(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2026-06-01
(45)【発行日】2026-06-09
(54)【発明の名称】管理システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20260602BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20260602BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20260602BHJP
B60L 53/62 20190101ALI20260602BHJP
B60L 53/63 20190101ALI20260602BHJP
B60L 53/67 20190101ALI20260602BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20260602BHJP
H02J 3/32 20260101ALI20260602BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20260602BHJP
H02J 7/45 20260101ALI20260602BHJP
H02J 7/50 20260101ALI20260602BHJP
H02J 7/82 20260101ALI20260602BHJP
【FI】
H02J7/02 F
B60L3/00 N
B60L53/14
B60L53/62
B60L53/63
B60L53/67
B60L58/12
H02J3/32
H02J7/35 K
H02J7/45
H02J7/50
H02J7/82
(21)【出願番号】P 2024006697
(22)【出願日】2024-01-19
【審査請求日】2025-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 知也
(72)【発明者】
【氏名】小鮒 俊介
【審査官】原 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】特許第6882613(JP,B1)
【文献】特開2011-188596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
B60L 3/00
B60L 53/14
B60L 53/62
B60L 53/63
B60L 53/67
B60L 58/12
H02J 3/32
H02J 7/35
H02J 7/45
H02J 7/50
H02J 7/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電動車を含む車群を管理する第1管理装置と、電力系統に関するエネルギーマネジメントを前記第1管理装置に要求する第2管理装置とを含む管理システムであって、
前記車群に含まれる前記複数の電動車の各々は、蓄電装置を備え、前記電力系統からの電力によって前記蓄電装置を充電可能に構成され、
前記第1管理装置は、前記車群の中に即時充電が必要な電動車が存在するか否かを判断し、前記車群の中に即時充電が必要な電動車が存在すると判断された場合に、当該電動車が即時充電を行うことを前提に、前記車群が充電可能な電力量と前記車群が放電可能な電力量との少なくとも一方を含む充放電可能量を示す情報を取得し、取得された前記充放電可能量を示す情報を前記第2管理装置へ送信するように構成され、
前記即時充電は、前記車群に含まれるいずれかの電動車が前記電力系統に電気的に接続されたときに当該電動車が前記電力系統からの電力を用いて即時開始する充電である、管理システム。
【請求項2】
前記第1管理装置は、前記車群に含まれる前記複数の電動車の各々について、当該電動車が前記電力系統に対して非接続状態から接続状態に変わるタイミングである接続タイミングと、前記接続タイミングの後に当該電動車が前記電力系統に対して非接続状態になるタイミングである離脱タイミングとを予測するように構成され、
前記第1管理装置は、予測された前記接続タイミングおよび前記離脱タイミングを用いて、前記車群の中に即時充電が必要な電動車が存在するか否かを判断するように構成される、請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
前記第1管理装置は、前記車群に含まれる前記複数の電動車の各々について、前記接続タイミングにおける当該電動車の蓄電量をさらに予測し、予測された前記蓄電量をさらに用いて、前記車群の中に即時充電が必要な電動車が存在するか否かを判断するように構成される、請求項2に記載の管理システム。
【請求項4】
前記第1管理装置は、所定の期間において、前記車群のうち前記電力系統に電気的に接続された全ての電動車が最大で蓄電可能な総電力量である車群容量と、前記車群のうち前記電力系統に電気的に接続された全ての電動車が蓄電している総電力量である車群蓄電量との各々の推移を示す情報を、前記充放電可能量を示す情報として取得するように構成され、
前記第1管理装置は、前記所定の期間において即時充電が必要な電動車について即時充電による当該電動車の蓄電量の変化量を加味して前記車群蓄電量を算出するように構成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の管理システム。
【請求項5】
前記第2管理装置は、前記第1管理装置から受信した前記充放電可能量を示す情報を用いて、前記車群蓄電量が前記車群容量を超えないように、前記所定の期間における前記車群の充電電力の推移を示す充電計画を作成し、作成された前記充電計画を前記第1管理装置へ送信するように構成され、
前記第1管理装置は、前記第2管理装置から受信した前記充電計画を用いて、前記車群を制御するように構成される、請求項4に記載の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エネルギーマネジメントのための管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2012-060834号公報(特許文献1)には、複数の電動車(例えば、電気自動車)を充電するにあたり、先に充電の終了が見込まれる電動車から放電させた電力を他の電動車の充電に利用する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の電動車を含む車群を管理する第1管理装置と、電力系統に関するエネルギーマネジメントを第1管理装置に要求する第2管理装置とを含む管理システムが知られている。こうした管理システムでは、例えば、第1管理装置が、未来の所定期間における車群の充放電可能量を算出して第2管理装置へ送信し、第2管理装置が、第1管理装置から受信した車群の充放電可能量に基づいて、上記所定期間において第1管理装置に要求するエネルギーマネジメントを決定する。しかしながら、ユーザの要望によって、第1管理装置が予測していなかった充電が上記所定期間において実行されると、第1管理装置が送信した車群の充放電可能量と、実際の車群の充放電可能量との間に、ずれが生じる可能性がある。
【0005】
上記ずれは、第1管理装置が送信した車群の充放電可能量に応じて要求されるエネルギーマネジメントの遂行を妨げる可能性がある。例えば、実際の車群の充放電可能量が、第1管理装置が送信した値よりも小さい場合には、要求されたエネルギーマネジメントの遂行が困難になる。そこで、車群に含まれる電動車間での電力授受(例えば、特許文献1参照)によって、上記ずれを相殺することが考えられる。しかしながら、こうした電動車間の電力授受では、充放電に伴う損失が発生する。損失を小さくするためには、電動車間の電力授受を不要にすること、すなわち第1管理装置が車群の充放電可能量を送信した後に第1管理装置が予測していなかった充電が実行される可能性を低くすることが望ましい。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、第1管理装置が車群の充放電可能量を示す情報を第2管理装置へ送信した後に第1管理装置が予測していなかった充電が実行される可能性を低くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態に係る管理システムは、複数の電動車を含む車群を管理する第1管理装置と、電力系統に関するエネルギーマネジメントを第1管理装置に要求する第2管理装置とを含む。車群に含まれる複数の電動車の各々は、蓄電装置を備え、電力系統からの電力によって蓄電装置を充電可能に構成される。第1管理装置は、車群の中に即時充電が必要な電動車が存在するか否かを判断し、車群の中に即時充電が必要な電動車が存在すると判断された場合に、当該電動車が即時充電を行うことを前提に、車群が充電可能な電力量と車群が放電可能な電力量との少なくとも一方を含む充放電可能量を示す情報を取得し、取得された充放電可能量を示す情報を第2管理装置へ送信するように構成される。即時充電は、車群に含まれるいずれかの電動車が電力系統に電気的に接続されたときに当該電動車が電力系統からの電力を用いて即時開始する充電である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、第1管理装置が車群の充放電可能量を示す情報を第2管理装置へ送信した後に第1管理装置が予測していなかった充電が実行される可能性を低くすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態に係る管理システムを示す図である。
【
図2】
図1に示した管理システムにおいて、第1管理装置が充放電可能量を示す情報を取得して送信する処理フローについて説明するための図である。
【
図3】充放電可能量を示す情報の一例について説明するための図である。
【
図4】本開示の実施の形態に係る管理システムによって実行されるエネルギーマネジメントについて説明するための図である。
【
図5】本実施の形態に係る充放電制御の一例について説明するための図である。
【
図6】車群に含まれる電動車間の電力授受について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0011】
図1は、本開示の実施の形態に係る電力システムおよび管理システムの概要を示す図である。
図1を参照して、電力システムは、電力系統PGと、複数のEVSE(Electric Vehicle Supply Equipment:車両用給電設備)10と、複数の蓄電装置20とを含む。電力系統PGは、送配電設備によって構築される電力網である。電力系統PGは変電設備を含んでもよい。電力系統PGは、図示しない発電設備に接続されてもよい。複数のEVSE10および複数の蓄電装置20の各々は、電力系統PGと電気的に接続されている。この実施の形態では、EVSE10が、交流電力を出力するAC給電設備である。しかしこれに限られず、EVSE10は、直流電力を出力するDC給電設備でもよい。EVSE10は、住宅に設置(固定)された充電器でもよいし、公共の充電スタンドでもよい。蓄電装置20は、定置式の蓄電装置である。蓄電装置20は、商用のESS(Energy Storage System)でもよいし、住宅に設置(固定)された蓄電装置でもよい。
【0012】
管理システムは、電力市場システム100と、EMS(Energy Management System)200と、VPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)システム300とを含む。
【0013】
VPPシステム300は、複数の電動車30を含む車群VGを管理する。車群VGに含まれる複数の電動車30の各々は、蓄電装置31を備え、電力系統PGからの電力によって蓄電装置31を充電可能に構成される。蓄電装置31は、車載バッテリに相当する。電動車30は、蓄電装置31から出力される電力を用いて走行可能に構成される。電動車30は、蓄電装置31からの電力を用いて、電動車30の駆動輪を回転させる駆動装置(例えば、図示しない1つ以上のモータ)をさらに備える。電動車30は、内燃機関を備えない電気自動車(BEV)であってもよいし、内燃機関を備えるPHEV(プラグインハイブリッド車)であってもよい。
図1中には、電動車30の構成の一例を示している。
【0014】
電動車30は、蓄電装置31に加えて、充放電回路32(車載充放電器)と、インレット33(受電ポート)と、ECU(Electronic Control Unit)35と、HMI(Human Machine Interface)38と、通信装置39とをさらに備える。ECU35は、プロセッサ351および記憶装置352を備える。蓄電装置31には、蓄電装置31の状態を監視するBMS(Battery Management System)31aが設けられている。BMS31aは、蓄電装置31の状態を検出する各種センサを含み、検出結果をECU35へ出力する。BMS31aは、例えば、蓄電装置31の温度、電流、電圧、およびSOC(State Of Charge)を検出する。SOCは、蓄電量を示し、例えば満充電状態の蓄電量に対する現在の蓄電量の割合を0~100%で表わしたものである。
【0015】
EVSE10につながる充電ケーブル11の先端部(コネクタ12)を駐車状態の電動車30のインレット33に接続すると(プラグイン)、電動車30がEVSE10(ひいては電力系統PG)と電気的に接続される。以下では、電動車30と電力系統PGとが電気的に接続された状態を「系統接続状態」、電動車30と電力系統PGとが電気的に接続されていない状態を「系統離脱状態」と称する。
【0016】
充放電回路32は電力変換回路(例えば双方向インバータ)を含む。系統接続状態の電動車30では、外部充電(車両外部からの電力による蓄電装置31の充電)と外部給電(蓄電装置31の電力による車両外部への給電)とが可能になる。電動車30は、外部充電および外部給電によって電力系統PGのエネルギーマネジメントを行うことができる。外部充電のための電力は、例えば電力系統PGからEVSE10を通じてインレット33に供給される。充放電回路32は、インレット33が受電した電力を蓄電装置31の充電に適した電力(例えば直流電力)に変換し、変換された電力を蓄電装置31へ出力する。外部給電のための電力は、蓄電装置31から充放電回路32に供給される。充放電回路32は、蓄電装置31から供給される直流電力を外部給電に適した電力(例えば交流電力)に変換し、変換された電力をインレット33へ出力する。以下の説明において、電動車30の充電、放電、蓄電量はそれぞれ蓄電装置31の充電、放電、蓄電量を意味する。
【0017】
HMI38は、入力装置および表示装置を含む。HMI38は、例えばナビゲーションシステム(以下、「ナビ」と表記する)を含む。ナビは、例えばGPS(Global Positioning System)のような測位システムを利用して電動車30の位置を検出する。ユーザがナビに目的地を設定すると、ナビは目的地までの走行ルートをユーザに表示する。ECU35は通信装置39を通じてVPPシステム300と無線通信を行う。VPPシステム300は、系統接続状態の電動車30の充放電制御を遠隔地から実行できる。
【0018】
モバイル端末50は電動車30のユーザに携帯される。モバイル端末50は、例えばタッチパネルディスプレイを具備するスマートフォンである。モバイル端末50には、VPPシステム300を利用するためのアプリケーションソフトウェアがインストールされている。モバイル端末50は、ユーザからの充電予約を受け付ける。ユーザは、出発予定時刻およびその時の目標SOCをモバイル端末50に入力することで、出発予定時刻までに蓄電装置31のSOCを目標SOC以上にする充電をVPPシステム300に予約(要求)することができる。モバイル端末50は、予約された充電に関する情報(以下、「充電予約情報」と称する)を、対応する電動車30の識別情報とともにVPPシステム300へ送信する。充電予約情報は、ユーザが入力した出発予定時刻および目標SOCを含む。
【0019】
EMS200は、CEMS(City EMS)またはFEMS(Factory EMS)であってもよい。EMS200は、プロセッサ201および記憶装置202を備える。EMS200は、直接的または間接的に複数の蓄電装置20の各々を制御可能に構成される。VPPシステム300は、プロセッサ301および記憶装置302を備える。記憶装置302は、車群VGに含まれる各電動車に関する情報を、個車(電動車30)ごとの識別情報(車両ID)で区別して記憶している。記憶装置302は、車群VGに含まれる各電動車に関して、蓄電装置31の仕様情報(例えば、蓄電容量)を予め記憶している。また、車群VGに含まれる複数の電動車30の各々は、車両システムの状態(作動/停止)、ナビ情報、ならびに車載センサで検出された自車(電動車30)の位置および状態を、VPPシステム300へ逐次送信する。プロセッサ301は、電動車30またはモバイル端末50から取得した情報(位置、SOC、充電予約情報など)を用いて、記憶装置302内の情報を更新する。この実施の形態では、1つ以上のプロセッサが1つ以上の記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、後述する
図2および
図4に示す各制御が実行される。ただし、これらの処理は、ソフトウェアによらず、ハードウェア(電子回路)のみによって実行されてもよい。VPPシステム300、EMS200は、それぞれ本開示に係る「第1管理装置」、「第2管理装置」の一例に相当する。
【0020】
EMS200は、電力市場システム100およびVPPシステム300の各々と通信可能に構成される。EMS200は、未来の所定期間(以下、「対象期間」と称する)における車群VGの充放電可能量を要求する信号(以下、「第1要求信号」と称する)を、VPPシステム300へ送信する。EMS200は、電力需給予測に基づいて第1要求信号を送信してもよい。VPPシステム300は、第1要求信号を受信すると、対象期間における車群VGの充放電可能量を示す情報(以下、「VPP情報」と称する)を取得する。充放電可能量は、車群VGが充電可能な電力量と車群VGが放電可能な電力量との少なくとも一方を含む。VPPシステム300は、VPP情報をEMS200へ送信する。
【0021】
図2は、VPPシステム300がVPP情報を取得して送信する処理フローについて説明するための図である。VPPシステム300は、前述の第1要求信号を受信すると、
図2中にフローチャートで示される処理フローF1を開始する。フローチャート中の「S」は、ステップを意味する。S11では、プロセッサ301が、記憶装置302に記憶された各電動車の情報(例えば、位置、SOC、充電予約情報)を用いて、車群VGに含まれる各電動車について移動予測(行動予測)を行う。プロセッサ301は、電動車30のナビに設定された走行計画(例えば、出発地、発車時刻、目的地、到着時刻、目的地までの走行ルートなど)を用いて、電動車30の移動予測を行ってもよい。プロセッサ301は、電動車30の移動(ユーザの行動)に関する履歴データ(例えば、気象情報、渋滞情報、および曜日によって区別して管理される過去の位置データ)から電動車30の移動スケジュールを予測してもよい。プロセッサ301は、電動車30の位置情報を用いて電動車30の位置を追跡しながら、電動車30の目的地への到着時刻、および到着時の蓄電量(SOC)を予測してもよい。プロセッサ301は、充電予約情報を用いて、電動車30の出発予定時刻を予測してもよい。
【0022】
この実施の形態では、プロセッサ301が、S11において、電動車30の位置の変化とともに蓄電量の変化も予測する。また、プロセッサ301は、車群VGに含まれる各電動車について、当該電動車が電力系統PGに対して非接続状態から接続状態に変わるタイミングである接続タイミングと、接続タイミングにおける当該電動車の蓄電量と、その接続タイミングの後に当該電動車が電力系統PGに対して非接続状態になるタイミングである離脱タイミング(例えば、出発予定時刻)とを予測する。プロセッサ301は、これらの予測の結果に基づいて、車群VGに含まれる各電動車が前述の対象期間においてどのような状態になるかを推定する。具体的には、プロセッサ301は、車群VGに含まれる各電動車を、対象期間において常に系統接続状態である電動車30A(以下、「スタンバイ車両」とも称する)と、対象期間において常に系統離脱状態である電動車30B(以下、「走行車両」とも称する)と、対象期間内で系統離脱状態から系統接続状態に変わる電動車30C(以下、「接続車両」とも称する)と、対象期間内で系統接続状態から系統離脱状態に変わる電動車30D(以下、「離脱車両」とも称する)とに分類する。
【0023】
続くS12では、プロセッサ301が、車群VGの中に即時充電が必要な電動車30が存在するか否かを判断する。詳しくは、プロセッサ301は、S11で上記接続車両に分類された各電動車について即時充電が必要か否かを判断する。即時充電は、電動車が電力系統PGに電気的に接続されたとき(電動車30が系統離脱状態から系統接続状態に変わったとき)に当該電動車が電力系統PGからの電力を用いて即時開始する外部充電である。プロセッサ301は、当該電動車について、予測された接続タイミングおよび離脱タイミングを用いて、即時充電が必要か否かを判断してもよい。プロセッサ301は、例えば、接続タイミングから離脱タイミングまでの時間(以下、「出発余裕時間」と称する)が所定値よりも短い電動車について即時充電が必要と判断してもよい。また、プロセッサ301は、当該電動車について予測された接続タイミングの蓄電量が少ないほど、上記所定値を長くしてもよい。出発余裕時間が短いほど即時充電の必要性が高くなる傾向がある。また、接続タイミングの蓄電量が少ないほど即時充電の必要性が高くなる傾向がある。プロセッサ301は、例えば、夜に低SOC状態で到着(プラグイン)して数時間後に出発する電動車については即時充電が必要、夜に低SOC状態で到着(プラグイン)して朝まで系統接続状態のまま放置される電動車については即時充電が不要と判断してもよい。
【0024】
接続車両に分類された少なくとも1つの電動車30について即時充電が必要と判断された場合には、S12でYESと判断され、処理がS13に進む。以下では、即時充電が必要と判断された接続車両を、「即時充電車両」と称する。また、即時充電が不要と判断された接続車両と、離脱車両と、スタンバイ車両との各々を、「VPP車両」と称する。
【0025】
S13では、プロセッサ301が対象期間における即時充電車両の充電計画を作成する。充電計画は蓄電装置31の充電電力の推移を示す。プロセッサ301は、即時充電車両について、例えば接続タイミングの蓄電量(S11での予測値)と出発予定時刻の目標SOC(充電予約情報)との少なくとも一方を用いて、即時充電の開始時刻および終了時刻を算出してもよい。ユーザによって設定される目標SOCの代わりに、所定の固定値(例えば、満充電付近のSOC値)が採用されてもよい。即時充電車両の充電計画は、即時充電のために必要な電力量と、即時充電が実行される時間帯とを含む。VPPシステム300は、接続タイミングにおいて即時充電車両が接続されるEVSE10の仕様情報(例えば、定格充電電力)を取得し、その仕様情報に基づいて、即時充電にかかる時間を求めてもよい。車群VGの中に複数の即時充電車両が存在する場合には、プロセッサ301が各即時充電車両について充電計画を作成する。そして、全ての即時充電車両について充電計画の作成が完了すると、処理がS14に進む。
【0026】
S14では、プロセッサ301が、S11における行動予測の結果と、S13で作成された即時充電車両の充電計画とを用いて、対象期間における車群VGの充放電可能量を示すVPP情報を取得する。プロセッサ301は、即時充電車両が即時充電を行うことを前提に車群VGの充放電可能量を示すVPP情報を取得する。VPP情報は、即時充電車両の充電計画を含む。プロセッサ301は、車群容量および車群蓄電量に基づいて、車群VGの充放電可能量を算出する。車群容量は、車群VGのうち電力系統PGに電気的に接続された全ての電動車が最大で蓄電可能な総電力量である。車群蓄電量は、車群VGのうち電力系統PGに電気的に接続された全ての電動車が蓄電している総電力量である。S14では、対象期間において車群容量および車群蓄電量の各々の推移を示す情報を、VPP情報として取得する。プロセッサ301は、即時充電車両について即時充電による当該即時充電車両の蓄電量の変化量を加味して車群蓄電量を算出する。
【0027】
図3は、VPP情報の一例について説明するための図である。車群VGのうち、第1~第3電動車が、対象期間の少なくとも一部の区間において電力系統PGに電気的に接続されている例を示す。第1電動車、第2電動車、第3電動車は、それぞれ即時充電車両、スタンバイ車両、即時充電が不要と判断された接続車両に相当する。時刻t1、t2は、それぞれ第3電動車、第1電動車の接続タイミングを示す。線L11、L21、L31は、それぞれ第1、第2、第3電動車の蓄電容量(最大で蓄電可能な電力量)の推移を示し、線L1は、これら電動車の蓄電容量の合計値(車群容量)の推移を示す。線L12、L22、L32は、それぞれ第1、第2、第3電動車が電力系統PGと電気的に接続されているときの蓄電量(蓄電装置31が保有する電力量)の推移を示し、線L2は、これら電動車の蓄電量の合計値(車群蓄電量)の推移を示す。
【0028】
図3を参照して、線L12は、
図2のS13で作成された第1電動車の充電計画を示す。時刻t3は、S13で算出された即時充電の終了タイミングに相当する。第1電動車の充電計画は、時刻t2で開始され、かつ、時刻t3で終了する即時充電が行われるように作成される。時刻t3よりも後の時刻t4は、S11で予測された第1電動車の離脱タイミングに相当する。線L22、L32はそれぞれ、対象期間において第2、第3電動車が充放電を行わない場合の蓄電量の推移を示す。こうした個車ごと(第2電動車、第3電動車)の予測情報は、
図2のS11における行動予測の結果に基づいて作成される。
【0029】
線L1およびL2は、対象期間における車群VGの充放電可能量の推移を示す。線L1が示す車群容量(充電上限値)から線L2が示す車群蓄電量を減算した値は、車群VGが充電可能な電力量(充電可能量)に相当する。線L2が示す車群蓄電量から放電下限値(例えば0kWh)を減算した値は、車群VGが放電可能な電力量(放電可能量)に相当する。なお、
図3には、VPP車両の数が2台である例を示しているが、VPP車両の数は任意である。VPP車両の数は、3台以上50台未満でもよいし、50台以上でもよい。
【0030】
再び
図2を参照して、接続車両に分類された全ての電動車30について即時充電が不要と判断された場合には、S12でNOと判断され、処理はS13をスキップしてS14に進む。この場合も、プロセッサ301は、S14で、S11の行動予測の結果を用いて、前述のVPP情報を取得する。ただし、車群VGの中に即時充電が必要な電動車が存在しないため、車群蓄電量の算出において即時充電は考慮されない。
【0031】
S14でVPP情報が取得されると、VPPシステム300は、S15で、そのVPP情報をEMS200へ送信する。この際、VPPシステム300は、VPP情報に加えて、対象期間における車群VGの充放電可能な最大電力(最大充電電力および/または最大放電電力)の推移を示す情報をさらに送信してもよい。VPPシステム300は、各VPP車両に関して、当該電動車が接続されるEVSE10の仕様情報(例えば、充放電能力を示す定格電力)を取得し、その仕様情報に基づいて当該電動車の充放電可能な最大電力(kW)を求めてもよい。S15の処理が実行されると、処理フローF1は終了する。
【0032】
図4は、この実施の形態に係るエネルギーマネジメントについて説明するための図である。EMS200は、上記VPP情報を受信すると、処理フローF2を開始する。
【0033】
図4を参照して、S21では、EMS200が、車群VG(分散電源)の充放電可能量に基づく電力取引を実施する。具体的には、EMS200は、VPP情報が示す対象期間における車群VGの充放電可能量を用いて、対象期間における入札量を決定し、入札量を含む入札情報を電力市場システム100へ送信する。その後、電力市場において、EMS200が入札した商品が落札されると、約定に至る。この場合、対象期間が約定期間になり、入札量が約定量になる。電力市場は、スポット市場、時間前市場、または需給調整市場であってもよく、JEPX(日本卸電力取引所)のような卸電力取引所によって開設および運営されてもよい。各市場では、電力を商品とした取引きが行われる。
【0034】
続くS22では、EMS200が、上記電力取引の結果に基づいて、電力系統PGに関するエネルギーマネジメントをVPPシステム300に要求する。具体的には、EMS200は、約定期間(対象期間)において、約定量の少なくとも一部に対応するエネルギーマネジメント(充放電)を車群VGに実行させるために、車群VGの充放電計画を作成する。EMS200は、対象期間における車群VGの充放電量が充放電可能量を超えないように、車群VGの充放電計画を作成する。充放電計画は、対象期間における車群VGの充電電力の推移と車群VGの放電電力の推移との少なくとも一方を示す。そして、EMS200は、作成された車群VGの充放電計画を含む信号(以下、「第2要求信号」と称する)をVPPシステム300へ送信する。第2要求信号は、上記充放電計画に従う車群VGの充放電をVPPシステム300に要求する。これにより、処理フローF2は終了する。
【0035】
VPPシステム300は、上記第2要求信号を受信すると、処理フローF3を開始する。S31では、VPPシステム300が、第2要求信号が示す車群VGの充放電計画を実行するための充放電量を複数のVPP車両(個車)に分配することにより、VPP車両(個車)ごとの充放電計画を作成する。充放電計画は、充電計画でもよいし、放電計画でもよい。VPPシステム300は、あるVPP車両による充電と別のVPP車両による放電とが同時に実行されないように、各VPP車両の充放電計画を作成する。これにより、後述する電動車間の電力授受(
図6参照)が抑制される。第2要求信号が車群VGの充電計画を示す場合には、VPPシステム300は、複数のVPP車両に関して、充電予約情報が示す出発予定時刻が早いほど充電開始時刻が早くなるように、各VPP車両の充電計画を決定してもよい。これにより、ユーザが望む充電が実行されやすくなる。
【0036】
続くS32では、VPPシステム300が、
図2のS13で作成された即時充電車両の充電計画と、S31で作成されたVPP車両(個車)ごとの充放電計画との各々が実行されるように、対応する各電動車(即時充電車両、VPP車両)に対して充放電指示(リモート指示)を送信する。ただし、車群VGの中に即時充電車両が存在しない場合には、
図2のS13で即時充電車両の充電計画は作成されず、S32においてはVPP車両のみに充放電指示が送信される。VPPシステム300は、上記充放電指示(充電指示および/または放電指示)により、個車ごとに充放電制御(リモート制御)を実行する。充放電制御(S32)が完了すると、処理フローF3は終了する。
【0037】
車群VGに含まれる各電動車のECU35は、対応する電動車30が系統離脱状態から系統接続状態に変わったときに、処理フローF4を開始する。S41では、対応する電動車30(対象車両)がVPPシステム300から充放電指示(S32)を受信したか否かを、ECU35が判断する。対象車両が充放電指示を受信した場合には(S41にてYES)、ECU35が、S42において、VPPシステム300からの充放電指示に従って蓄電装置31の充放電制御を実行する。ECU35は、充放電指示に従って充放電回路32を制御する。対象車両がVPP車両である場合には、そのVPP車両に割り当てられた充放電計画が、対象車両によって実行される。これにより、EMS200がVPPシステム300に要求した車群VGの充放電計画が、複数のVPP車両によって実行される。対象車両が即時充電車両である場合には、対象車両によって即時充電が実行される。充放電制御(S42)が完了すると、処理フローF4は終了する。
【0038】
図5は、上記充放電制御(リモート制御)の一例について説明するための図である。
図5において、
図3に示したパラメータと同一のものには同一の符号を付している。
図5を参照して、この例では、車群VGの充放電計画として、線L2Aで示される充電計画が作成され、EMS200からVPPシステム300へ送信される(
図4のS22)。EMS200は、VPPシステム300から受信したVPP情報を用いて、車群蓄電量が車群容量を超えないように、対象期間における車群VGの充電電力の推移を示す充電計画(線L2A)を作成する。VPPシステム300は、EMS200から受信した充電計画を用いて車群VGを制御する。詳しくは、線L2Aが示す充電計画は、時刻t4から時刻t6までの充電をVPPシステム300に要求する。VPPシステム300は、この充電計画から要求される充電が実行されるように第2電動車および第3電動車の各々の充電計画を作成する。VPPシステム300は、例えば、線L22Aで示すような時刻t4から時刻t5までの期間において第2電動車に充電を実行させる第1個車充電計画と、線L32Aで示すような時刻t5から時刻t6までの期間において第3電動車に充電を実行させる第2個車充電計画とを作成する。そして、
図4のS32およびS42の処理により、線L12で示すような時刻t2から時刻t3までの期間において第1電動車に充電を実行させる即時充電計画と、線L22Aで示す第1個車充電計画と、線L32Aで示す第2個車充電計画とに従って、個車ごとに充放電制御(リモート制御)が実行される。
【0039】
再び
図4を参照して、対象車両が充放電指示を受信しない場合には(S41にてNO)、ECU35が、S43において、ユーザから充電要求を受けたか否かを判断する。ユーザは、例えばモバイル端末50またはHMI38を通じてECU35に充電を要求してもよい。ユーザから充電要求を受けた場合には(S43にてYES)、S44において、蓄電装置31のSOCが所定SOC値になるまで外部充電が実行されるように、ECU35が充放電回路32を制御する。所定SOC値は、ユーザによって設定されてもよいし、固定値でもよい。ECU35は、外部からの指示によらず、蓄電装置31の充電制御(ローカル制御)を実行する。充電制御(S44)が完了すると、処理フローF4は終了する。
【0040】
S41,S43の両方でNOと判断された場合には、処理が最初のステップ(S41)に戻る。S41,S43のいずれかでYESと判断されるまで、S41,S43の判断が繰り返される。ただし、対象車両が系統離脱状態になると、処理フローF4は終了する。
【0041】
上記のように、対象車両が系統離脱状態から系統接続状態に変わったときに、S41でNOと判断されたとしても、ユーザがECU35に充電を要求することで、S43でYESと判断され、即時充電が実行される。ユーザは、自らの判断で即時充電を実行することができる。しかしながら、対象期間においてユーザからの指示によって即時充電が実行されると、VPP情報が示す車群VGの充放電可能量と、実際の車群VGの充放電可能量との間に、ずれが生じる可能性がある。
【0042】
そこで、この実施の形態に係るVPPシステム300は、車群VGの中に即時充電が必要な電動車が存在する場合には、当該電動車(即時充電車両)が即時充電を行うことを前提に車群VGの充放電可能量を示すVPP情報(
図3参照)を取得し、取得されたVPP情報をEMS200へ送信するように構成される(
図2参照)。これにより、VPPシステム300がVPP情報をEMS200へ送信した後にVPPシステム300が予測していなかった充電(特に、即時充電)が実行される可能性が低くなる。EMS200は、即時充電車両に起因する電力分を考慮した車群VGの充放電計画を立案することが可能になる。EMS200は、個車の情報は扱わず、車群VGの情報のみを扱う。これにより、EMS200における情報処理の負荷(例えば、演算負荷)が軽減される。
【0043】
さらに、VPPシステム300は、即時充電車両にリモート制御で即時充電を実行させる(
図4参照)。すなわち、対象期間において即時充電が必要な電動車に関しては、リモート制御で即時充電が実行される。このため、対象期間においてユーザからの指示によって即時充電が実行される可能性は低い。よって、上記ずれの発生が抑制される。
【0044】
対象期間において、VPP情報が示す車群VGの充放電可能量と、実際の車群VGの充放電可能量との間にずれが生じる場合には、VPPシステム300は、車群VGに含まれる電動車間での電力授受によって、ずれを相殺してもよい。
図6は、車群VGに含まれる電動車間の電力授受について説明するための図である。
【0045】
図6を参照して、VPPシステム300は、低SOC状態の電動車30Eと高SOC状態の電動車30Fとの各々が系統接続状態である場合に、蓄電量が多い電動車30Fに所定電力量の外部給電(電力系統PGへの放電)を実行させるとともに、蓄電量が少ない電動車30Eに上記所定電力量の外部充電を実行させてもよい。これにより、電動車30E,30F間で上記所定電力量の電力授受が行われる。電力の授受は電力系統PGを介して行われる。しかしながら、こうした電動車間の電力授受では、充放電に伴う損失が発生する。損失を小さくするためには、上記電動車間の電力授受を不要にすること、すなわちVPPシステム300がVPP情報を送信(
図2のS15)した後にVPPシステム300が予測していなかった充電が実行される可能性を低くすることが望ましい。
【0046】
図2,
図4の各々に示した処理フローは適宜変更可能である。例えば、目的に応じて、処理の順序が変更されてもよいし、不要なステップが省かれてもよい。また、いずれかの処理の内容が変更されてもよい。例えば、VPPシステム300は、S15で、即時充電車両に関して蓄電容量および蓄電量の各々の推移を示す情報と、VPP車両に関して蓄電容量および蓄電量の各々の推移を示す情報とを別々にEMS200へ送信してもよい。また、処理フローF4のS43(
図4)において、ECU35は、充電予約情報に基づいて、ユーザが充電を要求しているか否かを判断してもよい。また、VPPシステム300は、車群VGの中に即時充電車両が存在する場合に、処理フローF3のS32(
図4)においてVPP車両のみに充放電指示を送信してもよい。即時充電車両に関しては、即時充電が必要になると予測されており、VPPシステム300が即時充電車両に充電を指示しなくても、ユーザからの要求により即時充電(ローカル制御)が実行される可能性が高い。
【0047】
電力系統PGは、大規模な交流グリッドに限られず、マイクログリッドであってもよいし、DC(直流)グリッドであってもよい。モバイル端末50は、スマートフォンに限られず、他の端末(ウェアラブルデバイス、携帯型ゲーム機など)であってもよい。
【0048】
電動車の構成は、前述した構成(
図1参照)に限られない。上記実施の形態では、車群VGに含まれる各電動車が、蓄電装置31の電力を電力系統PGへ放電可能に構成される。しかしこうした構成は必須ではなく、電動車は、充放電器の代わりに充電器(充電回路)を備えてもよい。車載バッテリの充放電のための電力変換回路は、電動車ではなくEVSEに搭載されてもよい。電動車は非接触充電可能に構成されてもよい。非接触充電を行う電動車は、給電設備側の送電部(例えば送電コイル)と電動車側の受電部(例えば受電コイル)との位置合わせが完了したときに、前述した「系統接続状態」に準ずる状態になったとみなされてもよい。電動車は自動運転可能に構成されてもよい。電動車は、4輪の乗用車に限られず、バスまたはトラックでもよいし、車輪の数も任意である。
【0049】
上記の各種変形例は任意に組み合わせて実施されてもよい。
【0050】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0051】
30 電動車、31 蓄電装置、200 EMS、300 VPPシステム、PG 電力系統。