(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-19
(45)【発行日】2025-09-30
(54)【発明の名称】洗浄治具及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20250922BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20250922BHJP
【FI】
H01L21/304 651Z
H01L21/68 P
(21)【出願番号】P 2021163447
(22)【出願日】2021-10-04
【審査請求日】2024-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-086692(JP,A)
【文献】特開2003-243350(JP,A)
【文献】特開2018-101719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/304
H01L21/463
H01L21/67 -21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持手段と、被加工物に加工を施す加工手段と、被加工物を吸着する吸着面を有し
該保持手段から該被加工物を搬送する搬送手段と、を少なくとも備えた加工装置で用いられる洗浄治具であって、
該洗浄治具は、該保持手段に保持される下面を有する基板と、該基板の上面に配設された洗浄部材と、から少なくとも構成され、該保持手段に保持された状態で該洗浄部材の作用によって該搬送手段の該吸着面を洗浄する洗浄治具。
【請求項2】
被加工物を保持する保持手段と、被加工物に加工を施す加工手段と、被加工物を吸着する吸着面を有し該保持手段から該被加工物を搬送する搬送手段と、を少なくとも備えた加工装置で実施される洗浄方法であって、
該保持手段に保持される下面を有する基板と、該基板の上面に配設された洗浄部材と、から少なくとも構成された洗浄治具を、該保持手段に保持することと、該洗浄治具を該保持手段に保持した状態で該吸着面を該洗浄部材の上面に当接させて、該洗浄部材の作用によって該搬送手段の該吸着面を洗浄することと、を含む洗浄方法。
【請求項3】
該保持手段は、チャックテーブル又は仮置きテーブルである請求項1に記載の洗浄治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置の搬送手段の吸着面を洗浄する洗浄治具に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画された表面に形成されたウエーハは、研削装置によって裏面が研削され所望の厚みに形成された後、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
上記の研削装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを研削する研削ホイールとを回転可能に備えた研削手段と、仮置きテーブルから該チャックテーブルまでウエーハを搬送する搬送手段と、を含み構成されていて、ウエーハを高精度に所望の厚みに研削することができる(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
また、仮置きテーブルからチャックテーブルまでウエーハを搬送する搬送手段は、ウエーハの裏面を吸着する板状のポーラス部材からなる吸着面を備えていて、ウエーハを吸着し、確実にチャックテーブルまで搬送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の搬送手段の吸着面に、ウエーハを加工する際に生じる異物(例えば、ウエーハの表面に配設されている保護テープの切断屑等)が付着していると、吸着して搬送したウエーハをチャックテーブルに載置した際に、チャックテーブルと搬送手段の吸着面とで挟まれた該異物によって、ウエーハが損傷するという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、搬送手段の吸着面に付着する異物によってウエーハが損傷することが防止される洗浄治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持する保持手段と、被加工物に加工を施す加工手段と、被加工物を吸着する吸着面を有し該保持手段から該被加工物を搬送する搬送手段と、を少なくとも備えた加工装置で用いられる洗浄治具であって、該洗浄治具は、該保持手段に保持される下面を有する基板と、該基板の上面に配設された洗浄部材と、から少なくとも構成され、該保持手段に保持された状態で該洗浄部材の作用によって該搬送手段の該吸着面を洗浄する洗浄治具が提供される。
また、本発明によれば、被加工物を保持する保持手段と、被加工物に加工を施す加工手段と、被加工物を吸着する吸着面を有し該保持手段から該被加工物を搬送する搬送手段と、を少なくとも備えた加工装置で実施される洗浄方法であって、
該保持手段に保持される下面を有する基板と、該基板の上面に配設された洗浄部材と、から少なくとも構成された洗浄治具を、該保持手段に保持することと、該洗浄治具を該保持手段に保持した状態で該吸着面を該洗浄部材の上面に当接させて、該洗浄部材の作用によって該搬送手段の該吸着面を洗浄することと、を含む洗浄方法が提供される。
【0009】
該保持手段は、チャックテーブル又は仮置きテーブルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の洗浄治具は、被加工物を保持する保持手段と、被加工物に加工を施す加工手段と、被加工物を吸着する吸着面を有し該保持手段から該被加工物を搬送する搬送手段と、を少なくとも備えた加工装置で用いられる洗浄治具であって、該洗浄治具は、該保持手段に保持される下面を有する基板と、該基板の上面に配設された洗浄部材と、から少なくとも構成され、該保持手段に保持された状態で該洗浄部材の作用によって該搬送手段の該吸着面を洗浄するものであることから、搬送手段の吸着面に異物が付着したままになることが防止され、被加工物を保持手段に搬送して保持させる際に、被加工物が破損したりすることが防止される。また、本発明の洗浄方法は、被加工物を保持する保持手段と、被加工物に加工を施す加工手段と、被加工物を吸着する吸着面を有し該保持手段から該被加工物を搬送する搬送手段と、を少なくとも備えた加工装置で実施される洗浄方法であって、
該保持手段に保持される下面を有する基板と、該基板の上面に配設された洗浄部材と、から少なくとも構成された洗浄治具を、該保持手段に保持することと、該洗浄治具を該保持手段に保持した状態で該吸着面を該洗浄部材の上面に当接させて、該洗浄部材の作用によって該搬送手段の該吸着面を洗浄することと、を含むことから、搬送手段の吸着面に異物が付着したままになることが防止され、被加工物を保持手段に搬送して保持させる際に、被加工物が破損したりすることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の洗浄治具が適用される研削装置の全体斜視図である。
【
図2】
図1に示された研削装置に配設された搬送手段の一部拡大斜視図である。
【
図3】本発明の実施例として示された第1~第4の洗浄治具の斜視図である。
【
図4】(a)第3の洗浄治具をチャックテーブルに保持させる態様を示す斜視図、(b)第1の洗浄治具を仮置きテーブルに保持させる態様を示す斜視図である。
【
図5】
図4(a)に示した洗浄治具により搬送手段の吸着面を洗浄する態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に基づいて構成される洗浄治具に係る実施形態、及び該洗浄治具が適用される加工装置の実施形態について添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0013】
図1には、本実施形態の洗浄治具によって洗浄される吸着面を備えた搬送手段を有する加工装置として研削装置1が示されている。研削装置1は、略直方体状の装置ハウジング2を備えている。
図1において、装置ハウジング2の後端側には、支持壁21が立設されている。この支持壁21の内側面には、上下方向(Z軸方向)に延びる2対の案内レール22、22及び23、23が設けられている。一方の案内レール22、22には粗研削手段としての粗研削ユニット3が上下方向に移動可能に装着されており、他方の案内レール23、23には仕上げ研削手段としての仕上げ研削ユニット4が上下方向に移動可能に装着されている。
【0014】
粗研削ユニット3は、ユニットハウジング31と、ユニットハウジング31に回転自在に支持された回転軸32の下端に配設されたホイールマウント33と、ホイールマウント33に装着され下面に環状に複数の研削砥石35が配置された粗研削ホイール34と、ユニットハウジング31の上端に装着されホイールマウント33を矢印R1で示す方向に回転させる電動モータ36と、ユニットハウジング31を、支持部材37を介して支持する移動基台38とを備えている。
【0015】
移動基台38には、上記した支持壁21に設けられた案内レール22、22に摺動可能に篏合する被案内溝が設けられており、粗研削ユニット3が上下方向に移動可能に支持される。図示の研削装置1は、粗研削ユニット3の移動基台38を案内レール22、22に沿って昇降させる昇降手段として配設された研削送り機構39を備えている。研削送り機構39は、支持壁21に案内レール22、22と平行に上下方向に配設され回転可能に支持された雄ねじロッド391と、該雄ねじロッド391を回転駆動するためのパルスモータ392と、移動基台38に装着され雄ねじロッド391と螺合する図示しない雌ねじブロックを備えており、パルスモータ392によって雄ねじロッド391を正転及び逆転駆動することにより、粗研削ユニット3を上下方向に移動させる。
【0016】
仕上げ研削ユニット4も上記粗研削ユニット3と略同様に構成されており、ユニットハウジング41と、ユニットハウジング41に回転自在に支持された回転軸42の下端に配設されたホイールマウント43と、ホイールマウント43に装着され、下面に環状に複数の研削砥石45が配置された仕上げ研削ホイール44と、ユニットハウジング41の上端に装着されホイールマウント43を矢印R2で示す方向に回転させる電動モータ46と、ユニットハウジング41を、支持部材47を介して支持する移動基台48とを備えている。
【0017】
移動基台48には、上記した支持壁21に設けられた案内レール23、23に摺動可能に嵌合する被案内溝が設けられており、仕上げ研削ユニット4が上下方向に移動可能に支持される。図示の実施形態における研削装置1は、仕上げ研削ユニット4の移動基台48を案内レール23、23に沿って昇降させる昇降手段として配設された研削送り機構49を備えている。研削送り機構49は、支持壁21に案内レール23、23と平行に上下方向に配設され回転可能に支持された雄ねじロッド491と、該雄ねじロッド491を回転駆動するためのパルスモータ492と、移動基台48に装着され雄ねじロッド491と螺合する図示しない雌ねじブロックを備えており、パルスモータ492によって雄ねじロッド491を正転及び逆転駆動することにより、仕上げ研削ユニット4を上下方向に移動させる。
【0018】
電動モータ36及び電動モータ46によって回転させられる回転軸32、回転軸42の回転軸端32a、42aには、研削砥石35、45と後述するチャックテーブル6に保持される被加工物とに研削水Lを供給する研削水供給手段(図示は省略する)が接続されている。
【0019】
研削装置1は、上記支持壁21の前側において装置ハウジング2の上面と略面一となるように配設されたターンテーブル5を備えている。このターンテーブル5は、比較的大径の円盤状に形成されており、装置ハウジング2の上面の排水パン20内において図示を省略する回転駆動機構によって矢印R3で示す方向に適宜回転させられる。ターンテーブル5には、それぞれ120度の角度をもって被加工物を保持する保持手段として配設された3個のチャックテーブル6が配設されている。各チャックテーブル6は、後述する回転駆動手段を備えて矢印R4で示す方向に回転可能に構成されている。このチャックテーブル6は、通気性を有するポーラス部材によって円盤状に形成されチャックテーブル6の保持面を形成する吸着チャック62と、吸着チャック62を囲繞する枠体61とを備えている。
【0020】
ターンテーブル5に配設された3個のチャックテーブル6は、ターンテーブル5が矢印R3で示す方向に回転させられることにより、被加工物搬入・搬出域A→粗研削加工域B→仕上げ研削加工域C→被加工物搬入・搬出域Aに順次移動させられる。排水パン20内の被加工物搬入・排出域Aの近傍には、被加工物搬入・排出域Aに位置付けられたチャックテーブル6の吸着チャック62の上面に洗浄水L(上記の研削水Lをそのまま兼用することができる)を供給する洗浄水供給ノズル15が配設されている。
【0021】
図示の研削装置1は、被加工物搬入・搬出域Aに対して一方側に配設され研削加工前の被加工物であるウエーハWを複数収容する第1のカセット7と、被加工物搬入・搬出域Aに対して他方側に配設され研削加工後のウエーハWを複数収容する第2のカセット8と、第1のカセット7と被加工物搬入・搬出域Aとの間に配設され被加工物を吸引保持して仮置きする仮置きテーブル9と、被加工物搬入・搬出域Aと第2のカセット8との間に配設された洗浄手段11と、第1のカセット7内に収納されたウエーハWを仮置きテーブル9に搬出するとともに洗浄手段11で洗浄されたウエーハWを第2のカセット8に搬入する被加工物搬出入手段12と、仮置きテーブル9上に保持されたウエーハWを被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6上に搬送する第1の搬送手段13と、被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6上に載置されている研削加工後のウエーハWを洗浄手段11に搬送する第2の搬送手段14とを備えている。仮置きテーブル9は、枠体91と、該枠体91によって囲繞され通気性を有するポーラス部材によって形成される保持面92とにより形成されている。仮置きテーブル9の近傍には、仮置きテーブル9に吸着されるウエーハWの外縁を撮影することにより、仮置きテーブル9に吸着されるウエーハWの中心が、仮置きテーブル9の中心と一致しているか否かを判定するためのカメラ93が配設されている。
【0022】
第1の搬送手段13は、矢印R5で示す方向に旋回するアーム部材131と、該アーム部材131の先端に形成された吸着部132とを備えている。また、第2の搬送手段14は、矢印R6で示す方向に旋回するアーム部材141と、該アーム部材141の先端に形成された吸着部142とを備えている。本実施形態の該第1の搬送手段13と第2の搬送手段14とは、同一の構成を備えており、
図2の上段に、第1の搬送手段13(第2の搬送手段14)の先端部を構成する吸着部132(吸着部142)を上方から見た斜視図を示し、
図2の下段に、該吸着部132(吸着部142)を下方から見た斜視図を示す。
図2から理解されるように、吸着部132(吸着部142)の下面には、通気性を有するポーラス部材によって形成された吸着面133(吸着面143)が形成されている。該吸着面133(吸着面143)には、アーム部材131(アーム部材141)を介して、図示を省略する吸引手段が接続されており、該吸着面133(吸着面143)に吸引負圧が生成される。なお、本発明は上記した構成に限定されず、例えば、第1の搬送手段13と第2の搬送手段14とを兼ねる一つの搬送手段を備えるようにしてもよい。
【0023】
被加工物搬出入手段12が配置された装置ハウジング2の手前側には、研削作業を指示したり、加工条件を指定したりするための操作パネルを含む制御手段100が配設されている。該制御手段100は、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリーメモリ(ROM)と、演算結果等を記憶する記憶手段としての読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、入力インターフェース及び出力インターフェースを備えている(いずれも図示は省略する)。このように構成された制御手段100によって、上記の研削装置1の各作動部が制御される。
【0024】
図示の研削装置1は、概ね上記したとおりの構成を備えており、上記の研削装置1に配設された第1の搬送手段13の吸着面133、第2の搬送手段14の吸着面143を洗浄するために構成された洗浄治具、及びその作用について、以下に説明する。
【0025】
図3(a)~(d)には、本発明に基づき形成された洗浄治具での4つの実施例が示されている。
図3(a)に第1実施例として第1の洗浄治具16Aを示す。第1の洗浄治具16Aは、上記したチャックテーブル6の吸着チャック62の寸法に対応する大きさで設定され該吸着チャック62に吸引保持される下面161aを有する基板161と、該基板161の上面に配設された洗浄部材162とを備えている。該基板161は、例えば、硬質な樹脂の円形プレートであり、洗浄部材162は、該基板161の上面に接着剤等で接着されたスポンジ状のパッドである。
【0026】
図3(b)に第2実施例として第2の洗浄治具16Bを示す。第2の洗浄治具16Bは、上記したチャックテーブル6の吸着チャック62の寸法に対応する大きさで設定され該吸着チャック62に吸引保持される下面163aを有する基板163と、該基板163の上面に配設された洗浄部材164とを備えている。該基板163は、上記の基板161と同質の円形プレートであり、洗浄部材164は、該基板163の上面に均一な密度で植毛されたブラシ状の部材である。
【0027】
図3(c)に第3実施例として第3の洗浄治具16Cを示す。第3の洗浄治具16Cは、上記したチャックテーブル6の吸着チャック62の寸法に対応する大きさで設定され該吸着チャック62に保持される下面165aを有する基板165と、該基板165の上面に配設された洗浄部材166とを備えている。該基板165は、上記の基板161と同質の円形プレートであり、洗浄部材166は、該基板165の上面に接着剤で接着されたスポンジ状のパッドである。本実施形態の洗浄部材166は、上記の第1の洗浄治具16Aに配設された洗浄部材162と同質のパッド部材であるが、後述する吸着手段18(
図4(a)を参照)によって吸着するための3つの吸着孔166aが形成されており、該吸着孔166aによって、基板165の上面が上方に露出している。
【0028】
図3(d)に第4実施例として第4の洗浄治具16Dを示す。第4の洗浄治具16Dは、上記したチャックテーブル6の吸着チャック62の寸法に対応する大きさで設定され該吸着チャック62に保持される下面167aを有する基板167と、該基板167の上面に配設された洗浄部材168とを備えている。該基板167は、上記の基板161と同質の円形プレートであり、洗浄部材168は、該基板167の上面に植毛されたブラシ状の部材である。該洗浄部材168は、上記の第2の洗浄治具16Bに配設された洗浄部材164と同質のブラシ状の部材であるが、後述する吸着手段18(
図4(a)を参照)によって吸着するために、ブラシ状の洗浄部材168が植毛されていない3つの吸着領域168aが形成されており、該吸着領域168aでは、基板167の上面が上方に露出している。なお、上記した基板161、163、165、及び167は、上記した硬質の樹脂プレートに限定されず、例えば、金属製のプレート、ガラス製のプレート等であってもよい。
【0029】
上記の洗浄治具16A~16Dは、例えば、
図1に示すように、研削装置1の装置ハウジング2の上面であって、洗浄手段11と、仮置きテーブル9との間の領域に保管することができる。該保管は、保管プレート169上に洗浄治具16A~16Dのいずれかを載置することにより行われる。以下に、本発明の洗浄治具の作用について説明するに当たり、上記した洗浄治具16A~16Dのうち、第3の洗浄治具16Cが選択されたものとして、以下に説明する。第三の洗浄治具16Cには、
図3(c)に示したように、吸着孔166aが形成されており、
図4(a)に示すような搬送アーム18を使用して、上記の保管プレート169から、被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6に搬送することができる。なお、
図1では、説明の都合上、該搬送アーム18は省略されているが、例えば、該搬送アーム18の旋回中心は、第1の搬送手段13及び第2の搬送手段14との中間に設定される。
【0030】
搬送アーム18は、アーム部材181と、アーム部材181の先端部に配設された3つの吸着部材182とを備えている。該吸着部材182には、アーム部材181を介して図示を省略する吸引手段が接続されており、該吸引手段を作動させることで、該吸着部材182に負圧が生成される。該吸着部材182は、第3の洗浄治具16Cの洗浄部材166に形成された3つの吸着孔166aに対応するように形成されている。すなわち、搬送アーム18の吸着部材182を、該第3の洗浄治具16Cの吸着孔166aに位置付けて吸引し、該アーム部材181を昇降及び旋回動作させることにより、上記の保管プレート169から、被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6に搬送して吸着チャック62上に載置して吸引保持する。
【0031】
該チャックテーブル6に第3の洗浄治具16Cを保持したならば、
図5に示すように、第一の搬送手段13を旋回して、吸着部132の吸着面133を第3の洗浄治具16Cの洗浄部材166の上面に当接させる。これと共に、チャックテーブル6を矢印R7で示す方向に回転させると共に、第1の搬送手段13のアーム部材131を矢印R8で示す方向に揺動させる。このように洗浄治具16Cがチャックテーブル6に保持された状態で、洗浄部材166の作用によって第1の搬送手段13の吸着面133が洗浄される。さらに、本実施形態においては、被加工物搬入・搬出域Aの近傍に配設された上記の洗浄水供給ノズル15から、洗浄水Lを噴射する。該洗浄水Lの作用により、第1の搬送手段13の吸着面133がより効果的に洗浄されて、該吸着面133に付着していた異物が除去される。このような洗浄は、定期的、又は任意のタイミングで実施され、吸着面133に異物が付着しないことにより、ウエーハW等をチャックテーブル6に搬送する際に、ウエーハWが破損したりすることが防止される。
【0032】
なお、上記した実施形態では、洗浄治具16A~16Dを保管する保管プレート169から洗浄治具16A~16Dをチャックテーブル6に載置する際に、搬送アーム18を使用したが、本発明はこれに限定されず、作業者が手作業でチャックテーブル6に載置するようにしてもよい。その場合は、
図3(c)、(d)に示す第3の洗浄治具16C、第4の洗浄治具16Dに形成されている吸着孔166a、吸着孔168aは不要であり、
図3(a)、(b)に示す洗浄治具16A、16Bを使用することができる。
【0033】
また、上記した実施形態では、チャックテーブル6に保持された洗浄治具16Cを使用して、第1の搬送手段13の吸着面133を洗浄したが、第2の搬送手段14の吸着部142の吸着面143の洗浄を実施することも可能である。さらに、上記した実施形態では、本発明の保持手段としてチャックテーブル6を使用し、洗浄治具16A~16Dを保持して第1の搬送手段13の吸着部132の吸着面133を洗浄することについて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図4(b)に示すように、本発明の保持手段として上記の仮置きテーブル9を使用し、該仮置きテーブル9の保持面92に該洗浄治具16A~16Dを載置して吸引保持し、該仮置きテーブル9の上方から、第1の搬送手段13の吸着面133を当接して、
図5に基づき説明したように、第1の搬送手段13を揺動させることで、該吸着面133を洗浄することもできる。その場合は、洗浄治具16A~16Dを構成する基板161、163、165、167の大きさは、仮置きテーブル9と同一又はそれよりも大きければよく、チャックテーブル6に対応する大きさである必要はない。
【0034】
さらに、上記した実施形態では、本発明に基づき構成される洗浄治具が適用される加工装置として、研削装置1を示したが、本発明はこれに限定されず、被加工物を保持する保持手段と、被加工物を吸着する吸着面を有し被加工物を搬送する搬送手段を有する加工装置であれば、加工装置の種類について、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0035】
1:研削装置
2:装置ハウジング
20:排水パン
21:支持壁
22、23:案内レール
3:粗研削ユニット
31:ユニットハウジング
32:回転軸
33:ホイールマウント
34:粗研削ホイール
35:研削砥石
36:電動モータ
37:支持部材
38:移動基台
39:研削送り機構
4:仕上げ研削ユニット
41:ユニットハウジング
42:回転軸
43:ホイールマウント
44:仕上げ研削ホイール
45:研削砥石
46:電動モータ
47:支持部材
48:移動基台
49:研削送り機構
5:ターンテーブル
6:チャックテーブル
61:枠体
62:吸着チャック
7:第1のカセット
8:第2のカセット
9:仮置きテーブル
91:枠体
92:保持面
93:カメラ
11:洗浄手段
12:被加工物搬出入手段
13:第1の搬送手段
131:アーム部材
132:吸着部
133:吸着面
14:第2の搬送手段
141:アーム部材
142:吸着部
143:吸着面
15:洗浄水供給ノズル
16A:第1の洗浄治具
161:基板
161a:下面
162:洗浄部材
16B:第2の洗浄治具
163:基板
163a:下面
164:洗浄部材
16C:第3の洗浄治具
165:基板
165a:下面
166:洗浄部材
166a:吸着孔
16D:第4の洗浄治具
167:基板
167a:下面
168:洗浄部材
168a:吸着領域
169:保管プレート
18:搬送アーム
181:アーム部材
182:吸着部材
100:制御手段