(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-25
(45)【発行日】2025-10-03
(54)【発明の名称】ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 9/06 20060101AFI20250926BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20250926BHJP
C08L 57/02 20060101ALI20250926BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20250926BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20250926BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20250926BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L7/00
C08L57/02
C08K3/013
C08K3/36
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2024523821
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2022079376
(87)【国際公開番号】W WO2023067139
(87)【国際公開日】2023-04-27
【審査請求日】2024-06-12
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119079
【氏名又は名称】伊藤 佐保子
(72)【発明者】
【氏名】エンリコ フレスチ
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-098759(JP,A)
【文献】特開2020-070329(JP,A)
【文献】国際公開第2021/124640(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物であって、
(a)-40~-15℃の範囲のガラス転移温度Tgを有する1種または複数のスチレン・ブタジエンコポリマーを含む第1のエラストマーと、
(b)天然ゴムを含む第2のエラストマーと、
(c)炭化水素ポリマー添加剤成分であって、
(i)5mol%以上のオレフィンプロトンを含む部分水素化C
5樹脂である第1の炭化水素ポリマー添加剤、ならびに
(ii)水素化C
5樹脂、水素化C
5/C
9コポリマー樹脂、水素化C
9樹脂およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、0~3mol%のオレフィンプロトンを含む完全水素化樹脂である、第2の炭化水素ポリマー添加剤、
を含む該炭化水素ポリマー添加剤成分と、
を備える、ゴム組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のゴム組成物において、前記第1のエラストマーは、前記ゴム組成物100phrに対して、40~90phrの量で存在する、ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のゴム組成物において、前記第2のエラストマーは、前記ゴム組成物100phrに対して、10~60phrの量で存在する、ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のゴム組成物において、前記炭化水素ポリマー添加剤成分は、前記ゴム組成物100phrに対して、5~25phrの量で存在する、ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のゴム組成物において、前記第1の炭化水素ポリマー添加剤の前記第2の炭化水素ポリマー添加剤に対する重量比は、20:80~80:20の範囲である、ゴム組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のゴム組成物において、前記第1の炭化水素ポリマー添加剤と前記第2と炭化水素ポリマー添加剤に対する重量比は、20:80~60:40の範囲である、ゴム組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のゴム組成物において、前記第1の炭化水素ポリマー添加剤の前記第2の炭化水素ポリマー添加剤に対する重量比は、50:50または25:75である、ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のゴム組成物において、さらに少なくとも1種の補強充填剤を含む、ゴム組成物。
【請求項9】
請求項8に記載のゴム組成物において、前記補強充填剤は1種または複数のシリカ充填剤を含み、前記1種または複数のシリカ充填剤は、前記ゴム組成物100phrに対して、50~110phrの範囲の量で存在する、ゴム組成物。
【請求項10】
請求項1に記載のゴム組成物において、前記第1および第2の炭化水素ポリマー添加剤のオレフィンプロトン含有量の差が10mol%未満である、ゴム組成物。
【請求項11】
請求項1に記載のゴム組成物において、前記第1の炭化水素ポリマー添加剤は部分水素化C
5/ジシクロペンタジエン(DCPD)コポリマーである、ゴム組成物。
【請求項12】
請求項1に記載のゴム組成物において、前記第1の炭化水素ポリマー添加剤は、5mol%のオレフィンプロトンを含む、ゴム組成物。
【請求項13】
請求項1に記載のゴム組成物において、前記第1の炭化水素ポリマー添加剤は、200~1200g/molの重量平均分子量、および/または110℃を超える軟化点を有する、ゴム組成物。
【請求項14】
請求項1に記載のゴム組成物において、前記第2の炭化水素ポリマー添加剤は完全水素化C
9樹脂である、ゴム組成物。
【請求項15】
請求項1に記載のゴム組成物において、前記第2の炭化水素ポリマー添加剤は0~2mol%のオレフィンプロトンを含む、ゴム組成物。
【請求項16】
請求項1に記載のゴム組成物において、前記第2の炭化水素ポリマー添加剤は、700~1500g/molの重量平均分子量、および/または100℃を超える軟化点を有する、ゴム組成物。
【請求項17】
請求項1に記載のゴム組成物において、前記第1のエラストマー成分は、少なくとも1種の溶液重合スチレン・ブタジエンコポリマー(S-SBR)を含む、ゴム組成物。
【請求項18】
請求項1に記載のゴム組成物において、前記ゴム組成物は加硫可能である、ゴム組成物。
【請求項19】
請求項18に記載のゴム組成物を架橋することで得られた、直接得られた、または得ることができる、加硫ゴムコンパウンド。
【請求項20】
請求項1~1
8のいずれか1項に記載のゴム組成物
または請求項19に記載の加硫ゴムコンパウンドから製造したタイヤ構成要素。
【請求項21】
請求項20に記載のタイヤ構成要素を備える車両用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、該ゴム組成物の調製方法、および車両用タイヤならびに車両用タイヤ構成要素の製造における該ゴム組成物の使用に関する。さらに、該ゴム組成物から製造した車両用タイヤ構成要素、特にタイヤトレッドに関する。
【0002】
より具体的には、本発明は高いガラス転移温度(Tg)を有する1種もしくは複数のスチレン・ブタジエンゴムの混合物および天然ゴムを含むゴム成分を有する組成物に関する。該ゴム成分は、該炭化水素ポリマー剤は部分水素化炭化水素樹脂および完全水素化炭化水素樹脂のブレンドを含む炭化水素ポリマー添加剤と配合する。炭化水素樹脂の特定のブレンドは、ゴム組成物のウェット性能、転がり抵抗、および耐摩耗性のバランスを有利に向上させる。
【背景技術】
【0003】
CO2排出量削減のため、低燃費の自動車が求められている。転がり抵抗の低い自動車タイヤは、燃費の消費量を削減できるため、望ましい。また、タイヤは乾いた面および濡れた面の両方で優れたグリップ性能を持つことが重要であり、特に濡れた路面(ウェット性能)は重要である。高い耐摩耗も、タイヤを長持ちさせるための重要な要素である。ウェット性能(WET)、転がり抵抗(RR)、耐摩耗性(WEAR)は、合わせて、粘弾性特性の「魔法の三角形」として知られている。これらの特性間のバランスを向上させたタイヤの製造が、常に求められている。
【0004】
タイヤの製造に使用するゴム組成物の成分は、その動的/機械的特性を調製するために改質することができる。より優れたWET/RR/WEARバランスを達成する試みとして、改質ゴム、ゴムの混合物、および様々な補強充填剤の使用が提案されている。しかしながら、ゴム組成物のこれらの特性のいずれか1つを向上させると、少なくとも1種の他の特性に悪影響を及ぼすことが多い。例えば、タイヤの転がり抵抗および耐摩耗性に悪影響を及ぼすことなくタイヤのウェット性能を向上させることは難しい。補強充填剤の量を増やすと、摩耗性能は向上する一方、転がり抵抗は低下する。
【0005】
炭化水素樹脂は加工助剤として広く使用され、ゴム配合時に異なるゴム成分の分散を高める。該炭化水素樹脂はゴム組成物の粘弾性特性を改質するためにも使用し、タイヤトレッドの性能特性、例えばウェットグリップや転がり抵抗を向上させる。タイヤトレッド用ゴム組成物の製造に用いる炭化水素樹脂は幅広く知られており、脂肪族樹脂、芳香族樹脂、部分水素化樹脂および完全水素化樹脂などが挙げられる。例えば、C5脂肪族樹脂、C9芳香族樹脂、C5/C9混合樹脂、芳香族純粋モノマー樹脂、ジシクロペンタンジエン(DCPD)樹脂、芳香族変性脂環式樹脂、クマロンインデン樹脂、ロジン樹脂、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、およびこれらの水素化物が挙げられる。異なる炭化水素樹脂の組み合わせが、ゴム組成物中のブレンド形態および充填剤分布を制御するために提案されてきた。異なる樹脂および樹脂の組み合わせは、その化学組成および/または分子量が異なる可能性があり、これは、例えば任意のゴムまたはゴムのブレンドの親和性など、それらの特性に影響を及ぼす可能性がある。例えば、米国公開特許公報第2019/0092937号では、天然ゴムと高シスポリブタジエンゴムとの非混和性ブレンドの材料特性を調整するために、C5脂肪族樹脂と、DCPD樹脂または芳香族純粋モノマー樹脂とのブレンドが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スチレン・ブタジエンゴム(SBR)は、タイヤの製造における使用でよく知られており、天然ゴムとのブレンドとして使用されることが多い。SBRは高いガラス転移温度(Tg)を有し、ゴム組成物全体のTgを高めるために使用することができる。組成物の高いTgは、ウェット性能の向上につながるが、転がり抵抗および摩耗の低下を伴う。RRおよびWEARを向上させる一方でWET性能を保つためのさまざまな試み、例えばSBRのビニル含有量を増やす、ポリマー鎖に官能基を導入する、などがなされてきた。現在まで、炭化水素樹脂の、高TgのSBRおよび天然ゴムのブレンドを含むゴム組成物の動的特性に対する影響は研究されていない。
【0007】
向上させたWET/RR/WEARバランスを有するタイヤを提供する必要が依然として残っている。特に、高Tgのスチレン・ブタジエンコポリマーおよび天然ゴムのブレンドを含むゴム組成物において、これらの特性の良好な特性のバランスを提供する必要がある。
【0008】
発明者らは、驚くべきことに、部分水素化および完全水素化炭化水素樹脂の特定のブレンドが、少なくとも1種の高Tgスチレン・ブタジエンコポリマーおよび天然ゴムを含むゴム組成物のWET/RR/WEARバランスを向上させることができることを見出した。
【0009】
各炭化水素樹脂を単独で使用した場合と比較した向上の程度は予想外であり、補強シリカ充填剤を配合した場合のウェット性能および転がり抵抗の低下を十分に弱めることができる。これにより、転がり抵抗およびウェット性能に悪影響を及ぼすことなく、ゴム組成物の充填剤を増やすことで摩耗性能を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様では、本発明は、ゴム組成物を提供し、このゴム組成物は、
(a)-40~-15℃のTgを有する1種または複数のスチレン・ブタジエンコポリマーを含む第1のエラストマーと、
(b)天然ゴムを含む第2のエラストマーと、
(c)炭化水素ポリマー添加成分であって、
(i)部分水素化C5樹脂である第1の炭化水素ポリマー添加剤、ならびに
(ii)水素化C5樹脂、水素化C5/C9コポリマー樹脂、水素化C9樹脂およびそれらの組み合わせからなる群から選択される完全水素化樹脂である、第2の炭化水素ポリマー添加剤、
を含む、該炭化水素ポリマー添加剤成分と、
を備える。
【0011】
別の態様では、本発明は、ゴム組成物を製造するためのプロセスを提供し、該プロセスは、本明細書で述べる成分(a)、(b)および(c)を配合するステップを含む。
【0012】
別の態様において、本発明は加硫可能なゴム組成物を提供し、該加硫可能なゴム組成物は、
(a)-40~-15℃のTgを有する1種または複数のスチレン・ブタジエンコポリマーを含む第1のエラストマーと、
(b)天然ゴムを含む第2のエラストマーと、
(c)炭化水素ポリマー添加成分であって、
(i)部分水素化C5樹脂である第1の炭化水素ポリマー添加剤、ならびに
(ii)水素化C5樹脂、水素化C5/C9コポリマー樹脂、水素化C9樹脂およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される完全水素化樹脂である、第2の炭化水素ポリマー添加剤、
を含む、該炭化水素ポリマー添加剤成分と、
を備える。
【0013】
別の態様では、本発明は加硫ゴム組成物を提供し、該加硫ゴム組成物は、本発明書に記載の加硫可能なゴム組成物を架橋することによって、得られる、直接得られる、または得ることができる。
【0014】
別の態様において、本発明は加硫ゴム組成物を製造するためのプロセスを提供し、該プロセスは、成分(a)、(b)および(c)を本明細書に記載されるように配合し、それにより加硫可能なゴム組成物を製造するステップならびに該加硫可能なゴム組成物を所定の温度まで、所定の時間にわたり加熱することで加硫するステップを含む。
【0015】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載されるゴム組成物の、車両用タイヤ構成要素としてまたは車両用タイヤ構成要素の製造における使用を提供する。
【0016】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載されたゴム組成物から製造した車両用タイヤ構成要素を提供する。
【0017】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載された車両用タイヤ構成要素を含む車両用タイヤを提供する。
【発明の詳細な説明】
【0018】
第1の態様によれば、本発明はゴム組成物を提供し、該ゴム組成物は、
(a)-40~-15℃のTgを有する1種または複数のスチレン・ブタジエンコポリマーを含む第1のエラストマーと、
(b)天然ゴムを含む第2のエラストマーと、
(c)炭化水素ポリマー添加成分であって、
(i)部分水素化C5樹脂である第1の炭化水素ポリマー添加剤、ならびに
(ii)水素化C5樹脂、水素化C5/C9コポリマー樹脂、水素化C9樹脂およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される完全水素化炭化水素樹脂である、第2の炭化水素ポリマー添加剤、
を含む、該炭化水素ポリマー添加成分と、
を備える。
【0019】
本明細書に記載されるように、本発明によるゴム組成物は、タイヤトレッドとして使用するためのゴムの配合において、従来使用される他の成分を含有することができ、例えば補強充填剤などがある。好ましくは、ゴム組成物は少なくとも1種の補強充填剤を含み、例えばシリカなどがある。
【0020】
特別の定めがない限り、用語「ゴム組成物(rubber composition)」「配合したゴム(compounded rubber)」および「ゴムコンパウンド(rubber compound)」は、本明細書において互換的に使用し、様々な成分または材料とブレンドまたは混合(配合)したゴムを意味し、このような用語は当該技術分野においてよく知られ、理解されている。本発明はゴム組成物に関するものであり、未加工状態(すなわち硬化もしくは加硫前)および硬化もしくは加硫状態(すなわち硬化もしくは加硫後)の両方のゴム組成物に関する。
【0021】
本発明によるゴム組成物は、本明細書で定義される第1のエラストマーおよび第2のエラストマーを含む。第1および第2のエラストマーの混和性の程度は、制限される場合がある。ゴム組成物中に混合物として存在する場合、これらは第1または第2のエラストマーが優勢な領域を生成する傾向を有し得る。いくつかの実施形態では、第1および第2のエラストマーは非混和性の場合があり、したがって、非混和性ブレンドとしてゴム組成物中に存在することになる。用語「エラストマー」は、本明細書においてポリマーまたはポリマーの組み合わせを示す。
【0022】
第1のエラストマーは、高いガラス転移温度Tgを有する少なくとも1種のスチレン・ブタジエンコポリマーを含む。用語「スチレン・ブタジエンコポリマー(styrene butadiene copolymer)」は、スチレンとブタジエンの重合により作られる合成ゴムを意味する。スチレン・ブタジエンコポリマーは、本明細書において、「スチレン・ブタジエンゴム」または「SBR」と表す場合がある。
【0023】
一実施形態では、第1のエラストマーは2種またはそれ以上のスチレン・ブタジエンコポリマーのブレンドを含む。例えば、2つの異なるスチレン・ブタジエンコポリマーを含んでいてもよい。1種以上のスチレン・ブタジエンコポリマーがゴム組成物中に存在する場合、各コポリマーが、本明細書に定義されるように高いTgを有すると解される。ガラス転移温度Tgは、二次転移であり、非晶質材料が硬い、または「ガラス状」の固体から、より柔軟な、または「ゴム状」の粘性状態に可逆的に変化する温度範囲である。
【0024】
Tgは示差走査熱量測定(DSC)により決定することができる。本明細書で報告するTg値はDSCを使用し、開始温度-140℃;温度勾配:15℃/分で決定する。そうでないと特定しない限り、本明細書に記載された全ての試験方法は、23℃、相対湿度50%で実施する。
【0025】
「高Tg」とは、本発明で使用するスチレン・ブタジエンコポリマー(または複数のコポリマー)のTgが-40~-15℃の範囲であることを意味する。いくつかの実施形態では、Tgは、-35~-15℃、または-30~-15℃、または-28~-18℃、または-26~-21℃の範囲である。
【0026】
一実施形態では、第1のエラストマーは、基本的に、本明細書に示すような1種または複数のスチレン・ブタジエンコポリマーからなる。別の実施形態では、第1のエラストマーは、このようなコポリマーからなる。
【0027】
スチレン・ブタジエンゴム(SBR)は、タイヤ産業で一般的に使用され、既知の方法で製造することができ、例えば乳濁液、懸濁液または溶液中での対応するモノマーの共重合などがある。1組の実施形態では、本発明で使用するスチレン・ブタジエンコポリマーは、溶液重合スチレン・ブタジエンゴム(SSBR)または乳化重合スチレン・ブタジエンゴム(EDBR)であることができる。「乳化重合スチレン・ブタジエンゴム」とは、スチレンと1,3-ブタジエンを水性エマルジョンとして共重合することを意味する。このような方法は、当業者によく知られ、理解されている。本発明における使用で好ましいのは、溶液重合により製造するSBRである。スチレンおよびブタジエンモノマーはゴム組成物の使用目的および特性に応じて、適切な比率で選択することができる。例えば、スチレンは、最大約45wt%(コモノマーの総重量に基づく)の量で存在することができる。いくつかの実施形態で、SBRのスチレン含有量は、10~40wt%(SBRゴムの重量基準)、好ましくは10~30wt%、より好ましくは15~25wt%、さらに好ましくは21~24wt%、例えば、約21wt%であってよい。スチレン含有量は、1H-NMRで測定することができる。
【0028】
本発明で使用するスチレン・ブタジエンコポリマー(または複数コポリマー)は、官能基化されていても非官能基化されていてもよい。一実施形態では、スチレン・ブタジエンコポリマーは、非官能基化、すなわち未改質である。この実施形態では、スチレン・ブタジエンコポリマーは官能基を含まない。特に、主鎖の末端に官能基を有しない。
【0029】
あるいは、本発明で使用するスチレン・ブタジエンコポリマー(または複数コポリマー)は、官能基化されていてもよい。「官能基化された」スチレン・ブタジエンコポリマーとは、1種または複数の官能基による修飾を意味する。スチレン・ブタジエンコポリマーが官能基化されている場合、そのポリマー主鎖、末端基および/または側鎖のいずれかが、1種または複数の官能基と結合していてもよい。これらの官能基は、その製造時にポリマー材料に組み込むこともでき、または、その後にポリマーにグラフトさせることもできる。官能基化されたスチレン・ブタジエンコポリマーの選択は、本明細書に記載のゴム化合物の使用目的により決定する。官能基化スチレン・ブタジエンコポリマーの例としては、1種または複数の反応性基を有するものがあり、例えばシリカカップリング剤と反応可能な基があり、硫黄含有有機ケイ素化合物などがある。代表的な官能基としては、ClやBrなどのハロゲン;メトキシなどのアルコキシ基;シロキシ基;および-SCNなどの擬ハロゲンがある。一実施形態では、スチレン・ブタジエンコポリマーはシロキシ末端コポリマーであってもよい。官能基はまた、1種または複数の相互作用性基、例えばアミノ基を含んでいてもよい。アミノ基などの相互作用性基は、例えば、組成物のゴムマトリックス内で水素結合を形成することができる。
【0030】
タイヤトレッドにおけるエネルギー散逸、ひいては転がり抵抗に対する重要な寄与は、ポリマー鎖の自由末端の存在に由来し、シリカ充填剤などの充填剤系を含む実施形態では、シリカ充填剤により形成する充填剤ネットワークの劣化に由来する。有利には、ポリマー鎖の末端および/または始端に官能基を有し、これらが物理的または化学的に充填剤表面に付着することを可能にするスチレン・ブタジエンコポリマーを、したがって本発明に採用することができる。これらはポリマー鎖の移動度を制限し、ひいては動的応力下でのエネルギー散逸を減少させる。また、これらはゴム組成物中の補強充填剤の分散性を向上させ、充填剤ネットワークの強化、ひいては転がり抵抗の低下につながる。
【0031】
いくつかの実施形態では、本発明で使用するスチレン・ブタジエンコポリマーは末端官能基化コポリマーであり、ゴム組成物の特性に相互作用的および/または相乗的な影響を及ぼし、有利な特性を生じさせ得る。具体的には、シリカ充填剤系が存在する場合、末端官能基化スチレン・ブタジエンコポリマーおよびシリカの間の相互作用は、相乗的である場合もあり、ゴム組成物および該ゴム組成物からなる製品中の充填剤系の分散が改善する可能性がある。「末端官能基化」SBRは、「末端変性」SBRと呼ばれることがある。いくつかの実施形態では、スチレン・ブタジエンコポリマーは末端官能基化SSBRであってもよい。末端官能基化ゴムは当該技術分野においてよく知られており、タイヤトレッド用ゴムコンパウンドの製造に使用することが知られているものであれば、本発明に使用することができる。
【0032】
1組の実施形態では、第1のエラストマーは、2つまたはそれ以上のそれぞれが本明細書で定義したように高いTgを有するスチレン・ブタジエンコポリマーのブレンドである。例えば、2種の該コポリマーのブレンドであってもよい。いくつかの実施形態では、第1のエラストマーは2つ以上(例えば、2つ)の同じタイプのSBR成分からなり得るが、該SBR成分は異なる分子量(例えば、数平均または重量平均)を有し、異なる重合プロセス(例えば、溶液ベースの重合または乳化ベースの重合)から製造された、または異なる官能性(例えば、官能基化の位置(すなわち、末端官能基化もしくは非官能基化)または異なる官能基)を有する。
【0033】
スチレン・ブタジエンコポリマーの好適なブレンドは、ゴム組成物の使用目的を念頭に置いて、当業者が容易に選択することができる。一実施形態では、第1のエラストマーは、2つの異なるSBRポリマーからなる。例えば、第1のエラストマーは、SSBRおとびESBRを含むことができる。1組の実施形態では、第1のエラストマーは、末端官能基化SBRおよび非官能基化SBRを含んでもよい。いくつかの実施形態では、第1のエラストマーは異なる分子量を有する2つのSSBRポリマーを含む。いくつかの実施形態では、第1のエラストマーは異なる割合のスチレン含有量を有する2つのSSBRポリマーを含む。
【0034】
第2のエラストマーは、天然ゴムを含む。一実施形態では、第2のエラストマーはほぼ天然ゴムからなり、例えば天然ゴムからなるものとすることができる。
【0035】
天然ゴムは、タイヤの製造への使用でよく知られている。本発明で使用する天然ゴムは特に限定されず、タイヤ産業で一般的に使用する天然ゴムまたは天然ゴムの組み合わせであればよい。具体的な例としては、標準マレーシアゴム(SMR)、標準インドネシアゴム(SIR)、特定シンガポールゴム(SSR)、標準ランカゴム(SLR)、タイ試験ゴム(TTR)、ナイジェリア標準ゴムなどがある。
【0036】
いくつかの実施形態では、第1のエラストマーは、ゴム組成物100phrに対して、約40~約90phr、好ましくは約70~約90phr、例えば約80~約90phrの量で存在する。
【0037】
いくつかの実施形態では、第2のエラストマーは、ゴム組成物100phrに対して、約10~約60phr、好ましくは約10~約30phr、より好ましくは約15~約25phr、例えば約20~約25phrの量で存在する。
【0038】
本明細書において、用語「phr」は、ゴム(重量での)の百分率での割合を意味する。これは当該技術分野で一般的に使用される用語であり、ゴム(すなわちエラストマー)成分全体に対して組成物の成分を相対的に測定したものである。ゴム成分の合計を100phrと定義し、その他の成分はゴム100部に対する比率として定義し、「phr」で表す。
【0039】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のゴム組成物は、本明細書に記載の第1および第2のエラストマーに加えて、他のエラストマー成分を含んでいてもよい。存在し得る他のゴム成分としては、ブタジエンゴム(BR)、エチレンプロピレンヂエンモノマーゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、ポリイソブチレンゴム、エポキシ化天然ゴム(ENR)、ネオプレン、合成ポリイソプレン(IR)、およびポリウレタンが挙げられる。
【0040】
本明細書に記載の組成物は、炭化水素ポリマー添加剤成分を含む。本明細書において、用語「炭化水素ポリマー添加剤(hydrocarbon polymer additive)」は、炭化水素樹脂を示し、本明細書では「炭化水素樹脂(hydrocarbon resin)」と互換的に使用される。
【0041】
炭化水素ポリマー添加剤成分は、部分水素化C5樹脂である第1の炭化水素ポリマー添加剤と、水素化C5樹脂、水素化C5/C9樹脂、水素化C9樹脂、およびそれらの組み合わせから選択される完全水素化樹脂である第2の炭化水素ポリマー添加剤とを含む。
【0042】
追加の樹脂はゴム組成物中に存在してもよいが、一実施形態では、存在する樹脂は本明細書に記載の第1および第2の炭化水素樹脂のみである。
【0043】
第1および第2の炭化水素ポリマー添加剤の例示的な組み合わせとしては、部分水素化C5樹脂および完全水素化C5樹脂;部分水素化C5樹脂および完全水素化C5/C9コポリマー樹脂;部分水素化C5樹脂および完全水素化C9樹脂が挙げられる。本発明の使用における炭化水素ポリマー添加剤の好ましい組み合わせは、部分水素化C5樹脂および完全水素化C9樹脂である。
【0044】
本明細書において、用語「水素化樹脂(hydrogenated resin)」は樹脂を還元水素化することで得られる樹脂を示す。水素化は部分的に行って「部分水素化樹脂(partially hydrogenated resin)」とすることができ、またはほぼ完全に行って「完全水素化樹脂(fully hydrogenated)」とすることもできる。
【0045】
本明細書において、用語「部分水素化」は、樹脂成分のオレフィンプロトンの含有量が100%に満たないことを示す。部分水素化した樹脂は当該技術分野においてよく知られており、異なる水素化度を有することができる。いくつかの実施形態では、部分水素化樹脂は、95%未満のオレフィンプロトン、より好ましくは90%未満のオレフィンプロトンを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、該部分水素化樹脂は75%未満のオレフィンプロトン、例えば50%未満のオレフィンプロトンを含んでもよい。いくつかの実施形態では、部分水素化樹脂は40%未満のオレフィンプロトン、25%未満のオレフィンプロトン、15%未満のオレフィンプロトン、または10%未満のオレフィンプロトンを含んでもよい。例えば、9%未満、8%未満、7%未満、または6%未満のオレフィンプロトンを含んでもよい。一実施形態では、部分水素化樹脂は約5%以上のオレフィンプロトンを含有し得る。例えば、5~90%のオレフィンプロトンを含むことができる。一実施形態では、部分水素化樹脂は約5%のオレフィンプロトンを含んでもよく、すなわち、95%水素化してもよい。
【0046】
本明細書において、用語「完全水素化」は、樹脂成分オレフィンプロトンの含有量が5%に満たないことを示す。いくつかの実施形態では、完全水素化した樹脂は、4%未満のオレフィンプロトン、好ましくは3%未満、より好ましくは2%未満、例えば1%未満、0.5%未満、または0.1%未満、例えば0.05%未満のオレフィンプロトンを含んでいてもよい。一実施形態では、完全水素化樹脂は、0~約3%のオレフィンプロトンを含んでもよく、すなわち約97~100%水素化してもよい。一実施形態では、完全水素化樹脂は、0~約2%のオレフィンプロトンを含んでもよく、すなわち約98~100%水素化してもよい。一実施形態では、完全水素化樹脂は0~約1%のオレフィンプロトンを含んでもよく、すなわち、約99~100%水素化してもよい。一実施形態では、完全水素化樹脂は約0%のオレフィンプロトンを含むことができる。
【0047】
水素化樹脂は、芳香族成分を含む樹脂の還元的水素化により製造した樹脂を含む。当然理解されるように、本明細書におけるオレフィンプロトンの記載は、芳香環系の一部として存在し得るあらゆるプロトンを含むことを意図している。オレフィンプロトンの含有量および水素化度に関して、本明細書に記載する割合は、mol%を意味する。
【0048】
本発明で使用する炭化水素樹脂の任意の選択された組み合わせについて、「完全水素化した」樹脂の水素化の程度は「部分水素化した」樹脂の水素化の程度よりも大きくなり、すなわち、「完全水素化した」樹脂は、「部分水素化した」樹脂よりもオレフィンプロトンの含有量が低くなる。好適には、本発明で使用する異なる炭化水素樹脂の水素化度の差は小さくてもよい。例えば、異なる樹脂のオレフィンプロトン含有量のmol%は、10mol%未満、例えば8mol%未満、7mol%未満、6mol%未満、5mol%未満、5mol%未満または3mol%未満と異なっていてもよい。一実施形態では、該mol%は、1~10mol%、例えば1~5mol%と異なっていてもよい。
【0049】
第1の炭化水素樹脂は、部分水素化C5樹脂である。本明細書においては、用語「C5樹脂」は、C5モノマーを含有する分解ナフサ供給物の重合によって得られる樹脂を意味する。C5モノマーは、オレフィン、直鎖共役ジオレフィン及び環状共役ジオレフィンが含まれる。他のモノマーが供給物中に存在する場合もあり、これらにはジシクロペンタジエン(DCPD)が挙げられるが、これに限定されない。
【0050】
一実施形態では、本発明で使用するC5樹脂は、C5モノマーおよびDCPDモノマーの共重合により得ることができる。DCPDモノマーが存在する場合、該DCPDモノマーは一般に低量で提供される。例えば、樹脂を製造するために使用する供給物中のDCPDの含有量は、約5%未満、例えば約2%未満であり得る。一実施形態では、C5樹脂は、C5モノマーおよびDCPDから誘導したモノマー単位を含むことができる。
【0051】
別の実施形態では、C5樹脂の供給のために使用する供給物は、DCPDモノマーを取り除くことができる。該モノマーは当該技術分野において一般的に知られている方法によって供給流から除去することができる。一実施形態では、C5樹脂は、したがって、本質的にC5モノマーに由来するモノマー単位からなり得る。
【0052】
ウェット性能を向上させるために、本発明で使用する水素化C5樹脂は高い軟化点を有することになり、例えば110℃より高い軟化点を有する。本明細書において、用語「軟化点」は樹脂が流動する温度を意味する。樹脂の軟化点はリングボール法により測定することができる。特に指定のない限り、本明細書に記載する軟化点は「リングボール軟化点」、すなわちリングボール軟化点測定装置を用いた軟化点測定においてボールが落下する温度であり、ASTM D 3461-76に準拠している。
【0053】
特定の実施形態では、C5樹脂の軟化点は115℃以上、好ましくは118℃以上、より好ましくは121℃以上、例えば123℃以上である。例えば、125℃以上、127℃以上、128℃以上、または、129℃以上である。0℃におけるtanδの上昇を抑制する観点から、水素化C5樹脂の軟化点は、好ましくは145℃以下である。例えば、軟化点は、143℃以下、140℃以下、136℃以下、135℃以下、または133℃以下であってもよい。
【0054】
樹脂とゴム成分との混和性の観点から、部分水素化C5樹脂の重量平均分子量は、一般に200~1200g/molの範囲にある。特に指定のない限り、本明細書における分子量の記載は、重量平均分子量Mwを意味する。重量平均分子量は、ポリスチレン標準に対するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により決定する。
【0055】
いくつかの実施形態では、部分水素化C5樹脂の重量平均分子量は300g/mol以上であってもよく、好ましくは500g/mol以上、より好ましくは700g/mol以上、さらに好ましくは750g/mol以上である。他の実施形態では、部分水素化C5樹脂の重量平均分子量は1150g/mol以下であってもよく、好ましくは1100g/mol以下、より好ましくは950g/mol以下、さらに好ましくは930g/mol以下、例えば900g/mol以下である。
【0056】
一実施形態では、部分水素化C5樹脂は、100℃より高い軟化点及び200~1200g/molの重量平均分子量を有する。
【0057】
一実施形態では、部分水素化C5樹脂は50~100℃、好ましくは60~90℃、例えば70~80℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0058】
本発明で使用する部分水素化C5樹脂は、本明細書に記載のC5樹脂を部分還元的水素化に付すことで製造する樹脂である。C5樹脂の例としては脂肪族石油樹脂が挙げられ、該脂肪族石油樹脂はC5留分を(共)重合することで得られ、該C5留分は石油化学工業におけるナフサの熱分解により得られる。該C5留分は通常オレフィンベースの炭化水素、例えば1-ペンテン、2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、および3-メチル-1-ブテンなど;ジオレフィンベースの炭化水素、例えば2-メチル-1,3-ブタジエン、1,2-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、および3-メチル-1,2-ブタジエンなどを含有する。本明細書に記載されるように、該C5留分はさらに他のモノマーを含有してもよく、例えばジシクロペンタジエン(DCPD)などがある。DCPDが存在する場合、該DCPDは一般に低量、例えばC5含有画分における5wt%未満、例えば2wt%未満の量で存在する。これらの樹脂のいずれかを部分還元水素化に供して部分水素化C5樹脂、例えば3~9%のオレフィンプロトン、好ましくは4~8%のオレフィンプロトン、より好ましくは4~6%のオレフィンプロトンを含有するものを製造することができる。一実施形態では、部分水素化C5樹脂は約5%のオレフィンプロトンを含有する。
【0059】
部分水素化C5樹脂としては、一般に流通しているものであれば、どのようなものでも採用することができる。例えば、軟化点が約130℃、重量平均分子量(Mw)が約840g/mol、ガラス転移温度(Tg)が約75℃の樹脂が挙げられる。
【0060】
第2の炭化水素樹脂は、完全水素化C5樹脂、完全水素化C5/C9樹脂、完全水素化C9樹脂、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0061】
ウェット性能を向上させるため、本発明で使用する第2の炭化水素樹脂は高い軟化点、例えば100℃より高い軟化点を有する。
【0062】
特定の実施形態では、第2の炭化水素樹脂の軟化点は110℃以上、好ましくは115℃以上、より好ましくは118℃以上である。0℃におけるtanδの上昇を抑制する観点から、第2の炭化水素樹脂の軟化点は、好ましくは145℃以下である。例えば、軟化点は、143℃以下、140℃以下、136℃以下、135℃以下、133℃以下、または130℃以下であってもよい。
【0063】
樹脂とゴム成分との混和性の観点から、第2の炭化水素樹脂の重量平均分子量は、一般に700~1500g/molの範囲にある。いくつかの実施形態では、第2の樹脂の重量平均分子量は800g/mol以上であってもよく、好ましくは900g/mol以上、より好ましくは1000g/mol以上である。他の実施形態では、第2の炭化水素樹脂の重量平均分子量は1400g/mol以下であってもよく、好ましくは1300g/mol以下、より好ましくは1200mol/g以下である。
【0064】
一実施形態では、第2の炭化水素樹脂は100℃より高い軟化点および700~1500g/molの重量平均分子量を有する。より好ましくは、第2の炭化水素樹脂は、完全水素化C9樹脂であり、100℃より高い軟化点を有し、700~1500g/molの重量平均分子量を有する。
【0065】
第2の炭化水素樹脂は、樹脂をほぼ完全な(例えば完全な)還元的水素化に供することで製造するものである。出発材料として使用する樹脂は、C5樹脂、C5/C9樹脂、C9樹脂、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0066】
完全水素化C5樹脂の製造に使用できるC5樹脂の例としては脂肪族石油樹脂が挙げられ、該C5樹脂はC5留分の(共)重合で得られ、該C5留分は石油化学工業におけるナフサの熱分解により得られる。該C5留分は通常オレフィンベースの炭化水素、例えば1-ペンテン、2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、および3-メチル-1-ブテンなど;ジオレフィンベースの炭化水素、例えば2-メチル-1,3-ブタジエン、1,2-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、および3-メチル-1,2-ブタジエンなどを含有する。また、他のモノマー、例えばDCPDなどを含有していてもよい。C5樹脂としては、一般に流通しているものであれば、どのようなものでも採用することができる。
【0067】
用語「C5/C9樹脂」は、C5~C9の合成石油樹脂を意味し、その例としてはAlCl3を含む石油由来のC5~C11留分;フリーデル・クラフツ触媒を用いる重合で得られる固体ポリマー等が挙げられ、これらのより具体的な例としては、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、インデン、またはこれらを主成分とするコポリマーが挙げられる。ゴム成分との相溶性の観点から、C9以上の成分の量が少ない樹脂が、C5/C9樹脂としては好ましい。例えば、C9以上の成分の量は、樹脂の総量を基準として50wt%未満とすることができ、好ましくは40wt%未満である。C5/C9樹脂としては、一般に流通しているものであれば、どのようなものでも採用することができる。
【0068】
用語「C9樹脂」は、C9の合成石油樹脂を意味し、例としてはAlCl3やBF3のようなフリーデル・クラフツ触媒を使用する重合で得ることができるものが挙げられる。C9樹脂の例としてはインデン、スチレンα-メチルスチレン、ビニルトルエン、またはこれらを主な成分とするコポリマーが挙げられる。C9樹脂としては、一般に流通しているものであれば、どのようなものでも採用することができる。例えば、軟化点が約118~128℃、重量平均分子量(Mw)が約1100g/mol、ガラス転移温度(Tg)が約65~75℃の樹脂が挙げられる。
【0069】
ゴム組成物中に存在する炭化水素ポリマー添加剤成分の量は、エラストマーの含有量により異なる。適切な量は、当業者が容易に選択することができる。一般に、炭化水素ポリマー添加剤成分の総量は、約5~約25phr(ゴム組成物100phrに対して)の範囲であってもよく、好ましくは約10~約20phr、より好ましくは約12~約18phr、例えば約14~約16phrの範囲であってもよい。
【0070】
第1および第2の炭化水素樹脂のそれぞれの量は、第1および第2のエラストマーの選択ならびにゴム組成物中のそれらの相対量により異なってもよい。適切な量は、当業者により容易に選択され得る。
【0071】
一実施形態では、第1の炭化水素樹脂の量は約2~約15phr(ゴム組成物100phrに対して)の範囲であってもよく、好ましくは約3~約11phrである。ある実施形態では、第1の炭化水素樹脂は約5~約10phrの範囲であってもよく、好ましくは約6~約9phr、例えば約7~約8phrである。
【0072】
一実施形態では、第2の炭化水素樹脂の量は、約2~15phr(ゴム組成物100phrに対して)の範囲であってもよく、好ましくは約3~約11phrである。ある実施形態では、第2の炭化水素樹脂は約5~約10phrの範囲であってもよく、好ましくは約6~約9phr、例えば約7~約8phrである。
【0073】
好適には、第1の炭化水素ポリマー添加剤と第2の炭化水素ポリマー添加剤との重量比は、20:80~80:20、好ましくは25:75~75:25、より好ましくは30:70~70:30、例えば40:60~60:40の範囲である。好ましい実施形態では、第1および第2の炭化水素ポリマー添加剤の重量比は約50:50であってもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、第1の炭化水素ポリマー添加剤と第2の炭化水素ポリマー添加剤との比は、20:80~60:40、好ましくは25:75~50:50の範囲である。いくつかの実施形態では、約50:50または約25:75の比率が好ましい場合がある。
【0075】
本明細書に記載のゴム組成物は、通常ゴム組成物の製造に使用することが知られている他の添加剤を含む。例えば、補強充填剤、プロセスオイル等の他の加工助剤、架橋および硬化系、促進剤などを含むことができる。
【0076】
一実施形態では、ゴム組成物はさらに充填剤を含む。充填成分は、例えば、シリカ、カーボンブラック、カーボナノチューブ、ショートカーボン、ポリアミド、ポリエステル、天然繊維、炭酸カルシウム、クレー、アルミナ、アルミノケイ酸塩、およびこれらの任意の混合物から選択することができる。シリカ、カーボンブラック、ならびにシリカおよびカーボンブラックのブレンドの使用が、一般的に好ましい。
【0077】
用語「シリカ充填剤(silica filler)」は、本明細書において、粒子状シリカを意味する。スチレン・ブタジエンゴムベースの組成物を補強することができる、任意の公知の粒子状シリカを使用することができる。理解されるように、公知のシリカ材料は通常、ある割合で(例えば、不純物として)他の成分を含むが、主成分は二酸化ケイ素、すなわちSiO2である。二酸化ケイ素の含有量は、一般に少なくとも90wt%、好ましくは、少なくとも95wt%、例えば、少なくとも97wt%である。
【0078】
本発明で使用するシリカ材料は、当該技術分野においてよく知られており、特に、沈降アモルファスシリカ、湿式シリカ(水和ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ヒュームドシリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム(例えば、MgSiO4、MgSiO3)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、およびケイ酸アルミニウムカルシウム(例えば、Al2O3.Ca2SiO2)が挙げられる。単一のシリカ、または2種もしくはそれ以上の種類のシリカの組み合わせを使用することができる。シリカは不連続な粒子の形態、すなわち分散性の高い顆粒として使用する。大きさが単分散で、形状が均一であってもよい。あるいは、分枝状または線状のクラスターの形態で提供することもできる。沈降シリカ材料が、トレッド部品に優れた転がり抵抗およびウェット時トラクションを付与する能力の観点から、好ましい。
【0079】
本明細書に記載のゴム組成物は、既知の任意のシリカ充填剤または異なるタイプのシリカを使用することができる。シリカは、その比表面積に応じて選択することができる。シリカの平均比表面積は、Brunauer-Emmett-Teller(BET)法による窒素吸着および臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)吸着により決定することができる。CTAB比表面積は外部表面である。Brunauer-Emmett-Teller(BET)法は、Journal of the American Chemical Society, Vol. 60, page 309, February 1938に記載されており、規格NF ISO5794-1、Appendix D(June 2010)に対応している。セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)吸着法は、ASTM D6845に対応する。本発明で使用するシリカはBET比表面積を有していてもよく、該BET比表面積は50~350cm2/g、好ましくは60~320cm2/g、例えば60~310cm2/gであってもよい。シリカはCTAB比表面積を有していてもよく、55~285cm2/g、好ましくは60~275cm2/g、例えば65~270cm2/gであってもよい。
【0080】
本発明で使用するシリカは、官能基化されていても、官能基化されていなくてもよい。用語「官能基化シリカ(functionalised silica)」は、少なくとも1種の官能基で修飾した表面を有する粒子状シリカを指す。用語「非官能基化シリカ(non-functionalised silica)」は、然るべく解釈されたい。本明細書において、シリカの表面官能基化、またはシリカの表面官能基化の非存在に触れる場合、本発明におけるゴム組成物の製造においてエラストマー成分に添加する粒子状シリカの性質を意味する。したがって、「表面官能基化(surface-functionalised)」シリカは、「あらかじめ官能基化された(pre-functionalised)」シリカを意味する。同様に、「非官能基化(non-functionalised)」シリカは、「あらかじめ官能基化(pre-functionalised)」されていないシリカを意味する。本明細書で使用する任意のシリカは、本明細書に記載のとおり、1種または複数のシランカップリング剤と共に採用してもよい。これらはシリカがエラストマー成分またはゴム組成物の成分に結合するのを補助する。
【0081】
いくつかの実施形態では、本発明で使用するシリカは非官能基化であってもよい。このような種類の商用グレードは、Solvay社などの供給業者から広く入手可能である。これらには、Solvay社からZeosil(登録商標)1085GR、およびZeosil(登録商標)Premium SW MPの商品名で供給されているシリカ材料が含まれる。Zeosil(登録商標)1085GRのBET比表面積は90m2/g±20m2/gであり、CTAB比表面積は80m2/g±15m2/gである。Zeosil(登録商標)Premium SW MPのBET比表面積は260m2/g、CTAB比表面積は250m2/gである。
【0082】
いくつかの実施形態では、本発明で使用するシリカは官能基化されていてもよい。官能基は本質的に非極性または極性であってもよく、適切な基は当業者が容易に選択することができる。シリカは、例えば、配合中の充填剤-充填剤間の相互作用を減少させるために表面処理されてもよく、これによりゴムマトリックス中の分散性を向上させる。この目的に適した相溶化剤(「被覆剤(covering agents)」とも知られている)は当該技術分野においてよく知られており、単官能性シラン、例えばヘキサデシルトリメトキシシランまたはプロピルトリエトキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載されたように、このような被覆剤はゴム組成物を形成するために種々の成分を配合する際に導入することができる。シリカ粒子の表面に付着し得る他の非極性種としては、芳香族基および飽和脂肪族炭化水素が挙げられる。いくつかの実施形態では、シリカ表面は1種または複数の極性官能基で官能基化していてもよく、例えばアミンまたはカルボキシル基などを含むものが挙げられる。
【0083】
1組の実施形態では、官能基化シリカは、1種または複数のカルボキシル基で表面が官能基化されたシリカを含んでいてもよい。カルボキシル基は、カルボン酸として、および/または塩もしくはエステルなどの誘導体として存在し得る。このような官能基化シリカ材料の例は、国際公開第2015/12133号に見ることができ、その全容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0084】
他の官能基化シリカは、当該技術分野において知られているものか、当該技術分野において知られている方法を用いて調製したものでもよい。詳細な方法は官能基の性質によるが、当業者が容易に選択することができる。シリカが1種または複数のカルボキシル基で官能基化されている場合、カルボキシル基は、シリカを1種または複数のカルボン酸と反応させて官能基化シリカを形成することで、誘導することができる。一般的には、この方法はシリカを製造するための沈降反応を伴い、すなわちシリカは沈降シリカとなる。1種または複数のカルボキシル基で官能基化されたシリカの合成は、例えば、国際公開第2015/121333号に見ることができる。
【0085】
カーボンブラックが存在する場合、カーボンブラックまたは変性カーボンブラックとすることができる。例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、またはランプブラックなどであることができる。例えば、カーボンブラックは以下の群から1種または複数選択でき、スーパーアブレーションファーネス(SAF)ブラック、ハイアブレーションファーネス(HAF)ブラック、高速押出ファーネス(FEF)ブラック、ファインハーネス(FF)ブラック、中間(intermediate)スーパーアブレーションファーネス(ISAF)ブラック、半強化(semi-reinforcing)ファーネス(SRF)ブラック、ミディアムプロセッシングチャンネルブラック、ハードプロセッシングチャネルブラック、および導電性チャネルブラックよりなる群から選択することができる。他の使用可能なカーボンブラックは、アセチレンブラックがある。カーボンブラックは、ペレット化した形態であっても、ペレット化していない凝集塊(flocculent mass)であってもよい。本発明のゴム組成物に使用するカーボンブラックの特定の例は、Orion Engineered Carbons社のCORAX(登録商標)N234が挙げられる。
【0086】
一実施形態では、本発明で使用する充填剤は、シリカとカーボンブラックのブレンドであってもよい。
【0087】
本発明によるゴム組成物は、ゴム組成物の製造において当該技術分野において知られている方法を用いて製造することができ、例えば、他の成分との配合などがある。これらのさらなる成分としては、追加のポリマー、追加の加工助剤(例えば、オイル、ワックス、および可塑剤など)、硬化系(例えば加硫剤、加硫促進剤、および加硫促進剤補助剤など)、劣化防止剤(例えば酸化防止剤またはオゾン劣化防止剤など)、顔料、充填剤(例えば本明細書に記載のシリカおよび/またはカーボンブラック充填剤など)、充填剤用の相溶化剤(例えば本明細書に記載のシランカップリング剤または被覆剤など)、繊維などが挙げられる。当業者は加硫可能なゴムコンパウンドの組み合わせ、およびその後の混合ならびに加硫のためのそれぞれの量を、所望する特定のゴム製品に応じて、容易に選択することができる。
【0088】
本明細書に記載のゴム組成物の調製方法は、本発明のさらなる態様を形成する。別の態様において、本発明は、したがってゴム組成物を製造するためのプロセスを提供し、該プロセスは本明細書に記載したように成分(a)、(b)および(c)を配合するステップを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の第1および第2のエラストマーならびに炭化水素ポリマー添加剤成分に加えて、加硫可能な組成物は以下の1種または複数を含むことができる:加工助剤(例えばオイル)、加硫活性剤(例えば酸化亜鉛、ステアリン酸など)、加硫剤(例えば硫黄または硫黄供与性化合物など)、加硫促進剤、劣化防止剤(例えば酸化防止剤、オゾン劣化防止剤など)、顔料、補強充填剤、相溶化剤、およびシランカップリング剤。酸化亜鉛およびステアリン酸は、加硫時間を短縮し加硫プロセスにおける活性剤として作用し、硬化または加硫中に形成するゴムマトリックス中の架橋の長さと数に影響を与える。硫黄加硫物の使用目的に応じて、これらの添加剤を選択し、通常の量で使用することができる。
【0090】
加工助剤は、組成物の加工性を改善し、鉱油、植物油、合成油、またはそれらの混合物のようなオイルを含む。これらは、約5~75phr、好ましくは約10~50phrの量で使用することができる。一般的な加工助剤は芳香油などのオイルを含有する。このようなオイルの例としては、処理蒸留芳香族抽出物(TDAE)、残留芳香族抽出物(RAE)、マイルド抽出溶媒和物(MES)、およびバイオベースの油糧種子誘導体が挙げられる。本発明のゴム組成物に使用するオイルは、特に限定されず、当業者に公知のものであればいずれであってもよい。例えば、オイルは、芳香族オイル、ナフテン系オイル、およびパラフィン系オイルなどの加工オイル、ココナッツオイルなどの植物油、アルキルベンゼンオイルおよびキャスターオイルなどの合成オイルからなる群から選択される1種または複数であってもよい。好ましくは、該オイルは芳香族オイル、例えば残留芳香族抽出オイルである。
【0091】
ゴム組成物の加硫剤は特に限定されず、当該技術分野で一般的に知られているものであればいずれでもよい。例えば、加硫剤は硫黄であってもよい。加硫剤の量は特に限定されず、組成物の満足のいく硬化を達成するのに有効な量を当業者が容易に選択することができる。加硫剤(例えば硫黄)は、約0.1~10phrの範囲で使用することができ、好ましくは約0.1~5phr、例えば約0.2~約3phrの範囲で使用することができる。例えば、ゴム組成物は、0.2~2phr、好ましくは0.5~1.5phr、例えば0.5~1phrの加硫剤を含むことができる。
【0092】
ゴム組成物に使用する加硫促進剤は特に限定されず、当該技術分野で一般的に知られているものであればいずれでもよい。促進剤は、チアゾール系、ヂチオカルバメート系、チウラム系、グアニジン系、およびスルホンアミド系が挙げられる。好適な促進剤の例としては、2-メルカプトンベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、およびN-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)などのチアゾール系加硫促進剤;1,3-ジフェニルグアニジンなどのグアニジン系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラドデシルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド、およびテトラベンジルチウラムジスルフィドなどのチウラム系加硫促進剤;ならびにジチオカルバメート亜鉛などのジチオカルバメート化合物;ならびに他のジアルキルジチオリン酸塩などが挙げられる。好ましくは、加硫促進剤はジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、および1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)の組み合わせであってもよい。組成物中で使用する加硫促進剤の量は特に限定されず、例えば、約0.5~約10phrとすることができ、好ましくは、約1~約8phr、より好ましくは約2~約6phrであってもよい。好ましくは、加硫促進剤は、1~2phrの量のジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、0.5~2phrの量のN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、1~3phrの量の1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)を含んでいてもよい。
【0093】
ゴム組成物に使用する補助の加硫促進剤は特に限定されず、当業者に知られているものであればいずれでもよい。例えば、補助の加硫促進剤は酸化亜鉛(ZnO)および脂肪酸であってもよい。脂肪酸は、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸、直鎖脂肪酸または分枝脂肪酸のいずれであってもよい。脂肪酸の炭素原子数も特に限定されないが、1~3、または15~30であってもよい。例えば、脂肪酸は以下の群から選択される1種または複数であって、シクロヘキサン酸(シクロヘキサンカルボン酸)、アルキルシクロペンタンのような側鎖を有するナフテン酸、ヘキサン酸、オクタン酸などの飽和脂肪酸、デカン酸(ネオデカン酸のような分枝カルボン酸を含む)、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ならびにオクタデカン酸(ステアリン酸)、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸などの不飽和脂肪酸、ならびにロジン、トール油酸およびアビエチン酸などの樹脂酸が挙げられる。好ましくは、本発明の補助の加硫促進剤は酸化亜鉛(ZnO)およびステアリン酸である。補助の加硫促進剤の総量は特に限定されないが、1~10phr、好ましくは1.5~7phr、例えば2~5phrとすることができる。好ましくは、酸化亜鉛は、約1~約10phr、好ましくは約2~約5phr、より好ましくは約2~約3phrの量で使用することができる。ステアリン酸は、約1~約5phr、好ましくは約1.5~約3phrの量で使用することができる。
【0094】
本明細書に記載のとおり、シリカおよびカーボンブラックなどの追加の補強充填剤もまた、本発明のゴム組成物中に存在してもよい。いくつかの実施形態では、ゴム組成物は、さらにシリカ充填剤を含み、50~110phr、好ましくは55~90phr、例えば60~80phrまたは60~70phr、または60~65phrの範囲を含む。
【0095】
存在できるカーボンブラックの量は特に限定されないが、0.1~10phr、例えば0.5~5phr、または1~4phr、例えば2~3phrの範囲とすることができる。
【0096】
ゴム組成物は当業者に知られている充填剤を含んでもよい。例えば、ゴム組成物は以下の群から選択される1種または複数を含み、水酸化アルミニウム、タルク、アルミナ(Al2O3)、アルミニウム水和物(Al2O3.H2O)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、炭酸アルミニウム(Al2(CO3)2)、酸化アルミニウムマグネシウム(MgOAl2O3)、パイロフィライト(Al2O3.4SiO2.H2O)、ベントナイト(Al2O3.4SiO2.2H2O)、雲母、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム(Zr(OH)2nH2O)、炭酸ジルコニウム(Zn(CO3)2)、結晶性アルミノケイ酸塩、強化グレード酸化亜鉛(すなわち、強化酸化亜鉛)などを含むことができる。存在する場合、さらなる充填剤の量は5~200phr、例えば10~150phrまたは25~100phrとすることができる。
【0097】
本発明のゴム組成物に使用する劣化防止剤は、特に限定されず、当業者に知られているものであればいずれでもよい。劣化防止剤は、酸化防止剤および/またはオゾン劣化防止剤とすることができる。例えば、劣化防止剤は以下の群から選択される1種または複数を含み、N-(1,3-ジメチルブチル)N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)および2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンポリマー(TMQ)などを含むことができる。好ましくは、劣化防止剤はN-(1,3-ジメチルブチル)N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)および2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンポリマー(TMQ)の組み合わせである。それぞれの劣化防止剤の量は0.1~3phrとすることができ、好ましくは、0.2~2phrとすることができる。劣化防止剤の量は、0.1~5phrとすることができ、好ましくは1~3phrとすることができる。
【0098】
配合中のシリカ凝集の形成を抑制するために、被覆剤を使用することができる。存在する場合、該被覆剤は最大5phr、好ましくは約1~約3phrの量で使用することができる。一実施形態では、追加の被覆剤は存在しない。被覆剤は特に限定されず、当該技術分野で知られているものであればいずれでもよい。好適なシリカベースの被覆剤としては、アルキルアルコキシシラン、例えばヘキサデシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシランおよびヘキシルトリメトキシシランなどのシランが挙げられる。一実施形態では、被覆剤は、ポリマー上にあらかじめグラフトしていてもよい。また、遊離の状態(すなわち、あらかじめグラフトしていない状態)で使用してもよく、シリカの表面にグラフトして使用してもよい。
【0099】
シリカの凝集を抑制するためにシリカのシラノール基に結合し、またシリカ充填剤をスチレン・ブタジエンコポリマーに共有結合させる機能を有するカップリング剤が存在してもよい。カップリング剤の適切な量は、その分子量、含有する官能基の数および反応性などの要因を考慮して当業者が決定することができる。ほとんどのカップリング剤は、シリカの量に基づいて等モル量で使用することができる。本発明のゴム組成物に使用するカップリング剤は、特に限定されず、当業者に知られているものであればいずれでもよい。一実施形態では、カップリング剤は、ポリマー上にあらかじめグラフトしていてもよい。また、遊離の状態(すなわち、あらかじめグラフトしていない状態)で使用してもよく、シリカの表面にグラフトして使用してもよい。
【0100】
通常、カップリング剤はシランカップリング剤、例えば二官能性シランである。例えば、シランカップリング剤は以下の群から選択される1種または複数を含み、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N’N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N’N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N’N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N’Nジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、およびジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどであることができる。好ましくは、シランカップリング剤はビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドである。本発明で使用するシランカップリング剤の具体例は、Evonik Industries AGのSi69(登録商標)である。シランカップリング剤の量は特に限定されないが、2~20phrであることができ、好ましくは5~18phr、より好ましくは7~16phr、例えば9~15phrとすることができる。
【0101】
本発明によるゴム組成物は、当該技術分野で知られている方法で調製することができ、第1のエラストマー、第2のエラストマー、炭化水素ポリマー添加剤成分、および本明細書に記載された任意の他の成分を混合(すなわち配合)して、その後の加硫のためのゴム組成物を製造する。
【0102】
さらなる態様によれば、本発明は、ゴム製品の製造方法を提供し、該製造方法は、以下のステップ、ゴムコンパウンドの形成のための本明細書に記載のゴム組成物の配合するステップと、ゴムコンパウンドを所望形状として形成する(例えば、成形する)ステップと、ゴムコンパウンドを加硫するステップとを含む。
【0103】
本発明のゴム組成物の調製では、各成分の配合方法は特に限定されず、当該技術分野で知られている方法であればいずれでもよい。ゴム組成物を所望の形状として成形するには、押出成形機またはプレス成形機などの成形機を使用することができる。
【0104】
成分の混合は、通常、成分が添加され得る段階で実施する。シリカ充填剤系の分散を最適化するためには、マルチステップ混合プロセスが一般的に好ましく、例えば直列に配置した異なるミキサーなど、複数のミキサーの使用を伴う場合がある。例えば、タイヤトレッドコンパウンドを混合する場合、混合工程はマスターバッチを製造する初期混合段階、次いで1つまたは複数の付加的な非生産的混合段階、ならびに最後に硬化剤(すなわち、硫黄もしくは硫黄供与剤および促進剤(複数可))を添加する生産的混合段階を含むことができる。使用できるミキサーは当該技術分野でよく知られており、例えば、オープンミル、または接線方向もしくは交差反転式ローターを有するバンバリー型ミキサーなどが挙げられる。
【0105】
通常、第1ならびに第2のエラストマー、炭化水素ポリマー添加剤成分、充填剤(存在する場合)、追加の加工助剤(存在する場合)、酸化亜鉛、ステアリン酸、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤)、顔料、相溶化剤およびカップリング剤(存在する場合)を混合して、初期マスターバッチを製造する。初期マスターバッチの後に、追加成分を添加しない非生産的混合段階を設けてもよい。非生産的混合段階は、成分(例えば充填剤)をゴム内でさらに分散させるため、または混合したゴムコンパウンドの粘性をさらに低下させるために使用することができる。
【0106】
混合中、温度は組成物の早すぎる架橋を避けるために所定の水準以下に保つ。通常、温度は150℃以下、好ましくは140℃以下に保つことができる。初期マスターバッチの製造では、混合は、例として約80~約110℃、例えば約100℃の温度で実施され得る。非生産的混合段階では温度を例えば約150℃、例えば130℃まで上げることができる。混合中に追加の相溶化剤を添加する場合、より高い温度で混合を行う必要があり、これはシリカ表面(シリカ充填剤が存在する場合)との反応を保証するためである。混合時間は様々であるが、混合物の組成および使用するミキサーの種類に基づいて当業者が容易に決定することができる。一般に少なくとも1分間、好ましくは2~30分間の混合時間が、所望の均質な組成物を得るために充分である。
【0107】
最終混合段階は、促進剤、劣化防止剤を含む硬化剤の添加を含む。該混合段階の温度は一般に低く、例として約40~約60℃の範囲、例えば50℃である。この最終混合に、さらに、追加の成分を添加しない非生産的混合段階が続く場合もある。
【0108】
加硫可能なゴムコンパウンドを得るために、最も適切な種類の混合を容易に選択することができる。混合速度は用意に決定され得るが、例として約20~100rpmの範囲で行うことができ、例えば約30~約80rpm、好ましくは約50rpmの速度で行うことができる。
【0109】
加硫可能なゴムコンパウンドは、組成物を硬化する最終顆粒のための未硬化(いわゆる「グリーン」)タイヤ構成要素として提供し得る。ゴム成分を架橋するための硬化は公知の方法で実施することができる。タイヤ産業では、例えば、未硬化ゴム(いわゆる「グリーンボディ」)を製造し、次いでプレス金型内で硬化し、ゴム成分を架橋すると同時に成分を最終的なタイヤに成形する。加硫は、主に硫黄架橋を介した架橋によってゴムを硬化させる。ゴム組成物を硬化させるための加硫方法および条件は当業者によく知られている。適切な加硫条件としては通常、120~200℃の範囲の加熱、例えば140~180℃の温度に5~180分間、例えば5~120分加熱することが挙げられる。
【0110】
加硫可能なゴム組成物は、本発明のさらなる態様を形成する。別の態様において、本発明は、したがって、加硫可能なゴム組成物を提供し、該ゴム組成物は、
(a)-40~-15℃の範囲のTgを有する1種または複数のスチレン・ブタジエンコポリマーを含む第1のエラストマーと、
(b)天然ゴムを含む第2のエラストマーと、
(c)炭化水素ポリマー添加剤成分であって、
(i)部分水素化C5樹脂である第1の炭化水素ポリマー添加剤、ならびに
(ii)水素化C5樹脂、水素化C5/C9コポリマー樹脂、水素化C9樹脂およびそれらの組み合わせよりなる群から選択された完全水素化炭化水素樹脂である、第2の炭化水素ポリマー添加剤、
を含む該炭化水素ポリマー添加成分と、
を備える。
【0111】
本発明に記載の加硫可能なゴム組成物を架橋することによって得られた、直接得られた、または得ることができる加硫可能なゴムコンパウンドも、本発明の一部を形成する。
【0112】
加硫ゴム組成物を製造する方法も本発明の一部を形成する。別の態様において、本発明はしたがって、加硫ゴム組成物を製造するためのプロセスを提供し、該プロセスは成分(a)(b)および(c)を本明細書に記載されるように配合するステップと、並びに該加硫可能なゴム組成物を所定温度までまた所定時間にわたり加熱することによって加硫を課するステップとを備える。成分(a)、(b)および(c)を本明細書に記載されるように配合し、それにより加硫可能なゴム組成物を製造するステップならびに該加硫可能なゴム組成物を所定の温度まで、所定の時間にわたり加熱することで加硫するステップを含む。
【0113】
本発明書に記載のゴム組成物は車両用タイヤの製造、特にタイヤトレッドのようなタイヤ部品の製造において特に使用を見出す。タイヤトレッドは、どのような車両用のタイヤにも使用することができるが、自動車用のタイヤトレッドの製造に特に使用を見出す。ゴムコンパウンドの他の用途としては、振動ダンパー、サイドウォールゴム、インナーライナーゴム、ビードフィラーゴム、ボディプライゴム、スキムショックドムおよびトレッドゴムなどが挙げられる。
【0114】
別の態様において、本発明は、したがって、本明細書に記載された車両用タイヤ構成要素として、または車両用タイヤ構成要素の製造における、ゴム組成物の使用を提供する。
【0115】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載されるようなゴム組成物から製造したタイヤトレッドのような車両用タイヤ構成要素を提供する。車両用タイヤ構成要素を含む車両用タイヤも、本発明の一部を形成する。
【0116】
タイヤのコンポーネントの組み立ておよび製造方法は当該技術分野でよく知られている。「グリーン」タイヤの組み立てに続いて、適切な金型での圧縮成形を行い、そこで加硫により最終的なタイヤを製造する。
【0117】
本発明によるゴムコンパウンドは、タイヤ以外の用途、例えばホースおよびシールの製造などにも使用できる。
【0118】
本発明は、以下の非限定的な実施例および添付図によりさらに説明できる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【
図1】本発明によるゴム組成物B、C、DおよびFと、参照組成物AおよびEの30℃における弾性率(E’)である。全ての結果は、参照組成物Aに対する増加/減少の%で示した。
【
図2】本発明によるゴム組成物B、C、DおよびFと、参照組成物AおよびEの0℃におけるTanδである。全ての結果は、参照組成物Aに対する増加/減少の%で示した。
【
図3】本発明によるゴム組成物B、C、DおよびFと、参照組成物AおよびEの60℃におけるTanδである。全ての結果は、参照組成物Aに対する増加/減少の%で示した。
【
図4】本発明によるゴム組成物B、C、DおよびFと、参照組成物AおよびEの耐摩耗性である。全ての結果は、参照組成物Aに対する増加/減少の%で示した。
【
図5】本発明によるゴム組成物Cと、参照組成物AおよびEに関して実施したタイヤ試験での耐WEARをWET制動の関数で表したグラフである。全ての結果は、参照組成物Aに対する増加/減少の%で示した。ゴム組成物AおよびCに関する結果は、実際のタイヤで実施した試験に基づいている。ゴム組成物Eの結果は、入手可能なタイヤデータと検査結果の比較により推定したものである。
【0120】
(試験手順)
1.弾性率(E’)
弾性率(E’)は、グリップ性能の評価に用いる。30℃におけるE’の測定のための動的物理的試験は、ISO4664に従って実施した。
【0121】
2.損失係数(Tanδ)
異なる温度での損失係数(TangentδまたはTanδ)は、転がり抵抗およびウェット時のトラクションの評価に用いる。低温でのTanδは、ウェット時のトラクションの指標になる。低温でのTanδの増加は、対照コンパウンドと比較した場合、トレッドコンパウンドのウェット時のトラクションの向上と相関する。タイヤの転がり抵抗を改善するためのタイヤトレッド用のゴム組成物を開発する場合、60℃付近での損失係数(Tanδ)を指標として考慮するのが一般的である。60℃付近でのTanδが低いトレッドゴムをゴム組成物に用いることで、タイヤの発熱を抑制して転がり抵抗を低減し、したがってタイヤの燃費を改善することができる。したがって、60℃におけるTanδは、転がり抵抗(RR)の指標となる。対照コンパウンドと比較して結果が低い場合、転がり抵抗が減少していることを示す。Tanδの測定のための動的物理的試験は、ISO4664に従って実施した。
【0122】
4.耐摩耗性
耐摩耗性は、ISO4649に従って決定した。
【0123】
5.タイヤ試験
タイヤのデータは、ゴム組成物を使用して作ったタイヤトレッドを有するタイヤを装着した車のテストから得られる。3つの異なる仕様のタイヤを製造し、それぞれの仕様はトレッドゴムの配合のみが異なる、すなわち他の変数は全て一定に保たれる。車は道路面を少なくとも1000km走行し、そして摩耗の程度(mm単位)を測定する(溝の深さの減少)。摩耗寿命の伸長は、本発明によるトレッドコンパウンドCの耐摩耗性を、参照コンパウンドAおよびCと比較することで決定する。
【0124】
(ゴム組成物の調製)
材料
ゴム: 官能基化S-SBR1
非官能基化S-SBR2
天然ゴム
炭化水素ポリマー添加剤(樹脂):
部分水素化C5/DCPD樹脂3
完全水素化C9樹脂4
シリカ:Zeosil(登録商標)Premium Super Wear MP5(Premium SW MP)(Solvay製)
Zeosil(登録商標)1085GR6(Solvay製)
カーボンブラック:
Corax(登録商標)N234(Orion Engineered Carbons,Luxembourg)
シランカップリング剤:
Si69(登録商標)
低Tgオイル:
オレイン酸オクチル
硫黄
1,3-ジフェニルグアニジン(DPG)
ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)
N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)
ステアリン酸
酸化亜鉛(ZnO)
1溶液重合、乾燥したシリカ官能基化スチレン・ブタジエンランダムコポリマー。
2溶液重合、油展スチレン・ブタジエンランダムコポリマー。47.5phrのTDAEオイルで延伸。
3軟化点130℃、Tg75℃、Mw840g/molの部分水素化C5/DCPDコポリマー樹脂。約95%水素化。
4軟化点119~128℃、Tg65~75℃、Mw1100g/molの完全水素化C9樹脂。98~100%水素化。
5BET比表面積260m2/g、CTAB比表面積250m2/gの非官能基化シリカである、Zeosil(登録商標)Premium Super Wear MP。
6BET比表面積90m2/g、CTAB比表面積80m2/gの非官能基化シリカである、Zeosil(登録商標)1085GR。
【0125】
ゴム組成物A~Eは、表1に示す成分を配合することで調製した。表1の量は、ゴム組成物100重量部を基準とした重量部である(PHR)。炭化水素ポリマー添加剤の総量はどの組成物においても一定であるが、各樹脂成分の量は異なる。組成物B、C、DおよびFは本発明によるゴム組成物であり、第1および第2の炭化水素ポリマー添加剤を含む。組成物Fは組成物Cと同一であるが、さらに6phrのシリカ充填剤(および増量したシランカップリング剤)を含む。組成物AおよびEは参照組成物である。組成物Aは第1の炭化水素ポリマー添加剤のみを含み、組成物は第2の炭化水素ポリマー添加剤のみを含む。
【0126】
【0127】
表1に示す成分の配合は、以下の一般的な手順に従って行う。
非生産的混合段階:加硫系以外の全ての成分をインターメッシュバンバリーミキサーに加え、ポリマーベースと混合する。混合中、温度は最初110~130℃の間に保たれ、その後150~160℃の間に上昇する。
生産的混合段階:非生産的混合段階で製造した混合物を90~110℃の間の温度で加硫系と混合し、ゴム組成物の加硫を行う。
【0128】
(ゴム組成物の試験)
ゴム組成物A~Fを、本明細書に記載の試験方法に供した。結果は添付の
図1~5に示す。これらは、ゴムの動的性能および摩耗性能における炭化水素ポリマー添加剤成分の影響(組成物Aに対して標準化)を示している。
【0129】
図1は、各ゴム組成物の剛性の尺度である弾性率(30℃におけるE’)を示す。参照組成物AおよびEはそれぞれ、本発明によるゴム組成物CおよびDよりも著しく高い弾性率を示す。組成物CおよびDの弾性率が低いことは、ゴムの剛性が低下してグリップが向上し、WET性能が向上したことを示している。発明の組成物CおよびDの結果は、期待される2つの樹脂の相加効果よりも高く、したがって相乗効果を示している。
【0130】
図2は、各ゴム組成物の0℃におけるTanδを示している。参照組成物AおよびEは、本発明における組成物CおよびDよりも低い0℃におけるTanδを有する。0℃におけるTanδの増加は、組成物がヒステリシス効果により優れたWET性能を有することを示す。本発明における組成物CおよびDの結果は、期待される2つの樹脂の相加効果よりも高く、したがって相乗効果を示している。
【0131】
図3は、各ゴム組成物の60℃におけるTanδを示している。60℃におけるTanδは転がり抵抗を示す。参照組成物AおよびEは、本発明における組成物CおよびDよりも高い60℃におけるTanδを有する。60℃におけるTanδが低いほど、ヒステリシス効果により転がり抵抗性能が優れていることを示す。本発明の組成物の効果は、期待される2つの樹脂の相加効果よりも高く、したがって相乗効果を示している。
【0132】
図4は、各ゴム組成物の耐摩耗性を示している。この結果は、単一の樹脂のみを含む参照組成物AおよびEと比較して、樹脂のブレンドの仕様が耐摩耗性にほとんど影響を与えないことを示している。このように、樹脂のブレンドは、耐摩耗性に悪影響を与えることなく、他の特性(例えば剛性およびヒステリシス)を調整するために使用することができる。
【0133】
図4から、さらに6phrのシリカを添加すると(組成物F)、耐摩耗が向上することもわかる。ブレンド樹脂の使用によりゴム組成物の他の動的特性が大幅に改善するため(
図1~3)、したがって全体のWET/WEAR/RR特性に悪影響を与えることなくシリカを追加添加することができる。
【0134】
図5は、本発明における組成物Cおよび参照組成物AおよびEのそれぞれで実施したタイヤ試験におけるWET制動の関数としての耐WEARを示す。これにより、本発明の組成物について、WEAR性能およびWET性能のバランスが向上していることが確認できる。