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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-01
(45)【発行日】2025-10-09
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20251002BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20251002BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20251002BHJP
   H01M 50/586 20210101ALI20251002BHJP
   H01M 50/591 20210101ALI20251002BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20251002BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M10/052
H01M50/586
H01M50/591 101
H01M4/13
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023180575
(22)【出願日】2023-10-19
(65)【公開番号】P2025070337
(43)【公開日】2025-05-02
【審査請求日】2024-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祥央
(72)【発明者】
【氏名】笠野 健太
(72)【発明者】
【氏名】橋本 達也
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-038425(JP,A)
【文献】特開2023-077228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 10/0562
H01M 10/052
H01M 50/586
H01M 50/591
H01M 4/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体、正極層、固体電解質層、負極層、及び負極集電体がこの順で積層された電極体を含む全固体電池であって、
前記正極集電体は、前記正極層側の面に、前記正極層の端部に隣接する第1の絶縁材を備え、
前記固体電解質層は、前記正極層及び前記第1の絶縁材に当接して配置され、
前記負極集電体と前記固体電解質層との間であって、前記固体電解質層の端部及び前記第1の絶縁材の端部と対向する部分に、第2の絶縁材が備えられ、
前記第2の絶縁材は、前記負極集電体の前記負極層側の表面から前記正極集電体の前記正極層側の表面までの沿面距離が、同直線距離よりも大きくなるように、前記固体電解質層に当接して配置され
前記第1の絶縁材は、前記電極体の延在方向において、前記正極層に隣接する端部からの距離が大きくなるにつれて、前記電極体の積層方向の厚みが減少する、
全固体電池。
【請求項2】
正極集電体、正極層、固体電解質層、負極層、及び負極集電体がこの順で積層された電極体を含む全固体電池であって、
前記正極集電体は、前記正極層側の面に、前記正極層の端部に隣接する第1の絶縁材を備え、
前記固体電解質層は、前記正極層及び前記第1の絶縁材に当接して配置され、
前記負極集電体と前記固体電解質層との間であって、前記固体電解質層の端部及び前記第1の絶縁材の端部と対向する部分に、第2の絶縁材が備えられ、
前記第2の絶縁材は、前記負極集電体の前記負極層側の表面から前記正極集電体の前記正極層側の表面までの沿面距離が、同直線距離よりも大きくなるように、前記固体電解質層に当接して配置され、
前記電極体は、前記固体電解質層と前記負極層との間に中間層を備え、
前記電極体の延在方向において、前記中間層の端部は、前記負極層の端部又は前記第2の絶縁材の端部と略同一位置に配置される、又は前記負極層の端部又は前記第2の絶縁材の端部よりも内側に配置される、全固体電池。
【請求項3】
前記第2の絶縁材は、前記電極体の延在方向において、前記負極層の端部とオーバーラップするように配置される、請求項1又は2に記載の全固体電池。
【請求項4】
前記第2の絶縁材は、少なくとも一部が前記負極集電体に当接して配置される、請求項3に記載の全固体電池。
【請求項5】
前記電極体は、前記固体電解質層と前記負極層との間に中間層を備え、
前記電極体の延在方向において、前記中間層の端部は、前記負極層の端部又は前記第2の絶縁材の端部と略同一位置に配置される、又は前記負極層の端部又は前記第2の絶縁材の端部よりも内側に配置される、請求項1記載の全固体電池。
【請求項6】
前記第2の絶縁材は、少なくとも一部が前記中間層に当接して配置される、請求項に記載の全固体電池。
【請求項7】
前記固体電解質層の端部は、前記電極体の延在方向において、前記第1の絶縁材の端部と略同一の位置にある、請求項1又は2に記載の全固体電池。
【請求項8】
前記第2の絶縁材は、接着層と絶縁層とを含む積層体であり、
前記接着層は、負極集電体側に配置され、
前記絶縁層は、前記固体電解質層側に配置される、請求項1又は2に記載の全固体電池。
【請求項9】
前記接着層は、アクリル系粘着層であり、
前記絶縁層は、ポリエチレンを含む、請求項8に記載の全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する二次電池に関する研究開発が行われている。二次電池としては、エネルギー密度が高いリチウム金属電池が注目されている。
【0003】
リチウム金属電池は、負極としてリチウム金属を用いる二次電池であり、高容量の電池となりうる。中でも、電解液を固体電解質層に変えて全固体化した、いわゆる全固体リチウム金属電池は、安全性に優れる点で注目されている。全固体リチウム金属電池は、例えば、リチウム金属からなる負極と、正極と、固体電解質層と、を備えるセル構造を有する。
【0004】
図5は、従来の全固体電池の構成を示す断面図である。図5に示される全固体電池1は、負極集電体2aとリチウム金属層(負極層)3a、又は負極集電体2bとリチウム金属層(負極層)3bとで形成される負極と、正極集電体4と正極活物質層(正極層)5a又は5bとで形成される正極と、正極活物質層(正極層)5a又は5bに隣接する固体電解質層6aと6bとを備える。図5に示される全固体電池1は、リチウム金属層(負極層)3aと固体電解質層6aとの間に中間層7aを備え、リチウム金属層(負極層)3bと固体電解質層6bとの間に中間層7bを備える。また、正極活物質層(正極層)5aの両端部には、第1の絶縁材8aと8cとがそれぞれ配置されており、正極活物質層5bの両端部には、第1の絶縁材8bと8dとがそれぞれ配置されている。なお、図中のLは、全固体電池1を構成する層の積層方向を示している。
【0005】
全固体電池は、このようなセル構造を複数積層した電極体を備え、それぞれのセル構造の負極集電体から延出したタブ線を集合させて電池として作用させる。そして、タブ線を集合させる際には、電極体から延出したタブ線は屈曲し、特に、集合部から遠距離にあるタブ線の屈曲は大きくなる。その結果、タブ線と正極集電体との間の空間距離が短くなり、絶縁距離を確保できなくなることが懸念されていた。
【0006】
特許文献1には、正極集電箔、正極層、固体電解質層、負極層、及び負極集電箔がこの順で積層された電極体において、正極層は固体電解質層及び負極層よりも内部に配置されて積層されており、正極集電箔の正極層側の面であって、少なくとも固体電解質層及び負極層の端部と対向する部分に絶縁層が配置された全固体電池が開示されている。
【0007】
特許文献1に記載された全固体電池に適用される絶縁層は、粘着層を介して正極集電箔にセラミックス層が粘着している態様であり、硬度の高いセラミックス層によって金属異物による絶縁層の破損を抑制して短絡を抑制するとともに、仮に短絡が生じた場合であっても、セラミックス層の高抵抗によって短絡部の発熱を抑制する効果が期待されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された絶縁層は、セラミックス層を有することから、絶縁層そのものを屈曲させて用いることは想定されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2022-104116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、それぞれのセル構造の負極集電体から延出したタブ線を集合させて電池として作用させるにあたり、タブ線の屈曲により、タブ線と正極集電体との間の空間距離が短くなる場合であっても、絶縁性を担保できる全固体電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討を重ねた。そして、正極集電体、正極層、固体電解質層、負極層、及び負極集電体がこの順で積層された電極体を含む全固体電池において、正極層の端部に第1の絶縁材を備えさせるとともに、負極集電体と固体電解質層との間であって、固体電解質層の端部及び第1の絶縁材の端部と対向する部分に、第2の絶縁材を備えさせて、負極集電体の負極層側の表面から正極集電体の正極層側の表面までの沿面距離が、同直線距離よりも大きくなるようにすれば、沿面距離によって絶縁性を担保できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]
正極集電体、正極層、固体電解質層、負極層、及び負極集電体がこの順で積層された電極体を含む全固体電池であって、
前記正極集電体は、前記正極層側の面に、前記正極層の端部に隣接する第1の絶縁材を備え、
前記固体電解質層は、前記正極層及び前記第1の絶縁材に当接して配置され、
前記負極集電体と前記固体電解質層との間であって、前記固体電解質層の端部及び前記第1の絶縁材の端部と対向する部分に、第2の絶縁材が備えられ、
前記第2の絶縁材は、前記負極集電体の前記負極層側の表面から前記正極集電体の前記正極層側の表面までの沿面距離が、同直線距離よりも大きくなるように、前記固体電解質層に当接して配置される、
全固体電池。
[2]
前記第1の絶縁材は、前記電極体の延在方向において、前記正極層に隣接する端部からの距離が大きくなるにつれて、前記電極体の積層方向の厚みが減少する、態様[1]に記載の全固体電池。
[3]
前記第2の絶縁材は、前記電極体の延在方向において、前記負極層の端部とオーバーラップするように配置される、態様[1]又は[2]に記載の全固体電池。
[4]
前記第2の絶縁材は、少なくとも一部が前記負極集電体に当接して配置される、態様[3]に記載の全固体電池。
[5]
前記電極体は、前記固体電解質層と前記負極層との間に中間層を備え、
前記電極体の延在方向において、前記中間層の端部は、前記負極層の端部又は前記第2の絶縁材の端部と略同一位置に配置される、又は前記負極層の端部又は前記第2の絶縁材の端部よりも内側に配置される、態様[1]又は[2]に記載の全固体電池。
[6]
前記第2の絶縁材は、少なくとも一部が前記中間層に当接して配置される、態様[5]に記載の全固体電池。
[7]
前記固体電解質層の端部は、前記電極体の延在方向において、前記第1の絶縁材の端部と略同一の位置にある、態様[1]又は[2]に記載の全固体電池。
[8]
前記第2の絶縁材は、接着層と絶縁層とを含む積層体であり、
前記接着層は、負極集電体側に配置され、
前記絶縁層は、前記固体電解質層側に配置される、態様[1]又は[2]に記載の全固体電池。
[9]
前記接着層は、アクリル系粘着層であり、
前記絶縁層は、ポリエチレンを含む、態様[8]に記載の全固体電池。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、絶縁性を担保できる全固体電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る全固体電池の構成を示す断面図の一部である。
図2】第2実施形態に係る全固体電池の構成を示す断面図の一部である。
図3】第3実施形態に係る全固体電池の構成を示す断面図の一部である。
図4】第4実施形態に係る全固体電池の構成を示す断面図の一部である。
図5】従来の全固体電池の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、実施形態について説明する。
<第1実施形態>
本開示の全固体電池について、一実施形態である全固体電池11を参照しつつ説明する。
【0016】
本開示の全固体電池は、正極集電体、正極層、固体電解質層、負極層、及び負極集電体がこの順で積層された電極体を含む。正極集電体は、正極層側の面に、正極層の端部に隣接する第1の絶縁材を備え、固体電解質層は、正極層及び第1の絶縁材に当接して配置される。
【0017】
本開示の全固体電池は、更に、負極集電体と固体電解質層との間であって、固体電解質層の端部及び第1の絶縁材の端部と対向する部分に、第2の絶縁材が備えられる。第2の絶縁材は、負極集電体の負極層側の表面から正極集電体の正極層側の表面までの沿面距離が、同直線距離よりも大きくなるように、固体電解質層に当接して配置される。
【0018】
本開示の全固体電池は、正極層の端部に第1の絶縁材を備えるとともに、負極集電体と固体電解質層との間であって、固体電解質層の端部及び第1の絶縁材の端部と対向する部分に、負極集電体の負極層側の表面から正極集電体の正極層側の表面までの沿面距離が同直線距離よりも大きくなるように第2の絶縁材を備えているため、沿面距離によって絶縁性を担保することができる。
【0019】
更に具体的には、それぞれのセル構造の負極集電体から延出したタブ線を集合させて電池として作用させるにあたり、タブ線の屈曲により、タブ線と正極集電体との間の空間距離が短くなる場合であっても、沿面距離が確保できていることから、絶縁性を担保することできる。
【0020】
図1は、第1実施形態に係る全固体電池11の構成を示す断面図の一部である。図1は、全固体電池11のセル構造の端部を示している。図1に示される全固体電池11は、正極集電体140と正極活物質層(正極層)15a又は15bとで形成される正極と、当該正極活物質層(正極層)15a又は15bに隣接する固体電解質層16aと16bと、リチウム金属層(負極層)13aと負極集電体12a、又はリチウム金属層(負極層)13bと負極集電体12b、で形成される負極と、を備える。
【0021】
図1に示される全固体電池11は、リチウム金属層(負極層)13aと固体電解質層16aとの間に中間層17aを備え、リチウム金属層(負極層)13bと固体電解質層16bとの間に中間層17bを備える。また、正極活物質層(正極層)15aの端部には、第1の絶縁材18cが配置されており、正極活物質層(正極層)15bの端部には、第1の絶縁材18dが配置されている。
【0022】
図1に示される第1実施形態に係る全固体電池11において、中間層17a及び17bは、電極体の延在方向において、端部が、リチウム金属層(負極層)13a及び13bのそれぞれの端部よりも内側に配置されている。
【0023】
図1に示される全固体電池11は、正極層15a及び15bの端部に第1の絶縁材18cと18dとをそれぞれ備えるとともに、負極集電体12aと固体電解質層16aとの間であって、固体電解質層16aの端部及び第1の絶縁材18cの端部と対向する部分に、負極集電体12aの負極層13a側の表面から正極集電体140の正極層15a側の表面までの沿面距離が、同直線距離(図中、bで示される矢印)よりも大きくなるように第2の絶縁材19aを備えている。
【0024】
更に詳細には、第1実施形態に係る全固体電池11の第2の絶縁材19aは、全固体電池11の電極体の延在方向において、表面の一部が負極層13aの端部とオーバーラップするよう配置されて、当該オーバーラップ部分にて負極層13aを被覆するとともに、中間層17aの端部とは接触しない状態で、負極集電体12aに当接して配置されている。第2の絶縁材19aのもう一方の表面は、図1における矢印aの部分を除いて、固体電解質層16aと当接している。
【0025】
すなわち、図1に示される全固体電池11において第2の絶縁材19aは、電極体の延在方向において、一つの表面は、一部が負極層13aと当接し、残りは負極集電体12aと当接しており、負極層13aと負極集電体12aと当接している当該面とは逆の表面は、図1における矢印a部分が固体電解質層16aの端部からはみ出した状態で、固体電解質層16aと一部が当接するよう配置されている。
【0026】
これにより、全固体電池11は、例えば、負極集電体12aから延出したタブ線を集合させて電池として作用させる際に、タブ線の屈曲により、タブ線と正極集電体140との間の空間距離が短くなる場合であっても、固体電解質層16aの端部からはみ出した矢印a部分の第2の絶縁材19aが存在していることで、負極集電体12aの負極層13a側の表面から正極集電体140の正極層15a側の表面まで間の沿面距離は、第2の絶縁材19aの表面に沿うため大きくなる。これにより、全固体電池11は、沿面距離が確保されて絶縁性を担保することができる。
【0027】
また、第2の絶縁材19aが、固体電解質層16aの端部からはみ出した矢印a部分を有することで、負極集電体12aから延出したタブ線を集合させて電池として作用させる際に、タブ線が屈曲して屈曲部に応力が集中する場合でも、第2の絶縁材19aの存在によって機械強度が向上していることから、タブ線の破損等を抑制することができる。
【0028】
なお、本開示の全固体電池において、第2の絶縁材が当接する固体電解質からはみ出す距離(図1における矢印a)は、特に限定されるものではない。電極体の延在方向において、固体電解質の端部よりも第2の絶縁材の端部が外側に位置していれば、本発明の上記の効果を享受することができる。
【0029】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る全固体電池12の構成を示す断面図の一部を、図2に示す。図2は、全固体電池12のセル構造の端部を示している。図2に示される全固体電池12は、正極集電体24と正極活物質層(正極層)25a又は25bとで形成される正極と、当該正極活物質層(正極層)25a又は25bに隣接する固体電解質層26aと26bと、リチウム金属層(負極層)23aと負極集電体22a、又はリチウム金属層(負極層)23bと負極集電体22b、で形成される負極と、を備える。
【0030】
図2に示される全固体電池12は、リチウム金属層(負極層)23aと固体電解質層26aとの間に中間層27aを備え、リチウム金属層(負極層)23bと固体電解質層26bとの間に中間層27bを備える。また、正極活物質層(正極層)25aの端部には、第1の絶縁材28cが配置されており、正極活物質層(正極層)25bの端部には、第1の絶縁材28dが配置されている。
【0031】
図2に示される第2実施形態に係る全固体電池12において、中間層27a及び27bは、電極体の延在方向において、端部が、リチウム金属層(負極層)23a及び23bのそれぞれの端部と略同一位置に配置されている。
【0032】
図2に示される全固体電池12は、正極層25a及び25bの端部に第1の絶縁材28cと28dとをそれぞれ備えるとともに、負極集電体22aと固体電解質層26aとの間であって、固体電解質層26aの端部及び第1の絶縁材28cの端部と対向する部分に、負極集電体22aの負極層23a側の表面から正極集電体24の正極層25a側の表面までの沿面距離が、同直線距離よりも大きくなるように第2の絶縁材29aを備えている。
【0033】
更に詳細には、第2実施形態に係る全固体電池12の第2の絶縁材29aは、全固体電池12の電極体の延在方向において、負極層23a及び中間層27aとはオーバーラップする部分がない状態で、負極集電体22aに当接して配置されている。第2の絶縁材29aのもう一方の表面は、固体電解質層26aと当接している。
【0034】
すなわち、図2に示される全固体電池12において第2の絶縁材29aは、電極体の延在方向において、一つの表面は、全部が負極集電体22aと当接しており、負極集電体22aと当接している当該面とは逆の表面は、固体電解質層26aの端部からはみ出した状態で、固体電解質層26aと一部が当接するよう配置されている。
【0035】
これにより、全固体電池12は、上記した実施形態と同様に、例えば、負極集電体22aから延出したタブ線を集合させて電池として作用させる際に、タブ線が屈曲する場合においても、沿面距離が確保されて絶縁性を担保することができるとともに、機械強度の向上によりタブ線の破損等を抑制することができる。
【0036】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る全固体電池13の構成を示す断面図の一部を、図3に示す。図3は、全固体電池13のセル構造の端部を示している。図3に示される全固体電池13は、正極集電体34と正極活物質層(正極層)35a又は35bとで形成される正極と、当該正極活物質層(正極層)35a又は35bに隣接する固体電解質層36aと36bと、リチウム金属層(負極層)33aと負極集電体32a、又はリチウム金属層(負極層)33bと負極集電体32b、で形成される負極と、を備える。
【0037】
図3に示される全固体電池13は、リチウム金属層(負極層)33aと固体電解質層36aとの間に中間層37aを備え、リチウム金属層(負極層)33bと固体電解質層36bとの間に中間層37bを備える。また、正極活物質層(正極層)35aの端部には、第1の絶縁材38cが配置されており、正極活物質層(正極層)35bの端部には、第1の絶縁材38dが配置されている。
【0038】
図3に示される第3実施形態に係る全固体電池13において、中間層37a及び37bは、電極体の延在方向において、端部が、リチウム金属層(負極層)33a及び33bのそれぞれの端部と略同一位置に配置されている。
【0039】
図3に示される全固体電池13は、正極層35a及び35bの端部に第1の絶縁材38cと38dとをそれぞれ備えるとともに、負極集電体32aと固体電解質層36aとの間であって、固体電解質層36aの端部及び第1の絶縁材38cの端部と対向する部分に、負極集電体32aの負極層33a側の表面から正極集電体34の正極層35a側の表面までの沿面距離が、同直線距離よりも大きくなるように第2の絶縁材39aを備えている。
【0040】
更に詳細には、第3実施形態に係る全固体電池13の第2の絶縁材39aは、全固体電池13の電極体の延在方向において、負極層33a及び中間層37aとはオーバーラップする部分がない状態で、負極集電体32aに当接して配置されている。第2の絶縁材39aのもう一方の表面は、固体電解質層36aと当接している。
【0041】
すなわち、図3に示される全固体電池13において第2の絶縁材39aは、電極体の延在方向において、一つの表面は、全部が中間層37aと当接しており、中間層37aと当接している当該面とは逆の表面は、固体電解質層36aの端部からはみ出した状態で、固体電解質層36aと一部が当接するよう配置されている。
【0042】
これにより、全固体電池13は、上記した実施形態と同様に、例えば、負極集電体32aから延出したタブ線を集合させて電池として作用させる際に、タブ線が屈曲する場合においても、沿面距離が確保されて絶縁性を担保することができるとともに、機械強度の向上によりタブ線の破損等を抑制することができる。
【0043】
<第4実施形態>
第4実施形態に係る全固体電池14の構成を示す断面図の一部を、図4に示す。図4は、全固体電池14のセル構造の端部を示している。図4に示される全固体電池14は、正極集電体44と正極活物質層(正極層)45a又は45bとで形成される正極と、当該正極活物質層(正極層)45a又は45bに隣接する固体電解質層46aと46bと、リチウム金属層(負極層)43aと負極集電体42a、又はリチウム金属層(負極層)43bと負極集電体42b、で形成される負極と、を備える。
【0044】
図4に示される全固体電池14は、リチウム金属層(負極層)43aと固体電解質層46aとの間に中間層47aを備え、リチウム金属層(負極層)43bと固体電解質層46bとの間に中間層47bを備える。また、正極活物質層(正極層)45aの端部には、第1の絶縁材48cが配置されている。
【0045】
図4に示される第1実施形態に係る全固体電池14において、中間層47aは、電極体の延在方向において、端部が、リチウム金属層(負極層)43aの端部よりも内側に配置されている。
【0046】
第4実施形態に係る全固体電池14において、第1の絶縁材48cは、電極体の延在方向において、正極活物質層(正極層)45aに隣接する端部からの距離(図4中の矢印c)が大きくなるにつれて、電極体の積層方向(図4中の矢印L)の厚みが減少している。すなわち、第1の絶縁材48cは、電極体の積層方向(図4中の矢印L)に傾斜を有する形状となっており、当該傾斜部分が空隙となっている。
【0047】
図4に示される全固体電池14は、正極層45aの端部に第1の絶縁材48cを備えるとともに、負極集電体42aと固体電解質層46aとの間であって、固体電解質層46aの端部及び第1の絶縁材48cの端部と対向する部分に、負極集電体42aの負極層43a側の表面から正極集電体44の正極層45a側の表面までの沿面距離が、同直線距離よりも大きくなるように第2の絶縁材49aを備えている。
【0048】
更に詳細には、第4実施形態に係る全固体電池14の第2の絶縁材49aは、上記第1実施形態と同様に、全固体電池14の電極体の延在方向において、一つの表面は、一部が負極層43aと当接し、残りは負極集電体42aと当接しており、負極層43aと負極集電体42aと当接している当該面とは逆の表面は、固体電解質層46aの端部からはみ出した状態で、固体電解質層16aと一部が当接するよう配置されている。
【0049】
すなわち、図4に示される全固体電池14において第2の絶縁材49aは、電極体の延在方向において、一つの表面は、一部が負極層43aと当接し、残りは負極集電体42aと当接しており、負極層43aと負極集電体42aと当接している当該面とは逆の表面は、固体電解質層46aの端部からはみ出した状態で、固体電解質層46aと一部が当接するよう配置されている。
【0050】
また、図4に示される全固体電池14において、第2の絶縁材49aは、接着層491と絶縁層492とを含む積層体となっている。そして、接着層491が、負極集電体42aに当接するよう配置され、絶縁層492が、固体電解質層46aに当接するよう配置されている。
【0051】
これにより、全固体電池14は、上記した実施形態と同様に、例えば、負極集電体42aから延出したタブ線を集合させて電池として作用させる際に、タブ線が屈曲する場合においても、沿面距離が確保されて絶縁性を担保することができるとともに、機械強度の向上によりタブ線の破損等を抑制することができる。
【0052】
とりわけ、第4実施形態に係る全固体電池14においては、第1の絶縁材48cが、電極体の積層方向(図4中の矢印L)に傾斜を有する形状となっており、当該傾斜部分に空隙が形成されている。そして、当該空隙領域に、第2の絶縁材49aが配置されるため、電極体をプレスしたりラミネート等する際に、第2の絶縁材49aの存在による圧力の発生を抑制することができる。
【0053】
以下、本開示の全固体電池の各構成について説明する。
【0054】
[正極]
本開示の全固体電池の正極は、正極集電体と正極層とを含む。本開示の全固体電池において、正極層は、正極集電体と当接している。
(正極集電体)
本開示の全固体電池に用いられる正極集電体は、正極層に当接して配置されるものであり、正極層の集電を行う機能を有する。正極集電体の材料としては、正極層の集電を行うことができるものであれば、特に限定されるものではない。正極集電体の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、ニッケル、鉄、及びチタン等が挙げられ、中では、アルミニウム、アルミニウム合金、及びステンレスからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0055】
正極集電体の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、箔状、板状等が挙げられる。また、正極集電体の厚みは、特に限定されるものではなく、一般的な全固体電池の正極に用いられるものと同様であってよい。正極集電体の厚みは、例えば0.1μm以上1mm以下の範囲であってよい。
【0056】
(正極層)
正極層は、少なくとも正極活物質を含有する層である。正極層に含有される正極活物質としては、一般的な全固体電池の正極層に用いられるものであれば、特に限定されない。正極活物質としては、例えば、リチウムイオン電池であれば、リチウムを含有する層状活物質、スピネル型活物質、オリビン型活物質等を挙げることができる。正極活物質の具体例としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、LiNiMnCo(p+q+r=1)、LiNiAlCo(p+q+r=1)、マンガン酸リチウム(LiMn)、Li+xMn-x-yMyO(x+y=2、M=Al、Mg、Co、Fe、Ni、及びZnから選ばれる少なくとも1種)で表される異種元素置換Li-Mnスピネル、チタン酸リチウム(Li及びTiを含む酸化物)、リン酸金属リチウム(LiMPO、M=Fe、Mn、Co、及びNiから選ばれる少なくとも1種)等が挙げられる。
【0057】
正極層における正極活物質の含有量は、例えば、50質量%~99質量%の範囲であってよい。正極活物質は、表面がニオブ酸リチウム層やチタン酸リチウム層、リン酸リチウム層等の酸化物層で被覆されていてもよい。
【0058】
正極層は、リチウムイオン伝導性を向上させる目的で、任意に、後記する固体電解質を含んでいてもよい。また正極層は、任意に、バインダーや導電助剤等を含んでいてもよい。これらの物質としては、一般に全固体電池に使用されるものを用いることができる。
【0059】
正極層の厚みは、特に限定されるものではなく、求める電池の性能に応じて適宜設定することができる。正極層の厚みは、例えば、0.1μm以上1mm以下の範囲であってよい。
【0060】
本開示の全固体電池が後述する中間層を備える場合には、正極層は、積層面において中間層と同等の面積を有することが好ましい。これにより、全固体電池のエネルギー密度を向上させることができる。本開示の全固体電池における正極層の面積は、例えば、中間層の面積に対して最大で100%であってもよく、90%~100%であってもよく、80%~90%であってもよい。
【0061】
正極層の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法により製造することができる。正極層は、例えば、正極層を構成する材料を溶媒とともに混合してスラリーとし、上記した正極集電体に当該スラリーを塗布し、乾燥させることにより製造することができる。
【0062】
[固体電解質層]
固体電解質層は、固体電解質を含む層である。固体電解質層は、正極層及び第1の絶縁材に当接して配置される。
【0063】
固体電解質の材料としては、リチウムイオン伝導性及び絶縁性を有するものであれば、特に限定されるものではない。固体電解質の材料としては、一般的に全固体型リチウムイオン電池に用いられる材料を用いることができ、例えば、硫化物固体電解質材料、酸化物固体電解質材料、ハロゲン化物固体電解質、リチウム含有塩等の無機固体電解質、ポリエチレンオキシド等のポリマー系の固体電解質、リチウム含有塩やリチウムイオン伝導性のイオン液体を含むゲル系の固体電解質等を挙げることができる。これらのうち、リチウムイオンの高い導電特性とプレスによる構造成形性や界面接合性が良好である観点から、硫化物固体電解質材料であることが好ましい。
【0064】
固体電解質材料の形態としては、特に限定されるものではなく、例えば、粒子状であってよい。また、本開示の全固体電池の固体電解質層において、固体電解質の含有量は、特に限定されるものではない。固体電解質の含有量は、例えば50質量%~99質量%の範囲であってよい。
【0065】
固体電解質層は、任意に、バインダーを含んでいてもよい。また、機械的強度や柔軟性を付与する目的で、任意に、粘着剤を含んでいてもよい。これらの物質としては、一般に全固体電池に使用されるものを用いることができる。
【0066】
固体電解質層は、本開示の全固体電池の電極体の延在方向において、端部が、第1の絶縁材の端部と略同一の位置にあるように配置されていてもよい。
【0067】
このような形状の電極体は、固体電解質層が電極体の端面から突出する形態となっていないため、例えば、電極体の製造過程においてロールプレス等の圧力を付与した場合に、固体電解質層へのクラックの発生を抑制することができる。
【0068】
固体電解質層の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法により製造することができる。固体電解質層は、例えば、固体電解質層を構成する材料を溶媒とともに混合してスラリーとし、基材に当該スラリーを塗布し、乾燥させることにより製造することができる。
【0069】
[負極]
本開示の全固体電池の負極は、負極集電体と負極層とを含む。本開示の全固体電池において、負極層は、負極集電体と当接している。
【0070】
(負極集電体)
本開示の全固体電池に用いられる負極集電体は、負極層に当接して配置されるものであり、負極層の集電を行う機能を有する。負極集電体の材料としては、負極層の集電を行うことができるものであれば、特に限定されるものではないが、導電率が高い物質で構成されていることが好ましい。導電率が高い物質としては、例えば、銀、パラジウム、金(、プラチナ、アルミニウム、銅、及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む金属、又はステンレス鋼材等の合金、あるいはカーボン(C)等の非金属が挙げられる。
【0071】
これらの導電性が高い物質のうち、導電性の高さに加えて、製造コストも考慮すると、銅、SUS、及びニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。特に、ステンレス鋼材は、負極活物質、正極活物質、及び固体電解質と反応し難いため、負極集電体の材料としてステンレス鋼材を用いると、全固体電池の内部抵抗を低減することができる。
【0072】
負極集電体の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、箔状、板状、メッシュ状、不織布状、発泡状等が挙げられる。また、負極集電体には、負極層との密着性を高める目的で、表面にカーボン層等が配置されていてもよいし、表面が粗化されていてもよい。
【0073】
負極集電体の厚みは、特に限定されるものではなく、一般的な全固体電池の負極に用いられるものと同様であってよい。負極集電体の厚みは、例えば0.1μm以上1mm以下の範囲であってよい。
【0074】
(負極層)
負極層は、リチウムイオンと電子を授受する負極活物質を含有する層である。負極層に含有される負極活物質は、一般的な全固体電池の負極層に用いられるものであれば、特に限定されないが、リチウムイオンを可逆的に放出・吸蔵でき、電子輸送が容易に行えるように、電子伝導度が高い材料を用いることが好ましい。このような負極活物質としては、例えば、シリコン、シリコン合金等のシリコン系活物質や、グラファイト、ハードカーボン等の炭素系活物質、チタン酸リチウム等の各種酸化物系活物質、金属リチウム、リチウム合金のリチウム系活物質等が挙げられる。負極活物質は、上記の材料を1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
本開示の全固体電池においては、負極層は、金属リチウム又はリチウム金属合金を単独又は混合したものであってもよい。リチウム金属又はリチウム金属合金を単独又は混合したものからなる負極層は、単位重量当たりの電気容量が大きいため、高容量の全固体電池を実現することができる。
【0076】
負極層における負極活物質の含有量は、例えば、30質量%~100質量%の範囲であってよい。
【0077】
負極層は、リチウムイオン伝導性を向上させる目的で、任意に、上記の固体電解質を含んでいてもよい。また負極層は、任意に、バインダーや導電助剤等を含んでいてもよい。これらの物質としては、一般に全固体電池に使用されるものを用いることができる。
【0078】
負極層の厚みは、特に限定されるものではなく、求める電池の性能に応じて適宜設定することができる。負極層の厚みは、例えば、0.1μm以上1mm以下の範囲であってよい。
【0079】
負極層の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法により製造することができる。負極層は、例えば、負極層を構成する材料を溶媒とともに混合してスラリーとし、上記した負極集電体に当該スラリーを塗布し、乾燥させることにより製造することができる。
【0080】
[中間層]
本開示の全固体電池が中間層を備える場合には、中間層は、固体電解質と負極層との間に備えられる。本開示の全固体電池の負極層が、金属リチウム又はリチウム金属合金を単独又は混合した層である場合には、固体電解質層と負極層との間に中間層を設けることで、固体電解質層と負極層との界面へのデンドライトの不均一な析出を抑制することができ、かつ界面密着性を向上させることができる。
【0081】
中間層は、電子伝導性を有し、かつイオン伝導性を有する層である。中間層は、イオン伝導性を有するため、例えば、リチウムイオンを通過させることができる。このため、全固体電池の充放電を繰り返し行うにつれ、固体電解質層から負極層に向けて移動するリチウムイオン(Li)は、中間層を通過する。中間層が存在することで、中間層と負極層との間で、均一にリチウム金属を析出させることができる。また、中間層が、充放電に伴う各層の体積変化に追従できる柔軟性を有している場合には、全固体電池の充放電を繰り返し行った場合であっても、界面密着性を維持することができ、全固体電池の耐久性を向上させることができる。
【0082】
中間層は、本開示の全固体電池の電極体の延在方向において、端部が、負極層の端部又は第2の絶縁材の端部と略同一位置に配置されていてもよいし、又は負極層の端部又は第2の絶縁材の端部よりも内側に配置されていてもよい。これにより、上記した中間層を配置する効果を十分に発現させることができる。
【0083】
中間層を構成する材料としては、特に限定されるものではない。中間層は、例えば、無定形炭素、金属ナノ粒子、及び結着材としてのバインダーを含んでいてもよい。
【0084】
無定形炭素は、例えば、グラファイト等と異なりリチウム金属と反応して合金化することがない。このため、デンドライトの形成を抑制でき、全固体電池のサイクル特性を向上させることができる。
【0085】
無定形炭素としては、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック類、コークス、活性炭等が挙げられる。無定形炭素は、易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)であってもよく、難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、CNT(カーボンナノチューブ)、フラーレン、グラフェンであってもよい。
【0086】
金属ナノ粒子は、中間層に含まれることで、中間層の電子伝導性を高めることができ、その結果、より均一にリチウム金属を析出させることができる。金属ナノ粒子としては、特に限定されるものではないが、例えば、スズ、シリコン、亜鉛、マグネシウム、金、白金、パラジウム、銀、アルミニウム、ビスマス、アンチモン等の金属ナノ粒子が挙げられる。
【0087】
中間層に含まれるバインダーは、中間層の構造を保持し、中間層を構成する粒子同士、及び中間層と固体電解質層との密着性を向上させる。バインダーとしては、特に限定されるものではなく、一般に全固体電池に使用されるものを用いることができる。
【0088】
[第1の絶縁材]
第1の絶縁材は、正極集電体の正極層側の面に、正極層の端部に隣接して備えられる。第1の絶縁材が正極層の端部に絶縁材が配置されることにより、それぞれのセル構造の負極集電体から延出したタブ線を集合させて電池として作用させるにあたり、タブ線の屈曲により、タブ線と正極端部との接触を回避して短絡を抑制できるとともに、繰り返し充放電に伴う体積変化に起因するクラックの発生を抑制でき、クラックに起因する短絡についても抑制することが可能となる。
【0089】
第1の絶縁材は、正極層の端部に設けられていれば、その形状は限定されるものではない。第1の絶縁材の大きさは、特に限定されるものではなく、電極体の積層方向において、正極層の厚み以下の厚みを有するものであって、電極体の延在方向において、正極層の端面の一部又は全部に当接して、正極層の端部に配置されているものであればよい。
【0090】
第1の絶縁材の材料としては、絶縁性を発現するものであれば特に限定されるものではなく、半導体、導電体以外のいわゆる絶縁体であればよい。第1の絶縁材の材料は、絶縁性に付加したい特性に応じて適宜選択することができる。
【0091】
第1の絶縁材の材料としては、例えば、ポリプロピレン、アルミナ、陽極酸化アルミニウム、ベーマイト、ジルコニア、窒化アルミ、窒化珪素等が挙げられる。
【0092】
第1の絶縁材は、本開示の全固体電池の電極体の延在方向において、正極層に隣接する端部からの距離が大きくなるにつれて、電極体の積層方向の厚みが減少していてもよい。このような形状の第1の絶縁材は、例えば、図4に示されるような傾斜を有する形状となり、当該傾斜部分に空隙が形成されている。そして、当該空隙領域に、本開示の第2の絶縁材を配置できるため、電極体をプレスしたりラミネート等する際に、圧力の発生を抑制することができる。
【0093】
第1の絶縁材の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、正極層が形成された正極集電体の上に、第1の絶縁体の材料を含むスラリーを塗布し、乾燥させることにより製造することができる。
【0094】
[第2の絶縁材]
第2の絶縁材は、負極集電体と固体電解質層との間であって、固体電解質層の端部及び第1の絶縁材の端部と対向する部分に備えられる。また、第2の絶縁材は、負極集電体の負極層側の表面から正極集電体の正極層側の表面までの沿面距離が、同直線距離よりも大きくなるように、固体電解質層に当接して配置される。
【0095】
本開示の全固体電池は、上記の構成であることにより、それぞれのセル構造の負極集電体から延出したタブ線を集合させて電池として作用させるにあたり、タブ線の屈曲により、タブ線と正極集電体との間の空間距離が短くなる場合であっても、負極集電体の負極層側の表面から正極集電体の正極層側の表面までの沿面距離が大きくなっていることで、絶縁性を担保することができる。
【0096】
第2の絶縁材は、接着層と絶縁層とを含む積層体であってもよい。そして、接着層は、負極集電体側に配置され、絶縁層は、固体電解質層側に配置されてもよい。第2の絶縁材がこのような態様となっていることで、接着層によって、電極体の所望の位置に貼付することが可能となる。このような第2の絶縁材は、例えば、接着層側に剥離紙を備えるテープ状の形態であってもよい。
【0097】
第2の絶縁材が、接着層と絶縁層とを含む積層体である場合には、接着層の材料は、特に限定されるものではなく、公知の材料から形成されるものであってよい。中では、充放電での電気化学的な反応を起こしにくい材料であることから、アクリル系粘着層であることが好ましい。また、絶縁層の材料は、特に限定されるものではなく、公知の材料から形成されるものであってよい。中では、
充放電での電気化学的な反応を起こしにくい材料であることから、ポリエチレンを含む材料であることが好ましい。
【0098】
第2の絶縁材の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、剥離紙付きの基材の上に接着層の材料を含むスラリーを塗布して乾燥させることで接着層を形成し、形成した接着層の上に、絶縁層の材料を含むスラリーを塗布して乾燥させることにより、製造することができる。
【0099】
<全固体電池の製造方法>
本開示の全固体電池の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法によることができる。例えば、負極層と、中間層と、固体電解質層と、正極層と、をこの順序で積層させ、正極層の両端部に、第1の絶縁材を形成する。その後、第2の絶縁材を、所望の大きさで所望の位置に貼付することで、セル構造を作製することができる。なお、セル構造を作製した後は、複数を積層し、その後に任意にプレスして一体化してもよい。
【0100】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形又は改良は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
1、11、12、13、14 全固体電池
2a、2b、12a、12b、22a、22b、32a、32b、42a 負極集電体
3a、3b、13a、13b、23a、23b、33a、33b、43a リチウム金属層(負極層)
40、140、240、340、440 正極集電体
5a、5b、15a、15b、25a、25b、35a、35b、45a 正極活物質層(正極層)
6a、6b、16a、16b、26a、26b、36a、36b、46a 固体電解質層
7a、7b、17a、17b、27a、27b、37a、37b、47a 中間層
8a、8b、8c、8d、18c、18d、28c、28d、38c、38d、48c 第1の絶縁材
19a、19b、29a、29b、39a、39b、49a 第2の絶縁材
491 接着層
492 絶縁層
L 電極体の積層方向
a 第2の絶縁材の固体電極質層からはみ出した領域(負極集電体の負極層側の表面から正極集電体の正極層側の表面までの沿面距離に寄与する領域)
b 負極集電体の負極層側の表面から正極集電体の正極層側の表面までの直線距離
c 電極体の延在方向において、正極活物質層(正極層)に隣接する第1の絶縁材の端部からの距離
図1
図2
図3
図4
図5