(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-14
(45)【発行日】2025-10-22
(54)【発明の名称】経口テルペンシクロデキストリン包接体ビヒクル
(51)【国際特許分類】
A61K 47/69 20170101AFI20251015BHJP
A61K 38/47 20060101ALI20251015BHJP
A61K 31/075 20060101ALI20251015BHJP
A61K 31/015 20060101ALI20251015BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20251015BHJP
A61K 36/534 20060101ALI20251015BHJP
A61K 36/61 20060101ALI20251015BHJP
A61K 36/18 20060101ALI20251015BHJP
A61K 36/48 20060101ALI20251015BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20251015BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20251015BHJP
A61P 15/10 20060101ALI20251015BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20251015BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20251015BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20251015BHJP
【FI】
A61K47/69
A61K38/47
A61K31/075
A61K31/015
A61K31/045
A61K36/534
A61K36/61
A61K36/18
A61K36/48
A61K47/12
A61P11/00
A61P15/10
A61P11/06
A61P37/02
A61P43/00 111
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2022557708
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(86)【国際出願番号】 IB2021052411
(87)【国際公開番号】W WO2021191803
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2024-03-06
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518277066
【氏名又は名称】クザップ リサーチ アンド デベロップメント エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】CZAP RESEARCH AND DEVELOPMENT, LLC
【住所又は居所原語表記】1370 Trancas Street #350, Napa, California 94558, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クザップ、アル
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-512019(JP,A)
【文献】米国特許第10058531(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 38/00-38/58
A61K 31/00-31/80
A61K 36/00-36/9068
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロデキストリン(CD)包接体製剤であって、
ユーカリプトールβ-CD包接体と、
カンフェンβ-CD包接体と、
デルタ-3-カレンβ-CD包接体と、
グアイオールγ-CD包接体と、
ペパーミントオイルβ-CD包接体と、
フェヌグリークγ-CD包接体と、
シクロデキストリン分解酵素と
を含有する、CD包接体製剤。
【請求項2】
更にフムレンを含む、請求項1に記載のCD包接体製剤。
【請求項3】
前記ユーカリプトールβ-CD包接体中のユーカリプトール(5~15重量%)と、
前記カンフェンβ-CD包接体中のカンフェン(5~15重量%)と、
前記デルタ-3-カレンβ-CD包接体の中のデルタ-3-カレン(5~15重量%)と、
前記グアイオールγ-CD包接体中のグアイオール(5~15重量%)と、
前記ペパーミントオイルβ-CD包接体中のペパーミントオイル(10~20重量%)と、
前記フェヌグリークγ-CD包接体中のフェヌグリーク抽出物
(5~15重量%)とを含有する、請求項1
又は2に記載のCD包接体製剤。
【請求項4】
前記ユーカリプトールβ-CD包接体中のユーカリプトール(10重量%)と、
前記カンフェンβ-CD包接体中のカンフェン(10重量%)と、
前記デルタ-3-カレンβ-CD包接体の中のデルタ-3-カレン(10重量%)と、
前記グアイオールγ-CD包接体中のグアイオール(10重量%)と、
前記ペパーミントオイルβ-CD包接体中のペパーミントオイル(15重量%)と、
前記フェヌグリークγ-CD包接体中のフェヌグリーク抽出物
(10重量%)とを含有する、請求項1
~3のいずれかに記載のCD包接体製剤。
【請求項5】
以下の有効成分:
50~100mgの量の前記ユーカリプトールβ-CD包接体中のユーカリプトール(10重量%)と、
50~100mgの量の前記カンフェンβ-CD包接体中のカンフェン(5~15重量%)と、
25~75mgの量の前記デルタ-3-カレンβ-CD包接体の中のデルタ-3-カレン(5~15重量%)と、
25~75mgの量の前記グアイオールγ-CD包接体中のグアイオール(5~15重量%)と、
25~75mgの量の前記ペパーミントオイルβ-CD包接体中のペパーミントオイル(10~20重量%)と、
25~75mgの量の前記フェヌグリークγ-CD包接体中のフェヌグリーク抽出物
(5~15重量%)とを含有する製剤中の有効成分の比と実質的に等価である有効成分の比を含有する、請求項1~
4のいずれかに記載のCD包接体製剤。
【請求項6】
徐放剤を更に含
む、請求項1~
5のいずれかに記載のCD包接体製剤。
【請求項7】
前記シクロデキストリン分解酵素がアミラーゼである、請求項1~
6のいずれかに記載のCD包接体製剤。
【請求項8】
薬学的に許容される担体を更に含
む、請求項1~
7のいずれかに記載のCD包接体製剤。
【請求項9】
前記薬学的に許容される担体がラウリン酸カルシウムである、請求項8に記載のCD包接体製剤。
【請求項10】
75mgの量の前記ユーカリプトールβ-CD包接体中のユーカリプトール(10重量%)と、
75mgの量の前記カンフェンβ-CD包接体中のカンフェン(10重量%)と、
50mgの量の前記デルタ-3-カレンβ-CD包接体の中のデルタ-3-カレン(10重量%)と、
50mgの量の前記グアイオールγ-CD包接体中のグアイオール(10重量%)と、
50mgの量の前記ペパーミントオイルβ-CD包接体中のペパーミントオイル(15重量%)と、
50mgの量の前記フェヌグリークγ-CD包接体中のフェヌグリークアブソリュート(オイル)(10重量%)とを含有する、請求項1~
9のいずれかに記載のCD包接体製剤。
【請求項11】
徐放剤80mgを更に含む、請求項
10に記載のCD包接体製剤。
【請求項12】
アミラーゼ5mgを更に含む、請求項
10又は
11に記載のCD包接体製剤。
【請求項13】
ラウリン酸カルシウム5mgを更に含む、請求項
10~
12のいずれかに記載のCD包接体製剤。
【請求項14】
ヒト患者における気道粘液機能障害の経口治療に用いるための、請求項1~
13のいずれかに記載のCD包接体製剤。
【請求項15】
CD包接体中のユーカリ属(フトモモ科)の抽出物と、
CD包接体中のカンフェンを含有するシンカルピア グロムリフェラの抽出物と、
CD包接体中のペパーミント(メンタ ピペリタ)オイルと、
CD包接体中のデルタ-3-カレンを含有するピヌス属の抽出物と、
CD包接体中のフェヌグリーク抽出物と、
CD包接体中のグアイオールを含むブルネシア サルミエントイの抽出物とを含有する、シクロデキストリン(CD)包接体製剤。
【請求項16】
徐放剤
を更に含む、請求項
15に記載の製剤。
【請求項17】
シクロデキストリン分解酵素
を更に含む、請求項
15又は
16に記載の製剤。
【請求項18】
前記シクロデキストリン分解酵素が、アミラーゼ、シクロデキストリナーゼ、マルトジェニックアミラーゼ、ネオプルラナーゼ、哺乳動物の唾液アミラーゼ、哺乳動物の膵臓アミラーゼ又は微生物のアミラーゼ含む、請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
各包接体中のシクロデキストリン(CD)が、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン又はγ-シクロデキストリンである、請求項
15~
18のいずれかに記載の製剤。
【請求項20】
ラウリン酸カルシウムを更に含む、請求項
15~
19のいずれかに記載の製剤。
【請求項21】
前記ユーカリ属(フトモモ科)の抽出物が約4~8mg
のユーカリプトールを含み、及び/又は
前記シンカルピア グロムリフェラの抽出物が約4~8mg
のカンフェンを含み、及び/又は
前記CD包接体中に、前記ペパーミント(メンタ ピペリタ)オイルが約4~8mg
で提供され、及び/又は
前記ピヌス属の抽出物が約2~6mg
のデルタ-3-カレンを含み、及び/又は
前記CD包接体中に、前記フェヌグリーク抽出物が約2~6mg
で提供され、及び/又は
前記ブルネシア サルミエントイの抽出物が約2~6mg
のグアイオールを含む、請求項
15~
20のいずれかに記載の製剤。
【請求項22】
前記ユーカリ属(フトモモ科)抽出物CD包接体が、ユーカリプトールβ-CD包接体を含み、及び/又は
前記シンカルピア グロムリフェラの抽出物CD包接体が、カンフェンβ-CD包接体を含み、及び/又は
前記ペパーミント(メンタ ピペリタ)オイルが、少なくとも部分的にβ-CD包接体中で提供され、及び/又は
前記ピヌス属の抽出物CD包接体が、デルタ-3-カレンβ-CD包接体を含み、及び/又は
前記フェヌグリーク抽出物が、少なくとも部分的にγ-CD包接体中に提供され、及び/又は
前記ブルネシア サルミエントイの抽出物CD包接体が、グアイオールγ―CD包接体を含む、請求項
15~
20のいずれかに記載の製剤。
【請求項23】
フムレンを更に含む、請求項
15~
20のいずれかに記載の製剤。
【請求項24】
それを必要とする対象の気道障害を治療するための粘液活性剤として用いるための、請求項
15~
23のいずれかに記載の製剤。
【請求項25】
前記気道障害が、粘液の過剰分泌又は乾固を特徴とする呼吸器の疾患又は状態である、請求項
24に記載の製剤。
【請求項26】
前記気道障害が、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(CF)、CF関連の気管支拡張症、非CF関連の気管支拡張症、ウイルス性細気管支炎、細菌性細気管支炎、又は微生物
感染である、請求項
24又は
25に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロデキストリン分解活性を有する酵素を含み得る経口製剤中のシクロデキストリン内の包接体としての、カンフェンを含む生物活性テルペンの送達のための生化学的構築物の分野にある。
【背景技術】
【0002】
シクロデキストリンは、非還元性環状グルコースオリゴ糖であり、しばしばデンプンがシクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(E.C. 2.4.1.19;CGTase)で触媒分解された生成物である。シクロデキストリンは、1,4-グルコシド結合によって環内に結合された6、7又は8個のD-グルコピラノシル残基を有する3つの一般的なシクロデキストリン(それぞれ、α-、β-及びγ-シクロデキストリン)を含む、種々の構造を有し得る(参照:Saenger et al., Chem. Rev. 98(1998) 1787-1802)。シクロデキストリンの円錐台形状は空洞又は内腔を形成し、その空洞はグルコース単位の数に応じた異なる直径を有する。選択されたシクロデキストリン(CD)の構造の等級を表1に示す。シクロマルトノナオース(δ-CD)及びシクロマルトデカオース(ε-CD)等のより大きなシクロデキストリン、並びに種々のシクロデキストリンに基づく超分子構造も可能である(参照:Zhang and Ma, Adv Drug Deliv Rev. 2013 Aug; 65(9): 1215-33)。
【0003】
【0004】
シクロデキストリンは、一般に両親媒性であり、2-OH及び3-OHを提示する内腔の広い縁部と、6-OHを提示する狭い縁部とを有する。これらの親水性の水酸基は従って内腔の外側にあるのに対して、内側の表面は一般に疎水性であり、内側の表面に沿ってアノメリック酸素原子及びC3-HとC5-Hの水素原子が並んでいる。水溶液中では、この疎水性の内腔は、水分子、例えば約3(α-CD)、7(β-CD)又は9(γ-CD)の僅かに保持され、しかし低エントロピーであり、相対的に容易に置換可能な水分子を含むことができる。その他、親水性のシクロデキストリンは、CDの内腔の内部で又は部分的に内部で、1つ以上の適切な大きさの分子と結合し、保持して、シクロデキストリン包含体又は包接体を形成することができる。例えば、脂溶性の薬物等の薬物を含む、非極性の脂肪族化合物及び芳香族化合物を結合することができ、通常は疎水性の化合物の水溶性を増加させ、又は特定の食品添加物における臭気又は味等の望ましくない特性を最小化することできる。この理由から、シクロデキストリン包接は、医薬品、食品及び化粧品の分野で広く使用されている(参照:Hedges, Chem. Rev. 98(1998) 2035-2044)。シクロデキストリンは、例えば、医薬化合物と疎水性のシクロデキストリン誘導体との包接体等の様々な持続放出医薬製剤に使用されている(US4869904)。
【0005】
例えば、シクロデキストリンの包接特異性、物理的及び化学的特性を改変するために、様々な方法でシクロデキストリンを化学的に修飾することができる。例えば、CDのヒドロキシル基を誘導体化することができる。例えば、多数の医薬品に、2つの改変CD:β-CDのポリアニオン性の可変的に置換されたスルホブチルエーテル体であるSBE-β-CD、すなわちCaptisol、及びJanssenによって商業的に開発された改変CDであるHP-β-CDが、使用されている。更なるCD誘導体には、γ-CDの6-ヒドロキシル基がカルボキシチオアセテートエーテル結合及びヒドロキシブテニル-β-CDによって置換されているSugammadex、すなわちOrg-25969が含まれる。シクロデキストリンの別の形態には、2,6-ジ-O-メチル-β-CD(DIMEB)、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)、ランダムメチル化β-シクロデキストリン(RAMEB)、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン(SBE-β-CD)、スルホブチルエーテル-γ-シクロデキストリン(SBE-γ-CD)、スルホブチル化β-シクロデキストリンナトリウム塩、スルホブチル化β-シクロデキストリンナトリウム塩、(2-ヒドロキシプロピル)-α-シクロデキストリン、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン、(2-ヒドロキシプロピル)-γ-シクロデキストリン、DIMEB-50、ヘプタキス(2,6-ジ-O-メチル)-β-シクロデキストリン、TRIMEB、ヘプタキス(2,3,6-トリ-O-メチル)-β-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、オクタキス(6-デオキシ-6-ヨード)-γ-シクロデキストリン、及びオクタキス(6-デオキシ-6-ブロモ)-γ-シクロデキストリンが挙げられる。これらのような良好な薬理学的特性及び毒物学的プロファイルを有するCDが開発されているが、投与後、残留CDが、特に非経口投与後の共投与された薬物を含む薬物の薬物動態学的性質を乱す可能性がある(参照:Stella and He, Toxicol Pathol, January 2008, vol.36 no.1, 30-42)。
【0006】
シクロデキストリンは、可変的に酵素消化に対して感受性を有する。例えば、γ-CDはα-アミラーゼによって比較的容易に加水分解されるが、α-シクロデキストリンはより不十分にしか加水分解されない。CDベースの治療剤は、一般にCDを消化する内因性アミラーゼの活性に依存する。しかし、患者間でアミラーゼ活性に著しい変動がある。例えば、膵臓不全、嚢胞性線維症、セリアック病又はクローン病を有する患者は、正常量のアミラーゼを欠いている可能性がある。同様に、患者、特に老人性患者は、胃酸産生が不十分であることがあり、それによって膵臓アミラーゼの放出を適切に引き起こすために適切な十二指腸内の低pH条件を作り出すことができない。制酸薬、ヒスタミン2ブロッカー、プロトンポンプ阻害剤又は代替的な酸ブロッカーの一般的な使用の増加によって、類似の効果が起こりうる。
【0007】
種々の微生物性のシクロデキストリン消化酵素が同定されている。CD分解酵素には、シクロマルトデキストリナーゼ(又はシクロデキストリナーゼ,又はCDase,EC 3.2.1.54)、マルトジェニックアミラーゼ(EC 3.2,1.313)、ネオプルラナーゼ(EC 3.2.1.135)が含まれ、これらはCD、場合によってはプルラン、デンプン等の追加の基質を加水分解することができることが報告されている。シクロデキストリナーゼ(CDase)は、CDの加水分解を触媒して、α-1,4-結合の線状オリゴ糖を形成し、それによりCD包接体から物質を放出することができる。Bacillus macerans由来のCDaseが1968年に報告された。それ以降、Bacillus sp.、Thermoanaerobacter ethanolicus株39E、Flavobacterium sp.及びKlebsiella oxytoca株M5a1に由来する酵素等の細菌に由来する多くのCDaseが特徴付けられている。Archaeoglobus fuigidus、Thermococcus sp.B1001、Thermococcus sp.CL1、Thermofilum pendens、及びPyrococcus furiosusに由来するArchaeaのCDaseが特徴付けられている。Fiavobacterium sp.由来のCDaseの構造が詳細に特徴付けされている(参照:Sun et al., Archaea, Volume 2015(2015), Article ID 397924,Thermococcus kodakarensis KOD1(CDase-Tk)由来のシクロデキストリナーゼをコードする遺伝子の同定を報告している)。
【0008】
カンフェンは、2位のジェミナルメチル基と3位のメチリデン基で置換されたビシクロ[2.2.1]ヘプタンである二環式骨格を有するモノテルペンである。カンフェンは、多くの精油中に、典型的にはD-カンフェン及びL-カンフェンの様々な割合のラセミ混合物として広範囲に見られる天然物である(Ochocka et al., 2002, Pharmaceutical Biology, 40:5, 395-399)。香味料や香料として広く利用されている。カンフェンはまた、脂質低下効果等の様々な生理学的効果を有することが記載されている(Vaillianou et al., PLoS One, 2011; 6(11) e20516)。
【0009】
気道粘液機能不全は、幅広い種類の気道疾患及び状態の原因になるか、又はそれらの徴候を示し(参照,Fahy & Dickey, 2010)、しばしば咳又は呼吸困難として現れる。気道粘液機能不全を特徴とする疾患には、嚢胞性線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、原発性線毛機能不全、非嚢胞性線維症気管支拡張症、汎細気管支炎、様々な免疫不全状態が含まれる。気道粘液機能不全に関連する状態には、例えば挿管された、麻痺した、固定された、又は手術後の患者における、正常な肺機構の崩壊が含まれ得る。これらの問題は、保たれた粘液に関連し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【文献】Chem. Rev. 98 (1998) 1787-1802
【文献】Adv Drug Deliv Rev. 2013 Aug; 65(9): 1215-33
【文献】Chem. Rev. 98 (1998) 2035-2044
【文献】Toxicol Pathol January 2008 vol. 36 no. 1 30-42
【文献】Archaea, Volume 2015 (2015), Article ID 397924
【文献】2002, Pharmaceutical Biology, 40:5, 395-399
【文献】PLoS One, 2011; 6(11) e20516
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
例えば、気道粘液機能障害(airway mucus dysfunction)の治療に使用するために、又は男性対象に勃起効果(erectogenic effect)を提供するために、カンフェン含有シクロデキストリン包接体送達ビヒクルが提供される。カンフェンに加えて、製剤は、植物性テルペン等の追加のテルペンを含む追加の包接体ゲスト分子を含むことができる。追加のゲスト分子には、例えばユーカリプトール(すなわち、1,3,3-トリメチル-2-オキサビシクロ[2.2.2]オクタン;CAS番号470-82-06;1,8-シネオール;1,8-エポキシ-p-メンタン)、グアイオール(すなわち、2-[(3S,5R,8S)-3,8-ジメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-5-アズレニル]-2-プロパノール;CAS番号489-86-1;シャンパコール)、及び/又はデルタ-3-カレン(すなわち、3,7,7-トリメチルビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-エン;CAS番号13466-78-9)が含まれる。追加のゲスト分子は、例えばペパーミントオイル又はフェヌグリーク粉末等のペパーミント組成物及び/又はフェヌグリーク組成物等の植物抽出物又は組成物のCD包接体中で提供され得る。
【0013】
生物学的に許容される担体をシクロデキストリン包接体に提供することができ、生物学的に許容される担体内でシクロデキストリンによってゲスト分子が安定に保持される。ゲスト分子を保持するシクロデキストリンを消化することができるシクロデキストリン分解活性を有する酵素を、ビヒクル中に提供することもできる。送達ビヒクルの標的への送達時にシクロデキストリン分解活性が活性化されてゲスト分子をシクロデキストリンの空洞から放出するように、酵素を製剤化することができる。
【0014】
送達ビヒクルの別の側面では、前記酵素が前記シクロデキストリン包接体と共に製剤化されているか、前記酵素が前記送達ビヒクル中に前記シクロデキストリン包接体と共に包装されてもよい。前記酵素が共に包装される場合、前記送達ビヒクルはさらに前記酵素のための生化学的に許容される担体を含んでもよい。
【0015】
前記酵素は、例えば、アミラーゼ、シクロデキストリナーゼ、マルトジェニックアミラーゼ又はネオプルラナーゼであってもよい。アミラーゼは、例えば、哺乳動物の唾液アミラーゼ、哺乳動物の膵臓アミラーゼ又は微生物のアミラーゼであってもよい。前記シクロデキストリナーゼは、例えば、微生物のシクロデキストリナーゼであってもよい。
【0016】
前記シクロデキストリンは、例えば、疎水性のアルキル化シクロデキストリン、又は混合メチル化/エチル化シクロデキストリン等のCD誘導体であってもよい。
【0017】
前記シクロデキストリンと前記ゲスト分子との比は、例えば、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4又は1:5であってよく、このパラメータの広範囲の、非整数の比を含む代替の値も可能である。
【0018】
シクロデキストリンは、例えば、α-、β-又はγ-シクロデキストリンであってよく、また非常に広範囲の代替のCD構造を用いることもできる。
【0019】
選択された実施態様において、薬物若しくはプロドラッグ、PDE5阻害剤、フラボノイド(ケルセチン)、カンナビノイド又は抗炎症剤(アセトアミノフェンを含む)等の追加のゲスト分子が提供され得る。その状況において、生物学的に許容される担体は、有利には薬学的に許容される担体であり得る。送達ビヒクルは、ゲスト分子の持続放出のために製剤化され得る。
【0020】
このように、本発明は、CD送達ビヒクルを医薬品として使用することができる他の実施態様を提供する。
【0021】
嚢胞性線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患、原発性線毛機能不全、非嚢胞性線維症気管支拡張症、汎細気管支炎、又は免疫不全状態等の疾患の徴候である気道粘液機能障害を有する患者を治療するための方法が提供される。あるいは、気道粘液機能障害は、挿管、麻痺、固定(immobilization)、又は外科的外傷(surgical trauma)等の肺機構の崩壊に関連する状態の徴候であり得る。
【0022】
男性対象、例えば50歳、60歳若しくは70歳以上の男性、又は勃起不全を患っている男性対象に勃起効果を提供する方法も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
送達ビヒクルの特定の製剤には、例えば、天然植物抽出物源を含む多くの源から調製されるシクロデキストリン包接体を組み合わせることで作製されるシクロデキストリン包接体製剤が含まれ得る。例えば、以下の2、3、4、5又は6種類から調製されたCD包接体を、単一の製剤で又は組み合わせて提供される別個の製剤で、組み合わせる製剤が含まれる。
CD包接体中、例えばβ-CD包接体又はγ-CD包接体中の(例えばユーカリプトール6mg、又は4~8mgで標準化された)ユーカリ属(フトモモ科)の抽出物、及び/又は、
CD包接体中、例えばβ-CD包接体又はγ-CD包接体中の(例えばカンフェン6mg、又は4~8mgで標準化された)シンカルピア グロムリフェラの抽出物、及び/又は、
CD包接体中、例えばβ-CD包接体又はγ-CD包接体中のペパーミント(メンタ ピペリタ)オイル6mg、又は4~8mg、及び/又は、
CD包接体中、例えばβ-CD包接体又はγ-CD包接体中の(例えば、デルタ-3-カレン4mg、又は2~6mgで標準化された)ピヌス属(ピヌス ピナスター及び/又はピヌス エリオッティ及び/又はピヌス シルベストリス)の抽出物、及び/又は、
CD包接体中、例えばβ-CD包接体又はγ-CD包接体中のフェヌグリーク抽出物、例えばフェヌグリークアブソリュート(トリゴネラ フォエナム-グラエカム)4mg、若しくは2~6mg、及び/又は、
CD包接体中、例えばβ-CD包接体又はγ-CD包接体中の(例えばグアイオール4mg、若しくは2~6mgで標準化された)ブルネシア サルミエントイの抽出物。
【0024】
例えば、いずれか1つの包接体の用量当たり5~250mgで、様々な比率の成分を提供することができる。選択された製剤は、全く植物由来有効成分のみであっても良い。特定の投与形態は、例えば、次に示す単一0持続放出カプセルであることができる。
CD包接体中、例えばβ-CD包接体又はγ-CD包接体中の(例えばユーカリプトール6mg、又は4~8mgで標準化された)ユーカリ属(フトモモ科)の抽出物、
CD包接体中、例えばβ-CD包接体又はγ-CD包接体中の(例えばカンフェン6mg、又は4~8mgで標準化された)シンカルピア グロムリフェラの抽出物、
CD包接体中、例えばβ-CD包接体又はγ-CD包接体中のペパーミント(メンタ ピペリタ)オイル6mg、又は4~8mg、
CD包接体中、例えばβ-CD包接体又はγ-CD包接体中の(例えば、デルタ-3-カレン4mg、又は2~6mgで標準化された)ピヌス属(ピヌス ピナスター及び/又はピヌス エリオッティ及び/又はピヌス シルベストリス)の抽出物、
CD包接体中、例えばβ-CD包接体又はγ-CD包接体中のフェヌグリーク抽出物、例えばフェヌグリークアブソリュート(トリゴネラ フォエナム-グラエカム)4mg、若しくは2~6mg、
CD包接体中、例えばβ-CD包接体又はγ-CD包接体中の(例えばグアイオール4mg、若しくは2~6mgで標準化された)ブルネシア サルミエントイの抽出物、
K250徐放剤 80mg、
アミラーゼ 7mg、及び
ラウリン酸カルシウム 5mg。
【0025】
本明細書中の製剤で使用されるペパーミントオイルは、ペパーミント植物:メンタ ピペリタの抽出物であることができる。ペパーミントオイルの組成物は変化するが、メントール(40.7%)、メントン(23.4%)、(±)-メンチルアセテート、1,8-シネオール、リモネン、β-ピネン、及びβ-カリオフィレンを含むものとして特徴付けられる(Schmidt et al., 2009, Nat Prod Commun 4(8): 1107;CAS番号 8006-90-4、MDL番号MFCD00147870)。
【0026】
フェヌグリーク(トリゴネラ フォエナム-グラエカム)組成物は広く知られており、様々なアルカロイド、アミノ酸、サポニン、ステロイド性サピノゲン及びフラボノイドを含むことが理解されている(Wani and Kumar, 2018, J. of the Saudi Society of Agricultural Sciences 17(2): 97)。例えば、フェヌグリーク抽出物は、トリゴネラ フォエナム-グラエカムの種子を溶媒抽出することで製造することができ、時々フェヌグリークアブソリュートとして特定される(CAS番号84625-40-1、FEMA番号2486、EC番号283-415-1、MDL番号MFCD01772302)。
【0027】
選択された実施態様において、ゲスト分子は、植物抽出物の形態で提供されてもよく、例えばユーカリ属からのユーカリプトール(例えばユーカリオイル、CAS番号8000-48-4、FEMA番号2466、EC番号283-406-2)、シンカルピア属からのカンフェン、松の木(例えば種:ピヌス ピナスター、ピヌス エリオッティ、ピヌス シルベストリス、杉、バジル、松、ローズマリー、ピーマン)からのデルタ-3-カレン(δ-3-カレン)、ブルネシア サルミエントイからのグアイオール(セスキテルペノイドアルコール、サイプレスパイン及びグアイアクムにも見られる)、メントールを含むペパーミントオイル、トリゴネラ フォエナム-グラエカムの種子からのフェヌグリーク抽出物である。他の実施態様は、例えば、ユーカリ属(フトモモ科)、シンカルピア グロムリフェラ、ピヌス属(ピヌス ピナスター及び/又はピヌス エリオッティ及び/又はピヌス シルベストリス)及びブルネシア サルミエントイ、ペパーミント(メンタ ピペリタ)及びフェヌグリーク(トリゴネラ・フォエナム・グラエカム)からの抽出物、テルペン又はオイルを含んでもよい。これらの抽出物は、例えば、高粘度及び低粘度のヒドロキシプロピルメチルセルロース(持続放出)、ヒプロメロース(セルロース由来)カプセル、セルロース、ラウリン酸カルシウム及びアミラーゼ(植物又は微生物アミラーゼ等)と共に、β-及びγ-デキストリン繊維マトリックス中に製剤化されてもよい。
【0028】
選択された実施態様において、製剤は、例えば、植物セルロースカプセル中に、例えば、以下の成分を含むことができる。
β-CD包接体中のユーカリプトール(10重量%)75mg、
β-CD包接体中のカンフェン(10重量%)75mg、
β-CD包接体中のデルタ-3-カレン(10重量%)50mg、
γ-CD包接体中のグアイオール(10重量%)50mg、
β-CD包接体中のペパーミントオイル(15重量%)50mg、
γ-CD包接体中のフェヌグリークアブソリュート(オイル)(10重量%)50mg、
K250徐放剤80mg、
アミラーゼ5mg、及び
ラウリン酸カルシウム5mg。
【0029】
多種多様な生物学的に活性な化合物が、例えば医薬組成物の形態で、追加の異なる成分として及び/又は追加のゲスト分子として、本発明の送達ビヒクルに含まれてもよい。それらの例には、ドセタキセル(US2014-0336149、US2013-0296268)、カルバマゼピン(US2014-0080812)、リファンピシン(US7001893)、強心配糖体、特にジゴキシン(US4555504)、プロゲステロン(参照,Zoppetti et al., Journal of Inclusion Phenomena and Macrocyclic Chemistry, April 2007, Volume 57, Issue 1, pp 283-288)、アルベンダゾール、メベンダゾール、リコベンダゾール、フェノプロフェン、ケトプロフェン、コカイン、グリクラジド、ジギトキシン、大環状化合物(MCC)、イブプロキサム、プロクロロメタジン、DY-9760e、NSC-639829、ETH-615、ピロキシカム、レベモパミル塩酸塩、ジプラシドンメシレート、スリンダク、フェノールフタレイン、ダナゾール(参照,Challa et al., 2005, AAPS PharmSciTech 2005; 6 (2) Article 43)、イトラコナゾール、ネルフィナビルメシレート、テルミサルタン、5-フルオロウラシル及びその他のヌクレオシド類似体、カンプトテシン、フムレン(α-フムレン又はα-カリオビレンとしても知られる)、又はフラボノイドが含まれる。
【0030】
選択された実施態様は、以下を含む、薬用食品組成物である。
β-CD包接体中のユーカリプトール(例えば、約10重量%)75mg、
β-CD包接体中のカンフェン(例えば、約10重量%)75mg、
β-CD包接体中のデルタ-3-カレン(例えば、約10重量%)50mg、
γ-CD包接体中のグアイオール(例えば、約10重量%)50mg、
β-CD包接体中のペパーミントオイル(例えば、約15重量%)50mg、
γ-CD包接体中のフェヌグリークアブソリュート(オイル)(例えば、約10重量%)50mg、及び
フムレン。
【0031】
選択された実施態様において、ビヒクルの標的への送達時にシクロデキストリン分解活性が活性化されてゲスト分子をシクロデキストリンの空洞から放出するように、ビヒクル中に含まれる酵素が製剤化されていてもよい。酵素の活性化は、例えば、経口送達のための医薬において、酵素が混合されたカプセル又は錠剤等の乾燥剤形で達成することができ、このようにすることで、酵素は、宿主の胃腸管で水分によって活性化されるまでは活性ではない。同様に、多種多様な時間放出マトリックス及び製剤が知られており、これらはCD送達ビヒクルでの使用に適合させて、標的への送達時にCD分解酵素の適切な活性化を編成することができる。
【0032】
種々の局面において、CD送達ビヒクルは、例えば、上記のようにシクロデキストリン包接体と共に製剤化された酵素を有していてもよく、又は酵素は送達ビヒクル中にシクロデキストリン包接体と共に包装されてもよい。共に包装する場合、送達ビヒクルは、例えば、CD包接体のための担体とは異なる、酵素のための生化学的に許容される担体を含むことができる。例えば、送達ビヒクルは、CD包接体及びCD分解酵素を含む分離した区画で提供されていてもよく、それによって、送達ビヒクルは、CD分解酵素区画に連結されたCD包接体区画から構成される。送達ビヒクル中のそれぞれの区画からCD包接体及びCD分解酵素を複合して放出するための機構を提供することができる。例えば、この種の別個の区画を有するシリンジが提供されてもよく、通常の排出機構、例えば各々の区画でピストンを協調的に移動させる機構によって排出され、一定分量のCD包接体及びCD分解酵素が排出され、それによって酵素とCD包接体を混合して、CDからのゲスト分子の酵素的放出を活性化することができる。この種のビヒクルは、例えば、局所用クリーム又は他の表面活性製剤(surface-active formulation)を分散するために用いてもよい。この種の多種多様な送達ビヒクルは、例えば、US4538920、US8100295、US8308340、US8875947、US8499976、WO2007/041266及びWO2000/021842に記載されている、エポキシ樹脂、二部式の医薬又は歯科製剤等の分散性二部式組成物として知られる装置から改作されてもよい。
【0033】
例えば、Chaudhary&Patel, IJPSR, 2013; Vol. 4(1): 68-78、Carneiro et al., 2019, Int. J. Mol. Sci. 2019, 20, 642、US2009-0029020、US2009-0214446、US5070081、US5552378、US5674854及びUS8658692に記載されているような、CD包接体を調製するために利用可能な様々な技術が存在する。CDを水又は水性アルコールと混合してペーストを得ることを含む混練法としては、一般的な手法が知られている。次いで、生物活性分子をペーストに添加し、特定の時間、混練することができる。次いで、混練した混合物を乾燥させ、必要に応じて篩に通すことができる。あるいは、スラリー法は以下の工程:生物活性分子とシクロデキストリンを混合し、ペースト又はスラリーが形成されるまで、典型的には激しく混合しながら適量の水を混合物に添加する工程;ペースト又はスラリーの硬さを維持するために必要に応じて更に水を加えて、15分間等の適切な時間、混合を続けて、包接体を形成する工程;及び、この最終工程の生成物を乾燥させる工程を含む。乳化剤等の他の成分によって、包接体の形成を促進することができる。例えば、次の工程:シクロデキストリンと乳化剤(例えば、ペクチン)を乾燥混合する工程;シクロデキストリンと乳化剤の乾燥混合物を反応器内で水等の溶媒と合わせて、攪拌する工程;ゲスト分子を加えて、(例えば約5~8時間)攪拌する工程;必要に応じて、撹拌しながら反応混合物を冷却する工程;及び、混合物を乳化して、シクロデキストリン包接体を乾燥させて粉末を形成する工程を含むプロセスである。CD包接体を調製する他の既知のアプローチには、凍結乾燥、マイクロ波照射、及び超臨界流体貧溶媒技術が含まれる。
【0034】
本発明のCD送達ビヒクルは、単独で、又は他の化合物(例えば、核酸分子、小分子、ペプチド又はペプチド類似体)と組み合わせて、リポソーム、アジュバント等の担体、又は任意の薬学的又は生物学的に許容される担体の存在下、提供することができる。選択された実施態様は、哺乳類、例えばヒトのような動物宿主への投与に適した形態の薬物を含む。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」又は「賦形剤」には、生理学的に適合する任意の及びすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。担体は、局所、皮下、皮内、静脈内、非経口、腹腔内、筋肉内、舌下、吸入、腫瘍内又は経口投与を含む、任意の適切な投与形態に好適であり得る。薬学的に許容される担体には、滅菌水性溶液又は分散液、及び滅菌注射溶液若しくは分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体及び薬物の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の媒体又は薬物が生物学的に活性な化合物と適合しない場合を除いて、本発明の医薬組成物におけるその使用が意図される。補足的な活性化合物を組成物に組み込むこともできる。
【0035】
従来の製薬実務を用いて、送達ビヒクルを対象に投与するための適切な製剤又は組成物を提供することができる。例えば、非経口、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼科、脳室内、関節内、髄腔内、くも膜下腔内、嚢内、腹腔内、鼻腔内、吸入、エアロゾル、局所、腫瘍内、舌下又は経口等の任意の適切な投与経路を用いることができる。治療用製剤は、液体溶液又は懸濁液の形態であり得る。経口投与の場合、製剤は、錠剤又はカプセル剤の形態であり得る。点鼻薬の場合、製剤は散剤、鼻腔内滴剤又はエアロゾルの形態であり得る。舌下製剤の場合、製剤は、滴剤、エアロゾル又は錠剤の形態であり得る。
【0036】
シクロデキストリン分解酵素又は消化酵素は、例えば経口送達用に製剤化することができる。例えば、乳化溶媒蒸発法(Sharma et al., Pharm Dev Technol. 2013 May-Jun: 18(3): 560-9)で調製されるサブミクロン粒子製剤等の腸内酵素製剤(enteric enzyme formulation)が提供され得る。同様に、送達ビヒクルは、ヒドロゲル(参照:US2014-0094433)又は薬用ガム(参照:US2013-0022652)として製剤化されてもよい
【0037】
製剤を製造するための当該分野で周知の方法は、例えば、"Remington's Pharmaceutical Sciences" (20th edition), ed. A. Gennaro, 2000, Mack Publishing Company, Easton, PAに見出される。非経口投与のための製剤には、例えば、賦形剤、滅菌水、又は生理食塩水、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、植物起源の油、又は水素化ナフタレンが含まれ得る。生体適合性、生物分解性のラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーを用いることで、化合物の放出を制御することができる。他の潜在的に有用な非経口送達システムには、エチレン-酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、移植可能な点滴システム、及びリポソームが含まれる。吸入のための製剤は、賦形剤、例えばラクトースを含有してもよく、又は例えばポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、グリココール酸塩及びデオキシコール酸塩を含む水溶液であってもよく、又は点鼻薬の形態で、若しくはゲルとしての投与のための油性溶液であってもよい。
【0038】
本発明の医薬組成物は、組成物を患者に投与することを可能にする任意の形態であり得る。例えば、組成物は、固体、液体又は気体(エアロゾル)の形態であってもよい。典型的な投与経路としては、経口、局所、非経口、舌下、直腸、膣及び鼻腔内が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される非経口という用語には、皮下注射、静脈内、筋肉内、硬膜外、胸骨内注射又は点滴技術が含まれる。本発明の医薬組成物は、患者に組成物を投与した時に、組成物に含まれる活性成分が生物学的に利用可能となるように製剤化されている。患者に投与される組成物は、1つ以上の投与単位の形態をとり、例えば、錠剤、カプセル又はカシェ剤は単回投与単位であってよく、エアロゾル形態の化合物の容器は、複数の投与単位を含んでもよい。
【0039】
医薬組成物を調製するのに使用される材料は、薬学的に純粋であり、使用される量で非毒性でなければならない。本発明の組成物は、特に望ましい効果について知られている1つ以上の化合物(活性成分)を含み得る。医薬組成物中の活性成分の最適な投与量は、様々な要因に依存することは、当業者には明らかであろう。関連する因子には、対象の種類(例えば、ヒト)、有効成分の特定の形態、投与方法、及び用いられる組成物が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
一般に、医薬組成物は、本明細書に記載の本発明の送達ビヒクルを、1つ以上の担体と混合して含む。組成物が、例えば、錠剤又は散剤の形態となるように、担体は粒子状であってもよい。例えば、経口シロップ又は注射液である組成物の場合、担体は液体であってもよい。さらに、例えば、吸入投与に有用なエアロゾル組成物を提供するために、担体は気体状であってもよい。
【0041】
経口投与が意図される場合、組成物は、好ましくは、固体又は液体のいずれかであり、半固体、半液体、懸濁液及びゲルの形態は、固体又は液体のいずれかのような本明細書で考えられる形態内に含まれる。
【0042】
経口投与のための固体組成物として、組成物は、散剤、顆粒、圧縮錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、チューインガム、ウェーハ、ロゼンジ等の形態に製剤化することができる。このような固体組成物は、典型的には、1つ以上の不活性希釈剤又は食用担体を含有する。さらに、以下のアジュバントの1つ以上が存在してもよい:シロップ、アカシア、ソルビトール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース、トラガカントゴム又はゼラチン、及びそれらの混合物等の結合剤;デンプン、ラクトース又はデキストリン等の賦形剤;アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プリモゲル(Primogel)、コーンスターチ等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム又はステロテックス(Sterotex)等の潤滑剤;乳糖、マンニトール、デンプン、リン酸カルシウム、ソルビトール、メチルセルロース、及びそれらの混合物等の充填剤;ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール等の高分子量ポリマー、ステアリン酸等の高分子量脂肪酸、シリカ等の潤滑剤;ラウリル硫酸ナトリウム等の湿潤剤;コロイド状二酸化ケイ素等の流動促進剤;ショ糖又はサッカリン等の甘味剤;ペパーミント、サリチル酸メチル又はオレンジ香味等の香味剤;及び着色剤。
【0043】
組成物がカプセル、例えばゼラチンカプセルの形態である場合、組成物は、上記タイプの材料に加えて、ポリエチレングリコール又は脂肪油等の液体担体を含有してもよい。
【0044】
組成物は、液体、例えば、エリキシル、シロップ、溶液、水性若しくは油性の乳剤又は懸濁液、又は使用前に水及び/又は他の液体媒体で再構成することができる乾燥粉末の形態であってもよい。液体は、2つの例として、経口投与のため又は注射による送達のためのものであってもよい。経口投与を目的とする場合、好ましい組成物は、本化合物に加えて、甘味剤、増粘剤、防腐剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸アルキル)、色素/着色剤及び風味増強剤(風味料)の1つ以上を含有する。注射により投与される組成物において、界面活性剤、保存料(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸アルキル)、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤(例えばソルビトール、グルコース又は他の糖シロップ)、緩衝剤、安定剤及び等張剤の1つ以上を含有してもよい。乳化剤は、レシチン及びモノオレイン酸ソルビトールから選択することができる。
【0045】
本発明の液体医薬組成物は、溶液、懸濁液又は他の同様の形態であっても、以下のアジュバントの1つ以上を含んでもよい:注射用水、食塩水、好ましくは生理食塩水、リンゲル液、等張塩化ナトリウム等の無菌希釈剤;溶媒又は懸濁媒体の役割を果たす合成モノ若しくはジグリセリド、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の溶媒等の不揮発性油;ベンジルアルコール又はメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウム等の抗酸化剤;エチエンジアミン四酢酸等のキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩等の緩衝剤;及び塩化ナトリウム又はデキストロース等の張度調整剤。非経口製剤は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器又は複数回投与バイアルに封入することができる。生理食塩水が好ましいアジュバントである。注射用医薬組成物は、好ましくは無菌である。
【0046】
医薬組成物は、局所投与を意図することができ、その場合、担体は、溶液、乳剤、軟膏、クリーム又はゲルの基剤を適切に含むことができる。基剤は、例えば、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、ミツロウ、鉱油、水及びアルコール等の希釈剤、並びに乳化剤及び安定剤の1つ以上を含むことができる。増粘剤は、局所投与のための医薬組成物中に存在してもよい。経皮投与が意図される場合、組成物は、経皮パッチ又はイオントフォレーシス装置を含み得る。局所製剤は、約0.1~約25%w/v(単位体積当たりの重量)の濃度の生物活性化合物を含有してもよい。
【0047】
組成物は、例えば、直腸で融解して薬物を放出する坐剤の形態で直腸投与を意図することができる。直腸投与のための組成物は、適切な非刺激性賦形剤として油性基剤を含有してもよい。そのような基剤としては、ラノリン、カカオバター及びポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。低融点ワックスは、坐剤の調製に好ましく、脂肪酸グリセリド及び/又はカカオバターの混合物が適切なワックスである。ワックスを溶融し、攪拌してアミノシクロヘキシルエーテル化合物を均一に分散させる。次いで、溶融した均一混合物を使いやすい大きさの型に注ぎ、冷却させて凝固させる。
【0048】
組成物は、固体又は液体投与単位の物理的形態を変更する様々な物質を含み得る。例えば、組成物は、活性成分の周囲にコーティングシェルを形成する材料を含むことができる。コーティングシェルを形成する材料は、典型的には不活性であり、例えば、糖、シェラック、及び他の腸溶コーティング剤から選択することができる。あるいは、活性成分をゼラチンカプセル又はカシェに入れてもよい。
【0049】
本発明の医薬組成物は、気体状投与単位から構成されてもよく、例えば、エアロゾルの形態であってもよい。用語エアロゾルは、コロイド性のものから加圧包装からなるシステムまでの範囲の様々なシステムを示すのに使用される。送達は、液化又は圧縮気体によって、又は活性成分を分配する適切なポンプシステムによって行うことができる。本発明の化合物のエアロゾルは、活性成分を送達するために、単相系、二相系又は三相系で送達することができる。エアロゾルの送達には、一緒にキットを形成することができる必要な容器、アクチベータ、バルブ、サブコンテナなどが含まれる。
【0050】
生物学的に活性な化合物は、遊離塩基の形態であるか、又は塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、マンデル酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、当該分野で公知の他の塩等の薬学的に許容される塩の形態であってもよい。適切な実施態様(例えば、経口又は非経口投与経路)のために、化合物の生物学的利用能又は安定性を高める適切な塩が選択される。
【0051】
注射によって投与されることが意図された組成物は、本発明の送達ビヒクルを水及び好ましくは緩衝剤と組み合わせて溶液を形成することによって調製することができる。水は、好ましくは無菌の発熱物質を含まない水である。均質な溶液又は懸濁液の形成を容易にするために、界面活性剤を添加することができる。界面活性剤は、アミノヘキシルエーテル化合物と非共有結合的に相互作用して、水性送達系へのアミノヘキシルエーテル化合物の溶解又は均一に懸濁を促進する化合物である。本発明によるアミノシクロヘキシルエーテル化合物が疎水性であり得るため、界面活性剤が本発明の水性組成物中に存在することが望ましい。注射用の他の担体としては、滅菌の過酸化物を含まないオレイン酸エチル、脱水アルコール、プロピレングリコール、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
注射溶液のための適切な薬学的アジュバントには、安定化剤、可溶化剤、緩衝剤及び粘度調整剤が含まれる。これらのアジュバントの例としては、エタノール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、酒石酸緩衝液、クエン酸緩衝液、及び高分子量ポリエチレンオキシド粘度調整剤が挙げられる。これらの医薬製剤は、筋肉内、硬膜外、腹腔内、又は静脈内に注射することができる。
【0053】
本発明はまた、1つ以上の送達ビヒクルを含む医薬組成物を含むキットを提供する。キットには、医薬品の使用説明書も含まれる。好ましくは、市販の包装品は、医薬組成物の1つ以上の単位用量を含有する。例えば、そのような単位用量は、静脈注射の調製に十分な量であり得る。光感受性な及び/又は空気感受性な化合物は特別な包装及び/又は製剤を必要とすることは当業者に明らかであろう。例えば、光に対して不透明であり、及び/又は周囲空気との接触から密封され、及び/又は適切なコーティング剤又は賦形剤で製剤化された包装品を使用することができる。
【0054】
本発明によるCD包接体送達ビヒクルの「有効量」には、治療的有効量又は予防的有効量が含まれる。「治療的有効量」は、所望の治療結果を達成するのに必要な用量及び期間で有効な量を表す。送達ビヒクルの治療的有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに個体において所望の応答を誘発する化合物の能力等の因子によって変化し得る。投与計画は、最適な治療応答を提供するように調節することができる。治療的有効量はまた、送達ビヒクル又は活性化合物の毒性又は有害な効果が治療上有益な効果を上回るものであってもよい。「予防的有効量」は、所望の予防結果を達成するのに必要な用量及び期間で有効な量を表す。典型的には、疾患の前又はその初期に予防的用量を対象に用い、それによって予防的有効量が治療的有効量未満であり得る。任意の特定の対象に対しては、個々の必要性、及び組成物を投与する又は投与を監督する者の専門的判断に従って、経時的に(例えば、タイミングは毎日、1日おき、毎週、毎月であり得る)、治療のタイミング及び用量を調整することができる。
【0055】
選択された実施態様において、本発明は、生物学的に活性な化合物、その溶媒和物、薬学的に許容される塩、エステル、アミド、錯体、キレート、立体異性体、立体異性体の混合物、幾何異性体、結晶型、非晶質型、代謝体、代謝前駆体又はプロドラッグ、それらの単離されたエナンチオマー、ジアステレオマー及び幾何異性体、及びそれらの混合物から選択される1つ以上の生物学的に活性な化合物を、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わせて、含有する組成物又は医薬品を提供する。さらに、本発明はそのような組成物又は医薬品の製造方法を提供する。
【0056】
本発明の様々な実施態様が本明細書に開示されているが、当業者の共通の一般的知識に従って、本発明の範囲内で多くの適応及び変更を行うことができる。このような変更には、実質的に同じ方法で同じ結果を達成するために、本発明の任意の側面に対する既知の均等物の置換が含まれる。数値範囲は、範囲を定義する数字を含む。用語「含んでいる(comprising)」は、本明細書において、「含むがこれに限定されない」という語句と実質的に同等の無制限の用語として使用され、単語「含む(comprises)」は対応する意味を有する。本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「もの(a thing)」への言及は、複数のそのものを含む。
【0057】
本明細書における参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明の先行技術であることを認めるものではない。本明細書に引用された特許及び特許出願を含むがこれらに限定されない任意の優先権書類及び全ての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。ここに引用された文書に引用又は参照されているすべての文書は、ここに記載された、又は参照により本明細書に組み込まれたいずれかの文書に記載された任意の製品の製造者の指示、説明書、製品仕様及び製品シートと共に、参照により本明細書に組み込まれ、又は本発明の実施に用いてもよい。より具体的には、各々の個々の刊行物が具体的に、個別に本明細書に参照として組み込まれて示され、又は完全に本明細書に記載されているのと同程度に、全ての参照された刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、すべての実施態様、及び実質的に前述された変形例を含み、実施例及び図面が参照される。
【0058】
いくつかの実施態様では、本発明は、医学的又は外科的処置を含む工程を排除する。
【実施例】
【0059】
実施例1:粘液製剤I
スラリー法を利用して、カンフェンとα-シクロデキストリンのモル比1:2で、Vigon Corporationの食品グレードのカンフェンを用い、カンフェンのシクロデキストリン包接体を調製した。このカンフェン包接体(6.5%)の持続放出カプセルは、1カプセル当たり以下の処方で作られた。
カンフェン包接体 400mg(正味26mg)
K-100Mセルロース(Colorcon) 80mg
E4Mセルロース(Colorcon) 20mg
アミラーゼ酵素 4mg
ラウリン酸カルシウム(フローエンハンサー) 4mg
【0060】
実施例2:粘液製剤II
粘液製剤Iに加えるために、以下のように、追加のシクロデキストリン包接体製剤を調製した。
スラリー法を利用して、ペパーミントオイルとγ-シクロデキストリンのモル比1:4でペパーミントオイル(NOW Foods)包接体を調製した。
スラリー法を利用して、ユーカリプトールとα-シクロデキストリンのモル比1:1でユーカリプトール(Vigon)包接体を調製した。
【0061】
前記のペパーミントオイル包接体製剤及びユーカリプトール包接体製剤を、粘液製剤I の成分に加え、粘液製剤IIのカプセルを提供した。
カンフェン包接体(6.5%) 150mg(正味10mg)
ユーカリプトール包接体(10%) 135mg(正味13.5mg)
ペパーミントオイル包接体(15%) 46mg(正味7mg)
K-100Mセルロース(Colorcon) 70mg
E4Mセルロース(Colorcon) 17mg
アミラーゼ酵素 4mg
【0062】
実施例3:非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に伴われる粘膜炎
対象BCは、肝臓癌の病歴を有し、その結果、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH、非アルコール性脂肪性肝疾患の進行性形態のサブセット)に伴われる粘膜炎を、肝硬変に伴って有した。BCは、肝内胆管癌の肝臓手術を受け、続いて化学療法と放射線療法を含む癌治療を受けた。放射線の副作用は、粘膜炎(粘液の過剰産生)の発症であり、これは従来の治療法では手に負えなかった。
【0063】
対象BCは、1日目に1日3回3カプセルの用量で実施例2の粘液製剤IIによる治療を開始した。5日目までに、呼吸粘液は劇的に改善され、持続的な咳を伴うものの、肺うっ血が著しく変化した。カプセルによる治療の10日目までに、過剰な呼吸粘液は症状として事実上消失し、咳は大きく解消された。カプセルによる継続的な治療は、粘膜炎の症状の永続的な改善をもたらし、鎮咳効果を含む気道粘液機能不全の治療における驚くべき効果の証拠を提供した。
【0064】
実施例4:気管支拡張症
50歳の対象Dは、長年、重度で難治性の気管支拡張症の診断を受けており、約20年間、肺喀痰がシュードモナス陽性であった。患者は副鼻腔感染のためのオーグメンチン(アモキシシリン及びクラブラン酸塩)、噴霧されたハイパーゾル、アルブテロール及びコリスチン抗生物質(28日間のオン、その後28日間のオフ)による治療を受けた。
【0065】
患者は6月11日に1日2回4カプセルで粘液製剤IIによる治療を開始した。6月14日、投与量を1日2回6カプセルに増量し、これによって夜を通した睡眠への移行が伴われた。これは、腹ばい又はうつ伏せの位置と関連する長年の咳の症状の解決に帰された。6月17日までに、Dは気道粘液の継続的な改善と共によく眠った。この結果は、粘液製剤IIの治療によって媒介された肺うっ血の解決に患者によって帰された。6月19日までに、Dは継続的な改善を報告し、一貫して夜を通して眠った。6月20日に、Dは去痰効果を報告し、気道粘液が薄くなり、終日、痰を出しやすくなり、粘液が明るい緑色から透明になった。噴霧された抗生物質による治療サイクルの「28日間のオフ」部分の最悪の部分であっても、そうであった(そのサイクルの最後の2週間、Dは典型的に気道粘液が暗緑色に変化するのを経験した)。Dは、胸の圧迫感が減り、痰が出る咳(productive cough)になり、夜を通して横向きの睡眠が可能になったと報告した。Dは、粘液製剤IIを服用した最初の日である6月12日から、夜を通して眠った。咳で目が覚めるまでに一度に2~3時間しか眠らないという一貫した慢性的な歴史であったものに直面すると、これは、睡眠の姿勢や傾斜に関係なく、驚くべき結果であった。これは、リクライニングチェアで断続的な睡眠を何年も続けた後の、劇的で一貫した変化であった。
【0066】
6月30日に、Dは、粘液製剤II+と呼ばれる、グアイオールとフェヌグリークオイルを加えた粘液製剤IIへの切り替えて、治療を続けた。7月3日までに、Dは、気道粘液機能障害の著しい改善が継続していることを報告し、咳が少なくなり、より痰が出る咳になり、粘液が少なくなった。改善には、咳の頻度、持続時間、強度の減少が含まれ、より痰が出る咳になり、しかし処理されるべき粘液が全体的に少なくなった。この時点で、患者Dは、抗生物質の28日間のオンと28日間オフのサイクルの「オン」部分に2週間入った。粘液は白く、時折、薄い黄色である。通常、抗生物質のサイクルのこの時点で、粘液は黄色から明るい黄色になる(決して透明/白ではない)。Dは夜を通した眠りを続けた。7月10日までに、抗生物質サイクルの「オン」部分の第4週の初めに、継続的な改善が見られ、Dは長年にわたって初めて仰向けで眠ることができたことを報告し、粘液は白く(黄色なし)、粘液が少なかった。顕著な去痰効果があり、前週よりも遥かに容易に動いた。
【0067】
この実施例は、グアイオール及びフェヌグリークオイルを更に含む製剤を含む、経口カンフェンシクロデキストリン製剤で気道粘液機能障害を有効に治療することを示す。
【0068】
実施例5:ウイルス性肺炎、粘液活性効果
以下のCD包接体の組み合わせを含む組成物が、経口投与のためのカプセル形態で提供された。
(β-CD包接体中の)ユーカリプトール6mgで標準化されたユーカリ属(フトモモ科)の抽出物、
(β-CD包接体中の)カンフェン6mgで標準化されたシンカルピア グロムリフェラの抽出物、
(β-CD包接体中の)ペパーミント(メンタ ピペリタ)オイル6mg、
(β-CD包接体又はγ-CD包接体中の)デルタ-3-カレン4mgで標準化されたピヌス属(ピヌス ピナスター及び/又はピヌス エリオッティ及び/又はピヌス シルベストリス)の抽出物、
(γ-CD包接体中の)フェヌグリーク(トリゴネラ フォエナム-グラエカム)の抽出物(フェヌグリークアブソリュート)4mg、
(γ-CD包接体中の)グアイオール4mgで標準化されたブルネシア サルミエントイの抽出物、
K250徐放剤 80mg、
アミラーゼ 7mg、及び
ラウリン酸カルシウム 5mg。
【0069】
成人男性患者がウイルス感染症と診断され、嘔吐するまで空の痰が出ない咳(dry unproductive cough)を示した。患者は、2日間、1日2回4カプセルで前記の製剤による治療を開始した。患者の咳は痰が出る(productive cough)ようになり、製剤からの明らかな粘液活性効果を伴い、患者の幸福感の改善に結び付いた。
【0070】
実施例6:勃起効果
男性対象Aは、1日2回3カプセルで粘液製剤Iの投与を開始した。48時間以内に、呼吸器粘液が著しく低下して、運動による呼吸が著しく改善した。粘液製剤Iの初回投与から48時間以内に、67歳の対象がしばらく経験していなかった夜間の陰茎勃起の発生に対象が気づいた。対象が粘液製剤Iの投与量を1日2回4カプセルに増やしたところ、夜間の陰茎勃起、及び日中又は夜間の勃起刺激に対する感受性が著しく向上したとの即時の効果があった。対象が勃起促進効果を測定し、25~50mgのシルデナフィルの投与の勃起効果の70~85%に相当した。対象は更に、粘液製剤Iの1日2回4カプセルを投与した場合、5mgのシルデナフィルの投与で、過去に25~50mgのシルデナフィルを投与した場合と実質的に同じ勃起増強を達成し、25~50mgのシルデナフィルで経験した副作用(例えば、頭痛、潮紅、胃のむかつき、視力異常、鼻づまり又は鼻水、背中の痛み、筋肉痛及び吐き気等が含まれる)が全くないことを発見した。