(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-07
(45)【発行日】2025-10-16
(54)【発明の名称】リサイクルABS材料で作られた玩具組立ブロック
(51)【国際特許分類】
A63H 33/08 20060101AFI20251008BHJP
C08J 11/08 20060101ALI20251008BHJP
B29B 17/04 20060101ALI20251008BHJP
B29B 13/10 20060101ALI20251008BHJP
B29B 7/00 20060101ALI20251008BHJP
C08L 55/02 20060101ALI20251008BHJP
【FI】
A63H33/08 Z
C08J11/08 ZAB
B29B17/04
B29B13/10
B29B7/00
C08L55/02
(21)【出願番号】P 2022562734
(86)(22)【出願日】2021-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2021059742
(87)【国際公開番号】W WO2021209535
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2024-03-08
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】594012623
【氏名又は名称】レゴ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100189474
【氏名又は名称】田村 修
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアンセン,ソーレン
(72)【発明者】
【氏名】モーラー-セーレンセン,セーレン スティーンフェルト
(72)【発明者】
【氏名】ミッケルセン,レネ
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン,ビストラ
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン,エミル
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン,カリーナ ゲイル
(72)【発明者】
【氏名】ジェンセン,アンダース クリスチャン
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/106129(WO,A1)
【文献】特開2001-287318(JP,A)
【文献】特開2005-226003(JP,A)
【文献】特開2003-231773(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0009913(US,A1)
【文献】特開2010-070628(JP,A)
【文献】特開2005-329615(JP,A)
【文献】特表2017-536469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-A63H 37/00
B29B 7/00-B29B 17/04
B29C 31/00-B29C 71/04
C08J 11/00-C08J 11/28
C08K 3/00-C08K 13/08
C08L 1/00-C08L 101/16
KAKEN
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リサイクルABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)材料で作られており、機械的リサイクルABSポリマーを含む樹脂を加工することにより製造された、玩具組立要素。
【請求項2】
前記樹脂が、バージンABSポリマーをさらに含む、請求項1に記載の玩具組立要素。
【請求項3】
前記樹脂が、規制(EC)No 1907/2006および玩具安全指令(2009/48/EC)で指定されている要件を満たし、かつ、規制(EC)No 1272/2008の下に区分1A、1Bまたは2の発癌性、突然変異誘発性または生殖毒性(CMR)として分類される物質量の基準:
区分1Aおよび1Bの発癌性物質の合計含有量が1000ppm以下、
区分2の発癌性物質の合計含有量が10000ppm以下、
区分1Aおよび1Bの突然変異誘発物質の合計含有量が1000ppm以下、
区分2の突然変異誘発物質の合計含有量が10000ppm以下、
区分1Aおよび1Bの生殖毒性である物質の合計含有量が3000ppm以下、
区分2の生殖毒性である物質の合計含有量が30000ppm以下
を満たし、また、玩具安全指令(2009/48/EC)で指定されている金属含有量の移行限度:
アルミニウム:70000mg/kg以下、
アンチモン:560mg/kg以下、
ヒ素:47mg/kg以下、
バリウム:18750mg/kg以下、
ホウ素:15000mg/kg以下、
カドミウム17mg/kg以下、
クロム(III):460mg/kg以下、
クロム(IV):0.053mg/kg以下、
コバルト:130mg/kg以下、
銅:7700mg/kg以下、
鉛:160mg/kg以下、
マンガン:15000mg/kg以下、
水銀:94mg/kg以下、
ニッケル:930mg/kg以下、
セレン:460mg/kg以下、
ストロンチウム:56000mg/kg以下、
スズ:180000mg/kg以下、
有機スズ:12mg/kg以下、および
亜鉛:46000mg/kg以下
を充足する、請求項1または2に記載の玩具組立要素。
【請求項4】
前記玩具組立要素が、射出成形、押出もしくは付加的製造技術により、または射出成形および付加的製造技術の組合せにより製造された、請求項1乃至3の何れか1項に記載の玩具組立要素。
【請求項5】
前記機械的リサイクルABSポリマーがブタジエン球体を含み、そのブタジエン球体の大きさが、0.5マイクロメートル以下である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の玩具組立要素。
【請求項6】
前記機械的リサイクルABSポリマーと前記バージンABSポリマーとの間の重量比が、100:0から5:95の範囲である、請求項2に記載の玩具組立要素。
【請求項7】
前記
樹脂が、
その一部として、バイオベースABSポリマー、および/またはハイブリッドバイオベースABSポリマー、および/または炭素捕捉技術を使用して生成されたABSポリマー
を含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の玩具組立要素。
【請求項8】
前記樹脂におけるABSポリマーの合計量が、該樹脂の総重量に対して少なくとも50wt%である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の玩具組立要素。
【請求項9】
前記樹脂が、耐衝撃性改良剤、フィラー、抗酸化剤、潤滑剤、難燃剤、着色料、光安定剤/UV吸収剤および可塑剤からなる群から選択される1つまたは複数の添加剤をさらに含む、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の玩具組立要素。
【請求項10】
前記
機械的リサイクルABSポリマーが、玩具産業からのABS廃材から生成された、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の玩具組立要素。
【請求項11】
前記ABS廃材が、処分された玩具組立要素である、請求項10に記載の玩具組立要素。
【請求項12】
定常状態後に20~95wt%のリサイクル材料が流れる金型を使用して、射出成形することにより生成された、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の玩具組立要素。
【請求項13】
a)ABS廃材を用意し、スクリーニングするステップと、
b)ステップaでスクリーニングしたABS廃材に粉砕プロセスを施すことにより、ABS廃材からリサイクルABSポリマーを回収するステップと、
c)ステップbで回収されたABSポリマーを、1つまたは複数の添加剤、ならびに任意選択でバージンABSポリマーと混合することにより、樹脂を得るステップと、
d)ステップcで得られた樹脂を加工することにより、玩具組立要素を製造するステップと、
を含む、玩具組立要素を製造するための方法。
【請求項14】
前記ABS廃材が:
- 規制(EC)No 1272/2008の下に、区分1A、1Bまたは2の発癌性、突然変異誘発性または生殖毒性(CMR)として分類される物質の量、
- アルミニウム、アンチモン、ヒ素、バリウム、ホウ素、カドミウム、クロム(III)、クロム(IV)、コバルト、銅、鉛、マンガン、水銀、セレン、ストロンチウム、スズ、有機スズおよび亜鉛からなる群から選択される1つまたは複数の金属の移行限度、
- オキシドの量、
- フタレートの量、
- 難燃剤の量、
- ブタジエンコポリマー対SANの比、
- ブタジエン球体の大きさおよび大きさ分布、ならびに
- ブタジエン球体の架橋のレベルからなる群から選択される少なくとも1つの性質についてスクリーニングされる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップbで回収されたABSポリマーが、耐衝撃性改良剤、フィラー、抗酸化剤、潤滑剤、難燃剤、着色料、光安定剤/UV吸収剤および可塑剤からなる群から選択される1つまたは複数の添加剤と配合される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
玩具組立要素が、前記ステップcで得られた樹脂の、射出成形、押出もしくは付加的製造により、または射出成形および付加的製造の組合せにより製造される、請求項13乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記ステップcで得られた樹脂に、品質管理を施してから、該樹脂をステップdにおいて、玩具組立要素に製造する、請求項13乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記品質管理が、樹脂の1つまたは複数の物理的性質を測定することを含み、前記物理的性質が、
- 衝撃強度、
- 表面摩擦、
- 表面光沢、および
- 色からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ABS廃材が、処分された玩具組立要素であり、ステップcにおいて、前記ステップbで回収されたABSポリマーを1つまたは複数の添加剤と混合することが任意選択である、請求項13乃至18のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクルABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)材料で作られており、リサイクルABSポリマーを含む樹脂を加工することにより製造された、玩具組立要素に関する。
【背景技術】
【0002】
玩具組立要素は、何年もの間製造され、市場に出されている。
【0003】
旧来から、そのような玩具組立要素は、石油ベースポリマー、例えばABSで作られている。
【0004】
ABSは、ポリブタジエンの存在下で、スチレンおよびアクリロニトリルを重合することにより製造されるエンジニアリング熱可塑性ポリマーである。比率は、アクリロニトリルを15から35%に、ブタジエンを5から30%に、またスチレンを40から60%に変動させてよい。ABSは、非晶質-連続相およびゴム状分散相からなる。ポリ(スチレン-co-アクリロニトリル)(SAN)コポリマーは、分散ブタジエンまたはブタジエンコポリマーからなる連続相および第2の相を形成する。ブタジエン粒子は、表面上にグラフトされたSANの層を有し、これが2つの相を適合性にする。ABSの性質は、組成、熱可塑性およびゴム状相の特性、ならびにそれらの間の相互反応により得られる。したがって、SANの含有量および分子量は、性質、例えば加工性、耐熱性、表面硬度および耐化学性を管理する。ブタジエン含有量は、主に靱性に寄与する。
【0005】
ABSは、乳化重合および塊状重合により製造され得る。異なる性質を有するABS材料は、ABSが、乳化または塊状重合によって生成されたかどうかに応じて得られる。例えば、ABS材料の強い光沢面は、ABSを乳化重合により生成する場合に得られ得る一方、弱い表面光沢は、通常、ABS材料が塊状重合により生成された場合に得られる。
【0006】
石油資源の減少および地球温暖化の影響について懸念が強まっていることで、ABSをリサイクルするための技術、およびバイオマスを再生可能資源として使用することにより、ABSポリマーを生成するための技術の開発が奨励されている。
【0007】
ABSは、バイオマスを再生可能資源として使用することにより生成され得る。WO2015/034948 A1は、原材料として再生可能な炭素源を使用して、バイオベース有機化学物質、例えばバイオアクリル酸、バイオアクリロニトリルおよびバイオ1,4-ブタジエンを生成する方法について記載している。第1の段階では、バイオ1,3-プロパンジオールは、微生物発酵を介した再生可能な炭素源に由来し、第2段階では、バイオ1,3-プロパンジオールは、バイオアクリル酸、またはバイオアクリロニトリル、またはバイオ1,4-ブタジオールに変換される。
【0008】
ABSは、炭素捕捉技術を使用して得られた材料、すなわち空気から、または工業プロセスによる気体から直接的に捕捉された一酸化炭素および/または二酸化炭素を使用して、生成された材料を使用することによっても生成され得る。そのような炭素捕捉技術は、例えば吸収、吸着、ケミカルルーピングおよび膜分離技術を含む。捕捉された酸化炭素は、次いで新たなモノマーまたはポリマーを作るための供給源として使用され得る炭化水素、例えばメタノールまたはエタノールに変換され得る。
【0009】
ABSは、ABS材料の機械的または化学的リサイクルによっても得られ得る。
【0010】
ABSの機械的リサイクルは、機械的プロセス、例えば粉砕、洗浄、分離、乾燥、再顆粒化および配合のみを伴う。典型的なリサイクルプロセスでは、廃棄ABSプラスチックが収集され、異物を除去するために洗浄される。清掃されたプラスチックは、次いでフレークに粉砕され、これを配合およびペレット化できる、または顆粒に再加工できる。
【0011】
機械的リサイクルABS材料の使用に関連する問題の1つは、リサイクルABS材料の性質は、通常、バージンABS材料より劣るということである。これは、ABSの耐用期間中、および溶融再加工作業中に発生する分解現象のためであり、溶融再加工作業は、分解効果を加速させる。再加工中に、ABS材料には高温およびせん断応力を施すが、これらは異なるタイプの分解反応を引き起こす。分解の程度は、サイクルの数および加工温度によって決まる。使用済リサイクルABSでは、使用中に光、上昇温度および化学物質に曝露することで、さらなる分解が引き起こされるとも予想される。ABSは、鎖切断および架橋のため分解し、表面に移動し得るオリゴマー生成物、および壊れやすい架橋ポリブタジエン粒子を作り出すと考えられている。化学変化は、例えば衝撃強度に対して著しく悪影響を有し、好適な添加剤を添加することにより、または、それをバージンポリマーとブレンドすることにより、リサイクルポリマーの性能を改善することが必要である。
【0012】
機械的リサイクルABS材料の使用に関する別の問題は、リサイクルに使用される廃棄ABSにおける有害、および/または受け入れられない添加剤、ならびに他の望ましくない物質の存在である。ABS廃材は、典型的には、洗浄してからリサイクルされるが、この洗浄するステップは、廃材内に存在するすべての添加剤および他の望ましくない物質を除去しない。いくつかの種類の添加剤は、有害なことがあり、したがって玩具、例えば玩具組立要素を製造するのに使用される場合、リサイクルABS材料にその存在は受け入れられない。詳細には、規制(EC)No 1272/2008の下に区分1A、1Bまたは2の発癌性、突然変異誘発性または生殖毒性(CMR)として分類される物質は、リサイクル材料に望ましくない物質である。毒性金属の存在も避けなければならない。WEEE(廃電気電子機器)からの廃棄物における難燃剤は、受け入れられないタイプの添加剤のさらなる例である。廃棄ABSに存在し得る他の種類の添加剤は、顔料、例えば酸化鉄を含み、これは、ABS品目が廃棄物として投棄される前に、品目の耐用期間中にABS材料の連続分解に寄与する。他の種類の添加剤は、リサイクルABS材料の衝撃強度に影響を与える耐衝撃性改良剤、材料加工性、また摩擦性に影響を与え得る潤滑剤、ならびにリサイクルABS材料の色および機械的性質の両方に影響を与え得る着色剤であり得る。ABS廃材は、使用フェーズ中に吸収された望ましくない物質も含有し得る。そのような物質は、有機溶媒、清浄剤および食品成分を含み得る。ABS廃材は、他のモノマーおよび溶媒を含む装飾も含有し得る。
【0013】
機械的リサイクルABSポリマーの使用に関するさらに別の問題は、リサイクルABSが暗灰色および黒色でしか市販されていないことである。明るい色に着色されている、リサイクルABS材料で作られた玩具を生産するためには、好適な着色処理が開発されなければならない。
【0014】
ABSの化学的リサイクルは、ABS廃材が元のモノマーおよび/またはオリゴマーに化学的に変換され、これが、新たなバージン様ポリマーを生成して、ABS品目を作り出すのに使用され得る任意のプロセスを指す。このタイプの化学的リサイクルプロセスは、熱分解および化学解重合を含む。化学的リサイクルは、ABS廃材が、好適な溶媒を使用して溶解され得、溶解されたABSポリマーが、次いで典型的にはポリマーを沈殿させることにより、または溶媒を蒸発させることにより回収される任意のプロセスも指す。このタイプの化学的リサイクルプロセスは、典型的には「溶媒溶解」と呼ばれる。
【0015】
熱分解は、酸素なしの上昇温度でABS材料の崩壊を指す。熱分解は、プラスチックを熱分解油にし、これをさらに精製できる。新たなバージン様ポリマーは、次いで生じた油から公知の重合プロセスにより作られ得る。
【0016】
化学解重合は、化学物質を使用して、ポリマーをモノマー、オリゴマー、またはモノマーおよび/もしくはオリゴマーの混合物、ならびに/またはそれらの中間体へと崩壊するプロセスである。プロセスは、モノマー/中間体から添加剤および着色料を除去する。新たなバージン様ポリマーは、モノマーを重合することにより生成され得る。今日、ABS廃材の解重合に好適な、利用できる商用技術は存在しない。しかし新たなバージンABSポリマーは、他のタイプのプラスチック廃棄物の解重合により回収されたモノマーの重合により製造され得る。例えば、WO2016/049782に記載されているように、スチレンモノマーは、ポリスチレンの解重合により回収され得る。
【0017】
溶媒溶解は、溶媒を使用したポリマーの選択的抽出を伴う。任意の添加剤および着色料は除去され、生じたポリマーは、典型的にはポリマーを沈殿させることにより、または溶媒を蒸発させることにより回収される。ポリマー鎖および構造は崩壊していない。溶解に基づくABSのリサイクルについての技術も開発されており、ABSを溶解するために多くの溶媒、例えばアセトンおよびテトラヒドロフラン(THF)が示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】WO2015/034948 A1
【文献】WO2016/049782
【文献】US3,005,282
【文献】US05/877,800
【文献】WO2014/005591
【文献】US4,616,064
【文献】WO2018/089573パラグラフ[0043]~[0072]
【文献】US5,409,967
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
溶媒溶解リサイクルプロセスから回収されたABSポリマーの使用に関する問題の1つは、溶媒抽出が、すべての添加剤も除去することである。これは、リサイクルABS材料が、必要とされる性質、例えば粘度、離型、摩擦、フィラーおよび難燃剤を有さず、新たな保護添加剤、例えば加熱安定剤、抗酸化剤、UV安定剤などを必要とする可能性があることを意味する。
【0020】
溶媒溶解リサイクルプロセスから回収されたABSポリマーの使用に関する別の問題は、溶媒抽出が、異なるSAN鎖およびブタジエン球体の混合物を含有することである。材料成分の予測不可能な混合物を補償するのは難題である。したがって、短鎖または長鎖SANを添加して、レオロジーまたは硬化度を改変することが必要になり得、ブタジエン球体を添加して、衝撃特性を改善することが必要になり得る。異なる種類の添加剤を添加して、溶媒溶解プロセス中の添加剤の喪失を補償することも必要になり得る。
【0021】
リサイクルABSの使用に関する主な問題は、どのように製造されたかに関係なく、バージンポリマー組成物と比較してさほど均一ではないポリマー組成物の回収である。変動の程度は、主に廃材によって決まる:廃材が均一であるほど変動の程度は低くなる。リサイクルABSは、スチレン、ブタジエンとアクリロニトリルの間の比、SANコポリマーの鎖の長さ、ブタジエン球体の大きさおよび大きさ分布、ならびにブタジエン球体の表面へのSANグラフトの拡大に対して高い変動を所有することが予想されるはずである。したがって、さらに重大な試みが、満足すべき性質、例えば満足すべき衝撃強度、表面摩擦および色を有する品目を得るべく、品目、例えば玩具組立要素を製造するために好適かつ有用なリサイクルABSを作るのに必要とされる。詳細には、光沢面を有する品目の製造が目標とされる場合、ABS廃材はあらかじめ、乳化重合により生成されたと把握すること、また、ABS材料におけるブタジエン球体の大きさは、完成した品目の光沢面を得るために重要と分かっているので、好適な大きさのブタジエン球体を含有することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、リサイクルABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)材料で作られており、リサイクルABSポリマーを含む樹脂を加工することにより製造された、玩具組立要素に関する。本発明者らは、玩具組立要素が、リサイクルABSポリマーを含む樹脂を加工することにより製造され得ることを意外にも見出した。
【0023】
第1の態様では、本発明は、リサイクルABS材料で作られた玩具組立要素に関する。
【0024】
第2の態様では、本発明は、リサイクルABS材料で作られた玩具組立要素を製造するための方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】2×4ブロックの旧来からの箱型LEGO(登録商標)を示す図である。
【
図2】溶解リサイクルプロセスから回収された機械的リサイクルABSポリマーおよび/または化学的リサイクルABSポリマーを含む樹脂を加工することにより、玩具組立要素を製造するための方法を示す図である。
【
図3】機械的リサイクルABSポリマーを含む樹脂を加工することにより、玩具組立要素を製造するための方法を示す図である。
【
図4】廃棄ABS材料が処分された玩具組立要素である、機械的リサイクルABSポリマーを含む樹脂を加工することにより、玩具組立要素を製造するための方法を示す図である。
【
図5】溶解リサイクルプロセスから回収された化学的リサイクルABSポリマーを含む樹脂を加工することにより、玩具組立要素を製造するための方法を示す図である。この実施形態では、SAN相およびブタジエン球体の両方がリサイクルされる。
【
図6】溶解リサイクルプロセスから回収された化学的リサイクルABSポリマーを含む樹脂を加工することにより、玩具組立要素を製造するための方法を示す図である。この実施形態では、SAN相のみがリサイクルされ、添加剤およびバージンブタジエン、ならびに任意選択でさらなるABSポリマーと混合される。
【
図7】溶解リサイクルプロセスから回収された化学的リサイクルABSポリマーを含む樹脂を加工することにより、玩具組立要素を製造するための方法を示す図である。この実施形態では、SAN相のみがリサイクルされ、添加剤およびブタジエン含有量が高いバージンABSと混合される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、リサイクルABS材料で作られた玩具組立要素を対象とする。
【0027】
本明細書で使用されている「玩具組立要素」という用語は、上面に突起、および下面に相補的管状部(complementary tubes)を備えた箱型組立ブロックの形態の旧来からの玩具組立要素を含む。旧来からの箱型玩具組立ブロックは、
図1で示されている。旧来からの箱型玩具組立ブロックは、US3,005,282で初めて開示され、LEGO(登録商標)およびLEGO(登録商標)DUPLO(登録商標)の商品名で広く販売されている。この用語は、LEGOグループではない他の会社により生産される、したがって商標LEGOではない他の商標で販売されている、他の同様の箱型組立ブロックも含む。
【0028】
「玩具組立要素」という用語は、典型的には、互いと適合する、したがって、相互につなげることができる複数の組立要素を含む、玩具組立セットのパーツを形成する他の種類の玩具組立要素も含む。そのような玩具組立セットも、商標LEGO、例えばLEGO(登録商標)bricks、LEGO(登録商標)TechnicおよびLEGO(登録商標)DUPLO(登録商標)で販売されている。これらの玩具組立セットのいくつかは、玩具組立フィギュア、例えばLEGO(登録商標)Minifigures(例えばUS05/877,800を参照されたい)を含み、これは、下面に相補的管状部を有し、その結果、フィギュアは、玩具組立セットにおける他の玩具組立要素につなげることができる。そのような玩具組立フィギュアも、「玩具組立要素」という用語により包含される。この用語は、LEGOグループではない他の会社により生産される、したがって商標LEGOではない他の商標で販売されている、同様の玩具組立要素も含む。
【0029】
玩具組立要素は、非常に多様な形状、大きさおよび色で利用できる。LEGO(登録商標)bricksとLEGO(登録商標)DUPLO(登録商標)bricksとの間の違いの1つは大きさであり、LEGO(登録商標)DUPLO(登録商標)brickは、すべての寸法で、LEGO(登録商標)brickの大きさの2倍である。上面に4×2個の突起を有する、旧来からの箱型LEGO(登録商標)玩具組立ブロックの大きさは、長さ約3.2cm、幅約1.6cm、および高さ約0.96cm(突起を除く)であり、各突起の直径は、約0.48cmである。対照的に、上面に4×2個の突起を有するLEGO(登録商標)DUPLO(登録商標)brickの大きさは、長さ約6.4cm、幅約3.2cmおよび高さ約1.92cm(突起を除く)であり、各突起の直径は、約0.96cmである。
【0030】
玩具組立要素は、リサイクルABS材料で作られており、要素は、機械的リサイクルABSポリマーおよび/または溶媒溶解リサイクルプロセスから回収された化学的リサイクルABSポリマーを含む樹脂を加工することにより製造される。
【0031】
本明細書で使用されている「リサイクルABS材料」という用語は、リサイクルABSポリマーを含む樹脂を加工することにより得られるABS材料を指す。リサイクルABSポリマーは、ABS廃材から得られる。ABS廃材は、機械的リサイクルABS材料または化学的リサイクルABS材料であり得る。樹脂中のリサイクルABSポリマーは、機械的リサイクルABSポリマーおよび/または溶媒溶解リサイクルプロセスから回収された化学的リサイクルABSポリマーである。さらに、樹脂は、バージンABSポリマー、および/または熱分解リサイクルプロセスから回収された化学的リサイクルABSポリマー、および/または化学解重合リサイクルプロセスから回収されたリサイクルABSポリマーをさらに含み得る。
【0032】
「機械的リサイクルABS材料」は、ABS材料の機械的リサイクルにより回収されたABS材料を指す。機械的リサイクルは、機械的プロセスのみ、例えば粉砕、洗浄、分離、乾燥、再顆粒化および配合を伴う。典型的なリサイクルプロセスでは、ABS廃材が収集され、異物を除去するために洗浄される。清掃されたプラスチックは、次いでフレークに粉砕され、これを配合およびペレット化できる、または顆粒に再加工できる。
【0033】
「化学的リサイクルABS材料」は、熱分解、化学解重合、溶媒溶解または任意の他の好適な化学的リサイクルプロセスを施したABS廃材から作られたABS材料を含む。
【0034】
「熱分解」は、酸素なしの上昇温度での、ABS材料の熱分解油への崩壊を指す。新たなバージン様ポリマーは、次いで、公知の重合プロセスにより生じた油から作られ得る。
【0035】
「化学解重合」は、化学剤を使用した、ポリマーがモノマー、モノマーの混合物またはその中間体へと崩壊する、プロセスを指す。新たなバージン様ポリマーは、モノマーの重合により生成され得る。
【0036】
「溶媒溶解」は、溶媒を使用したポリマーの選択的抽出を指す。抽出されたポリマーは、ポリマーを沈殿させることにより、または、溶媒を蒸発させることにより回収される。ポリマー鎖および構造は崩壊していない。ブタジエンは、個別の小球体としてABSに存在する。溶媒溶解は、ポリマー鎖における化学結合を変化させないが、ブタジエン球体の形状および大きさの物理的変化に関するリスクが存在する。したがって、溶媒溶解プロセス中にブタジエン球体を処分する必要があり得る。
【0037】
「リサイクルABSポリマー」という用語は、機械的リサイクルABS廃材、または溶媒溶解プロセスにおいてABS廃材から化学的に回収されたポリマーに含まれるABSポリマーを指す。この用語は、熱分解リサイクルプロセス、または化学解重合リサイクルプロセスにおいて生成されたバージン様ABSポリマーも指す。この用語が、バージン様ABSポリマーを指す場合、モノマーの1つのみまたは2つが熱分解または化学解重合によりリサイクルされたポリマーも含む。例えば、この用語は、スチレンモノマーの一部またはすべてが、ポリスチレンの化学解重合によりリサイクルされたABSポリマーを含む一方、アクリロニトリルおよびブタジエンモノマーは、旧来からの製造方法により生成された非リサイクルモノマーであり得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、リサイクルABS材料は、機械的リサイクルABS廃材から得られるリサイクルABSポリマーを含む。他の実施形態では、リサイクルABS材料は、化学的リサイクルABS廃材から得られるリサイクルABSポリマーを含み、ABSポリマーは、溶媒溶解リサイクルプロセスを使用して回収された。さらに他の実施形態では、リサイクルABS材料は、機械的リサイクルABS廃材および化学的リサイクルABS廃材から得られるリサイクルABSポリマーの混合物を含み、ABSポリマーは、溶媒溶解リサイクルプロセスを使用して回収された。さらなる実施形態では、リサイクルABS材料は、バージンABSポリマーおよび/またはバージン様ABSポリマー、すなわち熱分解リサイクルプロセスから、および/または化学解重合リサイクルプロセスから回収されたリサイクルABSポリマーをさらに含み得る。
【0039】
玩具組立要素は、射出成形により、もしくは付加的製造技術により、または射出成形および付加的製造技術の組合せにより製造される。あるいは、玩具組立要素は、押出により製造され、任意選択で熱成形または同様の技術を使用した成形が続く。
【0040】
玩具組立要素の射出成形は、玩具組立ブロックの旧来からの製造手段である。この製造技術は、何年も使用されており、当業者によく周知されている。いくつかの実施形態では、玩具組立要素は、リサイクルABSポリマーを含む樹脂の射出成形により製造される。他の実施形態では、玩具組立要素は、2成分射出成形により製造され、成分の1つは、リサイクルABSポリマーを含む樹脂である。さらに他の実施形態では、玩具組立要素は、多成分射出成形による製造物であり、成分の少なくとも1つが、リサイクルABSポリマーを含む樹脂である。
【0041】
近年、例えばポリマー材料で物体を組み立てるための新たな付加的製造技術が開発されている。本明細書で使用されている「付加的製造」または「付加的に製造される」という用語は、付加的なやり方で、すなわち基材上もしくは新たに添加される材料上に新たな材料を添加することにより、基材もしくは以前に固化した液体層もしくは液滴で薄い液体層もしくは液滴を繰り返し固化することにより、または基材もしくは以前に印刷されたプラスチック材料に熱可塑性ポリマー材料で繰り返し印刷することにより、またはプラスチック材料を、例えばレーザーの使用により付加的なやり方で繰り返し蝋付けすることにより、ブロックが組み立てられることを意味する。
【0042】
いくつかの実施形態では、玩具組立要素は、射出成形により製造される。他の実施形態では、玩具組立要素は、付加的製造により製造される。さらに他の実施形態では、玩具組立要素は、射出成形および付加的製造の組合せにより製造される。そのような組み合わせた製造技術は、例えばWO2014/005591に記載されており、そこでは、旧来からの射出成形された箱型組立ブロックの表面に、材料を各層ごとに付加することにより、高度な設計個性を備えた玩具組立要素が製造される。
【0043】
さらに他の実施形態では、玩具組立要素は、押出により製造される。任意選択で、押出プロセスには、熱成形または同様の技術を使用した成形が続く。
【0044】
ABS材料におけるブタジエン球体の大きさは、ABS材料により製造される品目の表面の光沢度に影響を与えることが公知である。玩具産業では、光沢面は、目標とされることがきわめて多い。したがって、好ましい実施形態では、リサイクルABS材料におけるブタジエン球体の大きさは、0.5マイクロメートル以下である。
【0045】
リサイクルABS材料を使用した新たな玩具組立要素の製造の主な問題の1つは、機械的性質、詳細には衝撃強度が損なわれることである。この問題は、樹脂を玩具組立要素に加工する前に、バージンABSポリマーを樹脂に添加することによって、少なくとも部分的に解決できることがある。あるいは、この問題は、バージン様ABSポリマー、またはバージンおよびバージン様ABSポリマーの混合物を添加することによって解決できる。
【0046】
一実施形態では、樹脂は、バージンABSポリマーをさらに含む。いくつかの実施形態では、バージンABSポリマーの量は、樹脂におけるポリマーの合計量の少なくとも5wt%、例えば少なくとも10wt%、少なくとも30wt%、少なくとも50wt%、少なくとも70wt%または少なくとも90wt%である。他の実施形態では、バージンABSポリマーの量は、樹脂におけるポリマーの合計量の5から95wt%、例えば10~95wt%、30~95wt%、50~95wt%、70~95wt%または80~95wt%の範囲である。さらに他の実施形態では、バージンABSポリマーの量は、樹脂におけるポリマーの合計量の5~50wt%、例えば5~30wt%、5~20wt%または5~10wt%の範囲である。
【0047】
他の実施形態では、樹脂は、バージン様ABSポリマーを含む。本明細書で使用されている「バージン様ABSポリマー」という用語は、熱分解リサイクルプロセスから、および/または化学解重合リサイクルプロセスから回収された化学的リサイクルABSポリマーを意味する。いくつかの実施形態では、バージン様ABSポリマーの量は、樹脂におけるポリマーの合計量の少なくとも5wt%、例えば少なくとも10wt%、少なくとも30wt%、少なくとも50wt%、少なくとも70wt%または少なくとも90wt%である。他の実施形態では、バージン様ABSポリマーの量は、樹脂におけるポリマーの合計量の5から95wt%、例えば10~95wt%、30~95wt%、50~95wt%、70~95wt%または80~95wt%の範囲である。さらに他の実施形態では、バージン様ABSポリマーの量は、樹脂におけるポリマーの合計量の5~50wt%、例えば5~30wt%、5~20wt%または5~10wt%の範囲である。
【0048】
さらに他の実施形態では、樹脂は、バージンおよびバージン様ABSポリマーの混合物を含む。いくつかの実施形態では、バージンおよびバージン様ABSポリマーを組み合わせた量は、樹脂におけるポリマーの合計量の少なくとも5wt%、例えば少なくとも10wt%、少なくとも30wt%、少なくとも50wt%、少なくとも70wt%または少なくとも90wt%である。他の実施形態では、バージンおよびバージン様ABSポリマーを組み合わせた量は、樹脂におけるポリマーの合計量の5から95wt%、例えば10~95wt%、30~95wt%、50~95wt%、70~95wt%または80~95wt%の範囲である。さらに他の実施形態では、バージンおよびバージン様ABSポリマーを組み合わせた量は、樹脂におけるポリマーの合計量の5~50wt%、例えば5~30wt%、5~20wt%または5~10wt%の範囲である。
【0049】
好ましい実施形態では、リサイクルABS廃材は、処分された玩具組立要素であり、したがって、リサイクル材料が玩具組立要素に加工され、その後ペレットまたはフレークに粉砕されたことを除いて、リサイクル材料はバージン材料とまったく同様である。そのようなケースでは、専ら機械的にリサイクルされた玩具組立要素で作られた玩具組立要素は、満足すべき機械的性質、すなわち衝撃強度を有し、機械的性質を改善するための新たな添加剤、例えば耐衝撃性改良剤を組み込むことさえなく製造できることを意外にも見出した。
【0050】
いくつかの実施形態では、樹脂は、いかなるバージンABSポリマーも含有しない。他の実施形態では、バージンABSポリマーの量は、樹脂におけるポリマーの合計量の0から95wt%、例えば0~50wt%、0~25wt%、0~10wt%または0~5wt%の範囲である。
【0051】
機械的リサイクルABSポリマーとバージンABSポリマーとの間の重量比は、100:0から1:99、例えば100:0から10:90、90:10から50:50または50:50から90:10の範囲であり得る。
【0052】
ある実施形態では、リサイクルABS廃材に、溶媒溶解リサイクルプロセスを施す。このプロセスでは、廃材からのABSポリマーは、溶媒に溶解し、その後溶解したABSポリマーは、典型的には、ポリマーを沈殿させることにより、または溶媒を蒸発させることにより回収される。溶解状態では、ポリマーは、2つの相に分離され得;一方の相は、ポリ(スチレン-co-アクリロニトリル)鎖を含有し、SAN相とも呼ばれ、もう一方の相は、ブタジエンコポリマーを含有し、ブタジエン球体とも呼ばれる。
【0053】
いくつかの実施形態では、SAN相およびブタジエン球体の両方をリサイクルすることが好適になり得る一方、他の実施形態では、SAN相のみをリサイクルすることが好適になり得る。SAN相のみが好適にリサイクルされるいくつかのケースでは、リサイクルSANコポリマーは、バージンブタジエンもしくはリサイクルブタジエン、またはそれらの混合物であり得るブタジエンと混合され得る。SAN相のみが好適にリサイクルされる他のケースでは、リサイクルSANコポリマーは、高い含有量のブタジエンを有するABSと混合され得る。高い含有量のブタジエンを有するABSは、バージンABSもしくはリサイクルABS、またはそれらの混合物であり得る。
【0054】
本明細書で使用されている「高い含有量のブタジエンを有するABS」という用語は、少なくとも20wt%のブタジエンを有するABSを意味する。
【0055】
さらに他の実施形態では、樹脂は、機械的リサイクルABSポリマーおよび溶媒溶解リサイクルプロセスから回収された化学的リサイクルABSポリマーを含む。いくつかの実施形態では、樹脂は、バージンABSポリマーをさらに含む。
【0056】
あるいは、樹脂は、機械的リサイクルABSポリマー、リサイクルSANコポリマー、およびさらに、高い含有量のブタジエンを有するABSを含む。高い含有量のブタジエンを有するABSは、バージンABSもしくはリサイクルABS、またはそれらの混合物であり得る。
【0057】
他の実施形態では、樹脂は、機械的リサイクルABSポリマー、および溶媒溶解リサイクルプロセスを施したABS廃棄物から回収されたSAN相を含む。この実施形態では、ブタジエンもしくは高い含有量のブタジエンを有するABS、またはそれらの混合物をさらに添加することが好適になり得る。ブタジエンおよび高い含有量のブタジエンを有するABSは、バージンもしくはリサイクル起源、またはそれらの混合物であり得る。
【0058】
実際の射出成形系では、リサイクルABSの量は、金型および金型ランナー系の体積比により判定される。新たな生産を始動する場合、金型には、最初の実行でバージン材料が供給される。ランナー系に残される、したがって、最終的に射出成形される要素の一部を形成しない材料は、ペレットまたはフレークなどに再度粉砕され、バージン材料と混合されるリサイクル材料として使用され、金型にもう一度供給される。この再循環は、定常状態の状況が達成されるまで続き、リサイクル材料の量は、投入材料のある一定割合を表し、材料の残部はバージン材料である。リサイクル材料のこの一定割合は、「%の定常状態後のリサイクル材料」と呼ばれる。
【0059】
本発明者らは、低%の定常状態後のリサイクル材料を流して、金型で生成された成形要素に対するシャルピーv-ノッチにおける著しい向上が観察されることを意外にも見出した。実施例2に記載されている詳細な例は、42%の定常状態後のリサイクル材料が流れる金型(金型1)であり、108%の相対シャルピーv-ノッチ値を有する成形試験片が生成される。90%の定常状態後のリサイクル材料を流す別の金型(金型2)は、相対シャルピーv-ノッチ値の低下を示さなかった。相対シャルピーv-ノッチ値の低下は、ABS材料がリサイクルされる場合に予想されたので、これらの調査結果は、きわめて想定外であった。
【0060】
したがって、本発明の詳細な好ましい実施形態では、玩具組立要素は、20~95wt%、例えば30~90wt%の定常状態後のリサイクル材料が流れる金型を使用して、射出成形により生成される。
【0061】
玩具組立要素に加工される樹脂は、バイオベースABSポリマーおよび/またはハイブリッドバイオベースABSポリマーを含み得る。
【0062】
本明細書で使用されている「バイオベースABSポリマー」という用語は、バイオマスに由来するモノマーの化学または生化学重合により生成されたABSポリマーを意味する。いくつかの実施形態では、バイオベースのポリマーは、すべてバイオマスに由来するモノマーの化学重合により生成される。他の実施形態では、バイオベースポリマーは、すべてバイオマスに由来するモノマーの生化学重合により生成される。
【0063】
本明細書で使用されている「ハイブリッドバイオベースABSポリマー」という用語は、ABSモノマーの少なくとも1つが、バイオマスに由来し、ABSモノマーの少なくとも1つが、石油、石油副産物または石油に由来する原材料に由来する、重合により生成されたABSポリマーを意味する。ABSモノマーは、バージンモノマー、化学的リサイクルモノマーまたはバージンおよびリサイクルモノマーの混合物であり得る。重合プロセスは、典型的には化学重合プロセスである。
【0064】
いくつかの実施形態では、リサイクルABSポリマーの少なくとも一部は、バイオベースABSポリマーおよび/またはハイブリッドバイオベースABSポリマーである。他の実施形態では、バージンABSポリマーの少なくとも一部は、バイオベースABSポリマーおよび/またはハイブリッドバイオベースABSポリマーである。さらに他の実施形態では、リサイクルABSポリマーの少なくとも一部およびバージンABSポリマーの少なくとも一部は、バイオベースABSポリマーおよび/またはハイブリッドバイオベースABSポリマーである。
【0065】
さらに他の実施形態では、玩具組立要素は、炭素捕捉技術を使用して生成されたABSポリマーを含み得る。本明細書で使用されている「炭素捕捉技術を使用して生成されたABSポリマー」という用語は、空気から、または工業プロセスによる気体から直接的に捕捉された一酸化炭素および/または二酸化炭素からの炭素原子を含有するポリマーを意味する。
【0066】
一実施形態では、樹脂におけるABSポリマーの合計量は、樹脂の合計重量に対して少なくとも50wt%である。他の実施形態では、ABSポリマーの合計量は、樹脂の合計重量に対して少なくとも60wt%、または少なくとも70wt%、または少なくとも80wt%である。他の実施形態では、ABSポリマーの合計量は、樹脂の合計重量に対して少なくとも85wt%、例えば少なくとも90wt%である。
【0067】
別の実施形態では、樹脂におけるABSポリマーの合計量は、樹脂の合計重量に対して50~99wt%である。他の実施形態では、ABSポリマーの合計量は、樹脂の合計重量に対して60~95wt%、または70~90wt%、または80~85wt%である。他の実施形態では、ABSポリマーの合計量は、樹脂の合計重量に対して85~97wt%、または90~97wt%、または90~95wt%、または90~92wt%である。
【0068】
本明細書で使用されている「樹脂におけるABSポリマーの合計量」という用語は、ABSポリマーが、リサイクルABSポリマー、バージンABSポリマー、バイオベースABSポリマー、ハイブリッドバイオベースABSポリマーおよび/または炭素捕捉技術を使用して生成されたABSポリマーであるかどうかに関係なく、樹脂におけるABSポリマーの合計量を意味する。
【0069】
樹脂を加工することにより製造される玩具組立要素の性質を改善するために、リサイクルABSポリマーを含む樹脂に、添加剤を添加することは有益になり得る。いくつかの実施形態では、リサイクルABSポリマーを含む樹脂は、1つまたは複数の添加剤、例えば耐衝撃性改良剤、フィラー、抗酸化剤、潤滑剤、難燃剤、着色料、光安定剤/UV吸収剤および可塑剤を含む。
【0070】
耐衝撃性改良剤は、反応性耐衝撃性改良剤であり得、または非反応性耐衝撃性改良剤であり得る。いくつかの実施形態では、リサイクルABSポリマーの樹脂は、反応性および非反応性耐衝撃性改良剤の両方を含み得る。好ましい実施形態では、樹脂は、反応性耐衝撃性改良剤を含む。
【0071】
本明細書で使用されている「耐衝撃性改良剤」という用語は、樹脂に添加される場合、射出成形されたABS要素の衝撃強度を増強させる作用剤を意味する。
【0072】
反応性耐衝撃性改良剤は、官能基化された末端基を有する。官能基化は、2つの目的:1)耐衝撃性改良剤をポリマーマトリックスに結合させること、および2)分散を向上させるために、ポリマーマトリックスと耐衝撃性改良剤との間の界面エネルギーを改変することを果たす。そのような官能基化された末端基の好ましい例は、メタクリル酸グリシジル、無水マレイン酸およびカルボン酸を含む。
【0073】
本発明では、反応性耐衝撃性改良剤が好ましい。好ましい実施形態では、耐衝撃性改良剤は、式X/Y/Zのコポリマーであり、式中、Xは、2~8個の炭素原子を有する脂肪族または芳香族炭化水素ポリマーであり、Yは、3~6個および4~8個の炭素原子をそれぞれ有するアクリレートまたはメタクリレートを含む部分であり、Zは、メタクリル酸、メタクリル酸グリシジル、無水マレイン酸またはカルボン酸を含む部分である。
【0074】
好ましい一実施形態では、耐衝撃性改良剤は、式:
[化1]
(式中、
nは、1から4の整数であり、
mは、0から5の整数であり、
kは、0から5の整数であり、
Rは、1から5個の炭素または1個の水素原子のアルキルである)により説明され得る。
【0075】
Xは、耐衝撃性改良剤の40~90%(wt/wt)を構成し、Yは、耐衝撃性改良剤の0~50%(wt/wt)、例えば10~40%(wt/wt)、好ましくは15~35%(wt/wt)、最も好ましくは20~35%(wt/wt)を構成し、Zは、耐衝撃性改良剤の0.5~20%(wt/wt)、好ましくは2~10%(wt/wt)、最も好ましくは3~8%(wt/wt)を構成する。
【0076】
他の実施形態では、Xは、耐衝撃性改良剤の70~99.5%(wt/wt)、好ましくは80~95%(wt/wt)、最も好ましくは92~97%(wt/wt)を構成し、Yは、耐衝撃性改良剤の0%(wt/wt)を構成し、Zは、耐衝撃性改良剤の0.5~30%(wt/wt)、好ましくは5~20%(wt/wt)、最も好ましくは3~8%(wt/wt)を構成する。
【0077】
本発明の樹脂に使用され得る特定の耐衝撃性改良剤の好適な例は、エチレン-アクリル酸エチレン-メタクリル酸グリシジルおよびエチレン-アクリル酸ブチル-メタクリル酸グリシジルを含む。市販されている耐衝撃性改良剤は、Paraloid(商標)EXM-2314(Dow Chemical Companyからのアクリルコポリマー)、Lotader(登録商標)AX8700、Lotader(登録商標)AX8900、Lotader AX8750(登録商標)、Lotader(登録商標)AX8950およびLotader(登録商標)AX8840(Arkemaにより製造される)、ならびにElvaloy(登録商標)PTW(DuPontにより製造される)を含む。
【0078】
本発明の樹脂に使用され得る特定の耐衝撃性改良剤の他の好適な例は、無水物変性エチレンアクリレートを含む。市販されている耐衝撃性改良剤は、Lotader(登録商標)3210、Lotader(登録商標)3410、Lotader(登録商標)4210、Lotader(登録商標)3430、Lotader(登録商標)4402、Lotader(登録商標)4503、Lotader(登録商標)4613、Lotader(登録商標)4700、Lotader(登録商標)5500、Lotader(登録商標)6200、Lotader(登録商標)8200、Lotader(登録商標)HX8210、Lotader(登録商標)HX8290、Lotader(登録商標)LX4110、Lotader(登録商標)TX8030(Arkemaにより製造される)、Bynel(登録商標)21E533、Bynel(登録商標)21E781、Bynel(登録商標)21E810およびBynel(登録商標)21E830(DuPontにより製造される)を含む。
【0079】
他の実施形態では、耐衝撃性改良剤は、変性エチレン酢酸ビニル、例えばBynel(登録商標)1123もしくはBynel(登録商標)1124(DuPontにより製造される)、酸変性アクリル酸エチレン、例えばBynel(登録商標)2002もしくはBynel(登録商標)2022(DuPontにより製造される)、変性アクリル酸エチレン、例えばBynel(登録商標)22E757、Bynel(登録商標)22E780もしくはBynel(登録商標)22E804(DuPontにより製造される)、無水物変性エチレン酢酸ビニル、例えばBynel(登録商標)30E670、Bynel(登録商標)30E671、Bynel(登録商標)30E753もしくはBynel(登録商標)30E783(DuPontにより製造される)および酸/アクリレート変性エチレン酢酸ビニル、例えばBynel(登録商標)3101もしくはBynel(登録商標)3126(DuPontにより製造される)、無水物変性エチレン酢酸ビニル、例えばBynel(登録商標)E418、Bynel(登録商標)3810、Bynel(登録商標)3859、Bynel(登録商標)3860もしくはBynel(登録商標)3861(DuPontにより製造される)、無水物変性エチレン酢酸ビニル、例えばBynel(登録商標)3930もしくはBynel(登録商標)39E660(DuPontにより製造される)および無水物変性高密度ポリエチレン、例えばBynel(登録商標)4033もしくはBynel(登録商標)40E529(DuPontにより製造される)、無水物変性直鎖状低密度ポリエチレン、例えばBynel(登録商標)4104、Bynel(登録商標)4105、Bynel(登録商標)4109、Bynel(登録商標)4125、Bynel(登録商標)4140、Bynel(登録商標)4157、Bynel(登録商標)4164、Bynel(登録商標)41E556、Bynel(登録商標)41E687、Bynel(登録商標)41E710、Bynel(登録商標)41E754、Bynel(登録商標)41E755、Bynel(登録商標)41E762、Bynel(登録商標)41E766、Bynel(登録商標)41E850、Bynel(登録商標)41E865もしくはBynel(登録商標)41E871(DuPontにより製造される)、無水物変性低密度ポリエチレン、例えばBynel(登録商標)4206、Bynel(登録商標)4208、Bynel(登録商標)4288もしくはBynel(登録商標)42E703(DuPontにより製造される)または無水物変性ポリプロピレン、例えばBynel(登録商標)50E571、Bynel(登録商標)50E662、Bynel(登録商標)50E725、Bynel(登録商標)50E739、Bynel(登録商標)50E803もしくはBynel(登録商標)50E806(DuPontにより製造される)である。
【0080】
他の好適な耐衝撃性改良剤は、無水マレイン酸グラフト耐衝撃性改良剤を含む。そのような耐衝撃性改良剤の特定の例は、化学変性アクリル酸エチレンコポリマー、例えばFusabond(登録商標)A560(DuPontにより製造される)、無水物変性ポリエチレン、例えばFusabond(登録商標)E158(DuPontにより製造される)、無水物変性ポリエチレン樹脂、例えばFusabond(登録商標)E564もしくはFusabond(登録商標)E589もしくはFusabond(登録商標)E226もしくはFusabond(登録商標)E528(DuPontにより製造される)、無水物変性高密度ポリエチレン、例えばFusabond(登録商標)E100もしくはFusabond(登録商標)E265(DuPontにより製造される)、無水物変性エチレンコポリマー、例えばFusabond(登録商標)N525(DuPontにより製造される)、または化学変性プロピレンコポリマー、例えばFusabond(登録商標)E353(DuPontにより製造される)を含む。
【0081】
さらに他の好適な耐衝撃性改良剤は、エチレン-酸コポリマー樹脂、例えばエチレン-メタクリル酸(EMAA)ベースコポリマーおよびエチレン-アクリル酸(EAA)ベースコポリマーを含む。エチレン-メタクリル酸ベースコポリマー耐衝撃性改良剤の特定の例は、Nucrel(登録商標)403、Nucrel(登録商標)407HS、Nucrel(登録商標)411HS、Nucrel(登録商標)0609HSA、Nucrel(登録商標)0903、Nucrel(登録商標)0903HC、Nucrel(登録商標)908HS、Nucrel(登録商標)910、Nucrel(登録商標)910HS、Nucrel(登録商標)1202HC、Nucrel(登録商標)599、Nucrel(登録商標)699、Nucrel(登録商標)925およびNucrel(登録商標)960(DuPontにより製造される)を含む。エチレン-アクリル酸ベースコポリマーの特定の例、Nucrel(登録商標)30707、Nucrel(登録商標)30907、Nucrel(登録商標)31001、Nucrel(登録商標)3990およびNucrel(登録商標)AE(DuPontにより製造される)。エチレン-アクリル酸(EAA)ベースコポリマーのエチレンの他の特定の例は、Escor(商標)5000、Escor(商標)5020、Escor(商標)5050、Escor(商標)5080、Escor(商標)5100、Escor(商標)5200およびEscor(商標)6000(ExonMobile Chemicalにより製造される)を含む。
【0082】
他のさらに好適な耐衝撃性改良剤は、エチレン酸コポリマーのイオノマーを含む。そのような耐衝撃性改良剤の特定の例は、Surlyn(登録商標)1601、Surlyn(登録商標)1601-2、Surlyn(登録商標)1601-2LM、Surlyn(登録商標)1605、Surlyn(登録商標)8150、Surlyn(登録商標)8320、Surlyn(登録商標)8528およびSurlyn(登録商標)8660(DuPontにより製造される)を含む。
【0083】
他の実施形態では、耐衝撃性改良剤は、メタクリル酸アルキル-シリコーン/アクリル酸アルキルグラフトコポリマーである。グラフトコポリマーの「メタクリル酸アルキル」は、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピルおよびメタクリル酸ブチルからなる群から選択されるものであり得る。グラフトコポリマーにおける「シリコーン/アクリル酸アルキル」は、シリコーンモノマーおよびアクリル酸アルキルモノマーの混合物を重合することにより得られるポリマーを指す。シリコーンモノマーは、ジメチルシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサンおよびオクタフェニルシクロテトラシロキサンからなる群から選択され得る。アルキルモノマーは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチルおよびメタクリル酸ブチルからなる群から選択され得る。グラフトコポリマーは、コアシェルゴムの形態であり、5から90%(wt/wt)のグラフト率、-150から-20℃のコアのガラス転移温度、および20から200℃のシェルのガラス転移温度を有する。本発明の一実施形態では、グラフトコポリマーは、メタクリル酸メチル-シリコーン/アクリル酸ブチルグラフトコポリマーである。特定の例は、日本のMitsubishi Rayon Co.,Ltd.により製造されるS-2001、S-2100、S-2200およびS-2501を含む。
【0084】
他の好適な耐衝撃性改良剤は、US4,616,064で言及されているシロキサンポリマーを含み、これは、シロキサン単位および少なくとも1つのカーボネート、ウレタンまたはアミド単位を含有する。
【0085】
好適な耐衝撃性改良剤は、WO2018/089573パラグラフ[0043]~[0072]で言及されているものも含む。
【0086】
他の好適な耐衝撃性改良剤は、コアシェル耐衝撃性改良剤、例えばUS5,409,967で言及されているものを含む。
【0087】
リサイクルABSポリマーを含む樹脂は、フィラーも含み得る。フィラーの好適な例は、無機微粒子材料、ナノ複合材料またはそれらの混合物を含む。
【0088】
無機微粒子材料の好適な例は、無機オキシド、例えばガラス、MgO、SiO2、TiO2およびSb2O3;水酸化物、例えばAl(OH)3およびMg(OH)2;塩、例えばCaCO3、BaSO4、CaSO4およびホスフェート;シリケート、例えば滑石、マイカ、カオリン、珪灰石、モンモリロナイト、ナノクレイ、長石およびアスベスト;金属、例えばホウ素および鋼鉄;カーボン-グラファイト、例えば炭素繊維、グラファイト繊維およびフレーク、カーボンナノチューブおよびカーボンブラックを含む。無機微粒子材料の好適な例は、表面処理および/または表面改質したSiO2およびTiO2、例えばアルミナ表面改質TiO2も含む。
【0089】
ナノ複合材料の好適な例は、クレイ充填ポリマー、例えばクレイ/低密度ポリエチレン(LDPE)ナノ複合材料、クレイ/高密度ポリエチレン(HDPE)ナノ複合材料、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)/クレイナノ複合材料、ポリイミド(PI)/クレイナノ複合材料、エポキシ/クレイナノ複合材料、ポリプロピレン(PP)/クレイナノ複合材料、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)/クレイナノ複合材料およびポリ塩化ビニル(PVC)/クレイナノ複合材料;アルミナ充填ポリマー、例えばエポキシ/アルミナナノ複合材料、PMMA/アルミナナノ複合材料、PI/アルミナナノ複合材料、PP/アルミナナノ複合材料、LDPE/アルミナナノ複合材料および架橋ポリエチレン(XLPE)/アルミナナノ複合材料;チタン酸バリウム充填ポリマー、例えばHDPE/チタン酸バリウムナノ複合材料およびポリエーテルイミド(PEI)/チタン酸バリウムナノ複合材料;シリカ充填ポリマー、例えばPP/シリカナノ複合材料、エポキシ/シリカナノ複合材料、PVC/シリカナノ複合材料、PEI/シリカナノ複合材料、PI/シリカナノ複合材料、ABS/シリカナノ複合材料およびPMMA/シリカナノ複合材料;ならびに酸化亜鉛充填ポリマー、例えばLDPE/酸化亜鉛ナノ複合材料、PP/酸化亜鉛ナノ複合材料、エポキシ/酸化亜鉛ナノ複合材料およびPMMA/酸化亜鉛ナノ複合材料を含む。
【0090】
リサイクルABSポリマーを含む樹脂は、抗酸化剤も含み得る。抗酸化剤の好適な例は、ホスファイト、フェノール類、アミンおよびそれらのいずれかの混合物を含む。
【0091】
リサイクルABSポリマーを含む樹脂は、潤滑剤も含み得る。潤滑剤の添加は、満足すべき表面性状、例えば満足すべき表面摩擦を有する玩具組立要素を得るためにきわめて重要であり得る。潤滑剤の好適な例は、脂肪酸、脂肪酸アミドおよびビスアミド、脂肪酸エステル、ステアリン酸、金属ステアリン酸塩、無機ステアリン酸塩、モンタンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、シリコーンベース潤滑剤、ならびにそれらのいずれかの混合物を含む。
【0092】
リサイクルABSポリマーを含む樹脂は、難燃剤も含み得る。難燃剤の好適な例は、無機難燃剤、例えば水酸化マグネシウムまたはアルミニウム、有機難燃剤、例えばカルボン酸および有機リン難燃剤を含む。
【0093】
リサイクルABSポリマーを含む樹脂は、着色料も含み得る。着色料の好適な例は、有機顔料、無機顔料、油溶性染料、亜鉛フェライト、カーボンブラック、二酸化チタンおよび酸化アルミニウムを含む。
【0094】
リサイクルABSポリマーを含む樹脂は、光安定剤および/またはUV吸収剤も含み得る。光安定剤/UV吸収剤の好適な例は、ベンゾエート、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミンおよびトリアジンを含む。
【0095】
リサイクルABSポリマーを含む樹脂は、可塑剤も含み得る。可塑剤の好適な例は、炭化水素プロセスオイル、リン酸エステル、例えばリン酸トリフェニルおよびレゾルシノールビス(リン酸ジフェニル)またはオリゴマーホスフェート、長鎖脂肪酸および芳香族スルホンアミドを含む。
【0096】
ABS廃材のタイプおよび取合せは、樹脂におけるABSポリマーの均一性に重要である。廃材が均一なほど、均一な樹脂が得られる。均一な長さおよび架橋、ならびにブタジエン球体の大きさのリサイクルABSポリマーを有する樹脂を使用することが有利である。一実施形態では、リサイクルABSポリマーは、玩具産業からのABS廃材から生成される。
【0097】
好ましい実施形態では、ABS廃材は、処分された玩具組立要素である。製造者の自社生産プラントから処分された玩具組立要素を使用する主な利点は、その化学組成が公知であること、また、材料をどのように加工するかも公知であることである。廃材がリサイクルの前に色分けされると、均一な色を有するリサイクル玩具組立要素を生成しやすくなることがある。廃材がリサイクルの前に色分けされていないと、満足すべき色を有する最終玩具組立要素を得るためには、最初に着色料を除去し、次いで新たな着色料を添加することが必要になり得る。
【0098】
いくつかのABS廃材は、有害な添加剤を含有し、したがって玩具、例えば玩具組立要素を製造するのに使用される場合、リサイクルABS材料にその存在が受け入れられない。そのような有害な添加剤の例は、有害な難燃剤、例えばハロゲン化難燃剤、可塑剤、例えばフタレートおよびビスフェノールA、有害な潤滑剤、例えばフルオロポリマー、ならびに無機材料、例えばカドミウムおよびマンガンを含む。廃棄ABSに存在し得る他の種類の添加剤は、顔料、例えば酸化鉄を含み、これは、ABS品目が廃棄物として投棄される前に、品目の耐用期間中にABS材料の連続分解に寄与する。
【0099】
一般に、リサイクルABS材料は、例えば規制(EC)No 1907/2006および玩具安全指令(2009/48/EC)で指定されている要件を満たさなければならず、そうでなければABS廃材は、玩具組立要素の製造における使用に好適ではない。
【0100】
詳細には、規制(EC)No 1272/2008の下に区分1A、1Bまたは2の発癌性、突然変異誘発性または生殖毒性(CMR)として分類される物質の量は、規定制限範囲未満でなければならない。したがって、区分1Aおよび1Bの発癌性物質の合計含有量は、1000ppm以下でなければならない一方、区分2の発癌性物質の合計含有量は、10000ppm以下でなければならない。区分1Aおよび1Bの突然変異誘発物質の合計含有量は、1000ppm以下でなければならない一方、区分2の突然変異誘発物質の合計含有量は、10000ppm以下でなければならない。区分1Aおよび1Bの生殖毒性である物質の合計含有量は、3000ppm以下でなければならない一方、区分2の生殖毒性である物質の合計含有量は、30000ppm以下でなければならない。
【0101】
ABS廃材における金属の含有量は、例えば玩具安全指令(2009/48/EC)において指定されている移行限度未満であることも重要であり、そうでなければ廃材は、玩具組立要素の製造における使用に好適ではない。詳細には、以下の移行限度は:アルミニウム:70000mg/kg、アンチモン:560mg/kg、ヒ素:47mg/kg、バリウム:18750mg/kg、ホウ素:15000mg/kg、カドミウム17mg/kg、クロム(III):460mg/kg、クロム(IV):0.053mg/kg、コバルト:130mg/kg、銅:7700mg/kg、鉛:160mg/kg、マンガン:15000mg/kg、水銀:94mg/kg、ニッケル:930mg/kg、セレン:460mg/kg、ストロンチウム:56000mg/kg、スズ:180000mg/kg、有機スズ:12mg/kg、および亜鉛:46000mg/kgを超えてはならない。
【0102】
均一な物理的および化学的性質の、有害ではないABS廃材を達成するために、リサイクル前に廃材をスクリーニングすることが有益になり得る、またはさらに必要になり得る。そのようなスクリーニングは、ブタジエンコポリマー対SANの比を定量化するための、発癌性物質、突然変異誘発物質、生殖毒性である物質、抗酸化剤、重金属、ハロゲン化物、潤滑剤、難燃剤、着色料などを検出および/または定量化するための分析法を含み得る。好適な分析法は、ブタジエンコポリマー対SANの比を判定する減衰全反射フーリエ変換赤外分光法(ATR-FTIR)、廃材の熱酸化安定性を判定するための熱重量分析(TGA)および/または示差走査熱量測定-酸化誘導時間(DSC-OIT)、重金属および/またはハロゲン化物などの量を判定するためのX線蛍光分光法(XRF)を含み得る。ABS廃材を、ブタジエン球体の大きさについてスクリーニングすること、および球体がSAN相内に分布しているかどうかを調査することも必要になり得る。SAN相におけるブタジエン球体の分布を判定するための直接的方法は、走査電子顕微鏡法(SEM)および透過電子顕微鏡法(TEM)を含む一方、間接的手法は、再成形要素の光沢の測定を含む。
【0103】
本発明は、玩具組立要素を製造するための方法にも関する。この方法は、
図2で示されている。この方法は、
a)ABS廃材を用意し、スクリーニングするステップと、
b)ステップaのABS廃材に、粉砕および/または溶媒溶解リサイクルプロセスを施すことにより、スクリーニングしたABS廃材からリサイクルABSポリマーを回収するステップと、
c)ステップbの回収されたABSポリマーを、1つまたは複数の添加剤、ならびに任意選択でバージンABSポリマー、熱分解から回収された化学的リサイクルABSポリマーおよび化学解重合から回収された化学的リサイクルABSポリマーからなる群から選択される1つまたは複数のABSポリマーと混合することにより、樹脂を得るステップと、
d)ステップcの樹脂を加工することにより、玩具組立要素を製造するステップと、
を含む。
【0104】
ステップcで得られ、ステップdで加工される好適な樹脂は、上記のものを含む。
【0105】
樹脂におけるリサイクルABSポリマーは、ABS廃材から生じ、これに、樹脂に組み込まれる前に1つまたは複数のスクリーニングプロセスを施し、その結果有害ではなく、かつ/または受け入れられる添加剤を含む材料のみが樹脂に組み込まれる。
【0106】
ステップaでは、ABS廃材が:
- 規制(EC)No 1272/2008の下に、区分1A、1Bまたは2の発癌性、突然変異誘発性または生殖毒性(CMR)として分類される物質の量、
- アルミニウム、アンチモン、ヒ素、バリウム、ホウ素、カドミウム、クロム(III)、クロム(IV)、コバルト、銅、鉛、マンガン、水銀、セレン、ストロンチウム、スズ、有機スズおよび亜鉛からなる群から選択される1つまたは複数の金属の移行限度、
- オキシドの量、
- フタレートの量、
- 難燃剤の量、
- ブタジエンコポリマー対SANの比、
- ブタジエン球体の大きさおよび大きさ分布、ならびに
- ブタジエン球体の架橋のレベルからなる群から選択される少なくとも1つの性質についてスクリーニングされる。
【0107】
規制(EC)No 1272/2008の下に区分1A、1Bまたは2の発癌性、突然変異誘発性または生殖毒性(CMR)として分類される物質の量は、規定制限範囲未満であることがきわめて重要であり、そうでなければ廃材は、玩具を製造するための使用に好適ではない。したがって、区分1Aおよび1Bの発癌性物質の合計含有量は、1000ppm以下でなければならない一方、区分2の発癌性物質の合計含有量は、10000ppm以下でなければならない。区分1Aおよび1Bの突然変異誘発物質の合計含有量は、1000ppm以下でなければならない一方、区分2の突然変異誘発物質の合計含有量は、10000ppm以下でなければならない。区分1Aおよび1Bの生殖毒性である物質の合計含有量は、3000ppm以下でなければならない一方、区分2の生殖毒性である物質の合計含有量は、30000ppm以下でなければならない。
【0108】
ABS廃材における金属の含有量は、例えば玩具安全指令(2009/48/EC)において指定されている移行限度未満であることも重要であり、そうでなければ廃材は、玩具組立要素の製造における使用に好適ではない。詳細には、以下の移行限度:アルミニウム:70000mg/kg、アンチモン:560mg/kg、ヒ素:47mg/kg、バリウム:18750mg/kg、ホウ素:15000mg/kg、カドミウム17mg/kg、クロム(III):460mg/kg、クロム(IV):0.053mg/kg、コバルト:130mg/kg、銅:7700mg/kg、鉛:160mg/kg、マンガン:15000mg/kg、水銀:94mg/kg、ニッケル:930mg/kg、セレン:460mg/kg、ストロンチウム:56000mg/kg、スズ:180000mg/kg、有機スズ:12mg/kg、および亜鉛:46000mg/kgを超えてはならない。
【0109】
この量の酸化鉄も、ABSポリマーの経時的な化学的分解を避けるために、詳細には、製造される玩具組立要素の機械的性質を乏しくする、したがって、生成物の安全性の問題になるABSモノマーの形成を避けるために、きわめて低いレベルで保持されなければならない。ABS廃材が玩具の製造に使用される場合、この量の毒性化合物、例えばフタレートおよび難燃剤も避けなければならない。
【0110】
廃棄ABS材料が、ブタジエンコポリマー対SANの比、およびブタジエン球体の大きさについてスクリーニングされることも重要である。ABS材料におけるブタジエン含有量は、好ましくは合計ABSポリマーに対して15~22wt%の範囲である。製造される玩具組立要素の光沢面を得るために、ブタジエン球体の大きさは、好ましくは0.5マイクロメートル以下である。
【0111】
いくつかのケースでは、廃棄ABS材料は、きわめて不均質になり得、そのようなケースでは、上で言及されている性質についてスクリーニングする前に、廃棄ABS材料を仕分けることが必要になり得る。
【0112】
ステップbでは、リサイクルABSポリマーを回収するために、スクリーニングしたABS廃材に、粉砕および/または溶媒溶解リサイクルプロセスを施す。
【0113】
機械的リサイクルABSポリマーを含む樹脂を加工することにより、玩具組立要素を製造する方法は、
図3および4で示されている。この方法では、スクリーニングしたABS廃材に粉砕を施す。粉砕するステップでは、リサイクル材料は、材料の小片に破砕/切断する。このステップは、添加剤および任意選択で他のABSポリマーと容易に混合され、玩具組立要素の製造中、すなわち射出成形、押出または付加的製造プロセス中に容易に溶融される材料の均質な混合物を得るために重要である。
【0114】
化学的リサイクルABSポリマーを含む樹脂を加工することにより玩具組立要素を製造する方法は、
図5、6および7で示されている。この方法では、スクリーニングしたABS廃材に、溶媒溶解リサイクルプロセスを施す。典型的には、廃材の溶解を促進するために、溶解する前に廃棄ABS材料に粉砕を施すが、粉砕するステップは必須ではない。溶解ステップ中に、ABS廃材が溶解され、ABSポリマーは、2つの相に分けられ:一方相は、ポリ(スチレン-co-アクリロニトリル)鎖を含有し、SAN相とも呼ばれ、もう一方の相は、ブタジエンコポリマーを含有し、ブタジエン球体とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、SAN相およびブタジエン球体のいずれもリサイクルされる(
図5)一方、他の実施形態では、SAN相のみがリサイクルされる(
図6および7)。
【0115】
ステップcでは、リサイクルABSポリマーは、他の化合物と混合され、樹脂に形成される。好ましくは、混合するステップは、配合するステップである。混合中に、リサイクルABSポリマー、ならびに任意選択でバージンおよび/またはバージン様ABSポリマーと混合される1つまたは複数の添加剤は、樹脂中にも混合され得る。好適添加剤は、耐衝撃性改良剤、フィラー、抗酸化剤、潤滑剤、難燃剤、着色料、光安定剤/UV吸収剤および/または可塑剤を含む。バージンおよび/またはバージン様ABSポリマーは、バイオベースABSポリマーおよび/またはハイブリッドバイオベースポリマーであり得る。さらに、バージン様ABSポリマーは、化学熱分解リサイクルプロセスまたは化学解重合リサイクルプロセスから回収されたABSポリマーであり得る。
【0116】
詳細な好ましい実施形態では、廃棄ABS材料は、
図4に示されているように、処分された玩具組立要素である。これらの実施形態では、添加剤の添加は不要なことがあるが、その理由は、処分された玩具組立要素が、必要とされる性質を有する玩具組立要素を製造するのに必要な機械的性質を既に所有していることがあるためである。
【0117】
ステップdでは、玩具組立要素は、ステップcで得られた樹脂を加工することにより製造される。いくつかの実施形態では、玩具組立要素は、射出成形により製造される。そのような実施形態では、リサイクルABSポリマーを添加剤および/または着色料、ならびに任意選択でさらなるバージンまたはバージン様ABSポリマーと混合することは、樹脂の射出成形機への供給前に行われ得る。いくつかの実施形態では、混合は、乾燥混合ステップまたは配合ステップとして行われ得る。他の実施形態では、混合は、射出成形ステップの前に押出機で配合ステップを使用することにより行われ得る。さらに他の実施形態では、添加剤は、マスターバッチに混合され得、これは、次いで射出成形機の供給中にABS樹脂の残部と混合される。あるいは、混合は、樹脂の射出成形機への供給中に行われ得る。
【0118】
さらに他の実施形態では、玩具組立要素は、押出により製造され、任意選択で熱成形または同様の技術を使用した成形が続く。
【0119】
いくつかの実施形態では、玩具組立要素は、付加的製造により製造される。付加的製造技術の好適な例は、玩具組立要素が、光重合付加的製造または熱可塑性付加的製造、例えば液体ベースの付加的製造、トナーベースの付加的製造、粉末ベースの付加的製造または顆粒ベースの付加的製造により組み立てられるものである。
【0120】
好ましくは、この方法は、ステップcで得られた樹脂に品質管理を施してから、ステップdにおいて、樹脂を玩具組立要素に製造するステップも含有する。品質管理は、主に、必要とされる性質を有する最終玩具組立要素を得るために必要な重要な機械的性質を確かめることである。典型的に測定される機械的性質の例は、衝撃強度、表面摩擦、表面光沢および色の1つまたは複数を含む。
【0121】
実施例
以下の実施例では、ABSが、成形要素およびランナーを粉砕再生すること、次いで、射出成形により新たな要素を生成するためにこの粉砕再生材料を使用することによりどのように再循環されるかについて記載されている。実施例1では、すべてのABS材料がリサイクルされ、実施例2では、リサイクルABSが、バージンABSと混合されてから、新たな要素が射出成形される。射出成形された要素の衝撃強度は、「シャルピーv-ノッチテスト」によりテストされる。
【0122】
シャルピーv-ノッチテスト
寸法6.0×4.0×50.0mm3、B×W×Hの、また、テストされる関連性がある材料における、成形されたプラスチック棒を、ISO 179-1/1 eAに従って、ノッチ先端の直径が0.5mmのノッチカッター(ZNO、Zwick、Germany)で切断した。ノッチ付試験片を、v-ノッチを振子の反対側にして置き、ISO 179-1:2010に記載されている原理に従って、振子型衝撃試験機(HOT、Zwick、Germany)でテストした。
【実施例1】
【0123】
機械的リサイクルからのABSの性質 - ABSの完全リサイクル
Virgin ABS Terluran(登録商標)GP35(INEOS Styrolutionにより供給される)を、80℃で4時間乾燥させた。ABSは、射出成形(Arburg、Allrounder 470E 1000-400、30mmスクリュー、Germany)を経由して、衝撃試験片およびランナーに加工した。10本の衝撃試験片をシャルピーv-ノッチテストでテストし、結果は、以下の表で0回の粉砕再生サイクルとして記録されている。
【0124】
残りのランナーおよび衝撃試験片を、プラスチック粉砕機でペレットに再度粉砕した。粉砕ABSペレットを、衝撃試験片およびランナーに再度加工し、10本の衝撃試験片をシャルピーv-ノッチテストに使用し、結果を、1回の粉砕再生サイクルとして記録した。同様の手段で、残りの衝撃試験片およびランナーを粉砕し、10回までの粉砕再生サイクルで再加工した。
【0125】
射出成形パラメーターは、以下の通りであった:
溶融温度:240℃
金型温度:30℃
【0126】
【0127】
結果から、1回の粉砕再生サイクルは、シャルピーv-ノッチに影響を与えるようにはまったく思われないが、5回の粉砕再生サイクルは、相対シャルピーv-ノッチ値を100から95に低下させることが示される。そのような低下は、玩具組立要素が生成されるケースでも依然受け入れられるであろう。相対シャルピーv-ノッチにおける88へのさらなる低下は、10回の粉砕再生サイクル後に見られる。これにより、10回リサイクルされたABSで作られた玩具組立要素は、不十分な衝撃強度のため、許容できない機械的性質を所有する可能性がきわめて高くなり得ることが指し示される。したがって、衝撃強度を受け入れられるレベルまで改善するために、新たな、または追加の耐衝撃性改良剤を、リサイクル材料に混合する必要がある。
【実施例2】
【0128】
機械的リサイクルからのABSの性質 - ABSの部分的リサイクル
異なる大きさの要素を生成する2つの金型が、成形プロセスにおける、様々な量の機械的にリサイクルされたABSを適用する効果をテストするために使用された。この研究では、機械的にリサイクルされたABSの量は、ABSの成形プロセスに再度導入された機械的粉砕再生ランナー系の割合により表した。テストに適用された2つの金型は、成形プロセス中に、ランナーを42%および90%の粉砕再生材料が流れるように構築した。これらの2つの金型は、粉砕再生ABSを様々なレベルのバージンABSに補充すると、成形要素の良好な全体の衝撃特性の維持を補助できるかどうかを調査するために使用した。上記2つの金型は、37%、51%および85%粉砕再生材料がそれぞれ流れる3つの追加の金型に対する投入材料を生成するために使用した。
【0129】
Virgin ABS Terluran(登録商標)GP35(INEOS Styrolutionにより供給される)を、80℃で4時間乾燥させた。ABSは、射出成形を経由して(Arburg、Allrounder 470 E 1000-400、30mmスクリュー、Germany)、金型no.1および2を使用してLEGO要素に加工した。金型に、粉砕再生およびバージンABSを、以下の表に従って供給した。プロセスに導入される粉砕再生材料のレベルのため、金型は、全体のプロセスが安定化する前に、すなわち定常状態の状況が達成される前に、数ショットを生成する必要がある。安定なプロセスを確保するショット数は、以下の表で指し示されている。
【表2】
【0130】
安定な加工を達成したら、成形の準備ができたブレンド材料試料を収集し、これらの試料を、射出成形を経由して、衝撃試験片に加工した。成形される衝撃試験片は、シャルピーv-ノッチ分析に使用し、結果は、以下の表で示されている。
【0131】
金型1および2で生成された安定な加工材料は、金型3、4および5における加工のための投入材料としてさらに使用された。安定な加工を達成したら、材料試料を収集し、シャルピーv-ノッチ分析でテストされる衝撃試験片を生成するために使用した。結果は、以下の表で示されている。
【表3】
【0132】
結果から、ある量の機械的にリサイクルされたABSを、成形プロセスにおいてバージンABSに添加すると、意外にも相対シャルピーv-ノッチ値が上昇することが示される。詳細には、42%粉砕再生材料が流れる金型1は、相対シャルピーv-ノッチ値の108%までの上昇を示す。また、金型1からの定常状態材料が、金型3に対する投入材料として使用される場合、相対シャルピーv-ノッチ値は、バージン材料の使用と比較して112%にさらに上昇する。本発明者らは、相対シャルピーv-ノッチ値におけるそのような上昇を数回観察し、これにより、リサイクルABS材料がバージンABSと混合された場合に、ポリブタジエン球体の改善した分散が得られることが指し示され得る。
【0133】
結果から、ABSの再循環サイクルの数が増えるにつれて、相対シャルピーv-ノッチ値は低下し、衝撃強度が低下した成形要素が生じることも示される。玩具組立要素を生成するためにリサイクルABSを使用した場合に受け入れられ得る正確なシャルピーv-ノッチ値は、生成される要素のタイプによって決まり、例えば、旧来からのLEGO(登録商標)brickは、LEGO(登録商標)DUPLO(登録商標)brickより高い衝撃強度を必要とする。しかし最終的には、要素のタイプとは独立して、リサイクルABS材料は、もはや満足すべき機械的性質を有する玩具組立ブロックを生成し得ず、受け入れられる衝撃強度を有する玩具組立要素を生成するためには、新たな、または追加の耐衝撃性改良剤またはバージンABSを、リサイクルABSと混合する必要がある。
【0134】
上の実験結果から、ABSは、ある程度機械的にリサイクルされ得るが、最終的には、受け入れられる機械的性質、例えば受け入れられる衝撃強度を有する玩具組立要素を生成するためには、機械的性質の向上が必要とされることが示される。