(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】
(45)【発行日】
(54)【発明の名称】圧電素子、液体吐出ヘッド、及び画像記録装置
(51)【国際特許分類】
【FI】
(21)【出願番号】
(22)【出願日】
【審査請求日】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】池田 貴司
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-087471(JP,A)
【文献】特開2018-093145(JP,A)
【文献】特開2009-094449(JP,A)
【文献】特開2018-170503(JP,A)
【文献】特開2021-113355(JP,A)
【文献】特開平05-198855(JP,A)
【文献】特開2011-233695(JP,A)
【文献】特開昭60-124396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/20
H10N 30/078
H10N 30/079
H10N 30/80
H10N 30/853
B41J 2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項】
基板上に、下部電極、圧電膜、及び上部電極をこの順に有する圧電素子であって、
前記下部電極と前記圧電膜との間に、III族元素、IV族元素及びV族元素から選択される少なくとも一種の元素を含有するアルミ酸化物の絶縁膜が設けら
れ、
前記絶縁膜の、比誘電率と絶縁破壊電界強度の積が、134MV/cmよりも大きい圧電素子。
【請求項】
前記III族元素、IV族元素及びV族元素から選択される少なくとも一種の元素が、チタン、イットリウム、ハフニウム、及びランタンから選択される少なくとも一種の元素である請求項1に記載の圧電素子。
【請求項】
前記アルミ酸化物が、チタン酸アルミネート、イットリウムアルミネート、ハフニウムアルミネート、及びランタンアルミネートから選択される少なくとも一種である請求項1に記載の圧電素子。
【請求項】
前記絶縁膜は、チタン酸アルミネートまたはランタンアルミネートを含む
請求項1に記載の圧電素子。
【請求項】
前記絶縁膜の膜厚が13nm以下である請求項1に記載の圧電素子。
【請求項】
前記絶縁膜は第1の絶縁膜であって、
前記圧電膜と前記上部電極との間に、III族元素、IV族元素及びV族元素から選択される少なくとも一種の元素を含有するアルミ酸化物の第2の絶縁膜が設けられている請求項1に記載の圧電素子。
【請求項】
前記下部電極と前記圧電膜との間に設けられた前記
第1の絶縁膜と、前記圧電膜と前記上部電極との間に設けられた前記第2の絶縁膜の膜厚の合計が13nm以下である請求項6に記載の圧電素子。
【請求項】
前記絶縁膜と前記圧電膜の間に、前記圧電膜の結晶配向を制御するための結晶配向制御膜を有する請求項1に記載の圧電素子。
【請求項】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の圧電素子を有し、前記圧電素子を駆動することで液体を吐出することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項】
前記液体としてインクを吐出する請求項9に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項】
請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の圧電素子を有し、前記圧電素子を駆動することで液体を吐出する液体吐出ヘッドを備えることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【】
本発明は、圧電素子、液体吐出ヘッド、及び画像記録装置に関する。
【背景技術】
【】
電界を印加することでその形状が変化する圧電体は、物体を微小かつ正確に移動させたり振動させたりする手段として様々な工業製品に応用されている。例えば、小型のスピーカーや、ハードディスクドライブ、プリンター(画像記録装置)などに用いられている。中でも、プリンターでは、液滴を吐出させる液体吐出ヘッドに、圧電膜を採用しているものがある。このような液体吐出ヘッドでは、圧電膜を上下から挟むように形成した電極(上部電極、下部電極)によって電界を印加することで圧電膜を駆動し、液滴を吐出させている。
【】
近年、プリンターにはより精細な画質と高速性が求められており、液体吐出ヘッドの吐出構造は微細化すると共に、高い電圧を印加することで圧電膜を大きく変位させる工夫がなされている。一方で、高い電圧を印加すると圧電膜には大きな負荷が生じる。これは、圧電膜は、絶縁体の一種であるが、比抵抗(電気抵抗率)が、酸化シリコンなどと比較して小さく、高い電圧を印加すると僅かではあるが膜中を電流が流れ得る。この電流によって絶縁破壊が生じることが圧電膜の耐久性に影響を及ぼす。
【】
そこで、圧電膜の耐久性を向上させる検討がなされている。例えば、特許文献1には、圧電膜と電極との間に絶縁膜を形成することで、圧電膜中に流れる電流を抑制し、耐久性を向上させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、圧電膜の耐久性は向上できたものの、圧電膜の変位量が十分に得られないという技術課題が発生してしまった。これは、電極によって印加した電圧が絶縁膜と圧電膜に分配されることで、圧電膜にかかる電界の大きさが減少したことによると考えられる。これに対して、圧電膜にかかる電界が減少することを見越して、電極にかける電圧を高めておく方法があるが、その場合、配線などの他の部分の劣化が生じ得る。別の方法として、絶縁膜の膜厚を薄くすることで、圧電膜への電圧の分配率を上げる方法も検討したが、依然絶縁膜には大きな電界が印加されてしまった。
【】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、圧電膜の変位量を十分に得つつ、圧電膜の耐久性も高めることが可能な圧電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【】
上記目的を達成するために、本発明における圧電素子は、基板上に、下部電極、圧電膜、及び上部電極をこの順に有し、前記下部電極と前記圧電膜との間に、III族元素、IV族元素及びV族元素から選択される少なくとも一種の元素を含有するアルミ酸化物の絶縁膜が設けられ、前記絶縁膜の、比誘電率と絶縁破壊電界強度の積が、134MV/cmよりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【】
本発明によれば、変位量を十分に得つつ、耐久性に優れた圧電素子、当該圧電素子を有する液体吐出ヘッド及び画像記録装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【】
【図】本発明の圧電素子であって、絶縁膜を圧電膜と下部電極の間に設けた構造について、模式的に示した断面図。
【図】本発明の圧電素子であって、絶縁膜を圧電膜と上部電極の間に設けた構造について、模式的に示した断面図。
【図】本発明の圧電素子であって、絶縁膜を圧電膜と下部電極の間と、上部電極の間の双方に設けた構造について、模式的に示した断面図。
【図】密着層を有する下部電極を説明するための断面図。
【図】高温高湿駆動試験結果を示したグラフ。
【図】密着層を有する結晶方位配向膜を説明するための断面図。
【図】本発明の圧電素子の膜構成であって、絶縁膜を圧電膜と下部電極の間に設けた場合について示した断面図。
【図】本発明の圧電素子の加工プロセスを説明するものであって、圧電体を加工するレジストマスクパターンを形成した状態を示した断面図。
【図】本発明の圧電素子の膜をエッチング加工した様子を説明するための断面図。
【図】本発明の圧電素子の膜構成であった、絶縁膜を圧電膜と上部電極の間に設けた場合について示した断面図。
【図】本発明の圧電素子の加工プロセスを説明するもので、保護膜を形成した様子を模式的にした断面図。
【図】本発明の圧電素子の加工プロセスを説明するもので、下部電極表面に開口部を形成するためのレジストマスクパターンを示した断面図。
【図】本発明の圧電素子の加工プロセスを説明するもので、下部電極表面に開口部を形成した状態を示す断面図。
【図】本発明の圧電素子の加工プロセスを説明するもので、上部電極表面に開口部を形成するためのレジストマスクパターンを示した断面図。
【図】本発明の圧電素子の加工プロセスを説明するもので、上部電極表面に開口部を形成した状態を示す断面図。
【図】本発明の圧電素子の加工プロセスを説明するもので、配線を形成するために成膜した導電膜を示す断面図。
【図】本発明の圧電素子の加工プロセスを説明するもので、導電体膜を所望の形状に加工し配線とするために形成したレジストマスクパターンを示す断面図。
【図】本発明の圧電素子の加工プロセスを説明するもので、形成した配線を示す断面図。
【図】本発明の圧電素子の加工プロセスを説明するもので、ウェーハ裏面に凹部を形成するためのレジストマスクパターンを示す断面図。
【図】SOIウェーハの構成を説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の圧電素子の実施形態として、半導体プロセスを用いて作製する微細構造体としての圧電素子について詳細に説明する。尚、以下の実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【】
本発明の圧電素子は、基板100上に、下部電極210、圧電膜240、及び上部電極250をこの順に有し、下部電極と圧電膜との間、及び、圧電膜と上部電極との間の少なくとも一方の間に、絶縁膜220を有する。
図1に示すように、圧電膜240と下部電極210との間に絶縁膜220を有してもよい。この場合、上述の通り、絶縁膜220の存在によって、圧電膜中に流れる電流が抑制される。また、
図2に示すように、圧電膜240と上部電極250との間に絶縁膜220を有してもよい。更には、
図3に示すように、絶縁膜220が、下部電極210と圧電膜240との間、及び、圧電膜240と上部電極250との間の何れにも設けられていることがより好ましい。
【】
本発明の圧電素子は、微細構造体である場合には、特に、平坦な基板100上に形成されることが好ましい。基板100は、その使用用途によって適宜選択すれば良く、シリコン、シリコンカーバイト、石英、窒化ガリウム、ガリウム砒素、インジウムリン、サファイヤ等の材料からなる平坦性の高いウェーハが好適に用いられる。更に、メンブレン構造を容易に形成するためにSOI(Silicon On Insulator)ウェーハを用いてもよい。
【】
以下、
図1の圧電膜240と下部電極210との間に絶縁膜220を有する圧電素子を用いて、詳細に説明する。
【】
圧電膜240の下部電極210は、その後のプロセスにおいて数百℃の高い温度に晒される場合もあり、そのような場合には溶融温度の高い材料を用いることが好ましい。そのような材料として、例えば、銅、プラチナ、金、クロム、コバルト、チタンやそれらの合金が挙げられる。また、下部電極210の上表面に接して圧電膜240を形成する場合には、下部電極210は、圧電膜の結晶方位を制御する膜を兼ねる場合もある。その場合、用いる材料は、適切な結晶構造を有するものが適宜選択される。また、下部電極210はその下の膜との密着力を得るために、チタンやクロム等の薄膜を密着層211として配し、先に上げた材料や一般的に配線として用いられる材料からなる導体層212との積層膜としても良い。導体層212は上述の通り、これに接して圧電膜240を形成する場合には、適切な結晶構造を有するものが適宜選択される(
図4参照)。基板100が導電性を持つ場合は、下部電極210と基板100との間に、絶縁膜110を配することが好ましい。絶縁膜110には、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、オキシナイトライド、アルミナ等一般的な絶縁体材料を使用可能である。
【】
下部電極210の上、あるいは圧電膜240の上に、圧電膜中に流れる電流を抑制するための絶縁膜220を形成する(
図1~
図3参照)。本発明において、絶縁膜は、III族元素、IV属元素及びV属元素から選択される少なくとも一種の元素を含有するアルミ酸化物(酸化アルミニウム)の膜である必要がある。III族元素、IV属元素及びV属元素から選択される少なくとも一種の元素としては、チタン、ランタン、イットリウム、ハフニウム等が挙げられる。より具体的には、アルミ酸化物が、チタン酸アルミネート、イットリウムアルミネート、ハフニウムアルミネート、及びランタンアルミネートから選択される少なくとも一種であることが好ましい。また、絶縁膜としては、窒化ハフニウムアルミネートなど、更に窒素原子を含むものでもよい。
【】
本発明の構成である、III族元素、IV属元素及びV属元素から選択される少なくとも一種の元素を含有するアルミ酸化物(酸化アルミニウム)の絶縁膜と、従来技術で用いられている材料からなる絶縁膜を用いて、それぞれ圧電素子を作製し、高温高湿駆動試験を実施した。試験条件は、次の通りである。即ち、圧電素子を温度85℃かつ相対湿度85%RHに設定した槽の中に保持し、一定の大きさの電圧を1000時間印加し続けた。
【】
高温高湿駆動試験の結果を表1及び
図5に示す。表1には、試験に用いた絶縁膜の材料と、それぞれの膜の比誘電率及び絶縁破壊強度と、比誘電率及び絶縁破壊強度の積を記載している。
図5は、比誘電率及び絶縁破壊強度の積をグラフにした図である。また、表1において、高い耐久性が確認された圧電素子に“〇”を付している。試験の結果から、比誘電率及び絶縁破壊強度の積が大きい材料ほど、圧電素子の耐久性が高かった。特に、比誘電率と絶縁破壊電界度の積が、134MV/cmよりも大きい場合に耐久性がより高いことが分かった。このことは、特に、上記の積が134MV/cmであるアルミナを用いた場合と、134MV/cmより僅かに大きいハフニウムアルミネートを用いた場合を比較することからも明らかである。
【】
【】
また、これらの絶縁膜の膜厚は、電源電圧50Vにおいて所望の変位量が得られるような厚さに調整してある。その中で、最も厚くすることが可能な材料は、チタン酸アルミネート及びランタンアルミネートであり、共に13nmであった。つまり、絶縁膜の膜厚が13nm以下であることが好ましい。
【】
絶縁膜220は、その材料によっては、数nmの薄膜とすることが好ましい場合もある。そのような場合は、より平坦な面の上に成膜することが好ましく、圧電膜240よりも先に形成することが好ましい。そのような材料としてはハフニウムアルミネートが挙げられる。ただし、成膜条件を適宜調整し、圧電膜240を覆うことが可能であれば、圧電膜240の上に形成しても構わない。また、絶縁膜221及び絶縁膜222として分割した形で、圧電膜の上と下の両方に形成しても良い。その場合は、両方の膜の合計膜厚が13nm以下となるようにする。
【】
下部電極210と圧電膜240の間に絶縁膜220を形成する場合には、絶縁膜220と圧電膜240の間に圧電膜の結晶配向を制御するための結晶配向制御膜230を形成する。結晶配向制御膜230の材料は、圧電膜240の結晶方位に依存し、圧電膜240の材料により適宜選択される。例えば、圧電膜240の材料がチタン酸ジルコン酸鉛である場合には、結晶配向制御膜230にはプラチナを用いることが好ましい。プラチナの成膜には、マグネトロンスパッタリングなどの一般的な成膜方法が使用可能であるが、所望の配向が得られるように、適宜膜厚を調整する。また、プラチナと絶縁膜220との密着性を向上させるため、結晶配向制御膜230を、チタンやクロムなどの密着層231と、結晶配向制御層232の積層膜としてもよい(
図6参照)。
【】
結晶配向制御膜230の上に、圧電膜240を形成する。圧電膜には、大きな変位量を得やすいチタン酸ジルコン酸鉛が主に使用されるが、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、チタン酸ビスマス、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、ニオブ酸カリウムナトリウムなど、他の圧電材料も使用可能である。
【】
圧電膜240の成膜は、マグネトロンスパッタリングや、スピンコートなどによる塗布といった一般的な成膜方法が使用可能である。膜厚は概ね2μm程度が好ましく、塗布により形成する場合は、何層かに分けて成膜される。また、塗布後の焼成により、結晶方位の配向が行われる。焼成温度は、材料により適宜選択されるが、チタン酸ジルコン酸鉛の場合は、600℃から900℃の範囲内であればよい。
【】
圧電膜240内に流れる電流を抑制するための絶縁膜220を圧電膜240と上部電極250の間に形成する場合は、圧電膜240の上表面に接して絶縁膜220を形成する。使用する材料や形成方法は、下部電極210と圧電膜240との間に形成する場合と同じであり、上述の通りである。ただし、絶縁膜220の膜厚を数nmと薄くする場合は、圧電膜240の上表面の凹凸により、その被覆性が不十分となる場合があるので、そのような場合は、下部電極210と圧電膜240の間に絶縁膜220を形成することが好ましい。
【】
絶縁膜220を上部電極250と圧電膜240の間に形成しない場合は、圧電膜240の上表面に接して上部電極250を形成する。上部電極250は導電性を示すものであればよく、その材料としては一般的に電極材料として使用されるものが使用可能である。ただし、結晶方位配向膜230などの内部応力が大きく、圧電膜240が屈曲している場合には、上部電極250に逆の内部応力を持たせ、素子全体の応力を相殺させる働きを付与することもできる。
【】
以上のようにして作製した多層膜(
図7参照)を加工し、微細な圧電体素子を形成する。
【】
多層膜の表面に、所望の形状のレジストパターン301を形成する(
図8参照)。レジストパターンの形成は、一般的な形成方法が使用可能である。すなわち、スピンコートによりレジストを塗布し、プリベークした後に、所望の形状のパターンが形成されたマスクを介して紫外線を照射し、次いで、現像を行って、不要なレジスト部を除去する。その後、ポストベークを行い、形成したレジストパターンの安定性やエッチング中のガス放出の抑制を図る。
【】
作製したレジストパターン301をマスクとして、エッチングを行う。エッチングはドライエッチングやウェットエッチングなど、一般的なエッチング方法が使用可能である。
図9に示すように、絶縁膜220の上表面までエッチングを行う。
図10に示す膜構成のように、絶縁膜220を圧電膜240の下に設けていない場合には、下部電極210の上表面までエッチングを行う。エッチング後に、アッシング等、一般的に用いられる方法により、レジストパターン301を除去する。
【】
エッチングにより得られた微細構造体である圧電素子の腐食を防止するために、保護膜401を構造体全表面に形成する。保護膜401には一般的な絶縁材料が使用できるが、絶縁膜220の端部において生じる保護膜401の絶縁破壊を防止するために、より好ましくは、絶縁膜220と同じ材料を用いる。構造体の全表面に保護膜401を成膜するために、原子層積層法や化学気相成長方法を用いることが好ましい。保護膜401の表面に更に別の材料からなる保護膜402を成膜し、更に保護性能を向上させることが好ましい(
図11参照)。
【】
上記保護膜の一部を除去し、外部電源と素子とを電気的に接続する配線601と下部電極210とをコンタクトさせる開口部501を形成する。開口部となる箇所に孔が開いているレジストパターン302を形成する(
図12参照)。その後、下部電極210を覆っている保護膜401、もしくは保護膜401及び保護膜402をエッチングして除去する。その後、レジストパターン302を除去する(
図13参照)。
【】
次いで、外部電源と素子とを電気的に接続する配線602と上部電極250とをコンタクトさせる開口部502を形成する。開口部となる箇所に孔が開いているレジストパターン303を形成する(
図14参照)。その後、上部電極250を覆っている保護膜401、もしくは保護膜401及び保護膜402をエッチングして除去する。その後、レジストパターン303を除去する(
図15参照)。
【】
配線601及び配線602を形成するために、導電性の材料により導電膜600を成膜する(
図16参照)。材料としては、配線材料として一般的なものを使用可能である。そのような材料は、例えば、アルミニウム、銅、金、プラチナやこれらの合金が挙げられる。導電膜600を所望の形状に加工するために、その上にレジストパターン304を形成する(
図17参照)。エッチングして配線601及び配線602を作製する(
図18参照)。
【】
最後に、電圧の印加によって圧電体素子が変形可能となるように、ウェーハの裏面を薄化する。薄化する場所は先に作製した圧電体素子が形成されたエリアのウェーハの裏面である。すなわち、圧電体素子の下にある厚い基体を深く彫り込む。この加工は、機械加工でも、ウェットエッチングやドライエッチングなどの半導体プロセスで用いられる一般的な加工方法でも良いが、圧電素子の下が薄くなるために、振動等に留意し、メンブレンが破壊されないようにすることが必要である。ウェットエッチングやドライエッチングで加工する場合、
図19に示すようなレジスパターン305を形成する。これをマスクとして、エッチングを行い、ウェーハ裏面に凹部701を形成する。凹部の深さは加工時間によってコントロールされるが、ウェーハにSOIウェーハを使用した場合は、この加工深さを再現性良く行うことが可能である。
図20にSOIウェーハの構造を示す。SOIウェーハはシリコン基板上に、酸化シリコン層(BOX層)が形成され、更にその上にシリコン層が存在する。BOX層は数十nmから数百μmの間で形成可能で、その上のシリコン層の膜厚も比較的自由に選択できる。これらの膜厚を適当に組み合わせ、BOX層をエッチングストップ層として、選択エッチングを実施することによりシリコンのみを除去することができる。このようなエッチングによって得られた凹部の底部はBOX層の表面であり、 極めて平坦な底部を得ることが可能である。
【】
液体吐出ヘッドの耐久性は、液体に吐出のためにエネルギーを付与する部分に大きく依存するが、ここまで説明した圧電素子を液体吐出ヘッドに用いることで、高い耐久性の液体吐出ヘッドを得ることが可能である。また、本発明の圧電素子を駆動することで液体を吐出する液体吐出ヘッドを搭載した画像記録装置を用いることで、精細な画質と高速性を両立することが可能となる。
【実施例】
【】
熱酸化炉を用いて、SOIウェーハを酸素雰囲気中で加熱し、シリコン層表面に熱酸化膜を形成する。形成した酸化シリコン膜の厚さは250nmである。この熱酸化膜は、ウェーハ表面上に形成する電気回路とシリコン膜の導通を遮断するものである。
【】
熱酸化膜表面にマグネトロンスパッタリングにより、チタンとプラチナを連続成膜する。チタン層の膜厚は10nm、プラチナ層の膜厚は20nmとした。この導電性積層膜は、圧電膜の下部電極となる。
【】
下部電極膜表面にトリメチルアルミニウムとテトラキスジメチルアミノチタンを原料として、原子層堆積法によりチタン酸アルミネート絶縁層を形成した。この時のウェーハ温度は190℃で、チタン元素とアルミ元素の組成は2:3とした。膜厚は8nm、比誘電率は18、絶縁破壊電界強度は10MV/cmであった。つまり、比誘電率と絶縁破壊電界強度の積は、180MV/cmである。本絶縁膜は、膜厚が比較的薄いため、平坦な膜の表面に形成することが好ましく、したがって圧電膜と下部電極の間に形成した。
【】
チタン酸アルミネート絶縁膜表面に、圧電膜の結晶配向を制御するための膜を形成する。この層は、まず、密着層としてのチタン膜と結晶配向制御層としてのプラチナ膜を連続して成膜する。チタン膜の膜厚は10nm、プラチナ膜の膜厚は100nmとした。更に、この上に、チタン酸鉛溶液をスピンコートし、シード層とした。
【】
チタン酸ジルコン酸鉛ゾルゲル液をスピンコーターで塗布し、圧電膜を形成する。1回の塗布工程により膜厚がおよそ200nmの薄膜が形成できる。これを10回繰返し行い、総膜厚を2μm程度とした。焼成温度を700℃とし圧電膜を形成した。
【】
ウェーハを徐冷した後、膜厚100nmのチタンタングステン合金を成膜する。この積層膜は圧電膜の上部電極となる。
【】
以上の様にして形成した積層膜の表面に600μm×100μmの大きさのレジストパターンを形成し、チタン酸アルミネート絶縁膜表面までの深さをドライエッチングし、微細な圧電素子を形成する。更に、エッチング加工した圧電膜よりも少し広い領域を覆うようにレジストパターンを形成し、圧電素子から離れた領域を下部電極の下までドライエッチングし、圧電素子から少しはみ出た下部電極を形成する。
【】
トリメチルアルミニウムを原料として原子層堆積法により、作製した圧電素子全面を酸化アルミニウムで覆う。更に、窒化シリコン膜を250nm成膜し腐食を防止するための保護膜とする。圧電膜の上部電極を配線に接続するためのコンタクト部を形成するために、上部電極の上の窒化シリコン膜と酸化アルミニウム膜を部分的にドライエッチングにより除去する。次いで、下部電極を配線に接続するためのコンタクト部を形成するために、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜更にチタン酸アルミネート絶縁膜を部分的に除去する。
【】
外部電源回路と圧電素子の上下電極を結線するための配線を形成する。チタン及びアルミニウム-銅合金をマグネトロンスパッタリング装置により連続成膜する。チタン膜の膜厚は10nm、アルミニウム-銅合金膜の膜厚は30nmとした。その後、配線の形状のレジストパターンを形成し、ドライエッチングを行って配線を形成する。更に表面を膜厚200nmの窒化シリコン膜で覆い、配線表面の保護膜とする。
【】
外部電源を接続するパッド部表面の窒化シリコン膜をドライエッチングで除去し、パッド表面を露出させる。SOIウェーハの裏面、すなわち圧電素子を形成した面と反対の面にレジストパターンを形成する。このパターンの大きさは850μm×120μmで、圧電素子よりもひと回り大きく、圧電素子の直下が凹むように作製する。その後ボッシュプロセスによりBOX層(埋め込み酸化膜層)である酸化シリコン膜までシリコンを除去しBOX層より上部の膜をメンブレンとする。
【】
以上のようにして、所望の圧電素子を得た。
【実施例】
【】
実施例1と同様に、SOIウェーハ表面に、電気回路とシリコン膜の導通を遮断するための熱酸化シリコン膜を形成する。
【】
本実施例では、圧電膜を通過する電流を減少させるための絶縁膜を圧電膜と上部電極の間に形成するために、結晶方位を制御するためのプラチナ膜は下部電極と共通とする。したがって、熱酸化シリコン膜の表面に、マグネトロンスパッタリングにより、10nmのチタンと100nmのプラチナを連続成膜する。
【】
プラチナ表面に、実施例1と同様、チタン酸鉛溶液をスピンコートし、シード層とした。更に、チタン酸ジルコン酸鉛ゾルゲル液をスピンコーターで塗布、アニールを実施し圧電膜とした。
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圧電膜の表面に、マグネトロンスパッタリングにより12nmのランタンアルミネートからなる絶縁膜を成膜した。得られた絶縁膜の比誘電率は18で、絶縁破壊電界強度は16.7MV/cmであった。したがって、比誘電率と絶縁破壊電界強度の積は、300.6MV/cmである。
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更に、上部電極を実施例1と同様に作製した。
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圧電素子を形成するために、下部電極の上表面までドライエッチングを行った。それ以降の工程は、実施例1と同様に実施し、圧電素子を得た。
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(比較例1)
実施例1において、圧電膜を通過する電流を減少させるための絶縁膜を膜厚が7nmのアルミナによって作製した。成膜方法は、原子層堆積法であり、原料としてトリメチルアルミニウムを用いた。アルミナの比誘電率は10、絶縁破壊電界強度は13.4MV/cmであった。したがって、比誘電率と絶縁破壊電界強度の積は、134MV/cmである。
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(比較例2)
実施例1において、圧電膜を通過する電流を減少させるための絶縁膜を膜厚が8nmの窒化シリコン膜によって作製した。成膜方法は、プラズマCVDである。窒化シリコン膜の比誘電率は12、絶縁破壊電界強度は8.8MV/cmであった。したがって、比誘電率と絶縁破壊電界強度の積は、105.6MV/cmである。
【】
上記実施例及び比較例で示した圧電素子について、50Vの直流電圧を印加し続けた状態で温度85℃、相対湿度85%RHの恒温槽内に1000時間保持し、耐久性を調べた。その結果、実施例の圧電素子はいずれも故障が見られず耐久性が高かったのに対し、比較例の圧電素子は所望の耐久性が得られなかった。
【符号の説明】
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100 基板
101 シリコン基板
102 酸化シリコン層(BOX層)
103 シリコン層
110 絶縁膜
210 下部電極
211 下部電極の密着層
212 下部電極の導体層
220、221、222 本発明の絶縁膜
230 結晶配向制御膜
231 結晶配向制御膜の密着層
232 結晶配向制御層
240 圧電膜
250 上部電極
301、302、303、304 レジストパターン
401、402 保護膜
501、502 開口部
600 配線を形成するための導電膜
601 下部電極に接続される配線
602 上部電極に接続される配線
701 凹部
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