(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】
(45)【発行日】
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び電子写真装置
(51)【国際特許分類】
【FI】
(21)【出願番号】
(22)【出願日】
【審査請求日】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】山田 基也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 孝治
(72)【発明者】
【氏名】小島 康夫
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 正之
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-004753(JP,A)
【文献】特開2015-143828(JP,A)
【文献】特開2017-111409(JP,A)
【文献】特開2022-132076(JP,A)
【文献】特開2023-164311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/00-5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項】
円筒状の支持体、該支持体の直上に形成された下引き層、及び該下引き層上に形成された感光層を有する電子写真感光体であって、
該下引き層が、下記式(A1)で示される化合物及び/又は下記式(A2)で示される化合物を含む組成物の硬化物を含有し、
該支持体の表面が、Al及び/又はAl合金で形成されており、
該支持体表面のAlの集合組織の表面方向における該支持体の表面は、
(α){001}方位-15°以上+15°未満の面
(β){101}方位-15°以上+15°未満の面
(γ){111}方位-15°以上+15°未満の面
のいずれかに分類されるAlの結晶粒からなり、
該支持体の表面の全面積に対する該(β)を有するAlの結晶粒が占める面積の割合が10%以下であり、且つ(α)を有するAlの結晶粒が占める面積が10%を超える、
ことを特徴とする電子写真感光体。
【化】
【化】
(式(A1)及び(A2)中、R
101~R
106、R
201~R
210は、それぞれ独立に、下記式(B)で示される1価の基、水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の複素環基を示す。ただし、R
101~R
106の少なくとも1つ、及びR
201~R
210の少なくとも1つは、下記式(B)で示される1価の基である。該アルキル基のCH
2の1つは、O又はSで置換されていてもよい、あるいは該アルキル基のCHの1つはNで置換されていてもよい。該置換のアルキル基の置換基は、アリール基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、及びヒドロキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基である。該置換のアリール基及び該置換の複素環基の置換基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、ハロゲン基置換アルキル基、及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基である。)
【化】
(式(B)中、a、b、及びcの少なくとも1つは、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する。l及びmは、それぞれ独立に、0又は1であり、lとmの和は、0以上2以下である。
aは、主鎖の炭素数が1~6のアルキレン基、炭素数1~6のアルキル基で置換された主鎖の炭素数が1~6のアルキレン基、ベンジル基で置換された主鎖の炭素数が1~6のアルキレン基、アルコシキカルボニル基で置換された主鎖の炭素数が1~6のアルキレン基、又はフェニル基で置換された主鎖の炭素数が1~6のアルキレン基を示し、これらのアルキレン基は、置換基として、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。これらのアルキレン基の主鎖中のCH
2の1つはO又はSで置換されていてもよい。あるいはこれらのアルキレン基の主鎖中のCHの1つはNで置換されていてもよい。
bは、フェニレン基、炭素数1~6のアルキル基置換フェニレン基、ニトロ基置換フェニレン基、ハロゲン基置換フェニレン基、又はアルコキシ基置換フェニレン基を示し、これらのフェニレン基は、置換基として、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。
cは、水素原子、カルボキシ基、主鎖の炭素数が1~6のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキル基で置換された主鎖の炭素数が1~6のアルキル基を示し、これらのアルキル基は、置換基として、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。)
【請求項】
前記支持体の表面の全面積に対する、前記(α)を有するAlの結晶粒が占める面積が11%以上である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項】
前記支持体の表面の全面積に対する、前記(α)を有するAlの結晶粒が占める面積が50%以上である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項】
前記支持体の表面の全面積に対する、前記(α)を有するAlの結晶粒が占める面積が75%以上である、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項】
前記支持体の表面の全面積に対する、前記(β)を有するAlの結晶粒が占める面積が5%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項】
前記Al合金が、0.2質量%以上0.6質量%以下のSi及び0.45質量%以上0.9質量%以下のMgを含む、請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、及びクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段と、を一体に支持し、電子写真装置の本体に着脱自在であるプロセスカートリッジ。
【請求項】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子写真感光体、並びに、帯電手段、露光手段、現像手段、及び転写手段を有する電子写真装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【】
本発明は電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ、及び該電子写真感光体を有する電子写真装置に関する。
【背景技術】
【】
近年、電子写真装置のユーザーの多様化が進み、出力される画像には従来よりも高画質であることが求められている。
【】
特許文献1には、感光体の帯電維持性を高める技術として、導電性基体上に配置された下引層が、特定のペリノン化合物と、ポリウレタンと、を含有する電子写真感光体が記載されている。
【】
特許文献2には、画像を繰り返し形成したときに生じる感光体の光感度の低下を抑制する技術として、特定のペリノン化合物と、特定のアクセプター化合物と、を含有する電子写真感光体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【】
【文献】特開2020-46640号公報
【文献】特開2020-46641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【】
本発明者らの検討によると、特許文献1~2に記載の電子写真感光体では、高温高湿環境下に置かれた後の電位変動、特に短期使用における明部電位変動に改善の余地があることがわかった。
【】
したがって、本発明の目的は、高温高湿環境下に置かれた後の電子写真感光体において、明部電位の短期使用における変動を高度に抑制可能な電子写真感光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明の一態様に係る電子写真感光体は、円筒状の支持体、該支持体の直上に形成された下引き層、及び該下引き層上に形成された感光層を有する電子写真感光体であって、
該下引き層が、下記式(A1)で示される化合物及び/又は下記式(A2)で示される化合物を含む組成物の硬化物を含有し、
該支持体の表面が、Al及び又はAl合金で形成されており、
該支持体表面のAlの集合組織の表面方向における該支持体の表面は、
(α){001}方位-15°以上+15°未満の面
(β){101}方位-15°以上+15°未満の面
(γ){111}方位-15°以上+15°未満の面
のいずれかに分類されるAlの結晶粒からなり、
該支持体の表面の全面積に対する
該(β)を有するAlの結晶粒が占める面積の割合が10%以下であり、且つ(α)を有するAlの結晶粒が占める面積が10%を超えることを特徴とする。
【化】
【化】
式(A1)及び式(A2)中、R
101~R
106、R
201~R
210は、それぞれ独立に、下記式(B)で示される1価の基、水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換の複素環基を示す。ただし、R
101~R
106の少なくとも1つ、及びR
201~R
210の少なくとも1つは、下記式(B)で示される1価の基である。該アルキル基のCH
2の1つはO又はSで置換されていてもよい、あるいは該アルキル基のCHの1つはNで置換されていてもよい。該置換のアルキル基の置換基は、アリール基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、及びヒドロキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基である。該置換のアリール基及び該置換の複素環基の置換基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、ハロゲン基置換アルキル基、及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基である。
【化】
式(B)中、a、b、及びcの少なくとも1つは、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する。l及びmは、それぞれ独立に、0又は1であり、lとmの和は、0以上2以下である。
aは、主鎖の炭素数が1~6のアルキレン基、炭素数1~6のアルキル基で置換された主鎖の炭素数が1~6のアルキレン基、ベンジル基で置換された主鎖の炭素数が1~6のアルキレン基、アルコシキカルボニル基で置換された主鎖の炭素数が1~6のアルキレン基、又はフェニル基で置換された主鎖の炭素数が1~6のアルキレン基を示し、これらのアルキレン基は、置換基として、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。これらのアルキレン基の主鎖中のCH
2の1つはO又はSで置換されていてもよい、あるいはこれらのアルキレン基の主鎖中のCHの1つはNで置換されていいてもよい。
bは、フェニレン基、炭素数1~6のアルキル基置換フェニレン基、ニトロ基置換フェニレン基、ハロゲン基置換フェニレン基、又はアルコキシ基置換フェニレン基を示し、これらのフェニレン基は、置換基として、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。
cは、水素原子、カルボキシ基、主鎖の炭素数が1~6のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキル基で置換された主鎖の炭素数が1~6のアルキル基を示し、これらのアルキル基は、置換基として、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。
【】
また、本発明の別の態様に係るプロセスカートリッジは、上記電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、及びクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段と、を一体に支持し、電子写真装置の本体に着脱自在であることを特徴とする。
【】
また、本発明のさらに別の態様に係る電子写真装置は、上記電子写真感光体、並びに、帯電手段、露光手段、現像手段、及び転写手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【】
本発明によれば、高温高湿環境下に置かれた後の電子写真感光体において、明部電位の短期使用における変動を高度に抑制可能な電子写真感光体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【】
【図】Alの結晶粒の分布を示す図である。
【図】支持体の表面のAlの結晶粒の測定位置を示す図である。
【図】電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【】
以下、好適な実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。
本発明者らが検討したところ、特許文献1~2に記載の技術では、電子写真感光体が高温高湿環境下に置かれたときに、支持体のAl又はAl合金の結晶が持つ特性により、支持体に水分が引き寄せられる場合があった。このため支持体の直上の下引き層で電子が滞留してしまう場合があった。電子輸送性の化合物を含有する下引き層の場合、支持体から下引き層へのホールの注入が極めて少なく、滞留した電子を取り除くことができにくいため、繰り返し使用すると明部電位の上昇につながってしまう可能性があることがわかった。
【】
従来技術で発生していた上記技術課題を解決するために、本発明者らはアルミニウム製支持体の表面の結晶方位について検討を行った。
【】
上記検討の結果、以下の本発明に係る電子写真感光体を用いることで、上記技術課題を解決することができることを見出した。
【】
すなわち、本発明に係る電子写真感光体は、円筒状の支持体、該支持体の直上に形成された下引き層、及び該下引き層上に形成された感光層を有する電子写真感光体であって、
該下引き層が、下記式(A1)で示される化合物及び/又は下記式(A2)で示される化合物を含む組成物の硬化物を含有し、
該支持体の表面が、Al及び又はAl合金で形成されており、
該支持体表面のAlの集合組織の表面方向における該支持体の表面は、
(α){001}方位-15°以上+15°未満の面
(β){101}方位-15°以上+15°未満の面
(γ){111}方位-15°以上+15°未満の面
のいずれかに分類されるAlの結晶粒からなり、
該支持体の表面の全面積に対する
該(β)を有するAlの結晶粒が占める面積の割合が10%以下であり、且つ(α)を有するAlの結晶粒が占める面積が10%を超えることを特徴とする。
【化】
【化】
式(A1)及び式(A2)中、R
101~R
106、R
201~R
210は、それぞれ独立に、下記式(B)で示される1価の基、水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の複素環基を示す。ただし、R
101~R
106の少なくとも1つ、及びR
201~R
210の少なくとも1つは、下記式(B)で示される1価の基である。該アルキル基のCH
2の1つはO又はSで置換されていてもよい、あるいは該アルキル基のCHの1つはNで置換されていてもよい。該置換のアルキル基の置換基は、アリール基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、及びヒドロキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基である。該置換のアリール基及び該置換の複素環基の置換基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、ハロゲン基置換アルキル基、及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基である。
【】
【化】
式(B)中、a、b、及びcの少なくとも1つは、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する。l及びmは、それぞれ独立に、0又は1であり、lとmの和は、0以上2以下である。
【】
aは、主鎖の炭素数が1~6のアルキレン基、炭素数1~6のアルキル基で置換された主鎖の炭素数が1~6のアルキレン基、ベンジル基で置換された主鎖の炭素数が1~6のアルキレン基、アルコシキカルボニル基で置換された主鎖の炭素数1~6のアルキレン基、又はフェニル基で置換された主鎖の炭素数が1~6のアルキレン基を示し、これらのアルキレン基は、置換基として、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。これらのアルキレン基の主鎖中のCH2の1つはO又はSで置換されていてもよい、あるいはこれらのアルキレン基の主鎖中のCHの1つはNで置換されていてもよい。
【】
bは、フェニレン基、炭素数1~6のアルキル基置換フェニレン基、ニトロ基置換フェニレン基、ハロゲン基置換フェニレン基、又はアルコキシ基置換フェニレン基を示し、これらのフェニレン基は、置換基として、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。
【】
cは、水素原子、カルボキシ基、主鎖の炭素数が1~6のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキル基で置換された主鎖の炭素数が1~6のアルキル基を示し、これらのアルキル基は、置換基として、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。
【】
a及びbについては、主鎖は、上記式(A1)又は上記式(A2)の骨格構造の炭素原子又は窒素原子からcまでを貫く炭素数が最小となる鎖を指す。cについては、主鎖は、a又はbと結合する原子から末端までの炭素数が最大となる鎖を指す。なお、aについての主鎖の炭素数が1~6のアルキレン基及びcについての主鎖の炭素数が1~6のアルキル基は、それぞれ直鎖のアルキレン基及び直鎖のアルキル基であり、置換基として有してもよいアルキル基は、上記直鎖に結合する側鎖となる。
【】
本発明の構成により、従来技術における上記技術課題を解決することができるメカニズムについて、本発明者らは以下のように考えている。
【】
アルミニウムの結晶方位は大きく分けて、{101}方位、{001}方位、及び{111}方位の3つが存在する。「こべるにくす([No.28]Vol.14 2005.OCT)」に記載があるように、通常、例えば
図1の(a)に示すように、それぞれの結晶方位を有する結晶粒はランダムに分布している。
【】
本発明では、上記3つの結晶方位を有する結晶粒について、
(α){001}方位-15°以上+15°未満の面
(β){101}方位-15°以上+15°未満の面
(γ){111}方位-15°以上+15°未満の面
と表記する。例えば(α)、つまり{001}方位-15°以上+15°未満の面とは、Alの結晶における{001}面から-15°以上+15°未満の面のばらつきを持った結晶面のことを指す。同様に、(β)は、Alの結晶における{101}面から-15°以上+15°未満の面のばらつきを持った結晶面、(γ)は、Alの結晶における{111}面から-15°以上+15°未満の面のばらつきを持った結晶面のことを指す。
【】
本発明者らは、結晶方位によって結晶粒の親水性が異なると推測している。具体的には、(β){101}方位-15°以上+15°未満の面を有する結晶粒は、(γ){111}方位-15°以上+15°未満の面を有する結晶粒、及び(α){001}方位-15°以上+15°未満の面を有する結晶粒と比較して親水性が高い、と本発明者らは推測している。
【】
従来技術におけるアルミニウム製支持体では、3種類の結晶方位の結晶粒がランダムに存在するため、(β)を有する結晶粒の寄与により親水性が高い傾向にあったと考えられる。そのため、水分を引き寄せやすく、この水分をきっかけに支持体直上の下引き層で電子が滞留してしまい、感光体表面の明部電位が変動していたと考えられる。特に、電子輸送性材料を有する下引き層では、その特性から、支持体からのホールの注入が極めて少なく、上記の影響が顕著であったと考えられる。
【】
そこで、本発明においては、アルミニウム製支持体の表面において、例えば
図1の(b)及び(c)に示すように、親水性が高いと推測している(β)を有する結晶粒の割合を減らした状態で支持体を形成する。これにより、アルミニウム製支持体の表面に水分が引き寄せられにくくなり、直上の下引き層での電子の滞留も生じにくくなることで、感光体表面の明部電位の変動を低減できるようになったと考えられる。
【】
結晶方位によって結晶粒の親水性が異なる理由については以下のように考えている。
アルミニウムの結晶は、その方位によって表面自由エネルギーが異なる。表面自由エネルギーが大きい順に、(β)を有する結晶粒、(α)を有する結晶粒、(γ)を有する結晶粒の順となる。この表面自由エネルギーの違いにより、親水性が異なると考えている。よって、表面自由エネルギーの大きさからもっとも親水性が高いのは(β)を有する結晶粒であると予想できる。
【】
一方、本発明者らは、結晶方位によって結晶粒の電子の流しやすさが異なり、(γ){111}方位-15°以上+15°未満の面を有する結晶粒は、アルミニウムの結晶におけるすべり面でもあるため、(α){001}方位-15°以上+15°未満の面を有する結晶粒と比較して電子を流しにくいと推測している。
【】
そこで、アルミニウム製支持体の表面を、電子を流しやすいと推測している(α){001}方位-15°以上+15°未満の面を有する結晶粒がリッチな状態で形成する。これにより、アルミニウム製支持体をスムーズに電子が流れるようになり、直上の下引き層での電子の滞留も生じにくくなることで、感光体表面の明部電位の変動をさらに低減できるようになったと考えられる。
【】
このような思想から、上記技術課題は、次のようにして解決できることを本発明者らは見出した。すなわち、アルミニウム製支持体の表面において、表面自由エネルギーが大きく、もっとも親水性が高い(β)を有する結晶粒の割合を減らし、(α)を有する結晶粒、及び(γ)を有する結晶粒のうち、電子を流しやすいと推測している(α)を有する結晶粒の割合を高くする。
【】
以下、本発明に係る電子写真感光体の構成について、さらに具体的に説明する。
[電子写真感光体]
本発明に係る電子写真感光体は、円筒状の支持体、下引き層及び感光層を有する。
本発明に係る電子写真感光体を製造する方法としては、後述する各層の塗布液を調製し、所望の層の順番に塗布して、乾燥させる方法が挙げられる。このとき、塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、インクジェット塗布、ロール塗布、ダイ塗布、ブレード塗布、カーテン塗布、ワイヤーバー塗布、及びリング塗布などが挙げられる。これらの中でも、効率性及び生産性の観点から、浸漬塗布が好ましい。
以下、支持体及び各層について説明する。
【】
<支持体>
本発明に係る電子写真感光体は、円筒状の支持体を有し、支持体の表面は、Al及びAl合金から選ばれる少なくともいずれか1つで形成されている。また、支持体の表面は、温水処理や、ブラスト処理、切削処理などが施されていてもよい。
【】
本発明において、該支持体の表面は、
(α){001}方位-15°以上+15°未満の面
(β){101}方位-15°以上+15°未満の面
(γ){111}方位-15°以上+15°未満の面
のいずれかに分類されるAlの結晶粒からなる。
【】
本発明において、該支持体の表面は、
(α){001}方位-15°以上+15°未満の面
(β){101}方位-15°以上+15°未満の面
を有するAlの結晶粒からなる。
【】
また、該支持体の表面の全面積に対して該(β)を有するAlの結晶粒が占める面積の割合が10%以下であり、且つ、該支持体の表面の全面積に対して該(α)を有するAlの結晶粒が占める面積の割合が10%を超え、11%以上であることが好ましい。
【】
電子を流しやすい面を増やす観点から、支持体の表面の全面積に対して(α)を有するAlの結晶粒が占める面積の割合は、50%以上であることがより好ましい。特に(α)を有するAlの結晶粒が占める面積の割合が75%以上であることで、本発明の効果をより良く得ることができる。
【】
また、親水性が高い面を減らすという観点から、支持体の表面の全面積に対して(β)を有するAlの結晶粒が占める面積の割合が5%以下であることが好ましい。
【】
(支持体の表面のAlの結晶粒が有する結晶方位の測定方法)
本発明において、支持体の表面のAlの結晶粒が有する結晶方位の測定は、例えば以下のように行うことができる。
まず、支持体の表面をバフ研磨及び水酸化ナトリウム水溶液などにより処理し、処理前の支持体の表面から20μm以内の点について、Alの結晶粒が有する結晶方位の測定を行う。結晶方位の測定はSEM-EBSP法によって行なうことが好ましい。
SEM-EBSP法による測定には、EBSP(電子後方散乱パターン:Electron Back Scatter diffraction Pattern)検出器を備えたFE-SEM(電界放射型 走査型電子顕微鏡:Field Emission-Scanning Electron Microscope)を用いる。ここで、SEM-EBSP法とは、試験片表面に電子線を入射させたときに発生する反射電子から得られた菊池パターンを解析することにより、電子線入射位置の結晶方位を決定することができる方法のことである。また、菊池パターンとは、結晶に当たった電子線が散乱して回折された際に、白黒一対の平行線や帯状もしくはアレイ状に電子回折像の背後に現れるパターンのことを指す。
EBSP検出器を備えたFE-SEMとしては、例えば、電界放出型走査電子顕微鏡(商品名:JSM-6500F、日本電子社製)を用いることができる。
【】
(2)支持体の表面におけるAlの結晶粒の面積
本発明において、該支持体の表面は、
(α){001}方位-15°以上+15°未満の面
(β){101}方位-15°以上+15°未満の面
を有するAlの結晶粒からなる。また、該支持体の表面の全面積に対して該(β)を有するAlの結晶粒が占める面積の割合が10%以下であり、且つ、該支持体の表面の全面積に対して該(α)を有するAlの結晶粒が占める面積の割合が10%を超え、11%以上である。
【】
上記の各結晶方位を有するAlの結晶粒が占める面積の割合は、以下のようにして決定することができる。
図2に示すように、まず支持体のどちらか一方の端から軸方向に全長の1/8、2/8、3/8、4/8、5/8、6/8、7/8にあたる位置を決める。さらにそれぞれの位置において周方向に90°ずつ4分割する。軸方向の分割線と周方向の分割線が交わる28点それぞれにおいて、軸方向の分割線と周方向の分割線の交点が中心になるように100μm四方の領域を設定し、上記のSEM-EBSP法によって結晶方位の測定を行う。続いて、(α)、(β)、及び(γ)の結晶方位を有するAlの結晶粒について、それぞれの方位が占める面積を算出し、得られた値を10000μm
2で除することにより、各領域における各結晶方位を有するAlの結晶粒が占める面積の割合を決定する。最後に、28の領域から得られたそれぞれの値の平均値を支持体の(α)、(β)、及び(γ)が占める面積の割合として決定する。
【】
各結晶方位を有するAlの結晶粒が占める面積の算出は、付属のソフトを使用しても構わないし、例えば、測定により得られた方位を、HSV色空間の色相hを用いて、(α)の範囲を0≦h<60及び300≦h<360、(β)の範囲を60≦h<180、(γ)の範囲を180≦h<300と定めて、各結晶方位を有するAlの結晶粒の領域の色相マッピングを行うことによって算出しても構わない。
【】
(3)支持体として用いるためのAl合金
本発明における支持体は、Al及び/又はAl合金であれば構わない。一般的に、電子写真感光体用の支持体には、JIS呼称の3000系、5000系、6000系の如き展伸材用のAl合金が用いられる。
その中でも、結晶方位をコントロールする観点から、支持体の表面を形成するAl合金は、0.2質量%以上0.6質量%以下のSi及び0.45質量%以上0.9質量%以下のMgを含むことが好ましい。このようなAl合金としては、6000系Al合金、例えばJIS呼称A6063合金を用いることが好ましい。JIS呼称A6063合金は、具体的には0.2質量%以上0.6質量%以下のSi、0.35質量%以下のFe、0.1質量%以下のCu、0.1質量%以下のMn、0.45質量%以上0.9質量%以下のMg、0.1質量%以下のCr、0.1質量%以下のZn、及び0.1質量%以下のTiを含むAl合金である。
【】
(4)支持体の製造方法
支持体の製造方法は、本発明の要件を満たす支持体を製造することができる方法であれば、特に限定されるものではない。
【】
支持体を製造する方法としては、例えば、以下の4つの工程を含む方法が挙げられる。
(i)特定のAl合金を準備する工程と、熱間押し出し加工を行って成型体を得る第一の工程、
(ii)第一の工程で得た成型体に、冷間引き抜きを施す第二の工程、
(iii)第二の工程後に焼鈍しを行う第三の工程、及び
(iV)焼鈍しを行った後に表面を切削する第四の工程。
【】
焼鈍しによって結晶方位をコントロールする場合、昇温速度、焼鈍し温度、維持時間、及び冷却速度(降温速度)を調整することによって結晶方位をコントロールすることが可能である。
特に焼鈍しの温度を405℃以上450℃以下とし、冷却速度を6℃/min以上、20℃/min以下とすることで支持体の表面において、(β)を有する結晶粒が占める面積の割合が減少し、且つ(α)を有する結晶粒が占める面積の割合が増加する。
【】
さらに、昇温速度及び維持時間によって、各結晶粒の割合を制御することができ、昇温速度を10℃/min以下、維持時間を2.5時間以下とすることが好ましい。
【】
また、結晶方位をコントロールするにあたり、熱履歴は重要であるため、上記の熱間押し出し加工を施す第一の工程及び冷間引き抜きを施す第二の工程を経たAl合金を焼鈍しして使用することが好ましい。
【】
本実施形態の支持体の製造方法においては、上述した支持体の製造方法の各工程の前後、又は各工程間、さらには各工程中に、必要に応じて適宜他の工程を有していてもよい。例えば、寸法合わせや面取り・インロー形成、鏡面化・粗面化などをおこなう切削加工、ホーニング加工、ブラスト加工、研削加工などの処理工程が必要に応じて行なわれる。
【】
一般に電子写真感光体の回転軸は、円筒状の支持体の両端部にフランジ部材を嵌め、このフランジ部材に回転軸を取りつけることで確保される。一般的に、支持体の両端部の内径寸法は、JIS B 0401-1999の嵌め合い公差のH8程度に設定される。また、支持体の両端部の内径の表面粗さは、嵌め合い公差の観点から小さいほうが好ましいが、製造コストの兼ね合いから、JIS B 0601-2001の算術平均粗さRaを1.6μm以下、最大高さRzを6.3μm以下(旧JISの仕上げ記号▽▽▽以上)程度に設定される。
【】
支持体の表面に切削油や粉塵が付着している場合には、洗浄を行ってもよい。支持体の洗浄方法としては、支持体表面の油分や異物などの付着物を除去する脱脂洗浄工程、脱脂洗浄剤を洗い流す濯ぎ工程、支持体に残留した水を乾燥し洗浄を完了させる乾燥工程を設けることが知られている。
【】
脱脂洗浄工程では、支持体を界面活性剤やアルカリ電解水などの脱脂洗浄剤が含まれる洗浄液に浸漬する。その際に、超音波を用いることや洗浄液の温度を高くすることが脱脂洗浄能力を高める上で有効である。超音波の周波数は、好ましくは10kHz以上100kHz以下が効果的である。温度は30℃以上60℃以下が効果的である。
【】
濯ぎ工程では、支持体を濯ぎ液に浸漬する。濯ぎ液は市水でも純水でもよいが純水が好ましい。その際に、超音波を用いることや濯ぎ液の温度を高くすることがすすぎ洗浄能力を高める上で有効である。超音波の周波数は、好ましくは10kHz以上1MHz以下が効果的である。温度は20℃以上60℃以下が効果的である。すすぎ洗浄槽は1槽でもよいし、複数槽あってもよい。浸漬後の引上げ時にシャワーを使うとより濯ぎ効果が高まる。
【】
乾燥工程は、温風乾燥、真空乾燥、温水乾燥などいずれの乾燥方法も有効であるが、ダスト低減のためには、温純水による引き上げ乾燥が好ましい。温純水の水温の範囲は、30℃以上99℃以下であればよい。
【】
<下引き層>
下引き層は支持体の直上に形成され、上記式(A1)で示される化合物及び/又は上記式(A2)で示される化合物を含む組成物の硬化物を含有する。
すなわち、上記式(A1)で示される化合物及び上記式(A2)で示される化合物は、置換基として式(B)で示される構造を有し、上記硬化物を形成するための重合反応は、式(B)で示される構造が有する重合性官能基の反応を含む。
【】
上記組成物には、重合性官能基を有するモノマーを含有させ、上記式(A1)で示される化合物及び/又は上記式(A2)で示される化合物と共に共重合することで硬化膜として下引き層を形成してもよい。また、下引き層は、さらに樹脂を含有してもよい。
【】
重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、メチロール基、アルキル化メチロール基、エポキシ基、金属アルコキシド基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、カルボン酸無水物基、炭素-炭素二重結合基などが挙げられる。
【】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、セルロース樹脂などを含んでもよい。
【】
また、下引き層は、電気特性を高める目的で、電子輸送物質、金属酸化物、金属、導電性高分子などをさらに含有してもよい。これらの中でも、電子輸送物質、金属酸化物を用いることが好ましい。
【】
電子輸送物質として、表1-1~表1-6に、上記式(A1)で示される化合物の具体例を、表2-1~表2-2に、上記式(A2)で示される化合物の具体例を示す。
【】
表1-1~表1-6、及び表2-1~表2-2中、cについて「(H)」と記載している場合は、cはa又はbの欄に示す構造中の水素原子であることを示し、式(B)の構造はa又はbの欄に示す構造であることを意味する。a又はbの欄が(-)である場合はl又はmが0であることを示す。
【】
下記は具体例であり、本発明の効果は下記具体例にのみによってもたらされるものではない。これらの化合物は単体で使用しても構わないし、複数を混合して用いても構わない。
【】
【】
【】
【】
【】
【】
【】
【】
【】
金属酸化物としては、酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などが挙げられる。金属としては、金、銀、アルミニウムなどが挙げられる。
また、下引き層は、添加剤をさらに含有してもよい。
【】
下引き層の膜厚は、0.1μm以上2.5μm以下であることが特に好ましい。
下引き層は、上述の各材料及び溶剤を含有する下引き層用塗布液を調製し、この塗膜を支持体上に形成し、乾燥及び、又は硬化させることで形成することができる。下引き層用塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【】
<感光層>
電子写真感光体の感光層は、主に、(1)積層型感光層と、(2)単層型感光層とに分類される。(1)積層型感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と、を有する。(2)単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質を共に含有する感光層を有する。
【】
(1)積層型感光層
積層型感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層と、を有する。
【】
(1-1)電荷発生層
電荷発生層は、電荷発生物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【】
電荷発生物質としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、フタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料の中でも、オキシチタニウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が好ましい。
電荷発生層中の電荷発生物質の含有量は、電荷発生層の全質量に対して、40質量%以上85質量%以下であることが好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
【】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルブチラール樹脂がより好ましい。
【】
また、電荷発生層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤をさらに含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、などが挙げられる。
【】
電荷発生層の膜厚は、0.1μm以上1μm以下であることが好ましく、0.15μm以上0.4μm以下であることがより好ましい。
【】
電荷発生層は、上述の各材料及び溶剤を含有する電荷発生層用塗布液を調製し、この塗膜を下引き層上に形成し、乾燥させることで形成することができる。電荷発生層用塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【】
(1-2)電荷輸送層
電荷輸送層は、電荷輸送物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【】
電荷輸送物質としては、例えば、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
電荷輸送層中の電荷輸送物質の含有量は、電荷輸送層の全質量に対して、25質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。
【】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、特にポリアリレート樹脂が好ましい。
電荷輸送物質と樹脂との含有量比(質量比)は、4:10~20:10が好ましく、5:10~12:10がより好ましい。
【】
また、電荷輸送層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
【】
電荷輸送層の膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、8μm以上40μm以下であることがより好ましく、10μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【】
電荷輸送層は、上述の各材料及び溶剤を含有する電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗膜を電荷発生層上に形成し、乾燥させることで形成することができる。電荷輸送層用塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中でも、エーテル系溶剤又は芳香族炭化水素系溶剤が好ましい。
【】
(2)単層型感光層
単層型感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂及び溶剤を含有する感光層用塗布液を調製し、この塗膜を支持体又は下引き層上に形成し、乾燥させることで形成することができる。電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂としては、上記「(1)積層型感光層」における材料の例示と同様である。
【】
<保護層>
本発明において、感光層の上に、保護層を設けてもよい。保護層を設けることで、耐久性を向上することができる。
保護層は、導電性粒子及び/又は電荷輸送物質と、樹脂とを含有することが好ましい。
【】
導電性粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物の粒子が挙げられる。
【】
電荷輸送物質としては、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
【】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
【】
また、保護層は、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として形成してもよい。その際の反応としては、熱重合反応、光重合反応、放射線重合反応などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーとして、電荷輸送能を有する材料を用いてもよい。
【】
保護層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤、などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
【】
保護層の膜厚は、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上7μm以下であることが好ましい。
【】
保護層は、上述の各材料及び溶剤を含有する保護層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥及び/又は硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、スルホキシド系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【】
[プロセスカートリッジ、電子写真装置]
本発明に係るプロセスカートリッジは、これまで述べてきた電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、及びクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置の本体に着脱自在であることを特徴とする。
【】
また、本発明に係る電子写真装置は、これまで述べてきた電子写真感光体、並びに、帯電手段、露光手段、現像手段、及び転写手段を有することを特徴とする。
【】
図3に、電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の一例を示す。
円筒状の電子写真感光体1は、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体1の表面は、帯電手段3により、正又は負の所定電位に帯電される。
【】
なお、
図3においては、ローラー型帯電部材によるローラー帯電方式を示しているが、コロナ帯電方式、近接帯電方式、注入帯電方式などの帯電方式を採用してもよい。
【】
帯電された電子写真感光体1の表面には、露光手段(不図示)から露光光4が照射され、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5内に収容されたトナーで現像され、電子写真感光体1の表面にはトナー像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像は、転写手段6により、転写材7に転写される。トナー像が転写された転写材7は、定着手段8へ搬送され、トナー像の定着処理を受け、電子写真装置の外へプリントアウトされる。
【】
電子写真装置は、転写後の電子写真感光体1の表面に残ったトナーなどの付着物を除去するための、クリーニング手段9を有していてもよい。また、クリーニング手段9を別途設けず、上記付着物を現像手段5などで除去する、所謂、クリーナーレスシステムを用いてもよい。
【】
電子写真装置は、電子写真感光体1の表面を、前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理する除電機構を有していてもよい。また、本発明に係るプロセスカートリッジ11を電子写真装置の本体に着脱するために、レールなどの案内手段12を設けてもよい。
【】
本発明に係る電子写真感光体は、レーザービームプリンター、LEDプリンター、複写機、ファクシミリ、及び、これらの複合機などに用いることができる。
【実施例】
【】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例の記載において、「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【】
[支持体の製造]
以下の方法で、支持体の製造を行った。
【】
(支持体A-1の製造例)
JIS呼称A6063合金からなる熱間押出形成された押出し管を、冷間引き抜き加工して、外径30.8mm、内径28mm、長さ371mmの引き抜き管を得た。
次に、引き抜き管を電気炉に入れ、昇温速度5℃/minで昇温後、450℃で1時間維持し、続いて引き抜き管が150℃になるまで6℃/minで冷却し、24時間後に電気炉から取り出した。
焼鈍し後に切削加工を行うことにより、外径30.5mm、長さ370mm、両端部に内径28.5mm、深さ20mmのインロー部を有する「支持体A-1」を得た。支持体A-1の製造条件を表3に示す。
用いた引き抜き管の元素分析を行ったところ、0.4質量%のSi、0.3質量%のFe、0.06質量%のCu、0.08質量%以下のMn、0.65質量%のMg、0.05質量%のCr、0.07質量%のZn、及び0.06質量%のTiを含むAl合金であった。
【】
(支持体A-2~A-9の製造例)
支持体A-1の製造例において、同様の引き抜き管を用い、表3に示すように焼鈍しの条件を変更した以外は、支持体A-1の製造例と同様にして支持体を製造した。得られた支持体を「支持体A-2~支持体A-9」とする。支持体A-2~A-9の製造条件を表3に示す。
【】
(支持体A-10の製造例)
JIS呼称A3003合金からなる熱間押出形成された押出し管を、冷間引き抜き加工して、外径30.8mm、内径28mm、長さ371mmの引き抜き管を得た。
次に、引き抜き管を電気炉に入れ、昇温速度10℃/minで昇温後、450℃で2.5時間維持し、続いて引き抜き管が150℃になるまで15℃/minで冷却し、24時間後に電気炉から取り出した。
焼鈍し後に切削加工を行うことにより、支持体A-1と同寸法の「支持体A-10」を得た。支持体A-10の製造条件を表3に示す。
用いた引き抜き管の元素分析を行ったところ、0.2質量%のSi、0.3質量%のFe、0.09質量%のCu、1.3質量%のMn、及び0.02質量%のZn、を含むAl合金であった。
【】
(支持体B-1の製造例)
支持体A-1の製造例において、表3に示すように焼鈍し条件を変更した以外は、支持体A-1の製造例と同様にして支持体を製造した。得られた支持体を「支持体B-1」とする。支持体B-1の製造条件を表3に示す。
【】
(支持体B-2~B-10の製造例)
支持体B-1の製造例において、同様の引き抜き管を用い、表3に示すように焼鈍しの条件を変更した以外は、支持体B-1の製造例と同様にして支持体を製造した。得られた支持体を「支持体B-2~支持体B-10」とする。支持体B-2~支持体B-10の製造条件を表3に示す。
【】
(支持体B-11及び支持体B-12の製造例)
マグネシウムを2.5質量%の割合で含有したAl-Mg合金からなる外径30.8mm、内径28mm、長さ371mmの引き抜き管を用い、表3に示す条件で焼鈍しを行った。焼鈍し後に切削加工を行うことにより、支持体A-1と同寸法の「支持体B-11及び支持体B-12」を得た。支持体B-11及び支持体B-12の製造条件を表3に示す。
【】
(支持体B-13の製造例)
JIS呼称A3003合金からなる熱間押出形成された押出し管を、冷間引き抜き加工して、外径30.8mm、内径28mm、長さ371mmの引き抜き管を得た。
次に、引き抜き管を電気炉に入れ、昇温速度5℃/minで昇温後、405℃で1時間維持し、続いて引き抜き管が150℃になるまで30℃/minで冷却し、24時間後に電気炉から取り出した。
焼鈍し後に切削加工を行うことにより、支持体A-1と同寸法の「支持体B-13」を得た。支持体B-13の製造条件を表3に示す。
用いた引き抜き管の元素分析を行ったところ、0.2質量%のSi、0.3質量%のFe、0.07質量%のCu、1.2質量%のMn、及び0.02質量%のZn、を含むAl合金であった。
【】
(支持体B-14の製造例)
支持体B-13の製造例において、同様の引き抜き管を用い、表3に示すように焼鈍しの条件を変更した以外は、支持体B-13の製造例と同様にして支持体を製造した。得られた支持体を「支持体B-14」とする。支持体B-14の製造条件を表3に示す。
【】
【】
[上記式(A1)で示される化合物、及び上記式(A2)で示される化合物の製造例]
上記式(A1)で示される構造を有する誘導体(電子輸送物質の誘導体)は、例えば、米国特許第4442193号公報、米国特許第4992349号公報、米国特許第5468583号公報、Chemistry of materials,Vol.19,No.11,2703-2705(2007)に記載の公知の合成方法を用いて合成することが可能である。また、東京化成工業(株)、シグマアルドリッチジャパン(株)及びジョンソン・マッセイ・ジャパン・インコーポレイテッド社から購入可能なナフタレンテトラカルボン酸二無水物とモノアミン誘導体との反応で合成することができる。
【】
式(A1)で示される化合物には、イソシアネート化合物のイソシアネート基と重合することが可能な重合性官能基(ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、及びカルボキシ基)を有する。式(A1)で示される構造を有する誘導体にこれらの重合性官能基を導入する方法としては、式(A1)で示される構造を有する誘導体に直接重合性官能基を導入する方法、前記重合性官能基又は、重合性官能基の前駆体と成り得る官能基を有する構造を導入する方法がある。後述の方法としては、例えばナフチルイミド誘導体のハロゲン化物を元に、パラジウム触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アリール基を導入する方法がある。また、例えばナフチルイミド誘導体のハロゲン化物を元に、FeCl3触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用い、官能基含有アルキル基を導入する方法がある。さらに、例えばナフチルイミド誘導体のハロゲン化物を元に、リチオ化を経た後にエポキシ化合物やCO2を作用させ、ヒドロキシアルキル基やカルボキシル基を導入する方法などがある。ナフチルイミド誘導体を合成する際の原料として、前記重合性官能基又は、重合性官能基の前駆体と成りうる官能基を有するナフタレンテトラカルボン酸二無水物誘導体又はモノアミン誘導体を用いる方法がある。
【】
式(A2)で示される構造を有する誘導体は、例えば、Journal of the American chemical society,Vol.129,No.49,15259-78 (2007)に記載の公知の合成方法を用いて合成することができる。また、東京化成工業(株)、シグマアルドリッチジャパン(株)やジョンソン・マッセイ・ジャパン・インコーポレイテッド社から試薬として購入可能なペリレンテトラカルボン酸二無水物とモノアミン誘導体との反応で合成することができる。
【】
式(A2)で示される化合物は、イソシアネート化合物のイソシアネート基と重合可能な官能基(ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、及びカルボキシル基)を有する。式(A2)で示される構造を有する誘導体にこれらの重合性官能基を導入する方法としては、式(A2)で示される構造を有する誘導体に直接重合性官能基を導入する方法のほか、前記重合性官能基、又は、重合性官能基の前駆体と成りうる官能基を有する構造を導入する方法がある。後述の方法としては、例えばペリレンイミド誘導体のハロゲン化物を元に、パラジウム触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用いる方法、例えばペリレンイミド誘導体のハロゲン化物を元に、FeCl3触媒と塩基を使用したクロスカップリング反応を用いる方法などがある。また、ペリレンイミド誘導体を合成する際の原料として、前記重合性官能基又は、重合性官能基の前駆体と成り得る官能基を有するペリレンテトラカルボン酸二無水物誘導体又はモノアミン誘導体を用いる方法がある。
【】
(合成例1)
ジメチルアセトアミド200部に、窒素雰囲気下で、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物5.4部及び2-メチル6-エチルアニリン4部、2-アミノ1-ブタノール3部を加え、室温で1時間撹拌し、溶液を調製した。溶液を調製後、8時間還流を行い、析出物を濾別し、酢酸エチルで再結晶を行い、化合物A101を1.0部得た。
【】
(合成例2)
ジメチルアセトアミド200部に、窒素雰囲気下で、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物5.4部及び4-ヘプチルアミン4部、2-アミノ-1,3-プロパンジオール3部を加え、室温で1時間撹拌し、溶液を調製した。溶液を調製後、8時間還流を行い、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒酢酸エチル/トルエン)で分離した後、目的物を含有するフラクションを濃縮した。その濃縮物を酢酸エチル/トルエン混合溶液で再結晶を行い、化合物A154を2.0部得た。
【】
(合成例3)
ジメチルアセトアミド200部に、窒素雰囲気下で、ペリレンテトラカルボン酸二無水物(東京化成工業(株)製)7.4部、及び2,6-ジエチルアニリン(東京化成工業(株)製)4部、2-アミノフェニルエタノール4部を加え、室温で1時間撹拌し、溶液を調製した。溶液を調製後、8時間還流を行い、析出物を濾別し、酢酸エチルで再結晶を行い、化合物A203を5.0部得た。
【】
<電子写真感光体の製造>
(感光体1の製造例)
支持体A-1を支持体として用いた。
【】
次に、例示化合物(A101)4部、ポリビニルブチラール樹脂(商品名:BX-1、積水化学工業(株)製)1.5部、触媒としてのオクチル酸亜鉛(II)0.0005部を、ジメチルアセトアミド100部とテトラヒドロフラン100部の混合溶媒に溶解した。この溶液に、固形分6部相当のブロックイソシアネート(商品名:BL3175、住化バイエル製)を加え、下引き層用塗布液を調製した。この下引き層用塗布液を支持体上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を30分間165℃で加熱硬化させることによって、膜厚が0.8μmの下引き層を形成した。
【】
次に、以下の材料を用意した。
・CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.4°及び28.2°にピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質)20部
・下記式(C)で示されるカリックスアレーン化合物0.2部、
【化】
・ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX-1、積水化学工業(株)製)10部
・シクロヘキサノン600部
これらを、直径1mmガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、4時間分散処理した。その後、酢酸エチル700部を加えることによって、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を下引き層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を15分間80℃で乾燥させることによって、膜厚0.17μmの電荷発生層を形成した。
【】
次に、以下の材料を用意した。
・下記式(D)で示される化合物30部(電荷輸送物質)
・下記式(E)で示される化合物60部(電荷輸送物質)
・下記式(F)で示される化合物10部(電荷輸送物質)
【化】
・ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ビスフェノールZ型のポリカーボネート)100部
・下記構造式(G-1)と下記構造式(G-2)の共重合ユニットを有するポリカーボネート樹脂0.02部(x/y=0.95/0.05:粘度平均分子量Mv=20000)
【化】
【化】
これらを、混合キシレン600部及びジメトキシメタン200部の混合溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を上記電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を30分間100℃で乾燥させることによって、膜厚18μmの第一電荷輸送層を形成した。
【】
次に、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン(株)製)20部/1-プロパノール20部の混合溶剤を、ポリフロンフィルター(商品名:PF-040、アドバンテック東洋(株)製)で濾過した。
また、以下の材料を用意した。
・下記式(H)で示される正孔輸送性化合物90部
【化】
・1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン70部
・1-プロパノール70部
これらを上記混合溶剤に加えた。これをポリフロンフィルター(商品名:PF-020、アドバンテック東洋製)で濾過することによって、第二電荷輸送層(保護層)用塗布液を調製した。この第二電荷輸送層用塗布液を第一電荷輸送層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を大気中において6分間50℃で乾燥させた。その後、窒素中において、支持体(被照射体)を200rpmで回転させながら、加速電圧70kV、吸収線量8000Gyの条件で1.6秒間、電子線を塗膜に照射した。引き続いて、窒素中において25℃から125℃まで30秒かけて昇温させ、塗膜の加熱を行った。電子線照射及びその後の加熱時の雰囲気の酸素濃度は15ppmであった。次に、大気中において30分間100℃で加熱処理を行うことによって、電子線により硬化された膜厚5μmの第二電荷輸送層(保護層)を形成した。
【】
次に、研磨シート(商品名:GC3000、理研コランダム製)を用いて保護層の表面に線状溝を形成した。研磨シートの送りスピードは40mm/分とし、被加工物の回転数は240rpmとし、被加工物に対する研磨シート押し当て圧は7.5N/m2とした。研磨シートの送り方向と被加工物の回転方向は同方向とした。また、外径40cm、アスカーC硬度40のバックアップローラーを用いた。これらの条件で、10秒間かけて、被加工物の周面に線状溝を形成した。
このようにして、感光体1を製造した。
【】
(感光体2~感光体10、感光体101~114の製造例)
表4に示す支持体を用いた以外はすべて感光体1と同様にして電子写真感光体を製造した。得られた電子写真感光体を「感光体2~感光体10、感光体101~感光体114」とした。
【】
(感光体11~感光体20の製造例)
表4に示す支持体を用い、例示化合物(A101)を例示化合物(A154)に変更した以外はすべて感光体1と同様にして電子写真感光体を製造した。得られた電子写真感光体を「感光体11~感光体20」とする。
【】
(感光体21~感光体30の製造例)
表4に示す支持体を用い、例示化合物(A101)を例示化合物(A203)に変更し、下引き層の膜厚を1.0μmに変更した以外はすべて感光体1と同様にして電子写真感光体を製造した。得られた電子写真感光体を「感光体21~感光体30」とする。
【】
(感光体31~感光体40の製造例)
表4に示す支持体を用い、例示化合物(A101)を例示化合物(A205)に変更し、下引き層の膜厚を1.0μmに変更した以外はすべて感光体1と同様にして電子写真感光体を製造した。得られた電子写真感光体を「感光体31~感光体40」とする。
【】
(感光体41~感光体50の製造例)
表4に示す支持体、例示化合物を用い、膜厚を表4に示したように変更した以外はすべて感光体1と同様にして電子写真感光体を製造した。得られた電子写真感光体を「感光体41~感光体50」とする。
【】
(感光体115の製造例)
ブロック化イソシアネート(スミジュールBL3175、住化バイエルウレタン社製、固形分75質量%)20部とブチラール樹脂(エスレックBL-1、積水化学工業社製)7.5部とを、メチルエチルケトン150部に溶解した。次に、ピグメントオレンジ43(東京化成工業株式会社製)34部を前記溶解液に混合した後にサンドミルにて10時間分散して分散液を得た。この分散液に、カルボン酸ビスマス(K-KAT XK-640、キングインダストリー社製)0.005部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)2部を添加して下引き層用塗布液を得た。この塗布液を支持体B-1上に浸漬塗布して160℃で60分間置くことで硬化させ、厚さ7μmの下引き層を形成した。
続いて電荷発生層、第一電荷輸送層及び第二電荷輸送層(保護層)は感光体1とすべて同様に形成した。
得られた電子写真感光体を「感光体115」とする。
【】
(感光体116の製造例)
ブロック化イソシアネート(スミジュールBL3175、住化バイエルウレタン社製、固形分75質量%)20部とブチラール樹脂(エスレックBL-1、積水化学工業社製)7.5部とを、メチルエチルケトン150部に溶解した。次に、ピグメントオレンジ43(東京化成工業株式会社製)34部とアントラキノン(東京化成工業株式会社製)10部を前記溶解液に混合した後にサンドミルにて10時間分散して分散液を得た。この分散液に、カルボン酸ビスマス(K-KAT XK-640、キングインダストリー社製)0.005部と、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)2部を添加して下引き層用塗布液を得た。この塗布液を支持体B-1上に浸漬塗布して160℃で60分間置くことで硬化させ、厚さ7μmの下引き層を形成した。続いて電荷発生層、第一電荷輸送層及び第二電荷輸送層(保護層)は感光体1とすべて同様に形成した。
得られた電子写真感光体を「感光体116」とする。
【】
【】
(実施例1~50、及び比較例1~16)
上記で製造した電子写真感光体1~50、電子写真感光体101~116を用いて、短期電位変動、残留電位変動、及び結晶方位の評価を、以下のように行った。
【】
[評価]
まず、各感光体を、50℃/95%RHの高温高湿環境下で7日間保管した。その後、23℃/50%RHの常温常湿環境下に各感光体を移し、下記の方法で電位変動評価を行った。
【】
<短期電位変動評価>
各感光体の評価は、評価装置である電子写真装置(複写機)(商品名:imagePRESS C910、キヤノン(株)製)のシアンステーションに装着して行った。
感光体の表面電位の測定は、評価装置から現像用カートリッジを抜き取り、そこに電位プローブ(商品名:model6000B-8、トレック社製)をセットし、表面電位計(model344:トレック社製)を使用して行った。
【】
初めに、評価に用いる感光体の暗部電位(Vd)が-610Vになるように調整した。次に、露光装置の露光光量を調整して感光体の明部電位(Vl)が-380Vになるように調整した。
明部電位の測定は、感光体の軸方向の中央位置、及び感光体の両端から40mmの位置で、周方向30度ごとに12点(合計:軸方向3点×周方向12点=36点)について行った。その後、各軸方向の位置ごとに感光体1周中の平均値を算出し、これを各軸方向の位置の初期電位とした。
次に、現像用カートリッジを元に戻し、20枚通紙を行った。その後、再び電位プローブをセットし、上記と同様に各軸方向の位置ごとに感光体1周中の平均値を算出し、これを各軸方向の位置の20枚通紙後電位とした。
最後に、各軸方向の位置で初期電位と20枚通紙後電位の差分の絶対値を算出し、得られた値の平均値を短期電位変動値として算出した。
【】
得られた値に応じて、以下に示すランクで評価した。評価結果を表5及び表6に示す。
なお、以下のランクにおいて、ランクA~Dであれば、感光体は本発明の効果を得られる。一方、ランクEは従来技術の感光体と同レベルの短期電位変動値の評価となる。
A…2.0V未満
B…2.0V以上2.5V未満
C…2.5V以上3.0V未満
D…3.0V以上3.5V未満
E…3.5V以上
【】
<残留電位変動評価>
残留電位の測定は、明部電位の測定を行った後の帯電が切れた位置から感光体が1周した時点で測定を開始し、感光体1周分測定した。また、残留電位の測定も明部電位の測定と同様に周方向30度ごとに12点について行った。その後、感光体1周中の平均値を算出し、これを初期残留電位とした。
20枚通紙後の残留電位についても同様の方法で行い、感光体1周中の平均値を算出し、これを20枚通紙後残留電位とした。
最後に、初期残留電位と20枚通紙後残留電位の差分の絶対値を算出し、得られた値の平均値を残留電位変動値とした。評価結果を表5及び表6に示す。
得られた値はすべての感光体で同レベルであった。
【】
[結晶方位評価]
上記で製造した各電子写真感光体を用いて、次のようにして結晶方位の評価を行った。
まず、支持体のどちらか一方の端から軸方向に全長の1/8、2/8、3/8、4/8、5/8、6/8、7/8にあたる位置を決めた。さらにそれぞれの位置において周方向に90°ずつ4分割する。軸方向の分割線と周方向の分割線が交わる28点それぞれにおいて、軸方向の分割線と周方向の分割線の交点が中心になるように10mm四方の断片を切り出す。研磨シートで保護層を除去した後、メチルエチルケトンを用いて感光層を除去した。その後、バフ研磨によって支持体表面の露出、鏡面仕上げを行った。次に水酸化ナトリウム水溶液に1分浸漬させて処理して結晶方位観察用のサンプルを得た。
得られたサンプルの表面の中央つまり、前記した支持体の軸方向の分割線と周方向の分割線の交点が中心になるようにした100μm四方の領域について、SEM-EBSP法により観察した。観察結果より、各結晶方位を有するAlの結晶粒が占める面積の割合及びAlの結晶粒の平均面積を算出した。結果を表5及び表6に示す。
【】
【】
【】
本発明の実施形態は以下の構成を含む。
(構成1)
円筒状の支持体、該支持体の直上に形成された下引き層、及び該下引き層上に形成された感光層を有する電子写真感光体であって、
該下引き層が、下記式(A1)で示される化合物及び/又は下記式(A2)で示される化合物を含む組成物の硬化物を含有し、
該支持体の表面が、Al及び/又はAl合金で形成されており、
該支持体表面のAlの集合組織の表面方向における該支持体の表面は、
(α){001}方位-15°以上+15°未満の面
(β){101}方位-15°以上+15°未満の面
(γ){111}方位-15°以上+15°未満の面
のいずれかに分類されるAlの結晶粒からなり、
該支持体の表面の全面積に対する該(β)を有するAlの結晶粒が占める面積の割合が10%以下であり、且つ(α)を有するAlの結晶粒が占める面積が10%を超える、
ことを特徴とする電子写真感光体。
【化】
【化】
(式(A1)及び(A2)中、R
101~R
106、R
201~R
210は、それぞれ独立に、下記式(B)で示される1価の基、水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換の複素環基を示す。ただし、R
101~R
106の少なくとも1つ、及びR
201~R
210の少なくとも1つは、下記式(B)で示される1価の基である。該アルキル基のCH
2の1つは、O又はSで置換されていてもよい、あるいは該アルキル基のCHの1つはNで置換されていてもよい。該置換のアルキル基の置換基は、アリール基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、及びヒドロキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基である。該置換のアリール基及び該置換の複素環基の置換基は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、ハロゲン基置換アルキル基、及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基である。)
【化】
(式(B)中、a、b、及びcの少なくとも1つは、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する。l及びmは、それぞれ独立に、0又は1であり、lとmの和は、0以上2以下である。
aは、主鎖の炭素数が1~6のアルキレン基、炭素数1~6のアルキル基で置換された主鎖の炭素数が1~6のアルキレン基、ベンジル基で置換された主鎖の炭素数が1~6のアルキレン基、アルコシキカルボニル基で置換された主鎖の炭素数が1~6のアルキレン基、又はフェニル基で置換された主鎖の炭素数が1~6のアルキレン基を示し、これらのアルキレン基は、置換基として、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。これらのアルキレン基の主鎖中のCH
2の1つはO又はSで置換されていてもよい。あるいはこれらのアルキレン基の主鎖中のCHの1つはNで置換されていてもよい。
bは、フェニレン基、炭素数1~6のアルキル基置換フェニレン基、ニトロ基置換フェニレン基、ハロゲン基置換フェニレン基、又はアルコキシ基置換フェニレン基を示し、これらのフェニレン基は、置換基として、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。
cは、水素原子、カルボキシ基、主鎖の炭素数が1~6のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキル基で置換された主鎖の炭素数が1~6のアルキル基を示し、これらのアルキル基は、置換基として、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有してもよい。)
(構成2)
前記支持体の表面の全面積に対する、前記(α)を有するAlの結晶粒が占める面積が11%以上である、構成1に記載の電子写真感光体。
(構成3)
前記支持体の表面の全面積に対する、前記(α)を有するAlの結晶粒が占める面積が50%以上である、構成1又は2に記載の電子写真感光体。
(構成4)
前記支持体の表面の全面積に対する、前記(α)を有するAlの結晶粒が占める面積が75%以上である、構成1から3のいずれかに記載の電子写真感光体。
(構成5)
前記支持体の表面の全面積に対する、前記(β)を有するAlの結晶粒が占める面積が5%以下である、構成1から4のいずれかに記載の電子写真感光体。
(構成6)
前記Al合金が、0.2質量%以上0.6質量%以下のSi及び0.45質量%以上0.9質量%以下のMgを含む、構成1から5のいずれかに記載の電子写真感光体。
(構成7)
構成1から6のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、及びクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段と、を一体に支持し、電子写真装置の本体に着脱自在であるプロセスカートリッジ。
(構成8)
構成1から6のいずれかに記載の電子写真感光体、並びに、帯電手段、露光手段、現像手段、及び転写手段を有する電子写真装置。
【符号の説明】
【】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 案内手段
【図】
【図】
【図】