に切断したときの断面図(横断面図)である。図4及び図5を参照して、サイドシル10の外側部材11及び内側部材12は、それぞれ、概略ハット形状の横断面を有する。外側部材11は、外壁111と、上壁112と、下壁113と、フランジ114,115とを含む。内側部材12は、内壁121と、上壁122と、下壁123と、フランジ124,125とを含む。
【0034】
外側部材11において、上壁112は、外壁111の上端部に連続して設けられている。下壁113は、外壁111の下端部に連続して設けられている。車体構造100の横断面視で、上壁112及び下壁113は、外壁111から車幅方向の内側に向かって延在している。フランジ114は、上壁112に連続し、上壁112から上方に突出する。フランジ115は、下壁113に連続し、下壁113から下方に突出する。
【0035】
内側部材12の内壁121は、車幅方向において外側部材11の外壁111よりも内側に配置されている。内壁121は、外壁111と車幅方向に対向する。上壁122は、内壁121の上端部に連続して設けられている。下壁123は、内壁121の下端部に連続して設けられている。車体構造100の横断面視で、上壁122及び下壁123は、内壁121から車幅方向の外側に向かって延在している。フランジ124は、上壁122に連続し、上壁122から上方に突出する。フランジ125は、下壁123に連続し、下壁123から下方に突出する。
【0036】
内側部材12のフランジ124,125は、それぞれ、外側部材11のフランジ114,115に接合されている。内側部材12のフランジ124,125は、例えば、溶接や、ボルト又はリベット等を用いた機械接合等により、外側部材11のフランジ114,115に接合される。本実施形態の例では、外側部材11及び内側部材12によってサイドシル10が形成されている。ただし、サイドシル10は、複数の部材で形成されていなくてもよい。
【0037】
サイドシル10は、典型的には金属板で構成される。サイドシル10は、鋼板で構成されることが好ましい。サイドシル10は、例えば、980MPa以上の引張強度を有する鋼板で構成することができる。
【0038】
(エネルギー吸収部材)
図1を再度参照して、エネルギー吸収部材20は、例えば自動車が側面衝突したとき、車幅方向に圧潰することで衝突エネルギーを吸収する部材である。エネルギー吸収部材20は、サイドシル10内に配置されている。エネルギー吸収部材20は、サイドシル10に固定されている。エネルギー吸収部材20は、車長方向に延びている。
【0039】
図4及び図5を参照して、エネルギー吸収部材20は、本体部21と、フランジ部22,23とを含む。本体部21及びフランジ部22,23は、それぞれ、車長方向に延びている。フランジ部22,23は、車体構造100の横断面視で概略C字状を有する。フランジ部22は、本体部21の車幅方向外側の端部を上下から挟むように配置されている。フランジ部23は、本体部21の車幅方向内側の端部を上下から挟むように配置されている。フランジ部22,23は、例えば溶接や機械接合等により、本体部21に接合されていてもよい。
【0040】
フランジ部22,23は、例えば溶接や機械接合等により、サイドシル10の外壁111及び内壁121に接合されている。これにより、エネルギー吸収部材20がサイドシル10の外壁111及び内壁121に固定される。ただし、エネルギー吸収部材20は、サイドシル10の外壁111及び内壁121の一方のみに固定されていてもよい。
【0041】
図6は、エネルギー吸収部材20を車幅方向に対して実質的に垂直に切断したときの断面図(縦断面図)である。図6に示すように、エネルギー吸収部材20の本体部21は、例えば、エネルギー吸収部材20の縦断面視で、上下に屈曲又は湾曲を繰り返す波形状の板である。この本体部21は、複数の角部211を含んでいる。角部211の各々は、車幅方向に延在している。
【0042】
エネルギー吸収部材20は、車幅方向に延在する角部211を少なくとも1つ含むものであればよい。ただし、エネルギー吸収部材20は、複数の角部211を含んでいることが好ましい。エネルギー吸収部材20の構成は、図6に示す例に限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0043】
図7は、車体構造100に適用可能な別のエネルギー吸収部材20の縦断面図である。図7に示すエネルギー吸収部材20において、本体部21は、車長方向に並ぶ複数の筒状体212を含んでいる。筒状体212の各々は、車幅方向に延びている。各筒状体212は、エネルギー吸収部材20の縦断面視で多角形状を有する。各筒状体212は、例えば、エネルギー吸収部材20の縦断面視で矩形状を有する。各筒状体212は、車幅方向に延在する角部211を複数含んでいる。
【0044】
図8は、さらに別のエネルギー吸収部材20を適用した車体構造100の部分横断面図である。図9は、このエネルギー吸収部材20の縦断面図である。図8及び図9に示すエネルギー吸収部材20において、本体部21は、縦断面視で多角形状を有する筒状体である。図8に示すように、このエネルギー吸収部材20は、蓋体24を含む。蓋体24は、本体部21の車幅方向の一端部を封鎖する。本体部21は、蓋体24を介してサイドシル10の内壁121に固定されている。図示を省略するが、エネルギー吸収部材20は、さらに、本体部21の車幅方向の他端部を封鎖する蓋体を含んでいてもよい。本体部21は、この蓋体を介してサイドシル10の外壁111に固定されていてもよい。
【0045】
図9に示すように、本体部21は、板状部材213,214を含んでいる。板状部材213,214は、それぞれ、上下に屈曲又は湾曲を繰り返す波形状に形成されている。板状部材214は、板状部材213の下方に配置され、例えば、板状部材213を上下反転した形状を有する。図9に示す例では、板状部材213の車長方向の両端部と、板状部材214の車長方向の両端部とを接合することにより、筒状の本体部21が形成されている。この本体部21は、車幅方向に延在する角部211を複数含んでいる。
【0046】
本体部21を筒状体とする場合、この本体部21は、必ずしも複数の板状部材によって構成される必要はない。例えば、図10に示すように、本体部21は、一部材で構成されていてもよい。また、本体部21の縦断面形状は、図9及び図10に示す多角形状に限定されない。エネルギー吸収部材20の形状は、車幅方向に延在する角部211を含むものであればよく、特に限定されない。
【0047】
エネルギー吸収部材20は、典型的には金属板で構成される。エネルギー吸収部材20は、鋼板で構成されることが好ましい。エネルギー吸収部材20が鋼板で構成される場合、その鋼板の引張強度は、例えば590MPa以上であり、好ましくは780MPa以上、より好ましくは980MPa以上とすることができる。エネルギー吸収部材20の板厚は、サイドシル10の板厚よりも大きくてもよい。
【0048】
(フロアパネル)
図1及び図2を参照して、フロアパネル30は、左右のサイドシル10の間に配置されている。フロアパネル30は、例えば溶接又は機械接合等により、サイドシル10に接合される。図1に示すように、フロアパネル30の上面には、複数のフロアクロスメンバ40A,40Bが配置されている。図1では、説明の便宜上、2つのフロアクロスメンバ40A,40Bを示しているが、車体構造100は、3つ以上のフロアクロスメンバを備えることもできる。フロアクロスメンバ40A,40Bは、フロアパネル30上において、車長方向に並んでいる。
【0049】
フロアパネル30は、典型的には金属板で構成される。フロアパネル30は、鋼板で構成されることが好ましい。図2においてハッチングで示すように、フロアパネル30のうち、フロアクロスメンバ40A,40Bが配置される部分31の強度は、他の部分32の強度よりも大きくてもよい。フロアパネル30が鋼板で構成されている場合、高強度部31の引張強度は、例えば、780MPa以上とすることができる。他の部分32の引張強度は、高強度部31の引張強度よりも小さく、例えば、270MPa以上とすることができる。高強度部31の板厚は、他の部分32の板厚よりも大きくてもよい。
【0050】
(フロアクロスメンバ)
図1に示すように、フロアクロスメンバ40A,40Bは、それぞれ、車幅方向に延びている。フロアクロスメンバ40Aは、フロアクロスメンバ40Bに対して車長方向で前方に配置されている。
【0051】
前側のフロアクロスメンバ40Aは、本体部41と、端部42とを含む。本体部41は、車幅方向に垂直な断面で見て概略ハット形状を有する。本体部41は、天板411と、縦壁412と、フランジ413とを含んでいる。各フランジ413は、例えば溶接又は機械接合等により、フロアパネル30の上面に接合されている。各縦壁412は、フランジ413に連続し、フランジ413から車高方向において上方に起立している。天板411は、2つの縦壁412の上端を連結している。
【0052】
本実施形態の例において、端部42は、本体部41と別体の部材である。端部42は、本体部41に対し、車幅方向において外側に配置されている。端部42は、本体部41を車幅方向の外側に延長するように、本体部41に接続されている。端部42は、天板421と、縦壁422と、フランジ423とを含む。天板421は、例えば、本体部41の天板411と部分的に重複するように、天板411上に配置される。各縦壁422は、フロアパネル30側から天板421側へと車高方向に起立し、天板421によって互いに連結される。フランジ423は、各縦壁422の下端に連続している。フランジ423は、天板421及び各縦壁422の車幅方向外側の端部にも連続している。フランジ423は、各縦壁422の下端から、天板421及び各縦壁422の車幅方向外側の端部まで連続して設けられている。フランジ423は、例えば溶接又は機械接合等により、フロアパネル30及びサイドシル10に接合されている。
【0053】
図4を参照して、フロアクロスメンバ40Aは、車幅方向において内側から内壁121を支持可能なようにサイドシル10に接続される。より詳細には、フロアクロスメンバ40Aの端部42のフランジ423のうち、各縦壁422(図1)に連続する部分が、サイドシル10の内壁121に対して車幅方向内側から接合されている。フランジ423のうち、天板421に連続する部分は、サイドシル10の上壁122に対して上方から接合されている。サイドシル10の内壁121には、フロアパネル30の車幅方向の端部も接合されている。
【0054】
本実施形態では、フロアクロスメンバ40Aがサイドシル10に直接接続されている。ただし、フロアクロスメンバ40Aは、他の部材を介して間接的に、サイドシル10に接続されていてもよい。フロアクロスメンバ40Aは、サイドシル10に対して外壁111側から衝突荷重が入力されたとき、車幅方向において内側から内壁121を支持するように配置されていればよい。同様に、フロアパネル30は、サイドシル10に直接接続されていてもよいし、間接的に接続されていてもよい。
【0055】
フロアクロスメンバ40Aは、典型的には金属板で構成される。フロアクロスメンバ40Aは、鋼板で構成されることが好ましい。フロアクロスメンバ40Aの端部42は、板厚及び強度の少なくとも一方において本体部41と異なっていてもよい。すなわち、フロアクロスメンバ40Aにおいて、端部42の板厚は、本体部41の板厚よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。本体部41及び端部42の板厚は、例えば、1.0mm以上、3.0mm以下の範囲で設定することができる。フロアクロスメンバ40Aにおいて、端部42の強度は、本体部41の強度よりも高くてもよいし、低くてもよい。フロアクロスメンバ40Aが鋼板で構成されている場合、本体部41及び端部42の引張強度は、例えば、980MPa以上とすることができる。
【0056】
図1に戻り、後ろ側のフロアクロスメンバ40Bは、車幅方向に垂直な断面で見て概略ハット形状を有する。フロアクロスメンバ40Bは、フロアクロスメンバ40Aの本体部41と同様、天板411と、縦壁412と、フランジ413とを含んでいる。図5を参照して、フロアクロスメンバ40Bは、フロアパネル30を介してサイドシル10に接続されている。フロアクロスメンバ40Bは、サイドシル10の内壁121に隣接して配置されている。そのため、フロアクロスメンバ40Bは、サイドシル10に対して外壁111側から衝突荷重が入力されたとき、車幅方向において内側から内壁121を支持することが可能である。
【0057】
フロアクロスメンバ40Bは、フロアクロスメンバ40Aと同様、典型的には金属板で構成される。フロアクロスメンバ40Bは、鋼板で構成されることが好ましい。フロアクロスメンバ40Bの材質は、フロアクロスメンバ40Aの本体部41又は端部42と同じであってもよいし、本体部41及び端部42と異なっていてもよい。また、フロアクロスメンバ40Bの強度又は板厚は、フロアクロスメンバ40Aの本体部41又は端部42と同じであってもよいし、本体部41及び端部42と異なっていてもよい。
【0058】
(アンダーメンバ)
図2では、バッテリボックス60、バッテリボックスクロスメンバ70、及びバッテリボックスブラケット80を省略した状態の車体構造100を示している。図2を参照して、アンダーメンバ50は、フロアパネル30の下方に配置されている。アンダーメンバ50は、車幅方向においてサイドシル10の内側に配置されている。アンダーメンバ50は、車長方向に延びている。アンダーメンバ50は、少なくとも、フロアクロスメンバ40A,40B(図1)にわたって車長方向に延びる。車長方向におけるアンダーメンバ50の長さは、車長方向におけるサイドシル10の長さと同程度であってもよい。
【0059】
図4及び図5を参照して、アンダーメンバ50は、フロアパネル30の下面に接続されている。また、アンダーメンバ50は、サイドシル10に接続されている。アンダーメンバ50は、車幅方向において内側から内壁121を支持可能なようにサイドシル10に接続される。アンダーメンバ50は、例えば溶接又は機械接合等により、フロアパネル30の下面及びサイドシル10の内壁121に接合されている。
【0060】
図11は、図4又は図5の部分拡大図である。図11に示すように、本実施形態の例において、アンダーメンバ50は、その全体が板部51となっている。板部51は、車体構造100の横断面視で、サイドシル10からフロアパネル30に向かい、斜め上方に延びている。板部51からフロアパネル30までの車高方向の距離は、車幅方向において内側に向かうにつれて徐々に小さくなっている。すなわち、板部51において、フロアパネル30側の部分は、サイドシル10側の部分よりも上方に配置されている。
【0061】
板部51のうち、サイドシル10に対する接続部52は、フロアパネル30に対する接続部53と比較して下方に位置している。接続部52は、例えば、車高方向におけるサイドシル10の中央部よりも下方に配置されている。本実施形態の例では、接続部52がエネルギー吸収部材20よりも下方に配置されている。一方、フロアパネル30に対する接続部53は、エネルギー吸収部材20と車幅方向に並ぶように配置されている。
【0062】
本実施形態において、アンダーメンバ50は、フロアパネル30の下面及びサイドシル10の内壁121に直接接続されている。ただし、アンダーメンバ50は、フロアパネル30の下面又はサイドシル10の内壁121に対し、間接的に接続されていてもよい。アンダーメンバ50は、例えば、サイドシル10から離間していてもよい。この場合、アンダーメンバ50は、サイドシル10の内壁121を車幅方向の内側から実質的に支持することができるように、内壁121に隣接していればよい。
【0063】
サイドシル10、フロアパネル30、及びアンダーメンバ50の間には、空間Sが存在する。空間Sは、例えば、車体構造100の横断面視で実質的に三角形状を有する。空間S内には、複数の隔壁部材54が配置されている。複数の隔壁部材54は、空間S内において車長方向に配列されている。例えば、フロアクロスメンバ40A,40Bの各縦壁412,422(図1)に対応するように隔壁部材54が配置されていてもよい。
【0064】
各隔壁部材54は、例えば板状の部材である。隔壁部材54は、車長方向に対して交差するように空間S内に配置される。隔壁部材54は、車長方向に対して実質的に垂直に配置されていてもよい。隔壁部材54は、例えば溶接又は機械接合等により、アンダーメンバ50に接合される。隔壁部材54は、さらに、サイドシル10及びフロアパネル30に接合されていてもよい。
【0065】
アンダーメンバ50及び隔壁部材54は、典型的には金属板で構成される。アンダーメンバ50及び隔壁部材54は、鋼板で構成されることが好ましい。アンダーメンバ50及び隔壁部材54は、例えば、980MPa以上の引張強度を有する鋼板で構成することができる。アンダーメンバ50の引張強度は、隔壁部材54の引張強度と同一であってもよいし、異なっていてもよい。アンダーメンバ50の板厚は、隔壁部材54の板厚と同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、アンダーメンバ50の板厚よりも隔壁部材54の板厚を大きくすることができる。
【0066】
(バッテリボックス)
図3を参照して、バッテリボックス60は、車幅方向においてサイドシル10の内側に配置されている。バッテリボックス60は、左右のサイドシル10の間に位置づけられている。また、バッテリボックス60は、フロアパネル30(図1)の下方に配置されている。
【0067】
図3図5を参照して、バッテリボックス60は、サイドフレーム61と、アンダーカバー62と、複数のバッテリモジュール63とを含む。サイドフレーム61は、自動車の左右それぞれに設けられる。アンダーカバー62は、左右のサイドフレーム61を連結し、バッテリボックス60の底部を形成する。
【0068】
アンダーカバー62は、各サイドフレーム61に対し、接着剤によって接合されていてもよいし、スポット溶接やアーク溶接等の溶接、又はボルトやリベット等の機械接合によって接合されていてもよい。アンダーカバー62は、スポット溶接及び接着剤を併用したウェルドボンディング、あるいは、ボルトやリベット等の機械接合及び接着剤を併用した方法により、サイドフレーム61に接合されることが好ましい。アンダーカバー62は、車長方向の全長にわたってサイドフレーム61に接合されている。
【0069】
バッテリボックス60において、サイドフレーム61及びアンダーカバー62は、典型的には金属板で構成される。サイドフレーム61及びアンダーカバー62は、鋼板で構成されることが好ましい。サイドフレーム61及びアンダーカバー62は、例えば、590MPa以上の引張強度を有する鋼板で構成することができる。サイドフレーム61の引張強度は、アンダーカバー62の引張強度と同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、サイドフレーム61の板厚は、アンダーカバー62の板厚と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0070】
(バッテリボックスクロスメンバ)
図3を参照して、複数のバッテリボックスクロスメンバ70は、バッテリボックス60内に収容されている。これらのバッテリボックスクロスメンバ70は、車長方向に配列されている。バッテリボックスクロスメンバ70の各々は、車幅方向に延びている。バッテリボックスクロスメンバ70の上には、バッテリボックス底板(図示略)を介し,バッテリモジュール63が配置されている。
【0071】
各バッテリボックスクロスメンバ70は、車幅方向に対して垂直な断面で見たとき、例えば概略ハット形状を有する。各バッテリボックスクロスメンバ70は、アンダーカバー62の上面に配置されている。概略ハット形状の横断面を有する各バッテリボックスクロスメンバ70は、その下端部のフランジ(図示略)においてアンダーカバー62に接合される。
【0072】
各バッテリボックスクロスメンバ70は、アンダーカバー62に対し、例えば、接着剤によって接合される。各バッテリボックスクロスメンバ70は、スポット溶接やアーク溶接等の溶接、又はボルトやリベット等の機械接合によってアンダーカバー62に接合されていてもよい。また、スポット溶接及び接着剤を併用したウェルドボンディング、あるいは、ボルトやリベット等の機械接合及び接着剤を併用した方法により、各バッテリボックスクロスメンバ70がアンダーカバー62に接合されていてもよい。各バッテリボックスクロスメンバ70は、車幅方向の全長にわたってアンダーカバー62に接合されている。
【0073】
バッテリボックスクロスメンバ70は、典型的には金属板で構成される。バッテリボックスクロスメンバ70は、鋼板で構成されることが好ましい。バッテリボックスクロスメンバ70は、例えば、590MPa以上の引張強度を有する鋼板で構成することができる。
【0074】
(バッテリボックスブラケット)
引き続き図3を参照して、バッテリボックスブラケット80は、バッテリボックス60をサイドシル10に取り付けるための部材である。複数のバッテリボックスブラケット80は、車幅方向においてバッテリボックス60の両側に配置され、車長方向に配列されている。車長方向に配列されるバッテリボックスブラケット80のうちの少なくとも1つは、バッテリボックスクロスメンバ70のいずれかと車幅方向に並ぶように配置されることが好ましい。より好ましくは、2つ以上のバッテリボックスブラケット80がバッテリボックスクロスメンバ70と車幅方向に並ぶように配列される。
【0075】
図4及び図5を参照して、バッテリボックスブラケット80は、バッテリボックス60に接続されている。バッテリボックスブラケット80は、例えば溶接又は機械接合等により、バッテリボックス60のサイドフレーム61に接合される。本実施形態において、バッテリボックスブラケット80は、サイドフレーム61に直接接続されている。ただし、バッテリボックスブラケット80は、サイドフレーム61に間接的に接続されていてもよい。
【0076】
バッテリボックスブラケット80は、サイドシル10の下部を支持している。バッテリボックスブラケット80は、例えば、サイドシル10の下壁123に接続される。バッテリボックスブラケット80は、例えばリベットやボルト等の機械接合により、サイドシル10の下壁123に対して着脱可能に接合される。
【0077】
バッテリボックスブラケット80は、下方に開口する開断面を有していてもよいし、閉断面を有していてもよい。バッテリボックスブラケット80は、例えば、車幅方向と交差する断面で見て概略ハット形状を有する。バッテリボックスブラケット80は、車幅方向と交差する断面で見て概略U字状を有していてもよい。バッテリボックスブラケット80は、車幅方向と交差する断面で見て矩形状等を有することもできる。
【0078】
図11を参照して、バッテリボックスブラケット80は、その上面に凹部81を有している。凹部81は、バッテリボックスブラケット80の上面のうち、下方に凹んでいる部分である。例えば、バッテリボックスブラケット80の上面を下方に屈曲させることにより、バッテリボックスブラケット80の上面に凹部81を形成することができる。凹部81は、下方に凹の形状を有するビードであってもよい。凹部81は、例えば、実質的に又は概ね車長方向に延びている。
【0079】
バッテリボックスブラケット80は、典型的には金属板で構成される。バッテリボックスブラケット80は、鋼板で構成されることが好ましい。バッテリボックスブラケット80は、例えば、590MPa以上の引張強度を有する鋼板で構成することができる。バッテリボックスブラケット80の板厚は、例えば、バッテリボックスクロスメンバ70の板厚と同一とすることができる。バッテリボックスブラケット80の板厚は、バッテリボックスクロスメンバ70の板厚と異なっていてもよい。
【0080】
(接続部材)
図1に戻り、接続部材90は、フロアパネル30の上面に配置されている。接続部材90は、2つのフロアクロスメンバ40A,40Bに架け渡されるように配置されている。接続部材90は、車長方向に延びて2つのフロアクロスメンバ40A,40Bを接続する。接続部材90は、フロアクロスメンバ40A,40Bの車幅方向外側の端部に接続される。
【0081】
本実施形態において、接続部材90の車長方向の一端部は、前側のフロアクロスメンバ40Aの端部42の縦壁422に突き当たり、縦壁422に接続されている。接続部材90の車長方向の他端部は、後ろ側のフロアクロスメンバ40Bに上方から重ねられ、フロアクロスメンバ40Bの天板411に接続されている。ただし、接続部材90とフロアクロスメンバ40A,40Bとの接続態様は、これに限定されるものではない。接続部材90は、フロアクロスメンバ40A,40Bの各々に上方から重ねられていてもよいし、フロアクロスメンバ40A,40Bの縦壁同士を連結するように、フロアクロスメンバ40A,40B間で延びていてもよい。
【0082】
図12は、車体構造100を接続部材90の位置で車長方向に対して垂直に切断したときの断面図(横断面図)である。図12を参照して、接続部材90は、天板91と、縦壁92と、フランジ93,94とを含む。フランジ93は、例えば溶接又は機械接合等により、フロアパネル30の上面に接合されている。縦壁92は、フランジ93に連続し、フランジ93から車高方向において上方に起立している。天板91は、縦壁92に連続し、車体構造100の横断面視で縦壁92側からサイドシル10側に延在している。フランジ94は、天板91に連続している。
【0083】
接続部材90は、車幅方向において内側から内壁121を支持可能なようにサイドシル10に接続される。より詳細には、接続部材90のフランジ94がサイドシル10の内壁121に対して車幅方向の内側から接続されている。また、フランジ94は、サイドシル10の上壁122に接続されている。フランジ94は、例えば溶接又は機械接合等により、サイドシル10に接合されている。
【0084】
本実施形態において、接続部材90は、フロアパネル30の上面及びサイドシル10の内壁121に直接接続されている。ただし、接続部材90は、フロアパネル30の上面又はサイドシル10の内壁121に対し、間接的に接続されていてもよい。接続部材90は、サイドシル10に対して外壁111側から衝突荷重が入力されたとき、車幅方向において内側から内壁121を支持するように配置されていればよい。また、接続部材90は、フロアクロスメンバ40A,40Bに対し、例えば溶接又は機械接合等によって直接接続されていてもよいし、間接的に接続されていてもよい。
【0085】
接続部材90は、典型的には金属板で構成される。接続部材90は、鋼板で構成されることが好ましい。接続部材90は、例えば、980MPa以上の引張強度を有する鋼板で構成することができる。接続部材90の引張強度は、例えば、フロアクロスメンバ40A又は40Bの引張強度と同一であってもよい。接続部材90の板厚は、例えば、フロアクロスメンバ40Aの本体部41、又はフロアクロスメンバ40Bと同一であってもよい。
【0086】
[効果]
本実施形態に係る車体構造100は、複数のフロアクロスメンバ40A,40Bと、アンダーメンバ50とを備えている。フロアクロスメンバ40A,40B及びアンダーメンバ50は、車幅方向において内側からサイドシル10の内壁121を支持することが可能である。そのため、自動車の側面衝突により、サイドシル10に対して外壁111側から衝突荷重が入力されたとき、フロアクロスメンバ40A,40B及びアンダーメンバ50は、衝突荷重を受け止めてサイドシル10の移動を規制することができる。また、車体構造100は、複数のバッテリボックスブラケット80を備える。各バッテリボックスブラケット80は、サイドシル10の下部を支持している。すなわち、サイドシル10において、その中心部から離れた部分が複数のバッテリボックスブラケット80によって支持されている。そのため、サイドシル10に対して外壁111側から衝突荷重が入力されたとき、各バッテリボックスブラケット80によってサイドシル10の回転が規制され、サイドシル10のねじれ変形が抑制される。
【0087】
このように、車体構造100では、フロアクロスメンバ40A,40B、アンダーメンバ50、及びバッテリボックスブラケット80によってサイドシル10が強固に安定して支持される。これにより、車幅方向の外側からサイドシル10に衝突荷重が入力されたとき、サイドシル10内のエネルギー吸収部材20を車幅方向に圧潰させやすくなり、エネルギー吸収部材20によって衝突エネルギーを良好に吸収することができる。よって、車幅方向においてサイドシル10の内側に配置されたバッテリボックス60、及びバッテリモジュール63を保護することができる。
【0088】
本実施形態において、少なくとも一部のバッテリボックスブラケット80は、いずれかのバッテリボックスクロスメンバ70と車幅方向に並ぶように配置されることが好ましい。例えば、バッテリボックス60の左右に位置するバッテリボックスブラケット80と、バッテリボックスクロスメンバ70とが車幅方向に並んでいることが好ましい。これにより、全てのバッテリボックスブラケット80がバッテリボックスクロスメンバ70から離れて配置されている場合と比較して、バッテリボックス60の自重によるたわみを低減することができる。
【0089】
本実施形態において、フロアパネル30のうちフロアクロスメンバ40A,40Bが配置された部分31は、高強度部であることが好ましい。これにより、フロアパネル30上のフロアクロスメンバ40A,40Bがサイドシル10をより強固に支持することができる。よって、車幅方向の外側からサイドシル10に衝突荷重が入力されたとき、エネルギー吸収部材20がより圧潰しやすくなる。ただし、フロアパネル30は、その全体にわたって実質的に同一の強度を有していてもよい。
【0090】
本実施形態に係る車体構造100は、2つのフロアクロスメンバ40A,40Bに架け渡される接続部材90を備える。接続部材90は、フロアクロスメンバ40A,40Bと同様、車幅方向の内側からサイドシル10の内壁121を支持することが可能である。そのため、車幅方向の外側からサイドシル10に衝突荷重が入力されたとき、この衝突荷重は、接続部材90を介してフロアクロスメンバ40A,40Bに分散される。これにより、フロアクロスメンバ40A,40Bによるサイドシル10の支持強度を向上させることができる。よって、車幅方向の外側からサイドシル10に衝突荷重が入力されたとき、エネルギー吸収部材20がより圧潰しやすくなる。
【0091】
車体構造100が3つ以上のフロアクロスメンバを備える場合、3つ以上のフロアクロスメンバを接続部材90によって接続することもできる。一方、車体構造100において、接続部材90を省略することもできる。
【0092】
本実施形態において、アンダーメンバ50の板部51のうち、フロアパネル30側の部分は、サイドシル10側の部分よりも上方に配置されている。この場合、サイドシル10に入力された衝突荷重は、エネルギー吸収部材20を圧潰させた後、アンダーメンバ50を介してフロアパネル30に伝達され、フロアパネル30を持ち上げるように作用する。これにより、フロアパネル30は、バッテリボックス60から離れるように上方に変形する。そのため、変形したフロアパネル30がバッテリボックス60に接触するのを防止することができ、バッテリモジュール63を保護することができる。
【0093】
本実施形態において、サイドシル10、フロアパネル30、及びアンダーメンバ50の間の空間S内には、複数の隔壁部材54が設けられている。隔壁部材54は、衝突荷重によるアンダーメンバ50の変形を抑制することができる。そのため、アンダーメンバ50によるサイドシル10の支持強度を向上させることができる。よって、車幅方向の外側からサイドシル10に衝突荷重が入力されたとき、エネルギー吸収部材20がより圧潰しやすくなる。
【0094】
本実施形態において、フロアクロスメンバ40Aの両端部42の板厚は、本体部41の板厚と異なっていてもよい。フロアクロスメンバ40Aの両端部42の強度は、本体部41の強度と異なっていてもよい。例えば、フロアクロスメンバ40Aにおいて、端部42の板厚又は強度が比較的小さい場合、端部42が衝突荷重によって変形しやすくなる。一方、フロアクロスメンバ40Aにおいて、端部42の板厚又は強度が比較的大きい場合、端部42が衝突荷重によって変形しにくくなる。フロアクロスメンバ40Aの変形態様は、フロアパネル30の変形態様にも影響を与える。よって、フロアクロスメンバ40Aの端部42の板厚及び/又は強度を調整することにより、例えばフロアパネル30がバッテリボックス60に接触しないように、フロアパネル30の変形態様を制御することが可能となる。
【0095】
本実施形態では、フロアクロスメンバ40Aがサイドシル10の内壁121に接触している一方、フロアクロスメンバ40Bがサイドシル10の内壁121に接触していない。フロアクロスメンバ40Bの車幅方向の長さは、フロアクロスメンバ40Aの車幅方向の長さと比較して小さい。この場合、車幅方向の外側からサイドシル10に衝突荷重が入力されたとき、フロアクロスメンバ40Bとサイドシル10との隙間の位置でフロアパネル30を変形させる一方、フロアパネル30の中央部では変形を抑制することができる。ただし、フロアクロスメンバ40Bは、フロアクロスメンバ40Aと同様、サイドシル10の内壁121に接触していてもよい。
【0096】
本実施形態において、各バッテリボックスブラケット80の上面には凹部81が設けられている。この場合、衝突荷重によってサイドシル10内のエネルギー吸収部材20が潰れた後、各バッテリボックスブラケット80は衝突荷重に抵抗せず、凹部81を起点に破壊される。これにより、各バッテリボックスブラケット80によって衝突エネルギーを吸収することができる。よって、バッテリボックスブラケット80がバッテリボックス60を損傷させるのを防止することができ、バッテリモジュール63を保護することができる。
【0097】
本実施形態において、各バッテリボックスクロスメンバ70は、例えば、接着剤、溶接、及び機械接合の少なくとも1つによってバッテリボックス60のアンダーカバー62に強固に接合される。これにより、バッテリボックスブラケット80を介して入力される衝突荷重をバッテリボックス60及びバッテリボックスクロスメンバ70が受け止めやすくなり、バッテリボックス60及びバッテリボックスクロスメンバ70の荷重伝達性を向上させることができる。また、各バッテリボックスクロスメンバ70がアンダーカバー62に強固に接合されることにより、バッテリボックス60の自重によるたわみを低減することができ、バッテリモジュール63を保護することができる。さらに、バッテリボックス60が対地接触したときのバッテリモジュール63の保護にも有効である。
【0098】
各バッテリボックスクロスメンバ70は、接着剤及び溶接の少なくとも一方によってバッテリボックス60のアンダーカバー62に接合されることが好ましい。各バッテリボックスクロスメンバ70は、少なくとも接着剤によってアンダーカバー62に接合されていることが特に好ましい。各バッテリボックスクロスメンバ70は、接着剤のみでアンダーカバー62に接合されてもよいし、接着剤と溶接との併用、又は接着剤と機械接合との併用によってアンダーカバー62に接合されてもよい。接着剤又は溶接を用いることにより、アンダーカバー62に対する各バッテリボックスクロスメンバ70の接合面積が比較的大きくなる。接着剤を用いた場合、アンダーカバー62に対する各バッテリボックスクロスメンバ70の接合面積をより拡大することができる。よって、各バッテリボックスクロスメンバ70をアンダーカバー62により強固に接合することができる。その結果、バッテリボックス60及びバッテリボックスクロスメンバ70の荷重伝達性をさらに向上させることができ、且つ、バッテリモジュール63をより有効に保護することができる。
【0099】
以上、本開示に係る実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0100】
例えば、上記実施形態では、アンダーメンバ50の全体が板部51となっている。しかしながら、アンダーメンバ50が車長方向に延びる筒状体であり、アンダーメンバ50の一部が、フロアパネル30側の部分がサイドシル10側の部分よりも上方に配置される板部51であってもよい。アンダーメンバ50は、例えば、車体構造100の横断面視で実質的に三角形状や四角形状を有する筒状体であってもよい。アンダーメンバ50が筒状体である場合、アンダーメンバ50内に隔壁部材54が配置されてもよい。
【0101】
上記実施形態において、バッテリボックスブラケット80は、その上面に凹部81を有している。しかしながら、図13に示すように、バッテリボックスブラケット80は、その上面に孔部82を有していてもよい。この場合も、衝突荷重によってサイドシル10内のエネルギー吸収部材20が潰れた後、孔部82を起点にバッテリボックスブラケット80を破壊することができる。
【符号の説明】
【0102】
100:車体構造
10:サイドシル
111:外壁
121:内壁
20:エネルギー吸収部材
211:角部
30:フロアパネル
40A,40B:フロアクロスメンバ
42:端部
50:アンダーメンバ
51:板部
54:隔壁部材
60:バッテリボックス
70:バッテリボックスクロスメンバ
80:バッテリボックスブラケット
81:凹部
82:孔部
90:接続部材
図1
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