(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-17
(45)【発行日】2025-09-26
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 1/06 20060101AFI20250918BHJP
【FI】
B62D1/06
(21)【出願番号】P 2024005083
(22)【出願日】2024-01-17
【審査請求日】2024-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】大舘 正太郎
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-172312(JP,A)
【文献】特開2022-028505(JP,A)
【文献】特開2020-059415(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0057409(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00-1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブ部と、該ハブ部の左方および右方において略上下方向に延在する左右一対の鉛直部および前記ハブ部の下方において略左右方向に延在して前記左右一対の鉛直部を接続する水平部を有する把持部と、前記左右一対の鉛直部と前記ハブ部とを接続するスポーク部と、を有するステアリングハンドルと、
前記ステアリングハンドルの操舵角を検出する操舵角検出部と、
前記把持部に対する人体の接触または近接を検出するセンサユニットと、
前記把持部に沿って把持検出範囲を設定する設定部と、
前記センサユニットの検出値に基づいて、前記設定部により設定された前記把持検出範囲において把持が検出されたか否かを判定する判定部と、を備え、
前記設定部は、前記操舵角検出部により検出された前記操舵角に基づいて前記把持検出範囲を設定することを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
請求項1記載のステアリング装置において、
前記把持部の端部は、前記スポーク部よりも上方に突出して設けられ、
前記設定部は、前記端部を含む第1領域を前記把持検出範囲として予め設定し、前記操舵角検出部により検出された前記操舵角が所定値以上になると、前記把持検出範囲を、前記第1領域から、前記端部を除外した第2領域に変更することを特徴とするステアリング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のステアリング装置において、
前記所定値は、前記ステアリングハンドルが中立位置から時計回りおよび反時計回りに30度操舵させれたときに前記操舵角検出部により検出される操舵角であることを特徴とするステアリング装置。
【請求項4】
請求項1に記載のステアリング装置において、
前記判定部の判定結果を含む情報を外部の装置に出力する出力部をさらに備えたことを特徴とするステアリング装置。
【請求項5】
ハブ部と、該ハブ部の左方および右方において略上下方向に延在する左右一対の鉛直部および前記ハブ部の下方において略左右方向に延在して前記左右一対の鉛直部を接続する水平部を有する把持部と、前記把持部と前記ハブ部とを接続するスポーク部と、を有するステアリングハンドルと、
前記ステアリングハンドルの操舵角を検出する操舵角検出部と、
前記把持部に対する人体の接触または近接を検出するセンサユニットと、
前記センサユニットの検出値と第1所定閾値とを比較し、比較結果に基づいて、前記把持部が把持されているか否かを判定する判定部と、を備え、
前記把持部の端部は、前記スポーク部よりも上方に突出して設けられ、
前記判定部は、前記操舵角検出部により検出された前記操舵角が所定値以上であって、かつ、前記センサユニットにより前記人体の接触または近接が検出された位置が前記端部に含まれる場合には、前記センサユニットの検出値と、前記第1所定閾値と異なる第2所定閾値とを比較し、比較結果に基づいて前記把持部が把持されているか否かを判定することを特徴とするステアリング装置。
【請求項6】
請求項5に記載のステアリング装置において、
前記判定部は、前記センサユニットの検出値が前記第1所定閾値以上であるとき、前記把持部が把持されていると判定する一方、前記操舵角検出部により検出された前記操舵角が前記所定値以上であって、かつ、前記センサユニットにより前記人体の接触または近接が検出された前記位置が前記端部に含まれる場合には、前記センサユニットの検出値が前記第1所定閾値よりも大きい前記第2所定閾値以上であるとき、前記把持部が把持されていると判定することを特徴とするステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員によるステアリングハンドルの把持を検出する機能を備えたステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通の安全性の向上につながり、持続可能な輸送システムの発展に寄与するようなステアリング装置が望まれる。この点に関し、従来、上下方向の幅寸法より左右方向の幅寸法が大きい正面視略四角環状の操舵部を有する異形ハンドルにタッチセンサを配設して、タッチセンサからの信号に基づき把持位置を検知するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1記載の装置では、ハンドルの左右両側に把持部が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載のステアリング装置では、操舵中心軸周りにハンドルを回転操作したときに、運転者が操舵部の上部や下部など把持部以外の領域を把持して操舵するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様であるステアリング装置は、ハブ部と、該ハブ部の左方および右方において略上下方向に延在する左右一対の鉛直部およびハブ部の下方において略左右方向に延在して左右一対の鉛直部を接続する水平部を有する把持部と、左右一対の鉛直部とハブ部とを接続するスポーク部と、を有するステアリングハンドルと、ステアリングハンドルの操舵角を検出する操舵角検出部と、把持部に対する人体の接触または近接を検出するセンサユニットと、把持部に沿って把持検出範囲を設定する設定部と、センサユニットの検出値に基づいて、設定部により設定された把持検出範囲において把持が検出されたか否かを判定する判定部と、を備える。設定部は、操舵角検出部により検出された操舵角に基づいて把持検出範囲を設定する。
【0006】
本発明の他の態様であるステアリング装置は、ハブ部と、該ハブ部の左方および右方において略上下方向に延在する左右一対の鉛直部およびハブ部の下方において略左右方向に延在して左右一対の鉛直部を接続する水平部を有する把持部と、把持部とハブ部とを接続するスポーク部と、を有するステアリングハンドルと、ステアリングハンドルの操舵角を検出する操舵角検出部と、把持部に対する人体の接触または近接を検出するセンサユニットと、センサユニットの検出値と第1所定閾値とを比較し、比較結果に基づいて、把持部が把持されているか否かを判定する判定部と、を備える。把持部の端部は、スポーク部よりも上方に突出して設けられる。判定部は、操舵角検出部により検出された操舵角が所定値以上であって、かつ、センサユニットにより人体の接触または近接が検出された位置が端部に含まれる場合には、センサユニットの検出値と、第1所定閾値と異なる第2所定閾値とを比較し、比較結果に基づいて把持部が把持されているか否かを判定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、異形ハンドルに対する把持判定を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係るステアリング装置が適用されるステアリングハンドルの正面図。
【
図2A】ステアリングハンドル2が運転者により操作される様子を示す図。
【
図2B】ステアリングハンドル2が運転者により操作される様子を示す図
【
図3】本発明の実施の形態に係るステアリング装置の要部構成を示すブロック図。
【
図4A】設定部により設定された把持検出範囲の一例を示す図。
【
図4B】設定部により設定された把持検出範囲の他の例を示す図。
【
図5】本発明の実施の形態に係るステアリング装置を備えた運転支援システムの構成の一例を示す図。
【
図6】
図3のコントローラのCPUで実行される処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るステアリング装置が適用されるステアリングハンドルの正面図である。本発明の実施の形態に係るステアリング装置は、ADAS(Advanced driver-assistance systems)等の運転支援システムを備える手動運転車両に適用することができる。なお、本実施の形態に係るステアリング装置が適用される車両を、他車両と区別して自車両と呼ぶことがある。
図1のステアリングハンドル2は、自車両の運転席における運転者により操作される。正面視で(運転者から見て)ステアリングハンドル2の背面側には、ステアリングハンドル2を軸支するステアリングシャフト3が連結される。
【0010】
ステアリングハンドル2は、
図1に示すように異形のハンドルであり、ハブ部21と、リム部(把持部)22と、ハブ部21とリム部22とを接続するスポーク部23と、を備える。リム部22は、ハブ部21の左方および右方において略上下方向に延在する左右一対のリム部(鉛直部)22L,22Rおよびハブ部21の下方において略左右方向に延在してリム部(鉛直部)22L,22Rを接続する水平部22Hと、を含む。スポーク部23は、ハブ部21とリム部(鉛直部)22L,22Rとを接続する水平部23L,23Rと、ハブ部21と水平部22Hとを接続する垂直部23Vと、を含む。リム部(鉛直部)22Lは、その端部25Lがスポーク部(水平部)23Lとリム部(鉛直部)22Lとの接続部26Lよりも上方に突出するように設けられる。同様に、リム部(鉛直部)22Rは、その端部25Rがスポーク部(水平部)23Rとリム部(鉛直部)22Rとの接続部26Rよりも上方に突出するように設けられる。以下、端部25L,25Rを突出部とも呼ぶ。
【0011】
スポーク部(水平部)23Lは、導電性を有し板状に構成された電極24L1,24L2を内蔵する。電極24L1,24L2は、ステアリングハンドル2のうち、リム部22に対して定められた左手に対する推奨把持領域(後述する
図4Aの領域AR1L)の近傍に設けられる。より具体的には、電極24L1は、スポーク(水平部)23Lの上方および径方向外側の側壁面に沿って設けられる。また、電極24L2は、スポーク部(水平部)23Lの下方およびハブ部21のうちの左下側の部分でリム部22と対向する面に沿って設けられる。
【0012】
同様に、スポーク部(水平部)23Rは、導電性を有し板状に構成された電極24R1,24R2を内蔵する。電極24R1,24R2は、ステアリングハンドル2のうち、リム部22に対して定められた右手に対する推奨把持領域(後述する
図4Bの領域AR1R)の近傍に設けられる。より具体的には、電極24R1は、スポーク部(水平部)23Rの上方および径方向外側の側壁面に沿って設けられる。また、電極24R2は、スポーク部(水平部)23Rの下方およびハブ部21のうちの右下側の部分でリム部22と対向する面に沿って設けられる。
【0013】
電極24(24L1,24L2,24R1,24R2)は、不図示の信号線を介して、後述する
図3のセンサユニット(以下、把持センサとも呼ぶ。)14のセンサユニット14L1,14L2,14R1,14R2にそれぞれ接続される。
【0014】
ところで、ADAS等の運転支援システムには、自車線の中央付近を自車両が走行するように走行用アクチュエータ(より詳細には、転舵装置を駆動する転舵用アクチュエータ)を制御して操舵支援する車線維持機能(LKAS:Lane Keep Assistant System)が含まれる。車線維持機能が有効である場合、運転者に対して、いざという時に即座にステアリングハンドル2を的確に操作できるようにステアリングハンドル2の把持義務が課される場合がある。この場合、運転支援システムは、運転者が把持義務を果たしているか否かを監視し、運転者が把持義務を果たしている間、運転支援(操舵支援)を継続する。一方、運転者が把持義務を果たしていないと判断すると、運転支援システムは、車内に設置されたディスプレイやスピーカ等を介して運転者に対して警告する。または、運転支援(操舵支援)を一時的に制限する。
【0015】
図2Aおよび
図2Bは、ステアリングハンドル2が運転者により操作される様子を示す図である。
図2Aに示すように、運転者が両手(左手HLおよび右手HR)でステアリングハンドル2を把持しているときには、運転者は即座にステアリングハンドル2を的確に操作できる状態である。したがって、運転支援システムは、把持義務が果たされていると判断して運転支援を継続する。一方、ステアリングハンドル2のように端部25L,25Rを有する異形ハンドルでは、
図2Bに示すように、片側の手(
図2Bでは右手HR)の親指等を端部25Rまたは端部25Lに引っ掛けるようにしてステアリング操作可能であるため、運転者により片手操作されてしまうおそれがある。しかしながら、車線維持機能が有効であるときに、
図2Bに示すような把持状態では、運転者が即座にステアリングハンドル2を的確に操作することが困難であるため、運転支援時の安全性が損なわれるおそれがある。そこで、このような問題に対処するように、本実施形態では、以下のようにステアリング装置を構成する。
【0016】
図3は、本実施形態に係るステアリング装置の要部構成を示すブロック図である。このステアリング装置50は、
図3に示すように、コントローラ10と、舵角センサ13と、把持センサ14と、通信部15とを有する。通信部15は、ステアリング装置50をCAN(Controller Area Network)等の通信網(ネットワーク)に接続する。ステアリング装置50は、通信部15を介してCAN通信等により不図示の車載装置と通信可能である。なお、ステアリング装置50は、無線通信網を介して不図示の車載装置や車外装置と通信可能であってもよい。
【0017】
舵角センサ13は、運転者のステアリング操作に応じた操舵角を検出する。操舵角は、ステアリングシャフト3を中心として、かつ、運転者から視てハブ部21の上端部の左右方向における中心位置を基準とする時計回りの角度で表す。また、ステアリングハンドル2の中立位置(0[deg])は、ステアリングハンドル2が時計回りおよび反時計回りのいずれの回転方向にも操作されておらず、自車両の操舵輪(前輪、後輪、または前後輪)を左右のどちらにも操舵されていない状態とする位置である。
【0018】
把持センサ14は、不図示の信号線を介して
図1の電極24L1,24L2,24R1,24R2にそれぞれ接続されたセンサユニット14L1,14L2,14R1,14R2を有する。センサユニット14L1,14L2,14R1,14R2はそれぞれ、電極24L1,24L2,24R1,24R2の電気的特性(例えば、電極とグランド(例えば車体)間の静電容量)を検出する。
【0019】
コントローラ10は、CPU(マイクロプロセッサ)等の演算部11および記憶部12を含む。演算部11は、機能的構成として、設定部111と、判定部112と、出力部113とを有する。記憶部12には、各種制御のプログラム、プログラムで用いられる閾値等の情報が記憶される。
【0020】
設定部111は、リム部22に沿って把持検出範囲を設定する。
図4Aは、設定部111により設定された把持検出範囲の一例を示す図である。把持検出範囲は、運転者によるステアリングハンドル2の把持の検出対象とする範囲であり、リム部22に予め定められた運転者の左手に対する推奨把持領域AR1Lおよび運転者の右手に対する推奨把持領域AR1Rに対応するように設定される。具体的には、推奨把持領域AR1Lと推奨把持領域AR1Rとを併せた領域が把持検出範囲として設定される。
【0021】
また、設定部111は、舵角センサ13により検出された操舵角に基づいて、把持検出範囲を変更する。具体的には、設定部111は、舵角センサ13により検出された操舵角が所定値Th[deg]以上になると、把持検出範囲から端部25L,25Rが除外されるように把持検出範囲を設定し直す。
図4Bは、設定部111により設定された把持検出範囲の他の例を示す図である。
図4Bに示す領域AR2L,AR2Rは、
図4Aの推奨把持領域AR1L,AR1Rから端部25L,25Rに対応した領域が除外された領域である。このように、舵角センサ13により検出された操舵角が所定値Th以上になると、設定部111は、把持検出範囲を、推奨把持領域AR1L,AR1Rから
図4Bの領域AR2L,AR2Rに変更する。
【0022】
判定部112は、把持センサ14の検出結果に基づいて、運転者によりステアリングハンドル2が把持されているか否かを判定する。詳細には、判定部112は、把持センサ14の検出値(静電容量)に基づいて、電極24に対する人体の接触または近接(所定距離内の接近動作)を検出する。より詳細には、把持センサ14の検出値(静電容量)が近接判定用の閾値以上であるとき近接と判定し、近接判定用の閾値よりも大きい接触判定用の閾値以上であるとき接触と判定する。判定部112はさらに、運転者によりステアリングハンドル2が把持されていると判定すると、把持センサ14の検出結果に基づいて把持位置を検出し、把持位置が把持検出範囲に含まれるか否かを判定する。
【0023】
出力部113は、判定部112の判定結果に基づいて把持状態を判断し、把持状態を示す情報(以下、把持状態情報と呼ぶ。)を、自車両に搭載された出力装置に出力する。出力装置は、運転者に対し情報を出力する装置の総称である。出力装置には、運転者に表示画像を介して情報を提供するディスプレイ、運転者に音声で情報を提供するスピーカなどが含まれる。
【0024】
判定部112によりステアリングハンドル2が把持されていると判定され、かつ、把持位置が把持検出範囲に含まれると判定されたとき、出力部113は、把持状態として「正常」を示す把持状態情報を出力する。一方、判定部112によりステアリングハンドル2が把持されていると判定されても、把持位置が把持検出範囲に含まれないときには、出力部113は、把持状態として「非把持」を示す把持状態情報を出力する。また、判定部112によりステアリングハンドル2が把持されていないと判定されたとき、出力部113は、把持状態として「非把持」を示す把持状態情報を出力する。なお、出力部113は、「非把持」を示す把持状態情報を出力するとき、運転者にステアリングハンドル2の把持を促す警告情報を把持状態情報に含ませてもよい。警告情報には、ディスプレイやスピーカ等に出力される表示情報や音声情報の他、ステアリングハンドル2に設けられた、または、ステアリングハンドル2の周辺(インストルメントパネル等)に設けられた警告灯等を点灯または点滅させるための信号が含まれてもよい。また、出力部113は、通信部15を介して、把持状態情報を車載装置や車外装置に出力してもよい。
【0025】
図5は、本実施形態に係るステアリング装置50を備えた運転支援システム1の構成の一例を示す図である。
図5に示すように、運転支援システム1は、ステアリング装置50と車載装置の1つである運転支援装置70とを備える。ステアリング装置50は、CANバス60を介して運転支援装置70と通信可能に接続される。
【0026】
運転支援装置70は、電子制御ユニット(ECU)により構成される。運転支援装置70は、CPU(マイクロプロセッサ)等の演算部71および記憶部72を含む。演算部71は、機能的構成として、走行制御部711を有する。記憶部72には、各種制御のプログラム、プログラムで用いられる閾値等の情報が記憶される。走行制御部711は、車載センサから得られた情報(カメラ画像等)に基づいて不図示の走行用アクチュエータを制御する。走行用アクチュエータには、エンジンのスロットルバルブの開度(スロットル開度)を調整するスロットル用アクチュエータ、自車両の制動装置を作動するブレーキ用アクチュエータ、転舵装置を駆動する転舵用アクチュエータ等が含まれる。
【0027】
運転支援装置70は、LKASやACC(Adaptive Cruise Control)等の各種運転支援機能を有する。LKASが有効であるとき、走行制御部711は、車載センサから得られた情報に基づいて自車線を規定する区画線を認識し、自車両が自車線の中央付近を走行するように転舵用アクチュエータを制御する。このとき、走行制御部711は、CANバス60を介してステアリング装置50の出力部113から出力される把持状態情報を取得し、把持状態情報に基づいて、ステアリングハンドル2の把持状態を認識する。ステアリングハンドル2に対する運転者の非把持を認識すると、走行制御部711は、LKASによる運転支援(操舵支援)を一時的に停止する。運転者の非把持の状態が所定時間継続したときは、走行制御部711は、操舵支援をキャンセルする。運転者の非把持の状態が所定時間継続する前に、ステアリングハンドル2に対する運転者の把持が認識されたときは、一時的に停止された操舵支援を再開させる。このように、ステアリング装置50から出力される把持状態情報は、運転支援装置70における運転支援機能の一時停止や再開、キャンセル等の制御に利用される。
【0028】
図6は、予め定められたプログラムに従い
図3のコントローラ10のCPUで実行される処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば、自車両が走行中であるとき所定周期で実行される。なお、自車両が走行を開始するとき、
図4Aの推奨把持領域AR1L,AR1Rが把持検出範囲として設定される。
【0029】
まず、ステップS11で、コントローラ10は、舵角センサ13のセンサ値(操舵角)が所定値以上であるか否かを判定する。ステップS11で肯定されると、ステップS12で、コントローラ10は、把持検出範囲を、
図4Bの領域、すなわち、推奨把持領域AR1L,AR1Rから端部25L,25Rに対応した領域が除外された領域AR2L,AR2Rに変更する。ステップS11で否定されると、コントローラ10は、把持検出範囲を変更せずに(すなわち、把持検出範囲を推奨把持領域AR1L,AR1Rに設定して)、ステップS13に進む。ステップS13で、コントローラ10は、把持センサ14の検出結果に基づいて、運転者によるリム部22の把持が検出されたか否かを判定する。ステップS13で否定されると、コントローラ10は、ステアリングハンドル2が把持されていないと判断して、ステップS15で、「非把持」を示す把持状態情報を生成する。ステップS13で肯定されると、ステップS14で、コントローラ10は、把持センサ14の検出結果に基づいてさらに把持位置を検出し、検出された把持位置が把持検出範囲に含まれるか否かを判定する。ステップS14で肯定されると、コントローラ10は、運転者によりステアリングハンドル2が正しく把持されていると判断して、ステップS16で、「正常」を示す把持状態情報を生成する。一方、ステップS14で否定されると、コントローラ10は、運転者によりステアリングハンドル2が正しく把持されていないと判断して、ステップS15に進む。ステップS17で、コントローラ10は、ステップS15またはステップS16で生成した把持状態情報を出力して処理を終了する。
【0030】
以上の処理により、自車両が走行中に操舵角が所定値以上になると、操舵角が所定値未満になるまで、
図4Bの領域AR2L,AR2Rが把持検出範囲として設定される。操舵角が所定値未満になると、
図4Aの推奨把持領域AR1L,AR1Rが把持検出範囲として設定される。このように、コントローラ10は、
図6のフローに従って、ステアリングハンドル2の操舵角に応じて把持検出範囲を変更する。
【0031】
以上説明した実施の形態によれば、以下のような作用効果が得られる。
(1)ステアリング装置50は、ハブ部21と、該ハブ部21の左方および右方において略上下方向に延在する左右一対の鉛直部22L,22Rおよびハブ部21の下方において略左右方向に延在して左右一対の鉛直部22L,22Rを接続する水平部22Hを有するリム部(把持部)22と、左右一対の鉛直部22L,22Rとハブ部21とを接続するスポーク部23L,23Rと、を有するステアリングハンドル2と、ステアリングハンドル2の操舵角を検出する舵角センサ13と、リム部22に対する人体の接触または近接を検出するセンサユニット14と、リム部22に沿って把持検出範囲を設定する設定部111と、センサユニット14の検出値に基づいて、設定部111により設定された把持検出範囲において把持が検出されたか否かを判定する判定部112と、を備える。設定部111は、舵角センサ13により検出された操舵角に基づいて把持検出範囲を設定する。リム部22の端部25L,25Rは、スポーク部23L,23Rよりも上方に突出して設けられる。設定部111は、端部25L,25Rを含む推奨把持領域AR1L,AR1Rを把持検出範囲として予め設定し、舵角センサ13により検出された操舵角が所定値以上になると、把持検出範囲を、推奨把持領域AR1L,AR1Rから、端部25L,25Rを除外した領域AR2L,AR2Rに変更する。所定値は、例えば、ステアリングハンドル2が中立位置から時計回りおよび反時計回りに30度([deg])操舵させれたときに舵角センサ13により検出される操舵角である。これにより、
図2Bに示すような不適切な把持位置での把持が非把持状態と判定されるようになり、異形ハンドルに対する把持判定の精度をさらに向上できる。
(2)ステアリング装置50は、判定部112の判定結果を含む情報を外部の装置(出力装置(ディスプレイやスピーカ等)や運転支援装置70)に出力する出力部113をさらに備える。これにより、運転者に把持判定の結果を認識させることができる。また、把持判定の結果をLKAS等の運転支援機能に利用することができる。その結果、異形ハンドル操作時の安全性を向上できる。
【0032】
上記実施の形態は、種々の形態に変形することができる。以下、変形例について説明する。上記実施形態では、センサユニット14は、リム部22に対する人体の接触または近接を検出するようにした。しかしながら、センサユニットは、さらにリム部22に対する把持力を検出してもよい。この場合、リム部22に感圧センサが内蔵され、センサユニットは、不図示の信号線を介して感圧センサから得られるセンサ値に基づき、ステアリングハンドル2に対する把持力を検出する。なお、ステアリングハンドル2に対する把持力の検出には、感圧センサ以外のセンサが用いられてもよい。設定部111は、センサユニットの検出値が所定閾値以上であるとき、舵角センサ13により検出された操舵角が所定値以上であっても、把持検出範囲を推奨把持領域AR1L,AR1Rに設定する。これにより、運転者が端部25L,25Rをしっかりと把持してステアリング操作しているときに不要に非把持と判定されてしまうことを抑制できる。
【0033】
また、上記実施形態では、判定部112が、センサユニット14の検出値に基づいて、把持検出範囲において把持が検出されたか否かを判定し、出力部113が、判定部112の判定結果を含む把持状態情報を外部の装置に出力するようにした。しかしながら、判定部は、左手に対応した把持検出範囲(推奨把持領域AR1Lまたは領域AR2L)において左手による把持が検出されたか否かを判定するとともに、右手に対応した把持検出範囲(推奨把持領域AR1Rまたは領域AR2R)において右による把持が検出されたか否かを判定してもよい。出力部は、左手に対応した判定結果(以下、第1判定結果と呼ぶ。)と右手に対応した判定結果(以下、第2判定結果と呼ぶ。)とに基づく把持状態情報を外部の装置に出力してもよい。例えば、出力部は、第1判定結果と第2判定結果とに基づき、ステアリングハンドル2が両手で把持されていると判断されるときに、把持状態として「正常」を示す把持状態情報を出力してもよい。一方、いずれか片方の手によりステアリングハンドル2が把持されていると判断されるときには、出力部は、把持状態として「非把持」を示す把持状態情報を出力してもよい。このとき、運転者に両手での把持を促す警告情報を把持状態情報に含ませてもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、操舵角検出部としての舵角センサ13により検出された操舵角が所定値以上になると、設定部111が、把持検出範囲を、第1領域である推奨把持領域AR1L,AR1Rから第2領域である領域AR2L,AR2Rに変更して、把持検出範囲から端部25L,25Rを除外するようにした。しかしながら、操舵角が所定値以上であるときに把持検出範囲から端部25L,25Rを除外する方法はこれに限られない。例えば、操舵角が所定値以上のときに、リム部22の端部25L,25R以外の部分と、端部25L,25Rとで把持判定の閾値を異ならせてもよい。具体的には、判定部112は、センサユニット14Lの検出値と第1所定閾値とを比較し、その比較結果に基づいて、リム部22が把持されているか否かを判定する一方、操舵角が所定値以上であって、かつ、センサユニット14により人体の接触または近接が検出された位置が端部25L,25Rに含まれる場合には、センサユニット14の検出値と、第1所定閾値と異なる第2所定閾値とを比較し、その比較結果に基づいてリム部22が把持されているか否かを判定する。より詳細には、判定部112は、センサユニット14の検出値が第1所定閾値以上であるとき、リム部22が把持されていると判定する一方、操舵角が所定値以上であって、かつ、センサユニット14により人体の接触または近接が検出された位置が端部25L,25Rに含まれる場合には、センサユニット14の検出値が第1所定閾値よりも大きい第2所定閾値以上であるとき、リム部22が把持されていると判定する。
【0035】
また、上記実施形態では、自車両が走行中に、コントローラ10が
図6の処理を実行する場合を例にした。しかしながら、コントローラ10は、LKAS等の運転支援機能が有効になったことを示す通知を運転支援装置70から受信したときに、
図6の処理を開始してもよい。また、コントローラ10は、自車両の走行速度が所定速度以下であるときには、
図6の処理を実行しないようにしてもよい。さらに、自動駐車機能(パーキングアシストシステム)など、運転者に対してステアリングハンドル2の把持が要求されない運転支援機能が有効であるときには、
図6の処理を実行しないようにしてもよい。
【0036】
さらに、上記実施形態では、ADASを備えた手動運転車両にステアリング装置50を適用したが、ステアリング装置50は、自動運転車両にも適用可能である。
【0037】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施の形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施の形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 運転支援システム、2 ステアリングハンドル、10 コントローラ、11 演算部、12 記憶部、13 舵角センサ、14 把持センサ、15 通信部、21 ハブ部、22 リム部、23 スポーク部、24 電極、25L,25R 端部、26L,26R 接続部、70 運転支援装置、111 設定部、112 判定部、113 出力部