(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-11-20
(45)【発行日】2025-12-01
(54)【発明の名称】トリガー式液体噴出器
(51)【国際特許分類】
B05B 11/00 20230101AFI20251121BHJP
B65D 47/34 20060101ALI20251121BHJP
【FI】
B05B11/00 102E
B05B11/00 102J
B65D47/34 200
(21)【出願番号】P 2022060094
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2024-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】坂田 耕太
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-070516(JP,A)
【文献】特開平10-128183(JP,A)
【文献】特開2015-085289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 11/00
B65D 47/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する容器体に装着される噴出器本体と、
前記噴出器本体の前方に設けられ、液体を前方に向けて噴出する噴出孔が形成されたノズル部材と、を備え、
前記噴出器本体は、
上下方向に延び、液体が流通する縦供給筒部と、
前記縦供給筒部の前方に前方付勢状態で後方移動可能に設けられたトリガー部、及び前記トリガー部の後方への移動によって前記縦供給筒部を通じて液体を前記噴出孔に向けて送り出す主ポンプ部を有するトリガー機構と、を備え、
前記主ポンプ部は、
前記縦供給筒部に連通するとともに、前方に開口する主シリンダと、
前記主シリンダの内周面上を摺動可能な摺動部、並びに前後方向に延びるとともに前記摺動部及び前記トリガー部間を接続する連係部を有し、前記トリガー部の前後方向への移動に伴い前記主シリンダに対して前後方向に移動する主ピストンと、を備え、
前記噴出器本体には、前記連係部に係合して前記主シリンダに対する前記主ピストンの後方移動を規制するロック位置、及び前記連係部との係合が解除されて前記主シリンダに対する前記主ピストンの後方移動を許容するロック解除位置の間を、前後方向に沿うポンプ軸線回りに回転可能なストッパが設けられているトリガー式液体噴出器。
【請求項2】
前記噴出器本体は、
前記縦供給筒部及び前記ノズル部材の間に設けられるとともに、前記トリガー部の後方への移動によって、前記縦供給筒部内を通過した液体が内部に供給される貯留シリンダと、
前記貯留シリンダ内に前記貯留シリンダの中心軸線に沿う軸方向に移動可能に配置され、前記貯留シリンダ内への液体の供給に伴って前記軸方向のうちの一方側に向けて移動するとともに、前記軸方向のうちの他方側に向けて付勢される貯留プランジャと、を備えている請求項1に記載のトリガー式液体噴出器。
【請求項3】
前記ストッパは、
前記ポンプ軸線と同軸上に配置され、前記連係部の周囲を取り囲むベース部と、
前記ベース部の内周縁から前記ポンプ軸線に交差する径方向の内側に突出するとともに、前記ポンプ軸線回りに間隔をあけて配置された複数の係合突起と、を備え、
前記連係部は、
前後方向に延びるピストン本体部と、
前記ピストン本体部の外周面から前記径方向の外側に突出するとともに、前記ポンプ軸線回りに間隔をあけて配置された複数の突出部と、を備え、
前記ストッパは、ロック位置において、複数の前記係合突起それぞれが複数の前記突出部のうち対応する前記突出部それぞれに後方から係合する位置に配置され、ロック解除位置において、複数の前記係合突起それぞれが複数の前記突出部それぞれに対して前記ポンプ軸線回りでずれた位置に配置される請求項1又は請求項2に記載のトリガー式液体噴出器。
【請求項4】
前記ベース部は、前記主シリンダの前端開口縁に前記主シリンダの前方から当接している請求項3に記載のトリガー式液体噴出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガー式液体噴出器に関する。
【背景技術】
【0002】
トリガー式液体噴出器として、液体が流通する噴出器本体と、前方に向けて液体を噴出する噴出孔を有し、噴出器本体の前端部に取り付けられたノズル部材と、噴出器本体内の液体を噴出孔に向けて流通させるトリガー機構と、を備える構成が開示されている。トリガー機構は、噴出器本体内に連通するシリンダと、トリガー部の前後動に伴いシリンダの内周面上を前後方向に摺動するピストンと、を備えている。
この構成によれば、トリガー部を後方に引くと、ピストンによってシリンダ内が加圧されることで、噴出器本体内の液体が噴出孔に向けて流れる。これにより、液体が噴出孔を通じて噴出される。一方、トリガー部が前方に復帰する過程でシリンダ内が減圧されることで、容器体内の液体が噴出器本体を通じてシリンダ内に吸い上げられる。
【0003】
ここで、噴出孔を通じて液体が不意に噴出されることを抑制するための構成として、ノズル部材が噴出器本体に対して回転可能に取り付けられた構成が開示されている(例えば、下記特許文献1参照)。この構成によれば、噴出孔と噴出器本体内とが連通する連通位置、及び噴出孔と噴出器本体内との連通が遮断された遮断位置の間でノズル部材を回転させることで、液体の噴出を制御できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術にあっては、ノズル部材が遮断位置にあってもトリガー部の操作が可能である。そのため、遮断位置においてトリガー部が操作されることで、噴出器本体内に液体が加圧された状態で滞留する。この状態において、仮にノズル部材が連通位置に移行されると、噴出器本体内の液体が噴出孔を通じて噴出される可能性がある。
【0006】
本発明は、液体の予期せぬ噴出を抑制できるトリガー式液体噴出器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は以下の態様を採用した。
本開示の一態様に係るトリガー式液体噴出器は、液体を収容する容器体に装着される噴出器本体と、前記噴出器本体の前方に設けられ、液体を前方に向けて噴出する噴出孔が形成されたノズル部材と、を備え、前記噴出器本体は、上下方向に延び、液体が流通する縦供給筒部と、前記縦供給筒部の前方に前方付勢状態で後方移動可能に設けられたトリガー部、及び前記トリガー部の後方への移動によって前記縦供給筒部を通じて液体を前記噴出孔に向けて送り出す主ポンプ部を有するトリガー機構と、を備え、前記主ポンプ部は、前記縦供給筒部に連通するとともに、前方に開口する主シリンダと、前記主シリンダの内周面上を摺動可能な摺動部、並びに前後方向に延びるとともに前記摺動部及び前記トリガー部間を接続する連係部を有し、前記トリガー部の前後方向への移動に伴い前記主シリンダに対して前後方向に移動する主ピストンと、を備え、前記噴出器本体には、前記連係部に係合して前記主シリンダに対する前記主ピストンの後方移動を規制するロック位置、及び前記連係部との係合が解除されて前記主シリンダに対する前記主ピストンの後方移動を許容するロック解除位置の間を、前後方向に沿うポンプ軸線回りに回転可能なストッパが設けられている。
【0008】
本態様によれば、ストッパがロック位置にあるとき、主シリンダに対する主ピストンの後方移動を規制することで、例えばノズル部材の回転により液体の噴出を制御する場合と異なり、ロック位置において縦供給筒部内に液体が供給されることを抑制できる。特に、主ピストン自体の後方移動を規制することで、ストッパがロック位置にある状態で縦供給筒部内等の液体が加圧されることを抑制できる。その結果、ストッパをロック解除位置まで移行させた際の液体の予期せぬ噴出を抑制できる。
しかも、回転操作によりストッパのロック位置及びロック解除位置を切り替えられるので、例えばストッパを取り外してロック位置及びロック解除位置を切り替える構成と異なり、ストッパを着脱する必要がない。そのため、ストッパの紛失等を防止できる。
【0009】
上記態様のトリガー式液体噴出器において、前記噴出器本体は、前記縦供給筒部及び前記ノズル部材の間に設けられるとともに、前記トリガー部の後方への移動によって、前記縦供給筒部内を通過した液体が内部に供給される貯留シリンダと、前記貯留シリンダ内に前記貯留シリンダの中心軸線に沿う軸方向に移動可能に配置され、前記貯留シリンダ内への液体の供給に伴って前記軸方向のうちの一方側に向けて移動するとともに、前記軸方向のうちの他方側に向けて付勢される貯留プランジャと、を備えていることが好ましい。
本態様によれば、ストッパがロック位置にあるとき、主ピストン自体の後方移動を規制することで、貯留シリンダ内に予期せず液体が貯留されることを抑制できる。そのため、ストッパをロック解除位置まで移行させた際の液体の予期せぬ噴出を抑制できる。
【0010】
上記態様のトリガー式液体噴出器において、前記ストッパは、前記ポンプ軸線と同軸上に配置され、前記連係部の周囲を取り囲むベース部と、前記ベース部の内周縁から前記ポンプ軸線に交差する径方向の内側に突出するとともに、前記ポンプ軸線回りに間隔をあけて配置された複数の係合突起と、を備え、前記連係部は、前後方向に延びるピストン本体部と、前記ピストン本体部の外周面から前記径方向の外側に突出するとともに、前記ポンプ軸線回りに間隔をあけて配置された複数の突出部と、を備え、前記ストッパは、ロック位置において、複数の前記係合突起それぞれが複数の前記突出部のうち対応する前記突出部それぞれに後方から係合する位置に配置され、ロック解除位置において、複数の前記係合突起それぞれが複数の前記突出部それぞれに対して前記ポンプ軸線回りでずれた位置に配置されることが好ましい。
本態様によれば、主ピストンに対して周方向の複数個所から係合突起が係合するため、ストッパがロック位置にあるとき、主ピストンを安定して支持できる。これにより、主ピストンの後方移動をより確実に規制できる。
【0011】
上記態様のトリガー式液体噴出器において、前記ベース部は、前記主シリンダの前端開口縁に前記主シリンダの前方から当接していることが好ましい。
本態様によれば、ストッパがベース部を介して主シリンダに後方から支持される。そのため、ストッパがロック位置にあるとき、仮に主ピストンに対して後方への荷重が作用した場合であっても、ストッパとともに主ピストンが後方に移動してしまうことを、ベース部によって規制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、液体の予期せぬ噴出を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係るトリガー式液体噴出器において、ストッパがロック位置にある状態を示す縦断面図である。
【
図2】実施形態に係るトリガー式液体噴出器において、ストッパがロック解除位置にある状態を示す縦断面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に対応する部分のうち、ストッパ周辺を示す断面図である。
【
図4】実施形態に係るトリガー式液体噴出器において、ストッパがロック解除位置にある状態を示す
図3に対応する断面図である。
【
図5】実施形態に係るトリガー式液体噴出器において、ストッパがロック位置にある状態を示す部分側面面図である。
【
図6】実施形態に係るトリガー式液体噴出器において、ストッパがロック解除位置にある状態を示す部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、トリガー式液体噴出器1が容器体Aに取り付けられた噴出容器を例にして説明する。
図1に示すトリガー式液体噴出器1は、液体を収容する容器体Aに装着される噴出器本体2と、液体を噴出する噴出孔4が形成されたノズル部材3と、噴出器本体2及びノズル部材3を覆うカバー100と、液体の噴出を制御するストッパ200と、を備えている。
【0015】
噴出器本体2は、縦供給筒部10と、装着キャップ11と、貯留ポンプ部12と、射出筒部13と、主ポンプ部14を有するトリガー機構15と、を有している。
【0016】
本実施形態では、縦供給筒部10の中心軸線を軸線Oと呼ぶ。軸線Oに沿う方向を上下方向とし、上下方向において、容器体A側を下側とし、その反対側を上側とする。上下方向から見て、軸線Oに交差する一方向を前後方向L1と呼び、上下方向及び前後方向L1の双方に直交する方向を左右方向L2と呼ぶ。前後方向L1において、ノズル部材3側を前側とし、その反対側を後側とする。
【0017】
縦供給筒部10は、主ポンプ部14によって容器体A内から吸い上げられる液体が流通する。縦供給筒部10は、装着キャップ11によって、容器体Aに装着される。縦供給筒部10の下端開口部内には、パイプ16の上部が嵌合されている。パイプ16は、トリガー式液体噴出器1が容器体Aに装着された状態において、容器体A内を下方に延びている。
【0018】
縦供給筒部10内には、ボール弁21が設けられている。ボール弁21は、縦供給筒部10に設けられた下弁座部10aに対し、下弁座部10aの上方から接離可能に設けられている。ボール弁21は、縦供給筒部10内を通じた容器体A内と主ポンプ部14との間の連通及び遮断を切り替える。具体的に、ボール弁21は、主ポンプ部14(後述する主シリンダ41)による加圧時に容器体A内と主ポンプ部14との連通を遮断するとともに、主ポンプ部14による減圧時に容器体A内と主ポンプ部14との連通を許容する逆止弁とされている。
【0019】
縦供給筒部10内において、ボール弁21よりも上方に位置する部分には、貯留弁26が設けられている。貯留弁26は、縦供給筒部10に設けられた上弁座部10bに対し、上弁座部10bの上方から接離可能に設けられている。貯留弁26は、縦供給筒部10を通じた主ポンプ部14と貯留ポンプ部12との連通及び遮断を切り替える。具体的に、貯留弁26は、主ポンプ部14の加圧時に縦供給筒部10から貯留ポンプ部12(後述する貯留シリンダ31)内への液体の供給を許容するとともに、貯留ポンプ部12から縦供給筒部10内への液体の流出を規制する逆止弁とされている。
【0020】
縦供給筒部10の上端部には、前方に向けて延びる接続筒部29が設けられている。接続筒部29内は、縦供給筒部10内に連通している。縦供給筒部10の前方であって、接続筒部29と装着キャップ11との間に位置する部分には、シリンダ用筒部30が設けられている。シリンダ用筒部30は、縦供給筒部10から前方に向けて突出するとともに、前方に向けて開口している。
【0021】
貯留ポンプ部12は、貯留シリンダ31と、貯留プランジャ32と、付勢部材33と、を備えている。
貯留シリンダ31は、縦供給筒部10の上方に設けられている。貯留シリンダ31は、後方に開口する有頂筒状に形成されている。貯留シリンダ31内には、主ポンプ部14によって送り出された液体が、縦供給筒部10内及び接続筒部29内を通じて供給される。本実施形態では、貯留シリンダ31の中心軸線を軸線O1と呼ぶ。本実施形態において軸線O1は、前後方向L1に延びている。すなわち、本実施形態において前後方向L1は、軸線O1に沿う軸方向に相当する。本実施形態において後側は、軸方向のうちの一方側に相当する。また、本実施形態において前側は、軸方向のうちの他方側に相当する。但し、軸方向は、前後方向L1と一致していなくてもよい。
【0022】
貯留プランジャ32は、貯留シリンダ31内を前後方向L1に移動可能に設けられている。貯留プランジャ32は、後方に向けて開口する有頂筒状に形成されている。貯留プランジャ32は、貯留シリンダ31内を前後方向に密に摺動する。貯留プランジャ32は、最前方位置において、縦供給筒部10内と噴出孔4(射出筒部13内)との連通を遮断する。貯留プランジャ32は、最前方位置から後方に移動したときに、縦供給筒部10内と噴出孔4(射出筒部13内)とを連通させる。貯留シリンダ31において、貯留プランジャ32よりも前方に位置する空間は、貯留空間31aとして機能する。
【0023】
貯留空間31aは、接続筒部29を通して縦供給筒部10内に常時連通する一方、貯留プランジャ32の移動によって射出筒部13内に連通可能である。貯留空間31aには、縦供給筒部10内を通過した液体が貯留される。貯留空間31aは、貯留シリンダ31内への液体の供給によって貯留プランジャ32が後方に向けて移動することで拡張する。
貯留プランジャ32が最前方位置にいるとき、貯留空間31aは、射出筒部13内との連通が遮断されている。貯留プランジャ32が最前方位置から後退すると、貯留空間31aは、射出筒部13内と連通する。
【0024】
付勢部材33は、貯留プランジャ32の後方に設けられている。付勢部材33は、貯留プランジャ32と貯留シリンダ31との間に介在して、貯留プランジャ32を前方に向けて付勢している。なお、付勢部材33は、例えば金属製のコイルばねである。
【0025】
射出筒部13は、貯留シリンダ31から前方に向けて延びている。射出筒部13内は、貯留空間31に連通可能である。本実施形態において、射出筒部13の中心軸線を軸線O2と呼ぶ。軸線O2は、軸線O1と平行に前後方向L1に延びている。但し、軸線O2は、軸線O1と同軸上に配置されていてもよい。また、軸線O2に沿う軸方向は、前後方向L1と一致していなくてもよい。
【0026】
トリガー機構15は、主ポンプ部14と、トリガー部40と、を備えている。
主ポンプ部14は、トリガー部40の操作に応じて容器体A内の液体の貯留及び圧送を行う。主ポンプ部14は、主シリンダ41と、主ピストン42と、を備えている。
主シリンダ41は、シリンダ用筒部30にシリンダ用筒部30の前方から嵌め込まれている。主シリンダ41は、前後方向L1に沿うポンプ軸線O3を中心とし、前方に向けて開口する有底筒状に形成されている。主シリンダ41は、縦供給筒部10内のうちボール弁21よりも上方に位置する部分に連通している。
【0027】
主ピストン42は、前後方向L1に移動可能に主シリンダ41内に設けられている。主ピストン42は、連係部42aと、摺動部42bと、を備えている。
連係部42aは、ポンプ軸線O3上で前後方向に延びている。連係部42aは、ピストン本体部42cと、台座部42dと、突出部42eと、を備えている。
ピストン本体部42cは、ポンプ軸線O3を中心とする有頂筒状に形成されている。ピストン本体部42cは、前端部が主シリンダ41から突出した状態で、主シリンダ41内に配置されている。ピストン本体部42cと主シリンダ41との間には、付勢部材43が介在している。付勢部材43は、ピストン本体部42cを介して主ピストン42を前方に向けて付勢している。これにより、主ピストン42は、前方付勢状態で前後方向L1に移動可能に構成されている。なお、付勢部材43は、例えば金属製のコイルばねである。
【0028】
台座部42dは、ピストン本体部42cの後端部に形成されている。台座部42dは、ピストン本体部42cからポンプ軸線O3に交差するポンプ径方向の外側に張り出している。図示の例において、台座部42dは、ピストン本体部42cにおける全周に亘って形成されている。
突出部42eは、ピストン本体部42cのうち、台座部42dよりも前方に位置する部分に形成されている。突出部42eは、ピストン本体部42cの外周面からポンプ径方向の外側に突出するとともに、前後方向に延びている。突出部42eは、ポンプ軸線O3回りに間隔をあけて配置されている。図示の例において、突出部42eは、ポンプ軸線O3を挟んで上下方向で向かい合う位置に一対で配置されている。但し、突出部42eの数は、適宜変更が可能である。
【0029】
摺動部42bは、連係部42aの後端部(台座部42d)に連なっている。摺動部42bは、ポンプ軸線O3と同軸に配置された筒状に形成されている。摺動部42bは、連係部42aの周囲を取り囲んでいる。摺動部42bは、主シリンダ41の内周面に密接している。摺動部42bは、主シリンダ41に対する主ピストン42の前後動に伴い、主シリンダ41の内周面上を密に摺動する。
【0030】
トリガー部40は、縦供給筒部10の前方において、下方に向かうに従い前方に延びている。トリガー部40の上端部は、射出筒部13の下方に設けられた軸受部48に、左右方向L2に沿う軸線回りに回動可能に支持されている。トリガー部40のうち、上下方向の中間部には、連係部42a(ピストン本体部42c)の前端部が接続されている。したがって、主ピストン42は、トリガー部40の後方への回動に伴い、主シリンダ41に対して後方に移動する。なお、ピストン本体部42cの前端部は、トリガー部40に形成された板状部が左右方向L2の両側から係合している。これにより、主ピストン42は、主シリンダ41及びトリガー部40に対するポンプ軸線O3回りの回転が規制されている。
【0031】
ノズル部材3は、射出筒部13に対して前方から組み付けられている。ノズル部材3は、後方に向けて開口する有頂筒状に形成されている。ノズル部材3内は、射出筒部13内に連通している。ノズル部材3の頂壁部には、噴出孔4が形成されている。噴出孔4は、ノズル部材3の頂壁部を前後方向L1に貫通している。
【0032】
カバー100は、側面視においてT字状に形成されるとともに、前方及び下方に向けて開口する箱型に形成されている。カバー100は、噴出孔4を前方に露呈させた状態で、噴出器本体2及びノズル部材3を上方、後方及び側方から取り囲んでいる。
【0033】
図1、
図3に示すように、ストッパ200は、主ピストン42の後方移動を規制するロック位置、及び主ピストン42の後方移動を許容するロック解除位置(
図2,4参照)の間を、主シリンダ41に対してポンプ周方向(ポンプ軸線O3回りに周回する方向)に回転可能に構成されている。具体的に、ストッパ200は、ベース部201と、複数の係合突起202と、摘まみ部203と、を備えている。
【0034】
ベース部201は、嵌合筒201aと、リング部201bと、を備えている。
嵌合筒201aは、ポンプ軸線O3と同軸に配置されている。嵌合筒201aは、摺動部42bよりも前方に位置する部分で連係部42aの周囲を取り囲んでいる。嵌合筒201aは、ポンプ周方向に回転可能に主シリンダ41内に嵌め込まれている。
リング部201bは、嵌合筒201aの前端縁からポンプ径方向の外側に張り出している。リング部201bは、主シリンダ41の前端開口縁に、主シリンダ41の前方から当接している。なお、ベース部201のうち主シリンダ41と向かい合う部分には、ポンプ周方向に間隔をあけて複数の溝部が形成されている。
【0035】
係合突起202は、リング部201bの内周縁からポンプ径方向の内側に突出している。係合突起202におけるポンプ径方向の内側端縁は、突出部42eにおけるポンプ径方向の外側端縁よりもポンプ径方向の内側に位置している。係合突起202におけるポンプ周方向の寸法は、突出部42eにおけるポンプ周方向の寸法よりも小さい。ストッパ200は、主ピストン42が最前端位置(
図1参照)にあるとき、係合突起202が台座部42dと突出部42eとの間をポンプ周方向に通過することで、回転可能に構成されている。一方、ストッパ200は、主ピストン42が最前端位置以外の位置(例えば、
図2に示す最後端位置)にあるとき、突出部42eにポンプ周方向で当接することで、回転不能に構成されている。
【0036】
係合突起202は、ストッパ200がロック位置にあるとき、ポンプ軸線O3を間に挟んで上下方向で向かい合う位置からポンプ径方向の内側に向けて突出している。各係合突起202は、ストッパ200がロック位置にあるとき、正面視において対応する突出部42eそれぞれに、突出部42eの後方から重なり合っている。各係合突起202は、対応する突出部42eが各係合突起202の前方から当接することで、主シリンダ41に対する主ピストン42の後方移動を、ストッパ200を介して規制する。なお、ストッパ200は、係合突起202における少なくとも一部が突出部42eと重なり合っていれば、主ピストン42の後方移動を規制できる。
【0037】
図2、
図4、
図6に示すように、各係合突起202は、ストッパ200がロック解除位置にあるとき、対応する突出部42eに対してポンプ周方向にずれて配置される。図示の例において、各係合突起202は、ポンプ周方向で隣り合う突出部42eの間で、何れの突出部42eとも正面視で重なり合わない位置に配置される。これにより、ストッパ200は、主シリンダ41に対する主ピストン42の後方移動を許容する。
【0038】
なお、ストッパ200は、ポンプ周方向の回転に伴い、リング部201bの後面に形成された突部(不図示)が、主シリンダ41の前端開口縁に形成された凹部(不図示)内を移動することで、回転範囲が規定されている。すなわち、ストッパ200は、ロック位置において、上述した突部が凹部の内面にポンプ周方向の一方側から当接することで、ポンプ周方向の他方側への回転が規制される。一方、ストッパ200は、ロック解除位置において、突部が凹部の内面にポンプ周方向の他方側から当接することで、ポンプ周方向の一方側への回転が規制される。このように、リング部201bと主シリンダ41との間でストッパ200の回転範囲を規定することで、規定部(突部や凹部)がトリガー式液体噴出器1の外部に露呈することを抑制できる。
【0039】
図3、
図5に示すように、摘まみ部203は、ストッパ200を回転操作するためのものである。摘まみ部203は、ベース部201(リング部201b)からポンプ径方向の外側に向けて突出している。摘まみ部203は、ポンプ周方向を厚さ方向とし、前後方向に延びている。摘まみ部203の後部は、シリンダ用筒部30の外周面に沿ってベース部201よりも後方に延びている。
【0040】
摘まみ部203は、ストッパ200がロック位置及びロック解除位置間を移動する過程で、主ポンプ部14に対して左右方向L2の一方側(左側)をポンプ周方向に移動する。
図3、
図4に示す例において、摘まみ部203は、ストッパ200がロック位置にあるとき、ロック解除位置にあるときに比べて下方に位置している。摘まみ部203は、ストッパ200がロック位置にあるとき、噴出器本体2のうちシリンダ用筒部30よりも下方に位置する部分に、ポンプ周方向の一方側から当接してもよい。これにより、上述した規定部とともに、ロック位置において、ストッパ200のポンプ周方向の他方側への回転を規制できる。この場合、摘まみ部203の最下端位置にあるため、ストッパ200がロック位置に到達したことを判断し易い。摘まみ部203は、ストッパ200がロック解除位置にあるとき、噴出器本体2のうちシリンダ用筒部30よりも上方に位置する部分に、ポンプ周方向の他方側から当接してもよい。これにより、上述した規定部とともに、ロック解除位置において、ストッパ200のポンプ周方向の一方側への回転を規制できる。この場合、摘まみ部203が最上端位置にあるため、ストッパ200がロック解除位置に到達したことを判断し易い。
【0041】
次に、上述したトリガー式液体噴出器1の作用について説明する。以下の説明では、ストッパ200がロック位置にある状態を初期状態として説明する。
まず、
図1、
図3、
図5に示すように、ロック位置にあるストッパ200を、
図2、
図4、
図6に示すロック解除位置に移動させる。具体的には、摘まみ部203を把持した状態で、ストッパ200をポンプ周方向の一方側(上方)に向けて回転させる。すると、
図4に示すように、ストッパ200が主ポンプ部14に対してポンプ周方向に回転することで、各係合突起202が対応する突出部42eに対してポンプ周方向でずれた位置までに移動する。これにより、係合突起202が各突出部42eに対して正面視で重なり合う位置から退避する。その結果、主シリンダ41に対する主ピストン42の後方移動が許容される。
【0042】
続いて、
図2に示すように、トリガー式液体噴出器1において、液体を噴出させるには、装着キャップ11に手を掛け回した状態でトリガー部40に指を引っ掛ける。トリガー式液体噴出器1を把持した状態で、トリガー部40を後方に引く。すると、主ピストン42が最前端位置から後方に移動する。すなわち、主ピストン42は、突出部42eがポンプ周方向で隣り合う係合突起202間を通過することで、主シリンダ41内を後方に向けて移動する。その結果、主シリンダ41内が加圧される。すると、主シリンダ41内の液体が縦供給筒部10内に供給される。縦供給筒部10内に供給された液体は、ボール弁21を下方に向けて押し付けるとともに、貯留弁26を上方に向けて押し上げる。これにより、ボール弁21が下弁座部10aに接触した状態で、貯留弁26が上弁座部10bから上方に離反する。
【0043】
縦供給筒部10内の液体が、接続筒部29を通して、貯留シリンダ31(貯留空間31a)内に供給される。貯留シリンダ31内に液体が供給されると、貯留シリンダ31内が加圧される。これにより、貯留プランジャ32が付勢部材33の付勢力に抗して後方に移動する。その結果、貯留シリンダ31内に液体が貯留される。
【0044】
貯留プランジャ32が後方に移動することで、貯留空間31aと射出筒部13内とが連通する。これにより、貯留シリンダ31内に貯留されている液体が、射出筒部13内を噴出孔4に向けて流れる。その後、射出筒部13を通過した液体は、噴出孔4を通じて外部に噴出される。なお、トリガー部40の操作を解除すると、付勢部材43の付勢力によって主ピストン42が主シリンダ41内を前方に向けて復元移動し、これに伴いトリガー部40も前方に復元移動する。その結果、主シリンダ41内が減圧する。すると、ボール弁21が下弁座部10aから浮き上がり、容器体A内と主シリンダ41とが縦供給筒部10内を通じて連通する。一方、貯留弁26は、上弁座部10bに着座した状態を維持することで、縦供給筒部10内を通じた主シリンダ41内と貯留シリンダ31内との連通が遮断される。その結果、容器体A内の液体が縦供給筒部10内に吸い上げられる。縦供給筒部10内に流入した液体は、主シリンダ41内に導入されることで、次の噴出操作に備えることができる。
【0045】
本実施形態のように、貯留ポンプ部12を備える構成では、トリガー部40を操作する度に、主シリンダ41から供給される液体のうち、一部の液体が噴出孔4を通じて噴出されるとともに、一部の液体が貯留シリンダ31内に貯留される。そのため、トリガー部40の操作を停止した場合、貯留シリンダ31内への液体の供給は停止するものの、付勢部材33の付勢力によって貯留プランジャ32が前方移動することで、貯留シリンダ31内に貯留された液体が継続的に射出筒部13に供給される。これにより、噴出孔4を通じて液体を噴出させ続けることができる。
【0046】
噴出操作の終了後には、ストッパ200をロック位置に向けて移動させる。具体的には、摘まみ部203を介してストッパ200をポンプ周方向の一方側(下方)に向けて回転させる。すると、ストッパ200が主ポンプ部14に対してポンプ周方向に回転することで、係合突起202が対応する突出部42eの後方に進入する。これにより、各係合突起202が対応する突出部42eに正面視で重なり合い、主シリンダ41に対する主ピストン42の後方移動がストッパ200によって規制される。
【0047】
このように、本実施形態のトリガー式液体噴出器1において、噴出器本体2には、連係部42aに係合して主シリンダ41に対する主ピストン42の後方移動を規制するロック位置、及び連係部42aとの係合が解除されて主シリンダ41に対する主ピストン42の後方移動を許容するロック解除位置の間を、ポンプ軸線O3回りに回転可能なストッパ200が設けられている構成とした。
この構成によれば、ストッパ200がロック位置にあるとき、主シリンダ41に対する主ピストン42の後方移動を規制することで、例えばノズル部材の回転により液体の噴出を制御する場合と異なり、ロック位置において縦供給筒部10内に液体が供給されることを抑制できる。特に、主ピストン42自体の後方移動を規制することで、ストッパ200がロック位置にある状態で縦供給筒部10内等の液体が加圧されることを抑制できる。その結果、ストッパ200をロック解除位置まで移行させた際の液体の予期せぬ噴出を抑制できる。
しかも、回転操作によりストッパ200のロック位置及びロック解除位置を切り替えられるので、例えばストッパを取り外してロック位置及びロック解除位置を切り替える構成と異なり、ストッパ200を着脱する必要がない。そのため、ストッパ200の紛失等を防止できる。
【0048】
本実施形態のトリガー式液体噴出器1において、噴出器本体2は、縦供給筒部10内を通過した液体が内部に供給される貯留シリンダ31と、貯留シリンダ31内で前後方向L1に移動可能な貯留プランジャ32と、を備えている構成とした。
この構成によれば、ストッパ200がロック位置にあるとき、主ピストン42自体の後方移動を規制することで、貯留シリンダ31内に予期せず液体が貯留されることを抑制できる。そのため、ストッパ200をロック解除位置まで移行させた際の液体の予期せぬ噴出を抑制できる。
【0049】
本実施形態のトリガー式液体噴出器1において、ストッパ200は、ロック位置において、複数の係合突起202それぞれが対応する突出部42eそれぞれに後方から係合する位置に配置される構成とした。
この構成によれば、主ピストン42に対してポンプ周方向の複数個所から係合突起202が係合するため、ストッパ200がロック位置にあるとき、主ピストン42を安定して支持できる。これにより、主ピストン42の後方移動をより確実に規制できる。
【0050】
本実施形態のトリガー式液体噴出器1において、ベース部201は、主シリンダ41の前端開口縁に、主シリンダ41の前方から当接している構成とした。
この構成によれば、ストッパ200がベース部201を介して主シリンダ41に後方から支持される。そのため、ストッパ200がロック位置にあるとき、仮に主ピストン42に対して後方への荷重が作用した場合であっても、ストッパ200とともに主ピストン42が後方に移動してしまうことを、ベース部201によって規制できる。
【0051】
本実施形態のトリガー式液体噴出器1において、ストッパ200は、ベース部201からポンプ径方向の外側に突出する摘まみ部203を備えている構成とした。
この構成によれば、ストッパ200の操作性を向上させることができる。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
上述した実施形態では、トリガー式液体噴出器1が貯留ポンプ部12を備える構成について説明したが、この構成に限られない。本発明に係るトリガー式液体噴出器1は、主ポンプ部14から送り出される液体が貯留されずに噴出される構成であってもよい。
上述した実施形態では、ストッパ200が摘まみ部203を備える構成について説明したが、摘まみ部203は必須の構成ではない。また、摘まみ部203は、ポンプ周方向の全周に亘って設ける等、適宜変更が可能である。
【0053】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1:トリガー式液体噴出器
2:噴出器本体
3:ノズル部材
4:噴出孔
10:縦供給筒部
14:主ポンプ部
15:トリガー機構
31:貯留シリンダ
32:貯留プランジャ
40:トリガー部
41:主シリンダ
42:主ピストン
42a:連係部
42b:摺動部
42c:ピストン本体部
42e:突出部
200:ストッパ
201:ベース部
202:係合突起
203:摘まみ部
A:容器体
O3:ポンプ軸線(軸線)