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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-25
(45)【発行日】2025-10-03
(54)【発明の名称】車体前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/15 20060101AFI20250926BHJP
【FI】
B62D21/15 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023180526
(22)【出願日】2023-10-19
(65)【公開番号】P2025070308
(43)【公開日】2025-05-02
【審査請求日】2024-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】石原 啓太
(72)【発明者】
【氏名】谷 直樹
【審査官】小林 瑛佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-301648(JP,A)
【文献】特表2022-525903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/15
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の下方に配置されるフロア部材と、
前記車室の前方の前記フロア部材よりも上方位置から前方に延出するフロントサイドフレームと、
前記フロア部材の前部から前上方に起立して前記車室の前方を覆うダッシュボードロアパネルと、
前記フロントサイドフレームの後部と前記フロア部材の前部を連結する一体鋳造部品である荷重伝達ブロックと、を備え、
前記荷重伝達ブロックは、
前記フロントサイドフレームの後部が固定されるフレーム固定部と、
前記フロア部材の前部が固定されるフロア固定部と、
前記ダッシュボードロアパネルに略沿って延在し、かつ前記フレーム固定部と前記フロア固定部を接続する接続壁と、を有し、
前記接続壁の上面側には、上方側に起立して前後方向に延びる上側補強リブが車幅方向に離間して複数設けられ、
前記フロア固定部の上面には、前記上側補強リブに連続する上側延長リブが設けられ、
前記フロア固定部の下面には、下方側に突出する複数のリブ要素が多方向を向いて延びる下側リブが設けられ、
前記上側延長リブの突出高さは、前記下側リブの突出高さよりも高く設定されていることを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記接続壁には、前記上側補強リブの上方で前記ダッシュボードロアパネルに固定されるパネル固定部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記フロア固定部の車幅方向の端部に近接する領域に配置される前記下側リブは、前記リブ要素の延出方向が車幅方向に向かないように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な搬送システムへのアクセスを提供する様々な取り組みが活発化している。この実現に向けて、車体剛性の向上に関する研究を通して交通の安全性や利便性をより一層改善することに注力している。
【0003】
車体の前部構造として、車両前部の左右の側方に一対のフロントサイドフレームが配置され、フロントサイドフレームの後部が荷重支持部材に連結された構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の車体前部構造は、前方から入力される衝撃荷重の大きさに応じてフロントサイドフレームを多段階に圧潰させることができる構造とされている。この車体前部構造の左右の各フロントサイドフレームの後部は、当該フロントサイドフレームよりも下方に位置される荷重支持部材に連結されている。この車体前部構造では、車両前方からの衝撃荷重の入力時に入力荷重をフロントサイドフレームの後部の荷重支持部材で確実に受け止めることにより、フロントサイドフレームの圧潰を確実なものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-82932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の車体前部構造は、前方からの衝撃荷重の入力時に荷重を受け止める荷重支持部材がフロントサイドフレームよりも下方にオフセットして配置されている。このため、衝撃荷重の入力時に、フロントサイドフレームの後部と荷重支持部材の連結部を中心として大きなモーメントが生じ易い。そして、このモーメントの発生は、フロントサイドフレームのスムーズな圧潰を阻害する可能性があり。この点の改善が望まれている。
【0007】
そこで本発明は、前方からの衝撃荷重の入力時に、フロントサイドフレームに入力される荷重をフロントサイドフレームの後部で剛的に受け止め、フロントサイドフレームのスムーズな圧潰を得ることができる車体前部構造を提供しようとするものである。そして、本発明は、延いては持続可能な搬送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車体前部構造は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
本発明の一態様に係る車体前部構造は、車室(例えば、実施形態の車室2)の下方に配置されるフロア部材(例えば、実施形態のフロア部材12)と、前記車室の前方の前記フロア部材よりも上方位置から前方に延出するフロントサイドフレーム(例えば、実施形態のフロントサイドフレーム10)と、前記フロア部材の前部から前上方に起立して前記車室の前方を覆うダッシュボードロアパネル(例えば、実施形態のダッシュボードロアパネル13)と、前記フロントサイドフレームの後部と前記フロア部材の前部を連結する一体鋳造部品である荷重伝達ブロック(例えば、実施形態の荷重伝達ブロック11)と、を備え、前記荷重伝達ブロックは、前記フロントサイドフレームの後部が固定されるフレーム固定部(例えば、実施形態のフレーム固定部17)と、前記フロア部材の前部が固定されるフロア固定部(例えば、実施形態のフロア固定部18)と、前記ダッシュボードロアパネルに略沿って延在し、かつ前記フレーム固定部と前記フロア固定部を接続する接続壁(例えば、実施形態の接続壁19)と、を有し、前記接続壁の上面側には、上方側に起立して前後方向に延びる上側補強リブ(例えば、実施形態の上側補強リブ20)が車幅方向に離間して複数設けられていることを特徴とする。
【0009】
本構成の車体前部構造の場合、フロントサイドフレームの前方から衝撃荷重が入力されると、その荷重が荷重伝達ブロックを介してフロア部材に伝達される。このとき、フロントサイドフレームから荷重伝達ブロックのフレーム固定部に入力された荷重は、下方に向かって後方傾斜する接続壁を通してフロア固定部に伝達される。このとき、接続壁の上面側には圧縮荷重が作用するが、その圧縮荷重は接続壁の上面側に設けられた複数の上側補強リブによって受け止められる。複数の上側補強リブは、上方に起立しかつ前後方向に延びているうえ、夫々が車幅方向に離間して配置されている。このため、接続壁の上面側に作用する圧縮荷重を効率良く受け止めることができる。
この結果、前方から衝撃荷重が入力されたフロントサイドフレームは、荷重支持ブロックによって後部側を剛的に支持され、前方側の延出領域がスムーズに圧潰するようになる。
【0010】
前記接続壁には、前記上側補強リブの上方で前記ダッシュボードロアパネルに固定されるパネル固定部(例えば、実施形態のパネル固定部23)が設けられるようにしても良い。
【0011】
この場合、接続壁の上側補強リブの上方位置において接続壁のパネル固定部がダッシュボードロアパネルに固定される。このため、衝撃荷重の入力時には、その荷重の一部がダッシュボードロアパネルによって受け止められる。これにより、荷重伝達ブロックの接続壁に伝達された衝撃荷重は、パネル固定部を通る経路とフロア固定部を通る経路とに分散して車室前部の荷重支持部材に伝達される。したがって、本構成を採用した場合には、フロア固定部の固定点に荷重が集中するのを避けることができる。
【0012】
前記フロア固定部の上面には、前記上側補強リブに連続する上側延長リブ(例えば、実施形態の上側延長リブ26)が設けられ、前記フロア固定部の下面には、下方側に突出するリブ要素(例えば、実施形態のリブ要素27a)が多方向を向いて延びる下側リブ(例えば、実施形態の下側リブ27)が設けられ、前記上側延長リブの突出高さは、前記下側リブの突出高さよりも高く設定されるようにしても良い。
【0013】
この場合、前方からの衝撃荷重の入力時には、フロア固定部の上側延長リブによって、接続壁とフロア固定部の連接部に作用する圧縮荷重を確実に受け止めることができる。また、本構成では、圧縮荷重が作用する上側延長リブの突出高さを、引っ張り荷重の作用する下側リブの突出高さよりも高くしている。このため、本構成を採用した場合には、接続壁とフロア固定部の変形や撓みを効率良く規制でき、しかも、複数のリブ要素が多方向を向いて延出する下側リブの実質な肉厚を薄くすることができる。
【0014】
前記フロア固定部の車幅方向の端部に近接する領域に配置される前記下側リブは、前記リブ要素の延出方向が車幅方向に向かないように設定することが望ましい。
【0015】
この場合、リブ要素が車幅方向に向かない領域では、車幅方向から衝撃荷重が入力されたときに、その部分が車幅方向に変形し易くなる。このため、車両の側方から衝撃荷重が入力されたときには、フロア固定部の車幅方向の外側領域をスムーズに変形させて入力衝撃を効率良く吸収することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る車体前部構造は、荷重伝達ブロックの接続壁の上面側に、上方側に起立して前後方向に延びる上側補強リブが車幅方向に離間して複数設けられている。このため、フロントサイドフレームの前方側から衝撃荷重が入力されたときに、荷重伝達ブロックの接続壁の上面側に作用する圧縮荷重を複数の上側補強リブによって効率良く受け止めることができる。したがって、本発明に係る車体前部構造を採用した場合には、前方からの衝撃荷重の入力時に、フロントサイドフレームに入力される荷重をフロントサイドフレームの後部で剛的に受け止め、フロントサイドフレームのスムーズな圧潰を得ることができる。よって、入力された衝撃荷重のエネルギーをフロントサイドフレームのスムーズな圧潰によって効率良く吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の車両の前部の斜視図。
図2】実施形態の車両の前部の側面図。
図3】実施形態の荷重伝達ブロックを後部上方側から見た斜視図。
図4図3のIV-IV断面に対応する車両の前部の断面図。
図5】実施形態の荷重伝達ブロックの下面図。
図6】実施形態の荷重伝達ブロックを下方側から見た斜視図。
図7図4の断面に対して車幅方向に僅かにずれた位置で荷重伝達ブロックを切った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図面の適所には、車両の前方を指す矢印FRと、車両の上方を指す矢印UPと、車両の左側方(前方に向かっての左側方)を指す矢印LHが記されている。
【0019】
図1は、本実施形態の車両1の前部の斜視図であり、図2は、車両1の前部を左側方から見た側面図である。
図1図2中の符号2は、乗員が乗車する車室であり、符号3は、車室2の前方において、駆動用のモータやエンジン等が収容されるフロントコンパートメントである。フロントコンパートメント3の車幅方向の両側には、車体前後方向に略沿って延出するフロントサイドフレーム10が配置されている。左右のフロントサイドフレーム10の後端部は、後に詳述する荷重伝達ブロック11を介して車室2の前部の骨格部材に連結されている。
【0020】
車室2の下部側の左右の側部には、車体前後方向に略沿って延出するサイドシル4が配置されている。左右のサイドシル4には、車室2の下方に配置されるフロアパネル5が架設されている。フロアパネル5は、車体の前後方向と幅方向に延びる図示しない複数の補強フレームによって補強されている。
本実施形態では、フロアパネル5とこれらの補強フレームを合わせてフロア部材12と称する。なお、左右のフロントサイドフレーム10は、フロア部材12よりも上方位置から前方に延出している。
【0021】
車室2の前部とフロントコンパートメント3の間は、ダッシュボードロアパネル13によって仕切られている。ダッシュボードロアパネル13は、下端がフロア部材12の前縁部に連結され、フロア部材12の前部から前上方に傾斜するように起立している。ダッシュボードロアパネル13の上部は、カウルトップパネル14やその他の骨格部材に連結されている。
【0022】
左右のサイドシル4の前端部には、フロント側のドア開口の前縁を構成するフロントピラー6が連結されている。各フロントピラー6の上部の前面側には、フロントコンパートメント3の車幅方向の外側位置において、車体前後方向に略沿って延出するアッパメンバ7が連結されている。アッパメンバ7は、左右のフロントピラー6から車体の前部下方に向かって湾曲し、前端部がフロントサイドフレーム10の前端部の外側側方位置まで延出している。各アッパメンバ7の前端部は、図示しない連結部材を介して左右の対応するフロントサイドフレーム10の前端部に連結されている。
左右のアッパメンバ7の基部(後部領域)には、後に詳述する荷重伝達ブロック11の左右上部のダンパハウジング部15が連結されている。ダンパハウジング部15は、図示しないフロントサスペンションのダンパの上部を支持する。
【0023】
図3は、荷重伝達ブロック11を後部上方側から見た斜視図である。また、図4は、図3のIV-IV断面に対応する車両の前部の断面図である。
荷重伝達ブロック11に固定される左右の各フロントサイドフレーム10は、図1図4に示すように、角筒状(四角筒状)のフレーム形状に形成されている。フロントサイドフレーム10は、後端部が後述する荷重伝達ブロック11のフレーム固定部17に差し込まれ、その状態でフレーム固定部17に複数のボルト35A,35B(締結部材)によって固定されている。フロントサイドフレーム10は、例えば、アルミや鉄系金属等よって形成されている。
【0024】
フロントサイドフレーム10は、フロントコンパートメント3内に配置される駆動系部品やサスペンション部材を支持する骨格部材であるが、車両前方からの衝撃荷重の入力時には、前後方向に圧潰することによって衝撃荷重のエネルギーを吸収する。フロントサイドフレーム10の左右の側壁には、図2に示すように、上下方向に沿って延出する複数のビード21が設けられている。複数のビード21は、フロントサイドフレーム10の側壁に前後方向に離間して配置されている。フロントサイドフレーム10は、この複数のビード21により、衝撃荷重の入力時における蛇腹状の圧潰変形を促される。
なお、この上下方向に延出するビード21は、フロントサイドフレーム10の側壁の前後方向の中間領域から前部領域にのみ設けられている。フロントサイドフレーム10の側壁の後部領域には、前後方向に沿って延出する複数のビード22が設けられている。フロントサイドフレーム10は、この前後方向に沿って延出するビード22により、衝撃荷重の入力時における圧潰開始初期の後部領域の変形を規制される。
【0025】
図5は、荷重伝達ブロック11の左半部領域の下面図である。図6は、荷重伝達ブロック11の左半部領域を前側下方から見た斜視図である。また、図7は、図4の断面に対して車幅方向に僅かにずれた位置で荷重伝達ブロック11を切った断面図である。
荷重伝達ブロック11は、図3に示すように、左右対称形状に形成されている。荷重伝達ブロック11は、左側領域と右側領域の夫々に、ダンパハウジング部15と、フレーム固定部17と、接続壁19と、フロア固定部18と、が設けられている。これらの要素を持つ荷重伝達ブロック11は、例えば、アルミ等によって一体に鋳造されている。つまり、荷重伝達ブロック11は、上記の構成要素を持つ一体鋳造部品である。
【0026】
ダンパハウジング部15は、前述のようにフロントサスペンションのダンパの上部を支持する部分であり、図1に示すように、フロントサイドフレーム10よりも上方で、かつフロントサイドフレーム10よりも車幅方向の外側位置に配置されている。ダンパハウジング部15は、下向きの椀状(下向きの有底筒状)に形成され、その椀状部の下方側(内側)にダンパが配置されている。ダンパハウジング部15は、その頂部においてフロントサスペンションのダンパの上部を支持している。
【0027】
ダンパハウジング部15は、前述のように左右の対応するアッパメンバ7の基部にボルト締結等によって連結されている。また、アッパメンバ7に連結された左右のダンパハウジング部15には、カウルトップパネル14が架設されている。カウルトップパネル14の左右の端部は、ボルト締結等によって左右の対応するダンパハウジング部15に連結されている。
【0028】
フレーム固定部17は、ダンパハウジング部15の車幅方向内側の側壁15sの下方に連設されている。フレーム固定部17は、フロントサイドフレーム10の後部を固定する部分であり、車体前後方向に延出する略長方体のブロック形状に形成されている。フレーム固定部17のブロック部分には、図4に示すように、フロントサイドフレーム10の後部が挿入される正面視が四角形状の凹部30が設けられている。凹部30は、車両前方側に向かって開口し、開口側と逆側の底部には荷重受け用のリブ31が突設されている。リブ31は、凹部30の底壁30aから車両前方側に向かって突出する荷重支持壁であり、二つのリブ片が正面視でX字形状を成すように交差している。リブ31の前端面は全域が平坦になるように形成されている。リブ31の前端面は、凹部30にフロントサイドフレーム10が挿入されたときに、フロントサイドフレーム10の後端面に微小な隙間を挟んで対向する。
前方からの衝撃荷重の入力時にフロントサイドフレーム10の後部が後退しようとした場合には、フロントサイドフレーム10の後端面がリブ31の前面に当接する。フロントサイドフレーム10は、それによって過大な後退変位を規制される。
【0029】
また、フレーム固定部17のブロック部の前面側には、凹部30の上側の開口縁に連なる荷重支持壁32が設けられている。荷重支持壁32は、車体前後方向と直交する平坦な壁であり、凹部30の上側の開口縁から鉛直上方に起立している。
【0030】
フロントサイドフレーム10の後部寄りの上面には、側面視が略L字状のブラケット33が溶接等によって固定されている。ブラケット33の起立片33aは、フレーム固定部17の荷重支持壁32の前面に突き当てられ、その状態でボルト34(締結部材)によって荷重支持壁32に固定されている。ボルト34は、軸部が車体前後方向に沿って延び、荷重支持壁32への締め込みにより、フロントサイドフレーム10の車体前後方向の変位を規制している。
【0031】
また、フレーム固定部17の凹部30に差し込まれたフロントサイドフレーム10の後部は、複数のボルト35A,35B(締結部材)によって凹部30の下壁と一方の側壁に締結固定されている。ボルト35Aは、凹部30の下壁を貫通し、下壁の上面に突設された鉄系金属から成る筒状ナット36に締め込まれている。同様に、ボルト35Bは、凹部30の側壁を貫通し、側壁の内面に突設された鉄系金属から成る筒状ナット36に締め込まれている。
【0032】
フロントサイドフレーム10の後部領域の内部には、水平方向に延在して当該フロントサイドフレーム10の左右の側壁を連結する補強壁37(バルクヘッド)が設けられている。この補強壁37は、フロントサイドフレーム10の後端部から、ブラケット33及びボルト34によるフロントサイドフレーム10とフレーム固定部17の連結部よりも前方側位置まで延出している。補強壁37は、フロントサイドフレーム10とフレーム固定部17のボルト35A,35Bによる連結部とブラケット33及びボルト34による連結部を前後方向に跨ぐように延在している。
【0033】
荷重伝達ブロック11のフロア固定部18は、フロア部材12の前縁部に沿うように車幅方向に延出している。フロア固定部18は、上下に充分な肉厚を持つ長尺な板状に形成されている。フロア固定部18の車幅方向の外側部分には、車体後方側に向かって台形状に膨出する膨出部18eが設けられている。フロア固定部18の膨出部18eを含むほぼ全域には、上下方向に貫通する複数の締結孔38が形成されている。締結孔38は、上下方向に貫通している。各締結孔38には、フロア固定部18をフロア部材12に締結する固定するためのボルト39(図2参照)の軸部が挿入可能とされている。
また、荷重伝達ブロック11の左右対称な左側領域と右側領域は、左側領域のフロア固定部18と右側領域のフロア固定部18において相互に連結されている。具体的には、図3に示すように、左側領域のフロア固定部18と右側領域のフロア固定部18が車幅方向のほぼ中央位置において、連結ブロック部40によって相互に連結されている。
【0034】
荷重伝達ブロック11の接続壁19は、車室2の前部に配置されるダッシュボードロアパネル13の前面に略沿うように延在し、フレーム固定部17とその下方のフロア固定部18を接続している。接続壁19は、上述したフロア固定部18と同様に充分な肉厚を持つ板状に形成されている。接続壁19は、連続した板形状をなすように下方のフロア固定部18に滑らかに連なっている。
【0035】
接続壁19は、上端部がフレーム固定部17のブロック部の後部下端に連設されている。接続壁19は、このフレーム固定部17との接続部を頂点として下方に向かって末広がり状に車幅方向の幅が拡大している。つまり、接続壁19は、正面視がほぼ二等辺三角形状をなすように形成されている。接続壁19の幅が末広がり状に広がった下端領域はフロア固定部18に連続している(接続されている)。
【0036】
接続壁19の上面側には、上方側に起立して前後方向(斜め前後方向)に延びる複数の上側補強リブ20が突設されている。複数の上側補強リブ20は、接続壁19の上面側に車幅方向に離間し、かつ相互に平行になるように形成されている。
【0037】
また、図3図4に示すように、接続壁19の車幅方向の幅の狭まった上部領域の上面には、一部が段状に窪んで上面が平坦なパネル固定部23が形成されている。
これに対し、荷重伝達ブロック11の後部上方側に対峙して配置されるダッシュボードロアパネル13は、接続壁側のパネル固定部23と対向する位置に、断面が略L字状の屈曲壁24が設けられている。この屈曲壁24は、ダッシュボードロアパネル13に一体に形成しても、別体部品として形成してダッシュボードロアパネル13に接続するようにしても良い。屈曲壁24の一面は、荷重伝達ブロック11の接続壁に形成されたパネル固定部23の上面に重ねられる。パネル固定部23は、この状態でボルト25(締結部材)によって屈曲壁24(ダッシュボードロアパネル13)に締結固定されている。
【0038】
ここで、パネル固定部23は上述のように接続壁19の車幅方向の幅の狭まった上部領域の上面に形成されているが、接続壁19の上面のパネル固定部23の直下には前後方向に延出する上側補強リブ20が配置されている。つまり、パネル固定部23は、一部の上側補強リブ20の前上方位置に位置されている。
【0039】
図3図4図7に示すように、フロア固定部18の上面側には、接続壁19上の上側補強リブ20に連続する上側延長リブ26が設けられている。各上側延長リブ26は、対応する上側補強リブ20に連続するように前後方向に延出している。
【0040】
また、図5図7に示すように、フロア固定部18の下面側には、下方に向かって突出する下側リブ27が設けられている。下側リブ27は、下方側に突出する複数のリブ要素27aが多方向に向かって延び、リブ要素27a同士が相互に連結されている。また、リブ要素27aの一部は、フロア固定部18の外側輪郭をなす周壁部18aに連結されている。下側リブ27のリブ要素27aは、他のリブ要素27aや周壁部18aに連結されることにより、フロア固定部18の下面側にトラス構造や筒状構造等を含む強度の高い構造部を形成している。
なお、下側リブ27は、接続壁19の下面側にも連続して形成されている。
【0041】
また、図7に示すように、フロア固定部18の上面側に設けられる上側延長リブ26の突出高さH1は、フロア固定部18の下面側に設けられる下側リブ27高さよりも高く設定されている。
【0042】
また、図5に示すように、フロア固定部18のうちの側端部に近接する領域に配置される下側リブ27は、リブ要素27aが車幅方向に向かないように設定されている。
【0043】
<実施形態の効果>
以上のように、本実施形態の車体前部構造は、フレーム固定部17と、フロア固定部18と、接続壁19と、を有する一体鋳造部品である荷重伝達ブロック11を備えている。そして、ダッシュボードロアパネル13に略沿って延在し、かつフレーム固定部17とフロア固定部18を接続する接続壁19の上面側に、上方側に起立して前後方向に延びる上側補強リブ20が車幅方向に離間して複数設けられている。このため、フロントサイドフレーム10の前方側から衝撃荷重が入力されたときには、荷重伝達ブロック11の接続壁19の上面側に作用する圧縮荷重を複数の上側補強リブ20によって効率良く受け止めることができる。したがって、衝撃荷重の入力によってフロントサイドフレーム10に作用するモーメントによるフロントサイドフレーム10の動きを荷重伝達ブロック11とフロア部材12によって押さえ込むことができる。この結果、フロントサイドフレーム10の後部側が荷重伝達ブロック11によって剛的に支持されることになり、フロントサイドフレーム10の前方側の延出領域をスムーズに圧潰させることが可能になる。
よって、本実施形態の車体前部構造を採用した場合には、入力された衝撃荷重のエネルギーをフロントサイドフレーム10のスムーズな圧潰によって効率良く吸収することができる。
【0044】
特に、本実施形態の車体前部構造では、荷重伝達ブロック11のフレーム固定部17の上部にダンパハウジング部15が一体に形成され、そのダンパハウジング部15が車体側部の骨格部材であるアッパメンバ7に連結されている。このため、車両前方から衝撃荷重が入力されたときにフロントサイドフレーム10の後部の変位をより剛的に押さえ込むことができる。したがって、本構成を採用した場合には、車両前方からの衝撃荷重の入力時にフロントサイドフレーム10の延出領域をよりスムーズに圧潰させることができる。
また、本実施形態では、ダンパハウジング部15が荷重伝達ブロック11と一体に形成されているため、ダンパハウジングを別部品として設ける場合にに比較して車両の構成部品の部品点数を削減することができ、製品コストの削減や組付けの容易化を図ることができる。
【0045】
また、本実施形態の車体前部構造は、荷重伝達ブロック11の接続壁19に、上側補強リブ20の上方でダッシュボードロアパネル13に固定されるパネル固定部23が設けられている。このため、前方から衝撃荷重の入力時には、その荷重の一部が上側補強リブ20の上方位置においてダッシュボードロアパネル13によって受け止められる。この結果、荷重伝達ブロック11の接続壁19に伝達された衝撃荷重は、パネル固定部23を通る経路とフロア固定部18を通る経路とに分散して車室前部の荷重支持部材に伝達される。したがって、本構成を採用した場合には、フロア固定部18の固定点に荷重が集中するのを避けることができる。
【0046】
また、本実施形態の車体前部構造は、荷重伝達ブロック11のフロア固定部18の上面側に、上側補強リブ20に連続する上側延長リブ26が設けられ、フロア固定部18の下面側に下側リブ27が設けられている。そして、下側リブ27は、下方側に突出するリブ要素27aが多方向を向て延びる構造とされている。このため、前方からの衝撃荷重の入力時には、フロア固定部18の上側延長リブ26によって、接続壁19とフロア固定部18の連接部に作用する圧縮荷重を確実に受け止めることができる。また、フロア固定部18の多様な方向の剛性を下側リブ27によって高めることができる。
さらに、本実施形態では、上側延長リブ26の突出高さが、下側リブ27の突出高さよりも高く設定されている。このため、前方からの衝撃荷重の入力時における接続壁19とフロア固定部18の変形や撓みを上側延長リブ26によって効率良く規制でき、しかも、複数のリブ要素27aが多方向を向いて延出する下側リブ27の実質な肉厚を薄くすることができる。したがって、フロア固定部18の実質的な厚みを薄くしたまま、接続壁19とフロア固定部18の連接部の剛性を高く保つことができる。
【0047】
また、本実施形態の車体前部構造は、フロア固定部18のうちの車幅方向の端部に近接する領域に配置される下側リブ27が、リブ要素27aの延出方向が車幅方向に向かないように設定されている。このため、車両1の側方から衝撃荷重が入力されたときには、フロア固定部18の車幅方向の外側領域をスムーズに変形させて入力衝撃を効率良く吸収することができる。
【0048】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、荷重伝達ブロック11の各接続壁19の上部にパネル固定部23が一つのみ設けられているが、パネル固定部23は各接続壁19に複数設けるようにしても良い。
【0049】
また、上記の実施形態では、荷重伝達ブロック11にダンパハウジング部15が一体に形成されているが、荷重伝達ブロック11には必ずしもダンパハウジング部15を一体に設けなくても良い。
【0050】
また、上記の実施形態の場合、荷重伝達ブロック11は、左側のフロントサイドフレーム10が固定される左領域のブロックと、右側のフロントサイドフレーム10が固定される右領域のブロックが一体に形成されている。しかし、荷重伝達ブロックは、左領域のブロックと右領域のブロックを別部品として構成するようにしても良い。
【0051】
さらに、上記の実施形態では、荷重伝達ブロック11のフロア固定部18に上側延長リブ26と下側リブ27が設けられているが、上側延長リブ26や下側リブ27は必ずしも設けなくても良い。また、複数のリブ要素が多方向を向いて延出するリブをフロア固定部18の上面側と下面側の両方に設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0052】
2…車室
10…フロントサイドフレーム
11…荷重伝達ブロック
12…フロア部材
13…ダッシュボードロアパネル
17…フレーム固定部
18…フロア固定部
19…接続壁
20…上側補強リブ
23…パネル固定部
26…上側延長リブ
27…下側リブ
27a…リブ要素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7