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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-25
(45)【発行日】2025-10-03
(54)【発明の名称】ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20250926BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20250926BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20250926BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20250926BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20250926BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K9/04
C08K3/36
C08L9/06
B60C1/00 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2024503784
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2022070335
(87)【国際公開番号】W WO2023001882
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2024-03-11
(31)【優先権主張番号】21187220.5
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】クラウディア アーリシチオ
(72)【発明者】
【氏名】ラファエレ ディ ロンザ
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ バジーレ
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-513786(JP,A)
【文献】特開2019-214639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物であって、
ジエンゴム成分と、並びに
充填剤系であり、
1つ以上のカルボン酸基、またはその塩もしくはエステルの導入により表面官能基化され、BET比表面積250~310m/gかつCTAB比表面積230~285m/gを有する第1のシリカ、および
表面官能基化されておらず、BET比表面積60~120m/gかつCTAB比表面積55~105m/gを有する第2のシリカ、
を含み、
ここで、BET比表面積は、NF ISO 5794-1規格、付録D(2010年6月)に従って測定し、CTAB比表面積は、ASTM D6845に従って測定するものである、該充填剤系と、
を備える、ゴム組成物。
【請求項2】
請求項1記載のゴム組成物において、前記第2のシリカと前記第1のシリカとの重量比が0.15~0.60である、ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のゴム組成物において、前記充填剤系は、ゴム組成物100phrに対して、90~130phrの範囲で存在する、ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載のゴム組成物において、前記第1のシリカは、ゴム組成物100phrに対して、55~120phrの範囲で存在する、および/または、
前記第2のシリカは、ゴム組成物100phrに対して、10~40phrの範囲で存在する、ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1または請求項2記載のゴム組成物において、前記第1のシリカは、1以上のポリカルボン酸で表面官能基化されている、ゴム組成物。
【請求項6】
請求項5記載のゴム組成物において、前記以上のポリカルボン酸が、アジピン酸、コハク酸、エチルコハク酸、グルタル酸、メチルグルタル酸、シュウ酸、およびクエン酸よりなる群から選択される1種以上である、ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1または請求項2記載のゴム組成物において、前記第1のシリカは、以下の特性、すなわち、
- 官能基化シリカの炭素含有量が、少なくとも0.10重量%である、
- 物体サイズ分布幅比(Ld)が、少なくとも0.91である、
- 細孔容積分布比が、少なくとも0.65である、
のうち1つ以上によってさらに特徴付けられる、ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1または請求項2記載のゴム組成物において、前記第1のシリカのpHは、2.5~7である、ゴム組成物。
【請求項9】
請求項1または請求項2記載のゴム組成物において、前記ジエンゴム成分は、少なくとも1つのスチレン-ブタジエン共重合体(SBR)を含む、ゴム組成物。
【請求項10】
請求項1または請求項2記載のゴム組成物において、前記ジエンゴム成分は、少なくとも1つの溶液重合スチレン-ブタジエン共重合体(SSBR)を含む、ゴム組成物。
【請求項11】
請求項9記載のゴム組成物において、前記スチレン-ブタジエン共重合体は、ヒドロカルビルオキシシラン化合物で末端基官能基化されたSSBRである、ゴム組成物。
【請求項12】
請求項11記載のゴム組成物において、前記末端基官能基化SSBRは、-65~-15℃の範囲のTgを有する、ゴム組成物。
【請求項13】
請求項9記載のゴム組成物において、前記ジエンゴム成分は、少なくとも1つの追加のジエンゴムポリマーをさらに含む、ゴム組成物。
【請求項14】
請求項13記載のゴム組成物において、前記ジエンゴム成分は、追加のスチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、またはイソブチレン-イソプレンゴム(IIR)を含む、ゴム組成物。
【請求項15】
請求項14記載のゴム組成物において、前記ジエンゴム成分は、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム共重合体(SSBR)と乳化重合スチレン-ブタジエンゴム共重合体(ESBR)とのブレンドを含む、ゴム組成物。
【請求項16】
請求項1または請求項2記載のゴム組成物において、前記第1のシリカは、メチルグルタル酸で表面官能基化されており、また前記ジエンゴム成分がヒドロカルビルオキシシラン化合物で末端基官能基化されたスチレン-ブタジエン共重合体を含む、ゴム組成物。
【請求項17】
請求項16記載のゴム組成物において、前記ヒドロカルビルオキシシラン化合物が下記[化1]の一般式(IV)すなわち、
【化1】
の化合物であり、
ここで、n1+n2+n3+n4=4であり、ただし、n2は1~4の整数であり、n1、n3およびn4はそれぞれ0~3の整数であり、
は、飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアネート基(イソシアネート基またはチオイソシアネート基を表す)、(チオ)エポキシ基、トリヒドロカルビルイソシアヌレート基、ジヒドロカルビル炭酸基、ニトリル基、ピリジン基、(チオ)ケトン基、(チオ)アルデヒド基、アミド基、(チオ)カルボキシレート基、(チオ)カルボキシレート金属塩基、カルボン酸無水物残基、カルボン酸ハロゲン化物残基、および第一級または第二級アミノ基またはメルカプト基を含む加水分解性基から選択される少なくとも1つの官能基を表し、
n4が2以上の場合、各Aは同一でも異なっていてもよく、
またはAはSiに結合して環状構造を形成する2価の基となり得るものであり、
21は、1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基を表し、
n1が2以上の場合、各R21は同一でも異なっていてもよく、
23は、1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基、またはハロゲン原子を表し、
n3が2以上の場合、各R23は同一でも異なっていてもよく、
22は、1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基を表し、任意に窒素原子および/またはケイ素原子を有する、
n2が2以上の場合、各R22は同一でも異なっていてもよい、または互いに結合して環を形成してもよく、
24は、1~20個の炭素原子を有する二価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する二価の芳香族炭化水素基を表し、
n4が2以上である場合、各R24は同一若しくは異なるものとすることができる、
ゴム組成物。
【請求項18】
請求項11記載のゴム組成物において、前記溶液重合スチレン-ブタジエンゴム共重合体(SSBR)は、ゴム組成物100phrに対して、60~100phrの範囲で存在する、ゴム組成物。
【請求項19】
請求項1または請求項2記載のゴム組成物において、ゴム組成物が加硫されている、ゴム組成物。
【請求項20】
請求項1または請求項2記載のゴム組成物から作られたタイヤ構成要素を備える、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、その調製方法、および車両用タイヤおよび車両用タイヤ構成要素の製造におけるそれらの使用に関するものである。特に、タイヤトレッドを製造するためのこのような組成物の使用に関するものである。本発明はさらに、これらのゴム組成物から製造されたゴム製品および車両用タイヤに関するものである。
【0002】
より具体的には、本発明は、2つの異なるシリカ充填剤の組み合わせからなる補強充填剤系を含むゴム組成物に関するものである。ジエンゴム組成物中の補強充填剤として使用すると、この充填剤系により、ウェット性能、転がり抵抗、および耐摩耗特性のバランスが改善される。
【背景技術】
【0003】
二酸化炭素(CO)排出量削減に向けた世界的な動きに伴い、低燃費の車両に対する需要が高まっている。この需要に応えるために、タイヤには転がり抵抗の低減が求められている。また、乾いた路面および濡れた路面のいずれにおいても、タイヤが優れたグリップ性能を有することは重要であり、特に濡れた路面でのグリップ性能(ウェット性能)は重要である。高い耐摩耗性も、タイヤを長持ちさせるための重要な要素である。ウェット性能(「WET」)、転がり抵抗(「RR」)、耐摩耗性(「WEAR」)を合わせて、粘弾性特性の「マジックトライアングル」として知られている。しかし、転がり抵抗と耐摩耗性に悪影響を与えることなくタイヤのグリップ性能を改善することは非常に困難であり、これらの特性のバランスを改善したタイヤの製造が求められている。
【0004】
その動的/機械的特性を調整するために、タイヤ製造のためのゴム組成物の成分を変更することができる。一般的には、改質ゴム、ゴム混合物の使用、および/またはゴム組成物への補強充填剤(フィラー)の組み込みが含まれる。
【0005】
天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴムなどのジエンゴムは、共役炭素-炭素二重結合を有するジオレフィンから誘導される繰り返し単位を含む。合成ジエンゴムの特性は、ジオレフィンモノマーと他のモノマーとを共重合させることによって特別に調整することができ、幅広い用途に使用されている。ジエンゴムには、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、イソブチレン-イソプレンゴム(IIR)、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム(SIBR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)が含まれ、一般的に、自動車産業の部品、例えばタイヤトレッドなどのタイヤの部品の製造に使用されている。
【0006】
ジエンゴムから作られるゴム化合物の機械的特性は、シリカやカーボンブラックなどの補強充填剤を配合することで改善される。カーボンブラックは、充填剤(フィラー)として一般的に使用されている最初の材料であったが、最近では、シリカが従来のカーボンブラックの使用に代替されつつある。シリカ充填剤を使用することで、転がり抵抗の低減や、特に濡れた路面でのトラクションの向上など、ゴムの特性が改善される。
【0007】
要求される機械的特性を備えた高性能ゴム化合物を製造する場合、あらゆる補強充填剤の分散および充填剤-ゴムの相互作用が重要となる。シリカの表面に極性シラノール基が存在すると、シリカが酸性になり、吸湿性が高くなる。これによって、シリカの凝集が起こり、ゴム母材中での分散が悪くなり、化合物の粘度の増大及び補強特性の損失を引き起こす。表面修飾剤または「被覆剤(covering agents)」としてのシランの使用など、シリカの表面化学を調整するために、さまざまなその場処理が提案されている。シランカップリング剤は、ゴムを配合する際にシリカとジエンゴム鎖の間に共有結合を形成するためにも使用される。シランカップリング剤は、ジエンゴム母材中の充填剤の分散性を改善し、シリカとゴムとの間の相互作用を強化してゴム化合物を補強する。炭化水素ゴムの補強剤として使用する表面修飾シリカゲルについては、例えば特許文献1(WO 03/097737)に記載されている。
【0008】
一般に、高補強グレードのシリカの使用は、タイヤトレッドゴムの耐摩耗性を改善することが知られており、一方、低補強グレードのシリカは、ウェット性能および転がり抵抗を改善することが知られている。これらの異なる特性を利用するために、特許文献2(US Patent No. 6,506,829)では、異なる細孔径分布最大値(「PSD」)と平均比表面積(「SSA」)によって特徴付けられる高補強グレードと低補強グレードのシリカをブレンドして使用することを提案している。Z1165MP(Rhodia社から販売されている高補強グレードのシリカ、BET SSAが175m/g、PSDが35nm)およびZ1115MP(Rhodia社から販売されている低強化グレードのシリカ、BET SSAが125m/g、PSDが60nm)を1:1でブレンドしたゴム組成物が開示されている。この組成物は高い引張強さおよび高い硬度を有し、有益なハンドリング特性およびトラクションの改善をもたらす。100℃での高反発値は転がり抵抗に有利であり、23℃での低反発値はウェットグリップ特性に有利である。
【0009】
改善された動的特性を有するゴム組成物用の代替シリカ充填剤の追求において、予め官能基化された沈降シリカが提案されている。例えば、特許文献3(WO 2015/121333)では、沈降シリカの液化中または液化後に、少なくとも1種のポリカルボン酸を使用する沈降シリカの新規調製法を提案している。
【0010】
タイヤトレッドにおけるエネルギーの散逸、ひいては転がり抵抗への重要な寄与は、ポリマー鎖の遊離末端、および充填剤によって形成される充填剤ネットワークの劣化に起因する。ポリマー鎖の末端への官能基の導入により、ポリマー鎖の末端を充填剤表面に物理的または化学的に付着させることができる。このため、カルボキシル基やシランなどの官能基を用いたポリマーの様々な末端基修飾の使用が提案されている。シランによるカルボキシル基の導入も、例えば特許文献4(WO 2014/173706)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第03/097737号パンフレット
【文献】米国特許第6,506,829号明細書
【文献】国際公開第2015/121333号パンフレット
【文献】国際公開第2014/173706号パンフレット
【文献】欧州特許第3725837号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本技術分野では、ウェット性能、転がり抵抗および耐摩耗性が改善されたタイヤを提供する必要性が引き続き存在する。特に、WET/RR特性とWEAR性能のバランスが改善されたタイヤを製造する必要がある。
【0013】
本発明者らは、特定のブレンドのシリカを含むジエンゴム組成物が、優れた耐摩耗性、転がり抵抗、およびウェット性能を有し、これらの特性の優れたバランスを見出した。特に、表面官能基化されたシリカ(すなわち、「予め官能基化された」シリカ)および表面官能基化されていないシリカ、すなわち、「非官能基化」シリカまたは「予め官能基化されていない」シリカの組み合わせからなる充填剤系で補強されたゴム組成物から製造されたゴム製品のこれらの粘弾性特性に関して、相互作用効果および/または相乗効果が観察されることを見出した。これらの特性は、非官能基化シリカに基づく対応する充填剤系と比較して改善されている。さらに、本発明者らは、驚くべきことに、この効果は、補強充填剤の総量が減少しても観察されることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、1つの態様において、本発明は、以下を含むゴム組成物を提供し、このゴム組成物は
ジエンゴム成分と、並びに
充填剤系であって、
1つ以上の官能基の導入により表面官能基化され、BET比表面積250~310m/gかつCTAB比表面積230~285m/gを有する第1のシリカ、および
表面官能基化されておらず、BET比表面積60~120m/gかつCTAB比表面積55~105m/gを有する第2のシリカ
を含む、該充填剤系と、
を備える。
【0015】
別の態様では、本発明は、ゴム組成物の製造工程を提供し、本明細書において定義される充填剤系をジエンゴム成分中に分散させるステップを備える。
【0016】
別の態様では、本発明は、本明細書で定義される充填剤系をその中に分散させたジエンゴム成分を含む加硫可能なゴム組成物を提供する。
【0017】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の加硫可能なゴム化合物を架橋することによって直接得られる、または架橋することによって得ることが可能な加硫ゴム化合物を提供する。
【0018】
別の態様では、本発明は、加硫ゴム化合物を生産するプロセスを提供し、この生産するプロセスは、本明細書において定義されるようなジエンゴム成分にシリカ充填剤系を導入し、それによって加硫可能なゴム組成物を生産するステップと、および該加硫可能なゴム組成物を、所定温度および所定時間加熱することによって加硫させるステップと、を備える。
【0019】
別の態様では、本発明は、車両用タイヤの部品として、または車両用タイヤの部品の製造における、本明細書に記載のゴム組成物の使用を提供する。
【0020】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のゴム組成物から製造された車両用タイヤ構成要素を提供する。
【0021】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の車両用タイヤ構成要素を備える車両用タイヤを提供する。
【0022】
別の態様では、本発明は、シリカ充填剤系であって、
1つ以上の官能基の導入により表面官能基化され、BET比表面積250~310m/gかつCTAB比表面積230~285m/gを有する第1のシリカと、並びに
表面官能基化されておらず、BET比表面積60~120m/gかつCTAB比表面積55~105m/gを有する第2のシリカと、
を備える、該シリカ充填剤系を提供する。
【0023】
[発明の詳細な説明]
一態様によれば、本発明は、ゴム組成物であって、
ジエンゴム成分と、並びに
充填剤系であり、
1つ以上の官能基の導入により表面官能基化され、BET比表面積250~310m/gおよびCTAB比表面積230~285m/gを有する第1のシリカ、および
表面官能基化されておらず、BET比表面積60~120m/gおよびCTAB比表面積55~105m/gを有する第2のシリカ
を含む、該充填剤系と、
を備える、ゴム組成物を提供する。
【0024】
本明細書で使用する「ゴム(rubber)」という用語には、天然ゴムおよび合成ゴムを含むことを意図している。「ゴム(rubber)」および「エラストマー(elastomer)」という用語は、本明細書では特に明記しない限り、互換可能に使用する。特に明記しない限り、「ゴム組成物(rubber composition)」、「配合ゴム(compounded rubber)」および「ゴム化合物(rubber compound)」という用語は、本明細書では互換可能に使用し、様々な成分または材料とブレンドまたは混合(すなわち配合)されたゴムを指し、このような用語は当該技術分野において周知であり理解されている。
【0025】
本発明は、未加工状態(すなわち、硬化または加硫前)および硬化または加硫状態(すなわち、架橋または加硫後)の両方のゴム組成物に関する。
【0026】
本発明によるゴム組成物において、本明細書に記載のシリカ充填剤系は、ジエンゴム成分中に分散され、補強充填剤として作用する。「ジエンゴム成分(diene rubber component)」という用語は、少なくとも1つのジエンゴムからなるエラストマー母材(マトリックス)を指す。本明細書で使用する場合、「ジエンゴム(diene rubber)」という用語は、少なくとも1つの共役ジオレフィンモノマーから誘導される繰り返し単位を含むゴムを指す。ジオレフィンモノマーと共重合可能なモノマーから誘導される1つ以上の追加単位を有するホモポリマーおよび共重合体を含む。繰り返し単位は、ポリマーの主鎖および/または側鎖に存在し得る炭素-炭素二重結合を有する。ジエンゴムは天然ゴムまたは合成ゴムでもよい。
【0027】
本発明の組成物に使用するための充填剤系は、本明細書で定義される比表面積特性を有する第1の「官能基化」シリカおよび第2の「非官能基化」シリカからなる。本明細書における「シリカ(silica)」または「シリカ充填剤(silica filler)」への言及は、粒子状シリカを指す。ジエンゴム成分を補強することができる既知のタイプの粒子状シリカであれば、本発明で使用することができる。理解されるように、既知のシリカ材料は、通常、一部の他の成分(例えば不純物として)を含むが、主成分は二酸化ケイ素、すなわちSiOである。二酸化ケイ素の含有量は、一般に少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、例えば少なくとも97重量%である。
【0028】
「官能基化シリカ(functionalised silica)」及び「表面官能基化シリカ(surface-functionalised silica)」という用語は、本明細書において互換的に使用し、少なくとも1つの官能基により修飾された表面を有する粒子状シリカを指すことを意図する。「非官能基化シリカ(non-functionalised silica)」及び「表面官能基化されていないシリカ(silica which is not surface-functionalised)」という用語は、本明細書において互換的に使用し、対応して解釈されるべきである。本明細書において、シリカの表面官能基化、またはシリカの表面官能基化の不存在に言及する場合は、ゴム組成物の製造においてジエンゴム成分に添加される粒子状シリカの性質を指す。したがって、「表面官能基化」シリカとは、「予め官能基化された」シリカを指す。同様に、「表面官能基化されていないシリカ」は、「予め官能基化」されていない粒子状シリカを指す。より具体的には、本発明で使用するための「官能基化されたシリカ」は、1つ以上のカルボキシル基のような、本明細書に記載の1つ以上の官能基で表面修飾された粒子状シリカである。同様に、「表面官能基化されていないシリカ」は、カルボキシル基のような本明細書に記載の官能基のいずれも有しない粒子状シリカである。
【0029】
本発明で使用するためのシリカ材料は当該技術分野で周知であり、特に、沈降シリカ(シリカの非晶質形態)、熱分解(ヒュームド)シリカ、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウムおよびケイ酸アルミニウムを含む。シリカ材料は不連続な粒子の形態で、例えば分散性の高い顆粒として使用される。このような材料は、サイズが単分散であり、形状が均一であってもよい。あるいは、分枝状または直鎖状のクラスターの形態で提供されてもよい。沈降シリカ材料は、本発明で使用するのに好ましい。
【0030】
本発明で使用するための充填剤系は、その表面が1つ以上の官能基で官能基化された第1のシリカからなる。この「第1のシリカ」は、本明細書では「官能基化シリカ」とも呼ぶ。また、高補強グレードのシリカとも呼ぶ。
【0031】
第1のシリカは、250~310m/gのブルナウアー・エメット・テラー(BET)比表面積によって特徴付けられる。ブルナウアー・エメット・テラー(BET)比表面積は、好ましくは270~300m/g、より好ましくは280~290m/g、例えば280、281、282、283、284、285、286、287、288、289または290m/gである。第1のシリカは、230~285m/gのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着による表面積を有する。セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着による表面積は、好ましくは240~270m/g、より好ましくは245~265m/g、さらに好ましくは250~260m/g、例えば250、251、252、253、254、255、256、257、258、259または260m/gである。
【0032】
充填剤系は、第2のシリカも含む。この第2のシリカは表面官能基化されていない、低補強グレードのシリカである。
【0033】
第2のシリカは、60~120m/g、好ましくは70~110m/g、例えば80~100m/gの範囲のブルナウアー・エメット・テラー(BET)比表面積によって特徴付けられる。第2のシリカは、55~105m/gのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着による表面積を有する。セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着による表面積は、好ましくは60~100m/g、より好ましくは70~95m/g、さらに好ましくは80~90m/g、例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90m/gである。
【0034】
平均比表面積は、ブルナウアー・エメット・テラー(BET)法による窒素吸着およびセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着によって決定される。CTAB比表面積は外部表面である。ブルナウアー・エメット・テラー(BET)法は、Journal of the American Chemical Society(Vol.60、309ページ、1938年2月)に記載されており、NF ISO 5794-1、付録D規格(2010年6月)に対応している。セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着法はASTM D6845に対応する。
【0035】
一実施形態において、第1のシリカのBET比表面積は、第2のシリカのBET比表面積と少なくとも250m/g異なる。好ましくは、第1のシリカのBET比表面積は、第2のシリカのBET比表面積と少なくとも220m/g、より好ましくは少なくとも190m/g、例えば少なくとも175、180、185、190、195、200または205m/g異なる。
【0036】
一実施形態において、第1のシリカのCTAB比表面積は、第2のシリカのCTAB比表面積と少なくとも230m/g異なる。好ましくは、第1のシリカのCTAB比表面積は、第2のシリカのCTAB比表面積と少なくとも200m/g、より好ましくは少なくとも170m/g、例えば少なくとも155、160、165、170、175、180または185m/g異なる。
【0037】
第1のシリカは、1つ以上の官能基の導入により表面修飾される。官能基の例としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基、およびカルボニル基が挙げられる。適切な場合、これらの基のいずれかは、対応する塩または誘導体の形態で存在することができる。官能基は、一般的に、有機化合物として、例えば低分子量有機化合物の置換基として存在する。有機化合物の性質によっては、官能基は有機連結基によってシリカ表面に効果的に「連結」され得る。有機化合物は、例えば連結基の鎖長の観点から、任意の望ましい連結基を提供するように選択することができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、第1のシリカは、カルボキシル、ヒドロキシル、カルボニル、および必要に応じてそれらの塩または誘導体から選択される1つ以上の官能基を含む有機化合物でその表面が官能基化されている。化合物は2、3、4またはそれ以上の官能基を含んでいてもよく、例えば2官能性化合物または3官能性化合物であってもよい。化合物中の複数の官能基は同じであっても異なっていてもよいが、通常は同じであろう。有機化合物は、2~20個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状の飽和または不飽和の脂肪族化合物であってもよいし、芳香族化合物であってもよい。脂肪族有機化合物は、主鎖上にヘテロ原子、例えば窒素または硫黄を含んでいてもよい。有機化合物は、直鎖状、分岐状、飽和、不飽和、炭素数2~16個の脂肪族化合物および芳香族化合物よりなる群から選択され得る。
【0039】
脂肪族化合物は、直鎖状、飽和または不飽和であってもよく、2~14個の炭素原子、例えば2~12個の炭素原子を含んでよい。化合物は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個の炭素原子を含んでもよい。有利には、化合物は4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子、例えば4、5、6、7または8個の炭素原子を含んでいてもよい。化合物は4、5または6個の炭素原子を含んでもよい。
【0040】
一組の実施形態において、官能基化シリカは、1つ以上のカルボキシル基でその表面を官能基化されたシリカを含み得る。カルボキシル基は、カルボン酸として、および/または塩もしくはエステルなどのその誘導体として存在し得る。
【0041】
官能基化シリカのカルボキシル基は、1つ以上のカルボン酸またはその誘導体、例えば1つ以上のポリカルボン酸から誘導されてもよい。本明細書で使用する場合、「ポリカルボン酸(polycarboxylic acid)」という用語は、少なくとも2つのカルボン酸官能基(すなわち-COOH)を含むカルボン酸を意味する。
【0042】
1つ以上のポリカルボン酸は、2、3、4または4つ以上のカルボン酸官能基を含んでいてもよい。例えば、ポリカルボン酸は、ジカルボン酸またはトリカルボン酸であってもよい。ポリカルボン酸は、2~20個の炭素原子を含む直鎖状または分枝状、飽和または不飽和の脂肪族ポリカルボン酸であってもよいし、芳香族ポリカルボン酸であってもよい。ポリカルボン酸は、任意にヒドロキシル基および/またはハロゲン原子を含んでいてもよい。脂肪族ポリカルボン酸は、主鎖上にヘテロ原子、例えば窒素または硫黄を含んでいてもよい。ポリカルボン酸は、直鎖状、分岐状、飽和、不飽和、炭素数2~16個の脂肪族ポリカルボン酸および芳香族ポリカルボン酸よりなる群から選択される1種以上であってよい。
【0043】
脂肪族ポリカルボン酸は、2~14個の炭素原子、例えば2~12個の炭素原子を含む直鎖状の飽和または不飽和ポリカルボン酸を使用することができる。ポリカルボン酸は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12個の炭素原子を含んでいてもよい。有利には、ポリカルボン酸は、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子、例えば4、5、6、7または8個の炭素原子を含んでもよい。例えば、ポリカルボン酸は4、5または6個の炭素原子を含んでもよい。
【0044】
使用できる直鎖脂肪族ポリカルボン酸の例としては、シュウ酸、マロン酸、トリカルバリル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
使用できる分岐脂肪族ポリカルボン酸の例としては、メチルコハク酸、エチルコハク酸、オキサルコハク酸、メチルアジピン酸、メチルグルタル酸、ジメチルグルタル酸が挙げられるが、これらに限定されない。「メチルグルタル酸(methylglutaric acid)」という用語は、2-および3-メチルグルタル酸の両方、およびこれら2つの異性体の任意の割合の混合物を含む。「2-メチルグルタル酸(2-methylglutaric acid)」という用語は、化合物の(S)型および(R)型の両方、および任意のラセミ混合物を含む。
【0046】
使用できる不飽和ポリカルボン酸の例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ムコン酸、アコニット酸、トラウマチン酸、グルタコン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
使用可能なヒドロキシル基も含むポリカルボン酸の例としては、リンゴ酸、クエン酸、イソクエン酸、酒石酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
使用できる芳香族ポリカルボン酸の例としては、フタル酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、トリメシン酸、トリメリット酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
好ましくは、ポリカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、トリカルバリル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、メチルコハク酸、エチルコハク酸、メチルアジピン酸、メチルグルタル酸、ジメチルグルタル酸、リンゴ酸、クエン酸、イソクエン酸および酒石酸よりなる群から選択される1種以上である。より好ましくは、ポリカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、エチルコハク酸、グルタル酸、メチルグルタル酸、シュウ酸、およびクエン酸よりなる群から選択される1種以上である。
【0050】
一実施形態において、単一のタイプのポリカルボン酸を採用することができる。この場合、ポリカルボン酸は好ましくはメチルグルタル酸である。
【0051】
別の実施形態において、ポリカルボン酸の混合物が採用される。この場合、混合物中のポリカルボン酸は、ジカルボン酸および/またはトリカルボン酸から選択することができる。例えば、ポリカルボン酸は、アジピン酸、コハク酸、エチルコハク酸、グルタル酸、メチルグルタル酸、シュウ酸およびクエン酸から選択することができる。理解されるように、ポリカルボン酸の混合物は、その製造に使用する方法から生じる可能性がある。
【0052】
本発明で使用するためのポリカルボン酸の一部または全部は、その塩または誘導体の形態で使用することができる。例えば、これらはエステル、無水物、アルカリ、アルカリ土類金属またはアンモニウム塩(すなわちカルボン酸塩)の形態で使用することができる。塩の例としては、ナトリウム、カリウムまたはカルシウムで形成されたものが挙げられる。
【0053】
本発明で使用するためのポリカルボン酸、その誘導体、およびそれらの混合物の種類のさらなる例は、これらの化合物を組み込んだ官能基化シリカの調製方法とともに、特許文献3(WO 2015/121333)に記載されている。
【0054】
官能基化シリカは、官能基化シリカの少なくとも0.10重量%の炭素含有量を有することができる。炭素含有量((C)と表記する)は、有機化合物(例えば、カルボン酸と対応する塩または誘導体)の炭素含有量であり、全炭素として表される。炭素含量は、本明細書に記載されるように、Horiba EMIA 320 V2装置などの炭素-硫黄分析装置を用いて測定することができる。炭素含有量は、好ましくは官能基化シリカの少なくとも0.15重量%、より好ましくは少なくとも0.20重量%、さらに好ましくは少なくとも0.25重量%、例えば少なくとも0.30重量%である。
【0055】
官能基化シリカは、少なくとも0.91の物体サイズ分布幅比(Ld)を有することができる。Ldは、好ましくは少なくとも0.94である。本明細書で使用する場合、物体サイズ分布幅比(Ld)は、超音波脱凝集後(水中)、X線ディスク遠心分離機(XDC)粒度分析によって測定し、比(d84-d16)/d50に相当し、ここでdnは、n%の粒子(質量比)がこのサイズより小さいサイズである(したがって、分布幅Ldは、全体として捉えた累積粒度曲線上で計算される)。超音波脱凝集後(水中)、XDC粒度分析によって測定した500nmより小さい物体サイズ分布幅比Ldは、比(d84-d16)/d50に相当し、dnは、500nmより小さい粒子に対して、n%の粒子(質量比)がこのサイズより小さいサイズである(分布幅Ldは、このように500nmより上で切り捨てられた累積粒度曲線上で計算される)。本明細書で使用するLdは、特許文献3(WO 2015/121333)に記載の方法に従って測定する。
【0056】
官能基化シリカは、少なくとも0.65の細孔容積分布比を有することができる。細孔容積分布は好ましくは少なくとも0.66、より好ましくは少なくとも0.68である。細孔容積および細孔直径は、Micromeritics Autopore 9520ポロシメーターを用いた水銀(Hg)ポロシメトリーにより測定し、接触角θが140°、γ表面張力が484dynes/cm(標準DIN 66133)に等しいWashburn式により計算する。各試料の調製は次のように行う:各試料を200℃のオーブンで2時間予備乾燥する。本明細書で使用する細孔容積分布比は、V(d5-d50)/V(d5-d100)が少なくとも0.65、好ましくは少なくとも0.66、より好ましくは少なくとも0.68であるような細孔容積分布である。V(d5-d50)は、直径d5~d50の細孔からなる細孔容積を表し、V(d5-d100)は、直径d5~d100の細孔からなる細孔容積を表し、dnは、ここでは、細孔直径であって全細孔の全表面積のn%がこの直径よりも大きい直径を有する細孔によって形成されるものである(細孔の全表面積(S0)は、水銀侵入曲線から決定してもよい)。本明細書で使用する細孔容積分布比は、特許文献3(WO 2015/121333)に記載の方法に従って測定する。
【0057】
一組の実施形態において、本発明で使用するための第1のシリカは、さらに、以下の特性、すなわち、
- 官能基化シリカの重量に対して少なくとも0.10重量%の炭素含有量、
- 少なくとも0.91の物体サイズ分布幅比(Ld)、および
- 少なくとも0.65の細孔容積分布比、
のうち1つ以上によって特徴付けられる。
【0058】
別の一連の実施形態において、本発明で使用するための第1のシリカは、さらに以下の特徴、すなわち、
- 官能基化シリカの重量に対して少なくとも0.10重量%の炭素含有量、および
- 少なくとも0.91の物体サイズ分布幅比(Ld)、かつ
- 少なくとも0.65の細孔容積分布比
によって特徴付けられる。
【0059】
官能基化シリカは、2.5~7、好ましくは2.5~5、より好ましくは3~4.5、例えば3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、または4.5のpHを有してよい。特に、1つ以上のカルボキシル基、その塩または誘導体で官能基化されたシリカは、2.5~7、好ましくは2.5~5、より好ましくは3~4.5、例えば3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、または4.5のpHを有していてもよい。pHは、標準ISO787/9(水中で5%懸濁液としたpH)に由来する特許文献3(WO 2015/121333)に記載の方法に従って測定することができる。
【0060】
官能基化シリカは、当該技術分野において既知であるか、または当該技術分野において既知の方法を用いて調製することができる。正確な方法は官能基の性質によるが、当業者は容易に選択することができる。シリカが1つ以上のカルボキシル基で官能基化されている場合、カルボキシル基は、シリカを1つ以上のカルボン酸と反応させて官能基化シリカを形成することにより誘導することができる。一般的に、この方法は、シリカを生成するための沈降反応を含み得る、すなわち、第1のシリカは沈降シリカであろう。沈降シリカはどのような物理的状態であってもよく、例えば、実質的に球状のビーズ(例えば、マイクロビーズ)の形態であってもよく、粉末または顆粒の形態であってもよい。
【0061】
1つ以上のカルボキシル基で官能基化されたシリカの合成は、例えば特許文献3(WO 2015/121333)に開示されており、その全内容は本明細書の参照に組み込まれている。一般に、官能基化シリカの調製は、アルカリ金属ケイ酸塩(例えばケイ酸ナトリウム)のようなケイ酸塩と、酸性化剤(例えば硫酸)とを沈降反応させ、その後濾過により沈殿シリカのフィルターケーキを分離し、次いでフィルターケーキを液化し、最後に、乾燥(一般に、霧化による)させることで行う。シリカはどのような方法でも沈殿させることができ、特にケイ酸塩原料への酸性化剤の添加、水またはケイ酸塩原料への酸性化剤とケイ酸塩の全体的または部分的な同時添加が挙げられる。ポリカルボン酸は、液化操作中、または液化操作後、乾燥工程の前に、フィルターケーキに添加する。
【0062】
一実施形態において、官能基化シリカは、以下のステップ、すなわち、
- ケイ酸塩を酸性化剤と反応させ、沈降シリカの懸濁液を得るステップと、
- 沈降シリカの懸濁液を濾過して、沈降シリカのフィルターケーキを得るステップと、
- フィルターケーキを液化するステップと、および
- 液化したフィルターケーキを乾燥させるステップと、
を備える方法によって調製することができ、
ここで、本明細書で定義される1つ以上の官能基を有する有機化合物(例えば、少なくとも1つのポリカルボン酸)は、液化中、または液化後、乾燥前のいずれかでフィルターケーキに添加する。
【0063】
得られた沈降シリカは、一般に乾燥粉末の形態で提供される。沈降シリカは、その表面に有機化合物の分子、例えばポリカルボン酸またはその塩もしくは誘導体の分子を有する。ポリカルボン酸、その塩または誘導体の存在は、表面赤外線またはダイヤモンドATR法(Attenuated Total Reflection)赤外線などの既知の技術によって確認することができる。シリカを製造するために使用する出発原料の供給源によっては、沈降シリカはアルミニウムのような追加元素を含むことがある。
【0064】
本明細書に記載の充填剤系で使用するための第2のシリカは、非官能基化されている。これは、沈降した非晶質シリカ、湿式シリカ(水和ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、熱分解(ヒュームド)シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム(例えば、MgSiO、MgSiO)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO)、またはケイ酸アルミニウムカルシウム(例えば、Al・CaOSiO)を含む、当該技術分野で一般的に知られている任意のシリカからなることができる。BETおよびCTABに関して上記の要件に適合する市販グレードのシリカは広く入手可能である。このようなシリカには、Solvay社から商品名Zeosil(登録商標) 1085 GRとして供給されるものが含まれる。該シリカのBET比表面積は90m/g±20m/g、CTAB比表面積は80m/g±15m/gである。
【0065】
いくつかの実施形態において、第1および/または第2のシリカの表面は、配合中の充填剤間の相互作用を減少させ、したがってゴム成分中での分散性を改善させるために表面処理することもできる。この目的に適した被覆剤は当該技術分野で周知であり、ヘキサデシルトリメトキシシランまたはプロピルトリエトキシシランなどの単官能性シランが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載する通り、このような被覆剤は、ゴム組成物を形成するために種々の成分を配合する際に導入することができる。
【0066】
第2のシリカと第1のシリカとの重量比(すなわち、第2のシリカの重量を第1のシリカの重量で割った値)は変化してもよい。有利には、第2のシリカと第1のシリカとの重量比は、0.15~0.60、好ましくは0.25~0.45の範囲である。いくつかの実施形態において、重量比は0.15、0.31、0.42または0.56であってもよい。
【0067】
本明細書に記載の充填剤系は、本発明のさらなる態様を形成する。したがって、別の態様では、本発明は、充填剤系を提供し、この充填剤系は、
1つ以上の官能基の導入により表面官能基化され、BET比表面積250~310m/gかつCTAB比表面積230~285m/gを有する第1のシリカと、および
表面官能基化されておらず、BET比表面積60~120m/gかつCTAB比表面積55~105m/gを有する第2のシリカと、
を備える。
【0068】
本発明で使用するシリカ系は、ジエンゴム成分中に分散される。シリカ系の量(すなわち、第1および第2のシリカの合計重量)は特に限定されず、当業者によって容易に選択され得る。しかし、一般的には、充填剤系は、ゴム組成物100phrに対して、90~130phr、好ましくは100~120phr、より好ましくは100~115phrの範囲で存在してもよい。
【0069】
第1のシリカは、ゴム組成物100phrに対して、55~120phr、好ましくは55~100phr、より好ましくは65~90phrの範囲で存在してもよい。第2のシリカは、ゴム組成物100phrに対して、10~40phr、好ましくは20~40phr、より好ましくは20~35phrの範囲で存在してもよい。
【0070】
本発明によるゴム組成物には、公知の任意のジエンゴム成分を使用することができ、当業者は、組成物の使用目的を念頭に置いて適切なゴムを容易に選択することができる。ジエンゴムは当該技術分野において周知であり、天然ゴムおよび合成ゴムの両方を含む。このようなゴムの非限定的な例としては、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、イソブチレン-イソプレンゴム(IIR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム(SIBR)およびエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)が挙げられる。
【0071】
一実施形態では、本発明で使用するジエンゴムは、ブタジエンから誘導される繰り返し単位を含む。このようなゴムの例としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびブタジエンゴム(BR)が挙げられるが、これらに限定されない。一組の実施形態では、本発明で使用するジエンゴムはSBRである。スチレン-ブタジエンゴムは当該技術分野において周知である。本明細書で使用する「スチレン-ブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber)」または「SBR」という用語は、一般に、スチレンとブタジエンモノマーの重合によって製造されるあらゆる合成ゴムを指すことを意図している。したがって、スチレンブタジエン共重合体を指す。SBRはタイヤ産業で一般的に使用されており、エマルジョン、懸濁液、溶液中で対応するモノマーを共重合させるなど、周知の方法で製造することができる。スチレンおよびブタジエンモノマーは、ゴム化合物の用途や特性に応じて適切な比率で選択することができる。例えば、スチレンは、ゴムタイヤトレッド化合物に対して最大80重量%、より一般的には最大約45重量%の量で存在することができる(コモノマーの総重量に基づく重量%)。いくつかの実施形態では、スチレンは、SBRジエンゴムの重量に対して10~30重量%、好ましくは15~25重量%、より好ましくは21~24重量%、例えば21重量%、22重量%、23重量%の量で存在してもよい。ジエン成分は一般に少なくとも50重量%、例えば50~75重量%の量で存在する。
【0072】
ジエンゴムは、1つ以上の官能基で修飾することができ、そのような官能基化されたジエンゴムを本発明に使用してもよい。あるいは、本発明で使用するジエンゴムは、修飾されていない(すなわち、官能基が付加されていない)ものであってもよい。
【0073】
ジエンゴムが官能基化されている場合、そのポリマー主鎖、末端基および/または側鎖のいずれかが、1つ以上の官能基と結合していてもよい。これらの官能基は、ポリマー材料の製造中にポリマー材料に組み込まれてもよく、あるいは、その後ポリマーにグラフトされてもよい。官能基の種類および位置は、当該技術分野で知られているゴムのグレードごとに異なる。官能基化ゴムの選択は、本明細書に記載のゴム化合物の使用目的に依る。官能基化ジエンゴムの例としては、例えば硫黄含有有機ケイ素化合物などのシリカカップリング剤と反応可能な基など、1つ以上の反応性基を有するものが挙げられる。代表的な官能基としては、ClおよびBrなどのハロゲン;メトキシなどのアルコキシ基;シロキシ基;および-SCNなどの擬ハロゲンが挙げられる。一実施形態では、ゴムは、シロキシ末端スチレン-ブタジエン共重合体などのシロキシ末端ポリマーであってもよい。官能基はまた、1つ以上の相互作用性基、例えばアミノ基を含んでもよい。アミノ基などの相互作用基は、例えば、ゴム母材内で水素結合を形成し得る。
【0074】
タイヤトレッドにおけるエネルギーの散逸、ひいては転がり抵抗に対する重要な寄与は、ポリマー鎖の自由末端の存在、およびゴム組成物中で使用されるシリカ充填剤によって形成される充填剤ネットワークの劣化から生じる。有利には、ポリマー鎖の末端および/または始端に官能基を有し、これらが充填剤表面に物理的または化学的に付着することを可能にするポリマーが本発明において採用され得る。これらのポリマーは、ポリマーの移動度を制限し、したがって動的応力下でのエネルギーの散逸を低減する。また、ゴム組成物中の充填剤の分散性を改善し、充填剤ネットワークの強化、ひいては転がり抵抗のさらなる低減につながる。
【0075】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明で使用するためのジエンゴム成分は、ゴム組成物の特性に相互作用的および/または相乗的な影響を及ぼし、有利な特性を生じさせる可能性のある末端基官能基化ジエンゴム化合物からなる。具体的には、末端基官能基化ジエンゴム化合物と官能基化シリカとの間の相互作用は、相乗的であり得、その結果、ゴム組成物およびそれから製造される製品中の充填剤系(特に、この系中に提供される官能基化シリカ充填剤)の分散が改善され得る。「末端基官能基化」ゴムは、「末端修飾」ゴムとも呼ばれることがある。一実施形態では、ジエンゴム成分は、末端基官能基化SBR、例えば末端基官能基化SSBRであってもよい。
【0076】
末端基官能基化ゴムは当該技術分野において周知であり、これらのいずれかを本発明で使用するために選択することができる。このようなゴムの例としては、特許文献4(WO 2014/173706)および特許文献5(EP 3 725 837)に記載されているものが挙げられ、これらの全内容は本明細書の参照に組み込まれる。
【0077】
修飾官能基としては、シリカ充填剤と親和性を有する任意の官能基が挙げられる。好ましくは、窒素原子、ケイ素原子、酸素原子及びスズ原子から選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい。シリカ充填剤と強く相互作用する能力の観点から、窒素原子、ケイ素原子または酸素原子を含むものが好ましい。ケイ素原子を含む官能基は、例えばケイ素-炭素結合を有するものが好ましい。このような修飾官能基は、特許文献5(EP 3 725 837)に記載されているような適切なカップリング剤を用いて形成することができる。ゴム成分に修飾官能基を導入する方法は当該技術分野で周知であり、適切に選択することができる。これらには、官能基含有重合開始剤の使用、官能基含有モノマーと他の化合物との共重合、ゴム成分の末端基と修飾官能基剤を反応させることなどが含まれる。
【0078】
いくつかの実施形態において、修飾官能基は窒素原子を含む。
その例としては、下記([化1])の一般式(I)で表される置換アミノ基および下記([化2])の一般式(II)で表される環状アミノ基が挙げられる。
【化1】
(I)
【0079】
ここで、各Rは、同一であっても異なっていてもよく、1~12個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、またはアラルキル基である。好ましくは、アルキル基は、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、またはイソブチル基である。シクロアルキル基は好ましくはシクロヘキシル基であり、アラルキル基は好ましくは3-フェニル-1-プロピル基である。
【化2】
(II)
【0080】
ここで、Rは、アルキレン基、置換アルキレン基、オキシアルキレン基、または3~16個のメチレン基を有するN-アルキルアミノアルキレン基である。置換アルキレン基としては、モノ置換からオクタ置換のアルキレン基が挙げられ、置換基の例としては、1~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、アリール基、またはアラルキル基が挙げられる。アルキレン基は、好ましくはトリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、またはドデカメチレン基であり、置換アルキレン基は、好ましくはヘキサデカメチレン基であり、オキシアルキレン基は、好ましくはオキシジエチレン基であり、N-アルキルアミノアルキレン基は、好ましくはN-アルキルアザジエチレン基である。一般式(II)で表される環状アミノ基の例としては、2-(2-エチルヘキシル)ピロリジン、3-(2-プロピル)ピロリジン、3,5-ビス(2-エチルヘキシル)ピペリジン、4-フェニルピペリジン、7-デシル-1-アザシクロトリデカン、3,3-ジメチル-1-アザシクロテトラデカン、4-ドデシル-1-アザシクロオクタン、4-(2-フェニルブチル)-1-アザシクロオクタン、3-エチル-5-シクロヘキシル-1-アザシクロヘプタン、4-ヘキシル-1-アザシクロヘプタン、9-イソアミル-1-アザシクロヘプタデカン、2-メチル-1-アザシクロヘプタデシ-9-エン、3-イソブチル-1-アザシクロドデカン、2-メチル-7-t-ブチル-1-アザシクロドデカン、5-ノニル-1-アザシクロドデカン、8-(4’-メチルフェニル)-5-ペンチル-3-アザビシクロ[5.4.0]ウンデカン、1-ブチル-6-アザビシクロ[3.2.1]オクタン、8-エチル-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン、1-プロピル-3-アザビシクロ[3.2.2]ノナン、3-(t-ブチル)-7-アザビシクロ[4.3.0]ノナン、1,5,5-トリメチル-3-アザビシクロ[4.4.0]デカンから窒素原子に結合している水素原子を取り除いた基が挙げられる。
【0081】
いくつかの実施形態において、修飾官能基はケイ素原子を含む。その例としては、下記の一般式(III)、すなわち、
(RZ(R (III)
で表されるカップリング剤を用いて形成されるケイ素-炭素結合を有する修飾官能基が挙げられる。
【0082】
ここで、Zはケイ素であり、各Rは独立して、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、3~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、および7~20個の炭素原子を有するアラルキル基よりなる群から選択され、各Rは独立して塩素または臭素であり、aは0~3であり、bは1~4であり、a+b=4である。アルキル基は、好ましくはメチル基、エチル基、n-ブチル基、n-オクチル基、または2-エチルヘキシルであり、シクロアルキル基は、好ましくはシクロヘキシル基であり、アリール基は、好ましくはフェニル基であり、アラルキル基は、好ましくはネオピル基である。
【0083】
ケイ素原子を含む他の修飾官能基としては、下記の一般式(III-1)および下記([化3])の一般式(III-2)が挙げられる。
-Si-(OR4-a (III-1)
【0084】
上記一般式(III-1)において、RおよびRは、各々独立して、1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族炭化水素基または6~18個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基を表し、aは0~2の整数であり、複数のOR基が存在する場合、これらは同一であっても異なっていてもよく、活性プロトンは分子中に存在しない。
【0085】
上記一般式(III-1)で表される化合物(すなわちアルコキシシラン化合物)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジエトキシシランが含まれる。これらのうち、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシランが好ましい。
【化3】
(III-2)
【0086】
上記([化3])の一般式(III-2)において、Aは、エポキシ基、グリシジルオキシ基、イソシアネート基、イミン基、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、環状第3級アミン基、非環状第3級アミン基、ピリジン基、シラザン基及びジスルフィド基よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する一価の基であり、Rは、単結合又は二価の炭化水素基である、RおよびRは、それぞれ独立して、1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基であり、bは0~2の整数であり、複数のOR基が存在する場合、これらは同一であっても異なっていてもよく、活性プロトンは分子中に存在しない。
【0087】
上記([化3])の一般式(III-2)で表される化合物の具体例としては、エポキシ基含有アルコキシシラン化合物が含まれ、例えば、2-グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルトリエトキシシラン、(2-グリシジルオキシエチル)メチルジメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、(3-グリシジルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシランが含まれる。これらのうち、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランおよび2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランが好ましい。
【0088】
修飾官能基を形成し得るケイ素を含むカップリング剤の例は、適切に選択され得る。例としては、ヒドロカルビルオキシシラン化合物、SiCl(四塩化ケイ素)、(R)SiCl、(RSiCl、および(RSiClが挙げられ、各Rは独立して、1~20個の炭素原子を有するアルキル基、3~20個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基、または7~20個の炭素原子を有するアラルキル基を表す。
【0089】
本発明で使用するのに好ましいのは、ヒドロカルビルオキシシラン化合物であるカップリング剤から形成される修飾官能基であり、これらはシリカに対して特に高い親和性を有するからである。適切なヒドロカルビルオキシシラン化合物は、当業者によって選択され得る。例としては、下記([化4])の一般式(IV)で表されるものが挙げられる。
【化4】
(IV)
【0090】
ここで、n1+n2+n3+n4=4、ただし、n2は1~4の整数であり、n1、n3およびn4はそれぞれ0~3の整数であり、Aは、飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアネート基(イソシアネート基またはチオイソシアネート基を表す)、(チオ)エポキシ基、トリヒドロカルビルイソシアヌレート基、ジヒドロカルビル炭酸基、ニトリル基、ピリジン基、(チオ)ケトン基、(チオ)アルデヒド基、アミド基、(チオ)カルボキシレート基、(チオ)カルボン酸金属塩基、カルボン酸無水物残基、カルボン酸ハロゲン化物残基、および第一級または第二級アミノ基またはメルカプト基を含む加水分解性基から選択される少なくとも1つの官能基を表す。n4が2以上の場合、各Aは同一でも異なっていてもよい。Aは、代わりにSiに結合して環状構造を形成する二価の基であってもよい。R21は、1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基を表す。n1が2以上の場合、各R21は同一でも異なっていてもよい。R23は、1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族または脂環式炭化水素基、6~18個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基、またはハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素)を表す。n3が2以上の場合、各R23は同一でも異なっていてもよい。R22は、1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基を表し、任意に窒素原子および/またはケイ素原子を有する。n2が2以上の場合、各R22は同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。R24は、1~20個の炭素原子を有する二価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する二価の芳香族炭化水素基を表す。n4が2以上の場合、各R24は同一であっても異なっていてもよい。第1級もしくは第2級アミノ基含有加水分解性基またはメルカプト基含有加水分解性基における加水分解性基は、好ましくはトリメチルシリル基またはtert-ブチルジメチルシリル基であり、より好ましくはトリメチルシリル基である。
【0091】
いくつかの実施形態において、上記([化4])の一般式(IV)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物は、下記([化5])の一般式(V)で表される化合物であってもよい。
【化5】
(V)
【0092】
ここで、p1+p2+p3=2(ここで、p2は1~2の整数であり、p1およびp3はそれぞれ0~1の整数である);AはNR(ここで、Rは一価の炭化水素基、加水分解性基または含窒素有機基を表す;加水分解性基は、好ましくはトリメチルシリル基またはtert-ブチルジメチルシリル基、より好ましくはトリメチルシリル基である)、または硫黄を表し;R25は、1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基を表し、R27は、1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族または脂環式炭化水素基、6~18個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基、またはハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)を表し;R26は、1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族または脂環式炭化水素基、6~18個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基、または窒素原子および/もしくはケイ素原子を任意に有する窒素含有有機基を表す。p2が2のとき、各R26は同一でも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。R28は、1~20個の炭素原子を有する二価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する二価の芳香族炭化水素基を表す。
【0093】
いくつかの実施形態において、上記([化4])の一般式(IV)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物は、下記([化6])の一般式(VI)または下記([化7])の一般式(VII)で表される化合物であってもよい。
【化6】
(VI)
【0094】
ここで、q1+q2=3(ここで、q1は0~2の整数であり、q2は1~3の整数である)であり;R31は、1~20個の炭素原子を有する二価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する二価の芳香族炭化水素基を表す;R32およびR33は、それぞれ独立して、加水分解性基、1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基を表し;R34は、1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基を表す。q1が2であるとき、各R34は同一であっても異なっていてもよい。R35は、1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基を表す。q2が2以上の場合、各R35は同一でも異なっていてもよい。
【化7】
【0095】
式(VII)中、r1+r2=3(ここで、r1は1~3の整数であり、r2は0~2の整数である);R36は、1~20個の炭素原子を有する二価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する二価の芳香族炭化水素基を表す;R37は、1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基で、ジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基、メチルシリル(メチル)アミノメチル基、メチルシリル(メチル)アミノエチル基、メチルシリル(エチル)アミノメチル基、メチルシリル(エチル)アミノエチル基、ジメチルシリルアミノメチル基、ジメチルシリルアミノエチル基を表す。r1が2以上の場合、各R37は同一でも異なっていてもよい。R38は、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビルオキシ基、1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基を表す。r2が2である場合、各R38は同一であっても異なっていてもよい。
【0096】
他の実施形態において、上記([化4])の一般式(IV)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物は、下記([化8])の一般式(VIII)または下記([化9])の一般式(IX)で表される窒素原子を2個以上有する化合物である。
【化8】
(VIII)
【0097】
ここで、TMSは、トリメチルシリル基を表し;R40は、トリメチルシリル基、1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基を表し、R41は、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビルオキシ基、1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基を表し;R42は、1~20個の炭素原子を有する二価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する二価の芳香族炭化水素基を表す。
【化9】
(IX)
【0098】
ここで、TMSは、トリメチルシリル基を表し;R43およびR44は、各々独立して、1~20個の炭素原子を有する二価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する二価の芳香族炭化水素基を表し;R45は、1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基を表し、各R45は、同一であっても異なっていてもよい。
【0099】
他の実施形態において、上記([化4])の一般式(IV)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物は、下記([化10])の一般式(X)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物である。
【化10】
(X)
【0100】
ここで、r1+r2=3(ここで、r1は、0~2の整数であり、r2は、1~3の整数である)であり;TMSは、トリメチルシリル基を表し;R46は、1~20個の炭素原子を有する二価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する二価の芳香族炭化水素基を表す;R47およびR48は、それぞれ独立して、1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基を表し、2個以上のR47基またはR48基が存在する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。
【0101】
他の実施形態において、上記([化4])の一般式(IV)で表されるヒドロカルビルオキシシラン化合物は、下記([化11])の一般式(XI)で表される化合物である。
【化11】
(XI)
【0102】
ここで、Yはハロゲン原子を表し;R49は1~20個の炭素原子を有する二価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する二価の芳香族炭化水素基を表し;R50およびR51は各々独立して、加水分解性基、または1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基を表すか、またはR50およびR51は互いに結合して二価の有機基を形成する;R52およびR53は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロカルビルオキシ基、または1~20個の炭素原子を有する一価の脂肪族または脂環式炭化水素基、または6~18個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基を表す。好ましくは、R50およびR51はそれぞれ加水分解性基であり、加水分解性基としてより好ましくはトリメチルシリル基またはtert-ブチルジメチルシリル基であり、さらに好ましくはトリメチルシリル基である。
【0103】
一実施形態において、式(IV)の化合物は、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランであってもよい。一実施形態において、本発明で使用するためのジエンゴム成分は、式(IV)のカップリング剤との反応、例えばN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランとの反応によって修飾されたSBRを含む。
【0104】
他の実施形態では、修飾官能基は酸素原子からなる。その例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基などのアルコキシ基;メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基などのアルコキシアルキル基;メトキシフェニル基、エトキシフェニル基などのアルコキシアリール基;エポキシ基、テトラヒドロフラニル基などのアルキレンオキシド基;トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、t-ブチルジメチルシリルオキシ基などのトリアルキルシリルオキシ基などが挙げられる。
【0105】
一実施形態では、ジエンゴム成分は、ヒドロカルビルオキシシラン化合物との反応によって末端基官能基化されたスチレン-ブタジエン共重合体からなり、充填剤系は、メチルグルタル酸で表面官能基化された第1のシリカからなる。この実施形態において、ヒドロカルビルオキシシラン化合物は、本明細書に記載の一般式(IV)の化合物であってもよく、例えば、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランであってもよい。
【0106】
一組の実施形態では、本発明で使用するジエンゴムは、タイヤトレッドなどのタイヤの部品として使用できるゴム組成物の製造に使用するために適したものである。本発明で使用するジエンゴムは、例えば、官能基化または非官能基化スチレンブタジエンゴム(SBR)であってもよい。
【0107】
ジエンゴムの平均分子量(例えば重量平均、Mw)および/または平均モル質量(例えば数平均、Mn)は、適切および/または望ましい物理的特性を提供するように選択することができる。例えば、ジエンゴム化合物の粘度、ひいては加工性は、平均分子量および/または平均モル質量の増加に伴って(例えば線形または非線形に)増加すると理解され得る。当業者は、どのジエンゴム化合物が適切な平均分子量および/または平均モル質量を有するか理解し得る。いくつかの実施形態において、本発明で使用するためのジエンゴム成分は、10,000~2,000,000g/mol、好ましくは100,000~1,000,000g/molの平均モル質量(数平均、Mn)を有することができる。
【0108】
いくつかの実施形態において、ジエンゴム成分は、10,000~2,000,000g/mol、好ましくは100,000~1,000,000g/molの平均モル質量(数平均、Mn)を有する末端基官能基化SBRまたはSSBRであってもよい。
【0109】
ジエンゴム成分、例えば末端基官能基化SSBR共重合体は、-110℃~+20℃、好ましくは-60℃~0℃、好ましくは-40℃~-10℃、好ましくは-30℃~-15℃、より好ましくは-22℃~-26℃、例えば-22℃、-23℃、-24℃、-25℃、または-26℃のガラス転移温度を有することができる。
【0110】
選択されたジエンゴムは、本明細書に記載される組成物中のゴム100部として使用することができ、もしくは天然ゴムおよび合成ゴムの両方を含む、ゴム化合物用に従来から使用されている任意のエラストマーまたはそのブレンドと混合することもできる。異なるジエンゴムをブレンドして使用してもよい。任意のブレンドに使用するのに適したゴムは当業者に周知であり、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、スチレン-イソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム、ブタジエン-イソプレンゴム、ポリブタジエン、ブチルゴム、ネオプレン、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム、フッ素エラストマー、エチレンアクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンターポリマー(EPDM)、エチレン酢酸ビニル共重合体、エピクロルヒドリンゴム、塩素化ポリエチレン-プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、水素化ニトリルゴム、テトラフルオロエチレン-プロピレンゴムが含まれる。任意のポリマーブレンドの比率は、必要に応じて、例えばゴム組成物の粘弾性特性に基づいて選択することができる。当業者は、どのエラストマーが適切か、また、所望の粘弾性特性範囲を提供するためのエラストマーの相対量を容易に決定することができる。
【0111】
一組の実施形態では、本発明で使用するゴム成分は、少なくとも2種類のジエンゴムのブレンドである。例えば、2種以上のそのようなゴムのブレンドであってもよい。いくつかの実施形態において、ジエンゴムブレンドは同じタイプであるが、異なる(例えば、数平均または重量平均)分子量を有する少なくとも2つのジエンゴム成分から構成されてもよい。いくつかの実施形態において、ジエンゴムブレンドは、少なくとも2種の化学的に異なるジエンゴム成分(例えば、異なるモノマー単位または繰り返し単位を有する2種のジエンゴム)から構成されてもよい。いくつかの実施形態において、ジエンゴムブレンドは、同じタイプであるが、異なる重合プロセス(例えば、溶液系重合または乳化系重合)によって製造された少なくとも2種のジエンゴム成分から構成されてもよい。例えば、一組の実施形態において、ジエンゴムは、例えば溶液重合スチレンブタジエンゴム(SSBR)および乳化重合スチレンブタジエンゴム(ESBR)のような、2種のスチレンブタジエンゴムの組み合わせからなることができる。「乳化重合スチレンブタジエンゴム(emulsion-polymerised styrene butadiene rubber)」とは、スチレンと1,3-ブタジエンを水性エマルジョンとして共重合することを意味する。このような方法は当業者には周知で、理解されている。
【0112】
ESBRの存在は、未加硫ゴム組成物の加工性を高めるために有益であると考えられる。乳化重合スチレンブタジエンゴム(ESBR)は、従来のスチレン含有量の約20~約29%の結合スチレンを有するものを使用することができる。しかしながら、場合によっては、より高い結合スチレン含量のもの、例えば約30~約45%の範囲のものを使用することもできる。より高いスチレン含量は、タイヤトレッドのトラクションを高めるのに有益である。本発明で使用するESBRの非限定的な例は、Europrene 1723(Versalis、イタリア)である。
【0113】
溶液重合SBRは、一般的には、約5~約50%、好ましくは5~40%、より好ましくは5~20%の範囲の結合スチレン含有量を有することができる。SSBRをタイヤトレッド組成物に使用すると、ヒステリシスが小さくなるため、タイヤの転がり抵抗が改善される。
【0114】
本明細書に記載のシリカ充填剤系は、ジエンゴム成分、および所望の他のゴム材料とブレンドして、本発明によるゴム組成物を提供することができる。
【0115】
本明細書に記載のゴム組成物の調製方法は、本発明のさらなる態様を形成する。したがって、別の態様では、本発明は、ゴム組成物を製造するためのプロセスを提供し、本明細書において定義される充填剤系をジエンゴム成分中に分散させるステップを含む。
【0116】
充填剤系およびジエンゴム成分の量は、所望の得られるゴム組成物の物理的性質に基づいて選択することができ、例えば、他の充填剤の有無に依存し得る。適切な量は、当業者によって容易に決定され得るが、例えば、ゴム組成物100phrに対して、90~130phr、好ましくは100~120phr、より好ましくは100~115phrの範囲であり得る(ここで、「phr」は、ゴム100部あたりの部数である)。
【0117】
官能基化シリカの量は、ゴム組成物の100phrに対して、55~120phr、好ましくは55~100phr、より好ましくは65~90phrであってよい。第2のシリカの量は、ゴム組成物の100phrに対して、10~40phr、好ましくは20~40phr、より好ましくは20~35phrであってよい。
【0118】
当業者は、ジエンゴム成分量だけでなく、充填剤系中に分散される充填剤系に対するジエンゴム成分の比率が、ゴム組成物の特性に有利な影響を及ぼし得ることを理解し得る。いくつかの実施形態において、ジエンゴム成分の量は、ゴム組成物の100phrに対して、10~150phr、好ましくは40~120phr、好ましくは50~110phr、より好ましくは70~110phr、例えば71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109または110phrである。
【0119】
二元ブレンド(例えば、第1のジエンゴム化合物と第2のジエン系ゴム化合物とからなるジエンゴム組成物)からなる実施形態では、ジエンゴム化合物の相対量は、当業者によって容易に決定され得る。一実施形態では、二元ブレンドは、主成分および副成分からなり得る。このような実施形態において、主成分のジエンゴム化合物の量は、ゴム組成物の100phrに対して、50~140phr、好ましくは60~120phr、より好ましくは70~100phr、例えば71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100phrであってよい。副成分のジエンゴム化合物の量は、ゴム組成物の100phrに対して、5~60phr、好ましくは10~50phr、より好ましくは20~40phr、例えば20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40phrであってよい。具体的な実施形態では、主成分のジエンゴム化合物はSSBRであり、副成分のジエンゴム化合物はESBRである。
【0120】
いくつかの実施形態では、ジエンゴム成分と充填剤系との重量比は、0.50~1.20、好ましくは0.70~1.15、より好ましくは0.85~1.10、例えば0.90~1.10の範囲である。
【0121】
本明細書に記載の充填剤系がゴム母材中に分散されたゴム組成物は、他の成分との配合など、ゴム組成物の製造において当該技術分野で公知の方法を用いて製造することができる。これらのさらなる成分としては、追加のポリマー、加工助剤(オイル、ワックス、樹脂および可塑剤など)、硬化系(加硫剤、加硫促進剤および加硫促進助剤など)、劣化防止剤(酸化防止剤または抗オゾン剤など)、顔料、追加の充填剤、充填剤用の相溶化剤(シランカップリング剤または被覆剤など)、繊維などが挙げられる。当業者は、加硫可能なゴム化合物の組み合わせおよびそれぞれの配合量を容易に選択することができ、所望の特定のゴム製品に応じて、その後の混合および加硫を行うことができる。
【0122】
例えば、本明細書に記載のジエンゴム母材およびシリカ充填剤系に加えて、加硫可能な組成物は、以下の1種以上を含有することができる:加工助剤(オイルなど)、加硫活性剤(酸化亜鉛、ステアリン酸など)、加硫剤(硫黄または硫黄供与性化合物など)、加硫促進剤、劣化防止剤(酸化防止剤、オゾン防止剤など)、顔料、追加充填剤、相溶化剤、シランカップリング剤。酸化亜鉛とステアリン酸は、加硫時間を短縮し、硬化または加硫中に形成されるゴム母材中の架橋の長さと数に影響を与えることにより、加硫プロセスにおける活性剤として機能する。硫黄加硫物の使用目的に応じて、これらの添加剤を選択し、従来の量で使用することができる。
【0123】
加工助剤は、組成物の加工性を改善し、鉱油、植物油、合成油、またはそれらの混合物などの油を含む。これらは、約5~75phr、好ましくは約10~50phrの量で使用され得る。典型的な加工助剤としては、芳香族油などの油が挙げられる。このような油の例としては、処理留出芳香族抽出物(TDAE)、残留芳香族抽出物(RAE)、マイルドな抽出物溶媒和物(MES)、およびバイオベースの油糧種子誘導体が挙げられる。本発明のゴム組成物に使用する油は、特に限定されず、当業者に公知のものであればいずれであってもよい。例えば、油は、芳香族オイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイルなどの加工油、ヤシ油などの植物油、アルキルベンゼン系オイルなどの合成油、ヒマシ油などよりなる群から選択される1種以上であってもよい。好ましくは、油は芳香族オイル、例えば残留芳香族抽出物である。
【0124】
ゴム組成物の加硫剤は特に限定されず、当該技術分野で一般的に公知のものであればいずれでもよい。例えば、加硫剤は硫黄であってもよい。加硫剤の量は特に限定されず、組成物の満足な加硫を達成するのに有効な量を、当業者が容易に選択し得る。加硫剤(例えば硫黄)は、約0.1~約10phr、好ましくは約0.1~約5phr、例えば約1~約3phrの範囲の量で使用し得る。例えば、ゴム組成物は、0.1~3phr、好ましくは0.5~2phr、例えば1~1.5phrの加硫剤を含有し得る。
【0125】
ゴム組成物に使用する加硫促進剤は特に限定されず、当該技術分野で一般的に公知のものであればいずれでもよい。促進剤には、チアゾール、ジチオカルバメート、チウラム、グアニジン、スルホンアミドなどがある。適切な加硫促進剤の例としては、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)などのチアゾール系加硫促進剤;1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)などのグアニジン系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラドデシルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィドなどのチウラム系加硫促進剤;およびジメチルジチオカルバミン酸亜鉛などのジチオカルバミン酸化合物;およびその他のジアルキルジチオリン酸亜鉛が挙げられる。好ましくは、加硫促進剤は、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、および1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)の組み合わせとすることができる。組成物中で使用するための加硫促進剤の量は特に限定されず、例えば、約0.5~約10phr、好ましくは約1~約8phr、より好ましくは約2~約6phrの範囲であってよい。好ましくは、加硫促進剤は、1~2phrの量のジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、1~2phrの量のN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、および2~3phrの量の1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)からなり得る。
【0126】
ゴム組成物に使用する加硫促進助剤は、特に限定されず、当業者に公知のものを使用することができる。例えば、加硫促進助剤は、酸化亜鉛(ZnO)および脂肪酸であってもよい。脂肪酸は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、直鎖脂肪酸、分岐脂肪酸のいずれであってもよい。脂肪酸の炭素原子数も特に限定されないが、1~30個、又は15~30個であってよい。例えば、脂肪酸は、シクロヘキサン酸(シクロヘキサンカルボン酸)、アルキルシクロペンタン等の側鎖を有するナフテン酸、ヘキサン酸およびオクタン酸等の飽和脂肪酸、デカン酸(ネオデカン酸等の分岐カルボン酸を含む)、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸、ロジン、トール油酸、アビエチン酸などの樹脂酸よりなる群から選択される1種以上であってもよい。好ましくは、本発明の加硫促進助剤は、酸化亜鉛(ZnO)およびステアリン酸である。加硫促進助剤の総量は特に限定されないが、1~10phr、好ましくは1.5~7phr、例えば2~5phrとすることができる。好ましくは、酸化亜鉛は、約1~約10phr、好ましくは約2~約5phr、より好ましくは約2~約3phrの量で使用することができる。ステアリン酸は、約1~約5phr、好ましくは約2~約3phrの量で使用することができる。
【0127】
カーボンブラック、カーボンナノチューブ、ショートカーボン、ポリアミド、ポリエステル、天然繊維、炭酸カルシウム、クレー、アルミナ、アルミノケイ酸塩など、またはこれらの任意の混合物のような追加の補強充填剤も、本発明のゴム組成物中に存在することができる。カーボンブラックが存在する場合、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラックであってもよい。例えば、カーボンブラックは、超摩耗炉(SAF)ブラック、高摩耗炉(HAF)ブラック、高速押出炉(FEF)ブラック、微細炉(FF)ブラック、中間超摩耗炉(ISAF)ブラック、半強化炉(SRF)ブラック、中加工チャンネルブラック、硬質加工チャンネルブラックおよび導電性チャンネルブラックよりなる群から選択される1種以上とすることができる。その他のカーボンブラックとしては、アセチレンブラックがある。カーボンブラックは、ペレット化された形態であっても、ペレット化されていない凝集塊であってもよい。本発明のゴム組成物に使用するカーボンブラックの具体例としては、Orion Engineered Carbons社が供給するCORAX(登録商標) N234が挙げられる。存在し得るカーボンブラックの量は特に限定されないが、0.1~10phr、例えば0.5~5phr、または1~4phr、例えば2~3phrとすることができる。
【0128】
有利には、本発明のゴム組成物中に存在するシリカ系充填剤は、本明細書に記載の充填剤系のもののみであり、すなわち追加のシリカは存在しない。したがって、シリカ系は、組成物中のシリカ充填材のすべてを構成することができる。いくつかの実施形態では、シリカ系は、ゴム組成物中の補強充填材のすべてを構成することができる。しかしながら、追加のシリカベースの充填剤または追加の非シリカベースの充填剤の存在は、必ずしも除外されない。追加のシリカが存在する場合、シリカは、当該技術分野で公知のものから選択することができ、沈降した非晶質シリカ、湿式シリカ(水和ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、熱分解(ヒュームド)シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム(例えば、MgSiO、MgSiO)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(例えば、Al・CaOSiO)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
ゴム組成物は、当業者に公知の追加の充填剤を含んでもよい。例えば、ゴム組成物は、水酸化アルミニウム、タルク、アルミナ(Al)、アルミニウム水和物(Al・HO)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、炭酸アルミニウム(Al(CO)、酸化アルミニウムマグネシウム(MgOAl)、パイロフィライト(Al・4SiO・HO)、ベントナイト(Al・4SiO.2HO)、雲母、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、炭酸カルシウム(CaCO)、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO)、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム(ZrO)、水酸化ジルコニウム(Zr(OH).nHO)、炭酸ジルコニウム(Zr(CO)、結晶性アルミノケイ酸塩、酸化亜鉛の補強グレード(すなわち補強酸化亜鉛)よりなる群から選択される1種以上の追加充填剤を含むことができる。さらなる充填剤の量は、5~200phr、例えば10~150phrまたは25~100phrとすることができる。
【0130】
本発明のゴム組成物に使用する劣化防止剤は、特に限定されず、当業者に公知のものであればいずれであってもよい。劣化防止剤は、酸化防止剤および/または抗オゾン剤であってもよい。例えば、分解防止剤は、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)および2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンポリマー(TMQ)よりなる群から選択される1種以上であってよい。好ましくは、分解防止剤は、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)および2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンポリマー(TMQ)の組み合わせである。各分解防止剤の量は、0.1~3phr、好ましくは0.2~2phrである。分解防止剤の総量は、0.1~5phr、好ましくは1~3phrである。
【0131】
配合中のシリカ凝集体の形成を抑えるために、被覆剤を使用することができる。被覆剤が存在する場合、最大5phr、好ましくは約1~約3phrの量で使用することができる。一実施形態では、追加の被覆剤は使用しない。被覆剤は特に限定されず、当該技術分野で公知であるものであればいずれでもよい。適切なシリカ系被覆剤としては、アルキルアルコキシシラン、例えばヘキサデシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシランなどのシランが挙げられる。一実施形態において、被覆剤は、ポリマー上に予めグラフト化されていてもよい。また、遊離の状態(すなわち、予めグラフトされていない状態)で使用してもよいし、シリカの表面にグラフトして使用してもよい。
【0132】
シリカの凝集を抑制するためにシリカのシラノール基に結合し、またシリカ充填材をジエンゴム母材に共有結合させる機能を有するカップリング(結合)剤が存在してもよい。カップリング剤の適切な量は、当業者であれば、その分子量、含有する官能基の数、反応性などの因子を考慮して決定することができる。ほとんどのカップリング剤は、シリカの量に基づいて等モル量で使用することができる。本発明のゴム組成物に使用するカップリング剤は特に限定されず、当業者に公知のものであればいずれでもよい。一実施形態において、カップリング剤は、ポリマー上に予めグラフト化されていてもよい。また、遊離の状態(すなわち、予めグラフト化していない状態)で使用してもよく、シリカの表面にグラフト化して使用してもよい。
【0133】
一般的には、カップリング剤はシランカップリング剤、例えば二官能性シランである。例えば、シランカップリング剤は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドよりなる群から選択される1種以上であってもよい。好ましくは、シランカップリング剤はビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドである。本発明で使用するシランカップリング剤の具体例としては、Evonik Industries AGのSi 69(登録商標)が挙げられる。シランカップリング剤の量は特に限定されないが、2~20phr、好ましくは5~18phr、より好ましくは7~16phr、例えば10~16phrとすることができる。
【0134】
本発明によるゴム組成物は、当該技術分野で公知の方法によって調製することができ、ジエンゴム成分、本明細書に記載の充填剤系、および本明細書に記載の任意の他の成分を混合(すなわちコンパウンド)して、その後の加硫のためのゴム組成物を製造する。さらなる態様によれば、本発明は、本明細書に記載のゴム組成物を配合することによってゴム化合物を製造する方法を提供する。
【0135】
さらなる態様によれば、本発明は、以下の段階を含むゴム製品の製造方法を提供する:本明細書に記載のゴム組成物を配合してゴム化合物を形成する段階;ゴム化合物を所望の形状に成形する(例えば、成形する)工程;およびゴム化合物を加硫する段階。
【0136】
本発明のゴム化合物を調製するにあたり、各成分の配合方法は特に限定されず、当該技術分野で公知の方法を使用することができる。ゴム組成物を任意の所望の形状に成形するには、押出成形機、プレス成形機等の公知の成形機を使用することができる。
【0137】
成分の混合は、通常、成分が添加され得る段階で実施される。シリカ充填剤系の分散を最適化するためには、多段階混合プロセスが一般に好ましく、複数のミキサー、例えば直列に配置された異なるミキサーの使用を伴うことがある。例えば、タイヤトレッド化合物を混合する場合、混合プロセスは、マスターバッチを製造する初期混合段階、次いで1つ以上の追加の直接製造に関係のない混合段階、および最後に硬化剤(すなわち、硫黄または硫黄供与剤および促進剤(複数可))を添加する生産的な混合段階を含むことができる。使用できるミキサーは当該技術分野で周知であり、例えば、接線方向または噛み合い方向のローターを有するオープンミルまたはバンバリー型ミキサーが挙げられる。
【0138】
一般的には、ゴム、シリカ充填剤系、加工助剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、劣化防止剤(酸化防止剤、オゾン防止剤など)、顔料、追加充填剤、相溶化剤、およびカップリング剤(存在する場合)を混合して最初のマスターバッチを製造する。この最初のマスターバッチの後に、追加の充填剤および添加剤を追加する別のマスターバッチが続いたり、または付加的な成分を添加しない直接製造に関係のない混合段階が続いたりする場合がある。ゴム内に成分(充填剤など)をさらに分散させるため、または混合ゴム化合物の粘度を下げるために、直接製造に関係のない混合段階を使用してもよい。
【0139】
混合中、組成物の早期架橋を避けるために、温度は所定のレベル以下に維持される。一般的に、温度は150℃以下、好ましくは140℃以下に維持され得る。最初のマスターバッチを製造する際、混合は、例えば約80~約110℃、例えば約100℃の温度で実施され得る。直接製造に関係のない混合段階では、温度を例えば約150℃まで、例えば約130℃まで上昇させ得る。混合中に追加の相溶化剤を添加する場合は、これらの相溶化剤がシリカ表面と確実に反応するように、より高い温度で混合する必要があり得る。混合時間は変動し得るが、当業者であれば、混合物の組成および使用するミキサーの種類に基づいて、容易に混合時間を決定することができる。一般に、所望の均質な組成物を得るには、少なくとも1分間、好ましくは2~30分間の混合時間で十分である。
【0140】
最終混合段階では、促進剤、劣化防止剤などの硬化剤を添加する。この混合段階の温度は一般的に低く、例えば約40~約60℃の範囲内、例えば約50℃である。この最終混合の後には、成分を加えない直接製造に関係のない混合段階が続くこともある。
【0141】
加硫可能なゴム化合物を得るために、最も適切な混合の種類を容易に選択できる。混合速度は容易に決定することができるが、例えば、約20~約100rpm、例えば約30~約80rpm、好ましくは約50rpmの速度であってもよい。
【0142】
加硫可能なゴム化合物は、組成物を硬化させる最終加硫のための未硬化の(いわゆる「グリーン」)タイヤ構成要素として供給され得る。ゴム成分を架橋するための硬化は、既知の方法によって実施することができる。例えば、タイヤ産業では、未硬化のゴム(いわゆる「グリーンボディ」)が製造され、続いてゴム成分を架橋すると同時に、プレス金型内で加硫し、最終的なタイヤに成形する。加硫は、主に硫黄架橋による架橋によってゴムを硬化させる。ゴム組成物を硬化させるための加硫方法および条件は、当業者にとって周知である。適切な加硫条件は、通常、120~200℃、例えば140~180℃の範囲の温度で、5~180分間、例えば5~120分間加熱することが挙げられる。
【0143】
加硫可能なゴム組成物は、本発明のさらなる態様を形成する。別の態様において、本発明は、本明細書で定義される充填剤系が分散されたジエンゴム成分を含む加硫可能なゴム組成物を提供する。
【0144】
本明細書に記載の加硫可能なゴム組成物を架橋することによって、得られるか、直接得られるか、または得ることができる加硫ゴム化合物も本発明の一部である。
【0145】
加硫ゴム組成物を製造する方法も本発明の一部を形成する。したがって、別の態様において、本発明は、加硫されたゴム組成物の製造工程であって、本明細書で定義されるようなシリカ充填剤系をジエンゴム成分に導入し、それによって加硫可能なゴム組成物を製造する段階;および該加硫可能なゴム組成物を、所定の温度および所定時間加熱することにより加硫する段階を含む。
【0146】
本明細書に記載のゴム組成物は、車両用タイヤの製造、特にタイヤトレッドなどのタイヤ構成要素の製造に使用が見出される。タイヤトレッドは、あらゆる車両用タイヤに使用され得るが、特に自動車用のタイヤトレッドの製造において使用される。ゴム化合物の他の用途としては、振動ダンパー、サイドウォールゴム、インナーライナーゴム、ビーズ充填剤ゴム、ボディプライゴム、スキムショックゴム、トレッドゴムが挙げられる。
【0147】
別の態様では、本発明は、車両用タイヤの部品として、または車両用タイヤの部品の製造における、本明細書に記載されるようなゴム組成物の使用を提供する。
【0148】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載されるようなゴム組成物から製造された、タイヤトレッドのような車両用タイヤ構成要素を提供する。車両用タイヤ構成要素を備える車両用タイヤも本発明の一部を形成する。
【0149】
タイヤ構成要素の組み立ておよび製造方法は、当技術分野で周知である。「グリーン」タイヤの組み立てに続いて、加硫によって最終的なタイヤを製造する適切な金型内で、圧縮形成する。
【0150】
本発明に係るゴム化合物は、ホースおよびシールの製造など、タイヤ以外の用途にも使用され得る。
【0151】
本発明では、従来の充填剤を本明細書に記載のシリカ充填剤系に置き換えることにより、タイヤトレッドゴム化合物として使用するのに優れた耐摩耗性、転がり抵抗およびウェット性能を有し、これらの特性のバランスに優れたゴム組成物が得られる。
【0152】
本発明は、以下の非限定的な実施例および添付の図面によってさらに説明される:
【図面の簡単な説明】
【0153】
図1】本発明によるゴム組成物E1および参照組成物CE1に対する温度の関数としてのtanδを示すtanδ曲線。
図2】本発明によるゴム組成物E2および参照組成物CE2に対する温度の関数としてのtanδを示すtanδ曲線。
図3】本発明によるゴム組成物E3および参照組成物CE3に対する温度の関数としてのtanδを示すtanδ曲線。
図4】本発明によるゴム組成物E4および参照組成物CE4に対する温度の関数としてのtanδを示すtanδ曲線。
図5】本発明によるゴム組成物E1~E4および参照ゴム組成物CE1~CE4についての、tanδ@ピーク/tanδ@60℃によるWET/RR指数の関数としてのバウンドゴムによる摩耗指数(%)を示すグラフ。
【実施例
【0154】
[試験方法]
【0155】
<ブルナウアー・エメット・テラー(BET)比表面積>
官能基化シリカの比表面積は、Journal of the American Chemical Society, Vol.60, page 309,1938年、2月に記載され、NF ISO 5794-1,付録D規格(2010年6月)に相当する方法に従い、BET法により測定した。
【0156】
<セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着法>
官能基化シリカの表面積は、ASTM D6845に従ってCTAB法で測定した。
【0157】
<カルボン酸および対応するカルボン酸塩の炭素含有量(C)>
カルボン酸および対応するカルボン酸塩の含有量(C)は、全炭素として表示され、Horiba EMIA 320 V2装置などの炭素/硫黄分析装置を用いて測定することができる。炭素/硫黄分析計の原理は、誘導炉(約170mAに調整)内の酸素気流中の、燃焼促進剤(約2gのタングステン(特にLecocel 763-266)と約1gの鉄)の存在下での固体試料の燃焼に基づく。分析時間は約1分間である。分析対象の試料に含まれる炭素(質量約0.2g)が酸素と結合してCOとCOが生成され、これらの分解ガスを赤外線検出器で分析する。赤外線測定を妨害しないため、脱水剤(過塩素酸マグネシウム)を含むカートリッジを通過させることにより、試料からの湿気およびこれらの酸化反応で生じた水分を除去する。結果は元素炭素の質量百分率で表される。
【0158】
<物体サイズ分布幅比(Ld)>
物体サイズ分布幅比は、特許文献3(WO 2015/121333)に記載の方法に従って超音波脱凝集後にXDC粒度分析によって測定される物体サイズ分布幅比Ld((d84-d16)/d50)である。
【0159】
<細孔容積分布>
細孔容積分布は、特許文献3(WO 2015/121333)に記載された方法に従って測定された細孔容積分布比V(d5-d50)/V(d5-d100)である。
【0160】
<官能基化シリカpH>
官能基化シリカのpHは、ISO 787/9に由来する特許文献3(WO 2015/121333)に記載の方法に従って測定した。
【0161】
<tanδ@曲線の最大値/60℃におけるtanδで求めたWET/RR指数(すなわち、tanδ@ピーク/60℃におけるtanδ)>
転がり抵抗と湿潤時のトラクションの評価には、異なる温度における損失係数(正接δ、またはtanδ)を使用する。低温でのtanδは、湿潤時のトラクションの指標となる。対照化合物と比較した場合、低温でのtanδの増加は、トレッド化合物の湿潤時のトラクションの向上と相関する。タイヤの転がり抵抗を改善するためにタイヤトレッド用のゴム組成物を開発する場合、60℃付近の損失正接(tanδ)を指標として考えるのが一般的である。トレッドゴムに60℃付近でtanδが低いゴム組成物を使用することで、タイヤ内の発熱を抑制して転がり抵抗を低減し、タイヤの燃費を向上させることができる。したがって、60℃におけるtanδは転がり抵抗(RR)の指標となる。対照化合物と比較して低い結果は、転がり抵抗の減少を示す。WET/RR指数は、60℃におけるtanδ(tanδ@60℃)に対するtanδ曲線の最大値(すなわち低温領域)(tanδ@ピーク)の比によって計算される。tanδを測定するための動的物理試験は、ISO4664規格に従って実施した。
【0162】
<ペイン効果(%)>
ペイン効果は、充填剤ネットワークの程度、すなわち充填剤分散性の指標を提供する。ペイン効果は、室温での応力/歪み試験におけるISO4664規格に従って測定した化合物の動的特性から算出した。ペイン効果は、ΔE’/E’(0.1%歪み)の比(百分率で表示)からゴム組成物中の充填剤分散を予測することができ、ΔE’はE’(0.1%歪み)-E’(4%歪み)の差である。ペイン効果が低いほど、ゴム組成物中の充填剤分散が良好である。
【0163】
<バウンドラバー(%)>
「バウンドラバー」は充填剤補強の指標となる。いわゆる「バウンドラバー」試験は、非加硫組成物中のエラストマーの割合の判定を可能にし、エラストマーは補強充填剤と密接に結合しているため、この割合のエラストマーは通常の有機溶剤に不溶である。混合中に補強充填剤に結合したこの不溶性ゴムの割合を知ることで、ゴム組成物中の充填剤の補強活性を定量的に示すことができる。充填剤に結合したゴムの割合を定量化することで、ゴム化合物の耐摩耗性を予測することができる。バウンドラバーが高いほど、ゴム化合物の耐摩耗性は高くなる。この試験は、補強充填剤により提供される補強の質を特徴付けるために当業者に周知であり、以下の非特許文献、すなわち、Plastics, Rubber and Composites Processing and Applications, Vol. 25, No 7, p. 327 (1996年); and Rubber Chemistry and Technology, Vol. 69, p. 325(1996年)に記載されている。本明細書の実施例において、シクロヘキサン中の非抽出性エラストマーの範囲は、この溶媒(例えば20~40mlのシクロヘキサン中)中でゴム組成物の試料(一般的には100~200mg)を2日間膨潤させた後、このように処理したゴム組成物の重量を測定する前に、室温で24時間乾燥させる工程を経てから測定する。好ましくは、上記膨潤段階は、室温(20℃)で、光を避けて行う。「バウンドラバー」の含有量(重量%)は、ゴム組成物中に最初に存在するエラストマー以外の本質的に不溶性の成分の割合を考慮し、排除した後に、ゴム組成物試料の初期重量と最終重量との差によって既知の方法で計算される
【0164】
[シリカ充填剤]
表面官能基化シリカ(本明細書では「VHSA官能基化シリカ」と呼ぶ)を、国際公開第2015/121333号の実施例6に従って調製し、ここで、メチルグルタル酸(MGA)の添加量を0.40重量%(MGA混合物/SiO重量比で表す)とし、pHを3~3.7の間になるように調整した。官能基化シリカの特性を以下の表1に示す。
【0165】
【表1】
【0166】
表面修飾されていないシリカ(本明細書では「VHSAシリカ」と呼ぶ)は、BET比表面積260m/g、CTAB比表面積250m/g、炭素含有量0である、商品名Premium Super Wear(Premium SW)をSolvay社から入手した。
【0167】
低補強グレードのシリカ(本明細書では「VLSAシリカ」と呼ぶ)は、BET比表面積90m/g±20m/gおよびCTAB比表面積80m/g±15m/gである、商品名Zeosil(登録商標) 1085 GRをSolvay社から入手した。
【0168】
[ゴム組成物]
<材料>:
ゴム:官能基化SSBR:下記調製方法参照
非官能基化ESBR:Europrene 1723(Versalis、イタリア)
カーボンブラック:Corax(登録商標) N234 (Orion Engineered Carbons、ルクセンブルグ)
シランカップリング剤-Si69(登録商標)
脂肪族樹脂-Impera E1780(Eastman、オランダ)
低Tgオイル-オレイン酸2-エチルヘキシル:ペルマビスT(Traquisa)
N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)
1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)
硫黄
ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)
N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)
ステアリン酸
2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンポリマー(TMQ)
酸化亜鉛(ZnO)
【0169】
官能基化SSBRは、特許文献5(EP 3 725 837)に記載されている以下の方法に従って製造した:1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液とスチレンのシクロヘキサン溶液を乾燥し、窒素パージした容積800mLの圧力密閉ガラス容器に、1,3-ブタジエンの量が67.5g、スチレンの量が7.5gとなるように入れた。2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.6mmolとn-ブチリチウム0.8mmolを加え、50℃で1.5時間重合を行った。重合転化率がほぼ100%に達した重合系に、修飾剤であるN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン0.72mmolを添加し、50℃で30分間修飾反応を行った。続いて、酸化防止剤2,6-ジ-t-ブチル-4-クレゾール(BHT)の5質量%イソプロパノール溶液2mLを添加して、重合を停止し、得られた材料を乾燥して官能基化SSBRを得た。この官能基化SSBRの微細構造(ビニル結合含量)をモレロ法により測定した。結合スチレン含量は10重量%、ブタジエン中のビニル結合含量は40重量%であった。
【0170】
[実施例E1~E4]
表4に示す成分を配合することにより、本発明によるゴム組成物E1~E4を調製した。表4の値は、ゴム組成物100重量部を基準とする重量部(PHR)である。表4からわかるように、シリカ充填剤系の総量は、VLSAシリカとVHSA官能基化シリカの重量比の増加に伴って、E1からE4まで減少する。
【0171】
【表2】
【0172】
成分の配合は、以下の一般的な手順に従って行った。
<直接製造に関係のない混合段階>:加硫系以外の全成分をバンバリーミキサーに加え、ポリマーベースと混合した。混合中、温度は最初110℃から130℃の間に維持し、続いて150℃から160℃の間に上げてシラン化を行った。
<生産的な混合段階>:直接製造に関係のない混合段階で製造された混合物を加硫系と90℃から110℃で加硫系と混合し、ゴム組成物の加硫を行った。
【0173】
[比較例CE1~CE4]
上述した実施例E1~E4のゴム組成物と同じ方法を用いて表5に示す成分を配合することにより、ゴム組成物CE1~CE4を調製した。表5の値は、ゴム組成物100重量部を基準とした重量部(PHR)である。これらの組成物において、組成物E1~E4の官能基化シリカは、同じ比表面積を有する非官能基化シリカ充填剤で置き換えられる。
【0174】
【表3】
【0175】
[ゴム組成物試験]
ゴム組成物は、本明細書に記載の試験方法に供した。約-45℃~約+65℃の温度範囲にわたってTanδを測定した。図1図4は、本発明による各ゴム組成物および対応する参照ゴム組成物(すなわち、E1:CE1、E2:CE2、E3:CE3およびE4:CE4)についての温度の関数としてのtanδを示す。図1図4のそれぞれのtanδ軸と温度軸のスケールは同じである。
【0176】
図1図4において、低表面積(VLSA)充填剤と高表面積(VHSA)シリカ充填剤の重量比が増加するにつれて(VLSA充填剤の量が増加し、VHSA充填剤の量が減少することによって)、tanδのピーク値が増加し、60℃におけるtanδの値が減少することがわかる。上述したように、60℃付近でtanδが低いゴム組成物は、タイヤトレッドにおける発熱を抑え転がり抵抗を低減することができる。この効果は、シリカ充填剤の総量を減らした場合に観察される。この効果は、本発明による組成物において、参照ゴム組成物と比較して増強される。
【0177】
表6は、ゴム組成物E1~E4およびCE1~CE4についての充填剤分散度、WET/RR指数およびWEAR指数の結果を示す。図5は、すべての組成物について、バウンドラバーによる摩耗指数(%)と、WET/RR指数(tanδ@ピーク/tanδ@60℃(%)による)との関係をグラフ化したものである。
【0178】
【表4】
【0179】
本発明による各ゴム組成物と、対応する参照ゴム組成物とを比較すると、WET/RR指数(%)がより高いことが見出せる。同様に、バウンドラバーによるWEAR指数(%)は、本発明による各ゴム組成物については、対応する参照組成物と比較して改善されている。
【0180】
驚くべきことに、「VLSA」の増加は、参照組成物と比較して、本発明による組成物の摩耗性能を向上する。理論に縛られることは望まないが、「VHSA」と比較して「官能基化VHSA」シリカに関して観察された異なる傾向は、修飾シリカ表面上のカルボキシル基の存在が、より大きな(「VLSA」)粒子内に小さなシリカ(「VHSA」)粒子をより均質に充填するのに役立つことを示唆している。これにより、非強化ゴムの領域が存在しない(または少なくとも減少している)ゴム組成物となり、その結果、摩耗性能が向上する。この挙動は、シリカ充填剤の全試験重量比において顕著であり、重量比0.31の場合において最適である。
図1
図2
図3
図4
図5