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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-12-15
(45)【発行日】2025-12-23
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20251216BHJP
   B60K 15/03 20060101ALI20251216BHJP
【FI】
F02D45/00 369
B60K15/03 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022066771
(22)【出願日】2022-04-14
(65)【公開番号】P2023157095
(43)【公開日】2023-10-26
【審査請求日】2024-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 晃次
(72)【発明者】
【氏名】井戸側 正直
(72)【発明者】
【氏名】内田 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】高岡 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】北川 雅也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 卓弘
(72)【発明者】
【氏名】久保 雅也
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-021360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00-15/10
F02B 47/00-47/06、49/00
F02D 41/00-45/00
F02M 25/00-25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を貯留する燃料タンクと、
燃料通路に前記燃料タンク内の前記燃料を供給する燃料ポンプと、
前記燃料の圧力としての燃圧と目標燃圧との差分に基づいて比例項および積分項によるフィードバック制御を用いて前記燃料ポンプを制御する制御装置と、
を備える料供給装置であって、
前記制御装置は、前記燃料タンク内の前記燃料が気化しやすくベーパが発生しやすい環境下にあることを示す所定条件が成立し且つ前記燃料タンク内で高濃度のベーパが発生していることを示す条件が成立しているとき、および、前記所定条件が成立していないにも拘わらず前記積分項が所定値以上である状態が所定時間以上継続したときには、前記燃料タンク内に高濃度のベーパが発生したと判定する
燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料供給装置に関し、詳しくは、燃料タンクと、燃料ポンプと、を備える燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料供給装置としては、燃料タンクと、燃料ポンプと、サージタンクと、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。燃料タンクは、燃料を貯留する。燃料ポンプは、燃料通路(燃料配管)に燃料を供給する。サージタンクは、燃料タンク内で発生したベーパを一時的に収容する。この装置では、燃料供給装置が所定高度以上の高地に位置し、且つ、燃料タンク内の燃温が所定温度以上で、且つ、サージタンク内の圧力が所定圧以下のときに、燃料タンク内に高濃度のベーパが発生していると判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公平6-31576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、燃料タンク内の燃温を直接検出する温度センサを備えていない燃料供給装置では、上述の手法を用いることができず、燃料タンク内に高濃度のベーパが発生しているか否かを適正に判定できない不都合が生じる。こうした不都合を解消するために、燃温に代えて、燃温と相関のある他の物理量を用いて燃料タンク内に高濃度のベーパが発生しているか否かを判定する手法が考えられる。しかし、この手法では、予想される燃温と他の物理量との相関関係が、何らかの要因で実際の相関関係と乖離すると、適正に燃料タンク内に高濃度のベーパが発生しているか否かを判定できなくなってしまう。
【0005】
本発明の燃料供給装置は、より適正に燃料タンク内に高濃度のベーパが発生しているか否かを判定することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の燃料供給装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の燃料供給装置は、
燃料を貯留する燃料タンクと、
燃料通路に前記燃料タンク内の前記燃料を供給する燃料ポンプと、
前記燃料の圧力としての燃圧と目標燃圧との差分に基づいて比例項および積分項によるフィードバック制御を用いて前記燃料ポンプを制御する制御装置と、
を備える燃料供給装置であって、
前記制御装置は、前記積分項が所定値以上である状態が所定時間以上継続したときには、前記燃料タンク内に高濃度のベーパが発生したと判定する
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明の燃料供給装置では、燃料の圧力としての燃圧と目標燃圧との差分に基づいて比例項および積分項によるフィードバック制御を用いて燃料ポンプを制御する。そして、積分項が所定値以上である状態が所定時間以上継続したときには、燃料タンク内に高濃度のベーパが発生したと判定する。燃料タンク内に高濃度のベーパが発生すると、燃料ポンプを駆動しているのに燃圧が目標燃圧まで上昇しないベーパロックが発生する。このとき、積分項が大きくなることから、積分項が所定値以上である状態が所定時間以上継続しているときには、燃料タンク内に高濃度のベーパが発生しており、こうしたベーパロックが発生していると考えられる。したがって、積分項が所定値以上である状態が所定時間以上継続しているときには、燃料タンク内に高濃度のベーパが発生したと判定することにより、より適正に燃料タンク内に高濃度のベーパが発生しているか否かを判定できる。ここで、「所定値」は、燃料ポンプを駆動しているのに燃圧が目標燃圧まで上昇しないため積分項が大きくなっているか否かを判定するための積分項の閾値などを挙げることができる。「所定時間」は、積分項が所定値以上経過している状態が燃料タンク内に高濃度のベーパが発生したことによるか否かを判定するための時間の閾値である。
【0009】
こうした本発明の燃料供給装置において、前記制御装置は、前記燃料タンク内の前記燃料が気化しやすい所定状態であることを少なくとも含む所定条件が成立したとき、および、前記所定条件が成立していないにも拘わらず前記積分項が前記所定値以上である状態が前記所定時間以上継続したときには、前記燃料タンク内に高濃度のベーパが発生したと判定してもよい。こうすれば、より適正に、燃料タンク内に高濃度のベーパが発生しているか否かを判定できる。ここで、「所定状態」としては、大気圧が低く、燃料温度が高いとき、例えば、高地で高温の環境下にあるときなどを挙げることができる。
【0010】
また、本発明の燃料供給装置において、前記制御装置は、前記燃料タンク内に高濃度のベーパが発生したと判定したときには、前記目標燃圧を前記燃料タンク内に高濃度のベーパが発生したと判定していないときに比して高くしてもよい。こうすれば、燃料ポンプや燃料通路のベーパを燃圧で潰すことができ、ベーパロックの解消を図ることができる。
【0011】
本発明の燃料供給処理装置は、上述したいずれかの態様の本発明の燃料供給装置、即ち、基本的には、燃料を貯留する燃料タンクと、燃料通路に前記燃料タンク内の前記燃料を供給する燃料ポンプと、前記燃料の圧力としての燃圧と目標燃圧との差分に基づいて比例項および積分項によるフィードバック制御を用いて前記燃料ポンプを制御する制御装置と、を備える燃料供給装置であって、前記制御装置は、前記積分項が所定値以上である状態が所定時間以上継続したときには、前記燃料タンク内に高濃度のベーパが発生したと判定する燃料供給装置と、
前記燃料タンクにベーパ通路を介して接続されるキャニスタと、前記キャニスタとエンジンの吸気管とを接続するパージ通路と、を有する気化燃料処理装置と、
を備えることを要旨とする。
【0012】
この本発明の燃料供給処理装置では、上述したいずれの態様の本発明の燃料供給装置を備えるから、本発明の燃料供給装置が備える効果、即ち、より適正に燃料タンク内に高濃度のベーパが発生しているか否かを判定できる効果を奏する。
【0013】
この場合において、前記所定条件は、前記吸気管に供給されるガス量に対するベーパの割合であるパージ濃度が所定濃度以上であることとしてもよい。こうすれば、より適正に燃料タンク内に高濃度のベーパが発生しているか否かを判定できる効果を奏する。ここで、「所定濃度」は、燃料タンク内に高濃度のベーパが発生しているか否かを判定するためのパージ濃度の閾値などを挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例としての燃料供給処理装置を備える自動車10の構成の概略を示す構成図である。
図2】電子制御ユニット70により実行されるハイベーパ判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図3】領域A1の一例を示す説明図である。
図4図3の線L1を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例
【0016】
図1は、本発明の一実施例としての燃料供給処理装置を備える自動車10の構成の概略を示す構成図である。実施例の自動車10は、図示するように、エンジン12と、燃料供給装置42と、気化燃料処理装置50と、エンジン12のクランクシャフト14に接続されると共にデファレンシャルギヤ62を介して駆動輪64a,64bに接続される変速機60と、エンジン12を始動するための図示しないスタータと、車両全体の制御を行なう電子制御ユニット70とを備える。実施例の燃料供給装置としては、主として、燃料供給装置42と電子制御ユニット70とが該当する。
【0017】
エンジン12は、燃料タンク40からのガソリンや軽油などの燃料を用いて吸気、圧縮、膨張、排気の4行程により動力を出力する内燃機関として構成されている。このエンジン12は、エアクリーナ22により清浄された空気を吸気管23に吸入してスロットルバルブ24を通過させると共に吸気管23のスロットルバルブ24よりも下流側で燃料噴射弁26から燃料を噴射し、空気と燃料とを混合する。そして、この混合気を吸気バルブ28を介して燃焼室29に吸入し、点火プラグ30による電気火花によって爆発燃焼させ、爆発燃焼によるエネルギにより押し下げられるピストン32の往復運動をクランクシャフト14の回転運動に変換する。燃焼室29から排気バルブ33を介して排気管34に排出される排気は、浄化装置35を介して外気に排出される。浄化装置35は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する触媒(三元触媒)35aを有する。
【0018】
燃料供給装置42は、燃料タンク40内の燃料を燃料噴射弁26に供給可能に構成されている。この燃料供給装置42は、燃料通路43と、燃料ポンプ44と、リリーフ通路45と、リリーフバルブ46とを備える。燃料通路43は、燃料噴射弁26に接続されている。燃料ポンプ44は、燃料タンク40内の燃料を燃料通路43に供給する。
【0019】
リリーフ通路45は、燃料通路43と燃料タンク40とに接続されている。リリーフバルブ46は、リリーフ通路45に設けられており、燃料通路43内の燃料の圧力(燃圧Pf)がリリーフバルブ46の開弁圧Pfrv未満のときには閉弁し、燃料通路43内の燃料の圧力が開弁圧Pfrv以上のときには開弁する。リリーフバルブ46が開弁すると、燃料通路43内の燃料の一部がリリーフ通路45を介して燃料タンク40に戻される。このようにして、燃料通路43内の燃料の圧力が過剰になるのを抑制している。
【0020】
気化燃料処理装置50は、燃料タンク40内で発生した気化燃料を含む気化燃料ガス(パージガス)を吸気管23に供給するパージを実行可能に構成されている。この気化燃料処理装置50は、導入通路(ベーパ通路)51と、封鎖弁52と、キャニスタ53と、パージ通路55と、パージバルブ56とを備える。
【0021】
導入通路(ベーパ通路)51は、燃料タンク40とキャニスタ53とに接続されている。封鎖弁52は、導入通路(ベーパ通路)51に設けられており、ノーマルクローズタイプの電磁バルブとして構成されている。
【0022】
封鎖弁52は、流量調整弁であり、閉弁状態で導入通路(ベーパ通路)51を封鎖して燃料タンク40とキャニスタ53との連通を遮断すると共に、開弁状態で導入通路(ベーパ通路)51を流通する気体の流量を調整する。封鎖弁52は、ケーシングに形成された弁座(図示せず)や、ケーシング内に軸方向に移動自在に配置される弁体(図示せず)、ケーシング内に配置されると共に図示しないバルブガイドを介して弁体に連結されるステッピングモータ52bとを備える。ステッピングモータ52bは、弁体を弁座に対して軸方向に進退移動させる。ステッピングモータ52bの作動に伴って弁体が弁座に接近し、当該弁体の図示しないシール部材が弁座に当接することで封鎖弁52が閉弁する。また、ステッピングモータ52bの作動に伴って弁体が弁座から離間し、当該弁体の図示しないシール部材が弁座から離間することで封鎖弁52が開弁する。ステッピングモータ52bは、電子制御ユニット70により制御されている
【0023】
キャニスタ53は、導入通路(ベーパ通路)51とパージ通路55とに接続されていると共に大気開放通路54を介して大気に開放されている。このキャニスタ53の内部には、燃料タンク40からのベーパ(気化燃料)を吸着可能な例えば活性炭などの吸着剤が充填されている。大気開放通路54には、図示しないエアフィルタが設けられている。
【0024】
パージ通路55は、キャニスタ53と吸気管23のスロットルバルブ24よりも下流側とに接続されている。パージバルブ56は、パージ通路55に設けられており、ノーマルクローズタイプの電磁バルブとして構成されている。このパージバルブ56は、電子制御ユニット70により制御される。
【0025】
この気化燃料処理装置50は、封鎖弁52が開弁状態であるときにパージバルブ56の開度を調節することにより、パージを実行する。具体的には、燃料タンク40内で発生したベーパ(気化燃料)を含むパージガスを吸気管23内の負圧を利用して導入通路(ベーパ通路)51、キャニスタ53、パージ通路55を介して流量の調節を伴って吸気管23に供給する。したがって、エンジン12は、空気と燃料(燃料噴射弁26からの燃料および気化燃料処理装置50からのベーパ(気化燃料))との混合気を燃焼室29に吸引することができる。
【0026】
電子制御ユニット70は、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUに加えて、処理プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、データを記憶保持するフラッシュメモリ、入出力ポートを備える。電子制御ユニット70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。
【0027】
電子制御ユニット70に入力される信号としては、例えば、エンジン12のクランクシャフト14の回転位置を検出するクランクポジションセンサ14aからのクランク角θcr、エンジン12の冷却水の温度を検出する水温センサ15からの冷却水温Twを挙げることができる。スロットルバルブ24の開度(ポジション)を検出するスロットルポジションセンサ24aからのスロットル開度THや、吸気バルブ28を開閉するインテークカムシャフトや排気バルブ33を開閉するエキゾーストカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ16からのカム角θci,θcoも挙げることができる。吸気管23のスロットルバルブ24よりも上流側に取り付けられたエアフローメータ23aからの吸入空気量Qaや、吸気管23のスロットルバルブ24よりも上流側に取り付けられた温度センサ23bからの吸気温Ta、排気管34の浄化装置35よりも上流側に取り付けられたフロント空燃比センサ37からのフロント空燃比AF1や、排気管34の浄化装置35よりも下流側に取り付けられたリヤ空燃比センサ38からのリヤ空燃比AF2も挙げることができる。燃料タンク40に取り付けられた圧力センサ40aからの燃料タンク40内の圧力であるタンク内圧Ptや、燃料通路43の燃料噴射弁26付近(例えば、デリバリパイプ)に取り付けられた燃圧センサ43pからの燃料通路43内の燃料の圧力である燃圧Pf、燃料ポンプ44に取り付けられた回転数センサ44bからの燃料ポンプ44の回転数Npも挙げることができる。封鎖弁52の開度(ポジション)を検出する封鎖弁ポジションセンサ52aからの封鎖弁52の開度Osvや、パージバルブ56の開度(ポジション)を検出するパージバルブポジションセンサ56aからのパージバルブ56の開度Opvも挙げることができる。イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号IGや、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSPも挙げることができる。アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ88からの車速V、大気圧センサ89からの大気圧Poutも挙げることができる。
【0028】
電子制御ユニット70からは、各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。電子制御ユニット70から出力される信号としては、例えば、スロットルバルブ24への制御信号や、燃料噴射弁26への制御信号、点火プラグ30への制御信号、燃料ポンプ44への制御信号、封鎖弁52への制御信号、パージバルブ56への制御信号を挙げることができる。また、変速機60への制御信号や、図示しないスタータへの制御信号も挙げることができる。
【0029】
電子制御ユニット70は、クランクポジションセンサ14aからのクランク角θcrに基づいてエンジン12の回転数Neを演算している。また、電子制御ユニット70は、エアフローメータ23aからの吸入空気量Qaとエンジン12の回転数Neとに基づいて負荷率(エンジン12の1サイクル当たりの行程容積に対する1サイクルで実際に吸入される空気の容積の割合)KLを演算している。
【0030】
こうして構成された実施例の自動車10では、電子制御ユニット70は、アクセル開度Accや車速Vに基づくエンジン12の要求負荷率KL*に基づいて、エンジン12の運転制御、具体的には、スロットルバルブ24の開度を制御する吸入空気量制御や、燃料噴射弁26からの燃料噴射量を制御する燃料噴射制御、点火プラグ30の点火時期を制御する点火制御などを行なう。また、電子制御ユニット70は、燃料供給装置42の燃料ポンプ44の制御や、気化燃料処理装置50の封鎖弁52やパージバルブ56の制御なども行なう。
【0031】
エンジン12の運転制御において、吸入空気量制御では、電子制御ユニット70は、エンジン12の要求負荷率KL*に基づいてスロットルバルブ24の目標開度TH*を設定し、設定した目標開度TH*を用いてスロットルバルブ24を制御する。燃料噴射制御では、エンジン12の回転数と吸気管圧力とに基づく基本燃料噴射量Qfbにエンジン12の状態を検出する各種センサ値に基づく補正係数を乗じたものを目標噴射量Qf*に設定し、燃料噴射弁26からの燃料噴射量が目標噴射量Qf*となるように燃料噴射弁26を制御する。点火制御では、電子制御ユニット70は、エンジン12の回転数Neおよび負荷率KLに基づいて点火プラグ30の目標点火時期Ti*を設定し、設定した目標点火時期Ti*を用いて点火プラグ30を制御する。封鎖弁52の制御では、タンク内圧Pt(ゲージ圧)が0kPaよりも若干高い閾値Ptref以下のときには、閉弁状態となるように封鎖弁52を制御し、タンク内圧Ptが閾値Ptrefよりも高いときには、開弁状態となるように封鎖弁52を制御する。パージバルブ56の制御では、パージ条件の成立時には、開弁状態となって上述のパージが実行されるようにパージバルブ56を制御し、パージ条件の非成立時には、閉弁状態となるようにパージバルブ56を制御する。パージ条件としては、例えば、冷却水温Twが閾値以上であり且つエンジン12の運転制御(燃料噴射制御など)を行なっており且つ封鎖弁52が開弁状態である条件などが用いられる。
【0032】
燃料ポンプ44の制御では、所定時間毎(例えば、数msec毎など)に、燃圧センサ43pにより検出された燃圧Pfと目標燃圧Pf*との差分に基づいて、次式(1)を用いて、燃料ポンプ44の目標吐出流量Qp*を繰り返し設定する。そして、 設定した目標吐出流量Qp*を用いて燃料ポンプ44を制御する。式(1)中、第1項は、前回設定した目標吐出流量Qp*である。第2項は、燃圧Pfを目標燃圧Pf*に近づけるための燃料ポンプ44のフィードバック制御における比例項である。「Kp」は、比例項のゲインである。第3項は、燃圧Pfを目標燃圧Pf*に近づけるための燃料ポンプ44のフィードバック制御における積分項である。「Ki」は、積分項のゲインである。このように、燃圧センサ43pにより検出された燃圧Pfと目標燃圧Pf*との差分に基づいて比例項および積分項によるフィードバック制御を用いて燃料ポンプ44の目標吐出流量Qp*を設定して燃料ポンプ44を制御する。
【0033】
Qp*=前回Qp*+Kp・(Pf*-Pf)+Ki・∫(Pf*-Pf)dt ・・・(1)
【0034】
次に、こうして構成された実施例の自動車10の動作、特に、燃料タンク40内のベーパが高濃度であるか否かを判定する際の動作について説明する。図2は、電子制御ユニット70により実行されるハイベーパ判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。本ルーチンは、封鎖弁52とパージバルブ56とが開状態のときに、所定時間毎(例えば、数msec毎)に実行される。
【0035】
本ルーチンが実行されると、電子制御ユニット70のCPUは、吸気温Taや大気圧Pout、フロント空燃比AF1、吸入空気量Qa、燃料噴射量Qfを入力する処理を実行する(ステップS100)。吸気温Taは、温度センサ23bにより検出された値を入力している。大気圧Poutは、大気圧センサ89により検出された値を入力している。フロント空燃比AF1は、フロント空燃比センサ37により検出された値を入力している。吸入空気量Qaは、エアフローメータ23aにより検出された値を入力している。燃料噴射量Qfは、目標噴射量Qf*と同一の値を入力している。
【0036】
次に、吸気温Taと大気圧Poutからなる燃料タンク40内の燃料の状態ポイントPstを設定し(ステップS110)、フロント空燃比AF1と吸入空気量Qaと燃料噴射量Qfとからパージ濃度Cpを演算する(ステップS120)。パージ濃度Cpは、フロント空燃比AF1と吸入空気量Qaとから推定される燃焼に携わった燃料の体積から燃料噴射量Qfを減じた値の燃料噴射量Qfに対する割合として演算される。
【0037】
続いて、状態ポイントPstが、燃料タンク40内の燃料がベーパとなりやすい環境下にあることを示す領域A1内に位置するか否かを判定する(ステップS130)。図3は、領域A1の一例を示す説明図である。図4は、図3の線L1を説明するための説明図である。図4中、破線Lpvは、燃料の飽和蒸気曲線を示している。領域A1は、大気圧Poutと吸気温Taとの関係が線L1より低圧高温側の領域である。燃料タンク40内の燃料は、燃料タンク40内のゲージ圧(圧力)と燃料タンク40内の燃料の温度(燃温)から定まる状態ポイントPsの位置が飽和蒸気曲線(破線Lpv)より低圧高温側の領域Apvにあると燃料がベーパとなりやすい環境下にあると言える。実施例では、燃料タンク40内の燃料の温度を検出する温度センサが設けられていないことから、燃料タンク40内の燃料の温度(燃温)に代えて、燃料タンク40内の燃料の温度(燃温)を反映する吸気温Taを用いて燃料タンク40内の燃料が気化してベーパとなりやすい環境下にあるか否かを判定する。そのため、想定される燃料タンク40内の燃料温度(燃温)と吸気温Taとの間の温度の差をΔTとし、飽和蒸気曲線に代えて、飽和蒸気曲線をゲージ圧を一定にしてΔTだけ移動させた線L1を用いた図3により、状態ポイントPstが領域A1内に位置するか否かを判定する。そして、状態ポイントPstが領域A1に位置するときには、燃料タンク40内の燃料が気化しやすくベーパが発生しやすい環境下にあると判定する。
【0038】
状態ポイントPstが領域A1内にあるときには、続いて、パージ濃度Cpが所定濃度Cpref以上であるか否かを判定する(ステップS140)。所定濃度Cprefは、燃料タンク40内で高濃度のベーパが発生しているか否かを判定するための閾値として、予め実験や解析、機械学習などから定めた値である。パージ濃度Cpが所定濃度Cpref未満であるときには、燃料タンク40内で高濃度のベーパが発生していないと判定して、本ルーチンを終了し、パージ濃度Cpが所定濃度Cpref以上であるときには、燃料タンク40内で高濃度のベーパが発生していると判定して(ステップS170)、本ルーチンを終了する。
【0039】
状態ポイントPstが領域A1外であるときには、続いて、状態ポイントPstが領域A2内にあるか否かを判定する(ステップS150)。領域A2は、図3に示すように、大気圧Poutと吸気温Taとの関係が、線L1より高圧低温側の領域であり、且つ、線L2より低圧高温側の領域である。線L2は、市販されている自動車10に用いることが可能な複数の種類のスペックやメーカなどが異なる燃料のうち最も気化しやすい燃料において、ベーパが発生しない領域とベーパが発生する領域との境界となる線である。したがって、線L2より高圧低温側の領域では、ベーパが発生しないことになる。
【0040】
ステップS150で状態ポイントPstが領域A2外のときには、燃料タンク40内で高濃度のベーパが発生していないと判定して、本ルーチンを終了する。
【0041】
ステップS150で状態ポイントPstが領域A2内のときには、続いて、上述の式(1)の第3項の積分項が所定値Vitref以上の状態が所定時間tref以上継続しているか否かを判定する(ステップS160)。ここで、所定値Vitrefは、燃料ポンプ44を駆動しているのに燃圧Pfが目標燃圧Pf*まで上昇しないため積分項が大きくなっているか否かを判定するための積分項の閾値などを挙げることができる。所定時間trefは、積分項が所定値Vitref以上である状態が燃料タンク40内に高濃度のベーパが発生したことによるか否かを判定するための時間の閾値である。燃料タンク40内に高濃度のベーパが発生すると、燃料ポンプ44を駆動しているのに燃圧Pfが目標燃圧Pf*まで上昇しないベーパロックが発生する。このとき、積分項が大きくなることから、積分項が所定値Vitref以上である状態が所定時間tref以上継続しているときには、燃料タンク40内に高濃度のベーパが発生しており、こうしたベーパロックが発生していると考えられる。したがって、ステップS160の処理は、ベーパロックが発生するほど燃料タンク40内で高濃度のベーパが発生しているか否かを判定する処理となっている。
【0042】
ステップS160で積分項が所定値Vitref未満のときや、積分項が所定値Vitref以上の状態が所定時間tref以上継続していないときには、ベーパロックが発生するほど燃料タンク40内で高濃度のベーパが発生していないと判断して、本ルーチンを終了する。
【0043】
ステップS160で積分項が所定値Vitref以上の状態が所定時間tref以上継続しているときには、ベーパロックが発生するほど燃料タンク40内で高濃度のベーパが発生していると判断して、燃料タンク40内で高濃度のベーパが発生していると判定して(ステップS170)、本ルーチンを終了する。このような判定により、より適正に燃料タンク40内に高濃度のベーパが発生しているか否かを判定できる。
【0044】
なお、ステップS170で燃料タンク40内に高濃度のベーパが発生していると判定したときには、目標燃圧Pf*をより高くして、燃料ポンプ44を制御する。これにより、燃料ポンプ44や燃料通路43のベーパを燃料の燃圧で潰すことができ、ベーパロックの解消を図ることができる。
【0045】
以上説明した実施例の燃料供給装置を備える自動車10によれば、状態ポイントPstが領域A2内にあり、且つ、積分項が所定値Vitref以上の状態が所定時間tref以上継続しているときには、燃料タンク40内で高濃度のベーパが発生していると判定することにより、より適正に燃料タンク40内に高濃度のベーパが発生しているか否かを判定できる。
【0046】
実施例の燃料供給装置を備える自動車10では、図2のステップS150、S160において、状態ポイントPstが領域A2内にあり、且つ、積分項が所定値Vitref以上の状態が所定時間tref以上継続しているときには、燃料タンク40内で高濃度のベーパが発生していると判定している。しかし、積分項が所定値Vitref以上の状態が所定時間tref以上継続しているときには、ベーパロックが発生するほど燃料タンク40内で高濃度のベーパが発生していると判断できることから、ステップS150を実行せずに、積分項が所定値Vitref以上の状態が所定時間tref以上継続しているときには、燃料タンク40内で高濃度のベーパが発生していると判定してもよい。
【0047】
実施例の燃料供給装置を備える自動車10では、図2のステップS130、S140において、状態ポイントPstが領域A1内にあるか否かや、パージ濃度Cpが所定濃度Cpref以上であるか否かを判定している。しかし、ステップS120~S140を実行せずに、ステップS110を実行した後に、ステップS150、S160を実行してもよい。
【0048】
実施例の燃料供給装置を備える自動車10では、エンジン12は、筒内に燃料を噴射する燃料噴射弁26(筒内噴射弁)を備えるものとした。しかし、燃料噴射弁26に代えてまたは加えて、吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射弁を備えるものとしてもよい。
【0049】
実施例では、エンジン12からの動力を用いて走行する自動車10が備える燃料供給装置の形態とした。しかし、エンジンに加えてモータを備えるハイブリッド自動車が備える燃料供給装置の形態としてもよいし、自動車とは異なる移動体や工場などに設置されエンジンに燃料を供給する燃料供給装置の形態としてもよい。また、エンジンとは異なる燃料により作動する装置に搭載される燃料供給装置の形態としてもよい。
【0050】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、燃料タンク40が「燃料タンク」に相当し、燃料ポンプ44が「燃料ポンプ」に相当し、電子制御ユニット70が「制御装置」に相当する。
【0051】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0052】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、燃料供給装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 自動車、12 エンジン、14 クランクシャフト、14a クランクポジションセンサ、15 水温センサ、16 カムポジションセンサ、22 エアクリーナ、23 吸気管、23a エアフローメータ、23b 温度センサ、24 スロットルバルブ、24a スロットルポジションセンサ、26 燃料噴射弁、28 吸気バルブ、29 燃焼室、30 点火プラグ、32 ピストン、33 排気バルブ、34 排気管、35 浄化装置、37 フロント空燃比センサ、38 リヤ空燃比センサ、40 燃料タンク、40a 圧力センサ、42 燃料供給装置、43 燃料通路、43p 燃圧センサ、44 燃料ポンプ、44b 回転数センサ、45 リリーフ通路、46 リリーフバルブ、50 気化燃料処理装置、51 導入通路(ベーパ通路)、52 封鎖弁、52a 封鎖弁ポジションセンサ、52b ステッピングモータ、53 キャニスタ、54 大気開放通路、55 パージ通路、56 パージバルブ、56a パージバルブポジションセンサ、60 変速機、62 デファレンシャルギヤ、64a,64b 駆動輪、70 電子制御ユニット、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、89 大気圧センサ。
図1
図2
図3
図4