(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】
(45)【発行日】
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理装置の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
【FI】
(21)【出願番号】
(86)(22)【出願日】
(86)【国際出願番号】
【審査請求日】
(32)【優先日】
(33)【優先権主張国・地域又は機関】
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】526028322
【氏名又は名称】プロメシアン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100190621
【氏名又は名称】崎間 伸洋
(74)【代理人】
【識別番号】100212510
【氏名又は名称】笠原 翔
(72)【発明者】
【氏名】古賀 洋一郎
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/216228(WO,A1)
【文献】特開平9-019778(JP,A)
【文献】特開2024-063592(JP,A)
【文献】特開2023-159678(JP,A)
【文献】特許第7374390(JP,B1)
【文献】特開2024-013525(JP,A)
【文献】特開2022-127425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/34
B23K 9/04
B23K 26/21
B33Y 30/00
B33Y 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項】
指向性エネルギー堆積法によりワイヤー材を溶融して積層造形物を製造する3Dプリンタを制御するための情報処理装置であって、
前記積層造形物の内部に意図的に欠陥を生成するための制御情報を生成する欠陥生成制御手段を備え、
前記欠陥生成制御手段は、
前記欠陥の位置、大きさ、及び形状の少なくとも1つ並びに前記3Dプリンタにおける内部欠陥の分類規格に定義される欠陥種別を含む欠陥仕様情報を取得し、前記欠陥仕様情報に基づいて、前記積層造形物における目標位置に前記欠陥を生成するように、前記3Dプリンタの造形パラメータを変化さ
せ、前記目標位置において前記造形パラメータを変化させるとともに、前記目標位置の近傍から前記造形パラメータの変化を開始し、前記欠陥種別に応じて異なる前記造形パラメータの変化パターンを適用する前記制御情報を生成する、
情報処理装置。
【請求項】
前記欠陥生成制御手段は、
前記目標位置において、前記造形パラメータの変化としてエネルギー入力量を変化させる前記制御情報を生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項】
前記欠陥生成制御手段は、
前記目標位置において、前記造形パラメータの変化として造形経路の間隔、積層高さ、又は材料供給量の少なくとも1つを変化させて内部空間を形成する前記制御情報を生成することにより前記欠陥を生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項】
前記欠陥生成制御手段は、
前記目標位置において、前記造形パラメータの変化として前記目標位置に対応する加工位置に吹き付けるガスを通常の条件とは異なる条件に変更させる前記制御情報を生成することにより、前記欠陥を生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項】
前記欠陥生成制御手段は、
前記目標位置において、前記造形パラメータの変化として材料供給量を意図的に過剰又は不足させる前記制御情報を生成することにより前記欠陥を生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項】
前記欠陥種別は、
亀裂、縦割れ、横割れ、ガス気孔、ガスキャビティ、均一分布ポロシティ、クラスター状ポロシティ、収縮空洞、スラグ介在物、酸化膜の巻き込み、未溶融、ビード間融合不良、層間融合不良、再開不良、及びスパッタのうち少なくとも1つを含む、
請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項】
前記欠陥生成制御手段は、
前記目標位置において、エネルギー入力量、材料供給量、造形経路の間隔、積層高さ、及び前記目標位置に対応する加工位置に吹き付けるガスの条件のうち、少なくとも二つを組み合わせて変化させる前記制御情報を生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項】
指向性エネルギー堆積法によりワイヤー材を溶融して積層造形物を製造する3Dプリンタを制御するための情報処理装置の制御方法であって、
前記積層造形物の内部に意図的に欠陥を生成するための制御情報を生成する欠陥生成制御ステップを含み、
前記欠陥生成制御ステップ
において、
前記欠陥の位置、大きさ、及び形状の少なくとも1つ並びに前記3Dプリンタにおける内部欠陥の分類規格に定義される欠陥種別を含む欠陥仕様情報を取得し、前記欠陥仕様情報に基づいて、前記積層造形物における目標位置に前記欠陥を生成するように、前記3Dプリンタの造形パラメータを変化さ
せ、前記目標位置において前記造形パラメータを変化させるとともに、前記目標位置の近傍から前記造形パラメータの変化を開始し、前記欠陥種別に応じて異なる前記造形パラメータの変化パターンを適用する前記制御情報を生成する、
情報処理装置の制御方法。
【請求項】
指向性エネルギー堆積法によりワイヤー材を溶融して積層造形物を製造する3Dプリンタを制御するためのコンピュータのプログラムであって、
前記積層造形物の内部に意図的に欠陥を生成するための制御情報を生成する欠陥生成制御ステップを含む制御処理をコンピュータによって実行させ、
前記欠陥生成制御ステップ
において、
前記欠陥の位置、大きさ、及び形状の少なくとも1つ並びに前記3Dプリンタにおける内部欠陥の分類規格に定義される欠陥種別を含む欠陥仕様情報を取得し、前記欠陥仕様情報に基づいて、前記積層造形物における目標位置に前記欠陥を生成するように、前記3Dプリンタの造形パラメータを変化さ
せ、前記目標位置において前記造形パラメータを変化させるとともに、前記目標位置の近傍から前記造形パラメータの変化を開始し、前記欠陥種別に応じて異なる前記造形パラメータの変化パターンを適用する前記制御情報を生成する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【】
本発明は、情報処理装置、情報処理装置の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【】
従来、金属をレーザ等の熱源装置により溶融させて所望の形状を積層造形する技術が知られている。この種の技術が記載されるものとして例えば特許文献1がある。特許文献1は、エネルギビームを射出する光学系を含むビーム照射部と、エネルギビームの照射位置に造形材料を供給する材料供給部とを少なくとも備える造形部と、記造形部による構造物の造形を制御する造形制御部とを備える造形装置に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【】
ところで、材料評価、構造健全性検証、破壊挙動解析、非破壊検査技術の検証等の様々な技術分野において、指定の欠陥を含む試験体が必要とされている。特に、非破壊検査技術の検証では、欠陥を有する構造物を用意する必要がある。非破壊検査技術者養成や技術発展という観点から指定の欠陥を含む試験体が不可欠である。しかしながら、理想的な欠陥が入った試験体の入手は高コストである。試験体を意図的に破壊できる熟練技師に頼る他ないが、欠陥を作成可能な技術者も高齢化が進み数年で引退するものも多い。技術承継に5年以上の時間を要する。低コストで模擬欠陥が入った試験体を用いることも考えられるが、指定した欠陥を適切に模擬できているか否かは不明である。従来技術には、欠陥を含む試験体を低コストで再現性良く製造するという観点で改善の余地があった。これらの技術分野の発展のためには、実際の欠陥と同等の物理的・冶金学的特性を有する試験体を、再現性よく製造する技術が必要である。
【】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、目標位置に意図的な欠陥を含む積層造形物を容易かつ適切に製造できる情報処理装置、情報処理装置の制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【】
上記目的を達成するため、本発明の一態様は、指向性エネルギー堆積法によりワイヤー材を溶融して積層造形物を製造する3Dプリンタを制御するための情報処理装置であって、前記積層造形物の内部に意図的に欠陥を生成するための制御情報を生成する欠陥生成制御手段を備え、前記欠陥生成制御手段は、前記積層造形物における目標位置に前記欠陥を生成するように、前記3Dプリンタの造形パラメータを変化させる前記制御情報を生成する、情報処理装置である。
【】
また、本発明の一態様は、指向性エネルギー堆積法によりワイヤー材を溶融して積層造形物を製造する3Dプリンタを制御するための情報処理装置の制御方法であって、前記積層造形物の内部に意図的に欠陥を生成するための制御情報を生成する欠陥生成制御ステップを含み、前記欠陥生成制御ステップは、前記積層造形物における目標位置に前記欠陥を生成するように、前記3Dプリンタの造形パラメータを変化させる前記制御情報を生成する、情報処理装置の制御方法である。
【】
また、本発明の一態様は、指向性エネルギー堆積法によりワイヤー材を溶融して積層造形物を製造する3Dプリンタを制御するためのコンピュータのプログラムであって、前記積層造形物の内部に意図的に欠陥を生成するための制御情報を生成する欠陥生成制御ステップを含む制御処理をコンピュータによって実行させ、前記欠陥生成制御ステップは、前記積層造形物における目標位置に前記欠陥を生成するように、前記3Dプリンタの造形パラメータを変化させる前記制御情報を生成する、プログラムである。
【発明の効果】
【】
本発明によれば、目標位置に意図的な欠陥を含む積層造形物を容易かつ適切に製造できる情報処理装置、情報処理装置の制御方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【】
【図】本発明の一実施形態に係る情報処理装置が適用される3次元構造物製造システムを示す図である。
【図】本実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図】本実施形態に係る情報処理装置の機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
【図】欠陥の具体的な種別を示す模式図である。
【図】第1の例における欠陥を含む積層造形物及び治具を示す平面図である。
【図】第1の例における欠陥を含む積層造形物及び治具を示す側面図である。
【図】層数に応じて変化するビードパターン及びビード間隔を説明する模式図である。
【図】積層パターンを繰り返すことにより形成される欠陥の断面の様子を示す模式図である。
【図】第2の例における欠陥を含む積層造形物及び治具を示す平面図である。
【図】第2の例における欠陥を含む積層造形物及び治具を示す側面図である。
【図】第1の例の除去部分への欠陥生成を説明する模式図である。
【図】第2の例の除去部分への欠陥生成を説明する模式図である。
【図】本実施形態に係る情報処理装置の積層造形物の生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
【】
<システム構成>
まず、全体的なシステム構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置10が適用される3次元構造物製造システム100を示す図である。本実施形態の3次元構造物製造システム100は、3Dプリンタ1と、情報処理装置10と、を備える。
【】
3Dプリンタ1は、指向性エネルギー堆積法(DED:Direct Energy Deposition)によりワイヤー材6を溶融して3次元的に積み重ねることにより積層造形物5を製造する。指向性エネルギー堆積法によりワイヤー材6を熱源により溶融する方法は、ワイヤー材6の材料種が豊富、大型造形に有利、既製品へ後付け加工が可能、習得度が比較的低い、材料・設備のコストが低い等のメリットがある。熱源は、例えば、レーザ、アーク放電、電子ビーム等である。
【】
本実施形態の3Dプリンタ1は、アーク放電を用いるWAAM(Wire-Arc Additive Manufacturing)を実行するワイヤーアークアディティブマニュファクチャリング装置である。3Dプリンタ1は、ワイヤー材6を溶融させるヘッダ2と、ヘッダ2を3次元的に移動する移動装置3と、を備える。ヘッダ2は、ワイヤー材6を溶融させるためのアーク放電を行う熱源装置7と、シールドガスを射出するエア供給部8と、を備える。移動装置3は、例えば、ヘッダ2を3次元で移動させることができるロボットである。
【】
情報処理装置10は、ユーザから入力される情報に基づいて3Dプリンタ1を制御し、ワイヤーDED方式でユーザの所望の形状の積層造形物5を製造する。本実施形態の情報処理装置10は、積層造形物5の内部に意図的に欠陥60を生成する欠陥生成機能を有する。この欠陥生成機能については後述する。
【】
<ハードウェア構成>
ここで、情報処理装置10を構成するハードウェアの一例について説明する。
図2は、本実施形態に係る情報処理装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。情報処理装置10は、プロセッサとしてのCPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、バス14と、入出力インターフェース15と、出力部16と、入力部17と、記憶部18と、通信部19と、ドライブ20と、を備えている。
【】
CPU11は、ROM12に記録されているプログラム、又は、記憶部18からRAM13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM13には、CPU11が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。CPU11、ROM12及びRAM13は、バス14を介して相互に接続されている。このバス14にはまた、入出力インターフェース15も接続されている。
【】
入出力インターフェース15には、出力部16、入力部17、記憶部18、通信部19及びドライブ20が接続されている。出力部16は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、各種情報を画像や音声として出力する。入力部17は、キーボードやマウス等で構成され、各種情報を入力する。記憶部18は、ハードディスクやDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各種データを記憶する。通信部19は、インターネットを含むネットワークを介して他の装置との間で通信を行う。
【】
ドライブ20には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア21が適宜装着される。ドライブ20によってリムーバブルメディア21から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部18にインストールされる。また、リムーバブルメディア21は、記憶部18に記憶されている各種データも、記憶部18と同様に記憶することができる。
【】
ここで説明したハードウェア構成はあくまで一例である。情報処理装置10は、
図2の構成とは異なる構成でもよい。また、情報処理装置10は、2台以上のコンピュータによって構成されてもよい。
【】
<機能的構成>
次に、情報処理装置10の機能的構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る情報処理装置10の機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
【】
図3に示すように、情報処理装置10は、積層造形物設定部31と、動作制御部32と、欠陥生成制御処理部40と、をプロセッサ(CPU11)上で実現される機能部として備える。
【】
積層造形物設定部31は、ユーザが製造したい積層造形物5の情報をユーザから取得する処理を実行する。積層造形物5の情報は、積層造形物5の形状や外観を示す3次元データである。ユーザは、例えば、入力部17、リムーバブルメディア21又は通信部19を通じた外部のコンピュータを通じて積層造形物5の情報を入力する。
【】
動作制御部32は、積層造形物設定部31により取得された積層造形物5の情報に基づいて3Dプリンタ1のヘッダ2と移動装置3の動作を制御する。3Dプリンタ1は、動作制御部32の制御情報に基づいて動作し、所定の規則や設定等に基づいて積層造形物5の製造を行う。
【】
動作制御部32は、3Dプリンタ1を直接制御してもよいし、3Dプリンタ1を制御するための制御情報を生成することで間接制御してもよい。制御情報は、例えば、Gコード(G-code)形式の制御プログラム、ツールパス情報、又は造形パラメータを含む制御データである。制御情報を生成する場合、生成された制御情報は、記憶部18への保存、リムーバブルメディア21への出力、又は通信部19を介した外部の3Dプリンタ1若しくは他の情報処理装置への送信により提供される。情報処理装置10は、クラウドサーバ上に配置され、ネットワークを介して制御情報を提供する形態であってもよい。
【】
欠陥生成制御処理部40は、積層造形物5の内部に意図的に欠陥60を生成するための制御を実行する処理を行う欠陥生成制御手段である。本実施形態の欠陥生成制御処理部40は、欠陥仕様情報取得部41と、パラメータ設定部42と、を備える。
【】
欠陥仕様情報取得部41は、欠陥60の位置、大きさ、及び形状の少なくとも1つを含む欠陥仕様情報を取得する。欠陥60の位置は、欠陥60を生成する目標位置に対応し、欠陥60の大きさや形状は、目標位置に形成される欠陥60の大きさや形状を示す。欠陥仕様情報は、入力部17を通じたユーザの入力又は選択により取得される。
【】
欠陥仕様情報は、3Dプリンタ1における内部欠陥の分類規格に定義される欠陥種別を含む。欠陥種別は、例えば、亀裂、縦割れ、横割れ、ガス気孔、ガスキャビティ、均一分布ポロシティ、クラスター状ポロシティ、収縮空洞、スラグ介在物、酸化膜の巻き込み、未溶融、ビード間融合不良、層間融合不良、再開不良、及びスパッタのうち少なくとも1つである。欠陥種別は、アメリカ材料試験協会(ASTM International)により策定される材料や製品、システム、サービスの品質や性能を評価するための標準規格、又は指向性エネルギー堆積法における欠陥分類規格(DED分類)等の所定の規格に基づいて設定されるものを利用することができる。
【】
パラメータ設定部42は、積層造形物5における目標位置に欠陥60を生成するように、3Dプリンタ1の造形パラメータを変化させる。本実施形態のパラメータ設定部42は、欠陥仕様情報に基づいて、目標位置において造形パラメータを変化させる。パラメータ設定部42は、近傍から造形パラメータの変化を開始する。近傍は、例えば、目標位置の手前や周囲等である。
【】
本実施形態において、造形パラメータの変化に用いる制御要素は以下のように定義される。エネルギー密度は、溶融池に投入される単位長さあたりの実効熱量であり、出力を移動速度で除した値として算出される。この算出においては、アーク効率が考慮される。内部空間形成は、凝固後に体積欠損として残留する空隙を意味する。ガス制御は、シールドガスの流量、流速分布、又は乱流性の制御を意味し、ガスの成分変更は必須ではない。材料過不足は、溶融に必要な質量流量と実供給されるワイヤー材6の量との非一致を意味する。
本明細書において、「健全造形」とは、欠陥60を意図的に生成しない通常の造形条件による積層造形を意味する。欠陥生成制御処理部40は、健全造形の造形パラメータを基準として、目標位置において造形パラメータを変化させることにより、欠陥60を生成する。
【】
本実施形態では、パラメータ設定部42は、欠陥60を生成するために4種類(複数)の造形バラメータの変化方法を選択できる。4種類の造形バラメータの変化方法は、単独で適用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。
【】
第1の造形パラメータの変化方法として、パラメータ設定部42は、目標位置において、通常時とは異なるように、エネルギー密度を変化させる制御を行う。エネルギー密度は、出力を移動速度で除した値として定義され、溶融池に投入される単位長さあたりの実効熱量を示す。パラメータ設定部42は、欠陥仕様情報取得部41により取得された欠陥種別に応じて、エネルギー密度の変化量及び変化方向を決定する。未溶融欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、エネルギー密度を低下させる。収縮空洞欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、エネルギー密度を過大にする。クラック欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、目標位置においてエネルギー密度を局所的に過大にした後、急激に低下させることにより、冷却勾配を形成する。例えば、未溶融欠陥を生成する場合、健全造形時のエネルギー密度の設定値を100%として、70%以上95%以下の範囲に設定することができる。このエネルギー密度の変化により、目標位置に意図した欠陥60が生成される。
【】
第2の造形パラメータの変化方法として、パラメータ設定部42は、目標位置において、通常時とは異なるように、造形経路の間隔、積層高さ、又は材料供給量の少なくとも1つを変化させ、積層造形物5の目標位置に内部空間を形成する。この内部空間が欠陥60となる。パラメータ設定部42は、欠陥仕様情報取得部41により取得された欠陥種別及び欠陥の大きさに応じて、変化させるパラメータ及びその変化方向を決定する。ビード間融合不良を生成する場合、パラメータ設定部42は、造形経路の間隔を拡大させることにより、ビード間に隙間を形成する。層間融合不良を生成する場合、パラメータ設定部42は、積層高さを増加させることにより、層間の接合不良を発生させる。収縮空洞欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、材料供給量を不足させることにより、凝固時の補填不足を生じさせ、体積欠損として収縮空洞を形成する。例えば、造形経路の間隔を拡大させる場合、健全造形時の造形経路の間隔の設定値を100%として、120%以上150%以下の範囲に設定することができる。
【】
第3の造形バラメータの変化方法として、パラメータ設定部42は、目標位置に対応する加工位置に吹き付けるガスを通常の条件とは異なる条件に変更する。ガスが、通常の造形条件とは異なる条件で吹き付けられることにより発生する外乱により欠陥60が生成する。
【】
ガスの条件変更は、特に限定される訳ではなく、種々の方法を利用することができる。例えば、ガスの条件は、非酸化雰囲気ガス、イナートガス等の封入ガスの流量を3Dプリンタ1の不図示のガス制御装置でコントロールすることにより、変更させることができる。あるいは、ガスの条件変更は、3Dプリンタ1のシステム外側から圧縮空気をブローする圧縮空気供給装置を配置し、当該圧縮空気供給装置による酸化雰囲気の形成や、フュームコレクターと呼ばれるプロセス中に発生するガスを3Dプリンタ1のシステム外へ排出する排出装置による流量制御等でもよい。
【】
第4の造形パラメータの変化方法として、パラメータ設定部42は、目標位置において、ワイヤー材6の材料供給量を意図的に過剰又は不足させる。パラメータ設定部42は、欠陥仕様情報取得部41により取得された欠陥種別に応じて、材料供給量の変化方向を決定する。未溶融欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、材料供給量を過剰にすることにより、溶融不足の界面を形成する。収縮空洞欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、材料供給量を不足させることにより、凝固時の補填不足を生じさせ、体積欠損として収縮空洞を形成する。材料供給量の変化は、第1の造形パラメータの変化方法であるエネルギー密度の変化と組み合わせることにより、再現性の高い欠陥形成が可能となる。例えば、未溶融欠陥を生成する場合、エネルギー密度を低下させるとともに、材料供給量を過剰にする制御を行い、具体的には、健全造形時の材料供給量の設定値を100%として、110%以上150以下%の範囲に設定することができる。
【】
本実施形態では、造形パラメータの変化方法の種類、変化量等を特定する変化パターンが、欠陥種別ごとに設定される。例えば、亀裂、縦割れ、横割れ、ガス気孔、ガスキャビティ、均一分布ポロシティ、クラスター状ポロシティ、収縮空洞、スラグ介在物、酸化膜の巻き込み、未溶融、ビード間融合不良、層間融合不良、再開不良、及びスパッタのそれぞれに対して対応する変化パターンが設定される。欠陥種別のそれぞれに対応する変化パターンは、所定のテーブル、数式モデル、ルールベースの判定ロジック、最適化アルゴリズム、又は学習若しくは推定に基づく適応制御等により特定されてもよい。例えば、変化パターンは、テーブル形式で記憶部18等に記憶されてもよいし、各欠陥種別に設定される数式等に基づいて演算されてもよいし、欠陥仕様情報及び材料種別に基づく最適化処理により決定されてもよい。
【】
パラメータ設定部42は、欠陥仕様情報取得部41により取得された欠陥仕様情報の中にユーザにより指定又は選択された欠陥種別が含まれている場合、当該欠陥種別に対応する変化パターンに基づいて欠陥60を生成するための造形パラメータの調整を行う。
【】
このように、本実施形態では、ユーザが所望の欠陥種別を入力又は選択することにより、当該欠陥種別に対応する造形パラメータの変化パターンが自動的に適用され、指定された欠陥種別を含む積層造形物5が製造される。これにより、ASTM Internationalが策定する標準規格又は指向性エネルギー堆積法における欠陥分類規格(DED分類)に準拠した欠陥種別を有する非破壊検査用試験体を、ユーザの要求に応じて容易かつ迅速に製造することができる。特に、非破壊検査技術者の教育訓練においては、受講者の習熟度や訓練カリキュラムに応じて異なる欠陥種別を含む試験体が必要となるが、本実施形態により、必要な欠陥種別を選択するだけで対応する試験体を製造できるため、教育訓練用試験体の準備負担を大幅に軽減できる。また、非破壊検査技術者の資格試験においても、試験問題に応じた欠陥種別を含む試験体を容易に準備することができる。さらに、非破壊検査装置の校正用標準試験体として、規格に準拠した欠陥種別を含む試験体を安定的に供給することが可能となる。
【】
<欠陥の種別の一例>
図4を参照し、生成される欠陥60a~60cの例について説明する。
図4は、欠陥60a~60cの具体的な種別を示す模式図である。
図4には、欠陥60a~60cの種別(応用例)として、全部製造部分欠陥生成、除去部分への欠陥生成、破壊誘導のための欠陥形成の3つの具体例が示されている。
【】
全部製造部分欠陥生成は、積層造形物5aの内部に欠陥60aが生成されるパターンである。積層造形物5aの製造中に、目標位置で造形パラメータが変化することにより欠陥60aが生成される。この例における積層造形物5aの外観は、欠陥60aがない場合との差異がない、もしくは差異が小さい。
【】
除去部分への欠陥生成は、健全な積層造形物5bの一部を除去後、除去部分を目標位置とし、当該除去部分に造形パラメータを変化させたワイヤー材6の溶融により埋め合わせて欠陥60bを生成する。
【】
破壊誘導のための欠陥形成は、積層造形物5cにおいて破壊を誘導する位置を目標位置とし、当該目標位置の部分で造形パラメータを変化させてワイヤー材6を溶融し、欠陥60cを生成する。積層造形物5cの製造後、当該積層造形物5cに応力を発生させ、欠陥60cの部分が起点として破壊される。積層造形物5cは、分割して製造され、欠陥60cにより接続されてもよい。
【】
<欠陥を含む積層造形物の生成例>
次に、
図4の全部製造部分欠陥生成に対応する積層造形物5aの生成例について説明する。
図5は、第1の例における欠陥60aを含む積層造形物5a及び治具50を示す平面図である。
図6は、第1の例における欠陥60aを含む積層造形物5a及び治具50を示す側面図である。
【】
まず、水平積層方式で積層造形物5aを形成する場合に用いる治具50の構成について説明する。治具50は、ベースプレート51と、水冷銅板52、53と、クランプ装置54と、を備える。ベースプレート51は、例えば、300mm×300mmで厚みが9mmの板状部材である。ベースプレート51の中央に積層造形物5aが形成される。積層造形物5aは、例えば、200mm×200mmで厚みが25mmの外形で形成される。水冷銅板52は、平面視においてベースプレート51上の積層造形物5aの両側に配置される細長の部材である。水冷銅板53は、ベースプレート51の下側に配置される板状部材である。水冷銅板52、53の上下両方で水が流通し、治具50の水冷を行っている。クランプ装置54は、平面視において積層造形物5aが形成される位置を囲うように複数(4個所)配置される。
【】
積層造形物5aの内部には、空洞により構成される欠陥60aが2箇所形成される。2箇所の欠陥60aは、何れも、積層造形物5aの側面から中心に向かって水平方向に延びるトンネル状に形成されうる。複数の欠陥60aのうちの一方は
図5の紙面上側から下側に向かって延びるように形成され、もう一方は
図5の紙面右側から左側に向かって延びるように形成されている。
【】
次に、3Dプリンタ1によるビードの形成による欠陥60aを含む積層造形物5aの形成方法の一例について説明する。ビードは、例えば、1回のパスによって作られたレーザでワイヤー材6を溶融凝固させた突状の金属部分である。
【】
欠陥60aが生成されない積層造形物5aの土台部分と、欠陥60aが形成される欠陥生成部分と、にわけて説明する。
【】
土台部分では、3Dプリンタ1により、積層造形物5aを形成するベースプレート51の上面に対してビードが所定方向に並ぶように1パスで形成される。同じ方向にビードが所定のビード間隔で複数形成されることにより、ビードの厚みに応じて層が形成される。この層を繰り返して形成することにより土台部分が形成される。ビードが形成する方向は、例えば、層が変わることにより、90度変更する。この作業を6層繰り返すことにより、土台部分が形成される。
【】
次に、土台部分形成後の欠陥生成時のビードパターンについて説明する。
図7は、欠陥生成時において層数に応じて変化するビードパターン及びビード間隔を説明する模式図である。
図7には、7~10層目のビードパターンが示されている。何れの層においても、外周の後、内部を充填するようにビードが形成される。
【】
欠陥形成時には、欠陥形成予定位置160を避けるようにビードが形成される。ビードは、欠陥形成予定位置160の位置に応じてパスが設定される。1パスでは、欠陥60aの形成後に欠陥60aを閉じてしまうあるいは変容させてしまう可能性があるため、欠陥60aの周辺全体に渡ってプロセスの制御を行うことが好ましい。
図7の例では、2箇所の欠陥形成予定位置160があるため、各層3パスでビードが形成される。
【】
7層目では、
図7中の積層パターンcに沿うように3パスでビードが形成される。積層パターンcでは、3パスに応じて第1エリア161、第2エリア162、第3エリア163に分けてビードが形成される。8層目では、
図7中の積層パターンdに沿うように3パスでビードが形成される。積層パターンdでも、3パスに応じて第1エリア161、第2エリア162、第3エリア163に分けてビードが形成される。8層目積層中には、枠部分の形成後、内部を充填するようにビードが形成される。8層形成後には、欠陥60aの形成予定位置に溝が形成される。
【】
9層目では、
図7中の積層パターンaに沿うように3パスでビードが形成される。積層パターンaでも、3パスに応じて第1エリア161、第2エリア162、第3エリア163に分けてビードが形成される。10層目では、
図7中の積層パターンbに沿うように3パスでビードが形成される。積層パターンbでも、3パスに応じて第1エリア161、第2エリア162、第3エリア163に分けてビードが形成される。また、10*層目として、欠陥60aとなる上部を閉じるようにビードが形成される。11層目以降は、6層目までと同様の方法でビードが層状に形成される。最終的には16層目までビードによる面が形成され、積層構造物5aが完成する。
【】
各積層パターンa~dにおいて、第1エリア161、第2エリア162、第3エリア163は、パスの違いを説明するために便宜的に分けたものであり、ビードを形成する順番は積層パターンa~dに応じて適宜設定することはできる。
【】
図8は、積層パターンa~dを繰り返すことにより形成される欠陥60aの断面の様子を示す模式図である。
図8に示すように、ビード間隔は、欠陥形成時において各層で異なっている。
図8中のL1は7層目でのビード間隔であり、L2は8層目でのビード間隔であり、L3は9層目でのビード間隔であり、L4は10層目でのビード間隔であり、L5は10層目でのビード間隔である。この例では、L1<L2、L2>L3、L3>L4、L4>L5の関係が成立している。7層目から8層目では、ビード間隔がいったん広がり、9層目以降では徐々にビード間隔が狭まっている。
【】
次に、
図9及び
図10を参照し、垂直積層方式で積層造形物5aを形成する場合について説明する。垂直積層方式では、
図4の全部製造部分欠陥生成に対応する積層造形物5aを平面分が水平方向を向くように縦向きに形成する。
【】
まず、垂直積層方式で積層造形物5aを形成する場合に用いる治具150の構成について説明する。治具150は、ベースプレート151と、水冷銅板152、153と、クランプ装置154と、を備える。ベースプレート151は、例えば、300mm×140mmで厚みが9mmの板状部材である。ベースプレート151の中央に積層造形物5aが形成される。積層造形物5aは、例えば、200mm×25mmで高さが25mmの外形で形成される。水冷銅板152は、平面視においてベースプレート151上の積層造形物5aの両側に配置される板状の部材である。水冷銅板153は、ベースプレート151の下側に配置される板状部材である。水冷銅板152、153の上下両方で水が流通し、治具150の水冷を行っている。クランプ装置154は、平面視において積層造形物5aが形成される位置を囲うように複数(4個所)配置される。
【】
ビードによる積層は、上述の水平積層方式と同様の方法で行われ、最終的には例えば92層まで積層される。積層造形物5aには、横穴型の欠陥60aと縦穴型の欠陥60aが形成される。これらの欠陥60aは、RT(Radiographic Testing)により確認することができる。積層造形物5aの表面に生成されたスラグは、造形後に除去される。
【】
次に、
図11を参照し、
図4の除去部分への欠陥生成に対応する積層造形物5bの第1の生成例について説明する。
図11は、第1の例の除去部分への欠陥生成を説明する模式図である。
図11に示すように、積層造形物5bに形成された溝61に対して欠陥60bを生成する造形パラメータで溝61を埋め合わせるようにビードが充填され、欠陥60bが形成される。例えば、第1の造形パラメータの変化方法、第3の造形パラメータの変化方法、第4の造形パラメータの変化方法又はこれらの組合せにより溝61に充填された欠陥60bを形成することができる。
【】
第1の例では、溝61に対して欠陥60bを生成する造形パラメータで充填を行うことにより、ブローホール(中央から終端寄り)及び融合不良を含む欠陥60bが形成されることを確認した。
【】
次に、
図12を参照し、
図4の除去部分への欠陥生成に対応する積層造形物5bの第2の生成例について説明する。
図12は、第2の例の除去部分への欠陥生成を説明する模式図である。
図12に示すように、積層造形物5bに形成された溝61に対して空洞状の欠陥60bを生成する造形パラメータで溝61にビードが充填される。この充填では、欠陥60bの周囲部分165を形成する工程と、溝61に充填された周囲部分165の上部を塞ぐカバー部166を形成する工程と、にわかれて溝61への充填が行われる。
【】
第2の例では、溝61に対して周囲部分165とカバー部166を形成することにより、溶接線中央部付近に空間状の模擬的な欠陥60bが形成さることを確認した。
【】
<処理の流れ>
次に、
図13を参照し、情報処理装置10による3Dプリンタ1の制御の流れについて説明する。
図13は、本実施形態に係る情報処理装置10の積層造形物5の生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【】
ステップS1において、積層造形物設定部31は、ユーザから積層造形物5の全体形状を示す情報を取得する。
【】
ステップS2において、欠陥生成制御処理部40の欠陥仕様情報取得部41は、ユーザから欠陥60の位置、大きさ、及び形状の少なくとも1つを含む欠陥仕様情報を取得する。欠陥仕様情報により、積層造形物5の内部に形成される欠陥60の形状及び位置が決まる。
【】
ステップS3において、欠陥生成制御処理部40のパラメータ設定部42は、積層造形物5における目標位置で欠陥60が生成されるように、3Dプリンタ1の造形パラメータを設定する。
【】
ステップS4において、動作制御部32は、積層造形物設定部31により取得された積層造形物5の情報と、パラメータ設定部42により設定された造形パラメータの変化情報と、に基づいて3Dプリンタ1を制御して欠陥60を含む積層造形物5を形成する。制御中は、積層造形物5の目標位置では他の部分とは異なる造形パラメータでビードが形成される。以上、一連の処理により意図した欠陥60を含んだ積層造形物5が製造される。
【】
以上、説明したように、本実施形態の情報処理装置10は、積層造形物5の内部に意図的に欠陥60を生成するための制御を実行する欠陥生成制御処理部40を備え、欠陥生成制御処理部40は、積層造形物5における目標位置に欠陥60を生成するように、3Dプリンタ1の造形パラメータを変化させる。
【】
また、本実施形態の情報処理装置10の制御方法は、積層造形物5の内部に意図的に欠陥60を生成するための制御を実行する欠陥生成制御ステップを含み、欠陥生成制御ステップは、積層造形物5における目標位置に欠陥60を生成するように、3Dプリンタ1の造形パラメータを変化させる。
【】
また、本実施形態のコンピュータとしての情報処理装置10のプログラムは、積層造形物5の内部に意図的に欠陥60を生成するための制御を実行する欠陥生成制御ステップを含む制御処理を情報処理装置10によって実行させ、欠陥生成制御ステップは、積層造形物5における目標位置に欠陥60を生成するように、3Dプリンタ1の造形パラメータを変化させる。
【】
このように、情報処理装置10、情報処理方法又はプログラムが構成されることにより、技術者の熟練度に依存しない定量的な欠陥60を形成するデジタルプロセスにより、積層造形物5に対して現実に近い欠陥60を再現性良く形成することができる。近年、溶接技術を応用したワイヤーDED方式におけるプロセス製造技術が発達しており、一定以上のエネルギー密度で安定的な造形が可能である。例えば、このワイヤーDED方式におけるプロセス制御技術において、エネルギー密度を変化させる等により、積層造形物5に欠陥60の無い健全品の製造条件を計画的に破って欠陥60を容易に作成できる。本実施形態により製造される積層造形物5は、材料評価試験、構造健全性検証試験、破壊挙動解析試験等の様々な用途で使用することができる。特に、非破壊検査技術において、欠陥60のある積層造形物5をデジタル化かつ技能レス化することにより、非破壊検査用試験体の製造についても半永久的な事業継続性を実現できる。具体的には例えば、本実施形態により製造される積層造形物5は、非破壊検査技術者の教育訓練用試験体、非破壊検査装置の校正用標準試験体、及び非破壊検査技術者の資格試験用試験体として使用することができる。
【】
また、本実施形態の欠陥生成制御処理部40は、欠陥60の位置、大きさ、及び形状の少なくとも1つを含む欠陥仕様情報を取得し、欠陥仕様情報に基づいて、目標位置において造形パラメータを変化させるとともに、目標位置の近傍から造形パラメータの変化を開始する。これにより、目標位置に欠陥60を適切かつ確実に形成することができる。
【】
また、本実施形態の欠陥生成制御処理部40は、目標位置において、造形パラメータの変化としてエネルギー入力量を変化させる。このように、欠陥60を生成する目標位置の部分でエネルギー入力量を通常とは異なる入力量に変化させることにより、目標位置に意図した欠陥60を正確に形成できる。
【】
また、本実施形態の欠陥生成制御処理部40は、目標位置において、造形パラメータの変化として造形経路の間隔、積層高さ、又は材料供給量の少なくとも1つを変化させて内部空間を形成することにより欠陥60を生成する。このように、欠陥60を形成しない部分と、欠陥60を生成する目標位置の部分と、で造形経路の間隔、積層高さ、又は材料供給量の少なくとも1つが変化することにより、目標位置に意図した欠陥60を正確に形成できる。
【】
また、本実施形態の欠陥生成制御処理部40は、目標位置において、造形パラメータの変化として目標位置に対応する加工位置に吹き付けるガスを通常の条件とは異なる条件に変更させることにより、欠陥60を生成する。このように、欠陥60を生成する目標位置の部分で吹き付けるガスの条件が、通常の条件(欠陥60が形成されない通常の造形パラメータ)と異なる条件に変更されることにより、目標位置に意図した欠陥60を正確に形成できる。
【】
また、本実施形態の欠陥生成制御処理部40は、目標位置において、造形パラメータの変化として材料供給量を意図的に過剰又は不足させることにより欠陥60を生成する。このように、欠陥60を生成する目標位置の部分で材料供給量が意図的に過剰になる又は不足することにより目標位置に意図した欠陥60を正確に形成できる。
【】
また、本実施形態では、欠陥仕様情報は、3Dプリンタ1における内部欠陥の分類規格に定義される欠陥種別を含み、欠陥生成制御処理部40は、欠陥種別に応じて異なる造形パラメータの変化パターンを適用する。欠陥種別は、例えば、亀裂、縦割れ、横割れ、ガス気孔、ガスキャビティ、均一分布ポロシティ、クラスター状ポロシティ、収縮空洞、スラグ介在物、酸化膜の巻き込み、未溶融、ビード間融合不良、層間融合不良、再開不良、及びスパッタ等である。これにより、予め設定されるパターンを利用することにより、計算負荷を低減でき、効率的に欠陥60を含む積層造形物5の生成処理を実行できる。
【】
また、本実施形態では、欠陥種別は、亀裂、縦割れ、横割れ、ガス気孔、ガスキャビティ、均一分布ポロシティ、クラスター状ポロシティ、収縮空洞、スラグ介在物、酸化膜の巻き込み、未溶融、ビード間融合不良、層間融合不良、再開不良、及びスパッタのうち少なくとも1つを含む。これにより、アメリカ材料試験協会(ASTM International)により策定される標準規格、又は指向性エネルギー堆積法における欠陥分類規格(DED分類)等に対応する欠陥60を容易かつ正確に積層造形物5に形成することができる。
【】
<欠陥種別ごとの具体的な制御方法>
次に、欠陥種別ごとの具体的な造形パラメータの制御方法について説明する。欠陥仕様情報取得部41は、ユーザから欠陥種別を含む欠陥仕様情報を取得するとともに、ワイヤー材6の材料種別に関する情報を取得する。パラメータ設定部42は、取得された欠陥種別と材料種別に基づいて、記憶部18に記憶された制御パターンテーブルを参照し、対応する造形パラメータの変化パターンを選択する。本実施形態では、主要な欠陥種別として、未溶融(LOF:Lack of Fusion)、ガス気孔(Gas Porosity)、収縮空洞(Shrinkage Cavity)、クラック(Crack)について、それぞれに適した制御方法を材料種別ごとに設定している。
【】
(未溶融欠陥の制御方法)
未溶融欠陥(LOF)は、溶融境界が適切に形成されないことにより生じる欠陥である。パラメータ設定部42は、未溶融欠陥を生成する場合、エネルギー密度を健全造形時に対して低下させるとともに、材料供給量を健全造形時に対して過剰にする制御を行う。エネルギー密度は、出力を移動速度で除した値として定義され、溶融池に投入される単位長さあたりの実効熱量を示す。未溶融欠陥の形成では、絶対的なエネルギー不足ではなく、界面のみが不足する状態を作ることが重要である。エネルギー密度の低下と材料供給の過剰との組み合わせにより、最も再現性の高い未溶融欠陥を形成できる。シールドガスは安定状態を維持し、内部空間の形成は未溶融欠陥そのものとして現れる。例えば、健全造形時のエネルギー密度の設定値を100%として、70%以上95%以下の範囲に設定し、健全造形時の材料供給量の設定値を100%として、110%以上150%以下の範囲に設定することができる。
【】
(ガス気孔欠陥の制御方法)
ガス気孔欠陥は、溶融池内にガスが捕捉されることにより生じる欠陥である。パラメータ設定部42は、ガス気孔欠陥を生成する場合、シールドガスの流量を過多にする、又は乱流化させる制御を行う。ガス流量を過多にすることにより、大気の巻き込みが発生し、溶融池内にガスが捕捉される。エネルギー密度は中程度に設定し、十分な溶融池体積を確保する。材料供給量は正常範囲とし、過不足は逆効果となる。内部空間の形成は、ガス捕捉が主因となる。従来、ガス不足により気孔が発生すると考えられていたが、実際にはガス過多又は乱流により大気巻き込みが起きることが、再現性の高いガス気孔形成において重要である。例えば、健全造形時のシールドガスの流量の設定値を100%として、120%以上200%以下の範囲に設定することができる。
【】
(収縮空洞欠陥の制御方法)
収縮空洞欠陥は、凝固時の体積収縮により生じる欠陥であり、鋳造欠陥と同一の原理による。パラメータ設定部42は、収縮空洞欠陥を生成する場合、エネルギー密度を過大にして溶融池を過度に拡大させるとともに、材料供給量を不足させる制御を行う。エネルギー密度を過大にすることにより深い溶融池が形成され、その後の材料供給不足により凝固時の補填が追いつかず、体積欠損として収縮空洞が残留する。シールドガスは安定状態を維持し、内部空間の形成は凝固欠陥が主因となる。例えば、健全造形時のエネルギー密度の設定値を100%として、130%以上180%以下の範囲に設定し、健全造形時の材料供給量の設定値を100%として、50%以上80%以下の範囲に設定することができる。
【】
(クラック欠陥の制御方法)
クラック欠陥は、熱応力又は凝固応力により生じる欠陥である。パラメータ設定部42は、クラック欠陥を生成する場合、エネルギー密度を局所的に過大にした後、急激に低下させる制御を行う。この制御により、冷却勾配が形成され、熱応力又は凝固応力が集中してクラックが発生する。材料供給量は正常範囲とし、シールドガスも安定状態を維持する。クラックは空洞ではなく応力起因の欠陥であるため、内部空間の形成とは区別される。例えば、目標位置において、健全造形時のエネルギー密度の設定値を100%として、150%以上250%以下の範囲に設定した後、目標位置の近傍において健全造形時のエネルギー密度の設定値である100%まで急激に低下させることができる。
【】
(材料種別に応じた制御方法の概要)
上述の制御方法は、ワイヤー材6の材料種別に応じて制御パラメータの変化量が調整される。欠陥仕様情報取得部41が材料種別として、ステンレス鋼、炭素鋼、アルミニウム合金、鋳造アルミニウム合金、純チタン、チタン合金、ニッケル基合金、銅合金、又はニッケルアルミ青銅のいずれかを取得した場合、パラメータ設定部42は、当該材料種別に対応する制御パラメータの変化パターンを記憶部18から読み出す。材料種別ごとに、熱伝導率、酸化膜の有無、凝固温度範囲、割れ感受性等の材料特性が異なるため、同一の欠陥種別を生成する場合であっても、造形パラメータの変化量及び変化方法を材料種別に応じて最適化する必要がある。
【】
以下、主要な材料種別ごとの制御方法について説明する。
(ステンレス鋼の制御方法)
欠陥仕様情報取得部41が材料種別としてステンレス鋼(SUS304、SUS316L等のオーステナイト系ステンレス鋼)を取得した場合、パラメータ設定部42は、ステンレス鋼の熱伝導率が炭素鋼より低く、溶融池が保たれやすいことを考慮した制御を行う。未溶融欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、エネルギー密度を低下させ、材料供給量を過剰にする制御を行う。ガス気孔欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、シールドガスの流量を過多にする又は乱流化させる制御を行う。収縮空洞欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、エネルギー密度を過大にし、材料供給量を不足させる制御を行う。クラック欠陥を生成する場合、オーステナイト系ステンレス鋼は割れ感受性が比較的低いため、パラメータ設定部42は、エネルギー密度の増加量を大きく設定し、冷却勾配を強める制御を行う。例えば、未溶融欠陥を生成する場合、健全造形時のエネルギー密度の設定値を100%として、75%以上90%以下の範囲に設定し、健全造形時の材料供給量の設定値を100%として、115%以上140%以下の範囲に設定することができる。
【】
(炭素鋼の制御方法)
欠陥仕様情報取得部41が材料種別として炭素鋼(SS400相当、低合金鋼を含む)を取得した場合、パラメータ設定部42は、炭素鋼が基準材料としての熱伝導率を有することを前提とした制御を行う。未溶融欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、エネルギー密度を低下させ、材料供給量を過剰にする制御を行う。この組み合わせは、炭素鋼において最も再現性が高い。ガス気孔欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、シールドガスの流量を過多にする又は乱流化させる制御を行う。収縮空洞欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、エネルギー密度を過大にし、材料供給量を不足させる制御を行う。クラック欠陥を生成する場合、炭素鋼は炭素含有量及び冷却速度に応じてマルテンサイト変態が生じるため、パラメータ設定部42は、エネルギー密度を局所的に増加させた後、急激に低下させることにより、熱応力割れ又は低温割れを生成する。例えば、未溶融欠陥を生成する場合、健全造形時のエネルギー密度の設定値を100%として、80%以上95%以下の範囲に設定し、健全造形時の材料供給量の設定値を100%として、110%以上135%以下の範囲に設定することができる。
【】
(鋳造アルミニウム合金の制御方法)
欠陥仕様情報取得部41が材料種別として鋳造アルミニウム合金(Al-Si系鋳物)を取得した場合、パラメータ設定部42は、鋳造アルミニウム合金の凝固温度範囲が広く組織的不均一が生じやすいこと、及び水素起因のガス欠陥が支配的であることを考慮した制御を行う。ガス気孔欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、シールドガスの流量を過多にし、さらにガス噴射角度を変化させて乱流を発生させる制御を行う。この制御により、大気巻き込みが促進され、再現性の高いガス気孔が形成される。エネルギー密度は中程度に設定する。収縮空洞欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、エネルギー密度を過大にして深い溶融池を形成し、材料供給量を不足させる制御を行う。これにより、鋳造収縮欠陥と同一の原理による収縮空洞が形成される。未溶融欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、エネルギー密度を低下させ、材料供給量を過剰にする制御を行う。例えば、ガス気孔欠陥を生成する場合、健全造形時のシールドガスの流量の設定値を100%として、140%以上200%以下の範囲に設定することができる。
【】
(アルミニウム合金の制御方法)
欠陥仕様情報取得部41が材料種別としてアルミニウム合金(5000系、6000系、7000系等の展伸材)を取得した場合、パラメータ設定部42は、アルミニウム合金の表面に形成される酸化膜の融点が母材の融点より高いこと、及び水素ポロシティが出やすいことを考慮した制御を行う。ガス気孔欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、シールドガスの流量を過多にし、乱流を発生させる制御を行う。この制御により、水素起因のガス気孔が形成される。未溶融欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、酸化膜による融合阻害効果を利用し、エネルギー密度を低下させ、材料供給量を過剰にする制御を行う。この制御により、酸化膜が溶融境界に残留し、未融合界面が形成される。収縮空洞欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、エネルギー密度を過大にし、材料供給量を不足させる制御を行う。クラック欠陥を生成する場合、7000系合金は割れ感受性が高いため、パラメータ設定部42は、エネルギー密度を局所的に増加させた後、急激に低下させる制御を行う。例えば、ガス気孔欠陥を生成する場合、健全造形時のシールドガスの流量の設定値を100%として、135%以上190%以下の範囲に設定することができる。
【】
(純チタンの制御方法)
欠陥仕様情報取得部41が材料種別として純チタン(CP Ti)を取得した場合、パラメータ設定部42は、純チタンが酸素及び窒素と反応しやすく、シールドガス管理が品質に直結することを考慮した制御を行う。酸化・窒化脆化欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、シールドガスの流量を低下させる、又はガスのカバレッジ範囲を狭める制御を行う。この制御により、目標位置において酸素又は窒素との反応が促進され、脆化層又は脆化介在物が形成される。この酸化・窒化脆化欠陥は、非破壊検査技術及び破壊試験において有効な教材となる。未溶融欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、エネルギー密度を低下させ、材料供給量を過剰にする制御を行う。ガス気孔欠陥については、純チタンはシールドガス管理の許容範囲が狭いため、意図的な欠陥形成の制御難度が高くなる。例えば、酸化・窒化脆化欠陥を生成する場合、健全造形時のシールドガスの流量の設定値を100%として、30%以上70%以下の範囲に設定することができる。
【】
(チタン合金の制御方法)
欠陥仕様情報取得部41が材料種別としてチタン合金(Ti-6Al-4V等)を取得した場合、パラメータ設定部42は、チタン合金の反応性が高く、熱影響部及び残留応力が大きいことを考慮した制御を行う。未溶融欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、エネルギー密度を低下させ、材料供給量を過剰にする制御を行う。クラック欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、エネルギー密度を局所的に増加させた後、急激に低下させ、冷却勾配を形成する制御を行う。さらに、造形パスの配置により残留応力を集中させることにより、熱応力割れ又は凝固割れを生成する。酸化・窒化脆化欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、シールドガスのカバレッジ範囲を狭める制御を行い、目標位置において酸素又は窒素との反応を促進させる。例えば、クラック欠陥を生成する場合、目標位置において、健全造形時のエネルギー密度の設定値を100%として、170%以上230%以下の範囲に設定することができる。
【】
(ニッケル基合金の制御方法)
欠陥仕様情報取得部41が材料種別としてニッケル基合金(Inconel625、Inconel718等)を取得した場合、パラメータ設定部42は、ニッケル基合金の熱伝導率が約10W/mKから15W/mKと低く、溶融池が大きく滞留しやすいこと、及び凝固温度範囲が広く高温割れ感受性が高いことを考慮した制御を行う。未溶融欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、エネルギー密度の低下量を小さく設定し、材料供給量を過剰にする制御を行う。この制御により、界面未融合が明瞭に形成され、指向性エネルギー堆積法による補修現場における現実欠陥に最も近い未溶融欠陥が再現される。ガス気孔欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、シールドガスの流量を過多にし、乱流を発生させる制御を行う。エネルギー密度は中程度に設定する。収縮空洞欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、エネルギー密度を過大にして深い溶融池を形成し、材料供給量を不足させる制御を行う。ニッケル基合金は凝固が遅延するため、収縮空洞が残留しやすい。クラック欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、エネルギー密度を局所的に増加させた後、急激に低下させる制御を行う。ニッケル基合金は高温割れ感受性が高いため、凝固割れ又は液化割れが形成される。例えば、未溶融欠陥を生成する場合、健全造形時のエネルギー密度の設定値を100%として、85%以上95%以下の範囲に設定することができる。
【】
(銅合金の制御方法)
欠陥仕様情報取得部41が材料種別として銅合金(純銅、CuCrZr、CuNi等)を取得した場合、パラメータ設定部42は、銅合金の熱伝導率が約300W/mKから400W/mKと極めて高く、溶融池が小さく急冷されることを考慮した制御を行う。未溶融欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、エネルギー密度を低下させ、材料供給量を過剰にする制御を行う。銅合金において未溶融欠陥は最も形成しやすい欠陥種別である。ガス気孔欠陥及び収縮空洞欠陥については、銅合金の高い熱伝導率により溶融池が急冷されるため、内部空間が残留しにくく、欠陥形成の再現性が他の材料と比較して低下する。クラック欠陥については、銅合金は延性が高く割れ感受性が低いため、欠陥形成の再現性が他の材料と比較して低下する。例えば、未溶融欠陥を生成する場合、健全造形時のエネルギー密度の設定値を100%として、85%以上95%以下の範囲に設定することができる。
【】
(ニッケルアルミ青銅の制御方法)
欠陥仕様情報取得部41が材料種別としてニッケルアルミ青銅(NAB)を取得した場合、パラメータ設定部42は、ニッケルアルミ青銅が銅を基材としながらもニッケル及びアルミニウムの添加により凝固組織が複雑化し、熱伝導率が純銅より低下することを考慮した制御を行う。未溶融欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、エネルギー密度を低下させ、材料供給量を過剰にする制御を行う。ガス気孔欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、シールドガスの流量を過多にする制御を行う。エネルギー密度は中程度に設定する。収縮空洞欠陥を生成する場合、パラメータ設定部42は、エネルギー密度を過大にし、材料供給量を不足させる制御を行う。ニッケルアルミ青銅における収縮空洞欠陥は、鋳造欠陥に極めて近い特性を示す。クラック欠陥を生成する場合、ニッケルアルミ青銅は凝固組織の不均一性により割れ感受性を有するため、パラメータ設定部42は、エネルギー密度を局所的に増加させた後、急激に低下させる制御を行い、凝固割れ又は組織割れを生成する。ニッケルアルミ青銅は、船舶プロペラ及び海洋機器の非破壊検査技術における試験体として有効である。例えば、収縮空洞欠陥を生成する場合、健全造形時のエネルギー密度の設定値を100%として、140%以上175%以下の範囲に設定することができる。
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上述の制御方法により、ステンレス鋼、炭素鋼、アルミニウム合金、鋳造アルミニウム合金、純チタン、チタン合金、ニッケル基合金、銅合金、ニッケルアルミ青銅等の様々な材料種別について、欠陥種別ごとに適切な非破壊検査用試験体を製造することができる。各材料種別は、熱伝導率、酸化膜の有無、凝固温度範囲、割れ感受性等の材料特性に応じて欠陥形成の適性が異なるが、本実施形態の情報処理装置10は、材料種別に応じた造形パラメータの変化パターンを適用することにより、いずれの材料種別においても再現性の高い欠陥60を含む積層造形物5を製造できる。これにより、非破壊検査技術の検証用試験体、非破壊検査装置の校正用試験体、非破壊検査技術者の教育訓練用試験体、及び非破壊検査技術者の資格試験用試験体を、材料種別を問わず安定的に供給することが可能となる。本実施形態により製造される試験体は、ASTM International、DNV、ISO等の国際規格に準拠した欠陥種別を含むため、これらの規格に基づく非破壊検査技術者の資格認証試験及び技能評価試験における標準試験体として使用することができる。特に、ニッケル基合金により形成される試験体は、ASTMまたはDNV等の国際規格に基づく非破壊検査装置の校正用標準試験体として適している。また、ニッケルアルミ青銅により形成される試験体は、船舶プロペラ及び海洋機器の非破壊検査技術における標準試験体として特に有効である。
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以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
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また、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。換言すると、上述の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が情報処理装置10に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に上述の例に限定されない。また、機能ブロックの存在場所も、特に限定されず、任意でよい。例えば、情報処理装置10の機能ブロックを他の装置等に移譲させてもよい。逆に他の装置の機能ブロックをサーバ等に移譲させてもよい。また、一つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
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一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えばサーバの他汎用のスマートフォンやパーソナルコンピュータであってもよい。
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このようなプログラムを含む記録媒体は、プログラムを提供するために装置本体とは別に配布される図示せぬリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態で提供される記録媒体等で構成される。プログラムはネットワークを介して配信可能であることから、記録媒体は、ネットワークに接続された、或いは接続可能なコンピュータに搭載、或いはアクセス可能なものであってもよい。
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なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【符号の説明】
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1 3Dプリンタ
5 積層造形物
6 ワイヤー材
10 情報処理装置
31 積層造形物設定部
32 動作制御部
40 欠陥生成制御処理部
41 欠陥仕様情報取得部
42 パラメータ設定部
60 欠陥
【要約】
目標位置に意図的な欠陥を含む積層造形物を容易かつ適切に製造できる情報処理装置、情報処理装置の制御方法及びプログラムを提供する。
情報処理装置10は、直接又は間接的に指向性エネルギー堆積法によりワイヤー材6を溶融して積層造形物5を製造する3Dプリンタ1を制御する。この情報処理装置10は、積層造形物5の内部に意図的に欠陥を生成するための制御を実行する欠陥生成制御処理部40を備え、欠陥生成制御処理部40は、積層造形物5における目標位置に欠陥60を生成するように、3Dプリンタ1の造形パラメータを変化させる制御情報を生成する。
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