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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-05-29
(45)【発行日】2026-06-08
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/188 20210101AFI20260601BHJP
   H01M 50/176 20210101ALI20260601BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20260601BHJP
   H01M 50/588 20210101ALI20260601BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20260601BHJP
   H01M 50/191 20210101ALI20260601BHJP
   H01M 50/198 20210101ALI20260601BHJP
   H01M 50/131 20210101ALI20260601BHJP
   H01M 50/195 20210101ALI20260601BHJP
【FI】
H01M50/188
H01M50/176
H01M50/193
H01M50/588
H01M50/15
H01M50/191
H01M50/198
H01M50/131
H01M50/195
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024016475
(22)【出願日】2024-02-06
(65)【公開番号】P2025121184
(43)【公開日】2025-08-19
【審査請求日】2025-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】トヨタバッテリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤村 哲史
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】立山 望美
(72)【発明者】
【氏名】内村 将大
(72)【発明者】
【氏名】浅井 正孝
(72)【発明者】
【氏名】町田 圭太郎
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 崇志
(72)【発明者】
【氏名】中村 竣亮
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁
【審査官】渡辺 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-086813(JP,A)
【文献】特開2017-139135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/00-50/198
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素を内蔵するケース部材と、
前記発電要素に接続されるとともに前記ケース部材を貫通して設けられた端子部材と、
前記ケース部材と前記端子部材との間を絶縁し封止する樹脂部材とを有し、
前記ケース部材には、前記端子部材を通す貫通孔が形成されており、
前記樹脂部材には、
前記ケース部材の内面に接する内側部と、
前記貫通孔の壁面と前記端子部材との間を充填する孔内部と、
前記ケース部材の外面に接し前記内側部よりも体積が小さい外側部とが含まれ、
前記ケース部材の熱膨張係数が前記内側部の熱膨張係数より大きく前記内側部の引張強さが前記外側部の引張強さより低い第1条件と、前記ケース部材の熱膨張係数が前記内側部の熱膨張係数より小さく前記外側部の引張強さが前記内側部の引張強さより低い第2条件とのいずれか一方の条件を満たし、
前記樹脂部材にフィラーを含み、
前記第1条件を満たす場合には前記内側部のフィラー含有率が前記外側部のフィラー含有率より低く、
前記第2条件を満たす場合には前記内側部のフィラー含有率が前記外側部のフィラー含有率より高い電池。
【請求項2】
発電要素を内蔵するケース部材と、
前記発電要素に接続されるとともに前記ケース部材を貫通して設けられた端子部材と、
前記ケース部材と前記端子部材との間を絶縁し封止する樹脂部材とを有し、
前記ケース部材には、前記端子部材を通す貫通孔が形成されており、
前記樹脂部材には、
前記ケース部材の内面に接する内側部と、
前記貫通孔の壁面と前記端子部材との間を充填する孔内部と、
前記ケース部材の外面に接し前記内側部よりも体積が小さい外側部とが含まれ、
前記ケース部材の熱膨張係数が前記内側部の熱膨張係数より大きく前記内側部の引張強さが前記外側部の引張強さより低い第1条件と、前記ケース部材の熱膨張係数が前記内側部の熱膨張係数より小さく前記外側部の引張強さが前記内側部の引張強さより低い第2条件とのいずれか一方の条件を満たし、
前記樹脂部材にエラストマーを含み、
前記第1条件を満たす場合には前記内側部のエラストマー含有率が前記外側部のエラストマー含有率より高く、
前記第2条件を満たす場合には前記内側部のエラストマー含有率が前記外側部のエラストマー含有率より低い電池。
【請求項3】
請求項または請求項に記載の電池であって、
前記内側部の基材樹脂と前記外側部の基材樹脂とが同種のものである電池。
【請求項4】
請求項1または請求項に記載の電池であって、
前記ケース部材の表面のうち前記樹脂部材に覆われている範囲および前記端子部材の表面のうち前記樹脂部材に覆われている範囲の少なくとも一部に、金属と樹脂とが互いに入り込んでいる粗面領域が設けられている電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されている電池では、ケース部材を貫通して集電端子を配置している。集電端子は、電極体に接続されているものである。ケース部材には、集電端子を通す端子装着孔が形成されている。端子装着孔と集電端子との間には絶縁材が埋め込まれている。絶縁材は、ケース部材および集電端子と一体成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-86813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の技術には、電池の冷熱サイクルに対する耐久性が弱いという問題点があった。金属(ケース部材、集電端子)、樹脂(絶縁材)、といった熱膨張率が異なる材質の部材が密着しているからである。
【0005】
本開示技術の課題とするところは、冷熱サイクルに対する耐久性に優れた電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様における電池は、発電要素を内蔵するケース部材と、発電要素に接続されるとともにケース部材を貫通して設けられた端子部材と、ケース部材と端子部材との間を絶縁し封止する樹脂部材とを有し、ケース部材には、端子部材を通す貫通孔が形成されており、樹脂部材には、ケース部材の内面に接する内側部と、貫通孔の壁面と端子部材との間を充填する孔内部と、ケース部材の外面に接し内側部よりも体積が小さい外側部とが含まれ、ケース部材の熱膨張係数が内側部の熱膨張係数より大きく内側部の引張強さが外側部の引張強さより低い第1条件と、ケース部材の熱膨張係数が内側部の熱膨張係数より小さく外側部の引張強さが内側部の引張強さより低い第2条件とのいずれか一方の条件を満たし、樹脂部材にフィラーを含み、第1条件を満たす場合には内側部のフィラー含有率が外側部のフィラー含有率より低く、第2条件を満たす場合には内側部のフィラー含有率が外側部のフィラー含有率より高い電池である。
本開示技術の他の態様における電池は、発電要素を内蔵するケース部材と、発電要素に接続されるとともにケース部材を貫通して設けられた端子部材と、ケース部材と端子部材との間を絶縁し封止する樹脂部材とを有し、ケース部材には、端子部材を通す貫通孔が形成されており、樹脂部材には、ケース部材の内面に接する内側部と、貫通孔の壁面と端子部材との間を充填する孔内部と、ケース部材の外面に接し内側部よりも体積が小さい外側部とが含まれ、ケース部材の熱膨張係数が内側部の熱膨張係数より大きく内側部の引張強さが外側部の引張強さより低い第1条件と、ケース部材の熱膨張係数が内側部の熱膨張係数より小さく外側部の引張強さが内側部の引張強さより低い第2条件とのいずれか一方の条件を満たし、樹脂部材にエラストマーを含み、第1条件を満たす場合には内側部のエラストマー含有率が外側部のエラストマー含有率より高く、第2条件を満たす場合には内側部のエラストマー含有率が外側部のエラストマー含有率より低い電池である。
【0007】
上記態様における電池では、温度により、ケース部材のうち端子部材および樹脂部材が設けられている箇所が湾曲しようとする。第1条件の場合には、寒冷時には内向きに凸に、昇温時には外向きに凸に湾曲しようとする。第2条件の場合には逆に、寒冷時には外向きに凸に、昇温時には内向きに凸に湾曲しようとする。しかし、樹脂部材のうち寒冷時に伸び側となる箇所(第1条件では内側部、第2条件では外側部)は、引張強さが低くされているので、寒冷時でも割れにくい。
【0008】
上記態様における電池では、内側部の基材樹脂と外側部の基材樹脂とが同種のものであることが望ましい。
【0009】
記態様における電池では、ケース部材の表面のうち樹脂部材に覆われている範囲および端子部材の表面のうち樹脂部材に覆われている範囲の少なくとも一部に、金属と樹脂とが互いに入り込んでいる粗面領域が設けられていることが望ましい。粗面領域によるアンカー構造は、ケース部材と樹脂部材との密着性、端子部材と樹脂部材との密着性の向上に寄与する。さらに本態様では第1条件または第2条件を満たしているので、割れも生じにくい。
【発明の効果】
【0010】
本開示技術によれば、冷熱サイクルに対する耐久性に優れた電池が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る電池の斜視図である。
図2】端子部材の正面図である。
図3】端子部材の側面図である。
図4】端子部材の斜視図である。
図5】端子部の断面図である。
図6図5のうち樹脂部材のみを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示技術を具体化した実施の形態に係る電池1を図1に示す。電池1は、ケース部材2に発電要素3を内蔵したものである。ケース部材2は、箱体4と蓋体5とにより構成されている。箱体4は、発電要素3を内蔵する箱状の部材であり、上方が開口しているものである。蓋体5は、箱体4の開口を閉鎖する板状の部材である。箱体4、蓋体5のいずれも、ケース部材2の一部分である。発電要素3は、正負の電極板を電解質とともに集積した電極集積体である。
【0013】
蓋体5における長手方向の両端付近には、正負の端子部6、7が設けられている。端子部6、7の箇所にはいずれも、端子面8が露出している。端子面8は、後述する端子部材9、10の表面の一部分である。端子部材9、10は、樹脂部材11により蓋体5から絶縁されている。樹脂部材11には、端子部材9と蓋体5との間および端子部材10と蓋体5との間を封止する役割もある。
【0014】
端子部材9について説明する。単独の状態での端子部材9を、図2図4に示す。図2は、端子部材9を、図3中の矢印Aの視線で見た正面図である。図3は、端子部材9を、図2中の矢印Bの視線で見た側面図である。図3には、端子部材9に加えて、発電要素3の一部を破線で示している。図4は、端子部材9を、図2図3中の矢印Cの方角から見た斜視図である。端子部材9は、ケース部材2の内部で発電要素3に接続される導電性部材である。端子部材9は、蓋体5を貫通して設けられる部材である。
【0015】
端子部材9は、対外部24と、接続部12と、中間部13とを有している。対外部24は、外部の導電体と接続されるための部位である。図1に示した端子面8は、対外部24における外向きの面である。接続部12は、発電要素3における一方の電極板と接続される部位である。中間部13は、対外部24と接続部12とを繋ぐ部位である。
【0016】
端子部材10は、端子部材9を左右反転した形状の導電性部材である。端子部材9と端子部材10とは一般的に、別種の金属により構成される。例えば、端子部材9、10のうち、正極用のものとしてはアルミが、負極用のものとしては銅が用いられる。
【0017】
端子部6について説明する。図5は、蓋体5における端子部6の部分の断面図である。図5に示されるのは、図1中に矢印D、Dで示される蓋体5の長手方向と平行な縦断面である。図5の縦断面は、蓋体5の幅方向に対しては中央付近の位置のものである。図5に示されるように、蓋体5には、貫通孔14が形成されている。貫通孔14は、端子部材9を通すための形状である。
【0018】
蓋体5と端子部材9とは接触していない。蓋体5と端子部材9との間には、前述の樹脂部材11が設けられている。樹脂部材11の存在により、蓋体5と端子部材9との接触が防止されている。樹脂部材11はまた、貫通孔14を充填している。樹脂部材11により、ケース部材2の内部の空間と外部の空間とが遮断されている。樹脂部材11は、蓋体5に対して端子部材9を位置決めした状態で成形されたものである。樹脂部材11により、蓋体5と端子部材9とが一体化されている。本形態では、端子面8と樹脂部材11の外面15とはほぼ同一面である。
【0019】
樹脂部材11には図6に示すように、内側部16と、孔内部17と、外側部18とが含まれている。内側部16は、樹脂部材11のうち、図5中で蓋体5より下方に位置する部分である。孔内部17は同様に、図5中で蓋体5の厚さの範囲内の部分である。外側部18は同様に、蓋体5より上方に位置する部分である。言い替えると、内側部16は、蓋体5の内面19に接する部位である。孔内部17は、貫通孔14の壁面と端子部材9との間を充填する部位である。外側部18は蓋体5の外面20に接する部位である。図6は、説明の便宜上樹脂部材11のみを示したものである。実際には、図6に示される形状の樹脂部材11が単独部品として存在することはない。
【0020】
内側部16と外側部18とで体積を比較すると、外側部18の体積の方がより小さい。これは、電池1と外部回路との接続の都合上、外側部18および端子面8の外面20からの突出高さをあまり大きくできないためである。このことは、温度変化があった場合の蓋体5に対する樹脂部材11の伸縮状況に関して、より体積の大きい内側部16の方が、外側部18よりも支配的要因になることを意味する。
【0021】
電池1では、蓋体5と内側部16とでの熱膨張係数の大小関係、および内側部16と外側部18とでの引張強さの大小関係について、特別な関係を満たすようにされている。特別な関係には第1条件と第2条件との2通りがあり、いずれか一方の条件が満たされるようになっている。
【0022】
第1条件および第2条件の内容は、次の通りである。
第1条件:蓋体5の熱膨張係数が内側部16の熱膨張係数より大きく、内側部16の引張強さが外側部18の引張強さより低い。
第2条件:蓋体5の熱膨張係数が内側部16の熱膨張係数より小さく、外側部18の引張強さが内側部16の引張強さより低い。
【0023】
第1条件について説明する。第1条件では、上記の熱膨張係数の大小関係に基づき、温度変化に対して蓋体5の伸縮の方が内側部16の伸縮よりも顕著である。このため、図5に示した蓋体5は、寒冷時には下向きに凸に、昇温時には上向きに凸に、湾曲しようとすることになる。
【0024】
寒冷時に着目すると、寒冷時には内側部16も下向きに凸に湾曲させられることになる。内側部16の上側の面が蓋体5の収縮に引きずられて本来の収縮よりも強く収縮させられるからである。一方、伸び側となる内側部16の下側の面には引っ張り応力が掛かる。この引っ張り応力は、内側部16に割れ、端子部材9からの剥離、蓋体5からの剥離を生じさせる要因である。しかし第1条件では、内側部16の柔軟性が高いため、寒冷時でも実際に割れ、剥離が生じるまでには至らない。
【0025】
昇温時には逆に、外側部18が伸び側となりその上側の面に引っ張り応力が掛かる。しかし昇温時には、温度が高いことによって樹脂がある程度軟化する。このため、外側部18もある程度柔軟性がある状態となっているので、昇温時に外側部18に割れ等が発生することもない。
【0026】
第2条件について説明する。第2条件では、上記の熱膨張係数の大小関係に基づき、温度変化に対して内側部16の伸縮の方が蓋体5の伸縮よりも顕著である。このため蓋体5は、第1条件の場合とは逆に、寒冷時には上向きに凸に、昇温時には下向きに凸に、湾曲しようとすることになる。
【0027】
寒冷時に着目すると、寒冷時には外側部18も上向きに凸に湾曲させられることになる。外側部18の下側の面が蓋体5の収縮に引きずられて本来の収縮よりも強く収縮させられるからである。一方、外側部18の上側の面には引っ張り応力が掛かる。この引っ張り応力は、外側部18に割れ、剥離を生じさせる要因である。しかし第2条件では、外側部18の柔軟性が高いため、寒冷時でも実際に割れ、剥離が生じるまでには至らない。
【0028】
昇温時には逆に内側部16の下側の面に引っ張り応力が掛かる。しかし昇温時には、温度が高いことによって内側部16の樹脂もある程度軟化している。このため、昇温時に内側部16に割れ等が発生することもない。
【0029】
上記のように本形態の電池1では、第1条件と第2条件とのいずれか一方の条件を満たすことにより、寒冷時でも昇温時でも、樹脂部材11における割れ、剥離の発生が抑制されている。このため電池1は、冷熱サイクルに対する耐久性に優れている。
【0030】
上記のように本形態における樹脂部材11では、内側部16と外側部18とで性状が異なっている。内側部16と外側部18とでは、少なくとも引張強さが異なっている。熱膨張係数についても、内側部16と外側部18とで異なっていてもよい。内側部16と外側部18とにこのように異なる性状を付与する手法としては、次の3通りがある。
・樹脂部材11としてフィラーを含む複合樹脂を用い、フィラーの配合比率に差を付ける手法
・樹脂部材11としてエラストマーを含む複合樹脂を用い、エラストマーの配合比率に差を付ける手法
・異なる樹脂種の基材樹脂を用いる手法
【0031】
フィラーを用いる手法の場合について説明する。フィラーとは、微小な固形物である。例えば、ガラス繊維、ガラス粉末等がフィラーとして使用可能である。基材樹脂が同じであるとすれば、フィラーの配合比率が高いほど、複合樹脂としての引張強さが高い。したがって、第1条件では外側部18の方が内側部16よりもフィラーの配合比率が高く、第2条件では内側部16の方が外側部18よりもフィラーの配合比率が高い。
【0032】
基材樹脂が同じであるとすればまた、フィラーの配合比率が高いほど、複合樹脂としての熱膨張係数が小さい。樹脂部材11の基材樹脂が例えばPPS樹脂であり、蓋体5の材質が例えばアルミであるとすれば、基材樹脂の熱膨張係数は蓋体5の熱膨張係数の2倍近くあることになる。
【0033】
第1条件では、内側部16の複合樹脂としての熱膨張係数がアルミの熱膨張係数を下回る程度に、内側部16のフィラーの配合比率が高められている。第1条件での外側部18のフィラーの配合比率はそれよりもさらに高い。第2条件では、内側部16の複合樹脂としての熱膨張係数がアルミの熱膨張係数を下回らない程度に、内側部16のフィラーの配合比率が抑えられている。第2条件での外側部18のフィラーの配合比率はそれよりもさらに低い。フィラーを用いる手法の場合には上記のようにフィラーの配合比率を調整することによって、第1条件もしくは第2条件が満たされている。
【0034】
エラストマーを用いる手法の場合について説明する。エラストマーとは、高分子材料のうち弾性率が小さく粘弾性のあるものである。基材樹脂が同じであるとすれば、エラストマーの配合比率が低いほど、複合樹脂としての引張強さが高い。したがって、第1条件では内側部16の方が外側部18よりもエラストマーの配合比率が高く、第2条件では外側部18の方が内側部16よりもエラストマーの配合比率が高い。
【0035】
基材樹脂が同じであるとすればまた、エラストマーの配合比率が低いほど、複合樹脂としての熱膨張係数が小さい。第1条件では、内側部16の複合樹脂としての熱膨張係数がアルミの熱膨張係数を下回る程度に、内側部16のエラストマーの配合比率が抑えられている。第1条件での外側部18のエラストマーの配合比率はそれよりもさらに低い。第2条件では、内側部16の複合樹脂としての熱膨張係数がアルミの熱膨張係数を下回らない程度に、内側部16のエラストマーの配合比率が高められている。第2条件での外側部18のエラストマーの配合比率はそれよりもさらに高い。エラストマーを用いる手法の場合には上記のようにエラストマーの配合比率を調整することによって、第1条件もしくは第2条件が満たされている。
【0036】
異なる樹脂種の基材樹脂を用いる手法の場合について説明する。例えばPPS樹脂でも、分子量の大小、架橋の多寡等の種々の要因により、様々な種類がある。第1条件もしくは第2条件が満たされるように、内側部16の樹脂種とそれとは別の外側部18の樹脂種とを選べばよい。
【0037】
上記の樹脂部材11の説明で孔内部17には言及しなかったが、孔内部17の性状は、内側部16および外側部18のいずれか一方と同じでよい。あるいは、内側部16と同じ性状の部分と外側部18と同じ性状の部分との境目が孔内部17の中程にあってもよい。
【0038】
このように性状の異なる2つの樹脂種の部分を有する樹脂部材11は、2種類の原料樹脂を用いて成形される。蓋体5の貫通孔14に対して端子部材9を位置決めして保持した状態に対して、内側部16の原料樹脂を下方から供給して内側部16を形成する。または、内側部16および孔内部17を形成する。その後、外側部18の原料樹脂を上方から供給して外側部18を形成する。または、外側部18および孔内部17を形成する。複合樹脂を使用する場合の基材樹脂へのフィラーまたはエラストマーの配合は先に済ませておく。
【0039】
内側部16と外側部18との基材樹脂が同種のものまたは親和性の高いものである場合、成形条件によっては、両樹脂種間の接触箇所に混合層が形成される場合がある。その場合、その後の冷熱サイクルに対して、両樹脂種間の剥離が生じにくいという利点がある。
【0040】
続いて、端子部6のアンカー構造について説明する。本形態の電池1の端子部6では、金属部品(蓋体5および端子部材9)と樹脂部材11との接合面にアンカー構造部が設けられている。アンカー構造部は、金属部品の表面のうち樹脂部材11に覆われている範囲内に設けられている。アンカー構造部は、金属と樹脂とが互いに入り込んでいる粗面領域である。図5には、アンカー構造部のうち、断面図上に現れている箇所を太線21で示している。
【0041】
アンカー構造部では、金属部材と樹脂部材11とが相互に噛み合っている。このためアンカー構造部では、金属部品と樹脂部材11との密着性がよく、剥離が生じにくい。反面、このことは、上記の寒冷時あるいは昇温時のような蓋体5が湾曲しようとする状況で、樹脂部材11の割れを発生させやすい要因でもある。割れが発生しやすいのは、樹脂部材11の内側部16と外側部18とのうち、引っ張り応力が掛かる側の方である。アンカー構造部が設けられていると、金属部品と樹脂部材11とが剥離することにより引っ張り応力が緩和されるということがないので、その分、割れは発生しやすいのである。しかしながら本形態の樹脂部材11では、前述の第1条件もしくは第2条件のように、内側部16および外側部18の性状が適切に設定されている。このため、アンカー構造部が設けられていてもなお、割れが発生しにくい。
【0042】
蓋体5および端子部材9におけるアンカー構造部となるべき部分には、あらかじめ粗面化処理を施しておく。粗面化処理が施された範囲には、数十~数百nm程度のサイズの微細な凹凸形状が形成されている。上記の樹脂部材11の成形の際に、この凹凸形状の凹部に原料樹脂が流れ込んで、アンカー構造部となる。
【0043】
図2および図3には、端子部材9における粗面化処理が施される範囲である粗面化範囲22を示している。端子部材9のうち、対外部24の下面23のレベルから中間部13の中程辺りまでが粗面化範囲22である。下面23にも粗面化処理が施される。端子面8には粗面化処理を施さない。粗面化範囲22の下限についてはあまり厳格に定める必要はない。粗面化範囲22が、樹脂部材11と接することとなる範囲より下方にはみ出ていたとしても別段問題はない。
【0044】
上記では端子部6の樹脂部材11について説明したが、端子部7の樹脂部材11についても同様である。端子部7においても、アンカー構造部を設けることができる。そのための端子部材10における粗面化範囲も、図2および図3に示したものと特段の違いはない。
【0045】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば、蓋体5とそれを貫通して設けられた端子部材9と、10との間の樹脂部材11について、前述の第1条件または第2条件を満たすようにしている。このことにより、樹脂部材11の割れを防止している。特に、本来割れが生じやすい箇所である寒冷時に伸び側となる箇所でも割れが生じにくいようにしている。これにより、冷熱サイクルに対する耐久性に優れた電池1が実現されている。
【0046】
本実施の形態および実施例は単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、電池1の電池種は問わない。リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、全固体電池その他何でもよい。電池1における本開示技術の適用対象箇所は、正負の端子部6、7の両方でもよいし、いずれか一方のみでもよい。
【0047】
樹脂部材11を構成する原料樹脂としては、フィラーとエラストマーとの両方を基材樹脂に配合した複合樹脂を用いてもよい。樹脂部材11の基材樹脂の樹脂種は、PPS樹脂以外のものでもよい。蓋体5の材質は、アルミ以外の別の金属でもよい。端子部材9、10、蓋体5におけるアンカー構造部の範囲は、樹脂部材11の樹脂と接触する範囲の全体でなく一部分のみであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 電池
2 ケース部材
3 発電要素
4 箱体
5 蓋体
8 端子面
9 端子部材
10 端子部材
11 樹脂部材
12 接続部
13 中間部
14 貫通孔
16 内側部
17 孔内部
18 外側部
21 太線
22 粗面化範囲
24 対外部
図1
図2
図3
図4
図5
図6