(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-17
(45)【発行日】2025-10-27
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂水性分散組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/03 20060101AFI20251020BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20251020BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20251020BHJP
【FI】
C08J3/03 CEX
C08J3/03 CFD
C08L29/04 D
C08L67/00
(21)【出願番号】P 2022536365
(86)(22)【出願日】2021-07-13
(86)【国際出願番号】 JP2021026223
(87)【国際公開番号】W WO2022014556
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2024-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2020120847
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角高 育実
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直樹
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-018744(JP,A)
【文献】特開2004-285144(JP,A)
【文献】特開2003-096281(JP,A)
【文献】国際公開第2017/151595(WO,A1)
【文献】特開平09-296100(JP,A)
【文献】特表2013-527263(JP,A)
【文献】国際公開第2018/070492(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/068206(WO,A1)
【文献】特開2001-011294(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0237744(US,A1)
【文献】国際公開第2016/080530(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00- 3/28
C08J 99/00
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(2)ポリエステル及びポリビニルアルコールの溶融混錬物に、さらに3~10質量%のポリビニルアルコール水溶液を、得られる混合物中のポリエステル及びポリビニルアルコールの合計含有量が78~88質量%となるように、混合すること
を含む、ポリエステル樹脂水性分散組成物の製造方法。
【請求項2】
工程(2)の前に、さらに
(1)ポリエステル及びポリビニルアルコールを溶融混錬すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(1)で、ポリエステル100質量部に対してポリビニルアルコール0.1~5質量部が溶融混錬される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(2)の後に、さらに
(3)得られた混合物に水を加えること
を含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
工程(3)で、水を加えた後の組成物におけるポリエステル樹脂含有量が40~70質量%となるように、水が加えられる、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(2)のポリエステル及びポリビニルアルコールの溶融混錬物が、当該ポリエステルの融点以上且つ当該ポリビニルアルコールの融点未満の温度でこれらが溶融混錬された物である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工程(2)の混合が、前記ポリエステルの融点以上且つ当該ポリビニルアルコールの融点未満の温度であって、且つ前記溶融混錬物の調製のための溶融混錬が行われた温度以下の温度で行われる、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ポリエステル及びポリビニルアルコールの溶融混錬に用いられるポリビニルアルコール量と、3~10質量%のポリビニルアルコール水溶液に含有されるポリビニルアルコール量とが、前者1質量部に対して後者0.8~6質量部である、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリエステル樹脂水性分散組成物の製造方法等に関する。なお、本明細書に記載される全ての文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂水性分散組成物は、例えばバインダーや繊維用処理剤など、種々の用途に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-310944号公報
【文献】特開平10-139884号公報
【文献】特表2004-500466号公報
【文献】特開2011-032471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの用途を考慮すると、ポリエステル樹脂水性分散組成物としては、ポリエステル樹脂が安定に水性媒質に分散され、良好な乳化状態を有するとともに、優れた接着性を有するものが好ましい。
【0005】
本発明者らは、当該好ましいポリエステル水性分散組成物を効率よく製造できる方法を見いだすべく、検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ポリエステル及びポリビニルアルコールの溶融混錬物に、さらに特定濃度のポリビニルアルコール水溶液を、得られる混合物中のポリエステル及びポリビニルアルコールの合計含有量が特定濃度となるように、混合することによって、当該好ましいポリエステル樹脂水性分散組成物を製造できる可能性を見出し、さらに改良を重ねた。
【0007】
本開示は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
(2)ポリエステル及びポリビニルアルコールの溶融混錬物に、さらに3~10質量%のポリビニルアルコール水溶液を、得られる混合物中のポリエステル及びポリビニルアルコールの合計含有量が78~88質量%となるように、混合すること
を含む、ポリエステル樹脂水性分散組成物の製造方法。
項2.
工程(2)の前に、さらに
(1)ポリエステル及びポリビニルアルコールを溶融混錬すること
を含む、項1に記載の方法。
項3.
工程(1)で、ポリエステル100質量部に対してポリビニルアルコール0.1~5質量部が溶融混錬される、項2に記載の方法。
項4.
工程(2)の後に、さらに
(3)得られた混合物に水を加えること
を含む、項1~3のいずれかに記載の方法。
項5.
工程(3)で、水を加えた後の組成物におけるポリエステル樹脂含有量が40~70質量%となるように、水が加えられる、
項4に記載の方法。
項6.
工程(2)のポリエステル及びポリビニルアルコールの溶融混錬物が、当該ポリエステルの融点以上且つ当該ポリビニルアルコールの融点未満の温度でこれらが溶融混錬された物である、項1~5のいずれかに記載の方法。
項7.
工程(2)の混合が、前記ポリエステルの融点以上且つ当該ポリビニルアルコールの融点未満の温度であって、且つ前記溶融混錬物の調製のための溶融混錬が行われた温度以下の温度で行われる、項1~6のいずれかに記載の方法。
項8.
ポリエステル及びポリビニルアルコールの溶融混錬に用いられるポリビニルアルコール量と、3~10質量%のポリビニルアルコール水溶液に含有されるポリビニルアルコール量とが、前者1質量部に対して後者0.8~6質量部である、項1~7のいずれかに記載の方法。
項9.
上流側より第一供給口と第二供給口とを備えた二軸押出機において、
第一供給口より、ポリエステル及びポリビニルアルコールを投入して溶融混錬すること、並びに、
第二供給口より、得られる混合物中のポリエステル及びポリビニルアルコールの合計含有量が78~88質量%となるように、3~10質量%のポリビニルアルコール水溶液を供給し、混合すること、
を含む、
ポリエステル樹脂水性分散組成物の製造方法。
項10.
上流側より第一供給口と第二供給口と第三供給口とを備えた二軸押出機において、
第一供給口より、ポリエステル及びポリビニルアルコールを投入して溶融混錬すること、第二供給口より、得られる混合物中のポリエステル及びポリビニルアルコールの合計含有量が78~88質量%となるように、3~10質量%のポリビニルアルコール水溶液を供給し、混合すること、並びに、
第三供給口より、水を供給すること、
を含む、
ポリエステル樹脂水性分散組成物の製造方法。
項A.
項1~10のいずれかに記載の製造方法により得られたポリエステル樹脂水性分散組成物。
【発明の効果】
【0008】
良好な乳化状態を有するとともに優れた接着性を有するポリエステル水性分散組成物を、効率よく製造できる方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。本開示は、ポリエステル水性分散組成物の製造方法等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本開示は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
【0010】
本開示に包含されるポリエステル水性分散組成物の製造方法は、(2)ポリエステル及びポリビニルアルコールの溶融混錬物に、さらに3~10質量%のポリビニルアルコール水溶液を、得られる混合物中のポリエステル及びポリビニルアルコールの合計含有量が78~88質量%となるように、混合すること、を含む。本明細書においては、本開示に包含される当該製造方法を「本開示の製造方法」ということがある。
【0011】
本開示の製造方法に用いるポリエステルとしては、ジカルボン酸とグリコールとの共重合体が好ましい。当該共重合体は、ジカルボン酸とグリコールとの縮合重合により得ることができる。当該縮合重合は、例えば公知の方法又は公知の方法から容易に想到できる方法により行うことが出来る。
【0012】
また、ポリエステルは、融点が50~200℃程度であるものが好ましい。当該融点の上限又は下限は、例えば60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、又は190℃であってもよい。例えば、当該融点は60~190℃であってもよい。また、ポリエステルは、重量平均分子量が5000~60000程度であるものが好ましい。当該範囲の上限又は下限は、例えば、6000、7000、8000、9000、10000、11000、12000、13000、14000、15000、16000、17000、18000、19000、20000、21000、22000、23000、24000、25000、26000、27000、28000、29000、30000、31000、32000、33000、34000、35000、36000、37000、38000、39000、40000、41000、42000、43000、44000、45000、46000、47000、48000、49000、50000、51000、52000、53000、54000、55000、56000、57000、58000、又は59000であってもよい。当該範囲は、例えば6000~59000であってもよい。
【0013】
前記ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、及びオルソフタル酸等が好ましく挙げられる。ジカルボン酸は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
前記グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、及び1,6-ヘキサンジオール等が好ましく挙げられる。グリコールは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
本開示の製造方法に用いるポリビニルアルコールとしては、例えば、重量平均分子量が500~2500程度のポリビニルアルコールが好ましい。当該重量平均分子量範囲の上限または下限は、例えば600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、又は2400であってもよい。例えば、重量平均分子量は600~2400であってもよい。また、ケン化度が70~99モル%であるポリビニルアルコールが好ましい。すなわち、ポリビニルアルコールはポリビニル酢酸をケン化して製造されるところ、このケン化度が70~99モル%であるものが好ましい。当該ケン化度の上限または下限は、例えば、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、又は98モル%であってもよい。例えば、当該ケン化度は71~98モル%であってもよい。
【0016】
前記ポリエステル及びポリビニルアルコールの溶融混錬物は、例えばエクストルーダー(特に二軸押出機)を用いて調製することができる。本開示の製造方法は、上記工程(2)の前に、さらに(1)ポリエステル及びポリビニルアルコールを溶融混錬することを含んでいてもよい。
【0017】
なお、ポリエステル及びポリビニルアルコールを溶融混錬して得られる樹脂を、本明細書においてはポリエステル樹脂とも表記する。本明細書におけるポリエステル樹脂は、より具体的には、ポリエステル及びポリビニルアルコールの溶融混錬物に含有される、ポリエステルを含む樹脂ということができる。
【0018】
ポリエステル樹脂は、ポリエステルを含んでなる樹脂であれば特に制限はされない。例えば、実質的にポリエステルのみからなる樹脂であってもよいし、ポリエステルとポリビニルアルコールとを含んでなる樹脂であってもよい。なお、前記溶融混錬を、用いるポリエステルの融点以上且つ用いるポリビニルアルコールの融点未満の温度で行う場合、得られるポリエステル樹脂は実質的にポリエステルのみからなる樹脂となり得る。実質的にポリエステルのみからなる樹脂を得る場合、前記溶融混錬温度は、用いるポリエステルの融点にもよるが、例えば、100~180℃程度が例示される。当該範囲の上限又は下限は、例えば101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、又は179℃であってもよい。例えば、当該範囲は、110~170℃又は120~160℃であってもよい。
【0019】
ポリエステル樹脂がポリエステルおよびポリビニルアルコールを含んでなる樹脂である場合、ポリビニルアルコールは、ポリエステル樹脂100質量部に対して例えば0.5~20質量部含有されることが好ましい。当該範囲の上限又は下限は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19質量部であってもよい。例えば、当該範囲は1~19質量部であってもよい。また、ポリエステルとポリビニルアルコールとの含有割合は、ポリエステル100質量部に対して、ポリビニルアルコール0.1~5質量部であることが好ましい。当該範囲の上限又は下限は、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、又は4.9質量部であってもよい。例えば、当該範囲は0.2~4質量部であってもよい。
【0020】
また、ポリエステル樹脂には、ポリエステルが90~100質量%含まれることが好ましい。当該範囲の上限又は下限は、例えば91、92、93、94、95、96、97、98、又は99質量%であってもよい。例えば、当該範囲は91~99質量%であってもよい。ポリエステル樹脂は、ポリエステルおよびポリビニルアルコールの他に、本開示の組成物の効果を損なわない範囲で、別の樹脂が含まれていてもよい。例えば、ポリエステル以外の一般的な熱可塑性樹脂(ポリオレフィンとその共重合体、ポリアミド、ポリウレタン等)が含まれていてもよい。また、ポリビニルアルコール以外の高分子系の乳化剤(エチレンオキシド-プロピレンオキシド共重合体、ポリビニルエーテル、ポリアクリルアミド、ヒドロキシエチルセルロース)、防腐剤等が含まれていてもよい。これらの成分は、例えば、溶融混錬の段階でポリエステル樹脂に混合することができる。
【0021】
なお、特に制限はされないが、ポリエステル樹脂は、実質的にポリエステルのみからなる樹脂であるか、あるいはポリエステル及びポリビニルアルコールのみからなる樹脂であることが好ましい。
【0022】
ポリエステル樹脂の中位粒子径は、例えば、0.1~5μm程度が好ましい。当該範囲は、例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、又は4.9μmであってもよい。例えば、当該範囲は、0.5~3μmであってもよい。
【0023】
なお、当該中位粒子径は、メジアン径であり、レーザー回折式粒度分布測定法により測定した値である。すなわち、ポリエステル樹脂水性分散組成物をレーザー回折式粒度分布測定装置にて測定した際に得られる値である。当該測定装置としては、例えばSHIMADZU社製 SALD2300を挙げることができる。
【0024】
本開示の製造方法に含まれる上記工程(2)において、ポリエステル及びポリビニルアルコールの溶融混錬物に、さらに3~10質量%のポリビニルアルコール水溶液を混合する。当該範囲(3~10質量%)の上限又は下限は、例えば3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、又は9.5質量%であってもよい。例えば、当該範囲は3.5~8質量%であってもよい。
【0025】
当該混合は、得られる混合物中のポリエステル及びポリビニルアルコールの合計含有量が78~88質量%となるように行う。つまり、ポリエステル及びポリビニルアルコールの溶融混錬物中に存在するポリエステル及びポリビニルアルコールと、3~10質量%のポリビニルアルコール水溶液中に存在するポリビニルアルコールと、を全て合計した量が、得られる混合物の78~88質量%となるよう、当該混合を行う。なお、当該範囲(78~88質量%)の上限又は下限は、例えば、78.5、79、79.5、80、80.5、81、81.5、82、82.5、83、83.5、84、84.5、85、85.5、86、86.5、87、又は87.5質量%出会っても良い。当該範囲は、例えば、78.5~87.5質量%であってもよい。
【0026】
当該混合は、例えばエクストルーダー(特に二軸押出機)を用いて行うことができる。
【0027】
なお、当該混合は、用いるポリエステルの融点以上且つ用いるポリビニルアルコールの融点未満の温度で行うことが好ましい。また、ポリエステル及びポリビニルアルコールの溶融混錬を行った温度以下の温度であることが好ましい。用いるポリエステルの融点にもよるが、例えば、100~170℃程度が例示される。当該範囲の上限又は下限は、例えば101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、又は169℃であってもよい。例えば、当該範囲は、110~165℃又は120~160℃であってもよい。
【0028】
当該混合により、得られる混合液は好ましく乳化され得る。
【0029】
なお、ポリエステル及びポリビニルアルコールの溶融混錬においては、例えば、ポリエステル100質量部に対してポリビニルアルコール0.1~5質量部程度が溶融混錬されることが好ましい。当該範囲(0.1~5質量部)の上限又は下限は、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、又は4.9質量部であってもよい。例えば、当該範囲は0.2~4質量部であってもよい。
【0030】
また、ポリエステル及びポリビニルアルコールの溶融混錬に用いられるポリビニルアルコール量と、工程(2)において用いられる3~10質量%のポリビニルアルコール水溶液に含有されるポリビニルアルコール量とは、前者1質量部に対して例えば後者0.2~50質量部程度であることが好ましい。当該範囲(0.2~50質量部)の上限又は下限は、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、又は49質量部であってもよい。例えば、当該範囲は、0.6~6.5質量部であってもよい。当該範囲は、より好ましくは、例えば、0.8~6質量部、又は1~5質量部である。
【0031】
当該工程(2)の混合により得られる混合物を、本開示のポリエステル樹脂水性分散組成物として好ましく用いることができる。
【0032】
また、本開示の製造方法は、工程(2)の後に、必要に応じて(例えば、ポリエステル樹脂水性分散組成物の粘度又はポリエステル樹脂濃度を下げるために)、さらに(3)得られた混合物に水を加えることを含んでもよい。当該水添加は、例えば水添加後の組成物のポリエステル樹脂含有量が、40~70質量%となるように行われることが好ましい。当該範囲の上限又は下限は、例えば、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、又は69質量%であってもよい。例えば、当該範囲は、45~65質量%であってもよい。
【0033】
なお、工程(1)及び(2)は、例えば、上流側より第一供給口と第二供給口とを備えた二軸押出機を用いることにより一層効率的に行うことが出来る。また、工程(1)~(3)は、例えば、上流側より第一供給口と第二供給口と第三供給口とを備えた二軸押出機を用いることにより一層効率的に行うことができる。
【0034】
例えば、第一供給口より、
ポリエステル及びポリビニルアルコールを投入して溶融混錬し、第二供給口より、得られる混合物中のポリエステル及びポリビニルアルコールの合計含有量が78~88質量%となるように、3~10質量%のポリビニルアルコール水溶液を供給し、混合することによって、工程(1)及び(2)を行うことができる。
【0035】
また例えば、さらに第三供給口から水を供給することにより、工程(3)を行うことができる。
【0036】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【0037】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例】
【0038】
以下、例を示して本開示の実施形態をより具体的に説明するが、本開示の実施形態は下記の例に限定されるものではない。
【0039】
なお、以下の検討において、ポリビニルアルコールは、いずれも、クラレ株式会社の商品名「ポバール40-80E」(ケン化度79~81モル%)を用いた。
【0040】
実施例1
二軸押出機(株式会社 池貝製PCM-30、L/D=4 1.5、シリンダー長さ1260mm)の上流側の先端から80mmの位置に設けられた第一供給口に2つのホッパーを設置し、それぞれからポリエステル(融点95℃)を40kg/時で、ポリビニルアルコールを0.48kg/時で投入した。
【0041】
二軸押出機の上流側の先端から480mmの位置に設けられた第二供給口まで、シリンダー温度140℃、回転数450rpmで溶融混練した後、第二供給口からプランジャーポンプを用いて濃度8質量%のポリビニルアルコール水溶液を9.2kg/時で供給した。
【0042】
第二供給口から二軸押出機の上流側の先端から1000mmの位置に設けられた第三供給口まで、シリンダー温度120℃、回転数450rpm、固形分(ポリエステル及びポリビニルアルコールの合計)濃度83質量%の条件で、混練、乳化を行った後、第三供給口からプランジャーポンプを用いて純水を29.5kg/時で供給し、第三供給口から二軸押出機の出口まで、シリンダー温度90℃、回転数450rpmの条件で混錬を行った後、二軸押出機より排出させた。この運転を10分間、稼動が安定するまで行った後、切り替え弁を開き、ポリエステル樹脂水性分散液をプロペラ型攪拌棒(プロペラ径58mm、3枚羽根)を備えた内容積5Lの攪拌槽に投入し、500rpmで分散液を攪拌した。
【0043】
前記攪拌槽で攪拌した分散液を、冷却管入口に投入し、冷却温度40℃の条件で冷却を行った後、冷却管入口から10,800mmの位置に設けられた冷却管出口から排出し、ポリエステル樹脂の水性分散液を得た。
【0044】
実施例2
第二供給口から第三供給口までの固形分濃度が81.3%になるように、第一供給口から供給するポリビニルアルコールを0.4kg/時、第二供給口から供給する濃度8質量%のポリビニルアルコール水溶液を10.3kg/時で供給し、第三供給口から供給する純水を28.6kg/時で供給した以外は、実施例1と同様に操作し、ポリエステル樹脂の水性分散液を得た。
【0045】
実施例3
第二供給口から第三供給口までの固形分濃度が85.3%になるように、第一供給口から供給するポリビニルアルコールを0.6kg/時、第二供給口から供給する濃度8質量%のポリビニルアルコール水溶液を7.7kg/時で供給し、第三供給口から供給する純水を30.9kg/時で供給した以外は、実施例1と同様に操作し、ポリエステル樹脂の水性分散液を得た。
【0046】
実施例4
第三の供給口から供給する純水を19.0kg/時とした以外は、実施例1と同様に操作し、ポリエステル樹脂の水性分散液を得た。
【0047】
実施例5
第一供給口から供給するポリエステル樹脂を30kg/時、ポリビニルアルコールを0.4kg/時、第二供給口から供給する濃度8質量%のポリビニルアルコール水溶液を6.9kg/時で供給し、第三供給口から供給する純水を22.1kg/時で供給した以外は、実施例1と同様に操作し、ポリエステル樹脂の水性分散液を得た。
【0048】
比較例1
第二供給口から第三供給口までの固形分濃度が72.1%になるように、第一供給口から供給するポリビニルアルコールを0.20kg/時、第二供給口から供給する濃度8質量%のポリビニルアルコール水溶液を17.5kg/時で供給し、第三供給口から供給する純水を22.3kg/時で供給した以外は実施例1と同様に操作し、ポリエステル樹脂の水性分散液を得た。
【0049】
比較例2
第二供給口から第三供給口までの固形分濃度が90.0%になるように、第一供給口から供給するポリビニルアルコールを0.8kg/時、第二供給口から供給する濃度8質量%のポリビニルアルコール水溶液を5.0kg/時で供給し、第三供給口から供給する純水を33.4kg/時で供給した以外は、実施例1と同様に操作したところ、未乳化のポリエステル樹脂によって、二軸押出機内が閉塞し、ポリエステル樹脂の水性分散液を取得できなかった。
【0050】
各実施例および比較例で得られたポリエステル樹脂水性分散液について、中位粒子径、乳化状態の良否を下記方法にて評価した。
【0051】
<中位粒子径>
得られたポリエステル樹脂水性分散液について、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製の商品名“SALD-2300”)を用いて分散粒子の中位粒子径を測定した。
【0052】
<乳化状態>
得られたポリエステル樹脂水性分散液の乳化状態について、目視にて評価した。評価の基準は下記の通りである。
○:未乳化物なし
×:未乳化物あり
【0053】
【0054】
なお、実施例1のポリエステル樹脂水性分散液について、接着性について下記方法にて評価したところ、評価は○であった。
【0055】
<接着性>
実施例1で得られたポリエステル樹脂水性分散液をアルミ箔(幅:25mm、厚み:30μm) 上に、乾燥後の皮膜の厚さが約4μmとなるようにコーティング機(日本シーダースサービス株式会社のバーコーターNo.4) を用いて塗布した。当該分散液が塗布されたアルミ箔を100℃のオーブンで1分間加熱乾燥し、皮膜を形成させた。
【0056】
次いで、PVC(ポリ塩化ビニル)(幅:25mm)を被着体として、得られた皮膜に被着体を、ヒートシール機(テスター産業(株)の商品名“TP-701型”)により、接着させた。ヒートシールの条件は、シール温度140℃、シール圧2kg/cm2、シール時間3秒とし、得られたヒートシール基材(PVC/前記分散液皮膜/アルミ箔)(幅:25mm)を試験片とした。試験片を冷却した後、引張試験機(島津製作所(株)の商品名“オートグラフAGS-J”)により、引張速度50mm/分の条件で、T型剥離を行った。これにより、皮膜の剥離強度を測定し、接着性を評価した。評価基準は下記の通りである。
○:剥離強度15N/25mm以上
×:剥離強度15N/25mm未満
【0057】
なお、比較例はいずれも乳化不良により評価が不可能であった。結果を下表に示す。
【0058】