(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-25
(45)【発行日】2025-10-03
(54)【発明の名称】実験教材、配列生成方法及び実験教材の使用方法
(51)【国際特許分類】
G09B 19/00 20060101AFI20250926BHJP
G09B 23/22 20060101ALI20250926BHJP
G09B 23/28 20060101ALI20250926BHJP
G09B 9/00 20060101ALI20250926BHJP
【FI】
G09B19/00 Z
G09B23/22
G09B23/28
G09B9/00 Z
(21)【出願番号】P 2022018436
(22)【出願日】2022-02-09
【審査請求日】2024-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】599045903
【氏名又は名称】学校法人 久留米大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】大久保 博
(72)【発明者】
【氏名】長澤 真樹子
【審査官】三田村 陽平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-155815(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0049714(US,A1)
【文献】新田 英雄, 金城 啓一, 鴨川 仁, 川角 博,放射線を使って見えないものを見る,物理教育,2004年,第52巻 第4号,311-314
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 19/00
G09B 23/22
G09B 23/28
G09B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ断層撮影装置の画像再構成の原理を学習するための実験教材であって、
放射線より大きい波長を有する光線を透過する素材で形成されたブロックが互いに直交する複数の軸方向に同数配列されて構成され、前記軸方向に入射した前記光線を前記軸方向に直進させるブロック行列体と、
前記軸方向に沿って前記光線を前記ブロック行列体に入射する光源と、
前記ブロック行列体を透過した前記光線の強度を検出する検出部と、
前記ブロック行列体を構成する前記ブロックを外から視認できないように遮蔽するカバーと、を備え、
前記ブロックとして、透過する前記光線の減衰度が互いに異なる第1ブロック及び第2ブロックと、が含まれ、
前記ブロック行列体は、前記第1ブロックと前記第2ブロックとを自在に配置可能である、
実験教材。
【請求項2】
前記第2ブロックには、透過する前記光線を減衰させるフィルタが挿入されている、
請求項1に記載の実験教材。
【請求項3】
前記第2ブロックには、透過する前記光線を減衰させる液体が充填されている、
請求項1に記載の実験教材。
【請求項4】
前記光線は、赤外線、可視光、紫外線のいずれかである、
請求項1から3のいずれか一項に記載の実験教材。
【請求項5】
前記ブロック行列体は、前記軸方向の前記ブロックの数を調整可能である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の実験教材。
【請求項6】
放射線より大きい波長を有する光線の透過強度が互いに異なる第1ブロック及び第2ブロックの配列により形成される2次元正方行列における、前記第1ブロックと前記第2ブロックとの配列情報を情報処理装置によって生成する配列生成方法であって、
前記2次元正方行列の行数及び列数であるNを示す情報と、前記2次元正方行列における前記第2ブロックの数であるM(M≦N
2)を示す情報とを入力する入力ステップと、
前記入力ステップで入力された情報に基づいて、前記2次元正方行列の四隅のうちいずれか1つの隅領域に前記第2ブロックを詰めて並べた前記2次元正方行列を生成する行列生成ステップと、
前記行列生成ステップで生成された前記2次元正方行列におけるいずれかの行のブロック全体を違う行に移動するか、他の行のブロック全体と交換するか、前記2次元正方行列におけるいずれかの列のブロック全体を違う列に移動するか、他の列のブロック全体と交換する行列変換ステップと、
を含む配列生成方法。
【請求項7】
放射線より大きい波長を有する光線を透過する素材で形成されたブロックが互いに直交する複数の軸方向に同数配列されて構成され、前記軸方向に入射した前記光線を前記軸方向に直進させるブロック行列体と、前記軸方向に沿って前記光線を前記ブロック行列体に入射する光源と、前記ブロック行列体を透過した前記光線の強度を検出する検出部と、前記ブロック行列体を構成する前記ブロックを外から視認できないように遮蔽するカバーと、を備え、前記ブロックとして、透過する前記光線の減衰度が互いに異なる第1ブロック及び第2ブロックと、が含まれ、前記ブロック行列体は、前記第1ブロックと前記第2ブロックとを自在に配置可能である実験教材の使用方法であって、
前記ブロック行列体の前記軸方向それぞれにおいて、前記第2ブロックの数を増やしつつ、前記光源から前記ブロック行列体に前記光線を入射したときの前記光線の強度を前記検出部で検出して、前記第2ブロックの数と、前記検出部で検出される前記光線の強度との関係を示す基準情報を生成する基準情報生成ステップと、
前記ブロック行列体における前記第1ブロック及び前記第2ブロックの配列を組み換えて前記カバーで遮蔽する配列ステップと、
前記カバーで遮蔽された状態で、前記光源から前記ブロック行列体の前記軸方向それぞれに前記光線を入射したときの前記光線の強度を前記検出部で検出することにより、前記ブロック行列体の前記軸方向を透過する前記光線の強度を少なくとも1回測定する測定ステップと、
を含む実験教材の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実験教材、配列生成方法及び実験教材の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ断層撮影装置、すなわちCT(Computed Tomography)スキャン装置は、被検体をはさんでX線源と検出器を向かい合わせに配置し、被検体を透過するX線の強度を検出している。X線の透過強度は、そのX線が透過した被検体の情報が積分された吸収量を表している。このため、一方向からの測定では、X線の透過強度から被検体の画像を得ることができない。そこで、CTスキャン装置は、被検体に対するX線源及び検出器の方向を変えながらX線の透過強度を測定し、方向が異なるX線の透過強度に基づいて、画像再構成を行って、被検体の体内の画像を生成している。これがCTスキャン装置における画像再構成の原理である。
【0003】
上述のようなCTスキャン装置における画像再構成の原理は、学生、特に物理学を学習していない学生にとっては理解が難しいものである。そこで、画像再構成の原理を理解するため、放射線源とGM管とを用いた学生実験が行われている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】新田英雄、物理教育52-4(2004)311-314
【文献】東京書籍「改訂物理」、平成29年度検討済2020年度版、p458-459
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記非特許文献1、2に開示された実験では、密封された放射線源が用いられており、学生が気軽に用いられる性質のものではない。より安全、かつ、わかりやすい形で、CTスキャン装置の画像再構成の原理を学ぶことができる実験教材が望まれている。
【0006】
本発明は、上記実情の下になされたものであり、より安全、かつ、わかりやすい形でコンピュータ断層撮影装置の画像再構成の原理を学習することができる実験教材、配列生成方法及び実験教材の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る実験教材は、
コンピュータ断層撮影装置の画像再構成の原理を学習するための実験教材であって、
放射線より大きい波長を有する光線を透過する素材で形成されたブロックが互いに直交する複数の軸方向に同数配列されて構成され、前記軸方向に入射した前記光線を前記軸方向に直進させるブロック行列体と、
前記軸方向に沿って前記光線を前記ブロック行列体に入射する光源と、
前記ブロック行列体を透過した前記光線の強度を検出する検出部と、
前記ブロック行列体を構成する前記ブロックを外から視認できないように遮蔽するカバーと、を備え、
前記ブロックとして、透過する前記光線の減衰度が互いに異なる第1ブロック及び第2ブロックと、が含まれ、
前記ブロック行列体は、前記第1ブロックと前記第2ブロックとを自在に配置可能である。
【0008】
前記第2ブロックには、透過する前記光線を減衰させるフィルタが挿入されている、
こととしてもよい。
【0009】
前記第2ブロックには、透過する前記光線を減衰させる液体が充填されている、
こととしてもよい。
【0010】
前記光線は、赤外線、可視光、紫外線のいずれかである、
こととしてもよい。
【0011】
前記ブロック行列体は、前記軸方向の前記ブロックの数を調整可能である、
こととしてもよい。
【0012】
本発明の第2の観点に係る配列生成方法は、
放射線より大きい波長を有する光線の透過強度が互いに異なる第1ブロック及び第2ブロックの配列により形成される2次元正方行列における、前記第1ブロックと前記第2ブロックとの配列情報を情報処理装置によって生成する配列生成方法であって、
前記2次元正方行列の行数及び列数であるNを示す情報と、前記2次元正方行列における前記第2ブロックの数であるM(M≦N2)を示す情報とを入力する入力ステップと、
前記入力ステップで入力された情報に基づいて、前記2次元正方行列の四隅のうちいずれか1つの隅領域に前記第2ブロックを詰めて並べた前記2次元正方行列を生成する行列生成ステップと、
前記行列生成ステップで生成された前記2次元正方行列におけるいずれかの行のブロック全体を違う行に移動するか、他の行のブロック全体と交換するか、前記2次元正方行列におけるいずれかの列のブロック全体を違う列に移動するか、他の列のブロック全体と交換する行列変換ステップと、
を含む。
【0013】
本発明の第3の観点に係る実験教材の使用方法は、
放射線より大きい波長を有する光線を透過する素材で形成されたブロックが互いに直交する複数の軸方向に同数配列されて構成され、前記軸方向に入射した前記光線を前記軸方向に直進させるブロック行列体と、前記軸方向に沿って前記光線を前記ブロック行列体に入射する光源と、前記ブロック行列体を透過した前記光線の強度を検出する検出部と、前記ブロック行列体を構成する前記ブロックを外から視認できないように遮蔽するカバーと、を備え、前記ブロックとして、透過する前記光線の減衰度が互いに異なる第1ブロック及び第2ブロックと、が含まれ、前記ブロック行列体は、前記第1ブロックと前記第2ブロックとを自在に配置可能である実験教材の使用方法であって、
前記ブロック行列体の前記軸方向それぞれにおいて、前記第2ブロックの数を増やしつつ、前記光源から前記ブロック行列体に前記光線を入射したときの前記光線の強度を前記検出部で検出して、前記第2ブロックの数と、前記検出部で検出される前記光線の強度との関係を示す基準情報を生成する基準情報生成ステップと、
前記ブロック行列体における前記第1ブロック及び前記第2ブロックの配列を組み換えて前記カバーで遮蔽する配列ステップと、
前記カバーで遮蔽された状態で、前記光源から前記ブロック行列体の前記軸方向それぞれに前記光線を入射したときの前記光線の強度を前記検出部で検出することにより、前記ブロック行列体の前記軸方向を透過する前記光線の強度を少なくとも1回測定する測定ステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、放射線より大きい波長を有する光線をX線の代わりにして、コンピュータ断層撮影装置におけるX線管と検出器との構成、検出結果と画像との関係とを学生にわかりやすく形で見せることができる。このため、より安全、かつ、わかりやすい形でコンピュータ断層撮影装置の画像再構成の原理を学習することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係る実験教材の斜視図である。
【
図2】
図1の実験教材の光学系の構成を示す上面図である。
【
図3】(A)は、第1ブロックの斜視図である。(B)は、第2ブロックの斜視図である。
【
図4】第1ブロック及び第2ブロックの配置例を示す模式図である。
【
図5】(A)は、透過する物質の本数と透過光強度との関係を示す片対数グラフである。(B)は、
図1の実験教材の使用方法のフローチャートである。
【
図6】ブロックの配置条件を決定するための模式図である。
【
図7】(A)~(D)は、最も単純なブロックの配置を示す模式図である。
【
図8】(A)~(C)は、ブロックの配置の基本型を示す模式図である。
【
図9】(A)~(F)は、配置の操作手順の一例を示す模式図である。
【
図10】情報処理装置によって実行される配列生成処理のフローチャートである。
【
図11】(A)及び(B)は、
図1の実験教材の変形例を示す上面図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係る実験教材を構成するブロック構造体の別の例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0017】
[全体構成]
図1に示す本実施の形態に係る実験教材1は、コンピュータ断層撮影装置の画像再構成の原理を学習するために用いられる実験装置である。実験教材1は、カバーとしての直方体状のハウジング2及び蓋3と、ハウジング2及び蓋3に収容されたブロック行列体4と、光線の入出力を行う光プローブ5と、を備える。
【0018】
実験教材1は、
図1に示すように、蓋3を上面として不図示のテーブルに置かれて使用される。本実施の形態では、上下方向をZ軸方向とし、ハウジング2の側面の法線方向をX軸方向、Y軸方向とし、これら3軸直交座標系を参照して説明を行う。ハウジング2及び蓋3の形状は、上面視で正方形である。
【0019】
ハウジング2と蓋3との間には隙間が設けられており、その隙間からブロック行列体4の側面の一部が外部に露出している。光プローブ5は、蓋3にまたがるように配置されており、光プローブ5の両端は、ブロック行列体4が露出する部分まで延びている。
【0020】
[光プローブ]
光プローブ5は、一端から光線をブロック行列体4に入射させる。入射した光線は、ブロック行列体4内を直進し、透過して光プローブ5の他端で受光される。ここで、光線とは、その波長が遠紫外域から遠赤外域までの範囲内である電磁波をいう。光線の波長は、X線などの放射線より大きくなっており、被爆のおそれはない。本実施の形態では、光線を赤外線としている。
【0021】
光プローブ5は、ハウジング2、蓋3及びブロック行列体4に対して蓋3上をY軸方向にスライドさせることができる。また、光プローブ5は、蓋3上をY軸方向にまたがるように設置することも可能である。この場合、光プローブ5は、蓋3上をX軸方向にスライドさせることができる。これにより、光プローブ5は、ブロック行列体4の任意のX位置でY軸方向に赤外線を透過させることが可能となり、任意のY位置で、X軸方向に赤外線を透過させることが可能となる。
【0022】
実験教材1の光学系は、
図2に示すような構成を有している。この光学系は、ブロック行列体4を中心として構成される。
【0023】
[ブロック行列体]
ブロック行列体4は、赤外線ILを透過する素材で形成されたブロック10の2次元正方行列により構成される。すなわち、ブロック行列体4は、ブロック10が互いに直交するX,Y軸方向に同数配列されて構成されている。本実施の形態では、ブロック行列体4は、5行5列である。
【0024】
ブロック10の形状は、
図3(A)及び
図3(B)に示すように、直方体状である。ブロック10は、全体として赤外線ILを透過する素材、例えばアクリル等のプラスチック又はガラスで形成されている。ブロック10としては、例えば分光光度計用のプラスチックセルを用いることができる。
【0025】
図2に戻り、ブロック行列体4は、ブロック10が挿入されるフレーム部材4aを有している。フレーム部材4aは、3Dプリンタ等により製造することができる。フレーム部材4aには、ブロック10が挿入される挿入部が2次元正方行列状に形成されている。フレーム部材4aの挿入部にブロック10が挿入されて、ブロック行列体4が形成される。フレーム部材4aの素材は、ブロック10と同じである。これにより、ブロック行列体4は、ブロック10の2次元行列のX軸、Y軸方向(行方向、列方向)に入射した赤外線ILを直進させることができる。
【0026】
[ブロック]
本実施の形態では、ブロック10として、
図3(A)及び
図3(B)に示すように、第1ブロック10aと、第2ブロック10bと、が含まれている。
図3(A)に示す第1ブロック10aの側面には、透過する赤外線ILを減衰させる赤外線カットフィルタが貼り付けられていない。この一方、
図3(B)に示す第2ブロック10bには、赤外線ILを吸収するフィルタが貼り付けられている。具体的には、第2ブロック10bには、+x側の側面と、-y側の側面とにフィルタが貼り付けられている。これにより、第1ブロック10aと、第2ブロック10bとでは、側面を通過する赤外線ILの減衰度が互いに異なるようになっている。
【0027】
第1ブロック10aは、透過する光線を吸収する物質が存在しないことを示すものであり、第2ブロック10bは、透過する光線を吸収する物質が存在することを示すものである。したがって、以下では、第1ブロック10aを空セルともいい、第2ブロック10bを吸収セルともいう。
【0028】
図2に戻り、ブロック行列体4には、第1ブロック10aと第2ブロック10bとを自在に配置可能である。この実験教材1で行われる実験では、まず、出題者がブロック行列体4における第1ブロック10a及び第2ブロック10bの配置を決める。そして、実験する学生は、ブロック行列体4の各行及び各列を透過する赤外線ILの強度を測定し、その測定結果に基づいて、ブロック行列体4における第1ブロック10a及び第2ブロック10bの配置を推定する。これが主な実験内容である。
【0029】
[光源]
光プローブ5の一端には、光源11が設けられている。光源11は、X軸方向、Y軸方向に沿って赤外線ILをブロック行列体4に入射する。本実施の形態では、光源11は、赤外線ILを発光する発光ダイオードを備える。この発光ダイオードから発せられた赤外線ILがブロック行列体4に入射する。光源11には、外部から供給される電力がACアダプタ及び同軸ケーブルを介して供給され、その電力により発光ダイオードが発光する。
【0030】
光源11内の電気回路は、可変三端子レギュレータで降圧された電圧で、定電流ダイオードで一定に調整された電流が発光ダイオードに流れることにより、一定の強度の赤外線ILが発生するように構成されている。光源11では、定電流ダイオードを幾つか設置し、発光ダイオードに流れる電流を調整可能としてもよい。また、光源11には、発光ダイオードによる発熱を外部に逃がすためのヒートシンクが設けられており、内部の温度が一定に保たれるようにすることができる。光源11では、フォトダイオードから発せられた光が、+X方向に進むように、貫通孔を介して+X方向のみに出射される。貫通孔は、赤外線ILを絞る役割を果たしている。
【0031】
[検出部]
検出部12は、ブロック行列体4を透過した赤外線ILの強度を検出する。検出部12は、受光した赤外線ILの強度に応じた信号を出力するフォトダイオードと、フォトダイオードに接続された信号増幅回路と、を備える。ブロック行列体4を透過した赤外線ILは、貫通孔を介して、フォトダイオードで受光される。貫通孔は、ブロック行列体4を直進してきた赤外線ILのみをフォトダイオードで受光するために設けられている。また、フォトダイオードは、可視光線の影響を受けないように、可視光線カットのものを用いるのが望ましい。
【0032】
フォトダイオードで検出された信号は、オペアンプを含む信号増幅回路で増幅されて検出部12から出力される。信号増幅回路は可変抵抗により、その増幅率が可変となっている。検出部12は、同軸ケーブルを介してテスタに接続されており、テスタには、検出された赤外線ILの透過光強度の検出結果が表示されるようになっている。実験では、テスタの検出結果に基づいて、第1ブロック10a及び第2ブロック10bの配置を推定する。なお、光源11及び検出部12は、学生が視認し易いように、引き出しに収納されており、引き出しを引き出すことにより、それらの回路構成を確認できるようになっていてもよい。
【0033】
[連結部]
光プローブ5において、光源11と検出部12とは、連結部13で連結されている。これにより、光源11と検出部12との相対位置関係が固定される。
【0034】
[ハウジング及び蓋]
図1に示すように、ハウジング2及び蓋3は、ブロック行列体4を構成するブロック10の配列を外部から視認できないように遮蔽する。
【0035】
[画像再構成の原理]
コンピュータ断層撮影装置は、X線源と検出器とを被検体を向かい合わせに置いて、透過するX線の強度を多数の方向から検出し、多数の方向のX線の透過強度に基づいてコンピュータ処理を行い、被検体の空間分布を示す画像を再構成している。これに対して、本実施の形態に係る実験教材1では、ブロック行列体4を検出対象に見立てて「縦」、「横」の2つの方向(X軸方向、Y軸方向)だけから1基線ずつ測定を行い、被検体の内部構造を、コンピュータを用いずに学生の頭で考えさせることを目的とする。当然、2方向だけでは再構成するための情報が足りずに被検体の内部構造が決められないことがある。しかしながら、本実施の形態に係る実験教材1では、画像再構成の原理を理解し易くすることを優先し、赤外線ILの照射方向を2方向としている。
【0036】
一様な媒質を通過するX線の透過光強度は、ランベルトの法則を表す以下の式(1)に従って、媒質の厚みxに対して指数関数的に減少する。
I=I0e-μx ・・・(1)
ここで、I0は、入射光強度、Iは透過光強度、μは吸収係数である。Iがテスタで測定される赤外線ILの透過光強度である。このランベルトの法則は、赤外線ILでも同様である。仮に、厚みがそれぞれdである2つの物質を赤外線ILが通過すると、その透過光強度は、以下のようになる。
I=I0e-2μd
【0037】
図4では、第1ブロック10aは、白いマスで示され、第2ブロック10bは、ハッチングのあるマスで示されている。各マスのX軸、Y軸の幅をdとする。上述のように、第1ブロック10aでは、赤外線ILを減衰させるフィルタが設けられておらず、第2ブロック10bでは、赤外線ILを減衰させるフィルタが設けられているため、ここでは、第1ブロック10aには物質がなく、第2ブロック10bでは、物質があるものと考える。実験を行う学生は、この内部構造を知らないものとする。
図4におけるブロック行列体4に対して右と下の数字は、対応する行と列に配置されている物質の総数(合計の厚み)を表している。
【0038】
赤外線ILを左から右へ+X方向にブロック行列体4を通過させた場合、各マスの幅をdとすると、1行目では厚み3d分の吸収が生じ、5行目では厚み1d分の吸収が生じる。物質の吸収係数μは同じなので、あらかじめ厚みが既知である物質に対し、透過光強度Iを測定しておきさえすれば、上記(1)式に基づいて、赤外線ILの経路上にある物質の数(合計の厚み)を知ることができる。
【0039】
経路上の物質の個数が判明したら、次に、被検体(ブロック行列体4)の内部構造を考える。
図4に示す配置では、2行目、4列目の物質の個数がそれぞれ0であることから、透過光強度は入射光強度と等しく、そこには物質が存在しないことがすぐにわかる。次に、2列目を考えると、物質の個数は4であるが、2行目には何もないことがわかっているので、2列目の他の場所にはすべて物質があるということがわかる。次に5行目を見れば、5行目にある物質は1つだけであるが、それは2列目にあることがわかっているので、残りには物質がないことがわかる。このように考えていくことで、5行5列のどの位置に物質があるのかを推定することができる。
【0040】
[実験手順]
学生による実験教材1を用いた具体的な実験手順について説明する。
1)1行又は1列において、0から5まで、第2ブロック10b、すなわち吸収セル10bの本数を増やしながら赤外線ILの透過光強度を測定させる。
2)片対数グラフにI/I
0と、吸収セル10bの本数nの関係をプロットさせる。この片対数グラグでは、透過光強度I/I
0の軸が対数である(
図5(A)参照)。
3)推定対象となる空セル10a及び吸収セル10bの配列を有するブロック行列体4を生成する。
4)蓋3が被せられ、配列が不明な推定対象となる5行5列の試料の行方向(X軸方向)5行と列方向(Y軸方向)5列の赤外線ILの透過光強度を各行、各列で10回ずつ測定し、手順1)の結果をもとに、各行と列に何本ずつの吸収セル10bがあるかを推定させる。
5)ブロック行列体4において、空セル10aと吸収セル10bとがどのような配置になっているかを推定させる。
6)推定後に蓋3を外して、中身を確認させる。
【0041】
なお、古いデジタルカメラには、赤外線カットがされていないものがある。こうしたデジタルカメラの表示ディスプレイであれば、光源11から赤外線ILが出射されていることを目視で確認することができる。
【0042】
なお、手順1)では、2行5列~6行5列のブロック行列体を別に準備するようにしてもよい。このブロック行列体に吸収セル10bと空セル10aを挿入し、光プローブ5をずらしていくことで、同時に複数パターンの赤外線ILの透過光強度を得ることができる。例えば、6行5列のブロック行列体を用いれば、1度に吸収セル0個~5個の場合の赤外線ILの透過光強度を得ることができる。
【0043】
なお、本実験を行うにあたって、物質の本数nと正規化された透過光強度I/I
0との関係は、
図5(A)の片対数グラフの実線で示されるように直線状となっている必要がある。点線のように、物質の本数nの変化に対して正規化された透過光強度I/I
0の感度が弱い場合や、1点鎖線のように、物質の本数nの変化に対して正規化された透過光強度I/I
0が非線形に変化している場合には、物質の本数nの変化に対して正規化された透過光強度I/I
0が実線に沿って変化するように、第2ブロック10bのフィルタ又は光源11から発せられる赤外線ILの強度を調整する必要がある。
【0044】
上述のような実験手順に例示される実験教材1の使用方法は、例えば
図5(B)に示すフローチャートに示すように一般化される。
【0045】
まず、ブロック行列体4の1行又は1列において、第2ブロック10bの数を増やしつつ、光源11からブロック行列体4に赤外線ILを入射したときの赤外線ILの透過光強度を検出部12で検出して、第2ブロック10bの数と、検出部12で検出される赤外線ILの透過光強度との関係を示す基準情報を生成する(ステップS1;基準情報生成ステップ)。このステップは、上述の実験手順1)、2)に対応する。
【0046】
続いて、ブロック行列体4における第1ブロック10a及び第2ブロック10bの配列を組み換えてハウジング2及び蓋3で遮蔽する(ステップS2;配列ステップ)。このステップが、上述の実験手順3)に対応する。
【0047】
続いて、ハウジング2及び蓋3で遮蔽された状態で、光源11からブロック行列体4の各行及び各列に赤外線ILを入射したときの赤外線ILの強度を検出部12で検出することにより、ブロック行列体4の各行及び各列を透過する赤外線ILの強度を少なくとも1回測定する(ステップS3;測定ステップ)。このステップが上述の実験手順4)に対応する。実験手順4)では、測定の回数が各行、各列について10回となっているが、この回数は限定されない。
【0048】
その後、ステップS1で生成された基準情報を参考にして、ステップS3での測定結果に基づいて、ブロック行列体4における第1ブロック10a及び第2ブロック10bの配列が学生達によって推定され、蓋3をとって配列の確認が行われる。これが、実験手順5)に対応する。
【0049】
[空セル及び吸収セルの配置について]
第1ブロック10a(空セル)と第2ブロック10b(吸収セル)との配置条件について説明する。ここでは、ブロック行列体4におけるブロック10の行列をn行n列(nは自然数)と一般化する。
【0050】
一般的に、n行n列のブロック行列体4に、任意の吸収係数をもつブロック10を挿入し各行、各列に赤外線ILを照射して測定を行った場合、各行の透過光強度に対応するn本のデータIm(m=1~n)と、各列の透過光強度に対応するn本のデータIk(k=1~n)との2n個のデータが得られる。データImは、各行の第2ブロック10bの数に相当し、データInは、各列の第2ブロック10bの数に相当する。
【0051】
実験では、この2n個のデータI
m,I
kを求める。
図6に示すように、要素a
ijが第1ブロック10aである場合を0とし、要素a
ijが、第2ブロック10bである場合を1とした場合、求められた各データI
m,I
kに基づく連立方程式を条件付きで解くことにより、各要素a
ijが0であるか、1であるかを推定することが可能となる。この条件とは、要素a
ijが0か1かでということから、各行又は各列の要素a
ijの和が0以上n以下であることである。
【0052】
例えば、あるmについて、Im=0であれば、amiについて、am1,am2,am3,…amnは、すべて0である。また、あるmについて、Im=nであれば、amiについて、am1,am2,am3,…amnは、すべて1である。
【0053】
しかし、すべての要素が0,1であって、測定できる行と列の数と未知数の数が同じであっても、独立ではない式を含んでいれば解が求まるとは限らない。例えば、n=2、すなわち2行2列の場合でも、2方向からの測定では、
図7(A)の場合と
図7(B)の場合との区別をつけることはできない。
図7(A)の場合と
図7(B)の場合とではどちらであっても測定結果としては行と列の合計の赤外線ILの吸収量が一本分で等しいためである。
【0054】
一方、吸収セル10b及び空セル10aの数が
図7(A)と同じであっても、それらの配置が
図7(C)又は
図7(D)に示すものであれば、空セル10a及び吸収セル10bの配列を一意に決定することができる。例えば、
図7(C)に示す配置であれば、以下の4つの式は、
a
11+a
12=2
a
21+a
22=0
a
11+a
21=1
a
12+a
22=1
となり、a
11=1,a
12=1,a
21=0,a
22=0を求めることができる。実際のCTスキャン装置では、斜め方向からもX線を透過させてその強度を測定するため、配置が
図7(A)及び
図7(B)に示すようになっていても、吸収セル10b及び空セル10aの配置を知ることができる。しかしながら、2方向からの実験では、
図7(A)又は
図7(B)に示すような配置とならないように予め留意しておく必要がある。
【0055】
n行n列のブロック行列体4のブロック10の配置から内部構造が唯一に決められるかどうかは、技術的には、行又は列の交換で本数の多い列又は行の全体を交換して左上に移動して行き、左上詰め、左下詰め、右上詰め又は右下詰めにできるかどうかを見ればよい。すなわち、ブロック行列体4において空セル10aを0とし、吸収セル10bを1としたブロック10の2次元正方行列について、左(あるいは右)基本変形にある交換で標準形にしていく動作を行って、
図7(A)や
図7(B)の小行列が内部に含まれないか否かを確認すればよい。この確認は、2n本の一次方程式を並べ、係数行列を作り、基本変形していく操作と関係している。
【0056】
[配置レシピ]
基本的に以下の手順に従えば、1通りの答えを求めることのできる配置とすることができる。
1.基本型としてまず左上詰めで吸収セル10bを並べる。
図8(A)~
図8(C)に示すように、+X方向(右)、-Y方向(左)に順に吸収セル10bの数が減るようになっていれば、側面から全部0又は全部1である行や列を取り除いていく操作で解が求まる。
2.基本型は、列全体、あるいは行全体の交換の作業によって解けなくなることはない。このことを利用し、基本型を様々に派生させる例を
図9に示す。
【0057】
操作としては、以下のようになる。
図9(A)から
図9(B):3行目と5行目の交換
図9(B)から
図9(C):2列目と5列目の交換
図9(C)から
図9(D):4行目を一番上に移動
図9(D)から
図9(E);4列目を一番左に移動
図9(E)から
図9(F):4列目を1列目の後に挿入
【0058】
図9(A)~
図9(F)に示す配置は、どの配置でも内部構造を一意に決めることができる。もちろん全体を90度回転したり、反転したりしてもよい。個別に、空セル10a及び吸収セル10bを交換することは不可とする。ここでは5行5列の例を挙げたが、これは他の行数、列数等でも同じである。このように各列のブロック全体や各行のブロック全体を他の行と交換又は移動することで、様々な内部構造の配置例を作成し、学生に測定から内部を当てさせることができるブロック行列体4を生成することができる。
【0059】
一般的に行列は小さい方が頭の中で答えを導きやすく、配置が固まっていると解きやすい。空セル10aだけの列や行があったり、すべて吸収セル10bである列や行があったりする場合には、直ちに行列を小さくでき、学生が配置を考えることが容易となる。
【0060】
また、機械やフィルムの性質によって、吸収セル10bの本数が5本と4本の場合で区別がつきにくい場合には、1つの行や列の吸収セル10bの最大の本数を4本までとして、空白の行や列で埋めるようにしてもよい。逆に、赤外線ILの光量がオーバーフローし、0本と1本の区別がつきにくい場合は、吸収セル10bを多めにすればよい。
【0061】
なお、上述の空セル10a及び吸収セル10bの配列は、情報処理装置により生成することができる。情報処理装置は、コンピュータがソフトウエアプログラムを実行することにより、推定対象となる空セル10a及び吸収セル10bの配列を生成する。
【0062】
情報処理装置は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びディスプレイを備える。CPUは、例えばマイクロプロセッサ等であって、様々な処理や演算を実行する中央演算処理部である。情報処理装置は、ROMに記憶されているプログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、CPUでプログラムを実行させることによって、推定対象となる空セル10a及び吸収セル10bの配列パターン(配列情報)を生成する処理、すなわち配列生成処理を行う。
【0063】
図10に示すように、配列生成処理において、まず、情報処理装置は、2次元正方行列の行数及び列数を示す情報であるN(Nは自然数)と、2次元正方行列における吸収セル10bの数であるM(M≦N
2)とを入力する(ステップS11;入力ステップ)。
【0064】
続いて、情報処理装置は、ステップS11で入力された2次元正方行列の行数及び列数を示す情報であるN(Nは自然数)と、2次元正方行列における吸収セル10bの数であるM(M≦N
2)とに基づいて、2次元正方行列の四隅のうちいずれか1つの隅領域に第2ブロック10bを詰めて並べた2次元正方行列を生成する(ステップS12;行列生成ステップ)。ここでは、例えば、
図8(A)に示すような第1ブロック10a及び第2ブロック10bの配列が基本型として生成される。生成される基本型は複数存在するが、情報処理装置は、複数の基本型から、乱数によって1つ選び出す。これらの配列では、左上に第2ブロック10bが詰めて並べられている。この他、第2ブロック10bを、右上、左下又は右下のいずれかに詰めてならべるようにしてもよい。
【0065】
続いて、情報処理装置は、ステップS11で生成された2次元正方行列におけるいずれかの行のブロック10全体を違う行に移動するか、他の行のブロック10全体と交換するか、2次元正方行列におけるいずれかの列のブロック10全体を違う列に移動するか、他の列のブロック10全体と交換する(ステップS13;行列変換ステップ)。例えば、
図9(A)~
図9(F)に示す流れで、行のブロック10全体又は列のブロック10全体の移動又は交換が行われる。どの行及びどの列を移動又は交換するかは、乱数によって決定することができる。これにより、空セル10a及び吸収セル10bの配列情報が生成される。
【0066】
ステップS12を終了すると、情報処理装置は、空セル10a及び吸収セル10bの配列情報をディスプレイに表示出力する(ステップS14;配列情報出力ステップ)。表示出力された配列情報にしたがって、空セル10a及び吸収セル10bが配列されてブロック行列体4が生成される。このブロック行列体4を用いて、学生による赤外線ILの透過光強度からの配列の推定実験が行われる。
【0067】
ステップS14終了後、情報処理装置は、配列生成処理を終了する。
【0068】
以上詳細に説明したように、上記実施の形態に係る実験教材1によれば、放射線より大きい波長を有する光線(赤外線IL)をX線の代わりにして、コンピュータ断層撮影装置におけるX線管と検出器との構成、検出結果と画像との関係とを学生にわかりやすく形で見せることができる。この結果、より安全、かつ、わかりやすい形でコンピュータ断層撮影装置の画像再構成の原理を学習することができる。
【0069】
上記実施の形態に係る実験教材1を用いた実験は、パズル的要素がある面白みのある事件であるため、学生を意欲的に取り組ませることができる。また、複雑な数式を必要とせず、操作が単純で、見た目にもわかりやすいので、数学的な知識のない学生にも、物理的な観点を盛り込んだ実験を行わせることができる。また、構造が単純化されているので、実験を比較的短い時間で終えることができるという利点もある。
【0070】
上記実施の形態に係る実験教材1では、光線として赤外線ILを用いている。しかしながら、本発明はこれには限られない。光線として、可視光、紫外線を用いるようにしてもよい。また、紫外線は、X線などの放射線に比べ、人体を被爆させたり、人体に影響を与えたりすることはないが、人体に化学変化をもたらす光線であると考えられるため、可視光又は赤外線ILを用いるのが望ましい。
【0071】
また、光線として異なる波長を含むものを用いてもよい。例えば、赤色及び緑色などの可視域の光を用いて、色の違いによる吸収の違いを学ぶように変更することも可能である。
【0072】
上記実施の形態に係る実験教材1では、第2ブロック10bには、光線を減衰させる液体が充填されているようにしてもよい。このようにしても、光線の強度を減衰させる第2ブロック10bを実現することができる。
【0073】
上記実施の形態に係る実験教材1において、ブロック行列体4は、フレーム部材4aにブロック10が挿入されて構成されているものとしている。しかしながら、本発明はこれには限られない。ブロック10の側面を直接接するようにして、ブロック行列体4を構成するようにしてもよい。
【0074】
なお、ブロック行列体4の行方向のブロック10の数と列方向のブロック10の数は調整することができるようになっていてもよい。
図11(A)及び
図11(B)に示すように、行方向及び列方向のブロック10を任意とし、光源11と検出部12とを連結する連結部13をその長さを調整可能とし、ブロック10の行列の数に応じて調整できるようにすればよい。この場合、ハウジング2及び蓋3については、行列数に応じて異なるものを設けるようにしてもよいし、ハウジング2及び蓋3を、大きさを調整可能なものとしてもよい。
【0075】
また、ブロック10における光線の吸収率を、2段階ではなく、3段階以上とするようにしてもよい。例えば、第2ブロック10bに対して、吸収率が異なる第3ブロックをブロックとして配列に加えれば、より複雑なシチュエーションでのブロック配列の推定が可能となる。このような吸収率が異なるブロックは、フィルムを4面に貼ったり、複数枚重ねて貼ったりすることによって生成することができる。また、光線を可視光線とする場合には、吸収する色が異なるフィルムを貼ることにより、生成することができる。
【0076】
また、
図12に示すように、立方体で構成されるブロック行列体4を3次元行列の行列体とし、光をX軸,Y軸の2軸方向ではなく、ブロック行列体4をX軸,Y軸,Z軸方向から入射可能とし、コンピュータ断層撮影装置の構造にさらに近づけるようにしてもよい。
【0077】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
コンピュータ断層撮影装置の画像再構成の原理を理解するための実験教材として適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 実験教材、2 ハウジング、3 蓋、4 ブロック行列体、4a フレーム部材、5 光プローブ、10 ブロック、10a 第1ブロック(空きセル)、10b 第2ブロック(吸収セル)、11 光源、12 検出部、13 連結部、IL 赤外線