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特許7747248塗布方法、インクジェットヘッド及び塗布装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-22
(45)【発行日】2025-10-01
(54)【発明の名称】塗布方法、インクジェットヘッド及び塗布装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/50 20230101AFI20250924BHJP
   H10K 85/50 20230101ALI20250924BHJP
   H10K 71/13 20230101ALI20250924BHJP
   H10K 71/15 20230101ALI20250924BHJP
   B41J 2/015 20060101ALI20250924BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20250924BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20250924BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20250924BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20250924BHJP
   H10K 30/40 20230101ALN20250924BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K85/50
H10K71/13
H10K71/15
B41J2/015 101
B41J2/01 501
B41J2/14 305
B41J2/16 503
B41J2/175 501
H10K30/40
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2025528781
(86)(22)【出願日】2025-01-07
(86)【国際出願番号】 JP2025000227
【審査請求日】2025-05-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 公孝
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼久 悠介
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-072068(JP,A)
【文献】国際公開第2023/237190(WO,A1)
【文献】特開2023-127002(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098625(WO,A1)
【文献】特開2023-147942(JP,A)
【文献】特開2017-050145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-99/00
B41J 2/01-2/305
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロブスカイト化合物又はその前駆体と溶剤とを含む溶液をインクジェットヘッドのノズルから吐出させることにより、前記溶液を被塗布物に塗布する塗布方法であって、
前記溶剤は、比誘電率が30以上の非プロトン性極性溶剤を1種類以上含み、
前記インクジェットヘッドとして、
圧電素子への駆動信号の印加により動作する振動板と、
前記振動板の動作によって容積が膨張又は収縮する圧力室と、
前記圧力室に前記溶液を供給する流路と、
前記流路に面し、前記振動板と対向して配置された弾性部材と、
を有し、前記圧電素子への駆動信号の印加によって前記圧力室の容積を膨張又は収縮させて、前記圧力室内の前記溶液をノズルから吐出させるインクジェットヘッドを用い、
前記インクジェットヘッドにおいて、前記流路は、複数の流路形成部材を接着剤を介して積層することにより形成されており、
前記接着剤の一部が前記流路に露出しており、且つ前記露出した接着剤は保護膜で覆われておらず、
前記駆動信号として、前記圧電素子に印加する電位のうち非駆動時のものを基準電位、基準電位と比べて前記圧力室の容積を膨張させる変位を生じさせる電位を膨張電位、基準電位と比べて前記圧力室の容積を収縮させる変位を生じさせる電位を収縮電位としたとき、前記基準電位から前記膨張電位を経て前記基準電位に戻る膨張パルスと、前記基準電位から前記収縮電位を経て前記基準電位に戻る収縮パルスとをこの順に連続して印加する駆動信号波形要素を1つ以上含む駆動信号を用いる、
塗布方法。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布方法において、
前記非プロトン性極性溶剤のSP値は11~15(cal/cm)1/2である、
塗布方法。
【請求項3】
請求項に記載の塗布方法において、
前記非プロトン性極性溶剤のSP値と前記接着剤のSP値との差分の絶対値が4(cal/cm)1/2以下である、
塗布方法。
【請求項4】
請求項に記載の塗布方法において、
前記接着剤は、エポキシ系接着剤である、
塗布方法。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の塗布方法において、
前記溶剤は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)及びジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群より選ばれる1以上を含む、
塗布方法。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の塗布方法において、
前記ペロブスカイト化合物は、組成式ABX(Aは1価カチオン、Bは2価カチオン、Xはハロゲンアニオン)で表され、立方体格子構造における各頂点にA、立方体中心にB、立方体の各面中心にXが配置される結晶構造を有し、
AはCHNH 又はHC(NH であり、BはPb2+又はSn2+であり、XはI、Br、Clのいずれかである、
塗布方法。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の塗布方法において、
前記インクジェットヘッドにおいて、前記弾性部材は、前記流路の絞り部を形成する位置に配置されている、
塗布方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の塗布方法において、
前記前駆体は、組成式ABX(Aは1価カチオン、Bは2価カチオン、Xはハロゲンアニオン)で表されるペロブスカイト化合物の前駆体である、
塗布方法。
【請求項9】
請求項に記載の塗布方法において、
前記前駆体は、前記溶液を塗布した後、乾燥させることにより結晶構造を形成するものである、
塗布方法。
【請求項10】
ペロブスカイト化合物又はその前駆体と比誘電率が30以上の非プロトン性極性溶剤とを含む溶液を吐出させるインクジェットヘッドであって、
圧電素子への駆動信号の印加により動作する振動板と、
前記振動板の動作によって容積が膨張又は収縮する圧力室と、
前記圧力室に前記溶液を供給する流路と、
前記流路に面し、前記振動板と対向して配置された弾性部材と、
を有し、前記圧電素子への駆動信号の印加によって前記圧力室の容積を膨張又は収縮させて、前記圧力室内の前記溶液をノズルから吐出させるものであり、
前記流路は、複数の流路形成部材を接着剤を介して積層することにより形成されており、
前記接着剤の一部が前記流路に露出しており、且つ前記露出した接着剤は保護膜で覆われておらず、
前記駆動信号は、前記圧電素子に印加する電位のうち非駆動時のものを基準電位、基準電位と比べて圧力室の容積を膨張させる変位を生じさせる電位を膨張電位、基準電位と比べて圧力室の容積を収縮させる変位を生じさせる電位を収縮電位としたとき、前記基準電位から前記膨張電位を経て前記基準電位に戻る膨張パルスと、前記基準電位から前記収縮電位を経て前記基準電位に戻る収縮パルスとをこの順に連続して印加する駆動信号波形要素を1つ以上含む、
インクジェットヘッド。
【請求項11】
ペロブスカイト化合物又はその前駆体と比誘電率が30以上の非プロトン性極性溶剤とを含む溶液を被塗布物に塗布する塗布装置であって、
前記溶液をノズルから吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドの駆動を制御する制御部と、
を備え、
前記インクジェットヘッドは、
圧電素子への駆動信号の印加により動作する振動板と、
前記振動板の動作によって容積が膨張又は収縮する圧力室と、
前記圧力室に前記溶液を供給する流路と、
前記流路に面し、前記振動板と対向して配置された弾性部材と、
を有し、前記圧電素子への駆動信号の印加によって前記圧力室の容積を膨張又は収縮させて、前記圧力室内の前記溶液をノズルから吐出させるものであり、
前記流路は、複数の流路形成部材を接着剤を介して積層することにより形成されており、
前記接着剤の一部が前記流路に露出しており、且つ前記露出した接着剤は保護膜で覆われておらず、
前記制御部は、
前記駆動信号として、前記圧電素子に印加する電位のうち非駆動時のものを基準電位、基準電位と比べて圧力室の容積を膨張させる変位を生じさせる電位を膨張電位、基準電位と比べて圧力室の容積を収縮させる変位を生じさせる電位を収縮電位としたとき、前記基準電位から前記膨張電位を経て前記基準電位に戻る膨張パルスと、前記基準電位から前記収縮電位を経て前記基準電位に戻る収縮パルスとをこの順に連続して印加する駆動信号波形要素を1つ以上含む駆動信号を前記圧電素子に印加する、
塗布装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布方法、インクジェットヘッド及び塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペロブスカイト化合物を発電層に有する太陽電池(以下、「ペロブスカイト太陽電池」と呼ぶ)の開発が進められている。ペロブスカイト太陽電池は、構造上、シリコン結晶型のような厚みが不要であり、薄膜化が容易であること、溶液の塗布による作製が可能であり、低コスト化が可能であること等から注目されている。
【0003】
ペロブスカイト化合物を含む発電層は、従来、スピンコーティング法によって製造されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2024-75070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スピンコーティング法等の従来の塗布方法では大面積化が難しく、高いスループット及びスケーラブルなモジュール製造には適していない。そのため、大面積化が可能なインクジェット法による塗布方法が望まれる。
【0006】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、インクジェットインクで一般的に使用される溶剤ではペロブスカイト化合物やその前駆体を高濃度に溶解させることができないか、溶解できても粘度が高すぎてインクジェット印刷には適さないという問題があった。そのため、液滴を吐出できなかったり、吐出の軌道がずれたりして、安定に吐出できないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ペロブスカイト化合物又はその前駆体を含む溶液をインクジェット法により塗布することができ、且つ吐出不良を抑制できる溶液の塗布方法、及びそれに用いるインクジェットヘッド及び塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の塗布方法、インクジェットヘッド及び塗布装置に関する。
【0009】
ペロブスカイト化合物又はその前駆体と溶剤とを含む溶液をインクジェットヘッドのノズルから吐出させることにより、前記溶液を被塗布物に塗布する塗布方法であって、前記溶剤は、比誘電率が30以上の非プロトン性極性溶剤を1種類以上含み、前記インクジェットヘッドとして、圧電素子への駆動信号の印加により動作する振動板と、前記振動板の動作によって容積が膨張又は収縮する圧力室と、前記圧力室に前記溶液を供給する流路と、前記流路に面し、前記振動板と対向して配置された弾性部材と、を有し、前記圧電素子への駆動信号の印加によって前記圧力室の容積を膨張又は収縮させて、前記圧力室内の前記溶液をノズルから吐出させるインクジェットヘッドを用い、前記駆動信号として、前記圧電素子に印加する電位のうち非駆動時のものを基準電位、基準電位と比べて前記圧力室の容積を膨張させる変位を生じさせる電位を膨張電位、基準電位と比べて前記圧力室の容積を収縮させる変位を生じさせる電位を収縮電位としたとき、前記基準電位から前記膨張電位を経て前記基準電位に戻る膨張パルスと、前記基準電位から前記収縮電位を経て前記基準電位に戻る収縮パルスとをこの順に連続して印加する駆動信号波形要素を1つ以上含む駆動信号を用いる、塗布方法。
【0010】
ペロブスカイト化合物又はその前駆体と比誘電率が30以上の非プロトン性極性溶剤とを含む溶液を吐出させるインクジェットヘッドであって、
圧電素子への駆動信号の印加により動作する振動板と、前記振動板の動作によって容積が膨張又は収縮する圧力室と、前記圧力室に前記溶液を供給する流路と、前記流路に面し、前記振動板と対向して配置された弾性部材と、を有し、前記圧電素子への駆動信号の印加によって前記圧力室の容積を膨張又は収縮させて、前記圧力室内の前記溶液をノズルから吐出させるものであり、
前記駆動信号は、前記圧電素子に印加する電位のうち非駆動時のものを基準電位、基準電位と比べて圧力室の容積を膨張させる変位を生じさせる電位を膨張電位、基準電位と比べて圧力室の容積を収縮させる変位を生じさせる電位を収縮電位としたとき、前記基準電位から前記膨張電位を経て前記基準電位に戻る膨張パルスと、前記基準電位から前記収縮電位を経て前記基準電位に戻る収縮パルスとをこの順に連続して印加する駆動信号波形要素を1つ以上含む、インクジェットヘッド。
【0011】
ペロブスカイト化合物又はその前駆体と比誘電率が30以上の非プロトン性極性溶剤とを含む溶液を被塗布物に塗布する塗布装置であって、前記溶液をノズルから吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの駆動を制御する制御部と、を備え、
前記インクジェットヘッドは、
圧電素子への駆動信号の印加により動作する振動板と、
前記振動板の動作によって容積が膨張又は収縮する圧力室と、
前記圧力室に前記溶液を供給する流路と、
前記流路に面し、前記振動板と対向して配置された弾性部材と、を有し、前記圧電素子への駆動信号の印加によって前記圧力室の容積を膨張又は収縮させて、前記圧力室内の前記溶液をノズルから吐出させるものであり、
前記制御部は、
前記駆動信号として、前記圧電素子に印加する電位のうち非駆動時のものを基準電位、基準電位と比べて圧力室の容積を膨張させる変位を生じさせる電位を膨張電位、基準電位と比べて圧力室の容積を収縮させる変位を生じさせる電位を収縮電位としたとき、前記基準電位から前記膨張電位を経て前記基準電位に戻る膨張パルスと、前記基準電位から前記収縮電位を経て前記基準電位に戻る収縮パルスとをこの順に連続して印加する駆動信号波形要素を1つ以上含む駆動信号を前記圧電素子に印加する、塗布装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ペロブスカイト結晶材料を含む溶液をインクジェット法により塗布することができ、且つ吐出不良を抑制できる溶液の塗布方法、及びそれに用いるインクジェットヘッド及び塗布装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態の塗布装置の概略構成を示す模式的な図である。
図2図2は、インクジェットヘッドの模式的な斜視図である。
図3図3は、インクジェットヘッドの要部の模式的な断面図である。
図4図4は、積層部材の模式的な部分拡大断面図である。
図5図5は、図4の一部の拡大図である。
図6図6A~6Fは、駆動信号の例を示す信号波形図である。
図7図7A~7Dは、駆動信号の例を示す信号波形図である。
図8図8は、変形例のインクジェットヘッドの要部を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記の通り、ペロブスカイト化合物やその前駆体は従来の溶剤に対して溶解性が低く、高濃度に溶解させることができないという問題があった。本発明者らは鋭意検討した結果、比誘電率30以上の非プロトン性極性溶剤を1種類以上用いることで、ペロブスカイト化合物やその前駆体を高濃度に溶解させることができることを見出した。
【0015】
一方で、ペロブスカイト化合物やその前駆体を高濃度で含む溶液は粘度が高い。そのような高粘度の溶液をピエゾインクジェット方式で吐出させる際、一般的な駆動信号波形で吐出させると、液滴の不吐出や軌道のずれ等の不具合が生じやすいことが新たに判明した。一般的な駆動信号波形とは、例えば圧電素子に電圧パルス印加してインクジェットヘッドの圧力室の容積を膨張させた後に基準電位に戻す波形である。
本発明者らはさらに検討した結果、液滴を吐出させる際の駆動信号波形として、圧力室を膨張させた後、連続して圧力室を収縮させるDRR波形を用いることで、上記のような高粘度の溶液でも、液滴を安定に吐出できることを見出した。
【0016】
またその一方で、上記のような高粘度の溶液を用いてDRR波形を行った場合、圧力室での溶液の圧力振動が共通流路や共通液室を通じて他の圧力室の周囲に伝搬し、吐出ノズル毎の液滴速度のバラつきが大きくなりやすいことが新たに判明した。
本発明者らはさらに検討した結果、インクジェットヘッドの圧電素子への駆動信号の印加により動作する振動板と対向する位置に弾性部材を設けることで、吐出ノズル毎の液滴速度のバラつきが大きくなるのを抑制できることを見出した。
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。但し、本発明は、当該実施形態に限定されるものではない。本実施形態では、ペロブスカイト化合物又はその前駆体を含む溶液をインクジェットヘッドのノズルから吐出させることにより、当該溶液を被塗布物に塗布する。まず、本実施形態で使用する溶液の一例について説明する。
【0018】
1.溶液
溶液は、ペロブスカイト化合物又はその前駆体と溶剤とを含む。
【0019】
1-1.ペロブスカイト化合物又はその前駆体
ペロブスカイト化合物又はその前駆体としては、例えばペロブスカイト太陽電池の発電層等に使用される公知のものを使用することができる。
【0020】
ペロブスカイト化合物は、組成式ABXで表される化合物であり、立方体格子構造における各頂点にA、立方体中心にB、立方体の各面中心にXが配置される結晶構造を有する。上記組成式において、Aは1価カチオンであり、例えばCH(NH 、CHNH 、CHCHNH 、CHCHCHNH 及びC(NH)=CHNH 等が挙げられ、好ましくはCHNH 又はCH(NH である。Bは2価カチオンであり、Pb2+又はSn2+であることが好ましい。Xはハロゲンアニオンであり、I、Br、Clのいずれかであることが好ましい。
【0021】
ペロブスカイト化合物の具体例としては、CHNHPbI、CHCHNHPbI、NHCHNHPbI、CHNHPbBr、CHNHPbClが挙げられる。また、CHNHSnCl、CHNHSnBr、CHNHSnI、(NHCHSnCl、(NHCHSnBr、(NH
CHSnI等も挙げられる。
【0022】
ペロブスカイト化合物は、例えば無機金属ハロゲン化物と有機アミンハロゲン化物とを混合した後、結晶化させることにより得ることができる。即ち、無機金属ハロゲン化物と有機アミンハロゲン化物は、ペロブスカイト化合物の前駆体である。前駆体は、溶液を塗布した後、乾燥させることにより結晶構造を形成するものである。
【0023】
無機金属ハロゲン化物(BX)は、Sn、Pbのうち少なくとも1種のハロゲン化物である。無機金属ハロゲン化物の例には、PbIが含まれる。有機アミンハロゲン化物(AX)は、RNHXで表される。Rは、飽和アルキル基、不飽和アルキル基又はアリール基である。有機アミンハロゲン化物の例には、ヨウ化メチルアンモニウム(MAI)が含まれる。
【0024】
ペロブスカイト化合物と前駆体のいずれを用いるかは、ペロブスカイト層の形成方法に応じて決定すればよい。例えば、ペロブスカイト化合物又はその前駆体(例えば無機金属ハロゲン化物と有機アミンハロゲン化物)を含む溶液を塗布した後、必要に応じて該塗膜上に貧溶媒を塗布して、乾燥させることにより、ペロブスカイト層を形成してもよい(1ステップ法)。また、無機金属ハロゲン化物を含む第1溶液を塗布した後、該塗膜上に有機アミンハロゲン化物を含む第2溶液を塗布し、乾燥させることにより、ペロブスカイト層を形成してもよい(2ステップ法)。
【0025】
溶液中のペロブスカイト化合物又は前駆体の含有量は、後述するインクジェットヘッドによる吐出が可能であれば特に限定されない。上記含有量は、溶液の全体積に対して例えば0.6mol/L以上2mol/L以下、好ましくは1.0mol/L以上1.6mol/L以下、より好ましくは1.2mol/L以上1.4mol/L以下とすることができる。ペロブスカイト化合物又は前駆体の上記含有量が0.6mol/L以上であると、単位時間当たりの塗布量をより多くすることができ、生産性をより高めることができる。ペロブスカイト化合物又は前駆体の上記含有量が2.0mol/L以下であると、インクジェットヘッドのノズルから溶液をより安定に吐出させることができる。
【0026】
1-2.溶剤
溶剤は、比誘電率が30以上の非プロトン性極性溶剤を1種以上含む。
【0027】
(比誘電率が30以上の非プロトン性極性溶剤)
上記のようなペロブスカイト化合物やその前駆体(以下、単に「ペロブスカイト化合物等」ともいう)は、一般的に溶剤に対する溶解性が低い。これに対し、非プロトン性極性溶媒は良溶媒であり、このうち比誘電率が30以上の非プロトン性極性溶剤は特に極性が高いため、極性が高いペロブスカイト化合物等を良好に溶解させることができる。そのため、溶液中にペロブスカイト化合物等を高濃度に溶解又は分散させることができる。
【0028】
非プロトン性極性溶剤の比誘電率は、好ましくは32以上としうる。非プロトン性極性溶剤の比誘電率の上限は特に限定されないが、例えば50以下としうる。即ち、比誘電率は30以上50以下、好ましくは32以上50以下とすることができる。
【0029】
比誘電率30以上の非プロトン性極性溶剤としては、例えばN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)が挙げられる。
溶液は、比誘電率が30以上の非プロトン性極性溶媒を1種類だけ含んでもよいし、2種類以上含んでもよい。
【0030】
非プロトン性極性溶剤の比誘電率は、誘電率計(例えばAgilent社製)を使用し、25℃、周波数1MHzの条件で測定することができる。
【0031】
また、比誘電率が30以上の非プロトン性極性溶剤のSP値は11(cal/cm) /2以上15(cal/cm)1/2以下であることが好ましい。このようなSP値を有する溶剤は、溶質であるペロブスカイト化合物等とSP値が近いため、溶解性をより高めることができる。
【0032】
本明細書において、SP値(溶解度パラメータ)は、分子凝集エネルギーの平方根で表される値である。SP値δ[単位:(cal・cm1/2]は、J.H.Hildebrandら(J.H.Hildebrand and R.L.Scott著、“The Solubility of Nonelectrolytes”、Reinhold Publishing Corp.出版、1950年発行)により提唱されたものである。下記表1に示される代表的な溶剤については、溶剤のSP値は表1に記載の値とする。
【表1】
【0033】
但し、表1に記載した溶剤以外の他の溶剤については、溶剤のSP値は下記式(1)から算出される値とする。
【数1】
式(1)において、△Eは、溶剤分子の分子凝集エネルギー(単位:cal/mol)、Vは溶剤分子のモル容積(単位:ml/mol)を示す。ここで分子凝集エネルギーには対象物質の蒸発エンタルピーを用いることができ、モル容積の値は、分子量(g/mol)と密度(g/ml)の比として求めることができる。蒸発エンタルピーや分子量は、例えば丸善出版社の化学便覧 基礎編 改訂6版に記載された値を用いることができる。
【0034】
このように、ペロブスカイト化合物等の溶解性を高め、ペロブスカイト化合物等を高濃度に含有する溶液を得る観点では、上記溶液は、比誘電率が30以上であり、且つ上記SP値を満たす非プロトン性極性溶剤を含むことが好ましく、例えばN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)及びジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群より選ばれる1以上を含むことが好ましい。
【0035】
溶液に含まれる溶媒中の比誘電率30以上の非プロトン性極性溶剤の含有量は、ペロブスカイト化合物等を良好に溶解させることができる程度であれば特に限定されないが、溶液の全質量に対して例えば50質量%以上100質量%以下、好ましくは60質量%以上100質量%以下とすることができる。溶媒が貧溶媒をさらに含む場合、溶媒中の比誘電率30以上の非プロトン性極性溶剤の含有量の上限値は、例えば95質量%以下とすることもできる。
【0036】
(他の溶剤)
溶剤は、比誘電率が30以上の非プロトン性極性溶剤以外の他の溶剤をさらに含んでもよい。他の溶剤としては、貧溶媒が好ましい。貧溶媒とは、溶質であるペロブスカイト化合物等を溶かす能力はあるが、溶質の溶解性が低い溶媒である。貧溶媒の例には、ジクロロメタン、クロロホルム等の置換脂肪族炭化水素;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、ニトロベンゼン等の置換芳香族炭化水素;酢酸、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール;ヘキサン等の長鎖炭化水素(特にC4-10炭化水素);アセトニトリル等が挙げられる。これら貧溶媒は、単独で使用することもできるし、2種以上を組合せて使用することもできる。これらの中では、クロロベンゼン又はトルエンが好ましい。
【0037】
1-3.他の成分
上記溶液は、必要に応じてペロブスカイト化合物等や溶剤以外の他の成分をさらに含んでもよい。他の成分としては、樹脂、硬化性化合物、硬化剤、フィラーをさらに含んでもよい。
樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)等のフッ素系樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリスルホン(PSF)、芳香族ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、及びポリスチレン(PS)等が含まれる。硬化性化合物としては、(メタ)アクリレート化合物等の光硬化性化合物、エポキシ化合物等の熱硬化性化合物、シロキサン化合物等が含まれる。硬化剤としては、これらの硬化性化合物を硬化させるものであればよく、光重合開始剤や硬化触媒等が挙げられる。フィラーの例には、シリカ、窒化ホウ素ナノシート、グラフェン、カーボンナノチューブ等が含まれる。
【0038】
次に、添付図面を参照して本実施形態の塗布装置について説明する。但し、塗布装置は、図示例に限定されるものではない。以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0039】
2.塗布装置
図1は、本実施形態の塗布装置100の概略構成を示す模式的な図である。なお、塗布装置の一例としてラインヘッドを用いる例を説明するが、これに限定されない。
【0040】
塗布装置100は、搬送部200と、溶液塗布部300と、溶液供給部400と、制御部500と、を備えている。塗布装置100では、制御部500の制御に基づいて、搬送部200により搬送される記録媒体Rに対して、溶液供給部400から供給された溶液を溶液塗布部300で塗布する。
【0041】
搬送部200は、記録媒体Rを保持し、溶液塗布部300に供給する。搬送部200は、巻き出しロール210、ローラー220、230及び巻き取りロール240を有する。ロール状に巻かれた長尺状の記録媒体Rは、巻き出しロール210から繰り出され、ローラー220、230に支持されながら搬送され、巻き取りロール240に巻き取られる。
【0042】
溶液塗布部300は、記録媒体R上に溶液を吐出して塗布層を形成する。溶液塗布部300は、複数のラインヘッド310、及びそれらを保持するキャリッジ330等を有する。また、溶液塗布部300は、加熱部320をさらに有することが好ましい。
【0043】
ラインヘッド310は、搬送部200に搬送される記録媒体Rに対して溶液を吐出する。図1では、ラインヘッド310は2つあり、搬送部200による記録媒体Rの搬送方向に対して上流から、上記したペロブスカイト化合物等を含む溶液と、貧溶媒とに対応したラインヘッド310、310が順番に設けられている。
【0044】
本実施形態のラインヘッド310は、キャリッジ330に、記録媒体Rの搬送方向に略垂直な方向(幅方向)について記録媒体Rの全体をカバーする長さ(幅)で設けられている。即ち、塗布装置100は、ワンパス方式のラインヘッド型のインクジェット装置である。ラインヘッド310は、複数のインクジェットヘッド1(図2参照)が配列されて構成されている。また、図示の通り、キャリッジ330にはキャリッジヒーター330aを設け、溶液を加熱するようにしてもよい。
【0045】
加熱部320は、ラインヘッド310よりも記録媒体Rの搬送方向下流側に設けられている。加熱部320は、例えばヒーターでありうる。加熱部320は、溶液が吐出された記録媒体Rを加熱することで、記録媒体R上に吐出された溶液を乾燥させる。
【0046】
溶液供給部400は、タンク410、ポンプ420、チューブ430、サブタンク440、チューブ450、及びヒーター460を有する。
溶液供給部400は、溶液を貯留して、当該溶液を溶液塗布部300のラインヘッド310に供給し、所定の溶液をラインヘッド310の各ノズルから吐出可能とする。タンク410内の溶液は、ポンプ420により、チューブ430を介してインクジェットヘッド1の溶液の背圧を調整するサブタンク440に送られる。
サブタンク440には、フロートセンサー440aが設けられ、フロートセンサー440aによる液面位置の検出データに基づいて制御部500がポンプ420を駆動することにより所定量の上記溶液が貯留されるようになっている。サブタンク440内の溶液は、チューブ450を介してインクジェットヘッド1に供給される。なお、本例では、タンク410、ポンプ420、チューブ430、サブタンク440、チューブ450、ヒーター460を備える構成を例示したが、これに限定されない。インクジェットヘッド1に上記溶液が供給される構成であれば種々の構成を適用することができる。
【0047】
また、溶液供給部400には、ヒーター460が設けられ、インクジェットヘッド1の外側で溶液を加熱する外部ヒーターを構成している。図1に示す例では、ヒーター460は、溶液供給部400の全てを覆うように設けられているが、溶液供給部400を構成する部材のうちいずれかに個別に設けられているものとしてもよい。これにより、溶液供給部400内の上記溶液が加熱及び保温されて、溶液の温度が所定温度以上に保たれるように構成されている。ヒーター460としては、例えば、電熱線や伝熱部材によって構成され、溶液供給部400を構成する各部材を覆ったり、溶液供給部400を構成する部材の外面に貼り付けられたりして設けられている。
【0048】
制御部500は、塗布装置100の各部(例えばインクジェットヘッド1)の駆動を制御し、全体の動作を統括する。制御部500は、CPU(Central Processing Unit)、
ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備える。制御部500では、ROMに記憶されているシステムプログラム等の各種処理プログラムが読み出されてRAMに展開される。そして、RAMに展開されたプログラムがCPUによって実行されることにより、例えば、塗布処理や上記した溶液供給処理等の種々の処理が実行される。塗布処理としては、例えば制御部500は、後述するドライバー5を動作させて、圧電素子42を駆動するための駆動信号を発生させる。
【0049】
[インクジェットヘッドの構成]
図2は、インクジェットヘッド1の模式的な斜視図である。図3は、インクジェットヘッド1の要部の模式的な断面図である。図3では、見やすくするために、一部の複数のノズル11に係る構成要素のみを拡大して図示している。なお、X軸は、積層部材2の長手方向のノズル11の配列方向であり、Y軸は、積層部材2のノズル11が記置されて上記溶液が吐出される面(吐出面)内でX軸と直交する軸であり、Z軸は、XY面に対して直交する軸であり、積層方向である。
【0050】
インクジェットヘッド1は、複数のノズル11を有する積層部材2と、共通液室形成部材6と、フレキシブル基板4と、ドライバー5とを有する(図3参照)。
【0051】
積層部材2は、積層方向であるZ方向に、複数の流路形成部材(層部材)を接着剤を介して積層することにより形成されている。積層部材2の下端には、溶液を吐出するための複数のノズル11がX方向及びY方向に配列されている。
【0052】
複数の層部材の接着に使用される接着剤の種類は特に限定されない。例えば、常温硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤等を用いることができる。例えば、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂等を用いた接着剤としてもよく、好ましくはエポキシ系樹脂を含むエポキシ系接着剤である。これらの接着剤は、例えばAu、Ni等の金属粒子をさらに含有する導電性接着剤であってもよい。
当該接着剤のSP値と、上記した溶液に含まれるSP値が11~15の非プロトン性極性溶剤のSP値との差分の絶対値は特に限定されないが、例えば4(cal/cm)1/ 以下であってもよい。なお、上記差分の絶対値は目的に応じて調整されてもよい。例えば接着剤の溶液への溶出を抑制する観点では、上記差分の絶対値の下限は0(cal/cm)1/2以上であってもよいし、1(cal/cm)1/2以上であってもよい。
【0053】
代表的な接着剤のSP値は、下記表2に記載の値とする。
【表2】
【0054】
但し、上記表2に示した接着剤以外の他の接着剤のSP値は、上記と同様に、式(1)を用いて算出される値とする。なお、接着剤が複数の成分(例えば樹脂成分)を含む場合、接着剤のSP値は下記式(2)により算出することができる。
【数2】
式(2)において、δmixは混合樹脂全体のSP値、Xnは成分nのモル分率、Vnは成分nのモル容積、δnは成分nのSP値である。成分nのSP値は、上記と同様の方法で算出することができる。
【0055】
共通液室形成部材6は、積層部材2の上側に配置され、接合されている。そして、積層部材2と共通液室形成部材6とで形成される空間によって、複数のノズル11に溶液を供給する共通液室3が形成されている。
【0056】
フレキシブル基板4及びドライバー5は、圧電素子42を駆動するための部材であり、積層部材2の上側であってX方向の両端部に配置されている。ドライバー5は、圧電素子42を変形させるための駆動信号を、電極421、422間(駆動電極)に印加する駆動信号発生部である。ドライバー5が印加する駆動信号波形については、後で詳細に説明する。
【0057】
図4は、積層部材2の模式的な部分拡大断面図である。図4は、1個のノズル11に係る構成要素のみを図示しているが、積層部材2を構成する流路形成部材自体を除く各構成要素は、複数のノズル11に個別に対応して複数設けられている。なお、図4では、接着剤の図示は省略している。図5は、図4のダンパ20及び圧力室層30周辺の一部を拡大した拡大図である。
【0058】
図4に示すように、積層部材2は、ノズルプレート層10、ダンパ20、ボディプレート層30、保護基板40、配線層50及び保護層60の6つの流路形成部材が、Z方向にこの順に積層されて構成されている。
【0059】
ノズルプレート層10は、積層部材2の最下層に位置している。ノズルプレート層10は、基材部12と、撥液層13とを有する。基材部12は、例えばシリコン製の基板である。撥液層13は、基材部12の吐出面側に配置されている。ノズルプレート層10には、複数のノズル11と、複数の空洞部14とが形成されている。
【0060】
ノズル11は、基材部12及び撥液層13をZ方向に貫通している。ノズル11は、X方向に例えば8個並設されてノズル列を構成しており、このノズル列がY方向に8列並設されてノズルグループを構成している。より詳しくは、ノズルグループは、全てのノズル列における各ノズル11のX方向の位置が1列おきに僅かずつ重なるとともに、全体として全てのノズル11のX方向の位置が僅かずつ重なるように、各ノズル11のX方向の位置をずらして構成されている。そして、このノズルグループがY方向に2組並設されている。
【0061】
空洞部14は、基材部12の上面に配置されており、ダンパ20を振動させるためのダンパ室を形成する。このダンパ室のダンパ20が、共通液室3内の溶液の圧力に応じて変形することで、共通液室3の圧力変動が吸収される。それにより、他のノズルの圧力室の圧力変動を抑制できる。図3では、空洞部14は、ノズルプレート層10の厚み方向(Z方向)の一部に形成されて閉じた空洞となっているが、これに限らず、厚み方向に貫通して外部と接続されてもよい。
【0062】
ダンパ20(弾性部材)は、例えば可撓性フィルムである。可撓性フィルムの材質は、圧力に応じて変形し、圧力振動を吸収しうるものであれば特に限定されない。ダンパ20は、図4に示すように少なくとも空洞部14の開口を塞ぐように配置されている。ダンパ20には、ノズルプレート層10のノズル11と連通する貫通孔201が形成されている。ダンパ20は、ダンパ20の配置については後述する。
【0063】
ボディプレート層30は、圧力室層31と、振動板32とを有する。
圧力室層31は、例えばシリコン製の基板であり、本実施形態ではダンパ20の上面に積層され、接合されている。圧力室層31には、ノズル11から吐出される溶液に吐出圧力を付与する圧力室311が、圧力室層31をZ方向に貫通するように形成されている。圧力室311は、貫通孔201及びノズル11の上方に設けられ、これら貫通孔201及びノズル11と連通している。
【0064】
また、圧力室層31は、ノズル11側とは反対側で圧力室311に連通する連通流路312を有する。図4では、連通流路312は、互い違いに配置された隔壁部31-1、31-2により蛇行形状に形成されている。連通流路312は、隔壁部31-1とダンパ20との間から、隔壁部31-1、31-2間までの部分が絞り部312Aを形成している。
【0065】
振動板32は、圧力室311の開口を覆うように圧力室層31の上面に積層され、接合されている。本実施形態では、振動板32は、圧力室311の壁の一部(図4では上壁部)を構成しており、圧電素子42への駆動信号の印加により変形する。それにより、圧力室311は、振動板32の動作によって容積が膨張又は収縮する。振動板32の表面には酸化膜が形成されている。また、振動板32には、連通孔312と連通する貫通孔321が形成されている。
【0066】
そして、上記したダンパ20は、圧力室311に溶液を供給する流路(図4では、連通流路312)に面し、且つ、振動板32と対向して配置されている。図4では、隔壁部31-1と隔壁部31-2の間の領域で、振動板32の一部とダンパ20とが対向している。また、ダンパ20は、連通流路312の絞り部312Aを形成する位置に配置されている。そして、ダンパ20は、圧力室311内の圧力によって変形することで、圧力変動を吸収できるようになっている。
【0067】
保護基板40は、例えば、42アロイにより構成された基板であり、圧電素子42等を収容する空間部41が形成されている。また、保護基板40には、空間部41とは独立して、上下方向に貫通する供給流路としての貫通孔401が形成されており、共通液室3と圧力室311とを連通している。
【0068】
圧電素子42は、圧力室311と略同一の平面視形状に形成され、振動板32を挟んで圧力室311と対向する位置に設けられている。この圧電素子42は、振動板32を変形させるためのPZTからなるアクチュエーターである。また、圧電素子42には、上面及び下面に2つの電極421、422が設けられており、このうち下面側の電極422が振動板32に接続されている。
【0069】
配線層50は、インターポーザー51を有する。インターポーザー51は、例えばシリコン製の基板であり、下面には、2層の酸化ケイ素の絶縁層52、53が配置され、上面には、同じく酸化ケイ素の絶縁層54が配置されている。そして、絶縁層52、53のうち下方に位置する絶縁層53が、保護基板40の上面に積層され、接合されている。
【0070】
インターポーザー51には、スルーホール511がZ方向に形成されており、このスルーホール511には、貫通電極55が挿通されている。貫通電極55の下端には、水平方向に延在するアルミ基板56の一端が接続されている。アルミ基板56の他端には、スタッドバンプ561が設けられ、スタッドバンプ561が空間部41内に露出した半田423を介して圧電素子42上面の電極421に接続されている。また、アルミ基板56は、インターポーザー51下面の2層の絶縁層52、53によって挟まれて保護されている。
【0071】
また、インターポーザー51には、保護基板40の貫通孔401と連通するインレット512が、インターポーザー51をZ方向へ貫通するように形成されている。インレット512は、インレット512と連通する貫通孔321、401及び貫通孔601よりも小さい断面積(開口面積)に形成されている。なお、絶縁層52~54のうちインレット512近傍を被覆する各部分は、インレット512よりも大きい開口径に形成されている。
【0072】
保護層60は、配線層50の上面に配設された銅基板61を覆いつつ、インターポーザー51の絶縁層54の上面に積層され、接合されている。保護層60は、上方の共通液室形成部材6が積層部材2と接着されるとともに、銅基板61を保護する保護層となっている。保護層60は、例えば、酸化ケイ素、酸化タンタル等の無機保護膜からなる。銅基板61は、水平方向に延在されて、一端が貫通電極55の上端に接続されるとともに、他端が上述のフレキシブル基板4に接続されている(図3参照)。また、保護層60には、インレット512と連通する貫通孔601がZ方向へ形成されている。
【0073】
銅基板61及び貫通電極55は、例えば銅製とすることができるが、これに限定されるものではなく、アルミ等の他の金属製としてもよい。
【0074】
ここで、本実施形態では、連通流路312(絞り部312Aを含む)、貫通孔321、401、インレット512及び貫通孔601は、圧力室311に溶液を供給する流路を構成しており、共通液室3と圧力室311とを連通する個別流路70を構成している。このうち、インレット512と連通流路312Aは、上述のように、個別流路70において絞り部となっている。なお、個別流路70は、複数の層部材(流路形成部材)を接着剤Aを介して積層することにより形成されているため、接着剤Aの一部が個別流路70に露出しており、且つ露出した接着剤は保護膜で覆われていない(図5の点線で囲んだ部分)。
【0075】
以上の構成を具備するインクジェットヘッド1では、共通液室3内の上記溶液が個別流路70を通じて圧力室311に供給される(図4の矢印参照)。そして、ドライバー5からの駆動信号に応じて、フレキシブル基板4、銅基板61、貫通電極55及びアルミ基板56を通じて電極421、422間に電圧が印加される。それにより、電極421、422に挟まれた圧電素子42が振動板32とともに変形し、圧力室311内の上記溶液が押し出されてノズル11から吐出される。つまり、圧電素子42への駆動信号の印加によって圧力室311の容積を膨張又は収縮させて、圧力室311内の溶液をノズル11から吐出させる。
【0076】
なお、本実施形態では、インターポーザー51の流路は、インレット512に限定されるものではなく、図3に点線で示したテーパー形状(略円錐状)のインレット513等としてもよい。インレット513は、Z方向のノズル側に向かうにつれて、XY平面の開口面積が小さくなる構造を有し、貫通孔401の開口面積より小さい。
【0077】
次に、ドライバー5による駆動信号波形について説明する。
【0078】
[ドライバー5による駆動信号波形]
上記の通り、ドライバー5は、圧電素子42を変形させるための駆動信号を、電極421、422間(駆動電極)に印加する。
【0079】
ドライバー5から駆動電極に与えられる駆動信号は、圧電素子42に印加する電位のうち非駆動時のものを基準電位、基準電位と比べて圧力室311の容積を膨張させる変位を生じさせる電位を膨張電位、基準電位と比べて圧力室311の容積を収縮させる変位を生じさせる電位を収縮電位としたとき、基準電位から膨張電位を経て基準電位に戻る膨張パルスと、基準電位から収縮電位を経て基準電位に戻る収縮パルスとをこの順に連続して印加する駆動信号波形要素(以下、「DRR波形要素A」ともいう)を1つ以上含む。このような駆動信号波形要素を1以上含む駆動信号波形により液滴の吐出を行うことにより、溶液の粘度が高くても安定して吐出させることができる。
【0080】
なお、基準電位は0V(電源OFF時の電位)とは限らず、非駆動時の電位であればよい。また、膨張パルスと収縮パルスとを連続して印加するとは、2つのパルス間に基準電位を維持する区間は含まないことを意味する。つまり、膨張パルスから収縮パルスに移行するときに基準電位を通過するのみであり、維持しない。
【0081】
図6A図6F及び図7A図7Dは、駆動信号の例を示す図である。このうち、図6A図6Fは、本実施形態の駆動信号波形に該当する例であり、図7A図7Dは、本実施形態の駆動信号波形に該当しない例である。各図は、1つの周期の波形の例を示す。また、Vsは基準電位を示し、Vsより上側が圧力室311の容積を膨張させる電位、基準電位より下側が圧力室311の容積を収縮させる電位を示す。波形図のスタート電位は、いずれも基準電位Vsを示す。
【0082】
DRR波形要素Aにおいて、膨張パルスPhと収縮パルスPlは、それぞれの該当区間内において連続的に電位が変化するスロープ部を含んでもよいし(図6A参照)、電位を維持する維持部を含んでもよい(図6B参照)。また、膨張パルスPhと収縮パルスPlは、それぞれの該当区間内において電位の異なる複数の維持部を含んでもよい(図6C参照)。また、DRR波形要素Aは、矩形波であってもよいし、非矩形波であってもよいし、これらを組み合わせたものであってもよい。また、一のDRR波形要素A1、A3の膨張電位や収縮電位は、他のDRR波形要素A2の膨張電位や収縮電位と異なってもよい(図6E参照)。但し、膨張パルス内で収縮電位になることはなく、収縮パルス内で膨張電位になることはない。
【0083】
また、駆動信号波形は、上記したDRR波形要素Aを1以上、一続きに含んでいればよく、DRR波形要素A以外の波形要素Bをさらに含んでもよい(図6D図6F参照)。例えば、膨張パルスPhと収縮パルスPlがこの順に連続する区間(DRR波形要素A)の後、収縮パルスPlと膨張パルスPhがこの順に連続する区間(波形要素B)がさらに存在してもよい(図6D参照)。また、収縮パルスと膨張パルスがこの順に連続する区間(波形要素B)があっても、その後に膨張パルスと収縮パルスがこの順に連続する区間(DRR波形要素A)が存在していればよい(図6F参照)。
【0084】
但し、上記したDRR波形要素Aによって溶液を吐出するものとする。具体的には、(膨張パルス後に)収縮パルスを印加することにより振動板32が変形し、圧力室311の容積が収縮して液滴を吐出するようにする。そのため、駆動電圧の変化量、例えば膨張電位(V)と収縮電位(V)の差は、液滴を吐出できる程度以上とする。また、圧力室311における溶液の圧力波の固有振動周期である音響共振周期の1/2をALとしたとき、スロープ部や維持部を含む膨張パルス及び収縮パルスの時間は、吐出性をより高める観点では、それぞれ0.9AL以上1.1AL以下とすることができる。音響共振周期とは、電極421、422間(駆動電極)に矩形波の駆動信号を印加した際に吐出される液滴の速度を測定し、矩形波の電圧値を一定にして矩形波のパルス幅を変化させたときに、液滴の飛翔速度が最大になるパルス幅を2倍にした値である。
【0085】
なお、収縮パルスから膨張パルスに移行する駆動信号波形(図7A参照)や、膨張パルスと収縮パルスの間に基準電位で維持する区間が存在する駆動信号波形(図7B参照)は、上記駆動信号波形には該当しない。また、基準電位同士の間が膨張パルスのみであり、収縮パルスを含まない駆動信号波形(図7C参照)も上記駆動信号波形には該当しない。
【0086】
なお、図6A図6F及び図7A図7Dは、基準電位に対して上側が膨張、下側が収縮を前提とした波形を示しているが、これに限らない。例えば、ヘッドの種類によっては基準電位に対して下側が膨張、上側が収縮となる場合がある。その場合は、これらの図の波形の上下は逆となる。
【0087】
3.塗布方法
次に、本実施形態の塗布方法について説明する。本実施形態では、上記溶液を、上記駆動信号波形を用いてインクジェットヘッド1のノズル11から吐出させる。それにより、溶液を被塗布物に塗布する。
【0088】
被塗布物の種類は特に限定されない。例えばペロブスカイト太陽電池を製造する場合、被塗布物としては、基板、電極及び電子輸送層又は正孔輸送層を有する積層体を用いることができる。そして、積層体の電子輸送層又は正孔輸送層上に、上記溶液をインクジェットヘッド1のノズルから吐出させる。
【0089】
具体的には、制御部500(図1参照)がドライバー5を駆動して、ドライバー5が電極421、422間(駆動電極)に駆動信号を印加する。例えば、図6Aに示すような膨張パルスが印加されると、圧電素子42と共に振動板32が変形して、圧力室311の容積を膨張させる。その状態から連続して収縮パルスが印加されると、圧電素子42と共に振動板32が変形し、圧力室311の容積を収縮させる。このような膨張パルスと収縮パルスをこの順に連続して行うことで、圧力室311の容積変化が大きくなるため、圧力室311内の溶液に十分な圧力を付与できる。それにより、高粘度の溶液であっても、圧力室311内の溶液の安定に吐出させることができる。そのため、液滴の不吐出や軌道ズレによる着弾ズレを防ぐことができる。
【0090】
一方で、このような駆動信号波形を用いて溶液を吐出させる場合、圧力室311内の圧力変動が大きくなる。
【0091】
特にインクジェットヘッド1の流路(図4の個別流路70)は、上記したように、流路形成部材を接着剤Aを介して積層することにより形成されている。そのため、接着剤Aの一部が個別流路70に露出しており、且つ露出した接着剤Aは保護膜で覆われていない(図5参照)。そのため、露出した接着剤Aが、吐出される溶液に曝されやすい。特に接着剤AのSP値と溶液に含まれる所定の溶剤のSP値との差分の絶対値が例えば4(cal/cm)1/2以下であると、溶液の吐出を続けるうちに、接着剤Aが溶剤に溶け出してノズルやその近傍に付着しやすい。そのため、吐出異状(不吐出、吐出軌道の異常)や流路形成部材内部への溶液のリークによる配線のショート等のトラブルをより生じやすくなる。つまり、接着剤AのSP値と上記溶剤のSP値の差分の絶対値が4(cal/cm)1/2以下であると、短期間のヘッド使用でもトラブルの発生頻度が顕著に高くなる。そのため、上記のような駆動波形信号で圧電素子42を駆動した場合、溶液吐出時に個別流路70内を伝搬する圧力振動も特に大きくなるため、個別流路70に接する箇所で接着剤Aの溶け出しとそれに伴う上記トラブルが生じる頻度がより高まる傾向にある。
【0092】
これに対して本実施形態では、インクジェットヘッド1は、個別流路70に面し、振動板32と対向して配置されたダンパ20を有する(図3参照)。それにより、圧力室311内の圧力変動が、個別流路70を介して共通液室3に伝播するのを抑制することができる。それにより、吐出液滴速度のバラつきや、それによる着弾ズレを防ぐことができる。特に、溶液を吐出する時に、接着剤Aが個別流路70に接する箇所に伝搬する圧力振動が抑制されるため、接着剤Aの溶け出しやそれに伴う上記したトラブルを抑制することができる。
【0093】
4.ペロブスカイト太陽電池の製造方法
上記塗布方法は、ペロブスカイト層の形成方法やそれを用いた各種デバイスの製造方法に適用できる。以下、上記塗布方法を用いたペロブスカイト太陽電池の製造方法について、図1を参照しながら説明する。
【0094】
ペロブスカイト太陽電池の製造方法は、例えば基板、電極及び電子輸送層の積層体を準備する工程と、積層体上にペロブスカイト層を形成する工程とを含む。
【0095】
1)積層体を準備する工程
積層体としては、例えば光透過性の基板上に、電極及び電子輸送層を順次形成したものを用いることができる。
【0096】
2)ペロブスカイト層を形成する工程
次いで、積層体上にペロブスカイト層を形成する。例えば、積層体上に、ペロブスカイト化合物を含む上記溶液を上記塗布方法により塗布し、必要に応じて塗膜に貧溶媒を塗布する工程や、塗膜を乾燥又はアニール処理する工程をさらに行ってもよい。
【0097】
溶液を塗布する工程では、例えば図1において、上流側のラインヘッド310のインクジェットヘッドから上記塗布方法により上記溶液を吐出させて、積層体の電子輸送層上に塗布する。
【0098】
貧溶媒を塗布する工程では、例えば下流側のラインヘッド310のインクジェットヘッドから貧溶媒を吐出させて、上記溶液の塗膜に塗布する。貧溶媒は、上記溶液に使用される貧溶媒と同様のものを使用することができる。
【0099】
塗膜を乾燥又はアニール処理する工程では、得られた塗膜を、例えば加熱部320で加熱して乾燥させて、ペロブスカイト層を形成する。乾燥又はアニール工程は、塗布工程後又は貧溶媒を滴下後、速やかに行うことが好ましい。アニール処理する工程では、例えば溶媒蒸気を含む密閉系にて、段階的に塗膜を加熱することが好ましい。
【0100】
なお、2種類の前駆体溶液を用いる場合(2プロセス法)、例えば無機金属ハロゲン化物を含む第1溶液を上流側のラインヘッド310-1から吐出した後、有機アミンハロゲン化物を含む第2溶液を下流側のラインヘッド310-2から吐出してもよい。そして、加熱部320で加熱することで前駆体を結晶化させて、ペロブスカイト化合物を含む塗膜(ペロブスカイト層)を形成してもよい。
【0101】
3)他の工程
得られたペロブスカイト層上に正孔輸送層を形成する工程、背面電極を形成する工程等をさらに行ってもよい。それにより、光透過性基板、電極、電子輸送層、ペロブスカイト層、正孔輸送層、背面電極を有する素子を有するペロブスカイト太陽電池を製造することができる。なお、ペロブスカイト太陽電池の素子の構造はこの構造に限られない。
【0102】
また、積層体として基板、電極及び正孔輸送層の積層体を用いる場合、積層体の正孔輸送層上にベロブスカイト層を形成する工程、ペロブスカイト層上に電子輸送層を形成する工程とを行ってもよい。
【0103】
5.変形例
なお、上記実施形態では、インクジェットヘッド1の圧力室311が隔壁部31-2と圧力室層31との間で形成される例を示したが、これに限定されない。
【0104】
図8は、変形例に係るインクジェットヘッド1の一部を拡大した模式的な拡大断面図である。図8に示すように、例えば、隔壁部31-2と振動板32との間で囲まれる空間を圧力室311としてもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、圧力室311に溶液を供給する流路(図4では個別流路70)が保護基板40、配線層50及び保護層60を貫通する部分(貫通孔401、601、インレット512、513)を含むが、これに限定されない。要は、個別流路70は、共通液室3(又は共通流路)から圧力室311に溶液を供給するものであればよく、例えば圧力室層30の側面から直接、圧力室311に溶液を供給する構成としてもよい。その場合、保護基板40及び配線層50を貫通する部分(貫通孔401、インレット512、513、貫通孔601)は不要となる。
あるいは、図4の連通流路312のうち、絞り部312Aとその下流側(例えば、隔壁31-1とダンパ20の間、隔壁部31-1と31-2との間、隔壁部31-2と振動板32との間)を個別流路70とし、絞り部312Aの上流側とそれと連通する貫通孔401を共通液室(又は共通流路)としてもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、塗布装置100として、ラインヘッドを用いる例を説明したが、これに限定されない。例えば、記録媒体の搬送方向に対して直交する方向にインクジェットヘッドを走査することによって溶液を塗布するスキャン方式の塗布装置としてもよい。また、上記実施形態では、ラインヘッドを2つ有する例を示したが、これに限定されず、使用する溶液の種類の数に応じて適宜変更でき、1つだけであってもよいし、3以上あってもよい。また、上記実施形態では、インクジェットヘッド1から吐出した溶液を加熱する加熱部320を有する例を示したが、これに限定されず、乾燥方法に応じて省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明によれば、ペロブスカイト化合物等を含む溶液をインクジェット法により塗布することができ、且つ吐出不良を抑制できる溶液の塗布方法、及びそれに用いるインクジェットヘッド及び塗布装置が提供される。
【符号の説明】
【0108】
1 インクジェットヘッド
2 積層部材
3 共通液室
4 フレキシブル基板
5 ドライバー
6 共通液室形成部材
10 ノズルプレート層
11 ノズル
12 基材部
13 撥液層
14 空洞部
20 ダンパ(弾性部材)
30 ボディプレート層
31 圧力室層
31-1、31-2 隔壁部
32 振動板
40 保護基板
41 空間部
42 圧電素子
50 配線層
51 インターポーザー
52、53 絶縁層
55 貫通電極
56 アルミ基板
60 保護層
61 銅基板
70 個別流路
100 塗布装置
200 搬送部
201、321、401、601 貫通孔
300 溶液塗布部
311 圧力室
312 連通流路
312A 絞り部
421、422 電極
512 インレット
400 溶液供給部
500 制御部
A 接着剤
【要約】
ペロブスカイト太陽電池用材料と溶剤とを含む溶液をインクジェットヘッドのノズルから吐出させる塗布方法であって、前記溶剤として、比誘電率が30以上の非プロトン性極性溶剤を含む溶剤を用いる。前記インクジェットヘッドは、振動板(32)と、振動板(32)の動作によって容積が膨張又は収縮する圧力室(311)と、前記圧力室(311)に前記溶液を供給する流路(312)と、前記流路(312)に面し、前記振動板(32)と対向して配置された弾性部材(20)とを有する。前記駆動信号として、膨張パルスと収縮パルスとをこの順に連続して印加する駆動信号波形要素を1つ以上含む駆動信号を用いる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8