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特許7760174界面活性ペプチドナノ構造および薬物送達における使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-17
(45)【発行日】2025-10-27
(54)【発明の名称】界面活性ペプチドナノ構造および薬物送達における使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/42 20170101AFI20251020BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20251020BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20251020BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20251020BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20251020BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20251020BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20251020BHJP
   C07K 4/00 20060101ALN20251020BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20251020BHJP
   C12N 15/87 20060101ALN20251020BHJP
【FI】
A61K47/42
A61K9/10
A61K31/7088
A61K31/713
A61K48/00
A61P35/00
A61P43/00 105
C07K4/00 ZNA
C12N15/113 Z
C12N15/87 Z
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023062404
(22)【出願日】2023-04-06
(62)【分割の表示】P 2020532820の分割
【原出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2023076699
(43)【公開日】2023-06-01
【審査請求日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】62/599,566
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505043041
【氏名又は名称】株式会社スリー・ディー・マトリックス
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ユン ソク ギル
(72)【発明者】
【氏名】エルトン アレスキ
(72)【発明者】
【氏名】松田 範昭
【審査官】松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】The Journal of Physical Chemistry B,2014年,vol.118,p.12215-12222
【文献】Langmuir,2014年,vol.30,p.10072-10079
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/42
A61K 9/10
A61K 31/7088
A61K 31/713
A61K 48/00
A61P 35/00
A61P 43/00
C07K 4/00
C12N 15/113
C12N 15/87
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達における使用のための、ナノスフェア構造を有するペプチドを含む組成物であって、前記ペプチドが、AAAK(配列番号1)、AAAAK(配列番号5)またはAAAKAAA(配列番号15)のアミノ酸配列を有し、前記ペプチドが、6~8のpHを有する水性溶液中に少なくとも0.01%(w/v)の濃度で存在し、前記水性溶液は0M~0.3Mのイオン強度にある、組成物。
【請求項2】
前記水性溶液が等張性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
被験体への送達のための薬剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記薬剤が、治療剤、薬物またはsiRNAである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記siRNAががん細胞への送達のためのものである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
各アミノ酸がD-アミノ酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ペプチドのうち任意のものが、C末端においてアミド化され、N末端においてアセチル化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ペプチドがAAAK(配列番号1)のアミノ酸配列を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ペプチドがAAAAK(配列番号5)のアミノ酸配列を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記ペプチドがAAAKAAA(配列番号15)のアミノ酸配列を有する、請求項7に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年12月15日出願の米国仮特許出願第62/599,566号(その内容は、それらの全体において本明細書に参考として援用される)の利益を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出されており、その全体において参考として援用される配列表を含む。上記ASCIIコピー(作成日:2018年11月30日)は、ファイル名:2004837-0223_SL.txtであり、サイズ:29,249バイトである。
【背景技術】
【0003】
背景
界面活性ペプチドは代表的には、親水性ヘッド基および疎水性アミノ酸を有する親油性テールを有する。ある種の界面活性ペプチドは、以前に開示されている(例えば、PCT公開番号WO2003006043、WO2013181511、およびWO2009018467)。その開示される界面活性ペプチドのうちのいくつかは、オリゴペプチド、ならびに5個またはこれより多くのアミノ酸の反復ユニットの中に荷電性アミノ酸を含む親水性ヘッド基および疎水性アミノ酸を含む親油性テールを含む構造を有する、ジブロックおよびトリブロックペプチドコポリマーである。
4個のアラニンの1個の反復単位を有する他の界面活性ペプチドは、膜タンパク質を安定化することにおける使用について開示されている(例えば、米国特許出願公開番号US20090069547)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2003/006043号
【文献】国際公開第2013/181511号
【文献】国際公開第2009/018467号
【文献】米国特許出願公開第2009/0069547号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
以前に開示された界面活性ペプチドは、平均直径約50nMを有するナノチューブを形成するように自己アセンブルすることが報告されている。
【0006】
本開示は、ナノスフェア構造を形成する4個またはこれより少ないアミノ酸の反復疎水性単位を有する短い界面活性ペプチドを提供する。このようなナノスフェア構造は、製剤化および治療剤の送達に特に有用である。
【0007】
いくつかの実施形態において、本開示は、以下の式に従う反復疎水性アミノ酸:
式I(N→C): (X)a(Y)m
式II(N→C): (Y)m(X)a
式III(N→C): (X)a(Y)m(X)b
式IV(N→C): (Y)m(X)a(Y)n
式V(N→C): (X)a(Z)m
式VI(N→C): (Z)m(X)a
式VII(N→C): (X)a(Z)m(X)b;または
式VIII(N→C): (Z)m(X)a(Z)n;
を有するペプチドを含む組成物を提供し、ここで
(X)は、生理学的pHにおいて非極性かつ非荷電の側鎖を有するアミノ酸であり;
(Y)は、生理学的pHにおいてカチオン性の側鎖を有するアミノ酸であり;
(Z)は、生理学的pHにおいてアニオン性の側鎖を有するアミノ酸であり;
そしてここで
aは、4に等しいかまたは4未満の整数;
bは、4に等しいかまたは4未満の整数;
mは、1に等しいかまたは1より大きい整数;そして
nは、1に等しいかまたは1より大きい整数である。
【0008】
いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、ナノスフェア構造を有する。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、ナノスフェアを形成する。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、自己アセンブルする界面活性ペプチドを実質的に含まない中心を有するナノスフェア構造を形成する(例えば、球形のナノ小胞)。
【0009】
いくつかの実施形態において、上記(X)、(Y)、および/または(Z)のアミノ酸は、天然アミノ酸である。いくつかの実施形態において、上記(X)、(Y)、および/または(Z)のアミノ酸は、非天然アミノ酸である。
【0010】
いくつかの実施形態において、上記aまたはbの整数は、4である。いくつかの実施形態において、上記aまたはbの整数は、3である。
【0011】
いくつかの実施形態において、(X)は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、またはグリシンである。いくつかの実施形態において、(X)はアラニンである。いくつかの実施形態において、(Y)は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、またはオルニチンである。いくつかの実施形態において、(Y)はリジンである。いくつかの実施形態において、(X)はアラニンであり、(Y)はリジンである。いくつかの実施形態において、(Z)は、アスパラギン酸またはグルタミン酸である。
【0012】
いくつかの実施形態において、1個またはこれより多くのアミノ酸は、L-アミノ酸である。いくつかの実施形態において、各アミノ酸はL-アミノ酸である。いくつかの実施形態において、1個またはこれより多くのアミノ酸は、D-アミノ酸である。いくつかの実施形態において、各アミノ酸はD-アミノ酸である。
【0013】
いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、長さが4~10アミノ酸である。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、長さが5アミノ酸である。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、長さが6アミノ酸である。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、長さが7アミノ酸である。
【0014】
いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、改変されたN末端および/または改変されたC末端を含む。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、アセチル化N末端および/またはアミノ化C末端を有する。
【0015】
いくつかの実施形態において、ペプチドは、ナノスフェア構造および配列番号1~50のうちのいずれかに従うアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、ナノスフェア構造および配列番号51~100のうちのいずれか1つに従うアミノ酸配列を有する。
【0016】
いくつかの実施形態において、ペプチドは、ナノスフェア構造およびアミノ酸配列AAAK(配列番号1)を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、ナノスフェア構造およびアミノ酸配列AAAAK(配列番号5)を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、ナノスフェア構造およびアミノ酸配列AAAKAAA(配列番号15)を有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、本開示は、水性溶液中にナノスフェアペプチドを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、少なくとも0.01%(w/v)の濃度にある。いくつかの実施形態において、上記水性溶液は、約6~約8のpHを有する。いくつかの実施形態において、上記水性溶液は、約7のpHを有する。いくつかの実施形態において、上記水性溶液は、約0M~約0.3Mのイオン強度にある。いくつかの実施形態において、上記水性溶液は、約0.15Mのイオン強度にある。いくつかの実施形態において、上記水性溶液は、等張性である。
【0018】
いくつかの実施形態において、本開示は、薬物送達における使用のための組成物を提供する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、被験体への送達のための薬剤を含む。いくつかの実施形態において、上記薬剤は治療剤である。いくつかの実施形態において、上記薬剤は薬物(例えば、低分子)である。いくつかの実施形態において、上記薬剤は生物製剤である。いくつかの実施形態において、上記薬剤はオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、上記薬剤はRNAのインヒビターである。いくつかの実施形態において、上記薬剤はsiRNAである。いくつかの実施形態において、上記薬剤はがん細胞への送達のためである。
【0019】
いくつかの実施形態において、本開示は、被験体への送達のための薬剤を製剤化する方法を提供し、上記方法は、上記薬剤と本明細書で記載されるとおりのナノスフェアペプチド界面活性剤とを接触させる工程を包含する。
【0020】
いくつかの実施形態において、本開示は、被験体に薬剤を送達する方法を提供し、上記方法は、上記被験体に、以下の式:
式I(N→C): (X)a(Y)m
式II(N→C): (Y)m(X)a
式III(N→C): (X)a(Y)m(X)b
式IV(N→C): (Y)m(X)a(Y)n
式V(N→C): (X)a(Z)m
式VI(N→C): (Z)m(X)a
式VII(N→C): (X)a(Z)m(X)b;または
式VIII(N→C): (Z)m(X)a(Z)n;
に従う反復疎水性アミノ酸を有するペプチドと製剤化された組成物を投与する工程を包含し、ここで
(X)は、生理学的pHにおいて非極性かつ非荷電の側鎖を有するアミノ酸であり;
(Y)は、生理学的pHにおいてカチオン性の側鎖を有するアミノ酸であり;
(Z)は、生理学的pHにおいてアニオン性の側鎖を有するアミノ酸であり;
そしてここで
aは、4に等しいかまたは4未満の整数であり;
bは、4に等しいかまたは4未満の整数であり;
mは、1に等しいかまたは1より大きい整数であり;そして
nは、1に等しいかまたは1より大きい整数である。
【0021】
いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、ナノスフェア構造を形成する。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、ナノスフェアを形成する。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、球状ナノ小胞を形成する。
【0022】
いくつかの実施形態において、上記(X)、(Y)、および/または(Z)のアミノ酸は、天然アミノ酸である。いくつかの実施形態において、上記(X)、(Y)、および/または(Z)のアミノ酸は、非天然アミノ酸である。
【0023】
いくつかの実施形態において、上記aまたはbの整数は、4である。いくつかの実施形態において、上記aまたはbの整数は、3である。
【0024】
いくつかの実施形態において、(X)は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、またはグリシンである。いくつかの実施形態において、(X)はアラニンである。いくつかの実施形態において、(Y)は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、またはオルニチンである。いくつかの実施形態において、(Y)はリジンである。いくつかの実施形態において、(X)はアラニンであり、(Y)はリジンである。いくつかの実施形態において、(Z)は、アスパラギン酸またはグルタミン酸である。
【0025】
いくつかの実施形態において、1個またはこれより多くのアミノ酸は、L-アミノ酸である。いくつかの実施形態において、各アミノ酸はL-アミノ酸である。いくつかの実施形態において、1個またはこれより多くのアミノ酸は、D-アミノ酸である。いくつかの実施形態において、各アミノ酸はD-アミノ酸である。
【0026】
いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、長さが4~10アミノ酸である。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、長さが5アミノ酸である。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、長さが6アミノ酸である。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、長さが7アミノ酸である。
【0027】
いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、改変されたN末端および/または改変されたC末端を含む。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、アセチル化N末端および/またはアミノ化C末端を有する。
【0028】
いくつかの実施形態において、ペプチドは、ナノスフェア構造および配列番号1~50のうちのいずれかに従うアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、ナノスフェア構造および配列番号51~100のうちのいずれか1つに従うアミノ酸配列を有する。
【0029】
いくつかの実施形態において、ペプチドは、ナノスフェア構造およびアミノ酸配列AAAK(配列番号1)を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、ナノスフェア構造およびアミノ酸配列AAAAK(配列番号5)を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、ナノスフェア構造およびアミノ酸配列AAAKAAA(配列番号15)を有する。
【0030】
いくつかの実施形態において、本開示は、水性溶液中にナノスフェアペプチドを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、上記ペプチドは、少なくとも0.01%(w/v)の濃度にある。いくつかの実施形態において、上記水性溶液は、約6~約8のpHを有する。いくつかの実施形態において、上記水性溶液は、約7のpHを有する。いくつかの実施形態において、上記水性溶液は、約0M~約0.3Mのイオン強度にある。いくつかの実施形態において、上記水性溶液は、約0.15Mのイオン強度にある。いくつかの実施形態において、上記水性溶液は、等張性である。
【0031】
定義
本開示がより容易に理解されるように、ある種の用語が以下に先ず記載される。以下の用語および他の用語のさらなる定義は、本明細書全体を通じて示される。
【0032】
用語「薬剤(agent)」とは、本明細書で使用される場合、例えば、ポリペプチド、核酸、サッカリド、脂質、低分子、金属、またはこれらの組み合わせを含む任意の化学的クラスの化合物または実体に言及する。いくつかの実施形態において、薬剤は、これが天然に見出されるおよび/または天然から得られるという点において、天然の生成物であるか、またはその天然の生成物を含む。いくつかの実施形態において、薬剤は、これが人の手による活動を通じて設計、操作、および/もしくは生成される、ならびに/または天然において見出されないという点において、1種もしくはこれより多くの人工の実体であるか、またはその実体を含む。いくつかの実施形態において、薬剤は、単離された形態または純粋な形態で利用され得る;いくつかの実施形態において、薬剤は、粗製形態で利用され得る。本発明に従って利用され得るいくつかの特定の薬剤としては、低分子、抗体、抗体フラグメント、アプタマー、核酸(例えば、siRNA、shRNA、DNA/RNAハイブリッド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、およびリボザイム)、ペプチド、ペプチド模倣物などが挙げられる。いくつかの実施形態において、薬剤は、ポリマーであるか、またはポリマーを含む。いくつかの実施形態において、薬剤は、ポリマーではない、および/またはいかなるポリマーをも実質的に含まない。いくつかの実施形態において、薬剤は、少なくとも1種のポリマー部分を含む。いくつかの実施形態において、薬剤は、いかなるポリマー部分をも欠くか、またはいかなるポリマー部分をも実質的に含まない。いくつかの実施形態において、薬剤は、細胞溶解物であるか、または細胞溶解物を含む。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「アミノ酸(amino acid)」は、その最も広い意味において、ポリペプチド鎖へと、例えば、1またはこれより多くのペプチド結合の形成を通じて組み込まれ得る任意の化合物および/または物質に言及する。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、一般的構造 HN-C(H)(R)-COOHを有する。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、天然に存在するアミノ酸である。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、合成アミノ酸である;いくつかの実施形態において、アミノ酸はD-アミノ酸である;いくつかの実施形態において、アミノ酸はL-アミノ酸である。「標準的アミノ酸(standard amino acid)」とは、天然に存在するペプチドにおいて一般に見出される20種の標準的L-アミノ酸のうちのいずれかに言及する。「非標準的アミノ酸(nonstandard amino acid)」とは、それが合成して調製されるか、または天然供給源から得られるかに関わらず、その標準的アミノ酸以外の任意のアミノ酸に言及する。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、ポリペプチドにおけるカルボキシ末端および/またはアミノ末端のアミノ酸を含め、上記の一般的構造と比較して、構造的改変を含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、アミノ酸は、その一般的構造と比較して、メチル化、アミド化、アセチル化、および/または置換によって改変され得る。状況から明らかであるように、いくつかの実施形態において、用語「アミノ酸」は、遊離アミノ酸をいうために使用される;いくつかの実施形態において、それは、ポリペプチドのアミノ酸残基をいうために使用される。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「およそ(approximately)」または「約(about)」とは、目的の1またはこれより多くの値に付与される場合、述べられた参照値に類似である値に言及する。ある種の実施形態において、用語「およそ」または「約」は、その状況から、(このような数字が考えられる値の100%を超える場合を除いて)別段述べられなければまたは別段明らかでなければ、その述べられた参照値の(より大きいまたはより小さい)いずれに方向においても25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%,3%、2%、1%、もしくはこれより小さい範囲内に入る値の範囲に言及する。
【0035】
2つの事象または実体は、用語、互いに「関連する(associated)」が本明細書で使用される場合、一方の存在、レベルおよび/または形態が、他方の存在、レベルおよび/または形態と相関していれば、互いに関連する。いくつかの実施形態において、2種またはこれより多くの実体は、それらが直接的にもしくは間接的に相互作用し、その結果、それらが互いと物理的近位にあるおよび/または物理的近位のままであるのであれば、互いに物理的に「関連する」。いくつかの実施形態において、互いに物理的に関連する2種またはこれより多くの実体は、互いと共有結合的に連結される;いくつかの実施形態において、互いに物理的に関連する2種またはこれより多くの実体は、互いと共有結合的に連結されるのではなく、例えば、水素結合、ファン・デル・ワールス相互作用、疎水性相互作用、磁気、およびこれらの組み合わせによって、非共有結合的に関連する。
【0036】
用語「匹敵する(comparable)」とは、結果の比較が得られるかまたは現象が観察されることを可能にするために互いに十分類似である、条件、環境、個体、または集団の2つ(またはこれより多く)のセットを記載するために本明細書で使用される。いくつかの実施形態において、条件、環境、個体、または集団の匹敵するセットは、複数の実質的に同一の特徴および1または少数の変動した特徴によって特徴づけられる。当業者は、環境、個体、もしくは集団の異なるセットの下で得られる結果の差異、または環境、個体、もしくは集団の異なるセットで観察される現象が、それらの変動した特徴におけるバリエーションによって引き起こされるか、またはそのバリーションを示すという合理的な結論を正当化するために実質的に同一の特徴の十分な数およびタイプによって特徴づけられる場合に、環境、個体、または集団のセットが互いに匹敵することを認識する。当業者は、本明細書で使用される相対的文言(例えば、増強される、活性化される、低減される、阻害されるなど)が、代表的には、匹敵する条件下で行われた比較に言及することを認識する。
【0037】
「相補的(complementary)」とは、隣接するペプチドからの親水性残基間でイオン性または水素結合相互作用を形成し得ること、例えば、シートまたは足場の中で、ペプチドの中の各親水性残基が、水素結合するか、または隣接するペプチド上の親水性残基とイオン的に対形成するか、または溶媒に曝されるかのいずれかを意味する。
【0038】
ある種の方法論は、「決定する工程(determining)」を包含し得る。当業者は、本明細書を読んで理解すれば、このような「決定する工程」が、当業者に利用可能な種々の技術のうちのいずれか(例えば、本明細書で明示的に言及される具体的な技術を含む)を利用し得るか、またはそれらの使用を通じて達成され得ることを認識する。いくつかの実施形態において、決定する工程は、物理的サンプルの操作を要する。いくつかの実施形態において、決定する工程は、データまたは情報の考慮および/または操作、例えば、関連する分析を行うように適合されたコンピューターまたは他の処理装置を利用することを要する。いくつかの実施形態において、決定する工程は、供給源からの関連する情報および/または材料を受容する工程を要する。いくつかの実施形態において、決定する工程は、サンプルまたは実体の1またはこれより多くの特徴と、匹敵する参照とを比較する工程を要する。
【0039】
用語「インビトロ(in vitro)」とは、本明細書で使用される場合、多細胞生物内ではなく、人工的な環境において、例えば、試験管または反応容器において、細胞培養などにおいて起こる事象に言及する。
【0040】
用語「インビボ(in vivo)」とは、本明細書で使用される場合、多細胞生物(例えば、ヒトおよび非ヒト動物)内で起こる事象をいう。細胞ベースのシステムの状況では、その用語は、生きている細胞内で(例えば、インビトロシステムとは対照的に)起こる事象をいうために使用され得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「ナノスフェアの(nanospheric)」とは、ナノメートル範囲の直径を有する球状構造に言及する。本明細書で使用される場合、「ナノスフェア構造(nanospheric structure)」とは、ナノスフェアおよび/または球状ナノ小胞(spherical nanovesicle)を含む。球状ナノ小胞は、ナノスフェアに類似であるが、自己アセンブルする界面活性ペプチドを実質的に含まない中心を有する。
【0042】
用語「ペプチド(peptide)」とは、本明細書で使用される場合、アミノ酸の任意のポリマー鎖をいう。いくつかの実施形態において、ペプチドは、天然に存在するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、天然に存在しないアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、これが人の手による活動を通じて設計および/または生成されるという点において、操作されているアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、もしくは両方を含むか、または天然アミノ酸、非天然アミノ酸、もしくは両方からなる。いくつかの実施形態において、ペプチドは、天然アミノ酸のみもしくは非天然アミノ酸のみを含むか、または天然アミノ酸のみもしくは非天然アミノ酸のみからなる。いくつかの実施形態において、ペプチドは、D-アミノ酸、L-アミノ酸、または両方を含む。いくつかの実施形態において、ペプチドは、D-アミノ酸のみを含む。いくつかの実施形態において、ペプチドは、L-アミノ酸のみを含む。いくつかの実施形態において、ペプチドは、1個またはこれより多くのペンダント基または他の改変、例えば、そのペプチドのN末端において、そのペプチドのC末端において、またはこれらの任意の組み合わせにおいて、1個またはこれより多くのアミノ酸側鎖への改変または結合を含む。いくつかの実施形態において、このようなペンダント基または改変は、アセチル化、アミド化、脂質化、メチル化、peg化など(これらの組み合わせを含む)から選択される。いくつかの実施形態において、用語「ペプチド」は、参照ペプチド、活性、または構造の名称に付加され得る;このような場合に、その用語は、関連する活性または構造を共有し、従って、ペプチドの同じクラスまたはファミリーのメンバーであると考えられ得るペプチドに言及するために本明細書で使用される。各々のこのようなクラスに関して、アミノ酸配列および/または機能が公知であるそのクラス内の例示的ペプチドを、本明細書は提供する、および/または当業者は知っている;いくつかの実施形態において、このような例示的ペプチドは、そのペプチドクラスまたはファミリーの参照ペプチドである。いくつかの実施形態において、ペプチドクラスまたはファミリーのメンバーは、そのクラスの参照ペプチドと;いくつかの実施形態では、そのクラス内の全てのペプチドと、顕著な配列相同性または同一性を示す、それらと共通する配列モチーフ(例えば、特徴的な配列エレメント)を共有する、および/またはそれらと共通する活性を(いくつかの実施形態においては、匹敵するレベルでまたは指定された範囲内で)共有する。
【0043】
用語「純粋な(pure)」とは、本明細書で記載されるペプチドが、そのペプチドの欠失付加物(deletion adduct)および異なる長さのペプチドを含む他の化学種を含まない程度を示すために使用される。
【0044】
用語「参照(reference)」とは、本明細書で使用される場合、標準またはコントロールであって、これに対して比較が行われるものを記載する。例えば、いくつかの実施形態において、目的の薬剤、動物、個体、集団、サンプル、配列または値は、参照またはコントロールの薬剤、動物、個体、集団、サンプル、配列または値と比較される。いくつかの実施形態において、参照またはコントロールは、目的の試験または決定と実質的に同時に試験および/または決定される。いくつかの実施形態において、参照またはコントロールは、過去の(historical)参照またはコントロールであり、必要に応じて、有形の媒体の中に具現化される。代表的には、当業者によって理解されるように、参照またはコントロールは、評価中のものに匹敵する条件または環境下で決定または特徴づけられる。当業者は、十分な類似性が、特定の考えられる参照またはコントロールに対する信頼および/または比較を正当化するために存在する場合に認識する。
【0045】
用語「自己アセンブルする(self-assembling)」とは、適切な条件下で、溶液(例えば、水性溶液)の中で構造(例えば、ナノスフェアおよび球状ナノ症状を含むナノスフェア構造)へと自然発生的に自己会合(self-associate)し得るある種のペプチドに言及して、本明細書で使用される。いくつかの実施形態において、ナノスフェア構造への自己アセンブリ(および/または脱アセンブリ(dis-assembly))は、1種またはこれより多くの環境的誘発因子(例えば、pH、温度、イオン強度、容量オスモル濃度、重量オスモル濃度、付与される圧、付与される剪断応力などのうちの1またはこれより多くにおける変化)に対して応答性である。いくつかの実施形態において、自己アセンブルするポリペプチドの組成物は、そのポリペプチドがアセンブリした状態にある場合に、検出可能なナノスフェア構造によって特徴づけられる。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「実質的に(substantially)」とは、目的の特性または特質の全体のまたはほぼ全体の程度または度合いを示す定性的条件に言及する。生物学分野の当業者は、生物学的および化学的な現象が、完成に至るおよび/もしくは完成へと進む、または絶対的な結果を達成もしくは回避することはあるとしても希であることを理解する。用語「実質的に」は、従って、多くの生物学的および化学的な現象に固有の完全性が潜在的に欠如しているということを捉えるために本明細書で使用される。
【0047】
本明細書で使用される場合、語句「治療剤(therapeutic agent)」とは、概して、生物に投与される場合に、所望の薬理学的効果を誘発する任意の薬剤に言及する。いくつかの実施形態において、薬剤は、その薬剤が適切な集団に対して統計的に有意な効果を示す場合に、治療剤であると考えられる。いくつかの実施形態において、その適切な集団は、モデル生物の集団であり得る。いくつかの実施形態において、適切な集団は、種々の基準(例えば、ある種の年齢群、性別、遺伝的バックグラウンド、既存の臨床状態など)によって定義され得る。いくつかの実施形態において、治療剤は、疾患、障害、および/または状態を緩和する(alleviate)、改善する(ameliorate)、軽減する(relieve)、阻害する(inhibit)、防止する(prevent)、その発生を遅らせる(delay)、その重篤度を低減する(reduce)、および/または1もしくはこれより多くのその症状もしくは特徴の発生率を低減するために使用され得る物質である。いくつかの実施形態において、「治療剤」は、これがヒトへの投与のために市販され得る前に、政府機関によって承認されているかまたは承認される必要がある薬剤である。いくつかの実施形態において、「治療剤」は、ヒトへの投与のために処方箋が必要とされる薬剤である。
【0048】
本明細書で使用される場合、「治療上有効な量(therapeutically effective amount)」とは、その量が投与されることに対して所望の効果を生じる量である。いくつかの実施形態において、その用語は、治療上の投与レジメンに従って、疾患、障害、および/または状態に罹患しているかまたは罹りやすい集団に投与される場合に、その疾患、障害、および/または状態を処置するために十分な量に言及する。いくつかの実施形態において、治療上有効な量は、その疾患、障害、および/もしくは状態の1もしくはこれより多くの症状の発生率および/もしくは重篤度を低減する、ならびに/またはその発生を遅らせるものである。当業者は、用語「治療上有効な量」が、実際に成功裡の処置が特定の個体において達成されることを要しないことを認識する。むしろ、治療上有効な量は、このような処置の必要性のある患者に投与される場合に、かなりの数の被験体において特定の望ましい薬理学的応答を提供する量であり得る。いくつかの実施形態において、治療上有効な量への言及は、1またはこれより多くの特定の組織(例えば、その疾患、障害、もしくは状態に罹患した組織)または体液(例えば、血液、唾液、血清、汗、涙液、尿など)において測定されるとおりの量への言及であり得る。当業者は、いくつかの実施形態において、特定の薬剤または治療の治療上有効な量が、単一用量において製剤化および/または投与され得ることを認識する。いくつかの実施形態において、治療上有効な薬剤は、例えば、投与レジメンの一部として、複数の用量において製剤化および/または投与され得る。
【0049】
別段定義されなければ、技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0050】
以下の図面は、例証目的に過ぎず、限定のためではない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1図1は、例示的な界面活性ペプチド; (A)Ac-A3K-NH(配列番号51)、(B)Ac-A4K-NH(配列番号55)、(C)Ac-A3KA3-NH(配列番号65)の分子モデルを示す。Ac-A3K-NH(配列番号51)およびAc-A4K-NH(配列番号55)は、1本の短い疎水性の脚を有する。Ac-A3KA3-NH(配列番号55)は、2本の短い疎水性の脚を有する。
【0052】
図2図2は、従来の界面活性ペプチドの代表的ナノチューブ構造を有するAc-A6K-NH(配列番号105)のAFM画像を示す。
【0053】
図3図3は、0.1%(w/v)でのAc-A6K-NH(配列番号105)の二重層構造AFM画像を示す。各層の厚みは、0.8nmである。Ac-A6K-NH(配列番号105)は、0.1%(w/v)で二重層構造を形成した。
【0054】
図4図4は、Ac-A3K-NH(配列番号51)のAFM画像を示す。Ac-A3K-NH(配列番号51)は、0.1%(w/v)でナノスフェアを形成する。そのナノスフェアの直径は、28nmである。
【0055】
図5図5は、Ac-A4K-NH(配列番号55)のAFM画像を示す。Ac-A4K-NH(配列番号55)は、ナノスフェア(すなわち、球状ナノ小胞)を形成する。そのナノスフェアの直径は、85nmである。その高さプロフィールは、マイカ表面上で乾燥させたそのナノスフェアの縁部が、それらの中央部分より大きい高さを有することを示す。これは、A4K(配列番号55)ナノスフェアの内部が空である(すなわち、球状ナノ小胞を形成する)ことを示す。
【0056】
図6図6は、Ac-A3KA3-NH(配列番号65)のAFM画像を示す。Ac-A3KA3-NH(配列番号65)は、ナノスフェア(すなわち、球状ナノ小胞)を形成する。そのナノスフェアの直径は、30nmである。その高さプロフィールは、マイカ表面上で乾燥させたナノスフェアの縁部が、それらの中央部分より大きい高さを有することを示す。これは、Ac-A3KA3-NH(配列番号65)ナノスフェアの内部が空である(すなわち、球状ナノ小胞を形成する)ことを示す。
【0057】
図7図7Aおよび8Bは、界面活性ペプチドのナノ構造を図示する。図7Aでは、反復疎水性アミノ酸の数が5に等しいかまたは5より大きい代表的界面活性ペプチド(例えば、Ac-A6K-NH(配列番号105))によって形成されるナノチューブ。図7Bでは、反復疎水性アミノ酸の数が3または4である本明細書で開示される界面活性ペプチド(例えば、Ac-A3KA3-NH(配列番号65)およびAc-A4K-NH(配列番号55))のナノスフェア構造。
【0058】
図8図8は、A6K/siRNA複合体(0.1%/0.01%)のAFM画像を示す。そのA6K/siRNA複合体は凝集する。
【0059】
図9図9は、Ac-A4K-NH(配列番号55)/siRNA複合体(0.1%/0.01%)のAFM画像を示す。そのAc-A4K-NH(配列番号55)/siRNA複合体は、ナノスフェア構造を形成する。
【0060】
図10図10は、Ac-A3KA3-NH(配列番号65)/siRNA複合体(0.5%/0.05%)のAFM画像を示す。そのAc-A3KA3-NH(配列番号65)/siRNA複合体は、ナノスフェア構造を形成する。
【0061】
図11A図11Aおよび11Bは、実施例1に記載されるとおりの細胞毒性データを示す。そのペプチドのみまたはそのペプチド/陰性コントロールsiRNAからのルシフェラーゼ発光データが示される。[I]または[H]は、表4において特定される実験条件を示す。図11Aおよび11Bは、それぞれ、方法1および方法2からのデータを示す。
図11B】同上。
【0062】
図12A図12A~12Eは、実施例1に記載されるとおりのトランスフェクション有効性データを示す。図12A~Cは、コントロールサンプル(例えば、モック、Dhrama-siRNA、Dhrama-NC siRNA、ペプチド/NC-siRNA複合体サンプル)、ペプチド/siRNA複合体サンプルからのルシフェラーゼ発光を示す。図12Aおよび12Bは、方法1からの結果を示す。図12Cは、方法2からの結果を示す。図12D(方法1)および12E(方法2)は、ルシフェラーゼ発光の抑制パーセンテージを示す。そのペプチド/siRNA複合体からの各ルシフェラーゼ発光データは、ペプチド/NC siRNA複合体からの相当するルシフェラーゼ発光データによって正規化されている。
図12B】同上。
図12C】同上。
図12D】同上。
図12E】同上。
【0063】
図13図13は、種々の電荷比でのAc-A4K-NH(配列番号55)/siRIN複合体のζ電位を示す。そのサンプルサイズは3であり、エラーバーは、標準偏差を表す(SD)。
【発明を実施するための形態】
【0064】
詳細な説明
本開示は、界面活性ペプチドナノ構造および被験体への薬剤の送達におけるそれらの使用に関する。本開示は、4個もしくはこれより少ないアミノ酸の疎水性アミノ酸反復を有するある種の界面活性ペプチドが、薬剤の送達に十分に適したナノスフェア構造を形成するという発見を包含する。
【0065】
とりわけ、本開示は、5個またはこれより多くの疎水性アミノ酸反復を有する、特に、ナノスフェア構造(ナノスフェアまたは球状ナノ小胞)よりむしろナノチューブ構造を形成する傾向にある界面活性ペプチドの欠点を識別する。さらに、それらは、送達のための薬剤(例えば、siRNA)と複合体化した場合に、凝集する傾向にある。本開示は、被験体への薬剤、特に、siRNAまたは他の治療剤の送達によりよく適したナノスフェア構造を提供する。
【0066】
ペプチド
本開示は、少数(すなわち、4に等しいかもしくは4未満の整数)の反復疎水性アミノ酸を有する界面活性ペプチドナノ構造を提供する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、以下の式I、II、III、IV、V、VI、VII、またはVIII:
式I(N→C): (X)a(Y)m
式II(N→C): (Y)m(X)a
式III(N→C): (X)a(Y)m(X)b
式IV(N→C): (Y)m(X)a(Y)n
式V(N→C): (X)a(Z)m
式VI(N→C): (Z)m(X)a
式VII(N→C): (X)a(Z)m(X)b
式VIII(N→C): (Z)m(X)a(Z)n;
に従うものが提供され、ここで
(X)は、生理学的pHにおいて非極性かつ非荷電の側鎖を有するアミノ酸であり;
(Y)は、生理学的pHにおいてカチオン性の側鎖を有するアミノ酸であり;
(Z)は、生理学的pHにおいてアニオン性の側鎖を有するアミノ酸であり;
そしてここで
aは、4に等しいかまたは4未満の整数であり;
bは、4に等しいかまたは4未満の整数であり;
mは、1に等しいかまたは1より大きい整数であり;そして
nは、1に等しいかまたは1より大きい整数である。
【0067】
いくつかの実施形態において、上記(X)、(Y)、および/または(Z)のアミノ酸は、天然アミノ酸である。いくつかの実施形態において、上記(X)、(Y)、および/または(Z)のアミノ酸は、非天然アミノ酸である。いくつかの実施形態において、(X)は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、またはグリシンである。いくつかの実施形態において、(Y)は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、またはオルニチンである。いくつかの実施形態において、(X)はアルギニンであり、(Y)はリジンである。いくつかの実施形態において、(Z)は、アスパラギン酸またはグルタミン酸である。上記(X)、(Y)、および/または(Z)のアミノ酸は、L-アミノ酸、D-アミノ酸、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、疎水性反復アミノ酸の数は、4である。いくつかの実施形態において、疎水性反復アミノ酸の数は、3である。いくつかの実施形態において、疎水性反復アミノ酸の数は、2である。
【0069】
いくつかの実施形態において、そのペプチド中のアミノ酸の総数は、約4~約10である。いくつかの実施形態において、そのペプチド中のアミノ酸の総数は、4、5、6、7、8、9、または10である。
【0070】
例示的なペプチド構造のアミノ酸配列は、表1に提供される。
表1.例示的な界面活性ペプチド
【表1-1】
【表1-2】
【0071】
いくつかの実施形態において、そのペプチドは、アセチル化N末端および/またはアミノ化C末端を有する。アセチル化N末端および/またはアミノ化C末端を有する例示的なペプチドは、表2に示される。
表2.アミノ化C末端およびアセチル化N末端を有する例示的な界面活性ペプチド
【表2-1】
【表2-2】
【0072】
ナノ構造
いくつかの実施形態において、界面活性ペプチドは、ナノスフェア構造を形成するようにアセンブルする。本明細書で使用される場合、ナノスフェア構造は、ナノスフェアおよび/または球状ナノ小胞を含む構造を包含する。球状ナノ小胞は、ナノスフェアに類似であるが、自己アセンブルする界面活性ペプチドを実質的に含まない中心を有する。
【0073】
ナノ構造は、薬剤(例えば、siRNAのような治療剤)の製剤化において重要な役割を果たす。原子間力顕微鏡(AFM)研究は、5個またはこれより多くの反復疎水性アミノ酸を有する界面活性ペプチドが、代表的には、より望ましいナノスフェア構造とは対照的に、ナノチューブまたは二重層を形成することを示す。対照的に、4個もしくはこれより少ない反復疎水性アミノ酸を有する界面活性ペプチドは、ナノスフェア構造(例えば、球状ナノ小胞)を形成することが見出された。
【0074】
A3K(配列番号1)のナノ構造が二重層化膜であることは、以前に報告されている(J. Phys. Chem. B, 2014, 118 (42), pp 12215-12222)。A3K(配列番号1)はまた、ゆるいペプチドの積み重なりとしてナノ構造を有することが報告されている。それは、潜在的に抗細菌能に関して研究されている(Biomacromolecules, 2010, 11 (2), pp 402-411)、別の報告では、A3K(配列番号1)、A6K(配列番号101)、およびA9K(配列番号102)は、脂質膜との相互作用に関して試験された(RSC Adv., 2017, 7, 35973)。しかし、上記の参考文献において報告されたものとは異なり、適切な条件下では、A3K(配列番号1)は、図4に示されるとおりのナノスフェア構造を形成し得る。
【0075】
A4K(配列番号5)は、高度に水溶性であり、ナノチューブを形成するように自己アセンブルすることを示すA6Kとは異なって、水の中で関連する自己アセンブリを示さないことが以前に報告されている(Langmuir, 2014, 30 (33), pp 10072-10079)。しかし、以前に報告されているものとは対照的に、適切な条件下では、A4K(配列番号5)は、図5に示されるように、水の中でナノスフェア構造(球状ナノ小胞)を形成し得ることが示される。
【0076】
A3KA3(配列番号15)は、エレクトロスプレーイオン化条件の最適化のための試験化合物として以前に使用されている(Rapid Commun Mass Spectrom. 2017, 31(13):1129-1136)。しかし、A3KA3(配列番号15)のナノ構造は、上記の参考文献中で記載されていない。適切な条件下では、A3KA3(配列番号15)は、図6に示されるとおりのナノスフェア構造(球状ナノ小胞)を形成するように自己アセンブリを受け得ることが本明細書で示される。
【0077】
本開示は、本明細書で開示される界面活性ペプチドの優れた特質を示す。ペプチドをpH7.5の水性溶液中でsiRNAと複合体した実験の結果は、表3に示される。そのペプチドAAAK(配列番号1)、AAAAK(配列番号5)、およびAAAKAAA(配列番号15)は、0.1%(w/v)および0.5%(w/v)のペプチド濃度において、0.01%(w/v)および0.05%(w/v)の濃度のsiRNAと複合体化した場合に、透過率研究において透明でありかつ実質的に相分離がないことが見出された。対照的に、類似の条件下では、AAAAAK(配列番号101)およびAAAAAAK(配列番号102)は、濁りかつ相分離した(表3の結果を参照のこと)。
表3.界面活性ペプチドおよびpH7.5の水性溶液中での界面活性ペプチド/siRNA複合体の透過率研究
【表3】
#: 比較のための例示的な従来の自己アセンブリペプチド
*: 顕著に濁りかつ相分離した。
【0078】
組成物
4個に等しいかまたはこれより少ない反復疎水性アミノ酸を有する界面活性ペプチドは、送達のための種々の薬剤と製剤化され得る。いくつかの実施形態において、薬剤は、細胞に送達される(インビトロ送達)。いくつかの実施形態において、薬剤は、被験体に送達される(インビボ送達)。いくつかの実施形態において、水性溶液中に界面活性ペプチドを含む組成物が、提供される。
【0079】
いくつかの実施形態において、そのペプチドは、少なくとも0.01%(w/v)の濃度にある。いくつかの実施形態において、そのペプチドは、約0.01%(w/v)~約0.5%(w/v)の濃度にある。いくつかの実施形態において、その水性溶液は、約6~約8のpHを有する。いくつかの実施形態において、その水性溶液は、約7.5のpHを有する。いくつかの実施形態において、その水性溶液は、約0M~約0.3Mのイオン強度にある。いくつかの実施形態において、その水性溶液は、約0.15Mのイオン強度にある。いくつかの実施形態において、その水性溶液は、等張性である。
【0080】
ペイロード薬剤
いくつかの実施形態において、本発明のペプチドは、1種またはこれより多くのペイロード薬剤、例えば、治療剤または検出薬剤を含む。このような薬剤としては、例えば、ポリペプチド、核酸、サッカリド、脂質、低分子、金属、またはこれらの組み合わせを含む、例えば、任意の化学クラスの化合物または実体が挙げられる。いくつかの実施形態において、薬剤は、それが天然において見出されるおよび/または天然から得られるという点において、天然の生成物であるかまたは天然の生成物を含む。いくつかの実施形態において、薬剤は、それが人の手による活動を通じて設計される、操作されるおよび/もしくは生成されるか、または天然において見出されないという点において、人工の1種またはこれより多くの実体であるか、またはその実体を含む。いくつかの実施形態において、薬剤は、単離された形態または純粋形態で利用され得る;いくつかの実施形態において、薬剤は、粗製形態で利用され得る。本発明に従って利用され得る薬剤のうちのいくつかの特定の実施形態としては、低分子、アプタマー、核酸(例えば、siRNA、shRNA、DNA/RNAハイブリッド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム)、ペプチド、ペプチド模倣物などが挙げられる。
【0081】
検出薬剤とは、検出可能である、任意のエレメント、分子、官能基、化合物、フラグメントまたは部分に言及し得る。いくつかの実施形態において、検出実体が提供されるか、または単独で利用される。いくつかの実施形態において、検出実体が提供される、および/または別の薬剤と会合した状態で(例えば、結合して)利用される。検出実体の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:種々のリガンド、放射性核種(例えば、H、14C、18F、19F、32P、35S、135I、125I、123I、64Cu、187Re、111In、90Y、99mTc、177Lu、89Zrなど)、蛍光色素(特定の例示的な蛍光色素に関しては、以下を参照のこと)、化学発光薬剤(例えば、アクリジニウムエステル(acridinum ester)、安定化ジオキセタンなどのような)、生物発光薬剤、スペクトル分解可能な無機蛍光半導体ナノ結晶(すなわち、量子ドット)、金属ナノ粒子(例えば、金、銀、銅、白金など)ナノクラスター、常時性金属イオン、酵素(酵素の具体例に関しては、以下を参照のこと)、比色標識(例えば、色素、コロイド金などのような)、ビオチン、ジオキシゲニン、ハプテン、および抗血清またはモノクローナル抗体が入手可能なタンパク質。
【実施例
【0082】
例示
実施例1: インビトロで腫瘍細胞にsiRNAを送達するための界面活性ペプチドの使用
本実施例は、とりわけ、インビトロで腫瘍細胞にsiRNAを送達するための界面活性ペプチドの例示的使用、ならびにその細胞毒性およびトランスフェクション有効性を記載する。
【0083】
siRNA(ルシフェラーゼGL3二重鎖)を、Ac-A4K-NH(配列番号55)、Ac-A3KA3-NH(配列番号55)、Ac-A6K-NH(配列番号105)、およびコントロール薬剤(DharmaFECT 1; 市販の脂質トランスフェクション薬剤)と複合体化した。そのsiRNAおよびペプチド複合体を、ナノスフェア構造へと配置した。ナノスフェア構造を含む組成物を、予備的なトランスフェクション有効性および細胞毒性に至るように、腫瘍細胞(MCF-7細胞; 乳がん細胞株)にインビトロで提供した。
【0084】
本実施例のために2つの方法を利用した。方法1に関しては、MCF-7細胞を、プレート上で培養した。そのsiRNAおよびペプチド複合体を、その細胞を覆う培養培地に添加した。そのsiRNAおよびペプチド複合体およびその細胞を含む培養ディッシュ(96ウェル)を、48時間インキュベートした。方法2に関しては、MCF-7細胞の濃縮培養(5×10 細胞/ml)をチューブ中に調製した。そのsiRNAおよびペプチド複合体を、懸濁物へと付与した。その細胞混合物を、そのチューブ中で1時間インキュベートした。その細胞混合物を、その培養ディッシュの中にプレートし、48時間インキュベートした。各サンプルからのルシフェラーゼ発光を、観察した。
【0085】
表4は、実験条件、例えば、siRNAおよびペプチド界面活性剤の濃度、電荷比、ならびにsiRNAのタイプ(例えば、ルシフェラーゼGL3二重鎖またはその陰性コントロール)をまとめる。本実施例において使用した緩衝液は、Opti-MEM1(無血清)であった。コントロールサンプルとして、緩衝液のみ、ペプチド界面活性剤ありまたはなしの陰性コントロール(NC)siRNA、siRNA(もしくはNC siRNA)ありまたはなしのDharmaFECT 1を、その細胞で試験した。
表4.実験条件
【表4】
【0086】
細胞毒性。 この試験に関して、そのサンプルは、NC siRNAを含むか、またはsiRNAを全く含まなかった。図11Aおよび11Bに示されるように、そのペプチド(Ac-A6K-NH(配列番号105)、Ac-A4K-NH(配列番号55)およびAc-A3KA3-NH(配列番号55))は、DharmaFECTより小さなルシフェラーゼ発光の減少を示した。これは、そのペプチドがDharmaFECTより毒性が低いことを示す。
【0087】
有効性。 図12Dおよび12Eに示されるように、ルシフェラーゼ発光は、siRNAのみのサンプルと比較して、その電荷比4.5において全ての界面活性剤に関して減少した。そのsiRNAおよびペプチド複合体からのルシフェラーゼ発光の低減は、DharmaFECTからの低減に類似であった(例えば、約20%)。ルシフェラーゼ発光の増大を、高濃度混合物(siRNA 250nM、A6K 51.75μM)でのA6K/siRNAに関して観察した。DharmaFECTからのルシフェラーゼ発光の大きな低減は、細胞毒性に由来し得る。
【0088】
従って、本実施例におけるデータは、そのペプチドまたはそのsiRNAおよびペプチド複合体が、公知のトランスフェクション試薬より毒性が低く、かつそのsiRNAおよびペプチド複合体が、その標的遺伝子を送達し効果的に抑制することを示す。
【0089】
実施例2: インビボで腫瘍細胞にsiRNAを送達するための界面活性ペプチドの使用
本実施例は、とりわけ、インビボで腫瘍細胞にsiRNAを送達するための界面活性ペプチドの例示的使用を記載する。siRNAを、Ac-A4K-NH(配列番号55)、Ac-A3KA3-NH(配列番号55)、Ac-A6K-NH(配列番号105)、またはコントロールペプチドと複合体化する。そのsiRNAおよびペプチド複合体を、ナノスフェア構造へと配置する。そのナノスフェア構造を含む組成物を、マウス腫瘍モデルに投与する。1種またはこれより多くのがん関連遺伝子は抑制され、その腫瘍のサイズは減少する。
【0090】
実施例3: 界面活性ペプチド/siRNA複合体の特徴付け
本実施例は、とりわけ、界面活性ペプチド/siRNA複合体の例示的特徴付けを記載する。
【0091】
ζ電位を、Zetasizer Nano ZS(Malvern)によって測定して、その複合体の界面動電位を特徴づけた。Ac-A4K-NH(配列番号55)濃度は、水性溶液中で0.5w/v%であった。siRNA(リボフォリンII、RPN2)濃度を、A4K/siRNAのそれらの種々の電荷比のために制御した。Ac-A4K-NH(配列番号55)単独のζ電位は、+21.9であった。これは、A4Kナノスフェアの表面が、Ac-A4K-NH(配列番号55)中のリジンの一級アミンが原因で、正に荷電していたことを示す。A4K/siRNA混合物のζ電位は、図13に示されるように、siRNAが多くなるほどより大きく負になる。その装置のみが、約3.8nmより大きな分散相を検出し、かつ水の中のsiRNAのサイズが直径約2nmであることから、その測定のみが、会合していないsiRNAではなく、Ac-A4K-NH(配列番号55)またはAc-A4K-NH(配列番号55)/siRNA複合体の界面動電位を読み取る。よって、その結果は、負に荷電したsiRNA分子がA4Kナノスフェアの正に荷電した表面上に結合されたことを示す。従って、そのデータは、siRNAがAc-A4K-NH(配列番号55)と成功裡に複合体化されたことを示す。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
ナノスフェア構造を有するペプチドを含む組成物であって、ここで前記ペプチドは、以下の式I、II、III、IV、V、VI、VII、またはVIII:
式I(N→C): (X)a(Y)m
式II(N→C): (Y)m(X)a
式III(N→C): (X)a(Y)m(X)b
式IV(N→C): (Y)m(X)a(Y)n
式V(N→C): (X)a(Z)m
式VI(N→C): (Z)m(X)a
式VII(N→C): (X)a(Z)m(X)b
式VIII(N→C): (Z)m(X)a(Z)n;
に従う反復疎水性アミノ酸を有し、ここで
(X)は、生理学的pHにおいて非極性かつ非荷電の側鎖を有するアミノ酸であり;
(Y)は、生理学的pHにおいてカチオン性の側鎖を有するアミノ酸であり;
(Z)は、生理学的pHにおいてアニオン性の側鎖を有するアミノ酸であり;
そしてここで
aは、4に等しいかまたは4未満の整数であり;
bは、4に等しいかまたは4未満の整数であり;
mは、1に等しいかまたは1より大きい整数であり;そして
nは、1に等しいかまたは1より大きい整数である、
組成物。
(項目2)
前記(X)、(Y)、および/または(Z)のアミノ酸は、天然アミノ酸である、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記(X)、(Y)、および/または(Z)のアミノ酸は、非天然アミノ酸である、項目1に記載の組成物。
(項目4)
前記aまたはbの整数は、4である、項目1~3のいずれかに記載の組成物。
(項目5)
前記aまたはbの整数は、3である、項目1~4のいずれかに記載の組成物。
(項目6)
(X)は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、またはグリシンである、項目1~5のいずれかに記載の組成物。
(項目7)
(Y)は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、またはオルニチンである、項目1~6のいずれかに記載の組成物。
(項目8)
(Z)は、アスパラギン酸またはグルタミン酸である、項目1~7のいずれかに記載の組成物。
(項目9)
各アミノ酸は、L-アミノ酸である、項目1~8のいずれかに記載の組成物。
(項目10)
各アミノ酸は、D-アミノ酸である、項目1~8のいずれかに記載の組成物。
(項目11)
前記ペプチドは、長さが4~10アミノ酸である、項目1~10のいずれかに記載の組成物。
(項目12)
前記ペプチドは、長さが5アミノ酸である、項目1~10のいずれかに記載の組成物。
(項目13)
前記ペプチドは、長さが7アミノ酸である、項目1~10のいずれかに記載の組成物。
(項目14)
前記ペプチドは、改変されたN末端および/または改変されたC末端を含む、項目1~13のいずれかに記載の組成物。
(項目15)
前記ペプチドは、アセチル化N末端および/またはアミノ化C末端を有する、項目1~14のいずれかに記載の組成物。
(項目16)
ナノスフェア構造を有するペプチドを含む組成物であって、ここで前記ペプチドは、配列番号1~50のうちのいずれかに従うアミノ酸配列を有する、組成物。
(項目17)
ナノスフェア構造を有するペプチドを含む組成物であって、ここで前記ペプチドは、配列番号51~100のうちのいずれかに従うアミノ酸配列を有する、組成物。
(項目18)
ナノスフェア構造を有するペプチドを含む組成物であって、ここで前記ペプチドは、アミノ酸配列AAAK(配列番号1)を有する、組成物。
(項目19)
ナノスフェア構造を有するペプチドを含む組成物であって、ここで前記ペプチドは、アミノ酸配列AAAAK(配列番号5)を有する、組成物。
(項目20)
ナノスフェア構造を有するペプチドを含む組成物であって、ここで前記ペプチドは、アミノ酸配列AAAKAAA(配列番号15)を有する、組成物。
(項目21)
前記ペプチドは、水性溶液中にある、項目1~21のいずれかに記載の組成物。
(項目22)
前記ペプチドは、少なくとも0.01%(w/v)の濃度にある、項目21に記載の組成物。
(項目23)
前記水性溶液は、約6~約8のpHを有する、項目21~22のいずれかに記載の組成物。
(項目24)
前記水性溶液は、約0M~約0.3Mのイオン強度にある、項目21~23のいずれかに記載の組成物。
(項目25)
前記水性溶液は、約0.15Mのイオン強度にある、項目21~23のいずれかに記載の組成物。
(項目26)
前記水性溶液は等張性である、項目21~25のいずれかに記載の組成物。
(項目27)
薬物送達における使用のための、項目1~26のいずれかに記載の組成物。
(項目28)
被験体への送達のための薬剤をさらに含む、項目1~26のいずれかに記載の組成物。
(項目29)
前記薬剤は治療剤である、項目28に記載の組成物。
(項目30)
前記薬剤は薬物である、項目28に記載の組成物。
(項目31)
前記薬剤はsiRNAである、項目28に記載の組成物。
(項目32)
前記siRNAは、がん細胞への送達のためである、項目31に記載の組成物。
(項目33)
被験体への送達のための薬剤を製剤化する方法であって、前記方法は、前記薬剤と項目1~26のいずれかに記載の組成物とを接触させる工程を包含する、方法。
(項目34)
被験体に薬剤を送達する方法であって、前記方法は、前記被験体に、ペプチドと製剤化された組成物を投与する工程を包含し、ここで前記ペプチドは、以下の式I、II、III、IV、V、VI、VII、またはVIII:
式I(N→C): (X)a(Y)m
式II(N→C): (Y)m(X)a
式III(N→C): (X)a(Y)m(X)b
式IV(N→C): (Y)m(X)a(Y)n
式V(N→C): (X)a(Z)m
式VI(N→C): (Z)m(X)a
式VII(N→C): (X)a(Z)m(X)b
式VIII(N→C): (Z)m(X)a(Z)n;
に従う反復疎水性アミノ酸を有し、ここで
(X)は、生理学的pHにおいて非極性かつ非荷電の側鎖を有するアミノ酸であり;
(Y)は、生理学的pHにおいてカチオン性の側鎖を有するアミノ酸であり;
(Z)は、生理学的pHにおいてアニオン性の側鎖を有するアミノ酸であり;
そしてここで
aは、4に等しいかまたは4未満の整数であり;
bは、4に等しいかまたは4未満の整数であり;
mは、1に等しいかまたは1より大きい整数であり;そして
nは、1に等しいかまたは1より大きい整数である、
方法。
(項目35)
前記(X)、(Y)、および/または(Z)のアミノ酸は、天然アミノ酸である、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記(X)、(Y)、および/または(Z)のアミノ酸は、非天然アミノ酸である、項目34に記載の方法。
(項目37)
前記aまたはbの整数は、4である、項目34~36のいずれかに記載の方法。
(項目38)
前記aまたはbの整数は、3である、項目34~37のいずれかに記載の方法。
(項目39)
(X)は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、またはグリシンである、項目34~38のいずれかに記載の方法。
(項目40)
(Y)は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、またはオルニチンである、項目34~39のいずれかに記載の方法。
(項目41)
(Z)は、アスパラギン酸またはグルタミン酸である、項目34~40のいずれかに記載の方法。
(項目42)
各アミノ酸はL-アミノ酸である、項目34~41のいずれかに記載の方法。
(項目43)
各アミノ酸はD-アミノ酸である、項目34~41のいずれかに記載の方法。
(項目44)
前記ペプチドは、長さが4~10アミノ酸である、項目34~42のいずれかに記載の方法。
(項目45)
前記ペプチドは、長さが5アミノ酸である、項目34~42のいずれかに記載の方法。
(項目46)
前記ペプチドは、長さが7アミノ酸である、項目34~42のいずれかに記載の方法。
(項目47)
前記ペプチドは、改変されたN末端および/または改変されたC末端を含む、項目34~46のいずれかに記載の方法。
(項目48)
前記ペプチドは、アセチル化N末端および/またはアミノ化C末端を有する、項目34~47のいずれかに記載の方法。
(項目49)
被験体に薬剤を送達する方法であって、前記方法は、前記被験体に、ペプチドと製剤化された組成物を投与する工程を包含し、ここで前記ペプチドは、配列番号1~50のうちのいずれかに従うアミノ酸配列を有する、方法。
(項目50)
被験体に薬剤を送達する方法であって、前記方法は、前記被験体に、ペプチドと製剤化された組成物を投与する工程を包含し、ここで前記ペプチドは、配列番号51~100のうちのいずれかに従うアミノ酸配列を有する、方法。
(項目51)
被験体に薬剤を送達する方法であって、前記方法は、前記被験体に、ペプチドと製剤化された組成物を投与する工程を包含し、ここで前記ペプチドは、アミノ酸配列AAAK(配列番号1)を有する、方法。
(項目52)
被験体に薬剤を送達する方法であって、前記方法は、前記被験体に、ペプチドと製剤化された組成物を投与する工程を包含し、ここで前記ペプチドは、アミノ酸配列AAAAK(配列番号5)を有する、方法。
(項目53)
被験体に薬剤を送達する方法であって、前記方法は、前記被験体に、ペプチドと製剤化された組成物を投与する工程を包含し、ここで前記ペプチドは、アミノ酸配列AAAKAAA(配列番号15)を有する、方法。
(項目54)
前記ペプチドは水性溶液中にある、項目34~53のいずれかに記載の方法。
(項目55)
前記ペプチドは、少なくとも0.01%(w/v)の濃度にある、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記水性溶液は、約6~約8のpHを有する、項目54~55のいずれかに記載の方法。
(項目57)
前記水性溶液は、約0M~約0.3Mのイオン強度にある、項目54~56のいずれかに記載の方法。
(項目58)
前記水性溶液は、約0.15Mのイオン強度にある、項目54~56のいずれかに記載の方法。
(項目59)
前記水性溶液は、等張性である、項目54~58のいずれかに記載の方法。
(項目60)
前記薬剤は治療剤である、項目35~58のいずれかに記載の方法。
(項目61)
前記薬剤は薬物である、項目35~58のいずれかに記載の方法。
(項目62)
前記薬剤はsiRNAである、項目35~58のいずれかに記載の方法。
(項目63)
前記薬剤はがん細胞に送達される、項目62に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図13
【配列表】
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