(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-10-17
(45)【発行日】2025-10-27
(54)【発明の名称】流路デバイス
(51)【国際特許分類】
G01N 1/04 20060101AFI20251020BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20251020BHJP
【FI】
G01N1/04 M
G01N37/00 101
(21)【出願番号】P 2025543715
(86)(22)【出願日】2025-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2025002361
【審査請求日】2025-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2024011477
(32)【優先日】2024-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100156177
【氏名又は名称】池見 智治
(74)【代理人】
【識別番号】100130166
【氏名又は名称】田中 宏明
(72)【発明者】
【氏名】船間 光
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-223683(JP,A)
【文献】特開2009-213460(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0113243(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0124076(KR,A)
【文献】特開2019-136691(JP,A)
【文献】特開2015-058394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/04
G01N 37/00
B01J 19/00
B03B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路部、を備え、
該流路部は、第1流路と、複数の第2流路と、第3流路と、第4流路と、を含み、
前記第1流路は、第1方向に沿って延びており、
前記第1流路は、前記第1方向の端部に位置している第1部分と、該第1部分とは反対方向の端部に位置している第2部分と、を含み、
前記第1流路は、第1側面と、該第1側面と前記第1方向に直交する第2方向に対向している第2側面と、を有し、
前記複数の第2流路のそれぞれは、前記第1部分と前記第2部分との間において前記第1側面で開口していることで前記第1流路に接続しており且つ前記第1流路よりも細く、
前記第3流路は、前記第2部分に接続している第1接続部分、を含み、
該第1接続部分は、前記第1方向に沿って延びており、
前記第4流路は、前記第2部分に接続している第2接続部分、を含み、
前記第2接続部分は、前記第1方向に対して鋭角を成している第3方向に沿って延びており、
前記第2接続部分は、前記第1接続部分の側に位置している第3側面、を有し、
前記流路部は、前記第2側面と、前記第3側面と、を接続している接続面を有し、
前記第2側面と前記接続面とが接続している第3部分と、前記第3側面と前記接続面とが接続している第4部分との距離は、前記第1流路の前記第2方向における幅の1倍以下である、流路デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の流路デバイスであって、
前記第1方向と前記第3方向とが成している角度は、15度以上であり且つ45度以下である、流路デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の流路デバイスであって、
前記第1方向と前記第3方向とが成している角度は、30度である、流路デバイス。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の流路デバイスであって、
前記第3部分と前記第4部分との距離は、前記第1流路の前記第2方向における幅の0.1倍以上であり且つ0.5倍以下である、流路デバイス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、日本国出願2024-11477号(2024年1月30日出願)の優先権を主張する出願であり、当該日本国出願の開示全体を、ここに参照のために取り込む。
【技術分野】
【0002】
本開示は、流路デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
複数種の粒子を含む液体から特定の種の粒子を他の種の粒子と分離するための、分岐している複数の微細な流路を有する部分(流路部とも称される)と、この流路部にそれぞれ通じており且つ外面においてそれぞれ開口している複数の孔と、を備えた流路デバイスがある(例えば、特許文献1の記載を参照)。
【0004】
近年、流路デバイスについては、分離後の回収液に含まれる複数の粒子において特定の種の粒子(例えば、複数の特定の種の粒子)が占める割合を向上させる要求が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
流路デバイスが開示される。
【0007】
流路デバイスの一態様は、流路部、を備えている。前記流路部は、第1流路と、複数の第2流路と、第3流路と、第4流路と、を含む。前記第1流路は、第1方向に沿って延びている。前記第1流路は、前記第1方向の端部に位置している第1部分と、該第1部分とは反対方向の端部に位置している第2部分と、を含む。前記第1流路は、第1側面と、該第1側面と前記第1方向に直交する第2方向に対向している第2側面と、を有する。前記複数の第2流路のそれぞれは、前記第1部分と前記第2部分との間において前記第1側面で開口していることで前記第1流路に接続しており且つ前記第1流路よりも細い。前記第3流路は、前記第2部分に接続している第1接続部分、を含む。前記第1接続部分は、前記第1方向に沿って延びている。前記第4流路は、前記第2部分に接続している第2接続部分、を含む。前記第2接続部分は、前記第1方向に対して鋭角を成している第3方向に沿って延びている。前記第2接続部分は、前記第1接続部分の側に位置している第3側面、を有する。前記流路部は、前記第2側面と、前記第3側面と、を接続している接続面を有する。前記第2側面と前記接続面とが接続している第3部分と、前記第3側面と前記接続面とが接続している第4部分との距離は、前記第1流路の前記第2方向における幅の1倍以下である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、流路デバイスの構成の一例を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図2は、流路デバイスの構成の一例を模式的に示す正面図である。
【
図3】
図3は、流路デバイスにおける流路部および複数の孔の構成の一例を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、流路部の一部を模式的に示す平面図であり、
図3の矩形の一点鎖線で囲まれた領域IVを示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図4で示された流路部の一部において、主流路の第1上流部分に第1液体と第2液体とが導入されている様子の一例を模式的に示す平面図である。
【
図6】
図6は、実験の第1例の結果について、接続面のサイズと白血球回収液における白血球純度との関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実験の第2例の結果について、接続面のサイズと白血球回収液における白血球純度との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実験の第3例の結果について、接続面のサイズと白血球回収液における白血球純度との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実験の第4例の結果について、接続面のサイズと白血球回収液における白血球純度との関係を示すグラフである。
【
図10】
図10は、実験の第5例において用いられた流路デバイスの流路部の一部を模式的に示す平面図であり、流路部のうちの
図3の矩形の一点鎖線で囲まれた領域IVに対応する領域の構成の一例を示す平面図である。
【
図11】
図11は、実験の第5例の結果について、接続面のサイズと白血球回収液における白血球純度との関係を示すグラフである。
【
図12】
図12は、実験の第6例において用いられた流路デバイスの流路部の一部を模式的に示す平面図であり、流路部のうちの
図3の矩形の一点鎖線で囲まれた領域IVに対応する領域の構成の一例を示す平面図である。
【
図13】
図13は、実験の第6例の結果について、接続面のサイズと白血球回収液における白血球純度との関係を示すグラフである。
【
図14】
図14は、流路部の一部を模式的に示す平面図であり、
図3の矩形の一点鎖線で囲まれた領域IVに対応する領域についての他の第1構成例を示す平面図である。
【
図15】
図15は、流路部の一部を模式的に示す平面図であり、
図3の矩形の一点鎖線で囲まれた領域IVに対応する領域についての他の第2構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
複数種の粒子を含む液体(第1液体とも被処理液体とも称される)から特定の種の複数の粒子(第1粒子とも称される)を他の種の複数の粒子(第2粒子とも称される)と分離するための、分岐している微細な流路を有する部分(流路部とも称される)と、この流路部にそれぞれ通じており且つ外面においてそれぞれ開口している複数の孔と、を備えた流路デバイスがある。
【0010】
この流路デバイスでは、例えば、流路部は、外面において開口していない。流路部は、例えば、第1流路(主流路とも称される)と、この主流路にそれぞれ接続しており且つ主流路よりも細い複数の第2流路(分岐流路とも称される)と、を含む。複数の孔は、主流路の上流部(第1上流部とも称される)にそれぞれ通じている第1の導入孔(第1導入孔とも称される)および第2の導入孔(第2導入孔とも称される)と、主流路の下流部(第1下流部とも称される)に通じている排出孔(第1排出孔とも称される)と、複数の分岐流路のそれぞれにおける主流路とは逆側の下流部(第2下流部とも称される)に通じている排出孔(第2排出孔とも称される)と、を含む。主流路は、第1方向に沿って直線状に延びている。複数の分岐流路のそれぞれは、主流路のうちの第1上流部と第1下流部との間で、主流路における第1方向に直交している第2方向の側に位置している側面において開口している。さらに、流路部は、第1導入孔と第1上流部とを接続している流路(第3流路とも称される)と、第2導入孔と第1上流部とを接続している流路(第4流路とも称される)と、を含む。第4流路は、第1上流部に接続している部分が第2方向に沿って延びており且つ主流路のうちの第2方向とは逆側に位置している側面において開口している。第3流路は、第1上流部に接続している部分が第1方向に延びている。
【0011】
第1導入孔には、主流路に向けて被処理液体が導入される。第2導入孔には、主流路に向けて液体(第2液体とも押付用液体とも称される)が導入される。押付用液体は、主流路において、被処理液体内の複数種の粒子を複数の分岐流路へ向けて押し付けることができる。ここで、例えば、第1粒子の径が第2粒子の径よりも大きな場合には、複数の分岐流路のそれぞれ幅が、第2粒子の径よりも大きく且つ第1粒子の径よりも小さければ、複数の第2粒子を含む液体が主流路から複数の分岐流路へ導入されて第2排出孔から排出され、複数の第1粒子を含む液体(回収液とも分離後の回収液とも称される)が主流路の第1下流部を経て第1排出孔から排出され得る。これにより、回収液が第1排出孔を介して回収され得る。その結果、被処理液体から複数の第1粒子を含む液体(回収液)が、複数の第2粒子を含む液体と分離されて、回収され得る。例えば、被処理液体に血液を含む検体が適用される場合には、第1粒子が白血球であり、第2粒子が赤血球である態様が考えられる。なお、上記の流路デバイスにおいて、複数の分岐流路によって大きさの異なる第1粒子と第2粒子とを分離する機能は、後述されるように分岐流路への導入流れと第1粒子および第2粒子のそれぞれの重心位置との関係によって生ずる。このため、必ずしも分岐流路の幅と第1粒子の径および第2粒子の径のそれぞれとの大小関係によって第1粒子と第2粒子との分離の可否は決まらない。例えば、流路デバイスにおいて、分岐流路の幅が第1粒子の径と同程度であるか、あるいは分岐流路の幅が第1粒子の径よりも大きかったとしても、第1粒子が主流路から分岐流路に導入されずに第2粒子と分離されることは可能である。
【0012】
ところで、上記の流路デバイスでは、主流路の第1上流部において、第3流路から被処理液体が流入している方向(第1流入方向とも称される)に対して第4流路から押付用液体が流入している方向(第2流入方向とも称される)が90度を成す形態で、被処理液体の流れに対して押付用液体の流れが合流する。この場合には、複数の第1粒子を含む回収液の単位時間当たりの回収量を向上させるために、第1導入孔から第3流路を介して主流路の第1上流部に対して流入する被処理液体の流速を上昇させることが考えられる。
【0013】
ところが、被処理液体の流速が上昇すると、主流路において、液体の流れに乱れが生じる。これにより、主流路において、被処理液体内の複数種の粒子が押付用液体によって複数の分岐流路へ向けて押し付けられている状態が維持され難くなる。特に、主流路において、主流路の第1下流部に近づくにつれて、被処理液体内の複数種の粒子が押付用液体によって複数の分岐流路へ向けて押し付けられる力(押付力とも称される)が低下し得る。これにより、被処理液体における複数の第2粒子の一部が第1下流部まで流れ易くなり得る。その結果、第1排出孔を介して回収される回収液に混入する第2粒子の数が増加して、回収液に含まれる複数の粒子において第1粒子(例えば、複数の第1粒子)が占める割合が低下し得る。例えば、被処理液体に血液を含む検体が適用される場合には、回収液(白血球回収液とも称される)における全ての血球において白血球(例えば、複数の白血球)が占める割合(白血球純度とも称される)が低下し得る。全ての血球は、白血球と赤血球とを含む。
【0014】
ここで、例えば、回収液に含まれる複数の粒子において第1粒子(例えば、複数の第1粒子)が占める割合を向上させることを目的として、主流路において液体の流れの乱れを低減することが考えられる。より具体的には、例えば、主流路の第1上流部において、被処理液体の第1流入方向に対して押付用液体の第2流入方向が90度未満の鋭角を成す形態で、被処理液体の流れに対して押付用液体の流れを合流させることが考えられる。
【0015】
しかしながら、第1流入方向に対して第2流入方向が鋭角を成す場合においても、回収液に含まれる複数の粒子において特定の種の粒子(例えば、複数の第1粒子)が占める割合を向上させる点で改善の余地がある。
【0016】
すなわち、流路デバイスについては、回収液に含まれる複数の粒子において特定の種の粒子(例えば、複数の第1粒子)が占める割合を向上させる点で改善の余地がある。
【0017】
そこで、本開示の発明者は、流路デバイスについて、回収液に含まれる複数の粒子において特定の種の粒子(例えば、複数の特定の種の粒子)が占める割合を向上させることができる技術を創出した。
【0018】
これについて、以下、各種の実施形態および各種の例が、図面が参照されつつ説明される。図面においては同一もしくは類似の構成および機能を有する部分には同じ符号が付されている。同一もしくは類似の構成および機能を有する部分については、下記の説明では重複する説明が省略されている。図面は模式的に示されている。
【0019】
図面には便宜的に右手系のXYZ座標系が付記されている図が含まれている。以下の説明では、+Z方向が鉛直上向き(単に上向きとも称される)として採用されている。鉛直下向きは、-Z方向とも表現される。+X方向と反対の方向は、-X方向とも表現される。+Y方向と反対の方向は、-Y方向とも表現される。また、図面には、便宜的に、第1方向D1、第2方向D2、第3方向D3および第4方向D4のそれぞれを示す矢印が付記されている図が含まれている。
【0020】
以下の説明において「流路」は液体が流れる構造を有する。本開示において、第1方向D1としての-Y方向および第2方向D2としての+X方向の双方に直交している方向としての-Z方向に流路が平面視された場合に、流路が延びている方向に対して直交する方向における当該流路の長さは、当該流路の幅と称される。流路の幅が相対的に小さいことは、流路が相対的に細いことを意味し、流路の幅が相対的に大きいことは、流路が相対的に太いことを意味する。本開示において、平面視された場合とは、特に説明がなければ、-Z方向に向けて見た平面視が行われた場合を意味する。
【0021】
<1.流路デバイスの概略的な構成の一例>
図1は、一実施形態に係る分離デバイスとしての流路デバイス1の構成の一例を模式的に示す平面図である。
図2は、一実施形態に係る流路デバイス1の構成の一例を模式的に示す正面図である。後述されるように、流路デバイス1は、複数種の粒子Pa1を含む液体(第1液体とも称される)L1から特定の種の複数の粒子(第1粒子とも称される)Pa11を他の種の複数の粒子(第2粒子とも称される)Pa12と分離するためのデバイスとして機能し得る。
【0022】
一実施形態では、流路デバイス1は、例えば、板状の形状を有する。流路デバイス1は、例えば、第1面としての上面1aと、この上面1aとは逆側の第2面としての下面1bと、を有する。流路デバイス1は、例えば、上面1aと下面1bとを接続している第3面としての側面1cを有する。換言すれば、流路デバイス1の外面は、上面1aと下面1bと側面1cとによって構成されている。上面1aは、下面1bよりも+Z方向の側に位置している。
【0023】
図1および
図2の例では、上面1aは、+Z方向を向いている。換言すれば、上面1aは、XY平面に沿った面であって、+Z方向に沿った法線を有する。下面1bは、-Z方向を向いている。換言すれば、下面1bは、XY平面に沿った面であって、-Z方向に沿った法線を有する。上面1aおよび下面1bのそれぞれは、例えば、概ね平坦であり且つ矩形状の形状を有する。
【0024】
流路デバイス1の厚さは、例えば、1ミリメートル(mm)から5mm程度に設定される。流路デバイス1の厚さは、流路デバイス1の+Z方向に沿った長さである。流路デバイス1の上面1aおよび下面1bのそれぞれの幅は、例えば、10mmから50mm程度に設定される。上面1aの幅は、上面1aの+X方向に沿った長さである。下面1bの幅は、下面1bの+X方向に沿った長さである。流路デバイス1の上面1aおよび下面1bのそれぞれの長さは、例えば、10mmから50mm程度に設定される。上面1aの長さは、上面1aの+Y方向に沿った長さである。下面1bの長さは、下面1bの+Y方向に沿った長さである。
【0025】
流路デバイス1は、流路部2を備えている。一実施形態の一例では、流路デバイス1は、複数の孔3を備えている。一実施形態の一例では、流路部2は、流路デバイス1の外面において開口していない。複数の孔3のそれぞれは、流路部2に通じており且つ流路デバイス1の外面において開口している。本開示では、「第1の部分が第2の部分と通じている」との表現は、第1の部分と第2の部分との間で液体などの流体が流通可能な状態で第1の部分が第2の部分と直接つながっている形態、または第1の部分と第2の部分との間で流体が流通可能な状態で第1の部分が他の部分(第3の部分とも称される)を介して第2の部分とつながっている形態を意味する。ここで、第1の部分、第2の部分および第3の部分のそれぞれには、流路または孔などの流体が流れ得る部分が適用される。例えば、流路部2は、流路デバイス1の内部に位置している。別の観点から言えば、例えば、流路部2は、上面1a、下面1bおよび側面1cの何れにも開口していない。
図2では、流路部2の構成が簡略化されて示されている。
【0026】
図3は、流路デバイス1における流路部2および複数の孔3の構成の一例を模式的に示す平面図である。
図3では、流路デバイス1の外縁が省略されており、流路部2、第1導入孔31、第2導入孔32、第1排出孔33、第2排出孔34および第3排出孔35のそれぞれの外縁が実線で描かれている。
図4は、流路部2の一部を模式的に示す平面図である。より具体的には、
図4は、
図3の矩形の一点鎖線で囲まれた領域IVを模式的に示す平面図である。
図4では、流路部2の外縁が実線で描かれている。
【0027】
流路部2は、例えば、流路デバイス1の外面において開口していない複数の流路が連結された構成を有する。複数の流路のそれぞれの断面は、例えば、矩形状であってよい。流路の断面は、流路が延びている方向に対して直交する仮想的な平面に沿って流路が仮想的に切断されることで形成された面であってよい。
図1から
図3で示されるように、流路部2は、例えば、XY平面に沿って位置している。
【0028】
流路部2は、第1流路としての主流路21と、複数の第2流路としての複数の分岐流路22と、第3流路としての第1導入流路23と、第4流路として第2導入流路24と、を含む。
【0029】
主流路21は、第1方向D1としての-Y方向に沿って延びている流路である。この主流路21は、例えば、第1方向D1としての-Y方向に沿って直線状に延びていてよい。主流路21は、第1部分(第1下流部分とも称される)21dと、第2部分(第1上流部分とも称される)21uと、を有する。第1下流部分21dは、主流路21のうちの第1方向D1としての-Y方向の側に位置している。第1下流部分21dは、主流路21のうちの第1方向D1としての-Y方向の側の端部に位置している部分であってよい。第1上流部分21uは、主流路21のうちの第1下流部分21dとは逆側に位置している。換言すれば、第1上流部分21uは、主流路21のうちの第1下流部分21dとは反対方向の端部に位置している部分である。さらに換言すれば、第1上流部分21uは、主流路21のうちの第1下流部分21dとは逆側の端部に位置している部分であってよい。別の観点から言えば、第1上流部分21uは、主流路21のうちの第1方向D1とは逆の方向としての+Y方向の側の端部に位置している部分であってよい。換言すれば、主流路21は、第1上流部分21uから第1下流部分21dに向かって第1方向D1としての-Y方向に沿って延びている。
図4の例では、第1上流部分21uは、主流路21のうちの細い二点鎖線で仮想的に区切られた矩形状の部分である。
【0030】
主流路21は、第1側面Sw1と、第2側面Sw2と、を有する。例えば、第1側面Sw1は、主流路21のうち、第1方向D1としての-Y方向に直交している第2方向D2としての+X方向の側面である。第2側面Sw2は、第1側面Sw1と第2方向D2としての+X方向に対向している側面である。換言すれば、第2側面Sw2は、主流路21のうち、第2方向D2とは逆の第4方向D4としての-X方向の側面である。別の観点から言えば、第1側面Sw1は、主流路21のうちの第2方向D2の側に位置している側面であり、第2側面Sw2は、主流路21のうちの第4方向D4の側に位置している側面であってよい。
【0031】
複数の分岐流路22のそれぞれは、主流路21に接続しており且つ主流路21よりも細い。複数の分岐流路22のそれぞれは、主流路21のうちの第1上流部分21uと第1下流部分21dとの間で、主流路21の第1側面Sw1において開口している。換言すれば、複数の分岐流路22のそれぞれは、第1下流部分21dと第1上流部分21uとの間において、第1側面Sw1で開口していることで、主流路21に接続している。さらに換言すれば、主流路21は、複数の分岐流路22がそれぞれ接続している複数の部分(接続部とも称される)Bc1を有する。例えば、複数の分岐流路22のそれぞれは、第1方向D1としての-Y方向における互いに異なる位置において主流路21から分岐している。換言すれば、複数の分岐流路22がそれぞれ接続している複数の接続部Bc1が、第1方向D1としての-Y方向における互いに異なる位置に存在している。
【0032】
図1から
図3の例では、複数の分岐流路22のそれぞれは、第2方向D2としての+X方向に沿って延びている。別の観点から言えば、複数の分岐流路22は、第1方向D1としての-Y方向に沿って並んでいる。ここで、複数の分岐流路22は、例えば、分岐流路22の群(分岐流路群とも称される)22gを構成している。複数の分岐流路22の本数は、例えば、数十本から数百本に設定される。
図1から
図3では、便宜的に13本の分岐流路22が描かれている。
【0033】
複数の分岐流路22のそれぞれは、例えば、主流路21とは逆側の部分(第2下流部分とも称される)22dを含む。
図1から
図3の例では、複数の分岐流路22のそれぞれにおいて、分岐流路22の第2下流部分22dは、この分岐流路22のうちの第2方向D2としての+X方向の側の端に位置している部分である。
【0034】
第1導入流路23は、主流路21の第1上流部分21uに接続している。第1導入流路23は、第1上流部分21uに接続している部分(第1接続部分とも称される)Cp1を含む。第1接続部分Cp1は、第1方向D1としての-Y方向に沿って延びている。例えば、第1接続部分Cp1は、第1上流部分21uに向けて、第1方向D1としての-Y方向に沿って直線状に延びていてよい。換言すれば、第1導入流路23は、主流路21の第1上流部分21uに対して第1方向D1としての-Y方向に向かって接続している。第1導入流路23は、複数の分岐流路22のそれぞれよりも太い。第1導入流路23の第1接続部分Cp1の幅は、主流路21の第1上流部分21uの幅と同一であってよい。
【0035】
第2導入流路24は、主流路21の第1上流部分21uに接続している。第2導入流路24は、第1上流部分21uに接続している部分(第2接続部分とも称される)Cp2を含む。例えば、第2接続部分Cp2は、主流路21のうちの第2側面Sw2において開口している。換言すれば、例えば、第2接続部分Cp2は、第1上流部分21uにおいて第2側面Sw2で開口していることで、主流路21に接続している。第2接続部分Cp2は、第1方向D1としての-Y方向に対して鋭角を成している第3方向D3に沿って延びている。例えば、第2接続部分Cp2は、第1方向D1としての-Y方向に対して鋭角を成している第3方向D3に沿って第1上流部分21uに向けて直線状に延びていてよい。この鋭角の角度は、90度未満の角度θに設定されてよい。換言すれば、角度θは、第1方向D1と第3方向D3とが成している角度である。ここでは、例えば、第2導入流路24は、主流路21の第1上流部分21uに対して第3方向D3に向かって接続している。別の観点から言えば、第2接続部分Cp2は、主流路21に対して第1接続部分Cp1に近づいている形態で傾いている。換言すれば、第2接続部分Cp2が第1上流部分21uに向けて延びている方向としての第3方向D3に沿ったベクトルと、主流路21が第1上流部分21uから第1下流部分21dに向けて延びている方向としての第1方向D1に沿ったベクトルとが鋭角としての角度θを成している。第2導入流路24は、複数の分岐流路22のそれぞれよりも太い。ここで、角度θは、例えば、15度以上であり且つ45度以下であってよい。この角度θは、30度であってもよい。
図4には、角度θが30度に設定された一例が示されている。
【0036】
第2導入流路24は、第1接続部分Cp1の側に位置している側面(第3側面とも称される)Sw3を有する。より具体的には、第2導入流路24の第2接続部分Cp2は、第1接続部分Cp1の側に位置している第3側面Sw3を有する。ここでは、第2接続部分Cp2の第3側面Sw3に沿った仮想面と、主流路21の第2側面Sw2に沿った仮想面と、が鋭角としての角度θを成している。
【0037】
流路部2は、主流路21の第2側面Sw2と、第2接続部分Cp2の第3側面Sw3と、を接続している面(接続面とも称される)Cs1を有する。換言すれば、流路部2は、主流路21の第1上流部分21uと第2導入流路24の第2接続部分Cp2とが鋭角を成す角部の先端が欠けた形態を有する。さらに換言すれば、流路部2は、主流路21の第1上流部分21uと第2導入流路24の第2接続部分Cp2との間に、流路が拡張された形態の部分(拡張部分とも称される)Ac1を有する。接続面Cs1は、例えば、矩形状の平坦な面であってよい。
【0038】
図4の例では、拡張部分Ac1は、第3側面Sw3から第1上流部分21uに至るまで第3方向D3に沿って仮想的に延ばした細い二点鎖線と、第1上流部分21uの外縁を仮想的に示す細い二点鎖線と、接続面Cs1とによって囲まれた三角形状の仮想的な部分である。換言すれば、拡張部分Ac1は、平面視された場合に三角形状の、流路(主流路21および/または第2導入流路24)が拡張された部分である。拡張部分Ac1が平面視された場合に、拡張部分Ac1の形状は、例えば、接続面Cs1に沿った辺を底辺とする二等辺三角形に沿った二等辺三角形状であってよい。換言すれば、第3側面Sw3と接続面Cs1とが成している角度αと、第2側面Sw2と接続面Cs1とが成している角度βとは、同一もしくは略同一であってよい。ここで、例えば、角度θが30度であれば、角度αおよび角度βのそれぞれは105度であってよい。
【0039】
流路部2が平面視された場合に、接続面Cs1のサイズは、主流路21の幅(第1幅とも称される)W1以下に設定されている。主流路21の幅(第1幅)W1は、主流路21の第2方向D2としての+X方向における幅である。主流路21の第2側面Sw2と接続面Cs1とは第3部分P1において接続しており、第2導入流路24における第2接続部分Cp2の第3側面Sw3と接続面Cs1とは第4部分P2において接続している。ここで、流路部2が平面視された場合に、主流路21の第2側面Sw2と接続面Cs1とが接続している第3部分P1と、第2接続部分Cp2の第3側面Sw3と接続面Cs1とが接続している第4部分P2と、の距離が、第1距離Le1とされる。この場合に、第1距離Le1は、第1幅W1の1倍以下に設定されていてよい。この第1距離Le1は、第1幅W1の0.1倍以上であり且つ0.5倍以下であってもよい。第3部分P1および第4部分P2のそれぞれは、平面視された場合に、角部の頂点としての点状の部分に限られず、長さが短い線状の部分であってもよい。
【0040】
複数の孔3は、第1孔としての第1導入孔31と、第2孔としての第2導入孔32と、第3孔としての第1排出孔33と、第4孔としての第2排出孔34と、を含む。一実施形態では、例えば、複数の孔3は、第5孔としての第3排出孔35を含む。
【0041】
第1導入孔31は、第1導入流路23を介して第1上流部分21uに通じている。第1導入孔31は、第1導入流路23に接続していてよい。より具体的には、第1導入孔31は、第1導入流路23のうちの第1上流部分21uとは逆側の端部に接続していてよい。別の観点から言えば、第1導入孔31は、第1上流部分21uに通じている。第1導入孔31の径は、例えば、第1導入流路23の幅と同一もしくは第1導入流路23の幅以上に設定されている。
図1および
図3の例では、第1導入流路23は、第1導入孔31から第4方向D4としての-X方向に沿って延びている部分と、第1方向D1としての-Y方向に沿って延びている部分とが、この記載の順に接続されたL字状の流路である。換言すれば、第1導入流路23は、第1導入孔31から第1上流部分21uに向けて、-X方向および-Y方向の順に延びている。ここで、第1導入流路23のうちの第1導入孔31と第1接続部分Cp1との間の部分は、L字状の部分に限られず、種々の形状を有していてもよい。
【0042】
第2導入孔32は、第2導入流路24を介して第1上流部分21uに通じている。第2導入孔32は、第2導入流路24に接続していてよい。より具体的には、第2導入孔32は、第2導入流路24のうちの第1上流部分21uとは逆側の端部に接続していてよい。別の観点から言えば、第2導入孔32は、第1上流部分21uに通じている。第2導入孔32の径は、例えば、第2導入流路24の幅と同一もしくは第2導入流路24の幅以上に設定されている。
図1および
図3の例では、第2導入流路24は、第2導入孔32から第3方向D3に沿って延びている直線状の流路である。ここで、第2導入流路24のうちの第2導入孔32と第2接続部分Cp2との間の部分は、第3方向D3に沿って延びている直線状の部分に限られず、種々の形状を有していてもよい。
【0043】
第1排出孔33は、主流路21の第1下流部分21dに通じている。第1排出孔33は、例えば、第5流路としての第1排出流路25を介して第1下流部分21dに接続していてよい。換言すれば、流路部2は、例えば、第1排出孔33と第1下流部分21dとを接続している第1排出流路25を含んでいてよい。第1排出流路25は、複数の分岐流路22のそれぞれよりも太い。この第1排出流路25は、後述される複数の第1粒子Pa11のそれぞれの径よりも太い。これにより、主流路21において複数の分岐流路22が接続された部分を通って第1下流部分21dに至った複数の第1粒子Pa11は、第1排出流路25に導入され得る。その結果、流路デバイス1では、複数の第1粒子Pa11を含む液体が、第1排出流路25を介して、第1排出孔33から排出され得る。よって、流路デバイス1では、複数の第1粒子Pa11を含む液体が、例えば、第1下流部分21dから第1排出孔33などを介して回収液として回収され得る。第1排出孔33の径は、第1排出流路25の幅と同一もしくは第1排出流路25の幅以上に設定されていてよい。一実施形態では、第1排出流路25は、第1下流部分21dに接続している部分が第1下流部分21dのうちの第2方向D2としての+X方向の側面において開口している。第1下流部分21dのうちの第2方向D2としての+X方向の側面は、第1下流部分21dのうちの第2方向D2としての+X方向の側に位置している側面であってよい。
図1および
図3の例では、第1排出流路25は、第1下流部分21dに接続されており且つ第2方向D2としての+X方向に沿って延びている部分と、第1方向D1としての-Y方向に沿って延びている部分と、第4方向D4としての-X方向に沿って延びている部分とが、この記載の順に接続されたU字状の流路である。換言すれば、第1排出流路25は、+X方向、-Y方向および-X方向の順に延びている。
【0044】
第2排出孔34は、複数の分岐流路22のそれぞれにおける第2下流部分22dに通じている。第2排出孔34は、例えば、第6流路としての第2排出流路26を介して複数の分岐流路22のそれぞれの第2下流部分22dに接続していてよい。換言すれば、流路部2は、例えば、第2排出孔34と複数の分岐流路22のそれぞれにおける第2下流部分22dとを接続している第2排出流路26を含んでいてよい。より具体的には、例えば、複数の分岐流路22のそれぞれは、第1方向D1としての-Y方向における互いに異なる位置において第2排出流路26に連結していてよい。第2排出流路26は、例えば、複数の分岐流路22から流入する液体をまとめて第2排出孔34に導くのに十分な容積を確保するために、複数の分岐流路22のそれぞれよりも太い。
図1および
図3の例では、第2排出流路26の+X方向の端の辺が、第2排出孔34の近くに位置している。例えば、第2排出孔34の径は、第2排出流路26のうちの-Y方向の端部において第2排出孔34に接続される部分の流路の幅と同一もしくはその流路の幅以上に設定されていてよい。これにより、流路デバイス1では、後述されるように複数の分岐流路22によって分離された複数の第2粒子Pa12を含む液体が、第2排出流路26を介して第2排出孔34から排出され得る。
図1および
図3の例では、第2排出流路26は、複数の分岐流路22における複数の第2下流部分22dがそれぞれ接続されており且つ第1方向D1としての-Y方向に沿って直線状に延びている第2方向D2としての+X方向に太い部分と、第2方向D2としての+X方向に沿って短い長さで直線状に延びている第1方向D1としての+Y方向に狭い部分とが、この記載の順に接続されたL字状の流路である。換言すれば、第2排出流路26は、複数の分岐流路22の出口を集約して第2排出孔34に接続する形態で、-Y方向および+X方向の順に延びている。
【0045】
第3排出孔35は、主流路21の第1下流部分21dに通じている。第3排出孔35は、例えば、第7流路としての第3排出流路27を介して第1下流部分21dに接続していてよい。換言すれば、流路部2は、例えば、第3排出孔35と第1下流部分21dとを接続している第3排出流路27を含んでいてよい。第3排出流路27は、例えば、複数の分岐流路22のそれぞれよりも太くてよい。また、第3排出流路27は、主流路21と同じ太さでもよく、あるいは主流路21よりも太くてもよい。第3排出孔35の径は、例えば、第3排出流路27の幅と同一もしくは第3排出流路27の幅以上に設定されていてよい。これにより、流路デバイス1では、後述されるように第1液体L1から複数の分岐流路22によって大部分の第2粒子Pa12が分離されて除かれ、さらに第1排出流路25などを介して回収される回収液が除かれた残りの液体が、第3排出流路27を介して第3排出孔35から排出され得る。なお、この残りの液体には、分離および回収によって除かれなかった第1粒子Pa11および第2粒子Pa12が含まれることがある。一実施形態では、第3排出流路27は、第1下流部分21dに接続している部分が第1方向D1としての-Y方向に沿って延びている。
図1および
図3の例では、第3排出流路27は、第1下流部分21dに接続されており且つ第1方向D1としての-Y方向に沿って延びている部分と、第4方向D4としての-X方向に沿って延びている部分と、第1方向D1としての-Y方向に沿って延びている部分と、第2方向D2としての+X方向に沿って延びており且つ第3排出孔35に接続している部分とが、この記載の順に接続された流路である。換言すれば、第3排出流路27は、-Y方向、-X方向、-Y方向および+X方向の順に延びている。
【0046】
一実施形態では、例えば、第1導入孔31、第2導入孔32、第1排出孔33、第2排出孔34および第3排出孔35のそれぞれは、上面1aには開口しておらず且つ下面1bに開口している。例えば、第1導入孔31は、下面1bにおいて開口している部分(第1導入口とも第1入口とも称される)1iを有する。第2導入孔32は、下面1bにおいて開口している部分(第2導入口とも第2入口とも称される)2iを有する。第1排出孔33は、下面1bにおいて開口している部分(第1排出口とも第1出口とも称される)1oを有する。第2排出孔34は、下面1bにおいて開口している部分(第2排出口とも第2出口とも称される)2oを有する。第3排出孔35は、下面1bにおいて開口している部分(第3排出口とも第3出口とも称される)3oを有する。
【0047】
流路デバイス1の素材(流路デバイス1を構成している材料)には、例えば、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane:PDMS)などの樹脂が適用される。PDMSは、例えば、鋳型が用いられた樹脂成型が行われる際における優れた転写性を有する。転写性は、樹脂成型品において鋳型の微細なパターンに応じた微細な凹凸が形成される性質である。
【0048】
流路デバイス1は、例えば、流路部2のパターンに対応する微細な凹凸を片面に有する板状の部分(第1板状部分とも称される)と、第1導入孔31、第2導入孔32、第1排出孔33、第2排出孔34および第3排出孔35のそれぞれに対応する5つの貫通孔を有する板状の部分(第2板状部分とも称される)とが、第1板状部分の微細な凹凸を第2板状部分の片面が覆う形態で接合されることで製造され得る。
【0049】
微細な凹凸を片面に有する第1板状部分は、例えば、樹脂成型などで作製され得る。5つの貫通孔を有する第2板状部分は、例えば、樹脂成型によって作製されてもよいし、樹脂成型で形成された平板状の部材に打ち抜き加工などで5つの貫通孔が形成されることによって作製されてもよい。第1板状部分と第2板状部分との接合は、例えば、第1板状部分の片面および第2板状部分の片面に対する表面改質、および第1板状部分の片面と第2板状部分の片面との接触によって、接着剤が用いられることなく実現され得る。表面改質は、例えば、酸素プラズマの照射またはエキシマランプが用いられた紫外(UV)光の照射などで実現される。例えば、第1板状部分の片面と第2板状部分の片面とが同種の樹脂で構成されていれば、表面改質が用いられた第1板状部分の片面と第2板状部分の片面との接合の強度が向上し得る。
【0050】
<2.流路デバイスの概略的な機能例>
流路デバイス1の機能が、下記において大まかに説明される。
【0051】
図5は、
図4で示された流路部2の一部において、主流路21の第1上流部分21uに処理の対象である第1液体(被処理液体とも称される)L1と、この第1液体L1とは異なる液体(第2液体とも押付用液体とも称される)L2と、が導入されている様子の一例を模式的に示す平面図である。
【0052】
流路デバイス1の流路部2には、第1液体L1が導入される。第1液体L1は、複数種の粒子Pa1として複数の第1粒子Pa11および複数の第2粒子Pa12を含む。複数の第1粒子Pa11のそれぞれは、特定の種の粒子としての分離の対象の粒子(分離対象粒子とも称される)である。複数の第2粒子Pa12のそれぞれは、特定の種の粒子とは異なる他の種の粒子(他種粒子とも称される)である。流路デバイス1では、第1液体L1に含まれる複数種の粒子Pa1について、複数の第1粒子Pa11を複数の第2粒子Pa12と分離する処理(粒子分離処理とも称される)が行われる。ここで、第1液体L1に含まれる複数種の粒子Pa1は、3種以上の粒子であってもよい。以下では、第1粒子Pa11および第2粒子Pa12のそれぞれが1種の粒子である場合が例示される。
【0053】
流路デバイス1では、粒子分離処理が行われる場合には、例えば、第1導入孔31から流路部2に第1液体L1が導入されるとともに、第2導入孔32から流路部2に第2液体L2が導入される。第2液体L2の具体例および機能は後述される。
【0054】
第1導入孔31から流路部2へ第1液体L1が導入される際には、例えば、第1液体L1を供給する管(第1管とも称される)が流路デバイス1の外部から流路デバイス1へ接続されてよい。この第1管の流路デバイス1への接続のために、例えば、流路デバイス1の下面1bには、平面視された場合に第1導入孔31をZ軸周りで囲んでいる状態で位置しており且つ-Z方向に突出している筒状の部分が存在していてもよい。第1管の長手方向の一方の端部(第1端部とも称される)には、例えば、第1導入孔31に接続するためのコネクタが存在していてよい。第1管の長手方向の第1端部とは異なる端部(第2端部とも称される)には、第1管を介して第1導入孔31に第1液体L1を供給するための部分(第1供給部とも称される)が接続されてよい。第1供給部には、例えば、シリンジポンプもしくはプランジャーポンプなどのポンプによって第1液体L1を供給することが可能な機構が適用されてよい。ここで、第1管の第2端部には、例えば、三方弁などを介して第1供給部が接続されていてよい。この場合、例えば、流路デバイス1において、粒子分離処理が行われる直前の準備(事前準備とも称される)として、第2導入孔32から導入される第2液体L2が流路部2内に充填される際に、三方弁の切り換えなどによって、第1導入孔31から第1管および三方弁などを介して流路部2内の気体などが排出されてよい。
【0055】
第2導入孔32から流路部2へ第2液体L2が導入される際には、例えば、第2液体L2を供給する管(第2管とも称される)が流路デバイス1の外部から流路デバイス1へ接続されてよい。この第2管の流路デバイス1への接続のために、例えば、流路デバイス1の下面1bには、平面視された場合に第2導入孔32をZ軸周りで囲んでいる状態で位置しており且つ-Z方向に突出している筒状の部分が存在していてもよい。第2管の長手方向の一方の端部(第3端部とも称される)には、例えば、第2導入孔32に接続するためのコネクタが存在していてよい。第2管の長手方向の第3端部とは異なる端部(第4端部とも称される)には、第2管を介して第2導入孔32に第2液体L2を供給するための部分(第2供給部とも称される)が接続されてよい。第2供給部には、例えば、シリンジポンプもしくはプランジャーポンプなどのポンプによって第2液体L2を供給することが可能な機構が適用されてよい。
【0056】
例えば、第1導入孔31から流路デバイス1へ導入された第1液体L1は、第1導入流路23を経由して、主流路21の第1上流部分21uに流入する。換言すれば、第1導入孔31は、主流路21に第1液体L1を導入するための孔としての役割を有する。また、例えば、第1導入流路23は、主流路21の第1上流部分21uに第1液体L1を導入するための流路としての役割を有する。
【0057】
例えば、第2導入孔32から流路デバイス1へ導入された第2液体L2は、第2導入流路24を経由して、主流路21の第1上流部分21uに流入する。換言すれば、第2導入孔32は、主流路21に第2液体L2を導入するための孔としての役割を有する。また、例えば、第2導入流路24は、主流路21の第1上流部分21uに第2液体L2を導入するための流路としての役割を有する。
【0058】
図5において二点鎖線で描かれた矢印Fp1は、第2液体L2が向かう方向を示す。この方向は、第3方向D3に沿った方向である。
図5において矢印Fp1よりも太い二点鎖線で描かれた矢印Fm1は、第1導入流路23から主流路21内を流れる第1液体L1の主な流れ(主流とも称される)が向かう方向を示す。この主流が向かう方向は、第1方向D1としての-Y方向に沿った方向である。
図5には、
図4と同じく、主流路21のうちの細い二点鎖線で仮想的に区切られた矩形状の第1上流部分21uが示されている。
【0059】
図5では、第1粒子Pa11の径が第2粒子Pa12の径よりも大きい場合において、両者が互いに分離される様子が模式的に示されている。具体的には、例えば、複数の分岐流路22のそれぞれの幅が、第2粒子Pa12の径よりも大きく、第1粒子Pa11の径よりも小さく設定された場合が例示されている。複数の分岐流路22のそれぞれにおいて、分岐流路22の幅は、第1方向D1としての-Y方向に沿った分岐流路22の長さである。ここでは、例えば、第1液体L1は、複数の分岐流路22のそれぞれの幅よりも大きな径をそれぞれ有する複数の第1粒子Pa11と、複数の分岐流路22のそれぞれの幅よりも小さな径をそれぞれ有する複数の第2粒子Pa12と、を含む複数種の粒子Pa1を含有していてよい。
【0060】
少なくとも主流路21および第1導入流路23のそれぞれの幅は、第1粒子Pa11および第2粒子Pa12の何れの径よりも大きい。ここでは、主流路21の幅は、第2方向D2としての+X方向に沿った主流路21の長さである。第1導入流路23の幅は、主流路21の近傍においては第2方向D2としての+X方向に沿った第1導入流路23の長さである。第1導入流路23の幅は、第1導入流路23が第4方向D4としての-X方向に沿って延びている位置においては第1方向D1における-Y方向に沿った第1導入流路23の長さである。
【0061】
複数の第2粒子Pa12は、主流路21を第1方向D1としての-Y方向へ移動しつつ、第2方向D2としての+X方向に押し付けられる力を受けることによって、その殆どが複数の分岐流路22の何れかへ導入され得る。第1液体L1に含まれた複数の第2粒子Pa12の殆どは複数の分岐流路22の何れかを経由し、さらに第2排出流路26を経由して第2排出孔34から流路デバイス1の外部へ排出され得る。ここでは、例えば、主流路21に接続された複数の分岐流路22のそれぞれの断面積および長さが調整されることによって、複数の第2粒子Pa12の殆どが主流路21から複数の分岐流路22の何れかへ導入されて複数の第1粒子Pa11と分離され得る。第2排出孔34から流路デバイス1の外部へ排出される複数の第2粒子Pa12は、例えば、第2排出孔34に直接もしくは管などの他の部材を介して接続された他のデバイスにおいて、特定の処理に供されてもよいし、単に回収されてもよい。第2排出孔34から流路デバイス1の外部へ排出される複数の第2粒子Pa12は、例えば、直接もしくは管などの他の部材を介して廃棄されてもよい。
【0062】
複数の第1粒子Pa11は、複数の分岐流路22へは殆ど導入されずに主流路21内を第1方向D1としての-Y方向へ向けて移動する。複数の第1粒子Pa11の殆どは、主流路21を経由し、さらに第1排出流路25を経由して第1排出孔33から流路デバイス1の外部へ排出される。ここでは、第1排出流路25の幅は、第1粒子Pa11よりも大きい。主流路21において複数の第2粒子Pa12の殆どが複数の分岐流路22の何れかへ導入されたのと同じ作用によって、第1下流部分21dに到達した複数の第1粒子Pa11は第3排出流路27ではなく第1排出流路25へ流入し得る。第1排出孔33から流路デバイス1の外部へ排出される複数の第1粒子Pa11は、例えば、第1排出孔33に直接もしくは管などの他の部材を介して接続された他のデバイスにおいて回収されて、特定の処理に供されてもよいし、単に回収されてもよい。換言すれば、第1排出孔33から流路デバイス1の外部へ排出される複数の第1粒子Pa11を含む液体(回収液)が回収される。
【0063】
第1液体L1のうちの複数の分岐流路22の何れかへ流れる複数の第2粒子Pa12と第1排出流路25へ流れる複数の第1粒子Pa11とを除く組成物(残余の組成物とも称される)は、第3排出流路27に流入する。この残余の組成物は、第3排出流路27を経由し、第3排出孔35から排出され得る。ここで、第3排出孔35から流路デバイス1の外部へ排出される残余の組成物は、例えば、第3排出孔35に直接もしくは管などの他の部材を介して接続された他のデバイスにおいて、特定の処理に供されてもよいし、単に回収されてもよい。第3排出孔35から流路デバイス1の外部へ排出される残余の組成物は、例えば、直接もしくは管などの他の部材を介して廃棄されてもよい。なお、以上の説明から明らかなように、この残余の組成物は第1粒子Pa11および/または第2粒子Pa12を全く含まないとは限られない。残余の組成物は、複数の分岐流路22へ流れなかった第2粒子Pa12および第1排出流路25へ流れなかった第1粒子Pa11を含むことがある。
【0064】
一実施形態では、第1液体L1を複数の分岐流路22へと導入する流れ(導入流れとも称される)が利用される。導入流れは、主流路21および複数の分岐流路22による複数の第1粒子Pa11と複数の第2粒子Pa12との分離に寄与し得る。導入流れは、
図5において、右上がりの斜線が用いられたハッチングが付された領域Ar1によって示されている。
図5において領域Ar1によって示されている導入流れの様子は、あくまで一例である。この導入流れの様子は、第1導入流路23から主流路21に導入される第1液体L1の流速および流量と、第2導入流路24から主流路21の第1上流部分21uに導入される第2液体L2の流速および流量との関係などに応じて変化し得る。領域Ar1が適宜調整されることで、第1液体L1から複数の第1粒子Pa11と複数の第2粒子Pa12とが効率よく分離される。第2液体L2は、複数の分岐流路22とは逆側から第2方向D2としての+X方向に、第1液体L1を複数の分岐流路22へ押し付ける。換言すれば、第2液体L2は、主流路21において主流路21の第2方向D2としての+X方向の第1側面Sw1に複数種の粒子Pa1としての第1粒子Pa11および第2粒子Pa12を押し付ける役割を有していてよい。第2液体L2は、導入流れの発生に寄与し得る。
【0065】
ここでは、上述されたように、主流路21は、第1方向D1としての-Y方向に沿って延びている。第1導入流路23のうちの主流路21の第1上流部分21uに接続している第1接続部分Cp1が、第1方向D1としての-Y方向に沿って延びている。複数の分岐流路22のそれぞれは、主流路21の第1上流部分21uと第1下流部分21dとの間において、主流路21における第1側面Sw1で開口していることで主流路21に接続している。第2導入流路24は、第1上流部分21uに接続している。そして、第2導入流路24は、例えば、主流路21における第2側面Sw2で開口していることで主流路21に接続している。
【0066】
このため、第2導入流路24から主流路21に第2液体L2が導入されながら、第1導入流路23から複数種の粒子Pa1を含む第1液体L1が主流路21に導入されることで、主流路21において複数種の粒子Pa1を複数の分岐流路22に向けて押し付ける液体の流れが発生し得る。換言すれば、例えば、第2導入孔32を介して主流路21に第2液体L2が供給されながら、第1導入孔31を介して複数種の粒子Pa1を含む第1液体L1が主流路21に供給されることで、主流路21において複数種の粒子Pa1を複数の分岐流路22に向けて押し付ける液体の流れが発生し得る。さらに換言すれば、例えば、第2導入孔32から第2導入流路24を介して第1上流部分21uに第2液体L2が導入されつつ、第1導入孔31から第1導入流路23を介して第1上流部分21uに第1液体L1が導入されると、主流路21において、第1液体L1に含まれている複数種の粒子Pa1としての複数の第1粒子Pa11および複数の第2粒子Pa12が複数の分岐流路22に向けて押し付けられながら第1下流部分21dに向けて流され得る。これにより、例えば、複数種の粒子Pa1としての複数の第1粒子Pa11および複数の第2粒子Pa12のうちの複数の分岐流路22それぞれの幅よりも小さな径の複数の第2粒子Pa12が複数の分岐流路22に流入し易くなる。その結果、例えば、第1液体L1における複数種の粒子Pa1としての複数の第1粒子Pa11および複数の第2粒子Pa12のうち、複数の分岐流路22のそれぞれの幅よりも大きな径の複数の第1粒子Pa11と、複数の分岐流路22のそれぞれの幅よりも小さな径の複数の第2粒子Pa12との分離が容易となる。
【0067】
さらに、一実施形態では、上述されたように、第1排出流路25は、主流路21の第1下流部分21dに接続している部分が第1下流部分21dのうちの第2方向D2としての+X方向の側面において開口している。このため、例えば、主流路21における導入流れの作用によって、複数の分岐流路22のそれぞれの幅よりも大きな径の複数の第1粒子Pa11が、第1排出流路25に流入し易くなる。これにより、例えば、複数の第1粒子Pa11が、第1排出流路25を経て第1排出孔33から流路デバイス1の外部へ容易に排出され得る。その結果、例えば、第1液体L1における複数種の粒子Pa1のうち、複数の分岐流路22のそれぞれの幅よりも大きな径の種の粒子である複数の第1粒子Pa11と、複数の分岐流路22のそれぞれの幅よりも小さな径の複数の第2粒子Pa12との分離が容易となる。
【0068】
図5では、主流路21における導入流れの幅が、主流路21から複数の分岐流路22へ分岐する領域の付近において幅(第2幅とも称される)Wf1として示されている。ここでは、主流路21における導入流れの幅は、第2方向D2としての+X方向に沿った導入流れの長さである。第2幅Wf1は、例えば、主流路21および複数の分岐流路22のそれぞれの断面積および長さの調整と第1液体L1および第2液体L2の流量の調整とによって設定され得る。
【0069】
図5では、第2幅Wf1は、導入流れの領域Ar1に複数の第1粒子Pa11のそれぞれの重心位置が含まれず、複数の第2粒子Pa12のそれぞれの重心位置が含まれる幅で例示されている。ここでは、第2幅Wf1が、導入流れの領域Ar1に第2粒子Pa12の重心位置が含まれる幅であることで、第2粒子Pa12には導入流れによって複数の分岐流路22の何れかに第2粒子Pa12を流入させる力が効果的に作用する。従って、第2粒子Pa12の径よりも幅が大きい分岐流路22に第2粒子Pa12が流入され得る。これに対して、第2幅Wf1が、導入流れの領域Ar1に第1粒子Pa11の重心位置が含まれない幅であることで、第1粒子Pa11には導入流れによって複数の分岐流路22に第1粒子Pa11を流入させる力が十分には作用しない。従って、例えば、分岐流路22の幅が第1粒子Pa11の径よりもいくらか大きい場合であったとしても、第1粒子Pa11は、複数の分岐流路22には流入せずに、主流路21を流れていくことができる。
【0070】
第1液体L1の一例として、血液あるいは血液が生理食塩水で希釈された液体が用いられる。血液は、複数種の粒子Pa1を含む液体である。この場合には、第1粒子Pa11が白血球であり、第2粒子Pa12が赤血球である例が採用される。複数の第1粒子Pa11に対する特定の処理の一例としては、白血球の個数の計測および濃度などが採用される。第3排出流路27を流れて第3排出孔35を経て流路デバイス1から排出される残余の組成物の一例としては、血漿などが採用される。この場合には、第2液体L2の一例として、生理食塩水が用いられる。より具体的には、第2液体L2の一例として、リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate-buffered saline:PBS)が採用される。流路デバイス1の使用目的などに応じた機能を第2液体L2に持たせるために、第2液体L2には、PBSに他の成分が加えられた液体が適用されてもよい。他の成分には、例えば、第2成分としてのエチレンジアミン四酢酸(ethylenediaminetetraacetic acid:EDTA)が適用されてもよいし、第3成分としてのウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin:BSA)が適用されてもよい。ここでは、流路部2に含まれる主流路21および複数の分岐流路22は、血液中の粒子を分離するための流路として機能する。換言すれば、流路部2は、血液中の粒子を分離するための主流路21および複数の分岐流路22を含む。
【0071】
赤血球の重心位置は、例えば、赤血球の外縁部から2マイクロメートル(μm)から2.5μm程度の位置である。赤血球の最大径は、例えば、6μmから8μm程度である。白血球の重心位置は、例えば、白血球の外縁部から5μmから10μm程度の位置である。白血球の最大径は、例えば、10μmから20μm程度である。血液中の赤血球と白血球とが分離される観点から、導入流れの幅(第2幅)Wf1には、2μmから10μm程度の値が採用される。
【0072】
主流路21のXZ平面に沿った仮想的な断面の断面積は、例えば、400平方マイクロメートル(μm2)から4000μm2程度に設定される。主流路21の第2方向D2としての+X方向に沿った長さ(幅とも称される)は、例えば、20μmから100μm程度に設定される。主流路21の+Z方向に沿った長さ(高さとも称される)は、例えば、20μmから100μm程度に設定される。主流路21の第1方向D1としての-Y方向に沿った長さは、例えば、0.5mmから20mm程度に設定される。
【0073】
複数の分岐流路22のそれぞれのYZ平面に沿った仮想的な断面の断面積は、例えば、200μm2から800μm2程度に設定される。複数の分岐流路22のそれぞれの第1方向D1としての-Y方向に沿った長さ(幅とも称される)は、例えば、10μmから30μm程度に設定される。複数の分岐流路22のそれぞれの+Z方向に沿った長さ(高さとも称される)は、例えば、20μmから100μm程度に設定される。複数の分岐流路22のそれぞれの第2方向D2としての+X方向に沿った長さは、例えば、3mmから25mm程度に設定される。
【0074】
主流路21における単位時間当たりの液体の流量は、例えば、150マイクロリットル毎分(μL/min)から480μL/min程度に設定される。第1導入孔31から第1導入流路23を介して主流路21に導入される単位時間当たりの第1液体L1の流量は、例えば、90μL/minから270μL/min程度に設定される。第2導入孔32から第2導入流路24を介して主流路21に導入される単位時間当たりの第2液体L2の流量は、例えば、60μL/minから210μL/min程度に設定される。
【0075】
ところで、上述されたように、例えば、主流路21は、第1方向D1としての-Y方向に沿って延びている。第1導入流路23のうちの主流路21の第1上流部分21uに接続している第1接続部分Cp1は、第1方向D1としての-Y方向に沿って延びている。第2導入流路24のうちの主流路21の第1上流部分21uに接続している第2接続部分Cp2は、第1方向D1としての-Y方向に対して鋭角を成している第3方向D3に沿って延びている。
【0076】
この構成が採用されることで、例えば、流路デバイス1が用いられて粒子分離処理が行われる際には、例えば、
図5で示されるように、主流路21の第1上流部分21uにおいて、第1導入流路23から第1上流部分21uへの第1液体L1の第1流入方向に対して、第2導入流路24から第1上流部分21uへの第2液体L2の第2流入方向が鋭角を成す形態で、第1液体L1の流れに対して第2液体L2の流れが合流し得る。第1流入方向は、主流路21の第1上流部分21uにおいて、第1液体L1が第1導入流路23から第1上流部分21uへ第1方向D1としての-Y方向に沿って流入する方向である。第2流入方向は、主流路21の第1上流部分21uにおいて、第2液体L2が第2導入流路24から第1上流部分21uへ第3方向D3に沿って流入する方向である。これにより、例えば、主流路21に導入される第1液体L1の流速が上昇されても、主流路21において、導入流れにおける乱れの発生が低減され得る。その結果、第1液体L1における複数の第2粒子Pa12のうちの第1下流部分21dまで流れる第2粒子Pa12(例えば、1つ以上の第2粒子Pa12)の割合の上昇が低減され得る。よって、例えば、第1下流部分21dから第1排出孔33などを介して回収される回収液に混入する第2粒子Pa12の数の増加が低減され得る。したがって、回収液に含まれる複数の粒子において第1粒子Pa11(例えば、複数の第1粒子Pa11)が占める割合の低下が低減され得る。ここで、例えば、第1液体L1の一例として血液あるいは血液が生理食塩水で希釈された液体が用いられ、第2液体L2の一例として生理食塩水が用いられる場合には、回収液(白血球回収液とも称される)における全ての血球において白血球(例えば、複数の白血球)が占める割合(白血球純度とも称される)の低下が低減され得る。全ての血球は、白血球と赤血球とを含む。
【0077】
また、上述されたように、例えば、流路部2は、第2接続部分Cp2の第3側面Sw3と、主流路21の第2側面Sw2と、を接続している接続面Cs1を有する。換言すれば、流路部2は、主流路21の第1上流部分21uと第2導入流路24の第2接続部分Cp2とが鋭角を成す角部の先端が欠けた形態を有する。さらに換言すれば、流路部2は、主流路21の第1上流部分21uと第2導入流路24の第2接続部分Cp2との間に、流路が拡張された形態の部分(拡張部分)Ac1を有する。第1距離Le1が、主流路21の幅(第1幅)W1の1倍以下に設定されている。第1距離Le1は、上述されたように、主流路21の第2側面Sw2と接続面Cs1とが接続している第3部分P1と、第2接続部分Cp2の第3側面Sw3と接続面Cs1とが接続している第4部分P2と、の距離である。
【0078】
この構成が採用されることで、流路デバイス1が用いられて粒子分離処理が行われる際には、例えば、
図5で示されるように、拡張部分Ac1の存在によって、第1液体L1の流れの一部が、主流路21の第1上流部分21u側から第2導入流路24側に向けて一旦拡がった後に、第2液体L2の流れによって第1側面Sw1に向かう方向に押し付けられ得る。この場合には、例えば、第1液体L1のうちの一部である第2側面Sw2に沿って流れてきた後に接続面Cs1に沿って流れてきた第1液体L1が、第2液体L2のうちの一部である第3側面Sw3に沿って流れてきた第2液体L2によって、第1側面Sw1に向けて押され得る。この形態で液体の合流が生じる箇所においては、例えば、第2液体L2の流れの一部としての第3側面Sw3に沿って流れてきた第2液体L2が接続面Cs1に沿って流れてきた第1液体L1を第1側面Sw1に向けて押す方向が、接続面Cs1に沿って流れてきた第1液体L1が流れる方向に対して垂直に近づき得る。これにより、例えば、主流路21において、導入流れにおける乱れの発生が低減されつつ、第2液体L2が第1液体L1を複数の分岐流路22へ向けて押し付ける力が増大し得る。その結果、主流路21において、第1液体L1における複数の第2粒子Pa12のうちの第1下流部分21dまで流れる第2粒子Pa12(例えば、1つ以上の第2粒子Pa12)の割合が低減され得る。よって、例えば、第1下流部分21dから第1排出孔33などを介して回収される回収液に混入する第2粒子Pa12の数が低減され得る。したがって、回収液に含まれる複数の粒子において特定の種の粒子としての第1粒子Pa11(例えば、複数の第1粒子Pa11)が占める割合が向上し得る。ここで、例えば、第1液体L1の一例として血液あるいは血液が生理食塩水で希釈された液体が用いられ、第2液体L2の一例として生理食塩水が用いられると、回収液としての白血球回収液における白血球純度が向上し得る。白血球純度は、上述されたように、全ての血球において白血球(例えば、複数の白血球)が占める割合である。
【0079】
<3.接続面のサイズと白血球純度との関係>
ここで、上述された一実施形態に係る流路デバイス1が用いられて粒子分離処理が行われる場合に関して、接続面Cs1のサイズと、第1下流部分21dから第1排出孔33などを介して回収される白血球回収液における白血球純度との関係について、実施された実験の種々の例が説明される。
【0080】
以下では、実施された実験の全ての例に共通する条件(基本的な条件とも称される)が説明された後に、実施された実験の各例の条件および結果が説明される。
【0081】
<3-1.実験の基本的な条件>
<3-1-1.流路デバイスに関する基本的な条件>
流路デバイス1の素材として、PDMSが用いられた。第1板状部分と第2板状部分とが、第1板状部分の片面における流路部2のパターンに対応する微細な凹凸を第2板状部分の片面が覆う形態で接合されることで流路デバイス1が作製された。第1板状部分として、流路部2のパターンに対応する微細な凹凸を片面に有する板状の部分が用いられた。微細な凹凸を片面に有する第1板状部分が、樹脂成型で作製された。第2板状部分として、第1導入孔31、第2導入孔32、第1排出孔33、第2排出孔34および第3排出孔35のそれぞれに対応する5つの貫通孔を有する板状の部分が用いられた。樹脂成型によって5つの貫通孔を有する第2板状部分が作製された。第1板状部分と第2板状部分との接合は、第1板状部分の片面および第2板状部分の片面に対する表面改質、および第1板状部分の片面と第2板状部分の片面との接触によって、接着剤が用いられることなく実施された。
【0082】
流路部2を構成している複数の流路のそれぞれの断面が長方形状とされた。流路の断面は、流路が延びている方向に対して直交する仮想的な平面に沿って流路が仮想的に切断されることで形成された面である。主流路21については、主流路21の幅が40μmに設定され、主流路21の高さが40μmに設定された。複数の分岐流路22については、複数の分岐流路22のそれぞれの幅が18μmに設定され、複数の分岐流路22のそれぞれの高さが40μmに設定された。複数の分岐流路22の本数が90本に設定された。第1導入流路23については、第1導入流路23の幅が40μmに設定され、第1導入流路23の高さが40μmに設定された。第2導入流路24については、第2導入流路24の幅が40μmに設定され、第2導入流路24の高さが40μmに設定された。接続面Cs1が矩形状の平坦な面に設定された。流路部2が平面視された場合に、主流路21の第1上流部分21uと第2導入流路24の第2接続部分Cp2との間に位置している拡張部分Ac1の形状が、接続面Cs1に沿った辺を底辺とする二等辺三角形に沿った二等辺三角形状に設定された。換言すれば、第3側面Sw3と接続面Cs1とが成している角度αと、第2側面Sw2と接続面Cs1とが成している角度βとが、同一に設定された。
【0083】
<3-1-2.第1液体および第2液体に関する基本的な条件>
第1液体L1として、血液が生理食塩水としてのPBSで1.5倍に希釈されることで得られた液体が用いられた。流路デバイス1の外部から第1導入孔31に接続された管および第1導入孔31を介してシリンジポンプによって第1導入流路23に対して第1液体L1が供給された。第1導入孔31から第1導入流路23を介して主流路21に導入される単位時間当たりの第1液体L1の流量は、シリンジポンプの動作が制御されることで調整された。
【0084】
第2液体L2として、生理食塩水としてのPBSが用いられた。流路デバイス1の外部から第2導入孔32に接続された管および第2導入孔32を介して、シリンジポンプによって第2導入流路24に対して第2液体L2が供給された。第2導入孔32から第2導入流路24を介して主流路21に導入される単位時間当たりの第2液体L2の流量は、シリンジポンプの動作が制御されることで調整された。
【0085】
流路デバイス1が用いられて粒子分離処理が行われる直前に、事前準備として、第2導入孔32から流路部2内に第2液体L2が導入されて、流路部2内に第2液体L2が充填された。
【0086】
第1排出孔33から流路デバイス1の外部へ排出された白血球回収液は、樹脂製の流路を有する部材を介して、エッペンチューブで回収された。
【0087】
<3-1-3.白血球回収液における白血球純度の求め方>
白血球回収液における白血球純度は、測定器が用いられてそれぞれ測定された白血球回収液に係る白血球の濃度(白血球濃度とも称される)および白血球回収液に係る全ての血球の濃度(全血球濃度とも称される)から算出された。より具体的には、白血球濃度が全血球濃度で除されて、100が乗じられることで、白血球回収液における白血球純度(単位はパーセンテージ(%))が算出された。白血球純度は、上述されたように、全ての血球において白血球(例えば、複数の白血球)が占める割合である。
【0088】
測定器として、ロゴス・バイオシステムズ(Logos Biosystems)社製の自動セルカウンターであるLUNA FX-7(商標)が用いられた。
【0089】
測定器が用いられた白血球濃度および全血球濃度のそれぞれの測定は、試料作製工程と、試料セッティング工程と、血球濃度測定工程と、が順に行われることで実行された。試料作製工程は、下記のサンプル(試料とも称される)が作製される工程である。試料セッティング工程は、下記の試料が測定器にセットされる工程である。血球濃度測定工程は、下記の血球の濃度が測定される工程である。
【0090】
<<A.試料作製工程>>
エッペンチューブで回収された白血球回収液が、PBSで4倍に希釈されることで希釈後の白血球回収液(希釈後回収液とも称される)が得られた。ここでは、手動で、白血球回収液およびPBSのそれぞれについてのピペットが用いられた計量と、エッペンチューブ内における白血球回収液とPBSとの混合と、が行われた。より具体的には、15μLの白血球回収液と5μLのPBSとが混合されることで、20μLの希釈後回収液が得られた。このPBSが用いられた白血球回収液の希釈によって、希釈後回収液における血球の濃度が、測定器が安定して高精度で計測を行うことが可能な血球の濃度の範囲内に設定された。測定器が安定して高精度で計測を行うことが可能な血球の濃度の範囲は、1×105個毎ミリリットル(cells/mL)から1×107cells/mLであった。
【0091】
次に、18μLの希釈後回収液と2μLの試薬とが混合されることで試料が作製された。試薬として、アクリジンオレンジ(Acridine Orange:AO)とヨウ化プロピジウム(Propidium Iodide:PI)とが混合された試薬が用いられた。より具体的には、試薬として、ロゴス・バイオシステムズ(Logos Biosystems)社製のアクリジンオレンジ/ヨウ化プロピジウム染色剤(Acridine Orange/Propidium Iodide Stain:AO/PI)が用いられた。ここでは、手動で、希釈後回収液および試薬のそれぞれのピペットが用いられた計量と、エッペンチューブ内における希釈後回収液と試薬との混合と、が行われた。エッペンチューブ内における希釈後回収液と試薬との混合は、室温でエッペンチューブが振られることで実施された。
【0092】
ここで、アクリジンオレンジ(AO)は、生細胞および死細胞の両方の細胞膜を透過して、すべての有核細胞を染色して、緑色の蛍光(緑色蛍光とも称される)を発する色素(核染色用色素とも称される)である。ヨウ化プロピジウム(PI)は、細胞膜が損傷した有核細胞に浸透し、死細胞を染色して赤色の蛍光(レッド色蛍光とも称される)を発する色素(死細胞染色色素とも称される)である。複数の細胞がアクリジンオレンジ(AO)およびヨウ化プロピジウム(PI)の両方で染色されると、複数の細胞のうちの全ての核を有する生細胞は緑色蛍光を発し、複数の細胞のうちの全ての核を有する死細胞はレッド色蛍光を発する。換言すれば、複数の白血球がアクリジンオレンジ(AO)およびヨウ化プロピジウム(PI)の両方で染色されると、複数の白血球のうちの生きている全ての白血球は緑色蛍光を発し、複数の白血球のうちの死んでいる全ての白血球はレッド色蛍光を発する。これに対して、ヒトの赤血球、血小板および破片などの核を有しない細胞(無核細胞とも称される)は、アクリジンオレンジ(AO)およびヨウ化プロピジウム(PI)の作用によって蛍光を発しない。
【0093】
<<B.試料セッティング工程>>
試料作製工程で得られた10μLの試料が、ピペットが用いられてセルカウントスライドに注入された。
【0094】
その後、測定器としてのロゴス・バイオシステムズ社製の自動セルカウンターであるLUNA FX-7(商標)の側方に設けられたスライド挿入口にセルカウントスライドが挿入されることで、試料が測定器にセットされた。
【0095】
<<C.血球濃度測定工程>>
上記の試料セッティング工程で試料がセットされた測定器が操作されることで、室温の条件で、測定器内において、試料について、白血球濃度の測定と、全血球濃度の測定と、が順に実行された。
【0096】
白血球濃度の測定については、測定器において、セルカウントスライド内の試料に所定の波長の励起光が照射されて白血球が蛍光を発している際に、8箇所から12箇所の領域を捉えた複数の画像が取得された。そして、測定器において、この複数の画像のそれぞれについて画像処理によって白血球の数が計測されて得られた白血球の濃度の平均値が、白血球濃度の測定値(単位は、cells/mL)として出力された。白血球濃度は、生きている白血球および死んでいる白血球の両方を含む白血球の濃度であった。ここでは、測定器内の暗室で、セルカウントスライド内の試料に450ナノメートル(nm)から490nmの波長の励起光が照射されて白血球が505nmから555nmの波長の緑色蛍光を発している際に、8箇所から12箇所の領域を捉えた複数の画像が取得された。そして、測定器において、この複数の画像のそれぞれについて画像処理によって白血球の数が計測された。また、測定器内の暗室で、セルカウントスライド内の試料に510nmから550nmの波長の励起光が照射されて死んでいる白血球が590nmから650nmの波長のレッド色蛍光を発している際に、8箇所から12箇所の領域を捉えた複数の画像が取得された。そして、測定器において、この複数の画像のそれぞれについて画像処理によって死んでいる白血球の数が計測された。
【0097】
全血球濃度の測定については、測定器において、セルカウントスライド内の試料について、明視野の条件下で8箇所から12箇所の領域を捉えた複数の画像が取得された。そして、測定器において、この複数の画像のそれぞれについて画像処理によって血球の数が計測されて得られた血球の濃度の平均値が、全血球濃度の測定値(単位は、cells/mL)として出力された。
【0098】
<3-2.実験の第1例>
図4で示されたように、実験の第1例では、第1方向D1と第3方向D3とが成している角度θが30度に設定された。換言すれば、第1導入流路23の第1接続部分Cp1および主流路21のそれぞれが延びている方向に沿った第1方向D1と、第2導入流路24の第2接続部分Cp2が延びている方向に沿った第3方向D3と、が成している角度θが、30度に設定された。
【0099】
実験の第1例では、流路デバイス1が用いられて粒子分離処理が行われる際には、第1導入孔31から第1導入流路23を介して主流路21に導入される単位時間当たりの第1液体L1の流量が、150μL/minに設定され、第2導入孔32から第2導入流路24を介して主流路21に導入される単位時間当たりの第2液体L2の流量が、120μL/minに設定された。
【0100】
実験の第1例では、接続面Cs1のサイズについては、第1距離Le1が、主流路21の幅(第1幅)W1の0倍、0.5倍、1倍、2倍、3倍および5倍の6つの距離に設定された。第1距離Le1は、上述されたように、主流路21の第2側面Sw2と接続面Cs1とが接続している第3部分P1と、第2接続部分Cp2の第3側面Sw3と接続面Cs1とが接続している第4部分P2と、の距離である。本開示では、第1距離Le1が第1幅W1の0倍である構成は、接続面Cs1が存在せず、主流路21の第2側面Sw2と第2接続部分Cp2の第3側面Sw3とが直接接続している構成を意味している。換言すれば、流路デバイス1が基礎とされて、接続面Cs1が設けられることなく、主流路21の第2側面Sw2と第2接続部分Cp2の第3側面Sw3とが直接接続された流路デバイス(参考例に係る流路デバイスとも称される)が、第1距離Le1が第1幅W1の0倍である構成を有する流路デバイスとして採用された。
【0101】
そして、実験の第1例では、6つの条件の流路デバイスのそれぞれが用いられて、粒子分離処理が行われるとともに白血球回収液における白血球純度が求められた。ここでは、6つの条件の流路デバイスとして、接続面Cs1が存在しない流路デバイス、第1距離Le1が第1幅W1の0.5倍に設定された流路デバイス、第1距離Le1が第1幅W1の1倍に設定された流路デバイス、第1距離Le1が第1幅W1の2倍に設定された流路デバイス、第1距離Le1が第1幅W1の3倍に設定された流路デバイス、および第1距離Le1が第1幅W1の5倍に設定された流路デバイスが用いられた。
【0102】
図6は、実験の第1例の結果について、接続面Cs1のサイズと白血球回収液における白血球純度との関係を示すグラフである。
図6では、接続面Cs1のサイズと白血球回収液における白血球純度との関係が複数の黒塗りの丸印のプロットで示されている。
図6では、横軸は、接続面Cs1のサイズとして、主流路21の幅(第1幅)W1が基準とされた第1距離Le1の第1幅W1に対する倍率を示している。換言すれば、横軸は、主流路21の幅(第1幅)W1が基準の1とされた場合における第1距離Le1の相対的な値を示している。縦軸は、接続面Cs1が存在しない流路デバイスについて求められた白血球回収液における白血球純度が基準の100とされた場合における、白血球回収液における白血球純度の相対的な値(白血球純度の相対値とも称される)を示している。白血球純度の相対値は、白血球回収液における白血球純度が、接続面Cs1が存在しない流路デバイスについて求められた白血球回収液における白血球純度(白血球純度の基準値とも称される)で除されて、100が乗じられた値である。
【0103】
図6で示されるように、実験の第1例では、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が、第1幅W1の1倍および第1幅W1の0.5倍のそれぞれである場合に、接続面Cs1が存在しない場合よりも白血球回収液における白血球純度が向上した。
【0104】
このため、実験の第1例によれば、接続面Cs1が存在しており、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が、主流路21の幅(第1幅)W1の1倍以下であれば、接続面Cs1が存在しない場合よりも白血球回収液における白血球純度が向上し得ることが確認された。
【0105】
また、
図6で示されるように、実験の第1例では、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が第1幅W1の1倍である場合よりも、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が第1幅W1の0.5倍である場合の方が、白血球回収液における白血球純度が向上した。
【0106】
<3-3.実験の第2例>
図4で示されたように、実験の第2例では、上記の実験の第1例と同じく、第1方向D1と第3方向D3とが成している角度θが30度に設定された。
【0107】
実験の第2例では、流路デバイス1が用いられて粒子分離処理が行われる際には、第1導入孔31から第1導入流路23を介して主流路21に導入される単位時間当たりの第1液体L1の流量が、150μL/minに設定され、第2導入孔32から第2導入流路24を介して主流路21に導入される単位時間当たりの第2液体L2の流量が、90μL/minに設定された。すなわち、実験の第2例では、第2導入孔32から第2導入流路24を介して主流路21に導入される単位時間当たりの第2液体L2の流量が、上記の実験の第1例における120μL/minから低減された90μL/minに設定された。
【0108】
実験の第2例では、接続面Cs1のサイズについては、第1距離Le1が、主流路21の幅(第1幅)W1の0倍、0.5倍、1倍および2倍の4つの距離に設定された。第1距離Le1は、上述されたように、主流路21の第2側面Sw2と接続面Cs1とが接続している第3部分P1と、第2接続部分Cp2の第3側面Sw3と接続面Cs1とが接続している第4部分P2と、の距離である。
【0109】
そして、実験の第2例では、4つの条件の流路デバイスのそれぞれが用いられて、粒子分離処理が行われるとともに白血球回収液における白血球純度が求められた。ここでは、4つの条件の流路デバイスとして、接続面Cs1が存在しない流路デバイス、第1距離Le1が第1幅W1の0.5倍に設定された流路デバイス、第1距離Le1が第1幅W1の1倍に設定された流路デバイス、および第1距離Le1が第1幅W1の2倍に設定された流路デバイスが用いられた。
【0110】
図7は、実験の第2例の結果について、接続面Cs1のサイズと白血球回収液における白血球純度との関係を示すグラフである。
図7では、
図6と同じく、接続面Cs1のサイズと白血球回収液における白血球純度との関係が複数の黒塗りの丸印のプロットで示されている。
図7では、
図6と同じく、横軸は、接続面Cs1のサイズとして、主流路21の幅(第1幅)W1が基準とされた第1距離Le1の第1幅W1に対する倍率を示している。換言すれば、横軸は、主流路21の第1幅W1が基準の1とされた場合における第1距離Le1の相対的な値を示している。縦軸は、接続面Cs1が存在しない流路デバイスについて求められた白血球回収液における白血球純度が基準の100とされた場合における、白血球回収液における白血球純度の相対的な値(白血球純度の相対値)を示している。
【0111】
図7で示されるように、実験の第2例では、上記の実験の第1例と同じく、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が、第1幅W1の1倍および第1幅W1の0.5倍のそれぞれである場合に、接続面Cs1が存在しない場合よりも白血球回収液における白血球純度が向上した。
【0112】
このため、実験の第2例によれば、上記の実験の第1例と同じく、接続面Cs1が存在しており、第1距離Le1が、主流路21の幅(第1幅)W1の1倍以下であれば、接続面Cs1が存在しない場合よりも白血球回収液における白血球純度が向上し得ることが確認された。
【0113】
また、
図7で示されるように、実験の第2例では、上記の実験の第1例と同じく、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が第1幅W1の1倍である場合よりも、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が第1幅W1の0.5倍である場合の方が、白血球回収液における白血球純度が向上した。
【0114】
<3-4.実験の第3例>
図4で示されたように、実験の第3例では、上記の実験の第1例および第2例と同じく、第1方向D1と第3方向D3とが成している角度θが30度に設定された。
【0115】
実験の第3例では、流路デバイス1が用いられて粒子分離処理が行われる際には、第1導入孔31から第1導入流路23を介して主流路21に導入される単位時間当たりの第1液体L1の流量が、180μL/minに設定され、第2導入孔32から第2導入流路24を介して主流路21に導入される単位時間当たりの第2液体L2の流量が、120μL/minに設定された。すなわち、実験の第3例では、第1導入孔31から第1導入流路23を介して主流路21に導入される単位時間当たりの第1液体L1の流量が、上記の実験の第1例における150μL/minから増加された180μL/minに設定された。
【0116】
実験の第3例では、接続面Cs1のサイズについては、上記の実験の第2例と同じく、第1距離Le1が、主流路21の幅(第1幅)W1の0倍、0.5倍、1倍および2倍の4つの距離に設定された。第1距離Le1は、上述されたように、主流路21の第2側面Sw2と接続面Cs1とが接続している第3部分P1と、第2接続部分Cp2の第3側面Sw3と接続面Cs1とが接続している第4部分P2と、の距離である。
【0117】
そして、実験の第2例では、4つの条件の流路デバイスのそれぞれが用いられて、粒子分離処理が行われるとともに白血球回収液における白血球純度が求められた。ここでは、4つの条件の流路デバイスとして、接続面Cs1が存在しない流路デバイス、第1距離Le1が第1幅W1の0.5倍に設定された流路デバイス、第1距離Le1が第1幅W1の1倍に設定された流路デバイス、および第1距離Le1が第1幅W1の2倍に設定された流路デバイスが用いられた。
【0118】
図8は、実験の第3例の結果について、接続面Cs1のサイズと白血球回収液における白血球純度との関係を示すグラフである。
図8では、
図6および
図7と同じく、接続面Cs1のサイズと白血球回収液における白血球純度との関係が複数の黒塗りの丸印のプロットで示されている。
図8では、
図6および
図7と同じく、横軸は、接続面Cs1のサイズとして、主流路21の幅(第1幅)W1が基準とされた第1距離Le1の第1幅W1に対する倍率を示している。換言すれば、横軸は、主流路21の幅(第1幅)W1が基準の1とされた場合における第1距離Le1の相対的な値を示している。縦軸は、接続面Cs1が存在しない流路デバイスについて求められた白血球回収液における白血球純度が基準の100とされた場合における、白血球回収液における白血球純度の相対的な値(白血球純度の相対値)を示している。
【0119】
図8で示されるように、実験の第3例では、上記の実験の第1例および第2例と同じく、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が、第1幅W1の1倍および第1幅W1の0.5倍のそれぞれである場合に、接続面Cs1が存在しない場合よりも白血球回収液における白血球純度が向上した。
【0120】
このため、実験の第3例によれば、上記の実験の第1例および第2例と同じく、接続面Cs1が存在しており、第1距離Le1が、主流路21の幅(第1幅)W1の1倍以下であれば、接続面Cs1が存在しない場合よりも白血球回収液における白血球純度が向上し得ることが確認された。
【0121】
また、
図8で示されるように、実験の第3例では、上記の実験の第1例および第2例と同じく、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が第1幅W1の1倍である場合よりも、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が第1幅W1の0.5倍である場合の方が、白血球回収液における白血球純度が向上した。
【0122】
<3-5.実験の第1例から第3例の結果について>
図6から
図8で示されたように、上記の実験の第1例から第3例の何れにおいても、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が、第1幅W1の1倍および第1幅W1の0.5倍のそれぞれである場合に、接続面Cs1が存在しない場合よりも白血球回収液における白血球純度が向上した。換言すれば、流路デバイス1が用いられて粒子分離処理が行われる際に、第1導入孔31から第1導入流路23を介して主流路21に導入される単位時間当たりの第1液体L1の流量および第2導入孔32から第2導入流路24を介して主流路21に導入される単位時間当たりの第2液体L2の流量のそれぞれが若干増減されても、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が、第1幅W1の1倍および第1幅W1の0.5倍のそれぞれである場合に、接続面Cs1が存在しない場合よりも白血球回収液における白血球純度が向上した。
【0123】
よって、接続面Cs1が存在しており、第1距離Le1が、主流路21の幅(第1幅)W1の1倍以下であれば、接続面Cs1が存在しない場合よりも白血球回収液における白血球純度が向上し得ることが確認された。換言すれば、接続面Cs1が存在しており、第1距離Le1が、主流路21の幅(第1幅)W1の1倍以下であれば、回収液に含まれる複数の粒子において特定の種の粒子(例えば、複数の特定の種の粒子)が占める割合が向上し得ることが確認された。第1距離Le1は、上述されたように、主流路21の第2側面Sw2と接続面Cs1とが接続している第3部分P1と、第2接続部分Cp2の第3側面Sw3と接続面Cs1とが接続している第4部分P2と、の距離である。
【0124】
<3-6.実験の第4例>
図4で示されたように、実験の第4例では、上記の実験の第1例と同じく、第1方向D1と第3方向D3とが成している角度θが30度に設定された。
【0125】
実験の第4例では、上記の実験の第1例と同じく、流路デバイス1が用いられて粒子分離処理が行われる際には、第1導入孔31から第1導入流路23を介して主流路21に導入される単位時間当たりの第1液体L1の流量が、150μL/minに設定され、第2導入孔32から第2導入流路24を介して主流路21に導入される単位時間当たりの第2液体L2の流量が、120μL/minに設定された。
【0126】
実験の第4例では、接続面Cs1のサイズについては、第1距離Le1が、主流路21の幅(第1幅)W1の0倍、0.1倍、0.2倍、0.3倍、0.4倍および0.5倍の6つの距離に設定された。第1距離Le1は、上述されたように、主流路21の第2側面Sw2と接続面Cs1とが接続している第3部分P1と、第2接続部分Cp2の第3側面Sw3と接続面Cs1とが接続している第4部分P2と、の距離である。
【0127】
そして、実験の第4例では、6つの条件の流路デバイスのそれぞれが用いられて、粒子分離処理が行われるとともに白血球回収液における白血球純度が求められた。ここでは、6つの条件の流路デバイスとして、接続面Cs1が存在しない流路デバイス、第1距離Le1が第1幅W1の0.1倍に設定された流路デバイス、第1距離Le1が第1幅W1の0.2倍に設定された流路デバイス、第1距離Le1が第1幅W1の0.3倍に設定された流路デバイス、第1距離Le1が第1幅W1の0.4倍に設定された流路デバイス、および第1距離Le1が第1幅W1の0.5倍に設定された流路デバイスが用いられた。
【0128】
図9は、実験の第4例の結果について、接続面Cs1のサイズと白血球回収液における白血球純度との関係を示すグラフである。
図9では、
図6から
図8と同じく、接続面Cs1のサイズと白血球回収液における白血球純度との関係が複数の黒塗りの丸印のプロットで示されている。
図9では、
図6から
図8と同じく、横軸は、接続面Cs1のサイズとして、主流路21の幅(第1幅)W1が基準とされた第1距離Le1の第1幅W1に対する倍率を示している。換言すれば、横軸は、主流路21の幅(第1幅)W1が基準の1とされた場合における第1距離Le1の相対的な値を示している。縦軸は、接続面Cs1が存在しない流路デバイスについて求められた白血球回収液における白血球純度が基準の100とされた場合における、白血球回収液における白血球純度の相対的な値(白血球純度の相対値)を示している。
【0129】
図9で示されるように、実験の第4例では、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が、第1幅W1に対して0.1倍、0.2倍、0.3倍、0.4倍および0.5倍のそれぞれの距離である場合に、接続面Cs1が存在しない場合よりも白血球回収液における白血球純度が安定して向上した。
【0130】
このため、実験の第4例によれば、接続面Cs1が存在しており、第1距離Le1が、主流路21の幅(第1幅)W1の0.1倍以上であり且つ0.5倍以下であれば、接続面Cs1が存在しない場合よりも白血球回収液における白血球純度が安定して向上し得ることが確認された。
【0131】
また、
図9で示されるように、実験の第4例では、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が第1幅W1の0.1倍から0.5倍のうちの0.4倍である場合において、白血球回収液における白血球純度が最も高くなった。別の観点から言えば、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が第1幅W1の0.1倍から0.4倍に向けて増加するにつれて白血球回収液における白血球純度が向上する傾向があり、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が0.4倍から0.5倍に増加すると白血球回収液における白血球純度が低下する傾向があった。この実験の第4例では、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が第1幅W1の0.4倍である場合において、白血球回収液における白血球純度が最大値である約88%であった。
【0132】
<3-7.実験の第5例>
図10は、実験の第5例において用いられた流路デバイス1の流路部2の一部を模式的に示す平面図である。より具体的には、
図10は、実験の第5例において用いられた流路デバイス1の流路部2のうちの
図3の矩形の一点鎖線で囲まれた領域IVに対応する領域を模式的に示す平面図である。
図10では、
図3および
図4と同じく、流路部2の外縁が実線で描かれている。
【0133】
図10で示されるように、実験の第5例では、第1方向D1と第3方向D3とが成している角度θが15度に設定された。換言すれば、第1導入流路23の第1接続部分Cp1および主流路21のそれぞれが延びている方向に沿った第1方向D1と、第2導入流路24の第2接続部分Cp2が延びている方向に沿った第3方向D3と、が成している角度θが、15度に設定された。すなわち、実験の第5例では、角度θが、上記の実験の第4例における30度から低減された15度に設定された。
【0134】
実験の第5例では、上記の実験の第4例と同じく、流路デバイス1が用いられて粒子分離処理が行われる際には、第1導入孔31から第1導入流路23を介して主流路21に導入される単位時間当たりの第1液体L1の流量が、150μL/minに設定され、第2導入孔32から第2導入流路24を介して主流路21に導入される単位時間当たりの第2液体L2の流量が、120μL/minに設定された。
【0135】
実験の第5例では、接続面Cs1のサイズについては、上記の実験の第4例と同じく、第1距離Le1が、主流路21の幅(第1幅)W1の0倍、0.1倍、0.2倍、0.3倍、0.4倍および0.5倍の6つの距離に設定された。第1距離Le1は、上述されたように、主流路21の第2側面Sw2と接続面Cs1とが接続している第3部分P1と、第2接続部分Cp2の第3側面Sw3と接続面Cs1とが接続している第4部分P2と、の距離である。
【0136】
そして、実験の第5例では、上記の実験の第4例と同じく、6つの条件の流路デバイスのそれぞれが用いられて、粒子分離処理が行われるとともに白血球回収液における白血球純度が求められた。ここでは、6つの条件の流路デバイスとして、接続面Cs1が存在しない流路デバイス、第1距離Le1が第1幅W1の0.1倍に設定された流路デバイス、第1距離Le1が第1幅W1の0.2倍に設定された流路デバイス、第1距離Le1が第1幅W1の0.3倍に設定された流路デバイス、第1距離Le1が第1幅W1の0.4倍に設定された流路デバイス、および第1距離Le1が第1幅W1の0.5倍に設定された流路デバイスが用いられた。
【0137】
図11は、実験の第5例の結果について、接続面Cs1のサイズと白血球回収液における白血球純度との関係を示すグラフである。
図11では、
図9と同じく、接続面Cs1のサイズと白血球回収液における白血球純度との関係が複数の黒塗りの丸印のプロットで示されている。
図11では、
図9と同じく、横軸は、接続面Cs1のサイズとして、主流路21の幅(第1幅)W1が基準とされた第1距離Le1の第1幅W1に対する倍率を示している。換言すれば、横軸は、主流路21の幅(第1幅)W1が基準の1とされた場合における第1距離Le1の相対的な値を示している。縦軸は、接続面Cs1が存在しない流路デバイスについて求められた白血球回収液における白血球純度が基準の100とされた場合における、白血球回収液における白血球純度の相対的な値(白血球純度の相対値)を示している。
【0138】
図11で示されるように、実験の第5例では、上記の実験の第4例と同じく、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が、第1幅W1に対して0.1倍、0.2倍、0.3倍、0.4倍および0.5倍のそれぞれの距離である場合に、接続面Cs1が存在しない場合よりも白血球回収液における白血球純度が安定して向上した。
【0139】
このため、実験の第5例によれば、上記の実験の第4例と同じく、接続面Cs1が存在しており、第1距離Le1が、主流路21の幅(第1幅)W1の0.1倍以上であり且つ0.5倍以下であれば、接続面Cs1が存在しない場合よりも白血球回収液における白血球純度が安定して向上し得ることが確認された。
【0140】
また、
図11で示されるように、実験の第5例では、上記の実験の第4例と同じく、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が第1幅W1の0.1倍から0.5倍のうちの0.4倍である場合において、白血球回収液における白血球純度が最も高くなった。別の観点から言えば、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が第1幅W1の0.1倍から0.4倍に向けて増加するにつれて白血球回収液における白血球純度が向上する傾向があり、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が0.4倍から0.5倍に増加すると白血球純度が低下する傾向があった。この実験の第5例では、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が第1幅W1の0.4倍である場合において、白血球回収液における白血球純度が最大値である約69%であった。
【0141】
<3-8.実験の第6例>
図12は、実験の第6例において用いられた流路デバイス1の流路部2の一部を模式的に示す平面図である。より具体的には、
図12は、実験の第6例において用いられた流路デバイス1の流路部2のうちの
図3の矩形の一点鎖線で囲まれた領域IVに対応する領域を模式的に示す平面図である。
図12では、
図3、
図4および
図10と同じく、流路部2の外縁が実線で描かれている。
【0142】
図12で示されるように、実験の第6例では、第1方向D1と第3方向D3とが成している角度θが45度に設定された。換言すれば、第1導入流路23の第1接続部分Cp1および主流路21のそれぞれが延びている方向に沿った第1方向D1と、第2導入流路24の第2接続部分Cp2が延びている方向に沿った第3方向D3と、が成している角度θが、45度に設定された。すなわち、実験の第6例では、角度θが、上記の実験の第4例における30度から増加された45度に設定された。
【0143】
実験の第6例では、上記の実験の第4例および第5例と同じく、流路デバイス1が用いられて粒子分離処理が行われる際には、第1導入孔31から第1導入流路23を介して主流路21に導入される単位時間当たりの第1液体L1の流量が、150μL/minに設定され、第2導入孔32から第2導入流路24を介して主流路21に導入される単位時間当たりの第2液体L2の流量が、120μL/minに設定された。
【0144】
実験の第6例では、接続面Cs1のサイズについては、上記の実験の第4例および第5例と同じく、第1距離Le1が、主流路21の幅(第1幅)W1の0倍、0.1倍、0.2倍、0.3倍、0.4倍および0.5倍の6つの距離に設定された。第1距離Le1は、上述されたように、主流路21の第2側面Sw2と接続面Cs1とが接続している第3部分P1と、第2接続部分Cp2の第3側面Sw3と接続面Cs1とが接続している第4部分P2と、の距離である。
【0145】
そして、上記の実験の第6例では、上記の実験の第4例および第5例と同じく、6つの条件の流路デバイスのそれぞれが用いられて、粒子分離処理が行われるとともに白血球回収液における白血球純度が求められた。ここでは、6つの条件の流路デバイスとして、接続面Cs1が存在しない流路デバイス、第1距離Le1が第1幅W1の0.1倍に設定された流路デバイス、第1距離Le1が第1幅W1の0.2倍に設定された流路デバイス、第1距離Le1が第1幅W1の0.3倍に設定された流路デバイス、第1距離Le1が第1幅W1の0.4倍に設定された流路デバイス、および第1距離Le1が第1幅W1の0.5倍に設定された流路デバイスが用いられた。
【0146】
図13は、実験の第6例の結果について、接続面Cs1のサイズと白血球回収液における白血球純度との関係を示すグラフである。
図13では、
図9および
図11と同じく、接続面Cs1のサイズと白血球回収液における白血球純度との関係が複数の黒塗りの丸印のプロットで示されている。
図13では、
図9および
図11と同じく、横軸は、接続面Cs1のサイズとして、主流路21の幅(第1幅)W1が基準とされた第1距離Le1の第1幅W1に対する倍率を示している。換言すれば、横軸は、主流路21の幅(第1幅)W1が基準の1とされた場合における第1距離Le1の相対的な値を示している。縦軸は、接続面Cs1が存在しない流路デバイスについて求められた白血球回収液における白血球純度が基準の100とされた場合における、白血球回収液における白血球純度の相対的な値(白血球純度の相対値)を示している。
【0147】
図13で示されるように、実験の第6例では、上記の実験の第4例および第5例と同じく、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が、第1幅W1に対して0.1倍、0.2倍、0.3倍、0.4倍および0.5倍のそれぞれの距離である場合に、接続面Cs1が存在しない場合よりも白血球回収液における白血球純度が安定して向上した。
【0148】
このため、実験の第6例によれば、上記の実験の第4例および第5例と同じく、接続面Cs1が存在しており、第1距離Le1が、主流路21の幅(第1幅)W1の0.1倍以上であり且つ0.5倍以下であれば、接続面Cs1が存在しない場合よりも白血球回収液における白血球純度が安定して向上し得ることが確認された。
【0149】
また、
図13で示されるように、実験の第6例では、上記の実験の第4例および第5例と同じく、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が第1幅W1の0.1倍から0.5倍のうちの0.4倍である場合において、白血球回収液における白血球純度が最も高くなった。別の観点から言えば、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が第1幅W1の0.1倍から0.4倍に向けて増加するにつれて白血球回収液における白血球純度が向上する傾向があり、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が0.4倍から0.5倍に増加すると白血球回収液における白血球純度が低下する傾向があった。この実験の第6例では、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が第1幅W1の0.4倍である場合において、白血球回収液における白血球純度が最大値である約75%であった。
【0150】
<3-9.実験の第4例から第6例の結果について>
図9、
図11および
図13で示されたように、上記の実験の第4例から第6例の何れにおいても、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が、第1幅W1に対して0.1倍、0.2倍、0.3倍、0.4倍および0.5倍のそれぞれの距離である場合に、接続面Cs1が存在しない場合よりも白血球回収液における白血球純度が安定して向上した。換言すれば、第1方向D1と第3方向D3とが成している角度θが15度から45度の間で増減されても、接続面Cs1のサイズに係る第1距離Le1が、第1幅W1に対して0.1倍、0.2倍、0.3倍、0.4倍および0.5倍のそれぞれの距離である場合に、接続面Cs1が存在しない場合よりも白血球回収液における白血球純度が安定して向上した。
【0151】
よって、接続面Cs1が存在しており、第1距離Le1が、主流路21の幅(第1幅)W1の0.1倍以上であり且つ0.5倍以下であれば、接続面Cs1が存在しない場合よりも白血球回収液における白血球純度が安定して向上し得ることが確認された。換言すれば、接続面Cs1が存在しており、第1距離Le1が、主流路21の幅(第1幅)W1の0.1倍以上であり且つ0.5倍以下であれば、回収液に含まれる複数の粒子において特定の種の粒子(例えば、複数の特定の種の粒子)が占める割合が向上し得ることが確認された。第1距離Le1は、上述されたように、主流路21の第2側面Sw2と接続面Cs1とが接続している第3部分P1と、第2接続部分Cp2の第3側面Sw3と接続面Cs1とが接続している第4部分P2と、の距離である。
【0152】
また、別の観点から言えば、接続面Cs1が存在しており、第1導入流路23の第1接続部分Cp1および主流路21のそれぞれが延びている方向に沿った第1方向D1と、第2導入流路24の第2接続部分Cp2が延びている方向に沿った第3方向D3と、が成している角度θが、15度以上であり且つ45度以下であれば、接続面Cs1が存在しない場合よりも白血球回収液における白血球純度が安定して向上し得ることが確認された。換言すれば、接続面Cs1が存在しており、第1導入流路23の第1接続部分Cp1および主流路21のそれぞれが延びている方向に沿った第1方向D1と、第2導入流路24の第2接続部分Cp2が延びている方向に沿った第3方向D3と、が成している角度θが、15度以上であり且つ45度以下であれば、回収液に含まれる複数の粒子において特定の種の粒子(例えば、複数の特定の種の粒子)が占める割合が安定して向上し得ることが確認された。
【0153】
また、上述されたように、角度θが30度であった上記の実験の第4例において求められた白血球回収液における白血球純度の最大値が約88%であった。これに対して、角度θが15度であった上記の実験の第5例において求められた白血球回収液における白血球純度の最大値は約69%であり、角度θが45度であった上記の実験の第6例において求められた白血球回収液における白血球純度の最大値は約75%であった。よって、接続面Cs1が存在しており、第1導入流路23の第1接続部分Cp1および主流路21のそれぞれが延びている方向に沿った第1方向D1と、第2導入流路24の第2接続部分Cp2が延びている方向に沿った第3方向D3と、が成している角度θが、30度であれば、接続面Cs1が存在しない場合よりも白血球回収液における白血球純度がより向上し得ることが確認された。換言すれば、接続面Cs1が存在しており、第1導入流路23の第1接続部分Cp1および主流路21のそれぞれが延びている方向に沿った第1方向D1と、第2導入流路24の第2接続部分Cp2が延びている方向に沿った第3方向D3と、が成している角度θが、30度であれば、回収液に含まれる複数の粒子において特定の種の粒子(例えば、複数の特定の種の粒子)が占める割合がより向上し得ることが確認された。
【0154】
<4.一実施形態のまとめ>
一実施形態に係る流路デバイス1では、主流路21は、第1方向D1に沿って延びており且つ第1上流部分21uと第1下流部分21dとを有する。主流路21よりも細い複数の分岐流路22のそれぞれは、第1下流部分21dと第1上流部分21uとの間において第1側面Sw1で開口していることで主流路21に接続している。第1導入流路23のうちの第1上流部分21uに接続している第1接続部分Cp1は、第1方向D1に沿って延びている。第2導入流路24のうちの第1上流部分21uに接続している第2接続部分Cp2は、第3方向D3に沿って延びている。第1方向D1と第3方向D3とは鋭角を成している。流路部2は、主流路21の第2側面Sw2と、第2接続部分Cp2のうちの第1接続部分Cp1側に位置している第3側面Sw3と、を接続している接続面Cs1を有する。主流路21の第2側面Sw2と接続面Cs1とが接続している第3部分P1と、第2接続部分Cp2の第3側面Sw3と接続面Cs1とが接続している第4部分P2と、の距離(第1距離)Le1は、主流路21の幅(第1幅)W1の1倍以下に設定されている。
【0155】
この構成によれば、流路デバイス1では、第1導入流路23から主流路21の第1上流部分21uに第1液体L1が導入されるとともに第2導入流路24から主流路21の第1上流部分21uに第2液体L2が導入されて、粒子分離処理が行われる際に、例えば、主流路21において、導入流れにおける乱れの発生が低減されつつ、第2液体L2が第1液体L1を複数の分岐流路22へ向けて押し付ける力が増大し得る。その結果、第1液体L1における複数の第2粒子Pa12のうちの第1下流部分21dまで流れる第2粒子Pa12(例えば、1つ以上の第2粒子Pa12)の割合が低減され得る。よって、例えば、第1下流部分21dから第1排出孔33などを介して回収される回収液に混入する第2粒子Pa12の数が低減され得る。したがって、回収液に含まれる複数の粒子において特定の種の粒子としての第1粒子Pa11(例えば、複数の第1粒子Pa11)が占める割合が向上し得る。ここで、例えば、第1液体L1の一例として血液あるいは血液が生理食塩水で希釈された液体が用いられ、第2液体L2の一例として生理食塩水が用いられると、回収液としての白血球回収液における全ての血球において白血球(例えば、複数の白血球)が占める割合としての白血球純度が向上し得る。
【0156】
<5.他の実施形態>
本開示は、上述の一実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更および改良などが行われ得る。
【0157】
上記一実施形態において、接続面Cs1は、例えば、平坦な面であったが、これに限られない。例えば、接続面Cs1は、若干湾曲した曲面であってもよいし、若干の凹凸を有する面であってもよい。ここで、例えば、接続面Cs1のうちの主流路21の第2側面Sw2と接続している部分は、第2側面Sw2との間に尖った角部を形成していてもよいし、第2側面Sw2との間に尖っていない角部を形成していてもよい。例えば、接続面Cs1のうちの第2接続部分Cp2の第3側面Sw3と接続している部分は、第3側面Sw3との間に尖った角部を形成していてもよいし、第3側面Sw3との間に尖っていない角部を形成していてもよい。
【0158】
上記一実施形態において、拡張部分Ac1が平面視された場合に、拡張部分Ac1の形状は、接続面Cs1に沿った辺を底辺とする二等辺三角形に沿った二等辺三角形状であったが、これに限られない。例えば、拡張部分Ac1が平面視された場合に、拡張部分Ac1の形状は、接続面Cs1に沿った辺を隣辺とする直角三角形に沿った直角三角形状であってもよいし、その他の三角形に沿った形状であってもよい。
【0159】
換言すれば、上記一実施形態において、第3側面Sw3と接続面Cs1とが成している角度αと、第2側面Sw2と接続面Cs1とが成している角度βとは、同一もしくは略同一に限られない。例えば、角度αと角度βとは、異なっていてもよい。
【0160】
図14および
図15のそれぞれは、流路部2の一部を模式的に示す平面図である。より具体的には、
図14は、
図3の矩形の一点鎖線で囲まれた領域IVに対応する領域についての他の第1構成例を模式的に示す平面図である。
図15は、
図3の矩形の一点鎖線で囲まれた領域IVに対応する領域についての他の第2構成例を模式的に示す平面図である。
図14および
図15のそれぞれでは、流路部2の外縁が実線で描かれている。
図14および
図15のそれぞれでは、流路デバイス1が用いられて粒子分離処理が行われる際に、第1液体L1の流れと第2液体L2の流れとが合流する部分のうちの最も上流側の部分において、第1液体L1が向かう方向の一例が太い二点鎖線で描かれた矢印で模式的に示されているとともに、第2液体L2が向かう方向の一例が二点鎖線で描かれた矢印で模式的に示されている。
【0161】
例えば、
図14で示されるように、角度βは、角度αよりも大きくてもよい。例えば、角度βが鈍角であり、角度αが鋭角であってもよい。この場合には、流路デバイス1が用いられて粒子分離処理が行われる際には、例えば、第1液体L1のうちの一部である第2側面Sw2に沿って流れてきた後に接続面Cs1に沿って流れてきた第1液体L1が、第2液体L2のうちの一部である第3側面Sw3に沿って流れてきた第2液体L2によって、第1側面Sw1に向けて押され得る。この形態で液体の合流が生じる箇所においては、例えば、第2液体L2の流れの一部としての第3側面Sw3に沿って流れてきた第2液体L2が接続面Cs1に沿って流れてきた第1液体L1を第1側面Sw1に向けて押す方向が、接続面Cs1に沿って流れてきた第1液体L1が流れる方向に対して垂直に近づき得る。これにより、例えば、主流路21において、導入流れにおける乱れの発生が低減されつつ、第2液体L2が第1液体L1を複数の分岐流路22へ向けて押し付ける力が増大し得る。その結果、第1液体L1における複数の第2粒子Pa12のうちの第1下流部分21dまで流れる第2粒子Pa12(例えば、1つ以上の第2粒子Pa12)の割合が低減され得る。よって、例えば、第1下流部分21dから第1排出孔33などを介して回収される回収液に混入する第2粒子Pa12の数が低減され得る。したがって、回収液に含まれる複数の粒子において特定の種の粒子としての第1粒子Pa11(例えば、複数の第1粒子Pa11)が占める割合が向上し得る。ここで、例えば、第1液体L1の一例として血液あるいは血液が生理食塩水で希釈された液体が用いられ、第2液体L2の一例として生理食塩水が用いられると、回収液としての白血球回収液における全ての血球において白血球(例えば、複数の白血球)が占める割合としての白血球純度が向上し得る。ここで、例えば、角度αが90度に近づくと、第2液体L2の流れの一部としての第3側面Sw3に沿って流れてきた第2液体L2が接続面Cs1に沿って流れてきた第1液体L1を第1側面Sw1に向けて押す方向が、接続面Cs1に沿って流れてきた第1液体L1が流れる方向に対してより垂直に近づき得る。
【0162】
例えば、
図15で示されるように、角度αは、角度βよりも大きくてもよい。例えば、角度αが鈍角であり、角度βが鋭角であってもよい。この場合には、流路デバイス1が用いられて粒子分離処理が行われる際には、例えば、第1液体L1のうちの一部である第2側面Sw2に沿って流れてきた第1液体L1が、第2液体L2のうちの一部である第3側面Sw3に沿って流れてきた後に接続面Cs1に沿って流れてきた第2液体L2によって、第1側面Sw1に向けて押され得る。この形態で液体の合流が生じる箇所においては、例えば、第2液体L2の流れの一部としての第3側面Sw3に沿って流れてきた後に接続面Cs1に沿って流れてきた第2液体L2が第2側面Sw2に沿って流れてきた第1液体L1を第1側面Sw1に向けて押す方向が、第2側面Sw2に沿って流れてきた第1液体L1が流れる方向に対して垂直に近づき得る。これにより、例えば、主流路21において、導入流れにおける乱れの発生が低減されつつ、第2液体L2が第1液体L1を複数の分岐流路22へ向けて押し付ける力が増大し得る。その結果、第1液体L1における複数の第2粒子Pa12のうちの第1下流部分21dまで流れる第2粒子Pa12(例えば、1つ以上の第2粒子Pa12)の割合が低減され得る。よって、例えば、第1下流部分21dから第1排出孔33などを介して回収される回収液に混入する第2粒子Pa12の数が低減され得る。したがって、回収液に含まれる複数の粒子において特定の種の粒子としての第1粒子Pa11(例えば、複数の第1粒子Pa11)が占める割合が向上し得る。ここで、例えば、第1液体L1の一例として血液あるいは血液が生理食塩水で希釈された液体が用いられ、第2液体L2の一例として生理食塩水が用いられると、回収液としての白血球回収液における全ての血球において白血球(例えば、複数の白血球)が占める割合としての白血球純度が向上し得る。ここで、例えば、角度βが90度に近づくと、第2液体L2の流れの一部としての第3側面Sw3に沿って流れてきた後に接続面Cs1に沿って流れてきた第2液体L2が第2側面Sw2に沿って流れてきた第1液体L1を第1側面Sw1に向けて押す方向が、第2側面Sw2に沿って流れてきた第1液体L1が流れる方向に対してより垂直に近づき得る。
【0163】
そして、角度θが30度に固定されて、角度αおよび角度βのそれぞれが105度に設定された場合、角度αが60度に設定され且つ角度βが150度に設定された場合、ならびに角度αが150度に設定され且つ角度βが60度に設定された場合のそれぞれについて、主流路21において導入流れにおける乱れの発生が同程度に低減されることが発明者によって確認された。このため、例えば、角度θが30度であって、角度αと角度βとの合計が210度である場合には、角度αおよび角度βのそれぞれは、60度以上で且つ150度以下であってもよい。
【0164】
上記一実施形態において、例えば、第1導入孔31、第2導入孔32、第1排出孔33、第2排出孔34および第3排出孔35のそれぞれが、下面1bにおいて開口していたが、これに限られない。例えば、第1導入孔31、第2導入孔32、第1排出孔33、第2排出孔34および第3排出孔35のうちの少なくとも1つの孔が、下面1bにおいて開口しておらず且つ上面1aにおいて開口していてもよい。換言すれば、例えば、第1導入孔31、第2導入孔32、第1排出孔33、第2排出孔34および第3排出孔35のそれぞれは、上面1aおよび下面1bのうちの何れか一方の面において開口していてもよい。
【0165】
上記一実施形態において、流路デバイス1は、例えば、第1液体L1の導入部として1組の第1導入孔31および第1導入流路23を有していたが、これに限られない。例えば、流路デバイス1は、第1液体L1の導入部として2組以上の第1導入孔31および第1導入流路23を有していてもよい。また、上記一実施形態において、流路デバイス1は、例えば、第2液体L2の導入部として1組の第2導入孔32および第2導入流路24を有していたが、これに限られない。例えば、流路デバイス1は、第2液体L2の導入部として2組以上の第2導入孔32および第2導入流路24を有していてもよい。ここでは、第1液体L1の導入部および第2液体L2の導入部のそれぞれは、流路デバイス1が用いられて粒子分離処理が行われる際に回収液に含まれる複数の粒子において特定の種の粒子としての第1粒子Pa11(例えば、複数の第1粒子Pa11)が占める割合が向上し得る範囲内で、主流路21に対して適切な関係で接続していてよい。
【0166】
上記一実施形態において、例えば、第2導入口2iから流路デバイス1へ第2液体L2が導入される際には、主流路21から複数の分岐流路22および第2排出孔34を介して第2液体L2を吸引するための液体吸引部が第2排出孔34に接続されてもよい。この場合には、例えば、液体吸引部を第2排出孔34につなぐための管状の部材が流路デバイス1の外部から流路デバイス1へ接続されてよい。ここで、管状の部材によって液体吸引部を第2排出孔34につなぐことは、管状の部材を介して液体吸引部と第2排出孔34との間で流体が流通可能な状態とすることを意味する。この管状の部材の流路デバイス1への接続のために、例えば、流路デバイス1の下面1bには、平面視された場合に第2排出孔34をZ軸周りで囲んだ状態で位置しており且つ-Z方向に突出している筒状の部分が存在していてもよい。
【0167】
上記一実施形態において、例えば、流路デバイス1における流路部2および複数の孔3は、第7流路としての第3排出流路27および第5孔としての第3排出孔35を含んでいなくてもよい。この場合には、例えば、第5流路としての第1排出流路25は、主流路21と同じく、第1方向D1としての-Y方向に沿って延びていてもよい。例えば、主流路21が、第5流路としての第1排出流路25を含んでいてもよい。ここでは、主流路21の第1下流部分21dに第1排出孔33が直接接続していてもよい。また、例えば、回収液は、第1下流部分21dから種々の経路で回収されてもよい。
【0168】
上記一実施形態において、例えば、第1導入流路23、第2導入流路24、第1排出流路25、第2排出流路26および第3排出流路27のそれぞれの幅は、上流から下流にかけて一定であってもよいし、一定でなくてもよい。例えば、第1導入流路23は、第1導入孔31から主流路21に近づくにつれて、幅が連続的もしくは段階的に小さくなっている部分を有していてもよい。換言すれば、例えば、第1導入流路23は、主流路21に近づくにつれて、幅が連続的もしくは段階的に小さくなっている部分を有していてもよい。例えば、第2導入流路24は、第2導入孔32から主流路21に近づくにつれて、幅が連続的もしくは段階的に小さくなっている部分を有していてもよい。換言すれば、例えば、第2導入流路24は、主流路21に近づくにつれて、幅が連続的もしくは段階的に小さくなっている部分を有していてもよい。例えば、第1排出流路25は、主流路21から第1排出孔33に近づくにつれて、幅が連続的もしくは段階的に大きくなっている部分を有していてもよい。換言すれば、例えば、第1排出流路25は、主流路21から離れるにつれて、幅が連続的もしくは段階的に大きくなっている部分を有していてもよい。例えば、第3排出流路27は、主流路21から第3排出孔35に近づくにつれて、幅が連続的もしくは段階的に大きくなっている部分を有していてもよい。換言すれば、例えば、第3排出流路27は、主流路21から離れるにつれて、幅が連続的もしくは段階的に大きくなっている部分を有していてもよい。
【0169】
上記一実施形態において、例えば、第1液体L1は、血液以外の複数種の粒子Pa1を含む液体であってもよい。この場合には、第2液体L2には、例えば、第1液体L1に合わせた種々の液体が適用され得る。種々の液体には、例えば、水などが適用され得る。
【0170】
以上のように、流路デバイスは詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されない。また、上述された各種の例は、相互に矛盾しない限り、組み合わせられ得る。そして、例示されていない無数の例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得る。
【0171】
本開示には、以下の内容が含まれる。
【0172】
一実施形態において、(1)流路デバイスは、外面において開口していない流路部と、該流路部にそれぞれ通じており且つ前記外面においてそれぞれ開口している複数の孔と、を備え、前記流路部は、第1流路と、複数の第2流路と、第3流路と、第4流路と、を含み、前記第1流路は、第1方向に沿って直線状に延びており、前記第1流路は、前記第1方向の側に位置している第1下流部分と、該第1下流部分とは逆側に位置している第1上流部分と、を含み、前記第1流路は、前記第1方向に直交している第2方向の第1側面と、前記第2方向とは逆の第4方向の第2側面と、を有し、前記複数の第2流路のそれぞれは、前記第1流路に接続しており且つ前記第1流路よりも細く、前記複数の第2流路のそれぞれは、前記第1流路のうちの前記第1上流部分と前記第1下流部分との間で、前記第1側面において開口しており、前記複数の第2流路のそれぞれは、前記第1流路とは逆側の第2下流部分、を含み、前記第3流路は、前記第1上流部分に接続している第1接続部分、を含み、該第1接続部分は、前記第1上流部分に向けて前記第1方向に沿って直線状に延びており、前記第4流路は、前記第1上流部分に接続している第2接続部分、を含み、該第2接続部分は、前記第2側面において開口しており、前記第2接続部分は、前記第1方向に対して鋭角を成している第3方向に沿って前記第1上流部分に向けて直線状に延びており、前記第2接続部分は、前記第1接続部分の側に位置している第3側面、を有し、前記複数の孔は、第1孔と、第2孔と、第3孔と、第4孔と、を含み、前記第1孔は、前記第3流路を介して前記第1上流部分に通じており、前記第2孔は、前記第4流路を介して前記第1上流部分に通じており、前記第3孔は、前記第1下流部分に通じており、前記第4孔は、前記複数の第2流路のそれぞれにおける前記第2下流部分に通じており、前記流路部は、前記第2側面と、前記第3側面と、を接続している接続面を有し、前記第2側面と前記接続面とが接続している第3部分と、前記第3側面と前記接続面とが接続している第4部分との距離は、前記第1流路の前記第2方向における幅の1倍以下である。
【0173】
(2)上記(1)の流路デバイスにおいて、前記第1方向と前記第3方向とが成している角度は、15度以上であり且つ45度以下であってもよい。
【0174】
(3)上記(2)の流路デバイスにおいて、前記第1方向と前記第3方向とが成している角度は、30度であってもよい。
【0175】
(4)上記(2)または(3)の流路デバイスにおいて、前記第3部分と前記第4部分との距離は、前記第1流路の前記第2方向における幅の0.1倍以上であり且つ0.5倍以下であってもよい。
【符号の説明】
【0176】
1 流路デバイス
2 流路部
21 主流路
21d 第1下流部分
21u 第1上流部分
22 分岐流路
22d 第2下流部分
23 第1導入流路
24 第2導入流路
3 孔
31 第1導入孔
32 第2導入孔
33 第1排出孔
34 第2排出孔
35 第3排出孔
Cp1 第1接続部分
Cp2 第2接続部分
Cs1 接続面
D1 第1方向
D2 第2方向
D3 第3方向
D4 第4方向
L1 第1液体
L2 第2液体
Le1 第1距離
P1 第3部分
P2 第4部分
Pa1 複数種の粒子
Pa11 第1粒子
Pa12 第2粒子
Sw1 第1側面
Sw2 第2側面
Sw3 第3側面
W1 第1幅
【要約】
流路デバイスは、第1流路と複数の第2流路と第3流路と第4流路とを含む流路部を備える。第1流路は、第1方向に沿って延び且つ第1方向の端部の第1部分と第1部分とは反対の端部の第2部分とを含む。第1流路は、第1側面と該第1側面と第1方向に直交する第2方向に対向した第2側面とを有する。複数の第2流路のそれぞれは、第1部分と第2部分との間にて第1側面で開口して第1流路に接続し且つ第1流路よりも細い。第3流路は、第2部分に接続し且つ第1方向に沿って延びた第1接続部分を含む。第4流路は、第2部分に接続し且つ第1方向に対して鋭角を成す第3方向に沿って延びた第2接続部分を含む。第2接続部分は、第1接続部分の側に第3側面を有する。流路部は、第2側面と第3側面とを接続している接続面を有する。第2側面と接続面とが接続している第3部分と、第3側面と接続面とが接続している第4部分との距離は、第1流路の幅以下である。