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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-29
(45)【発行日】2025-10-07
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/40 20060101AFI20250930BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20250930BHJP
   H03H 7/01 20060101ALI20250930BHJP
【FI】
H01G4/40 321A
H01F27/00 S
H03H7/01 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023578491
(86)(22)【出願日】2023-01-24
(86)【国際出願番号】 JP2023002074
(87)【国際公開番号】W WO2023149279
(87)【国際公開日】2023-08-10
【審査請求日】2024-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2022016416
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立花 真也
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-308023(JP,A)
【文献】国際公開第2015/064133(WO,A1)
【文献】特開2015-111799(JP,A)
【文献】国際公開第2019/003723(WO,A1)
【文献】実開平03-039824(JP,U)
【文献】特開2011-124880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/40
H01F 27/00
H03H 7/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する1対の主面と前記主面間を結ぶ側面とを有する絶縁体と、
前記絶縁体内において少なくとも1つの第1導体パターンにより構成された第1インダクタと、
前記絶縁体内において少なくとも1つの第2導体パターンにより構成された第2インダクタと、
前記主面のうち一方の面側から平面視した場合に、前記第1導体パターンの一部と重なる前記絶縁体内の位置に設けられるキャパシタと、
前記第1インダクタと電気的に接続される第1外部電極と、
前記キャパシタと電気的に接続され、前記絶縁体の対向する前記側面のそれぞれに設けられる第2外部電極と、を備え、
前記第1インダクタおよび前記キャパシタは、LC直列回路を構成し、
前記第2インダクタは、前記LC直列回路に対して並列接続して、前記第1インダクタと磁気結合し、
前記キャパシタは、
前記第1インダクタと電気的に接続される第1電極パターンと、
各々の前記第2外部電極と少なくとも1つの配線パターンで電気的に接続される第2電極パターンと、を含み、
少なくとも1つの前記配線パターンは前記第1導体パターンの一部と平行である、電子部品。
【請求項2】
前記キャパシタの前記第2電極パターンと各々の前記第2外部電極とは、直線状に並んだ2つの前記配線パターンで電気的に接続されている、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記主面のうち一方の面側から平面視した場合に、前記キャパシタと重なる前記第1導体パターンの一部は、前記第2外部電極が対向する前記絶縁体の一辺と平行である、請求項1または請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記配線パターンは、前記主面のうち一方の面側から平面視した場合に、前記第1導体パターンと一部重なる、請求項1または請求項2に記載の電子部品。
【請求項5】
各々の前記第2外部電極は、同電位である、請求項1または請求項2に記載の電子部品。
【請求項6】
前記主面に垂直方向に前記キャパシタ、前記第1インダクタ、前記第2インダクタの順に積層されている、請求項1または請求項2に記載の電子部品。
【請求項7】
前記第2外部電極は、前記側面のうち対向する第1側面および第2側面と、前記第1側面と前記第2側面とに挟まれる第3側面とに形成され、
2つ以上の形成された前記配線パターンのうち1つの前記配線パターンが、前記第3側面の前記第2外部電極と電気的に接続される、請求項1に記載の電子部品。
【請求項8】
前記キャパシタと前記第1インダクタとの積層方向の距離は、前記第1インダクタと前記第2インダクタの積層方向の距離よりも長い、請求項に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の絶縁体層を積層した絶縁体の内部にインダクタ(コイル)とキャパシタ(コンデンサ)とを設け、一体化したフィルタ装置である電子部品が知られている。フィルタ装置の一例として、特開2013-21449号公報(特許文献1)には、外部電極を形成した絶縁体に、インダクタ、およびキャパシタを内蔵するフィルタ装置が記載されている。当該フィルタ装置では、絶縁体を天面側から平面視した場合に、キャパシタの上にインダクタが積層されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-21449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルタ装置を小型部品で実現する場合、絶縁体の外枠いっぱいにインダクタの導体パターンを形成して設計値のインダクタンス値を確保する必要があるので絶縁体の側面に外部電極を形成し、インダクタのパターンやキャパシタのパターンと側面の外部電極とを配線パターンで接続する。このとき、キャパシタと外部電極とを接続する配線パターンに寄生インダクタンス(等価直列インダクタンス(ESL:Equivalent Series Inductance))が生じる。フィルタ装置では、生じた寄生インダクタンスによりフィルタ特性が設計値からずれる虞があった。
【0005】
そこで、本開示の目的は、寄生インダクタンスの影響を小さくすることができる電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係る電子部品は、絶縁体と、第1インダクタと、第2インダクタと、キャパシタと、第1外部電極と、第2外部電極と、を備える。絶縁体は、互いに対向する1対の主面と主面間を結ぶ側面とを有する。第1インダクタは、絶縁体内において少なくとも1つの第1導体パターンにより構成される。第2インダクタは、絶縁体内において少なくとも1つの第2導体パターンにより構成される。キャパシタは、主面のうち一方の面側から平面視した場合に、第1導体パターンの一部と重なる絶縁体内の位置に設けられる。第1外部電極は、第1インダクタと電気的に接続される。第2外部電極は、キャパシタと電気的に接続され、前記絶縁体の対向する前記側面のそれぞれに設けられる。第1インダクタおよびキャパシタは、LC直列回路を構成する。第2インダクタは、LC直列回路に対して並列接続して、第1インダクタと磁気結合する。キャパシタは、第1インダクタと電気的に接続される第1電極パターンと、各々の第2外部電極と少なくとも1つの配線パターンで電気的に接続される第2電極パターンと、を含み、少なくとも1つの配線パターンは第1導体パターンの一部と平行である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一形態によれば、キャパシタが第1導体パターンの一部と重なる絶縁体内の位置に設けられ、キャパシタの第2電極パターンが、各々の第2外部電極と少なくとも1つの配線パターンで電気的に接続されるので、寄生インダクタンスの影響を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係るフィルタ装置の斜視図である。
図2】実施の形態1に係るフィルタ装置の回路図である。
図3】実施の形態1に係るフィルタ装置の構成を示す分解平面図である。
図4】実施の形態1に係るフィルタ装置の構成において一方の方向に積みズレが生じた場合の分解平面図である。
図5】実施の形態1に係るフィルタ装置の構成において他方の方向に積みズレが生じた場合の分解平面図である。
図6】実施の形態1に係るフィルタ装置の変形例の構成を示す分解平面図である。
図7】実施の形態1に係るフィルタ装置の別の変形例の構成を示す分解平面図である。
図8】実施の形態2に係るフィルタ装置の斜視図である。
図9】実施の形態2に係るフィルタ装置の回路図である。
図10】実施の形態2に係るフィルタ装置の構成を示す分解平面図である。
図11】実施の形態2に係るフィルタ装置の変形例の構成を示す分解平面図である。
図12】実施の形態2に係るフィルタ装置の別の変形例の構成を示す断面図である。
図13】変形例1に係るフィルタ装置の構成を示す分解平面図である。
図14】変形例2に係るフィルタ装置の構成を示す分解平面図である。
図15】変形例3に係るフィルタ装置の構成を示す分解平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施の形態に係る電子部品の一例としてフィルタ装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、実施の形態に係る電子部品は、フィルタ装置に限定されない。
【0010】
(実施の形態1)
[フィルタ装置の構造]
まず、実施の形態1に係るフィルタ装置について図面を参照しながら説明する。図1は、実施の形態1に係るフィルタ装置100の斜視図である。ここで、図1では、フィルタ装置100の短辺方向をX方向、長辺方向をY方向、高さ方向をZ方向としている。
【0011】
フィルタ装置100は、1つのインダクタと1つのキャパシタとをZ方向に積層した直方体状のチップ部品である。フィルタ装置100は、図1に示すようにインダクタLの導体パターンおよびキャパシタCの電極パターンを形成した絶縁基板(絶縁体層)が複数枚積層された絶縁体3で構成される。なお、絶縁基板の積層方向はZ方向で、矢印の向きが上層方向を示している。また、絶縁基板は、例えば、硼珪酸ガラスを主成分とする絶縁材料や、アルミナ、ジルコニア、ポリイミド樹脂等の絶縁樹脂などの材料からなる。さらに、絶縁体3は、焼成や硬化等の処理によって、複数の絶縁基板の界面が明確となっていない場合がある。
【0012】
また、フィルタ装置100は、Y方向に2箇所、図1に示すような外部電極4a(第1外部電極)、および外部電極4b(第2外部電極)が絶縁体3に形成されている。なお、絶縁体3は、互いに対向する1対の主面を有しており、図1の下側の主面が実装面であり、この面が回路基板に対向する。本実施の形態1では、図1の下側の主面を底面、図1の上側の主面を天面ともいう。
【0013】
外部電極4aおよび外部電極4bは、絶縁体3の底面だけに電極パターンが形成されているだけでなく、絶縁体3の主面間を結ぶ側面にも電極パターンが形成されている。絶縁体3を短辺側の側面(XZ面)から見た場合、外部電極4aおよび外部電極4bはU字形状をしている。そのため、絶縁体3の対向する側面のそれぞれに設けられる外部電極4aは、絶縁体3の底面に設けた電極パターンにより同電位である。同様に、絶縁体3の対向する側面のそれぞれに設けられる外部電極4bは、絶縁体3の底面に設けた電極パターンにより同電位である。
【0014】
外部電極4aおよび外部電極4bは、ともに絶縁体3の対向する側面にも電極パターンが設けられていると説明した。しかし、少なくとも外部電極4bのみ絶縁体3の対向する側面にも電極パターンが設けられている構成であれば、外部電極4aは、絶縁体3の対向する側面の両方に電極パターンが設けられていなくてもよいし、その場合、外部電極4aが形成されるのは外部電極4bと同じ面でなく短辺側の側面でもよい。
【0015】
インダクタLの導体パターン1a(第1導体パターン)と外部電極4aとは、配線パターン11aを介して絶縁体3の側面で電気的に接続されている。一方、キャパシタCの電極パターン5b(第2電極パターン)と外部電極4bとは、配線パターン51a(図3参照)および配線パターン51bを介して絶縁体3の側面で電気的に接続されている。
【0016】
インダクタLは、絶縁体3の主面に対して平行に、複数の導体パターン1a,1bが積み重ねられ、各々の導体パターン1a,1bをビア導体31,32等で電気的に接続されている。また、キャパシタCは、インダクタLの下層に複数の電極パターン5a,5bが絶縁層を介して積み重ねられている。キャパシタCは、主面のうち一方の面(天面)側から平面視した場合、導体パターン1a,1bの一部と重なる絶縁体3内の位置に設けられる。また、インダクタLとキャパシタCとは、絶縁体3内で直列に接続されLC直列回路を構成している。
【0017】
図2は、実施の形態1に係るフィルタ装置100の回路図である。フィルタ装置100は、第1端子P1と、第1端子P1と接続されるインダクタLと、インダクタLと直列に接続されるキャパシタCと、キャパシタCと接続される第2端子P2と、を含む。なお、第1端子P1は、図1に示す外部電極4aに対応し、第2端子P2は、図1に示す外部電極4bに対応する。
【0018】
図2に示すフィルタ装置100の回路図では、キャパシタCと第2端子P2との間に寄生インダクタンスESL1,ESL2が図示されている。寄生インダクタンスESL1,ESL2は、キャパシタCの電極パターン5bと外部電極4bとを接続するための配線パターン51aおよび配線パターン51bで生じる。
【0019】
[フィルタ装置の分解平面図]
次に、分解平面図を用いて各層の構成について説明する。図3は、実施の形態1に係るフィルタ装置100の構成を示す分解平面図である。まず、図3に示すように、導体パターン1a,1b、配線パターン11a,51a,51b、および電極パターン5a,5bの各々は、絶縁基板3a~3dに印刷工法で形成される。
【0020】
絶縁基板3aには、インダクタLの一部を構成する導体パターン1aが形成されている。導体パターン1aは、絶縁基板3aの図中左上側から右回りに約3/4周するように形成されている。導体パターン1aの始端は、配線パターン11aを介して外部電極4aと電気的に接続される。導体パターン1aの終端の近傍には、ビア導体31と接続する接続部31aおよびビア導体32と接続する接続部32aが設けられている。
【0021】
絶縁基板3bには、インダクタLの一部を構成する導体パターン1bが形成されている。導体パターン1bは、絶縁基板3bの図中下側から右回りに約3/4周するように形成されている。導体パターン1bの始端の近傍には、ビア導体31と接続する接続部31bおよびビア導体32と接続する接続部32bが設けられている。導体パターン1bの終端の近傍には、ビア導体33と接続する接続部33bが設けられている。インダクタLは、導体パターン1a,1bを直列接続させて、約1.5巻きのコイルを構成している。
【0022】
絶縁基板3cには、キャパシタCの一方の電極を構成する電極パターン5a(第1電極パターン)が形成されている。電極パターン5aは、天面側から平面視した場合に、導体パターン1a,1bの一部と重なる絶縁体3内の位置に設けられる。つまり、電極パターン5aは、導体パターン1a,1bで構成されるインダクタLの開口部とできるだけ重ならない位置に設けられる。電極パターン5aは、ビア導体33と接続する接続部33cを有している。
【0023】
絶縁基板3dには、キャパシタCの他方の電極を構成する電極パターン5bが形成されている。電極パターン5bは、天面側から平面視した場合に、電極パターン5aと対向する絶縁体3内の位置に設けられる。電極パターン5bは、配線パターン51a,51bを介して外部電極4bと電気的に接続される。なお、配線パターン51a,51bは、それぞれ1本の配線として図示してあるが、複数本の配線で構成してもよい。
【0024】
外部電極4bは、図1に示すように絶縁体3の対向する側面のそれぞれに設けられている。配線パターン51a,51bは、各々の外部電極4bと電極パターン5bとを電気的に接続している。各々の外部電極4bが同電位であるため、配線パターン51a,51bは、図2に示す回路図のように第2端子P2(外部電極4b)とキャパシタC(電極パターン5b)との間で並列接続される。その結果、配線パターン51a,51bによって生じる寄生インダクタンスESL1,ESL2は並列になるので、実質的に寄生インダクタンスの値を下げることができる。
【0025】
さらに、天面側から平面視した場合に、キャパシタCと重なる導体パターン1bの一部は、外部電極4bが対向する絶縁体3の一辺(短辺)と平行となる部分を有している。図3では、図中右側のX方向に形成されている導体パターン1bの部分が、外部電極4bが対向する絶縁体3の一辺(短辺)と平行になっている。そのため、導体パターン1bは、配線パターン51a,51bの方向と同じ方向になる部分を含むことになるので、配線パターン51a、51bと導体パターン1bは強め合う方向にも弱め合う方向にも結合し合う。そのため、フィルタ装置100のフィルタ特性値の調整が容易になる。配線パターン51a、51bと結合するのは導体パターン1bだけでなく導体パターン1aも含んでよいし、導体パターン1bと配線パターン51a、51bが結合しない位置関係にある場合は導体パターン1aとのみ結合してもよい。
【0026】
また、電極パターン5a、5bは、導体パターン1a,1bで構成されるインダクタLの開口部とできるだけ重ならない位置に設けられることで、インダクタLで作る磁界を邪魔せず、小型部品でフィルタ装置100を実現できる。
【0027】
さらに、配線パターン51a,51bは、絶縁体3の対向する側面のそれぞれに設けられた外部電極4bと接続するため、図3に示すように電極パターン5bの2方向から引き出されている。そのため、配線パターン51a,51bが絶縁体3の短辺方向にずれて絶縁基板が積層されても(積みズレ)、寄生インダクタンスの変動を抑えることができる。そのため、フィルタ装置としての特性のばらつきを抑制することができる。
【0028】
具体的に、図面を用いて説明する。図4は、実施の形態1に係るフィルタ装置100の構成において一方の方向に積みズレが生じた場合の分解平面図である。図5は、実施の形態1に係るフィルタ装置100の構成において他方の方向に積みズレが生じた場合の分解平面図である。図4および図5では、絶縁基板3dに形成される電極パターン5bの位置がずれている以外、図3に示す分解平面図と同じであるため、同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0029】
図4に示すフィルタ装置100では、絶縁基板3dに形成される電極パターン5bの位置がX方向の正方向(矢印の方向)にずれている。そのため、図中上側の外部電極4bと電極パターン5bとの距離が近づき、配線パターン51aの長さが短くなる。逆に、図中下側の外部電極4bと電極パターン5bとの距離が遠ざかり、配線パターン51bの長さが長くなる。
【0030】
図5に示すフィルタ装置100では、絶縁基板3dに形成される電極パターン5bの位置がX方向の負方向(矢印の逆方向)にずれている。そのため、図中下側の外部電極4bと電極パターン5bとの距離が近づき、配線パターン51bの長さが短くなる。逆に、図中上側の外部電極4bと電極パターン5bとの距離が遠ざかり、配線パターン51aの長さが長くなる。
【0031】
一例として、配線パターン51aに生じる寄生インダクタンスESL1が0.10nH、配線パターン51bに生じる寄生インダクタンスESL2が0.15nHとし、並列接続した寄生インダクタンスESL1、ESL2の合計が0.06nHとする。このとき、積みズレによる寄生インダクタンスの増減が例えば±0.05nHとすると、図4に示すフィルタ装置100は、寄生インダクタンスESL1が0.05nH、寄生インダクタンスESL2が0.20nHとなり、並列接続した寄生インダクタンスESL1,ESL2の合計が0.04nHとなる。
【0032】
図5に示すフィルタ装置100は、寄生インダクタンスESL1が0.15nH、寄生インダクタンスESL2が0.10nHとなり、並列接続した寄生インダクタンスESL1,ESL2の合計が0.06nHとなる。つまり、フィルタ装置100は、積みズレによる寄生インダクタンスの増減が±0.05nHの場合、並列接続した寄生インダクタンスESL1,ESL2の合計が0.04nH~0.06nHの間で変動する。
【0033】
一方、配線パターン51aを設けずに配線パターン51bのみで、外部電極4bと電極パターン5bとを電気的に接続した場合、寄生インダクタンスESL2は、0.10nH~0.20nHの間で変動する。そのため、フィルタ装置100は、配線パターン51a、51bを並列接続することで、積みズレの加工ばらつきによる寄生インダクタンスの変動を低減することができる。
【0034】
次に、キャパシタの電極パターン5bの1方向から配線パターンを引き出すことで、インダクタンス値を調整することができるフィルタ装置について説明する。図6は、実施の形態1に係るフィルタ装置の変形例の構成を示す分解平面図である。図6に示すフィルタ装置100Aでは、配線パターン51aを設けずに配線パターン51bのみで、外部電極4bと電極パターン5bとを電気的に接続した構成である。なお、図6において、絶縁基板3dの配線パターン51aが設けられていない点以外、図3に示す分解平面図と同じであるため、同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0035】
絶縁基板3dの配線パターン51bは、絶縁基板3bの導体パターン1bにおいて接続部33bに向かって流れる電流I1の方向と略平行で、かつ同方向となる電流I2が流れる。そのため、図6に示すフィルタ装置100Aは、導体パターン1bと同じ向きに電流が流れる配線パターン51bを有するので、インダクタLの自己誘導を妨げず、合計リアクタンスを高くできる。
【0036】
また、図7は、実施の形態1に係るフィルタ装置の別の変形例の構成を示す分解平面図である。図7に示すフィルタ装置100Bでは、配線パターン51bを設けずに配線パターン51aのみで、外部電極4bと電極パターン5bとを電気的に接続した構成である。なお、図7において、絶縁基板3dの配線パターン51bが設けられていない点以外、図3に示す分解平面図と同じであるため、同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0037】
絶縁基板3dの配線パターン51aは、絶縁基板3bの導体パターン1bにおいて接続部33bに向かって流れる電流I1の方向と略平行で、かつ逆方向となる電流I3が流れる。そのため、図7に示すフィルタ装置100Bでは、導体パターン1bと逆向きに電流が流れる配線パターン51aを有するので、インダクタLの自己誘導を妨げ、合計リアクタンスを低くできる。
【0038】
図6に示すフィルタ装置100A、および図7に示すフィルタ装置100Bで説明したように、外部電極4bと電極パターン5bとを電気的に接続する配線を配線パターン51a,51bの2本ではなく、配線パターン51aまたは配線パターン51bの1本とすることでも、インダクタLのインダクタンス値を調整することができる。
【0039】
以上のように、実施の形態1に係るフィルタ装置100は、絶縁体3と、インダクタLと、キャパシタCと、外部電極4aと、外部電極4bと、を備える。絶縁体3は、互いに対向する1対の主面と主面間を結ぶ側面とを有する。インダクタLは、絶縁体3内において少なくとも1つの導体パターン1a,1bにより構成される。キャパシタCは、主面のうち一方の面側から平面視した場合に、導体パターン1a,1bの一部と重なる絶縁体3内の位置に設けられる。外部電極4aは、インダクタLと電気的に接続される。外部電極4bは、キャパシタCと電気的に接続され、絶縁体3の対向する側面のそれぞれに設けられる。キャパシタCは、インダクタLと電気的に接続される電極パターン5aと、各々の外部電極4bと少なくとも1つの配線パターン51a,51bで電気的に接続される電極パターン5bと、を含む。少なくとも1つの配線パターン51a,51bは導体パターン1a,1bの一部と平行である。
【0040】
これにより、実施の形態1に係るフィルタ装置100は、キャパシタCの電極パターン5bが、各々の外部電極4bと少なくとも1つの配線パターン51a,51bで電気的に接続されるので、フィルタ装置100に生じる寄生インダクタンスの影響を小さくすることができる。
【0041】
フィルタ装置を小型部品で実現する場合、絶縁体の外枠いっぱいにインダクタの導体パターンを形成して設計値のインダクタンス値を確保する必要があるので、キャパシタの上にインダクタを積層させる必要がある。しかし、絶縁体の外枠いっぱいにインダクタの導体パターンを形成すると、絶縁体を天面側から平面視した場合に、キャパシタの形状、インダクタとの配置関係によっては、キャパシタの電極内で渦電流が発生して十分なQ値が得られない虞がある。しかし、フィルタ装置100では、インダクタLとキャパシタCと重なる部分を導体パターン1a,1bの一部に留めることで、電極パターン5a,5b内で渦電流が発生してQ値が低下することを抑制することができる。
【0042】
キャパシタCの電極パターン5bと各々の外部電極4bとは、直線状に並んだ2つの配線パターン51a,51bで電気的に接続されていることが好ましい。また、主面のうち一方の面(天面)側から平面視した場合に、キャパシタCと重なる導体パターン1a,1bの一部は、外部電極4bが対向する絶縁体3の一辺と平行であることが好ましい。さらに、配線パターン51a,51bは、主面のうち一方の面(天面)側から平面視した場合に、導体パターン1a,1bと一部重なることが好ましい。これにより、フィルタ装置100のフィルタ設計の調整が容易になる。
【0043】
各々の外部電極4bは、同電位である。これにより、寄生インダクタンスESL1,ESL2が生じる配線パターン51a,51bが並列接続となる。
【0044】
インダクタLおよびキャパシタCは、LC直列回路を構成する。これにより、LC直列回路を有するフィルタ装置100となる。LC直列回路を使用したフィルタでは直列共振周波数を通過域として使用するため、寄生インダクタンスによって共振周波数がずれ、通過フィルタとして性能の劣化に繋がりうる。そのため、キャパシタCの配線パターンによる寄生インダクタンスのばらつきを抑制することは特にLC直列回路では重要である。
【0045】
(実施の形態2)
実施の形態1では、フィルタ装置100は、インダクタLおよびキャパシタCがZ方向に積層した直方体状のチップ部品であると説明した。実施の形態2では、さらにインダクタを追加したフィルタ装置について説明する。
【0046】
[フィルタ装置の構造]
まず、実施の形態2に係るフィルタ装置200について図面を参照しながら説明する。図8は、実施の形態2に係るフィルタ装置200の斜視図である。ここで、図8では、フィルタ装置200の短辺方向をX方向、長辺方向をY方向、高さ方向をZ方向としている。なお、図8に示すフィルタ装置200において、図1に示すフィルタ装置100と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0047】
フィルタ装置200は、2つのインダクタと1つのキャパシタとをZ方向に積層した直方体状のチップ部品である。なお、フィルタ装置200は、互いに対向する1対の主面を有しており、図8の下側の主面が実装面であり、この面が回路基板に対向する。本実施の形態2では、図8の下側の主面を底面、図8の上側の主面を天面ともいう。
【0048】
フィルタ装置200は、図8に示すように第1インダクタL1の第1導体パターン、第2インダクタL2の第2導体パターン、およびキャパシタCの電極パターンを形成した絶縁基板(絶縁体層)が複数枚積層された絶縁体3で構成される。なお、絶縁基板の積層方向はZ方向で、矢印の向きが上層方向を示している。フィルタ装置200は、Z方向にキャパシタC、第1インダクタL1、第2インダクタL2の順で積層されている。
【0049】
フィルタ装置200は、Y方向の2箇所、図8に示すように外部電極4a(第1外部電極)、および外部電極4b(第2外部電極)が絶縁体3に形成されている。第1インダクタL1の第1導体パターン1E,1Fと外部電極4aとは、配線パターン11E,11Fを介して絶縁体3の側面で電気的に接続されている。同様に、第2インダクタL2の第2導体パターン2A,2Bと外部電極4bとは、配線パターン12A,12Bを介して絶縁体3の側面で電気的に接続されている。第2インダクタL2の第2導体パターン2C,2Dと外部電極4aとは、配線パターン12C,12Dを介して絶縁体3の側面で電気的に接続されている。キャパシタCの電極パターン5b(第2電極パターン)と外部電極4bとは、配線パターン51a(図10参照)および配線パターン51bを介して絶縁体3の側面で電気的に接続されている。
【0050】
第1インダクタL1は、絶縁体3の主面に対して平行に、複数の第1導体パターン1E~1Hが積み重ね、各々の第1導体パターン1E~1Hをビア導体31,32等で電気的に接続されている。第2インダクタL2は、絶縁体3の主面に対して平行に、複数の第2導体パターン2A~2Dが積み重ね、各々の第2導体パターン2A~2Dをビア導体34で電気的に接続されている。また、キャパシタCは、第1インダクタL1の下層に複数の電極パターン5a,5bが絶縁層を介して積み重ねられている。キャパシタCは、主面のうち一方の面(天面)側から平面視した場合に、第1導体パターン1G,1Hの一部と重なる絶縁体3内の位置に設けられる。フィルタ装置200は、絶縁体3内で第1インダクタL1とキャパシタCとが直列に接続され、第1インダクタL1およびキャパシタCに対して第2インダクタL2が並列に接続された回路を構成している。
【0051】
図9は、実施の形態2に係るフィルタ装置200の回路図である。フィルタ装置200は、第1端子P1と、第1端子P1と接続される第1インダクタL1と、第1インダクタL1と直列に接続されるキャパシタCと、キャパシタCと接続される第2端子P2と、を含む。さらに、フィルタ装置200は、直列に接続された第1インダクタL1およびキャパシタCに対して、並列に接続される第2インダクタL2、を含む。なお、第1インダクタL1と第2インダクタL2とは、互いに磁気結合(結合係数k)をしている。これにより、第1インダクタL1と第2インダクタL2との間に、相互インダクタンスMが発生する。図9では、発生する相互インダクタンスMを考慮して、第1インダクタL1および第2インダクタL2の各々に相互インダクタンス+Mを、第1端子P1に相互インダクタンス-Mを追加した等価回路として図示してある。もちろん、フィルタ装置200は、第1インダクタL1と第2インダクタL2とが互いに磁気結合している場合に限定されず、第1インダクタL1と第2インダクタL2とが互いに磁気結合していない構成であってもよい。
【0052】
第1端子P1は、図8に示す外部電極4aに対応し、第2端子P2は、図8に示す外部電極4bに対応する。図9に示すフィルタ装置200の回路図では、キャパシタCと第2端子P2との間に寄生インダクタンスESL1,ESL2が図示されている。寄生インダクタンスESL1,ESL2は、キャパシタCの電極パターン5bと外部電極4bとを接続するための配線パターン51aおよび配線パターン51bで生じる。
【0053】
[フィルタ装置の分解平面図]
次に、分解平面図を用いて各層の構成について説明する。図10は、実施の形態2に係るフィルタ装置200の構成を示す分解平面図である。まず、図10に示すように、第1導体パターン1E~1H、第2導体パターン2A~2D、配線パターン12A~12D,11E,11F,51a,51b、および電極パターン5a,5bの各々は、絶縁基板3A~3Jに印刷工法で形成される。
【0054】
絶縁基板3Aには、第2インダクタL2の一部を構成する第2導体パターン2Aが形成されている。第2導体パターン2Aは、絶縁基板3Aの図中右上側から右回りに約1周するように形成されている。第2導体パターン2Aの始端は、配線パターン12Aを介して外部電極4bと電気的に接続される。第2導体パターン2Aの終端には、ビア導体34と接続する接続部34Aが設けられている。
【0055】
絶縁基板3Bには、第2インダクタL2の一部を構成する第2導体パターン2Bが形成されている。第2導体パターン2Bは、絶縁基板3Bの図中右上側から右回りに約1周するように形成されている。第2導体パターン2Bの始端は、配線パターン12Bを介して外部電極4bと電気的に接続される。第2導体パターン2Bの終端には、ビア導体34と接続する接続部34Bが設けられている。
【0056】
絶縁基板3Cには、第2インダクタL2の一部を構成する第2導体パターン2Cが形成されている。第2導体パターン2Cは、絶縁基板3Cの図中上側から右回りに約1周するように形成されている。第2導体パターン2Cの始端は、ビア導体34と接続する接続部34Cが設けられている。第2導体パターン2Cの終端には、配線パターン12Cを介して外部電極4aと電気的に接続される。
【0057】
絶縁基板3Dには、第2インダクタL2の一部を構成する第2導体パターン2Dが形成されている。第2導体パターン2Dは、絶縁基板3Dの図中上側から右回りに約1周するように形成されている。第2導体パターン2Dの始端は、ビア導体34と接続する接続部34Dが設けられている。第2導体パターン2Dの終端には、配線パターン12Dを介して外部電極4aと電気的に接続される。
【0058】
第2インダクタL2は、第2導体パターン2A,2B、および第2導体パターン2C,2Dがそれぞれ並列接続され、並列接続された第2導体パターン2A,2Bと並列接続された第2導体パターン2C,2Dとが直列接続して、約2巻きのコイルを構成している。
【0059】
絶縁基板3Eには、第1インダクタL1の一部を構成する第1導体パターン1Eが形成されている。第1導体パターン1Eは、絶縁基板3Eの図中左上側から右回りに約3/4周するように形成されている。第1導体パターン1Eの始端は、配線パターン11Eを介して外部電極4aと電気的に接続される。第1導体パターン1Eの終端の近傍には、ビア導体31と接続する接続部31Eおよびビア導体32と接続する接続部32Eが設けられている。
【0060】
絶縁基板3Fには、第1インダクタL1の一部を構成する第1導体パターン1Fが形成されている。第1導体パターン1Fは、絶縁基板3Fの図中左上側から右回りに約3/4周するように形成されている。第1導体パターン1Fの始端は、配線パターン11Fを介して外部電極4aと電気的に接続される。第1導体パターン1Fの終端の近傍には、ビア導体31と接続する接続部31Fおよびビア導体32と接続する接続部32Fが設けられている。
【0061】
絶縁基板3Gには、第1インダクタL1の一部を構成する第1導体パターン1Gが形成されている。第1導体パターン1Gは、絶縁基板3Gの図中下側から右回りに約3/4周するように形成されている。第1導体パターン1Gの始端の近傍には、ビア導体31と接続する接続部31Gおよびビア導体32と接続する接続部32Gが設けられている。第1導体パターン1Gの終端の近傍には、ビア導体33と接続する接続部33Gが設けられている。
【0062】
絶縁基板3Hには、第1インダクタL1の一部を構成する第1導体パターン1Hが形成されている。第1導体パターン1Hは、絶縁基板3Hの図中下側から右回りに約3/4周するように形成されている。第1導体パターン1Hの始端の近傍には、ビア導体31と接続する接続部31Hおよびビア導体32と接続する接続部32Hが設けられている。第1導体パターン1Hの終端の近傍には、ビア導体33と接続する接続部33Hが設けられている。
【0063】
第1インダクタL1は、第1導体パターン1E,1F、および第1導体パターン1G,1Hがそれぞれ並列接続され、並列接続された第1導体パターン1E,1Fと並列接続された第1導体パターン1G,1Hとが直列接続して、約1.5巻きのコイルを構成している。
【0064】
絶縁基板3Iには、キャパシタCの一方の電極を構成する電極パターン5a(第1電極パターン)が形成されている。電極パターン5aは、天面側から平面視した場合に、第1導体パターン1G,1Hの一部と重なる絶縁体3内の位置に設けられる。つまり、電極パターン5aは、第1導体パターン1G,1Hで構成される第1インダクタL1の開口部とできるだけ重ならない位置に設けられる。電極パターン5aは、ビア導体33と接続する接続部33Iを有している。
【0065】
絶縁基板3Jには、キャパシタCの他方の電極を構成する電極パターン5bが形成されている。電極パターン5bは、天面側から平面視した場合に、電極パターン5aと対向する絶縁体3内の位置に設けられる。電極パターン5bは、配線パターン51a,51bを介して外部電極4bと電気的に接続される。なお、配線パターン51a,51bは、それぞれ1本の配線として図示してあるが、複数本の配線で構成してもよい。
【0066】
外部電極4bは、図8に示すように絶縁体3の対向する側面のそれぞれに設けられている。配線パターン51a,51bは、各々の外部電極4bと電極パターン5bとを電気的に接続している。各々の外部電極4bが底面に形成されたパターンで電気的に接続されていると、外部電極4bは同電位となる。つまり、配線パターン51a,51bは、図9に示す回路図のように第2端子P2(外部電極4b)とキャパシタC(電極パターン5b)との間で並列接続される。その結果、配線パターン51a,51bによって生じる寄生インダクタンスESL1,ESL2は並列になるので、実質的に寄生インダクタンスの値を下げることができる。さらに、フィルタ装置200は、実施の形態1で説明したフィルタ装置100と同等の効果を有している。
【0067】
次に、外部電極の形状を変更したフィルタ装置200の変形例について説明する。図8に示した外部電極4a,4bは、絶縁体3を短辺側の側面(XZ面)から見た場合、U字形状をしており、絶縁体3の短辺側の側面(XZ面)には電極が設けられていない。しかし、外部電極の形状はこれに限定されず、絶縁体3の短辺側の側面(XZ面)にも電極が設けられているドッグボーン状の外部電極であってもよい。
【0068】
図11は、実施の形態2に係るフィルタ装置の変形例の構成を示す分解平面図である。図11に示すフィルタ装置200Aでは、ドッグボーン状の外部電極4c,4dとし、当該外部電極4c,4dと、第1導体パターン1E,1Fおよび第2導体パターン2A~2Dとを接続するための配線パターン22A~22D,21E,21Fに変更している。なお、図11において、外部電極4c,4dおよび配線パターン22A~22D,21E,21Fを変更している点以外、図10に示す分解平面図と同じであるため、同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0069】
絶縁基板3Aの第2導体パターン2Aは、図中右側の絶縁基板3Aの短辺で配線パターン22Aを介して外部電極4dと電気的に接続される。同様に、絶縁基板3Bの第2導体パターン2Bは、図中右側の絶縁基板3Bの短辺で配線パターン22Bを介して外部電極4dと電気的に接続される。
【0070】
絶縁基板3Cの第2導体パターン2Cは、図中左側の絶縁基板3Cの短辺で配線パターン22Cを介して外部電極4cと電気的に接続される。同様に、絶縁基板3Dの第2導体パターン2Dは、図中左側の絶縁基板3Dの短辺で配線パターン22Dを介して外部電極4cと電気的に接続される。
【0071】
絶縁基板3Eの第1導体パターン1Eは、図中左側の絶縁基板3Eの短辺で配線パターン21Eを介して外部電極4cと電気的に接続される。同様に、絶縁基板3Fの第1導体パターン1Fは、図中左側の絶縁基板3Fの短辺で配線パターン21Fを介して外部電極4cと電気的に接続される。
【0072】
絶縁基板3Gの第1導体パターン1Gは、ビア導体31,32を介して第1導体パターン1E,1Fと電気的に接続される。同様に絶縁基板3Hの第1導体パターン1Hは、ビア導体31,32を介して第1導体パターン1E,1F、および1Gと電気的に接続される。
【0073】
絶縁基板3Iの電極パターン5a(第1電極パターン)は、キャパシタCの一方の電極を構成し、ビア導体33と接続する接続部33Iを有している。
【0074】
絶縁基板3Jの電極パターン5b(第2電極パターン)は、キャパシタCの他方の電極を構成し、第1導体パターン1G,1Hの一部と平行に配線パターン51a、51bを介して外部電極4dのうち、対向する側面で電気的に接続している。またさらに、配線パターン51a,51bと異なる方向で外部電極4dと接続する配線パターン51cを持っていてもよい。
【0075】
フィルタ装置200Aで説明したドッグボーン状の外部電極4c,4dは、実施の形態1に係るフィルタ装置100,100A,100Bに対しても同様に適用することができる。
【0076】
以上のように、実施の形態2に係るフィルタ装置200は、絶縁体3内において少なくとも1つの第2導体パターンにより構成された第2インダクタL2をさらに備える。これにより、絶縁体3内に2つのインダクタと1つのキャパシタとを有するフィルタ装置を実現することができる。このようなフィルタ装置において、キャパシタの配線パターンの寄生インダクタンスの変動を抑制することにより、LC直列共振周波数の変動を減らしフィルタ装置として通過特性を確保でき、また、LC並列共振周波数の変動も同時に減らすことでフィルタ装置としての減衰特性を満たすことができる。
【0077】
第2インダクタL2は、第1インダクタL1に対して並列接続していることが好ましい。また、第2インダクタL2は、第1インダクタL1と磁気結合していることが好ましい。フィルタ装置200Aでは各導体パターンを2層ずつ並列接続した例を示したが、1層ずつの導体パターンでもよいし、3層以上を並列接続してもよい。
【0078】
図10では、Wi-Fi(登録商標)の5GHz帯の信号を通過し、第5世代でのn78(3.7GHz帯)やn79(4.5GHz帯)の信号を遮断するバンドパスフィルタとして機能するフィルタ装置200について説明した。以下の変形例では、Wi-Fi(登録商標)の2.4GHz帯の信号を通過し、GPS帯(1.1~1.6GHz)の信号を遮断するバンドパスフィルタとして機能するフィルタ装置について説明する。図12は、実施の形態2に係るフィルタ装置の別の変形例の構成を示す断面図である。図12に示すフィルタ装置200Bでは、Z方向にキャパシタC1、第1インダクタL1、第2インダクタL2の順で積層され、第1インダクタL1と第2インダクタL2とが磁気結合している。
【0079】
具体的に、第2インダクタL2は、絶縁体3の主面に対して平行に、3層の第2導体パターン2が積み重ね、各々の第2導体パターン2をビア導体30で電気的に接続している。第1インダクタL1は、絶縁体3の主面に対して平行に、4層の第1導体パターン1が積み重ね、各々の第1導体パターン1をビア導体30で電気的に接続されている。また、キャパシタC1は、第1インダクタL1の下層に複数の電極パターン5が絶縁層を介して積み重ねられている。
【0080】
図12に示すフィルタ装置200Bは、図10に示したフィルタ装置200に比べ低い周波数帯の信号を扱うため、キャパシタC1の大きくなる。キャパシタC1が大きくなると電極パターン5の面積が広くなり、当該電極パターン5が、天面側から平面視した場合、第1インダクタL1および第2インダクタL2の開口と半分超重なる。そこで、フィルタ装置200Bでは、第1インダクタL1とキャパシタC1との間に接続層Sを設けて、第1インダクタL1とキャパシタC1との積層方向の距離を確保している。たとえば、第1インダクタL1とキャパシタC1との積層方向の距離を、第1インダクタL1と第2インダクタL2との積層方向の距離より長くする。接続層Sは、複数の導電パターンS1とビア導体S2で構成されている。このように接続層Sを設けることで、第1インダクタL1や第2インダクタL2により発生する磁界が通りやすくなりインダクタンス値の低下やQ値の劣化を抑制することができる。なお、フィルタ装置200Bは、第1インダクタL1と第2インダクタL2との積層順が逆でもよい。また、接続層Sの構成は、他の実施の形態においても適用することができる。
【0081】
[変形例]
これまで説明したインダクタL、第1インダクタL1および第2インダクタL2の導電パターンの形状は、矩形状である。フィルタ装置を小型部品で実現する場合、絶縁体3の外枠いっぱいに導体パターンを形成して高いインダクタンス値を確保することができるため、矩形状の導体パターンを採用している。しかし、導電パターンの形状は、矩形状に限定されず、八角形などの多角形状、楕円などの曲線形状などであってもよい。
【0082】
図13は、変形例1に係るフィルタ装置100Cの構成を示す分解平面図である。フィルタ装置100Cは、1つのインダクタと1つのキャパシタとをZ方向に積層した直方体状のチップ部品である。フィルタ装置100Cは、図13に示すようにインダクタLの導体パターンおよびキャパシタCの電極パターンを形成した複数の絶縁基板3a~3dが積層された絶縁体3で構成される。なお、図13において、図3に示す分解平面図と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0083】
絶縁基板3aには、インダクタLの一部を構成する導体パターン1aが形成されている。導体パターン1aは、矩形状ではなく八角形である。キャパシタCと重なる導体パターン1aの一部は、外部電極4bが対向する絶縁体3の一辺(短辺)と平行となる部分を有している。そのため、図13に示すように、導体パターン1aの一部の方向Daと、絶縁基板3dの配線パターン51a,51bの配線方向Ddとは、略平行となっている。
【0084】
絶縁基板3bには、インダクタLの一部を構成する導体パターン1bが形成されている。導体パターン1bは、矩形状ではなく八角形である。キャパシタCと重なる導体パターン1bの一部は、外部電極4bが対向する絶縁体3の一辺(短辺)と平行となる部分を有している。そのため、図13に示すように、導体パターン1bの一部の方向Dbと、絶縁基板3dの配線パターン51a,51bの配線方向Ddとは、略平行となっている。
【0085】
次に、図14は、変形例2に係るフィルタ装置100Dの構成を示す分解平面図である。フィルタ装置100Dは、1つのインダクタと1つのキャパシタとをZ方向に積層した直方体状のチップ部品である。フィルタ装置100Dは、図14に示すようにインダクタLの導体パターンおよびキャパシタCの電極パターンを形成した複数の絶縁基板3a~3dが積層された絶縁体3で構成される。なお、図14において、図3に示す分解平面図と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0086】
絶縁基板3aには、インダクタLの一部を構成する導体パターン1aが形成されている。導体パターン1aは、矩形状ではなく六角形である。キャパシタCと重なる導体パターン1aの一部は、外部電極4bが対向する絶縁体3の一辺(短辺)と平行となる部分を有している。そのため、図14に示すように、導体パターン1aの一部の方向Daと、絶縁基板3dの配線パターン51a,51bの配線方向Ddとは、略平行となっている。
【0087】
絶縁基板3bには、インダクタLの一部を構成する導体パターン1bが形成されている。導体パターン1bは、矩形状ではなく六角形である。キャパシタCと重なる導体パターン1bの一部は、外部電極4bが対向する絶縁体3の一辺(短辺)と平行となる部分を有している。そのため、図14に示すように、導体パターン1bの一部の方向Dbと、絶縁基板3dの配線パターン51a,51bの配線方向Ddとは、略平行となっている。
【0088】
さらに、図15は、変形例3に係るフィルタ装置100Eの構成を示す分解平面図である。フィルタ装置100Eは、1つのインダクタと1つのキャパシタとをZ方向に積層した直方体状のチップ部品である。フィルタ装置100Eは、図14に示すようにインダクタLの導体パターンおよびキャパシタCの電極パターンを形成した複数の絶縁基板3a~3dが積層された絶縁体3で構成される。なお、図15において、図3に示す分解平面図と同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明を繰り返さない。
【0089】
絶縁基板3aには、インダクタLの一部を構成する導体パターン1aが形成されている。導体パターン1aは、矩形状ではなく楕円状である。キャパシタCと重なる導体パターン1aの一部は、外部電極4bが対向する絶縁体3の一辺(短辺)と平行となる部分を有している。そのため、図15に示すように、導体パターン1aの一部の方向Daと、絶縁基板3dの配線パターン51a,51bの配線方向Ddとは、略平行となっている。
【0090】
絶縁基板3bには、インダクタLの一部を構成する導体パターン1bが形成されている。導体パターン1bは、矩形状ではなく楕円状である。キャパシタCと重なる導体パターン1bの一部は、外部電極4bが対向する絶縁体3の一辺(短辺)と平行となる部分を有している。そのため、図15に示すように、導体パターン1bの一部の方向Dbと、絶縁基板3dの配線パターン51a,51bの配線方向Ddとは、略平行となっている。
【0091】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0092】
3 絶縁体、4a~4d 外部電極、10 回路基板、100,100A~E,200,200A フィルタ装置、C キャパシタ、L1 第1コイル、L2 第2コイル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15