(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-24
(45)【発行日】2025-10-02
(54)【発明の名称】車両用シート及び車両用シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/22 20060101AFI20250925BHJP
B60N 2/68 20060101ALI20250925BHJP
A47C 1/024 20060101ALI20250925BHJP
【FI】
B60N2/22
B60N2/68
A47C1/024
(21)【出願番号】P 2022008381
(22)【出願日】2022-01-24
【審査請求日】2024-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】石原 慶隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 風太
(72)【発明者】
【氏名】大西 崇弘
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-325260(JP,A)
【文献】特開2003-189962(JP,A)
【文献】特開2007-143806(JP,A)
【文献】米国特許第6767068(US,B1)
【文献】独国特許出願公開第102006009715(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/22
B60N 2/68
A47C 1/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッション及びシートバックと、
前記シートクッションに対する前記シートバックの傾動を制御する一方のリクライニングユニット及び他方のリクライニングユニットと、
前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットを同期回動するように連結するための長尺状の連結部材と、
を備える車両用シートであって、
前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットは、
シャフト及びロック用部材と、
前記シートクッションに取り付けられる第1のプレートと、
前記シートバックに取り付けられる第2のプレートと、
をそれぞれ備えて、
回動する前記シャフトによって前記ロック用部材が押し回されて相対回動可能な状態になった前記第1のプレートと前記第2のプレートとが前記シャフトの回動に応じて当該シャフトの回動中心を基準に相対回動することで、前記シートバックが前記シートクッションに対して傾動し、
前記シャフトの回動中心が所定の回動軸線上に位置して前記シャフトの前記連結部材を支持するそれぞれの支持部が互いに前記所定の回動軸線に沿って対向するように配置され、
前記支持部は、前記回動中心から所定の角度及び所定の距離にてオフセットした位置に前記連結部材の端部が支持されるように形成され、
前記連結部材は、前記所定の回動軸線に沿って一方の端部が前記一方のリクライニングユニットにおける前記シャフトの前記支持部に支持された状態で溶接固定されるとともに他方の端部が前記他方のリクライニングユニットにおける前記シャフトの前記支持部に支持された状態で溶接固定されることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
シートクッション及びシートバックと、
前記シートクッションに対する前記シートバックの傾動を制御する一方のリクライニングユニット及び他方のリクライニングユニットと、
前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットを同期回動するように連結するための長尺状の連結部材と、
を備える車両用シートであって、
前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットは、
シャフト及びロック用部材と、
前記シートクッションに取り付けられる第1のプレートと、
前記シートバックに取り付けられる第2のプレートと、
をそれぞれ備えて、
回動する前記シャフトによって前記ロック用部材が押し回されて相対回動可能な状態になった前記第1のプレートと前記第2のプレートとが前記シャフトの回動に応じて当該シャフトの回動中心を基準に相対回動することで、前記シートバックが前記シートクッションに対して傾動し、
前記一方のリクライニングユニットにおける前記シャフトは、当該シャフトの回動中心が所定の回動軸線上に位置して、前記所定の回動軸線に沿う前記連結部材が前記シャフトの回動中心から所定の角度及び所定の距離にてオフセットするように前記連結部材の一方の端部と一体成形され、
前記他方のリクライニングユニットにおける前記シャフトは、当該シャフトの回動中心が前記所定の回動軸線上に位置して、前記シャフトの回動中心から前記所定の角度及び前記所定の距離にてオフセットした状態の前記連結部材の他方の端部を支持する支持部を備え、
前記連結部材は、前記所定の回動軸線に沿って前記他方の端部が前記他方のリクライニングユニットにおける前記シャフトの前記支持部に支持された状態で溶接固定されることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
シートクッション及びシートバックと、
前記シートクッションに対する前記シートバックの傾動を制御する一方のリクライニングユニット及び他方のリクライニングユニットと、
前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットを同期回動するように連結するための長尺状の連結部材と、
を備える車両用シートの製造方法であって、
前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットは、
シャフト及びロック用部材と、
前記シートクッションに取り付けられる第1のプレートと、
前記シートバックに取り付けられる第2のプレートと、
をそれぞれ備えて、
回動する前記シャフトによって前記ロック用部材が押し回されて相対回動可能な状態になった前記第1のプレートと前記第2のプレートとが前記シャフトの回動に応じて当該シャフトの回動中心を基準に相対回動することで、前記シートバックが前記シートクッションに対して傾動し、
前記連結部材を支持する前記シャフトの支持部は、前記回動中心から所定の角度及び所定の距離にてオフセットした位置に前記連結部材の端部が支持されるように形成され、
それぞれの前記シャフトの回動中心が所定の回動軸線上に位置してそれぞれの前記支持部が互いに前記所定の回動軸線に沿って対向するように前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットを配置するステップと、
前記所定の回動軸線に沿った状態の前記連結部材を、一方の端部にて前記一方のリクライニングユニットにおける前記シャフトの前記支持部に支持させるとともに、他方の端部にて前記他方のリクライニングユニットにおける前記シャフトの前記支持部に支持させるステップと、
前記連結部材を前記支持部に押し付けた状態で、前記一方の端部及び前記他方の端部をそれぞれ前記支持部に溶接固定するステップと、
を備えることを特徴とする車両用シートの製造方法。
【請求項4】
シートクッション及びシートバックと、
前記シートクッションに対する前記シートバックの傾動を制御する一方のリクライニングユニット及び他方のリクライニングユニットと、
前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットを同期回動するように連結するための長尺状の連結部材と、
を備える車両用シートの製造方法であって、
前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットは、
シャフト及びロック用部材と、
前記シートクッションに取り付けられる第1のプレートと、
前記シートバックに取り付けられる第2のプレートと、
をそれぞれ備えて、
回動する前記シャフトによって前記ロック用部材が押し回されて相対回動可能な状態になった前記第1のプレートと前記第2のプレートとが前記シャフトの回動に応じて当該シャフトの回動中心を基準に相対回動することで、前記シートバックが前記シートクッションに対して傾動し、
前記一方のリクライニングユニットにおける前記シャフトは、当該シャフトの回動中心が所定の回動軸線上に位置して、前記所定の回動軸線に沿う前記連結部材が前記シャフトの回動中心から所定の角度及び所定の距離にてオフセットするように前記連結部材の一方の端部と一体成形され、
それぞれの前記シャフトの回動中心が前記所定の回動軸線上に位置して、前記所定の回動軸線に沿った状態の前記連結部材を他方の端部にて前記他方のリクライニングユニットにおける前記シャフトの支持部に支持させるように前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットを配置するステップと、
前記連結部材を前記支持部に押し付けた状態で、前記他方の端部を前記支持部に溶接固定するステップと、
を備えることを特徴とする車両用シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッションに対してシートバックを傾動させる一対のリクライニングユニットを備える車両用シート及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シートクッションに対してシートバックを傾動させる一対のリクライニングユニットを備える車両用シートとして、下記特許文献1に開示される乗物用シートが知られている。この乗物用シートは、左右反転した構成となる右側リクライニングユニット及び左側リクライニングユニットとコネクティングロッド(長尺状の連結部材)とを備え、右側リクライニングユニットのヒンジピン(シャフト)と、左側リクライニングユニットのヒンジピンとがコネクティングロッドによって連結されることで、右側リクライニングユニット及び左側リクライニングユニットが同期してロックオフ等するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、左右のリクライニングユニットのそれぞれのシャフトと長尺状の連結部材とを連結する作業工程では、それぞれのシャフトを所定の回動位置(例えば、ロックオフ方向へ回動させた位置)まで回動させて、それぞれの回動中心軸が一致するように保持した状態で、各部材を連結する溶接作業等が行われる。シャフトの回動位置を合わせることなく連結すると、左右のリクライニングユニットでのロックオフのタイミングがズレてしまうからである。
【0005】
しかしながら、上述のようにシャフトの回動位置を合わせて溶接するような作業工程では、それぞれのシャフトの回動位置を合わせるための治具など、設備が煩雑になり、生産タクトの向上を図り難いという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、連結作業を煩雑にすることなく両リクライニングユニットの同期性の向上を図り得る構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の発明は、
シートクッション及びシートバックと、
前記シートクッションに対する前記シートバックの傾動を制御する一方のリクライニングユニット及び他方のリクライニングユニットと、
前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットを同期回動するように連結するための長尺状の連結部材と、
を備える車両用シートであって、
前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットは、
シャフト及びロック用部材と、
前記シートクッションに取り付けられる第1のプレートと、
前記シートバックに取り付けられる第2のプレートと、
をそれぞれ備えて、
回動する前記シャフトによって前記ロック用部材が押し回されて相対回動可能な状態になった前記第1のプレートと前記第2のプレートとが前記シャフトの回動に応じて当該シャフトの回動中心を基準に相対回動することで、前記シートバックが前記シートクッションに対して傾動し、
前記シャフトの回動中心が所定の回動軸線上に位置して前記シャフトの前記連結部材を支持するそれぞれの支持部が互いに前記所定の回動軸線に沿って対向するように配置され、
前記支持部は、前記回動中心から所定の角度及び所定の距離にてオフセットした位置に前記連結部材の端部が支持されるように形成され、
前記連結部材は、前記所定の回動軸線に沿って一方の端部が前記一方のリクライニングユニットにおける前記シャフトの前記支持部に支持された状態で溶接固定されるとともに他方の端部が前記他方のリクライニングユニットにおける前記シャフトの前記支持部に支持された状態で溶接固定されることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の発明は、
シートクッション及びシートバックと、
前記シートクッションに対する前記シートバックの傾動を制御する一方のリクライニングユニット及び他方のリクライニングユニットと、
前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットを同期回動するように連結するための長尺状の連結部材と、
を備える車両用シートであって、
前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットは、
シャフト及びロック用部材と、
前記シートクッションに取り付けられる第1のプレートと、
前記シートバックに取り付けられる第2のプレートと、
をそれぞれ備えて、
回動する前記シャフトによって前記ロック用部材が押し回されて相対回動可能な状態になった前記第1のプレートと前記第2のプレートとが前記シャフトの回動に応じて当該シャフトの回動中心を基準に相対回動することで、前記シートバックが前記シートクッションに対して傾動し、
前記一方のリクライニングユニットにおける前記シャフトは、当該シャフトの回動中心が所定の回動軸線上に位置して、前記所定の回動軸線に沿う前記連結部材が前記シャフトの回動中心から所定の角度及び所定の距離にてオフセットするように前記連結部材の一方の端部と一体成形され、
前記他方のリクライニングユニットにおける前記シャフトは、当該シャフトの回動中心が前記所定の回動軸線上に位置して、前記シャフトの回動中心から前記所定の角度及び前記所定の距離にてオフセットした状態の前記連結部材の他方の端部を支持する支持部を備え、
前記連結部材は、前記所定の回動軸線に沿って前記他方の端部が前記他方のリクライニングユニットにおける前記シャフトの前記支持部に支持された状態で溶接固定されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3の発明は、
シートクッション及びシートバックと、
前記シートクッションに対する前記シートバックの傾動を制御する一方のリクライニングユニット及び他方のリクライニングユニットと、
前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットを同期回動するように連結するための長尺状の連結部材と、
を備える車両用シートの製造方法であって、
前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットは、
シャフト及びロック用部材と、
前記シートクッションに取り付けられる第1のプレートと、
前記シートバックに取り付けられる第2のプレートと、
をそれぞれ備えて、
回動する前記シャフトによって前記ロック用部材が押し回されて相対回動可能な状態になった前記第1のプレートと前記第2のプレートとが前記シャフトの回動に応じて当該シャフトの回動中心を基準に相対回動することで、前記シートバックが前記シートクッションに対して傾動し、
前記連結部材を支持する前記シャフトの支持部は、前記回動中心から所定の角度及び所定の距離にてオフセットした位置に前記連結部材の端部が支持されるように形成され、
それぞれの前記シャフトの回動中心が所定の回動軸線上に位置してそれぞれの前記支持部が互いに前記所定の回動軸線に沿って対向するように前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットを配置するステップと、
前記所定の回動軸線に沿った状態の前記連結部材を、一方の端部にて前記一方のリクライニングユニットにおける前記シャフトの前記支持部に支持させるとともに、他方の端部にて前記他方のリクライニングユニットにおける前記シャフトの前記支持部に支持させるステップと、
前記連結部材を前記支持部に押し付けた状態で、前記一方の端部及び前記他方の端部をそれぞれ前記支持部に溶接固定するステップと、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4の発明は、
シートクッション及びシートバックと、
前記シートクッションに対する前記シートバックの傾動を制御する一方のリクライニングユニット及び他方のリクライニングユニットと、
前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットを同期回動するように連結するための長尺状の連結部材と、
を備える車両用シートの製造方法であって、
前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットは、
シャフト及びロック用部材と、
前記シートクッションに取り付けられる第1のプレートと、
前記シートバックに取り付けられる第2のプレートと、
をそれぞれ備えて、
回動する前記シャフトによって前記ロック用部材が押し回されて相対回動可能な状態になった前記第1のプレートと前記第2のプレートとが前記シャフトの回動に応じて当該シャフトの回動中心を基準に相対回動することで、前記シートバックが前記シートクッションに対して傾動し、
前記一方のリクライニングユニットにおける前記シャフトは、当該シャフトの回動中心が所定の回動軸線上に位置して、前記所定の回動軸線に沿う前記連結部材が前記シャフトの回動中心から所定の角度及び所定の距離にてオフセットするように前記連結部材の一方の端部と一体成形され、
それぞれの前記シャフトの回動中心が前記所定の回動軸線上に位置して、前記所定の回動軸線に沿った状態の前記連結部材を他方の端部にて前記他方のリクライニングユニットにおける前記シャフトの支持部に支持させるように前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットを配置するステップと、
前記連結部材を前記支持部に押し付けた状態で、前記他方の端部を前記支持部に溶接固定するステップと、
を備えることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、一方のリクライニングユニット及び他方のリクライニングユニットは、それぞれのシャフトの回動中心が所定の回動軸線上に位置して当該シャフトの連結部材を支持するそれぞれの支持部が互いに所定の回動軸線に沿って対向するように配置される。支持部は、回動中心から所定の角度及び所定の距離にてオフセットした位置に連結部材の端部が支持されるように形成される。連結部材は、上記所定の回動軸線に沿って、一方の端部が一方のリクライニングユニットにおけるシャフトの支持部に支持された状態で、溶接固定されるとともに他方の端部が他方のリクライニングユニットにおけるシャフトの支持部に支持された状態で溶接固定される。
【0012】
これにより、連結部材は、それぞれシャフトの支持部によって、所定の回動軸線から所定の角度及び所定の距離にてオフセットした位置に支持された状態で溶接固定される。両支持部は上記所定の回動軸線に沿って対向するように配置されるため、両端部がそれぞれ支持部に支持されつつ溶接されていない連結部材を支持部に押し付けることで、シャフトがロック用部材を押し回すための位置まで回動した状態になる。このため、上述のように押し付けた連結部材の端部を支持部に溶接するだけで、両シャフトの回動位置を合わせるように溶接固定できるので、連結作業を煩雑にすることなく両リクライニングユニットの同期性の向上を図ることができる。
【0013】
請求項2の発明では、一方のリクライニングユニットにおけるシャフトは、当該シャフトの回動中心が所定の回動軸線上に位置して、所定の回動軸線に沿う連結部材がシャフトの回動中心から所定の角度及び所定の距離にてオフセットするように連結部材の一方の端部と一体成形される。他方のリクライニングユニットにおけるシャフトは、当該シャフトの回動中心が所定の回動軸線上に位置して、シャフトの回動中心から所定の角度及び所定の距離にてオフセットした状態の連結部材の他方の端部を支持する支持部を備える。連結部材は、所定の回動軸線に沿って他方の端部が他方のリクライニングユニットにおけるシャフトの支持部に支持された状態で溶接固定される。
【0014】
このようにしても、上述のように押し付けた連結部材の他方の端部を他方のリクライニングユニットにおけるシャフトの支持部に溶接するだけで、両シャフトの回動位置を合わせるように溶接固定できるので、連結作業を煩雑にすることなく両リクライニングユニットの同期性の向上を図ることができる。
【0015】
請求項3の発明では、それぞれのシャフトの回動中心が所定の回動軸線上に位置して当該シャフトの連結部材を支持するそれぞれの支持部が所定の回動軸線に沿って対向するように一方のリクライニングユニット及び他方のリクライニングユニットを配置し、所定の回動軸線に沿った状態の連結部材を、一方の端部にて一方のリクライニングユニットにおけるシャフトの支持部に支持させるとともに、他方の端部にて他方のリクライニングユニットにおけるシャフトの支持部に支持させ、連結部材を支持部に押し付けた状態で、一方の端部及び他方の端部をそれぞれ支持部に溶接固定する。
【0016】
これにより、上述のように押し付けた連結部材の端部を支持部に溶接するだけで、両シャフトの回動位置を合わせるように溶接固定できるので、連結作業を煩雑にすることなく両リクライニングユニットの同期性の向上を図ることができる。
【0017】
請求項4の発明では、一方のリクライニングユニットにおけるシャフトは、当該シャフトの回動中心が所定の回動軸線上に位置して、所定の回動軸線に沿う連結部材がシャフトの回動中心から所定の角度及び所定の距離にてオフセットするように連結部材の一方の端部と一体成形される。そして、それぞれのシャフトの回動中心が所定の回動軸線上に位置して、所定の回動軸線に沿った状態の連結部材を他方の端部にて他方のリクライニングユニットにおけるシャフトの支持部に支持させるように一方のリクライニングユニット及び他方のリクライニングユニットを配置して、連結部材を支持部に押し付けた状態で、他方の端部を支持部に溶接固定する。
【0018】
このようにしても、上述のように押し付けた連結部材の他方の端部を他方のリクライニングユニットにおけるシャフトの支持部に溶接するだけで、両シャフトの回動位置を合わせるように溶接固定できるので、連結作業を煩雑にすることなく両リクライニングユニットの同期性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の車両用シートの構成概要を示す側面図である。
【
図4】
図3に示すX1-X1線相当の切断面から第2リクライニングユニットを見た図である。
【
図5】第1リクライニングユニットの断面図である。
【
図6】
図5に示すX2-X2線相当の切断面による断面図である。
【
図7】
図5に示すX3-X3線相当の切断面による断面図である。
【
図8】第1リクライニングユニットのシャフトの斜視図である。
【
図9】
図9(A)は、
図8のシャフトを支持部側から見た図であり、
図9(B)は、
図8のシャフトの平面図である。
【
図10】第2リクライニングユニットのシャフトの斜視図である。
【
図11】
図11(A)は、連結部材が支持部に押し付けられていない溶接前の状態を説明する説明図であり、
図11(B)は、連結部材が支持部に押し付けられて溶接される状態を説明する説明図である。
【
図12】第2実施形態に係る車両用シートの要部となるリクライニングユニットの断面図である。
【
図13】第3実施形態に係る車両用シートの要部となるシャフト及び連結部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る車両用シートの一実施形態について図を参照して説明する。
図1に示すように、本発明の車両用シート10は、シートクッション11及びシートバック12とリクライニング装置20とを主な構成要素とし、シートクッション11にはシートブラケット(下側ブラケット)11aが、シートバック12にはシートバックブラケット(上側ブラケット)12aがそれぞれ固定されている。
【0021】
下側ブラケット11a及び上側ブラケット12aは、リクライニング装置20の左右一対のラウンドリクライニングユニットの相対回動する部位にそれぞれ固定されることで、互いに相対回動可能に連結されている。これにより、シートクッション11に対するシートバック12の傾動角度の調整が可能となる。
【0022】
図1~
図3に示すように、リクライニング装置20は、左右一対のラウンドリクライニングユニット(以下、第1リクライニングユニット21a及び第2リクライニングユニット21bともいう)と、第1リクライニングユニット21a及び第2リクライニングユニット21bを同期回動するように連結するための長尺状の連結部材22と、手動操作用のリクライニング操作レバー23とを備えている。なお、便宜上、
図2及び
図3では、リクライニング操作レバー23の図示を省略している。また、第1リクライニングユニット21aは、「一方のリクライニングユニット」の一例に相当し、第2リクライニングユニット21bは、「他方のリクライニングユニット」の一例に相当し得る。
【0023】
第1リクライニングユニット21aのシャフト24aと第2リクライニングユニット21bのシャフト24bとが連結部材22によって同期回動するように連結され、シャフト24aにリクライニング操作レバー23が組み付けられている。このため、リクライニング操作レバー23の操作に応じて、第1リクライニングユニット21a及び第2リクライニングユニット21bが同期するように動作する。
【0024】
具体的には、リクライニング操作レバー23を上方に引くとリクライニング装置20がアンロック状態となりシートバック12の傾動角度の調整が可能となる。ここで、シートバック12を後方に倒した
図1にて示す角度Aの範囲は、リクライニング操作レバー23から手指を離すとその時の角度位置にシートバック12がロックされる傾度調整範囲であり、シートバック12を前方に倒した
図1にて示す角度Bの範囲は、リクライニング操作レバー23から手指を離してもアンロックの状態が持続するロックフリー状態に対応する自由回動範囲である。
図1から判るように、シートバック12は、シートクッション11と接する前倒しの位置からシートクッション11とフラットになる後倒しの位置まで回動可能である。
【0025】
第1リクライニングユニット21a及び第2リクライニングユニット21bは、基本的に対照形状であるため、第1リクライニングユニット21aを例に説明する。
図2、
図3及び
図5に示すように、第1リクライニングユニット21aは、略円板状のベースプレート30と略お椀形状のギヤプレート40を重ね合わせてカバーブラケット50を組み付けることで、ベースプレート30及びギヤプレート40が相対回動可能に保持されるとともに軸方向への相対移動が抑制されるように構成されている。
【0026】
ベースプレート30とギヤプレート40の間にはキャビティ(空間)Cが形成される。このキャビティC内には、
図5~
図7に示すように、一対の第1ロックギヤ61と一対の第2ロックギヤ62の計4枚のロックギヤ、中央のカム70、2つの付勢部材80及び略円板状のカムレバー90等のロック、アンロックのための部材が配設されている。なお、便宜上、
図6及び
図7では、ギヤプレート40は内歯41近傍のみ図示して、カバーブラケット50の図示を省略している。
【0027】
ベースプレート30は、外部側の側面に複数の突起が形成されており、これら各突起を下側ブラケット11aの係合穴に係合させることで、当該下側ブラケット11aに取り付けられる。また、ベースプレート30には、ギヤプレート40側の側面に、各ロックギヤ61,62を半径方向に案内するための案内面が形成されている。なお、ベースプレート30は、シートクッション11に取り付けられる「第1のプレート」の一例に相当し得る。
【0028】
ギヤプレート40の内周面には、全周にわたって内歯41が形成されている。ギヤプレート40は、その背面(軸方向他側の面)に複数の突起が形成されており、これら各突起を上側ブラケット12aの係合穴に係合させることで、当該上側ブラケット12aに取り付けられる。
【0029】
また、ギヤプレート40の内周面には、内歯41と同軸的に形成された円弧状段部が180°間隔に2つ配置されている。当該円弧状段部は、上述したロックフリー状態を実現するためのもので、第1ロックギヤ61の突起61c(後述する)が内周側から当接する角度範囲が上記自由回動範囲に対応するように形成されている。なお、ギヤプレート40は、シートバック12に取り付けられる「第2のプレート」の一例に相当し得る。
【0030】
図6に示すように、両第1ロックギヤ61及び両第2ロックギヤ62の外周側には、ギヤプレート40の内歯41と噛合可能な外歯61a、62aがそれぞれ形成されている。各ロックギヤ61,62は、ベースプレート30の各案内面を利用して半径方向に摺動可能にガイドされるように組み付けられている。また、両第1ロックギヤ61のギヤプレート40側には、当該第1ロックギヤ61の半径方向移動を制御するために利用する突起61b,61cがそれぞれ形成されている。また、両第2ロックギヤ62のギヤプレート40側には、当該第2ロックギヤ62の半径方向移動を制御するために利用する突起62bがそれぞれ形成されている。
【0031】
可動ガイド37は、一方端から他方端に向かって漸次幅が狭くなるよう楔状に形成されており、第1ロックギヤ61とベースプレート30の案内面との間にて摺動可能にそれぞれ配置されている。両可動ガイド37には付勢部材80の一端を係合するための係合穴37aが形成されており、この係合穴37aに付勢部材80の一端を係合することで、当該付勢部材80によって両可動ガイド37がベースプレート30の内方向へとそれぞれ付勢されている。これにより、当該可動ガイド37は第1ロックギヤ61とベースプレート30の案内面との間に常に食い込んだ状態となり、これら第1ロックギヤ61とベースプレート30の案内面と可動ガイド37とが相互に緊合して(堅く合わさって)、各部材間における回動方向の隙間が消滅する。そのため、シートバック12の前後方向におけるガタが解消されることとなる。
【0032】
ベースプレート30の中央には、中心に嵌合用の貫通孔71が形成される板状のカム70が、回動可能に配設されている。カム70は、ロック解除方向への回動時に各ロックギヤ61,62に対して半径方向内側から当接することで外歯61a,62aをギヤプレート40の内歯41に噛合させるように形成されている。また、カム70には、両付勢部材80の他端がそれぞれ係合する2つの係合穴73とカムレバー90を組み付けるための2つの円柱状の突起74とが形成されている。
【0033】
図7に示すように、カム70は、2つの付勢部材80とそれぞれ係合することにより、ロック方向(
図6及び
図7にて時計方向)に強く付勢されている。これにより、カム70は、外周側のカム面にて各ロックギヤ61、62の内側端面に当接することで、上記両付勢部材80によるロック方向の付勢力により各ロックギヤ61、62を半径方向外側に強く付勢することとなる。
【0034】
カム70の貫通孔71には、シャフト24aの嵌合部25aが挿入され、このシャフト24aを回動させることにより両付勢部材80の付勢力に抗してカム70をロック解除方向(
図6及び
図7にて反時計方向)に回動させることができるようになっている。なお、カム70は、「ロック用部材」の一例に相当し得る。
【0035】
図7に示すように、カムレバー90には、カム70の両突起74にそれぞれ嵌合する貫通孔91と、2つのカム孔92及び2つのカム孔93とが設けられている。カムレバー90は、これら両貫通孔91と両突起74とをそれぞれ嵌合させ、両カム孔92に突起61bをそれぞれ挿通させ、両カム孔93に突起62bをそれぞれ挿通させた状態で、カム70のギヤプレート40側に組み付けられている。
【0036】
これにより、カムレバー90がカム70とともにロック解除方向に回動すると、カム孔92の内周縁が第1ロックギヤ61の突起61bにそれぞれ当接するとともにカム孔93の内周縁が両第2ロックギヤ62の突起62bにそれぞれ当接する。さらにカムレバー90がロック解除方向に回動すると、これら突起61b、突起62bが各カム孔92、93の内周縁により半径方向内側に付勢されて、各ロックギヤ61、62が半径方向内側に連動して移動することで、外歯61a,62aとギヤプレート40の内歯41との噛合が解除される。すなわち、カム70及びカムレバー90の回動状態に応じて、ロック状態及びロック解除状態が制御される。なお、カムレバー90は、付勢部材の付勢力に抗してカム70を回転駆動することで外歯61a,62aと内歯41との噛合を解除可能な「解除部材」の一例に相当し得る。
【0037】
図8及び
図9に示すように、シャフト24aは、嵌合部25a及び支持部26を有するように形成されている。嵌合部25aは、カム70の貫通孔71に対して回動中心が一致して嵌合するように形成され、その先端側は、ベースプレート30から外部に露出した状態でリクライニング操作レバー23を組み付けられるように形成されている。
【0038】
支持部26は、溶接時に連結部材22の端部を位置決めして支持するためのもので、嵌合部25aがカム70の貫通孔71に嵌合する際に、ギヤプレート40から外部に露出するように形成されている。支持部26は、4つの支持片が十字状に位置し、これら4つの支持片のうち隣り合う長短一対の支持片にて連結部材22の端部を挟持して支持するように形成されている(
図4参照)。各支持片は、どの長短一対の支持片でも上記回動中心から同じ所定の距離にてオフセットした位置に連結部材22の端部が支持されるように形成されている。なお、4つの支持片を有する支持部26は、回動中心から所定の角度及び所定の距離にてオフセットした位置に連結部材22の端部が支持されるように形成される「支持部」の一例に相当し得る。
【0039】
第2リクライニングユニット21bは、そのシャフト24bを除いて第1リクライニングユニット21aと基本的に対照形状に形成される。シャフト24bは、
図10に示すように、リクライニング操作レバー23が組み付けられない分だけ嵌合部25aよりも軸長を短くした嵌合部25bと上述した支持部26とを有するように形成されている。
【0040】
連結部材22は、長尺状のパイプ部材(円筒部材)によって構成されるもので、両端部が第1リクライニングユニット21aのギヤプレート40から露出するシャフト24aの支持部26と第2リクライニングユニット21bのギヤプレート40から露出するシャフト24bの支持部26とにそれぞれ溶接固定される。このような連結部材22の溶接固定によって、シャフト24aとシャフト24bとが同期回転するように連結されることで、第1リクライニングユニット21a及び第2リクライニングユニット21bでのロックタイミングとロック解除タイミングとが同期される。
【0041】
このように構成されることで、第1リクライニングユニット21a及び第2リクライニングユニット21bでは、回動するシャフト24a,24bによってロック用部材となるカム70が押し回されて相対回動可能な状態になったベースプレート30とギヤプレート40とがシャフト24a,24bの回動に応じて当該シャフト24a,24bの回動中心を基準にそれぞれ相対回動する。これにより、シートバック12がシートクッション11に対して傾動する。
【0042】
ここで、両支持部26を利用して連結部材22を溶接する製造工程(ステップ)について、
図11(A)(B)を参照して説明する。
まず、第1リクライニングユニット21a及び第2リクライニングユニット21bを、下側ブラケット11a及び上側ブラケット12aの対応部位に組み付ける。その際、それぞれのシャフト24a,24bの回動中心が所定の回動軸線L(
図3参照)上に位置してそれぞれの支持部26が互いに回動軸線Lに沿って対向するように(双方の各支持片が対称位置関係となるように)、第1リクライニングユニット21a及び第2リクライニングユニット21bを配置する(第1ステップ)。
【0043】
次に、
図11(A)に示すように、上述のように回動軸線Lに沿った状態の連結部材22を、一方の端部にて第1リクライニングユニット21aにおけるシャフト24aの支持部26に支持させるとともに、他方の端部にて第2リクライニングユニット21bにおけるシャフト24bの支持部26に支持させる(第2ステップ)。
【0044】
そして、両シャフト24a,24bをそれぞれロック方向に回動させるように連結部材22を支持部26に押し付けることで(
図11(B)の矢印参照)、第1リクライニングユニット21aのシャフト24aと第2リクライニングユニット21bのシャフト24bとがそれぞれロック位置まで回動してその回動が止まる。このように両シャフト24a,24bの回動が停止するまで連結部材22を支持部26に押し付けた状態で、一方の端部及び他方の端部をシャフト24a,24bのそれぞれの支持部26に溶接固定する(第3ステップ)。
【0045】
このように、連結部材22を両支持部26に押し付けた状態で両端部を溶接するので、第1リクライニングユニット21a及び第2リクライニングユニット21bの同期を目的とする両シャフト24a,24bの回動位置調整用の治具等を要することなく、溶接作業を実施することができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用シート10では、第1リクライニングユニット21a及び第2リクライニングユニット21bは、それぞれのシャフト24a,24bの回動中心が所定の回動軸線L上に位置してそれぞれの支持部26が互いに回動軸線Lに沿って対向するように配置される。支持部26は、回動中心から所定の角度及び所定の距離にてオフセットした位置に連結部材22の端部が支持されるように形成される。連結部材22は、回動軸線Lに沿って、一方の端部が第1リクライニングユニット21aにおけるシャフト24aの支持部26に支持された状態で溶接固定されるとともに他方の端部が第2リクライニングユニット21bにおけるシャフト24bの支持部26に支持された状態で溶接固定される。
【0047】
すなわち、本実施形態に係る車両用シート10は、
シートクッション及びシートバックと、
前記シートクッションに対する前記シートバックの傾動を制御する一方のリクライニングユニット及び他方のリクライニングユニットと、
前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットを同期回動するように連結するための長尺状の連結部材と、
を備える車両用シートであって、
前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットは、
前記シートクッション及び前記シートバックの一方に取り付けられるベースプレートと、
前記シートクッション及び前記シートバックの他方に取り付けられるとともに前記ベースプレートに対して相対回動可能に組み付けられて内歯を有するギヤプレートと、
前記ベースプレートに対して半径方向に摺動可能にガイドされるように組み付けられ、前記内歯と噛合可能な外歯を有するロックギヤと、
ロック解除方向への回動時に前記ロックギヤに対して半径方向内側から当接することで前記外歯を前記内歯に噛合させるカムと、
前記カムに対して回動中心が一致するように嵌合される嵌合部と前記ギヤプレートから外部に露出する支持部とを有するシャフトと、
前記外歯を前記内歯に噛合させる方向に前記カムを付勢する付勢部材と、
前記付勢部材の付勢力に抗して前記カムを回転駆動することで前記外歯と前記内歯との噛合を解除可能な解除部材と、
を備えて、それぞれの前記シャフトの回動中心が所定の回動軸線上に位置してそれぞれの前記支持部が互いに前記所定の回動軸線に沿って対向するように配置され、
前記支持部は、前記回動中心から所定の角度及び所定の距離にてオフセットした位置に前記連結部材の端部が支持されるように形成され、
前記連結部材は、前記所定の回動軸線に沿って一方の端部が前記一方のリクライニングユニットにおける前記シャフトの前記支持部に支持された状態で溶接固定されるとともに他方の端部が前記他方のリクライニングユニットにおける前記シャフトの前記支持部に支持された状態で溶接固定されることを特徴とする。
【0048】
これにより、連結部材22は、それぞれシャフト24a,24bの支持部26によって、回動軸線Lから所定の角度及び所定の距離にてオフセットした位置に支持された状態で溶接固定される。両支持部26は回動軸線Lに沿って対向するように配置されるため、両端部がそれぞれ支持部26に支持されつつ溶接されていない連結部材22をロック方向となる支持部26に押し付けることで、シャフト24a,24bがロック回動位置まで回動してさらに回動しない状態(ロック用部材となるカム70を押し回すための位置まで回動した状態)になる。このため、上述のように押し付けた連結部材22の端部を支持部26に溶接するだけで、両シャフト24a,24bの回動位置を合わせるように溶接固定できるので、連結作業を煩雑にすることなく両リクライニングユニット21a,21bの同期性の向上を図ることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る車両用シート10の製造方法としては、それぞれのシャフト24a,24bの回動中心が所定の回動軸線L上に位置してそれぞれの支持部26が回動軸線Lに沿って対向するように第1リクライニングユニット21a及び第2リクライニングユニット21bを配置し、回動軸線Lに沿った状態の連結部材22を、一方の端部にて第1リクライニングユニット21aにおけるシャフト24aの支持部26に支持させるとともに、他方の端部にて第2リクライニングユニット21bにおけるシャフト24bの支持部26に支持させ、連結部材22を両支持部26に押し付けた状態で、一方の端部及び他方の端部をそれぞれ支持部26に溶接固定する。
【0050】
すなわち、本実施形態に係る車両用シート10の製造方法は、
シートクッション及びシートバックと、
前記シートクッションに対する前記シートバックの傾動を制御する一方のリクライニングユニット及び他方のリクライニングユニットと、
前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットを同期回動するように連結するための長尺状の連結部材と、
を備える車両用シートの製造方法であって、
前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットは、
前記シートクッション及び前記シートバックの一方に取り付けられるベースプレートと、
前記シートクッション及び前記シートバックの他方に取り付けられるとともに前記ベースプレートに対して相対回動可能に組み付けられて内歯を有するギヤプレートと、
前記ベースプレートに対して半径方向に摺動可能にガイドされるように組み付けられ、前記内歯と噛合可能な外歯を有するロックギヤと、
ロック解除方向への回動時に前記ロックギヤに対して半径方向内側から当接することで前記外歯を前記内歯に噛合させるカムと、
前記カムに対して回動中心が一致するように嵌合される嵌合部と前記ギヤプレートから外部に露出する支持部とを有するシャフトと、
前記外歯を前記内歯に噛合させる方向に前記カムを付勢する付勢部材と、
前記付勢部材の付勢力に抗して前記カムを回転駆動することで前記外歯と前記内歯との噛合を解除可能な解除部材と、
を備え、
前記支持部は、前記回動中心から所定の角度及び所定の距離にてオフセットした位置に前記連結部材の端部が支持されるように形成され、
それぞれの前記シャフトの回動中心が所定の回動軸線上に位置してそれぞれの前記支持部が互いに前記所定の回動軸線に沿って対向するように前記一方のリクライニングユニット及び前記他方のリクライニングユニットを配置するステップと、
前記所定の回動軸線に沿った状態の前記連結部材を、一方の端部にて前記一方のリクライニングユニットにおける前記シャフトの前記支持部に支持させるとともに、他方の端部にて前記他方のリクライニングユニットにおける前記シャフトの前記支持部に支持させるステップと、
前記連結部材を前記支持部に押し付けた状態で、前記一方の端部及び前記他方の端部をそれぞれ前記支持部に溶接固定するステップと、
を備えることを特徴とする。
【0051】
これにより、上述のように押し付けた連結部材22の端部を支持部26に溶接するだけで、両シャフト24a,24bの回動位置を合わせるように溶接固定できるので、連結作業を煩雑にすることなく両リクライニングユニット21a,21bの同期性の向上を図ることができる。
【0052】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る車両用シートについて説明する。
本第2実施形態では、両リクライニングユニットの構造を変更している点が、上記第1実施形態と主に異なる。したがって、第1実施形態と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
本実施形態に係る第1リクライニングユニット(一方のリクライニングユニット)121a及び第2リクライニングユニット(他方のリクライニングユニット)121bは、モータの駆動力を利用して動作するもので、上記第1実施形態と同様に、それぞれのシャフトの回動中心が所定の回動軸線上に位置して当該シャフトの連結部材を支持するそれぞれの支持部が互いに所定の回動軸線に沿って対向するように配置される。支持部は、回動中心から所定の角度及び所定の距離にてオフセットした位置に連結部材の端部が支持されるように形成される。連結部材は、上記所定の回動軸線に沿って一方の端部が一方のリクライニングユニットにおけるシャフトの支持部に支持された状態で溶接固定されるとともに他方の端部が他方のリクライニングユニットにおけるシャフトの支持部に支持された状態で溶接固定される。
【0054】
具体的には、第1リクライニングユニット121aは、下側ブラケット11aに取り付けられる外歯歯車130と、上側ブラケット12aに取り付けられる内歯歯車140と、シャフト150と、ロック用部材として機能するU字ブッシュ161、一対のくさび状カム162、スプリング163と、プレートカバー170及びシャフトカバー(図示略)等とを備えるように構成されている。
【0055】
外歯歯車130には、外周面に外歯131が形成され、中央に略円筒状のボス部132が形成されている。なお、外歯歯車130は、シートクッション11に取り付けられる「第1のプレート」の一例に相当し得る。
【0056】
内歯歯車140は、内周面に内歯141が形成される円筒部と、中央に略円筒状のボス部142が形成される側板部とを備えるように構成されている。内歯141は、外歯131に対して偏心して噛合するため、当該外歯131よりも歯数が多くなるように形成されている。内歯歯車140のボス部142の内方には樹脂ベアリング143が嵌め込まれており、この樹脂ベアリング143によって形成されるボス部142の内周面と外歯歯車130のボス部132の外周面との間にU字ブッシュ161や一対のくさび状カム162が配置されている。なお、内歯歯車140は、シートバック12に取り付けられる「第2のプレート」の一例に相当し得る。
【0057】
シャフト150は、上述のような位置関係にて外部に露出する支持部26と、内面にセレーションが形成されて外歯歯車130のボス部132の内周面に対して同軸的に嵌合する本体部151と、本体部151が嵌合したボス部132の外周面の一部を覆うU字部152とを備えるように構成されている。U字部152は、回動方向の両端面にて、内歯歯車140のボス部142の内周側に組み込まれたU字ブッシュ161の回動方向の両端面に当接し、シートバック12を前傾させる回動方向(前傾回動方向)に回動する際に一方のくさび状カム162を押し回し、シートバック12を後傾させる回動方向(後傾回動方向)に回動する際に他方のくさび状カム162を押し回すように形成されている。
【0058】
くさび状カム162は、先端側ほど径方向の厚さが薄くなるようにくさび状に形成されている。くさび状カム162は、先端側の端面にてU字部152の回動方向の端面に対向するようにして外歯歯車130のボス部132の外周面とU字ブッシュ161との間に介在し、スプリング163によって基端側から付勢されることでボス部132の外周面とU字ブッシュ161との双方に押圧されるように配置されている。
【0059】
一対のくさび状カム162が上述のようにそれぞれ押圧されることで、外歯歯車130に対して内歯歯車140が偏心し、外歯131の一部が内歯141に噛合する。このような偏心状態で後述するようにして外歯歯車130が内歯歯車140に対して相対回動することで、外歯131と内歯141との噛合位置が変化するようにして外歯歯車130が内歯歯車140の歯車軸を中心に公転する。また、スプリング163によって一対のくさび状カム162が互いに離反するようにしてボス部132の外周面とU字ブッシュ161との双方にそれぞれ押圧された状態では、一対のくさび状カム162が所定の介在位置に介在して外歯歯車130と内歯歯車140との相対回動が規制される。
【0060】
プレートカバー170は、内歯歯車140に対する外歯歯車130の軸方向のズレを抑制するように内歯歯車140に組み付けられる。シャフトカバーは、内歯歯車140に対するシャフト150の軸方向のズレを抑制するように内歯歯車140に組み付けられる。
【0061】
このように構成される第1リクライニングユニット121aは、外歯歯車130の側面に形成される複数の突出部を利用して下側ブラケット11aに溶接固定され、内歯歯車140の側面に形成される複数の突出部を利用して上側ブラケット12aに溶接固定される。
【0062】
第2リクライニングユニット121bは、第1リクライニングユニット121aと基本的に対照形状に形成される。
【0063】
連結部材22は、両端部が第1リクライニングユニット121aの露出するシャフト150の支持部26と第2リクライニングユニット21bの露出するシャフト150の支持部26とにそれぞれ溶接固定される。このような連結部材22の溶接固定によって、両シャフト150が同期回転するように連結される。
【0064】
このように構成されることで、第1リクライニングユニット121a及び第2リクライニングユニット121bでは、両シャフト150が回動しない場合には、一対のくさび状カム162によって外歯歯車130と内歯歯車140との相対回動が規制されることで、シートクッション11に対するシートバック12の傾動角度が維持される。
【0065】
前傾させる操作に応じてモータが駆動して両シャフト150が前傾回動方向に回動する場合には、U字部152によって2つのくさび状カム162のうち回動方向とは逆方向となる一方のくさび状カム162がスプリング163の付勢力に抗して押し回されることで、一方のくさび状カム162での上記押圧状態が解除される。これにより、内歯歯車140に対して相対回動になった外歯歯車130がシャフト150とともに前傾回動方向に回動することで、シートバック12がシートクッション11に対して前傾する。
【0066】
一方、後傾させる操作に応じてモータが駆動して両シャフト150が後傾回動方向に回動する場合には、U字部152によって2つのくさび状カム162のうち回動方向とは逆方向となる他方のくさび状カム162がスプリング163の付勢力に抗して押し回されることで、他方のくさび状カム162での上記押圧状態が解除される。これにより、内歯歯車140に対して相対回動になった外歯歯車130がシャフト150とともに後傾回動方向に回動することで、シートバック12がシートクッション11に対して後傾する。
【0067】
本実施形態において両支持部26を利用して連結部材22を溶接する製造工程では、上記第1実施形態と同様に、両端部がそれぞれ支持部26に支持されつつ溶接されていない連結部材22を支持部26に押し付けることで、U字部152がくさび状カム162を押圧する回動位置までシャフト150が回動してさらに回動しない状態(ロック用部材となるくさび状カム162を押し回すための位置まで回動した状態)になる。このため、上述のように押し付けた連結部材22の端部を支持部26に溶接するだけで、両シャフト150の回動位置を合わせるように溶接固定できるので、連結作業を煩雑にすることなく両リクライニングユニット121a,121bの同期性の向上を図ることができる。
【0068】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る車両用シートについて説明する。
本第3実施形態では、一方のリクライニングユニットのシャフトと連結部材とが一体成形される点が、上記第1実施形態と主に異なる。したがって、第1実施形態と実質的に同一の構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0069】
本実施形態では、上記第1実施形態に対して、第1リクライニングユニット21aのシャフト24aと連結部材22とに代えて、連結部材200が採用される。連結部材200は、
図13に示すように、連結部材22に相当する本体部201と、シャフト24aに相当する軸端部202とを備え、本体部201の一方の端部201aと軸端部202の端部とが、上述した連結部材22とシャフト24aとの位置関係にて一体に連結するように構成されている。
【0070】
すなわち、第1リクライニングユニット21aにおけるシャフトとなる軸端部202は、当該軸端部202の回動中心が所定の回動軸線L上に位置して、所定の回動軸線Lに沿う本体部201が軸端部202の回動中心から所定の角度及び所定の距離にてオフセットするように本体部201の一方の端部201aと一体成形される。
【0071】
一方、第2リクライニングユニット21bは、上記第1実施形態と同じ構成であり、第2リクライニングユニット21bにおけるシャフト24bは、当該シャフト24bの回動中心が所定の回動軸線L上に位置して、シャフト24bの回動中心から所定の角度及び所定の距離にてオフセットした状態の本体部201の他方の端部201bを支持する支持部26を備えるように構成される。
【0072】
本実施形態において連結部材200を溶接する製造工程(ステップ)では、第1リクライニングユニット21aに組み付けられた軸端部202と第2リクライニングユニット21bのシャフト24bとのそれぞれの回動中心が所定の回動軸線L上に位置して、所定の回動軸線Lに沿った状態の本体部201を他方の端部201bにて第2リクライニングユニット21bにおけるシャフト24bの支持部26に支持させるように第1リクライニングユニット21a及び第2リクライニングユニット21bを配置する(第1ステップ)。
【0073】
次に、上記第1実施形態と同様に、連結部材200の本体部201をシャフト24bの支持部26に押し付けた状態で、本体部201の他方の端部201bを支持部26に溶接固定する(第2ステップ)。
【0074】
このようにしても、上述のように押し付けた本体部201の他方の端部201bを第2リクライニングユニット21bにおけるシャフト24bの支持部26に溶接するだけで、両シャフトの回動位置を合わせるように溶接固定できるので、連結作業を煩雑にすることなく両リクライニングユニットの同期性の向上を図ることができる。
【0075】
なお、連結部材200は、連結部材22に相当する本体部201と第1リクライニングユニット21aのシャフト24aに相当する軸端部202とを備えて第2リクライニングユニット21bのシャフト24bに溶接固定されるように構成されることに限らず、本体部201と第2リクライニングユニット21bのシャフト24bに相当する軸端部とを備えて第1リクライニングユニット21aのシャフト24aに溶接固定されるように構成されてもよい。また、一方のリクライニングユニットのシャフトと連結部材とが一体成形される本実施形態の特徴的構成は、他の実施形態等にも適用することができる。
【0076】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)両シャフト24a,24bの支持部26は、十字状の4つの支持片の一部を利用して連結部材22の端部を位置決めして支持するように形成されることに限らず、連結部材22の端部を支持可能であって回動中心(回動軸線L)から所定の角度及び所定の距離にてオフセットした位置に連結部材22の端部が支持されるように形成されてもよい。
【0077】
(2)長尺状の連結部材22は、断面円環状のパイプ部材によって構成されることに限らず、例えば、断面矩形状のパイプ部材によって構成されてもよいし、連結ロッドのように中実部材によって構成されてもよい。
【0078】
(3)本発明は、ベースプレート30が下側ブラケット11aに取り付けられてギヤプレート40が上側ブラケット12aに取り付けられるリクライニング装置20を有する車両用シート10に適用されることに限らず、ベースプレートが上側ブラケット12aに取り付けられてギヤプレートが下側ブラケット11aに取り付けられるリクライニング装置を有する車両用シートに適用されてもよい。
【0079】
(4)上記第1実施形態等では、シャフト24a,24bを除くリクライニングユニット21a,21bに代えて、例えば、基本構成が同じである特開2018-114095号公報に開示されるリクライニングユニットや特開2013-163474号公報に開示されるリクライニングユニットなど、ベースプレートに対して半径方向に摺動可能にガイドされるロックギヤの外歯とギヤプレートの内歯との噛合をカムの回動によって制御するリクライニングユニットを採用してもよい。
【0080】
(5)上記第2実施形態等では、シャフトを除くリクライニングユニット121a,121bに代えて、例えば、基本構成が同じである特開2021-146833号公報に開示されるリクライニングユニットや特開2021-83659号公報に開示されるリクライニングユニットなど、2つのプレートを偏心させることで一部の外歯と内歯とを噛合させ、シャフトが回動しない場合に2つのプレートの相対回動を規制し、シャフトの回動によってカムを押し回すことで2つのプレートを相対回動可能な状態に制御するリクライニングユニットを採用してもよい。
【符号の説明】
【0081】
10…車両用シート
11…シートクッション
12…シートバック
20…リクライニング装置
21a,121a…第1リクライニングユニット(一方のリクライニングユニット)
21b,121b…第2リクライニングユニット(他方のリクライニングユニット)
22,200…連結部材
24a,24b,150…シャフト
25a,25b…嵌合部
26…支持部
30…ベースプレート(第1のプレート)
40…ギヤプレート(第2のプレート)
41…内歯
61…第1ロックギヤ
61a…外歯
62…第2ロックギヤ
62a…外歯
70…カム(ロック用部材)
80…付勢部材
90…カムレバー
130…外歯歯車(第1のプレート)
140…内歯歯車(第2のプレート)
162…くさび状カム(ロック用部材)
L…回動軸線