(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-19
(45)【発行日】2025-09-30
(54)【発明の名称】タイル貼り付け情報生成装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20250922BHJP
E04F 13/14 20060101ALI20250922BHJP
【FI】
G06F30/13
E04F13/14 103F
(21)【出願番号】P 2021160275
(22)【出願日】2021-09-30
【審査請求日】2024-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朴 宰弘
(72)【発明者】
【氏名】大谷 星輝
(72)【発明者】
【氏名】三木 靖揮
【審査官】柴垣 宙央
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-202631(JP,A)
【文献】特開2011-246996(JP,A)
【文献】特開平11-264228(JP,A)
【文献】特開2020-149465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/13
E04F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のタイル材をパネル部材に貼り付けて製造される
外壁パネル用のタイル貼り付け情報生成装置であって、
外壁パネルごとに、
建物の直線部、入隅部、および出隅部のうちのいずれかを示す端部条件と、所定の始点位置に配置される
タイルの種類であって、幅寸法と、直線形状およびL字形状を含む形状との組み合わせにより定められた端部タイル種類とを含む製造条件情報を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記製造条件情報、および、タイル材の種類ごとの幅寸法
および形状を示す所定のタイルサイズ情報に基づいて、
外壁パネルごとにタイル材の配置パターンを決定する決定手段と、
前記決定手段により決定されたタイル材の配置パターンを含む、
外壁パネルごとのタイル貼り付け情報を生成する生成手段とを備える、タイル貼り付け情報生成装置。
【請求項2】
前記製造条件情報は、パネル幅、パネル高さ、および開口範囲を示す形状情報をさらに含み、
前記形状情報に基づいて、
外壁パネルを複数の仮想領域に区画する区画手段をさらに備え、
前記決定手段は、前記区画手段により区画された仮想領域ごとに、タイル材の配置パターンを決定する、請求項1に記載のタイル貼り付け情報生成装置。
【請求項3】
前記複数の仮想領域は、
外壁パネルの端部領域、開口部に隣接する開口横領域、および残りの中央領域を含み、
前記決定手段は、前記端部領域、前記開口横領域、および前記中央領域の順に、タイル材の配置パターンを決定する、請求項2に記載のタイル貼り付け情報生成装置。
【請求項4】
複数のタイル材の組合せ方をパターン化した複数種類の組合せパターンが予め定められており、
前記決定手段は、前記仮想領域ごとに、前記複数種類の組合せパターンのなかから1つまたは複数の組合せパターンを選択することにより、タイル材の配置パターンを決定する、請求項2または3のいずれかに記載のタイル貼り付け情報生成装置。
【請求項5】
前記決定手段は、前記仮想領域ごとに、前記組合せパターンの数が少なくなるように、タイル材の配置パターンを決定する、請求項4に記載のタイル貼り付け情報生成装置。
【請求項6】
前記区画手段は、
外壁パネルの生産ラインに設置されるタイル貼り付けロボットが一度に保持可能なサイズに基づいて、
外壁パネルの区画分けを実行する、請求項2~5のいずれかに記載のタイル貼り付け情報生成装置。
【請求項7】
生産ラインにおける前記タイル貼り付けロボットの配置位置情報に基づいて、前記複数の仮想領域へのタイル材の貼り付け順序を決定する配置順序決定手段をさらに備え、
前記タイル貼り付け情報は、前記配置順序決定手段により決定された貼り付け順序をさらに含む、請求項6に記載のタイル貼り付け情報生成装置。
【請求項8】
複数のタイル材をパネル部材に貼り付けて製造されるパネル体用のタイル貼り付け情報生成装置であって、
パネル体ごとに、直線部、入隅部、および出隅部のうちのいずれかを示す端部条件と、所定の始点位置に配置されるタイル種類とを含む製造条件情報を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記製造条件情報、および、タイル材の種類ごとの幅寸法または形状を示す所定のタイルサイズ情報に基づいて、パネル体ごとにタイル材の配置パターンを決定する決定手段と、
前記決定手段により決定されたタイル材の配置パターンを含む、パネル体ごとのタイル貼り付け情報を生成する生成手段とを備え、
前記製造条件情報は、パネル幅、パネル高さ、および開口範囲を示す形状情報をさらに含み、
前記形状情報に基づいて、パネル体を複数の仮想領域に区画する区画手段をさらに備え、
前記決定手段は、前記区画手段により区画された仮想領域ごとに、タイル材の配置パターンを決定する、タイル貼り付け情報生成装置。
【請求項9】
複数のタイル材をパネル部材に貼り付けて製造される
外壁パネル用のタイル貼り付け情報を生成するためのプログラムであって、
外壁パネルごとに、
建物の直線部、入隅部、および出隅部のうちのいずれかを示す端部条件と、所定の始点位置に配置される
タイルの種類であって、幅寸法と、直線形状およびL字形状を含む形状との組み合わせにより定められた端部タイル種類とを含む製造条件情報を取得するステップと、
取得した前記製造条件情報、および、タイル材の種類ごとの幅寸法
および形状を示す所定のタイルサイズ情報に基づいて、
外壁パネルごとにタイル材の配置パターンを決定するステップと、
決定されたタイル材の配置パターンを含む、
外壁パネルごとのタイル貼り付け情報を生成するステップとをコンピュータに実行させる、タイル貼り付け情報生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイル貼り付け情報生成装置およびプログラムに関し、特に、複数のタイル材をパネル部材に貼り付けて製造されるパネル体用のタイル貼り付け情報生成装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開平6-238533号公報(特許文献1)に示されるように、外壁パネルなどの建物のパネル体を工場で生産することは従来から行われている。また、特開2020-135589号公報(特許文献2)に示されるように、外壁パネルの基本情報および設計制約条件に基づいて、外壁パネルを構成する桟材の配置パターンを決定する技術も従来から提案されている。
【0003】
また、パネル体の仕上げ材としてタイル(タイル材)を用いる場合があり、特開2005-275983号公報(特許文献3)および特開2020-149465号公報(特許文献4)には、外壁のタイル施工対象面に対するタイル割付を演算するタイル割付方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-238533号公報
【文献】特開2020-135589号公報
【文献】特開2005-275983号公報
【文献】特開2020-149465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外壁パネルなどのパネル体の仕上げ材としてタイル材を用いる場合、タイル材の貼り付けは現場で手作業で行われることが一般的である。特許文献1のように外壁パネルを工場で生産する技術は従来から存在するものの、上述の特許文献1の生産システムは、外壁パネルの仕上げ材としてタイル材を用いるものではないため、このようなシステムをそのまま、複数のタイル材をパネル部材に自動的に貼り付けてパネル体を製造するシステムに適用することはできない。
【0006】
また、特許文献2では、外壁パネル単位で(他の外壁パネルとの取り合い等を考慮することなく)桟材の配置パターンを決定しており、このような決定方法をタイル材の配置パターンの決定に援用することはできない。
【0007】
また、上述の特許文献3、4では、外壁パネルの仕上げ材としてタイルを用いる場合のタイル割付を演算する方法が提案されているものの、生産ラインとの連携を考慮したものではない。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、タイル材を仕上げ材として用いたパネル体を工場生産するために必要なタイル貼り付け情報を生成することのできるタイル貼り付け情報生成装置およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のある局面に従うタイル貼り付け情報生成装置は、複数のタイル材をパネル部材に貼り付けて製造されるパネル体用のタイル貼り付け情報生成装置であって、パネル体ごとに、直線部、入隅部、および出隅部のうちのいずれかを示す端部条件と、所定の始点位置に配置されるタイル種類とを含む製造条件情報を取得する取得手段と、取得手段が取得した製造条件情報、および、タイル材の種類ごとの幅寸法または形状を示す所定のタイルサイズ情報に基づいて、パネル体ごとにタイル材の配置パターンを決定する決定手段と、決定手段により決定されたタイル材の配置パターンを含む、パネル体ごとのタイル貼り付け情報を生成する生成手段とを備える。
【0010】
好ましくは、製造条件情報は、パネル幅、パネル高さ、および開口範囲を示す形状情報をさらに含む。この場合、タイル貼り付け情報生成装置は、形状情報に基づいて、パネル体を複数の仮想領域に区画する区画手段をさらに備え、決定手段は、区画手段により区画された仮想領域ごとに、タイル材の配置パターンを決定することが望ましい。
【0011】
また、複数の仮想領域は、パネル体の端部領域、開口部に隣接する開口横領域、および残りの中央領域を含み、決定手段は、端部領域、開口横領域、および中央領域の順に、タイル材の配置パターンを決定することが望ましい。
【0012】
好ましくは、複数のタイル材の組合せ方をパターン化した複数種類の組合せパターンが予め定められており、決定手段は、仮想領域ごとに、複数種類の組合せパターンのなかから1つまたは複数の組合せパターンを選択することにより、タイル材の配置パターンを決定する。
【0013】
決定手段は、仮想領域ごとに、組合せパターンの数が少なくなるように、タイル材の配置パターンを決定することが望ましい。
【0014】
好ましくは、区画手段は、パネル体の生産ラインに設置されるタイル貼り付けロボットが一度に保持可能なサイズに基づいて、パネル体の区画分けを実行する。
【0015】
好ましくは、タイル貼り付け情報生成装置は、生産ラインにおけるタイル貼り付けロボットの配置位置情報に基づいて、複数の仮想領域へのタイル材の貼り付け順序を決定する配置順序決定手段をさらに備える。この場合、タイル貼り付け情報は、配置順序決定手段により決定された貼り付け順序をさらに含み得る。
【0016】
この発明の他の局面に従うタイル貼り付け情報生成プログラムは、複数のタイル材をパネル部材に貼り付けて製造されるパネル体用のタイル貼り付け情報を生成するためのプログラムであって、パネル体ごとに、直線部、入隅部、および出隅部のうちのいずれかを示す端部条件と、所定の始点位置に配置されるタイル種類とを含む製造条件情報を取得するステップと、取得した製造条件情報、および、タイル材の種類ごとの幅寸法または形状を示す所定のタイルサイズ情報に基づいて、パネル体ごとにタイル材の配置パターンを決定するステップと、決定されたタイル材の配置パターンを含む、パネル体ごとのタイル貼り付け情報を生成するステップとをコンピュータに実行させる、タイル貼り付け情報生成プログラム。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、タイル材を仕上げ材として用いるパネル体を工場生産するために必要なタイル貼り付け情報を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態における外壁パネル生産システムの全体構成を示す模式図である。
【
図2】(A),(B)は、パネル体の一例であるタイル外壁パネルの構成例を示す図である。
【
図3】(A)は、本発明の実施の形態に係る製造条件情報生成装置のハードウェア構成および機能構成を示すブロック図であり、(B)は、本発明の実施の形態に係るタイル貼り付け情報生成装置のハードウェア構成および機能構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施の形態における製造条件情報生成処理を示すフローチャートである。
【
図5】(A),(B)は、本発明の実施の形態における位置情報の検出方法を示す説明図である。
【
図6】(A),(B)は、本発明の実施の形態における製造条件情報に含まれる条件データの項目を示す説明図である。
【
図7】(A)~(C)は、本発明の実施の形態における端部条件の判別方法を示す説明図である。
【
図8】(A),(B)は、本発明の実施の形態における端部タイル種類の判別方法を示す説明図である。
【
図9】本発明の実施の形態におけるタイル貼り付け情報生成処理を示すフローチャートである。
【
図10】(A),(B)は、本発明の実施の形態における区画処理用法を示す説明図である。
【
図11】(A)は、複数種類の組合せパターンの具体例を示す図であり、(B)は、一部の仮想領域に作業順序を表わす番号が付与された例を模式的に示す図である。
【
図12】工場内における外壁パネルの生産ラインの具体例を示す図である。
【
図13】(A)は、パターン生成ステーションの概略構成を示す図であり、(B)は、タイルユニットの具体例を示す図である。
【
図14】パターン生成ステーションにおけるタイルユニット生成処理を示すフローチャートである。
【
図15】(A)~(D)は、型枠パレットの基本構成例を表わす説明図である。
【
図16】(A)~(C)は、型枠パレットの好ましい構成例を表わす説明図である。
【
図17】(A),(B)は、
図16に示す型枠パレットを用いた場合に、様々な配置パターンに適用可能であることを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0020】
本実施の形態では、建物のパネル体として外壁パネルを生産するシステムについて説明する。
【0021】
<外壁パネル生産システムの全体構成>
図1は、本実施の形態における外壁パネル生産システム1の全体構成を示す模式図である。
【0022】
外壁パネル生産システム1は、ブリック(煉瓦)などの複数のタイル材を仕上げ材とする外壁パネル(以下「タイル外壁パネル」という)を工場にて自動的に生産するためのシステムであり、主に、ティーチングデータ生成システム2と、工場内に設置される外壁パネル製造装置3とを備えている。
【0023】
(タイル外壁パネルの構成および配置例)
図2は、タイル外壁パネルPの構成例を示す図であり、(A)はタイル外壁パネルPの分解図であり、(B)はタイル外壁パネルPの正面図である。
【0024】
図2(A)を参照して、タイル外壁パネル(以下「外壁パネル」と略す)Pは、たとえば鋼製フレームなどを含むフレーム部材101と窯業系の下地材(以下「サイディング」という)105とを含むパネル部材110と、パネル部材110に貼り付けられ、多数のタイル材BTからなる仕上げ材120とを備えている。各タイル材BTは、板状に形成された部材であり、たとえば、ブリック(煉瓦)BRを所定の厚みでカットして形成されていてもよい。パネル部材110の表面には、
図2(B)に示されるように、多数のタイル材BTが敷き詰められている。
【0025】
なお、
図2(B)では、正面から見たタイル材BTの形状が矩形形状である例を示しているが、タイル材BTの形状は丸(たとえば楕円)形状や多角形(たとえば六角形)形状などであってもよい。また、タイル材BTの厚みは一定でなくてもよい。
【0026】
複数の外壁パネルPが少なくとも横方向に接続されることにより、住宅の外壁が構成される。
図5(A)には、ある住宅9の1階部分の平面図が示されており、住宅9の外壁を構成する各外壁パネルPに、方角に応じた符号W1・・・,S1・・・,E1・・・,N1・・・が付与されている。
【0027】
(外壁パネル製造装置の概要)
再び
図1を参照して、外壁パネル製造装置3は、工場において、パネル部材110に複数のタイル材BTを貼り付けて外壁パネルPを製造する装置であり、複数の機械設備を含む。具体的には、外壁パネル製造装置3は、複数のタイル材をユニット化した「タイルユニット」を生成するタイルユニット生成装置30と、タイルユニット生成装置30により生成されたタイルユニットをタイル貼りステーションに供給するタイルユニット供給装置40と、タイル貼りステーションに供給されたタイルユニットをパネル部材110に貼り付けるタイル貼り付け装置50とを備えている。また、これらの装置30,40,50を制御する制御装置60を備えている。
【0028】
(ティーチングデータ生成システムの概要)
ティーチングデータ生成システム2は、外壁パネル製造装置3を稼働させるために必要なデータ(ティーチングデータ)を生成する。
図1に示されるように、ティーチングデータ生成システム2は、建物の基本設計情報に基づいて、外壁パネルPの「製造条件情報」を生成する製造条件情報生成装置10と、製造条件情報生成装置10により生成された製造条件情報に基づいて、外壁パネルPごとの「タイル貼り付け情報」を生成するタイル貼り付け情報生成装置20とを備えている。
【0029】
ここで、
図2(B)に示されるように、外壁パネルPのパネル部材110には、基本的には共通の形状および幅寸法のタイル材BTが敷き詰められるものの、縦目地が連続しないよう、千鳥状に配置されることが望ましい。そのため、各外壁パネルPの幅方向端部には、縦方向において、幅寸法が異なるタイル材BTが交互に使用される。また、建物の隅部(出隅または入隅)に配置される外壁パネルPについては、パネル同士の繋ぎ目が目立たないようにするために、外壁パネルPの隅部側の端部には、L字形状のタイル材BTや寸法調整されたタイル材BTが用いられることが望ましい。これらの理由により、外壁パネルPが配置される位置、および、開口部130の有無やその取り付け位置等に応じて、外壁パネルPの端部に使用するタイル材BTの種類を定める必要がある。なお、開口部の両端部においても、寸法調整されたタイル材BTが用いられる。
【0030】
そこで、製造条件情報生成装置10は、外壁パネルPごとの基本設計情報から後述する「パネル施工情報」を検出することによって、各外壁パネルPの端部条件を特定し、特定した端部条件に応じて外壁パネルPの端部(少なくとも始点位置)に用いるタイル材BTの種類を判別する。そして、外壁パネルPごとに、判別したタイル材BTの種類(端部タイル種類の情報)を含む製造条件情報を生成し、タイル貼り付け情報生成装置20に出力(送信)する。
【0031】
タイル貼り付け情報生成装置20は、製造条件情報を取得(入力)し、取得した製造条件情報、および、タイル材BTの種類ごとの幅寸法および形状を規定した「タイルサイズ情報」に基づいて、外壁パネルPごとにタイル材BTの配置パターンを決定する。そして、外壁パネルPごとに、決定した配置パターンを含む「タイル貼り付け情報」を生成し、工場内に設置された外壁パネル製造装置3に出力(送信)する。タイル貼り付け情報は、「ティーチングデータ」の一種であり、たとえばインターネットなどのネットワークを介して制御装置60に送信される。
【0032】
これにより、外壁パネル製造装置3は、制御装置60による制御の下、外壁パネルPごとに、予め設定されたタイル材BTの配置パターンに基づいて複数種類のタイル材BTをパネル部材110に貼り付けることができる。したがって、本実施の形態に係る外壁パネル生産システム1によれば、人手を介したティーチング作業を必要とすることなく、パネル部材110へのタイル材BTの貼り付けを自動かつ適切に行うことができる。その結果、外壁パネルPの生産ラインを完全自動化することができる。
【0033】
なお、製造条件情報生成装置10およびタイル貼り付け情報生成装置20は、たとえば汎用コンピュータなどの情報処理装置により構成される。これらの装置10,20は、機能上、別装置として示しているが、共通の情報処理装置により実現されてもよい。
【0034】
以下に、本実施の形態における製造条件情報生成装置10、タイル貼り付け情報生成装置20、および、外壁パネル製造装置3のそれぞれについて、詳細に説明する。
【0035】
<製造条件情報生成装置>
(構成について)
図3(A)は、製造条件情報生成装置10のハードウェア構成および機能構成を示すブロック図である。
【0036】
製造条件情報生成装置10は、ハードウェア構成として、各種演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)11と、各種データおよびプログラムを記憶する記憶部12と、ユーザからの指示を受け付ける操作部13と、各種情報を表示する表示部14と、ネットワークを介して他の情報処理装置と通信する通信I/F(インターフェイス)15とを備えている。なお、記憶部12は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリおよびROM(Read Only Memory)などの不揮発性メモリを含む。操作部13は、たとえばキーボードまたはマウスを含む。表示部14は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)などのディスプレイを含む。
【0037】
製造条件情報生成装置10は、機能構成として、検出部161と、条件判別部162と、種類判別部163と、生成部164と、出力処理部165とを備えている。
【0038】
検出部161は、たとえば通信I/F15を介して入力される建物の「基本設計情報」から、外壁を構成する外壁パネルPに関する情報を抽出し、抽出した情報を元に、外壁パネルPの施工に必要なパネル施工情報を検出する。ここでの「検出」とは、基本設計情報から抽出した情報を元に必要な情報を計算により求めること、および、基本設計情報から抽出した情報をそのまま(計算することなく)特定すること、の両方の意味を含む。
【0039】
「パネル施工情報」は、外壁パネルPの配置位置を示す「位置情報」、および、外壁パネルPの大きさおよび開口範囲を示す「形状情報」を含む。検出部161は、入力される基本設計情報が、BIM(Building Information Modeling)データなどの立体モデルの設計データである場合、当該設計データに定義された「位置情報」をそのまま抽出および特定する機能と、設計データに定義された、「形状情報」の元になる数値(たとえば開口範囲を示す数値)を施工図に用いられる数値に変換する機能とを有している。
【0040】
条件判別部162は、検出部161により検出されたパネル施工情報(主に位置情報)に基づいて、各外壁パネルPの端部条件を判別する。具体的には、端部条件として、直線部、入隅部、および出隅部のいずれかを判別するとともに、その判別結果と上述の位置情報とに基づいて、隣接するパネルとの取り合い条件を算出する。取り合い条件は、隣接するパネルとの「勝ち負け」およびその度合を含む。なお、条件判別部162は、幅方向両端部の条件だけでなく上下方向両端部の条件を判別してもよい。
【0041】
種類判別部163は、条件判別部162により判別された端部条件に基づいて、外壁パネルPごとに、少なくとも始点位置に用いるタイル材BTの種類を「端部タイル種類」として判別する。始点位置については後述する。
【0042】
生成部164は、外壁パネルPごとに製造条件情報を生成する。具体的には、i)検出部161により検出されたパネル施工情報の少なくとも一部、ii)条件判別部162により判別された端部条件、ならびに、iii)種類判別部163により判別された端部タイル種類を含む、複数項目の条件データを統合することにより、製造条件情報を生成する。
【0043】
図6(B)には、製造条件情報に含まれる条件データの項目(ID記号)が列挙されている。本実施の形態では、ID記号として、Wid:外壁パネルの位置(方位および番号)、Ws:始点側の端部条件、XP:パネル幅、We:終点側の端部条件、Wu:上側の条件、H:パネル高さ、Wd:下側の条件、Ow:開口部の幅、Oh:開口部の高さ、Osx:開口部始点のx座標、Osy:開口部始点のy座標、Bs:始点位置に使用するタイル材BTの種類(端部タイル種類)、が採用されている。ID記号とそれに対応するコード情報とにより、IDコードが生成される。コード情報は、数値、記号(+,-など)、文字(アルファベットなど)のうちの少なくとも一つを含む。なお、製造条件情報に含まれる項目は、
図6(B)に列挙した項目に限定されず、他の項目を含んでいてもよい。
【0044】
生成部164は、外壁パネルP単位で上記のようなIDコードを統合して、製造条件情報を生成する。このように、製造条件情報は、より詳細には、外壁パネルPの識別子と複数のIDコードで示された複数の条件データとからなる情報である。このような製造条件情報は、後述するように、タイル貼り付け情報生成装置20において利用される。
【0045】
出力処理部165は、生成部164により生成された外壁パネルPごとの製造条件情報を出力する処理を実行する。具体的には、各外壁パネルPの製造条件情報を、通信I/F15等を介して、タイル貼り付け情報生成装置20に送信する処理を実行する。あるいは、着脱可能な記録媒体(図示せず)に、各外壁パネルPの製造条件情報を書き込む処理を行ってもよい。あるいは、各外壁パネルPの製造条件情報を、製造条件記憶部18に記録しておき、タイル貼り付け情報生成装置20からの要求に応じて出力する処理を行ってもよい。製造条件記憶部18は、たとえばハードディスクなどの不揮発性の記憶装置(図示せず)により実現されてもよいし、クラウドサーバにより実現されてもよい。
【0046】
上述の検出部161、条件判別部162、種類判別部163、生成部164、および出力処理部165の機能は、CPU11がソフトウェアを実行することにより実現される。なお、これらの機能部のうちの少なくとも一つは、ハードウェアにより実現されてもよい。
【0047】
(動作について)
図4は、本実施の形態における製造条件情報生成処理を示すフローチャートである。
図4に示す処理は、製造条件情報生成装置10のCPU11がたとえば記憶部12に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0048】
はじめに、製造条件情報生成装置10は、通信I/F15を介して、たとえばBIM基本設計データを入力する(ステップS2)。BIM基本設計データは、BIMにより3次元のリアルタイムでダイナミックなモデリングソフトウェアを使用して作成された建物全体の設計データであり、建物形状、空間関係、地理情報、建物部材の数量および特性を含む。なお、本実施の形態では、BIMで構築された基本設計情報を入力することとしたが、限定的ではない。入力される基本設計情報は、たとえば、他種の3次元の建物設計ソフトウェアにより構築された設計データであってもよいし、建物のスキャンデータから読み取られた設計データであってもよい。また、2次元の図面データと紙ベースの図面とをスキャンして、必要な情報だけを読み取ることも可能である。
【0049】
基本設計データを入力すると、検出部161は、入力した基本設計データから、建物の外壁を構成する外壁パネルPに関する情報を検出する。具体的には、各外壁パネルPのモジュール(建物の基本寸法単位)を識別するとともに(ステップS4)、外壁パネルPごとに位置情報および形状情報を検出する(ステップS6,S8)。
【0050】
「位置情報」は、1階、2階などの階情報、東西南北のいずれであるかを示す方位情報、建物のどの部分に配置されるかを示す情報(以下「属性情報」という)、などを含む。
図5(A)に示される符号は、各外壁パネルPの位置情報(「Wid」のコード情報)を表記したものであり、方位情報をアルファベットN,W,S,Eで表わし、属性情報を数字(番号)で表わしている。
【0051】
属性情報を表わす数字は、
図5(B)の矢印A1で示されるように、建物の正面側の角部(出隅)を開始点とし、反時計回りまたは時計回りの順序で、方位ごとに採番されている。つまり、検出部161は、建物の正面側の角部を始点とした所定の採番方向に沿って各外壁パネルPの配置位置を特定し、特定した配置位置を「位置情報」として検出する。開始点となる出隅は、正面外壁の一方端(たとえば北西の角)であり、正面側の外壁パネルPから採番されるように、採番方向が定められている。
【0052】
本実施の形態では、一例として、採番方向は反時計方向であり、建物の各面において左から右へ採番される。そのため、各外壁パネルPの左側を始点側、右側を終点側という。なお、矢印A1で示す採番方向は、後述の端部条件の判別順序を定めている。
【0053】
BIMデータのように基本設計データにおいて上述の位置情報が定義されている場合には、ステップS6において検出部161は、基本設計データから位置情報をそのまま抽出する(特定する)だけでよい。
【0054】
「形状情報」は、パネル幅(「XP」のコード情報)、パネル高さ(「H」のコード情報)、開口範囲などを含む。開口範囲は、開口部のスケール(「Ow」「Oh」のコード情報)、開口部の座標位置(「Osx」「Osy」のコード情報)などにより特定される。
図6(A)には、外壁パネルPの幅XPおよび高さH、開口部の幅Owおよび高さOh、開口部の所定点(左下)のX座標OsxおよびY座標Osyが模式的に示されている。BIM基本設計データを元に形状情報を検出する場合、ステップS8において、検出部161により窓の取り付け枠(サッシ)の寸法情報などを考慮した値が算出される。
【0055】
次に、条件判別部162は、ステップS6で検出された位置情報およびステップS8で検出された形状情報に基づいて、外壁パネルPごとに端部条件を判別(算出)する(ステップS10)。具体的には、まず、各外壁パネルPの両端部(始点側端部および終点側端部)が、
図7(A)に示されるような直線部、入隅部、および出隅部のどれに該当するかを判別する。
【0056】
続いて、条件判別部162は、ステップS6で検出された位置情報が示す所定の順序に従って、すなわち、
図5(B)の矢印A1で示す採番方向に従って、外壁パネルPの両端部の取り合い条件を算出する。「取り合い条件」は、隣接するパネルとの「勝ち負け」およびその度合を含む。たとえば、
図7(B)に示すように、ある外壁パネルPaの始点側端部が直線部である場合、隣接する他の外壁パネルPbとの「勝ち負け」は無いため、取り合い条件は「0」(+,-なし)と判別される。
【0057】
一方、
図7(C)に示すように、ある外壁パネルPaの始点側端部が出隅部である場合、交差する他の外壁パネルPcの基準線に重なるように配置される「勝ち」条件(図面左側のパターン)と、他の外壁パネルPcの基準線に重ならずに配置される「負け」条件(図面右側のパターン)とがある。
図7(D)に示すように、入隅部の場合も同様である。これらの図では、「勝ち」条件を「+」で表現し、「負け」条件を「-」で表現している。「勝ち」「負け」いずれの取り合い条件の場合においても、その度合は様々であるため、条件判別部162は、勝ち/負け度合を数値(mm)で算出する。なお、条件判別部162は、正面側に配置される外壁パネルPが「勝ち」条件となるよう、取り合い条件を算出する。
【0058】
上述のような処理によって各外壁パネルPの端部条件(少なくとも「Ws」「We」のコード情報)が判別されると、種類判別部163が、始点側端部の始点位置に用いるタイル材BTの種類を、端部タイル種類として判別する(ステップS12)。始点位置は、典型的には始点側端部の下端位置である。なお、終点位置は、終点側端部の下端位置である。
【0059】
図8(A)は、タイル材BTの種類の例を示す図である。寸法または形状の異なる複数種類のタイル材BTa,BTb,BTc,BTd,・・・があるとすると、これらの情報が「タイルサイズ情報」として記憶部12または不揮発性の記憶装置(図示せず)に記憶されている。なお、「タイルサイズ情報」は、タイル材の種類ごとに幅寸法および形状(幅寸法または形状)を示す情報である。
【0060】
図示されるように、タイル材BTa,BTbはいずれもL字形状のタイル材であり、タイル材BTc,BTdは、いずれも直線形状(I字形状)のタイル材である。なお、たとえば直線形状のタイル材BTcを基本の種類としてもよい。L字形状のタイル材BTaはタイル材BTcと同じ横幅寸法であってもよい。また、図示はしていないが、タイル材BTの他の種類として、丸形状や多角形形状のタイル材が含まれていてもよい。
【0061】
図8(B)は、外壁パネルPの端部条件(具体的には、取り合い条件)ごとに、始点位置において使用可能なタイル材BTの種類を定めた対応テーブルである。この例では、外壁パネルPの始点側端部が「勝ち」条件の場合、その度合(プラス幅)、および、終点側端部の取り合い条件に応じて、L字形状のタイル材およびL字以外の形状のタイル材のなかから一つ選択されることが定められている。外壁パネルPの始点側端部が「負け」条件の場合、その度合(マイナス幅)、および、終点側端部の取り合い条件に応じて、L字以外の形状のタイル材のなかから一つ選択されることが定められている。外壁パネルPの始点側端部の取り合い条件が「0」の場合、L字以外の形状のタイル材のうちのいずれか一つが選択されることが定められている。
【0062】
種類判別部163は、上述のタイルサイズ情報および対応テーブルを参照しながら、全ての外壁パネルPに対し、始点位置に用いるタイル材BTの種類(「Bs」のコード情報)を決定する。なお、端部タイル種類の選択もまた、所定の判別順序に従って、すなわち、
図5(B)の矢印A1で示す採番方向に従って行われる。そのため、現場での施工時に、互いに隣接するタイル材BT同士が干渉したり、目地以上の隙間があくといった不具合を防止できる。
【0063】
種類判別部163による処理が終わると、生成部164は、外壁パネルP単位で全てのIDコードを統合し、「製造条件情報」を生成する(ステップS14)。出力処理部165は、統合したパネルIDコード、すなわち「製造条件情報」を出力する(ステップS16)。以上で、本実施の形態における製造条件情報生成処理が終了する。
【0064】
このように、本実施の形態によれば、製造条件情報生成装置10が、基本設計情報から直接、外壁パネルPのタイル貼り付け情報の生成に必要な「製造条件情報」を生成することができるので、設計士による設計図の生成工程を省くことができる。
【0065】
<タイル貼り付け情報生成装置>
(構成について)
図3(B)は、タイル貼り付け情報生成装置20のハードウェア構成および機能構成を示すブロック図である。
【0066】
タイル貼り付け情報生成装置20のハードウェア構成は、製造条件情報生成装置10と同様であってよく、各種演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)21と、各種データおよびプログラムを記憶する記憶部22と、ユーザからの指示を受け付ける操作部23と、各種情報を表示する表示部24と、ネットワークを介して他の情報処理装置と通信する通信I/F(インターフェイス)25とを備えている。
【0067】
タイル貼り付け情報生成装置20は、機能構成として、取得部261と、区画部262と、パターン決定部263と、順序決定部264と、生成部265と、出力処理部266とを備えている。
【0068】
取得部261は、通信I/F25等を介して、製造条件情報生成装置10により生成された製造条件情報を取得する。つまり、
図5(B)に示されたような、外壁パネルごとにIDコード化された複数項目の条件データを取得する。なお、取得部261が取得する製造条件情報は、典型的には製造条件情報生成装置10により生成された情報であるものの、たとえば、設計図作成装置(図示せず)等により作成された設計図情報から抽出される情報であってもよい。
【0069】
区画部262は、取得した製造条件情報のうち、パネル幅、パネル高さ、および開口範囲を示す形状情報に基づいて、外壁パネルP(パネル部材110)を複数の仮想領域に区画する。仮想領域の区画例については後述する。
【0070】
パターン決定部263は、外壁パネルPごとに、取得部261が取得した製造条件情報、および、上述のタイルサイズ情報に基づいて、望ましくは区画部262により区画された仮想領域単位で、タイル材BTの配置パターンを決定する。この際、パターン決定部263は、仮想領域ごとに、予め定めた複数種類の組合せパターンのなかから1つまたは複数の組合せパターンを選択することにより、タイル材の配置パターンを決定することが望ましい。組合せパターンの詳細については後述する。
【0071】
順序決定部264は、生産ラインにおけるタイル貼り付け装置50(
図1)の配置位置情報に基づいて、複数の仮想領域へのタイル材の貼り付け順序を決定する。
【0072】
生成部265は、外壁パネルPごとのタイル貼り付け情報を生成する。タイル貼り付け情報は、外壁パネル製造装置3へのティーチングデータに相当し、パターン決定部263により決定された配置パターンと、順序決定部264により決定された貼り付け順序とを含む。
【0073】
出力処理部266は、生成部265により生成された外壁パネルPごとのタイル貼り付け情報を出力する処理を実行する。具体的には、各外壁パネルPのタイル貼り付け情報を、通信I/F25等を介して、外壁パネル製造装置3の制御装置60に送信する処理を実行する。あるいは、着脱可能な記録媒体(図示せず)に、各外壁パネルPのタイル貼り付け情報を書き込む処理を行ってもよい。あるいは、各外壁パネルPのタイル貼り付け情報を、貼り付け情報記憶部28に記録しておき、制御装置60など他の装置からの要求に応じて出力する処理を行ってもよい。貼り付け情報記憶部28は、たとえばハードディスクなどの不揮発性の記憶装置(図示せず)により実現されてもよいし、クラウドサーバにより実現されてもよい。
【0074】
上述の取得部261、区画部262、パターン決定部263、順序決定部264、生成部265、および出力処理部266の機能は、CPU21がソフトウェアを実行することにより実現される。なお、これらの機能部のうちの少なくとも一つは、ハードウェアにより実現されてもよい。
【0075】
(動作について)
図9は、本実施の形態におけるタイル貼り付け情報生成処理を示すフローチャートである。
図9に示す処理は、タイル貼り付け情報生成装置20のCPU21がたとえば記憶部22に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0076】
はじめに、タイル貼り付け情報生成装置20は、通信I/F25を介して、ある建物に使用する全ての外壁パネルPのパネルIDコードを入力する(ステップS2)。これにより、取得部261が、外壁パネルPごとに、Wid:外壁パネルの位置(方位および番号)、Ws:始点側の端部条件、XP:パネル幅、We:終点側の端部条件、Wu:上側の条件、H:パネル高さ、Wd:下側の条件、Ow:開口部の幅、Oh:開口部の高さ、Osx:開口部始点のx座標、Osy:開口部始点のy座標、Bs:始点に使用するタイル材BTの種類(端部タイル種類)についてのコード情報を取得する。
【0077】
次に、取得部261が取得したIDコード情報のうち、形状情報を表わす情報(XP:パネル幅、H:パネル高さ、Ow:開口部の幅、Oh;開口部の高さ、Osx:開口部始点のx座標、Osy:開口部始点のy座標)に基づいて、区画部262が、各外壁パネルPを複数の仮想領域に区画する処理を実行する(ステップS24)。この処理については、
図10を参照して説明する。なお、
図10(A)では、図面が煩雑になるのを避けるために、タイル材BTの個数を減らして示している。
【0078】
図10(A)に示されるように、区画部262はまず、外壁パネルPを、開口部130の位置で縦方向(上下方向)に区画し、残りの領域を所定のルールで区画する。具体的には、工場に設置されたタイル貼り付け装置50が一度に吸着可能(保持可能)なサイズに基づいて、外壁パネルPの区画分けを実行する。より具体的には、タイル貼り付け装置50が一度に吸着可能な吸着可能面積を算出し、算出した面積に基づいて、仮想領域の最大サイズを基準に、残りの領域を縦方向に区画する。
【0079】
仮想領域の最大サイズが、
図10(B)に示すように、(基本種類のタイル材BTcを用いた場合に)X列×Y行であると仮定すると、外壁パネルPの残りの領域を、最大Y行となるように縦方向に区画する(ただし、XおよびYは自然数であり、典型的にはY>Xである)。
図10(A)に示す例では、外壁パネルPが、4本の分割線B1~B4を境界として縦方向に5つの領域に分割されている。また、5つの領域の各々において、パネルの端部領域、開口部に隣接する開口横領域を区画してから、残りの領域を、最大X列となるよう横方向に区画する。
図10(A)には、任意の仮想領域VAが示されている。
【0080】
上記のような処理によって外壁パネルPを複数の仮想領域に区画すると、区画部262は、各仮想領域の座標位置データを、「貼り付け位置情報」として内部メモリに一時記憶する。なお、タイル材BTは縦目地が連続しないよう半ピッチずつずらして配置されるため、横方向に隣接する仮想領域の端部は半ピッチ分重なりをもっている。
【0081】
パターン決定部263は、上述のようにして区画された仮想領域ごとに、タイル材BTの配置パターンを決定する(ステップS26)。この際、パターン決定部263は、外壁パネルPの両端部の仮想領域(端部領域)、開口部130の両端部の仮想領域(開口横領域)、および残りの領域(中央領域)の順に、タイル材BTの配置パターンを決定することが望ましい。取得部261が取得したIDコード情報には、端部タイル種類(Bs:始点に使用するタイル材BTの種類)が含まれているため、対象の外壁パネルPの端部タイル種類に基づいて、始点側の端部領域の配置パターンを決定し、対象の外壁パネルPの次の番号の外壁パネルPの端部タイル種類に基づいて、終点側の端部領域の配置パターンを決定することができる。
【0082】
ここで、本実施の形態におけるパターン決定部263は、上述のように、仮想領域ごとに、複数種類の組合せパターンのなかから1つまたは複数の組合せパターンを選択することにより、タイル材BTの配置パターンを決定する。複数種類の組み合わせパターンの具体例を
図11(A)に示す。
【0083】
図11(A)に示す複数種類の組み合わせパターンは、種類(寸法または形状)の異なるタイル材BT(BTa,BTb,BTc,BTd,・・・)の組合せ方を予めパターン化したものであり、各組合せパターンは、複数種類のタイル材BTのなかから1つまたは複数のタイル材を組み合わせて形成されている。
【0084】
複数種類の組み合わせパターンは、全行においてタイル種類が同一であるパターン、一行おきにタイル種類が異なるパターン、3種類以上のタイル材BTをランダムに並べたパターン、などがある。また、奇数行または偶数行にのみタイル材BTが配置されるパターン(目地跨ぎパターン)もある。なお、ここでは5行分の組み合わせが示されているが、仮想領域の行数に応じて同様のパターンが形成可能である。
【0085】
パターン決定部263は、各仮想領域の大きさに応じて、上述のような複数種類の組み合わせパターンの中から1つまたは複数の組み合わせパターンを選択する。この際、パターン決定部263は、各仮想領域において組み合わせパターンの数が少なくなるように(望ましくは最小となるように)選択処理を実行する。これにより、仮想領域ごとに、効率良くタイル材BTの配置パターンを決定することができる。仮想領域ごとの(パターン化された)複数のタイル材BTのまとまりを、「タイルユニット」という。なお、端部領域および/または開口横領域の組み合わせパターンは、予め定められていてもよい。
【0086】
パターン決定部263は、仮想領域ごとに選択した組み合わせパターンに従った、複数のタイル材BTの配置パターンを示すタイルパターン情報を、各仮想領域に固有の識別子に対応付けて、内部メモリに一時記憶する。「タイルパターン情報」は、タイル材BTの種類、個数、並べ方を含む。
【0087】
次に、順序決定部264が、生産ラインにおけるタイル貼り付け装置50(
図1)の配置位置情報に基づいて、複数の仮想領域へのタイルユニットの貼り付け順序を決定する(ステップS28)。つまり、タイル貼り付け装置50が効率良く(最短時間で)全ての仮想領域へのタイル貼り付け作業を実行できるように、仮想領域の作業順序を決定する。
図11(B)には、一部の仮想領域に、作業順序を表わす番号が付与された例が模式的に示されている。
【0088】
後述するように、本実施の形態における工場内のタイル貼りステーションには、複数台のタイル貼り付け装置50が設置され、これらのタイル貼り付け装置50が同時に稼働して1枚の外壁パネルPへのタイル貼り付け作業が実施される。そのため、本実施の形態の順序決定部264は、このような配置位置情報に基づいて、仮想領域ごとに、配置順序を示す番号を付与する。
【0089】
典型的には、2台のタイル貼り付け装置50がパネル載置台(
図12に示すパネル搬送部300)を挟んで互いに対面するように配置されている。たとえば一方のタイル貼り付け装置50(50a)が、パネル載置台に載置された状態の外壁パネルPの下端部側に配置され、他方のタイル貼り付け装置50(50b)が、パネル載置台に載置された状態の外壁パネルPの上端部側に配置されている。この場合、たとえば、外壁パネルPの略中央位置を通る基準線を基準として各タイル貼り付け装置による作業対象の仮想領域を仮決めした後、作業対象の仮想領域の数が略同数となるように作業区域を調整して、作業区域ごとに番号を付与してもよい。
【0090】
順序決定部264は、決定した貼り付け順序を示す順序情報を、各仮想領域に固有の識別子に対応付けて、内部メモリに一時記憶する。「順序情報」は、作業を行うタイル貼り付け装置50を特定するための識別情報および作業順序を含む。
【0091】
上述の処理によって仮想領域ごとの配置パターンおよび貼り付け順序が決定すると、生成部265は、「タイル貼り付け情報」を生成する(ステップS30)。つまり、ステップS24,S26,S28の処理によって内部メモリに一時記憶された情報(貼り付け位置情報、タイルパターン情報、および順序情報)を仮想領域ごとに統合し、タイル貼り付け情報を生成する。出力処理部266は、生成部265により生成されたタイル貼り付け情報を出力する(ステップS32)。以上で、本実施の形態におけるタイル貼り付け情報生成処理が終了する。
【0092】
このように、本実施の形態のタイル貼り付け情報生成装置20は、工場に設置された外壁パネル製造装置3に適した「タイル貼り付け情報」を生成することができる。したがって、このタイル貼り付け情報を外壁パネル製造装置3のティーチングデータとすることで、パネル部材110へのタイル材BTの貼り付けを自動かつ効率良く行うことが可能となる。
【0093】
<外壁パネル製造装置>
(外壁パネル生産ラインの概要)
図12は、工場内における外壁パネルPの生産ラインの概要を示す図である。生産ラインは、中央に配置されたパネル搬送部(ベルトコンベア等)300に沿って、外壁パネルPのパネル部材110を製造するパネル部材製造ラインと、仕上げ材120となるタイル材BTをパネル部材110に貼り付けるタイル貼りラインとを含んでいる。パネル部材製造ラインは、たとえば、パネル部材110の基本部材を加工するステーションST101,ST102と、パネル搬送部300上の組み立てステーションST103とで構成されている。
【0094】
タイル貼りラインは、主に、パターン生成ステーションST1と、タイル貼りステーションST2とで構成されている。パターン生成ステーションST1に、タイルユニット生成装置30と、タイルユニット供給装置40とが配置されている。タイル貼りステーションST2に、タイル貼り付けロボットとしてのタイル貼り付け装置50が配置されている。タイル貼りステーションST2は、パネル搬送部300の下流側領域(組み立てステーションの下流側の領域)を含む位置に設けられている。
【0095】
タイル貼りステーションST2には、パネル搬送部300の両側に、タイル貼り付け装置50a,50bが配置されている。そのため、本実施の形態では、パターン生成ステーションSTが2箇所設けられており、パターン生成ステーションST1aにおいて、一方のタイル貼り付け装置50aが貼り付けるタイル材BTの配置パターンを生成し、他方のパターン生成ステーションST1bにおいて、タイル貼り付け装置50bが貼り付けるタイル材BTの配置パターンを生成する。
【0096】
(パターン生成ステーションの概略構成)
図13(A)は、パターン生成ステーションST1(ST1aまたはST1b)の概略構成を示す図である。
【0097】
パターン生成ステーションST1には、タイル材BTの種類ごとに供給レーンを有するタイル供給ライン61が設けられており、タイル供給ライン61の下流側にユニット搬送部62が設けられている。タイルユニット生成装置30は、ユニット搬送部62の上流側部分に設置されており、タイルユニット供給装置40は、ユニット搬送部62の下流側部分に設置されている。
【0098】
タイルユニット生成装置30の制御装置には、予め、タイル貼り付け情報生成装置20において生成されたタイル貼り付け情報の少なくとも一部(タイルパターン情報および順序情報)がティーチングデータとして入力されている。あるいは、生産ライン稼働時に、タイル貼り付け情報生成装置20から受信してもよい。タイルユニット生成装置30は、入力または受信したタイル貼り付け情報に従って、仮想領域ごとに複数のタイル材BTを並べてタイルユニットを生成する。つまり、事前に決定された貼り付け順序で、事前に決定された配置パターンに従ってタイルユニットを生成する。タイルユニット生成装置30は、たとえばデルタ式ピッキングロボットなどの公知のピッキングロボットにより構成されている。
【0099】
タイルユニット供給装置40は、タイルユニット生成装置30により生成されたタイルユニットを受け取り、受け取った順序で、タイルユニットをタイル貼り付け装置50のピックアップ位置64(
図12参照)に供給する。つまり、事前に決定された貼り付け順序(順序情報)に従って、タイルユニットを順次、ピックアップ位置64に供給する。
【0100】
タイルユニット供給装置40は、たとえば、ユニット搬送部62を稼働する搬送制御部(図示せず)と、ユニット搬送部62により搬送されるタイルユニットTUを一つずつ載せる載置台41と、載置台41に載せられたタイルユニットTUの待機およびピックアップ位置64への供給を実現するための待機機構42とを含む。待機機構42は、たとえば、載置台41を昇降させる昇降機を含む。
【0101】
図13(B)には、タイルユニットTUの具体例が示されている。タイルユニット生成装置30により生成されたタイルユニットTUを、そのままの状態でタイルユニット供給装置40の載置台41に乗せて、そのままの状態でタイル貼り付け装置50に供給するために、本実施の形態では、型枠パレット70が用いられる。型枠パレット70は、タイルパターンの種類に応じて定められていてもよい。型枠パレット70については後述する。
【0102】
(パターン生成ステーションにおけるタイルユニット生成方法)
図14は、パターン生成ステーションSTにおけるタイルユニット生成処理を示すフローチャートである。この処理は、たとえば制御装置60による制御下で、タイルユニット生成装置30、タイルユニット供給装置40、および、これらの装置30,40と連携する装置(または作業員)とにより実行される。なお、制御装置60は典型的にはPLC(Programmable Logic Controller)により構成される。
【0103】
図14を参照して、タイルユニット生成装置30は、製造対象の外壁パネルP(以下「対象パネル」という)についてのタイル貼り付け情報を受信する(ステップS42)。パターン生成ステーションSTには、パレット供給ライン(図示せず)があり、パレット供給ラインに複数種類のパレット70が供給される(ステップS44)。対象パネルについてのタイル貼り付け情報に基づいて、複数種類のパレット70のなかから使用するパレット70が決定される(ステップS46)。決定されたパレット70は、ユニット搬送部62の上流側部分に載置される。
【0104】
また、タイルユニット生成装置30はまず、貼り付け順序が1番のタイルパターン情報を読み取り、そのタイルパターン情報からタイル材BTの種類を特定し、特定したタイル材BTの種類および個数をタイル供給ライン61に伝達する。これによりタイル供給ライン61において、指示のあった種類のタイル材BTが供給され(ステップS48)、タイル材BTが種類ごとに供給レーン上に設置される(ステップS50)。なお、タイル材BTの供給は、作業員による手作業で行われてもよい。
【0105】
タイルユニット生成装置30は、全てのタイル材BTの供給を確認すると(ステップS52にてYES)、供給レーン上のタイル材BTをたとえば一つずつピッキングして(ステップS54)、ユニット搬送部62に載置されたパレット70に、ピッキングしたタイル材BTを配置する(ステップS56)。このように、タイルユニット生成装置30は、タイル材BTの種類ごとに設けられた供給レーンから、タイルユニットTUを構成する複数種類のタイル材BTをピッキングし、タイルパターン情報で規定された並べ方で、複数種類のタイル材BTをパレット70上に配置する。
【0106】
タイルパターン情報に応じた全てのタイル材BTの配置が完了するまで、タイル材BTのピッキングおよび配置作業が繰り返し実行される(ステップS60にてNO)。
【0107】
なお、タイル材BTがパレット70に配置される度に、パレット供給ラインなどに設けられた検知手段によりタイル材BTの配置を確認することが望ましい(ステップS58)。これにより、不完全なタイルユニットTUが次工程に供給されることを防止できる。検知手段は、たとえば
図13に示すようなカメラ63を含み、カメラ63による撮影画像に基づいてタイル材BTの配置の有無を検知するものであってもよいし、赤外線センサ等のセンサによりタイル材BTの配置の有無を検知するものであってもよい。
【0108】
パレット70への全てのタイル材BTの配置が完了し、たとえば1番目のタイルユニットTUが完成すると(ステップS60にてYES)、タイルユニット供給装置40が稼働する。タイルユニット供給装置40は、タイルパターン情報に従ったタイルパターンの配置を確認した後(ステップS62)、ユニット搬送部62としてのベルトコンベアを稼働するとともに、待機機構42を構成する昇降機を稼働する(ステップS64,S66)。
【0109】
タイルユニット供給装置40は、待機機構42によって1番目のタイルユニットTUを、ピックアップ位置64にパレット70ごと供給する。タイルユニット供給装置40は、タイル貼り付け装置50によるピッキングを確認すると(ステップS68)、1番目のタイルユニットTUの供給が完了したと判断し、2番目以降のタイルユニットTUの供給処理を実行する(ステップS70)。
【0110】
(タイル貼りステーションの概略構成)
図12を参照して、各タイル貼りステーションST2には、上述のように、タイル貼り付け装置50が配置されている。タイル貼り付け装置50は、タイル材BTのピッキングおよびパネル部材110への配置を行うタイル貼り付けロボット51と、タイル貼り付けロボット51を、パネル搬送部300による搬送方向に沿って(パネル部材110の横幅方向に沿って)移動させる移動部材52とを含んでいる。これにより、タイル貼り付けロボット51は、パターン生成ステーションST1におけるピックアップ位置64とタイル貼りステーションST2における貼り付け作業位置との間を、パネル搬送部300に沿って往復移動可能となっている。
【0111】
図12に模式的に示すように、タイル貼り付けロボット51は、複数のタイル材BTを保持するハンド部51hを有している。本実施の形態におけるハンド部51hは、タイル材BTを上方から吸着することによって複数のタイル材BTを一度に保持する構成であり、複数のタイル材BTと接する吸着面(図示せず)を有している。なお、本明細書において既述の「タイル貼り付け装置50」は、主にタイル貼り付けロボット51を示しているものとする。
【0112】
(タイル貼りステーションにおけるタイル貼り付け方法)
図12を参照して、タイル貼り付けロボット51は、タイルユニット供給装置40によりピックアップ位置64に供給されたタイルユニットTUをピックアップし、ピックアップしたタイルユニットTUをパネル部材110上の指定された領域(仮想領域に対応する領域)に貼り付ける。上述のように、タイルユニット供給装置40は、事前に決定された貼り付け順序に従ってタイルユニットTUをピックアップ位置64に供給するために、タイル貼り付け装置50もまた、事前に決定された貼り付け順序に従って、タイルユニットTUをピックアップしてパネル部材110に貼り付けることができる。
【0113】
タイル貼り付けロボット51の制御装置には、予め、タイル貼り付け情報生成装置20において生成されたタイル貼り付け情報の少なくとも一部(貼り付け位置情報)がティーチングデータとして入力されている。あるいは、生産ライン稼働時に、タイル貼り付け情報生成装置20から受信してもよい。そのため、タイル貼り付けロボット51は、入力または受信したタイル貼り付け情報に従って、事前に計算された各仮想領域に、事前にパターン決めされた複数のタイル材BTからなるタイルユニットTUを、適切に配置することができる。
【0114】
なお、タイル貼りステーションST2においてタイル貼り作業を開始する前に、パネル部材110の表面には接着剤が塗布されているものとする。接着剤の塗布位置は、タイル材BTの配置パターンに応じて計算可能である。
【0115】
タイル貼り付けロボット51によるタイル材BTの貼り付けが完了すると、外壁パネルPが完成する。このように製造された外壁パネルPを建物の外壁に用いることにより、現場でのタイル材BTの貼り付け作業を不要にできる(目地部分などの一部のみ手作業で貼り付けてもよい)。したがって、本実施の形態に係る外壁パネル生産システム1によれば、現場での外壁の施工を簡素化できるので、労務費の削減、および、施工期間の短縮が可能となる。
【0116】
さらに、タイル材BTの素材に(スライスした)ブリックを用いた場合には、実際のブリックを積み上げて外壁が作られているような印象を与えることができる。したがって、労務費が嵩むことなく、建物の意匠性を向上させることができる。
【0117】
ところで、タイル貼り付けロボット51が、タイルユニット生成装置30で生成されたタイルユニットTUをそのままの状態でピックアップするために、タイルユニットTUの架台として使用されるパレット70に滑り止め機能を持たせていることが望ましい。たとえば、パレット70の表面(上面)の材質を、ゴムなどの摩擦係数の高い材料で形成してもよいものの、より確実にタイル材BTの位置ずれを防止するためには、パレット70に仕切り部材が設けられていることが望ましい。この場合のパレット70の構成例について、以下に説明する。
【0118】
<型枠パレットの構成例>
図15(A)は、型枠パレット70の斜視図であり、
図15(B)は、IVB-IVB線に沿う型枠パレット70の断面図である。
【0119】
型枠パレット70は、複数のタイル材BTを載置するためのパレット本体71と、パレット本体71に設けられ、隣接するタイル材BT間に配置される仕切り部材72とを備えている。仕切り部材72は、横方向(
図10(C)に示す列方向)に隣接するタイル材BT間の間、および、縦方向(
図10(C)に示す行方向)に隣接するタイル材BT間の間、の双方に配置されることが望ましいものの、いずれか一方にのみ配置されてもよい。
【0120】
仕切り部材72の(断面)形状は、上端側の幅が下端側の幅よりも狭い形状であり、典型的には三角形状である。これにより、2つの仕切り部材72で仕切られた領域へのタイル材BTの配置、および、タイル貼り付け装置50によるタイル材BTのピッキングを容易に行うことができる。なお、タイル貼り付け装置50が吸着によりタイル材BTをピッキングする場合には、仕切り部材72の高さ寸法は、タイル材BTの厚み寸法以下であること望ましい。
【0121】
仕切り部材72の下端側の幅Lpは、外壁パネルPの目地幅Lcよりも小さく設定されている。そのため、仕切り部材72間に所定の幅Lbのタイル材BTを配置した場合に、仕切り部材72とタイル材BTとの間に隙間が介在する。これにより、タイル材BTの個体差を吸収することができる。
【0122】
仕切り部材72は、ゴムなどの摩擦係数が高い弾性部材により構成されていることが望ましい。これにより、型枠パレット70の移動時や型枠パレット70上のタイル材BTのピックアップ時においても、タイル材BTの位置ずれを防止できる。
【0123】
図15(C)に示されるように、型枠パレット70の端部に、出隅部に配置されるL字形状のタイル材BTが配置される場合を考慮して、型枠パレット70は、L字形状のタイル材BTの曲折部分と接触する側面部材73を着脱可能に備えていてもよい。あるいは、出隅部用の型枠パレット70の一種として、パレット本体71と、側面部材73と、パレット本体71および側面部材73を一体的に連結するための連結部材74とを備えた型枠パレットを、別途準備することとしてもよい。側面部材73の材質は、仕切り部材72と同じ材質であってもよい。
【0124】
なお、仕切り部材72の形状は、
図15(B)に示したような二等辺三角形に限定されない。たとえば直角三角形であってもよいし、
図15(D)の仕切り部材72Aのように、少なくとも一方の側面が傾斜面75aと垂直面75bとにより構成されていてもよい。垂直面75bは傾斜面75aの下側に位置し、パレット本体71に直交状態で配置されている。
【0125】
図15(D)のような仕切り部材72Aを用いる場合、タイル材BTの端面を垂直面75bに押し当てて配置することができるので、安定性が向上する。また、仕切り部材72Aの他方の傾斜面(側面)75cにタイル材BTの端部(図面上では右側端部)が載せられた場合でも、型枠パレット70(パレット本体71)を少し傾けることにより、タイル材BTの反対側の端部(図面上では左側端部)が垂直面75bに当たるようにタイル材BTを滑らせることができるので、型枠パレット70上の全てのタイル材BTを定位置に位置決め(修正)することができる。
【0126】
仕切り部材72Aが、横方向に隣接するタイル材BT間だけでなく、縦方向に隣接するタイル材BT間にも設けられている場合には、各タイル材BTの配置領域は、2つの垂直面75bと2つの傾斜面75cとに囲まれるように、4つの仕切り部材72Aにより区画される(互いに交差する2つの仕切り部材72Aの間には隙間があってもよい)。この場合、2つの垂直面75bが交差する角部が相対的に下方位置となるように型枠パレット70を傾けることにより、型枠パレット70上のタイル材BTを、一度で横方向および縦方向の双方において適切な位置に揃えることができる。
【0127】
あるいは、仕切り部材72の少なくとも一方の側面が湾曲面により構成されていてもよいし、仕切り部材72の全体が半円形状であってもよい。
【0128】
ここで、上述のように、型枠パレット70に載置されるタイル材BTの配置パターン(タイル種類、個数、並べ方)は一定ではないことから、型枠パレット70は複数の配置パターンに対応可能であることが望ましい。このような型枠パレット70Aの構成例を
図16に示す。
【0129】
図16(A)は、パレット本体71Aの上面図であり、
図16(B)は、仕切り部材72Bの斜視図である。パレット本体71Aの表面(上面)には、多数の穴76が一定間隔で形成されており、仕切り部材72Bは、下端面から下方に突出する複数の差し込み部77を有している。穴76の形状はたとえば円形であり、この場合、差し込み部77の形状は円筒形状である。なお、
図16(A)では、穴76の径および間隔を大きく示している。同様に、
図16(B)では、差し込み部77の径を大きく示している。
【0130】
図16(C)に示されるように、パレット本体71Aの穴76に、仕切り部材72Bの差し込み部77を差し込むことにより、同一の構成のパレット本体71Aを用いて、様々な配置パターンに適用可能な型枠を再現することができる。このことについて、
図17を参照して説明する。
【0131】
図17(A)には、
図11(A)に示した複数種類の組合せパターンをグループ化した図が示されている。型枠パレット70Aを用いた場合、仕切り部材72Bの位置を調整することにより、
図17(B)に示すように、たとえば5種類の仕切り部材72Bの取り付けパターンによって、全ての組合せパターンに対応可能である。
【0132】
<変形例>
本実施の形態では、外壁パネルPに貼り付けるタイル材BTの素材がブリック(煉瓦)である例について説明したが、陶磁器製素材や石材など、他の材料により形成されていてもよい。つまり、タイル材BTは、一般的に「タイル」と称される部材に限定されず、各々が、外壁パネルPなどのパネル体の装飾面を分割した「仕上げ材」として機能し、複数個の集まりによってパターン(装飾パターン)を形成できるものであればよい。
【0133】
また、本実施の形態では、外壁パネルPの外側の仕上げ材(外装材)としてタイル材BTを用いる例について説明したが、内装材としてタイル材BTを用いる場合にも上述の外壁パネル生産システム1を適用可能である。
【0134】
また、本実施の形態の外壁パネル生産システム1を、たとえば間仕切り壁パネル、床パネル、天井パネルなど、他種のパネル体に適用することも可能である。
【0135】
製造条件情報生成装置10により実行される製造条件情報生成方法、および、タイル貼り付け情報生成装置20により実行されるタイル貼り付け情報生成方法を、プログラムとして提供することもできる。このようなプログラムは、CD-ROM(Compact Disc-ROM)などの光学媒体や、メモリカードなどのコンピュータ読取り可能な一時的でない(non-transitory)記録媒体にて記録させて提供することができる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0136】
本発明にかかるプログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0137】
また、本発明にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0138】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0139】
1 外壁パネル生産システム、2 ティーチングデータ生成システム、3 外壁パネル製造装置、9 住宅(建物)、10 製造条件情報生成装置、20 タイル貼り付け情報生成装置、30 タイルユニット生成装置、40 タイルユニット供給装置、50,50a,50b タイル貼り付け装置、51 タイル貼り付けロボット、60 制御装置、70,70A 型枠パレット、71,71A パレット本体、72,72A,72B 仕切り部材、76 穴、77 差し込み部、110 パネル部材、120 仕上げ材、BT タイル材、P タイル外壁パネル、TU タイルユニット、VA 仮想領域。