(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-11-10
(45)【発行日】2025-11-18
(54)【発明の名称】光学フィルタ、撮像装置および光学センサー
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20251111BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20251111BHJP
G03B 11/00 20210101ALI20251111BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/28
G03B11/00
(21)【出願番号】P 2024073866
(22)【出願日】2024-04-30
(62)【分割の表示】P 2021528231の分割
【原出願日】2020-06-15
【審査請求日】2024-04-30
(31)【優先権主張番号】P 2019114575
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 さゆり
(72)【発明者】
【氏名】塩野 和彦
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/114362(WO,A1)
【文献】特開2018-132609(JP,A)
【文献】国際公開第2014/168189(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/094672(WO,A1)
【文献】米国特許第10215897(US,B1)
【文献】国際公開第2019/111638(WO,A1)
【文献】特開2017-072748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
G02B 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹
脂、最大吸収波長が850~1100nmの波長領域にある近赤外線吸収色素(A)
、および最大吸収波長が630~750nmの波長領域にある近赤外線吸収色素(C)を含有する吸収層と、誘電体多層膜とを有する光学フィルタであって、
下記(3-2)~(3-8)の要件をすべて満足する、光学フィルタ。
(3-2)入射角0度で測定される光学特性において、490~560nmの波長領域における平均透過率T
AVE490-560(0°)が82%以上である。
(3-3)入射角0度で測定される光学特性において、590~630nmの波長領域における平均透過率T
AVE590-630(0°)が50%以上である。
(3-4)600~800nmの波長領域において、入射角0度で透過率が50%となる波長λ
50%(0°)と入射角30度で透過率が50%となる波長λ
50%(30°)の差の絶対値|λ
50%(30°)-λ
50%(0°)|が5nm以下である。
(3-5)入射角30度で測定される490~560nmの波長領域における平均透過率T
AVE490-560(30°)が80%以上である。
(3-6)入射角30度で測定される、前記近赤外線吸収色素(A)の最大吸収波長λ
max(A)TR±10nmの波長領域における最小OD値が3以上である。
(3-7)600~800nmの波長領域において、入射角0度で透過率が50%となる波長λ
50%(0°)と入射角50度で透過率が50%となる波長λ
50%(50°)の差の絶対値|λ
50%(50°)-λ
50%(0°)|が15nm以下である。
(3-8)入射角50度で測定される490~560nmの波長領域における平均透過率T
AVE490-560(50°)が70%以上である。
【請求項2】
入射角0度で測定される光学特性において下記(3-1)の要件を満足する請求項1に記載の光学フィルタ。
(3-1)前記近赤外線吸収色素(A)の最大吸収波長λ
max(A)TR±10nmの波長領域における最小OD値が4以上である。
【請求項3】
さらに、下記(3-9)の要件を満足する請求項1または2に記載の光学フィルタ。
(3-9)入射角50度で測定される、前記近赤外線吸収色素(A)の最大吸収波長λ
max(A)TR±10nmの波長領域における最小OD値が3以上である。
【請求項4】
前記(3-4)の要件において、前記絶対値|λ50%(30°)-λ50%(0°)|が4nm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項5】
前記(3-7)の要件において、前記絶対値|λ
50%(50°)-λ
50%(0°)|が10nm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項6】
前記吸収層は、下記(2-1)および(2-2)を満足する請求項1~5のいずれかに1項に記載の光学フィルタ。
(2-1)490~560nmの波長領域における平均内部透過率T
AVE490-560(AL)が88%以上である。
(2-2)590~630nmの波長領域における平均内部透過率T
AVE590-630(AL)が70%以上である。
【請求項7】
前記吸収層は、下記(2-3)を満足する請求項6に記載の光学フィルタ。
(2-3)600~700nmの波長領域に内部透過率が50%となる波長λ
50%を有する。
【請求項8】
前記吸収層は、下記(2-4)を満足する請求項6に記載の光学フィルタ。
(2-4)600~1200nmの波長領域において内部透過率が30%以下となる波長域の幅の合計が250nm以上である。
【請求項9】
前記透明樹脂は、ポリイミド樹脂である請求項1~8のいずれかに1項に記載の光学フィルタ。
【請求項10】
さらに透明基板を有し、前記吸収層および前記誘電体多層膜は、それぞれ前記透明基板の主面上に設けられる請求項1~9のいずれか1項記載の光学フィルタ。
【請求項11】
前記透明基板は、透明樹脂
材料またはガラスからなる請求項10に記載の光学フィルタ。
【請求項12】
前記ガラスは、銅イオンを添加したフツリン酸塩系ガラス、または、銅イオンを添加したリン酸塩系ガラスである請求項11に記載の光学フィルタ。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項記載の光学フィルタを備える撮像装置。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項記載の光学フィルタを備える光学センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視波長領域の光を透過し、近赤外波長領域の光を遮蔽する光学フィルタおよび該光学フィルタを備えた撮像装置および光学センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子を用いた撮像装置には、色調を良好に再現し鮮明な画像を得るため、可視域の光(以下「可視光」ともいう)を透過し近赤外域の光(以下「近赤外光」ともいう)を遮蔽する光学フィルタが用いられる。該光学フィルタとしては、ガラス基材上に、近赤外吸収色素と樹脂を含む吸収層と、近赤外光を遮蔽する誘電体多層膜からなる反射層とを設けた近赤外カットフィルタが知られている。
【0003】
このような近赤外カットフィルタは、環境光センサーなどの用途に用いられており、その場合、近赤外光の特定の長波長域の光を吸収し、可視光域は高い透過率を有することが求められていた。
【0004】
環境光センサー用の光学フィルタとして、例えば、特許文献1には、近赤外光の長波長域である波長850~1050nmに吸収能をもつ色素を用いた光学フィルタが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、近赤外光の長波長域に吸収を有する吸収ガラスに代わって、該波長域における吸収特性が良好であるとともに、小型で肉厚の薄い形状が容易に得られ、なおかつ研磨加工時に微小欠陥が発生しにくく、コストと生産性に優れた近赤外線カットフィルタの技術が記載されている。特許文献2では、ジイモニウム系色素、シアニン系色素およびオニウム塩を組み合わせた色素と透明樹脂を含有する光学フィルムを用いて上記特性の近赤外線カットフィルタを得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2017/094672号
【文献】日本国特開2008-303130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近赤外光の長波長域において吸収能を有する特定の色素と透明樹脂を含有する吸収層を用いた上記の光学フィルタにおいては、可視光の透過率、特に視感に強く影響する緑色や赤色の透過率が十分に高いとは言えなかった。
【0008】
本発明は、近赤外光の長波長域、特には、850~1100nmの波長域の光を効果的に遮蔽できるとともに、可視光の透過率、特に緑色や赤色の透過率を十分に高く維持できる光学フィルタ、および該光学フィルタを用いた色再現性に優れる撮像装置および光学センサーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る光学フィルタは、透明樹脂と、最大吸収波長が850~1100nmの波長領域にある近赤外線吸収色素(A)を含有する吸収層と、誘電体多層膜とを有する光学フィルタであって、
下記(3-2)~(3-8)の要件をすべて満足する。
(3-2)入射角0度で測定される光学特性において、490~560nmの波長領域における平均透過率TAVE490-560(0°)が82%以上である。
(3-3)入射角0度で測定される光学特性において、590~630nmの波長領域における平均透過率TAVE590-630(0°)が50%以上である。
(3-4)600~800nmの波長領域において、入射角0度で透過率が50%となる波長λ50%(0°)と入射角30度で透過率が50%となる波長λ50%(30°)の差の絶対値|λ50%(30°)-λ50%(0°)|が5nm以下である。
(3-5)入射角30度で測定される490~560nmの波長領域における平均透過率TAVE490-560(30°)が80%以上である。
(3-6)入射角30度で測定される、前記近赤外線吸収色素(A)の最大吸収波長λmax(A)TR±10nmの波長領域における最小OD値が3以上である。
(3-7)600~800nmの波長領域において、入射角0度で透過率が50%となる波長λ50%(0°)と入射角50度で透過率が50%となる波長λ50%(50°)の差の絶対値|λ50%(50°)-λ50%(0°)|が15nm以下である。
(3-8)入射角50度で測定される490~560nmの波長領域における平均透過率TAVE490-560(50°)が70%以上である。
【0010】
本発明はまた、本発明の光学フィルタを備えた撮像装置および光学センサーを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、近赤外光の長波長域、特には、850~1100nmの波長域の光を効果的に遮蔽できるとともに、可視光の透過率、特に緑色や赤色の透過率を十分に高く維持できる光学フィルタ、および該光学フィルタを用いた色再現性に優れる撮像装置および光学センサーが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は一実施形態の光学フィルタの一例を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図2は一実施形態の光学フィルタの他の例を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図3は一実施形態の光学フィルタの他の例を概略的に示す断面図である。
【
図4】
図4は一実施形態の光学フィルタの他の例を概略的に示す断面図である。
【
図5】
図5は一実施形態の光学フィルタの他の例を概略的に示す断面図である。
【
図6】
図6は一実施形態の光学フィルタの他の例を概略的に示す断面図である。
【
図7】
図7は試験例2における色素(A1a-5NS)の透明樹脂P中およびジクロロメタン中における分光透過率曲線を示す図である。
【
図8】
図8は試験例19における色素(A1a-5NS)の透明樹脂P以外の透明樹脂中およびジクロロメタン中における分光透過率曲線を示す図である。
【
図9】
図9は実施例(例1;実施例)の光学フィルタにおける吸収層の分光透過率曲線を示す図である。
【
図10】
図10は実施例(例1;実施例)の光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
【
図11】
図11は実施例(例4;実施例)の光学フィルタにおける吸収層の分光透過率曲線を示す図である。
【
図12】
図12は実施例(例4;実施例)の光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
【
図13】
図13は実施例(例6;実施例)の光学フィルタにおける吸収層の分光透過率曲線を示す図である。
【
図14】
図14は実施例(例6;実施例)の光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
【
図15】
図15は実施例(例8;比較例)の光学フィルタにおける吸収層の分光透過率曲線を示す図である。
【
図16】
図16は実施例(例8;比較例)の光学フィルタの分光透過率曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本明細書において、近赤外線吸収色素を「NIR色素」、紫外線吸収色素を「UV色素」と略記することもある。
【0014】
本明細書において、式(A1)で示される化合物を化合物(A1)という。他の式で表される化合物も同様である。化合物(A1)からなる色素を色素(A1)ともいい、他の色素についても同様である。また、例えば、式(1x)で表される基を基(1x)とも記し、他の式で表される基も同様である。
【0015】
本明細書において、内部透過率とは、実測透過率/(100-反射率)の式で示される、実測透過率から界面反射の影響を引いて得られる透過率である。本明細書において、樹脂からなる透明基板の透過率、吸収層等の色素が樹脂に含有される場合を含む樹脂層の透過率の分光は、「透過率」と記載されている場合も全て「内部透過率」である。一方、色素をジクロロメタン等の溶媒に溶解して測定される透過率、誘電体多層膜を有する光学フィルタの透過率は、実測透過率である。
【0016】
本明細書において、特定の波長域について、透過率が例えば90%以上とは、その全波長領域において透過率が90%を下回らない、すなわちその波長領域において最小透過率が90%以上であることをいう。同様に、特定の波長域について、透過率が例えば1%以下とは、その全波長領域において透過率が1%を超えない、すなわちその波長領域において最大透過率が1%以下であることをいう。内部透過率においても同様である。特定の波長域における平均透過率および平均内部透過率は、該波長域の1nm毎の透過率および内部透過率の相加平均である。
本明細書において、数値範囲を表す「~」では、上下限を含む。
【0017】
<光学フィルタ>
本発明の一実施形態の光学フィルタ(以下、「本フィルタ」ともいう。)は、ガラス転移点(以下、「Tg」ともいう。)が130℃以上の透明樹脂(以下、透明樹脂(P)ともいう。)と、下記(1-1)~(1-6)の全ての要件を満足するNIR色素(A)を含有する吸収層と、誘電体多層膜からなる反射層とを有する。
【0018】
(1-1)NIR色素(A)を透明樹脂(P)に含有させて測定される波長350~1200nmの分光透過率曲線SCTRにおいて、最大吸収波長λmax(A)TRが850~1100nmの波長領域にある。
(1-2)分光透過率曲線SCTRにおいて最大吸収波長λmax(A)TRでの内部透過率を10%としたときの波長490~560nmの光の平均内部透過率TAVE490-560(A)TRが90%以上である。
【0019】
(1-3)分光透過率曲線SCTRにおいて最大吸収波長λmax(A)TRでの内部透過率を10%としたときの波長590~630nmの光の平均内部透過率TAVE590-630(A)TRが90%以上である。
(1-4)分光透過率曲線SCTRは、最大吸収波長λmax(A)TRでの内部透過率を10%としたときに、650~1150nmの波長領域で内部透過率が50%となる波長を2つ有し、該2つの波長間の幅が180nm以上である。
【0020】
(1-5)NIR色素(A)をジクロロメタンに溶解させて測定される波長350~1200nmの分光透過率曲線SCDCMにおける最大吸収波長λmax(A)DCMでの光の透過率を10%としたときの波長490~560nmの光の平均透過率TAVE490-560(A)DCMから平均内部透過率TAVE490-560(A)TRを引いた値が10%以下である。
(1-6)分光透過率曲線SCDCMにおける最大吸収波長λmax(A)DCMでの光の透過率を10%としたときの波長590~630nmの光の平均透過率TAVE590-630(A)DCMから平均内部透過率TAVE590-630(A)TRを引いた値が10%以下である。
【0021】
本フィルタは、吸収層が(1-1)~(1-6)の特性を有するNIR色素(A)と透明樹脂(P)を含有することで、近赤外光の長波長域、特には、850~1100nmの波長域の光を効果的に遮蔽できるとともに、可視光の透過率、特に緑色や赤色の透過率を十分に高く維持できる。一般的には,最大吸収波長が長波長域にあるNIR色素では会合の寄与もあり、ジクロロメタン中での可視光の高透過率を透明樹脂中では再現しづらいことが知られている。NIR色素(A)は、上記(1-5)~(1-6)に示されるとおり、透明樹脂(P)との関係において、ジクロロメタン中での可視光の高透過率を維持していることがわかる。
【0022】
NIR色素(A)は、さらに以下の(1-7)~(1-9)から選ばれる1以上を満足するのが好ましく、2以上を満足するのがより好ましく、全てを満足するのが特に好ましい。
【0023】
(1-7)分光透過率曲線SCDCMにおける最大吸収波長λmax(A)DCMでの光の透過率を10%としたときの波長435~480nmの光の平均透過率TAVE435-480(A)DCMから、分光透過率曲線SCTRにおける最大吸収波長λmax(A)TRでの内部透過率を10%としたときの波長435~480nmの光の平均内部透過率TAVE435-480(A)TRを引いた値が10%以下である。
(1-8)平均透過率TAVE490-560(A)DCMから平均内部透過率TAVE490-560(A)TRを引いた値が5%以下である。
(1-9)平均透過率TAVE590-630(A)DCMから平均内部透過率TAVE590-630(A)TRを引いた値が5%以下である。
【0024】
本フィルタは、透明基板をさらに有してもよい。この場合、吸収層および反射層は、透明基板の主面上に設けられる。本フィルタは、吸収層と反射層を、透明基板の同一主面上に有してもよく、異なる主面上に有してもよい。吸収層と反射層を同一主面上に有する場合、これらの積層順は特に限定されない。
【0025】
本フィルタは、また他の機能層を有してもよい。他の機能層としては、例えば可視光の透過率損失を抑制する反射防止層が挙げられる。特に、吸収層が最表面の構成をとる場合には、吸収層と空気との界面で反射による可視光透過率損失が発生するため、吸収層上に反射防止層を設けるとよい。
【0026】
次に、図面を用いて本フィルタの構成例について説明する。
図1は、吸収層11の一方の主面上に反射層12を備えた光学フィルタ10Aの構成例である。光学フィルタ10Aにおいて、吸収層11は、NIR色素(A)と透明樹脂(P)とを含有する層で構成できる。吸収層11は、後述のNIR色素(B)および/またはNIR色素(C)をさらに含有してもよい。その場合、吸収層11は、複数の層が積層した構成であってよく、各層にはNIR色素(A)、NIR色素(B)および/またはNIR色素(C)が適宜組み合わされて含有される。なお、「吸収層11の一方の主面(上)に、反射層12を備える」とは、吸収層11に接触して反射層12が備わる場合に限らず、吸収層11と反射層12との間に、別の機能層が備わる場合も含み、以下の構成も同様である。
【0027】
図2は、透明基板と吸収層と反射層を有する実施形態の光学フィルタの一例を概略的に示す断面図である。光学フィルタ10Bは、透明基板13と透明基板13の一方の主面上に配置された吸収層11と透明基板13の他方の主面上に設けられた反射層12を有する。光学フィルタ10Bにおいて、吸収層11は、光学フィルタ10Aと同様の構成とできる。
【0028】
図3は、吸収層11を備え、吸収層11の両主面上に、反射層12aおよび12bをそれぞれ備えた光学フィルタ10Cの構成例である。
図4は、透明基板13の一方の主面に吸収層11を備え、透明基板13の他方の主面上および吸収層11の主面上に、反射層12aおよび12bを備えた光学フィルタ10Dの構成例である。光学フィルタ10C、10Dにおいて、吸収層11は、光学フィルタ10Aと同様の構成とできる。
【0029】
図5は、透明基板13の両主面に吸収層11aおよび11bを備え、さらに吸収層11aおよび11bの主面上に、反射層12aおよび12bを備えた光学フィルタ10Eの構成例である。
【0030】
図3、
図4および
図5において、組み合わせる2層の反射層12a、12bは、同一でも異なってもよい。例えば、反射層12a、12bは、紫外光および近赤外光を反射し、可視光を透過する特性を有し、反射層12aが、紫外光と第1の近赤外域の光を反射し、反射層12bが、紫外光と第2の近赤外域の光を反射する構成でもよい。
【0031】
また、
図5において、2層の吸収層11aと11bは、少なくとも一方が本フィルタにおける上記構成を備える吸収層である。吸収層11aと11bは同一でも異なってもよい。吸収層11aと11bが異なる場合、例えば、吸収層11aと11bが、各々、近赤外線吸収層と紫外線吸収層の組合せでもよく、紫外線吸収層と近赤外線吸収層の組合せでもよい。
【0032】
また、光学フィルタ10Eにおいて、吸収層11a、11bがNIR色素(A)に加えて後述のNIR色素(B)および/またはNIR色素(C)を含有する場合、吸収層11aと11bにそれぞれ含有されるNIR色素は、適宜組み合わせが可能である。例えば、光学フィルタ10Eが、NIR色素(A)~(C)を含有する場合、吸収層11aおよび11bの一方がNIR色素(A)~(C)から選ばれる1種を含有し、他方が2種を含有する構成であってもよい。さらに、吸収層11aおよび11bは、それぞれ、単層でもよく複数の層が積層した構成であってもよい。
【0033】
図6は、
図2に示す光学フィルタ10Bの吸収層11の主面上に反射防止層14を備えた光学フィルタ10Fの構成例である。反射層が設けられず、吸収層が最表面の構成をとる場合には、吸収層上に反射防止層を設けるとよい。なお、反射防止層は、吸収層の最表面だけでなく、吸収層の側面全体も覆う構成でもよい。その場合、吸収層の防湿の効果を高められる。
【0034】
以下、吸収層、反射層、透明基板および反射防止層について説明する。
(吸収層)
吸収層は、上記(1-1)~(1-6)の特性を有する、好ましくはさらに上記(1-7)~(1-9)から選ばれる1以上の特性を有するNIR色素(A)と透明樹脂(P)を含有する。
【0035】
吸収層は、典型的には、透明樹脂(P)中にNIR色素(A)が均一に溶解または分散した層または(樹脂)基板である。吸収層は、本発明の効果を損なわない範囲でNIR色素(A)以外にその他のNIR色素を含有してもよい。さらに、吸収層は、本発明の効果を損なわない範囲でNIR色素以外の色素、特にはUV色素を含有してもよい。
【0036】
その他のNIR色素としては、透明樹脂(P)に含有させて測定される波長350~1200nmの分光透過率曲線において、それぞれ、1100~1200nmの波長領域に最大吸収波長を有するNIR色素(B)、630~750nmの波長領域に最大吸収波長を有するスクアリリウム色素であるNIR色素(C)が好ましい。本フィルタの要求特性に応じて、吸収層はNIR色素(A)に加えて、NIR色素(B)およびNIR色素(C)のいずれか一方を含有してもよく、両方を含有してもよい。
【0037】
吸収層がNIR色素(B)を含有することで、NIR色素(A)の吸収波長域より長波長域の近赤外光を吸収でき、該吸収層により吸収ガラスに相当する波長域の吸収が得られる。吸収層がNIR色素(C)を含有することで、本フィルタにおける誘電体多層膜からなる反射層の入射角依存性の影響を低減できる。
【0038】
[NIR色素(A)]
NIR色素(A)は、(1-1)に規定されるとおり、最大吸収波長λmax(A)TRが850~1100nmの波長領域にある。最大吸収波長λmax(A)TRは、900~1050nmの波長領域にあるのが好ましい。
【0039】
NIR色素(A)は、(1-2)に規定されるとおり、TAVE490-560(A)TRが90%以上である。TAVE490-560(A)TRは、92%以上が好ましく、94%以上がより好ましい。NIR色素(A)は、(1-3)に規定されるとおり、TAVE590-630(A)TRが90%以上である。TAVE590-630(A)TRは、91%以上が好ましく、94%以上がより好ましい。
【0040】
NIR色素(A)は、(1-4)に規定されるとおり、最大吸収波長λmax(A)TRでの内部透過率を10%としたときの分光透過率曲線SCTRが、650~1150nmの波長領域で内部透過率が50%となる波長を2つ有し、該2つの波長間の幅WT50%が180nm以上である。WT50%は200nm以上が好ましく、300nm以上がより好ましい。上記50%となる波長のうち短波長側の波長は、650nm以上が好ましく、700nm以上がより好ましい。WT50%の上限は380nm程度が好ましく、370nm程度がより好ましく、320nm程度がさらに好ましい。
【0041】
NIR色素(A)は、(1-5)に規定されるとおり、TAVE490-560(A)DCM-TAVE490-560(A)TRが10%以下であり、(1-6)に規定されるとおり、TAVE590-630(A)DCM-TAVE590-630(A)TRが10%以下である。TAVE490-560(A)DCM-TAVE490-560(A)TRおよびTAVE590-630(A)DCM-TAVE590-630(A)TRはそれぞれ、8%以下が好ましい。
【0042】
ここで、TAVE490-560(A)DCMおよびTAVE590-630(A)DCMは、NIR色素(A)をジクロロメタンに溶解させて測定される波長350~1200nmの分光透過率曲線SCDCMにおける最大吸収波長λmax(A)DCMでの光の透過率を10%としたときの、それぞれ波長490~560nmの光の平均透過率および波長590~630nmの光の平均透過率である。λmax(A)DCMは、850~1100nmの波長領域にあることが好ましく、900~1000nmの波長領域にあることがより好ましい。
【0043】
NIR色素(A)は、(1-7)に示すTAVE435-480(A)DCM-TAVE435-480(A)TRが10%以下であることが好ましく、9%以下がより好ましく、7%以下がさらに好ましい。NIR色素(A)は、(1-8)に示すTAVE490-560(A)DCM-TAVE490-560(A)TRが5%以下であることが好ましく、4%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。NIR色素(A)は、(1-9)に示すTAVE590-630(A)DCM-TAVE590-630(A)TRが5%以下であることが好ましく、4%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。
【0044】
NIR色素(A)としては、透明樹脂(P)との関係において(1-1)~(1-6)の要件を満たす限り、分子構造は特に制限されない。具体的には、シアニン色素、クロコニウム色素、フタロシアニン色素、スクアリリウム色素、ジイモニウム色素、トリス型イモニウム色素、およびジケトピロロピロール色素からなる群から選ばれる少なくとも1種の色素が挙げられ、可視光高透過性の観点および吸収層幅の広さからトリス型イモニウム色素が特に好ましい。
【0045】
NIR色素(A)であるトリス型イモニウム色素として、具体的には、下式(A1)で示される化合物および下式(A2)で示される化合物から選ばれる1種以上が好ましい。
【0046】
【0047】
式(A1)および(A2)中の記号は以下のとおりである。
R201~R206およびR221~R226はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、リン酸基、炭素原子間に酸素原子を有してもよく、置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基もしくはアルコキシ基、または、置換されていてもよい、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~14のアラルキル基、もしくは員数が3~14のヘテロ環基である。ただし、置換または非置換のアミノ基がフェニル基に結合した基は除く。さらに、R201~R206およびR221~R226において、同一の窒素原子に結合する2つの基は互いに結合して、前記窒素原子とともに員数3~8のヘテロ環を形成していてもよく、該環に結合する水素原子は、炭素数1~12のアルキル基に置換されていてもよい。
【0048】
R207~R218およびR227~R238はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアミノ基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、または、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12のアルキル基もしくはアルコキシ基である。R207~R218およびR227~R238において、互いにとなり合う2つの基は、互いに結合してフェニル基の2個の炭素原子とともに員数3~8の環を形成してもよく、該環に結合する水素原子は、炭素数1~12のアルキル基に置換されていてもよい。
【0049】
R201~R206およびR221~R226において、置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基もしくはアルコキシ基、置換されていてもよい、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~14のアラルキル基、もしくは員数が3~14のヘテロ環基における置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、炭素数1~6のアシルオキシ基が挙げられる。
【0050】
環を形成していない場合のR207~R218およびR227~R238は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数1~12のアルキル基もしくはアルコキシ基が好ましい。アルキル基もしくはアルコキシ基の炭素数は1~6が好ましく、1~4がより好ましい。
【0051】
R207~R218およびR227~R238において、互いにとなり合う2つの基が結合してフェニル基の2個の炭素原子とともに形成される環は、脂環であっても芳香環であってもよく、ヘテロ環であってもよい。ヘテロ原子としては窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる。
【0052】
R207~R218およびR227~R238において、互いにとなり合う2つの基が結合する組合せは、式(A1)、式(A2)において、中心の窒素原子に結合する3個の各フェニル基において2組ずつ計6組存在する。具体的には、式(A1)においては、R207とR208、R209とR210、R211とR212、R213とR214、R215とR216、R217とR218の6組である。式(A2)においては、R227とR228、R229とR230、R231とR232、R233とR234、R235とR236、R237とR238の6組である。
【0053】
式(A1)のR207~R218および式(A2)のR227~R238において、となり合う2つの基が結合する組数は1組であっても、2組以上であってもよく、最大6組全てが結合してもよい。3個のフェニル基について、各1組合計3組が結合するのが好ましい。
【0054】
上記となり合う2つの基が結合した2価の基として、具体的には、ヘテロ原子として窒素原子を1~2個含んでもよく、原子間に不飽和結合を有してもよい、炭素数1~6のアルキレン基が挙げられる。より具体的には、以下の基(X-1)~(X-4)が挙げられる。なお、これらの2価の基が有する水素原子は、炭素数1~12のアルキル基に置換されていてもよい。
【0055】
-(CH2)n-(nは1~6の整数) …(X-1)
-CH=CH-CH=CH- …(X-2)
-CH2-CH=CH- …(X-3)
-N=CH-NH- …(X-4)
【0056】
R207~R218およびR227~R238は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数1~12のアルキル基もしくはアルコキシ基が好ましく、水素原子または炭素数1~12のアルキル基もしくはアルコキシ基が好ましい。アルキル基もしくはアルコキシ基の炭素数は1~6が好ましく、1~4がより好ましい。
【0057】
また、R201とR207、R202とR210、R203とR211、R204とR214、R205とR215、R206とR218、R221とR227、R222とR230、R223とR231、R224とR234、R225とR235、R226とR238は、互いに結合して、フェニル基に結合する窒素原子および該フェニル基の2個の炭素原子とともに員数4~8のヘテロ環を形成してもよく、該環に結合する水素原子は、炭素数1~12のアルキル基に置換されていてもよい。
Xa-およびXb-はそれぞれ独立して一価の陰イオンを表す。
【0058】
上記において、アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状またはこれらの構造を組み合わせた構造でもよい。また、以下のアリール基がアルキル基を有する場合のアルキル基、アラルキル基のアルキル基についても同様である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子および塩素原子が好ましい。
【0059】
上記において、アリール基は芳香族化合物が有する芳香環(ただし、ヘテロ原子を含まない)、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル等を構成する炭素原子を介して結合する基をいう。アリール基は該結合に寄与する炭素原子以外の環構成原子に結合する水素原子がアルキル基置換されている構造、例えば、トリル基、キシリル基を含む。
【0060】
上記において、アラルキル基は、芳香環(ただし、ヘテロ原子を含まない)にアルキル基が結合し、該アルキル基を構成する炭素原子を介して結合する基をいう。アラルキル基は、該結合に寄与するアルキル基が結合する原子以外の環構成原子に結合する水素原子がアルキル基置換されている構造を含む。
【0061】
上記において、ヘテロ環基は、環を構成する原子が炭素原子と炭素原子以外の原子からなる脂環または芳香環を構成する原子を介して結合する基である。ヘテロ環基は該結合に寄与する原子以外の環構成原子に結合する水素原子がアルキル基置換されている構造を含む。ヘテロ環が有する炭素原子以外の原子としては、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子が挙げられ、個数としては1~2個が好ましい。
【0062】
Xa-およびXb-としては、それぞれ独立して、Cl-、Br-、I-、F-、ClO4
-、BF4
-、PF6
-、SbF6
-、CF3SO3
-、CH3C6H4SO3
-、N[SO2Rf]2
-、C[SO2Rf]3
-等が挙げられる。
【0063】
ここで、Rfは、炭素数1~4のフルオロアルキル基であり、炭素数1~2のフルオロアルキル基であることが好ましく、炭素数1のフルオロアルキル基であることがより好ましい。炭素数が上記範囲内であると、耐熱性、耐湿性等の耐久性、および後述する有機溶媒への溶解性が良好である。このようなRfとしては、例えば、-CF3、-C2F5、-C3F7、-C4F9等のパーフルオロアルキル基、-C2F4H、-C3F6H、-C2F8H等が挙げられる。
【0064】
耐湿性の観点からは、上記フルオロアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましく、トリフルオロメチル基であることがより好ましい。
【0065】
Xa-およびXb-としては、それぞれ独立して、I-、BF4-、SbF6
-、PF6
-、ClO4
-、N[SO2CF3]2
-、C[SO2CF3]3
-等が好ましく、ジクロロメタン溶液中と樹脂中との光学特性の差が小さい点で、SbF6
-、PF6
-およびN[SO2CF3]2
-がより好ましく、SbF6
-、N[SO2CF3]2
-が特に好ましい。また、光耐久性の観点から、BF4-、PF6
-、N[SO2CF3]2
-が好ましい。
【0066】
色素(A1)について、中心の窒素原子に結合する3個のフェニル基の4位に結合する窒素原子に結合する基の構造に基づいて以下の式(A1a)、式(A1b)、式(A1c)でそれぞれ示される3種類の色素(A1a)~(A1c)に分類した。色素(A2)についても同様に、中心の窒素原子に結合する3個のフェニル基の4位に結合する窒素原子に結合する基の構造に基づいて以下の式(A2a)、式(A2b)、式(A2c)でそれぞれ示される3種類の色素(A2a)~(A2c)に分類した。
【0067】
色素(A1a)および色素(A2a)は、3個のフェニル基の4位に結合する窒素原子(以下、4位の窒素原子)がヘテロ環を形成していない構造である。
【0068】
色素(A1b)および色素(A2b)は、3個の4位の窒素原子に結合するそれぞれ2つの基のうち少なくとも1組が互いに結合してヘテロ環を形成した構造である。3個の4位の窒素原子に結合するそれぞれ2つの基の2組が互いに結合しても、3組全てが結合していてもよい。
【0069】
色素(A1c)および色素(A2c)は、3個の4位の窒素原子に結合する2つの基の少なくとも1つがフェニル基の3位または5位に結合する基と結合してヘテロ環を形成した構造である。色素(A1c)および色素(A2c)は、該ヘテロ環を2~6個有してもよい。
【0070】
【0071】
式(A1a)および式(A2a)において、R201~R206およびR221~R226は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、リン酸基、炭素原子間に酸素原子を有してもよく、置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基もしくはアルコキシ基、または、置換されていてもよい、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~14のアラルキル基、もしくは員数が3~14のヘテロ環基である。ただし、置換または非置換のアミノ基がフェニル基に結合した基は除く。R201~R206およびR221~R226は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましい。R207~R218およびR227~R238は、それぞれ独立して、式(A1)および式(A2)におけるR207~R218およびR227~R238と同様にできる。
【0072】
【0073】
式(A1b)において、Q1、Q2およびQ3は、式(A1)におけるR201とR202、R203とR204およびR205とR206が、それぞれ結合して、これらの基が結合していた窒素原子とともに員数3~8のヘテロ環を形成した場合の2価の基を示す。式(A2b)において、Q11、Q12およびQ13は、式(A2)におけるR221とR222、R223とR224およびR225とR226が、それぞれ結合して、これらの基が結合していた窒素原子とともに員数3~8のヘテロ環を形成した場合の2価の基を示す。
【0074】
式(A1b)および式(A2b)は、それぞれQ1~Q3およびQ11~Q13のうち少なくとも1つを有すればよく、2つ以上有してもよく、3つ有してもよい。なお、Q1~Q3およびQ11~Q13に結合する水素原子は、独立して炭素数1~12のアルキル基に置換されていてもよい。
【0075】
Q1~Q3およびQ11~Q13は、それぞれ独立して、-(CH2)n1-(n1は2~7の整数)で示されるアルキレン基であるのが好ましく、該アルキレン基の水素原子は、炭素数1~12のアルキル基に置換されていてもよい。
【0076】
ヘテロ環を形成しない場合の、R201~R206およびR221~R226は、それぞれ独立して、式(A1a)および式(A2a)におけるR201~R206およびR221~R226と同様にできる。R207~R218およびR227~R238はそれぞれ独立して、式(A1)および式(A2)におけるR207~R218およびR227~R238と同様にできる。
【0077】
【0078】
式(A1c)において、Q4~Q9は、それぞれ、R201とR207、R202とR210、R203とR211、R204とR214、R205とR215、R206とR218が結合して、これらの基が結合していた窒素原子およびフェニル基の炭素原子とともに員数4~8のヘテロ環を形成した場合の2価の基を示す。式(A2c)において、Q14~Q19は、それぞれ、R221とR227、R222とR230、R223とR231、R224とR234、R225とR235、R226とR238が結合して、これらの基が結合していた窒素原子およびフェニル基の炭素原子とともに員数4~8のヘテロ環を形成した場合の2価の基を示す。
【0079】
式(A1c)および式(A2c)は、それぞれQ4~Q9およびQ14~Q19のうち少なくとも1つを有すればよく、2つ以上有してもよく、最大6つ有してもよい。なお、Q4~Q9およびQ14~Q19に結合する水素原子は、独立して炭素数1~12のアルキル基に置換されていてもよい。
【0080】
Q4~Q9およびQ14~Q19は、それぞれ独立して、-(CH2)n2-(n2は1~5の整数)で示されるアルキレン基であるのが好ましく、該アルキレン基の水素原子は、炭素数1~12のアルキル基に置換されていてもよい。
【0081】
ヘテロ環を形成しない場合の、R201~R218およびR221~R238はそれぞれ独立して、式(A1)および式(A2)におけるR201~R218およびR221~R238と同様にできる。
【0082】
色素(A1a)および色素(A2a)としては、より具体的には、それぞれR201~R218およびR221~R238が、以下の表1および表2に示される化合物が挙げられる。例示する色素(A1a)においては、R201、R203、R205として同一の基を有するため、表1ではこれらをまとめて1つの欄に示した。R202、R204、R206についても同様にしてまとめて示した。R207~R218については、中心の窒素原子に結合する3個のフェニル基において、同じ位置の置換基をまとめて、「R207、R211、R215」、「R208、R212、R216」、「R209、R213、R217」、「R210、R214、R218」のように示した。色素(A2a)においても同様の記載方法とした。
【0083】
表1中、色素(A1a-21)および色素(A1a-23)については、互いにとなり合う3組の2つの基、R207とR208、R211とR212、およびR215とR216が、それぞれ結合して形成される2価の基を、「R207、R211、R215」の欄と、「R208、R212、R216」の欄を結合した欄に記載した。色素(A1a-22)については、互いにとなり合う3組の2つの基、R209とR210、R213とR214、およびR217とR218が、それぞれ結合して形成される2価の基を、「R209、R213、R217」の欄と、「R210、R214、R218」の欄を結合した欄に記載した。表2中の、色素(A2a-21)、色素(A2a-22)および色素(A2a-23)についても同様の記載方法とした。
【0084】
表1、2には、Xa-およびXb-を示さないが、いずれの化合物においてもXa-またはXb-は、それぞれ独立して、Cl-、Br-、I-、F-、ClO4
-、BF4
-、PF6
-、SbF6
-、CF3SO3
-、CH3C6H4SO3
-、N[SO2Rf]2
-、または、C[SO2Rf]3
-である。Xa-およびXb-は、それぞれ独立して、I-、BF4-、SbF6
-、PF6
-、ClO4
-、N[SO2CF3]2
-またはC[SO2CF3]3
-が好ましい。
【0085】
上記好ましい一価の陰イオンに対応する色素の略号を以下のように示す。色素(A1a-1)においてXa-が、I-の場合を色素(A1a-1I)、BF4-の場合を色素(A1a-1B)、SbF6
-の場合を色素(A1a-1Sb)、PF6
-の場合を色素(A1a-1P)、ClO4
-の場合を色素(A1a-1Cl)、N[SO2CF3]2
-の場合を色素(A1a-1NS)、C[SO2CF3]3
-の場合を色素(A1a-1CS)と示す。表1、2に示す他の色素においても同様である。表1、2中、Phはフェニル基を示し、-C3H7等のアルキル基は全て直鎖のアルキル基である。
【0086】
【0087】
【0088】
色素(A1b)としては、より具体的には、Q1~Q3、R207~R218が、以下の表3に示される化合物が挙げられる。例示する色素(A1b)においては、Q1、Q2、Q3として同一の基を有するため、表3ではこれらをまとめて1つの欄に示した。R207~R218については、表1と同様の記載とした。色素(A2b)としては、より具体的には、Q11~Q13、R227~R238が、以下の表4に示される化合物が挙げられる。例示する色素(A2b)においては、Q11、Q12、Q13として同一の基を有するため、表4ではこれらをまとめて1つの欄に示した。R227~R238については、表2と同様の記載とした。
【0089】
表3、4には、Xa-およびXb-を示さないが、いずれの化合物においてもXa-またはXb-は、表1に示す色素(A1a)と同様である。表3、4中、-C4H9等のアルキル基は全て直鎖のアルキル基である。
【0090】
【0091】
【0092】
色素(A1c)としては、より具体的には、Q4~Q9、「R202、R204、R206」、「R208、R212、R216」、「R209、R213、R217」、「R210、R214、R218」が以下の表5に示される化合物が挙げられる。例示する色素(A1c)においては、Q4、Q6、Q8として同一の基を有するため、表5ではこれらをまとめて1つの欄に示した。さらに、Q5、Q7、Q9を有する場合、Q5、Q7、Q9として同一の基を有するため、表5ではこれらをまとめて1つの欄に示した。「R202、R204、R206」および「R210、R214、R218」は、色素(A1c)が、Q5、Q7、Q9を有しない場合に、存在する基である。
【0093】
色素(A2c)としては、より具体的には、Q14~Q19、「R222、R224、R226」、「R228、R232、R236」、「R229、R233、R237」、「R230、R234、R238」が以下の表6に示される化合物が挙げられる。例示する色素(A2c)においては、Q14、Q16、Q18として同一の基を有するため、表6ではこれらをまとめて1つの欄に示した。さらに、Q15、Q17、Q19を有する場合、Q15、Q17、Q19として同一の基を有するため、表6ではこれらをまとめて1つの欄に示した。「R222、R224、R226」および「R230、R234、R238」は、色素(A2c)が、Q15、Q17、Q19を有しない場合に、存在する基である。
【0094】
「R202、R204、R206」、「R208、R212、R216」、「R209、R213、R217」、「R210、R214、R218」については、表1と同様の記載とした。「R222、R224、R226」、「R228、R232、R236」、「R229、R233、R237」、「R230、R234、R238」については、表2と同様の記載とした。
【0095】
なお、色素(A1c)および色素(A2c)において左右が対称の化合物、例えば、色素(A1c-1)と、「Q5、Q7、Q9」が-CH2-CH2-CH2-CH2-であり、「R201、R203、R205」が、-C2H5であり、「R207、R211、R215」、「R208、R212、R216」、「R209、R213、R217」、がHである化合物とは同じ化合物として扱う。
【0096】
表5、6には、Xa-およびXb-を示さないが、いずれの化合物においてもXa-またはXb-は、表1に示す色素(A1a)と同様である。表5、6中、-C3H7等のアルキル基は全て直鎖のアルキル基である。また、表5、6中、「Q4、Q6、Q8」、「Q5、Q7、Q9」、「Q14、Q16、Q18」、および「Q15、Q17、Q19」の欄に示す2価の基は、左側が窒素原子に結合し右側がフェニル基の炭素原子に結合する態様である。
【0097】
【0098】
【0099】
色素(A1)としては、これらの中でも、色素(A1a)として、色素(A1a-5Sb)、色素(A1a-5NS)、色素(A1a-5P)、色素(A1a-5Cl)、色素(A1a-5B)、色素(A1a-1NS)、色素(A1a-4Sb)、色素(A1a-4NS)、色素(A1a-4P)、色素(A1a-7NS)、色素(A1a-7P)、等が好ましく、色素(A1a-5Sb)、色素(A1a-5NS)、色素(A1a-5P)、色素(A1a-4Sb)、色素(A1a-4NS)、色素(A1a-4P)がより好ましい。
【0100】
また、色素(A1b)として、色素(A1b-1Sb)、色素(A1b-1NS)、色素(A1b-1P)等が好ましい。色素(A1c)として、色素(A1c-3NS)、色素(A1c-3P)、色素(A1c-4NS)、色素(A1c-4P)、色素(A1c-10NS)、色素(A1c-10P)等が好ましく、色素(A1b-1NS)、色素(A1b-1NS)、色素(A1c-4NS)、色素(A1c-4P)、色素(A1c-10NS)、色素(A1c-10P)がより好ましい。
【0101】
色素(A2)としては、これらの中でも、色素(A2a)として、色素(A2a-5Sb)、色素(A2a-5NS)、色素(A2a-5P)、色素(A2a-5Cl)、色素(A2a-5B)、色素(A2a-1NS)、色素(A2a-4Sb)、色素(A2a-4NS)、色素(A2a-4P)、色素(A2a-7NS)、色素(A2a-7P)、等が好ましく、色素(A2a-5Sb)、色素(A2a-5NS)、色素(A2a-5P)、色素(A2a-4Sb)、色素(A2a-4NS)、色素(A2a-4P)がより好ましい。
【0102】
また、色素(A2b)として、色素(A2b-1Sb)、色素(A2b-1NS)、色素(A2b-1P)等が好ましい。色素(A2c)として、色素(A2c-3NS)、色素(A2c-3P)、色素(A2c-4NS)、色素(A2c-4P)、色素(A2c-10NS)、色素(A2c-10P)等が好ましく、色素(A2b-1NS)、色素(A2b-1NS)、色素(A2c-4NS)、色素(A2c-4P)、色素(A2c-10NS)、色素(A2c-10P)がより好ましい。
【0103】
NIR色素(A)は、1種の化合物からなってもよく、2種以上の化合物からなってもよい。2種以上の化合物からなる場合は、個々の化合物がNIR色素(A)の性質を必ずしも有する必要はなく、混合物として、NIR色素(A)の性質を有すればよい。
【0104】
色素(A1)および色素(A2)は、それぞれ公知の方法で製造できる。色素(A1a)~色素(A1c)は、例えば、日本国特開2007-197492号公報に記載された方法で製造可能である。色素(A2a)~色素(A2c)は、例えば、日本国特開2009-221146号公報に記載された方法で製造可能である。
【0105】
[NIR色素(B)]
NIR色素(B)は、透明樹脂(P)に含有させて測定される波長350~1200nmの分光透過率曲線において、1100~1200nmの波長領域に最大吸収波長λmax(B)TRを有する色素である。最大吸収波長λmax(B)TRは、1100~1150nmの波長領域にあるのが好ましい。
【0106】
NIR色素(B)は、さらに、樹脂中での可視透過率が高い性能を有することが好ましい。
【0107】
NIR色素(B)としては、最大吸収波長λmax(B)TRが1100~1200nmにあれば、分子構造は特に制限されない。具体的には、シアニン色素、クロコニウム色素、フタロシアニン色素、スクアリリウム色素、ジイモニウム色素、ジケトピロロピロール色素、金属錯体色素、および金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の色素が挙げられ、可視光高透過性の観点からジイモニウム色素が特に好ましい。
【0108】
NIR色素(B)であるジイモニウム色素として具体的には、下式(B1)で示される化合物および下式(B2)で示される化合物から選ばれる1種以上が好ましい。
【0109】
【0110】
式(B1)および(B2)中の記号は以下のとおりである。
R241~R248およびR261~R268は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、リン酸基、炭素原子間に不飽和結合または酸素原子を有してもよく置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基もしくはアルコキシ基、または、置換されていてもよい、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~14のアラルキル基、もしくは員数が3~14のヘテロ環基である。R241~R248およびR261~R268において、同一の窒素原子に結合する2つの基は互いに結合して、前記窒素原子とともに員数3~8のヘテロ環を形成していてもよく、該環に結合する水素原子は、炭素数1~12のアルキル基に置換されていてもよい。
【0111】
R241~R248およびR261~R268において、置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基もしくはアルコキシ基、置換されていてもよい、炭素数6~14のアリール基、炭素数7~14のアラルキル基、もしくは員数が3~14のヘテロ環基における置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいアミノ基、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、炭素数1~6のアシルオキシ基が挙げられる。
【0112】
環を形成していない場合のR241~R248およびR261~R268は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基もしくはアルコキシ基が好ましい。アルキル基もしくはアルコキシ基の炭素数は1~8が好ましい。
【0113】
R241~R248およびR261~R268としては、以下の観点からは、炭素数4~6の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。炭素数4以上とすることにより、有機溶媒に対する溶解性が良好になり、炭素数6以下とすることにより耐熱性が向上する。耐熱性が向上する理由としては、色素の融点が上昇するからと考えられる。
【0114】
同一の窒素原子に結合する2つの基が互いに結合した場合の2価の基、すなわち、R241とR242、R243とR244、R245とR246、R247とR248が、それぞれ結合した場合の2価の基としては、-(CH2)n3-(n3は2~7の整数)で示されるアルキレン基であるのが好ましく、該アルキレン基の水素原子は、炭素数1~12のアルキル基に置換されていてもよい。
【0115】
R249~R253およびR269~R273は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよいアミノ基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、または、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12のアルキル基もしくはアルコキシ基である。それぞれ4個のR249~R253、R269~R273は、同じであっても異なってもよい。
【0116】
R249~R253およびR269~R273は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数1~12のアルキル基もしくはアルコキシ基が好ましい。アルキル基もしくはアルコキシ基の炭素数は1~6が好ましく、1~4がより好ましい。
【0117】
Xc-およびXd-はそれぞれ独立して一価の陰イオンを表す。Xc-およびXd-としては、例えば、Cl-、Br-、I-、F-、ClO4
-、BF4
-、PF6
-、SbF6
-、CF3SO3
-、CH3C6H4SO3
-、N[SO2Rf]2
-、C[SO2Rf]3
-等を挙げられる。これらのなかでも、PF6
-、N[SO2Rf]2
-、C[SO2Rf]3
-が好ましく、PF6
-、N[SO2Rf]2
-がより好ましい。
【0118】
ここで、Rfは、上記Xa-およびXb-の場合と好ましい態様も含めて同様にできる。
【0119】
色素(B1)および色素(B2)としては、より具体的には、それぞれR241~R253およびR261~R273が、以下の表7および表8に示される化合物が挙げられる。例示する色素(B1)においては、R241、R243、R245、R247として同一の基を有するため、表7ではこれらをまとめて1つの欄に示した。R242、R244、R246、R248についても同様にしてまとめて示した。R249
4~R253
4については、R249~R253がそれぞれ4個の基または原子を有することを示し、4個の基または原子が同じ場合は、その基または原子の1つのみを記載した。異なる場合は「H,H,H,-CH3」のように4つの原子または基を記載した。原子または基の結合する位置は特定しない。例えば、「H,H,H,-CH3」は、-CH3がベンゼン環の窒素原子が結合する炭素原子以外の4個の炭素原子のいずれかに結合した場合を示す。
【0120】
表7において、色素(B1-6)は、R241とR242、R243とR244、R245とR246、R247とR248が、それぞれ結合して、いずれも、-CH2-CH2-CH2-CH2-である場合を示す。これら表7における色素(B1)の記載方法を、表8における色素(B2)においても適用した。
【0121】
表7、8には、Xc-およびXd-を示さないが、いずれの化合物においてもXc-またはXd-は、それぞれ独立して、Cl-、Br-、I-、F-、ClO4
-、BF4
-、PF6
-、SbF6
-、CF3SO3
-、CH3C6H4SO3
-、N[SO2Rf]2
-、または、C[SO2Rf]3
-である。Xc-およびXd-は、それぞれ独立して、I-、BF4-、SbF6
-、PF6
-、ClO4
-、N[SO2CF3]2
-またはC[SO2CF3]3
-が好ましい。
【0122】
上記好ましい一価の陰イオンに対応する色素の略号を以下のように示す。例えば、色素(B1-1)においてXc-が、I-の場合を色素(B1-1I)、BF4-の場合を色素(B1-1B)、SbF6
-の場合を色素(B1-1Sb)、PF6
-の場合を色素(B1-1P)、ClO4
-の場合を色素(B1-1Cl)、N[SO2CF3]2
-の場合を色素(B1-1NS)、C[SO2CF3]3
-の場合を色素(B1-1CS)と示す。表7、8に示す他の色素においても同様である。表7、8中、Phはフェニル基を示し、-C3H7等のアルキル基は全て直鎖のアルキル基である。
【0123】
【0124】
【0125】
色素(B1)としては、これらの中でも、色素(B1-5NS)、色素(B1-5Sb)、色素(B1-5P)、色素(B1-4NS)、色素(B1-4Sb)、色素(B1-4P)等が好ましい。色素(B2)としては、これらの中でも、色素(B2-4NS)、色素(B2-4P)、色素(B2-5NS)、色素(B2-5P)等が好ましい。
【0126】
NIR色素(B)は、1種の化合物からなってもよく、2種以上の化合物からなってもよい。2種以上の化合物からなる場合は、個々の化合物がNIR色素(B)の性質を必ずしも有する必要はなく、混合物として、NIR色素(B)の性質を有すればよい。
【0127】
色素(B1)および色素(B2)は、それぞれ公知の方法で製造できる。色素(B1)は、例えば、日本国特開2009-137894号公報に記載された方法で製造できる。色素(B2)は、例えば、日本国特開2000-229931号公報に記載された方法で製造可能である。
【0128】
また、色素(B1)の市販品を例示すると、例えば、日本化薬(株)製のKayasorbIRG-022、同IRG-023、同IRG-024、同IRG-068、同IRG-069、同IRG-079、日本カーリット(株)製のCIR-1081、CIR-1083、CIR-1085、CIR-RL(以上、いずれも商品名)等が挙げられる。
【0129】
[NIR色素(C)]
NIR色素(C)は、透明樹脂(P)に含有させて測定される波長350~1200nmの分光透過率曲線において、630~750nmの波長領域に最大吸収波長λmax(C)TRを有するスクアリリウム色素である。最大吸収波長λmax(c)TRは、650~740nmの波長領域にあるのが好ましい。
【0130】
NIR色素(C)は、さらに、樹脂中での可視透過率が高く、最大吸収波長λmax(C)TRから短波長側へ透過率が上昇していく際は、急峻な立ち上がりを示すことが好ましい。
【0131】
NIR色素(C)は、最大吸収波長λmax(C)TRの要件を満足するスクアリリウム色素であればそれ以外は特に制限されない。NIR色素(C)として、より具体的には、下式(I)または式(II)で表されるスクアリリウム色素が好ましい。
【0132】
【0133】
ただし、式(I)中の記号は以下のとおりである。
R24およびR26は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~20のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数1~10のアシルオキシ基、炭素数6~11のアリール基、置換基を有していてもよく炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~18のアラルキル基、-NR27R28(R27およびR28は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、-C(=O)-R29(R29は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、置換基を有していてもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい炭素数1~25の炭化水素基)、-NHR30、または、-SO2-R30(R30は、それぞれ1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホ基、またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい炭素数1~25の炭化水素基)を示す。)、または、下記式(S)で示される基(R41、R42は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~10のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。kは2または3である。)を示す。
【0134】
【0135】
R21とR22、R22とR25、およびR21とR23は、互いに連結して窒素原子と共に員数が5または6のそれぞれヘテロ環A、ヘテロ環B、およびヘテロ環Cを形成してもよい。
【0136】
ヘテロ環Aが形成される場合のR21とR22は、これらが結合した2価の基-Q-として、水素原子が炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~10のアリール基または置換基を有していてもよい炭素数1~10のアシルオキシ基で置換されてもよいアルキレン基、またはアルキレンオキシ基を示す。
【0137】
ヘテロ環Bが形成される場合のR22とR25、およびヘテロ環Cが形成される場合のR21とR23は、これらが結合したそれぞれ2価の基-X1-Y1-および-X2-Y2-(窒素に結合する側がX1およびX2)として、X1およびX2がそれぞれ下記式(1x)または(2x)で示される基であり、Y1およびY2がそれぞれ下記式(1y)~(5y)から選ばれるいずれかで示される基である。X1およびX2が、それぞれ下記式(2x)で示される基の場合、Y1およびY2はそれぞれ単結合であってもよく、その場合、炭素原子間に酸素原子を有してもよい。
【0138】
【0139】
式(1x)中、4個のZは、それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基、または-NR38R39(R38およびR39は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を示す)を示す。R31~R36はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を、R37は炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を示す。
【0140】
R27、R28、R29、R31~R37、ヘテロ環を形成していない場合のR21~R23、およびR25は、これらのうちの他のいずれかと互いに結合して5員環または6員環を形成してもよい。R31とR36、R31とR37は直接結合してもよい。
【0141】
ヘテロ環を形成していない場合の、R21、R22、R23およびR25は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~20のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数1~10のアシルオキシ基、炭素数6~11のアリール基、または、置換基を有していてもよく炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~18のアラルキル基を示す。
【0142】
なお、式(I)において、特に断りのない限り、炭化水素基はアルキル基、アリール基、またはアラルキル基である。特に断りのない限り、アルキル基および、アルコキシ基、アリール基またはアラルキル基におけるアルキル部分は、直鎖状、分岐鎖状、環状またはこれらの構造を組み合わせた構造でもよい。
【0143】
以下の他の式におけるアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基においても、同様である。式(I)において、R29における置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、炭素数1~6のアシルオキシ基が挙げられる。R29を除いて「置換基を有してもよい」という場合の置換基としては、ハロゲン原子または炭素数1~15のアルコキシ基が例示できる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子および塩素原子が好ましい。
【0144】
【0145】
ただし、式(II)中の記号は以下のとおりである。
環Zは、それぞれ独立して、ヘテロ原子を環中に0~3個有する5員環または6員環であり、環Zが有する水素原子は置換されていてもよい。水素原子が置換される場合、置換基としては、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基が挙げられる。
【0146】
R1とR2、R2とR3、およびR1と環Zを構成する炭素原子またはヘテロ原子は、互いに連結して窒素原子とともにそれぞれヘテロ環A1、ヘテロ環B1およびヘテロ環C1を形成していてもよく、その場合、ヘテロ環A1、ヘテロ環B1およびヘテロ環C1が有する水素原子は置換されていてもよい。水素原子が置換される場合、置換基としては、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルキル基が挙げられる。
【0147】
ヘテロ環を形成していない場合のR1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよく、置換基を有してもよい炭化水素基を示す。R4およびヘテロ環を形成していない場合のR3は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよく、置換基を有してもよいアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。
【0148】
式(II)において、炭化水素基の炭素数は1~15が挙げられる。アルキル基もしくはアルコキシ基の炭素数は1~10が挙げられる。式(II)において、「置換基を有してもよい」という場合の置換基としては、ハロゲン原子または炭素数1~10のアルコキシ基が例示できる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子および塩素原子が好ましい。
【0149】
化合物(I)としては、例えば、式(I-1)~(I-4)のいずれかで示される化合物が挙げられる。
【0150】
【0151】
ただし、式(I-1)~式(I-4)中の記号は、式(I)における同記号の各規定と同じであり、好ましい態様も同様である。
【0152】
化合物(I-1)~(I-4)のうちでも、NIR色素(C)としては、これを含有する樹脂層の可視光透過率を高くできる観点から化合物(I-1)~(I-3)が好ましく、化合物(I-1)が特に好ましい。
【0153】
化合物(I-1)において、X1としては、基(2x)が好ましく、Y1としては、単結合または基(1y)が好ましい。この場合、R31~R36としては、水素原子または炭素数1~3のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。なお、-Y1-X1-として、具体的には、式(11-1)~(12-3)で示される2価の有機基が挙げられる。
【0154】
-C(CH3)2-CH(CH3)- …(11-1)
-C(CH3)2-CH2- …(11-2)
-C(CH3)2-CH(C2H5)- …(11-3)
-C(CH3)2-C(CH3)(nC3H7)- …(11-4)
-C(CH3)2-CH2-CH2- …(12-1)
-C(CH3)2-CH2-CH(CH3)- …(12-2)
-C(CH3)2-CH(CH3)-CH2- …(12-3)
【0155】
また、化合物(I-1)において、R21は、溶解性、耐熱性、さらに分光透過率曲線における可視域と近赤外域の境界付近の変化の急峻性の観点から、独立して、式(4-1)または式(4-2)で示される基がより好ましい。
【0156】
【0157】
式(4-1)および式(4-2)中、R81~R85は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~4のアルキル基を示す。
【0158】
化合物(I-1)において、R24は-NR27R28が好ましい。-NR27R28としては、NIR色素(C)と組み合わせる樹脂や、基材上に樹脂層を形成する際に用いる溶媒への溶解性の観点から、-NH-C(=O)-R29が好ましい。化合物(I-1)において、R24が-NH-C(=O)-R29の化合物を式(I-11)に示す。
【0159】
【0160】
化合物(I-11)における、R23およびR26は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基が好ましく、いずれも水素原子がより好ましい。
【0161】
化合物(I-11)において、R29としては、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリール基、または置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~18のアラルキル基が好ましい。置換基としては、フッ素原子等のハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のフロロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~6のアシルオキシ基等が挙げられる。
【0162】
R29としては、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~20のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数1~10のアシルオキシ基、炭素数6~11のアリール基、または、置換基を有していてもよく炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~18のアラルキル基が好ましい。
【0163】
R29としては、フッ素原子で置換されてもよい直鎖状、分岐鎖状、環状の炭素数1~17のアルキル基、炭素数1~6のフロロアルキル基および/または炭素数1~6のアルコキシ基で置換されてもよいフェニル基、および炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~18の、末端に炭素数1~6のフッ素原子で置換されていてもよいアルキル基および/または、炭素数1~6のアルコキシ基で置換されてもよいフェニル基を有するアラルキル基から選ばれる基が好ましい。
【0164】
R29としては、独立して1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、スルホ基、またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい、少なくとも1以上の分岐を有する炭素数5~25の炭化水素基である基も好ましく使用できる。このようなR29としては、例えば、下記式(11a)、(11b)、(12a)~(12e)、(13a)~(13e)で示される基が挙げられる。
【0165】
【0166】
【0167】
化合物(I-11)としては、より具体的に、以下の表9に示す化合物が挙げられる。なお、表9において、基(11-1)を(11-1)と示す。他の基についても同様である。以下の他の表においても基の表示は同様である。また、表9に示す化合物は、いずれもスクアリリウム骨格の左右において各記号の意味は同一である。以下の他の表に示すスクアリリウム色素においても同様である。
【0168】
【0169】
化合物(I-1)において、R24は、可視光の透過率、特に波長430~550nmの光の透過率を高める観点から、-NH-SO2-R30が好ましい。化合物(I-1)において、R24が-NH-SO2-R30の化合物を式(I-12)に示す。
【0170】
【0171】
化合物(I-12)における、R23およびR26は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基が好ましく、いずれも水素原子がより好ましい。
【0172】
化合物(I-12)において、R30は耐光性の点から、独立して、分岐を有してもよい炭素数1~12のアルキル基もしくはアルコキシ基、または不飽和の環構造を有する炭素数6~16の炭化水素基が好ましい。不飽和の環構造としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、フラン、ベンゾフラン等が挙げられる。R30は、独立して、分岐を有してもよい炭素数1~12のアルキル基もしくはアルコキシ基がより好ましい。なお、R30を示す各基において、水素原子の一部または全部がハロゲン原子、特にはフッ素原子に置換されていてもよい。なお、水素原子のフッ素原子への置換は、色素(I-12)を含有する樹脂層と、例えば、透明基板との密着性が落ちない程度とする。
【0173】
不飽和の環構造を有するR30として具体的には、下記式(P2)、(P3)、(P7)、(P8)、(P10)~(P13)で示される基が挙げられる。
【0174】
【0175】
化合物(I-12)としては、より具体的に、以下の表10に示す化合物が挙げられる。
【0176】
【0177】
化合物(II)としては、例えば、式(II-1)~(II-3)のいずれかで示される化合物が挙げられる。
【0178】
【0179】
ただし、式(II-1)、式(II-2)中、R1およびR2は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルキル基を示し、R3~R6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基を示す。
【0180】
ただし、式(II-3)中、R1、R4、およびR9~R12は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~15のアルキル基を示し、R7およびR8はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基を示す。
【0181】
化合物(II-1)および化合物(II-2)におけるR1およびR2は、樹脂への溶解性、可視光透過性等の観点から、独立して、炭素数1~15のアルキル基が好ましく、炭素数7~15のアルキル基がより好ましく、R1とR2の少なくとも一方が、炭素数7~15の分岐鎖を有するアルキル基がさらに好ましく、R1とR2の両方が炭素数8~15の分岐鎖を有するアルキル基が特に好ましい。
【0182】
R3は、樹脂への溶解性、可視光透過性等の観点から、独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、メチル基がより好ましい。R4は、可視域と近赤外域の境界付近の変化の急峻性の観点から、水素原子、ハロゲン原子が好ましく、水素原子がとくに好ましい。化合物(II-1)におけるR5および化合物(II-2)におけるR6は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~5のアルキル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、メチル基がより好ましい。
【0183】
化合物(II-1)および化合物(II-2)としては、より具体的に、それぞれ以下の表11および表12に示す化合物が挙げられる。表11および表12において、-C8H17、-C4H9、-C6H13は、直鎖のオクチル基、ブチル基、ヘキシル基をそれぞれ示す。
【0184】
【0185】
【0186】
化合物(II-3)におけるR1は、樹脂への溶解性、可視光透過性等の観点から、独立して、炭素数1~15のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、エチル基、イソプロピル基が特に好ましい。
【0187】
R4は、可視光透過性、合成容易性の観点から、水素原子、ハロゲン原子が好ましく、水素原子が特に好ましい。R7およびR8は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~5のアルキル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、メチル基がより好ましい。
【0188】
R9~R12は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~5のアルキル基が好ましい。-CR9R10-CR11R12-として、上記基(11-1)~(11-3)または、以下の式(11-5)で示される2価の有機基が挙げられる。
-C(CH3)(CH2-CH(CH3)2)-CH(CH3)-…(11-5)
【0189】
化合物(II-3)としては、より具体的に、以下の表13に示す化合物が挙げられる。
【0190】
【0191】
NIR色素(C)としては、これらの中でも、樹脂や溶媒への溶解性、可視透過性の点から、色素(I-11)および色素(I-12)が好ましく、表9に示す色素(I-11)および表10に示す色素(I-12)がより好ましい。さらに、これらの中でも、色素(I-11-7)、色素(I-12-2)、色素(I-12-9)、色素(I-12-15)、色素(I-12-23)、色素(I-12-24)等が好ましい。
【0192】
NIR色素(C)は、1種の化合物からなってもよく、2種以上の化合物からなってもよい。2種以上の化合物からなる場合は、個々の化合物がNIR色素(C)の性質を必ずしも有する必要はなく、混合物として、NIR色素(C)の性質を有すればよい。
【0193】
化合物(I)および化合物(II)は、それぞれ公知の方法で、製造できる。化合物(I)について、化合物(I-11)は、例えば、米国特許第5,543,086号明細書に記載された方法で製造できる。化合物(I-12)は、例えば、米国特許出願公開第2014/0061505号明細書、国際公開第2014/088063号に記載された方法で製造可能である。化合物(II)については、国際公開第2017/135359号に記載された方法で製造可能である。
【0194】
また、吸収層が任意に含有する上記UV色素として、具体例には、オキサゾール系、メロシアニン系、シアニン系、ナフタルイミド系、オキサジアゾール系、オキサジン系、オキサゾリジン系、ナフタル酸系、スチリル系、アントラセン系、環状カルボニル系、トリアゾール系等の色素が挙げられる。この中でも、オキサゾール系、メロシアニン系の色素が好ましい。また、UV色素は、吸収層に1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0195】
[透明樹脂(P)]
透明樹脂(P)は、Tgが130℃以上であり、NIR色素(A)との関係において、上記(1-1)~(1~6)を満足する樹脂である。透明樹脂(P)は、NIR色素(A)との関係において、さらに上記(1-7)~(1-9)から選ばれる1以上を満足することが好ましい。
【0196】
Tgは、DSC測定(Differential Scanning Calorimetry)により求められる。透明樹脂(P)のTgは130℃以上であれば、吸収層は、高温使用においてNIR色素(A)の光学特性を維持する耐熱性に優れる。さらに、好ましい態様において、熱や応力による変形が生じにくく、本フィルタにおいて誘電体多層膜の密着性に優れる。Tgは、200℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましい。Tgの上限は特にないが、成形加工性等の観点から、透明樹脂(P)のTgは400℃以下が好ましい。
【0197】
透明樹脂(P)としては、Tgが130℃以上であり、NIR色素(A)との関係において、上記(1-1)~(1~6)の要件を満足すれば、種類は特に制限されず、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、シクロオレフィン樹脂、およびポリエステル樹脂等から選ばれる1種以上が使用できる。
【0198】
これらのなかでも、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂およびエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種以上が好ましい。なお、誘電体多層膜との密着性の観点からは、ポリイミド樹脂が好ましく、Tgが200℃以上のポリイミド樹脂が特に好ましい。
【0199】
透明樹脂(P)は、1種の樹脂からなってもよく、2種以上の樹脂からなってもよい。2種以上の樹脂からなる場合は、個々の樹脂の性質が必ずしも上記透明樹脂(P)の要件を満たす必要はなく、混合物として、透明樹脂(P)の要件を満たせばよい。
【0200】
透明樹脂(P)としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、ポリエステル樹脂として、OKP4HT、B-OKP-2、OKP-850(以上、いずれも大阪ガスケミカル(株)製、商品名)等が挙げられる。
【0201】
透明樹脂(P)として使用可能な市販のポリカーボネート樹脂として、FPC-0220(三菱ガス化学(株)社製、商品名)、パンライト(登録商標)SP3810(帝人(株)製、商品名)、PURE-ACE(登録商標)M5(帝人(株)製、商品名)、同S5(帝人(株)製、商品名)等が挙げられる。
【0202】
透明樹脂(P)として使用可能な市販のポリイミド樹脂として、ワニスの形態で得られる、ネオプリム(登録商標)C-3650(三菱ガス化学(株)製、商品名)、同C-3G30(三菱ガス化学(株)製、商品名)、同C-3450(三菱ガス化学(株)製、商品名)、同P500(三菱ガス化学(株)製、商品名)、JL-20(新日本理化製、商品名)(これらのポリイミド樹脂のワニスには、シリカが含まれていてもよい)等が挙げられる。
【0203】
透明樹脂(P)として使用可能な市販のシクロオレフィン樹脂として、ARTON(登録商標)F4520(JSR社製、商品名)、ZEONEX(登録商標)K26R、F52R、T62R、APEL(登録商標)APL5014DP,APL6015T(いずれも三井化学社製、商品名)等が挙げられる。
【0204】
吸収層は、可視光、特に緑色や赤色の光の透過性を十分に高く維持する観点から、上記した必須の色素であるNIR色素(A)、任意の色素であるNIR色素(B)、NIR色素(C)、UV色素等の色素と透明樹脂(P)のみで構成されるのが好ましい。
【0205】
ただし、吸収層は、本発明の効果を損なわない範囲で、密着性付与剤、色調補正色素、レベリング剤、帯電防止剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、滑剤、可塑剤等の任意成分を有してもよい。
【0206】
吸収層は、NIR色素(A)の最大吸収波長λmax(A)TR±10nmの波長領域において平均OD値を1としたときに、以下の(2-1)および(2-2)を満足することが好ましく、さらに、(2-3)および(2-4)から選ばれる1以上を満足することがより好ましく、(2-1)~(2-4)を全て満足することが特に好ましい。
【0207】
(2-1)490~560nmの波長領域における平均内部透過率TAVE490-560(AL)が88%以上である。TAVE490-560(AL)は90%以上が好ましく、92%以上がより好ましい。
【0208】
(2-2)590~630nmの波長領域における平均内部透過率TAVE590-630(AL)が70%以上である。TAVE590-630(AL)は72%以上が好ましく、75%以上がより好ましい。
【0209】
(2-3)600~700nmの波長領域に内部透過率が50%となる波長λ50%を有する。波長λ50%は610~640nmの波長領域にあるのがより好ましい。
【0210】
(2-4)600~1200nmの波長領域において内部透過率が30%以下となる波長域の幅の合計が250nm以上である。600~1200nmの波長領域において、内部透過率が30%以下となる波長域は1つであっても、複数であってもよい。内部透過率が30%以下となる波長域の幅の合計は250nm以上が好ましく、300nm以上がより好ましい。該幅の合計が大きいほど、吸収層におけるNIR吸収能が高いといえる。
【0211】
吸収層においてNIR色素(A)の含有量は、本フィルタの設計に応じて本フィルタの効果を発揮できるように適宜設定される。吸収層においてNIR色素(A)の含有量は、可視光の透過率、特に緑色や赤色の透過率を確保しつつ、近赤外光、特に、長波長域の近赤外光を遮光する観点から、透明樹脂(P)100質量部に対して1~15質量部が好ましく、溶解性の観点から1~10質量部がより好ましい。
【0212】
吸収層がNIR色素(A)と、NIR色素(B)およびNIR色素(C)から選ばれる1種以上を含有する場合、その含有量は、各NIR色素において、本フィルタの設計に応じて、吸収層が(2-1)および(2-2)の特性を満足するように、好ましくは、さらに(2-3)および(2-4)から選ばれる1以上の特性を満足するように適宜選択される。
【0213】
この場合、吸収層におけるNIR色素(A)の含有量は上記と同様であり、NIR色素(B)およびNIR色素(C)から選ばれる1種以上の含有量は、可視光の透過率を確保しつつ、NIR色素(B)やNIR色素(C)の特性を発揮できる観点から、NIR色素(B)およびNIR色素(C)について、それぞれ透明樹脂(P)100質量部に対して1~15質量部が好ましく、溶解性の観点から3~10質量部がより好ましい。さらにNIR色素(A)と、NIR色素(B)およびNIR色素(C)から選ばれる1種以上の合計含有量は、透明樹脂(P)100質量部に対して2~30質量部が好ましく、溶解性の観点から5~27質量部がより好ましい。
【0214】
本フィルタにおいて、吸収層の厚さは、0.1~100μmが好ましい。吸収層が複数層からなる場合、各層の合計の厚さは、0.1~100μmが好ましい。厚さが0.1μm未満では、所望の光学特性を十分に発現できないおそれがあり、厚さが100μm超では、層の平坦性が低下し、吸収率の面内バラツキが生じるおそれがある。吸収層の厚さは、0.3~50μmがより好ましい。また、反射層や、反射防止層等の他の機能層を備えた場合、その材質によっては、吸収層が厚すぎると割れ等が生ずるおそれがある。そのため、吸収層の厚さは、0.3~10μmがより好ましい。
【0215】
吸収層は、例えば、NIR色素(A)と、好ましくはNIR色素(A)とNIR色素(B)およびNIR色素(C)から選ばれる1種以上と、特に好ましくは、NIR色素(A)とNIR色素(B)とNIR色素(C)と、透明樹脂(P)または透明樹脂(P)の原料成分と、必要に応じて配合される各成分とを、溶媒に溶解または分散させて塗工液を調製し、これを基材に塗工し乾燥させ、さらに必要に応じて硬化させて形成できる。上記基材は、本フィルタに含まれる透明基板でもよいし、吸収層を形成する際にのみ使用する剥離性の基材でもよい。また、溶媒は、安定に分散できる分散媒または溶解できる溶媒であればよい。
【0216】
また、塗工液は、微小な泡によるボイド、異物等の付着による凹み、乾燥工程でのはじき等の改善のため界面活性剤を含んでもよい。さらに、塗工液の塗工には、例えば、浸漬コーティング法、キャストコーティング法、またはスピンコート法等を使用できる。上記塗工液を基材上に塗工後、乾燥させることにより吸収層が形成される。また、塗工液が透明樹脂(P)の原料成分を含有する場合、さらに熱硬化、光硬化等の硬化処理を行う。
【0217】
また、吸収層は、押出成形によりフィルム状に製造可能でもあり、このフィルムを他の部材に積層し熱圧着等により一体化させてもよい。例えば、本フィルタが透明基板を含む場合、このフィルムを透明基板上に貼着してもよい。
【0218】
吸収層は、本フィルタの中に1層有してもよく、2層以上有してもよい。2層以上有する場合、各層は同じ構成であっても異なってもよい。さらに、吸収層は、単層からなってもよく複数の層が積層した構成であってもよい。また、吸収層は、それ自体が基板(樹脂基板)として機能するものでもよい。
【0219】
(透明基板)
本フィルタに透明基板を用いる場合、透明基板は、略400~700nmの可視光を透過すれば、構成する材料は特に制限されず、近赤外光や近紫外光を吸収する材料でもよい。例えば、ガラスや結晶等の無機材料や、透明樹脂等の有機材料が挙げられる。
【0220】
透明基板に使用できるガラスとしては、フツリン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラス等に銅イオンを含む吸収型のガラス(近赤外線吸収ガラス)、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が挙げられる。なお、「リン酸塩系ガラス」は、ガラスの骨格の一部がSiO2で構成されるケイリン酸塩ガラスも含む。
【0221】
ガラスとしては、ガラス転移点以下の温度で、イオン交換により、ガラス板主面に存在するイオン半径が小さいアルカリ金属イオン(例えば、Liイオン、Naイオン)を、イオン半径のより大きいアルカリイオン(例えば、Liイオンに対してはNaイオンまたはKイオンであり、Naイオンに対してはKイオンである。)に交換して得られる化学強化ガラスを使用してもよい。
【0222】
透明基板として使用できる透明樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0223】
また、透明基板に使用できる結晶材料としては、水晶、ニオブ酸リチウム、サファイア等の複屈折性結晶が挙げられる。透明基板の光学特性は、上記吸収層、反射層等と積層して得られる光学フィルタとして、前述した光学特性を有するとよい。結晶材料としてはサファイアが好ましい。
【0224】
透明基板は、光学フィルタとしての光学特性、機械特性等の長期にわたる信頼性に係る形状安定性の観点、フィルタ製造時のハンドリング性等から、無機材料が好ましく、特にガラス、サファイアが好ましい。
【0225】
透明基板の形状は特に限定されず、ブロック状、板状、フィルム状でもよく、その厚さは、例えば、0.03~5mmが好ましく、薄型化の観点からは、0.03~0.5mmがより好ましい。加工性の観点から言えば、ガラスからなる板厚0.05~0.5mmの透明基板が好ましい。
【0226】
(反射層)
反射層は、誘電体多層膜からなり、特定の波長域の光を遮蔽する機能を有する。反射層としては、例えば、可視光を透過し、吸収層の遮光域以外の波長の光を主に反射する波長選択性を有するものが挙げられる。反射層は、近赤外光を反射する反射領域を有することが好ましい。この場合、反射層の反射領域は、吸収層の近赤外域における遮光領域を含んでもよい。反射層は、上記特性に限らず、所定の波長域の光、例えば、近紫外域をさらに遮断する仕様に適宜設計してよい。
【0227】
反射層が近赤外光を反射する反射領域を有する場合、反射層は具体的には、以下の(iii-1)を満足することが好ましい。
(iii-1)入射角0度の分光透過率曲線において、波長850~1100nmの光の平均透過率TRE850-1100ave0°が0.2%以下である。
平均透過率TRE850-1100ave0°は0.15%以下が好ましく、0.05%以下がより好ましい。
【0228】
反射層が近赤外光を反射する反射領域を有する場合、吸収層と反射層は以下の関係を有することが好ましい。
【0229】
吸収層において入射角0度の光に対して透過率が20%を示す短波長側の波長λABSHT20-0°が650nm≦λABSHT20-0°≦800nmを満足する場合において、波長λABSHT20-0°と、反射層において入射角0度の光に対して650nm以上の波長域で透過率が20%を示す短波長側の波長λRESHT20-0°との関係が(iii-2)を満足することが好ましい。
(iii-2)λABSHT20-0°+30nm≦λRESHT20-0°≦790nm
【0230】
反射層は、さらに(iii-3)を満足することが好ましい。
(iii-3)λRESHT20-0°からλRESHT20-0°+300nmまでの波長領域の光における平均透過率が10%以下である。
【0231】
反射層は、低屈折率の誘電体膜(低屈折率膜)と高屈折率の誘電体膜(高屈折率膜)とを交互に積層した誘電体多層膜から構成される。高屈折率膜は、好ましくは、屈折率が1.6以上であり、より好ましくは2.2~2.5である。高屈折率膜の材料としては、例えばTa2O5、TiO2、Nb2O5が挙げられる。これらのうち、成膜性、屈折率等における再現性、安定性等の点から、TiO2が好ましい。
【0232】
一方、低屈折率膜は、好ましくは、屈折率1.6未満であり、より好ましくは1.45以上1.55未満である。低屈折率膜の材料としては、例えばSiO2、SiOxNy等が挙げられる。成膜性における再現性、安定性、経済性等の点から、SiO2が好ましい。
【0233】
さらに、反射層は、透過域と遮光域の境界波長領域で透過率が急峻に変化することが好ましい。この目的のためには、反射層を構成する誘電体多層膜の合計積層数は、15層以上が好ましく、25層以上がより好ましく、30層以上がさらに好ましい。ただし、合計積層数が多くなると、反り等が発生したり、膜厚が増加したりするため、合計積層数は100層以下が好ましく、75層以下がより好ましく、60層以下がより一層好ましい。また、誘電体多層膜の膜厚は、2~10μmが好ましい。
【0234】
誘電体多層膜の合計積層数や膜厚が上記範囲内であれば、反射層は小型化の要件を満たし、高い生産性を維持しながら入射角依存性を抑制できる。また、誘電体多層膜の形成には、例えば、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法等の真空成膜プロセスや、スプレー法、ディップ法等の湿式成膜プロセス等を使用できる。
【0235】
反射層は、1層(1群の誘電体多層膜)で所定の光学特性を与えたり、2層で所定の光学特性を与えたりしてもよい。2層以上有する場合、各反射層は同じ構成でも異なる構成でもよい。反射層を2層以上有する場合、通常、反射帯域の異なる複数の反射層で構成される。
【0236】
例として、2層の反射層を設ける場合、一方を、近赤外域のうち短波長帯の光を遮蔽する近赤外反射層とし、他方を、該近赤外域の長波長帯および近紫外域の両領域の光を遮蔽する近赤外・近紫外反射層としてもよい。また、例えば、本フィルタが透明基板を有する場合に、2層以上の反射層を設ける際には、全てを透明基板の一方の主面上に設けてもよく、各反射層を、透明基板を挟んでその両主面上に設けてもよい。
【0237】
(反射防止層)
反射防止層としては、誘電体多層膜や中間屈折率媒体、屈折率が漸次的に変化するモスアイ構造などが挙げられる。中でも光学的効率、生産性の観点から誘電体多層膜が好ましい。反射防止層は、反射層と同様に誘電体膜を交互に積層して得られる。
【0238】
本フィルタは、他の構成要素として、例えば、特定の波長域の光の透過と吸収を制御する無機微粒子等による吸収を与える構成要素(層)などを備えてもよい。無機微粒子の具体例としては、ITO(Indium Tin Oxides)、ATO(Antimony-doped Tin Oxides)、タングステン酸セシウム、ホウ化ランタン等が挙げられる。ITO微粒子、タングステン酸セシウム微粒子は、可視光の透過率が高く、かつ1200nmを超える赤外波長領域の広範囲に光吸収性を有するため、かかる赤外光の遮蔽性を必要とする場合に使用できる。
【0239】
本フィルタは、反射層と、NIR色素(A)と透明樹脂(P)を含有する吸収層を有することで、可視光特には緑色や赤色の透過性を良好に維持しながら、近赤外光の遮蔽性において、特に長波長近赤外光の遮蔽性に優れる。
【0240】
本フィルタは、入射角0度で測定される光学特性に関し、以下の(3-1)~(3-3)の要件をすべて満足することが好ましい。本フィルタは、さらに、これらに加えて、(3-4)~(3-9)の要件をすべて満足することがより好ましい。
【0241】
(3-1)NIR色素(A)の最大吸収波長λmax(A)TR±10nmの波長領域における最小OD値が4以上である。入射角0度における該最小OD値は5以上がより好ましい。
【0242】
(3-2)490~560nmの波長領域における平均透過率TAVE490-560(0°)が82%以上である。平均透過率TAVE490-560(0°)は83.0%以上がより好ましく、83.5%以上がさらに好ましい。
【0243】
(3-3)590~630nmの波長領域における平均透過率TAVE590-630(0°)が50%以上である。平均透過率TAVE590-630(0°)は55%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましい。
【0244】
(3-4)600~800nmの波長領域において、入射角0度で透過率が50%となる波長λ50%(0°)と入射角30度で透過率が50%となる波長λ50%(30°)の差の絶対値|λ50%(30°)-λ50%(0°)|が5nm以下である。|λ50%(30°)-λ50%(0°)|は4nm以下がより好ましく、3nm以下がさらに好ましい。
【0245】
(3-5)入射角30度で測定される490~560nmの波長領域における平均透過率TAVE490-560(30°)が80%以上である。平均透過率TAVE490-560(30°)は81%以上がより好ましく、83%以上がさらに好ましい。
【0246】
(3-6)入射角30度で測定される、NIR色素(A)の最大吸収波長λmax(A)TR±10nmの波長領域における最小OD値が3以上である。入射角30度における該最小OD値は4以上がより好ましい。
【0247】
(3-7)600~800nmの波長領域において、入射角0度で透過率が50%となる波長λ50%(0°)と入射角50度で透過率が50%となる波長λ50%(50°)の差の絶対値|λ50%(50°)-λ50%(0°)|が15nm以下である。|λ50%(50°)-λ50%(0°)|は13nm以下がより好ましく、10nm以下がさらに好ましい。
【0248】
(3-8)入射角50度で測定される490~560nmの波長領域における平均透過率TAVE490-560(50°)が70%以上である。平均透過率TAVE490-560(50°)は72%以上がより好ましく、74%以上がさらに好ましい。
【0249】
(3-9)入射角50度で測定される、NIR色素(A)の最大吸収波長λmax(A)TR±10nmの波長領域における最小OD値が3以上である。入射角50度における該最小OD値は4以上がより好ましい。
【0250】
本フィルタは、例えば、デジタルスチルカメラ等の撮像装置とレーザ光を用いる光学部品をともに有する機器において、撮像装置用の光学フィルタの用途に有用である。また、本フィルタは、環境光センサー等の光学センサーの用途に有用である。
【0251】
本フィルタを用いた撮像装置は、固体撮像素子と、撮像レンズと、本フィルタとを備える。本フィルタは、例えば、撮像レンズと固体撮像素子との間に配置されたり、撮像装置の固体撮像素子、撮像レンズ等に粘着剤層を介して直接貼着されたりして使用できる。
【実施例】
【0252】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。まず、実施例の吸収層に用いるNIR色素(A)の合成例および特性を説明する。次いで、光学フィルタの実施例について説明する。
【0253】
[試験例1~29;色素の合成、評価]
(色素の合成、評価)
以下の方法で、NIR色素(A)、NIR色素(B)、その他のNIR色素を合成した。合成例1~11がNIR色素(A)の合成例であり、合成例12~15がNIR色素(B)の合成例であり、合成例16、17がその他のNIR色素の合成例である。また、NIR色素(A)として、下記式(S0772)に示す市販品であるFew Chemicals社製の商品名S0772、その他のNIR色素として、下記式(S2437)に示す市販品であるFew Chemicals社製の商品名S2437を準備した。
【0254】
また、これらの色素の光学特性の評価には、紫外可視近赤外分光光度計((株)日立ハイテクサイエンス社製、UH4150)を用い、以下の光学特性(分光透過率曲線)の評価にも同様に、UH4150を用いた。
【0255】
【0256】
【0257】
[合成例1]
以下に示す反応経路にしたがい、色素(A1a-5Sb)を合成した。
【0258】
【0259】
<ステップ1>
1Lナスフラスコにトリス(4-ニトロフェニル)アミン(25g、66mmol)とパラジウム-活性炭素(パラジウム10%)(6.5g)、1、4-ジオキサン(350mL)、メタノール(300mL)を加え、0℃に冷却・撹拌し、ギ酸アンモニウム(65g、990mmol)を追加し、室温で4h撹拌した。反応液を濾過後、ろ液をジクロロメタンで抽出操作を行い、溶媒を除去し、残った固体にヘキサンを300mL入れて1日撹拌し、洗浄した。ヘキサンをろ過操作で取り除いたところ、灰色固体である中間体1を18.1g(収率95%)得た。
【0260】
<ステップ2>
1Lナスフラスコにステップ1で得られた中間体1(15g、52mmol)と炭酸カリウム(71.4g、520mmol)、1-ブロモ-2メチルプロパン(127g、930mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(150mL)を加え、115℃で24h撹拌した。室温に戻した後、ろ過操作を実施し、ジクロロメタンで洗浄後、ろ液をジクロロメタンで抽出し、溶媒除去後、メタノールで洗浄を行ったところ、茶色固体である中間体2を18.2g(収率56%)得た。
【0261】
<ステップ3>
500mLナスフラスコにステップ2で得られた中間体2(3g、4.8mmol)とN,N-ジメチルホルムアミド(60mL)を加え、60℃で溶解するまで撹拌した。その後、ヘキサフルオロアンチモン(V)酸銀(3.79g、11mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(30mL)に溶解させた溶液を、中間体2を溶解させた溶液に加え、60℃で3h撹拌させた。析出してきた固体をろ過後、回収した固体をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=1000:30)にて単離し、溶媒除去した後、固体をジクロロメタンに少量溶解させ、酢酸エチルを用いて再沈作業を行い、緑色固体である色素(A1a-5Sb)を2.8g(収率54%)得た。
【0262】
[合成例2]
500mLナスフラスコに合成例1のステップ2で得られた中間体2(3g、4.8mmol)と酢酸エチル(50mL)を加え、60℃で溶解するまで撹拌した。その後、カリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(3.8g、12mmol)とペルオキソ二硫酸アンモニウム(2.7g、12mmol)をアセトニトリル(30mL)と水(30mL)の混合溶媒に溶解させた溶液を、中間体2を溶解させた溶液に加え、60℃で4h撹拌させた。反応終了後、室温に戻し、水(100mL)とヘキサン(200mL)を加え、固体を析出させ、ろ過し、酢酸エチルで洗浄した。回収した固体をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=1000:30)にて単離し、溶媒除去した後、固体をジクロロメタンに少量溶解させ、酢酸エチルを用いて再沈作業を行い、緑色固体である色素(A1a-5NS)を3.6g(収率63%)得た。
【0263】
[合成例3]
カリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドをヘキサフルオロリン酸カリウム(2.2g、12mmol)に変更する以外は合成例2と同様の方法で、緑色固体である色素(A1a-5P)を2.6g(収率59%)得た。
【0264】
[合成例4]
カリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドを過塩素酸ナトリウム(1.5g、12mmol)に変更する以外は合成例2と同様の方法で、緑色固体である色素(A1a-5Cl)を2.5g(収率63%)得た。
【0265】
[合成例5]
カリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドをテトラフルオロホウ酸ナトリウム(1.3g、12mmol)に変更する以外は合成例2と同様の方法で、緑色固体である色素(A1a-5B)を2.7g(収率71%)得た。
【0266】
[合成例6]
以下に示す反応経路にしたがい、色素(A1a-4P)を合成した。
【0267】
【0268】
<ステップ1>
合成例1のステップ2で用いた1-ブロモ-2メチルプロパンを1-ブロモブタン(127g、930mmol)に変更する以外は同様の原料を用いて反応させ、ジクロロメタンで抽出操作を行った後、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1000:40)にて単離し、淡黄色の油状物質である中間体3を23g(収率71%)得た。
【0269】
<ステップ2>
500mLナスフラスコに合成例6のステップ1で得られた中間体3(3g、4.8mmol)と酢酸エチル(50mL)を加え、60℃で溶解するまで撹拌した。その後、ヘキサフルオロリン酸カリウム(2.2g、12mmol)とペルオキソ二硫酸アンモニウム(2.7g、12mmol)をアセトニトリル(30mL)と水(30mL)の混合溶媒に溶解させた溶液を、中間体3を溶解させた溶液に加え、60℃で4h撹拌させた。反応終了後、室温に戻し、水(100mL)とヘキサン(200mL)を加え、固体を析出させ、ろ過し、酢酸エチルで洗浄した。回収した固体をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:酢酸エチル=10:1)にて単離し、溶媒除去した後、固体をジクロロメタンに少量溶解させ、ヘキサンを用いて再沈作業を行い、緑色固体である色素(A1a-4P)を2.8g(収率63%)得た。
【0270】
[合成例7]
ヘキサフルオロリン酸カリウムをカリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(3.8g、12mmol)に変更する以外は合成例6のステップ2と同様の方法で、緑色固体である色素(A1a-4NS)を3.1g(収率54%)得た。
【0271】
[合成例8]
ヘキサフルオロリン酸カリウムをテトラフルオロホウ酸ナトリウム(1.3g、12mmol)に変更する以外は合成例6のステップ2と同様の方法で、緑色固体である色素(A1a-4B)を0.9g(収率22%)得た。
【0272】
[合成例9]
以下に示す方法にしたがい、色素(A1a-7P)を合成した。
【0273】
<ステップ1>
合成例1のステップ2で用いた1-ブロモ-2メチルプロパンを1-ブロモオクタン(中間体1に対して18等量)に変更する以外は同様の原料を用いて反応させ、ジクロロメタンで抽出操作を行った後、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1000:40)にて単離し、淡黄色の油状物質である中間体4を13.4g(収率67%)得た。
【0274】
<ステップ2>
合成例6のステップ2に記載した中間体3を中間体4に変更した以外は同様の方法で、緑色の固体である色素(A1a-7P)を1.0g(収率20%)得た。
【0275】
[合成例10]
合成例9のステップ2で用いたヘキサフルオロリン酸カリウムをカリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドに変更した以外は同様の方法で、緑色の固体である色素(A1a-7NS)を2.4g(収率37%)得た。
【0276】
[合成例11]
以下に示す方法にしたがい、色素(A1a-1NS)を合成した。
【0277】
<ステップ1>
合成例1のステップ2で用いた1-ブロモ-2メチルプロパンをブロモエタン(中間体1に対して18等量)に変更する以外は同様の原料を用いて反応させ、ジクロロメタンで抽出操作を行った後、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)にて単離し、淡黄色の油状物質である中間体5を1.7g(収率12%)得た。
【0278】
<ステップ2>
合成例6のステップ2に記載した中間体3を中間体5に変更し、ヘキサフルオロリン酸カリウムをカリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドに変更した以外は同様の方法で、緑色の固体である色素(A1a-1NS)を0.8g(収率22%)得た。
【0279】
[合成例12]
以下に示す反応経路にしたがい、色素(B1-5Sb)を合成した。
【0280】
【0281】
<ステップ1>
1Lナスフラスコに4-ブロモアニリン(25.4g、148mmol)とN,N-ジメチルホルムアミド(80mL)を加え、110℃で溶解するまで撹拌した。その後、1-ブロモ-2-メチルプロパン(54.7g、399mmol)とN-エチルジイソプロピルアミン(57.3g、444mmol)を加え、130℃で15h反応させた。室温に戻した後、酢酸エチル:ヘキサン=1:4の混合溶媒で抽出操作を実施し、溶媒除去後、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1000:50)にて単離したところ、白色固体である中間体6を15g(収率36%)で得た。
【0282】
<ステップ2>
1Lナスフラスコにステップ1で得られた中間体6(12g、42mmol)と、1,4-フェニレンジアミン(1.1g、9.8mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド(8g、83mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(1g、1.1mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(2g、4mmol)、1,4-ジオキサン(80mL)を加え、100℃で20h反応させた。室温に戻し、セライトろ過で触媒の残存固体を除去後、ジクロロメタンと塩化アンモニウム飽和水溶液で抽出操作を実施し、溶媒除去後、析出した固体をメタノールで洗浄することで、茶色固体である中間体7を17.5g(収率97%)で得た。
【0283】
<ステップ3>
500mLナスフラスコにステップ2で得られた中間体7(2g、2mmol)とN,N-ジメチルホルムアミド(20mL)を加え、60℃で溶解するまで撹拌した。その後、ヘキサフルオロアンチモン(V)酸銀(1.6g、4.5mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(20mL)に溶解させた溶液を、中間体7を溶解させた溶液に加え、60℃で2h撹拌させた。析出してきた固体をろ過後、N,N-ジメチルホルムアミドで洗浄し、ろ液に水をゆっくり150mL程度滴下し、析出してきた固体を再度ろ過し、水とヘキサンで洗浄後、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:酢酸エチル=7:3)にて単離し、溶媒除去した後、固体をジクロロメタンに少量溶解させ、酢酸エチルを用いて再沈作業を行い、赤茶色固体である色素(B1-5Sb)を1.3g(収率43%)得た。
【0284】
[合成例13]
500mLナスフラスコに合成例12のステップ2で得られた中間体7(5g、5.4mmol)と酢酸エチル(50mL)を加え、60℃で溶解するまで撹拌した。その後、カリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(4.4g、13.8mmol)とペルオキソ二硫酸アンモニウム(3.1g、13.5mmol)をアセトニトリル(30mL)と水(30mL)の混合溶媒に溶解させた溶液を、中間体7を溶解させた溶液に加え、60℃で4h撹拌させた。反応終了後、室温に戻し、水(100mL)とヘキサン(200mL)を加え、固体を析出させ、ろ過し、酢酸エチルで洗浄した。回収した固体をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=1000:30)にて単離し、溶媒除去した後、固体をジクロロメタンに少量溶解させ、ヘキサンを用いて再沈作業を行い、赤茶色固体である色素(B1-5NS)を6.0g(収率75%)得た。
【0285】
[合成例14]
カリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドをヘキサフルオロリン酸カリウムに変更する以外は合成例2と同様の方法で、赤茶色固体である色素(B1-5P)を収率36%で得た。
【0286】
[合成例15]
合成例12のステップ1で用いた1-ブロモ-2メチルプロパンを1-ブロモブタン(54.7g、399mmol)に変更する以外は同様の方法で、n-ブチルが修飾された中間体を合成(収率89%)し、合成例12のステップ2,3と同様の方法を用いて赤茶色固体である色素(B1-4Sb)を収率72%で得た。
【0287】
[合成例16]
以下に示す反応経路にしたがい、色素(S1)を合成した。すなわち、European Journal of Medical Chemistry, 54, 647, (2012)を参考にして作製した生成物(10)(6.5mmol)とスクアリン酸(3.4mmol)を500mLナスフラスコにいれ、トルエン(330mL)と1-ブタノール(110mL)に溶解させ、キノリン(8mmol)添加し、150℃で4時間撹拌させた。なお、生成物(10)は、2-メチル-ベンゾ[c,d]インドールの1位の水素がRに置換された化合物のヨウ素塩であり、Rは-CH2-CH(C6H13)(C8H17)である。
【0288】
反応終了後、溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:2)にて単離し、溶媒除去し、ヘキサン洗浄後、赤褐色固体である色素(S1)(0.5g、収率25%)を得た。
【0289】
【0290】
[合成例16]
以下に示す反応経路にしたがい、色素(S2)を合成した。
【0291】
【0292】
<ステップ1>
1Lの三口フラスコにbenzo[cd]indol-2(1H)-one(30g,177mmol)とクロロホルム(500mL)を入れ、65℃で加熱撹拌し原料を溶解させた後、0℃まで冷却し、臭素(28.3g,177mmol)をゆっくり滴下した。滴下終了後、室温に戻し、24h撹拌後、ヘキサンを反応液に加えて希釈し、析出物を濾過し回収した。ろ紙上の固体を複数回ヘキサンを用いて洗浄し、真空乾燥させ、黄土色の固体である中間体8を60g(収率100%以上)得た。
【0293】
<ステップ2>
1Lのナスフラスコに、ステップ1で合成した中間体8(30g,121mmol)と4-Dimethylaminopyridine(2.0g,16mmol)、ヨウ化カリウム(4.0g,24mmol)とスルホラン(300mL)を加え、70℃で1h撹拌した。反応液中に、水酸化カリウム(21g,374mmol)と7-(Bromomethyl)pentadecane(111g,363mmol)を加え、70℃で19h反応させた。反応終了後、室温に戻し、ヘキサンと酢酸エチルを4:1で混合した有機溶媒と水を用いて抽出操作を行い、溶媒除去した。その後、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1000:10)にて単離し、黄色の油状物質である中間体9を45g(収率78%)得た。
【0294】
<ステップ3>
1Lのナスフラスコに、ステップ2で合成した中間体9(33g,70mmol)と酢酸エチル(2.5g,28mmol)、ヨウ化銅(I)(1.9g,10mmol)、28%ナトリウムメトキシド/メタノール溶液(42g)を加え、90℃で6h撹拌・反応させた。さらにヨウ化銅(I)(1g,5mmol)と28%ナトリウムメトキシド/メタノール溶液(20g)を添加し、さらに90℃で15h撹拌させた。反応終了後、室温に戻し、セライト濾過を行った後、ジクロロメタンと水で抽出操作を行い、溶媒除去した。その後、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1000:30)にて単離し、黄色の油状物質である中間体10を26g(収率88%)で得た。
【0295】
<ステップ4>
2Lの三口フラスコに、ステップ3で合成した中間体10(26g,61mmol)とジクロロメタン(500mL)を入れ、-78℃に冷却した。その後、1Mの三臭化ホウ素ジクロロメタン溶液(200mL)をゆっくり滴下し、滴下終了後に反応溶液を室温に戻し、2h撹拌した。反応終了後、0℃に冷却し、水200mLをゆっくり加え、三臭化ホウ素をクエンチした。析出した固体を濾過し、ろ液をジクロロメタンと炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出操作を行い、溶媒除去を行った。濾過時に回収した固体と合わせて、ヘキサンで複数回洗浄し、黄色固体である中間体11を24g(収率95%)で得た。
【0296】
<ステップ5>
1Lの三口フラスコに、ステップ4で合成した中間体11(10g,24mmol)と炭酸カリウム(16.9g,120mmol)、DMF(120mL)を加え、70℃で撹拌した。その後、7-(Bromomethyl)pentadecane(8.95g,29mmol)を滴下し、70℃で2h撹拌させた。反応終了後、ヘキサンと酢酸エチルを1:1で混合させた有機溶媒と水で抽出操作を行い、溶媒除去した。そして、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)にて単離し、黄色の油状物質である中間体12を14g(収率91%)で得た。
【0297】
<ステップ6>
1Lの三口フラスコに、ステップ5で合成した中間体12(14g,22mmol)とエピクロロヒドリン(8.2g,88mmol)、クロロホルム(50mL)、ジエチルエーテル(20mL)を加え、70℃で撹拌する。Boron Trifluoride-Ethyl Ether Complex(15.9g,110mmol)とクロロホルム(30mL)の混合溶液を滴下し、130℃に昇温させて15h撹拌・反応させた。その後、反応溶液を冷却し、トルエンを加え、エバポレーターで溶媒除去を2回ほど行い、橙褐色の油状物質(中間体13’)を得た。油状物質にエタノール(20mL)とメルドラム酸(4.6g,32mmol)を加え、トリエチルアミン(11.4g,110mmol)を加え、室温で5h撹拌させた。反応終了後、トルエンを加え、エバポレーターで溶媒除去を2回ほど行い、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=6:4)にて単離し、マゼンダ色の油状物質である中間体13を8g(収率47%)で得た。
【0298】
<ステップ7>
1Lのナスフラスコに、ステップ6で合成した中間体13(8g,10mmol)と塩酸(15mL)を加え、130℃で1h加熱した。その後、テトラフルオロほう酸(3mL)を加え、さらに1h反応させた。反応終了後、室温に戻し、50mLの水を加え、テトラフルオロほう酸を20mL添加した。その後、ジクロロメタンと水を用いて抽出操作を行い、溶媒除去したところ、橙色の油状物質である中間体14を7.1g(収率94%)で得た。
【0299】
<ステップ8>
1Lのナスフラスコに、ステップ7で合成した中間体14(7.1g,10mmol)とスクアリン酸(0.59g,5.2mmol)、トルエン(500mL)、1-ブタノール(170mL)、キノリン(1.77g)を加え、130℃で2h反応させた。その後、エバポレーターで溶媒除去を行い、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=9:1)にて単離したところ、黒色固体である色素(S2)を3.4g(収率55%)で得た。
【0300】
上記で用意した各種色素と透明樹脂を用いて色素含有樹脂層を作製し光学特性を測定した。また、各種色素をジクロロメタンに溶解して光学特性を測定し、色素含有樹脂層における光学特性と比較した。透明樹脂としては、以下の市販品を用いた。結果を表14に示す。
【0301】
(透明樹脂(P))
樹脂A;ネオプリム(登録商標)C-3G30(三菱ガス化学(株)製、商品名)、ポリイミド樹脂を含有するワニス、含有するポリイミド樹脂のTg:320℃
樹脂B;ARTON(登録商標)F4520(JSR(株)製、商品名)、シクロオレフィン樹脂、Tg:151℃
樹脂C;B-OKP-2(大阪ガスケミカル(株)製、商品名)、ポリエステル樹脂、Tg:150℃
樹脂D;OKP-850(大阪ガスケミカル(株)製、商品名)、ポリエステル樹脂、Tg:151℃
樹脂E;パンライト(登録商標)SP3810(帝人(株)製、商品名)、ポリカーボネート樹脂、Tg:150℃
(その他の透明樹脂)
樹脂F;BR50(三菱レイヨン(株)製、商品名)、アクリル樹脂、Tg:100℃
【0302】
シクロヘキサノンに溶解させた透明樹脂に、上記で用意した色素を透明樹脂の固形分濃度に対して10質量%均一に溶解させた。得られた溶液をガラス板(D263:SCHOTT社製、商品名)上に塗布し、乾燥して膜厚1μm程度の色素含有樹脂層を得た。色素含有樹脂層付きガラス板の分光透過率曲線とガラス板の分光透過率曲線を用いて、色素含有樹脂層の分光透過率曲線を得た。
【0303】
作製した色素含有樹脂層の内部透過率分光は、紫外可視近赤外分光光度計を用いて波長350~1200nmの範囲を測定し、内部透過率T[%](=実測透過率[%]/(100-実測反射率[%])×100[%])を用いて算出した。表中に記載の色素の添加量(色素濃度)は、膜厚2μmにおいて最大吸収波長λmaxTRでの光の内部透過率が10%になるように調整した際の、透明樹脂100質量部に対する質量部である。
【0304】
最大吸収波長λmaxTRでの光の透過率が10%になるように調整した分光透過率曲線から、波長435~480nmの光の平均内部透過率TAVE435-480TR、波長490~560nmの光の平均内部透過率TAVE490-560TR、波長590~630nmの光の平均内部透過率TAVE590-630TRを求めた。650~1150nmの波長領域で内部透過率が50%となる2つの波長を有する場合の該2つの波長間の幅WT50%を求めた。なお、表には650~1150nmの波長領域で内部透過率が50%となる短波長側の波長をλSH50%、長波長側の波長をλLG50%で示した。
【0305】
ジクロロメタンに溶解して波長350~1200nmの光吸収スペクトルを測定して分光透過率曲線から、最大吸収波長λmaxDCMを求めた。さらに、ジクロロメタン中の色素濃度を、最大吸収波長λmaxDCMでの光の透過率が10%になるように調整した分光透過率曲線から、波長435~480nmの光の平均透過率TAVE435-480DCM、波長490~560nmの光の平均透過率TAVE490-560DCM、波長590~630nmの光の平均透過率TAVE590-630DCMを求めて、色素含有樹脂層の平均内部透過率との差を算出した。表には、「TAVE435-480の差」の欄にTAVE435-480DCM-TAVE435-480TRを示した。同様に「TAVE490-560の差」の欄にTAVE490-560DCM-TAVE490-560TRを、「TAVE590-630の差」の欄にTAVE590-630DCM-TAVE590-630TRを示した。
【0306】
【0307】
また、
図7に試験例2における色素(A1a-5NS)の透明樹脂(P;樹脂A)中およびジクロロメタン中における分光透過率曲線を示す。さらに、
図8に試験例19における色素(A1a-5NS)の透明樹脂(樹脂F)中およびジクロロメタン中における分光透過率曲線を示す。なお、
図7、
図9において透明樹脂中で測定された色素の分光透過率曲線には、両矢印でW
T50%の範囲を示した。
【0308】
表14から、試験例1~18のNIR色素(A)と透明樹脂(P)の組合せにおいて、(1-1)~(1-6)の特性を有することがわかる。NIR色素(A)は、WT50%で示す近赤外光の吸収の幅が大きい点で、トリス型イモニウム色素が好ましいことがわかる。また、NIR色素(A)は、ジクロロメタン溶液中と樹脂中との光学特性の差が小さい点では、Xa-がN[SO2CF3]2
-、SbF6
-またはPF6
-が好ましく、N[SO2CF3]2
-が特に好ましいことがわかる。透明樹脂(P)としては可視光透過率を高くできる点からポリイミド樹脂が好ましいことがわかる。
【0309】
試験例19~23においては、NIR色素と透明樹脂のいずれかがNIR色素(A)または透明樹脂(P)の要件を満たさないために、(1-1)~(1-6)の特性の1以上を満たさないことがわかる。試験例24~28は、色素(B1)と透明樹脂(P)または透明樹脂(P)の要件を満たさない透明樹脂を組合せた例であり、色素(B1)はポリイミド樹脂のような透明樹脂(P)と組合せることでNIR色素(B)として好ましく機能することがわかる。
【0310】
[例1~11;光学フィルタの製造、評価]
(光学フィルタの製造)
図2に示す光学フィルタ10Bと同様の構成の光学フィルタを以下の方法で製造し、評価した。表15に光学フィルタの構成と評価結果を示す。例1~7が実施例であり、例8~11が比較例である。
【0311】
各例において、透明基板として、CuO含有フツリン酸ガラス基板(AGC(株)社製、厚さ0.2mm)または、厚さ0.08mmの帝人ピュアエースWRM5-80(帝人(株)製、商品名、ポリカーボネート樹脂、Tg215℃)樹脂基板を使用した。表には、それぞれ「吸収ガラス」、「PC樹脂」と記載した。
【0312】
反射層としては、以下のとおり形成した誘電体多層膜を用いた。誘電体多層膜は、透明基板の一方の主面に、蒸着法により、TiO2膜とSiO2膜を交互に合計42層積層して形成した。反射層の構成は、誘電体多層膜の積層数、TiO2膜の膜厚およびSiO2膜の膜厚をパラメータとしてシミュレーションし、入射角0度の分光透過率曲線において、波長850~1100nmの光の平均透過率が0.03%となる設計とした。
【0313】
また、透明基板の反射層が形成されたのと反対側の主面上に、表に示す透明樹脂と、NIR色素(A)、NIR色素(B)、NIR色素(C)(色素(I-12-23))、およびその他のNIR色素を組み合わせて、厚さ約2.0μmの吸収層を形成した。ここで、色素(I-12-23)において、樹脂Aに含有させて測定される波長350~1200nmの分光透過率曲線における最大吸収波長λmax(C)TRは714nmである。
また、表中の色素の含有量は、透明樹脂100質量部に対する色素の質量部である。
【0314】
その他のNIR色素として以下の色素(15)、色素(16)および色素(17)を用いた。ここで、色素(15)は、樹脂Aに含有させて測定される波長350~1200nmの分光透過率曲線における最大吸収波長λmax(A)TRが937nmであるが、(1-4)の特性を満たさない色素である。色素(16)および色素(17)において、樹脂Fに含有させて測定される波長350~1200nmの分光透過率曲線における最大吸収波長λmaxTRは、それぞれ839nmおよび771nmである。
【0315】
[色素(15)の合成]
以下に示す反応経路に従って色素(15)を合成した。
【0316】
【0317】
<ステップb1>
フラスコに2-ブロモチオフェン(9.00g、55.2mmmol)、マグネシウム(4.03g、165mmol)を入れ、窒素雰囲気下で無水テトラヒドロフラン(55mL)に溶解した。前記混合溶液を80℃で1時間撹拌した。別フラスコに[1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)ジクロリド(1.20g、2.21mmol)、2,3-ジブロモチオフェン(12.7g、52.5mmol)を入れ、無水ジエチルエーテル(110mL)に溶解した。前記ジエチルエーテル混合溶液を0℃に冷やし、前記テトラヒドロフラン混合溶液を滴下して、室温で3時間撹拌した。反応終了後、前記混合溶液に水(55mL)を加え、酢酸エチルで抽出して、有機層を飽和食塩水で洗い、溶媒を除去して、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で中間体A3-11(8.93g、収率66%)を得た。
【0318】
<ステップb2>
フラスコにステップb1で得た中間体A3-11(8.09g、33mmol)を入れ、窒素雰囲気下で無水ジエチルエーテル(230mL)に溶解した。前記溶液を-78℃に冷やし、1.6Mのノルマルブチルリチウムのヘキサン溶液(20mL、32.0mmol)を滴下して、1時間撹拌した。続いてベンゾフェノン(6.56g、36.0mmol)を溶かした無水ジエチルエーテル溶液(120mL)を滴下した。前記混合溶液を室温で1昼夜撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液(200mL)を加え、ジイソプロビルエーテルで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗い、溶媒を除去して、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=1:1)で中間体A3-12(8.81g、収率77%)を得た。
【0319】
<ステップb3>
フラスコにステップb2で得た中間体A3-12(4.94g、14.4mmol)、アンバーリスト15(2.30g)を入れ、窒素雰囲気下で無水トルエン(300mL)に溶解した。前記混合溶液を7時間還流撹拌した。反応終了後、濾過して濾液を得て、溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジクロロメタン=2:1)で中間体A3-13(4.29g、91%)を得た。
【0320】
<ステップb4>
フラスコにステップb3で得た中間体A3-13(4.00g、12.1mmol)を入れ、窒素雰囲気下で無水ジメチルホルムアミド(120mL)に溶解した。前記溶液に、N-ブロモスクシンイミド(2.16g、12.1mmol)を溶かした無水ジメチルホルムアミド溶液(30mL)を滴下した。前記混合液を室温で一昼夜撹拌した。反応終了後、氷水に注ぎ、ジイソプロピルエーテルで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗い、溶媒を除去した後、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン)で中間体A3-14(3.67g、収率74%)を得た。
【0321】
<ステップb5>
フラスコにステップb4で得られた中間体A3-14(3.50g、8.55mmol)、削り状マグネシウム(0.416g、17.1mmol)を入れ、窒素雰囲気下で無水テトラヒドロフラン(20ml)に溶解した。上記溶液を3時間還流して、-40℃に冷やした。別フラスコにN-クロロスクシンイミド(1.03g、7.70mmol)を窒素雰囲気下で無水トルエン(20ml)に溶解し、ビス-(2-エチルヘキシル)アミン(1.86g、7.70mmol)を加えて、20分間撹拌した。
【0322】
-40℃に冷やした混合溶液にオルトチタン酸テトライソプロピル(2.43g、8.55mmol)を滴下し、5分間撹拌した後、続いてN-クロロスクシンイミドとビス-(2-エチルヘキシル)アミンの混合溶液を滴下した。室温で3時間撹拌し、反応終了後、飽和炭酸カリウム水溶液(17ml)を加えた。続いて酢酸エチルで希釈して濾過して、得られた溶液を酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗い、溶媒を除去して、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トリエチルアミン=100:3)で中間体A3-15(1.34g、収率27.5%)を得た。
【0323】
<ステップb6>
フラスコにステップb5で得られた中間体A3-15(1.30g、2.28mmol)、3,4-ジヒドロキシ-3-シクロブテン-1,2-ジオン(0.130g、1.14mmol)を入れ、窒素雰囲気下でノルマルブタノール(6ml)とトルエン(6ml)の混合溶液に溶解した。3時間還流撹拌して、反応終了後、溶媒を除去して、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール:トリエチルアミン=100:1:3)で色素(15)(0.445g、収率32%)を得た。
【0324】
[色素(16)、色素(17)の合成]
J. Heterocyclic. Chem., 42, 959, (2005)に記載された方法で色素(16)および色素(17)を合成した。
【0325】
【0326】
【0327】
(評価)
<吸収層の光学特性>
得られた例1~例11の光学フィルタの吸収層について入射角0度の分光透過率曲線を求めた。該分光透過率曲線においてNIR色素(A)の最大吸収波長λmax(A)TR±10nmの波長領域において平均OD値を1としたときの、435~480nmの波長領域における平均内部透過率TAVE435-480(AL)、490~560nmの波長領域における平均内部透過率TAVE490-560(AL)、590~630nmの波長領域における平均内部透過率TAVE590-630(AL)を求めた。
【0328】
さらに、NIR色素(A)の最大吸収波長λmax(A)TR±10nmの波長領域において平均OD値を1としたときの、600~800nmの波長領域で内部透過率が50%となる波長λ50%、600~1200nmの波長領域において内部透過率が30%以下となる波長域の幅の合計(表中「T30%以下の幅」)を求めた。表には、併せて波長500nmにおける透過率T500、および波長600nmにおける透過率T600を示した。
【0329】
<光学フィルタの光学特性>
また、得られた例1~例11の光学フィルタについて入射角0度、30度および50度の分光透過率曲線を求め以下の光学特性を求めた。
【0330】
入射角0度における、NIR色素(A)の最大吸収波長λmax(A)TR±10nmの波長領域における最小OD値、435~480nmの波長領域における平均透過率TAVE435-480(0°)、490~560nmの波長領域における平均透過率TAVE490-560(0°)、590~630nmの波長領域における平均透過率TAVE590-630(0°)、600~800nmの波長領域において透過率が50%となる波長λ50%(0°)を求めた。
【0331】
入射角30度における、NIR色素(A)の最大吸収波長λmax(A)TR±10nmの波長領域における最小OD値、600~800nmの波長領域において、入射角0度で透過率が50%となる波長λ50%(0°)と入射角30度で透過率が50%となる波長λ50%(30°)の差の絶対値|λ50%(30°)-λ50%(0°)|、490~560nmの波長領域における平均透過率TAVE490-560(30°)を求めた。
【0332】
入射角50度における、NIR色素(A)の最大吸収波長λmax(A)TR±10nmの波長領域における最小OD値、600~800nmの波長領域において、入射角0度で透過率が50%となる波長λ50%(0°)と入射角50度で透過率が50%となる波長λ50%(50°)の差の絶対値|λ50%(50°)-λ50%(0°)|、490~560nmの波長領域における平均透過率TAVE490-560(50°)を求めた。
【0333】
【0334】
また、
図9、
図10に例1の、
図11、
図12に例4の、
図13、
図14に例6の、それぞれ実施例の光学フィルタにおける吸収層および光学フィルタの分光透過率曲線を示す。
図15、
図16に例8の比較例の光学フィルタにおける吸収層および光学フィルタの分光透過率曲線を示す。なお、各例の吸収層の分光透過率曲線の図においては、「T
30%以下の幅」をWまたはWaとWbで示した。例4、6、8においては、「T
30%以下の幅」は、WaとWbの和である。
【0335】
表15および
図10、12、14から、例1~7の実施例の光学フィルタにおいては、可視光の透過率、特に緑色や赤色の透過率を十分に高く維持できるとともに、近赤外光の遮蔽性において、特に長波長近赤外光の遮蔽性に優れることがわかる。
【0336】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2019年6月20日出願の日本特許出願(特願2019-114575)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0337】
本発明の光学フィルタは、可視光の透過率、特に緑色や赤色の透過率を十分に高く維持できるとともに、近赤外光の遮蔽性において、特に長波長近赤外光の遮蔽性に優れる。本発明によれば、該光学フィルタを用いた色再現性および耐久性に優れる撮像装置および光学センサーを提供できる。
【符号の説明】
【0338】
10A,10B,10C,10D,10E,10F…光学フィルタ、11,11a,11b…吸収層、12,12a,12b…反射層、13…透明基板、14…反射防止層。