(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-09-30
(45)【発行日】2025-10-08
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62M 7/02 20060101AFI20251001BHJP
B62K 11/10 20060101ALI20251001BHJP
B62J 45/41 20200101ALI20251001BHJP
B62J 45/42 20200101ALI20251001BHJP
B62J 11/19 20200101ALI20251001BHJP
F01N 13/00 20100101ALI20251001BHJP
F01N 1/00 20060101ALI20251001BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20251001BHJP
F01P 7/02 20060101ALI20251001BHJP
F02B 61/02 20060101ALI20251001BHJP
F01N 13/08 20100101ALN20251001BHJP
【FI】
B62M7/02 F
B62K11/10
B62J45/41
B62J45/42
B62J11/19
F01N13/00 A
F01N1/00 D
F01N3/24 K
F01P7/02 Z
F02B61/02 C
F01N13/08 G
(21)【出願番号】P 2024511709
(86)(22)【出願日】2023-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2023009714
(87)【国際公開番号】W WO2023189504
(87)【国際公開日】2023-10-05
【審査請求日】2024-08-20
(31)【優先権主張番号】P 2022060511
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169111
【氏名又は名称】神澤 淳子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中村 訓
(72)【発明者】
【氏名】上家 康平
(72)【発明者】
【氏名】牧 理
(72)【発明者】
【氏名】松浦 利樹
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-150307(JP,A)
【文献】特開2019-138222(JP,A)
【文献】特開2019-137238(JP,A)
【文献】特開2006-250129(JP,A)
【文献】特開2004-9769(JP,A)
【文献】特開2017-150308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 7/02,
B62J 11/19,45/41,45/42,
B62K 11/00,
F01M 11/03,
F01N 1/00, 3/24,13/00,
F01P 7/02,
F02B 61/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(F)と、シリンダ軸線(C)を前方に向けて配置されるシリンダ部(23)と、クランクケース(22)と、クランク軸(21)とを有し、前記車体フレーム(F)にリンク部材(11)を介して揺動可能に支持されるユニットスイングエンジン(P)と、
前記ユニットスイングエンジン(P)に接続され、排気管(51)および該排気管(51)の途中に配置される触媒装置(53)を具備した排気装置(50)と、を備える鞍乗型車両において、
前記排気管(51)は、前記ユニットスイングエンジン(P)から下方に延出され、
前記排気管(51)は、内部に前記触媒装置(53)を収容する触媒装置収容排気管(100)と、前記触媒装置収容排気管(100)の上流側に接続された上流側排気管(80)と、前記触媒装置収容排気管(100)の下流側に接続された下流側排気管(90)とを備え、
前記下流側排気管(90)に、下流側排気ガスセンサ(S1)が配設され、
前記触媒装置(53)より上流側に、上流側排気ガスセンサ(S2)が配設され、
前記下流側排気ガスセンサ(S1)および前記触媒装置収容排気管(100)は、車体側面視において、少なくとも一部が前記ユニットスイングエンジン(P)の下方であって、前記排気管(51)の端が接続される前記ユニットスイングエンジン(P)の排気管接続部(24c)と、前記リンク部材(11)を前記車体フレーム(F)に連結するリンク部材連結部(13)とを結ぶ仮想線(L1)よりも車両前後方向における後方に位置しており、
前記下流側排気ガスセンサ(S1)および前記上流側排気ガスセンサ(S2)は、電装ケーブル(111,112)によって電子制御ユニット(15,16)と接続しており、
前記下流側排気ガスセンサ(S1)と前記上流側排気ガスセンサ(S2)とは、車幅方向において車体中心線に対して同じ側の車幅方向外側にオフセットするように配置され、
前記ユニットスイングエンジン(P)は、前記シリンダ部(23)に重ねられるシリンダヘッド(24)を有し、
前記シリンダ部(23)または前記シリンダヘッド(24)の車両側面の少なくとも一部が、樹脂製部材(70)により覆われ、
前記樹脂製部材(70)は、前記電装ケーブル(111,112)の少なくとも1つを固定するケーブル固定部(70b,71c,71d,72d)を有し、
前記樹脂製部材(70)は複数の分割体(71,72)が接合されて構成され、
一の分割体(71)は、他のいずれかの分割体(72)に挿入されて接合する接合部(71c)を有し、
前記電装ケーブル(111,112)のうち少なくとも1つは、前記接合部(71c)により固定されることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項4】
前記クランク軸(21)のクランク回転中心(CL)と同じ回転中心であるファン(56)と、該ファン(56)を覆うファンカバー(57)を備え、
前記ファンカバー(57)は、車両側面視において、回転中心より後方に排風口(57f)を備え、
前記下流側排気ガスセンサ(S1)は、車両側面視において、前記ファン(56)の回転中心に対して前方かつ下方に配設されることを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はユニットスイングエンジンを搭載した鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鞍乗型車両として、ユニットスイングエンジンを搭載され、ユニットスイングエンジンの内燃機関に接続される排気管の途中に触媒装置が配設され、排気管のうち触媒装置よりも上流側と、触媒装置よりも下流側の下流側排気管に排気ガスセンサが設けられているものが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の鞍乗型車両では、触媒装置よりも上流側に設けられる排気ガスセンサと、触媒装置よりも下流側の下流側排気管に設けられる排気ガスセンサとは、ともに車幅方向におい車両中心のそれぞれ異なる側に設けられており、さらに車両の前後方向において離れた位置に配置されているので、排気ガスセンサからECUに延びる電装ケーブルが長くなるととともに、電装ケーブルの配線がコンパクトでないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、車体フレームと、シリンダ軸線を前方に向けて配置されるシリンダ部と、クランクケースと、クランク軸とを有し、前記車体フレームにリンク部材を介して揺動可能に支持されるユニットスイングエンジンと、
前記ユニットスイングエンジンに接続され、排気管および該排気管の途中に配置される触媒装置を具備した排気装置と、を備える鞍乗型車両において、
前記排気管は、前記ユニットスイングエンジンから下方に延出され、
前記排気管は、内部に前記触媒装置を収容する触媒装置収容排気管と、前記触媒装置収容排気管の上流側に接続された上流側排気管と、前記触媒装置収容排気管の下流側に接続された下流側排気管とを備え、
前記下流側排気管に、下流側排気ガスセンサが配設され、
前記触媒装置より上流側に、上流側排気ガスセンサが配設され、
前記下流側排気ガスセンサおよび前記触媒装置収容排気管は、車体側面視において、少なくとも一部が前記ユニットスイングエンジンの下方であって、前記排気管の端が接続される前記ユニットスイングエンジンの排気管接続部と、前記リンク部材を前記車体フレームに連結するリンク部材連結部とを結ぶ仮想線よりも車両前後方向における後方に位置しており、
前記下流側排気ガスセンサおよび前記上流側排気ガスセンサは、電装ケーブルによって電子制御ユニットと接続しており、
前記下流側排気ガスセンサと前記上流側排気ガスセンサとは、車幅方向において車体中心線に対して同じ側の車幅方向外側にオフセットするように配置されることを特徴とする鞍乗型車両である。
【0006】
前記構成によれば、上流側排気ガスセンサや下流側排気ガスセンサから電子制御ユニットに延びる電装ケーブルを短くするととともに、電装ケーブルの配線をコンパクトにすることができる。
【0007】
さらに本発明は、前記触媒装置は、長手方向を車幅方向に向けて配置されることを特徴とする。
【0008】
前記構成によれば、触媒装置の長手方向を車幅方向に向けて配置することで、ユニットスイングエンジンのシリンダ部とクランクケースの下方に空いている空間を利用することが可能となり、触媒装置をコンパクトに配置することができる。
【0009】
また本発明は、前記下流側排気ガスセンサと前記上流側排気ガスセンサとは、車両側面視で前記触媒装置を挟み込むように配置されることを特徴とする。
【0010】
前記構成によれば、車両側面視において、下流側排気ガスセンサと上流側排気ガスセンサとで触媒装置を挟み込むように配置されているので、下流側排気ガスセンサと上流側排気ガスセンサどうしを近づけて配置することが可能となり、排気ガスセンサから延びる電装ケーブルを短くすることができる。
【0011】
さらにまた、本発明は、前記クランク軸のクランク回転中心と同じ回転中心であるファンと、該ファンを覆うファンカバーを備え、
前記ファンカバーは、車両側面視において、回転中心より後方に排風口を備え、
前記下流側排気ガスセンサは、車両側面視において、前記ファンの回転中心に対して前方かつ下方に配設されることを特徴とする。
【0012】
前記構成によれば、ファンからの排出風が、下流側排気ガスセンサに当たることを回避でき、下流側排気ガスセンサの温度低下を防ぐことができる。
【0013】
また本発明は、前記ユニットスイングエンジンは、前記シリンダ部に重ねられるシリンダヘッドを有し、
前記シリンダ部または前記シリンダヘッドの車両側面の少なくとも一部が、樹脂製部材により覆われ、
前記樹脂製部材は、前記電装ケーブルの少なくとも1つを固定するケーブル固定部を有することを特徴とする。
【0014】
前記構成によれば、樹脂製部材に設けられたケーブル固定部に電装ケーブルを固定することにより、電装ケーブルのたわみを防いで電装ケーブルの配策をコンパクトにすることができる。
【0015】
さらに本発明は、前記樹脂製部材は複数の分割体が接合されて構成され、
一の分割体は、他のいずれかの分割体に挿入されて接合する接合部を有し、
前記電装ケーブルのうち少なくとも1つは、前記接合部により固定されることを特徴とする。
【0016】
前記構成によれば、分割体の接合部を活用することで、別体のケーブル固定部を設ける必要が無く、部品点数を削減しコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、触媒装置よりも上流側に設けられる排気ガスセンサと、触媒装置よりも下流側の下流側排気管に設けられる排気ガスセンサとを備えた鞍乗型車両において、排気ガスセンサからECUに延びる電装ケーブルを短くするとともに、電装ケーブルの配線をコンパクトなものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る鞍乗型車両としての自動二輪車の全体左側面図である。
【
図3】
図1のパワーユニット、吸気構装置および排気装置の左側面図である。
【
図6】パワーユニットの内燃機関のクランク軸に沿って切断した一部断面図である。
【
図7】
図2の車両において、車体フレームに内燃機関が懸架された状態を示す要部拡大左側面図である。
【
図8】カバーを取り外した車両を前方から視た要部前面図である。
【
図10】シュラウドにおける接合部周辺の要部斜視図である。
【
図11】第一分割体と第二分割体を分解した状態の要部斜視図である。
【
図12】排気ガスセンサの他の取り付け位置を示した図である。
【
図13】排気ガスセンサのさらに他の取り付け位置を示した図である。
【
図14】排気ガスセンサのまたさらに他の取り付け位置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る鞍乗型車両の一実施の形態について、
図1ないし
図11に基づいて説明する。本実施の形態の鞍乗型車両はスクータ型の自動二輪車1であり、その左側面図を
図1に示す。
なお、本明細書の説明において、前後左右および上下の向きは、本実施の形態に係る自動二輪車1の直進方向を前方とする通常の基準に従うものとし、図面において、FRは前方を,REは後方を、LHは左方を,RHは右方を、UPは上方を、DWは下方を示すものとする。
【0020】
図1に示されるように、自動二輪車1は、車体前部1Fと車体後部1Rとが、低いフロア部1Cを介して連結されており、車体の骨格をなす車体フレームFは、概ねダウンフレーム部材3とメインフレーム部材4とからなる。
すなわち車体前部1Fのヘッドパイプ2からダウンフレーム部材3が下方へ延出し、同ダウンフレーム部材3は下端で水平に屈曲してフロア部1Cの下方を後方へ延び、その後端において左右一対のメインフレーム部材4が連結され、メインフレーム部材4は該連結部から後方斜め上に延びた傾斜部4aを形成し、傾斜部4aの上部がさらに屈曲して後方に略水平に延びた水平部4bを形成している。
【0021】
一対のメインフレーム部材4の間には、前方に収納ボックス5が支持され、後方に図視されない燃料タンクが支持されており、収納ボックス5と燃料タンクの上方はシート7が覆っている。車体前部1Fにおいては、ヘッドパイプ2に軸支されて上方にハンドル8が設けられ、下方にフロントフォーク9が延びてその下端に前輪10が軸支されている。
【0022】
車体前部1Fでは、ヘッドパイプ2およびダウンフレーム部材3の上下指向部がフロントカバー1aとレッグシールド1bにより前後から覆われ、フロア部1Cは、ダウンフレーム部材3の前後指向部がロアサイドカバー1cにより覆われ、車体後部1Rは、メインフレーム部材4がボデイカバー1dにより左右および後方が覆われる。
【0023】
自動二輪車1には、メインフレーム部材4の下方に位置しユニットスイングエンジンとしてのパワーユニットPが搭載されている。パワーユニットPには、
図3に示されるように、その前部に単気筒4ストローク空冷式の内燃機関20が配置され、後部にはベルト式無段変速機60が配置されている。
【0024】
パワーユニットPは、
図7に示されるように、そのクランクケース22の上部から前方に突出して左右一対のエンジンハンガー22hが設けられている。メインフレーム部材4の後方にはリンク部材11が突設されており、エンジンハンガー22hの端部がリンク部材11にピボット軸12を介して連結されて、パワーユニットPが車体フレームFに揺動可能に連結支持される。
【0025】
図3に示されるように、内燃機関20は、クランクケース22からシリンダブロック23,シリンダヘッド24,ヘッドカバー25順次重ね合わされて略水平に近い状態にまで大きく前傾した姿勢で前方に突出させて設けられている。クランクケース22には、
図6に示されるように、クランク軸21が車幅方向に指向させて回転自在に支承されている。
【0026】
図3に示されるように、シリンダヘッド24の上面側に吸気ポート24aが形成され、該吸気ポート24aから吸気管としてのインレットパイプ31が上方に延出している。シリンダヘッド24の下面側に排気ポート24bが形成され、該排気ポート24bから排気管51が下方に延出する。
【0027】
また、シリンダヘッド24には、
図3に示されるように、点火プラグ26が中央のヘッドカバー25寄りに嵌挿されている。さらに、
図2に示されるように、排気ガス中の酸素濃度を検出する上流側排気ガスセンサS2が、右側方からシリンダヘッド24の右側面に嵌挿されている。上流側排気ガスセンサS2は、その先端が排気ポート24bに臨むように、シリンダヘッド24に取り付けられる。上流側排気ガスセンサS2は、LAFセンサまたはO2センサである。上流側排気ガスセンサS2からは電装ケーブル112が延出しており、電装ケーブル112は車体に配策されて後述するECU15,16のいずれか又は両方に接続する。
【0028】
図6を参照して、クランクケース22は、左右割りで、左クランクケース部22Lと右クランクケース部22Rからなり、車幅方向に指向したクランク軸21を左クランクケース部22Lと右クランクケース部22Rがそれぞれ主軸受21b,21bを介して回転自在に軸支している。
【0029】
クランク軸21の右側軸部にACジュエネレータ55が設けられ、ACジュエネレータ55のアウタローター55rに遠心冷却ファン56が一体に取り付けられている。ファン56はクランク軸21と同軸上に設けられているので、ファン56の回転中心はクランク軸21のクランク回転中心CLと同じである。
【0030】
右クランクケース部22Rを右側から覆うファンカバー57が、遠心冷却ファン56を内部に収容する。
図2も参照して、ファンカバー57には、遠心冷却ファン56に対向して外気導入口であるグリル57gが形成されている。
図2に示されるように、ファンカバー57には、グリル57g取り囲む外淵57eの後斜め下方の領域に、メッシュ状の排風口57fが形成されており、グリル57gから導入された外気は、遠心冷却ファン56の回転力により、排風口57fからファンカバー57の外部に排出される。
【0031】
図2および
図6に示されるように、シリンダブロック23およびシリンダヘッド24の右側面を覆うように樹脂製部材で構成されるシュラウド70が囲繞し、シュラウド70は右側においてファンカバー57に連結される。
【0032】
図6に示されるように、左クランクケース部22Lは、後方に延出して伝動ケース部を兼ね、同伝動ケース部(左クランクケース部)22Lを左側から伝動ケースカバー65が覆い、内部にはベルト式無段変速機60が配設される。クランク軸21の左側軸部には、主軸受21bに隣接して駆動チェーンスプロケット58が設けられ、左側軸端部には、ベルト式無段変速機60の駆動プーリ61が設けられている。駆動チェーンスプロケット58に巻き掛けられるカムチェーン59によりシリンダヘッド24側の動弁機構に動力が伝達される。
【0033】
図1および
図3を参照して、ベルト式無段変速機60の後部に設けられた減速機構64の減速機出力軸が後車軸28aであり、後車軸28aに後輪28が設けられている。伝動ケース部22Lの減速機構64を収容する後部の上端と前記メインフレーム部材4の上部屈曲部間にリヤクッション(不図示)が介装されている。
【0034】
図3に示されるように、減速機構64の減速機入力軸64aに、ベルト式無段変速機60の被動プーリ63が軸支されており、クランク軸21に設けられる駆動プーリ61と減速機入力軸64aに設けられる被動プーリ63とにベルト62が巻き掛けられて、内燃機関20の動力がベルト62を介して被動プーリ63に伝達され、被動プーリ63の回転は遠心クラッチ(不図示)を介して減速機構64の減速機入力軸64aに伝達され、減速機構64で減速されて後輪28に動力伝達される。
図6に示されるように、駆動プーリ61の左側のプーリ半体には外気吸入ファン61Fが形成されている。
【0035】
図7に示されるように、車体上部の右側方に位置して、2つの電子制御ユニット(以下ECUと表す)15,16が設けられており、これらは車体フレームFのメインフレーム部材4に支持されている。車両の各所に設けられた各種センサの検出信号はECU15,16に入力され、ECU15,16はこれらの情報に基づき演算処理を行い、各種制御信号を各駆動装置に出力して最適制御を行う。
【0036】
図2に示されるように、クランクケース22の下方に位置して車両側面方向に向かって取り出しされるオイルフィルター66が配設されており、該オイルフィルター66により内燃機関20の各所に供給するオイルがろ過される。
【0037】
図1を参照して、内燃機関20の吸気ポート24aには、外気を吸入して内燃機関20に送る吸気装置30が接続されている。
図4も参照して、吸気装置30は、外気を取入れて浄化するエアクリーナ装置40と、エアクリーナ装置40に連結されるコネクティングチューブ36と、コネクティングチューブ36の下流側に連結されるスロットルボディ33と、内部にバタフライ式のスロットル弁(不図示)が設けられたスロットルボディ33の上流側に接続されるインレットパイプ31と、を備えており、これらにより吸気系が構成される。
図3に示されるように、吸気ポート24aとおよびインレットパイプ31に、吸気通路内に燃料を噴射する燃料噴射弁37が設けられている。
【0038】
吸気装置30についてさらに説明する。吸気装置30のエアクリーナ装置40は、
図4に示されるように、左右の未浄化室ケース42と浄化室ケース43が合体したエアクリーナケース41が、未浄化室ケース42と浄化室ケース43の間に配設されエアクリーナエレメント44が設けられている仕切部45により、エアクリーナエレメント44が未浄化室ケース42側の未浄化室Caと浄化室ケース43側の浄化室Cbとに仕切られている。
【0039】
図3に示されるように未浄化室ケース42には、走行風などが取り込まれる空気導入管47が、その開口部47aが前方を向くように配設されている。開口部45aから導入された吸気は、未浄化室Ca内からエアクリーナエレメント44を通過して浄化され、浄化室Cbに送られる。エアクリーナ装置40の浄化室Cbは、ゴム製の弾性変形可能なコネクティングチューブ36によりスロットルボディ33と連通されている。
【0040】
図1に示されるように、シリンダヘッド24の排気ポート24bの下流端には、排気装置50が接続されている。
図5を参照して、シリンダヘッド24の下面には、排気装置50の上流が接続される排気管接続部24cが設けられている。排気装置50は、内燃機関20の排気ポート24bに接続され排気を排出する排気管51と、該排気管51の途中の内部に配設され排気ガスを浄化する触媒装置53と、排気管51の下流に接続されるマフラー52を備えているおり、これらにより排気系が構成される。
【0041】
図2および
図5を参照して、排気管51は、排気ポート24bに連通してシリンダヘッド24の下面から下方に延出した後、左側斜前方に屈曲し、さらに後方に向けて湾曲してから右方へ屈曲し、クランクケース22の下部を左側から右側へと向かい、さらに後方向かって屈曲した後、後方へ延びて後輪28の右側に配設されるマフラー52に連結されている。排気管51の途中には、触媒装置53が設けられており、排気管51は、触媒装置53が収容される触媒装置収容排気管100と、触媒装置収容排気管100の上流側に接続される上流側排気管80と、触媒装置収容排気管100の下流側に接続される下流側排気管90とで構成されている。
【0042】
図9には、排気管51の要部が図示されている。
排気管51の上流側排気管80は、シリンダヘッド24の排気管接続部24cから下方に伸びる垂直部80aと、触媒装置53の前方をクランクケース割面に対し他側に延びる側方延出部80bと、側方延出部80bの下流端から後方且つクランクケース割面に対し一側に湾曲しU字状に折り返す湾曲部80cを備え、湾曲部80cの下流端は、触媒装置収容排気管100に接続される。本実施の形態の上流側排気管80は、上流側の第一排気管81と下流側の第二排気管82とから構成された分割体が合わさったものであるが、分割体でなく一体型でもよい。
【0043】
上流側排気管80の上流端には、内燃機関20の排気管接続部24cに取り付けられるフランジ部80dが固着されている。フランジ部80dには一対のボルト挿通孔80eが設けられており、
図5に示されるように、シリンダヘッド24の排気管接続部24cにボルト69によって固定される。
【0044】
触媒装置収容排気管100の内部には触媒装置53が収容されており、触媒装置53の長手方向が車幅方向に指向するように車両に搭載されている。触媒装置53は、その軸線方向に沿って延びる多数の細孔を有するハニカム状の多孔構造体であり、排気ガス成分を分解する触媒として、例えば、白金、ロジウム及びパラジウムが担持されている。
【0045】
図5および
図9を参照して、下流側排気管90は、触媒装置収容排気管100から延長するように右側方に延びた後、後方に向かうように湾曲するよう形成されている。下流側排気管90はさらに後方に向かって延伸され、その下流端がマフラー52に接続されている。本実施の形態の下流側排気管90は1つの部材で構成されているが、途中で分割される構造であってもよい。下流側排気管90は、
図5に示されるように、一部が車体フレームFの延長線上に位置するとともに、クランクケース22よりも車幅方向外側に位置するよう配設されている。
【0046】
内燃機関20から排出される排気ガスは、排気ポート24bから上流側排気管80を通過し、触媒装置収容排気管100内の触媒装置53を通って浄化され、その後、下流側排気管90、マフラー52を通り、マフラー52の大気開放口52aから外気に排出される。
【0047】
図2に示されるように、排気管51の下流側排気管90には、触媒装置53を通過した後の排気ガス中の酸素濃度等を検知する下流側排気ガスセンサS1が設けられている。下流側排気ガスセンサS1は、LAFセンサまたはO
2センサである。下流側排気ガスセンサS1は、下流側排気管90の上面から排気管51内に差し込まれるように取り付けられる。
図7に示されるように、下流側排気ガスセンサS1からは電装ケーブル111が延出しており、電装ケーブル111は車体に配策されてECU15,16のいずれか又は両方に接続する。
【0048】
図7に示されるように、車両側面視において、下流側排気ガスセンサS1および触媒装置収容排気管100は、少なくともその一部が、パワーユニットPの本体から下方になるように配置されている。
【0049】
図7に示されるように下流側排気ガスセンサS1と触媒装置53は、その一部が仮想線L1より車両前後方向における後方に配設されている。仮想線L1は、車両側面視において、リンク部材11と車体フレームFのメインフレーム部材4とが接合された箇所であるリンク部材連結部13と、内燃機関20に排気管51が接続される排気管接続部24cとを結んだ仮想線である。
【0050】
さらに、下流側排気ガスセンサS1と上流側排気ガスセンサS2とは、車両側面視で触媒装置53を挟み込むように配置されている。このように触媒装置53を挟むようにしているので、下流側排気ガスセンサS1と上流側排気ガスセンサS2とを近接して配置することができ、それぞれの電装ケーブル111,112を近づけて配策することができるので、電装ケーブル111,112の長さを短くすることができるとともに、電装ケーブルを一緒に纏めて配策することよりコンパクトにすることができる。
【0051】
また、下流側排気ガスセンサS1は、車両側面視において、遠心冷却ファン56の回転中心に対して前方かつ下方に配設されている。遠心冷却ファン56覆うファンカバー57の排風口57fからの排出風が、下流側排気ガスセンサS1に当たることを回避でき、下流側排気ガスセンサS1の温度低下を防ぐことができる。
【0052】
さらに、
図8に示されるように、下流側排気ガスセンサS1と上流側排気ガスセンサS2とは、車幅方向において車体中心線に対して同じ側の右側の車幅方向外側にオフセットするように配置されている。このように下流側排気ガスセンサS1と上流側排気ガスセンサS2とを、同側にオフセットして配置することで、下流側排気ガスセンサS1と上流側排気ガスセンサS2とを車幅方向において異なる側に配置することに比べて、ECUに延びる電装ケーブルを短くするととともに、電装ケーブルの配線をコンパクトにすることができる。
【0053】
本実施の形態では、上流側排気ガスセンサS2は、シリンダヘッド24に配設されているが、上流側排気管80の車両中央より右側に位置するように右側から取り付けてもよい。例えば、上流側排気ガスセンサS2を、
図12に示されるように上流側排気管80の垂直部80aに右前方から取り付けてもよく、
図13に示されるように上流側排気管80の垂直部80aに右側方から取り付けてもよく、その他斜め右後方などから取り付けてもよい。
【0054】
本実施の形態では、下流側排気ガスセンサS1は、下流側排気管90の上方から取り付けられているが、例えば
図13および
図14に示されるように、下流側排気管90の上方や後方から取り付けてもよく、
図14に示されるように下流側排気管90の後方から取り付けてもよい。
【0055】
図2に示されるように、内燃機関20のシリンダブロック23およびシリンダヘッド24の側面は樹脂製部材としてのシュラウド70により覆われている。
【0056】
シュラウド70は、シリンダブロック23とシリンダヘッド24の周囲を覆うように、車両側面視においてシリンダ軸線に沿うように分割された上下半割りの第一分割体71と第二分割体72とが結合されて構成されている。シュラウド70は、ファンカバー57の締結部57aやヘッドカバー25の前部に締結されるなどして内燃機関20に支持される。シュラウド70の前方の開口部からヘッドカバー25が突出している。
【0057】
シュラウド70は、シリンダブロック23およびシリンダヘッド24の一方側において、前方になるにつれてヘッドカバー25側に湾曲する形状をしており、内燃機関20との間に空間を形成する。内燃機関20とシュラウド70の間の空間により冷却風通路(不図示)が形成される。遠心冷却ファン56が外気を吸い込みシュラウド70内へ導風し、冷却風通路を流れて内燃機関20が空気によって効率的に冷却されるようになっている。
図7に示されるように、シュラウド70の右側壁には、電装ケーブル111、電装ケーブル112のいずれかを固定するケーブル固定部70bとして、後述する接合部71c、挟持部71dおよび保持部72dが設けられている。
【0058】
図10に示されるように、シュラウド70の第一分割体71と第二分割体72とは、それぞれの接合縁部71bと接合縁部72bとが合わさって、以下のように接合されている。
図11に示されるように、第一分割体71の接合縁部71bに、第二分割体72の方に向かうように爪状の接合部71cが突設されている。接合部71cの表面には、接合縁部71bと平行な段部71c
1が設けられている。さらに接合部71cの裏面には、電装ケーブル111を保持する凹部71c
2が形成されており、接合部71cはケーブル固定部70bの役目を果たす。
【0059】
第二分割体72の接合縁部72bには、第一分割体71の接合部71cに対応する位置に、第一分割体71の接合部71cが嵌入される被接合部72cが形成されている。被接合部72cは、第二分割体72の壁面72aから突出して形成され、接合部71cが嵌合する孔部72c1が所定形状に形成されている。
【0060】
第一分割体71の接合部71cが第二分割体の被接合部72cの孔部72c1に挿入されると、接合部71cは被接合部72cに係合し、第一分割体71と第二分割体72は一体に接合される。
接合部71cの凹部71c2に電装ケーブル111がはめ込まれて、電装ケーブル111は保持される。
【0061】
図10に示されるように、第二分割体72には、接合縁部72bより少し下方に位置して、電装ケーブルを保持する保持部72dが、壁面72aから突出して設けられている。保持部72dは、上方が開口したL字形状に形成され、電装ケーブルを開口部から保持部72d内に挿入して、下方から電装ケーブルを保持する。
【0062】
図7に示されるように、シュラウド70の前方寄りには、第一分割体71の接合縁部71bに、壁面71aから突出して、接合縁部71bに対して略直角に、ケーブルを挟持する挟持部71dが設けられている。挟持部71dは、その断面が略Cの字状の溝部71d1が形成されており、電装ケーブルは溝部71d1内に嵌め込まれて挟持される。
【0063】
図7に示されるように、下流側排気ガスセンサS1から延出する電装ケーブル111は、第一分割体71と第二分割体72の接合縁に沿って配策され、保持部72d内に挿入されて保持され、接合部71cの凹部71ccに嵌装され、ヘッドカバー25近傍にて上流側排気ガスセンサS2から延出する電装ケーブル112とともに挟持部71dにより挟まれて保持される。その後、電装ケーブル111,112は、車体フレームFのメインフレーム部材4に沿って斜め上後方に配策されてECU15,16に接続される。
【0064】
本実施の形態では、樹脂製部材として、シリンダブロック23およびシリンダヘッド24の周囲を覆うシュラウド70を用いているが、シリンダブロック23およびシリンダヘッド24の少なくとも一部を覆うよう脂製の部品であって、接合部により一体にとされる分割体であればよい。また本実施の形態では、樹脂製部材としてのシュラウド70は、第一分割体71と第二分割体72の2つの分割体から構成されているが、2以上の複数の分割体から構成されていればよい。
【0065】
本発明の実施の形態の鞍乗型車両である自動二輪車1は、前記したように構成されているので、以下のような効果を奏する。
【0066】
本実施の形態の自動二輪車1は、車体フレームFと、シリンダ軸線Cを前方に向けて配置されるシリンダブロック23と、クランクケース22と、クランク軸21とを有し、車体フレームFにリンク部材11を介して揺動可能に支持されるパワーユニットPと、パワーユニットPに接続され、排気管51および該排気管51の途中に配置される触媒装置53を具備した排気装置50と、を備え、排気管51は、パワーユニットPから下方に延出され、排気管51は、内部に触媒装置53を収容する触媒装置収容排気管100と、触媒装置収容排気管100の上流側に接続された上流側排気管80と、触媒装置収容排気管100の下流側に接続された下流側排気管90とを備え、下流側排気管90に下流側排気ガスセンサS1が配設され、触媒装置53より上流側に上流側排気ガスセンサS2配設され、下流側排気ガスセンサS1および触媒装置収容排気管100は、車体側面視において、少なくとも一部がパワーユニットPの下方であって、排気管51の端が接続されるパワーユニットPの排気管接続部24cと、リンク部材11を前記車体フレームFに連結するリンク部材連結部13と、を結ぶ仮想線L1よりも車両前後方向における後方に位置しており、下流側排気ガスセンサS1および上流側排気ガスセンサS2は、それぞれ電装ケーブル111,112によってECU15,16のいずれかと接続しており、下流側排気ガスセンサS1と上流側排気ガスセンサS2とは、車幅方向において車体中心線に対して同じ側の車幅方向外側にオフセットするように配置されている。
【0067】
前記構成によれば、上流側排気ガスセンサS2および下流側排気ガスセンサS1からECUに延びる電装ケーブル111,112を短くするととともに、電装ケーブル111,112の配線をコンパクトにすることができる。
【0068】
さらに、触媒装置53は、長手方向を車幅方向に向けて配置されているので、パワーユニットPのシリンダブロック23とクランクケース22の下方に空いている空間を利用することが可能となり、触媒装置53をコンパクトに配置することができる。
【0069】
また、車両側面視において、下流側排気ガスセンサS1と上流側排気ガスセンサS2とで触媒装置53を挟み込むように配置されているので、下流側排気ガスセンサS1と上流側排気ガスセンサS2どうしを近づけて配置することが可能となり、これらの排気ガスセンサから延びる電装ケーブル111,112を短くすることができる。
【0070】
さらにまた、クランク軸21のクランク回転中心CLと同じ回転中心である遠心冷却ファン56と、遠心冷却ファン56を覆うファンカバー57を備え、ファンカバー57は、車両側面視において、回転中心より後方に排風口57fを備え、下流側排気ガスセンサS1は、車両側面視において、遠心冷却ファン56の回転中心に対して前方かつ下方に配設されるので、遠心冷却ファン56からの排出風が、下流側排気ガスセンサS1に当たることを回避でき、下流側排気ガスセンサS1の温度低下を防ぐことができる。
【0071】
また、パワーユニットPは、シリンダブロック23に重ねられるシリンダヘッド24を有し、シリンダブロック23およびシリンダヘッド24の車両側面の少なくとも一部が、樹脂製部材としてのシュラウド70により覆われ、シュラウド70は、電装ケーブル111,112の少なくとも1つを固定するケーブル固定部70bを有しているので、シュラウド70に設けられたケーブル固定部70bに電装ケーブル111、112を固定することにより、電装ケーブル111,1112のたわみを防いで電装ケーブル111,112の配策をコンパクトにすることができる。
【0072】
さらに、シュラウド70は第一分割体71と第二分割体72が接合されて構成され、第一分割体71は、第二分割体72の被接合部72cに挿入されて接合する接合部71cを有し、電装ケーブル111は、接合部71cにより固定されており、第一分割体71と第二分割体72との接合部を活用することで、別体のケーブル固定部を設ける必要が無く、部品点数を削減しコストを低減することができる。
【0073】
以上、本発明に係る一実施の形態に係る自動二輪車について説明したが、本発明の態様は、上記実施の形態に限定されず、本発明の要旨の範囲で、多様な態様で実施されるものを含むものである。
【符号の説明】
【0074】
P…パワーユニット、C…シリンダ軸線、CL…クランク回転中心、F…車体フレーム、S1…下流側排気ガスセンサ、S2…上流側排気ガスセンサ、
1…自動二輪車、L1…仮想線、
11…リンク部材、13…リンク部材連結部、15…ECU、16…ECU
20…内燃機関、21…クランク軸、22…クランクケース、23…シリンダブロック、24…シリンダヘッド、24c…排気管接続部、
50…排気装置、51…排気管、53…触媒装置、56…ファン、57…ファンカバー、57f…排風口、
70…シュラウド、70b…ケーブル固定部、71…第一分割体、71c…接合部、72…第二分割体、
80…上流側排気管、
90…下流側排気管、
100…触媒装置収容排気管
111…電装ケーブル、112…電装ケーブル。