(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-29
(45)【発行日】2025-10-07
(54)【発明の名称】電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 7/01 20060101AFI20250930BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20250930BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20250930BHJP
H01G 4/40 20060101ALI20250930BHJP
【FI】
H03H7/01 A
H01F27/00 S
H01F17/00 D
H01G4/40 321A
(21)【出願番号】P 2022127904
(22)【出願日】2022-08-10
【審査請求日】2024-02-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000201777
【氏名又は名称】双信電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】磯野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】江島 健
(72)【発明者】
【氏名】今井 嘉治
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-105901(JP,A)
【文献】特開2013-207551(JP,A)
【文献】特開2017-135636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/00- 7/13
H01F 27/00
H01F 17/00
H01G 4/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板と、
前記誘電体基板に備えられるとともに、信号を入力又は出力するための共通端子と、
前記誘電体基板内に形成されたインダクタと、
前記誘電体基板内に形成された第1フィルタと、
前記誘電体基板内に形成された第2フィルタと、
を備え、
前記第2フィルタの通過帯域の周波数は、前記第1フィルタの通過帯域の周波数より高く、
前記第1フィルタは、前記インダクタを介して前記共通端子に電気的に結合され、
前記インダクタは、第1部分インダクタと、前記第1部分インダクタに対して直列に接続された第2部分インダクタとを含み、
前記第2フィルタは、前記第2部分インダクタを介することなく、前記第1部分インダクタを介して前記共通端子に電気的に結合され、
前記インダクタは、前記第1フィルタと前記第2フィルタとのいずれとも別個に設けられており、
前記第1部分インダクタは、1つの前記インダクタの一部であり、
前記第2部分インダクタは、前記1つのインダクタの他の一部であ
り、
前記第1部分インダクタと前記第2部分インダクタとは、平面視において互いに重なり合っている、電子デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の電子デバイスにおいて、
前記誘電体基板は、第1誘電体層と、前記第1誘電体層上に形成されるとともに前記第1誘電体層よりも比誘電率が高い第2誘電体層と、前記第2誘電体層上に形成されるとともに前記第2誘電体層よりも比誘電率が低い第3誘電体層とを含み、
前記共通端子は、前記第1誘電体層の下面に備えられ、
前記インダクタは、前記第3誘電体層内に形成され、
前記第1誘電体層と前記第2誘電体層との境界にグラウンド層が備えられ、
前記第2フィルタは、前記第2誘電体層の一部から成る第1キャパシタ誘電体層を含む第1キャパシタと、前記第1部分インダクタと、前記第2誘電体層を貫くビア電極とを介して、前記共通端子に電気的に結合される、電子デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の電子デバイスにおいて、
前記誘電体基板内に形成された第3フィルタを更に備え、
前記第3フィルタの通過帯域の周波数は、前記第1フィルタの前記通過帯域の周波数より高く、且つ、前記第2フィルタの前記通過帯域の周波数より低く、
前記第3フィルタは、前記第2誘電体層の他の一部から成る第2キャパシタ誘電体層を含む第2キャパシタと、前記インダクタのうちの少なくとも一部と、前記ビア電極とを介して、前記共通端子に電気的に結合されている、電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
入力信号を周波数帯域が互いに異なる複数の信号に分離し得る電子デバイスが注目されている。このような電子デバイスは、分波器と称される。入力信号を3つの周波数帯域に分離し得る電子デバイスは、トリプレクサと称される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
より良好な電子デバイスが待望されている。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による電子デバイスは、誘電体基板と、前記誘電体基板に備えられるとともに、信号を入力又は出力するための共通端子と、前記誘電体基板内に形成されたインダクタと、前記誘電体基板内に形成された第1フィルタと、前記誘電体基板内に形成された第2フィルタと、を備え、前記第2フィルタの通過帯域の周波数は、前記第1フィルタの通過帯域の周波数より高く、前記第1フィルタは、前記インダクタを介して前記共通端子に電気的に結合され、前記インダクタは、第1部分インダクタと、前記第1部分インダクタに対して直列に接続された第2部分インダクタとを含み、前記第2フィルタは、前記第2部分インダクタを介することなく、前記第1部分インダクタを介して前記共通端子に電気的に結合される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より良好な電子デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態による電子デバイスを示す回路図である。
【
図2】
図2は、一実施形態による電子デバイスを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態による電子デバイスの一部を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、一実施形態による電子デバイスの一部を示す側面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態による電子デバイスを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、一実施形態による電子デバイスの評価結果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、参考例による電子デバイスを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[一実施形態]
一実施形態による電子デバイスについて図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態による電子デバイスを示す回路図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態による電子デバイス10には、複数のフィルタ12L、12M、12Hが備えられている。ここでは、電子デバイス10が分波器である場合を例に説明するが、これに限定されない。
【0011】
フィルタ12Lの通過帯域(通過周波数帯域)の周波数(通過帯域周波数)は、比較的低い。フィルタ12Hの通過帯域の周波数は、比較的高い。フィルタ12Mの通過帯域の周波数は、フィルタ12Lの通過帯域の周波数より高く、フィルタ12Hの通過帯域の周波数より低い。
【0012】
電子デバイス10には、インダクタ14が更に備えられている。インダクタ14は、部分インダクタ(第1部分インダクタ)14Aと、部分インダクタ(第2部分インダクタ)14Bとを含む。部分インダクタ14Bは、部分インダクタ14Aに対して直列に接続されている。
【0013】
フィルタ(ローバンドフィルタ)12Lの一端(入力ノード、入力端)は、インダクタ14を介して、共通端子(共通入力端子)16Aに電気的に結合されている。フィルタ12Lの他端(出力ノード、出力端)は、端子(出力端子)16Bに電気的に接続されている。
【0014】
フィルタ(ミドルバンドフィルタ)12Mの一端(入力ノード、入力端)は、インダクタ14を介して、共通端子16Aに電気的に結合されている。より具体的には、フィルタ12Mの一端は、キャパシタ20Aとインダクタ14とを介して、共通端子16Aに電気的に結合されている。フィルタ12Mの他端(出力ノード)は、端子(出力端子)16Cに電気的に接続されている。
【0015】
フィルタ(ハイバンドフィルタ)12Hの一端(入力ノード)は、部分インダクタ14Aを介して、共通端子16Aに電気的に結合されている。より具体的には、フィルタ12Hの一端は、キャパシタ20Bと部分インダクタ14Aとを介し、且つ、部分インダクタ14Bを介することなく、共通端子16Aに電気的に結合されている。フィルタ12Hの一端は、部分インダクタ14Aと部分インダクタ14Bとが互いに接続されている部位に、キャパシタ20Bを介して、電気的に結合されている。即ち、フィルタ12Hの一端は、接続ノード14aに、キャパシタ20Bを介して、電気的に結合されている。フィルタ12Hの他端(出力ノード)は、端子(出力端子)16Dに電気的に接続されている。
【0016】
部分インダクタ14Aの一端は、共通端子16Aに接続されている。部分インダクタ14Aの他端は、接続ノード14aにおいて、部分インダクタ14Bの一端に接続されている。部分インダクタ14Bの他端は、フィルタ12Lの一端に接続されているとともに、キャパシタ20Aの一端に接続されている。キャパシタ20Aの他端は、フィルタ12Mの一端に接続されている。キャパシタ20Bの一端は、接続ノード14aにおいて、部分インダクタ14Aに接続されている。キャパシタ20Bの他端は、フィルタ12Hの一端に接続されている。
【0017】
なお、ここでは、フィルタ12Mがインダクタ14を介して共通端子16Aに電気的に結合されている場合を例に説明するが、これに限定されるものではない。フィルタ12Mが、部分インダクタ14Bを介することなく、部分インダクタ14Aを介して、共通端子16Aに電気的に結合されていてもよい。即ち、フィルタ12Mが、インダクタ14の一部を介して、共通端子16Aに電気的に結合されてもよい。
【0018】
図2は、本実施形態による電子デバイスを示す斜視図である。
【0019】
図2に示すように、電子デバイス10には、誘電体基板24が備えられている。誘電体基板24は、例えば直方体状に形成されているが、これに限定されない。誘電体基板24は、複数のセラミックスシート(誘電体セラミックスシート)を積層することにより構成されている。
【0020】
誘電体基板24には、主面(第1主面、上面)24aと主面(第2主面、下面)24b(
図4参照)とが備えられている。主面24aと主面24bとは、互いに反対側に位置している。
【0021】
誘電体基板24内には、フィルタ12L、12M、12Hが形成されている。誘電体基板24内には、インダクタ(インダクタコイル)14が更に形成されている。
【0022】
誘電体基板24の主面24aには、遮蔽層54が形成されている。なお、誘電体基板24内に遮蔽層54が形成されていてもよい。
【0023】
図3は、本実施形態による電子デバイスの一部を示す斜視図である。
図3には、インダクタ14が示されている。
図4は、本実施形態による電子デバイスの一部を示す側面図である。
図4には、インダクタ14とキャパシタ20A、20Bとが示されている。
図3及び
図4では、説明の簡略化のため、一部の構成要素のみを示している。
【0024】
図3に示すように、インダクタ14は、複数の巻線パターン26a~26dと、複数のビア電極28a~28cとを組み合わせることによって構成されている。個々の巻線パターンを区別しないで説明する際には、符号26を用い、個々の巻線パターンを区別して説明する際には、符号26a~26dを用いる。個々のビア電極を区別しないで説明する際には、符号28を用い、個々のビア電極を区別して説明する際には、符号28a~28cを用いる。インダクタ14は、スパイラルインダクタとも称される。インダクタ14は、立体的に形成されている。
【0025】
図3に示すように、巻線パターン26aの一端は、ビア電極30の上端に接続されている。ビア電極30の下端は、導電パターン36(
図4参照)と、ビア電極38(
図4参照)とを介して、共通端子16Aに電気的に接続されている。即ち、巻線パターン26aの一端は、ビア電極30を介して共通端子16Aに電気的に接続されている。換言すれば、インダクタ14の一端は、ビア電極30を介して共通端子16Aに電気的に接続されている。ビア電極30は、後述する誘電体層24B(
図4参照)を貫いている。巻線パターン26aの他端は、ビア電極28aの上端に接続されている。ビア電極28aの下端は、巻線パターン26bの一端に接続されている。巻線パターン26bの他端は、ビア電極28bの上端に接続されている。ビア電極28bの下端は、巻線パターン26cの一端に接続されている。巻線パターン26cの他端は、ビア電極28cの上端に接続されている。ビア電極28cの下端は、巻線パターン26dの一端に接続されている。巻線パターン26dの他端は、ビア電極29の上端に接続されている。ビア電極29の下端は、導電パターン32を介して、フィルタ12L(
図2参照)に電気的に接続されている。
【0026】
図4に示すように、インダクタ14は、ビア電極42を介して、キャパシタ20Aに接続されている。キャパシタ20Aには、一対のキャパシタ電極20Aa、20Abが備えられている。キャパシタ電極20Aaとキャパシタ電極20Abとの間には、キャパシタ誘電体層20Acが備えられている。インダクタ14は、ビア電極42を介してキャパシタ電極20Aaに接続されている。キャパシタ電極20Abは、ビア電極44を介してフィルタ12Mに電気的に接続されている。
【0027】
上述した部分インダクタ14A(
図1参照)は、巻線パターン26aによって構成される。上述した部分インダクタ14B(
図1参照)は、巻線パターン26b~26dとビア電極28b、28cとによって構成される。部分インダクタ14Aと部分インダクタ14Bとは、ビア電極28aによって互いに接続されている。即ち、部分インダクタ14Aと部分インダクタ14Bとは、接続ノード14aにおいて互いに接続されている。ビア電極28aは、上述した接続ノード14a(
図1参照)の一部を構成する。
図3に示す例においては、導電パターン34が巻線パターン26bの一端に接続されているが、これに限定されない。巻線パターン26のうちの端部以外の部位が導電パターン34に接続されていてもよい。また、ビア電極28のうちの上部と下部とを除く部位が導電パターン34に接続されていてもよい。
【0028】
図4に示すように、接続ノード14aは、導電パターン34と、ビア電極40と、導電パターン46と、ビア電極48とを介して、キャパシタ20Bに電気的に接続されている。キャパシタ20Bには、一対のキャパシタ電極20Ba、20Bbが備えられている。接続ノード14aは、導電パターン34と、ビア電極40と、導電パターン46と、ビア電極48とを介して、キャパシタ電極20Baに電気的に接続されている。キャパシタ電極20Baとキャパシタ電極20Bbとの間には、キャパシタ誘電体層20Bcが備えられている。キャパシタ電極20Bbは、ビア電極50を介して、フィルタ12H(
図2参照)に電気的に接続されている。
【0029】
図4に示すように、誘電体基板24は、誘電体層(第1誘電体層)24Aと、誘電体層(第2誘電体層)24Bと、誘電体層(第3誘電体層)24Cとを含む。誘電体層24Bは、誘電体層24A上に位置している。誘電体層24Bの比誘電率は、誘電体層24Aの比誘電率より高い。誘電体層24Cは、誘電体層24B上に位置している。誘電体層24Cの比誘電率は、誘電体層24Bの比誘電率より低い。
【0030】
インダクタ14は、誘電体層24C内に形成されている。誘電体層24Cの比誘電率が比較的低いため、良好な特性のインダクタ14が得られる。
【0031】
誘電体基板24内には、グラウンド層52が備えられている。グラウンド層52は、誘電体層24Aと誘電体層24Bとの境界に備えられている。
【0032】
キャパシタ20Aは、グラウンド層52の上方に位置している。キャパシタ20Aに備えられたキャパシタ電極20Abは、誘電体層24B内に位置している。キャパシタ20Aに備えられたキャパシタ電極20Aaは、誘電体層24A上に形成されている。より具体的には、キャパシタ20Aに備えられたキャパシタ電極20Aaは、誘電体層24Bと誘電体層24Cとの境界に位置している。
【0033】
キャパシタ20Aに備えられたキャパシタ誘電体層20Acは、誘電体層24Bの一部によって構成されている。キャパシタ誘電体層20Acを誘電体層24Bの一部によって構成しているのは、充分な静電容量のキャパシタ20Aを得るためである。即ち、誘電体層24Bの比誘電率が比較的高いため、充分な静電容量のキャパシタ20Aが得られる。
【0034】
キャパシタ20Bは、グラウンド層52の上方に位置している。キャパシタ20Bに備えられたキャパシタ電極20Bbは、誘電体層24B内に位置している。キャパシタ20Bに備えられたキャパシタ電極20Baは、誘電体層24B上に備えられている。より具体的には、キャパシタ20Bに備えられたキャパシタ電極20Baは、誘電体層24Bと誘電体層24Cとの境界に位置している。
【0035】
キャパシタ20Bに備えられたキャパシタ誘電体層20Bcは、誘電体層24Bの一部によって構成されている。キャパシタ誘電体層20Bcを誘電体層24Bの一部によって構成しているのは、充分な静電容量のキャパシタ20Bを得るためである。即ち、誘電体層24Bの比誘電率が比較的高いため、充分な静電容量のキャパシタ20Bが得られる。
【0036】
図5は、本実施形態による電子デバイスの一部を示す斜視図である。斜め下方から電子デバイス10を見た状態が
図5には示されている。
【0037】
図5に示すように、誘電体層24A(
図4参照)の下面には、共通端子16Aと、端子16B~16Dとが備えられている。また、誘電体層24Aの下面には、端子(接地電極)16E~16Hが更に備えられている。端子16E~16Hは、グラウンド層52に電気的に接続されている。
【0038】
共通端子16Aは、上述したようにビア電極30に電気的に接続されている。ビア電極30のうちの誘電体層24Bを貫いている部分と、グラウンド層52との間には、誘電体層24Bが存在する。誘電体層24Bの比誘電率は、比較的高い。このため、共通端子16Aには、ある程度の寄生容量22(
図1参照)が生ずる。
【0039】
本実施形態による電子デバイスの評価結果について
図6を用いて説明する。
【0040】
図6は、本実施形態による電子デバイスの評価結果を示すグラフである。
図6における横軸は、周波数を示している。
図6における縦軸は、挿入損失を示している。
図6における実線の特性は、本実施形態の場合を示している。
図6における破線は、参考例の場合を示している。
図7は、参考例による電子デバイスを示す回路図である。
図7に示すように、参考例では、フィルタ12Mがインダクタ14を介することなく、共通端子16Aに電気的に結合されている。また、
図7に示すように、参考例では、フィルタ12Hが部分インダクタ14Aを介することなく、共通端子16Aに電気的に結合されている。
【0041】
図6から分かるように、参考例においては、フィルタ12Hを含む経路における挿入損失が比較的大きくなる。即ち、参考例においては、共通端子16Aから端子16Dに至る経路における挿入損失が比較的大きくなる。また、参考例においては、フィルタ12Mを含む経路における挿入損失が比較的大きくなる。即ち、参考例においては、共通端子16Aから端子16Cに至る経路における挿入損失が比較的大きくなる。
【0042】
これに対し、本実施形態においては、フィルタ12Hを含む経路における挿入損失を抑制し得る。即ち、本実施形態においては、共通端子16Aから端子16Dに至る経路における挿入損失を抑制し得る。また、本実施形態においては、フィルタ12Mを含む経路における挿入損失を抑制し得る。即ち、本実施形態においては、共通端子16Aから端子16Cに至る経路における挿入損失を抑制し得る。
【0043】
このように、本実施形態によれば、フィルタ12Hが、部分インダクタ14Aを介して、共通端子16Aに電気的に結合される。このため、本実施形態によれば、共通端子16Aに生ずる寄生容量22がフィルタ12Hに与える影響を抑制することができる。しかも、本実施形態によれば、部分インダクタ14Bを介することなく、部分インダクタ14Aを介して、フィルタ12Hが共通端子16Aに電気的に結合される。このため、本実施形態によれば、フィルタ12Hと共通端子16Aとの間において適度なインダクタンスが得られる。フィルタ12Hと共通端子16Aとの間のインダクタンスが適度であるため、フィルタ12Hの特性は劣化しない。しかも、本実施形態によれば、部分インダクタ14Aは、インダクタ14の一部であるため、インダクタ14と別個のインダクタを形成することを要しない。本実施形態によれば、小型化の要請を満たしつつ、特性の良好な電子デバイスを提供し得る。このように、本実施形態によれば、より良好な電子デバイスを提供することが可能となる。
【0044】
[変形実施形態]
本発明は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を取り得る。
【0045】
例えば、上記実施形態では、電子デバイス10が分波器である場合を例に説明したが、これに限定されない。電子デバイス10が合波器(マルチプレクサ)であってもよい。この場合には、端子(入力端子)16B~16Dに信号が入力され、共通端子(共通出力端子)16Aから信号が出力される。
【0046】
上記実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0047】
(付記1)
電子デバイス(10)は、誘電体基板(24)と、前記誘電体基板に備えられるとともに、信号を入力又は出力するための共通端子(16A)と、前記誘電体基板内に形成されたインダクタ(14)と、前記誘電体基板内に形成された第1フィルタ(12L)と、前記誘電体基板内に形成された第2フィルタ(12H)と、を備え、前記第2フィルタの通過帯域の周波数は、前記第1フィルタの通過帯域の周波数より高く、前記第1フィルタは、前記インダクタを介して前記共通端子に電気的に結合され、前記インダクタは、第1部分インダクタ(14A)と、前記第1部分インダクタに対して直列に接続された第2部分インダクタ(14B)とを含み、前記第2フィルタは、前記第2部分インダクタを介することなく、前記第1部分インダクタを介して前記共通端子に電気的に結合される。このような構成によれば、第2フィルタが、第1部分インダクタを介して、共通端子に電気的に結合される。このため、このような構成によれば、共通端子に生ずる寄生容量が第2フィルタに与える影響を抑制し得る。しかも、このような構成によれば、第2部分インダクタを介することなく、第1部分インダクタを介して第2フィルタが共通端子に電気的に結合されるため、第2フィルタと共通端子との間において適度なインダクタンスが得られる。第2フィルタと共通端子との間のインダクタンスが適度であるため、第2フィルタの特性は劣化しない。しかも、このような構成によれば、第1部分インダクタは、インダクタの一部であるため、インダクタと別個のインダクタを形成することを要しない。このような構成によれば、小型化の要請を満たしつつ、特性の良好な電子デバイスを提供し得る。このような構成によれば、より良好な電子デバイスを提供することが可能となる。
【0048】
(付記2)
付記1に記載の電子デバイスにおいて、前記誘電体基板は、第1誘電体層(24A)と、前記第1誘電体層上に形成されるとともに前記第1誘電体層よりも比誘電率が高い第2誘電体層(24B)と、前記第2誘電体層上に形成されるとともに前記第2誘電体層よりも比誘電率が低い第3誘電体層(24C)とを含み、前記共通端子は、前記第1誘電体層の下面に備えられ、前記インダクタは、前記第3誘電体層内に形成され、前記第1誘電体層と前記第2誘電体層との境界にグラウンド層(52)が備えられ、前記第2フィルタは、前記第2誘電体層の一部から成る第1キャパシタ誘電体層(20Bc)を含む第1キャパシタ(20B)と、前記第1部分インダクタと、前記第2誘電体層を貫くビア電極(30)とを介して、前記共通端子に電気的に結合されてもよい。このような構成では、ビア電極とグラウンド層との間に比較的大きい寄生容量が生じ得るが、第2フィルタが第1部分インダクタを介して共通端子に電気的に結合されているため、かかる寄生容量が第2フィルタに及ぼす影響は充分に抑制され得る。
【0049】
(付記3)
付記2に記載の電子デバイスにおいて、前記誘電体基板内に形成された第3フィルタ(12M)を更に備え、前記第3フィルタの通過帯域の周波数は、前記第1フィルタの前記通過帯域の周波数より高く、且つ、前記第2フィルタの前記通過帯域の周波数より低く、前記第3フィルタは、前記第2誘電体層の他の一部から成る第2キャパシタ誘電体層(20Ac)を含む第2キャパシタ(20A)と、前記インダクタのうちの少なくとも一部と、前記ビア電極とを介して、前記共通端子に電気的に結合されてもよい。
【0050】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0051】
10:電子デバイス 12H、12L、12M:フィルタ
14:インダクタ 14A、14B:部分インダクタ
14a:接続ノード 16A~16H:共通端子
20A、20B:キャパシタ
20Aa、20Ab、20Ba、20Bb:キャパシタ電極
20Ac、20Bc:キャパシタ誘電体層
22:寄生容量 24:誘電体基板
24A~24C:誘電体層 24a、24b:主面
26a、26b、26c、26d:巻線パターン
28a~28c、29、30、38、40、42、44、48、50:ビア電極
32、34、36、46:導電パターン
52:グラウンド層 54:遮蔽層